(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】車両及びその荷重分布の識別方法、装置並びに媒体、電子機器
(51)【国際特許分類】
B60W 40/13 20120101AFI20240614BHJP
B60W 40/11 20120101ALI20240614BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20240614BHJP
G01G 19/12 20060101ALI20240614BHJP
B60G 17/018 20060101ALI20240614BHJP
B60T 8/172 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
B60W40/13
B60W40/11
G01M17/007 J
G01G19/12 Z
B60G17/018
B60T8/172 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556719
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2022096177
(87)【国際公開番号】W WO2022267840
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110687601.4
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】王冠文
(72)【発明者】
【氏名】廖▲銀▼生
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼宏洲
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
3D301
【Fターム(参考)】
3D241DB47
3D246EA01
3D246GA22
3D246GB01
3D246GB02
3D246GB11
3D246HA84A
3D246HA86A
3D246HA98C
3D246HC03
3D301AA05
3D301AA18
3D301EA14
3D301EA22
3D301EA31
(57)【要約】
本願は、車両及びその荷重分布の識別方法、装置並びに媒体、電子機器を開示しており、識別方法は、車両の車速及び縦方向の加速度を取得するステップと、縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さい場合、車両の実際の駆動力を取得するステップと、実際の駆動力と車速に基づいて、車両の実際のピッチ角を得るステップと、実際のピッチ角に基づいて、車両の荷重分布状況を得るステップと、を含む。該識別方法は、車両のピッチ角を算出することによって車両の前後車軸の荷重の差分を識別することができるため、車両のサスペンションに荷重センサ、車高センサなどの専用センサを取り付ける必要がなく、車両の荷重分布を識別することができ、車両の荷重分布を識別するコストを低減し、適用範囲が広く、車種に限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速及び縦方向の加速度を取得するステップと、
前記縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さい場合、前記車両の実際の駆動力を取得するステップと、
前記実際の駆動力と前記車速に基づいて、前記車両の実際のピッチ角を得るステップと、
前記実際のピッチ角に基づいて、前記車両の荷重分布状況を得るステップと、を含む、ことを特徴とする車両の荷重分布の識別方法。
【請求項2】
前記実際の駆動力と前記車速に基づいて、前記車両の実際のピッチ角を得るステップは、
前記車速に基づいて、前記車速に対応する基準駆動力を得て、基準ピッチ角を取得するステップと、
前記実際の駆動力、前記基準駆動力及び前記基準ピッチ角に基づいて、前記実際のピッチ角を得るステップと、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の荷重分布の識別方法。
【請求項3】
前記実際の駆動力、前記基準駆動力及び前記基準ピッチ角に基づいて、前記実際のピッチ角を得るステップは、
前記基準駆動力と前記実際の駆動力との第1差分値を算出するステップと、
前記車両の質量を取得して、前記第1差分値と前記質量との第1比率を算出するステップと、
前記第1比率と前記基準ピッチ角とを加算して、前記実際のピッチ角を得るステップと、
を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の荷重分布の識別方法。
【請求項4】
前記実際の駆動力、前記基準駆動力及び前記基準ピッチ角に基づいて、前記実際のピッチ角を得るステップは、
複数の前記実際の駆動力の平均値を算出し、平均駆動力を得るステップと、
前記基準駆動力と前記平均駆動力との第2差分値を算出するステップと、
