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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/30 20060101AFI20240614BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20240614BHJP
   C07C 43/205 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 401/06 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 409/06 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 277/24 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 213/38 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 417/06 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 239/26 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 307/42 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 307/38 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 333/18 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 333/16 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 333/12 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 333/08 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 213/26 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 213/16 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 213/30 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 405/06 20060101ALI20240614BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C07C41/30
C07C43/225 A
C07C43/205 A
C07D401/06
C07D409/06
C07D277/24
C07D213/38
C07D417/06
C07D239/26
C07D307/42
C07D307/38
C07D333/18
C07D333/16
C07D333/12
C07D333/08
C07D213/26
C07D213/16
C07D213/30
C07D405/06
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023567188
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 GB2022051483
(87)【国際公開番号】W WO2022263800
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,735
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュランク、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】スラック、エリック
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC25
4H006BA23
4H006BA25
4H006BA37
4H006BA48
4H006GN08
4H006GP03
4H039CA41
4H039CA42
4H039CD40
4H039CD90
(57)【要約】
本発明は、有機分子の合成プロセスに関する。本発明は、触媒、水、及び第1の塩基の存在下で、置換芳香族基又は非置換芳香族基を含む第1の化合物と、置換芳香族基又は非置換芳香族基を含む第2の化合物と、の間に、sp-sp炭素-炭素結合を形成するプロセスを、提供する。本プロセスは、医薬品有効成分の調製において、用途を見出すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
sp-sp炭素-炭素結合を形成するためのプロセスであって、前記プロセスが、
式Iの化合物を提供することであって、
【化1】
式中、Xが、置換芳香族基又は非置換芳香族基であり、
Zが、sp3-混成炭素原子Cを含み、式-C(H)(R)-を有する有機基であり、式中、Rが、H、OH、置換アルキル基若しくは非置換アルキル基、置換アルケニル基若しくは非置換アルケニル基、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
Rが、置換C1~20直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~20直鎖状アルキル基又は置換C3~20分枝鎖状アルキル基若しくは非置換C3~20分枝鎖状アルキル基である、式Iの化合物を、提供することと、
式IIの化合物であって、
【化2】
式中、Yが、置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換有機基若しくは非置換有機基である、あるいは、それらが結合している前記原子と一緒になって、R及びRが環を形成する、式IIの化合物を、
触媒、水、第1の塩基、及びルイス酸の存在下で、前記式Iの化合物と反応させて、式IIIの化合物であって、
【化3】
式中、X、Z及びYが、上記で定義した通りである、式IIIの化合物を、得ることと、を含み、
式中、
前記式IIの化合物において、ホウ素原子が、Y中のsp2-混成炭素原子においてYに結合しており、
前記式IIIの化合物において、Zの前記sp-混成炭素原子Cが、Y中の前記sp-混成炭素原子においてYに結合している、プロセス。
【請求項2】
が、H、置換芳香族基若しくは非置換芳香族基、又は置換C1~20アルキル基若しくは非置換C1~20アルキル基である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
が、Hである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記式Iの化合物中のRが、置換C1~10直鎖状アルキル基又は非置換C1~10直鎖状アルキル基又は置換C3~10分岐鎖状アルキル基若しくは非置換C3~10分岐鎖状アルキル基、好ましくは、置換C1~4直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~4直鎖状アルキル基又は置換C3~4分岐鎖状アルキル基若しくは非置換C3~4分岐鎖状アルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記式Iの化合物中のXが、置換アリール基若しくは非置換アリール基、又は置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記式Iの化合物中のXが、置換C~C20アリール基又は非置換C~C20アリール基、好ましくは、置換C~C18アリール基又は非置換C~C18アリール基、より好ましくは、置換C~C10アリール基又は非置換C~C10アリール基である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記式Iの化合物中のXが、置換又は非置換のフェニル、トリル、キシリル、メトキシフェニル、ジフルオロフェニル、アントラセニル、及びナフタレニルから選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記式Iの化合物中のXが、置換C~C20ヘテロアリール基又は非置換C~C20ヘテロアリール基、より好ましくは、置換C~C18ヘテロアリール基又は非置換C~C18ヘテロアリール基、更により好ましくは、置換C~C10ヘテロアリール基又は非置換C~C10ヘテロアリール基である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記式Iの化合物中のXが、置換又は非置換のピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、アザインドリル、フラニル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、1,2-ベンズチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、及びベンゾオキサゾリルから選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記式Iの化合物が、下位式Iaを有し、
【化4】
式中、Rが、置換C1~20直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~20直鎖状アルキル基又は置換C3~20分枝鎖状アルキル基若しくは非置換C3~20分枝鎖状アルキル基であり、
が、-ハロ、-C(ハロ)、-Ra、-O-R、-S-R、-NRRb、-CN、-NO、-C(O)-R、-COOR、-C(S)-R、-C(S)OR、-S(O)OH、-S(O)-R、-S(O)NR、-O-S(O)-R、及び-CONRから選択される置換基であり、式中、R及びRbが、独立して、H、置換アルキル若しくは非置換アルキル、置換アリール若しくは非置換アリール、置換アリールアルキル若しくは非置換アリールアルキル、置換ヘテロアルキル若しくは非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアリール若しくは非置換ヘテロアリールからなる群から選択される、又はR及びRbが、それらが結合している前記原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル基を形成する、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記式IIの化合物中のR及びRが、独立して、H、あるいは置換C1~20直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~20直鎖状アルキル基又は置換C3~20分岐鎖状アルキル基若しくは非置換C3~20分岐鎖状アルキル基、好ましくは、H、あるいは置換C1~10直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~10直鎖状アルキル基又は置換C3~10分岐鎖状アルキル基若しくは非置換C3~10分岐鎖状アルキル基、より好ましくは、H、あるいは置換C1~4直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~4直鎖状アルキル基又は置換C3~4分岐鎖状アルキル基若しくは非置換C3~4分岐鎖状アルキル基である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記式IIの化合物中のR及びRが、環を形成し、好ましくは、R及びRが、-Bpinである環を形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記式IIの化合物中のYが、置換アリール基若しくは非置換アリール基、又は置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記式IIの化合物中のYが、置換C~C20アリール基又は非置換C~C20アリール基、好ましくは、置換C~C18アリール基又は非置換C~C18アリール基、より好ましくは、置換C~C10アリール基又は非置換C~C10アリール基である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記式IIの化合物中のYが、置換又は非置換のフェニル、トリル、キシリル、メトキシフェニル、ジフルオロフェニル、アントラセニル、及びナフタレニルから選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記式IIの化合物中のYが、置換C~C20ヘテロアリール基又は非置換C~C20ヘテロアリール基、好ましくは、置換C~C18ヘテロアリール基又は非置換C~C18ヘテロアリール基、より好ましくは、置換C~C10ヘテロアリール基又は非置換C~C10ヘテロアリール基である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記式IIの化合物中のYが、置換又は非置換のピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、アザインドリル、フラニル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、1,2-ベンズチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、及びベンゾオキサゾリルから選択される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記式IIの化合物が、下位式IIaを有し、
【化5】
式中、R及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換有機基若しくは非置換有機基である、あるいは、それらが結合している前記原子と一緒になって、R及びRが、環を形成し、
が、-ハロ、-C(ハロ)、-R、-O-R、-S-R、-NRRb、-CN、-NO、-C(O)-R、-COOR、-C(S)-R、-C(S)OR、-S(O)OH、-S(O)-R、-S(O)NR、-O-S(O)-R、及び-CONRから選択される置換基であり、式中、R及びRが、独立して、H、置換アルキル若しくは非置換アルキル、置換アリール若しくは非置換アリール、置換アリールアルキル若しくは非置換アリールアルキル、置換ヘテロアルキル若しくは非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアリール若しくは非置換ヘテロアリールからなる群から選択される、又はR及びRが、それらが結合している前記原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル基を形成し、
PGが、保護基である、請求項16又は17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記触媒が、白金族金属を含む金属錯体であり、好ましくは、前記触媒が、パラジウムを含む金属錯体である、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記触媒が、白金族金属の錯体、好ましくは、パラジウムの錯体であり、前記白金族金属に配位した1つ以上の配位子を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記触媒が、[Pd(RuPhos)(クロチル)Cl]又は[Pd(dippf)Cl]である、請求項19又は20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記触媒が、前記式Iの化合物の総量に基づいて、0.1モル%~3モル%の量で存在する、請求項1~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記触媒が、前記式Iの化合物の総量に基づいて、2.0モル%~3.0モル%の量で存在する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記水が、前記式Iの化合物に対して、5~30モル当量の量で存在する、請求項1~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記ルイス酸が、金属ハロゲン化物又はハロゲン化リチウムである、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ルイス酸が、塩化リチウム、臭化リチウム、又はヨウ化リチウムである、請求項1~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記ルイス酸が、前記式Iの化合物に対して、1~4モル当量の範囲で存在する、請求項1~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記式Iの化合物と前記式IIの化合物との前記反応が、溶媒中で実施される、請求項1~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記溶媒が、アルコール、エーテル、芳香族溶媒、アルキル溶媒、ジアルキル炭酸塩、又はこれらの混合物を含む、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記溶媒が、ジアルキル炭酸塩を含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記式Iの化合物が、式IVの化合物であって、
【化6】
式中、Xが、置換芳香族基又は非置換芳香族基であり、
Zが、sp-混成炭素原子Cを含み、式-C(H)(R)-を有する、有機基であり、
式中、Rが、H、OH、置換アルキル基若しくは非置換アルキル基、置換アルケニル基若しくは非置換アルケニル基、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、Qが、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mが、金属である、式IVの化合物を、
