(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】亜鉛製錬工程の副産物から硫酸マンガン一水和物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C01G 45/10 20060101AFI20240614BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20240614BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20240614BHJP
C22B 3/26 20060101ALI20240614BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C01G45/10
C22B3/06
C22B3/44 101A
C22B3/26
C22B47/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544033
(86)(22)【出願日】2023-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2023005959
(87)【国際公開番号】W WO2023211260
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0111576
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0155259
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519197594
【氏名又は名称】高麗亞鉛株式会社
【氏名又は名称原語表記】KOREA ZINC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン チル
【テーマコード(参考)】
4G048
4K001
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA07
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4K001AA16
4K001BA24
4K001DB02
4K001DB23
4K001DB26
(57)【要約】
本発明の一実施例による硫酸マンガン一水和物を製造する方法は、亜鉛湿式製錬工程で生成されたマンガン含有副産物を粉砕し洗浄する粉砕及び洗浄工程と、前記粉砕及び洗浄工程後の粉砕されたマンガン含有副産物を浸出する浸出工程と、前記浸出工程によって生成された浸出溶液を中和する中和工程と、前記中和工程によって中和した浸出溶液から不純物を除去する不純物除去工程と、溶媒抽出法を用いて前記不純物除去工程を経た工程液からマンガンを硫酸マンガン水溶液の形態で回収する溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出工程で生成された硫酸マンガン水溶液を蒸発及び濃縮して硫酸マンガン一水和物を生成する結晶化工程とを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガン含有副産物を粉砕し洗浄する粉砕及び洗浄工程と、
前記粉砕及び洗浄工程後の粉砕されたマンガン含有副産物を浸出する浸出工程と、
前記浸出工程によって生成された浸出溶液を中和する中和工程と、
前記中和工程によって中和した浸出溶液から不純物を除去する不純物除去工程と、
溶媒抽出法を用いて前記不純物除去工程を経た工程液からマンガンを硫酸マンガン水溶液の形態で回収する溶媒抽出工程と、
前記溶媒抽出工程で生成された硫酸マンガン水溶液を蒸発及び濃縮して硫酸マンガン一水和物を生成する結晶化工程と、を含む、硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項2】
前記粉砕されたマンガン含有副産物の平均粒度は1~25μmである、請求項1に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項3】
前記粉砕及び洗浄工程で、前記マンガン含有副産物を水で洗浄して水溶性不純物を除去する、請求項1または2に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項4】
前記粉砕及び洗浄工程で、洗浄のために投入される水の量は、重量比で前記マンガン含有副産物比1.5~3倍である、請求項3に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項5】
