(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】アルミニウム含有熱伝導ペースト
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240614BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240614BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240614BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240614BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240614BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240614BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240614BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/08
C09J183/04
C09J11/04
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/653
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562918
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2022052024
(87)【国際公開番号】W WO2023143728
(87)【国際公開日】2023-08-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノール,セバスティアン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
5H031
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP061
4J002CP121
4J002DA027
4J002DA077
4J002DA096
4J002DB017
4J002DE077
4J002DE107
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ007
4J002DK007
4J002FD206
4J002FD207
4J002GQ00
4J040EK031
4J040HA076
4J040KA43
4J040NA16
4J040NA19
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE04
5H031HH03
5H031HH09
(57)【要約】
本発明は、架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)であって、
5~50体積%の架橋性シリコーン組成物(S)、及び
少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する50~95体積%の少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)を含み、ただし、
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有し、
熱伝導性フィラー(Z)として存在する少なくとも20体積%の金属アルミニウム粒子は、以下の特徴、すなわち、
a) それらの中央径x50は30~150μmの範囲であり、
b) それらは、最後の製造ステップで溶融プロセスを介して製造され、主として丸みを帯びた表面形状を有し、
c) それらの分布範囲SPAN((x90-x10)/x50)は、少なくとも0.40であることを満たす架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)
並びにその製造及び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)であって、
5~50体積%の架橋性シリコーン組成物(S)、及び
少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する50~95体積%の少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)を含み、ただし、
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有し、
熱伝導性フィラー(Z)として存在する少なくとも20体積%の金属アルミニウム粒子は、以下の特徴、すなわち、
a) それらの中央径x50は30~150μmの範囲であり、
b) それらは、最後の製造ステップで溶融プロセスを介して製造され、主として丸みを帯びた表面形状を有し、
c) それらの分布範囲SPAN((x90-x10)/x50)は、少なくとも0.40である、
ことを満たす架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)。
【請求項2】
付加架橋シリコーン組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラー(Z)として少なくとも25体積%の金属アルミニウム粒子を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項4】
前記金属アルミニウム粒子の他に、1種のみ又は2種のさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項5】
5.0kg/m
3より大きい密度を有する16重量%未満のさらなる熱伝導性フィラー(Z)が存在することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項6】
前記金属アルミニウム粒子の中央径x50は、40~130μmの範囲であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項7】
前記金属アルミニウム粒子は、アルミニウム粒子の総量に基づいて、20重量%未満の20μm以下の直径を有する粒子画分を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項8】
少なくとも0.8W/mKの熱伝導率を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項9】
いずれの場合もせん断速度D=10s
-1及び25℃で1000~750000mPa・sの動的粘度を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項10】
個々の成分を混合することによって、請求項1~9のいずれかに記載の本発明の架橋性シリコーン組成物を製造する方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の本発明の架橋性シリコーン組成物を分配又は塗布し、次いで硬化させることによって得ることができるシリコーン生成物。
【請求項12】
ギャップフィラー(=熱伝導性要素)、熱伝導性パッド、熱伝導性接着剤及び封入化合物としての請求項1~9のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物の使用。
【請求項13】
電気自動車のリチウムイオン電池用のギャップフィラーとしての請求項12に記載の使用。
【請求項14】
電気自動車の封入化合物としての請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン組成物、並びにその製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性シリコーン組成物は、自動車及びエレクトロニクス産業における熱管理に広く使用されている。重要な表示形態の例としては、熱伝導性接着剤、熱伝導性パッド、ギャップフィラー及び封入化合物が挙げられる。言及された用途のうち、電気自動車のリチウムイオン電池用のギャップフィラーは、量的に圧倒的に多い。ギャップフィラーは、製造公差、ビルド高さの差又は異なる膨張係数によって引き起こされる空隙を完全にかつ持続的に充填し、例えば、電子部品と冷却ジャケット又はヒートシンクとの間の熱抵抗を最小限に抑える熱伝導性エラストマーである。
【0003】
当技術分野には、熱伝導率を高めるために、シリコーンに添加される様々な熱伝導性フィラーが含まれる。しかし、これらは重大な欠点を有する。セラミックフィラー、例えば、酸化アルミニウムは、非常に高い密度を有し、したがって、部品の重量を非常に著しく増加させる。また、それらは比較的高価である。多くの熱伝導性金属フィラー、例えば、微細に分割された銅及び銀粒子は、同様にそれらの密度が高くコストがかかるため、ギャップフィラーには不適切である。
【0004】
高い熱伝導性のさらなるフィラー、例えば、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムの多くは、それらの比較的高いコストのため、限られた程度でのみ、又は少量で、又は特定の用途でしか使用することができない。
【0005】
先行技術は、熱伝導性フィラーとしてアルミニウム粒子を含有する様々な熱伝導性シリコーン組成物を含む。これらは比較的軽量で安価である。また、半導体であるアルミニウムは極めて低い電気伝導度を有する。しかし、先行技術によるアルミニウム粒子は、電気自動車用のリチウムイオン電池におけるギャップフィラーとしての使用に不適切である。
【0006】
先行技術では、20μm未満の平均粒径を有する非常に微細に分割されたアルミニウム粒子が使用されている。20μm未満のアルミニウム粒子の使用は、そのような粒子が比較的低い最小点火エネルギーを有し、したがって粉塵爆発のリスクを呈し、工業的加工において複雑で費用のかかる安全措置を必要とするので不利である。また、そのような微細に分割されたアルミニウム粒子を含有するギャップフィラーは、UL94V-0に準拠した必要な火災特性を達成しない。
【0007】
非常に微細なアルミニウム粒子又は粉砕アルミニウム粒子の別の欠点は、そのような粒子が比較的高い表面積を有し、非常に大量のポリマーを結合することである。これは、シリコーン組成物の粘度を非常に著しく増加させ、したがって比較的低いフィラーレベル及び低い熱伝導率を有する混合物を製造することのみが可能となる。より高いフィラーレベルの場合、組成物は非常に硬くなり、従来の方法、例えば、ディスペンサーによってもはや加工することができない。粉砕アルミニウム粒子を含有するシリコーン組成物は、比較的可燃性が高いことも見出された。
【0008】
熱伝導性シリコーン組成物における細かく分割されたアルミニウム粒子の使用を開示する多数の特許明細書、例えば、US2007167564、US2002014692、US2003049466、US2018022977、JP2014037460、WO21079714、US2011163460、US2016208156、JP2010013521、JP2014037460、US2016060462及びUS2016068732がある。これらの文献には、粒子の形状に関する開示はなく、平均粒径の非常に広い定義しかない。具体例は、20μm未満の非常に微細なアルミニウム粒子の使用を開示する。
【0009】
しかし、20μm未満の非常に小さなアルミニウム粒子の使用は、大きな欠点を伴う。それらは、比較的低い最小点火エネルギーを有し、したがって、粉塵爆発の危険性があるため、それらは、工業的加工において複雑かつ費用のかかる安全措置を必要とする。また、このような微細に分割されたアルミニウム粒子を含有するシリコーン組成物は、UL94V-0規格に準拠した要求された火災特性を達成せず、したがって、リチウムイオン電池におけるギャップフィラーとしての使用に不適切である。さらなる欠点は、そのような微細に分割されたアルミニウム粒子が大きな表面積を有し、非常に大量のポリマーを結合することである。これは、シリコーン組成物の粘度を非常に著しく増加させる。比較的低いフィラーレベル及び低い熱伝導率を有する混合物を製造することのみが可能となる。
【0010】