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩であって、式中、各Rが、第2の塩基の存在下において、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である、ジアルキル炭酸塩と、反応させることによって、提供される、請求項1~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記第2の塩基が、金属アルコキシドである、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記式Iの化合物が、前記式IIの化合物、前記触媒、前記水、及び前記第1の塩基の存在下で、式IVの化合物であって、
【化7】
式中、Xが、置換芳香族基又は非置換芳香族基であり、
Zが、sp3-混成炭素原子Cを含み、式-C(H)(R)-を有する有機基であり、式中、Rが、H、OH、置換アルキル基若しくは非置換アルキル基、置換アルケニル基若しくは非置換アルケニル基、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、Qが、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mが、金属である、式IVの化合物を、
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩であって、式中、各Rが、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である、ジアルキル炭酸塩と、反応させることによって、その場で提供される、請求項1~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
sp-sp炭素-炭素結合を形成するためのその場でのプロセスであって、前記その場でのプロセスが、
式Iの化合物を提供することであって、
【化8】
式中、Xが、置換芳香族基又は非置換芳香族基であり、
Zが、sp混成炭素原子Cを含み、式-C(H)(R)-を有する有機基であり、式中、Rが、H、OH、置換アルケニル基若しくは非置換アルケニル基、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
Rが、置換C1~20直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~20直鎖状アルキル基又は置換C3~20分枝鎖状アルキル基若しくは非置換C3~20分枝鎖状アルキル基である、式Iの化合物を、提供することと、
前記式Iの化合物を、式IIの化合物であって、
【化9】
式中、Yが、置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換有機基若しくは非置換有機基である、あるいは、それらが結合している前記原子と一緒になって、R及びRが、環を形成する、式IIの化合物に、
触媒、水、及び第1の塩基、並びに所望により、ルイス酸の存在下で、反応させて、式IIIの化合物であって、
【化10】
式中、X、Z及びYが、上記で定義した通りである、式IIIの化合物を得ることと、を含み、
ここで、
前記式IIの化合物において、前記ホウ素原子が、Y中のsp混成炭素原子においてYに結合しており、
前記式IIIの化合物において、Zの前記sp-混成炭素原子Cが、Y中の前記sp-混成炭素原子においてYに結合しており、
前記式Iの化合物が、前記式IIの化合物、前記触媒、前記水、及び前記第1の塩基の存在下で、式IVの化合物であって、
【化11】
式中、X及びZが、上記で定義した通りであり、Qが、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mが金属である、式IVの化合物を、
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩であって、式中、各Rが、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である、ジアルキル炭酸塩と反応させることによって、その場で提供される、プロセス。
【請求項35】
前記ジアルキル炭酸塩が、ジメチル炭酸塩、ジエチル炭酸塩、ジ-イソ-プロピル炭酸塩、及びジ-tertブチル炭酸塩から選択され、好ましくは、ジメチル炭酸塩から選択される、請求項31~34のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスカップリングプロセスに関する。より具体的には、本発明は、sp-sp炭素-炭素結合を形成するためのクロスカップリングプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
sp-sp炭素結合が形成されるクロスカップリングプロセスは、天然生成物及び医薬品有効成分などの有機化合物の合成において、重要である。
【0003】
sp-sp炭素-炭素結合を形成することは困難であり、多くの場合、過酷な条件の使用を必要とし、毒性試薬の使用及び/又は高い触媒充填量を必要とする場合がある。医薬品有効成分は、最高純度でなければならない。任意の副生成物、未反応出発物質、又は触媒(重金属触媒など)は、除去されなければならない。その結果、過酷な条件を用いる反応は、医薬品有効成分の形成における使用に好適ではない場合がある、又は費用及び時間のかかる精製工程を必要とする場合がある。
【0004】
7-アザインドール及びその誘導体は、多数の医薬品有効成分中にファルマコフォアとして見出される、重要な有機サブユニットである。したがって、7-アザインドールを官能基化する反応は、医薬分野において非常に興味深い。
【0005】
Eur.J.Org.Chem.2019年,8,1801-1807には、(ヘテロ)ベンジル型アルコールを(ヘテロ)アリールボロン酸と反応させることによる、sp-sp炭素-炭素結合の形成が、記載されている。この反応は、SOトリエチルアミン及び5モル%までの高充填量のパラジウム触媒の存在下で、実施される。
【0006】
ACS Catal.2017年,7,2,1108-1112には、フッ素化スルホン誘導体を使用する鈴木-宮浦(Suzuki-Miyaura)クロスカップリング反応が、記載されている。
【0007】
J.Org.Chem.2014年,79,12,5921-5928には、クロロメチル(ヘテロ)アレーン(芳香族炭化水素)と(ヘテロ)アリールホウ素化合物との間のカップリング反応においてsp-sp結合を形成するために、特定のパラジウム-配位子触媒を使用することが、記載されている。
【0008】
sp-sp結合を生成する、特に医薬品有効成分の調製において使用するための、より安全で、より環境に優しいプロセスが、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、本発明は、sp-sp炭素-炭素結合を形成するためのプロセスを提供し、本プロセスは、
式Iの化合物であって、
【0010】
【化1】
式中、Xは、置換芳香族基又は非置換芳香族基であり、
Zは、sp3-混成炭素原子Cを含み、式-C(H)(R)-を有する有機基であり、式中、Rは、H、OH、置換アルキル基若しくは非置換アルキル基、置換アルケニル基若しくは非置換アルケニル基、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
Rは、置換C1~20直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~20直鎖状アルキル基又は置換C3~20分枝鎖状アルキル基若しくは非置換C3~20分枝鎖状アルキル基である、式Iの化合物を、提供することと、
式IIの化合物であって、
【0011】
【化2】
式中、Yは、置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
及びRは、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換有機基若しくは非置換有機基である、あるいは、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する、式IIの化合物を、
触媒、水、及び第1の塩基、並びに所望により、ルイス酸の存在下で、式Iの化合物と反応させて、式IIIの化合物であって、
【0012】
【化3】
式中、X、Z及びYは、上記で定義した通りである、式IIIの化合物を、得ることと、を含み、
ここで、
式IIの化合物において、ホウ素原子は、Y中のsp2-混成炭素原子においてYに結合しており、
式IIIの化合物において、Zのsp-混成炭素原子Cは、Y中の前記sp-混成炭素原子においてYに結合している。
【0013】
驚くべきことに、本発明のプロセスは、sp-混成炭素架橋を介して、芳香族基と別の芳香族基との効率的なクロスカップリングを可能にすることが、見出された。本プロセスは、温和な条件下で、攻撃的な化学試薬を使用する必要なく、良好な収率で進行する。このようなカップリングは、特に医薬産業において許容される触媒充填量では、達成が困難であることが知られている。
【0014】
本発明の第2の態様では、式IVの化合物を反応させることによって、式Iの化合物を提供するためのプロセスが提供されるが、
【0015】
【化4】
式中、X及びZは、上記で定義した通りであり、
Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、金属であり、
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩を有し、式中、各Rは、第2の塩基の存在下において、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である。
【0016】
一般に、式Iの化合物を調製するために式IVの化合物を使用することは、式IVの化合物と反応して式Iの化合物を所与する、非毒性で環境に優しい試薬(すなわち、ジアルキル炭酸塩)を使用するという利点を有する。更に、式IVの化合物は、式Iの化合物よりも容易に供給される場合があり、例えば、式IVの化合物は、商業的供給業者からより容易に供給される場合がある。
【0017】
本発明の第3の態様では、本発明のその場でのプロセスが提供される。本発明の第3の態様のその場でのプロセスでは、式Iの化合物は、式IIの化合物、触媒、水、及び第1の塩基の存在下で、式IVの化合物を反応させることによって、その場で提供され、
【0018】
【化5】
式中、X及びZは、上記で定義した通りであり、
Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、金属であり、
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩を有し、式中、各Rは、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である。
【0019】
有利には、本発明の第3の態様の、その場でのプロセスは、式Iの化合物をそのまま本発明の反応に供給する必要がないことを意味する。代わりに、式Iの化合物は、式IVの化合物からその場で形成される。式IVの化合物は、式Iの化合物よりも容易に供給される場合があり、例えば、式IVの化合物は、商業的供給業者からより容易に供給される場合がある。一般に、式Iの化合物を調製するために式IVの化合物を使用することは、式IVの化合物と反応して式Iの化合物を所与する、非毒性で環境に優しい試薬であるジアルキル炭酸塩を使用するという利点を有する。驚くべきことに、式Iの化合物が式IVの化合物からその場で提供される場合、副生成物が全く形成されないか、又は最小限しか形成されないことが見出された。
【0020】
定義
部分又は置換基の結合点は、「-」によって表される。例えば、-OHは、酸素原子を介して結合される。
【0021】
「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖状の不飽和炭化水素基又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基を指す。アルケニル基は、以下に定義されるアルキル基などの、その他の有機基によって置換されてもよい。アルケニル基を含む化合物の典型的な例としては、プロペニル、ブタ-1-エニル、ブタ-2-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-2-エニル、ペンタ-3-エニル、3,3-ジメチルブタ-1-エニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「アルキル」とは、直鎖状の飽和炭化水素基又は分岐鎖状の飽和炭化水素基を指す。特定の実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素原子、特定の実施形態では、1~15個の炭素原子、特定の実施形態では、1~8個の炭素原子を有してもよい。アルキル基は、非置換であってもよい。代替的に、アルキル基は、置換されてもよい。別途指定されない限り、アルキル基は、任意の好適な炭素原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「アリール」とは、芳香族炭素環基を指す。アリール基は、単一の環又は複数の縮合環を有してもよい。特定の実施形態では、アリール基は、6~20個の炭素原子、特定の実施形態では、6~15個の炭素原子、特定の実施形態では、6~12個の炭素原子を有し得る。アリール基は、非置換であってもよい。代替的に、アリール基は、置換されてもよい。別途指定されない限り、アリール基は、任意の好適な炭素原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「カップリング」とは、2つの分子又は分子の一部が一緒に結合する化学反応を指す(Oxford Dictionary of Chemistry,Sixth Edition,2008年)。
【0025】
「ヘテロアリール」とは、ここでは、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、リン原子及び/又は硫黄原子)で独立して置換された、芳香族炭素環基を指す。ヘテロアリール基は、非置換であってもよい。代替的に、ヘテロアリール基は、置換されてもよい。別途指定されない限り、ヘテロアリール基は、任意の好適な原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、キノリニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「置換」とは、1つ以上の水素原子がそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい置換基(例えば、1、2、3、4、5つ、又はそれら以上)で、独立して置換された基を指す。置換基の例としては、-ハロ、-C(ハロ)、-R、=O、=S、-O-R、-S-R、-NR、-CN、-NO、-C(O)-R、-COOR、-C(S)-R、-C(S)OR、-S(O)OH、-S(O)-Rと、-ハロ、-C(ハロ)(例えば、-CF)、-R、-O-R、-NRRb、-CN、又は-NOなどの、-S(O)NR、-O-S(O)-R、及び-CONRと、が挙げられるが、これらに限定されない。R及びRは、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールからなる群から独立して選択される、又はR及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル基を形成する。R及びRは、本明細書で定義されるように、非置換であっても、更に置換されてもよい。
【0027】
「アリールアルキル」とは、式アリール-アルキル-(式中、アリール及びアルキルは、上記で定義した通りである)の、所望により置換された基を指す。
【0028】
「ジアルキル炭酸塩」とは、一般式RO(CO)ORの化合物を指し、式中、各Rは、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である。したがって、R基は、同一であっても異なっていてもよい。R基は、独立して、上記で定義したアルキル基である。ジアルキル炭酸塩の例としては、ジメチル炭酸塩、ジエチル炭酸塩、ジ-イソ-プロピル炭酸塩、ジ-tert-ブチル炭酸塩、メチルエチル炭酸塩、及びメチル-イソ-プロピル炭酸塩が挙げられる。「ジアルキル炭酸塩」は、エチレン炭酸塩又はプロピレン炭酸塩などの環状炭酸塩を指さない。
【0029】
「ハロゲン」、「ハロ」、又は「hal」は、-F、-Cl、-Br、及び-Iを指す。
【0030】
「ヘテロアルキル」は、ここでは、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、リン原子及び/又は硫黄原子)で独立して置換された、直鎖状飽和炭化水素基又は分岐鎖状飽和炭化水素基を指す。ヘテロアルキル基は、非置換であり得る。代替的に、ヘテロアルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、ヘテロアルキル基は、任意の好適な原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。ヘテロアルキル基の例としては、エーテル、チオエーテル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「ヘテロシクロアルキル」とは、ここでは、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、リン原子及び/又は硫黄原子)で独立して置換された、飽和環式炭化水素基を指す。ヘテロシクロアルキル基は、非置換であってもよい。代替的に、ヘテロシクロアルキル基は、置換されてもよい。別途指定されない限り、ヘテロシクロアルキル基は、任意の好適な原子において結合されてもよく、置換される場合、任意の好適な原子において置換されてもよい。ヘテロシクロアルキル基の例としては、エポキシド、モルホリニル、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)、チラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「dippf((di-iso-propyl phosphino)ferrocene)」とは、化合物1,1’-ビス(ジ-イソ-プロピルホスフィノ)フェロセンを指す。
【0033】
「RuPhos」とは、化合物2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニルを指す。
