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特表2024-522461電気部品絶縁用の耐炎性ポリアミド成形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】電気部品絶縁用の耐炎性ポリアミド成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20240614BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20240614BHJP
   C08K 5/5333 20060101ALI20240614BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20240614BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240614BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20240614BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K5/521
C08K5/5333
C08K5/3477
C08K5/053
C09K21/14
C09K21/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571281
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022067108
(87)【国際公開番号】W WO2023274820
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182247.3
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクシー メルクォブ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ レシング
(72)【発明者】
【氏名】ジュルゲン フラノスキ
(72)【発明者】
【氏名】エッカルト ルバン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス スゼンティバニイ
(72)【発明者】
【氏名】デュイ ヴ ファム
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA34
4H028AA35
4H028AA44
4H028BA04
4J002CL011
4J002CL031
4J002EC058
4J002EU199
4J002EW046
4J002EW127
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD139
4J002FD208
4J002GM00
4J002GQ00
(57)【要約】
本知的財産権は、リン含有量が少ない難燃性ポリアミド成形材料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミド単位当たり少なくとも8個の炭素原子を有する1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックス、
(B)以下:
(B1)少なくとも1つの無金属アリールホスフェート、
(B2)少なくとも1つのアリールホスホネート、
(B3)炭水化物ポリオール、
(B4)メラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、非リン含有難燃剤
を含む難燃性組成物
を含むポリアミド成形材料であり、
前記難燃性組成物全体のリン含有量は、前記ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%である、ポリアミド成形材料。
【請求項2】
前記ポリアミドは、PA8、PA9、PA10、PA11、PA12、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA8.10、PA9.10、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA12.12、PA6.16およびPA10.16から選択される、請求項1記載のポリアミド成形材料。
【請求項3】
前記(B2)に対する前記(B1)の質量比は、0.25~4、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、特に好ましくは0.75~1.5である、請求項1または請求項2記載のポリアミド成形材料。
【請求項4】
前記無金属アリールホスフェート(B1)は、
少なくとも1つの式(I):
【化1】
の単位、好ましくは1つまたは2つの前記単位と、
少なくとも2つの式(II):
【化2】
の単位、好ましくは2つまたは3つの前記単位と、
を含み、
前記式(I)の単位または前記式(II)の単位は交互に存在し、
前記式(II)の単位数は、常に前記式(I)の単位数より1つ多く、
前記式(I)中、Arはオルト-、メタ-、パラ-フェニレン、ナフチレンまたはビフェニレンであり、
前記式(II)中、Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有している
請求項1~請求項3のいずれか一項記載のポリアミド成形材料。
【請求項5】
前記アリールホスホネート(B2)は、式(III):
【化3】
(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、
BArは、それぞれ独立して、芳香族基、好ましくは少なくとも2員環を有する芳香族基、より好ましくはビフェニレンまたは4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレンである。)
で示される繰り返し単位を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項記載のポリアミド成形材料。
【請求項6】
部品の製造のための、請求項1~請求項5のいずれか一項記載のポリアミド成形材料の使用。
【請求項7】
