(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240614BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519987
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2022117727
(87)【国際公開番号】W WO2023226237
(87)【国際公開日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】202210562857.7
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520448452
【氏名又は名称】浙大城市学院
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】王 霄
(72)【発明者】
【氏名】魏 新江
(72)【発明者】
【氏名】魏 ▲綱▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 成▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】章 ▲麗▼莎
(72)【発明者】
【氏名】章 ▲書▼▲遠▼
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 靖昊
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲沢▼楠
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】本発明は垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法を提供する。
【解決手段】
前記方法は、まず頂力の構成部分を分析し、垂直リフト工法による工事に基づいて頂力が正面抵抗、配管と土壌との間の摩擦抵抗、立て管の自重及び立て管の上方の水の圧力の和に等しいべきであることを決定し、土壌体せん断破壊法を用いて異なる推進距離でのn値を逆算し、前記n値が円錐台形破壊領域の頂面の半径R
cと立て管の外半径rとの比であり、n値が推進距離に伴って増加する変化法則に従って土壌体せん断破壊法におけるせん断破壊モデル領域を補正し、計算されたn値に基づいて、垂直リフト工法による頂力の補正せん断破壊モデルと組み合わせて正面抵抗を決定し、土壌体せん断破壊法に基づいて立て管の自重、立て管の上方の水の圧力及び配管と土壌との間の摩擦抵抗を決定し、破壊領域の形成段階における頂力を補正し、補正係数mを決定し、最後に補正後の頂力を計算する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法であって、具体的には、以下のステップ1~ステップ6を含み、 前記ステップ1では、頂力の構成部分を分析することであって、垂直リフト工法による工事に基づいて、頂力が正面抵抗、配管と土壌との間の摩擦抵抗、立て管の自重及び立て管の上方の水の圧力の和に等しいことを決定し、 前記ステップ2では、土壌体せん断破壊法を用いて異なる推進距離でのn値を逆算し、前記n値が円錐台形破壊領域の頂面の半径R
cと立て管の外半径rとの比であり、n値が推進距離に伴って増加する変化法則に従って土壌体せん断破壊法におけるせん断破壊モデル領域を補正し、 前記ステップ3では、前記ステップ2における計算されたn値に基づいて、垂直リフト工法による頂力の補正せん断破壊モデルと組み合わせて正面抵抗を決定し、 前記ステップ4では、土壌体せん断破壊法に基づいて立て管の自重、立て管の上方の水の圧力及び配管と土壌との間の摩擦抵抗を決定し、 前記ステップ5では、破壊領域の形成段階における頂力を補正し、実測データ逆分析法を用いて施工時間が2日間及び3日間である場合の平均頂力を実測データとして、補正係数mを決定し、 前記ステップ6では、前記ステップ3において取得された正面抵抗、前記ステップ4において取得された立て管の自重、立て管の上方の水の圧力及び配管と土壌との間の摩擦抵抗、及び前記ステップ5において取得された補正係数mに基づいて、補正後の頂力を計算する ことを特徴とする垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【請求項2】
前記ステップ2において、円錐台形破壊領域の発展段階は具体的に、段階一が領域における土壌体の押圧段階であり、対応する推進距離範囲が0.04 L
0~0.2 L
0であり、前記L
0が立て管の全長であり、段階二がせん断破壊拡大段階であり、対応する推進距離範囲が0.2 L
0~0.68 L
