(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】錯化剤及び還元剤としてタンニン酸を使用するパラジウム固定及び低い未使用酸素吸蔵能
(51)【国際特許分類】
B01J 37/08 20060101AFI20240614BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240614BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240614BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240614BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B01J37/08 ZAB
B01J37/04 102
B01J37/02 101E
B01J37/02 301C
B01J23/63 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560064
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 GB2022051431
(87)【国際公開番号】W WO2022258962
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ル、ジン
(72)【発明者】
【氏名】ハワード、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、チンヘ
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA01Y
4D148BA02Y
4D148BA03X
4D148BA07Y
4D148BA08X
4D148BA14Y
4D148BA15X
4D148BA16Y
4D148BA18Y
4D148BA19X
4D148BA23Y
4D148BA26Y
4D148BA28Y
4D148BA31X
4D148BA35Y
4D148BA36Y
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB01
4D148BB02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA06A
4G169BA20A
4G169BA27C
4G169BA29C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC03A
4G169BC06A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC12A
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC31A
4G169BC35A
4G169BC36A
4G169BC40A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC52A
4G169BC54A
4G169BC55A
4G169BC59A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BE06C
4G169BE07C
4G169BE09C
4G169BE37C
4G169BE38C
4G169CA03
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA18
4G169EA27
4G169EB18Y
4G169EC28
4G169EE08
4G169EE09
4G169FA02
4G169FA06
4G169FB05
4G169FB14
4G169FB23
4G169FB30
4G169FB78
4G169FC02
4G169FC07
(57)【要約】
触媒物品を製造する方法であって、ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、ポリフェノールが、エステル官能基を含み、PGMが、パラジウムを含む、提供することと、担体材料を提供することと、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、前記ポリフェノールが、エステル官能基を含み、前記PGMが、パラジウムを含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリフェノールが、タンニン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリフェノールが、500~4,000g/molの重量平均分子量Mwを有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリフェノールが、1,000~2,000g/molの重量平均分子量Mwを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PGMが、パラジウムからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記担持済み担体材料を加熱した後、前記基材が、50g/ft
3~200g/ft
3の前記PGMを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記担持済み担体材料を加熱した後、前記基材が、80g/ft
3~150g/ft
3の前記PGMを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記担体材料が、酸化物、好ましくはAl
2O
3、SiO
2、TiO
2、CeO
2、ZrO
2、CeO
2-ZrO
2、V
2O
5、La
2O
3及びゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記担体材料が、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ドープされている、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%の量で、前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニア中に存在する、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記担体材料が、0.1~30μm、好ましくは1~20μmのD90を有する粉末の形態である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ポリフェノールとPGMとの前記錯体を提供することが、前記スラリー中で前記錯体をその場で合成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スラリーが、
水中でPGM塩とポリフェノールとを接触させて、水溶液中でポリフェノールとPGMとの錯体を形成することであって、前記PGM塩が、パラジウムを含む、形成することと、
前記担体材料を前記水溶液と接触させることによって、前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、前記水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記スラリーが、
担体材料とPGM塩の水溶液とを接触させて、PGM塩担持担体材料を含むスラリーを形成することであって、前記PGM塩が、パラジウムを含む、形成することと、
前記PGM塩担持担体材料を含む前記スラリーとポリフェノールとを水中で接触させることによって、ポリフェノールとPGMとの錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、前記PGM塩担持担体材料を含む前記水溶液又は前記スラリーに添加することと、を含む方法によって調製される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記担持が、ウォッシュコーティングを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記スラリーが、10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記スラリーが、
酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、
促進剤塩、好ましくは酢酸バリウム、硫酸バリウム、クエン酸バリウム又はそれらの組み合わせ、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1つ以上を更に含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含み、前記スラリーが、アルミナを更に含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記基材上に更なるスラリーを配置することを更に含み、前記更なるスラリーが、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、促進剤塩、好ましくは酢酸バリウム、硫酸バリウム、クエン酸バリウム又はそれらの組み合わせ、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、前記更なるスラリーを前記基材上に配置することが、前記担体材料を前記基材上に配置する前に、及び/又は前記担持済み担体材料を加熱して前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成した後に行われる、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記担持済み担体材料を基材上に配置することが、前記スラリーを前記基材と接触させること、並びに任意選択的に、