US2017002248は、6W/mKを超える高い熱伝導率及び低い割線弾性率を有する熱界面材料を請求する。可能なマトリックス材料の広い選択が特定されている(熱可塑性物質、熱硬化性物質、ポリマー)。可能な熱伝導性フィラーの広範な選択が開示され、例えば、金属酸化物、金属窒化物、又は金属アルミニウムを含むセラミックが、形状及びサイズのさらなる仕様なしに開示される。実施例は、いずれの場合も3種類の異なるサイズの酸化アルミニウム及び4種類の異なるサイズのアルミニウム(Al-1:150μm、Al-2:80μm、Al-3:5μm、Al-4:50μm)を混合することによる、マトリックス材料として、付加架橋シリコーン組成物、シリコーンオイル及び鉱油、並びにフィラーとして、酸化アルミニウム及び金属アルミニウムのみの組み合わせを開示し、全ての種類は球状である。ここで、アルミニウム粒子の含有率は42重量%を超え、酸化アルミニウム粒子の含有率は37重量%を超える。アルミニウム粒子の総量に基づく、20μm未満の小さいアルミニウム粒子(実施例Al-3の粒子)の添加割合は、いずれの場合も20%を超える。20μm未満の非常に小さなアルミニウム粒子の添加及び含有率は、言及した欠点に関連する。そのような大量の酸化アルミニウムの使用は、加えて、そのような熱界面材料の製造を非常に高価にし、それらを2.69g/mlを超える比較的高い密度にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/167564号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/014692号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/049466号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/022977号明細書
【特許文献5】特開2014-037460号公報
【特許文献6】国際公開第2021/079714号
【特許文献7】米国特許出願公開第2011/163460号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2016/208156号明細書
【特許文献9】特開2010-013521号公報
【特許文献10】特開2014-037460号公報
【特許文献11】米国特許出願公開第2016/060462号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2016/068732号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2017/002248号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、先行技術の上述の欠点を示さず、低密度、低コスト及び高熱伝導率の特性を組み合わせた熱伝導性シリコーンエラストマー組成物を提供することが、本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、20~150mmの平均粒径を有し、同時に、特に大きい又は広い粒子分布範囲を有する主として丸みを帯びた表面形状の比較的大きいアルミニウム粒子を含有する本発明の架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)によって達成される。全く驚くべきことに、実験において、これらの本発明のシリコーン組成物(Y)が明らかに低減された可燃性を有することが見出された。
【0014】
本発明の関連において、「主として丸みを帯びた表面形状」を有するアルミニウム粒子は、球形から楕円形、不規則、又は結節形状を有し、同時に平滑かつ湾曲した表面を有するものを意味すると理解される。
図1a~1cは、例として、これらのアルミニウム粒子の本発明の主として丸みを帯びた表面形状を示す。主として丸みを帯びた表面形状を有する本発明のアルミニウム粒子は、溶融プロセスによって製造される。換言すれば、本発明のアルミニウム粒子は、固体材料の機械的粉砕によってではなく、溶融物からの凝固によって製造の最終段階で得られなければならない。これは、例えば、プラズマ丸めによって、又は溶融物のアトマイズによって行うことができる。ここでは、アトマイズが好ましいプロセスである。
【0015】
本発明でないアルミニウム粒子形状は、角張った及び先端のとがった粒子を有する
図2a及び2bによって例として示される。これらは、破砕又は粉砕又は研磨法によって製造される。
【0016】
したがって、主として丸みを帯びた表面形状を有する本発明の金属アルミニウム粒子は、角張っておらず、先端がとがってもいない。しかし、それらは、本発明の作用をいかなる妨害もなしに不純物の程度までそのような粒子を含有し得る。
【0017】
したがって、本発明は架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)であって、
5~50体積%の架橋性シリコーン組成物(S)、及び
少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する50~95体積%の少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)を含み、ただし、
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有し、
熱伝導性フィラー(Z)として存在する少なくとも20体積%の金属アルミニウム粒子は、以下の特徴、すなわち、
a) それらの中央径x50は30~150μmの範囲であり、
b) それらは、最後の製造ステップで溶融プロセスを介して製造され、主として丸みを帯びた表面形状を有し、
c) それらの分布範囲SPAN((x90-x10)/x50)は、少なくとも0.40である、ことを満たす架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)を提供する。
【0018】
本発明の文脈では、「熱伝導性」(heat-conducting)及び「熱伝導性」(thermally conductive)という用語は同等である。
【0019】
本発明の関連における熱伝導性フィラー(Z)は、少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する任意のフィラーを意味すると理解される。
【0020】
本発明の関連における熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、フィラー及び添加剤を含まないポリジメチルシロキサンの熱伝導率、典型的には約0.2W/mKを明らかに上回り、これらは少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有することを特徴とするシリコーン組成物を意味すると理解される。
【0021】
本発明の関連において、粒径(パラメータ:中央径x50)又は粒径分布(パラメータ:分布範囲SPAN)を記述する全てのパラメータは、体積に基づく分布に基づく。言及した指数は、例えば、Retsch Technology製のCamsizer X2を用いて、例えば、ISO 13322-2及びISO 9276-6に準拠した動的画像解析によって測定することができる。
【0022】
本発明の説明において過剰な数のページを生成しないために、個々の特徴の好ましい実施形態のみが説明において詳述される。
【0023】
しかし、異なるレベルの選好の任意の組合せも明示的に開示され、明示的に所望されるように、専門家の読者はこの開示方法を明示的に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】例として、これらのアルミニウム粒子の本発明の主として丸みを帯びた表面形状を示す。
【
図1b】例として、これらのアルミニウム粒子の本発明の主として丸みを帯びた表面形状を示す。
【
図1c】例として、これらのアルミニウム粒子の本発明の主として丸みを帯びた表面形状を示す。
【
図2a】角張った粒子を有する本発明でないアルミニウム粒子形状を示す。
【
図2b】先端がとがった粒子を有する本発明でないアルミニウム粒子形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<架橋性シリコーン組成物(S)>
架橋性シリコーン組成物(S)として、付加架橋、過酸化物架橋、縮合架橋又は放射線架橋シリコーン組成物(S)などの先行技術から当業者に知られたシリコーンを使用することができる。付加架橋又は過酸化物架橋シリコーン組成物(S)を使用することが好ましい。
【0026】
過酸化物架橋シリコーン組成物(S)は、長い間当業者に知られている。最も単純な場合、それらは、1分子当たり少なくとも2つの架橋性基、例えば、メチル基又はビニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンと、少なくとも1種の好適な有機過酸化物触媒とを含む。本発明の組成物がフリーラジカルによって架橋される場合、使用される架橋剤は、フリーラジカル源として機能する有機過酸化物である。有機過酸化物の例は、過酸化アシル、例えば、過酸化ジベンゾイル、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド及びビス(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、アルキルペルオキシド及びアリールペルオキシド、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、ジクミルペルオキシド及び1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ペルケタール、例えば、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ペルエステル、例えば、ジアセチルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-イソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソノナノエート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート及び2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジペルベンゾエートである。
【0027】
有機過酸化物の1種を用いることができる。少なくとも2つの異なる種類の有機過酸化物の混合物を使用することもできる。
【0028】
付加架橋シリコーン組成物(S)を使用することが特に好ましい。
【0029】
本発明に従って使用される付加架橋シリコーン組成物(S)は、先行技術において知られており、最も単純な場合には、以下を含む。
(A) 脂肪族炭素-炭素多重結合を有する基を有する少なくとも1種の直鎖状化合物、
(B) Si結合水素原子を有する少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン、
又は、(A)及び(B)の代わりに、
(C) 脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合水素原子を有するSiC結合基を有する少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン、及び
(D) 少なくとも1種のヒドロシリル化触媒。
【0030】
付加架橋シリコーン組成物(S)は、一成分系シリコーン組成物又は二成分系シリコーン組成物であり得る。
【0031】
二成分系シリコーン組成物(S)において、本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)の2つの成分は、一般に、1つの成分が脂肪族多重結合を有するシロキサン、Si結合水素を有するシロキサン及び触媒を同時に含有しない、すなわち本質的に同時に構成成分(A)、(B)及び(D)、又は(C)及び(D)を含有しないという条件で、任意の組み合わせで任意の構成成分を含有することができる。
【0032】
周知のように、本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)に使用される化合物(A)及び(B)又は(C)は、架橋が可能であるように選択される。例えば、化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基及び(B)は少なくとも3個のSi結合水素原子を有するか、又は化合物(A)は少なくとも3つの脂肪族不飽和基及びシロキサン(B)は少なくとも2個のSi結合水素原子を有するか、又は化合物(A)及び(B)ではなく、脂肪族不飽和基とSi結合水素原子とを上記比率で有するシロキサン(C)が用いられる。また、上記比率の脂肪族不飽和基とSi結合水素原子とを有する(A)及び(B)及び(C)の混合物も可能である。
【0033】