前記浸出工程は、無機酸及び還元剤を用いて行われる、請求項1または2に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項6】
前記浸出工程で、前記無機酸として硫酸が用いられ、前記還元剤として過酸化水素が用いられる、請求項5に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項7】
前記中和工程は、粉砕されたマンガン含有副産物、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つを用いて行われる、請求項1または2に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項8】
前記不純物除去工程は、重金属類不純物を除去するための第1不純物除去工程及び軽金属類不純物を除去するための第2不純物除去工程を含む、請求項1または2に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項9】
前記第1不純物除去工程は、沈殿剤として硫化ソーダ、水硫化ソーダ、硫化水素アンモニウム、硫化水素、及び硫化ナトリウムのうち少なくとも1つを投入して重金属類不純物の沈殿反応を通じて行われる、請求項8に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項10】
前記沈殿剤は、前記中和した浸出溶液に含まれている重金属比0.8~1.4の当量比で投入される、請求項9に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項11】
前記第2不純物除去工程は、沈殿剤としてフッ化ナトリウム、シュウ酸、シュウ酸ナトリウムのうち少なくとも1つを投入して軽金属類不純物の沈殿反応を通じて行われる、請求項8に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項12】
前記沈殿剤は、第1不純物除去液に含まれている軽金属比1~2.5の当量比で投入される、請求項11に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項13】
前記溶媒抽出工程は、
前記工程液に含まれているマンガンを有機相に抽出するローディング工程と、
マンガンが抽出された前記有機相を水で洗浄するスクラビング工程と、
前記スクラビング工程後に前記有機相に硫酸を投入してマンガンを硫酸マンガン水溶液の形態で回収するストリッピング工程と、を含む、請求項1または2に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項14】
前記スクラビング工程後の洗浄液は、前記浸出工程で投入される無機酸の希釈のために用いられる、請求項13に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項15】
前記結晶化工程は、60℃~100℃の温度で行われる、請求項1または2に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【請求項16】
前記マンガン含有副産物は、亜鉛湿式製錬工程の電解工程中に正極板の表面に形成されるマンガンクラスト及び電解槽の底に形成されるマンガンスライムのうち少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の硫酸マンガン一水和物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛の湿式製錬工程中に発生するマンガン含有副産物から硫酸マンガン一水和物(MnSO4・H2O)を製造する方法に関するもので、特に、リチウムイオン二次電池の正極活物質の原料として用いられる水準の高純度硫酸マンガン一水和物(MnSO4・H2O)を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車市場の急激な成長に伴い、電気自動車の電力供給源として用いられる二次電池、代表的には、リチウムイオン二次電池の需要も急増している。リチウムイオン二次電池は、正極、負極、分離膜及び電解液で構成されており、このうち正極の製造に硫酸マンガン一水和物が多く用いられている。具体的には、正極活物質は前駆体とリチウムの焼成により製造されているが、この時、硫酸マンガン一水和物が前駆体の主材料として用いられている。
【0003】
