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特表2024-522408架橋剤、組成物、母材、封止用粘着性フィルム、及び電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-20
(54)【発明の名称】架橋剤、組成物、母材、封止用粘着性フィルム、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20240613BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K5/5425
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576016
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 CN2021129110
(87)【国際公開番号】W WO2023024267
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110991133.X
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520350203
【氏名又は名称】ハンジョウ ファースト アプライド マテリアル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU FIRST APPLIED MATERIAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.8 Fusite Street,Linan,311300 Hangzhou,China
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】タン,グオドン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ボーガン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,グァンダー
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ホンビン
(72)【発明者】
【氏名】メイ,ユンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,モンジュエン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB151
4J002EX016
4J002FD146
4J002GJ02
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、架橋剤、組成物、母材、封止用粘着性フィルム、及び電子部品を提供する。
【解決手段】該架橋剤は、R [CHSiO]との構造一般式の環状構造を有する。nは偶数であり、かつ、4≦n≦10であり、R及びRはいずれもSi原子に連結され、かつ、Rは末端二重結合を持つ基であり、Rは、炭素数4~14の直鎖アルキル又は分岐アルキルであり、xは1を超えてn未満の偶数であり、かつ、x+yはnに等しく、R同士は、2つずつパラ位に存在し、R同士は、2つずつパラ位に存在し、2つずつパラ位となるRは同じであり、2つずつパラ位となるRは同じであり、パラ位関係とならないRは同じ又は異なり、パラ位関係とならないRは同じ又は異なる。該架橋剤は、ポリオレフィン樹脂中のマイグレーションの確率を下げるため、ポリオレフィン樹脂の耐クリープ性を向上させ、従って、電子部品の寿命を延ばす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造一般式の環状構造を有する、ことを特徴とする架橋剤。
[CHSiO]
(ここで、nは、偶数であり、かつ、4≦n≦10であり、
及びRはいずれもSi原子に連結され、かつ、前記Rは末端二重結合を持つ基であり、
前記Rは、炭素数4~14の直鎖アルキル又は分岐アルキルであり、
xは、1を超えてn未満の偶数であり、かつ、x+yはnに等しく、
前記R同士は、2つずつパラ位に存在し、前記R同士は、2つずつパラ位に存在し、2つずつパラ位となる前記Rは同じであり、2つずつパラ位となる前記Rは同じであり、パラ位関係とならない前記Rは同じ又は異なり、パラ位関係とならない前記Rは同じ又は異なる。)
【請求項2】
前記Rは、末端二重結合を持つC~C10の基であり、前記Rは、C~C14の直鎖アルキル又はC~C14の分岐アルキルである、ことを特徴とする請求項1に記載の架橋剤。
【請求項3】
前記nは、偶数であり、かつ、4≦n≦8である、ことを特徴とする請求項1に記載の架橋剤。
【請求項4】
前記Rは、ビニル、メタクリルオキシプロピル、アリルから選択されるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の架橋剤。
【請求項5】