本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)は、典型的には、30~99.0重量%、好ましくは40~95重量%、より好ましくは50~90重量%の(A)を含有する。本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)は、典型的には1~70重量%、好ましくは3~50重量%、より好ましくは8~40重量%の(B)を含有する。本発明の付加架橋シリコーン組成物が成分(C)を含有する場合、本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)の総量に基づいて、典型的には少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも58重量%の(C)が存在する。
【0034】
本発明に従って使用される化合物(A)は、好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有するケイ素を含まない有機化合物、及び少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物、又はそれらの混合物を含み得る。
【0035】
ケイ素を含まない有機化合物(A)の例は、1,3,5-トリビニルシクロヘキサン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4,7-メチレン-4,7,8,9-テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基を含有するポリブタジエン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリアリルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、3-メチル-1,5-ヘプタジエン、3-フェニル-1,5-ヘキサジエン、3-ビニル-1,5-ヘキサジエン及び4,5-ジメチル-4,5-ジエチル-1,7-オクタジエン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリアクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N’-ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2-メチルアリル)アミン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリル-s-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ジアリルマロネート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0036】
本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)は、好ましくは、構成成分(A)として、少なくとも1種の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含有し、付加架橋性組成物において現在までに使用されている脂肪族不飽和有機ケイ素化合物のいずれか、例えば、尿素セグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、アミドセグメント及び/又はイミドセグメント及び/又はエステルアミドセグメント及び/又はポリスチレンセグメント及び/又はシラリレン(silarylene)セグメント及び/又はカルボランセグメントを有するシリコーンブロックコポリマー並びにエーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーを使用することが可能である。
【0037】
脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSiC結合基を有する、使用される有機ケイ素化合物(A)は、好ましくは、一般式(I)の単位から構成される直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンである。
R4
aR5
bSiO(4-a-b)/2 (I)
[式中、
R4は、独立して同じか又は異なり、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まない有機又は無機基であり、
R5は、独立して同じか又は異なり、少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素多重結合を有する一価の置換又は非置換のSiC結合ヒドロカルビル基であり、
aは0、1、2又は3であり、
bは0、1又は2であり、
ただし、a+bの合計は3以下であり、1分子当たり少なくとも2つのR5基が存在する。]
【0038】
R4基は、一価又は多価の基であり得、多価の基、例えば、二価、三価及び四価の基は、式(I)の複数の、例えば、2つ、3つ又は4つのシロキシ単位を互いに接続することができる。
【0039】
R4のさらなる例は、一価の基-F、-Cl、-Br、-OR6、-CN、-SCN、-NCO及びSiC結合した置換又は非置換ヒドロカルビル基(これらは、酸素原子又はC(O)-基によって割り込まれ得る)、及び式(I)のようにいずれかの末端でSi結合した二価の基である。R4基がSiC結合置換ヒドロカルビル基を含む場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、-OR6、-NR6-、-NR6
2、-NR6-C(O)-NR6
2、-C(O)-NR6
2、-C(O)R6、-C(O)OR6、-SO2-Ph及び-C6F5である。ここで、R6は独立して同じか又は異なり、水素原子又は1~20個の炭素原子を有する一価のヒドロカルビル基であり、Phはフェニル基である。
【0040】
R4基の例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル(isobulyl)、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、ヘキシル基、例えば、n-ヘキシル基、ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基、オクチル基、例えば、n-オクチル基、及びイソオクチル基、例えば、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、例えば、n-ノニル基、デシル基、例えば、n-デシル基、ドデシル基、例えば、n-ドデシル基、及びオクタデシル基、例えば、n-オクタデシル基、シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリル基、アルカリル基、例えば、o-、m-、p-トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、並びにアラルキル基、例えば、ベンジル基、α-及びβ-フェニルエチル基である。
【0041】
置換R4基の例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロアリール基、例えば、o-、m-、p-クロロフェニル基、-(CH2)-N(R6)C(O)NR6
2、-(CH2)o-C(O)NR6
2、-(CH2)o-C(O)R6、-(CH2)o-C(O)OR6、-(CH2)o-C(O)NR6
2、-(CH2)-C(O)-(CH2)pC(O)CH3、-(CH2)-O-CO-R6、-(CH2)-NR6-(CH2)p-NR6
2、-(CH2)o-O-(CH2)pCH(OH)CH2OH、-(CH2)o(OCH2CH2)pOR6、-(CH2)o-SO2-Ph及び-(CH2)o-O-C6F5であり、ここでR6及びPhは、上で与えられた定義に適合し、o及びpは、0~10の同一の又は異なる整数である。
【0042】
式(I)のようにいずれかの末端でSi結合した二価の基としてのR4の例は、水素原子の置換によるさらなる結合が存在するという点で、R4基について上に与えられた一価の例に由来するものであり、そのような基の例は、-(CH2)-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、CH(CH3)-CH2-、-C6H4-、-CH(Ph)-CH2-、-C(CF3)2-、-(CH2)o-C6H4-(CH2)o-、-(CH2)o-C6H4-C6H4-(CH2)o-、-(CH2O)p、(CH2CH2O)o、-(CH2)o-Ox-C6H4-SO2-C6H4-Ox-(CH2)o-であり、ここでxは0又は1であり、Ph、o及びpは上で与えられた定義を有する。
【0043】
R4基は、好ましくは、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まず、かつ1~18個の炭素原子を有する一価のSiC結合した置換されていてもよいヒドロカルビル基、より好ましくは、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まず、かつ1~6個の炭素原子を有する一価のSiC結合したヒドロカルビル基、特にメチル基又はフェニル基である。
【0044】
R5基は、SiH官能性化合物との付加反応(ヒドロシリル化)を受け入れる任意の基であり得る。
【0045】
R5基がSiC結合置換ヒドロカルビル基を含む場合、好ましい置換基はハロゲン原子、シアノ基及び-OR6であり、ここでR6は上で与えられた定義を有する。
【0046】
R5基は、好ましくは2~16個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基を含み、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、5-ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基及びスチリル基などであり、特に好ましいのはビニル基、アリル基及びヘキセニル基を使用することである。
【0047】
構成成分(A)の分子量は、広い範囲内で、例えば、102~106g/molの間で変化し得る。例えば、構成成分(A)は、比較的低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサン(例えば、1,2-ジビニルテトラメチルジシロキサン)であり得るが、鎖又は末端位置にSi結合ビニル基を有し、例えば、105g/molの分子量(NMRによって測定される数平均)を有する高分子ポリジメチルシロキサンでもあり得る。また、構成成分(A)を形成する分子の構造は固定ではなく、より具体的には、高分子、すなわちオリゴマー又はポリマーのシロキサンの構造は、直鎖状、環状、分枝状又は樹脂状及びネットワーク様であり得る。直鎖状及び環状ポリシロキサンは、好ましくは、式R4
3SiO1/2、R5R4
2SiO1/2、R5R4SiO1/2及びR4
2SiO2/2の単位から構成され、ここでR4及びR5は、上で与えられた定義を有する。分枝状及びネットワーク様ポリシロキサンは、三官能性及び/又は四官能性単位をさらに含み、式R4SiO3/2、R5SiO3/2及びSiO4/2のものが好ましい。もちろん、構成成分(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することも可能である。
【0048】
成分(A)として特に好ましいのは、いずれの場合も25℃で10~100000mPa・s、より好ましくは15~20000mPa・s、特に好ましくは20~2000mPa・sの粘度を有するビニル官能性の本質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンを使用することである。
【0049】
有機ケイ素化合物(B)としては、現在まで付加架橋組成物に使用されてきた任意の水素官能性有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0050】
使用されるSi結合原子を有するオルガノポリシロキサン(B)は、好ましくは、一般式(III)の単位から構成される直鎖状、環状又は分岐状のオルガノポリシロキサンである。
R4
cHdSiO(4-c-d)/2 (III)
[式中、
R4は上で与えられた定義を有し、
cは0、1、2又は3であり、
dは0、1又は2であり、
ただし、c+dの合計は3以下であり、1分子当たり少なくとも2個のSi結合水素原子が存在する。]。好ましくは、1分子当たり少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個のSi結合水素原子を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(B)が存在する。
【0051】