前記車両の質量を取得して、前記第2差分値と前記質量との第2比率を算出するステップと、
前記第2比率と前記基準ピッチ角とを加算して、前記実際のピッチ角を得るステップと、
を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の荷重分布の識別方法。
【請求項5】
前記実際のピッチ角に基づいて、前記車両の荷重分布状況を得るステップは、
前記車両の軸間距離、フロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性を取得するステップと、
前記実際のピッチ角、前記軸間距離、前記フロントサスペンションの剛性、前記リアサスペンションの剛性に基づいて、前記車両の荷重分布状況を算出するステップと、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の荷重分布の識別方法。
【請求項6】
前記車両の荷重分布状況は、下記式によって算出され、
【数1】
ここで、θは前記実際のピッチ角であり、Lは前記軸間距離であり、k
1、k
2はそれぞれ前記フロントサスペンションの剛性、前記リアサスペンションの剛性であり、F
1、F
2はそれぞれ前記車両の前車軸荷重、後車軸荷重である、請求項1に記載の車両の荷重分布の識別方法。
【請求項7】
車両の車速及び縦方向の加速度を取得する第1取得モジュールと、
前記縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さい場合、前記車両の実際の駆動力を取得する第2取得モジュールと、
前記実際の駆動力と前記車速に基づいて、前記車両の実際のピッチ角を得る算出モジュールと、
前記実際のピッチ角に基づいて、前記車両の荷重分布状況を得る識別モジュールと、を含む、ことを特徴とする車両の荷重分布の識別装置。
【請求項8】
コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、請求項1~6のいずれか一項に記載の車両の荷重分布の識別方法を実現する、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項9】
コンピュータプログラムが記憶されているメモリとプロセッサとを含む電子機器であって、前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、請求項1~6のいずれか一項に記載の車両の荷重分布の識別方法を実現する、ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項7に記載の車両の荷重分布の識別装置、又は、請求項9に記載の電子機器を含む、ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年6月21日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110687601.4で、出願名称が「車両及びその荷重分布の識別方法、装置並びに媒体、電子機器」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、車両の技術分野に関し、特に、車両及びその荷重分布の識別方法、装置並びに媒体、電子機器に関する。
【背景技術】
【0003】
車両の前後車軸の荷重分布を測定するとき、一般的には、サスペンションに荷重センサ又は少なくとも2つの車高センサを取り付ける必要がある。前述のセンサのサスペンションへの取り付けを回避するために、関連技術では、タイヤの異なる法線荷重下での変形に基づいて、前後の荷重レベルを間接的に推定することが提案されている。具体的には、
図1に示すように、1は、車輪速信号であり、アンチロックブレーキシステムの車輪速センサから得ることができる。2と3でそれぞれ前後輪の車輪速信号をスペクトル分析し、4で共振エネルギーを比較して荷重分布を推定する。
図2は、一例の共振エネルギーの荷重による変化の状況を示す。5は、後車軸の共振エネルギーの特性値(共振エネルギー/共振周波数)であり、6は、前車軸の共振エネルギーの特性値である。車両は、7で後車軸の荷重を増加させ、その後、特性値が増加したことを検出することで、荷重分布の変化を識別する。
【0004】
しかしながら、該技術では、前後輪の共振スペクトルの特性を識別する必要があり、算出量が大きく、かつ大部分の前輪駆動車両の後輪には明らかな共振特性がなく(又は一部の車速区間のみで識別できる)、対応する共振エネルギー特性値を取得することができない。したがって、該技術の適用範囲は限られている。
【発明の概要】
【0005】
本願は、関連技術における技術的課題の1つを少なくともある程度解決しようとする。そのため、本願の第1目的は、車両の荷重分布を識別するコストを低減し、適用範囲を向上させる、車両の荷重分布の識別方法を提供することである。
【0006】
本願の第2目的は、車両の荷重分布の識別装置を提供することである。
【0007】
本願の第3目的は、コンピュータ可読記憶媒体を提供することである。
【0008】