【0034】
「Bpin」とは、ビス(ピナコラト)二ホウ素としても知られている化合物4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ-1,3,2-ジオキサボロランを指す。
【0035】
「Bpin」とは、(ピナコラト)ホウ素としても知られている4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロンを指す。
【0036】
「HBpin」とは、ピナコールボランを指す。
【0037】
「Bcat」とは、(カテコラート)ホウ素を指す。
【0038】
「HBcat」とは、カテコールボランを指す。
【0039】
sp又はsp-混成は、s原子軌道及び2つのp原子軌道を混合して、s特性及びp特性の両方を有する混成軌道を生成することを指す。例えば、ベンゼン環中の炭素原子は全て、sp混成炭素原子であると考えられる。
【0040】
sp又はsp-混成は、s原子有機体及び3つのp原子軌道を混合して、s特性及びp特性の両方を有する混成軌道を生成することを指す。例えば、アルキル基、例えば、エタン中の炭素原子は、sp混成炭素原子であると考えられる。
【0041】
「Boc」とは、tert-ブトキシカルボニルとしても知られている有機基tert-ブチルオキシカルボニルを指す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明のプロセスの一般的な反応スキームを示す。
図2】医薬化合物ペキシダルチニブを生成するための反応を示す、本発明による好ましいプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
これより、本発明の好ましいかつ/又は所望の特徴が、記載される。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれのその他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の好ましい及び/又は所望の特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせのいずれかで、組み合わせることができる。
【0044】
本発明のプロセスは、sp-sp炭素-炭素結合を形成するためのプロセスであって、本プロセスは、式Iの化合物
【0045】
【化6】
式中、Xは、置換芳香族基又は非置換芳香族基であり、
Zは、sp3-混成炭素原子Cを含み、式-C(H)(R)-を有する有機基であり、式中、Rは、H、OH、置換アルキル基若しくは非置換アルキル基、置換アルケニル基若しくは非置換アルケニル基、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
Rは、置換C1~20直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~20直鎖状アルキル基又は置換C3~20分枝鎖状アルキル基若しくは非置換C3~20分枝鎖状アルキル基である、式Iの化合物を、提供することと、
式IIの化合物であって、
【0046】
【化7】
式中、Yは、置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
及びRは、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換有機基若しくは非置換有機基である、あるいは、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する、式IIの化合物を、
触媒、水、及び第1の塩基、並びに所望により、ルイス酸の存在下で、式Iの化合物と反応させて、式IIIの化合物であって、
【0047】
【化8】
式中、X、Z及びYは、上記で定義した通りである、式IIIの化合物を、得ることと、を含み、
ここで、
式IIの化合物において、ホウ素原子は、Y中のsp2-混成炭素原子においてYに結合しており、
式IIIの化合物において、Zのsp-混成炭素原子Cは、Y中の前記sp-混成炭素原子においてYに結合している。
【0048】
本発明のプロセスの一般的な反応スキームを、図1に示す。
【0049】
式Iの化合物において、Xは、置換芳香族基又は非置換芳香族基である。
【0050】
式Iの化合物において、Zは、sp-混成炭素原子Cを含み、式-C(H)(R)-を有する有機基である。Zのsp-混成炭素原子Cは、置換芳香族基又は非置換芳香族基Xに直接結合している。Zのsp-混成炭素原子Cはまた、-OCOR部分に直接(すなわち、末端酸素原子を介して)結合している。
【0051】
式Iの化合物において、Zは、式-C(H)(R)-を有する有機基であり、式中、Rは、H、OH、置換アルキル基若しくは非置換アルキル基、置換アルケニル基若しくは非置換アルケニル基、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基である。好ましくは、Rは、H、OH、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基である。より好ましくは、Rは、H又はOHである。最も好ましくは、Rは、Hである。
【0052】
が、置換芳香族基又は非置換芳香族基であることが、好ましい場合がある。例えば、Rは、置換C~C20アリール基若しくは非置換C~C20アリール基、置換C~C18アリール基若しくは非置換C~C18アリール基、又は置換C~C10アリール基若しくは非置換C~C10アリール基であることが、好ましい場合がある。好ましいC6~20-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、メトキシフェニル、ジフルオロフェニル、アントラセニル、及びナフタレニルが挙げられる。例えば、Rは、置換C~C20ヘテロアリール基若しくは非置換C~C20ヘテロアリール基、置換C~C18ヘテロアリール基若しくは非置換C~C18ヘテロアリール基、又は置換C~C10ヘテロアリール基若しくは非置換C~C10ヘテロアリール基であることが、好ましい場合がある。好ましいヘテロアリール基としては、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、アザインドリル、フラニル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、1,2-ベンズチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、及びベンゾオキサゾリルが挙げられる。
【0053】
が、置換アルキル基又は非置換アルキル基であることが、好ましい場合がある。例えば、Rは、置換C~C20アルキル基又は非置換C~C20アルキル基、より好ましくは、置換C~C10アルキル基又は非置換C~C10アルキル基(例えば、C~Cアルキル基)、最も好ましくは、置換C~Cアルキル基又は非置換C~Cアルキル基であることが好ましい場合がある。Rは、直鎖状アルキル基であっても分岐鎖状アルキル基であってもよい。
【0054】
本発明のいくつかのプロセスでは、R及びXは、(例えば、Rが、置換芳香族基又は非置換芳香族基である場合)互いに同一であってもよい。本発明のいくつかのプロセスでは、R及びXは、互いに異なっていてもよい。
【0055】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、置換アリール基若しくは非置換アリール基、又は置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基である。
【0056】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、置換アリール基又は非置換アリール基である。好ましくは、式Iの化合物中のXは、置換C~C20アリール基又は非置換C~C20アリール基、より好ましくは、置換C~C18アリール基又は非置換C~C18アリール基、更により好ましくは、置換C~C10アリール基又は非置換C~C10アリール基である。好ましいC6~20-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、メトキシフェニル、ジフルオロフェニル、アントラセニル、及びナフタレニルが挙げられる。
【0057】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。好ましくは、式Iの化合物中のXは、置換C~C20ヘテロアリール基又は非置換C~C20ヘテロアリール基、より好ましくは、置換C~C18ヘテロアリール基又は非置換C~C18ヘテロアリール基、更により好ましくは、置換C~C10ヘテロアリール基又は非置換C~C10ヘテロアリール基である。好ましいヘテロアリール基は、以下により詳細に考察される。
【0058】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、1、2、3、又は4個のヘテロ原子、好ましくは、1又は2個のヘテロ原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄、若しくはリン、又はこれらの混合物であってもよい。典型的には、ヘテロ原子は、窒素、硫黄、酸素、又はこれらの混合物である。式Iの化合物中のXが2個以上のヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は、同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、1個以上の窒素原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Xは、置換又は非置換のピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、又はアザインドリル基であってもよい。
【0060】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、1個以上の酸素原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Xは、置換又は非置換のフラニル基又はベンゾフラニル基であってもよい。
【0061】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、1個以上の硫黄原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Xは、置換又は非置換のチオフェニル基又はベンゾチオフェニル基であってもよい。
【0062】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、硫黄原子及び窒素原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Xは、置換又は非置換のチアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、又は1,2-ベンズチアゾリル基であってもよい。
【0063】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、酸素原子及び窒素原子を含む置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Xは、置換又は非置換のオキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、又はベンゾオキサゾリル基であってもよい。
【0064】
したがって、本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、置換又は非置換のピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、アザインドリル、フラニル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、1,2-ベンズチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、及びベンゾオキサゾリルから選択される、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。
【0065】
本発明のより好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のXは、フェニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、及びピリジニルから選択される、置換芳香族基又は非置換芳香族基である。
【0066】
式Iの化合物中のXが、1個以上の窒素原子を含む置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である場合、Zは、ヘテロアリール基のsp窒素原子に隣接する位置でXに結合していないことが、好ましい場合がある。
【0067】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のRは、置換C1~10直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~10直鎖状アルキル基、又はC3~10分枝鎖状アルキル基であり、最も好ましくは、置換C1~4直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~4直鎖状アルキル基、又はC3~4分枝鎖状アルキル基である。本発明の特に好ましいプロセスでは、式Iの化合物中のRは、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチルである。最も好ましくは、式Iの化合物中のRは、メチルである。
【0068】
式IIの化合物において、Yは、置換芳香族基又は非置換芳香族基である。式IIの化合物において、-B(OR)(OR)中のホウ素原子は、置換芳香族基又は非置換芳香族基Yのsp2-混成炭素原子に、直接結合している。
【0069】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、置換アリール基若しくは非置換アリール基、又は置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基である。
【0070】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、置換アリール基又は非置換アリール基である。好ましくは、式IIの化合物中のYは、置換C~C20アリール基又は非置換C~C20アリール基、より好ましくは、置換C~C18アリール基又は非置換C~C18アリール基、更により好ましくは、置換C~C10アリール基又は非置換C~C10アリール基である。好ましいC6~20-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、メトキシフェニル、ジフルオロフェニル、アントラセニル、及びナフタレニルが挙げられる。
【0071】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。好ましくは、式IIの化合物中のYは、置換C~C20ヘテロアリール基又は非置換C~C20ヘテロアリール基、より好ましくは、置換C~C18ヘテロアリール基又は非置換C~C18ヘテロアリール基、更により好ましくは、置換C~C10ヘテロアリール基又は非置換C~C10ヘテロアリール基である。好ましいヘテロアリール基は、以下により詳細に考察される。
【0072】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、1、2、3、又は4個のヘテロ原子、好ましくは、1又は2個のヘテロ原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄、若しくはリン、又はこれらの混合物であってもよい。典型的には、ヘテロ原子は、窒素、硫黄、酸素、又はこれらの混合物である。式IIの化合物中のYが2個以上のヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は、同一であっても異なっていてもよい。
【0073】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、1個以上の窒素原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Yは、置換又は非置換のピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、又はアザインドリル基であってもよい。
【0074】
本発明の特に好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、置換アザインドリル基又は非置換アザインドリル基、好ましくは、置換7-アザインドリル基又は非置換7-アザインドリル基である。
【0075】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、1個以上の酸素原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Yは、置換又は非置換のフラニル基又はベンゾフラニル基であってもよい。
【0076】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、1個以上の硫黄原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Yは、置換又は非置換のチオフェニル基又はベンゾチオフェニル基であってもよい。
【0077】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、硫黄原子及び窒素原子を含む、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Yは、置換又は非置換のチアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、又は1,2-ベンズチアゾリル基であってもよい。
【0078】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、酸素原子及び窒素原子を含む置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。例えば、Yは、置換又は非置換のオキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、又はベンゾオキサゾリル基であってもよい。