0であり、段階三が破壊面貫通段階であり、対応する推進距離範囲が0.68 L
0~0.84 L
0であり、段階四が土壌体再分布段階であり、対応する推進距離範囲が0.84 L
0~ L
0である ことを特徴とする請求項1に記載の垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、施工時間が3日間である場合にn値が推進距離Lに伴う変化は、以下の式3に示され、
【数3】
(3)である ことを特徴とする請求項1に記載の垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【請求項4】
前記ステップ2において、施工時間が2日間である場合にn値が推進距離Lに伴う変化は、以下の式5に示され、
【数5】
(5)である ことを特徴とする請求項1に記載の垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【請求項5】
前記ステップ3は具体的に、以下の通りであり、 正面抵抗S
slは、以下の式6を満たし、
【数6】
(6) 式において、G
eがせん断破壊線範囲内の土壌体の自重であり、V
slが配管と土壌体との間のせん断力であり、 前記せん断破壊線範囲内の土壌体の自重及び配管と土壌体との間のせん断力を土壌体せん断破壊法に基づいて補正し、 円錐台形破壊領域の頂部の直径は推進距離Lの変化につれて変化し、せん断破壊線範囲内の土壌体の自重G
eを、以下の式7のように補正され、
【数7】
(7) 式において、γ
iが推進距離Lに伴って変化するi層目の土壌の重さであり、V
i(L)が推進距離Lに伴って変化するi層目の土壌の円錐台の体積であり、h
siが破壊領域内のi層目の土壌に対応する円錐台の底面の半径であり、R
i(L)が推進距離Lに伴って変化するi層目の土壌の円錐台の頂部の半径であり、r
iがi層目の土壌の円錐台の底部の半径であり、 V
slは、以下の式8のように補正され、
【数8】
(8)、 式において、c
iが破壊領域内のi層目の土壌の凝集力であり、
が破壊領域内のi層目の土壌の内部摩擦角であり、σ
iが破壊領域内のi層目の土壌の滑り面上の法線応力であり、K
0が静止土圧力係数であり、sinα
0(L)が推進距離Lに伴って変化するsinα
0値であり、cosα
0(L)が推進距離Lに伴って変化するcosα
0値である ことを特徴とする請求項3又は4に記載の垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【請求項6】
前記ステップ4は具体的に、以下の通りであり、 立て管の管セクションの自重G
sl及び立て管の上方の水の圧力W
slの計算公式は、以下の式9及び式10であり、
【数9】
(9)
【数10】
(10)、 式において、G
1がトップカバーの自重であり、G
2が立て管の1節目の管セクションの自重であり、n
slが推進中の立て管の管セクションの数であり、G
3が標準の管セクションの自重であり、γ
wが水の重さであり、h
wがリフトアップ過程におけるトップカバーの上方から海水面までの高さであり、Dが立て管の外径であって、単位がメートルであり、A
sが立て管の横断面の面積であり、 R
slは立て管の外表面と土壌体との間の摩擦抵抗を示し、計算公式は、以下の式11であり、
【数11】
(11) 式において、M
slが立て管の外表面の単位面積あたりの摩擦力であり、Lが推進距離である ことを特徴とする請求項1に記載の垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【請求項7】
前記ステップ5において、施工時間が3日間であって、推進距離が0m~1.1mである場合の補正係数mは、以下の式14を満たし、
【数14】
(14)である ことを特徴とする請求項1に記載の垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【請求項8】
前記ステップ5において、施工時間が2日間であって、推進距離が0~1.1mである場合の補正係数mは、以下の式15を満たし、
【数15】
(15)である ことを特徴とする請求項1に記載の垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【請求項9】
補正後の頂力の計算公式は、以下の式17であり、
【数17】
(17)、 ここで、G
slが立て管の自重であり、W
slが立て管の上方の水の圧力であり、R
slが配管と土壌との間の摩擦抵抗であり、S
slが正面抵抗であり、G
eがせん断破壊線範囲内の土壌体の自重であり、V
