IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒタチ・エナジー・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-計器用変圧器 図1
  • 特表-計器用変圧器 図2
  • 特表-計器用変圧器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】計器用変圧器
(51)【国際特許分類】
   H02B 13/035 20060101AFI20240614BHJP
   H01F 38/20 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H02B13/035 301F
H01F38/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566876
(86)(22)【出願日】2023-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2023055450
(87)【国際公開番号】W WO2023198357
(87)【国際公開日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】22167909.5
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラマリ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ガチェ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ナエフ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】クレッセンス,マックス-シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ストローマン,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】エリコ,エンニオ
【テーマコード(参考)】
5E081
5G017
【Fターム(参考)】
5E081AA05
5E081BB01
5E081CC22
5G017BB14
5G017DD01
(57)【要約】
本開示は、SFを含有する絶縁媒体を使用するように設計されたタイプの計器用変圧器に関し、前記計器用変圧器は、絶縁空間を囲むハウジングを備え、絶縁空間内に配置された電気的活性部分をさらに備え、前記絶縁空間は誘電絶縁媒体を含む。計器用変圧器は、誘電絶縁媒体が、3~5モル%のヘプタフルオロイソブチロニトリル、4~11モル%の酸素(O)、および84~93モル%の窒素(N)を含むガス状混合物を含有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SFを含有する絶縁媒体を使用するように設計されたタイプの計器用変圧器であって、前記計器用変圧器が、絶縁空間を囲むハウジングを備え、前記絶縁空間内に配置された電気的活性部分をさらに備え、前記絶縁空間が誘電絶縁媒体を含有し、前記誘電絶縁媒体が、3~5モル%のヘプタフルオロイソブチロニトリル、4~11モル%の酸素(O)、および84~93モル%の窒素(N)を含むガス状混合物を含有することを特徴とする、計器用変圧器。
【請求項2】
前記ガス状混合物内の酸素(O)の量が、4~6モル%、好ましくは約5モル%である、請求項1に記載の計器用変圧器。
【請求項3】
前記ガス状混合物内のヘプタフルオロイソブチロニトリルの量が、3.5~4.5モル%、好ましくは約4モル%である、先行する請求項のいずれかに記載の計器用変圧器。
【請求項4】
前記ガス状混合物内の窒素(N)の量が、89.5~92.5モル%、好ましくは約91モル%である、先行する請求項のいずれかに記載の計器用変圧器。
【請求項5】
その定格最小動作温度が-5℃以下である、先行する請求項のいずれかに記載の計器用変圧器。
【請求項6】
その定格最小動作温度が-30℃である、請求項1~4のいずれかに記載の計器用変圧器。
【請求項7】
前記誘電絶縁媒体が、絶対圧3バール~絶対圧12バールの範囲の圧力で前記絶縁空間内に存在する、先行する請求項のいずれかに記載の計器用変圧器。
【請求項8】
前記計器用変圧器が、絶対圧5バール以上、好ましくは絶対圧6バール以上の圧力でSFを使用するように設計された前記タイプの変圧器である、先行する請求項のいずれかに記載の計器用変圧器。
【請求項9】
前記誘電絶縁媒体が、5モル%未満の二酸化炭素、好ましくは2モル%未満の二酸化炭素を含有し、最も好ましくは少なくとも本質的に二酸化炭素を含まない、先行する請求項のいずれかに記載の計器用変圧器。
【請求項10】
前記絶縁空間が、EPDMゴム、ニトリルゴム、およびブチルゴムからなるグループから選択された封止材料を含む封止部品によって封止される、先行する請求項のいずれかに記載の計器用変圧器。
【請求項11】