従来、硫酸マンガン一水和物は、低純度マンガン鉱石またはマンガン含有物に浸出工程及び結晶化工程を行う方法を通じて主に製造されていた。しかし、マンガン鉱石は、ほとんど中国やインドなどの特定国からの輸入に依存しており、当該国からのマンガン鉱石の供給が円滑でない場合、硫酸マンガン一水和物の需給が難しくなる問題点がある。
【0004】
一方、亜鉛の湿式製錬工程のうち、電解(electrolysis)工程では、マンガンが多量で含まれた副産物が発生する。例えば、亜鉛の湿式製錬工程のうち、電解工程では、正極板の表面にマンガンクラスト(crust)が形成され得、電解槽の底にはマンガンスライム(slime)が形成され得るが、このような副産物に含まれたマンガンはほとんど回収されることができずに捨てられ、資源のリサイクルの側面でも問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、亜鉛の湿式製錬工程中に発生したマンガンを含有する副産物から硫酸マンガン、特に、高純度硫酸マンガン一水和物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明の一実施例による硫酸マンガン一水和物を製造する方法は、マンガン含有副産物を粉砕し洗浄する粉砕及び洗浄工程と、前記粉砕及び洗浄工程後の粉砕されたマンガン含有副産物を浸出する浸出工程と、前記浸出工程によって生成された浸出溶液を中和する中和工程と、前記中和工程によって中和した浸出溶液から不純物を除去する不純物除去工程と、溶媒抽出法を用いて前記不純物除去工程を経た工程液からマンガンを硫酸マンガン水溶液の形態で回収する溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出工程で生成された硫酸マンガン水溶液を蒸発及び濃縮して硫酸マンガン一水和物を生成する結晶化工程とを含み得る。
【0007】
本発明の一実施例によれば、前記粉砕されたマンガン含有副産物の平均粒度は1~25μmであり得る。
【0008】
本発明の一実施例によれば、前記粉砕及び洗浄工程で、前記マンガン含有副産物を水で洗浄して水溶性不純物を除去することができる。
【0009】
本発明の一実施例によれば、前記粉砕及び洗浄工程で、洗浄のために投入される水の量は、重量比で前記マンガン含有副産物比1.5~3倍であり得る。
【0010】
本発明の一実施例によれば、前記浸出工程は、無機酸及び還元剤を用いて行われ得る。
【0011】
本発明の一実施例によれば、前記浸出工程で、前記無機酸として硫酸が用いられ、前記還元剤として過酸化水素が用いられ得る。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記中和工程は、粉砕されたマンガン含有副産物、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つを用いて行われ得る。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記不純物除去工程は、重金属類不純物を除去するための第1不純物除去工程及び軽金属類不純物を除去するための第2不純物除去工程を含み得る。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記第1不純物除去工程は、沈殿剤として硫化ソーダ、水硫化ソーダ、硫化水素アンモニウム、硫化水素、及び硫化ナトリウムのうち少なくとも1つを投入して重金属類不純物の沈殿反応を通じて行われ得る。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記沈殿剤は、前記中和した浸出溶液に含まれている重金属比0.8~1.4の当量比で投入され得る。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記第2不純物除去工程は、沈殿剤としてフッ化ナトリウム、シュウ酸、シュウ酸ナトリウムのうち少なくとも1つを投入して軽金属類不純物の沈殿反応を通じて行われ得る。
【0017】
本発明の一実施例によれば、前記沈殿剤は、第1不純物除去液に含まれている軽金属比1~2.5の当量比で投入され得る。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記溶媒抽出工程は、前記工程液に含まれているマンガンを有機相に抽出するローディング工程、マンガンが抽出された前記有機相を水で洗浄するスクラビング工程、及び前記スクラビング工程後に前記有機相に硫酸を投入してマンガンを硫酸マンガン水溶液の形態で回収するストリッピング工程を含み得る。
【0019】