前記ポリアミド成形材料を押出法もしくは中空押出法、射出成形法またはインサート成形法で電流軸受部品に成形する、電流軸受部品の絶縁方法。
【請求項8】
コーティングされた金属体を含むハイブリッド部品であり、
前記コーティングは、
(A)アミド単位当たり少なくとも8個の炭素原子を有する1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックス、
(B)以下:
(B1)少なくとも1つの無金属アリールホスフェート、
(B2)少なくとも1つのアリールホスホネート、
(B3)炭水化物ポリオール、
(B4)メラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、非リン含有難燃剤
を含む難燃性組成物
を含むポリアミド成形材料からなり、
前記難燃性組成物全体のリン含有量は、前記ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%である、ハイブリッド部品。
【請求項9】
電流を伝導するための、請求項7記載のハイブリッド部品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有量が少ない難燃性ポリアミド成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第150511号明細書は、3D印刷に使用する、アルキルホスホネートを含む粉末ポリアミド組成物を開示している。
【0003】
欧州特許出願公開第3127937号明細書は、ポリアミドに難燃性を付与するための金属ホスフィン酸塩の有効性を明示している。実施例の口頭での評価によれば、メラミンシアヌレートの添加は避けるべきである。
【0004】
欧州特許出願公開第1731559号明細書は、ポリアミド用の難燃剤として、メラミンシアヌレートとアルコールとを組み合わせたリン化合物を提案している。これらは、UL94規格のV-0グレードを達成しているが、本発明の比較試験は、移動による質量損失の増大を明示している。欧州特許出願公開第1731559号明細書では、組成物のこの質量損失も破断点伸びも考慮されていない。
【0005】
米国特許出願公開第2018/003771号明細書では、メラミンシアヌレートとポリオールだけを使用して、ポリアミドの難燃性を付与することが推奨されている。機械的要件は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第150511号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3127937号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1731559号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/003771号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、リン含有量が少なく、非常に良好な難燃性を示し、高温での質量損失が非常に少ないポリアミド成形材料を提供することであった。このような成形材料は、高い破断点伸びによっても識別されるはずである。
【0008】
驚くべきことだが、リン含有化合物の含有量が少ない難燃剤がポリアミド成形材料に有利に使用できることが分かっている。
【0009】
本発明は、
(A)アミド単位当たり少なくとも8個の炭素原子を有する1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックス、
(B)以下:
(B1)少なくとも1つの無金属アリールホスフェート、
(B2)少なくとも1つのアリールホスホネート、
(B3)炭水化物ポリオール、
(B4)メラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、非リン含有難燃剤
を含む難燃性組成物
を含むポリアミド成形材料であり、
難燃性組成物全体のリン含有量は、ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%、好ましくは0.75重量%~1.25重量%である、ポリアミド成形材料を提供する。
【0010】
本発明はさらに、部品の製造のための、本発明のポリアミド成形材料の使用を提供する。
【0011】
本発明はさらに、電流軸受部品の絶縁方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、コーティングされた金属体を含むハイブリッド部品であり、そのコーティングがポリアミド成形材料を含むハイブリッド部品を提供する。
【0013】
本発明はさらに、好ましくは高電圧および低電圧システム、より好ましくは高電圧システムにおいて、電流を伝導のためのハイブリッド部品の使用を提供する。
【0014】
本発明のポリアミド成形材料、本発明の成形材料を含むハイブリッド部品、および本発明による使用を、例示的な実施例によって以下に説明するが、本発明がこれらの例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。範囲、一般式、または化合物群が以下に記述されている場合、これらは、明示的に言及されている対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を除くことによって得られるすべての部分範囲および部分化合物群も包含することを意図している。本明細書の文脈において文献が引用される場合、その全内容は、本発明の開示内容の一部を成すことを意図している。以下に%の値が与えられる場合、特に明記しない限り、これらは重量%単位の値である。組成に関するパーセンテージ値は、特に明記しない限り、組成物全体に対する値である。以下に平均値が与えられる場合、特に明記しない限り、これらは質量平均(重量平均)である。以下に測定値が与えられる場合、特に明記しない限り、これらの測定値は、圧力:101325Pa、温度:25℃で測定されたものである。
【0015】
保護の範囲には、本発明の製品に関し商取引において従来使用されている完成品および包装品、それ自体だけでなく、特許請求の範囲において定義されていない限り、可能性のある粉砕品も含まれる。
【0016】