本願の第4目的は、電子機器を提供することである。
【0009】
本願の第5目的は、車両を提供することである。
【0010】
上記目的を達成するために、本願の第1態様の実施例に係る車両の荷重分布の識別方法は、前記車両の車速及び縦方向の加速度を取得するステップと、前記縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さい場合、前記車両の実際の駆動力を取得するステップと、前記実際の駆動力と前記車速に基づいて、前記車両の実際のピッチ角を得るステップと、前記実際のピッチ角に基づいて、前記車両の荷重分布状況を得るステップと、を含む。
【0011】
本願の一実施例によれば、前記実際の駆動力と前記車速に基づいて、前記車両の実際のピッチ角を得るステップは、前記車速に基づいて、前記車速に対応する基準駆動力を得て、基準ピッチ角を取得するステップと、前記実際の駆動力、前記基準駆動力及び前記基準ピッチ角に基づいて、前記実際のピッチ角を得るステップと、を含む。
【0012】
本願の一実施例によれば、前記実際の駆動力、前記基準駆動力及び前記基準ピッチ角に基づいて、前記実際のピッチ角を得るステップは、前記基準駆動力と前記実際の駆動力との第1差分値を算出するステップと、前記車両の質量を取得して、前記第1差分値と前記質量との第1比率を算出するステップと、前記第1比率と前記基準ピッチ角とを加算して、前記実際のピッチ角を得るステップと、を含む。
【0013】
本願の一実施例によれば、前記実際の駆動力、前記基準駆動力及び前記基準ピッチ角に基づいて、前記実際のピッチ角を得るステップは、複数の前記実際の駆動力の平均値を算出し、平均駆動力を得るステップと、前記基準駆動力と前記平均駆動力との第2差分値を算出するステップと、前記車両の質量を取得して、前記第2差分値と前記質量との第2比率を算出するステップと、前記第2比率と前記基準ピッチ角とを加算して、前記実際のピッチ角を得るステップと、を含む。
【0014】
本願の一実施例によれば、前記実際のピッチ角に基づいて、前記車両の荷重分布状況を得るステップは、前記車両の軸間距離、フロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性を取得するステップと、前記実際のピッチ角、前記軸間距離、前記フロントサスペンションの剛性、前記リアサスペンションの剛性に基づいて、前記車両の荷重分布状況を算出するステップと、を含む。
【0015】
本願の一実施例によれば、前記車両の荷重分布状況は、下記式によって算出され、
【数1】
ここで、θは前記実際のピッチ角であり、Lは前記軸間距離であり、k
1、k
2はそれぞれ前記フロントサスペンションの剛性、前記リアサスペンションの剛性であり、F
1、F
2はそれぞれ前記車両の前車軸荷重、後車軸荷重である。
【0016】
上記目的を達成するために、本願の第2態様の実施例に係る車両の荷重分布の識別装置は、前記車両の車速及び縦方向の加速度を取得する第1取得モジュールと、前記縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さい場合、前記車両の実際の駆動力を取得する第2取得モジュールと、前記実際の駆動力と前記車速に基づいて、前記車両の実際のピッチ角を得る算出モジュールと、前記実際のピッチ角に基づいて、前記車両の荷重分布状況を得る識別モジュールと、を含む。
【0017】
上記目的を達成するために、本願の第3態様の実施例に係るコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体は、前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、上記車両の荷重分布の識別方法を実現する、ことを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するために、本願の第4態様の実施例に係るコンピュータプログラムが記憶されているメモリとプロセッサとを含む電子機器は、前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、上記車両の荷重分布の識別方法を実現する。
【0019】
上記目的を達成するために、本願の第5態様の実施例に係る車両は、上記実施例に係る車両の荷重分布の識別装置、又は、上記実施例に係る電子機器を含む。
【発明の効果】
【0020】
本願の実施例に係る車両及びその荷重分布の識別方法、装置並びに媒体、電子機器は、車両のピッチ角を算出することによって車両の前後車軸の荷重の差分を識別することができるため、車両のサスペンションに荷重センサ、車高センサなどの専用センサを取り付ける必要がなく、車両の荷重分布を識別することができ、車両の荷重分布を識別するコストを低減し、適用範囲が広く、車種に限定されない。
【0021】
本願の追加の態様及び利点は、一部が以下の説明において示され、一部が以下の説明において明らかになるか又は本願の実施により把握される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】関連技術における車両の荷重分布を識別する概略構成図である。