本発明に従って使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、好ましくは、オルガノポリシロキサン(B)の総重量に基づいて、0.01~1.7重量パーセント(重量%)の範囲のSi結合水素を含有する。好ましくは0.02~0.8重量%の範囲、より好ましくは0.03~0.3重量%の範囲。
【0052】
構成成分(B)の分子量も同様に、広い範囲内で、例えば、102~106g/molの間で変化し得る。例えば、構成成分(B)は、比較的低分子量のSiH官能性オリゴシロキサン(例えば、テトラメチルジシロキサン)であり得るが、鎖若しくは末端位置にSiH基を有する高分子ポリジメチルシロキサン又はSiH基を有するシリコーン樹脂でもあり得る。
【0053】
また、構成成分(B)を形成する分子の構造は固定ではなく、より具体的には、高分子、すなわちオリゴマー又はポリマーのSiH含有シロキサンの構造は、直鎖状、環状、分枝状又は樹脂状及びネットワーク様であり得る。直鎖状及び環状ポリシロキサン(B)は、好ましくは、式R4
3SiO1/2、HR4
2SiO1/2、HR4SiO2/2及びR4
2SiO2/2の単位から構成され、R4は上で与えられた定義を有する。分枝状及びネットワーク様ポリシロキサンは、三官能性及び/又は四官能性単位をさらに含み、式R4SiO3/2、HSiO3/2及びSiO4/2のものが好ましく、式中、R4は上で与えられた定義を有する。
【0054】
もちろん、構成成分(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することも可能である。特に好ましいのは、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの低分子量SiH官能性化合物、及びポリ(ヒドロメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルヒドロメチル)シロキサンなどのより高分子量のSiH含有シロキサン、又はメチル基のいくつかが3,3,3-トリフルオロプロピル基又はフェニル基によって置換されている類似のSiH含有化合物を使用することである。
【0055】
特に好ましいのは、構成成分(B)として、いずれの場合も25℃で1~100000mPa・sの範囲、好ましくは2~1000mPa・sの範囲、より好ましくは3~750mPa・sの範囲、特に好ましくは、5~500mPa・sの範囲の粘度を有する、ヒドロジメチルシロキシ末端であってもよいSiH含有の本質的に直鎖状のポリ(ヒドロメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルヒドロメチル)シロキサンを使用することであり、いずれの場合も25℃で10~100000mPa・s、より好ましくは15~20000mPa・s、特に好ましくは20~2000mPa・sの粘度を有するヒドロジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、及びそれらの混合物を使用することである。
【0056】
構成成分(B)は、好ましくは、(A)からの脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が0.1~10、より好ましくは0.5~5.0の間、特に0.5~3の間であるような量で本発明の架橋性シリコーン組成物(S)中に存在する。
【0057】
本発明に従って使用される成分(A)及び(B)は、市販の製品であるか、又は標準的な化学的方法によって調製可能である。
【0058】
成分(A)及び(B)ではなく、本発明のシリコーン組成物(S)は、脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合水素原子を同時に含有するオルガノポリシロキサン(C)を含有してもよい。本発明のシリコーン組成物(S)は、3つの成分(A)、(B)及び(C)の全てを含有することも可能である。
【0059】
シロキサン(C)が使用される場合、これらは、好ましくは、一般式(IV)、(V)及び(VI)の単位から構成されるものである。
R4
fSiO4/2 (IV)
R4
gR5SiO3-g/2 (V)
R4
hHSiO3-h/2 (VI)
[式中、
R4及びR5は、上で与えられた定義を有し、
fは0、1、2又は3であり、
gは0、1、又は2であり、
hは0、1又は2であり、
ただし、1分子当たり少なくとも2つのR5基及び少なくとも2個のSi結合水素原子が存在する。]
【0060】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、SO4/2単位、R4
3SiO1/2単位、R4
2R5SiO1/2単位及びR4
2HSiO1/2単位から構成されるものであり、MP樹脂と呼ばれ、これらの樹脂は、R4SiO3/2単位及びR4
2SiO単位をさらに含有してもよく、直鎖状オルガノポリシロキサンは、R4
2R5SiO1/2単位、R4
2SiO単位及びR4HSiO単位から本質的になり、R4及びR5は上で定義された通りである。
【0061】
オルガノポリシロキサン(C)は、いずれの場合も25℃で好ましくは0.01~500000Pa・s、より好ましくは0.1~100000Pa・sの平均粘度を有する。オルガノポリシロキサン(C)は、標準的な化学的方法によって調製可能である。
【0062】
ヒドロシリル化触媒(D)として、先行技術から知られた熱硬化触媒又はUV硬化触媒のいずれかを使用することができる。成分(D)は、白金族金属、例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム、有機金属化合物又はそれらの組み合わせであり得る。成分(D)の例は、ヘキサクロロ白金(IV)酸、白金ジクロリド、白金アセチルアセトネートなどの化合物、及びマトリックス又はコア/シェル型構造に封入された前記化合物の錯体である。低分子量のオルガノポリシロキサンを有する白金錯体としては、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。さらなる例は、白金-ホスファイト錯体又は白金-ホスフィン錯体である。光又はUV硬化組成物については、例えば、光を用いて付加反応を開始するために、アルキル-白金錯体、例えば、シクロペンタジエニルトリメチル白金(IV)、シクロオクタジエニルジメチル白金(II)の誘導体、又はジケトナト錯体、例えば、ビスアセチルアセトナト白金(II)を使用することが可能である。これらの化合物は樹脂マトリックスに封入されていてもよい。
【0063】
成分(D)の濃度は、記載される方法においてここで必要とされる熱を生成するために、接触時に成分(A)及び(B)及び(C)のヒドロシリル化反応を触媒するのに充分である。成分(D)の量は、該成分の総重量に従って、0.1~1000百万分率(ppm)、0.5~100ppm又は1~25ppmの間の白金族金属であり得る。白金族金属の構成成分が1ppm未満である場合、硬化速度は遅い可能性がある。100ppmを超える白金族金属の使用は、不経済であるか、又はシリコーン組成物の貯蔵安定性を低下させる。
【0064】
付加架橋シリコーン組成物(S)は、付加架橋組成物の製造のために現在までにも使用されてきた全てのさらなる添加剤を任意選択で含有してもよい。本発明の付加架橋シリコーン組成物(Y)中の成分として使用され得る熱伝導性フィラー(Z)の定義に包含されない積極的補強フィラー(E)の例は、少なくとも50m2/gのBET比表面積を有するヒュームドシリカ又は沈降シリカ、並びにカーボンブラック及び活性炭、例えば、ファーネスブラック及びアセチレンブラックであり、少なくとも50m2/gのBET比表面積を有するヒュームドシリカ及び沈降シリカが好ましい。
【0065】
言及されたシリカフィラー(E)は、親水性を有していてもよく、又は既知の方法により疎水化されていてもよい。好ましいフィラー(E)は、表面処理の結果として、少なくとも0.01重量%~最大20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%の間、より好ましくは0.5重量%~6重量%の間の炭素含有率を有する。
【0066】
本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)において、構成成分(E)は、好ましくは、単一の微細に分割されたフィラーの形態で、又は同様に好ましくは、それらのいくつかの混合物として使用される。本発明の架橋性シリコーン組成物(S)中の積極的補強フィラーの含有率は、0重量%~50重量%、好ましくは0重量%~30重量%、より好ましくは0重量%~10重量%の範囲である。
【0067】
架橋性付加架橋シリコーン組成物(S)は、より好ましくは、フィラー(E)が表面処理されていることを特徴とする。表面処理は、微細に分割されたフィラー(E)の疎水化のための先行技術において知られた方法によって達成される。
【0068】
本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)は、その粘度を下げるために、さらなる添加剤としてアルキルトリアルコキシシラン(F)を含有してもよい。それらが存在する場合、それらは、シリコーン組成物(S)の総質量に基づいて、好ましくは0.1~8重量%、好ましくは0.2~6重量%の程度で存在し、アルキル基は、2~20個、好ましくは8~18個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、アルコキシ基は1~5個の炭素原子を有することができる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基が挙げられ、メトキシ基及びエトキシ基が特に好ましい。(F)について好ましいのはn-オクチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン及びn-オクタデシルトリメトキシシランである。
【0069】
本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)は、いずれの場合も本発明の付加架橋シリコーン組成物(S)に基づいて、70重量%まで、好ましくは42重量%までの割合で、構成成分としてさらなる添加剤を任意選択で含有してもよく、これらは、本発明の熱伝導性フィラー(Z)並びに添加剤(E)及び(F)とは異なる。これらの添加剤は、例えば、不活性フィラー、シロキサン(A)、(B)及び(C)以外の樹脂状ポリオルガノシロキサン、非補強フィラー、殺菌剤、芳香剤、レオロジー添加剤、腐食防止剤、酸化防止剤、光安定剤、遅延剤及び電気的特性に影響を及ぼすための組成物、分散助剤、接着促進剤、顔料、染料、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤などであり得る。
【0070】
<熱伝導性フィラー(Z)>
本発明の架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)を含有し、ただし架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくともさらなる特定の特徴a)~c)を依然として満たさなければならない熱伝導性フィラー(Z)として、少なくとも20体積%の金属アルミニウム粒子を含有し、熱伝導性フィラー(Z)の総量は少なくとも50体積%であることを条件とする。
【0071】
a) 本発明のこれらの金属アルミニウム粒子(Z)の中央径x50は、20~150μmの範囲、好ましくは30~140μmの範囲、より好ましくは40~130μmの範囲、特に好ましくは50~125μmの範囲である。
【0072】
b) 本発明の金属アルミニウム粒子(Z)は、最後の製造ステップで溶融プロセスを介して製造され、したがって、主として丸みを帯びた表面形状を有する。
【0073】
c) 粒径の分布範囲(SPAN)は、SPAN=(x90-x10)/x50と定義される。本発明の金属アルミニウム粒子(Z)のSPANは、少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.6、特に好ましくは少なくとも0.7である。好ましい実施形態では、SPANは0.7~2.5の間、特に0.75~2の間である。
【0074】
ここで、本発明の範囲内のSPANを有するアルミニウム粒子(Z)の単一画分を使用するかどうか、又はアルミニウム粒子の2つ以上の画分を混合し、それにより本発明のアルミニウム粒子(Z)の特徴c)による本発明の粒径分布範囲が達成されるかどうかは重要ではない。アルミニウム粒子の2つ以上の画分が混合される場合、これは、本発明の組成物の1種以上の成分との混合に先行してもよいし、又はアルミニウム粒子の画分はまた、本発明の組成物の1種以上の成分と互いに別々に混合されてもよい。ここでの添加の順序は問わない。
【0075】