前記Rは、C~C14の直鎖アルキル又はC~C14の分岐アルキルであり、前記Rは、オクチル、ノニル、デシル、イソオクチル、イソノニル、イソデシルから選択されるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の架橋剤。
【請求項6】
重量部で、非極性ポリオレフィン樹脂100重量部と、架橋剤0.1~3重量部と、を含む組成物であって、
前記架橋剤は、請求項1~5のいずれか1項に記載の架橋剤である、ことを特徴とする組成物。
【請求項7】
前記非極性ポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体から選択されるいずれか1種又は複数種であり、前記エチレン・αオレフィン共重合体は、線形低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブチレン共重合体、エチレン・ペンテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体から選択されるいずれか1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物を含む母材であって、
前記組成物は請求項6又は7に記載の組成物である、ことを特徴とする母材。
【請求項9】
組成物中の各成分を混合して、溶融押出することにより得られる封止用粘着性フィルムであって、
前記組成物は請求項6又は7に記載の組成物である、ことを特徴とする封止用粘着性フィルム。
【請求項10】
太陽電池、液晶パネル、電界放出デバイス、プラズマディスプレイデバイス、タッチスクリーンのうちのいずれか1種を含む電子部品であって、
前記電子部品の少なくとも1つの面が封止用粘着性フィルムと接触し、前記封止用粘着性フィルムは請求項9に記載の封止用粘着性フィルムである、ことを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子の技術分野に関し、具体的には、架橋剤、組成物、母材、封止用粘着性フィルム、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロセン触媒で触媒合成されたエチレン-オクテン共重合体などのポリオレフィン材料は、良好な絶縁性、撥水性、耐PID性を有し、酸性化腐食性がないという特性から、両面PERCセルアセンブリ、N型セルアセンブリ、ダブルガラスアセンブリなどの高効率な電子部品の封止材料として広く使用される。具体的には、封止材料は、チップを実装、固定、封止、保護する役割を果たすことができ、これにより、チップを外部から隔離し、空気中の不純物によるチップの腐食による電気機器の性能低下を防止する。しかし、従来の封止材料は耐熱性や耐引張性が低いため、封止時の熱、光、照射等のエネルギーにより電子部品が効能を失いやすく、電子部品の作動時間が長くなるに伴い、電子部品の長時間の作動による発熱や変形により、封止材料の更なる変形や変質が生じ、従って、最終に電子部品の寿命が短くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、従来技術における封止材料の耐熱性や耐引張性が低いことによる電子部品の短寿命化の問題を解決するために、架橋剤、組成物、母材、封止用粘着性フィルム、及び電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成させるために、本発明の一態様によれば、以下の構造一般式の環状構造を有する架橋剤を提供する。
[CHSiO]
(ここで、nは、偶数であり、かつ、4≦n≦10であり、
及びRはいずれもSi原子に連結され、かつ、Rは、末端二重結合を持つ基であり、
は、炭素数4~14の直鎖アルキル又は分岐アルキルであり、
xは、1を超えてn未満の偶数であり、かつ、x+yはnに等しく、
同士は、2つずつパラ位に存在し、R同士は、2つずつパラ位に存在し、2つずつパラ位となるRは同じであり、2つずつパラ位となるRは同じであり、パラ位関係とならないRは同じ又は異なり、パラ位関係とならないRは同じ又は異なる。)
さらに、上記のRは、末端二重結合を持つC~C10の基であり、Rは、C~C14の直鎖アルキル又はC~C14の分岐アルキルである。
【0005】
さらに、上記のnは、偶数であり、かつ、4≦n≦8である。
さらに、上記のRは、ビニル、メタクリルオキシプロピル、アリルから選択されるいずれか1種である。
さらに、上記のRは、C~C14の直鎖アルキル又はC~C14の分岐アルキルであり、Rは、オクチル、ノニル、デシル、イソオクチル、イソノニル、イソデシルから選択されるいずれか1種である。
【0006】
本発明の別の態様によれば、重量部で、非極性ポリオレフィン樹脂100重量部と、架橋剤0.1~3重量部と、を含む組成物であって、架橋剤は上記の架橋剤である、組成物を提供する。
さらに、上記の非極性ポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体から選択されるいずれか1種又は複数種であり、エチレン・αオレフィン共重合体は、線形低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブチレン共重合体、エチレン・ペンテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体から選択されるいずれか1種又は複数種である。
