(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240614BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562475
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2022133901
(87)【国際公開番号】W WO2023221446
(87)【国際公開日】2023-11-23
(31)【優先権主張番号】202211240566.2
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522469497
【氏名又は名称】華電電力科学研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUADIAN ELECTRIC POWER RESEARCH INSTITUTE CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10,Xiyuan 1st Road,Sandun Town,Xihu District,Hangzhou,Zhejiang 310000,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】馮前偉
(72)【発明者】
【氏名】張楊
(72)【発明者】
【氏名】杜振
(72)【発明者】
【氏名】江建平
(72)【発明者】
【氏名】裴▲イュ▼坤
(72)【発明者】
【氏名】郭棟
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC11
(57)【要約】
本出願は、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法及びシステムに関し、ここで、この方法は、履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得ることと、稼働状態区間のデータに基づいて、NOx生成濃度を調整制御するための自動最適化モデルを構築することと、実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得ることと、自動最適化モデルにより稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付けることと、順序付け結果に基づいて、自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出することとを含む。本出願により、ボイラー稼働効率とSCR脱硝稼働コストをどのように両立させるかの問題を解決し、最適化モデルに基づいてボイラーユニットにおける各稼働状態指標の最適値を算出することを実現し、ボイラー内のNOxの生成濃度を効果的に調整制御し、さらに効率とコストを両立させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法であって、
履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて前記履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得ることと、
前記稼働状態区間のデータに基づいて、NOx生成濃度を調整制御するための自動最適化モデルを構築することと、
実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得ることと、
前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付けることと、
前記順序付け結果に基づいて、前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出することとを含むことを特徴とする、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法。
【請求項2】
履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて前記履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得ることは、
履歴データを取得することと、
分割数を設定し、(稼働状態分割点の上限値-稼働状態分割点の下限値)/分割数に基づいて、前記履歴データを平均に分割し、複数の稼働状態区間のデータを得ることであって、前記稼働状態分割点が主蒸気流量とユニット負荷とを含むこととを含むことを特徴とする
請求項1に記載のSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法。
【請求項3】
実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得ることは、
実際の作業において、
により実際のデータと各稼働状態区間のユークリッド距離を算出し、ユークリッド距離が最も小さい稼働状態区間をマッチングさせて得ることを含み、ここで、x
iは、実際のデータにおける稼働状態指標iの現在値であり、y
iは、稼働状態区間における稼働状態指標iの中心値であることを特徴とする
請求項1に記載のSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法。
【請求項4】
前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付けることは、
前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における稼働状態指標の指標値を設定することと、
前記指標値が大きいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の大きい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付けることと、