任意のさまざまなポリアミド単位は、統計分布に従う。統計分布は、所望のブロック数と所望の順序でブロック状に構成されているか、またはランダムな分布となっている。それらは交互構造を持つこともあり得、そうでなければポリマー鎖全体に勾配を形成することもあり得る。特は、それらは、さまざまな分布を有する基が任意に相互に続き得るすべての混合形態を形成することもできる。特定の実施形態では、その実施形態の結果として統計分布が制限され得る。制限の影響を受けない全ての領域では、統計分布は変わらない。
【0017】
本発明のポリアミド成形材料の利点は、それらが難燃規格UL94のV-0グレードの非常に優れた防火性を有することである。
【0018】
本発明のポリアミド成形材料のさらなる利点は、それらが高い破断点伸びを有することである。
【0019】
本発明のポリアミド成形材料のさらなる利点は、高温で比較的長期間保管した後でも、表面での低分子量成分の移動(白華、質量損失)が非常に少ないことである。
【0020】
本発明のポリアミド成形材料のさらなる利点は、移動に起因する質量損失による難燃性の損失がないことである。
【0021】
さらなる利点は、本発明のポリアミド成形材料の金属表面への特に良好な接着性である。
【0022】
ポリアミドマトリックス(A)
好ましくは、ポリアミドマトリックス(A)のポリアミドは、重合体全体の統計平均として、アミド単位当たり8~16個の炭素原子、より好ましくは9~14個の炭素原子、特に好ましくは10~12個の炭素原子を有する。より好ましくは、ポリアミドマトリックス(A)のポリアミドは、すべての単量体単位において、アミド単位当たり少なくとも8個の炭素原子を有する。
【0023】
ポリアミドは、ホモ重合体、共重合体、またはさまざまなポリアミドの混合体であり得る。ポリアミドの違いは、例えば、重合におけるさまざまな単量体の使用、(例えば、さまざまな粘度という形で表すことができる)さまざまなモル質量分布、またはさまざまな末端基という形で現れ得る。
【0024】
PA8、PA9、PA10、PA11、PA12、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA8.10、PA9.10、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA12.12、PA6.16、PA10.16、より好ましくは、PA6.12、PA10.10、PA10.12、PA11およびPA12、特に好ましくはPA11およびPA12から選択されるポリアミドが好ましい。
【0025】
ポリアミド成形材料は、ポリアミドマトリックス(A)のポリアミド以外に他のいかなるポリアミドも含まないことが好ましい。
【0026】
難燃性組成物(B)
本発明のポリアミド成形材料の難燃性組成物は、好ましくは、
‐15~55重量%、好ましくは25~50重量%、より好ましくは30~45重量%のメラミンシアヌレート(B4)、
‐10~30重量%、好ましくは15~25重量%、より好ましくは17~23重量%の炭水化物ポリオール(B3)、
‐5~30重量%、好ましくは7~25重量%、より好ましくは13~23重量%のアリールホスホネート(B2)、
‐5~30重量%、好ましくは7~25重量%、より好ましくは13~23重量%の無金属アリールホスフェート(B1)、
‐0~15重量%、好ましくは3~12重量%、より好ましくは5~10重量%の非リン系難燃剤(B5)
を含み、
(B1)、(B2)、(B3)、(B4)および(B5)を合計すると、100重量%の成分(B)となる。
【0027】
本発明のポリアミド成形材料の難燃性組成物において、(B1)と(B2)の質量比は0.25~4、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、特に好ましくは0.75~1.5である。
【0028】
非リン含有難燃剤(B5)は、B3およびB4による難燃剤とは異なる。尿素および尿素誘導体、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸の塩(例:ホウ酸亜鉛)、硫酸アンモニウム、および水酸化カルシウムが好ましい。ハロゲン化難燃剤も添加され得る。
【0029】
好ましくは、非リン系難燃剤(B5)はハロゲン化物質を含まない。
【0030】
メラミンシアヌレート(B4)は、メラミン縮合生成物、メレム、メラム、メロンを意味するとも理解されるが、好ましくはもっぱらメラミンシアヌレート(CA-RN37640-57-6)自体を意味する。メラミンシアヌレートは、粉末の形で使用される。それは、BSISO13320-1の2000-03-15版に準拠して、レーザー粒度計を使用したレーザー回折により測定された粒径D50が、0.5~100μm、より好ましくは0.6~50μm、特に好ましくは0.7~25μm、非常に特に好ましくは0.8~5μm、とりわけ好ましくは0.9~4μmであることが好ましい。その測定は、シーラス(Cilas)715/920レーザー粒度計を使用して行われることが好ましい。
粒径が小さいと、成形品の仕上がりがより滑らかになるため、好ましい。
【0031】
炭水化物ポリオール(B3)は、好ましくは、少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、よりいっそう好ましくは少なくとも6個のヒドロキシ基で置換された炭化水素であり、必要に応じてエーテル基、好ましくは少なくとも1個のエーテル基を有する。
【0032】
炭水化物ポリオールは、より好ましくは、トリメチロールプロパンもしくはグリセロールなどのトリオール、または(前述の化合物の2つ分子のモノエーテル化によって生成される)ジトリメチロールプロパンもしくはジグリセロールなどのその誘導体;またはエリスリトール、ペンタエリスリトールなどのテトロール、またはジペンタエリスリトールもしくはトリペンタエリスリトールなどの、エーテル基を含むその誘導体;キシリトールまたはアラビトールなどのペントール;マンニトール、ソルビトールなどのヘキソールから選択される。さらに、前述の分子の高級付加物、例えば分岐鎖または超分岐鎖ポリグリセロールを使用することも可能である。もちろん、ポリオールの混合物を使用することも可能である。エリスリトール、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールもしくはトリペンタエリスリトール、特にジペンタエリスリトールがより好ましい。