本発明の一実施例によれば、前記スクラビング工程後の洗浄液は、前記浸出工程で投入される無機酸の希釈のために用いられ得る。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記結晶化工程は、60℃~100℃の温度で行われ得る。
【0021】
本発明の一実施例によれば、前記マンガン含有副産物は、亜鉛湿式製錬工程の電解工程中に正極板の表面に形成されるマンガンクラスト及び電解槽の底に形成されるマンガンスライムのうち少なくとも1つを含み得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、亜鉛の湿式製錬工程で発生するマンガン含有副産物から硫酸マンガン、特に、高純度硫酸マンガン一水和物を製造することができる。
【0023】
本発明による硫酸マンガン一水和物は、リチウム二次電池の正極活物質の原料として好適に用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例によるマンガン含有副産物から硫酸マンガン一水和物を製造する方法に関する工程図である。
【
図2】本発明の一実施例による溶媒抽出工程に関する工程図である。
【
図3】本発明の一実施例により生成された硫酸マンガン一水和物のXRD分析グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施例によるマンガン含有副産物から硫酸マンガン一水和物を製造する方法に関する工程図である。
【0027】
図1を参照すると、本発明の一実施例によるマンガン含有副産物から硫酸マンガン一水和物を製造する方法は、原料準備工程(S100)、粉砕及び洗浄工程(S200)、浸出工程(S300)、中和工程(S400)、不純物除去工程(S500)、溶媒抽出工程(S600)、及び結晶化工程(S700)を含み得る。
【0028】
[原料準備工程(S100)]
原料準備工程(S100)では、硫酸マンガン一水和物を製造するためのマンガン含有原料として亜鉛湿式製錬工程の電解工程で発生したマンガン含有副産物が準備され得る。具体的には、マンガン含有副産物は、亜鉛湿式製錬工程の電解工程で正極板の表面に形成されるマンガンクラスト及び電解槽の底に形成されるマンガンスライムのうち少なくとも1つを含み得る。マンガン含有副産物内で、マンガンは酸化マンガン(MnO2)の状態で含まれていることがある。
【0029】
マンガン含有副産物は、マンガン(Mn)以外の不純物を含んでいることがある。例えば、マンガン含有副産物は、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)等を不純物として含み得、その組成は表1の通りであり得る。
【表1】
(単位wt%)
【0030】
[粉砕及び洗浄工程(S200)]
原料準備工程(S100)の後、粉砕及び洗浄工程(S200)が行われ得る。
【0031】
粉砕及び洗浄工程(S200)では、マンガン含有副産物の粒度を低くするための粉砕工程が行われ得、また、マンガン含有副産物に含まれた不純物のうち少なくとも一部を除去するための洗浄工程が行われ得る。
【0032】
粉砕工程が行われる前のマンガン含有副産物の平均粒度は約700~900μmであってもよく、粉砕工程によって約1~25μm程度に低くなってもよい。マンガン含有副産物の平均粒度が大きい場合、反応性が低くて後続して行われる浸出工程(S300)で実質的に浸出が難しいこともある。これにより、浸出工程(S300)を行う前に粉砕工程を通じてマンガン含有副産物の平均粒度を低くすることによって浸出工程(S300)での浸出効率を上げることができる。例えば、粉砕工程はボールミル(ball mill)、ロッドミル(rod mill)等のミーリング機械を用いて行われ得る。
【0033】
本発明の一実施例によれば、洗浄工程は粉砕工程と同時に行われ得る。例えば、粉砕工程及び洗浄工程は湿式粉砕機械を用いて同時に行われ得、その後、固液分離をすることでマンガン含有副産物に含まれた不純物(Ca、K、Mg、Naなど)のうち一部を除去し得る。これとは異なり、他の実施例によれば、粉砕工程と洗浄工程は別個に行われ得る。洗浄工程では、マンガン含有副産物に含まれた不純物を効果的に除去するために、重量比でマンガン含有副産物比約1.5~3倍の水を用いてマンガン含有副産物を洗浄し得る。
【0034】
[浸出工程(S300)]
粉砕及び洗浄工程(S200)の後、浸出工程(S300)が行われ得る。
【0035】