前記計器用変圧器が、高電圧計器用変圧器、変流器、および変電所変圧器のうちの1つである、先行する請求項のいずれかに記載の計器用変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる計器用変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
計器用変圧器は当技術分野でよく知られている。具体的には、高電圧計器用変圧器は、エンドユーザによって指定された既知の正確な割合で、高電流および高電圧のレベルを低電流および低電圧の出力に変換するように設計されている。高電圧計器用変圧器とは別に、計器用変圧器には、変流器および変電所変圧器も含まれる。
【0003】
計器用変圧器に含有される導電性部品の絶縁のために、六フッ化硫黄(SF)が従来から使用されている。
【0004】
SFは、その優れた誘電特性およびその化学的不活性のために、十分に確立された絶縁ガスである。絶縁耐力に関してSFの優れた特性を有するために、既存の計器用変圧器は比較的コンパクトな寸法を有する。SFが6バール以上の高圧で使用される場合、特にコンパクトな設計が実現可能である。これは、高いガス密度でSFによって実現可能な非常に高い誘電性能に起因し、最終的に計器用変圧器内の非常に小さいクリアランスを可能にする。
【0005】
これらの特性にもかかわらず、特にSFよりも低い地球温暖化係数(GWP)を有する代替物を考慮して、代替の絶縁ガスを探す取り組みが強化されている。
【0006】
非SF代替物を提供することを考慮して、有機フッ素化合物を誘電絶縁媒体に使用することが提案されている。具体的には、国際特許出願公開第2010/142346号は、4~12個の炭素原子を含有するフルオロケトンを含む誘電絶縁媒体を提案している。
【0007】
フルオロケトンは高い絶縁耐力を有することが示されている。同時に、それらは非常に低いGWPおよび非常に低い毒性を有する。これらの特徴の組合せにより、フルオロケトンはSFの実行可能な代替物を構成する。
【0008】
この点に関するさらなる発展は、国際特許出願公開第2012/080246号に反映されており、キャリアガスとの混合物内に正確に5個の炭素原子、特に1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-ブタン-2-オンを含有するフルオロケトンを含む誘電絶縁ガスを示唆しており、それはフルオロケトンと一緒になり、絶縁媒体のガス成分の絶縁耐力の合計を超えて絶縁媒体の絶縁耐力の非線形増加を提供する。
【0009】
米国特許出願公開第2018/197656A1号は、移動中に開閉装置の2つの接点間に形成される電気アークを消滅させるためのアーク制御機構を備える中電圧または高電圧のガス絶縁開閉装置に関し、前記アーク制御機構は回転アーク型である。開閉装置の筐体は、0%~20%の範囲内にある体積割合で少なくともフルオロニトリルを含む誘電ガスで満たされている。
【0010】
環境への配慮に関するそれらの好ましい特性にもかかわらず、上述された代替絶縁媒体の絶縁耐力は、SFの絶縁耐力よりも低い動作状態にある。提案された「非SF」代替物のうちの少なくともいくつかの場合、これはそれらの沸点が比較的高いためである。したがって、これらの代替絶縁媒体は、上述された高圧レベル(すなわち、6バール以上)でSFを使用する場合と同じ性能レベルに達することができない。
【0011】
理論的には、代替絶縁媒体の圧力を増加させることによって性能レベルの向上を実現することができるが、高圧では、絶縁媒体またはその構成要素の望ましくない結露がより高い温度で起こり得るので、これは変圧器の最小動作温度を大幅に上昇させる。反対に、代替絶縁媒体を使用する場合、SFを使用するときに実現可能なのと同じ最小動作温度に達すると、誘電性能が大幅に低下する。
【0012】
加えて、絶縁媒体の圧力を増加させると、EPDMなどの従来から使用されているガス封止材料を介して絶縁媒体が後で漏出する可能性がある。これは、特に、二酸化炭素を含有する絶縁媒体の場合であり、それは、一般に、その比較的高い絶縁耐力、特にその良好なアーク消去特性に起因して適切なキャリアガスであると認識されている。そのような二酸化炭素含有絶縁媒体の場合、漏出を回避するために専用のガス封止剤(または他の高度な手段)が適用されなければならない。そうでない場合、計器用変圧器の安全な動作を保証することができない。
【0013】
具体的には、この問題は、国際特許出願公開第2015/040069号で提案されているヘプタフルオロイソブチロニトリルと二酸化炭素とを含有するガス混合物を使用した場合に発生する可能性があり、それはEPDM製の封止部品を透過することが分かっている。
【0014】