好ましくは、本発明の分布範囲を達成するために4つ以下の画分のアルミニウム粒子が混合され、好ましくは本発明の分布範囲を達成するために3つ以下の画分のアルミニウム粒子が混合され、より好ましくは本発明の分布範囲を達成するために2つ以下の画分の本発明のアルミニウム粒子が使用され、特に好ましくは本発明の単一のアルミニウム粉末のみが使用される。
【0076】
金属アルミニウムは、熱伝導性フィラー(Z)として使用するための複数の非常に有利な特性を有する。例えば、アルミニウム粒子(Z)の非常に高い熱伝導率は、それから製造される熱伝導性シリコーン組成物(Y)の熱伝導率を改善する。アルミニウム粒子(Z)の低い密度は、組成物及びそれから製造される成分の重量を減少させ、コストを節約するのに役立つ。電気伝導度は、用途によって必要とされる場合、先行技術のプロセスによって、例えば、表面の酸化によって低下させることができる。アルミニウム粒子(Z)の低いモース硬度は、加工中の摩耗を低減する。アルミニウムの純度が低下すると、言及された利点が全体的又は部分的に失われることは当業者には明らかである。本発明のアルミニウム粒子(Z)の純度、したがってアルミニウム含有率は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%である。
【0077】
金属アルミニウム粒子が特定の条件下で可燃性であり、粉塵が爆発リスクを示すことも当業者に知られている。当業者はまた、金属粉末に関連する粉塵形成、可燃性及び爆発のリスクが、粒径の減少に伴って著しく増加することを認識している。そのため、20μm未満の非常に小さいアルミニウム粒子は、多くの用途、例えばリチウムイオン電池におけるギャップフィラーのためのフィラーとして不適切である。このような粒子は、最小点火エネルギーが低いため、取り扱いが危険であり、工業的加工において複雑で費用のかかる安全上の予防措置を必要とする。20μm未満の非常に小さいアルミニウム粒子を含有する組成物は、比較的高度に可燃性であり、リチウムイオン電池におけるギャップフィラーのUL94V-0規格可燃性クラスを満たさないこともわかった。
【0078】
本発明のアルミニウム粒子(Z)は、いずれの場合もアルミニウム粒子の総量に基づいて、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、特に好ましくは10重量%未満の20mm以下の直径を有する粒子画分を含有する。
【0079】
本発明のアルミニウム粒子(Z)は、いずれの場合もアルミニウム粒子の総量に基づいて、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満の10mm以下の直径を有する粒子画分を含有する。
【0080】
本発明のアルミニウム粒子(Z)は、いずれの場合もアルミニウム粒子の総量に基づいて、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下の2μm未満のアルミニウム粒子を含有する。特に好ましいアルミニウム粒子は、2μmより小さい粒子画分を本質的に含まない。
【0081】
特に好ましい実施形態では、20mm以下、より好ましくは10mm以下の平均直径を有するアルミニウム粒子、特に5mm以下のアルミニウム粒子を意図的に添加しない。
【0082】
20μmを超える平均粒径を有するより大きいアルミニウム粒子は、比較的高い最小点火エネルギーを有し、したがって、工業プロセスにおいてより安全かつ容易に加工可能である。それにもかかわらず、20μmより大きい本発明ではない粉砕された角張ったアルミニウム粒子を含有する組成物は、比較的高度に可燃性であることがわかり、リチウムイオン電池におけるギャップフィラーのためのUL94V-0規格可燃性クラスを満たさなかった。
【0083】
150μmを超える平均粒径を有するアルミニウム粒子は、例えば、ギャップフィラーを充填しなければならない微細な隙間に収まらないことが多いため、熱伝導性シリコーン組成物の多くの用途には不適切である。また、非常に予期せぬことに、そのような大粒径アルミニウム粒子でさえも比較的高い可燃性を示すことが見出された。
【0084】
全く驚くべきことに、本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、必要とされる最小量において特徴a)~c)を同時に満たす本発明の金属アルミニウム粒子(Z)を含有する場合、熱伝導性であり、同時に低可燃性であることがわかった。
【0085】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、このような金属アルミニウム粒子(Z)を少なくとも20体積%、好ましくは少なくとも25体積%、より好ましくは少なくとも30体積%、特に好ましくは少なくとも35体積%含有する。シリコーン組成物(Y)がより少ない量の金属アルミニウム粒子(Z)を含有する場合、金属アルミニウムの所望の有利な効果、例えば低密度及び高熱伝導率は、もはや充分に提供されない。
【0086】
先行技術は、微細の金属粒子を製造する様々な方法を含む。本発明のアルミニウム粒子(Z)は、溶融状態から製造されることが好ましく、その結果、比較的滑らかな表面を有し、割れ、鋭い縁部及び尖った角を本質的に含まない。このように、それらは、例えば、破砕、粉砕又は製粉化によって最終形態に変換された従来の粉砕粒子とは異なる。ここで、粒子が、例えば、粉砕によって第1の方法のステップにおいて低温で粉砕され、次いで、その融点を上回る加熱によって、例えば、高温域における熱処理によって、例えば、プラズマによって溶融形態に変換されるかどうか、又はアルミニウム溶融物が最初に生成され、次いで、例えば、アトマイズによって粉砕されるかどうかは重要ではない。本発明のアルミニウム粒子は、好ましくは、アルミニウム溶融物の噴霧又はアトマイズ、その後の冷却によって本発明の固体形態に変換される。
【0087】
本発明のアルミニウム粒子(Z)を製造する好適な方法は、当業者に知られており、例えば、「Pulvermetallurgie」の第2.2章のTechnologien und Werkstoffe[粉末冶金法]:Technologies and Materials,Schatt, Werner, Wieters, Klaus-Peter, Kieback, Bernd, pp.5-48, ISBN 978-3-540-681112-0, E-Book: https://doi.org/10.1007/978-3-540-68112-0_2に記載されている。本発明のアルミニウム粒子(Z)を製造するための好ましい方法は、ガスアトマイズとも呼ばれる不活性ガスアトマイズ、液体アトマイズ若しくは水アトマイズ法とも呼ばれる加圧水アトマイズ、又は遠心アトマイズ若しくは回転アトマイズとも呼ばれる溶融紡糸法である。
【0088】
記載された方法は、非常に異なる粒径範囲、特に数マイクロメートル~数ミリメートルの平均粒径範囲の金属アルミニウム粒子の製造を可能にする。金属アルミニウム粒子を、非常に異なる粒子形態で、例えば「スパッタリングされた」形態で、すなわち非常に不規則な、結節状の、楕円形の、又は球状の形態で、かつ非常に可変範囲の粒径分布で製造することも可能である。粒子形状にかかわらず、溶融プロセスによって製造されたこれらの粒子は、本発明の比較的滑らかな表面を有し、割れた部位、鋭い縁部及び尖った角を本質的に含まない。
【0089】
全く驚くべきことに、本発明の有利な特性、特に比較的低い可燃性は、溶融プロセスによって製造され、したがって主として丸みを帯びた表面形状を示し、同時に本発明の特徴a)~c)を満たすアルミニウム粒子によってのみ示されることがわかった。
【0090】
本発明の金属アルミニウム粒子(Z)の製造方法は、好ましくは、粒子が本発明の主として丸みを帯びた表面形状で得られ、したがって特徴a)~c)を満たし、角のある又は鋭い粒子を本質的に含まないような方法で実行されるべきである。凝固した粒子は、標準的な方法によって、例えば、ふるい分けによる分級によって、又はふるい分けによって、後続の方法のステップにおいてサイズによって分離することができる。これらの方法では、弱凝集体及び結合粒子を分離することが可能であるが、本質的に粒子は破壊されない。
【0091】
「丸みを帯びた」及び「本質的に含まない」によって意味されるものは、そのような粒子の存在が、本発明の粒子(Z)中の不純物の範囲内で許容され、本発明の効果を邪魔しないことである。
【0092】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、これらの金属アルミニウム粒子(Z)に加えて、5W/mKを超える熱伝導率を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有してもよい。このようなさらなる熱伝導性フィラー(Z)の例は、酸化マグネシウム、金属ケイ素粉末、金属銀粉末、酸化亜鉛、窒化ホウ素、炭化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、グラファイトなどである。好ましいさらなるフィラーは、アルミニウム粉末、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムである。特に好ましいフィラーは、酸化亜鉛、金属ケイ素粉末、水酸化アルミニウム及び酸化アルミニウムであり、金属ケイ素粉末及び水酸化アルミニウムが特に好ましい。さらなるフィラーの形状は基本的に制限されない。粒子は、例えば、球形、楕円形、針状、管状、プレートレット、繊維状又は不規則な形状であり得る。それらは、好ましくは、球形、楕円形又は不規則な形状である。さらなる熱伝導性フィラー(Z)の平均直径は、好ましくは0.01~150μmの範囲、好ましくは0.1~100μmの範囲、より好ましくは0.2~80μmの範囲、特に0.4~60μmの範囲である。
【0093】
非常に高い密度を有するフィラーは、成分の重量を非常に著しく増加させるので、例えば、航空機及び電気自動車での使用において不利である。さらなる熱伝導性フィラー(Z)は、好ましくは6.0kg/m3以下、好ましくは4.5kg/m3以下、より好ましくは3.0kg/m3以下の密度を有する。
【0094】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、好ましくは、16重量%未満、好ましくは14重量%未満、より好ましくは12重量%未満の、5.0kg/m3を超える密度を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有する。特に好ましい実施形態では、本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、5.0kg/m3を超える密度を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含まない。
【0095】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、好ましくは35重量%未満、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、特に好ましくは20重量%未満の、3.0kg/m3を超える密度を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有する。特に好ましい実施形態では、本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、3.0kg/m3を超える密度を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含まない。
【0096】
本発明の好ましい架橋性シリコーン組成物(Y)は、熱伝導性フィラー(Z)として、本発明の金属アルミニウム粒子を、唯一の熱伝導性フィラー(Z)として、又は2種までのさらなる熱伝導性フィラー(Z)と組み合わせて含有する。5%までの不純物は、ここではさらなるフィラー(Z)とは考えない。
【0097】
本発明の好ましい組成物が、5W/mKを超える熱伝導率を有する唯一の熱伝導性フィラー(Z)として本発明の金属アルミニウム粒子(Z)を含有する場合、フィラーの沈降を防止するレオロジー調整剤又は増粘剤を添加することが好ましい。好適なレオロジー調整剤は当業者に知られており、ヒュームドシリカ、例えば、成分(E)が好ましい。
【0098】
本発明の架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)中の熱伝導性フィラー(Z)の総量は、50~95体積%、好ましくは60~90体積%、より好ましくは65~88体積%である。シリコーン組成物(Y)がより少ない量の熱伝導性フィラー(Z)を含有する場合、熱伝導率は不十分であり、シリコーン組成物(Y)がより多量の熱伝導性フィラー(Z)を含有する場合、組成物(Y)は高い粘度を有するか、又はさらには脆いので、加工が困難である。
【0099】