前記指標値が小さいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の小さい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付けることとを含むことを特徴とする
請求項1に記載のSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法。
【請求項5】
前記順序付け結果に基づいて、前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出することは、
前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の平均値±3倍の標準差範囲外のデータを除去し、そして前記順序付けた上位10%-15%のデータの平均値を各稼働状態指標の最適値として取ることを含むことを特徴とする
請求項1に記載のSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法。
【請求項6】
SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システムであって、データ処理モジュールと、モデル構築モジュールと、マッチングモジュールと、順序付けモジュールと、最適化モジュールとを含み、
前記処理モジュールは、履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて前記履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得るために用いられ、
前記モデル構築モジュールは、前記稼働状態区間のデータに基づいて、NOx生成濃度を調整制御するための自動最適化モデルを構築するために用いられ、
前記マッチングモジュールは、実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得るために用いられ、
前記順序付けモジュールは、前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付けるために用いられ、
前記最適化モジュールは、前記順序付けたデータに基づいて、前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出するために用いられることを特徴とする、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システム。
【請求項7】
前記データ処理モジュールはさらに、履歴データを取得し、分割数を設定し、(稼働状態分割点の上限値-稼働状態分割点の下限値)/分割数に基づいて、前記履歴データを平均に分割し、複数の稼働状態区間のデータを得るために用いられ、ここで、前記稼働状態分割点は、主蒸気流量とユニット負荷とを含むことを特徴とする
請求項6に記載のSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システム。
【請求項8】
前記マッチングモジュールはさらに、実際の作業において、
により実際のデータと各稼働状態区間のユークリッド距離を算出し、ユークリッド距離が最も小さい稼働状態区間をマッチングさせて得るために用いられ、ここで、x
iは、実際のデータにおける稼働状態指標iの現在値であり、y
iは、稼働状態区間における稼働状態指標iの中心値であることを特徴とする
請求項6に記載のSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システム。
【請求項9】
前記順序付けモジュールはさらに、前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における稼働状態指標の指標値を設定し、前記指標値が大きいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の大きい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付け、前記指標値が小さいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の小さい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付けるために用いられることを特徴とする
請求項6に記載のSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システム。
【請求項10】
前記最適化モジュールはさらに、前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の平均値±3倍の標準差範囲外のデータを除去し、そして前記順序付けた上位10%-15%のデータの平均値を各稼働状態指標の最適値として取るために用いられることを特徴とする
請求項6に記載のSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、工業排ガス浄化技術分野に関し、特にSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
SCR(Selective Catalytic Reduction、選択触媒還元)脱硝は、選択的触媒還元法とも呼ばれ、現在では国際的に最も広く応用されている排煙脱硝技術であり、一般的には、アンモニア(NH3)を還元剤として用い、生成したNOxを選択的にN2に還元する。それは、副生成物がなく、二次汚染が発生せず、装置の構造が簡単で、かつ脱出効率が高く(90%以上に達する)、稼働が確実で、メンテナンスが容易であるなどの利点を有する。低窒素燃焼+SCR排煙脱硝技術は、石炭を燃料としたボイラーにおける脱硝の超低排出の主流技術であり、ディープピーク調整の大情勢下ではボイラー内における燃焼は、NOx制御の難易度が大きくなり、ボイラー効率が低下し、SCR脱硝システムの空気予熱器が閉塞し、稼働コストが高いなどの一連の問題に直面している。
【0003】