【
図2】関連技術における共振エネルギーの荷重による変化の概略図である。
【
図3】本願の実施例に係る車両の荷重分布の識別方法のフローチャートである。
【
図4】本願の一実施例に係る車両の荷重分布を識別することを示す概略構成図である。
【
図5】本願の一実施例に係るピッチ角と車両前後車軸の荷重との関係の概略図である。
【
図6】本願の一実施例に係る加速度センサの測定値と車両の実際の縦方向の加速度との関係の概略図である。
【
図7】本願の実施例に係る車両の荷重分布の識別装置の構造ブロック図である。
【
図8】本願の実施例に係る電子機器の構造ブロック図である。
【
図9】本願の一実施例に係る車両の構造ブロック図である。
【
図10】本願の他の実施例に係る車両の構造ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願の実施例を詳細に説明し、上記実施例の例は、図面に示され、全体を通して同一又は類似の符号は、同一又は類似の部品、或いは同一又は類似の機能を有する部品を示す。以下、図面を参照して説明される実施例は、例示的なものに過ぎず、本願を解釈するためのものであり、本願を限定するものであると理解すべきではない。
【0024】
以下、
図3~10を参照しながら、本願の実施例に係る車両及びその荷重分布の識別方法、装置並びに媒体、電子機器を説明する。
【0025】
まず、本願の実施例に係る車両の荷重分布の識別原理について説明する。
【0026】
図5に示すように、前車軸荷重F
1と後車軸荷重F
2は、それぞれフロントサスペンションとリアサスペンションに加えられ、サスペンションの高さを変化させることで、ピッチ角を変化させることができる。該原理に基づいて、ピッチ角を変化させることにより、前車軸荷重と後車軸荷重との差分値を推定することができる。
【0027】
具体的には、車両パラメータから車両のフロントサスペンションの剛性k
1、リアサスペンションの剛性k
2、軸間距離Lを取得すると、前後車軸の荷重とピッチ角θとの関係は、下記式となる。
【数2】
【0028】
一例として、フロントサスペンションの剛性とリアサスペンションの剛性がほぼ等しく、kとすると、ピッチ角θと前後車軸の荷重との差分ΔFは、以下の正比例関係に簡略化することができる。
【数3】
【0029】
したがって、ピッチ角を推定すれば、前後車軸の荷重の差分を得ることができる。
【0030】
図6は、加速度センサの測定値と車両の実際の縦方向の加速度との関係を示す。
図6に示すように、車両が一定の勾配を有する道路90を走行する場合、加速度センサ70は、車体80に固定されているため、その縦方向(車両走行方向)に沿った水平度は、ピッチ角と道路勾配との共同の影響を受ける。
図6では、加速度センサの慣性アセンブリと水平面との縦方向夾角をαとし、道路勾配角をiとし、車両のピッチ角をθとすると、各角度の間には、α=θ+iの関係がある。
【0031】
加速度センサは、水平を保持していないため、測定される縦方向の加速度asは、下記式のように、車両の縦方向の加速度avと重力加速度のセンサ測定方向での成分を含み、
as=avcosθ+gsinα
上記式は、as=av+gi+gθと近似できる。
【0032】
車両走行時の縦方向の動力学方程式は、以下のとおりである。
Ft=Fw+Ff+mgi+δmav
ここで、Ftは駆動力であり、Fwは空気抵抗であり、Ffは転がり抵抗であり、mは車両の質量であり、gは重力加速度であり、iは勾配であり、δは回転質量換算係数である。より高いギアポジション(より小さい変速比)では、回転質量換算係数が1に近づく。このとき、自動車の縦方向の動力学方程式は、以下のように簡略化される。
Ft=Fw+Ff+m(av+gi)
【0033】
加速度センサにより測定された加速度asを上記式に代入すると、下記式が得られる。
Ft=Fw+Ff+m(as-gθ)
【0034】
as=0の場合、上記式から下記式が得られる。
Ft=Fw+Ff+mgθ
【0035】
転がり抵抗F
fは車速との関係が弱く、空気抵抗F
wは、車速と2次の関係に近似し、かつその係数(即ち、空気抵抗係数)は、車両外形のみに関係する。したがって、転がり抵抗の違いを無視すると、異なる荷重を有する同一の車両は、車速が同じであるか又は近いときに受ける抵抗力F
w+F
fが同じであると考えられる。したがって、同一の車両が同じ車速で異なる荷重状態で走行しているときのピッチ角の差分は、下記式によって算出される(式中、F
t,1は荷重状態1がa
s=0のときの駆動力であり、F
t,2は荷重状態2がa
s=0のときの駆動力である)。
【数4】
【0036】
上記原理に基づいて、本願は、車両の荷重分布の識別方法を提供する。
図3は、本願の実施例に係る車両の荷重分布の識別方法のフローチャートである。
【0037】
なお、該車両の荷重分布の識別方法を実行する前に、荷重分布と基準駆動力F0及び基準ピッチ角θ0との対応関係モデルを定める必要がある。具体的には、車両がある既知の荷重分布にある状態で、基準駆動力F0及び基準ピッチ角θ0を定めることができる。