slが配管と土壌体との間のせん断力である ことを特徴とする請求項7又は8に記載の垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下トンネル工事の技術分野に属し、特に補正せん断破壊モデルに基づく垂直リフト工法による工事における頂力の理論的な計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、垂直リフト工法における頂力の理論的な計算は主に、(1)土圧理論的な計算法(文献[1])、(2)土壌体押抜き破壊法(文献[2])、(3)地盤地耐力法(文献[3])、(4)影響要素分析法(文献[4])の4つの研究方法がある。
【0003】
既存の頂力の理論的な方法をまとめて分析し(表1参照)、表1では、Fslが垂直リフト過程における頂力(kN)であり、Gslが立て管の自重(kN)であり、Wslが立て管の上方の水の圧力(kN)であり、Rslが配管と土壌との間の摩擦抵抗(kN)であり、Sslが正面抵抗(kN)である。
【0004】
表1から分かるように、既存の方法の欠点は主に、(1)としては、既存の方法において計算された最大頂力と実測された最大頂力とを比較したが、立て管の推進過程全体において頂力の計算値及び実測値を比較しないこと、(2)としては、既存の方法において頂力を計算できるが、一部の方法において頂力の最大値しか計算できず(文献[3])、残りの方法において頂力の推進過程全体における値を計算できるが、頂力の構成部分についての考慮が不完全であり、例えば頂力の構成部分における立て管と土壌との摩擦力のみを考慮し(文献[4])、立て管と土壌との摩擦力及び立て管の上方の水の圧力のみを考慮する(文献[1])ことなど、(3)としては、既存の方法において、土壌体せん断破壊法が頂力の4つの影響要素をより全面的に考慮したが、王寿生と葛春暉(文献[2])が土壌体せん断破壊法(以下、この方法が土壌体せん断破壊法と略称される)において該方法における計算値と実測値との相違を比較しないことである。従って、既存の方法を補正及び改良して、計算結果と実測値を比較研究することにより、正確且つ確実な頂力の理論的な計算公式を取得する必要がある。
【0005】
表1 既存の4つの垂直リフト工法による頂力の計算方法
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠陥に対して、本発明は垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術案は以下のとおりである。本発明は垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法を提供し、前記方法は具体的に、 頂力の構成部分を分析することであって、垂直リフト工法による工事に基づいて頂力が正面抵抗、配管と土壌との間の摩擦抵抗、立て管の自重及び立て管の上方の水の圧力の和に等しいべきであることを決定するステップ1と、 土壌体せん断破壊法を用いて異なる推進距離でのn値を逆算し、前記n値が円錐台形破壊領域の頂面の半径Rcと立て管の外半径rとの比であり、n値が推進距離に伴って増加する変化法則に従って土壌体せん断破壊法におけるせん断破壊モデル領域を補正するステップ2と、 ステップ2における計算されたn値に基づいて、垂直リフト工法による頂力の補正せん断破壊モデルと組み合わせて正面抵抗を決定するステップ3と、 土壌体せん断破壊法に基づいて立て管の自重、立て管の上方の水の圧力及び配管と土壌との間の摩擦抵抗を決定するステップ4と、 破壊領域の形成段階における頂力を補正し、実測データ逆分析法を用いて施工時間が2日間及び3日間である場合の平均頂力を実測データとして、補正係数mを決定するステップ5と、 ステップ3において取得された正面抵抗、ステップ4において取得された立て管の自重、立て管の上方の水の圧力及び配管と土壌との間の摩擦抵抗、並びにステップ5において取得された補正係数mに基づいて補正後の頂力を計算するステップ6と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有益な効果は、本発明は垂直リフト工法による工事において各本の立て管の施工時間の頂力への影響を革新的に考慮して、土壌体せん断破壊法を基に、垂直リフト工事における立て管の上方の破壊領域の変化法則を改めてまとめて、破壊領域及びその対応するリフトアップ距離を初めて定量分析することである。本発明に係る補正されたせん断破壊法は計算過程が簡単で、実際の垂直リフト工事における頂力の事前予測に使用でき、比較的高い実用性を有し、そして、検証によって、本特許の方法を用いて計算された垂直リフト工法による工事における頂力が実測値に比較的一致し、頂力はいずれも最大値に増加してから徐々に減少する傾向があることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は施工時間が3日間である場合の立て管のn値が推進距離に伴う変化法則を示す図である。