SFの使用を最小限に抑える必要性が高まっていることを考慮すると、既存のSFに合わせて調整された計器用変圧器を、特にGWPの低減を考慮して、環境への配慮が改善された計器用変圧器に置き換えることが望ましい。しかしながら、上述された理由により、変圧器の安全な動作を損なうことなく、かつ/または変圧器の全体的な設計の実質的な変更を必要とすることなく、SFを交換することは現在不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明によって解決されるべき問題は、SFを含有する絶縁媒体を使用するように設計されたタイプの計器用変圧器であって、改善された環境への配慮、特に低減されたGWPの要件に適合するが、変圧器の安全性を損なうことがない計器用変圧器を提供することである。言い換えれば、改善された環境への配慮と同様の絶縁性能との複合効果は、「SFに合わせた」計器用変圧器の場合、その設計にかなりの変更を必要とせずに実現されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
問題は、請求項1に記載の計器用変圧器によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0017】
請求項1によれば、本発明の計器用変圧器は、SFを含有する絶縁媒体を使用するように設計されたタイプの変圧器である。
【0018】
具体的には、計器用変圧器は、絶対圧5バール以上、好ましくは絶対圧6バール以上の圧力でSFを使用するように設計されたタイプの変圧器である。上述されたように、この特定のタイプの計器用変圧器は、実現可能な小さいクリアランスに起因して非常にコンパクトな設計を有する。
【0019】
より具体的には、計器用変圧器は、高電圧計器用変圧器、変流器、および変電所変圧器のうちの1つであり、後者は、相あたり200VAを超える、好ましくは相あたり200VA~333kVAの定格出力を有する。
【0020】
最も好ましくは、本発明の計器用変圧器は、高電圧計器用変圧器である。本発明の文脈において、「高電圧」は、(1kV~52kVの電圧レベル範囲を指す「中電圧」と区別して)52kVより高い電圧レベル範囲を指す。
【0021】
SFを含有する絶縁媒体を使用するように設計されたタイプである場合、計器用変圧器の設計および寸法は、SFの誘電特性に適合され、その構成要素ならびに(構成要素間のクリアランス距離を含む)それらの配置がSFの使用に合わせて調整されることを意味する。このタイプの計器用変圧器は、当業者によく知られている。それらは、変圧器の絶縁空間内に存在しているSFに対して気密である。
【0022】
上述されたタイプの計器用変圧器では、SFを含有する絶縁空間は、通常、封止材料としてEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)を使用して封止される。このタイプの計器用変圧器は、電気部品から効率的に熱を放散する能力をさらに有する。これらの計器用変圧器に使用されるSF含有媒体は、純粋な形態のSFであり得るが、SF以外の不純物が存在する媒体も包含する。あるいは、SF含有媒体は、例えばキャリアガスまたはさらなる誘電性化合物と組み合わせてSFを含有する混合物にも関連することができる。少なくとも5バールの圧力でSFを含有するか、またはSFからなる絶縁媒体を使用するように設計された計器用変圧器の特定のケースでは、これは、上述されたように、かつ当業者に知られているように、デバイスの非常にコンパクトな設計によって反映される。
【0023】
計器用変圧器は、絶縁空間を囲むハウジングを備え、絶縁空間内に配置された電気的活性部分をさらに備え、前記絶縁空間は誘電絶縁媒体を含有する。
【0024】
本発明によれば、本発明の誘電絶縁媒体は、3~5モル%のヘプタフルオロイソブチロニトリル、4~11モル%の酸素(O)、および84~93モル%の窒素(N)を含むガス状混合物を含有する。
【0025】
驚くべきことに、請求項1に定義された混合物を使用することにより、計器用変圧器の安全性および性能を損なうことなく、改善された環境への配慮が実現され得ることが分かっている。詳細には、計器用変圧器の全体的な設計、ならびに使用される構成要素および材料の選択にかなりの変更は必要でないことが分かっている。これは、20℃で絶対圧6バールの圧力でSFを使用するように設計された既存の計器用変圧器にも適用され、これらの計器用変圧器の場合も、本発明の混合物は、言及された圧力レベルでSFを使用する場合と同じ絶縁特性が実現されることを可能にする。
【0026】
具体的には、本発明は、同じ構成であるがSF含有媒体を使用する変圧器と比較してより低いGWPの計器用変圧器が実現されることを可能にする。
【0027】
本発明の文脈において、請求項1に定義された絶縁媒体を使用することにより、同じ露点または最小動作温度に達するように全圧で二酸化炭素を含有するガス混合物内で実現可能な化合物の分圧よりも高い、ヘプタフルオロイソブチロニトリルの分圧が実現され得ることが分かっている。理論によって束縛されることを望まずに、フルオロニトリル含有ガス混合物内で窒素を使用することにより、比較的高い沸点を有するヘプタフルオロイソブチロニトリルの使用に起因する露点の上昇を部分的に補償するポインティング効果が実現されることが可能になる。窒素に特有の比較的高い絶縁耐力と組み合わせて、本発明による絶縁媒体により、SFと同様の誘電絶縁性能を実現することができる。
【0028】
加えて、ヘプタフルオロイソブチロニトリルは、装置に含有される他の材料との高い相溶性を表すことが分かっている。詳細には、SFを使用する電気装置に通常使用される封止部品に関して、本発明による絶縁媒体の透過度は比較的低いことが分かっている。したがって、絶縁空間内に存在する誘電絶縁特性を経時的に維持することができ、そのことも、本発明によって再確立される装置の高い安全性に寄与する。