【0038】
具体的には、1つの時間間隔を設定して、様々な車速で運転するように車両を制御するとき、加速度センサ10は、設定された時間間隔で縦方向の加速度を取得することができる。そして、駆動力統計モジュール30(再帰的最小二乗RLS、Kalman又は他の形式のフィルタであってもよい)は、加速度閾値よりも小さい縦方向の加速度測定値(近似)に対応する駆動力を算出し、駆動力は、動力源(車両の駆動モータ)が出力するトルクに伝動システムの変速比を乗算して得られる。更に、駆動力の平均値を算出し、各車速に対応する基準駆動力を得ることができる。好ましくは、N個の駆動力を選択して平均値を算出することができ、Nは、1よりも大きい整数であり、その値は、3、4、5などであってもよい。加速度閾値は実験によって定めることができ、車種によって加速度閾値が異なってもよい。
【0039】
現在の車速に応じて、駆動力統計モジュール30から出力された基準駆動力F0を車速ごとに分けられた記憶モジュール40の異なるユニットに記憶することができる。また、現在の荷重分布に基づいて算出(又は直接測定)された基準ピッチ角のデータθ0を記憶モジュール40に記憶することもできる。
【0040】
図3に示すように、車両の荷重分布の識別方法は、以下のステップS31~S34を含む。
【0041】
S31では、車両の車速及び縦方向の加速度を取得する。
【0042】
具体的には、車両の縦方向の加速度a
sは、
図4に示す加速度センサ10によって収集されてもよく、車両の車速は、車速センサによって収集されてもよく、加速度センサと車速センサは、いずれも車体に取り付けることができる。好ましくは、車速は、車両の車輪速により算出されてもよく、車輪速は、車輪に取り付けられた車輪速センサによって収集されてもよい。
【0043】
S32では、縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さい場合、車両の実際の駆動力を取得する。
【0044】
1つの実現可能な実施形態として、
図4に示すように、加速度センサ10は、一定の時間間隔で縦方向の加速度a
sを収集することができる。駆動力統計モジュール30は、加速度閾値よりも小さい縦方向の加速度a
sに対応する実際の駆動力を算出することができ、実際の駆動力は、具体的には、車両の駆動モータが出力するトルクに伝動システムの変速比を乗算して得られる。具体的には、縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さいと判断されるたびに、車両の実際の駆動力を一回取得することができる。
【0045】
S33では、実際の駆動力と車速に基づいて、車両の実際のピッチ角を取得する。
【0046】
1つの実現可能な実施形態として、実際の駆動力と車速に基づいて、車両の実際のピッチ角を得るステップは、車速に基づいて対応する基準駆動力を得て、基準ピッチ角を取得するステップと、実際の駆動力、基準駆動力及び基準ピッチ角に基づいて、実際のピッチ角を得るステップと、を含んでもよい。所定数は、必要に応じて定めることができる。
【0047】
該実施形態では、実際の駆動力、基準駆動力及び基準ピッチ角に基づいて、実際のピッチ角を得るステップは、基準駆動力と実際の駆動力との差分値を算出するステップと、車両の質量を取得して、差分値と質量との比率を算出するステップと、比率と基準ピッチ角とを加算して、実際のピッチ角を得るステップと、を含んでもよい。
【0048】
具体的には、
図4に示すように、駆動力統計モジュール30は、実際の駆動力をピッチ角算出モジュール50に出力することができ、ピッチ角算出モジュール50は、実際の駆動力Fと、記憶モジュール40における現在の車速に対応する基準駆動力F
0とを比較して、下記式に基づいて実際の車両のピッチ角θを算出し、
【数5】
ここで、θ
0は基準ピッチ角であり、記憶モジュール40から得られ、mは車両の質量であり、gは重力加速度である。
【0049】
該実施形態では、実際の駆動力、基準駆動力及び基準ピッチ角に基づいて、実際のピッチ角を得るステップは、複数の実際の駆動力の平均値を算出して、平均駆動力を得るステップと、基準駆動力と平均駆動力との差分値を算出するステップと、車両の質量を取得して、差分値と質量との比率を算出するステップと、比率と基準ピッチ角とを加算して、実際のピッチ角を得るステップと、を含んでもよい。
【0050】
具体的には、一定時間内に平均駆動力を算出することができ、例えば、縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さいと判定した場合に計時を開始し、縦方向の加速度を継続的に監視し、所定時間内に、縦方向の加速度がいずれも加速度閾値よりも小さく、或いは、縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さい割合が一定値よりも大きい場合、該所定時間内に取得された全ての実際の駆動力の平均値を算出して、平均駆動力を得る。実際の駆動力の数をカウントすることにより平均駆動力を算出することもでき、例えば、縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さいと判断されるたびに、1つの実際の駆動力を取得し、実際の駆動力の数が所定数に達すると、該所定数の実際の駆動力の平均値を算出し、平均駆動力を得る。