【0079】
したがって、本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のYは、置換又は非置換のピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、アザインドリル、フラニル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、1,2-ベンズチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、及びベンゾオキサゾリルから選択される、置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基である。
【0080】
式IIの化合物では、R及びRは、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換有機基若しくは非置換有機基である、あるいは、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRは、環を形成する。
【0081】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のR及びRは、独立して、H、あるいは置換C1~20直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~20直鎖状アルキル基又は置換C3~20分岐鎖状アルキル基若しくは非置換C3~20分岐鎖状アルキル基、より好ましくは、H、あるいは置換C1~10直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~10直鎖状アルキル基又は置換C3~10分岐鎖状アルキル基若しくは非置換C3~10分岐鎖状アルキル基、更により好ましくは、H、あるいは置換C1~4直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~4直鎖状アルキル基又は置換C3~4分岐鎖状アルキル基若しくは非置換C3~4分岐鎖状アルキル基である。好ましくは、式IIの化合物中のR及びRは、独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチルである。最も好ましくは、式IIの化合物中のR及びRは、両方ともHである。
【0082】
本発明の別の好ましいプロセスでは、式IIの化合物中のR及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、環を形成する。より好ましくは、R及びRは、-Bpin又は-Bcatである環を形成する。更により好ましくは、R及びRは、-Bpinである環を形成する。
【0083】
式IIIの化合物において、Xは、一般的に、上記の通りである。当業者によって理解されるように、式Iの化合物中のXは、反応条件下で式Iの化合物中に存在し得る、任意の保護基の可能な修飾/除去は別として、式IIIの化合物中のXと必然的に同一である。
【0084】
式IIIの化合物において、Yは、一般的に、上記の通りである。当業者によって理解されるように、式IIの化合物中のYは、反応条件下で式IIの化合物中に存在し得る、任意の保護基の可能な修飾/除去は別として、式IIIの化合物中のYと必然的に同一である。
【0085】
式IIIの化合物において、X及びYは、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、X及びYは、異なる。
【0086】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物は、下位式Iaを有し、
【0087】
【化9】
式中、Rは、上記で定義した通りであり、
は、-ハロ、-C(ハロ)、-R、=O、=S、-O-R、-S-R、-NR、-CN、-NO、-C(O)-R、-COOR、-C(S)-R、-C(S)OR、-S(O)OH、-S(O)-Rと、
-S(O)NR、-O-S(O)-R及び-CONRから選択される置換基であり、
式中、R及びRは、独立して、H、置換アルキル若しくは非置換アルキル、置換アリール若しくは非置換アリール、置換アリールアルキル若しくは非置換アリールアルキル、置換ヘテロアルキル若しくは非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアリール若しくは非置換ヘテロアリールからなる群から選択されるか、又はR及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル基を形成する。
【0088】
好ましくは、下位式Ia中のWは、-ハロ、-C(ハロ)、-R、-O-R、-NR、-CN、及び-NOから選択される。より好ましくは、下位式Ia中のWは、-NRである。更により好ましくは、下位式Ia中のWは、-NRであり、式中、R及びRは、H、又は置換アルキル若しくは非置換アルキルから選択される。更により好ましくは、下位式Ia中のWは、-NRであり、式中、R及びRは、H、又は置換アルキルから選択される。更により好ましくは、下位式Ia中のWは、-NRであり、式中、R及びRは、H、又は置換C~C10アルキルから選択される。最も好ましくは、下位式IaにおけるWは、-NRであり、式中、Rは、Hであり、Rは、置換C~Cアルキルである。
【0089】
したがって、本発明の特に好ましいプロセスでは、式Iの化合物は、
【0090】
【化10】
【0091】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIの化合物は、下位式IIaを有し、
【0092】
【化11】
式中、R及びRは、上記で定義した通りであり、
は、-ハロ、-C(ハロ)、-R、=O、=S、-O-R、-S-R、-NR、-CN、-NO、-C(O)-R、-COOR、-C(S)-R、-C(S)OR、-S(O)OH、-S(O)-Rと、
-S(O)NR、-O-S(O)-R及び-CONRから選択される置換基であり、
式中、R及びRは、独立して、H、置換アルキル若しくは非置換アルキル、置換アリール若しくは非置換アリール、置換アリールアルキル若しくは非置換アリールアルキル、置換ヘテロアルキル若しくは非置換ヘテロアルキル、置換ヘテロアリール若しくは非置換ヘテロアリールからなる群から選択されるか、又はR及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル基を形成し、
PGは、保護基である。
【0093】
好ましくは、PGは、-H、アルキル又はアリールオキシカルボニル基(例えば、Boc又は9-フルオレニルメトキシカルボニル)、アルキル炭酸塩(例えば、メチル炭酸塩)、スルホニル基(例えば、パラトリルスルホニル)、アルキル基、アリール基、又はシリル基(例えば、トリ-イソ-プロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、又はトリメチルシリル)から選択される。より好ましくは、PGは、Boc又は-Hであり、最も好ましくは、PGは、Bocである。
【0094】
好ましくは、下位式Ia中のWは、-ハロ、-C(ハロ)、-R、-O-R、-NR、-CN、及び-NOから選択される。より好ましくは、下位式Ia中のWは、-ハロである。更により好ましくは、下位式Ia中のWは、-Clである。
【0095】
したがって、本発明の特に好ましいプロセスでは、式IIの化合物は、
【0096】
【化12】
である。
【0097】
本発明の好ましいプロセスでは、式IIIの化合物は、下位式IIIaを有する。
【0098】
【化13】
式中、W及びWは、上記で定義した通りである。
【0099】
したがって、本発明の好ましいプロセスでは、式IIIの化合物は、
【0100】
【化14】
である。
【0101】
式IIIの上記化合物は、ペキシダルチニブとしても知られている。ペキシダルチニブは、症候性の腱滑膜巨細胞腫瘍(Tenosynovial Giant Cell Tumours、TGCT)を有する成人の治療のためのキナーゼ阻害剤である。ペキシダルチニブを生成するための反応工程を、図2に示す。
【0102】
本発明のプロセスは、触媒の存在下で実施される。触媒は、好ましくは、白金族金属(すなわち、第10族金属)を含む金属錯体である。より好ましくは、触媒は、パラジウムを含む金属錯体である。
【0103】
触媒は、白金族金属の錯体であってもよく、白金族金属に配位した1つ以上の配位子を有してもよい。触媒は、パラジウムの錯体であってもよく、パラジウムに配位した1つ以上の配位子を有してもよい。
【0104】
本発明の好ましいプロセスでは、触媒は、式(A)のものであり、
[M(X(L)] (A)
式中、
は、金属、好ましくは、パラジウムであり、
は、アニオン性配位子であり、
Lは、単座リン配位子又は二座リン配位子であり、
mは、1又は2であり、ここで、
mが1である場合、Lは、二座リン配位子であり、
mが2である場合、各Lは、単座リン配位子である。
【0105】
式(A)の好ましい触媒において、Xは、ハロ基、例えば、-Cl、-Br、及び-I、又はトリフルオロアセテート(すなわち、FCCO )である。好ましくは、Xは、-Clである。
【0106】
式(A)の触媒において、Lは、単座リン配位子又は二座リン配位子である。M原子と配位子-金属相互作用を形成することが可能な任意の好適なリン化合物が、使用されてもよい。配位子において、各リン原子は、3個の炭素原子(第三級ホスフィン)に、又はx個のヘテロ原子及び3-x個の炭素原子(x=1、2又は3)のいずれかに、共有結合している。好ましくは、ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選択される。
【0107】
リン配位子Lは、単座配位子、例えば、PPh、又は二座配位子であってもよい。
【0108】
リン配位子Lは、キラル又はアキラルであってもよい。
【0109】
リン配位子Lは、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0110】
本発明において使用されてもよいリン配位子Lとしては、以下の構造種類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
【化15】
【0112】
【化16】
【0113】
上記構造において、-PRは、アルキルが、好ましくは、C~C10アルキルである-P(アルキル)、アリールが、置換若しくは非置換であってもよいフェニル及びナフチルを含む-P(アリール)、又はアルキル若しくはアリールが上記で定義した通りである-P(O-アルキル)及び-P(O-アリール)あってもよい。-PRはまた、置換-P(ヘテロアリール)又は非置換-P(ヘテロアリール)であってもよく、ヘテロアリールは、フラニル(例えば、2-フラニル又は3-フラニル)を含む。-PRは、好ましくは、アリールが、フェニル、トリル、キシリル、若しくはアニシルを含む-P(アリール)、又は-P(O-アリール)のいずれかである。-PRが-P(O-アリール)である場合、最も好ましいO-アリール基は、キラル又は非キラル置換1,1’-ビフェノール及び1,1’-ビナフトールに基づくものである。あるいは、P原子上のR基は、環状構造の一部として結合されてもよい。
【0114】
置換基は、リン配位子中のアルキル置換基又はアリール置換基上に存在してもよい。このような置換基は、典型的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、及びtert-ブチルなどの分岐鎖状C1~6アルキル基又は直鎖状C1~6アルキル基である。
【0115】
上に示したこれらのリン配位子は、一般に市販されており、それらの調製は周知である。
【0116】
好ましい二座リン配位子Lとしては、Binap配位子、PPhos配位子、PhanePhos配位子、Josiphos配位子、及びBophoz配位子、好ましくは、Binap配位子が挙げられる。
【0117】
好ましい二座リン配位子Lはまた、式RP(CHPRの配位子であり、式中、nは、1~10、好ましくは2~6(例えば、3又は4)から選択される整数であり、R、R、R、及びRは、非置換C1~20-アルキル、置換C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール、及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。R、R、R、及びRは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチルなどの)シクロアルキル基、あるいは(フェニル、ナフチル若しくはアントラシルなどの)アリール基などの、置換又は非置換の、分岐鎖状アルキル基又は直鎖状アルキル基であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、若しくはI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、若しくはプロポキシなどの1つ以上の置換基で、所望により置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(-F、-Cl、-Br、又は-I)、直鎖状C~C10-アルキル又は分岐鎖状C~C10-アルキル(例えば、メチル)、C~C10-アルコキシ、直鎖状C~C10-(ジアルキル)アミノ又は分岐鎖状C~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(モルホリニルやピペラジニルなど)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの、1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。ピリジルなどの置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基もまた、使用されてもよい。代替的実施形態では、R、及びR、及び/又はR、及びRは、結合して、リン原子を有する環状構造、好ましくは、4員環~7員環を形成してもよい。好ましくは、二座リン配位子は、dppm(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)、dppe(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、dppp(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppb(1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、及び1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサンから選択され、より好ましくは、dppp及びdppbである。
【0118】
好ましい二座リン配位子Lはまた、式(A1)の配位子であり、
【0119】
【化17】
式中、R10、R11、R12、及びR13は、非置換C1~20-アルキル、置換C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール、及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。R10、R11、R12、及びR13は、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチルなどの)シクロアルキル基、あるいは(フェニル、ナフチル若しくはアントラシルなどの)アリール基などの、置換又は非置換の、分岐鎖状アルキル基又は直鎖状アルキル基であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、若しくはI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、若しくはプロポキシなどの1つ以上の置換基で、所望により置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(-F、-Cl、-Br、又は-I)、直鎖状C~C10-アルキル又は分岐鎖状C~C10-アルキル(例えば、メチル)、C~C10-アルコキシ、直鎖状C~C10-(ジアルキル)アミノ又は分岐鎖状C~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(モルホリニルやピペラジニルなど)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの、1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。ピリジルなどの置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基もまた、使用されてもよい。好ましくは、二座配位子は、dppf(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、dippf(1,1’-ビス(ジ-イソプロピルホスフィノ)フェロセン)、dCyPfc(1,1’-ビス(ジ-シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン、及びdtbpf(1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン)から選択され、より好ましくは、dippf及びdCyPfcである。
【0120】