【0007】
本発明の別の態様によれば、組成物を含む母材であって、組成物は上記の組成物である母材を提供する。
本発明の更なる態様によれば、組成物中の各成分を混合して、溶融押出することにより得られる封止用粘着性フィルムであって、組成物は前述組成物である、封止用粘着性フィルムを提供する。
本発明の更なる態様によれば、太陽電池、液晶パネル、電界放出デバイス、プラズマディスプレイデバイス、タッチスクリーンのうちのいずれか1種を含む電子部品であって、電子部品の少なくとも1つの面が封止用粘着性フィルムと接触し、封止用粘着性フィルムは上記の封止用粘着性フィルムである、電子部品を提供する。
【0008】
ポリオレフィン樹脂材料は、封止材料の耐熱性や耐引張性を確保するために、通常、架橋剤の存在下で化学架橋を行う必要がある。本発明の技術的解決手段を適用すると、架橋剤は、中心対称構造に類似する環状シラン化合物であり、その正負の電荷中心が重なっているので、非極性分子の化合物であり、「似ているもの同士は溶け合う(like dissolves like)」という原理に基づいて、この架橋剤と非極性ポリオレフィン樹脂との相溶性が向上する。一方、長鎖炭素置換基のR置換基は、ポリオレフィン樹脂の分子鎖との物理的な絡み合いを増加させ、ポリオレフィン樹脂との相溶性をさらに向上させる。そこで、以上の2つの要因により架橋剤のマイグレーションの問題を大幅に低減することができた。また、架橋剤分子中のR置換基により提供される末端二重結合を化学架橋点とすることで、熱、光、照射などの誘発作用によりポリオレフィン樹脂分子鎖と化学結合させることができ、より膨大な架橋構造を形成することができ、さらにポリオレフィン樹脂の耐クリープ性を向上させ、さらに、電子部品の寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
なお、本願中の実施例及び実施例の特徴は、矛盾することなく互いに組み合わされてもよい。以下、実施例を参照して、本発明について詳細に説明する。
背景技術において分析した通り、従来技術では、封止材料の耐熱性や耐引張性が低いことによる電子部品の短寿命化の問題が存在しており、当該問題を可決するために、本発明は、架橋剤、組成物、母材、封止用粘着性フィルム、及び電子部品を提供する。
【0010】
本願の代表的な実施形態では、以下の構造一般式の環状構造を有する架橋剤が提供される。R [CHSiO](ここで、nは、偶数であり、かつ、4≦n≦10であり、R及びRはいずれもSi原子に接続され、かつ、Rは、末端二重結合を持つ基であり、Rは、炭素数4~14の直鎖アルキル又は分岐アルキルであり、xは、1を超えてn未満の偶数であり、かつ、x+yはnに等しく、R同士は、2つずつパラ位に存在し、R同士は、2つずつパラ位に存在する。)
【0011】
ポリオレフィン樹脂材料は、封止材料の耐熱性や耐引張性を確保するために、通常、架橋剤の存在下で化学架橋を行う必要がある。本発明の架橋剤は、中心対称構造に類似する環状シラン化合物であり、その正負の電荷中心が重なっているので、非極性分子の化合物であり、「似ているもの同士は溶け合う(like dissolves like)」という原理に基づいて、この架橋剤と非極性ポリオレフィン樹脂との相溶性が向上する。一方、長鎖炭素置換基のR置換基は、ポリオレフィン樹脂の分子鎖との物理的な絡み合いを増加させ、ポリオレフィン樹脂との相溶性をさらに向上させる。そこで、以上の2つの要因により架橋剤のマイグレーションの問題を極めて大きく低減することができた。また、架橋剤分子中のR置換基により提供される末端二重結合を化学架橋点とすることで、熱、光、照射などの誘発作用によりポリオレフィン樹脂分子鎖と化学結合させることができ、より膨大な架橋構造を形成することができ、さらにポリオレフィン樹脂の耐クリープ性を向上させ、電子部品の寿命を延ばすことができる。
【0012】
本願の一実施例では、Rは、末端二重結合を持つC~C10の基であり、Rは、C~C14の直鎖アルキル又はC~C14の分岐アルキルである。
好ましくは、Rは、末端二重結合を持つC~C10の基であり、架橋剤分子とポリオレフィン樹脂との重合の効率や効果の向上により有利であり、C~C14の直鎖アルキル又はC~C14の分岐アルキルは、ポリオレフィン樹脂分子鎖との物理的な絡み合いの度合を向上させ、ポリオレフィン樹脂との相溶性をさらに向上させることにより有利である。
【0013】
本願の一実施例では、nは、偶数であり、かつ、4≦n≦8である。
nが大きいほど、架橋剤分子の環状骨格が大きく、架橋剤分子の大きな骨格によるポリオレフィン樹脂中の相溶性の劣化をできるだけ低減させることから、好ましくは、4≦n≦8、より好ましくは、nは4又は6であり、さらに好ましくは、nは4である。
架橋剤分子とポリオレフィン樹脂分子鎖との重合の効率をさらに向上させるために、好ましくは、Rは、ビニル、メタクリルオキシプロピル、アリルから選択されるいずれか1種である。
【0014】