前記基材に真空を適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させることを含む、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記乾燥が、
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記基材が、コーディエライトを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記加熱が、
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記加熱が、焼成を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ナノ粒子が、0.1nm~30nm、好ましくは0.5~25nm、より好ましくは1~20nmのD50を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【請求項35】
三元触媒のための、請求項34に記載の触媒物品。
【請求項36】
1g/in
3~3g/in
3のウォッシュコート担持量を有する、請求項34又は請求項35に記載の触媒物品。
【請求項37】
前記基材が、ウォールフローフィルタ基材を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項38】
前記基材が、フロースルー基材を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項39】
ロジウムを上に有する担体材料の最下層と、パラジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項34~38のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項40】
パラジウムを上に有する担体材料の最下層と、ロジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項34~38のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項41】
前記担体材料の前記最上層及び/又は最下層が、その上に白金も有する、請求項39又は40に記載の触媒物品。
【請求項42】
前記担体材料の前記最上層及び/又は最下層が、その上に複数のPGMを有する、請求項39~41のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項43】
2つ以上の触媒ゾーンを含み、前記2つ以上の触媒ゾーンが、異なるPGM又は異なる量のPGMを含有することによって互いに異なる、請求項39~42のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項44】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項39又は43に記載の触媒物品。
【請求項45】
2g/ft
3~15g/ft
3のロジウム、好ましくは5g/ft
3~10g/ft
3のロジウムを含む、請求項34~44のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項46】
50g/ft
3~200g/ft
3のパラジウム、好ましくは80g/ft
3~150g/ft
3のパラジウムを含む、請求項39~45のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項47】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、パラジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項34~46のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項48】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、パラジウムを含み、前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含み、前記スラリーが、アルミナを更に含む、請求項34~46のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項49】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、パラジウムを含み、前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項34~46のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項50】
請求項34~49のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排出処理システム。
【請求項51】
ガソリンエンジンのための、請求項50に記載の排出処理システム。
【請求項52】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項51に記載の排出処理システム。
【請求項53】
排気ガスを処理する方法であって、
請求項34~49のいずれか一項に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【請求項54】
前記排気ガスが、ガソリンエンジンからのものである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項54に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒物品を製造する方法、この方法によって得ることができる触媒物品、排出処理システム、及び排気ガスを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三元触媒(three-way catalyst、TWC)は、化学量論的空燃比において、ガソリンエンジンの排出ガスからのCO、HC及びNOxを無害な化合物へと同時に転化(約98%)することを可能にする。具体的には、CO及びHCのCO2及び水蒸気(H2O)への酸化は、主にPdによって触媒され、一方、NOxのN2への還元は、主にRhによって触媒される。現代のTWCは、単層、二層又は多層状担体上に堆積された担持白金族金属(以下、「platinum group metal、PGM」)触媒(Pd、Rh、Ptなど)を使用し、担体材料は、高比表面積を有する金属酸化物、主に安定化ガンマアルミナ、及びセリア含有酸素吸蔵材料からなる。担持触媒は、セラミックモノリス基材上にウォッシュコートされる。
【0003】
TWCウォッシュコートスラリーの従来の調製は、一般に、無機PGM前駆体、例えば硝酸塩、酢酸塩、水酸化物塩又は塩化物塩の溶液を使用して、初期湿潤(incipient wetness)又は湿式含浸によってPGM元素を酸化物担体上に堆積させることを含む。TWC性能を高めるために、ウォッシュコート配合物に助触媒塩が添加されることも多い。モノリス基材が、調製されたままの状態のスラリーでウォッシュコートされると、続いて、乾燥工程及び焼成工程が行われて、無機塩を分解し、PGM及び助触媒元素を担体材料上に固定させる。担持金属触媒の性能は、金属ナノ粒子の構造及び組成、並びに担体の性質に依存することが知られている。上記の方法を使用して調製された従来のTWCは、多くの場合、触媒活性種の構造(すなわち、平均PGM粒径及び組成、活性成分の位置、並びに金属-担体相互作用)に対して限定的な制御しか提供しない。これは主として、高温焼成プロセス中の金属移動及び粒子成長が原因である。
【0004】
ますます厳しくなる環境規制に伴い、より高い排出削減効率を有するTWCが必要とされている。一方、PGMコストの増加に伴い、TWC性能を備えることなくPGM担持量を低減することが緊急に必要とされている。PGMの粒径及び金属-担体相互作用のより良好な制御は、TWC性能を最適化するのに不可欠である。更に、均一化されたPGM粒径分布は、燃費向上のために使用されるエンジン戦略である燃料遮断プロセス中にしばしば生じるような、オストワルド熟成による金属焼結の程度の低減に寄与し得る。また、添加剤としてBa成分を有するPd系TWCについては、活性Pd、添加剤種及び担体成分との相乗的相互作用を最適化するために、パラジウム及びバリウムの両方の位置を制御することが重要である。更に、従来の方法によって調製された触媒物品において、Pdによって提供され得る任意の追加の酸素吸蔵能(oxygen storage capacity、OSC)は非常に不安定であり、すなわち、未使用であるときは非常に高いが、エージング後に実質的に低下する。これは、エージング中のPdの焼結及び/又はPdの移動に部分的に起因すると考えられ、これは、従来の方法では、一般に、担体材料にあまり強固には固定されず、例えば、それによって、担持PdのOSC効果を不活性化させる。
【0005】