【
図2】
図2は施工時間が2日間である場合の立て管のn値が推進距離に伴う変化法則を示す図である。
【
図3】
図3はnの平均値が推進距離に伴う変化法則を示す図である。
【
図4】
図4は補正係数mが推進距離に伴う変化法則を示す図である。
【
図5】
図5は補正せん断破壊法により垂直リフト工事における頂力を求めるフローチャートである。
【
図6】
図6は補正土壌体せん断破壊法による計算値と既存の方法による計算値との比較(施工時間が3日間である)を示す図である。
【
図7】
図7は補正土壌体せん断破壊法による計算値と既存の方法による計算値との比較(施工時間が2日間である)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法を詳しく説明する。衝突しない限り、下記実施例及び実施形態における特徴は互いに組み合わせられてもよい。
【0011】
図1に示すように、本発明は垂直リフト工法による工事における頂力の補正せん断の理論的な計算方法を提供し、具体的に下記ステップを含む。
【0012】
ステップ1では、垂直リフト工法による工事に基づいて頂力の構成部分を決定する。
【0013】
垂直リフト工事において、頂力F
slが正面抵抗S
sl、配管と土壌との間の摩擦抵抗R
sl、立て管の自重G
sl、及び立て管の上方の水の圧力W
slの和に等しいべきであり、以下の式1として示されてもよい。
【数1】
(1)
【0014】
ステップ2では、土壌体せん断破壊法におけるせん断破壊モデル領域を補正する。
【0015】
土壌体せん断破壊法において、垂直リフト過程において土壌体のせん断破壊が発生し、且つ立て管の上方の土壌体せん断破壊領域は上が大きくて下が小さい円錐台として見なされ、そして、円錐台の上部の幅が1.2D~1.5Dであり、Dが立て管の直径であることを初めて提案した。
【0016】
推進距離の増加につれて、「円錐台形」破壊領域の頂面の幅は常に同じ値に維持するのではなく、ほぼ0から絶えず増加してから、その後で変化しないように維持する。本発明は破壊領域の発展を4つの段階に分け、段階一が領域における土壌体の押圧段階であり、対応する推進距離範囲を0.04 L0~0.2 L0(L0が立て管の全長である)とし、この段階において「小さな円錐台形」破壊領域を形成し、段階二がせん断破壊拡大段階であり、対応する推進距離範囲を0.2 L0~0.68 L0とし、この段階において「小さな円錐台形」破壊領域が絶えず発展し、段階三が破壊面貫通段階であり、対応する推進距離範囲を0.68 L0~0.84 L0とし、この段階が「小さな円錐台形」から「大きな円錐台形」までの破壊領域の過渡段階であり、段階四が土壌体再分布段階であり、対応する推進距離範囲を0.84 L0~ L0とし、この段階において「大きな円錐台形」破壊領域が絶えず発展する。
【0017】
ある垂直リフト工事において均質立て管において推進する8本の立て管(3~8番目、10番目、13番目の立て管)を工事の背景として、土壌体せん断破壊法によって異なる推進距離でのn値(nが円錐台形破壊領域の頂面の半径Rcと立て管の外半径rとの比である)を逆算し、最後にnが推進距離に伴って増加する変化法則を取得し、且つこれに基づいて土壌体せん断破壊法を補正する。
【0018】
工事における頂力の監視記録によれば、8本の立て管の施工時間及び最大頂力は表2に示される。
【0019】
表2 ある工事における均質土壌層内に推進する8本の立て管の施工時間及び最大頂力
【表2】
【0020】
表2から分かるように、立て管の最大頂力は施工日数に関連する。施工日数が2日間である場合、最大頂力の数値が比較的小さく、1280kN~1520kNにあり、施工日数が3日間である場合、最大頂力の数値が1640kN~2040kNにあり、施工日数が4日間である場合、最大頂力の数値が2160kNであって、8本の立て管のうちの最大値である。該垂直リフト工事において、1本の立て管の通常施工時間が2日間であり、この間に溶接継目が合格せずに差し戻しになると、施工時間が増加してしまう。8番目の立て管は工事において異常停止又は他の原因で施工時間が長すぎると推測する。土壌体せん断破壊法が異常停止時間の要素を考慮しないため、以下に分析する際に8番目の立て管を排除して、土壌体せん断破壊法によって残りの7本の立て管に対してnの逆分析計算を行って、その結果を
図1~
図2に示す。
【0021】
図1~
図2から分かるように、施工時間が2日間及び3日間である場合に逆算されたn値はいずれも増加してから変化しないように維持する傾向がある。また、全体的には、施工時間が3日間である場合のn値は施工時間が2日間である場合のn値よりも大きい。
【0022】