好ましくは、Rは、C~C14の直鎖アルキル又はC~C14の分岐アルキルから選択され、Rは、オクチル、ノニル、デシル、イソオクチル、イソノニル、イソデシルから選択されるいずれか1種であり、架橋剤とポリオレフィン樹脂との相溶性の向上により有利である。
本願の別の代表的な実施形態では、重量部で、非極性ポリオレフィン樹脂100重量部と、架橋剤0.1~3重量部と、を含む組成物であって、架橋剤は前述の架橋剤である組成物が提供される。
【0015】
本発明の架橋剤は、中心対称構造に類似する環状シラン化合物であり、その正負の電荷中心が重なっているので、非極性分子の化合物であり、「似ているもの同士は溶け合う(like dissolves like)」という原理に基づいて、この架橋剤と非極性ポリオレフィン樹脂との相溶性が向上する。一方、長鎖炭素置換基のR置換基は、ポリオレフィン樹脂の分子鎖との物理的な絡み合いを増加させ、ポリオレフィン樹脂との相溶性をさらに向上させる。そこで、以上の2つの要因により架橋剤のマイグレーションの問題を極めて大きく低減することができた。また、架橋剤分子中のR置換基により提供される末端二重結合を化学架橋点とすることで、熱、光、照射などの誘発作用によりポリオレフィン樹脂分子鎖と化学結合させることができ、より膨大な架橋構造を形成することができ、従って、ポリオレフィン樹脂の耐クリープ性を向上させ、さらに上記組成物から得られた封止材料を用いることにより、電子部品の寿命を延ばすことができる。
【0016】
もちろん、当業者は、実用上の必要に応じて、上記の組成物に粘着付与助剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、無機充填剤等の添加剤を添加することもできるし、分解により水素奪取型ラジカルを発生させ得る化合物を上記組成物に含有させることもできるので、架橋剤分子とポリオレフィン樹脂分子との架橋効果をさらに高めることができるが、ここではくどくど述べない。
上記の架橋剤との相溶性がより優れた非極性ポリオレフィン樹脂をさらに提供するために、好ましくは、上記の非極性ポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体から選択されるいずれか1種又は複数種であり、エチレン・αオレフィン共重合体は、線形低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブチレン共重合体、エチレン・ペンテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体から選択されるいずれか1種又は複数種である。
【0017】
本願の別の代表的な実施形態では、組成物を含む母材であって、該組成物は上記の組成物である、母材が提供される。
上記の組成物を用いて得られた母材は、組成がより均一かつ安定的であり、後続の使用時に、優れた特性に加えて、より長い使用寿命を有する。
本願の更なる代表的な実施形態では、組成物中の各成分を混合して、溶融押出することにより得られる封止用粘着性フィルムであって、該組成物は前述組成物である封止用粘着性フィルムが提供される。
【0018】
上記の封止用粘着性フィルムは、単層型の粘着性フィルムであっても、多層型の粘着性フィルムであってもよい。多層型の粘着性フィルムである場合に、少なくとも1層には、本発明による組成物が含まれている。
上記の組成物で得られた封止用粘着性フィルムは、良い封止効果を具備する。
本願の更なる代表的な実施形態では、太陽電池、液晶パネル、電界放出デバイス、プラズマディスプレイデバイス、タッチスクリーンのうちのいずれか1種を含む電子部品であって、電子部品の少なくとも1つの面が封止用粘着性フィルムと接触し、封止用粘着性フィルムは前述封止用粘着性フィルムである電子部品が提供される。
【0019】
上記の封止用粘着性フィルムを用いて電子部品を固定、封止、保護することによって、外部要素による電子部品への影響をできるだけ低減させ、従って、電子部品の寿命を高めることができる。
以下、特定実施例及び比較例を参照して、本願の有益な効果について説明する。
以下、実施例及び比較例に係る架橋剤の製造方法は、架橋剤Aの合成ステップを参照することができる。
【0020】
0.1モルのメチルビニルジメトキシシラン、0.1モルのオクチルメチルジメトキシシランを250mLの丸底フラスコに投入し、次に、pH5の塩酸溶液0.2モルを加えた。50℃の油浴鍋にて5時間撹拌して反応させ、清澄溶液を得た。ロータリーエバポレータを用いて、副生成物であるメタノールを除去した後、無水硫酸マグネシウム5gを加えて、24時間乾燥し、濾過し、清澄液体を得た。最後に、炭素18が結合されたシリカゲルカラムにより分離して精製した。移動相はメタノールであり、流出した最後の一つの画分は架橋剤Aである。
GC-MSガスクロマトグラフィー質量分析装置を用いて検出し、具体的なパラメータを表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
架橋剤A:GC-MSでは、ピーク出現位置は18.4分間であり、分子量は516.29であった。
【0023】
【化1】
【0024】