触媒着火は、触媒反応を開始するのに必要な最低温度である。具体的には、着火温度は、転化率が50%に達する温度である。着火温度の低い触媒物品が必要とされている。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号は、自動車用途のための担持金属触媒のポリマー支援合成について記載している。実施例で使用されるポリマーとしては、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、及びポリ(エチレンイミン)が挙げられる。記載された合成手順では、最初に担体(アルミナ粉末)にポリマー含有水溶液を含浸させる。次いで、含浸した担体は、濾過工程及び乾燥工程によって上記溶液から分離される。初期湿潤含浸によって、乾燥された含浸担体にPGM前駆体溶液を更に含浸させる。記載されたプロセスは、特許請求の範囲に記載された担持金属触媒の形成のための複数の工程を含み、これは、商業規模の製造のためのコスト及び困難性を増加させる。米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号は、本技術を応用するために、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンなどの希薄燃焼エンジンが好ましくは使用されることを示している。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、触媒物品を製造する方法に関し、この方法は、ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、ポリフェノールはエステル官能基を含み、PGMはパラジウムを含む、提供することと、担体材料を提供することと、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、第1の態様における方法によって得ることができる触媒物品に関する。
【0009】
本発明はまた、第2の態様における触媒物品を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【0010】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理する方法に関し、この方法は、第2の態様の触媒物品を提供することと、触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1a】参照例1のPdのEPMAマッピング像を示す。
【
図1b】実施例1のPdのEPMAマッピング像を示す。
【
図1c】実施例2のPdのEPMAマッピング像を示す。
【
図1d】実施例3のPdのEPMAマッピング像を示す。
【
図1e】実施例4のPdのEPMAマッピング像を示す。
【
図2a】参照例1のBaのEPMAマッピング像を示す。
【
図2b】実施例1のBaのEPMAマッピング像を示す。
【
図2c】実施例2のBaのEPMAマッピング像を示す。
【
図2d】実施例3のBaのEPMAマッピング像を示す。
【
図2e】実施例4のBaのEPMAマッピング像を示す。
【
図3】参照例1及び実施例1~実施例4のPd-TWCウォッシュコートのEPMA画像から抽出された元素相関(Pd-Ba、Pd-Al、及びPd-Ce)を示す。
【
図4】タンニン酸変性無し又は有りの未使用Pd-TWC及びエージングしたPd-TWCの酸素吸蔵能(OSC)を示す。
【
図5a】参照例1及び実施例1~実施例4の摂動着火性能試験のNO
x変換率の結果を示す。
【
図5b】参照例1及び実施例1~実施例4の摂動着火性能試験のCO変換率の結果を示す。
【
図5c】参照例1及び実施例1~実施例4の摂動着火性能試験のTHC変換率の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に許容可能な代替解決策を提供することを目的とする。
【0013】
第1の態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法を提供し、この方法は、
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、ポリフェノールはエステル官能基を含み、PGMはパラジウムを含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
担持済み担体材料を基材上に配置することと、
担持済み担体材料を加熱して、担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【0014】
本明細書において定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わされ得る。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせ得る。
【0015】
驚くべきことに、排出処理システムにおいて使用される場合、本発明の方法によって製造された触媒物品は、好ましい触媒活性、特に好ましい三元触媒活性を示し得る。例えば、触媒物品は、化学量論的ガソリンエンジンの三元触媒排出削減中に、好ましい着火性能、特にNO、CO及び全炭化水素の転化を示し得る。そのような好ましい触媒活性及び着火性能は、同じ/類似のPGM種(複数可)、担持量(複数可)、担体(複数可)、及び構成(複数可)を有する従来の触媒物品によって示されるものよりも優れている可能性がある。触媒物品は、従来の触媒物品と比較して、より耐久性があり得る。言い換えれば、このような好ましい触媒活性は、エージング後であっても示され得る。
【0016】
有利なことに、そのような優れた性能は、従来の触媒物品と比較してより低い担持量のPGMを、触媒性能を損なうことなく使用することを容易にすることができる。これは、パラジウムなどのそのような金属の高いコストを考慮すると有益であり得る。更に、そのような優れた性能は、触媒性能を損なうことなく、高コストのPGMをより低コストのPGM又は他の遷移金属で部分的/完全に置換することを容易にすることができる。
【0017】
理論に束縛されるものではないが、そのような優れた性能は、担体材料上のPGMナノ粒子の好ましい粒径分布によって提供され得ることが仮定される。PGM-ポリフェノール錯体形成の間、PGMのイオンはエステル官能基と反応することができ、同じ予測可能な量のPGMイオンが各ポリマー単位構造によって「取り込まれる」。「取り込まれる」PGMの総量は、ポリマーの分子構造/サイズ及びPGM-ポリフェノール配位比によって決定される。次いで、各錯体は、表面官能基(例えば、ヒドロキシル基)又は表面電荷と反応/相互作用して、PGM-ポリフェノール錯体が担体材料表面上に「しっかり固定する」のを可能にすることができる。「しっかり固定された」PGM-ポリフェノール錯体は、ポリマーの立体効果及び担体材料の表面官能基/電荷の利用可能な量に起因して分離され得る。錯体と担体材料官能基との間の相互作用により、従来の方法によって調製された触媒と比較して、担体によるPGM取り込みが増加し得る。理論に束縛されるものではないが、そのような均一な分離は、加熱(焼成)時にPGMナノ粒子のより狭い粒径分布(より均一化された粒径)をもたらすことができ、これは更に、エージング及び/又は燃料カット事象中のPGM粒子の過剰な凝集及び/又は焼結の低減をもたらすことも仮定される。換言すれば、従来の触媒と比べると、本発明の方法を使用することによって、より耐焼結性の高い触媒物品を得ることができる。
【0018】
排出処理システムにおいて使用される場合、驚くべきことに、そのような触媒物品は、より低い酸素吸蔵能(OSC)、及び未使用触媒物品とエージングした触媒物品との間のより小さいOSC差を提供し得る。例えば、Rhと比べてPdの比較的低い活性により、TWC用途のためのそのような触媒物品では、一般に、(例えば、Rhと比較して)Pdの高い担持量が必要とされる。担体材料の任意のOSC効果に加えて、例えば、この大量のPdはまた、OSC効果にも寄与し得る。理論によって拘束されることを望まないが、これは、エンジン作動温度におけるPdとPd酸化物との間の可逆的変換に起因すると考えられる。しかしながら、PdのOSC効果は非常に不安定であり、すなわち、未使用であるときは非常に高いが、エージング後に実質的に低下する。これは、エージング中のPdの焼結及び/又はPdの移動に部分的に起因すると考えられ、これは、従来の方法では、一般に、担体材料にあまり強固には固定されず、例えば、それによって、担持PdのOSC効果を不活性化させる。
【0019】
しかしながら、本明細書に記載されるように、本発明の方法は、改善されたPd固定及びPd分布を提供し得る。有利なことに、驚くべきことに、これにより、未使用触媒物品とエージングした触媒物品との間のより小さいOSC差を有する触媒物品がもたらされ得ることが見出されたが、これは、例えば、担体PdのOSC能力がより安定しているためであると考えられる。換言すれば、触媒物品のOSC効果は、エージング後であっても、その寿命を通じてより安定であり得る。このことは、少なくとも、エンジン較正(すなわち、空燃比を制御するための、エンジンと排気システムとの間のフィードバックループ)が、通常、未使用触媒物品を使用して行われ、エージング後又は車両の寿命を通じて再較正されないので、実際には非常に望ましい場合がある。したがって、未使用触媒物品のOSC能力とエージングした触媒物品のOSC能力との間のいかなる差も、エンジン及び排気システムの性能を低下させる可能性があり、したがって、排気システムにおける排出削減の効率の低下がもたらされる可能性がある。したがって、触媒物品の未使用OSC能力とエージングしたOSC能力との間の差が最小化される場合、エンジンと排気システムとの間の較正は、車両の寿命を通じてより正確なままであり得、それによって、エージング後であっても、車両の寿命を通じて排出削減の効率を改善するのに役立つ。
【0020】