好ましい単座リン配位子Lは、式PR141516の第三級ホスフィン配位子である。R14、R15、及びR16は、非置換C1~20-アルキル、置換C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール、及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよい。R14、R15、及びR16は、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチルなどの)シクロアルキル基、あるいは(フェニル、ナフチル若しくはアントラシルなどの)アリール基などの、置換又は非置換の、分岐鎖状アルキル基又は直鎖状アルキル基であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、若しくはI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、若しくはプロポキシなどの1つ以上の置換基で、所望により置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(-F、-Cl、-Br、又は-I)、直鎖状C~C10-アルキル又は分岐鎖状C~C10-アルキル(例えば、メチル)、C~C10-アルコキシ、直鎖状C~C10-(ジアルキル)アミノ又は分岐鎖状C~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(モルホリニルやピペラジニルなど)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの、1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。ピリジルなどの置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基もまた、使用されてもよい。代替的実施形態では、R14、R15、及びR16のいずれか2つは、結合して、リン原子を有する環状構造、好ましくは、4員環~7員環を形成してもよい。好ましくは、R14、R15及びR16は同一であり、フェニルである、すなわち、PR141516は、トリフェニルホスフィンである。あるいは、R14、R15及びR16は同一であってもよく、トリルである、すなわち、PR141516は、トリトリルホスフィン(例えば、オルト-トリトリルホスフィン、メタ-トリトリルホスフィン、又はパラ-トリトリルホスフィン)である。あるいは、R14、R15及びR16は同一であり、シクロヘキシルである、すなわち、PR141516は、トリシクロヘキシルホスフィンである。あるいは、R14、R15及びR16は同一であり、tert-ブチルである、すなわち、PR141516は、トリ(tert-ブチル)ホスフィンである。
【0121】
好ましいリン配位子Lは、PPh、トリトリルホスフィン、PCy(トリシクロヘキシルホスフィン)、PBu、dppm(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)、dppe(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、dppp(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppb(1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン、dppf(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、dippf(1,1’-ビス(ジ-イソプロピルホスフィノ)フェロセン)、dCyPfc(1,1’-ビス(ジ-シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン、及びdtbpf(1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン)からなる群から選択される。
【0122】
特に好ましいリン配位子Lは、dppp、dppb、dppf、dippf、dtbpf、及びdCyPfc、より好ましくは、dippf、dtbpf、及びdCyPfc、更により好ましくは、dippfからなる群から選択される。
【0123】
本発明の好ましいプロセスでは、触媒は、PdX (dppp)、PdX (dppb)、PdX (dppf)、PdX (dippf)、PdX (dtbpf)、及びPdX (dCyPfc)から選択され、式中、Xは、上記で定義した通り、より好ましくは、PdX (dippf)、PdX (dtbpf)、及びPdX (dCyPfc)、更により好ましくは、PdX (dippf)である。
【0124】
本発明の好ましいプロセスでは、触媒は、PdCl(dppp)、PdCl(dppb)、PdCl(dppf)、PdCl(dippf)、PdCl(dtbpf)、及びPdCl(dCyPfc)、より好ましくは、PdCl(dippf)、PdCl(dtbpf)、及びPdCl(dCyPfc)、更により好ましくは、PdCl(dippf)から選択される。
【0125】
本発明の代替的な好ましいプロセスでは、触媒は、式(B)のものであり、
【0126】
【化18】
式中、
M’は金属、好ましくは、パラジウムであり、
は、アニオン性配位子であり、
Arは、置換アリール基若しくは非置換アリール基、置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基、又は置換キサンテニル基若しくは非置換キサンテニル基であり、
17a及びR18bは、独立して、1~20個の炭素原子を有する有機基であるか、又はR17aとR18aとが連結して、Pと共に環状構造を形成しており、
及びYのそれぞれが、水素である、又はそれらが結合している原子と一緒になって、Y及びYは、芳香環を形成し、
は、水素、置換又は非置換のC1~20直鎖状アルキル基若しくはC3~20分岐鎖状アルキル基、あるいは置換C6~20アリール基又は非置換C6~20アリール基であり、
x及びzは、0又は1であり、
x及びzが両方とも1である場合、Y及びYのそれぞれは、水素であり、
x及びzが両方とも0である場合、それらが結合している原子と一緒になって、Y及びYは、芳香環を形成する。
【0127】
式(B)の触媒において、Xは、アニオン性配位子である。Xは、配位アニオン性配位子であってもよい、又は非配位アニオン性配位子であってもよい。
【0128】
式(B)の触媒において、Xは、好ましくは、ハロ基、例えば、-Cl、-Br、及び-I、又はメシレート(すなわち、MsO又はMeSO )である。より好ましくは、Xは、-Clである。
【0129】
式(B)の好ましい触媒において、Y及びYのそれぞれは、水素である。この場合、x及びzは、両方とも1である。
【0130】
式(B)の代替的な好ましい触媒において、それらが結合している原子と一緒になって、Y及びYは、芳香環を形成する。この場合、x及びzは、両方とも0である。好ましくは、芳香環は、6員芳香環である。より好ましくは、それらが結合している原子と一緒になって、Y及びYは、ベンゼン環を形成する。
【0131】
式(B)の触媒において、Yは、水素、置換又は非置換のC1~10直鎖状アルキル基若しくはC3~10分岐鎖状アルキル基、あるいは置換C6~10アリール基又は非置換C6~20アリール基であることが好ましい。より好ましくは、Yは、水素、置換又は非置換のC1~5直鎖状アルキル基若しくはC3~5分岐鎖状アルキル基、あるいは置換C6~10アリール基又は非置換C6~10アリール基である。最も好ましくは、Yは、水素、メチル、又はフェニルである。
【0132】
式(B)の触媒において、R17a及びR18aは、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態では、R17a及びR18aは、同一である。別の実施形態では、R17a及びR18aは、異なる。R17a及びR18aは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R17a及びR18aは、置換直鎖状C1~20-アルキル及び非置換直鎖状C1~20-アルキル、置換分岐鎖状C3~20-アルキル及び非置換分岐鎖状C3~20-アルキル、置換C3~20-シクロアルキル及び非置換C3~20-シクロアルキル、置換C6~20-アリール及び非置換C6~20-アリール、並びに置換C4~20-ヘテロアリール及び非置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよく、ここで、ヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び酸素から独立して選択される。R17a及びR18aは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(例えば、n-ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチルなどの)シクロアルキル基、あるいは(フェニル、ナフチル若しくはアントラシルなどの)アリール基などの、置換又は非置換の、分岐鎖状アルキル基又は直鎖状アルキル基であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)又はアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシ)などの、それぞれが同一であっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖状アルキル又は分岐鎖状アルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖状(ジアルキル)アミノ又は分岐鎖状(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニル及びピペラジニルなどのC~C10ヘテロシクロアルキル基)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの、それぞれが同一であっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、4-ジメチルアミノフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基もまた、使用されてもよい。代替的実施形態では、R17a及びR18aは結合して、Pと共に環状構造、好ましくは、4員環~7員環を形成する。好ましくは、R17a及びR18aは同一であり、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、又は置換フェニル基、例えば、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。
【0133】
式(B)の触媒において、Arは、置換アリール基若しくは非置換アリール基、置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基、又は置換キサンテニル基若しくは非置換キサンテニル基である。好ましくは、Arは、置換フェニル基若しくは非置換フェニル基、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、置換ナフチル基若しくは非置換ナフチル基、置換ビナフチル基若しくは非置換ビナフチル基、置換ピラゾリル基若しくは非置換ピラゾリル基、置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基、又は置換キサンテニル基若しくは非置換キサンテニル基である。より好ましくは、Arは、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、置換ビナフチル基若しくは非置換ビナフチル基、置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基、又は置換キサンテニル基若しくは非置換キサンテニル基である。更により好ましくは、Arは、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基、又は置換キサンテニル基若しくは非置換キサンテニル基である。
【0134】
式(B)の触媒において、ホスフィン配位子-P(R17a)(R18b)Arは、好ましくは、
【0135】
【化19】
からなる群から選択される。
【0136】
本発明の好ましいプロセスでは、触媒は、
【0137】
【化20】
から選択される。
【0138】
本発明の別の好ましいプロセスでは、触媒は、式(Ca)のものであって、
【0139】
【化21】
式中、
は、金属、好ましくは、パラジウムであり、
は、配位アニオン性配位子であり、
Arは、置換アリール基若しくは非置換アリール基、又は置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基であり、
17b及びR18bは、独立して、1~20個の炭素原子を有する有機基であるか、又はR17bとR18bとが連結して、Pと共に環状構造を形成しており、
19aは、1~20個の炭素原子を有する有機基であり、
pは、0、1、2、3、4、又は5である。
【0140】
式(Ca)の触媒において、Xは、配位アニオン性配位子である、すなわち、アニオン性配位子は、配位圏内のPd原子に結合している。Xは、好ましくは、ハロ基、例えば、-Cl、-Br、及び-I、又はトリフルオロアセテート(すなわち、FCCO )である。より好ましくは、Xは、-Clである。
【0141】
式(Ca)の触媒において、R17b及びR18bは、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態では、R17b及びR18bは、同一である。別の実施形態では、R17b及びR18bは、異なる。R17b及びR18bは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R17b及びR18bは、置換直鎖状C1~20-アルキル及び非置換直鎖状C1~20-アルキル、置換分岐鎖状C3~20-アルキル及び非置換分岐鎖状C3~20-アルキル、置換C3~20-シクロアルキル及び非置換C3~20-シクロアルキル、置換C6~20-アリール及び非置換C6~20-アリール、並びに置換C4~20-ヘテロアリール及び非置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよく、ここで、ヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び酸素から独立して選択される。R17b及びR18bは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(例えば、n-ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチルなどの)シクロアルキル基、あるいは(フェニル、ナフチル若しくはアントラシルなどの)アリール基などの、置換又は非置換の、分岐鎖状アルキル基又は直鎖状アルキル基であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)又はアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシ)などの、それぞれが同一であっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖状アルキル又は分岐鎖状アルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖状(ジアルキル)アミノ又は分岐鎖状(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニル及びピペラジニルなどのC~C10ヘテロシクロアルキル基)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの、それぞれが同一であっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、4-ジメチルアミノフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基もまた、使用されてもよい。代替的実施形態では、R17b及びR18bは結合して、Pと共に環状構造、好ましくは、4員環~7員環を形成する。好ましくは、R17b及びR18bは同一であり、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は置換フェニル基、例えば3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。あるいは、R17b及びR18bは、独立して、-Me、-Et、-Pr、-Pr、-Bu、-Bu、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルからなる群から選択される。
【0142】
式(Ca)の触媒において、Arは、置換アリール基若しくは非置換アリール基、又は置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基である。好ましくは、Arは、置換フェニル基若しくは非置換フェニル基、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、置換ナフチル基若しくは非置換ナフチル基、置換ビナフチル基若しくは非置換ビナフチル基、置換ピラゾリル基若しくは非置換ピラゾリル基、又は置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基である。より好ましくは、Arは、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、置換ビナフチル基若しくは非置換ビナフチル基、又は置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基である。更により好ましくは、Arは、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、又は置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基である。
【0143】
式(Ca)の触媒において、ホスフィン配位子-P(R17b)(R18b)Arは、好ましくは、
【0144】
【化22】
からなる群から選択される。
【0145】
式(Ca)の触媒中の金属原子は、所望により、置換アリル基に配位している。R19aは、1~20個の炭素原子、好ましくは、1~10個の炭素原子、より好ましくは、1~8個の炭素原子を有する有機基である。R19aは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R19a基の数は、0~5の範囲である、すなわち、pは、0、1、2、3、4、又は5である。pが、2、3、4、又は5である場合、各R19aは、同一であっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、pが、2、3、4、又は5である場合、各R19aは、同一である。特定の実施形態では、pは、0である(すなわち、アリル基は非置換である)。特定の実施形態では、pは、1である。特定の実施形態では、pは、2であり、式中、各R19aは、同一であるか又は異なる。