低窒素稼働方式を調整することでNOx生成濃度を低減させることは、脱硝システムのコストの低下に有利であるが、これに応じてボイラーの効率を犠牲にして、ボイラー側の稼働コストを高める。逆に、高濃度のボイラー内のNOxの生成は、ボイラー効率を犠牲にすることを避けることができるが、脱硝システムのコストを高めることを引き起こしてしまう。低窒素燃焼によるNOx生成とSCR脱硝運転コストの最適化をどのように両立させるかは、現在の電力環境保護分野で早急に解決すべき技術的課題である。石炭火力発電所がスマート化に進むにつれて、従来の最適化調整方式は依然として現在の石炭を燃料としたボイラーが直面している高効率燃焼、低NOx排出の間の際立った矛盾を効果的に解決することができない。
【0004】
現在では、関連技術においてボイラー稼働効率とSCR脱硝稼働コストをどのように両立させるかの問題について、有効な解決手段がまだ提出されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の実施例は、関連技術においてボイラー稼働効率とSCR脱硝稼働コストをどのように両立させるかの問題を少なくとも解決するために、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様によれば、本出願の実施例は、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法を提供し、前記方法は、
履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて前記履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得ることと、
前記稼働状態区間のデータに基づいて、NOx生成濃度を調整制御するための自動最適化モデルを構築することと、
実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得ることと、
前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付けることと、
前記順序付け結果に基づいて、前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出することとを含む。
【0007】
そのうちのいくつかの実施例では、履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて前記履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得ることは、
履歴データを取得することと、
分割数を設定し、(稼働状態分割点の上限値-稼働状態分割点の下限値)/分割数に基づいて、前記履歴データを平均に分割し、複数の稼働状態区間のデータを得ることであって、前記稼働状態分割点が主蒸気流量とユニット負荷とを含むこととを含む。
そのうちのいくつかの実施例では、実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得ることは、
実際の作業において、
により実際のデータと各稼働状態区間のユークリッド距離を算出し、ユークリッド距離が最も小さい稼働状態区間をマッチングさせて得ることを含み、ここで、x
iは、実際のデータにおける稼働状態指標iの現在値であり、y
iは、稼働状態区間における稼働状態指標iの中心値である。
【0008】
そのうちのいくつかの実施例では、前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付けることは、
前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における稼働状態指標の指標値を設定することと、
前記指標値が大きいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の大きい順に応じて、各稼働状態指標のデータをそれぞれ順序付けることと、
前記指標値が小さいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の小さい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付けることとを含む。
【0009】
そのうちのいくつかの実施例では、前記順序付け結果に基づいて、前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出することは、
前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の平均値±3倍の標準差範囲外のデータを除去し、そして前記順序付けた上位10%-15%のデータの平均値を各稼働状態指標の最適値として取ることを含む。
【0010】
第二の態様によれば、本出願の実施例は、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システムを提供し、前記システムは、データ処理モジュールと、モデル構築モジュールと、マッチングモジュールと、順序付けモジュールと、最適化モジュールとを含み、
前記処理モジュールは、履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて前記履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得るために用いられ、
前記モデル構築モジュールは、前記稼働状態区間のデータに基づいて、NOx生成濃度を調整制御するための自動最適化モデルを構築するために用いられ、
前記マッチングモジュールは、実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得るために用いられ、
前記順序付けモジュールは、前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付けるために用いられ、
前記最適化モジュールは、前記順序付けたデータに基づいて、前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出するために用いられる。
【0011】