【0029】
最終的に、上述されたように、変圧器の全体的な設計の変更、ならびに使用される構成要素および材料の選択を必要とせずに、環境への配慮が改善された計器用変圧器による、SFを使用する計器用変圧器の交換を実現することができる。したがって、本発明の概念は、欧州特許出願公開第3118955号に開示されている概念とは明確に区別され、それによれば、装置の設計は、SFから環境効率の高い絶縁ガスへの将来の切替えを可能にすることを考慮して変更される。
【0030】
本発明によって実現される技術的効果は、ガス状混合物内のヘプタフルオロイソブチロニトリルの量が3.5~4.5モル%、好ましくは約4モル%である場合に特に顕著である。
【0031】
特に好ましい実施形態によれば、ガス状混合物内の酸素(O)の量は、4~6モル%、好ましくは約5モル%である。
【0032】
さらに好ましい実施形態によれば、ガス状混合物内の窒素(N)の量は、89.5~92.5モル%、好ましくは約91モル%である。
【0033】
すべてのパーセンテージは、ガス混合物の総モル含有量を指す。実際には、ガス状混合物の調製は常に公差の影響を受ける。ガス状混合物の範囲が与えられる場合はいつでも、その範囲は公差も包含する。範囲が与えられない場合、値は公称値を指す。
【0034】
上述されたように、本発明は、媒体の結露の問題に直面することなく、計器用変圧器が低温で動作することを可能にする。詳細には、計器用変圧器の定格最小動作温度は-5℃以下であり、それは、一般に、計器用変圧器の屋内用途に適用される。屋外用途の代替のケースでは、計器用変圧器の定格最小動作温度は、好ましくは-25℃以下、より好ましくは-30℃以下である。最も好ましくは、計器用変圧器の屋外用途の定格最小動作温度は-30℃であるが、-40℃、-50℃、または-60℃でもあり得る。
【0035】
誘電絶縁媒体が絶対圧3バール~絶対圧12バール、好ましくは絶対圧3バール~絶対圧11バール、より好ましくは絶対圧8バール~絶対圧11バールの範囲の圧力で絶縁空間内に存在し、圧力が20℃の基準温度を指す計器用変圧器の場合、特に高い絶縁性能を実現することができる。驚くべきことに、これらの高圧範囲であっても、絶縁媒体の結露は起こらないか、または無視できる程度しか起こらないことが分かっている。
【0036】
また上述されたように、本発明の誘電絶縁媒体は、それが使用される計器用変圧器に含有される他の材料、特に封止材、固体絶縁体などとの高い適合性を考慮して有利である。詳細には、誘電絶縁媒体は、SFを使用するように設計された電気装置に通常使用されるEPDMゴムおよびニトリルゴムからなるグループから選択された封止材料、ならびにブチルゴムからなる封止材料と適合する。これらの封止材料の場合も、本発明による絶縁媒体の透過度は比較的低いことが分かっている。具体的には、EPDM封止剤の場合わずか0.1%/yの漏出率が測定された。
【0037】
通常、絶縁空間を封止する封止部品はOリングの形態である。封止部品に使用される封止材料は、好ましくはEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)であるが、代替として、ニトリルゴムならびに未改質ブチルゴムおよび改質ブチルゴムを含むブチルゴム、特にクロロブチルゴム(CIIR)またはブロモブチルゴム(BIIR)でもあり得る。
【0038】
これは、特に、誘電絶縁媒体が少量の二酸化炭素のみを含有するか、または二酸化炭素を含まない場合に当てはまる。したがって、好ましい実施形態によれば、誘電絶縁媒体は、5モル%未満の二酸化炭素、好ましくは2モル%未満の二酸化炭素を含有し、最も好ましくは少なくとも本質的に二酸化炭素を含まない。
【0039】
本発明の誘電絶縁媒体を使用することによって実現可能な高い材料適合性を考慮すると、絶縁空間は、EPDMゴム、ニトリルゴム、およびブチルゴムからなるグループから選択された封止材料を含む封止部品によって封止されることが好ましい。
【0040】
また上述されたように、窒素と組み合わせて、フルオロニトリル含有絶縁媒体は、フルオロニトリル自体の露点よりも低い露点を有することが分かっている。より具体的には、窒素および酸素を含有するキャリアガスと混合してヘプタフルオロイソブチロニトリルを含有する代替絶縁媒体の露点測定により、-36℃の露点が明らかになっており、それは、(約-29℃である)混合物で使用されたのと同じ分圧での単離されたヘプタフルオロイソブチロニトリルの露点よりも低く、上記で定義されたものと同様であるが、窒素の代わりに二酸化炭素を使用した(約-27℃である)三元混合物の露点よりも実質的に低い。
【0041】
誘電絶縁媒体の低い露点に起因して、計器用変圧器の充填は、それぞれの貯蔵および輸送装置からガス混合物を直接導入することによって現場で行うことができる。したがって、現場試運転は非常に簡単であり、成分を正しい量で含有する組成物を調製するために高度な混合手段を必要としない。
【0042】