【0033】
アリールホスホネート(B2)は、本発明の目的上、少なくとも3つの繰り返し単位、好ましくは3つの同一の繰り返し単位を有する重合体またはオリゴマーであり、その分子の骨格に芳香族置換基を含む。
【0034】
アリールホスホネートは、好ましくは、式(III):
【0035】
【化1】
【0036】
(式中、Rは、それぞれ独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルであり、
BArは、それぞれ独立して、芳香族基、好ましくは少なくとも2員環を有する芳香族基、より好ましくはビフェニレンまたは4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレンである。)
に示される繰り返し単位を含む。
好ましくは、アリールホスホネートは、末端基として-BAr-OH基を含む。
【0037】
特に好ましくは、アリールホスホネートは、式(IV):
【0038】
【化2】
【0039】
に示される繰り返し単位を含み、従って、アリールホスホネートは、好ましくは、ビスフェノールA末端基を含む。
【0040】
アリールホスホネートは、(ISO1133に準拠して、240℃、1.2kgの荷重で測定して、)MVR(メルトボリュームレイト)が好ましくは100mL/10分未満、より好ましくは少なくとも10mL/10分、よりいっそう好ましくは少なくとも25mL/10分、特に好ましくは少なくとも50mL/10分、とりわけ好ましくは65~90mL/10分である。
【0041】
無金属アリールホスフェート(B1)は、少なくとも2つのリン酸基を含むことが好ましい。より好ましくは、無金属アリールホスフェートは、式(I):
【0042】
【化3】
【0043】
の単位を少なくとも1つ、好ましくは式(I)の単位を1つまたは2つと、式(II):
【0044】
【化4】
【0045】
の単位を少なくとも2つ、好ましくは式(II)の単位を2または3つ含む。
式(I)の単位または式(II)の単位は交互に存在し、
式(II)の単位数は、常に式(I)の単位数より1つ多く、
式(I)中、Arはオルト-、メタ-、パラ-フェニレン、ナフチレンまたはビフェニレンであり、
式(II)中、Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有している。
より好ましくは、無金属アリールホスフェートは、式(V):
【0046】
【化5】
【0047】
の構成要素を含む。
特に好ましくは、無金属アリールホスフェートは、式(VI):
【0048】
【化6】
【0049】
の構造を含む。
式中、Arはメタ-またはパラ-フェニレンであり、Phはフェニルである。
好ましくは、Arは4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレン基ではない。
【0050】
難燃性組成物は、ポリリン酸塩、メラミンとポリリン酸との反応生成物、またはリン(III)酸および/またはリン(I)酸の誘導体を一切含まないことが好ましい。
難燃性組成物は、成分(B1)および成分(B2)以外にさらなるリン含有成分を一切含まないことが好ましい。
【0051】
難燃性組成物(B)の好ましい組み合わせは、以下の通りである。
‐少なくとも1つの式(I):
【0052】
【化7】
【0053】
の単位、好ましくは1つまたは2つの式(I)単位と、少なくとも2つの式(II):
【0054】
【化8】
【0055】
の単位、好ましくは2つまたは3つの式(II)の単位と、を含む少なくとも1つの無金属アリールホスフェート(B1)
(式(I)の単位または式(II)の単位は交互に存在し、
式(II)の単位数は、常に式(I)の単位数より1つ多く、
式(I)中、Arはオルト-、メタ-、パラ-フェニレン、ナフチレンまたはビフェニレンであるが、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレン基ではなく、
式(II)中、Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有する。)と、
‐式(IV):
【0056】
【化9】
【0057】
の繰り返し単位を含む少なくとも1つのアリールホスホネート(B2)、および末端基としてビスフェノールAと、
‐少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、よりいっそう好ましくは少なくとも6つのヒドロキシ基で置換されており、必要に応じてエーテル基、好ましくは少なくとも1つのエーテル基を有する炭水化物ポリオール(B3)と、
‐メラミンシアヌレート(B4)と、
‐必要に応じて、尿素および尿素誘導体、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸の塩(例:ホウ酸亜鉛)、硫酸アンモニウム、水酸化カルシウムから選択される非リン含有難燃剤(B5)、必要に応じてまたはハロゲン化難燃剤。
【0058】
難燃性組成物(B)のより好ましい組み合わせは、以下の通りである。
‐式(V):
【0059】
【化10】
【0060】
(式中、Arはオルト-、メタ-、パラ-フェニレン、ナフチレンまたはビフェニレンであるが、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレン基ではなく、
Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有する。)
の構成要素を含む少なくとも1つの無金属アリールホスフェート(B1)と、
‐式(IV):
【0061】
【化11】
【0062】
の繰り返し単位を含む少なくとも1つのアリールホスホネート(B2)、および末端基としてのビスフェノールAと、
‐少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、よりいっそう好ましくは少なくとも6つのヒドロキシ基で置換されており、必要に応じてエーテル基、好ましくは少なくとも1つのエーテル基を含む炭水化物ポリオール(B3)と、