図4に示すように、駆動力統計モジュール30は、複数の実際の駆動力を取得した後、実際の駆動力の平均値F
xを更に算出することができる。ピッチ角算出モジュール50は、駆動力統計モジュール30から出力された駆動力平均値F
xと、記憶モジュール40における現在の車速に対応する基準駆動力F
0とを比較して、下記式に基づいて実際の車両のピッチ角θを算出し、
【数6】
ここで、θ
0は基準ピッチ角であり、記憶モジュール40から得られ、mは車両の質量であり、gは重力加速度である。
【0051】
S34では、実際のピッチ角に基づいて、車両の荷重分布状況を取得する。
【0052】
1つの実現可能な実施形態として、実際のピッチ角に基づいて、車両の荷重分布状況を得るステップは、車両の軸間距離、フロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性を取得するステップと、実際のピッチ角、軸間距離、フロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性に基づいて、車両の荷重分布状況を算出するステップと、を含んでもよい。
【0053】
具体的には、
図4に示すように、荷重分布算出モジュール60は、ピッチ角算出モジュール50から出力された実際のピッチ角θ、及び、予め記憶された車両情報(軸間距離、フロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性を含む)に基づいて、車両前後の荷重分布を算出することができる。具体的には、下記式によって車両の荷重分布状況を算出することができ、
【数7】
ここで、θは実際のピッチ角であり、Lは軸間距離であり、k
1、k
2はそれぞれフロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性であり、F
1、F
2はそれぞれ車両の前車軸荷重、後車軸荷重である。
【0054】
一実施例では、得られた車両の前後車軸の静的荷重分布は、ABS(Antilock Brake System、アンチロックブレーキシステム)、ESP(Electronic Stability Program、横滑り防止装置)、TCS(Traction Control System、トラクションコントロールシステム)、EBD(Electric Brakeforce Distribution、電子制御制動力配分システム)、アクティブサスペンションABC(Active Body Control、アクティブボディコントロール)、アクティブロールオーバープロテクションARP(Anti Rolling Program、アクティブロールオーバー予防)、ヘッドライト範囲制御及びタイヤ圧力監視などのシステムの性能を改善することができる。
【0055】
本願の実施例に係る車両の荷重分布の識別方法は、車両の荷重を直接測定するのではなく、車両のピッチ角を推定し、静力学的知識に基づいて前後車軸の荷重の差分を算出することにより、車両のサスペンションに荷重センサ、車高センサなどの専用センサを取り付ける必要がなく、車両の荷重分布を識別することができ、車両の荷重分布を識別するコストを低減し、適用範囲が広く、車種に限定されない。
【0056】
図7は、本願の実施例に係る車両の荷重分布の識別装置の構造ブロック図である。
【0057】
図7に示すように、車両の荷重分布の識別装置100は、第1取得モジュール110、第2取得モジュール120、算出モジュール130及び識別モジュール140を含む。
【0058】
第1取得モジュール110は、車両の車速及び縦方向の加速度を取得する。第2取得モジュール120は、縦方向の加速度が加速度閾値よりも小さいと統計した場合、車両の実際の駆動力を取得する。算出モジュール130は、実際の駆動力と車速に基づいて、車両の実際のピッチ角を取得する。識別モジュール140は、実際のピッチ角に基づいて、車両の荷重分布状況を取得する。
【0059】
1つの実現可能な実施形態として、算出モジュール130は、具体的には、第2取得モジュール120によって取得された実際の駆動力の数が所定数に達した場合、所定数の実際の駆動力の平均値を算出して、駆動力の平均値を得る。車速に基づいて、対応する基準駆動力と基準ピッチ角を得る。駆動力の平均値、基準駆動力及び基準ピッチ角に基づいて、実際のピッチ角を得る。
【0060】
算出モジュール130は、駆動力の平均値及び基準駆動力に基づいて、実際のピッチ角を得る場合、具体的には、基準駆動力と駆動力の平均値との差分値を算出し、車両の質量を取得して、差分値と質量との比率を算出し、比率と基準ピッチ角とを加算して、実際のピッチ角を得る。
【0061】