図3は異なる施工時間の場合にnの平均値が推進距離に伴う変化曲線である。
図3によれば、nの値を区分関数に示し、推進距離が0~1.1mである場合、nを1.01にし、推進距離が1.1m~4.7mである場合、nが推進距離に伴う変化を線形フィッティングし、施工時間が3日間及び2日間である場合の線形フィッティングの相関係数がそれぞれ0.9697及び0.9728であり、これは推進距離Lを用いれば推進距離が1.1m~4.7mである場合のn値をより良くフィッティングすることができると説明される。従って、本特許が選択した垂直リフト工事において、施工時間が3日間である場合にnがLに伴う変化は、以下の式2に示され、
【数2】
(2)、 それを他の工事に普及させれば、以下の式3に示され、
【数3】
(3)、 本特許が選択した垂直リフト工事において、施工時間が2日間である場合にnがLに伴う変化は、以下の式4に示され、
【数4】
(4)、 それを他の工事に普及させれば、以下の式5に示され、
【数5】
(5)。
【0023】
ステップ3では、ステップ2における計算されたn値に基づいて、垂直リフト工法による頂力の補正せん断破壊モデルと組み合わせて正面抵抗Sslの計算公式を決定し、 式(3)、式(5)におけるn値の計算公式によって正面抵抗Sslを補正する。
【0024】
正面抵抗S
slは、以下の式6を満たし、
【数6】
(6)、 式において、G
eがせん断破壊線範囲内の土壌体の自重であり、V
slが配管と土壌体との間のせん断力であり、この2つのパラメータが円錐台形破壊領域の形状に関連し、土壌体せん断破壊法を基に補正する必要がある。
【0025】
円錐台形破壊領域の頂部の直径が推進距離Lの変化につれて変化するため、G
eは、以下の式7に補正されてもよく、
【数7】
(7)、 式において、γ
iが推進距離Lに伴って変化するi層目の土壌の重さであり、V
i(L)が推進距離Lに伴って変化するi層目の土壌の円錐台の体積であって、n値に関連し、h
siが破壊領域内のi層目の土壌に対応する円錐台の底面の半径であり、R
i(L)が推進距離Lに伴って変化するi層目の土壌の円錐台の頂部の半径であり、r
iがi層目の土壌の円錐台の底部の半径であり、均質粗砂礫層において、R
i(L)=nr、r
i=rを満足する。
【0026】
V
slは、以下の式8に補正されてもよく、
【数8】
(8)、 式において、c
iが破壊領域内のi層目の土壌の凝集力であり、
が破壊領域内のi層目の土壌の内部摩擦角であり、σ
iが破壊領域内のi層目の土壌の滑り面上の法線応力であり、K
0が静止土圧力係数であり、sinα
0(L)が推進距離Lに伴って変化するsinα
0値であり、cosα
0(L)が推進距離Lに伴って変化するcosα
0値である。
【0027】
ステップ4では、土壌体せん断破壊法に基づいて立て管の自重G
sl、立て管の上方の水の圧力W
sl、配管と土壌との間の摩擦抵抗R
sl(kN)の計算公式を決定し、 立て管の管セクションの自重G
sl、立て管の上方の水の圧力W
sl、管セクションの周りと土壌体との摩擦抵抗R
slが土壌体せん断破壊領域からの影響を受けないため、計算公式はせん断破壊法と同様であって、変化しないように維持し、即ち、以下の式9及び式10に示され、
【数9】
(9)
【数10】
(10)、 式において、G
1がトップカバーの自重(kN)であり、G
2が立て管の1節目の管セクションの自重(kN)であり、n
slが推進中の立て管の管セクションの数であり、G
3が標準の管セクションの自重(kN)であり、γ
wが水の重さ(kN・m
3)であり、h
wがリフトアップ過程におけるトップカバーの上方から海水面までの高さ(m)であり、Dが立て管の外径(m)であり、A
sが立て管の横断面の面積(m
2)である。
【0028】
R
slとは立て管の外表面と土壌体との摩擦抵抗を示し、下記公式によって計算し、
【数11】
(11) 式において、M
slが立て管の外表面の単位面積あたりの摩擦力(kN/m
2)であり、Lが推進距離(m)である。
【0029】
ステップ5では、破壊領域の形成段階における頂力を補正し、 土壌体せん断破壊法において破壊領域は上が大きくて下が小さい円錐台であると仮定するため、nの最小値が1.01しか取られない。0m~1.1m推進距離範囲内に円錐台形破壊領域が依然として形成段階にあるため、nが1.01を取れば、せん断破壊線範囲内の土壌体の自重Ge及び配管と土壌体との間のせん断力Vを過大に計算することが明らかである。従って、0m~1.1m範囲内即ち0~0.088L0範囲内の頂力を補正する必要がある。
【0030】
円錐台形破壊領域の形成段階における頂力をより正確に計算するために、補正係数mを用いて推進距離が0m~1.1mである場合の頂力を補正し、補正後の計算頂力F
mは、以下の式12であると仮定し、