本発明の非架橋熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mK、好ましくは少なくとも0.8W/mK、より好ましくは少なくとも1.2W/mK、特に少なくとも1.5W/mKの熱伝導率を有する。
【0100】
本発明の非架橋熱伝導性シリコーン組成物(Y)の粘度は、非常に広い範囲内で変化し得、用途の要件に適合され得る。本発明の非架橋熱伝導性シリコーン組成物(Y)の粘度は、好ましくは、当分野からの標準的な方法によって、熱伝導性フィラー(Z)の含有量及び/又はシリコーン組成物(Z)の組成によって調整される。これらは当業者に知られている。成分(A)、(B)及び(C)の選択及び組み合わせ並びにレオロジー調整剤及び/又は活性フィラー(E)及び/又はアルキルトリアルコキシシラン(F)の任意選択の添加を介して粘度を調整することが好ましい。
【0101】
本発明の非架橋熱伝導性シリコーン組成物(Y)の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で、好ましくは100~1000000mPa・sの範囲、好ましくは1000~750000mPa・sの範囲、より好ましくは2000~500000mPa・sの範囲、特に250000mPa・s以下である。
【0102】
本発明の未架橋シリコーン組成物(Y)の密度は、3.5kg/m3未満、好ましくは3.0kg/m3未満、より好ましくは2.6kg/m3未満、特に2.3kg/m3未満である。
【0103】
本発明のシリコーン組成物は、揮発性有機溶媒を主に含まず、これは、これらが可燃性蒸気を形成し、及び/又は架橋中若しくは架橋後に望ましくない収縮をもたらす可能性があるためである。「主に含まない」によって意味されるものは、意図的に添加される溶媒がなく、代わりに、溶媒が本発明のシリコーン組成物の本発明の構成成分中の不純物として0.1重量%未満の少量でのみ存在し得ることである。
【0104】
本発明はさらに、個々の成分を混合することによって本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)の製造方法を提供する。
【0105】
成分は、慣習的な連続的及びバッチ式の先行技術の方法によって混合することができる。好適な混合装置は、既知の装置のいずれかである。これらの例は、単軸又は二軸連続ミキサー、ツインローラー、Rossミキサー、Hobartミキサー、歯科用ミキサー、プラネタリーミキサー、混練機及びヘンシェルミキサー又は同様のミキサーである。プラネタリーミキサー、混練機又は連続ミキサーでの混合が好ましい。架橋性シリコーン組成物(Y)は、任意選択で混合の過程で加熱されてもよく、15~40℃の温度範囲内で混合することが好ましい。好ましい付加架橋シリコーン組成物(S)を製造するための手順もまた、当業者に知られている。原則として、成分は、任意の順序で添加され得る。例えば、成分e)及び任意選択でg)を予混合し、次いで成分a)及び/又はb)と混合することができる。ここで、任意選択で、混合物を加熱及び/又は排気することも可能である。a)の少なくとも一部とアルコキシシランg)とを混合し、次いで熱伝導性フィラー(Z)を混ぜ入れることが好ましい。製造は、好ましくは、積極的な加熱なしで行われる。
【0106】
好ましい実施形態では、20mm以上、より好ましくは10mm以上の平均直径を有するアルミニウム粒子、特に5mm以下のアルミニウム粒子を意図的に添加しないが、これは工業生産における特定の安全性リスクに関連するからである。
【0107】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、一成分、二成分又は多成分混合物として提供され得る。例は、二成分熱硬化性組成物(Y)又は一成分UV架橋性組成物(Y)である。これは、同様に、当業者に長い間知られている。
【0108】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、流動性、ギャップ充填性及び層厚制御に関して非常に良好な加工特性を有し、精密に適用され得る。
【0109】
好ましくはヒドロシリル化反応を介して硬化可能なシリコーン組成物(Y)の硬化のための温度条件は無制限であり、典型的には20~180℃の範囲、好ましくは20~150C°の範囲、好ましくは20~80C°の範囲である。
【0110】
本発明はさらに、架橋性シリコーン組成物を配合又は塗布し、次いで架橋/硬化することによって得られるシリコーン生成物を提供する。硬化シリコーン生成物(例えば、熱伝導性要素)は、優れた熱伝導率及び正確な層厚を示す。
【0111】
本発明の架橋熱伝導性シリコーン組成物(Y)の硬度は、非常に広い範囲内で変化し得、用途の要件に適合され得る。例えば、ギャップフィラーとしての用途については、比較的柔らかく柔軟な生成物を使用することが好ましく、例えば、熱伝導性接着剤としての用途については、比較的硬く堅固な生成物を使用することが好ましい。本発明の架橋熱伝導性シリコーン組成物(Y)の硬度は、好ましくは、シリコーン組成物(S)の組成によって、先行技術からの標準的な方法によって調整される。これらは当業者に知られている。成分(A)、(B)及び(C)の選択及び組み合わせ並びに補強フィラー(E)の任意選択の添加を介して硬度を調整することが好ましい。
【0112】
硬化シリコーン生成物の硬度は、ショア00法で2~ショアA法で100の範囲が好ましく、ショア00法で10~ショアA法で85の範囲が好ましい。本発明の架橋熱伝導性シリコーン組成物の硬度は、ギャップフィラーとして適用する場合には、ショア00法で15~ショアA法で65の範囲が特に好ましい。
【0113】
架橋シリコーン生成物は、少なくとも0.6W/mK、好ましくは少なくとも0.8W/mK、より好ましくは少なくとも1.2W/mK、特に少なくとも1.5W/mKの熱伝導率を有する。
【0114】
本発明はさらに、ギャップフィラー(=熱伝導性要素)、熱伝導性パッド、熱伝導性接着剤及び封入化合物としての架橋性シリコーン組成物の使用を提供する。それらは、電気自動車のリチウムイオン電池のためのギャップフィラーとして、及び電子部品、例えば、電気自動車の電子部品のための封入化合物としての使用に特に適している。
【0115】
本発明の架橋シリコーン生成物の密度は、3.5kg/m3未満、好ましくは3.0kg/m3未満、より好ましくは2.6kg/m3未満、特に2.3kg/m3未満である。
【0116】
本発明の架橋シリコーン生成物は、好ましくはUL94V-0規格可燃性クラスに適合する。
【0117】
好ましい実施形態では、本発明の架橋シリコーン生成物の密度は2.5kg/m3未満であり、熱伝導率は1.8W/mKを超え、可燃性はUL94V-0規格を満たすが、ただし、本発明の未架橋シリコーン組成物の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で500000mPa・s未満、特に250000未満である。
【0118】
特に好ましい実施形態では、本発明のシリコーン生成物の密度は2.3kg/m3未満であり、熱伝導率は1.8W/mKを超え、好ましくは3.0W/mKを超え、可燃性はUL94V-0規格を満たすが、ただし、本発明の未架橋シリコーン組成物の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で、500000mPa・s未満、特に250000未満である。
【0119】
<試験方法>
<熱伝導率ラムダの測定>
熱伝導率は、TIM Tester(Steinbeis Transferzentrum Waermemanagement in der Elektronik、独国72141ヴァルドルフヘスラッハ リンデンシュトラーセ13/1)を用いてASTM D5470-12規格に準拠して測定される。これは、一定の熱流によって2つの試験シリンダー間の試料の熱抵抗を測定する。試料の層厚を使用して、有効熱伝導率を計算する。
【0120】
測定のために、試料をステンシルを用いて塗布し、測定シリンダーを手動で1.9~2.0mmの厚さに狭め、次いで過剰な材料を除去する。熱伝導率は、1.8-1.6-1.4-1.2-1.0mmの一定のギャップで測定される。評価は、統合されたレポーター位置によって行われる。妥当性試験(直線決定係数>0.998)後、熱伝導率ラムダは、W/(m*K)単位の有効熱伝導率として報告される。
【0121】
<動的粘度の測定>
動的粘度は、DIN EN ISO 3219:1994及びDIN 53019に準拠してAnton Paar MCR 302レオメーターを用いて、以下のパラメータ、すなわち、測定タイプ:T/D、温度:25.0℃、測定素子:PP25、測定ギャップ:0.50mm、せん断速度:0.1~10s-1、時間:120秒、測定:30回で流れ曲線を用いて測定した。Pa・sで報告される粘度は、D=10s-1のせん断速度での補間値である。
【0122】
<密度の測定>
非架橋熱伝導性シリコーン組成物の密度をISO 1183に準拠して、架橋熱伝導性シリコーン組成物の密度をISO 1184に準拠して確認した。
【0123】
<粒径及び粒子形状分析>
Retsch Technology製Camsizer X2(測定原理:動的画像解析)を用いて、ISO 13322-2及びISO 9276-6(解析方法:粉末及び顆粒の乾式測定、測定範囲:0.8μm~30mm、X-Jetによる圧縮空気分散、分散圧力=0.3bar)に従って、粒径(中央径x50)及び粒径分布(パラメータ:分布範囲SPAN)を解析した。評価は、体積ベースであり、xc minモデルによるものであった。
【0124】
以下の実施例は、本発明の基本的な実施可能性を説明するが、本発明をそれに開示される内容に限定するものではない。
【0125】
以下の実施例において、部及びパーセンテージに関する全ての数値は、別段の記載がない限り、重量に基づく。別段の記載がない限り、以下の実施例は、周囲雰囲気の圧力、すなわち約1000hPaで、室温、すなわち約20℃で、又はさらなる加熱又は冷却なしで室温における反応物の組み合わせで確立される温度で実施される。
【実施例】
【0126】
<使用した本発明のアルミニウム粉末及び本発明でないアルミニウム粉末並びにアルミニウム粉末混合物の概要>
表1に、(実施)例で使用した本発明のアルミニウム粉末及び本発明でないアルミニウム粉末の特性をまとめる。
【0127】
発明例1~6及び8は、不活性ガスアトマイズによって得られた、したがって主として丸みを帯びた表面形状を有し、さらに本発明の比較的広い粒径分布を有する本発明のアルミニウム粉末を使用する。
【0128】
本発明でない比較例V1~V4は、不活性ガスアトマイズによって得られ、したがって主として丸みを帯びているが、比較的狭い本発明でない粒径分布を有し、本発明の特徴c)を満たさない本発明でないアルミニウム粉末を使用する。
【0129】
本発明でない比較例V5~V7は、比較的広い粒径分布を有するが、粉砕方法によって得られており、したがって本質的に角張っており、鋭い縁部を有し、本発明の特徴b)を満たさない本発明でないアルミニウム粉末を使用する。
【0130】
本発明でない比較例V9及びV10は、不活性ガスアトマイズによって得られ、したがって主として丸みを帯びており、さらに比較的広い粒径分布を有する本発明でないアルミニウム粉末を使用するが、粒径は比較的小さく、本発明の特徴a)を満たさない。
【0131】
[実施例7:アルミニウム粉末混合物7(本発明)の製造]
比較例V2からの本発明でないアルミニウム粉末100g、比較例V3からの本発明でないアルミニウム粉末200g、106.2μmのx50及び0.37のSPANを有し、不活性ガスアトマイズ法によって製造され、したがって本質的に丸みを帯びている本発明でないアルミニウム粉末400g、133.5μmのx50及びであり、0.27のSPANを有し、不活性ガスアトマイズ法によって製造され、したがって本質的に丸みを帯びている本発明でないアルミニウム粉末200g、及び比較例V4の本発明でないアルミニウム粉末100gを、標準的な市販のRW 28実験室用撹拌システム(IKA(R)-Werke GmbH & CO.KG、独国79219シュタウフェン)を用いて均質に混合する。これにより、107.4μmのx50及び0.75のSPANを有し、本質的に丸みを帯びており、本発明の特徴a)~c)を満たす本発明のアルミニウム粉末混合物が得られる。
【0132】
[比較例V8:アルミニウム粉末混合物V8(本発明でない)の製造]
133.5μmのx50及びであり、0.27のSPANを有し、不活性ガスアトマイズ法によって製造され、したがって本質的に丸みを帯びている本発明でないアルミニウム粉末300g、及び比較例V4からの本発明でないアルミニウム粉末600gを、標準的な市販のRW 28実験室用撹拌システム(IKA(R)-Werke GmbH & CO.KG、独国79219シュタウフェン)を用いて均質に混合する。これにより、155.0μmのx50及び0.41のSPANを有し、本発明の特徴a)を満たさない本発明でないアルミニウム粉末混合物が得られる。