浸出工程(S300)では、無機酸と還元剤を用いて粉砕されたマンガン含有副産物を浸出し得る。具体的には、無機酸としては、硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)のうち少なくとも1つを用いることができ、還元剤としては、過酸化水素(H2O2)、硫酸鉄(FeSO4)、シュウ酸(C2H2O4)のうち少なくとも1つを用いることができる。また、無機酸の場合、水で希釈した無機酸を用いることができる。本発明の一実施例によれば、硫酸と過酸化水素が無機酸と還元剤としてそれぞれ用いられることができ、この場合、下記式1の反応式を通じてマンガン含有副産物からマンガンが硫酸マンガン(MnSO4)の形態で浸出し、浸出溶液が生成され得る。
【0036】
MnO2+H2O2+H2SO4→MnSO4+2H2O+O2…(式1)
【0037】
浸出工程(S300)は、約60~70℃で行われ得る。浸出溶液の硫酸濃度は25~35g/Lであってもよく、pHは1以下であってもよい。浸出工程(S300)で、マンガンだけでなく、他の不純物もともに浸出することがある。例えば、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)等のような不純物がマンガンとともに浸出し、浸出溶液に含まれていることがある。
【0038】
浸出工程(S300)で得られる浸出溶液のマンガン濃度は約60~130g/Lであってもよい。このために重量比で粉砕されたマンガン含有副産物比約1.5~3倍の水を無機酸の希釈のために用いることができる。この時、無機酸の希釈のための水として、後述する溶媒抽出工程(S600)のスクラビング工程(S620)での洗浄液を活用することができる。これを通じて、洗浄液に含まれているマンガンを回収することができるので、マンガンの回収率を上げることができ、それと同時に水の使用量も低減することができる。
【0039】
[中和工程(S400)]
浸出工程(S300)の後、中和工程(S400)が行われ得る。
【0040】
中和工程(S400)では、浸出工程(S300)で生成された浸出溶液のpHを上げるために中和剤が投入され得る。前記中和剤としては、粉砕されたマンガン含有副産物、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)のうち少なくとも1つが用いられ得る。好ましくは、粉砕されたマンガン含有副産物を中和剤として用いることによって、別途に投入される中和剤の量を減らすことができるため、費用を節減することができ、浸出溶液内のマンガンの濃度を高めることができる。
【0041】
中和剤として粉砕されたマンガン含有副産物が用いられる場合、追加で投入されたマンガン含有副産物内に含まれている有価金属の溶解のために還元剤が追加で投入され得る。この場合、還元剤は、浸出反応(S300)と同一の還元剤が用いられ得る。
【0042】
中和工程(S400)が行われた後、中和した浸出溶液のpHは、約3~5であってもよく、好ましくは、約4~5であってもよい。
【0043】
[不純物除去工程(S500)]
中和工程(S400)の後、中和した浸出溶液内の不純物を除去するための不純物除去工程(S500)が行われ得る。不純物除去工程(S500)は、第1不純物除去工程及び第2不純物除去工程を含み得る。
【0044】
第1不純物除去工程は、重金属類不純物除去工程であってもよい。第1不純物除去工程では、中和した浸出溶液に硫化物(sulfide)系列の沈殿剤が投入され得る。具体的には、沈殿剤として、硫化ソーダ(Na2S)、水硫化ソーダ(NaSH)、硫化水素アンモニウム(NH4HS)、硫化水素(H2S)、硫化ナトリウム(Na2S)のうち少なくとも1つが用いられ得、これを通じて亜鉛、鉛、カドミウム、コバルト、ニッケル及び銅などの重金属類不純物が除去され得る。沈殿剤として水硫化ソーダが用いられる場合の反応式は、下記式2の通りである。
【0045】
2MSO4+2NaSH→Na2SO4+H2SO4+2MS↓(M=Zn,Pb,Cd,Co,Ni,Cu)…(式2)
【0046】
第1不純物除去工程は、約60~80℃で行われ得、沈殿剤は中和した浸出溶液に含まれている重金属比約0.8~1.4の当量比で投入され得る。第1不純物除去工程の後、第1不純物除去液に含まれた亜鉛、鉛、カドミウム、ニッケル、銅、コバルトの含量は、それぞれ5mg/L以下に低くなり得る。
【0047】
第1不純物除去工程が行われた後、第2不純物除去工程が行われ得、第2不純物除去工程は軽金属類不純物除去工程であり得る。第2不純物除去工程では、第1不純物除去液に軽金属類不純物の沈殿のための沈殿剤が投入され得る。具体的には、沈殿剤としては、フッ化ナトリウム(NaF)、シュウ酸(C2H2O4)、シュウ酸ナトリウム(Na2C2O4)のうち少なくとも1つが用いられ得、これを通じてカルシウム、マグネシウムなどの軽金属が除去されることができる。沈殿剤としてフッ化ナトリウム(NaF)が用いられ得る場合の反応式は、下記式3の通りである。