‐BSISO13320?1の2000?03?15版に準拠して、レーザー粒度計を使用したレーザー回折により測定された粒径D50が、0.5~100μm、より好ましくは0.6~50μm、特に好ましくは0.7~25μm、非常に特に好ましくは0.8~5μm、とりわけ好ましくは0.9~4μmであるメラミンシアヌレート(B4)と、
‐必要に応じて、尿素および尿素誘導体、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸の塩(例:ホウ酸亜鉛)、硫酸アンモニウム、水酸化カルシウムから選択される非リン含有難燃剤(B5)、必要に応じてまたはハロゲン化難燃剤。
‐(B2)に対する(B1)の質量比が0.25~4、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、特に好ましくは0.75~1.5である。
【0063】
難燃性組成物(B)の特に好ましい組み合わせは、以下の通りである。
‐式(VI):
【0064】
【化12】
【0065】
(式中、Arはメタ-またはパラ-フェニレンであり、
Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有する。)
の構造を含む少なくとも1つの無金属アリールホスフェート(B1)を5重量%~30重量%と、
‐式(IV):
【0066】
【化13】
【0067】
の繰り返し単位を含む少なくとも1つのアリールホスホネート(B2)を5重量%~30重量%、および末端基としてビスフェノールAと、
‐少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、よりいっそう好ましくは少なくとも6つのヒドロキシ基で置換されており、好ましくは少なくとも1つのエーテル基を有する炭水化物ポリオール(B3)を10重量%~30重量%と、
‐BSISO13320?1の2000?03?15版に準拠して、レーザー粒度計を使用したレーザー回折により測定された粒径D50が、0.5~100μm、より好ましくは0.6~50μm、特に好ましくは0.7~25μm、非常に特に好ましくは0.8~5μm、とりわけ好ましくは0.9~4μmであるメラミンシアヌレート(B4)を15重量%~55重量%と、
‐尿素および尿素誘導体、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸の塩(例:ホウ酸亜鉛)、硫酸アンモニウム、水酸化カルシウムから選択される非リン含有難燃剤(B5)を0重量%~15重量%。
‐(B1)、(B2)、(B3)、(B4)および(B5)を合計すると、100重量%の成分(B)となる。
‐(B2)に対する(B1)の質量比が0.25~4、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、特に好ましくは0.75~1.5である。
【0068】
好ましくは、本発明のポリアミド成形材料は、リン含有難燃剤の他に、他の供給源、例えば安定剤、加工助剤または触媒からのリンを5000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは250ppm以下含む。
【0069】
必要に応じて、本発明のポリアミド成形材料は、安定剤、酸化遅延剤、熱分解および紫外線による分解に対する他の保護剤、潤滑剤および離型剤、染料および顔料などの着色剤、核剤、可塑剤などの慣用の加工助剤を含む。
【0070】
必要に応じて、本発明のポリアミド成形材料は、記載された成分の他に、安定剤、他の重合体、耐衝撃性改良剤、可塑剤、着色剤(例:顔料および染料)、加工助剤などの1つまたは複数の代表的添加剤、必要に応じて2つ以上の代表的添加剤から選択されるさらなる添加剤を含む。
【0071】
適切な酸化安定剤は、芳香族アミン、立体障害フェノール、ヒドロキノン、ホスファイト、ホスホナイト、チオ相乗化剤、ヒドロキシルアミン、ベンゾフラノン誘導体、アクリロイル変性フェノールなどである。非常に多くの種類のそのような酸化安定剤が、例えば商品名Naugard445、Irganox1010、Irganox1098、Irgafos168、P-EPQまたはLowinoxDSTDPで市販されている。一般に、成形材料は、約0.01重量%~約2重量%、好ましくは約0.1重量%~約1.5重量%の酸化安定剤を含む。
【0072】
さらに、成形材料は、UV安定剤または光安定剤も含み得る。適切なUV安定剤は、有機UV吸収剤、例えばベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、レゾルシノール、サリチレート、オキサルアニリドおよびフェニルトリアジンである。HALS型の光安定剤は、テトラメチルピペリジン誘導体である。UV安定剤と光安定剤は、有利には併用され得る。どちらも非常に多くの種類が市販されている。投与量に関しては製造元の指示に従ってよい。
【0073】
さらに、成形材料は、加水分解安定剤、例えば単量体、オリゴマーまたは重合体のカルボジイミドまたはビスオキサゾリンを含み得る。
添加剤として成形材料中に存在し得る他の重合体の例は、ポリエーテルアミドまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0074】
耐衝撃性改良剤は、当業者に知られている。これらは、主鎖ポリマーに組み込まれるか、または主鎖にグラフト結合された不飽和官能性化合物に由来する官能基を含む。最も一般的に使用されるのは、無水マレイン酸によりフリーラジカルグラフト結合されたEPMまたはEPDMゴムである。この種のゴムは、欧州特許出願公開第0683210号明細書に記載されているように、官能化されていないポリオレフィン、例えばアイソタクチックポリプロピレンと一緒に使用され得る。
【0075】
可塑剤は、ゲヒター/ミュラー著、Kunststoffadditive[プラスチック添加剤]、C.Hanser Verlag社、第2版、296頁から当業者に知られている。可塑剤としての使用に適した慣用の化合物の例は、アルコール成分中に2~20個の炭素原子を有するp-ヒドロキシ安息香酸のエステル、またはアミン成分中に2~12個の炭素原子を有するアリールスルホン酸のアミド、好ましくはベンゼンスルホン酸のアミドである。有用な可塑剤としては、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、p-ヒドロキシ安息香酸オクチル、p-ヒドロキシ安息香酸i-ヘキサデシル、N-n-オクチルトルエンスルホンアミド、N-n-ブチルベンゼンスルホンアミド、またはN-2-エチルヘキシルベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0076】