更に、本発明の方法によって提供され得る担体材料へのPdの改善された固定に起因して、基材を通したPd又はウォッシュコート層のウィッキング及び/又はウォッシュコート層の混合が著しく少ないことが観察され得る。言い換えれば、本発明の方法によって製造された触媒物品は、従来の方法によって製造された触媒物品と比較して、担体材料へのPGMのより強い/より確実な固定を示し得る。したがって、本発明の方法によって製造された触媒物品は、そのような触媒物品における美観の改善と同様に、改善された触媒活性を示し得る。これは、少なくとも、触媒物品中の任意の別個のウォッシュコート層間の触媒活性PGMの混合を低減することができ、それによって、ウォッシュコート層のいずれかが不活性化される可能性を低減することができるためである。これは、次に、触媒物品全体の触媒活性を、触媒物品が未使用であるとき、及びエージング後に、意図したように高く維持するのに役立ち得る。任意の別個のウォッシュコート層のPGMを、意図したそれぞれの層内に保つことは、それぞれの意図した触媒目的(例えば、酸化又は還元のいずれか)を維持するために重要であり得る。例えば、PdとRhとの間の直接的な相互作用は、個々の成分の触媒活性、特にRh成分の触媒機能を低下させ得ることが知られている。
【0021】
更に、工程の順序及び担体材料の添加の順序に応じて、本発明の方法を使用して、PGM、例えばPdを、任意の標準的な担体材料に固定することができる。言い換えれば、ウォッシュコート中に複数の異なる担体材料が存在する場合、本発明の方法は、例えば、担体材料が最初にPGM前駆体と組み合わされるか、又はポリフェノール及びPGMの錯体と組み合わされるかなど、工程の順序を制御することによって、PGM、例えば、Pdを所望の担体材料に標的化するために使用され得る。
【0022】
米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号の方法と比較して、本発明の方法は、例えば、pH調整が不要の、より単純でより効率的な「ワンポット」法である。本発明の方法は、担体材料上にポリマー分子を堆積させるための別個の含浸、濾過、及び乾燥工程を必要としない。本発明の方法を使用することによって、添加された各ポリマー分子が相互作用のために利用されるので、ポリマーと担体との相互作用及びPGMとポリマーとの相互作用の発生が増加し得る。対照的に、米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号では、限られた量のポリマーのみが、濾過及び洗浄工程後に担体上に留まることができる。更に、本発明の方法によって調製された触媒物品は、特に、化学量論的ガソリン排出削減のための三元触媒として使用され得る。対照的に、米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号の方法によって製造された触媒物品は、希薄燃焼ディーゼル又はガソリンエンジンにおいて特定の用途を有する。
【0023】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒がその上又はその中に担持されている物品を包含し得る。物品は、例えば、ハニカムモノリス、又はフィルタ、例えば、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態をとり得る。触媒物品は、排出処理システム、特にガソリンエンジン、好ましくは化学量論的ガソリンエンジンのための排出処理システムにおいて使用するためのものであり得る。触媒物品は、三元触媒作用において使用するためのものであり得る。
【0024】
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することは、典型的には、溶液、例えば、水溶液又はアルコール溶液中で錯体を提供することを含む。ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することは、典型的には、純粋な形態又は溶液の形態の無機PGM前駆体とポリフェノールとを水性媒体中で混合すること、例えば、硝酸PGMとポリフェノールとを水中で混合することを含む。
【0025】
本明細書で使用される「ポリフェノール」という用語は、芳香環上にいくつかのヒドロキシル基を含有するポリマーを包含する。ポリフェノールは、一般に、中程度に水溶性の化合物である。ポリフェノールは、天然又は合成であってもよいが、本発明では、本方法をより環境に優しいものにするために、好ましくは天然に存在するものである。本明細書で使用される「ポリフェノール」という用語は、500~4,000g/molの重量平均分子量、13個以上のヒドロキシル基、及び1,000g/mol当たり5~7個の芳香環を有するポリマーを包含し得る。ポリフェノールは、例えば、フェノール酸(例えば、タンニン酸、コーヒー酸)、フラボノイド(例えば、フラボン、フラボノール、フラバノール、フラバノン、イソフラボン)、スチルベン又はリグニン(亜麻仁及び他の穀類に含まれているフェニルアラニンに由来するポリフェノール)であってもよい。
【0026】
ポリフェノールは、エステル官能基、典型的には、カルボン酸エステル官能基を含む。ポリフェノールは、好ましくは、2つ以上のエステル官能基及び/又はカルボン酸エステル官能基を含む。「エステル官能基」「カルボン酸エステル官能基」という用語は、OR基に結合したカルボキシル基すなわち以下を含む官能基を包含し得る。
【0027】
【0028】
PGMはパラジウムを含む。パラジウムは、三元触媒作用を行うのに特に適し得る。加えて、パラジウムは高価であり、このことは、同じ量の金属に対して同様のレベルの触媒活性を提供できることが有利であることを意味する。更に、本発明の方法におけるパラジウムの使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。PGMは、合金の形態であってもよい。パラジウムに加えて、PGMは、例えば、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムのうちの1つ以上などの他のPGMを含んでもよい。
【0029】
錯体は、2:1~1:10、好ましくは1:1~1:8、より好ましくは1:2~1:5のPGM原子対エステル基比を有し得る。錯体は、2:1~1:10、好ましくは1:1~1:8、より好ましくは1:2~1:5のパラジウム原子対エステル基比を有し得る。
【0030】
担体材料は、その上に又は(on)その中に複合体及びナノ粒子を支持することができる任意の材料であってよい。担体材料は、任意の形態をとることができるが、典型的には粉末、より典型的には高表面積粉末の形態である。本発明の方法が、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタなどの触媒化フィルタを調製するために使用される場合、担体材料は、典型的には、TEMを使用して測定して、例えば、0.1~30μm、より典型的には0.5~25μm、更により典型的には1~20μmのD50を有する粉末の形態となる。そのような粒径は、フィルタをコーティングするために使用されるスラリーの望ましいレオロジー特性を促進することができる。担体材料はウォッシュコートとして機能してもよい。担体材料はウォッシュコートであってもよく、又はウォッシュコートの一部であってもよい。
【0031】
担体材料はまた、三元触媒転化を促進するために、燃料希薄条件及び燃料豊富条件でそれぞれ酸素を貯蔵及び放出する酸素貯蔵材料として機能してもよい。
【0032】
担体材料への錯体の適用は、典型的には、スラリーを生成するように、溶媒(典型的には水)の存在下で錯体と担体材料とを接触させることを含む。本明細書で使用される「スラリー」という用語は、不溶性材料、例えば、不溶性粒子を含む液体を包含し得る。スラリーは、(1)溶媒、(2)可溶性内容物、例えば、未反応ポリフェノールポリマー、無機PGM及び助触媒前駆体、並びにPGM-ポリマー錯体(担体の外側)、及び(3)不溶性内容物、例えば、ポリマー及び金属前駆体と相互作用するか又は相互作用しない担体粒子、を含んでもよい。スラリーは、典型的には撹拌され、より典型的には少なくとも10分間、より典型的には少なくとも30分間、更により典型的には少なくとも1時間、撹拌される。接触時間及び/又は撹拌時間を増加させることにより、担体材料上に担持される錯体の量を増加させることができる。
【0033】
本明細書で使用される「担持済み担体材料」という用語は、その上に(例えば、高表面積金属酸化物担体材料の表面上に)担持された及び/又はその中に(例えば、ゼオライト担体材料の細孔内に)担持されたPGM-ポリフェノール錯体を有する担体材料を包含し得る。錯体は、典型的には、例えば、静電力、水素結合、配位結合、共有結合、及び/又はイオン結合によって担体に固定される。例えば、酸化物の場合、ポリフェノール中のエステル官能基例えば、カルボン酸エステル官能基)と担体上の表面ヒドロキシル基とは、静電力又は水素結合形成を介して相互作用し得る。
【0034】
本明細書で使用される「基材」という用語は、例えば、セラミックハニカム若しくは金属ハニカム、又はフィルタブロック、例えばウォールフローフィルタ若しくはフロースルーフィルタを包含し得る。基材は、セラミックモノリス基材を含んでもよい。基材は、その材料組成、サイズ及び構成、セルの形状及び密度、並びに壁厚の点で異なっていてもよい。好適な基材は、当該技術分野において周知である。