【0133】
略語
Ex. 実施例
V 比較例
PS 粒子形状
r 主として丸みを帯びた表面形状
e 角張っている
I 本発明
NI 本発明でない
n.d. 未決定
【0134】
【0135】
<架橋熱伝導性アルミニウム粉末含有シリコーン成形体の製造の一般方法1(GM1)(発明例9~16、非発明例V11~V23)>
<ステップ1:付加架橋性熱伝導性アルミニウム粉末含有シリコーン組成物の調製>
1000mPa・sの粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン24.5g、1000mPa・sの粘度を有するヒドロジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン16.3g、ジメチルシロキシ単位及びメチルヒドロシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成され、200mPa・s粘度及び0.18重量%のSi結合水素含有率を有するコポリマー1.0gを、SpeedMixer DAC 400 FVZ(Hauschild & Co KG、独国59075ハム ヴァテルカンプ1)を用いて2350rpmの速度で25秒間均質化した。その後、いずれの場合も表2に準拠した比率でアルミニウム粉末を添加し、SpeedMixerを用いて2350rpmで25秒間混合した。アルミニウム粒子含有シリコーン組成物をヘラで撹拌し、容器の縁部からアルミニウム粉末残留物を混ぜ入れた。その後、SpeedMixerにより2350rpmでさらに25秒間均質化し、室温まで冷却した。
【0136】
架橋のために、4.18gのELASTOSIL(R)CAT PT(Wacker Chemie AG、独国81737ミュンヘン ハンス-ザイデル-プラッツ4から購入可能)を、熱伝導性フィラー(Z)の割合を数えずに、10部のシリコーン組成物に対する1部の触媒溶液の混合比に対応して添加した。混合物をSpeedMixerにより2350rpmで10秒間3回混合し、混合操作の間にヘラにより毎回試料を撹拌した。得られたものは、数時間しか保存できない反応性のペースト状の塊であり、さらに直接加工された。
【0137】
<ステップ2:架橋熱伝導性アルミニウム粉末含有成形シリコーン体の製造>
207mm×207mm×2mmの寸法を有する成形体を、標準的な先行技術の方法によって、ステンレス鋼金型中で165℃及び380N/cm2で5分間圧縮加硫することによって製造した。次いで、加硫物を200℃で4時間熱処理した。得られたのものは、均質で弾性の成形体である。
【0138】
[実施例17 燃焼性試験]
可燃性を、プラスチックの難燃性によるプラスチックの分類を可能にする垂直燃焼の試験のためのUnderwriters Laboratoriesからの規格であるUL94V規格に基づく単純化された試験において試験する。この方法は、難燃性プラスチックの分類のための最も一般的な試験である。
【0139】
実施例9~16による本発明のシリコーン成形体と、比較例V11~V15及びV19~V21による本発明でないシリコーン成形体とから、長さ5インチ(127mm)、幅0.5インチ(12.7mm)の試験片を打ち抜いた。このプラークを、その上端部において1/4インチの長さにわたって垂直位置に固定する。試験プラークの下12インチ(305mm)に脱脂綿片を配置する。バーナーを、長さ3/4インチの青い炎が形成されるように調整する。炎を、3/8インチ(9.5mm)の距離からプラスチックプラークの下縁に向ける。10秒間接触させた後、炎を取り除く。試験片の残炎時間(総残炎時間及び残光時間)を記録する。炎を取り除いた直後に試料を消火し、さらに4秒以下で燃焼させるべきである。試験は5つの異なる試験片について行い、残炎時間の平均値を求める。結果を表2に見出すことができる。
【0140】
それぞれ62.5体積%の比較例V5~V7(より詳細には特徴b)を満たさない)による本発明でないアルミニウム粒子を含む本発明でない比較実験V16~V18では、非常に高い粘度のシリコーン組成物が形成され、これは適切な成形シリコーン体を得るためにプレス成形することができなかった。
【0141】
【0142】
可燃性の試験において、特徴a)~c)の1つ以上を満たさない比較例V1~V10による本発明でないアルミニウム粉末又は本発明でないアルミニウム粉末混合物を含有する比較例V11~V15及びV19~V23は、比較的高い可燃性を示すことがわかった。特に顕著なのは、20μm未満の平均粒径を有するアルミニウム粉末を含有する本発明でない比較試料V21の可燃性であった。試料は、炎が取り除かれた後、成形体が完全に燃焼するまで燃焼し続けた。
【0143】
全く予想外に、特徴a)~c)を同時に満たすアルミニウム粉末が、低減された可燃性という本発明の利点を示すことがわかった。また、発明例15において、全く驚くべきことに、複数の本発明でないアルミニウム粉末の混合は、得られる混合物が特徴a)~c)を満たすという条件で、低い可燃性という本発明による有利な特性を有する本発明のアルミニウム粉末混合物を生成できることがわかった。対照的に、比較例V8からの本発明でないアルミニウム粉末混合物は、特徴a)~c)を満たさず、また本発明による利点も示さない。
【0144】
[実施例18 UL94V規格に準拠した完全燃焼性試験]
発明例12及び13からの本発明の成形シリコーン体並びに本発明でない比較例V11、V12及びV20からの本発明でない成形シリコーン体を、UL94V規格に準拠した完全燃焼性試験に供し、V-0、V-1又はV-2として分類した。多くの工業用途、特に電気自動車におけるギャップフィラーとしての使用のためには、V-0に分類されることが必要である。結果を表3に示す。
【0145】
【0146】
[実施例19 2種のアルミニウム粉末のインサイチュー混合物を含有する架橋熱伝導性成形シリコーン体の製造(本発明)]
一般法GM1に準拠して、アルミニウム粉末として、実施例1からの本発明のアルミニウム粉末191.0g(熱伝導性シリコーン組成物の総量に基づいて37.6体積%)及び106.2mmのx50及び0.37のSPANを有し、不活性ガスアトマイズによって製造され、したがって本質的に丸みを帯びた本発明でないアルミニウム粉末187.4g(熱伝導性シリコーン組成物の総量に基づいて36.8体積%)を別々に有し、それらをインサイチューで混合して本発明のアルミニウム粉末混合物を形成することによって、本発明の架橋性熱伝導性シリコーン組成物を製造した。
【0147】
得られたものは、74.4体積%の本発明のアルミニウム粒子の含有率、及びせん断速度D=10s-1及び25℃で58600mPa・sの動的粘度を有する本発明の反応性シリコーン組成物であった。その熱伝導率は4.65W/mK、密度は2.19kg/m3であった。本発明の塊は、良好な加工性、高い熱伝導率及び低い密度を有し、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好に適している。一般法GM1を用いて、本発明の架橋シリコーン成形体を製造した。実施例17による残炎時間は2.1秒であった。実施例18は、UL94 V0規格分類をもたらした。
【0148】
[比較例V24 2種のアルミニウム粉末のインサイチュー混合物を含有する架橋成形シリコーン体の製造(本発明でない)]
実施例1からのアルミニウム粉末19.0体積%と、106.2mmのx50及び0.37のSPANを有し、不活性ガスアトマイズによって製造され、したがって本質的に丸みを帯びた本発明でないアルミニウム粉末18.6体積%とを使用することを除いて、架橋シリコーン成形体を、発明例19に準拠して製造した。
【0149】
本発明でない成形シリコーン体は、37.6体積%の熱伝導性フィラー(Z)の本発明でない総含有率を有し、0.45W/mKの熱伝導率を有する。実施例18は、UL94V-1規格分類をもたらした。この組成物は、ギャップフィラーとしての使用に不適切である。
【0150】
[実施例20 二成分ギャップフィラー(本発明)]
<A成分の製造>
2つのバー撹拌機及びストリッパーを備えた市販のLabotopプラネタリーミキサー(PC Laborsystem GmbH、スイス4312マグデン マイスプラッヒェルシュトラーセ6)において、120mPa・sの粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン115.4g及びWACKER(R) CATALYST EP(Wacker Chemie AG、独国81737ミュンヘン ハンス-ザイデル-プラッツ4から購入可能)1.1gを、室温及び300rpmの撹拌機速度で5分間混合した。308.5gのBAK-5球状酸化アルミニウム(Shanghai Bestry Performance Materials Co.,Ltd.Room 209,Yunchuang Space,325 Yunqiao Road,Pudong,Shanghaiから購入可能)を添加し、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間均質に組み込んだ。続いて、79.5mmのx50及び1.62のSPANを有し、不活性ガスアトマイズ法によって製造され、したがって本質的に丸みを帯びた本発明のアルミニウム粉末の合計670.7gを2回に分けて添加し(第1の部分:447.1g、第2の部分:223.6g)、各添加後わずかに減圧下(950mbar)で300rpmで10分間混合した。得られたペースト状塊をわずかに減圧(950mbar)下、300rpmでさらに10分間均質化した。55.5体積%の本発明のアルミニウム粒子の含有率及び73.1体積%の熱伝導性フィラーの総含有率を有する本発明のA成分を得た。このペースト状組成物は、2.46kg/m3の密度、せん断速度D=10s-1及び25℃で57800mPa・sの動的粘度、及び3.2W/mKの熱伝導率を有し、したがって、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好に適している。
【0151】
<B成分の製造>
2つのバー撹拌機及びストリッパーを備えた市販のLabotopプラネタリーミキサー(PC Laborsystem GmbH、スイス4312マグデン マイスプラッヒェルシュトラーセ6)において、120mPa・sの粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン106.5g、及びジメチルシロキシ単位及びメチルヒドロシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成され、200mPa・sの粘度及び0.18重量%のSi結合水素含有率を有するコポリマー9.0gを室温及び撹拌速度300rpmで5分間混合した。306.0gのBAK-5球状酸化アルミニウム(Shanghai Bestry Performance Materials Co.,Ltd.Room 209,Yunchuang Space,325 Yunqiao Road,Pudong,Shanghaiから購入可能)を添加し、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間均質に組み込んだ。続いて、79.5mmのx50及び1.62のSPANを有し、不活性ガスアトマイズ法によって製造され、したがって本質的に丸みを帯びた本発明のアルミニウム粉末の合計665.2gを2回に分けて添加し(第1の部分:443.5g、第2の部分:221.7g)、各添加後わずかに減圧下(950mbar)、300rpmで10分間混合した。得られたペースト状塊をわずかに減圧(950mbar)下、300rpmでさらに10分間均質化した。55.5体積%の本発明のアルミニウム粒子の含有率及び73.1体積%の熱伝導性フィラーの総含有率を有する本発明のB成分を得た。このペースト状組成物は、2.46kg/m3の密度、せん断速度D=10s-1及び25℃で42800mPa・sの動的粘度、及び3.5W/mKの熱伝導率を有し、したがって、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好に適している。
【0152】
<成形体の製造>
本発明の架橋試験片は、本発明のA成分1重量部と本発明のB成分1重量部とを均一に混合し、一般法GM1に準拠して加硫することにより作製した。得られた成形体は1.6のショアA硬度を有していた。実施例18は、UL94V-0規格分類をもたらした。この組成物は、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好に適している。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