適切な顔料および/または染料の例は、混合酸化物、二酸化チタン、酸化鉄、硫化亜鉛、群青、ニグロシン、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン、アントラキノンなどの有機顔料、真珠光沢顔料である。
【0077】
適切な加工助剤の例は、パラフィン、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸塩、パラフィンワックス、モンタン酸塩、またはポリシロキサンである。
【0078】
本発明のポリアミド成形材料は、ハロゲン化物質を含まないことが好ましい。
【0079】
本発明の成形材料は、難燃規格UL94のV0グレードを有する。この分類は、ULガイドラインに従ってなされるが、DINEN60695-11-10:2014に準拠して、寸法125mm×13mm×0.8mmの試験片について、上記規格の改訂版1(2015年10月)を考慮して行われるのが好ましい。
【0080】
本発明の成形材料は、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも150%、特に好ましくは少なくとも200%の破断点伸びを有する。破断点伸びは、DINENISO527-1に準拠して、1A型の引張試験片(DINENISO527-2) について測定される。
【0081】
本発明の成形材料は、高温で比較的長期間保管した後でも、低分子量成分の移動が非常に少ないことが好ましい。これに関して、寸法125mm×13mm×0.8mmの試験片を150℃で24時間保管し、移動した物質の量を測定した。測定方法は、実施例においてより詳細に説明される。移動による質量損失は、成形材料全体に対し、好ましくは1.1重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、特に好ましくは0.9重量%未満である。
【0082】
好ましくは、本発明の成形材料は、UL94規格のV-0グレードを有し、移動による質量損失が1.1重量%未満であり、かつ破断点伸びが少なくとも50%である。
【0083】
本発明のポリアミド成形材料は、好ましくは、導電性を増大させる添加剤、特に導電性カーボンブラックまたはカーボンナノチューブを含まない。
【0084】
好ましいポリアミド成形材料は、以下を含む。
(A)重合体全体の統計平均として、アミド単位当たり8~16個の炭素原子、より好ましくは9~14個の炭素原子、特に好ましくは10~12個の炭素原子を有する1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックスと、
(B)以下を含む難燃性組成物。
(B1)式(V):
【0085】
【化14】
【0086】
(式中、Arはオルト-、メタ-、パラ-フェニレン、ナフチレンまたはビフェニレンであるが、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレン基ではなく、
Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有する。)
の構成要素を含む少なくとも1つの無金属アリールホスフェート、
(B2)式(IV):
【0087】
【化15】
【0088】
の繰り返し単位を含む少なくとも1つのアリールホスホネート、および末端基としてのビスフェノールA、
(B3)少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、よりいっそう好ましくは少なくとも6つのヒドロキシ基で置換されており、必要に応じてエーテル基、好ましくは少なくとも1つのエーテル基を有する炭水化物ポリオール、
(B4)BSISO13320-1の2000-03-15版に準拠して、レーザー粒度計を使用したレーザー回折によって測定された粒径D50が、0.5~100μm、より好ましくは0.6~50μm、特に好ましくは0.7~25μm、非常に特に好ましくは0.8~5μm、とりわけ好ましくは0.9~4μmであるメラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、尿素および尿素誘導体、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸の塩(例:ホウ酸亜鉛)、硫酸アンモニウム、水酸化カルシウムから選択される非リン含有難燃剤、必要に応じてまたはハロゲン化難燃剤。
好ましいポリアミド成形材料は、(B2)に対する(B1)の質量比が0.25~4、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、特に好ましくは0.75~1.5である。
難燃性組成物全体のリン含有量は、ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%である。
【0089】
同様に好ましいポリアミド成形材料は、以下を含む。
(A)PA8、PA9、PA10、PA11、PA12、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA8.10、PA9.10、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA12.12、PA6.16、PA10.16、より好ましくはPA6.12、PA10.10、PA10.12、PA11およびPA12、特に好ましくはPA11およびPA12から選択される1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックスと、
(B)以下を含む難燃性組成物。
(B1)少なくとも1つの式(I):
【0090】
【化16】
【0091】
の単位、好ましくは1つまたは2つの式(I)の単位と、少なくとも2つの式(II):
【0092】
【化17】
【0093】