そのうちのいくつかの実施例では、前記データ処理モジュールはさらに、履歴データを取得し、分割数を設定し、(稼働状態分割点の上限値-稼働状態分割点の下限値)/分割数に基づいて、前記履歴データを平均に分割し、複数の稼働状態区間のデータを得るために用いられ、ここで、前記稼働状態分割点は、主蒸気流量とユニット負荷とを含む。
【0012】
そのうちのいくつかの実施例では、前記マッチングモジュールはさらに、実際の作業において、
により実際のデータと各稼働状態区間のユークリッド距離を算出し、ユークリッド距離が最も小さい稼働状態区間をマッチングさせて得るために用いられ、ここで、x
iは、実際のデータにおける稼働状態指標iの現在値であり、y
iは、稼働状態区間における稼働状態指標iの中心値である。
【0013】
そのうちのいくつかの実施例では、前記順序付けモジュールはさらに、前記自動最適化モデルにより前記稼働状態区間における稼働状態指標の指標値を設定し、前記指標値が大きいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の大きい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付け、前記指標値が小さいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の小さい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付けるために用いられる。
【0014】
そのうちのいくつかの実施例では、前記最適化モジュールはさらに、前記自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の平均値±3倍の標準差範囲外のデータを除去し、そして前記順序付けた上位10%-15%のデータの平均値を各稼働状態指標の最適値として取るために用いられる。
【発明の効果】
【0015】
関連技術に比べて、本出願の実施例によるSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法及びシステムは、履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得て、稼働状態区間のデータに基づいて、NOx生成濃度を調整制御するための自動最適化モデルを構築し、実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得て、自動最適化モデルにより稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付け、順序付け結果に基づいて、自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出することで、ボイラー稼働効率とSCR脱硝稼働コストをどのように両立させるかの問題を解決し、最適化モデルに基づいてボイラーユニットにおける各稼働状態指標の最適値を算出することを実現し、ボイラー内のNOxの生成濃度を効果的に調整制御し、ボイラー稼働効率とSCR脱硝稼働コストを効果的に両立させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本出願の実施例によるSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法のフローチャートである。
【
図2】本出願の実施例によるSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システムの構造ブロック図である。
【
図3】本出願の実施例による電子機器の内部構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで説明される図面は、本出願いのさらなる理解を提供するために使用され、本出願の一部を構成し、本願の例示的な実施例とその説明は本出願を解釈するためのものであり、本願の不当な限定を構成するものではない。
【0018】
本出願の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下では、図面及び実施例を結びつけながら、本出願を記述して説明する。理解すべきこととして、ここで記述される具体的な実施例は、本出願を解釈するためのものだけであり、本出願を限定するものではない。本出願における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を払わない前提で得られたすべての他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0019】
明らかに、以下の記述における図面は本出願のいくつかの例又は実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を払うことなく、これらの図面に基づいて本出願を他の類似したシナリオに適用することもできる。また、さらに理解できるように、このような開発過程における努力は複雑かつ冗長である可能性があるが、本出願に開示された内容に関連する当業者にとっては、本出願に開示された技術的内容に基づいて行われたいくつかの設計、製造又は生産などの変更は通常の技術的手段であり、本願に開示された内容が不十分であると理解すべきではない。
【0020】
本出願において「実施例」と言及する場合、実施例で説明された特定の特徴、構造又は特性が本出願の少なくとも一つの実施例に含まれてもよいことを意味する。明細書の様々な箇所におけるこの語句は、必ずしも同じ実施例を指すというわけではなく、他の実施例を排斥する、独立した又は代替的な実施例でもない。当業者に明白又は非明示的に理解されるように、本出願に説明された実施例は、矛盾しない限り、他の実施例と組み合わせてもよい。
【0021】