非常に高い密度を有するフィラーは、成分の重量を非常に著しく増加させるので、例えば、航空機及び電気自動車での使用において不利である。さらなる熱伝導性フィラー(Z)は、好ましくは6.0g/cm
3
以下、好ましくは4.5g/cm
3
以下、より好ましくは3.0g/cm
3
以下の密度を有する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、好ましくは、16重量%未満、好ましくは14重量%未満、より好ましくは12重量%未満の、5.0g/cm
3
を超える密度を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有する。特に好ましい実施形態では、本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、5.0g/cm
3
を超える密度を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含まない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、好ましくは35重量%未満、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、特に好ましくは20重量%未満の、3.0g/cm
3
を超える密度を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有する。特に好ましい実施形態では、本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、3.0g/cm
3
を超える密度を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含まない。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
本発明の未架橋シリコーン組成物(Y)の密度は、3.5g/cm
3
未満、好ましくは3.0g/cm
3
未満、より好ましくは2.6g/cm
3
未満、特に2.3g/cm
3
未満である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
本発明の架橋シリコーン生成物の密度は、3.5g/cm
3
未満、好ましくは3.0g/cm
3
未満、より好ましくは2.6g/cm3未満、特に2.3g/cm3未満である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0117】
好ましい実施形態では、本発明の架橋シリコーン生成物の密度は2.5g/cm
3
未満であり、熱伝導率は1.8W/mKを超え、可燃性はUL94V-0規格を満たすが、ただし、本発明の未架橋シリコーン組成物の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で500000mPa・s未満、特に250000未満である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
特に好ましい実施形態では、本発明のシリコーン生成物の密度は2.3g/cm
3
未満であり、熱伝導率は1.8W/mKを超え、好ましくは3.0W/mKを超え、可燃性はUL94V-0規格を満たすが、ただし、本発明の未架橋シリコーン組成物の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で、500000mPa・s未満、特に250000未満である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0147
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0147】
得られたものは、74.4体積%の本発明のアルミニウム粒子の含有率、及びせん断速度D=10s-1及び25℃で58600mPa・sの動的粘度を有する本発明の反応性シリコーン組成物であった。その熱伝導率は4.65W/mK、密度は2.19g/cm
3
であった。本発明の塊は、良好な加工性、高い熱伝導率及び低い密度を有し、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好に適している。一般法GM1を用いて、本発明の架橋シリコーン成形体を製造した。実施例17による残炎時間は2.1秒であった。実施例18は、UL94 V0規格分類をもたらした。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0150
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0150】
[実施例20 二成分ギャップフィラー(本発明)]
<A成分の製造>
2つのバー撹拌機及びストリッパーを備えた市販のLabotopプラネタリーミキサー(PC Laborsystem GmbH、スイス4312マグデン マイスプラッヒェルシュトラーセ6)において、120mPa・sの粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン115.4g及びWACKER(R) CATALYST EP(Wacker Chemie AG、独国81737ミュンヘン ハンス-ザイデル-プラッツ4から購入可能)1.1gを、室温及び300rpmの撹拌機速度で5分間混合した。308.5gのBAK-5球状酸化アルミニウム(Shanghai Bestry Performance Materials Co.,Ltd.Room 209,Yunchuang Space,325 Yunqiao Road,Pudong,Shanghaiから購入可能)を添加し、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間均質に組み込んだ。続いて、79.5mmのx50及び1.62のSPANを有し、不活性ガスアトマイズ法によって製造され、したがって本質的に丸みを帯びた本発明のアルミニウム粉末の合計670.7gを2回に分けて添加し(第1の部分:447.1g、第2の部分:223.6g)、各添加後わずかに減圧下(950mbar)で300rpmで10分間混合した。得られたペースト状塊をわずかに減圧(950mbar)下、300rpmでさらに10分間均質化した。55.5体積%の本発明のアルミニウム粒子の含有率及び73.1体積%の熱伝導性フィラーの総含有率を有する本発明のA成分を得た。このペースト状組成物は、2.46g/cm
3
の密度、せん断速度D=10s-1及び25℃で57800mPa・sの動的粘度、及び3.2W/mKの熱伝導率を有し、したがって、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好に適している。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0151
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0151】
<B成分の製造>
2つのバー撹拌機及びストリッパーを備えた市販のLabotopプラネタリーミキサー(PC Laborsystem GmbH、スイス4312マグデン マイスプラッヒェルシュトラーセ6)において、120mPa・sの粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン106.5g、及びジメチルシロキシ単位及びメチルヒドロシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成され、200mPa・sの粘度及び0.18重量%のSi結合水素含有率を有するコポリマー9.0gを室温及び撹拌速度300rpmで5分間混合した。306.0gのBAK-5球状酸化アルミニウム(Shanghai Bestry Performance Materials Co.,Ltd.Room 209,Yunchuang Space,325 Yunqiao Road,Pudong,Shanghaiから購入可能)を添加し、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間均質に組み込んだ。続いて、79.5mmのx50及び1.62のSPANを有し、不活性ガスアトマイズ法によって製造され、したがって本質的に丸みを帯びた本発明のアルミニウム粉末の合計665.2gを2回に分けて添加し(第1の部分:443.5g、第2の部分:221.7g)、各添加後わずかに減圧下(950mbar)、300rpmで10分間混合した。得られたペースト状塊をわずかに減圧(950mbar)下、300rpmでさらに10分間均質化した。55.5体積%の本発明のアルミニウム粒子の含有率及び73.1体積%の熱伝導性フィラーの総含有率を有する本発明のB成分を得た。このペースト状組成物は、2.46g/cm
3
の密度、せん断速度D=10s-1及び25℃で42800mPa・sの動的粘度、及び3.5W/mKの熱伝導率を有し、したがって、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好に適している。
【手続補正12】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)であって、
5~50体積%の架橋性シリコーン組成物(S)、及び
少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する50~95体積%の少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)を含み、ただし、
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有し、
熱伝導性フィラー(Z)として存在する少なくとも20体積%の金属アルミニウム粒子は、以下の特徴、すなわち、
a) それらの中央径x50は30~150μmの範囲であり、
b) それらは、最後の製造ステップで溶融プロセスを介して製造され、主として丸みを帯びた表面形状を有し、
c) それらの分布範囲SPAN((x90-x10)/x50)は、少なくとも0.40である、
ことを満たす架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)。
【請求項2】
付加架橋シリコーン組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラー(Z)として少なくとも25体積%の金属アルミニウム粒子を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項4】
前記金属アルミニウム粒子の他に、1種のみ又は2種のさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項5】
5.0
g/cm
3
より大きい密度を有する16重量%未満のさらなる熱伝導性フィラー(Z)が存在することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項6】
前記金属アルミニウム粒子の中央径x50は、40~130μmの範囲であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項7】
前記金属アルミニウム粒子は、アルミニウム粒子の総量に基づいて、20重量%未満の20μm以下の直径を有する粒子画分を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項8】
少なくとも0.8W/mKの熱伝導率を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項9】
いずれの場合もせん断速度D=10s
-1及び25℃で1000~750000mPa・sの動的粘度を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項10】
個々の成分を混合することによって、請求項1~9のいずれかに記載の本発明の架橋性シリコーン組成物を製造する方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の本発明の架橋性シリコーン組成物を分配又は塗布し、次いで硬化させることによって得ることができるシリコーン生成物。
【請求項12】
ギャップフィラー(=熱伝導性要素)、熱伝導性パッド、熱伝導性接着剤及び封入化合物としての請求項1~9のいずれかに記載の架橋性シリコーン組成物の使用。
【請求項13】
電気自動車のリチウムイオン電池用のギャップフィラーとしての請求項12に記載の使用。
【請求項14】
電気自動車の封入化合物としての請求項12に記載の使用。
【国際調査報告】