の単位、好ましくは2つまたは3つの式(II)の単位と、を含む少なくとも1つの無金属アリールホスフェート
(式(I)の単位または式(II)の単位は交互に存在し、
式(II)の単位数は、常に式(I)の単位数より1つ多く、
式(I)中、Arはオルト-、メタ-、パラ-フェニレン、ナフチレンまたはビフェニレンであるが、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレン基ではなく、
式(II)中、Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有する。)、
(B2)式(IV):
【0094】
【化18】
【0095】
の繰り返し単位を含む少なくとも1つのアリールホスホネート、および末端基としてのビスフェノールA、
(B3)少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、よりいっそう好ましくは少なくとも6つのヒドロキシ基で置換されており、必要に応じてエーテル基、好ましくは少なくとも1つのエーテル基を有する炭水化物ポリオール、
(B4)メラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、尿素および尿素誘導体、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸の塩(例:ホウ酸亜鉛)、硫酸アンモニウム、水酸化カルシウムから選択される非リン含有難燃剤、必要に応じてまたはハロゲン化難燃剤。
好ましいポリアミド成形材料は、(B2)に対する(B1)の質量比が0.25~4、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、特に好ましくは0.75~1.5である。
難燃性組成物全体のリン含有量は、ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%である。
【0096】
さらに好ましいポリアミド成形材料は、以下を含む。
(A)重合体全体の統計平均として、アミド単位当たり8~16個の炭素原子、より好ましくは9~14個の炭素原子、特に好ましくは10~12個の炭素原子を有する1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックス、
(B)以下を含む難燃性組成物。
(B1)少なくとも1つの式(I):
【0097】
【化19】
【0098】
の単位、好ましくは1つまたは2つの式(I)の単位と、少なくとも2つの式(II):
【0099】
【化20】
【0100】
の単位、好ましくは2つまたは3つの式(II)の単位と、を含む少なくとも1つの無金属アリールホスフェート
(式(I)の単位または式(II)の単位は交互に存在し、
式(II)の単位数は、常に式(I)の単位数より1つ多く、
式(I)中、Arはオルト-、メタ-、パラ-フェニレン、ナフチレンまたはビフェニレンであるが、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレン基ではなく、
式(II)中、Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有する。)、
(B2)式(IV):
【0101】
【化21】
【0102】
の繰り返し単位を含む少なくとも1つのアリールホスホネート、および末端基としてのビスフェノールA、
(B3)少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、よりいっそう好ましくは少なくとも6つのヒドロキシ基で置換されており、必要に応じてエーテル基、好ましくは少なくとも1つのエーテル基を有する炭水化物ポリオール、
(B4)メラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、尿素および尿素誘導体、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸の塩(例:ホウ酸亜鉛)、硫酸アンモニウム、水酸化カルシウムから選択される非リン含有難燃剤、必要に応じてまたはハロゲン化難燃剤。
さらに好ましいポリアミド成形材料は、(B2)に対する(B1)の質量比が0.25~4、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、特に好ましくは0.75~1.5である。
難燃性組成物全体のリン含有量は、ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%である。
この成形材料は、UL94規格のV-0グレードを有し、移動による質量損失が1.1重量%未満であり、かつ破断点伸びが少なくとも50%である。
【0103】
本発明は、部品製造のための本発明のポリアミド成形材料の使用と、特に自動車分野における防火用途での、好ましくはコーティング、カバー、フィルム、プロファイル、チューブ、コルゲートチューブ、中空体、シール、クラッド、ブラケット、ハウジング、シージング、電気部品および電子部品(好ましくは電流軸受金属部品など)としての部品自体と、に関する。
【0104】
電流軸受部品を絶縁するための本発明の方法において、その部品は、好ましくは、圧縮成形、発泡、押出、共押出、ブロー成形、3Dブロー成形、共押出ブロー成形、共押出3Dブロー成形、共押出吸引ブロー成形、押出コーティング、粉体コーティングまたは射出成形によって製造される。この種の方法は、当業者に知られている。
【0105】
好ましくは、本発明のハイブリッド部品は、コーティングされた金属体を含み、そのコーティングは、以下を含むポリアミド成形材料を含んでいる。
(A)アミド単位当たり少なくとも8個の炭素原子を有する1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックス、
(B)以下を含む難燃性組成物。
(B1)少なくとも1つの無金属アリールホスフェート、
(B2)少なくとも1つのアリールホスホネート、
(B3)炭水化物ポリオール、
(B4)メラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、非リン含有難燃剤。