【0035】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、当該技術分野で既知の技術を使用して行うことができる。典型的には、担持済み担体材料は、担持済み担体材料のスラリーを特定の成形ツールを使用して基材の入口に所定の量で注ぐことによって基材上に配置されている。以下でより詳細に考察されるように、後続の真空及び乾燥工程が、配置工程中に用いられてもよい。担体がフィルタブロックである場合、担持された担体材料は、フィルタ壁上、フィルタ壁内(多孔性の場合)、又はその両方に配置され得る。
【0036】
担持済み担体材料の加熱は、典型的にはオーブン又は炉、より典型的にはベルト又は静電オーブン(static oven)又は炉中で、典型的には一方向からの特定の流れの熱風中で行われる。加熱は、焼成を含み得る。加熱は、乾燥も含み得る。乾燥及び焼成工程は、連続的又は逐次的であり得る。例えば、基材が既にウォッシュコーティングされ、前のウォッシュコーティングと一緒に乾燥させた後に、別個のウォッシュコーティングが適用され得る。ウォッシュコーティングされた基材はまた、コーティングが完了したら、1つの連続的な加熱プログラムを使用して乾燥及び焼成され得る。加熱中、錯体は、少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に分解し得る。言い換えれば、錯体の配位子、すなわちポリフェノールは、PGMから少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に除去又は分離され、最終触媒物品から除去される。次いで、そのように分離されたPGMの粒子は、金属-金属結合及び金属-酸化物結合を形成し始めることができる。加熱(焼成)の結果として、基材は、典型的にはポリフェノールを実質的に含まず、より典型的にはポリフェノールを完全に含まない。
【0037】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、TEMによって測定される0.01nm~100nmの直径を有する粒子を包含し得る。ナノ粒子は、任意の形状、例えば、球形、プレート、立方体、円筒形、六角形、又はロッドであってよいが、典型的には球形である。ナノ粒子の最大寸法(すなわち、ナノ粒子が球状である場合には直径)は、TEMによって測定して、典型的には0.5~10nm、より典型的には1~5nmである。
【0038】
加熱工程の後、基材は、典型的には冷却され、より典型的には室温まで冷却される。冷却は、典型的には、冷却剤/冷却媒体を用いて又は用いずに、典型的には冷却剤を用いずに、空気中で行う。
【0039】
ポリフェノールは、好ましくはタンニン酸を含む。本明細書中で使用される「タンニン酸」という用語は、タンニン酸を抽出するために使用される植物源に応じて、一分子当たり2~12個の範囲のガロイル部分の数を有するポリガロイルグルコース又はポリガロイルキナ酸エステルの混合物を包含し得る。タンニン酸は、天然フェノール化合物であってもよく、とりわけオーク、ツガ、栗及びマングローブの樹皮、特定のウルシの葉;及び多くの植物の果実から抽出され得る。本明細書で使用される「タンニン酸」という用語は、以下の構造式によって示されるように、中心グルコース環及び10個のガロイル基からなる化合物、すなわち、デカガロイルグルコースを包含し得る。
【0040】
【0041】
そのような化合物は、IUPAC名1,2,3,4,6-ペンタ-O-{3,4-ジヒドロキシ-5-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ベンゾイル}-D-グルコピラノース又は2,3-ジヒドロキシ-5-({[(2R,3R,4S,5R,6R)-3,4,5,6-テトラキス({3,4-ジヒドロキシ-5-[(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)カルボニルオキシ]フェニル}カルボニルオキシ)オキサン-2-イル]メトキシ}カルボニル)フェニル3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートを有する。グルコース分子の5個のヒドロキシル基の各々は、ジ没食子酸の分子でエステル化される。
【0042】
タンニン酸は、水素結合又は共有結合を通して金属イオンと配位し得る。PGM-タンニン酸錯体は、ウォッシュコート中で担体、例えば金属酸化物担体上に固定されてもよく、タンニン酸配位子中のカルボン酸エステル官能基、及び担体上の表面ヒドロキシル基は、静電力又は水素結合形成を通して相互作用し得る。
【0043】
タンニン酸は天然に存在するので、PGM錯体を形成するためのタンニン酸の使用は、他の天然に存在しない配位子の使用と比較して、より環境に優しい可能性がある。タンニン酸は、好ましくは210~215℃の範囲の分解点を有する。それはまた、水溶性でもある(1gのタンニン酸が、標準温度及び圧力で0.35mlの水に溶解する)。タンニン酸の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0044】
ポリフェノールは、光散乱によって測定して、好ましくは500~4,000、より好ましくは1,000~2,000g/mol、更により好ましくは1,600~1,800g/molの重量平均分子量Mwを有する。重量平均分子量Mwは、次式:
【0045】
【数1】
(式中、N
iは、分子質量M
iの分子数である)によって決定される。そのような重量平均分子量の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。
【0046】
ポリフェノールは、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって測定される500~4,000g/molの数平均分子量Mnを有する。数平均分子量Mwは、次式:
【0047】
【数2】
(式中、先と同様に、N
iは、分子質量M
iの分子数である)によって決定される。そのような数平均分子量の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。
【0048】
PGMはパラジウムを含む。好ましくは、PGMは、パラジウムから本質的になり、より好ましくはパラジウムからなる。パラジウムは特に高価なPGMであり、ポリフェノール、特にタンニン酸と特に好適な錯体を形成する。本発明の方法におけるそのような金属の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。PGMは、主にパラジウム、すなわち、PGMの総重量に基づいて、少なくとも50重量%のパラジウム、典型的には少なくとも80重量%のパラジウム、より典型的には少なくとも95重量%のパラジウム、更により典型的には少なくとも99重量%のパラジウムを含み得る。
【0049】
担持済み担体材料を加熱した後、基材は、好ましくは50g/ft3~200g/ft3のPGM、より好ましくは80g/ft3~150g/ft3のPGMを含む。言い換えれば、担持済み担体材料を介して基材に適用されたPGMの濃度は、担持済み担体材料を加熱した後、基材が50g/ft3~200g/ft3のPGM、より好ましくは80g/ft3~150g/ft3のPGMを含むような濃度であってよい。基材上へのPGMのそのような担持量を得ることは、例えば、ポリフェノールとPGMとの錯体のより高い若しくはより低い濃度、及び/又はより高い若しくはより低いPGM原子対エステル基比のいずれかを使用することによって、当業者によって容易に達成されるであろう。言い換えれば、本発明の方法を介して所望のレベルのPGM担持量の基材を提供することは、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、50g/ft3~200g/ft3のPGM、より好ましくは80g/ft3~150g/ft3のPGMを、錯体を担体材料に適用して担持済み担体材料を形成する工程において担体材料に適用してもよい。
【0050】
担体材料は、酸化物、好ましくはAl2O3(酸化アルミニウム又はアルミナ)、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2、CeO2-ZrO2、V2O5、La2O3及びゼオライトのうちの1つ以上を含む。酸化物は、金属酸化物であることが好ましい。担体材料は、より好ましくは、アルミナ、更により好ましくはガンマ-アルミナを含む。担体材料は、好ましくはセリア-ジルコニアを含む。担体材料は、好ましくはアルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアは、好ましくはドープされ、より好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、又はナトリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされており、更により好ましくは、ランタン、ネオジム又はイットリウムの酸化物でドープされている。このようなドープされた酸化物は、担体材料として特に有効である。好ましくは、ドーパントは、アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア中に、0.001重量%~20重量%、より好ましくは0.5重量%~10重量%の量で存在する。
【0051】
担体材料は、好ましくは0.1~25μm、より好ましくは0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である。
【0052】
担持済み担体材料は、好ましくはスラリーの形態で基材上に配置されている。スラリーは、基材上に材料を配置する際に、特にガスの拡散を最大化し、触媒変換中の圧力降下を最小化するために、特に有効である。
【0053】
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することは、好ましくは、スラリー中で錯体をその場で合成することを含む。