1つの実行可能な実施形態として、識別モジュール140は、具体的には、車両の軸間距離、フロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性を取得し、実際のピッチ角、軸間距離、フロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性に基づいて、車両の荷重分布状況を算出する。
【0062】
具体的には、下記式によって車両の荷重分布状況を算出することができ、
【数8】
ここで、θは実際のピッチ角であり、Lは軸間距離であり、k
1、k
2はそれぞれフロントサスペンションの剛性、リアサスペンションの剛性であり、F
1、F
2はそれぞれ車両の前車軸荷重、後車軸荷重である。
【0063】
なお、本願の実施例に係る車両の荷重分布の識別装置100の他の具体的な実施形態は、本願の上記実施例に係る車両の荷重分布の識別方法の具体的な実施形態を参照することができる。
【0064】
本願の実施例に係る車両の荷重分布の識別装置100は、車両のサスペンションに荷重センサ、車高センサなどの専用センサを取り付ける必要がなく、車両の荷重分布を識別することができ、車両の荷重分布を識別するコストを低減し、適用範囲が広く、車種に限定されない。
【0065】
本願は、コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0066】
該実施例では、コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶されており、コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されると、上記車両の荷重分布の識別方法を実現する。
【0067】
本願の実施例に係るコンピュータ可読記憶媒体は、それに記憶されている、上記車両の荷重分布の識別方法に対応するコンピュータプログラムがプロセッサによって実行され、車両のサスペンションに荷重センサ、車高センサなどの専用センサを取り付ける必要がなく、車両の荷重分布を識別することができ、車両の荷重分布を識別するコストを低減し、適用範囲が広く、車種に限定されない。
【0068】
一実施例では、本願は、電子機器を更に提供する。
【0069】
当該実施例では、
図8に示すように、電子機器200は、メモリ210とプロセッサ220とを含み、メモリ210にコンピュータプログラム230が記憶されており、コンピュータプログラム230がプロセッサ220によって実行されると、上記車両の荷重分布の識別方法を実現する。
【0070】
本願の実施例に係る電子機器200は、そのメモリ210に記憶されている、上記車両の荷重分布の識別方法に対応するコンピュータプログラム230がプロセッサ220によって実行され、車両のサスペンションに荷重センサ、車高センサなどの専用センサを取り付ける必要がなく、車両の荷重分布を識別することができ、車両の荷重分布を識別するコストを低減し、適用範囲が広く、車種に限定されない。
【0071】
図9は、本願の一実施例に係る車両の構造ブロック図である。
【0072】
図9に示すように、車両1000は、上記実施例に係る車両の荷重分布の識別装置100を含む。
【0073】
図10は、本願の他の実施例に係る車両の構造ブロック図である。
【0074】
図10に示すように、車両1000は、上記実施例に係る電子機器200を含む。
【0075】
本願の実施例に係る車両は、上記車両の荷重分布の識別装置100又は電子機器200により、車両のサスペンションに荷重センサ、車高センサなどの専用センサを取り付ける必要がなく、車両の荷重分布を識別するコストを低減し、適用範囲が広く、車種に限定されない。
【0076】
なお、フローチャートに示されるか又は本開示で他の方式で説明されたロジック及び/又はステップは、例えば、ロジック機能を実現するための実行可能な命令の順序付けられたリストとしてみなされてもよく、具体的には、任意のコンピュータ可読媒体に具体的に実現されることにより、命令実行システム、装置若しくは機器(例えば、コンピュータに基づくシステム、プロセッサを含むシステム、又は命令実行システム、装置若しくは機器から命令を読み取って命令を実行できる他のシステム)によって使用されるか、又はこれらの命令実行システム、装置若しくは機器と組み合わせて使用されてもよい。本明細書において、「コンピュータ可読記憶媒体」は、命令実行システム、装置若しくは機器によって使用されるか、又はこれらの命令実行システム、装置若しくは機器と組み合わせて使用されるプログラムを格納、記憶、通信、伝播又は伝送することができる任意の装置であってもよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)は、1つ以上の配線を有する電気接続部(電子装置)、ポータブルコンピュータディスクボックス(磁気装置)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ装置、及びポータブル読み取り専用メモリ(CDROM)を含む。また、コンピュータ可読記憶媒体は更に、例えば、紙又は他の媒体を光学的にスキャンし、次に編集し、解釈するか、又は必要に応じて他の適切な方式で処理することにより、上記プログラムを電子的に取得し、その後にコンピュータメモリに記憶することができるので、上記プログラムを印刷することができる紙又は他の適切な媒体であってもよい。