【0146】
式(Ca)の触媒において、R19aは、置換直鎖状C1~20-アルキル及び非置換直鎖状C1~20-アルキル、置換分岐鎖状C3~20-アルキル及び非置換分岐鎖状C3~20-アルキル、置換C3~20-シクロアルキル及び非置換C3~20-シクロアルキル、置換C6~20-アリール及び非置換C6~20-アリール、並びに置換C4~20-ヘテロアリール及び非置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から選択されてもよく、ここで、ヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び酸素から独立して選択される。一実施形態では、R19aは、置換直鎖状C1~20-アルキル及び非置換直鎖状C1~20-アルキル、置換分枝鎖状C3~20-アルキル及び非置換分枝鎖状C3~20-アルキル、並びに置換C3~20-シクロアルキル及び非置換C3~20-シクロアルキルからなる群から選択される。別の実施形態では、R19aは、置換C6~20-アリール及び非置換C6~20-アリール、並びに置換C4~20-ヘテロアリール及び非置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、ヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び酸素から独立して選択される。R19aは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチルなどの)シクロアルキル基、あるいは(フェニル、ナフチル若しくはアントラシルなどの)アリール基などの、置換又は非置換の、分岐鎖状アルキル基又は直鎖状アルキル基であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシ)などの、それぞれが同一であっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖状アルキル又は分岐鎖状アルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖状(ジアルキル)アミノ又は分岐鎖状(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニル及びピペラジニルなどのC~C10ヘテロシクロアルキル基)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの、それぞれが同一であっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、2-、3-、又は4-ジメチルアミノフェニル、2-、3-、又は4-メチルフェニル、2,3-又は3,5-ジメチルフェニル、2-、3-、又は4-メトキシフェニル、及び4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基もまた、使用されてもよい。一実施形態では、各R19は、独立して、メチル基、フェニル基、又は置換フェニル基である。
【0147】
本発明の好ましいプロセスでは、触媒は、以下から選択される。
【0148】
【化23】
【0149】
【化24】
本発明の代替的な好ましいプロセスでは、触媒は、式(Cb)のものであって、
【0150】
【化25】
式中、
【0151】
【化26】
は、カチオン性金属原子、好ましくは、カチオン性パラジウム原子であり、
【0152】
【化27】
は、非配位アニオン性配位子であり、
Arは、置換アリール基若しくは非置換アリール基、又は置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基であり、
17c及びR18cは、独立して、1~20個の炭素原子を有する有機基であるか、又はR17cとR18cとが連結して、Pと共に環状構造を形成しており、
19bは、1~20個の炭素原子を有する有機基であり、
tは、0、1、2、3、4、又は5である。
【0153】
式(Cb)の触媒において、
【0154】
【化28】
は、非配位アニオン性配位子である。「非配位アニオン性配位子」とは、アニオン配位子が金属中心の外圏に強制的に配置されることを意味する。したがって、アニオン性配位子は金属中心から解離される。これは、アニオン配位子が配位圏内の金属に結合している中性錯体とは対照的である。アニオン性配位子は、一般に、カチオン性錯体のX線結晶構造を分析することによって、非配位性として同定することができる。一実施形態では、
【0155】
【化29】
は、トリフレート(すなわち、TfO又はCFSO )、テトラフルオロホウ酸塩(すなわち、BF)、ヘキサフルオロアンチモネート(すなわち、SbF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、[B[3,5-(CF([Bar )、及びメシレート(MsO又はMeSO3-)からなる群から選択される。
【0156】
式(Cb)の触媒において、R17c及びR18cは、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態では、R17c及びR18cは、同一である。別の実施形態では、R17c及びR18cは、異なる。R17c及びR18cは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R17c及びR18cは、置換直鎖状C1~20-アルキル及び非置換直鎖状C1~20-アルキル、置換分岐鎖状C3~20-アルキル及び非置換分岐鎖状C3~20-アルキル、置換C3~20-シクロアルキル及び非置換C3~20-シクロアルキル、置換C6~20-アリール及び非置換C6~20-アリール、並びに置換C4~20-ヘテロアリール及び非置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよく、ここで、ヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び酸素から独立して選択される。R17c及びR18cは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(例えば、n-ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチルなどの)シクロアルキル基、あるいは(フェニル、ナフチル若しくはアントラシルなどの)アリール基などの、置換又は非置換の、分岐鎖状アルキル基又は直鎖状アルキル基であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)又はアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシ)などの、それぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖状アルキル又は分岐鎖状アルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖状(ジアルキル)アミノ又は分岐鎖状(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニル及びピペラジニルなどのC3~10ヘテロシクロアルキル基)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの、それぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、4-ジメチルアミノフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基もまた、使用されてもよい。代替的実施形態では、R17c及びR18cは結合して、Pと共に環状構造、好ましくは、4員環~7員環を形成する。好ましくは、R17c及びR18cは同一であり、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、又は置換フェニル基、例えば3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。
【0157】
式(Cb)の触媒において、Arは、置換アリール基若しくは非置換アリール基、又は置換ヘテロアリール基若しくは非置換ヘテロアリール基である。好ましくは、Arは、置換フェニル基若しくは非置換フェニル基、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、置換ナフチル基若しくは非置換ナフチル基、置換ビナフチル基若しくは非置換ビナフチル基、置換ピラゾリル基若しくは非置換ピラゾリル基、又は置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基である。より好ましくは、Arは、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、置換ビナフチル基若しくは非置換ビナフチル基、又は置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基である。更により好ましくは、Arは、置換ビフェニル基若しくは非置換ビフェニル基、又は置換ビピラゾリル基若しくは非置換ビピラゾリル基である。
【0158】
式(Cb)の触媒において、ホスフィン配位子-P(R17c)(R18c)Arは、好ましくは、
【0159】
【化30】
【0160】
【化31】
からなる群から選択される。
【0161】
式(Cb)の触媒中の金属カチオンは、所望により、置換アリル基に配位している。R19bは、1~20個の炭素原子、好ましくは、1~10個の炭素原子、より好ましくは、1~8個の炭素原子を有する有機基である。R19bは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R19b基の数は、0~5の範囲である、すなわち、tは、0、1、2、3、4、又は5である。tが、2、3、4、又は5である場合、各R19bは、同一であっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、tが、2、3、4、又は5である場合、各R19bは、同一である。特定の実施形態では、tは、0である、すなわち、アリル基は非置換である。特定の実施形態では、tは、1である。特定の実施形態では、tは、2であり、式中、各R19bは、同一であるか又は異なる。
【0162】
式(Ca)の触媒において、R19bは、置換直鎖状アルキル及び非置換直鎖状アルキル、置換分岐鎖状アルキル及び非置換分岐鎖状アルキル、置換シクロアルキル及び非置換Cシクロアルキル、置換アリール及び非置換アリール、並びに置換ヘテロアリール及び非置換ヘテロアリールからなる群から選択されてもよく、ここで、ヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び酸素から独立して選択される。一実施形態では、R19bは、置換直鎖状アルキル及び非置換直鎖状アルキル、置換分枝鎖状アルキル及び非置換分枝鎖状アルキル、並びに置換シクロアルキル及び非置換シクロアルキルからなる群から選択される。別の実施形態では、R19bは、置換アリール及び非置換アリール、並びに置換ヘテロアリール及び非置換ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、ヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び酸素から独立して選択される。R19bは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチルなどの)シクロアルキル基、あるいは(フェニル、ナフチル若しくはアントラシルなどの)アリール基などの、置換又は非置換の、分岐鎖状アルキル基又は直鎖状アルキル基であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシ)などの、それぞれが同一であっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖状アルキル又は分岐鎖状アルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖状(ジアルキル)アミノ又は分岐鎖状(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニル及びピペラジニルなどのC~C10ヘテロシクロアルキル基)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの、それぞれが同一であっても異なっていてもよい1つ以上の(例えば、1、2、3、4つ、又は5つの)置換基で、所望により置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、2-、3-、又は4-ジメチルアミノフェニル、2-、3-、又は4-メチルフェニル、2,3-又は3,5-ジメチルフェニル、2-、3-、又は4-メトキシフェニル、及び4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換ヘテロアリール基又は非置換ヘテロアリール基もまた、使用されてもよい。一実施形態では、各R19bは、独立して、メチル基、フェニル基、又は置換フェニル基である。
【0163】
本発明の好ましいプロセスでは、触媒は、
【0164】
【化32】
【0165】
【化33】
から選択される。
【0166】
本発明の好ましいプロセスでは、触媒は、式(A)、(B)、(Ca)、又は(Cb)の触媒、好ましくは、式(A)の触媒である。
【0167】
本発明の特に好ましいプロセスでは、触媒は、[Pd(RuPhos)(クロチル)Cl]又は[Pd(dippf)Cl]である。より好ましくは、触媒は、[Pd(dippf)Cl]である。
【0168】
驚くべきことに、[Pd(dippf)Cl]及びブーフバルト型配位子(Buchwald type ligands)を含むパラジウム錯体、例えば、[Pd(RuPhos)(クロチル)Cl]は、穏やかな条件下で式Iの化合物と式IIの化合物との間の反応を触媒して、式IIIの化合物を高収率で生成することが可能であることが、見出された。
【0169】
触媒は、クロチル配位子又はアリル配位子を含まないことが好ましい場合がある。驚くべきことに、[Pd(dippf)Cl]などのアリル配位子又はクロチル配位子を含まないパラジウム触媒は、式Iの化合物と式IIの化合物との間の反応を触媒するのに特に有効であり、このような触媒は、優れた収率で式IIIの化合物を生成することが、見出された。有利なことに、これは、触媒のより低い充填量が使用され得ることを意味する。理論に束縛されるものではないが、これは、[Pd(dippf)Cl]が、本発明のプロセスのカップリング反応を実行するのに特に好適な立体化学特性及び電子的特性の代表的な平衡を有するためであると、考えられる。
【0170】
触媒は、式Iの化合物の総量に基づいて、0.1モル%以上、0.2モル%以上、0.3モル%以上、又は0.4モル%以上の量で存在してもよい。触媒は、式Iの化合物の総量に基づいて、3モル%以下、2.8モル%以下、2.6モル%以下、又は2.5モル%以下の量で存在してもよい。触媒は、式Iの化合物の総量に基づいて、0.1モル%~3モル%、0.2~2.8モル%、0.3~2.6モル%、又は0.4~2.5モル%の量で存在してもよい。典型的には、触媒は、式Iの化合物の総量に基づいて、約0.3~0.5モル%、例えば、約0.5モル%の量で存在してもよい。しかしながら、これらの範囲内のより高い触媒充填量もまた、有利である場合がある。理論に束縛されるものではないが、これらの範囲内のより高い触媒充填量の使用は、カップリング反応中に形成される(例えば、式IIの化合物の脱ホウ素化の結果としての)不純物の量を減少させ、したがって、反応混合物のより容易な精製を可能にすると考えられる。したがって、本発明の特に好ましいプロセスでは、触媒は、式Iの化合物の総量に基づいて少なくとも2.0モル%、より好ましくは、式Iの化合物の総量に基づいて少なくとも2.25モル%、更により好ましくは、式Iの化合物の総量に基づいて少なくとも2.5モル%の量で、存在する。例えば、触媒は、式Iの化合物の総量に基づいて、2.0~3.0モル%の量で存在することが好ましい場合がある。
【0171】
本発明のプロセスは、水を含む。本発明のプロセスに存在する水の量は、溶媒の選択に依存する場合がある。当業者は、本発明のプロセスにおいて使用する水の適切な量を、選択することができるであろう。
【0172】
典型的には、アルコール(例えば、イソ-プロピル及び/又はtert-アミルアルコール)が、本発明のプロセスにおいて溶媒として使用される場合、水は、式Iの化合物に対して5モル当量以上、6モル当量以上、7モル当量以上、又は8モル当量以上の量で存在してもよい。典型的には、水は、30モル当量以下、25モル当量以下、22モル当量以下、又は20モル当量以下の量で存在してもよい。例えば、水は、式Iの化合物に対して、5~30モル当量、6~25モル当量、7~22モル当量、又は8~20モル当量の量で存在してもよい。
【0173】
典型的には、本発明のプロセスでは、溶媒としてTHFが使用される場合、より多量の水が必要とされる場合がある。例えば、本発明のプロセスでは、溶媒としてTHFが使用される場合、水は、式Iの化合物に対して、100~150モル当量の量で存在してもよい。
【0174】
当業者に理解されるように、水は、本発明のプロセスでは、溶媒中の初期水として存在してもよい。すなわち、水は添加される必要がなくてもよく、溶媒、例えば、いわゆる「湿潤溶媒」中に既に含まれていてもよい。
【0175】
いかなる種類の理論にも束縛されることなく、水の存在は、式IIの化合物中のYに結合した-B(OR)(OR)基、及び/又は式Iの化合物の炭酸塩基(すなわち、-OCOR基)を活性化し得る、と考えられる。
【0176】
本発明のプロセスは、第1の塩基を含む。
【0177】
好ましくは、第1の塩基は、アルカリ金属アルコキシド塩基、アルカリ金属炭酸塩塩基、アルカリ金属ホスフェート塩基、アルカリ金属水酸化物塩基、及びアミン塩基から選択される。より好ましくは、第1の塩基は、LiOBu、NaOBu、KOBu、NaCO、KCO、NaPO、KPO、NaOH、KOH、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、第1の塩基は、KCO又はKOBuである。