【0048】
MSO4+2NaF→Na2SO4+MF2↓(M=Ca,Mg)…(式3)
【0049】
第2不純物除去工程は、約70~90℃で行われ得、沈殿剤は第1不純物除去液に含まれている軽金属比約1~2.5の当量比で投入され得る。第2不純物除去工程の後、第2不純物除去液に含まれたカルシウム及びマグネシウムの含量は、それぞれ50mg/L以下に低くなり得る。
【0050】
[溶媒抽出工程(S600)]
不純物除去工程(S500)の後、溶媒抽出工程(S600)が行われ得る。
【0051】
溶媒抽出工程(S600)では、溶媒抽出法を用いてマンガンが不純物除去工程(S500)後の工程液(第2不純物除去液)から分離され得る。具体的には、不純物除去工程(S500)後の工程液には、マンガンの他にもナトリウム、カリウムなどの物質が含まれていることがあるが、溶媒抽出工程(S600)では溶媒抽出法を用いてマンガンを選択的に硫酸マンガン水溶液の形態で抽出し得る。
【0052】
図2は、本発明の一実施例による溶媒抽出工程(S600)に関する工程図である。
【0053】
図2をさらに参照すると、溶媒抽出工程(S600)は、ローディング(loading)工程(S610)、スクラビング(scrubbing)工程(S620)、及びストリッピング(stripping)工程(S630)を含み得る。
【0054】
[ローディング工程(S610)]
ローディング工程(S610)は、有機抽出剤(有機溶媒)を用いて不純物除去後に工程液に含まれているマンガンを有機相に抽出する工程である。有機抽出剤としては、Di-2-Ethylhexyl Phosphoric Acid,Mono-2-ethylhexyl(2-Ethylhexyl)phosphonate,Bis(2,4,4-TRIMETHYLPENTYL)Phosphinic Acidのうち少なくとも1つを用いることができる。
【0055】
この時、ローディング工程(S610)の反応温度は約30~50℃であってもよく、pHは約4~5であってもよい。前記pH範囲を合わせるために、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)のうち少なくとも1つが用いられ得る。
【0056】
マンガンの抽出が終わった後、有機相と水相は比重差による相分離が可能である。マンガンが分離された抽出濾液(水相)の場合、粉砕及び洗浄工程(S200)の工程液として活用され得、有機相は次の溶媒抽出工程(即ち、スクラビング工程(S620))に移動する。
【0057】
[スクラビング工程(S620)]
ローディング工程(S610)の後、マンガンが抽出された有機相に対してスクラビング工程(S620)が行われ得る。具体的には、マンガンが抽出された有機相を水で洗浄(washing)して有機相に残っているナトリウム、カリウムなどをはじめとする不純物を除去し得る。これを通じて有機相に含まれた不純物が除去され、高純度のマンガンが残るようになる。上述した通り、スクラビング工程(S620)後の洗浄液は、浸出工程(S300)で無機酸の希釈のために用いられ得る。
【0058】
[ストリッピング工程(S630)]
スクラビング工程(S620)の後、有機相に抽出されているマンガンを硫酸マンガン水溶液の形態で回収するストリッピング工程(S630)が行われ得る。具体的には、ストリッピング工程(S630)では、スクラビング工程(S620)により不純物が除去された有機相に、希釈された硫酸を投入して有機相に抽出されているマンガンを硫酸マンガン(MnSO4)水溶液の形態で回収することができる。
【0059】
[結晶化工程(S700)]
溶媒抽出工程(S600)の後、結晶化工程(S700)が行われ得る。
【0060】
結晶化工程(S700)では、溶媒抽出工程(S600)で回収された硫酸マンガン水溶液を蒸発及び濃縮して硫酸マンガン一水和物を生成し得る。硫酸マンガン水溶液を蒸発及び濃縮する工程は、約50℃~120℃で行われ得、好ましくは、約60℃~100℃で行われ得る。硫酸マンガン水溶液を蒸発及び濃縮する工程の温度が50℃より低い場合、硫酸マンガン一水和物ではなく、他の種類の硫酸マンガン水和物が生成され得る。具体的には、0℃~10℃の場合には、硫酸マンガン7水和物が生成され得、10℃~50℃の場合には、硫酸マンガン4水和物が生成され得る。
【0061】
図3は、本発明の一実施例により生成された硫酸マンガン一水和物のXRD分析グラフである。
【0062】