【0054】
スラリーは、好ましくは、
水中でPGM塩とポリフェノールとを接触させて、水溶液中でポリフェノールとPGMとの錯体を形成することであって、PGM塩がパラジウムを含む、形成することと、
担体材料を水溶液と接触させることによって、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される。酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を水溶液に添加する任意選択の工程は、スラリーを調製する好ましい方法の工程のいずれかの間に行われてもよい。
【0055】
代替の好ましい実施形態では、スラリーは、
担体材料とPGM塩の水溶液とを接触させて、PGM塩担持担体材料を含むスラリーを形成することであって、PGM塩がパラジウムを含む、形成することと、
PGM塩担持担体材料を含むスラリーとポリフェノールとを水中で接触させることによって、ポリフェノールとPGMとの錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、PGM塩担持担体材料を含む水溶液又はスラリーに添加することと、を含む方法によって調製され得る。酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を水溶液に添加する任意選択の工程は、スラリーを調製する好ましい方法の工程のいずれかの間に行われてもよいが、好ましくは、担体材料がその都度供給される工程の間に実施される。
【0056】
好ましくは、スラリーを調製する各代替方法において、PGM塩とポリフェノールとを水中で接触させる工程、及びPGM塩担持担体材料を含むスラリーとポリフェノールとを水中で接触させる工程は、ポリフェノールとPGMカチオンとの間で錯体形成が起こるのに十分な反応時間を与えることを含み、例えば、そのような工程は、典型的には少なくとも10分間、より典型的には少なくとも30分間、更により典型的には少なくとも1時間、好ましくは撹拌しながら行われる。理論によって拘束されることを望まないが、スラリーを調製する第2の代替方法において、PGM塩担持担体材料を含むスラリーとポリフェノールとを水中で接触させることによって、ポリフェノールとPGMとの錯体を担体材料に適用して担持済み担体材料を形成する工程の後に、担体材料上でのPGM金属種の後続の還元及び沈殿が続き得ると考えられる。
【0057】
言い換えれば、スラリーを調製する方法は、最初にポリフェノールとPGMとの錯体を水溶液中に提供し、続いて担体及び他の任意成分を添加することを含み得、あるいは最初に担体材料及び他の任意成分をPGM前駆体(すなわち、PGM塩)の水溶液に添加し、続いてポリフェノールを添加することを含み得る。
【0058】
そのような「ワンポット」調製法は、従来の方法と比較して簡略化されており、低コストであり得る。この方法はまた、ポリマーの利用を最大化することができる。
【0059】
換言すれば、ポリアミンとPGMとの錯体を提供する工程、担体材料を提供する工程、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成する工程、及び担持済み担体材料を基材上に配置する工程は、
水中でPGM塩とポリフェノールとを接触させて、水溶液中でポリフェノールとPGMとの錯体を形成することであって、PGM塩がパラジウムを含む、形成することと、
担体材料を水溶液に添加して、担持済み担体材料のスラリーを形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、スラリーに添加することと、
スラリーを基材上に配置することと、を含んでもよい。
【0060】
代替的に、ポリフェノールとPGMとの錯体を提供する工程、担体材料を提供する工程、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成する工程、及び担持済み担体材料を基材上に配置する工程は、
担体材料とPGM塩の水溶液とを接触させて、PGM塩担持担体材料を含むスラリーを形成することであって、PGM塩がパラジウムを含む、形成することと、
ポリフェノールを、PGM塩担持担体材料を含むスラリーに添加して、担持済み担体材料のスラリーを形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、PGM塩担持担体材料を含む水溶液又はスラリーに添加することと、
スラリーを基材上に配置することと、を含んでもよい。
【0061】
担持はウォッシュコーティングを含んでもよい。
【0062】
スラリーは、好ましくは10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する。そのような固形物量は、担持された担体材料を基材上に配置するのに好適なスラリーレオロジーを可能にし得る。例えば、基材がハニカムモノリスである場合、そのような固体内容物は、基材の内壁上へのウォッシュコートの薄層の堆積を可能にし得る。基材がウォールフローフィルタである場合、そのような固形物量は、スラリーがウォールフローフィルタのチャネルに入ることを可能にすることができ、スラリーがウォールフローフィルタの壁に入ることを可能にすることができる。
【0063】
好ましくは、スラリーは、
酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1つ以上を更に含む。
【0064】
助触媒としては、例えば、非PGM遷移金属元素、希土類元素、アルカリ若しくはアルカリ土類族元素、及び/又は周期表の同じ若しくは異なる族内の上記元素のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられ得る。助触媒塩は、そのような元素の塩であり得る。特に好ましい助触媒は、バリウムであり、その特に好ましい塩は、酢酸バリウム、クエン酸バリウム、及び硫酸バリウム、又はこれらの組み合わせであり、より好ましくはクエン酸バリウムである。
【0065】
結合剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中において個々の不溶性粒子を一緒に結合するための小さな粒径を有する酸化物材料を含み得る。ウォッシュコートにおける結合剤の使用は、当該技術分野で周知である。
【0066】
増粘剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中の不溶性粒子と相互作用する、官能性ヒドロキシル基を有する天然ポリマーを含み得る。それは、基材上へのウォッシュコートコーティング中のコーティングプロファイルの改善のためにウォッシュコートスラリーを増粘する目的に役立つ。増粘剤は、通常は、ウォッシュコート焼成中に焼き取られる。ウォッシュコートのための特定の増粘剤/レオロジー調整剤の例としては、グラクトマナガム(glactomanna gum)、グアーガム、キサンタンガム、カードランシゾフィラン、スクレログルカン、ジウタンゴム、ホイーランゴム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。
【0067】
本明細書に記載される「還元剤」という用語は、ウォッシュコート調製中に、PGMカチオンをその還元状態又は更に金属状態の粒子にその場で還元することができる化合物を包含し得る。
【0068】
PGMの還元剤として作用し、かつ/又はウォッシュコート調製中に周囲温度又は高温(<100℃)で特定の時間内に還元環境を作り出す有機酸を添加することができる。好適な有機酸の例としては、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、アスコルビン酸、酢酸、ギ酸、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0069】
好ましい実施形態では、担体材料はアルミナを含み、スラリーはセリア-ジルコニアを更に含む。別の好ましい実施形態では、担体材料はセリア-ジルコニアを含み、スラリーはアルミナを更に含む。別の好ましい実施形態では、担体材料は、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0070】
本方法は、好ましくは、更なるスラリーを基材上に配置することを更に含み、更なるスラリーは、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、更なるスラリーを基材上に配置することは、担体材料を基材上に配置する前に及び/又は担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成した後に行われる。これにより、異なるウォッシュコートの複数の層、例えば、とりわけアルミナ上に担持されたパラジウムナノ粒子を含有する底部ウォッシュコート、及びとりわけアルミナ上に担持されたパラジウムナノ粒子を含有する上部ウォッシュコートを有する触媒物品を得ることができる。そのような複数の層の更なる例については、以下でより詳細に論じられる。
【0071】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、好ましくは、スラリーを基材と接触させること(例えば、スラリーを基材の入口に注入すること)、及び任意選択で、
基材に真空を適用すること、及び/又は
基材上のスラリーを乾燥させることを含む。
【0072】
これにより、基材上の担持済み担体材料の好ましい分布を得ることができる。
【0073】
乾燥は、好ましくは以下のように行われる:
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間。