【0077】
なお、本開示の各部分は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの組み合わせによって実現することができることを理解されたい。上記実施形態では、複数のステップ又は方法は、メモリに記憶され、かつ適切な命令実行システムにより実行されるソフトウェア又はファームウェアによって実現することができる。例えば、ハードウェアによって実現される場合、別の実施形態と同様に、データ信号に対してロジック機能を実現するためのロジックゲート回路を有する離散ロジック回路、適切な組み合わせロジックゲート回路を有する特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの本分野の公知技術のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせによって実現することができる。
【0078】
本明細書の説明において、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体的な例」又は「いくつかの例」などを参照する説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本願の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語に対する例示的な説明は、必ずしも同じ実施例又は例に限定されるわけではない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、任意の1つ以上の実施例又は例において適切に組み合わせることができる。
【0079】
なお、本願の説明において、用語「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「半径方向」、「周方向」などで示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本願を容易に説明し説明を簡略化するためのものに過ぎず、示された装置又は部品が特定の方位を有するとともに、特定の方位で構成されて操作されなければならないことを示すか又は示唆するものではないため、本願を限定するものとして理解すべきではない。
【0080】
また、用語「第1」、「第2」は、目的の説明のためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示するか又は示唆するか、或いは示された技術的特徴の数を暗示的に指示するものとして理解してはならない。これにより、「第1」、「第2」で限定された特徴は、少なくとも1つの該特徴を明示的又は暗示的に含んでもよい。本願の説明において、「複数」とは、別に明らかかつ具体的な限定がない限り、少なくとも2つ、例えば2つ、3つなどを意味する。
【0081】
本願において、別に明らかな規定及び限定がない限り、用語「取付」、「連結」、「接続」、「固定」などは、広義に理解されるべきであり、例えば、別に明らかな限定がない限り、固定接続であってもよく、着脱可能な接続であってもよく、一体的な接続であってもよく、機械的な接続であってもよく、電気的な接続であってもよく、直接的な連結であってもよく、中間媒体を介した間接的な連結であってもよく、2つの部品の内部の連通又は2つの部品の相互作用の関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本願における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0082】
本願において、明確な規定及び限定がない限り、第1特徴が第2特徴の「上」又は「下」にあることは、第1特徴と第2特徴とが直接的に接触することを含んでもよく、第1特徴と第2特徴とが中間媒体を介して間接的に接触することを含んでもよい。また、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」又は「上面」にあることは、第1特徴が第2特徴の真上及び斜め上にあることを含んでもよく、第1特徴の水平高さが第2特徴より高いことだけを表してもよい。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」又は「下面」にあることは、第1特徴が第2特徴の真下及び斜め下にあることを含んでもよく、第1特徴の水平高さが第2特徴より低いことだけを表してもよい。
【0083】
以上、本願の実施例が示され、説明されたが、上記実施例は、例示的なものであり、本願を限定するものであると理解すべきではなく、当業者であれば、本願の範囲内で上記実施例に対して変更、修正、置換及び変形を行うことができる。
【国際調査報告】