本発明は、図面とともに以下の実施例によってさらに例示される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】変流器の形態の本発明による計器用変圧器の側面図である。
図2】第1の断面平面を通る長手方向断面で図1の計器用変圧器を示す図である。
図3】第2の断面平面を通る長手方向断面で図1の計器用変圧器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
実施例
誘電絶縁媒体としてSFを使用するように設計された計器用変圧器が提供されている。
【0045】
次いで、91モル%の窒素、4モル%のヘプタフルオロイソブチロニトリル、および5モル%の酸素を含有する代替絶縁媒体が、絶縁空間を囲むハウジング内のそれぞれの充填バルブに接続された供給管によって絶縁空間に充填されている。
【0046】
このようにして充填された計器用変圧器は、軽減インパルス耐電圧、切替えインパルス耐電圧、電力周波数耐電圧、および部分放電測定に関してIECによる誘電試験に合格することができた。
【0047】
混合物の露点は、流体を絶えずゆっくり冷却し、流体のそれぞれの圧力を監視することによって決定され、圧力の低下は結露が始まる点を示す。それにより、-36℃における混合物の露点、すなわち、-29℃である同じ分圧における単離されたヘプタフルオロイソブチロニトリルの露点よりも低い露点が決定された。
【0048】
代替ガス混合物は、誘電絶縁媒体としてSFを使用するように設計された計器用変圧器に使用されるほとんどの材料と適合することがさらに分かった。したがって、設計変更および大幅な材料変更は必要でない。
【0049】
気密性に関して、装置内の標準SF封止部品として使用されるEPDM Oリングは、使用される代替ガス混合物の許容可能な透過度を示した。具体的には、EPDM Oリングを通る窒素の透過度は、二酸化炭素の透過度と比較して7倍減少することが分かった。
【0050】
図1に示された特定の実施形態では、絶縁変圧器(1)は、その底部に充填バルブ(2)を備える。この充填バルブ(2)を介して、絶縁媒体は、図2および図3に示されたように、絶縁空間内に配置された電気的活性部分、特に絶縁空間内に配置されたコイル(8)および主導体(10)の一部を取り囲むようにハウジング(6)によって囲まれた絶縁空間(4)内に導入される。絶縁空間は、いくつかの封止部品によって封止され、そのうちの主な封止部品(12)が図3に示されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SFを含有する絶縁媒体を使用するように設計されたタイプの計器用変圧器であって、前記計器用変圧器が、絶縁空間を囲むハウジングを備え、前記絶縁空間内に配置された電気的活性部分をさらに備え、前記絶縁空間が誘電絶縁媒体を含有し、前記誘電絶縁媒体が、3~5モル%のヘプタフルオロイソブチロニトリル、4~11モル%の酸素(O)、および84~93モル%の窒素(N)を含むガス状混合物を含有することを特徴とする、計器用変圧器。
【請求項2】
前記ガス状混合物内の酸素(O)の量が、4~6モル%である、請求項1に記載の計器用変圧器。
【請求項3】
前記ガス状混合物内のヘプタフルオロイソブチロニトリルの量が、3.5~4.5モル%である、請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【請求項4】
前記ガス状混合物内の窒素(N)の量が、89.5~92.5モル%である、請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【請求項5】
その定格最小動作温度が-5℃以下である、請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【請求項6】
その定格最小動作温度が-30℃である、請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【請求項7】
前記誘電絶縁媒体が、絶対圧3バール~絶対圧12バールの範囲の圧力で前記絶縁空間内に存在する、請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【請求項8】
前記計器用変圧器が、絶対圧5バール以上の圧力でSFを使用するように設計された前記タイプの変圧器である、請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【請求項9】
前記誘電絶縁媒体が、5モル%未満の二酸化炭素を含有する請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【請求項10】
前記絶縁空間が、EPDMゴム、ニトリルゴム、およびブチルゴムからなるグループから選択された封止材料を含む封止部品によって封止される、請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【請求項11】
前記計器用変圧器が、高電圧計器用変圧器、変流器、および変電所変圧器のうちの1つである、請求項1または2に記載の計器用変圧器。
【国際調査報告】