【0178】
本発明のいくつかの好ましいプロセスでは、第1の塩基は、アルコキシド塩基(例えば、金属アルコキシド)である。例えば、第1の塩基が金属アルコキシド、より好ましくはアルカリ金属アルコキシドであることが好ましい場合がある。更により好ましくは、第1の塩基は、LiOBu、NaOBu、及びKOBuから選択される。最も好ましくは、第1の塩基は、NaOBuである。
【0179】
本発明のいくつかの好ましいプロセスでは、第1の塩基は、金属炭酸塩塩基、金属ホスフェート塩基、金属水酸化物塩基、及びアミン塩基から選択される。好ましくは、第1の塩基は、アルカリ金属炭酸塩塩基、アルカリ金属ホスフェート塩基、アルカリ金属水酸化物塩基、及びアミン塩基から選択される。より好ましくは、第1の塩基は、NaCO、KCO、NaPO、KPO、NaOH、KOH、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、第1の塩基は、KCOである。
【0180】
本発明の好ましいプロセスでは、第1の塩基は、金属炭酸塩、好ましくは、アルカリ金属炭酸塩である。本発明の特に好ましいプロセスでは、第1の塩基は、NaCO及びKCOから選択される。最も好ましくは、第1の塩基は、KCOである。
【0181】
本発明の好ましいプロセスでは、第1の塩基は、金属ホスフェート、好ましくは、アルカリ金属ホスフェートである。本発明の特に好ましいプロセスでは、第1の塩基は、NaPO及びKPOから選択される。最も好ましくは、第1の塩基は、KPOである。
【0182】
本発明の好ましいプロセスでは、第1の塩基は、金属水酸化物、好ましくは、アルカリ金属水酸化物である。本発明の特に好ましいプロセスでは、第1の塩基は、NaOH及びKOHから選択される。最も好ましくは、第1の塩基は、KOHである。
【0183】
本発明の好ましいプロセスでは、第1の塩基は、アミン塩基である。好ましくは、アミン塩基は、R’-NH、R’NH、及びR’Nから選択される式を有する化合物であり、式中、R’は、独立して、アルキル基、アリール基、若しくはヘテロアリール基であるか、又はアミン塩基は、環状アミン塩基である。本発明の特に好ましいプロセスでは、第1の塩基は、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、第1の塩基は、EtNである。
【0184】
典型的には、第1の塩基は、本発明の第1の態様のプロセスにおける金属アルコキシドではない。
【0185】
第1の塩基は、典型的には、式Iの化合物の総量に基づいて200モル%以上、例えば、式Iの化合物の総量に基づいて250モル%以上、300モル%以上、又は350モル%以上の量で存在する。第1の塩基は、典型的には、式Iの化合物の総量に基づいて1000モル%以下、例えば、式Iの化合物の総量に基づいて800モル%以下、700モル%以下、又は600モル%以下の量で存在する。
【0186】
所望により、また本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、ルイス酸の存在下で実施される。
【0187】
ルイス酸は、金属ハロゲン化物、好ましくは、塩化リチウム、臭化リチウム、又はヨウ化リチウムなどの、ハロゲン化リチウムであってもよい。好ましくは、ルイス酸は、臭化リチウム又はヨウ化リチウムである。有利なことに、臭化リチウム及びヨウ化リチウムは、有機溶媒中で増加した溶解度を有する。
【0188】
例えば、ルイス酸は、式Iの化合物に対して少なくとも1モル当量で存在する。例えば、ルイス酸は、式Iの化合物に対して少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.3、又は少なくとも1.5モル当量で存在することが好ましい場合がある。存在してもよいルイス酸の量に対して、特定の上限はない。典型的には、ルイス酸は、式Iの化合物に対して最大で4モル当量で存在する。例えば、ルイス酸は、式Iの化合物に対して最大で3.5、最大で3、最大で2.5、又は最大で2モル当量で存在することが好ましい場合がある。好ましくは、ルイス酸は、式Iの化合物に対して1~4モル当量の範囲、例えば、1.1~3.5モル当量、1.2~3モル当量、1.3~2.5モル当量、又は1.5~2モル当量、例えば、式Iの化合物に対して約1、又は約1.5モル当量で存在する。
【0189】
式Iの化合物と式IIの化合物との間の反応におけるルイス酸の存在により、反応がルイス酸の非存在下で同一条件下で実施される場合と比較して、反応の収率を増加させることが見出された。更に、式Iの化合物と式IIの化合物との間の反応におけるルイス酸の存在により、多数の式Iの化合物が使用されることを可能にすることが見出された。特に、ルイス酸の存在は、式Iの特定の化合物(例えば、Xが、sp窒素原子を含むヘテロアリールであり、Zが、ヘテロアリールのsp窒素原子に隣接するヘテロアリールの炭素原子に結合している化合物)の使用を、式IIIの化合物の調製において使用されるようにすることを、可能にする。いかなる種類の理論にも束縛されることなく、ルイス酸の存在は、触媒を非活性化させ得る安定した金属-アリル相互作用を含む触媒中間体の形成を防止し得る、と考えられる。このような中間体を、スキーム1の例示的実施例に示す。
【0190】
【化34】
【0191】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、溶媒中で実施される。溶媒は、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン)、芳香族溶媒(例えば、トルエン)、アルキル溶媒(例えば、ヘプタン)、アルコール(例えば、イソ-プロパノール又はtert-アミルアルコール)、ジアルキル炭酸塩(例えば、ジメチル炭酸塩)、又はこれらの混合物であってもよい。好ましくは、溶媒は、アルコール若しくはアルコールの混合物、又はジアルキル炭酸塩である。より好ましくは、溶媒は、イソ-プロパノール及び/又はtert-アミルアルコール、又はジメチル炭酸塩である。更により好ましくは、溶媒は、イソ-プロパノール及び/又はtert-アミルアルコールである。
【0192】
本発明のプロセスは、ジメチル炭酸塩などのジアルキル炭酸塩である溶媒中で実施されることが好ましい場合がある。溶媒がジアルキル炭酸塩(例えば、ジメチル炭酸塩)である場合、驚くべきことに、式IIIの化合物の収率が増加することが見出された。いかなる種類の理論にも束縛されることなく、これは、式Iの化合物が本プロセス中に部分的に分解する(例えば、式Iの化合物が分解して、対応するアルコール、例えば、本明細書で後述する式IVのアルコールを形成する)場合に、ジアルキル炭酸塩(例えば、ジメチル炭酸塩)が式Iの化合物を再形成するのに役立ち得るためである、と考えられる。
【0193】
本発明のプロセスは、イソ-プロピル及び/又はtert-アミルアルコールなどのアルコールである溶媒中で実施されることが好ましい場合がある。イソ-プロピル及び/又はtert-アミルアルコールなどのアルコール溶媒は、反応中の水の量を低下させることが可能であり、驚くべきことに、式Iの化合物中のXがヘテロアリール基である場合に、式IIIの化合物のより高い収率を提供することが見出された。
【0194】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、60℃超、65℃超、70℃超、又は75℃超の温度で行われる。本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、130℃未満、120℃未満、110℃未満、100℃未満、又は85℃未満の温度で行われる。例えば、本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、60~130℃、65~120℃、70~110℃、75~100℃、又は75~85℃の範囲の温度で行われる。
【0195】
驚くべきことに、本発明のプロセスが75~85℃の温度で実施される場合に、式IIIの化合物の改善された収率が得られる場合があることが、見出された。驚くべきことに、温度を85℃超又は75℃未満に上昇させた場合に、より低い収率の式IIIの化合物を得る場合がある。
【0196】
本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、1時間以上、2時間以上、3時間以上、又は4時間以上の持続時間にわたって行われる。本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、20時間以下、19時間以下、18時間以下、又は17時間以下の持続時間にわたって行われる。本発明の好ましいプロセスでは、式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、1~20時間、2~19時間、3~18時間、又は4~17時間の持続時間にわたって行われる。当業者は、好適な反応持続時間を選択することができ、反応の進行をモニタリングするための(例えば、高速液体クロマトグラフィ(high performance liquid chromatography)を使用した)技術が周知である。
【0197】
不活性ガスのブランケット下で本発明のプロセスを実施することが、望ましい場合がある。典型的には、不活性ガスは、窒素又はアルゴンである。
【0198】
本発明のプロセスでは、-B(OR)(OR)基が結合している式IIの化合物中のYのsp-混成炭素は、sp-sp結合が最終的に結成されるsp-混成炭素原子である。カップリング反応中、式Iの化合物の炭酸塩基(-OCOR)は、脱離基として機能し、式Iの化合物と式IIの化合物との反応中に除去される。sp-sp炭素-炭素結合は、ホウ素原子が結合した式IIの化合物のsp-混成炭素原子と、式Iの化合物のZのsp-混成炭素原子Cと、の間に、形成される。
【0199】
式IIの化合物は、ホウ素化剤を式IIの化合物の前駆体と反応させることを含むホウ素化反応において、調製されてもよい。式IIの化合物の前駆体は、対応する非ホウ素化化合物(例えば、式Y-H(式中、Yは、上記で定義した通りである)の化合物)である。式IIの化合物へと前駆体を官能化するために使用されるホウ素化剤は、特に限定されず、当業者によって選択されてもよい。好ましくは、ホウ素化剤は、Bpin、HBpin、(ジヒドロキシボラニル)ホウ酸、HbCat、及びビス(カテコラート)二ホウ素から選択される。より好ましくは、ホウ素化剤は、Bpin及びHBpinから選択される。最も好ましくは、ホウ素化剤は、Bpinである。
【0200】
当業者には、式IIの化合物を調製するための好適なホウ素化が周知である。例えば、式IIの化合物は、当該技術分野で周知のプロセス、例えば、J.Org.Chem.2009年,74,23,9199-9201(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものにしたがって、調整されてもよい。
【0201】
式Iの化合物を調製するためのプロセス
本発明のプロセスは、式Iの化合物を提供する工程を含む。本発明の好ましいプロセスでは、本発明の第2の態様にしたがって、本プロセスは、式IVの化合物を反応させることによって、式Iの化合物を提供する工程を含み、
【0202】
【化35】
式中、X及びZは、上記で定義した通りであり、
Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、金属であり、
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩を有し、式中、各Rは、第2の塩基の存在下において、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である。
【0203】
一般に、式Iの化合物を提供するために式IVの化合物を使用することは、式IVの化合物と反応して式Iの化合物を所与する、非毒性で環境に優しい試薬(すなわち、ジアルキル炭酸塩)を使用するという利点を有する。更に、式IVの化合物は、式Iの化合物よりも容易に供給される場合があり、例えば、式IVの化合物は、商業的供給業者からより容易に供給される場合がある。
【0204】
式IVの化合物において、Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、金属である。より好ましくは、Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。最も好ましくは、Qは、ヒドロキシである。Qが-OMであり、Mが金属である場合、金属は、Li、Na、K、Mg、Ca、及びBaを含むリストから選択されてもよい。Qが-OMであり、Mが金属である場合、金属は、Li、Na、及びKを含むリストから選択されてもよく、より好ましくは、Na及びKである。
【0205】
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩において、Rは、一般的に、上記の通りである。本発明の好ましいプロセスでは、式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩は、ジメチル炭酸塩、ジエチル炭酸塩、ジ-イソ-プロピル炭酸塩、又はジ-tert-ブチル炭酸塩である。好ましくは、ジアルキル炭酸塩は、ジメチル炭酸塩である。
【0206】
典型的には、ジアルキル炭酸塩は、溶媒及び試薬の両方として使用される。典型的には、ジアルキル炭酸塩は、式IVの化合物に対して過剰に存在する。本発明のプロセスにおけるジアルキル炭酸塩の量は、特に限定されない。典型的には、ジアルキル炭酸塩は、式IVの化合物の総量に基づいて、15当量以上、20当量以上、25当量以上、又は30当量以上の量で存在する。典型的には、ジアルキル炭酸塩は、式IVの化合物の総量に基づいて、100当量以下、80当量以下、7015当量以下、又は60当量以下の量で存在する。例えば、典型的には、本発明において、ジアルキル炭酸塩は、式IVの化合物の総量に基づいて、15~100当量、20~80当量、25~70当量%、又は30~60当量の量で存在する。
【0207】
本発明の好ましいプロセスでは、第2の塩基は、金属炭酸塩、金属アルコキシド、又は金属ホスフェートである。好ましくは、第2の塩基は、炭酸カリウム、ナトリウム-tert-ブトキシド、又はリン酸カリウムであり、最も好ましくは、炭酸カリウムである。
【0208】
本発明の好ましいプロセスでは、第2の塩基は、金属アルコキシドである。金属アルコキシドは、好ましくは、金属メトキシド、金属エトキシド、金属イソ-プロポキシド、又は金属tert-ブトキシドである。
【0209】
本発明の好ましいプロセスでは、第2の塩基は、アルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、好ましくは、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属イソ-プロポキシド、又はアルカリ金属tert-ブトキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、より好ましくは、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、又はアルカリ金属tert-ブトキシド、好ましくは、アルカリ金属tert-ブトキシドである。好ましい金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、又はカリウムtert-ブトキシド、好ましくは、ナトリウムtert-ブトキシド、又はカリウムtert-ブトキシドが挙げられる。
【0210】
金属アルコキシドは、対応するアルコールと第3の塩基との反応によってその場で形成されてもよく、例えば、金属tert-ブトキシドは、tert-ブタノールと金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ホスフェート、又は金属リン酸水素塩との間の反応によって、その場で形成されてもよい。
【0211】
本発明の第2の態様の好ましいプロセスでは、第2の塩基は、式IVの化合物に対して200モル%以上、式IVの化合物に対して220モル%以上、又は式IVの化合物に対して240モル%以上の量で存在する。第2の塩基は、式IVの化合物に対して300モル%以下、式IVの化合物に対して280モル%以下、又は式IVの化合物に対して260モル%以下の量で存在してもよい。例えば、第2の塩基は、式IVの化合物に対して200~300モル%、式IVの化合物に対して220~280モル%、又は式IVの化合物に対して240~260モル%の量で存在してもよい。
【0212】
式Iの化合物を提供するための好ましいプロセスでは、式IVの化合物は、70~85℃、好ましくは、70~80℃、より好ましくは、75~80℃の範囲の温度で反応される。
【0213】
式Iの化合物を提供するための好ましいプロセスでは、式IVの化合物をジアルキル炭酸塩と反応させて、1~16時間、好ましくは、2~14時間、より好ましくは、3~12時間、最も好ましくは、4~10時間の持続時間で、式Iの化合物を得る。
【0214】
その場でのプロセス
本発明の好ましいプロセスでは、本プロセスは、本発明の第3の態様による、式Iの化合物をその場で提供する工程を含む。式Iの化合物をその場で提供することにより、本発明の、いわゆるその場でのプロセスが得られる。本発明のその場でのプロセスは、式IVの化合物及び式IIの化合物を出発物質として使用することを含み、式Iの化合物を出発物質として直接提供する必要性を排除する。本発明のその場でのプロセスでは、式Iの化合物は、式IVの化合物からその場で形成される。理解されるように、その場で生成される式Iの化合物は、式IIの化合物と反応して、上記と同一様式で、式IIIの化合物を生成する。
【0215】
したがって、本発明のその場でのプロセスでは、式Iの化合物は、式IIの化合物、触媒、水、及び第1の塩基の存在下で、式IVの化合物を反応させることによって、その場で提供され、
【0216】
【化36】
式中、X及びZは、上記で定義した通りであり、
Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、金属であり、
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩を有し、式中、各Rは、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である。