図3を参照すると、本発明の一実施例により生成された硫酸マンガン一水和物のXRDピーク(10)及びJCPDSの硫酸マンガン一水和物XRDピーク(20)が示されており、本発明の一実施例により生成された硫酸マンガン一水和物のXRDピーク(10)及びJCPDSの硫酸マンガン一水和物XRDピーク(20)の主なピークが一致することを確認することができる。
【0063】
本発明の一実施例による硫酸マンガン一水和物は、マンガンの含量が32.0wt%以上であり、不純物の含量が下記表2の通りであり得る。
【表2】
(単位g/t)
【0064】
これにより、本発明の一実施例による硫酸マンガン一水和物は、リチウム二次電池の正極活物質の原料として好適に用いられることができる。
【0065】
[実施例]
(原料準備工程)
マンガンが含まれている原料物質を準備する段階であって、本実施例では、マンガン40%、鉛2.2%、亜鉛1.9%、カルシウム2.8%などが含まれている亜鉛製錬工程の電解工程で発生したマンガン含有副産物を原料物質として用いた。
【0066】
(粉砕及び洗浄工程)
次いで、浸出効率を向上させるためにマンガン含有副産物を粉砕し、洗浄を通じて水溶性不純物であるマグネシウム、ナトリウム、亜鉛などの不純物を除去した。この時、主な不純物の除去率は、マグネシウム57%、ナトリウム53%、亜鉛83%であった。粉砕前のマンガン含有副産物の平均粒度は約800μmであり、1時間粉砕した後の平均粒度は約3.4μmであった。
【0067】
(浸出工程)
次いで、前記粉砕されたマンガン含有副産物0.5kg、35%過酸化水素300mlを投入して60℃で2時間30分溶解して、硫酸濃度30g/L、マンガン濃度70g/L浸出溶液を得た。
【0068】
(中和工程)
次いで、前記浸出溶液に粉砕されたマンガン含有副産物0.1kg及び35%過酸化水素350mlを投入し、60℃で5時間中和させてpHを4に高めた。主な元素の浸出率は、マンガン99.7%、カルシウム16%、カリウム98%、鉛0.3%、亜鉛99.8%と確認した。
【0069】
(不純物除去工程)
次いで、前記中和した溶液内に存在する重金属類不純物を除去するために、水硫化ソーダ(NaSH)1.2当量を投入し、60℃で2時間反応させて硫化物系沈殿を通じて0.1mg/L以下に除去し、続いて、軽金属類不純物を除去するために、フッ化ナトリウム(NaF)2.0当量を投入し、70℃で2時間反応させてフローリン系沈殿(CaF2)で50mg/L以下に除去した。
【0070】
この時、主な不純物の除去率は、鉛99.3%、亜鉛99.8%、カルシウム93.8%と確認した。
【0071】
(溶媒抽出工程)
(ローディング工程)
次いで、前記不純物が除去された溶液からマンガンを回収するために、40℃で、30%D2EHPA有機抽出剤を用いてマンガンを抽出した。この時、pHを4.5に維持するために、水酸化ナトリウム(NaOH)を投入した。マンガンを有機相に抽出した後、水相に残存するマンガンの含量は0.2g/Lであった。
【0072】
(スクラビング工程)
次いで、有機相のマンガンを40℃で水で洗浄させて不純物を除去した。この時、除去された主な不純物の含量は、カリウム30mg/L、マグネシウム1.0mg/L、ナトリウム350mg/Lであった。
【0073】
(ストリッピング工程)
次いで、洗浄された有機相のマンガンを水相に回収するために、希釈された硫酸を投入して、水相に抽出した。この時、硫酸マンガン水溶液の形態で回収されたマンガンの濃度は83g/Lであった。
【0074】
(結晶化工程)
次いで、回収された硫酸マンガン水溶液を100℃で結晶化して、硫酸マンガン一水和物(純度32.0wt%)を得た。硫酸マンガン一水和物の組成は、下記表3の通りであった。
【表3】
(単位g/t、Mnを除く)
【0075】
[比較例]
以下では、実施例との比較のための比較例を説明する。比較例1~3において、下記に記載された工程条件以外の他の条件は、前記実施例と同一にした。
【0076】
[比較例1]
粉砕及び洗浄工程で、マンガン含有副産物に含まれた不純物を除去するために、マンガン含有副産物の量と同一の量(1倍)の水で洗浄した。この時、主な不純物の除去率は、マグネシウム49%、ナトリウム5%、亜鉛5%であった。
【0077】
[比較例2]
第1不純物除去工程で、水硫化ソーダを0.75当量入れて重金属類不純物を除去した。この時、主な不純物の除去率は、鉛は98.7%、亜鉛は65.2%であった。
【0078】
[比較例3]
第2不純物除去工程で、フッ化ナトリウムを当量比で0.5倍及び3倍入れて軽金属類不純物を除去した。この時、主な不純物であるカルシウムの除去率は、フッ化ナトリウムの当量比が0.5倍である時に52%、フッ化ナトリウムの当量比が3倍である時に84%であった。
【国際調査報告】