架橋剤B:ここで、Rはオクチルである。GC-MSでは、ピーク出現位置は21.5分間であり、分子量は688.33であった。
【0025】
【化2】
【0026】
架橋剤C:ここでRはオクチルであり、Rはデシルである。GC-MSでは、ピーク出現位置は24.7分間であり、分子量は1088.65であった。
【0027】
【化3】
【0028】
架橋剤D:ここで、R、Rはオクチルであり、Rはデシルである。GC-MSでは、ピーク出現位置は29.2分間であり、分子量は1418.89であった。
【0029】
【化4】
架橋剤E:
【0030】
【化5】
【0031】
架橋剤:TAIC
実施例1
エチレン・オクテン共重合体(DOW Engage PV8669)100重量部、架橋剤A 1重量部(R [CHSiO](ここで、Rはビニル、Rはオクチルである。))を用意し、架橋剤がエチレン・オクテン共重合体粒子中に完全に吸収され、粒子の表面が乾燥するまで、この2種の物質をプラネタリーミキサーで混合した。乾燥した粒子を、アスペクト比32:1、スクリュー径150mm、ブッシュ温度60~90℃の単軸押出機で可塑化して押出した。次に、Tダイを用いて成膜して流延し、エンボスローラ及びゴムローラでプレスして、表面に特定の模様を形成し、その後、冷却ローラで室温に冷却し、巻き取って、厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムを得た。
【0032】
実施例2
実施例2では、実施例1と比較して、
はメタクリルオキシプロピルであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
実施例3
実施例3では、実施例1と比較して、
はアリルであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
【0033】
実施例4
実施例4では、実施例1と比較して、
はデシルであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
実施例5
実施例5では、実施例1と比較して、
はブチルであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
【0034】
実施例6
実施例6では、実施例1と比較して、
架橋剤Aは3重量部であり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
実施例7
実施例7では、実施例1と比較して、
架橋剤Aは0.1重量部であり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
【0035】
実施例8
実施例8では、実施例1と比較して、
エチレン・オクテン共重合体の代わりに低密度ポリエチレンが使用され、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
実施例9
実施例9では、実施例1と比較して、
エチレン・オクテン共重合体の代わりにエチレン・ブチレン共重合体が使用され、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
【0036】
実施例10
実施例10では、実施例1と比較して、
架橋剤は架橋剤Bであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
実施例11
実施例11では、実施例1と比較して、
架橋剤は架橋剤Cであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
【0037】
実施例12
実施例12では、実施例1と比較して、
架橋剤は架橋剤Dであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
【0038】
実施例13
エチレン・オクテン共重合体(DOW Engage PV8669)100重量部、架橋剤A 1重量部(R [CHSiO](ここで、Rはビニル、Rはオクチルである。))、炭酸tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシル(TBEC)0.5重量部を用意し、架橋剤がエチレン・オクテン共重合体粒子中に完全に吸収され、粒子の表面が乾燥するまで、これらの3種類の物質をプラネタリーミキサーで混合した。乾燥した粒子を、アスペクト比32、スクリュー径150mm、ブッシュ温度60~90℃の単軸押出機で可塑化して押出した。次に、Tダイを用いて成膜して流延し、エンボスローラ及びゴムローラでプレスし、表面に特定の模様を形成し、次に、冷却ローラで室温に冷却し、巻き取って、厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムを得た。
【0039】
実施例14