(12)、 本特許が選択した垂直リフト工事によれば、実測データ逆分析法を用いて、施工時間が2日間及び3日間である場合の平均頂力を基礎データとして、推進距離が0m~1.1mである場合の頂力の補正係数mを逆算して、その結果を
図4に示す。
図4に示すように、施工時間が3日間であって、推進距離が0m~1.1mである場合のmは、以下の式13を満たし、
【数13】
(13)、 それを他の工事に普及させれば、推進距離が0~0.088L
0である場合、mは、以下の式14を満たし、
【数14】
(14)、 施工時間が2日間であって、推進距離が0~1.1mである場合のmは、以下の式15を満たし、
【数15】
(15)、 それを他の工事に普及させれば、推進距離が0~0.088L
0である場合、mは、以下の式16を満たし、
【数16】
(16)。
【0031】
ステップ6では、ステップ1~5に基づいて垂直リフト工事における頂力F
slの計算公式を決定し、 式(14)又は式(16)を式(12)に代入して、補正土壌体せん断破壊法による頂力F
mの計算公式は、以下の式17であることを取得することができ、
【数17】
(17)、 まとめれば、本特許における垂直リフト工法による工事における頂力を計算するフローチャートは
図5を参照する。
【0032】
実施例1 楊春山など(2020)(文献[5],楊春山,何娜,劉力英,など.垂直リフト施工における上覆土壌層破壊形態の粒子流動のシミュレーション[J].道路,2020,65(3):356-360.)は垂直リフト工事に対して粒子流動のシミュレーションを行うことにより、配管の上覆土壌層のせん断破壊面が非線形特徴を有し、三次関数分布を満足することを提案した。それと同時に、土壌体せん断破壊領域の頂部の破壊範囲が2.97Dであることを提案し、王寿生及び葛春暉(2009)が提案した1.2D~1.5Dとの間に比較的大きな相違がある。楊春山など(2020)(文献[5])が提案したせん断破壊領域の頂部の破壊範囲2.97Dを土壌体せん断破壊法による公式に代入するものは、「楊春山を補正する王寿生法」と称される。
【0033】
ある垂直リフト工事によれば、本発明の方法を用いて該工事における垂直リフト工法による工事における頂力を計算して、土壌体せん断破壊法([文献2])、楊春山を補正する王寿生法(文献[5])及び実測頂力と比較して、
図6~
図7を取得することができる。
図6における実測頂力とは施工時間が3日間である場合の立て管の実測頂力の平均値を指し、
図7における実測頂力とは施工時間が2日間である場合の立て管の実測頂力の平均値を指し、具体的な数値は表3に示される。
【0034】
表3 均質土壌層内に推進する7本の立て管の頂力が推進距離に伴う変化
【表3】
【0035】
図6~
図7から分かるように、土壌体せん断破壊法、楊春山を補正する王寿生法による計算頂力が推進距離に伴う変化関数はいずれも単調に逓減する凹関数であり、推進距離が0mである場合に頂力が最大値であり、その後で推進距離の増加につれて頂力が絶えず減少し、実際の状況との相違が比較的大きい。本明細書における補正されたせん断破壊法は実測値に比較的一致し、頂力はいずれも最大値に増加してから徐々に減少する傾向がある。
【0036】
土壌体せん断破壊法による計算頂力は推進距離が2~10mである場合に実測頂力よりも遥かに小さく、実際の状況との相違が比較的大きい。それは、円錐台の頂部の直径の値範囲が1.2D~1.5Dであれば、過小となるためであり、これは楊春山(文献[5])が取得した結論に一致する。
【0037】
楊春山により補正される王寿生法による計算頂力は推進距離が約0m~3mである場合に実測頂力よりも大きく、推進距離が3m~12.5mである場合に実測頂力よりも小さい。楊春山を補正する王寿生法による計算頂力は施工時間が2日間である場合の平均頂力の実測値に一層近づき、以上から分かるように、頂力を計算する際に施工時間の影響は無視できない。
【0038】
要するに、本特許に係る垂直リフト工事における頂力を計算するための補正されたせん断破壊法は施工時間の影響を考慮することができ、且つ計算しやすく、容易に応用でき、技術的意味及び応用価値がある。
【0039】
本実施例によれば、本発明の方法に係る補正されたせん断破壊法は施工時間の影響を考慮することができ、且つ計算しやすく、容易に応用でき、垂直リフト工事における頂力の計算に理論参照を提供することができる。
【0040】
以上の実施例は単に本発明の設計思想及び特徴を説明するためのものであり、その目的は当業者が本発明の内容を理解して実施できるようにすることにあり、本発明の保護範囲は上記実施例に限定されるものではない。従って、本発明に開示される原理、設計構想に基づいて行われる等価変更又は修飾は、いずれも本発明の保護範囲内にある。
【国際調査報告】