別の定義がない限り、本出願に関わる技術的用語又は科学的用語は、本出願が属する技術分野で一般的な技能を有する者が理解する一般的な意味である。本出願に関わる「一」、「一つ」、「一種」、「当該」などの類似している用語は、数を制限するものではなく、単数又は複数を表してもよい。本出願に関わる用語である「包括」、「含む」、「有する」という用語及びそれらの任意の変形は、非排他的な「含む」を意図的にカバーするものであり、例えば、一連のステップ又はモジュール(ユニット)を含むプロセス、方法、システム、製品又は機器は、リストアップされているステップ又はユニットに限定されず、リストアップされていないステップ又はユニットをさらに含んでもよく、又はこれらのプロセス、方法、製品又は機器に固有の他のステップ又はユニットをさらに含んでもよい。本出願に関わる「接続」、「相互接続」、「結合」などの類似している用語は、物理的又は機械的な接続に限定されるものではなく、直接的なものであるかそれとも間接的なものであるかに関わらず、電気的な接続を含んでもよい。本出願に関わる「複数」は、二つ以上を指す。「及び/又は」は、関連対象の関連関係を説明するものであり、三つの関係が存在し得ることを表し、例えば、「A及び/又はB」は、単独のA、AとBとの組み合わせ、単独のBの三つのケースを表してもよい。文字「/」は、一般的に前後関連対象が「又は」の関係であることを表す。本出願に関わる用語である「第一」、「第二」、「第三」などは、類似している対象を区別するためのものだけであり、対象の特定の順序を表すものではない。
【0022】
本出願の実施例は、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法を提供し、
図1は、本出願の実施例によるSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法のフローチャートであり、
図1に示すように、この方法は、以下のステップを含む。
【0023】
ステップS102、履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得て、
具体的には、履歴データを取得し、分割数を設定し、(稼働状態分割点の上限値-稼働状態分割点の下限値)/分割数に基づいて、履歴データを平均に分割し、複数の稼働状態区間のデータを得て、ここで、稼働状態分割点は、主蒸気流量とユニット負荷とを含む。
【0024】
好ましくは、稼働状態指標(例えば、SCRアンモニアガス供給流量、SCRアンモニア供給圧力、SCR入口排煙流量、SOFエア割合など)のタイプは、数値型であり、稼働状態指標の分割数は、必須入力項目であり、最小1を記入し、1つの稼働状態区間に分割する場合、上下限は、ヌルであってもよく、複数の稼働状態に分割する場合、(稼働状態分割点の上限値-下限値)/分割数に基づいて、稼働状態指標を平均に分割する。例えば、稼働状態分割点がユニット負荷である場合、300MWユニットについて、分割数は、5であり、即ち(300MW-0MW)/5=60MWであり、負荷モードを20%(60MWに対応する)に設定すると、0-20%(0-60MWに対応する)は、一つの稼働状態区間であり、20-40%(60-120MWに対応する)は、一つの稼働状態区間であり、40-60%(120-180MWに対応する)は、一つの稼働状態区間であり、60-80%(180-240MWに対応する)は、一つの稼働状態区間であり、80-100%(240-300MWに対応する)は、一つの稼働状態区間である。
【0025】
ステップS104、稼働状態区間のデータに基づいて、NOx生成濃度を調整制御するための自動最適化モデルを構築し、
具体的には、稼働状態区間のデータに基づいて、SCR脱硝効率自動最適化の指標を脱硝入口NOx濃度値として設定し、稼働状態区間における稼働状態指標と脱硝入口NOx濃度値とを関連付ける自動最適化モデルを構築し、このモデルは、稼働状態区間における稼働状態指標の最適地を計算するためのものであり、それによりボイラーにおけるNOxの生成濃度(即ち脱硝入口NOx濃度値)を調整制御する。
【0026】
説明すべきこととして、NOxは、窒素酸素化合物の総称であり、一般的にはNOとNO2などを含む。二酸化炭素以外に、他の窒素酸化物はいずれも非常に安定しておらず、光、湿、熱により二酸化窒素及び一酸化窒素になり、一酸化窒素はさらに二酸化窒素になり、例えば、一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素(N2O4)などであり、なお、一つのボイラーユニット機器は、複数種のタイプの自動最適化モデルに対応してもよく、各タイプについて、一つの使用中のモデルと一つの候補モデルを構築してもよく、使用中のモデルは、修正不可であり、候補モデルは、修正と有効化が可能である。
【0027】
ステップS106、実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得て、
具体的には、実際の作業において、
により実際のデータと各稼働状態区間のユークリッド距離を算出し、ユークリッド距離が最も小さい稼働状態区間をマッチングさせて得て、ここで、x
iは、実際のデータにおける稼働状態指標iの現在値であり、y
iは、稼働状態区間における稼働状態指標iの中心値である。
【0028】
ステップS108、自動最適化モデルにより稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付け、
具体的には、自動最適化モデルにより稼働状態区間における稼働状態指標の指標値を設定し、指標値が大きいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば(大きいものが好ましい)、指標値の大きい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付け、指標値が小さいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば(小さいものが好ましい)、指標値の小さい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付ける。
【0029】
ステップS110、順序付け結果に基づいて、自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出する。
【0030】
具体的には、自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の平均値±3倍の標準差範囲外のデータを除去し、そして順序付けた上位10%-15%のデータの平均値を各稼働状態指標の最適値として取る。
【0031】