【0074】
基材は、「ブランク」、すなわち、ウォッシュコーティングされていない基材であり得る。代替的に、基材は、既にその上に担持された1つ又はウォッシュコートを有し得る。そのような状況では、最終触媒物品は、異なるウォッシュコートの複数の層を含み得る。
【0075】
基材は、好ましくはコーディエライトを含む。コーディエライト基材は、触媒物品における使用に特に適している。
【0076】
基材は、好ましくは、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態である。
【0077】
加熱は、好ましくは以下のように行われる:
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる。
【0078】
より低い温度及び/又はより短い加熱時間は、錯体の不十分な分解をもたらす場合がある、及び/又は高レベルのポリフェノールが基材中に残る場合がある。より高い温度及び/又はより長い加熱時間は、おそらく焼結に起因して、好ましくない大きな粒径を有するPGMの粒子をもたらす場合がある。より高い温度及びより長い加熱時間はまた、触媒物品への損傷をもたらす場合がある。
【0079】
加熱は、好ましくは焼成を含む。本明細書で使用される「焼成」という用語は、熱分解を引き起こすための空気又は酸素の非存在下又は限定された供給下での熱処理プロセスを包含し得る。
【0080】
ナノ粒子は、好ましくは0.1nm~30nm、より好ましくは0.5~25nm、更により好ましくは1~20nmのD50を有する。D50は、TEMによって測定され得る。そのような粒径は、好ましいレベルの触媒活性をもたらすことができる。
【0081】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法によって得ることができる触媒物品を提供し、触媒物品は、排出処理システムにおいて使用するためのものである。
【0082】
従来の触媒物品と比較して、本明細書に記載される方法によって得ることができる触媒物品は、それぞれの未使用において、有利に大きい粒径及び好ましい粒径分布(例えば、1~20nmのD50)を有するPGM粒子を含有することができる。更に、従来の触媒物品と比較して、本明細書に記載の方法によって得ることができる触媒物品は、基材全体にわたってPGM粒子のより均一な分散を示すことができる。
【0083】
排出処理システムにおいて使用される場合、触媒物品は、化学量論的ガソリン排出削減のための三元触媒転化中に、特にNO、CO及び全炭化水素に対して好ましい着火性能を示すことができる。触媒物品はまた、より低い未使用OSC容量、及びより少ない未使用対エージングOSC差(つまり、エージングに対するより安定なOSC性能)などの、本明細書に記載の他の有利な特性も示し得る。
【0084】
触媒は、好ましくは、三元触媒のためのものである。
【0085】
触媒物品は、1g/in3~3g/in3のウォッシュコート担持量を有し得る。そのような触媒物品は、従来の触媒物品と比較して同様の又はより高い触媒活性を示し得るが、使用されるPGMのレベルがより低いことを考慮すると、より低コストであり得る。
【0086】
基材は、好ましくは、ウォールフローフィルタ基材又はフロースルー基材を含む。
【0087】
好ましい実施形態では、触媒物品は、ロジウムを上に有する担体材料の最下層と、パラジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む。そのような触媒物品では、例えば、最下層は、本明細書に記載の方法と同様の方法によって、又は任意の従来の方法によって提供されてもよい。別の好ましい実施形態では、触媒物品は、パラジウムを上に有する担体材料の最下層と、ロジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む。そのような触媒物品では、例えば、最上層は、本明細書に記載の方法と同様の方法によって、又は任意の従来の方法によって提供されてもよい。本明細書で使用される「最下層」という用語は、基材(すなわち、基材壁)に最も近いか又はそれと接触している層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得る。本明細書で使用される「最上層」という用語は、最下層よりも基材(すなわち、基材壁)からより離れた層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得、最下層の上に位置し得る。そのような層状触媒物品では、担体材料の最上層及び/又は最下層は、その上に更なるPGM、例えば白金を有し得る。そのような層状触媒物品では、最上層及び/又は最下層は、複数のPGMを含んでもよく、すなわち、二元金属(例えば、Pd-Rh又はPd-Ptを含有する)又は三元金属(例えば、Pd-Rh-Pt)であってもよい。触媒物品は、2つ以上の触媒ゾーン、例えば、上流ゾーン及び下流ゾーンを含んでもよい。ゾーンは、異なるPGM(例えば、Rh上流及びPd下流、又はその逆)を有することによって互いに異なっていてもよく、又は異なるタイプのPGM、例えば単一金属、二元金属又は三元金属の量だけ異なっていてもよい。
【0088】
このような好ましい実施形態では、担体材料は、好ましくは、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0089】
触媒物品は、特にこのような好ましい実施形態では、好ましくは2g/ft3~15g/ft3のロジウム、より好ましくは5g/ft3
~10g/ft3のロジウムを含む。有利なことに、そのようなロジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0090】
触媒物品は、特にこのような好ましい実施形態では、好ましくは50g/ft3~200g/ft3のパラジウム、より好ましくは80g/ft3~150g/ft3のパラジウムを含む。有利なことに、そのようなパラジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0091】
好ましい実施形態では、担持済み担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、パラジウムを含み、担体材料は、アルミナを含み、スラリーは、セリア-ジルコニアを更に含む。別の好ましい実施形態では、担持済み担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、パラジウムを含み、担体材料は、セリア-ジルコニアを含み、スラリーは、アルミナを更に含む。別の好ましい実施形態では、担持担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、パラジウムを含み、担体材料は、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0092】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の触媒物品を含む排出処理システムを提供する。
【0093】
排出処理システムは、好ましくは、ガソリンエンジンのためのものである。
【0094】
ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0095】
更なる態様では、本発明は、排気ガスを処理する方法を提供し、この方法は、
本明細書に記載される触媒物品を提供すること、及び
触媒物品を排気ガスと接触させること、を含む、方法。
【0096】
排気ガスは、好ましくは、ガソリンエンジンからの排気ガスである。触媒物品は、そのような排気ガスを処理するのに特に好適である。ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0097】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0098】
触媒物品の製造
多数の触媒物品を以下の実施例に従って調製した。
【0099】
参照例1:Pd/セリア-ジルコニア混合酸化物及びガンマアルミナ(硝酸Pdを含む)でウォッシュコートされたTWC触媒
1.必要量の硝酸Pdを含む溶液を調製する(Pd担持量131g/ft3)。
2.セリア-ジルコニア混合酸化物(1g/in3)及びガンマアルミナ(1g/in3)を添加し、1時間混合する。
3.上記スラリーに必要量の酢酸Ba(Ba担持量400g/ft3)を添加し、少なくとも30分間混合する。
4.スラリー固形物量を30%に調整し、ナトロゾルを添加し、一晩混合する。
5.1.2インチを目標として単回用量をコーティングし、パイロットプラント空気硬化で乾燥させる。
6.静電オーブンの中で500℃で30分間レンガを焼成する。
【0100】
実施例1:Pd/セリア-ジルコニア混合酸化物及びガンマアルミナ(タンニン酸によって変性されたPd-高タンニン酸担持量を有する)でウォッシュコートされたTWC触媒バリウム源としての酢酸バリウム
1.必要量の硝酸Pdを含む溶液を調製する(Pd担持量131g/ft3)。
2.セリア-ジルコニア混合酸化物(1g/in3)及びガンマアルミナ(1g/in3)を添加し、1時間混合する。
3.タンニン酸:Pdのモル比=1:9を目標として、必要量のタンニン酸(232g/ft3)を添加する。少なくとも2時間混合する。
4.上記スラリーに必要量の酢酸Ba(Ba担持量400g/ft3)を添加し、少なくとも30分間混合する。
5.スラリー固形物量を30%に調整し、ナトロゾルを添加し、一晩混合する。
6.1.2インチを目標として単回用量をコーティングし、パイロットプラント空気硬化で乾燥させる。
7.静電オーブンの中で500℃で30分間レンガを焼成する。