エチレン・オクテン共重合体(DOW Engage PV8669)100重量部、架橋剤A 1重量部(R [CHSiO](ここで、Rはビニル、Rはオクチルである。)、ベンゾフェノン0.5重量部を用意し、架橋剤がエチレン・オクテン共重合体粒子に完全に吸収され、粒子の表面が乾燥するまで、これらの3つの物質をプラネタリーミキサーで混合した。乾燥した粒子を、アスペクト比32、スクリュー径150mm、ブッシュ温度60~90℃の単軸押出機で可塑化して押出した。次に、Tダイを用いて成膜して流延し、エンボスローラ及びゴムローラでプレスし、表面に特定の模様を形成し、次に、冷却ローラで室温に冷却し、巻き取って、厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムを得た。
【0040】
比較例1
比較例1では、実施例1と比較して、
架橋剤Aは0.01重量部であり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
比較例2
比較例2では、実施例1と比較して、
架橋剤Aは4重量部であり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
【0041】
比較例3
比較例3では、実施例1と比較して、
架橋剤はTAICであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
比較例4
比較例4では、実施例1と比較して、
架橋剤は架橋剤Eであり、最終的に厚さ0.6mmの封止用粘着性フィルムが得られる点は相違する。
【0042】
(1)架橋度、引張強さの試験
実施例1~12、比較例1~4で得られた封止用粘着性フィルムを、それぞれ高エネルギー電子ビームを用いて放射し、放射線量は40KGyであった。実施例13の粘着性フィルムを、150℃のラミネータで18分間ラミネートした。実施例14の封止用粘着性フィルムを、中心波長365nmの紫外線ランプを用いて放射し、放射線量は5000mJ/cmであった。電子ビーム放射後の封止用粘着性フィルム、又は高温でラミネートされた封止用粘着性フィルム、又は紫外線放射後の封止用粘着性フィルム1gをそれぞれ秤量し、沸騰キシレンを用いてソックスレー抽出を5時間行い、次に、30メッシュのステンレスフィルタで濾過し、145℃の真空オーブンに入れて減圧乾燥を3時間行い、最後に、網上に残った物の重量をA(g)として算出した。架橋度(重量%)=A×100%という式により架橋度を算出した。
放射後の封止用粘着性フィルムについてラミネータを用いて表面の模様を除去し、その後、標準金型を用いて厚さ0.6mmのダンベル形の標準テストストリップに打ち抜き、ASTM D638-8基準に準じて、得られた封止用粘着性フィルムの引張強さ(単位MPa)を試験した。
【0043】
(2)助剤の吸収能
架橋剤A~E、TAICを用いて、70質量%のメタノール溶液50mLをそれぞれ調製して、使用に備えた。エチレン・オクテン共重合体ペレット(DOW EngagePV 8669)1gを秤量してステンレス鋼ケージに入れ、次に、ステンレス鋼ケージを前記メタノール溶液に浸漬し、粒子を溶液に完全に没入させた。環境温度を25℃に維持しながら、浸漬を4時間持続した。浸漬終了後、重合体粒子を取り出し、表面の液体をペーパータオルで拭き、重量を量り、値B(g)を得て、助剤の吸収能=(B-1)×100%とした。
上記の実施例1~14、比較例1~4で得た封止用粘着性フィルムの引張強さを表2に示す。
【0044】
【表2】
架橋剤A~E、TAICの助剤の吸収能を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
上記表3のデータから、本願の架橋剤は、ポリオレフィン樹脂との相溶性が、従来技術の架橋剤E、TAICとポリオレフィン樹脂との相溶性より明らかに良いことがわかった。
以上の説明から、本発明の上記の実施例は、以下の技術的効果を実現することが分かった。
【0047】
ポリオレフィン樹脂材料は、封止材料の耐熱性や耐引張性を確保するために、通常、架橋剤の存在下で化学架橋を行う必要がある。本発明の架橋剤は、中心対称構造に類似する環状シラン化合物であり、その正負の電荷中心が重なっているので、非極性分子の化合物であり、「似ているもの同士は溶け合う(like dissolves like)」という原理に基づいて、この架橋剤と非極性ポリオレフィン樹脂との相溶性が向上する。一方、長鎖炭素置換基のR置換基は、ポリオレフィン樹脂の分子鎖との物理的な絡み合いを増加させ、ポリオレフィン樹脂との相溶性をさらに向上させる。そこで、以上の2つの要因により架橋剤のマイグレーションの問題を極めて大きく低減することができた。また、架橋剤分子中のR置換基により提供される末端二重結合を化学架橋点とすることで、熱、光、照射などの誘発作用によりポリオレフィン樹脂分子鎖と化学結合させることができ、より膨大な架橋構造を形成することができ、さらにポリオレフィン樹脂の耐クリープ性を向上させ、さらに、電子部品の寿命を延ばすことができる。
【0048】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明は様々な変更及び変化が可能である。本発明の精神及び原則において行われる如何なる補正、均等置換や改良などは、すべて本発明の特許範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】