さらに、予め設定される周期に応じて、ステップS106からステップS110を繰り返して実行し、各回の実行により得られた稼働状態指標の最適値をデータベースに記憶して、後続のビッグデータ分析に用い、ここで、この予め設定される周期は必要に応じて設定されてもよく、例えば、一分間であり、即ち、一分間ごとにステップS106からステップS110を一回実行し、一分間ごとに稼働状態指標の最適値を得る。
【0032】
本出願の実施例におけるステップS102からステップS110により、ボイラー稼働効率とSCR脱硝稼働コストをどのように両立させるかの問題を解決し、最適化モデルに基づいてボイラーユニットにおける各稼働状態指標の最適値を算出することを実現し、ボイラー内のNOxの生成濃度を効果的に調整制御し、ボイラー稼働効率とSCR脱硝稼働コストを効果的に両立させる。履歴データ及び大きいものが好ましいこと、小さいものが好ましいことで反復するという方式に基づいて、異なる負荷での稼働状態指標の最適点を計算し、且つそれを、稼働のリアルタイム調整の最適値とし、さらに、稼働調整において最適値に基づいてリアルタイムな分析と最適化調整制御を行うことは、系統的であり、正確で、操作性が高いなどの利点を有し、SCR脱硝システムを確実かつ経済的に稼働することを保証することができ、著しい環境保護効果、安全効果及び経済的効果を有し、広い応用の見通しがある。
【0033】
説明すべきこととして、上記のフロー又は図面のフローチャートに示されたステップは、一組のコンピュータ実行可能な命令などのようなコンピュータシステムで実行されることができ、且つ、フローチャートに論理的順序を示したが、場合によっては、示されたステップ又は説明されたステップをここの順序と異なる順序で実行してもよい。
【0034】
本出願の実施例は、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システムを提供し、
図2は、本出願の実施例によるSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御システムの構造ブロック図であり、
図2に示すように、このシステムは、データ処理モジュール21と、モデル構築モジュール22と、マッチングモジュール23と、順序付けモジュール24と、最適化モジュール25とを含み、
処理モジュール21は、履歴データを取得し、稼働状態分割点に基づいて履歴データを分割し、複数の稼働状態区間のデータを得るために用いられ、
モデル構築モジュール22は、稼働状態区間のデータに基づいて、NOx生成濃度を調整制御するための自動最適化モデルを構築するために用いられ、
マッチングモジュール23は、実際の作業において、実際のデータにおける稼働状態指標の現在値に基づいて、対応する稼働状態をマッチングさせて得るために用いられ、
順序付けモジュール24は、自動最適化モデルにより稼働状態区間における各稼働状態指標のデータ値を予め設定される順番に応じてそれぞれ順序付けるために用いられ、
最適化モジュール25は、順序付けたデータに基づいて、自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の最適値を算出するために用いられる。
【0035】
そのうちのいくつかの実施例では、データ処理モジュール21はさらに、履歴データを取得し、分割数を設定し、(稼働状態分割点の上限値-稼働状態分割点の下限値)/分割数に基づいて、履歴データを平均に分割し、複数の稼働状態区間のデータを得るために用いられ、ここで、稼働状態分割点は、主蒸気流量とユニット負荷とを含む。
【0036】
そのうちのいくつかの実施例では、マッチングモジュール23はさらに、実際の作業において、
により実際のデータと各稼働状態区間のユークリッド距離を算出し、ユークリッド距離が最も小さい稼働状態区間をマッチングさせて得るために用いられ、ここで、x
iは、実際のデータにおける稼働状態指標iの現在値であり、y
iは、稼働状態区間における稼働状態指標iの中心値である。
【0037】
そのうちのいくつかの実施例では、順序付けモジュール24はさらに、自動最適化モデルにより稼働状態区間における稼働状態指標の指標値を設定し、指標値が大きいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の大きい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付け、指標値が小さいほど、対応する稼働状態指標のデータ値が好ましくなれば、指標値の小さい順に応じて、各稼働状態指標のデータ値をそれぞれ順序付けるために用いられる。
【0038】
そのうちのいくつかの実施例では、最適化モジュール25はさらに、自動最適化モデルにより、各稼働状態指標の平均値±3倍の標準差範囲外のデータを除去し、そして順序付けた上位10%-15%のデータの平均値を各稼働状態指標の最適値として取るために用いられる。
【0039】
説明すべきこととして、上記各モジュールは、機能モジュールであってもよく、プログラムモジュールであってもよく、ソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現されるモジュールについて、上記各モジュールは、同一のプロセッサに位置してもよく、又は上記各モジュールは、任意の組み合わせの形式でそれぞれ異なるプロセッサに位置してもよい。
【0040】
本実施例は、電子装置をさらに提供し、メモリと、プロセッサとを含み、このメモリにコンピュータプログラムが記憶されており、このプロセッサは、コンピュータプログラムを実行して上記いずれか一つの方法の実施例におけるステップを実行するように設定される。
【0041】
選択的に、上記電子装置は、伝送機器と入力出力機器をさらに含んでもよく、ここで、この伝送機器は上記プロセッサと接続され、この入力出力機器は上記プロセッサと接続される。
【0042】
説明すべきこととして、本実施例における具体的な例は、上記実施例及び選択的な実施形態に記載の例を参照してもよく、本実施例はここでこれ以上説明しない。
【0043】