【0101】
実施例2:Pd/セリア-ジルコニア混合酸化物及びガンマアルミナ(タンニン酸によって変性されたPd-低タンニン酸担持量を有する)でウォッシュコートされたTWC触媒バリウム源としての酢酸バリウム
1.必要量の硝酸Pdを含む溶液を調製する(Pd担持量131g/ft3)。
2.セリア-ジルコニア混合酸化物(1g/in3)及びガンマアルミナ(1g/in3)を添加し、1時間混合する。
3.タンニン酸:Pdのモル比=1:12を目標として、必要量のタンニン酸(174g/ft3)を添加する。少なくとも2時間混合する。
4.上記スラリーに必要量の酢酸Ba(Ba担持量400g/ft3)を添加し、少なくとも30分間混合する。
5.スラリー固形物量を30%に調整し、ナトロゾルを添加し、一晩混合する。
6.1.2インチを目標として単回用量をコーティングし、パイロットプラント空気硬化で乾燥させる。
7.静電オーブンの中で500℃で30分間レンガを焼成する。
【0102】
実施例3:Pd/セリア-ジルコニア混合酸化物及びガンマアルミナ(タンニン酸によって変性されたPd-低タンニン酸担持量を有する)でウォッシュコートされたTWC触媒バリウム源としてのクエン酸バリウム
1.必要量の硝酸Pdを含む溶液を調製する(Pd担持量131g/ft3)。
2.セリア-ジルコニア混合酸化物(1g/in3)及びガンマアルミナ(1g/in3)を添加し、1時間混合する。
3.タンニン酸:Pdのモル比=1:12を目標として、必要量のタンニン酸(174g/ft3)を添加する。少なくとも2時間混合する。
4.上記スラリーに必要量の酢酸Ba(Ba担持量400g/ft3)を添加し、少なくとも30分間混合する。
5.上記混合物に必要量のクエン酸(CA担持量560g/ft3)を添加し、少なくとも2時間混合する。
6.スラリー固形物量を30%に調整し、ナトロゾルを添加し、一晩混合する。
7.1.2インチを目標として単回用量をコーティングし、パイロットプラント空気硬化で乾燥させる。
8.静電オーブンの中で500℃で30分間レンガを焼成する。
【0103】
実施例4:Pd/セリア-ジルコニア混合酸化物及びガンマアルミナ(タンニン酸によって変性されたPd-低タンニン酸担持量を有する)でウォッシュコートされたTWC触媒バリウム源としての硫酸バリウム
1.必要量の硝酸Pdを含む溶液を調製する(Pd担持量131g/ft3)。
2.セリア-ジルコニア混合酸化物(1g/in3)及びガンマアルミナ(1g/in3)を添加し、1時間混合する。
3.タンニン酸:Pdのモル比=1:12を目標として、必要量のタンニン酸(174g/ft3)を添加する。少なくとも2時間混合する。
4.上記スラリーに必要量の硫酸Ba(Ba担持量400g/ft3)を添加し、少なくとも30分間混合する。
5.スラリー固形物量を30%に調整し、ナトロゾルを添加し、一晩混合する。
6.1.2インチを目標として単回用量をコーティングし、パイロットプラント空気硬化で乾燥させる。
7.静電オーブンの中で500℃で30分間レンガを焼成する。
【0104】
電子プローブマイクロアナライザ(electron probe micro-analyzer、EPMA)Pd及びBa元素マッピング像
図1a~
図1eは、参照触媒(参照例1-
図1a)のPdのEPMAマッピング像に対する、タンニン酸(tannic acid、TA)を使用し、異なるBa塩を添加した、変性された触媒(
図1b~
図1e)のPdのEPMAマッピング像を示す。(a)参照触媒(参照例1-
図1a)と比較して、(b)高担持量(実施例1-
図1b)及び(c)低担持量(実施例2-
図1c)のTAをPd変性に使用したとき、より均一なPd分散が示された。(a)参照例1では、ウォッシュコートの表面層にPdが堆積する。一方、TAによって変性されたPd-TWCは、ウォッシュコートの深さ全体にわたって改善されたPd分布を示した。Pd分布はまた、(d)クエン酸(実施例3-
図1d)を添加してBa(酢酸バリウムとして)と錯体をその場で形成した場合、及び(e)BaSO
4(実施例4-
図1e)を酢酸バリウムの代わりに使用したときにもわずかに改善した。
【0105】
図2a~
図2eは、参照触媒(参照例1-
図2a)のBaのEPMAマッピング像に対する、TAを使用し、異なるBa塩を添加した、変性された触媒(
図2a~
図2e)のBaのEPMAマッピング像を示す。(a)参照例1(
図2a)と比較して、TAによって変性された(b)~(c)触媒(実施例1~実施例2-実施例2b~実施例2c)は、Ba固定においてほとんど効果を示さなかった。一方、(d)クエン酸(実施例3-
図2d)がBaと錯体を形成するために添加されたとき、より均一なBa分布が観察された。(e)BaSO
4としてのBa添加(実施例4-
図2e)もまた、均一なBa分布を示したが、BaSO
4はウォッシュコート調製プロセス全体を通して水不溶性であったので、Ba粒径は有意に増加した。
【0106】
EPMA画像から抽出された元素相関
図3は、参照例1及び実施例1~実施例4のPd-TWCウォッシュコートのEPMA画像から抽出された元素相関(Pd-Ba、Pd-Al、及びPd-Ce)を示す。(a)参照例1と比較して、ウォッシュコート(b~d)実施例1~実施例3におけるTA変性は、AlとのPd相関を有意に増加させ、アルミナ上へのPd固定の増加を示した。加えて、ウォッシュコート(d)(実施例3)におけるBa-クエン酸相互作用は、Pd-Ba相互作用及びセリア上へのPd固定を促進した。
【0107】
酸素吸蔵能
図4は、(Pd-TA)タンニン酸変性無し(参照例1)又は有りの未使用Pd-TWC及びエージングしたPd-TWCの酸素吸蔵能(OSC)を示す。参照例1と比較して、TA変性触媒(実施例1)では、より低い未使用OSC及びより低い未使用対エージング差が観察された。
【0108】
摂動着火性能
図5a~
図5cは、エージング後のTA変性Pd-TWC触媒の、全ての温度での改善された着火性能、特に低温NO
x変換率(
図5a)、CO変換率(
図5b)及びTHC変換率(
図5c)を示す(エージング条件:1000℃/酸化還元/40時間、反応条件:リッチ前処理あり、150~700℃=0.96~1.04、GHSV=200,000/時
-1)。(a)参照例1と比較して、(b)~(d)実施例1~実施例3は、改善されたTWC着火性能が、(1)TA担持量を最適化すること、及び(2)Pdと添加剤、例えばバリウム種との間の相互作用を最適化することによって達成され得ることを示した。添加順序の最適化もまた、TA変性Pd-TWCの性能改善にとって重要である。
【0109】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、
ポリフェノールとPGMとの錯体を提供することであって、前記ポリフェノールが、エステル官能基を含み、前記PGMが、パラジウムを含む、提供することと、
担体材料を提供することと、
前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリフェノールが、タンニン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PGMが、パラジウムからなる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ドープされている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリーが、
水中でPGM塩とポリフェノールとを接触させて、水溶液中でポリフェノールとPGMとの錯体を形成することであって、前記PGM塩が、パラジウムを含む、形成することと、
前記担体材料を前記水溶液と接触させることによって、前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を前記水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スラリーが、
担体材料とPGM塩の水溶液とを接触させて、PGM塩担持担体材料を含むスラリーを形成することであって、前記PGM塩が、パラジウムを含む、形成することと、
前記PGM塩担持担体材料を含む前記スラリーとポリフェノールとを水中で接触させることによって、ポリフェノールとPGMとの錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、前記PGM塩担持担体材料を含む前記水溶液又は前記スラリーに添加することと、を含む方法によって調製される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記担持済み担体材料を基材上に配置することが、前記スラリーを前記基材と接触させること、並びに任意選択的に、
前記基材に真空を適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させることを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱が、
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【請求項15】
ロジウムを上に有する担体材料の最下層と、パラジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項16】
パラジウムを上に有する担体材料の最下層と、ロジウムを上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、パラジウムを含み、前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の触媒物品。
【国際調査報告】