【0217】
有利には、本発明のその場でのプロセスは、式Iの化合物をそのまま本発明の反応に供給する必要がないことを意味する。代わりに、式Iの化合物は、式IVの化合物からその場で形成される。式IVの化合物は、式Iの化合物よりも容易に供給される場合があり、例えば、式IVの化合物は、商業的供給業者からより容易に供給される場合がある。一般に、式Iの化合物を調製するために式IVの化合物を使用することは、式IVの化合物と反応して式Iの化合物を所与する、非毒性で環境に優しい試薬であるジアルキル炭酸塩を使用するという利点を有する。
【0218】
本発明は、sp-sp炭素-炭素結合を形成するためのプロセスを更に提供し、本プロセスは、
式Iの化合物であって、
【0219】
【化37】
式中、Xは、置換芳香族基又は非置換芳香族基であり、
Zは、sp3-混成炭素原子Cを含み、式-C(H)(R)-を有する有機基であり、式中、Rは、H、OH、置換アルキル基若しくは非置換アルキル基、置換アルケニル基若しくは非置換アルケニル基、又は置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
Rは、置換C1~20直鎖状アルキル基若しくは非置換C1~20直鎖状アルキル基又は置換C3~20分枝鎖状アルキル基若しくは非置換C3~20分枝鎖状アルキル基である、式Iの化合物を、提供することと、
式IIの化合物であって、
【0220】
【化38】
式中、Yは、置換芳香族基若しくは非置換芳香族基であり、
及びRは、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換有機基若しくは非置換有機基である、あるいは、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する、式IIの化合物を、
触媒、水、及び第1の塩基、並びに所望により、ルイス酸の存在下で、式Iの化合物と反応させて、式IIIの化合物であって、
【0221】
【化39】
式中、X、Z及びYは、上記で定義した通りである、式IIIの化合物を、得ることと、を含み、
ここで、
式IIの化合物において、ホウ素原子は、Y中のsp2-混成炭素原子においてYに結合しており、
式IIIの化合物において、Zのsp-混成炭素原子Cは、Y中の前記sp-混成炭素原子においてYに結合しており、
式Iの化合物は、式IIの化合物、触媒、水、及び第1の塩基の存在下で、式IVの化合物を反応させることによって、その場で提供され、
【0222】
【化40】
式中、X及びZは、上記で定義した通りであり、
Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、金属であり、
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩を有し、式中、各Rは、置換又は非置換の、C1~20直鎖状アルキル基又はC3~20分岐鎖状アルキル基である。
【0223】
本発明のその場でのプロセスの更なる利点は、副生成物の形成がゼロ又は最小限で進行することが見出されたことである。驚くべきことに、式IVの化合物から式Iの化合物をその場で調製することによって、式Iの化合物及び式IIIの化合物が実質的に唯一の形成される化合物であることが、見出された(すなわち、望ましくない副生成物が最小限しか形成されないか、又は全く形成されない)。更に、本発明のその場でのプロセスは、式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩が、試薬及び溶媒の両方の役割を果たし得る、という利点を有する。
【0224】
したがって、その場でのプロセスは、ジアルキル炭酸塩以外の溶媒の非存在下で、実施されてもよい。誤解を避けるために、式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩が溶媒とみなされ得る限りにおいて、その場でのプロセスは、式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩以外の溶媒の非存在下で、実施されてもよい。
【0225】
式IVの化合物において、Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、金属である。より好ましくは、Qは、ヒドロキシ、又は-OMであり、ここで、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。最も好ましくは、Qは、ヒドロキシである。Qが-OMであり、Mが金属である場合、金属は、Li、Na、K、Mg、Ca、及びBaを含むリストから選択されてもよい。Qが-OMであり、Mが金属である場合、金属は、Li、Na、及びKを含むリストから選択されてもよい。
【0226】
式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩において、Rは、一般的に、上記の通りである。本発明の好ましいその場でのプロセスでは、式RO(CO)ORのジアルキル炭酸塩は、ジメチル炭酸塩、ジエチル炭酸塩、ジ-イソ-プロピル炭酸塩、又はジ-tert-ブチル炭酸塩である。好ましくは、ジアルキル炭酸塩は、ジメチル炭酸塩である。
【0227】
本発明の好ましいその場でのプロセスでは、ジアルキル炭酸塩は、式IVの化合物の総量に基づいて、1000モル%以上、1300モル%以上、1500モル%以上、又は1700モル%以上の量で存在する。本発明の好ましいプロセスでは、ジアルキル炭酸塩は、式IVの化合物の総量に基づいて、3600モル%以下、3400モル%以下、3200モル%以下、又は3000モル%以下の量で存在する。例えば、本発明の好ましいプロセスでは、ジアルキル炭酸塩は、式IVの化合物の総量に基づいて、1000~3600モル%、1300~3400モル%、1500~3200モル%、又は1700~3000モル%の量で存在する。
【0228】
本発明のその場でのプロセスは、第1の塩基を含む。第1の塩基は、上記の通りであってもよい。例えば、第1の塩基は、金属炭酸塩又は金属ホスフェートであってもよい。好ましくは、第1の塩基は、炭酸カリウム又はリン酸カリウムであり、最も好ましくは、炭酸カリウムである。
【0229】
更に、本発明のその場でのプロセスでは、第1の塩基は、金属アルコキシドであってもよい。本発明のその場でのプロセスでは、第1の塩基は、金属アルコキシドであることが好ましい場合がある。好ましくは、第1の塩基は、NaOBu又はKOBuであってもよい。
【0230】
驚くべきことに、本発明のその場でのプロセスでは、金属アルコキシドが第1の塩基として好ましく使用され得ることが、見出された。驚くべきことに、本発明のその場でのプロセスでは、第1の塩基として金属アルコキシドを使用することにより、金属炭酸塩又は金属ホスフェートを塩基として使用する場合と比較して、式IIIの化合物の優れた収率が得られることが、見出された。
【0231】
本発明の好ましいその場でのプロセスでは、本プロセスは、50~100℃、好ましくは、60~95℃、より好ましくは、65~90℃、より好ましくは、70~85℃の範囲の温度で実施される。
【0232】
本発明の好ましいその場でのプロセスでは、本プロセスは、1~16時間、好ましくは、2~14時間、より好ましくは、3~12時間、最も好ましくは、4~10時間の持続時間にわたって実施される。
【実施例
【0233】
式Iの化合物を調製するための一般的手順(一般的手順I)
フラスコに、式IVの化合物(25ミリモル、1当量)及びジメチル炭酸塩(53.5g、50mL、0.5M)を充填した。ディーン・スターク・トラップ(Dean Stark trap)及び凝縮器をフラスコに取り付けて、反応器を形成した。反応器をセプタで密封し、窒素を流した。反応器を90℃に加温し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を、シリンジによって、フラスコ内へと充填した(0.29mL、4.3M、0.05当量)。反応器を、加熱還流した。留出物を、トラップに30分間捕集した。ディーン・スターク・トラップが留出物で満たされたら、それを廃棄し、トラップをジメチル炭酸塩(15mL)で充填した。溶媒を30分間還流させた後、トラップ内の溶媒を除去した。本プロセスを3時間繰り返した後、H NMRによって同定されるように完全な転化に達した。反応器を冷却し、有機層を分離し、食塩水で3回洗浄し、NaSOで乾燥させた。乾燥した有機層を、セライトを通して濾過し、溶媒を蒸発させて、式Iの化合物を得た。
【0234】
式Iの化合物を式IIの化合物と反応させて式IIIの化合物を生成するための一般的手順(一般的手順II)
フラスコに、パラジウム触媒[Pd(RuPhos)(クロチル)Cl]又は[Pd(dippf)Cl](式I又は式IVの化合物に基づいて0.1~1モル%)、式Iの化合物又は式IVの化合物(その場でのプロセスの場合)(1当量)、塩基(KCO又はNaOBu、2当量)、式IIの化合物(1.1当量)、及び所望によりルイス酸LiBr(1当量)を、充填した。フラスコを、セプタムで密封した。雰囲気を排気し、窒素を再充填することを3回行った。溶媒及び所望により水を、フラスコへと添加した。絶えず撹拌しながら、フラスコの内容物を、所望の温度に必要な時間加熱した後、冷却し、次に、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を混合し、蒸発させて、粗固体を得た。得られた粗固体をH NMRによって分析し、これを用いて、式IIIの化合物への転化率を計算した。式IIIの化合物の精製は、ヘプタン中の、0~10%のメタノール/ジクロロメタン、又は0~50%のメチル-tert-ブチルエーテル中での再結晶によって達成され、プロセスに関する収率を得ることができた。あるいは、カラムクロマトグラフィを使用して、式IIIの化合物を精製した。
【0235】
材料
[Pd(RuPhos)(クロチル)Cl]及び[Pd(dippf)Cl]は、Johnson Mattheyから市販されている。
【0236】
式Iの化合物を、上記の一般的手順Iに従って、対応する式IVの化合物から調製した。式IIの化合物及び式IVの化合物は、Combi Blocks及びTCI Americaから市販されている。
【0237】
メチル炭酸塩、KCO、LiBr、及び全ての溶媒は、Combi Blocks及びTCI Americaから市販されている。溶媒を、使用前に、少なくとも2時間、窒素ガスを散布することによって、脱気した。
【0238】
測定方法
核磁気共鳴法(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)測定を、Bruker 400MHz NMR分光計を使用して、行った。
【0239】
実験1
表1に列挙された実施例1~実施例37のそれぞれについて、反応条件a~hが用いられ、実施例番号による上付き文字によって示される(例えば、1は、実施例1が、反応条件a下で行われたことを意味する)。反応条件a~hを、表2に要約する。表1に列挙した実施例1~実施例37のそれぞれについて、式IIの化合物中のホウ素基B(OR)は、B(OH)であった。実施例1~実施例37のそれぞれについて、使用した触媒は[Pd(RuPhos)(クロチル)Cl]であった。
【0240】
式Iの化合物を、上記の一般的手順Iに従って、式IVの対応するアルコールから調製した。上記の一般的手順IIに従って、式Iの化合物を式IIの化合物と反応させて、式IIIの化合物を形成した。表1は、式I、式II、及び式IIIの化合物、並びに各場合における反応の収率を示す。反応中に形成されたsp-sp炭素-炭素結合は、表1に示される式IIIの化合物の構造において、太字で示される。
【0241】
【表1-1】
【0242】
【表1-2】
【0243】
【表1-3】
【0244】
【表2】
触媒充填量は、式Iの化合物の総量に対するものである。
【0245】
実施例1~実施例37は、本発明のプロセスが広範囲の出発物質基質に適用され得ることを示す。特に、本発明のプロセスは、ヘテロアリール化合物及び/又はアリール化合物をカップリングするために首尾よく使用され得、出発物質が立体化学干渉を受けている場合であっても、有効である。
【0246】
実施例は更に、本発明のプロセスが穏やかな条件下で行われ得ることを示す。例えば、0.1モル%程度の低い触媒充填量及び65℃程度の低い温度は、優れた収率を所与する。
【0247】
実施例32~実施例37は、反応混合物へのルイス酸の添加の効果を示す。実施例32及び実施例33の比較は、反応混合物へのLiBrの添加が、より低い触媒充填量であっても、反応の収率を増加させ得ることを示す(実施例33における40%の収率と比較して、実施例32における反応なし)。更に、実施例36及び実施例37におけるLiBrの添加は、より低い触媒充填量の使用にもかかわらず、それぞれ、実施例34及び実施例35と比較して、同様の収率をもたらした。
【0248】
実験2-その場でのプロセス
実施例38~実施例41を、式IVの化合物を使用して、上記の一般的手順IIに従って実施し、式Iの化合物をその場で生成した。ジメチル炭酸塩は、試薬及び溶媒の両方として存在した。実施例38~実施例41は、式IIIの化合物のその場での合成を示す。ジメチル炭酸塩(2ミリモル)を、式IVの化合物及び式IIの化合物と同時に、フラスコへと添加した。実施例38~実施例41のそれぞれについて、触媒は[Pd(RuPhos)(クロチル)Cl]であった。
【0249】
表3に列挙された実施例38~実施例41のそれぞれについて、反応条件i、j、又はkが用いられ、実施例番号による上付き文字によって示される(例えば、38は、実施例38が、反応条件i下で行われたことを意味する)。反応条件i、j、及びkを、表4に要約する。
【0250】
表3は、式IV、式II、及び式IIIの化合物、並びに各場合における反応の収率を示す。反応中に形成されたsp-sp炭素-炭素結合は、表3に示される式IIIの化合物の構造において、太字で示される。
【0251】
【表3】
【0252】
【表4】
触媒充填量は、100%転化と仮定して、式IVの化合物から生成された式Iの化合物の総量に対するものである。
【0253】
実施例41の粗反応混合物を、H NMR分光法によって分析して、転化率を計算した。粗反応混合物中に存在する各化合物の量%を、表5に示す。
【0254】
【表5】
【0255】
実施例38~実施例42は、多数の異なる基質に対する本発明のその場でのプロセスの広い適用性を示す。より具体的には、実施例38~実施例42は、ジアルキル炭酸塩もまた存在する場合に、カップリング反応条件下で、式IVの化合物を、いかにして式IIIの化合物へと直接その場で変換し得るか、またいかにして優れた収率で変換し得るか、を示す。式Iの化合物の、このその場での調製は、本発明のプロセスを非常に利用しやすくし、別個の反応工程において式Iのアルキル炭酸塩含有化合物を形成する必要なく、市販の基質のアレイ又は容易に入手可能な基質のアレイをカップリングすることを可能にする。更に、その場でのプロセスは、副生成物の形成が最小限しか形成されないか、又はゼロであり、良好~優れた収率で、式IIIの所望の化合物に対して高い選択性を示す。式Iの化合物、式IIIの化合物、及び式IVの化合物以外のその他の化合物がカップリング反応後に存在しないことは、その場でのプロセスの更なる利点である。
【0256】
実施例42は、塩基としてNaOBuを使用する。塩基としてNaOBuを使用することは、KCOが塩基として使用される場合と比較して、本発明のその場でのプロセスにおいて、非常に改善された収率を所与する(実施例39を参照のこと)。
【0257】
実験3-代替的な炭酸塩及び触媒
実施例43及び実施例44を、表6に示すように、上記の一般的手順IIに従って実施した。実施例43及び実施例44では、ジメチル炭酸塩の代わりにジ-tert-ブチル炭酸塩を使用したことを除いて、一般的手順Iを使用して、式Iの化合物を調製した。
【0258】
実施例43及び実施例44は、式Iの化合物における代替的な炭酸塩の使用、及び触媒の選択の効果を示す。表6に列挙された実施例43~実施例44のそれぞれについて、反応条件l又はmが用いられ、実施例番号による上付き文字によって示される(例えば、43は、実施例43が、反応条件l下で行われたことを意味する)。反応条件l及びmを、表7に要約する。
【0259】
表6は、式I、式II、及び式IIIの化合物、並びに各場合における反応の収率を示す。反応中に形成されたsp-sp炭素-炭素結合は、表6に示される式IIIの化合物の構造において、太字で示される。
【0260】
【表6】
【0261】
【表7】
触媒充填量は、100%転化と仮定して、式IVの化合物から生成された式Iの化合物の総量に対するものである。
【0262】
実施例43及び実施例44は、代替的な炭酸塩基が式Iの化合物において使用され得ること、及び改善された収率が[Pd(dippf)Cl]触媒を用いて達成され得ること、を示す。
【0263】
実験4-その場でのプロセスにおける代替的な炭酸塩
実施例45、実施例46、及び実施例47を、表8に示されるように、上記の一般的手順IIに従って実施し、式IVの化合物を式Iの化合物の代わりに使用した。ジエチル炭酸塩(実施例45及び実施例46)又はジ-イソ-プロピル炭酸塩(実験47)のいずれかを、試薬及び溶媒の両方として存在させた。実験2と同様に、各ジアルキル炭酸塩(2ミリモル)を、式IVの化合物及び式IIの化合物と同時に、フラスコへと添加した。実施例45、実施例46、及び実施例47のそれぞれについて、触媒は[Pd(RuPhos)(クロチル)Cl]であった。
【0264】
表8に列挙された実施例45、実施例46、及び実施例47のそれぞれについて、反応条件n、o、又はpが用いられ、実施例番号による上付き文字によって示される(例えば、46は、実施例46が、反応条件o下で行われたことを意味する)。反応条件n、o及びpを、表9に要約する。
【0265】
表8は、式IV、式II、及び式IIIの化合物、並びに各場合における反応の収率を示す。反応中に形成されたsp-sp炭素-炭素結合は、表8に示される式IIIの化合物の構造において、太字で示される。
【0266】
【表8】
【0267】
【表9】
触媒充填量は、100%転化と仮定して、式IVの化合物から生成された式Iの化合物の総量に対するものである。
【0268】
実験4は、様々なジアルキル炭酸塩を使用し、かつ異なる基質(例えば、ホモアリール化合物及びヘテロアリール化合物)を使用する場合に、本発明のその場でのプロセスを使用して、高収率の式IIIの化合物を得ることができることを示す。
図1
図2
【国際調査報告】