なお、上記実施例におけるSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法について、本出願の実施例は、記憶媒体を提供して実現することができる。この記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶されており、このコンピュータプログラムがプロセッサにより実行される時、上記実施例におけるいずれか一つのSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法を実現する。
【0044】
一つの実施例では、コンピュータ機器を提供し、このコンピュータ機器は、端末であってもよい。このコンピュータ機器は、システムバスを介して接続されるプロセッサ、メモリ、ネットワークインターフェース、ディスプレイ及び入力装置を含む。ここで、このコンピュータ機器のプロセッサは、計算と制御能力を提供するために用いられる。このコンピュータ機器のメモリは、不揮発性記憶媒体、内部メモリを含む。この不揮発性記憶媒体にオペレーティングシステム及びコンピュータプログラムが記憶されている。この内部メモリは、不揮発性記憶媒体におけるオペレーティングシステム及びコンピュータプログラムの実行のために環境を提供する。このコンピュータ機器のネットワークインターフェースは、ネットワーク接続を介して外部の端末と通信するために用いられる。このコンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されてSCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法を実現する。このコンピュータ機器のディスプレイは、液晶ディスプレイ又は電子インクディスプレイであってもよく、このコンピュータ機器の入力装置は、ディスプレイを覆ったタッチ層であってもよく、コンピュータ機器の筐体に設けられたキー、トラックボール、又はタッチボードであってもよく、外付けのキーボード、タッチボード又はマウスなどであってもよい。
【0045】
一つの実施例では、
図3は、本出願の実施例による電子機器の内部構造概略図であり、
図3に示すように、電子機器を提供し、この電子機器は、サーバであってもよく、その内部構造図は、
図3に示すとおりであってもよい。この電子機器は、内部バスを介して接続されるプロセッサ、ネットワークインターフェース、内部メモリ及び非揮発性メモリを含み、ここで、この非揮発性メモリにオペレーティングシステム、コンピュータプログラム及びデータベースが記憶されている。プロセッサは、計算と制御能力を提供するために用いられ、ネットワークインターフェースは、ネットワーク接続を介して外部の端末と通信するために用いられ、内部メモリは、オペレーティングシステムとコンピュータプログラムの実行のために環境を提供するために用いられ、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行される時、SCR脱硝効率のための自動最適化調整制御方法を実現し、データベースは、データを記憶するために用いられる。
【0046】
当業者であれば理解できるように、
図3に示す構造は、本出願に関連する一部の構造のブロック図に過ぎず、本出願が適用される電子機器を限定するものではない。具体的な電子機器は、図に示すよりも多く又は少ない部品を含んでもよく、又は一部の部品を組み合わせてもよく、又は異なる部品の配置を有してもよい。
【0047】
当業者であれば理解できるように、上記実施例の方法を実現する全部又は一部のフローが、コンピュータプログラムにより関連するハードウェアを命令して完成され、このコンピュータプログラムは、不揮発性コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され、このコンピュータプログラムが実行される時、上記各方法の実施例のフローを含むことができる。ここで、本出願による各実施例で使用されるメモリ、記憶、データベース又は他の媒体への任意の援用は、いずれも不揮発性及び/又は揮発性メモリを含むことができる。不揮発性メモリは、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、電気的プログラマブルROM(EPROM)、電気的消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)又はフラッシュを含んでもよい。揮発性メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は外部高速キャッシュメモリを含んでもよい。限定ではなく説明として、RAMは、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、同期DRAM(SDRAM)、ダブルデータレートSDRAM(DDRSDRAM)、拡張型SDRAM(ESDRAM)、同期リンク(Synchlink) DRAM(SLDRAM)、メモリバス(Rambus)ダイレクトRAM(RDRAM)、ダイレクトメモリバスダイナミックRAM(DRDRAM)及びメモリバスダイナミックRAM(RDRAM)などのような様々な形で入手可能である。
【0048】
当業者であれば分かるように、以上に記載の実施例の各技術的特徴を任意に組み合わせることができ、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の可能な全ての組み合わせを説明するわけではないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、本明細書に記載の範囲であると考えるべきである。
【0049】
以上に記載の実施例は、本出願のいくつかの実施形態を示すものだけであり、その記述は比較的に具体的かつ詳細であるが、これによって発明の特許範囲を制限ものとは理解できない。指摘すべきこととして、当業者にとって、本出願の構想を逸脱することなく、複数の変形と改良を加えることができ、これらはいずれも本出願の保護範囲に属する。従って、本出願の特許の保護範囲は添付の特許請求の範囲に準ずるものとする。
【符号の説明】
【0050】
21、データ処理モジュール 22、モデル構築モジュール 23、マッチングモジュール 24、順序付けモジュール 25、最適化モジュール
【国際調査報告】