難燃性組成物全体のリン含有量は、ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%、好ましくは0.75重量%~1.25重量%である。ポリアミド成形材料の成分は、上に記載されている。
【0106】
好ましくは、非リン含有難燃剤(B5)は、ハロゲン化難燃剤を含まない。より好ましくは、コーティング全体がハロゲン化物質を含まない。このことは、より優れた防食性およびより優れた環境適合性という利点に関係している。また、金属火災などの極度の加熱の場合でもハロゲン含有物質が放出されることがない。
【0107】
本発明はまた、この種の部品の製造方法にも関する。この方法は、ポリアミド成形材料が押出法もしくはブロー押出法、射出成形法、またはインサート成形法でその部品に成形されることを特徴とする。
【0108】
特にハイブリッド部品の場合、金属体のコーティング後に、これらが成形され得る。さらなる付属品、例えばプラグおよびソケット、ねじ接続、接続要素をハイブリッド部品に取り付けることも可能である。
【0109】
成形時、本発明のポリアミド成形材料は、非常に良好な成形性という有利な特徴を有しており、これは、ハイブリッド部品の成形時、ポリアミド成形材料のコーティング(以下、単にポリアミドコーティングとも称する)に剥離、亀裂、縮みしわ、および同様の影響が生じないことを意味する。
【0110】
特に、その良好な成形性により、ポリアミドコーティングは、特に高電圧範囲において効果的な電気絶縁を確実に提供する。高電圧範囲では、大量の電荷が長時間にわたって移動される。これに関連して、本発明の成形材料によるコーティングの注目すべき特徴は、優れた温度安定性である。これは、2つの方法で示される。第一に、移動による大幅な質量損失が発生しない。これにより、外界と電流軸受金属との間、そしてポリアミドコーティングの表面の良好な絶縁特性が維持される(漏洩電流の防止)。第二に、長時間かつ高温の後であっても、ポリアミドコーティングは、例えば車両の振動に対して、機械的に安定したままであり、これは、特に上述の成形体において、特に絶縁効果を低下させる亀裂が発生しないことを意味する。
【0111】
本発明のハイブリッド部品は、好ましくは車両に使用され得る。車両とは、すべての輸送手段、すなわち、水、陸、空および宇宙用のすべての輸送手段を意味すると理解される。ハイブリッド部品は、例えば、電流を生成する部品内と受け手側への伝導との両方において、電源内の電荷移動に使用される。好ましい用途は、電気動力車での使用であり、例えば、蓄電系または発電系の直列または並列接続、蓄電系または発電系から駆動装置への電荷移動、さらなる電力消費系、好ましくは高電圧系への電荷移動での使用である。
【0112】
本発明のハイブリッド部品はさらに、発電所(例えば、風力タービン、燃料電池または電解セル、水力発電所または他の発電所)などの固定系、または変電所などの中間処理機構、または地中、水中もしくは橋などの構造物内のケーブル系およびライン系(特に後者は、使用により天候および振動にさらされる)などの伝送設備でも使用され得ることが好ましい。
【0113】
本発明の物品のリン含有量の値は、元素としてのリンの含有量を指す。
【実施例
【0114】
方法
示差走査熱量測定(DSC)
DSC測定は、DINENISO11357-1:2016に準拠して実施した。
相対溶液粘度(ηrel
試料を30℃でm-クレゾールに溶解し(0.005g/mL)、粘度測定システム(LAUDA PVSまたはSchott AVS Pro)において25.00℃で測定する。
【0115】
本発明の成形材料は、難燃規格UL94のV-0グレードを有する。この分類は、ULガイドラインに沿って行われるが、好ましくは、寸法125mm×13mm×0.8mmの試験片についてDINEN60695-11-10:2014に準拠して、上記規格の改訂版1(2015年10月)を考慮して行われる。
【0116】
移動による質量損失を測定するために、試験片(125mm×13mm×0.8mm)を23℃で秤量し、次いで、IEC60216-4に準拠してオーブン内で150℃で24時間熱処理する。次いで、その棒を23℃で30分間冷却し、拭き取り可能なコーティングがなくなるまでアセトンのウェットシートで機械的に洗浄する(ミラーサンプル)。次いで、その棒を23℃で15分間乾燥させ、除電器を使用して静電気をすべて放電する。質量損失は、3個の試料を繰り返し計量した平均値として算出する。その負の値が移動による質量損失を示す。
【0117】
破断点伸びは、DINENISO527-1に準拠して測定する。引用した規格の第2部に準拠したダンベル試験片A1を使用した。測定は、23℃、速度50mm/分で行った。
【0118】
特に高電圧範囲において、導電体を被覆するための電気絶縁体として使用するには、とりわけ高い要件を満たさなければならないため、破断点伸びは、本発明の文脈において特に重要である。これらの導体は、電流ブリッジとして機能するため、最大180度まで曲がり、絶縁体に亀裂が生じないことが確実でなければならない。例えば自動車用用途におけるこれらの要件は、エンジンルームで作業する人々を危険にさらさないために、最大限確実に満たされなければならない。
【0119】
材料:
PA6.10:適度な粘性
PA6.12:適度な粘性
PA10.12:適度な粘性
PA12:高粘度
PA12/6:適度な粘性
【0120】
メラミンシアヌレート(MC)、メラプールMC25(BASF社)
ジペンタエリスリトール、Perstorp社製
Fyrolflex(登録商標)Sol-DPおよび-RDP、ICL IP America Inc.社(米国)の商標
ADKSTABFP-600、ADEKA Polymer Additives Europe社(フランス)の製品
Disflamoll(登録商標)DPK、Lanxess社(ドイツ)の商標
Aflammit(登録商標)PCO900、Thor Specialities Limited社(英国)の商標
Amgard(登録商標)CU、Lanxess社(ドイツ)の商標
Nofia(登録商標)HM7000、FRX polymers, Inc.社の商標
【0121】
安定剤混合物は、耐衝撃性改良剤、安定剤(熱および/または酸化)および染料/顔料を含む。
【0122】
実験例1:ポリアミド成形材料を配合するための一般手順
成形材料を共回転二軸押出機で製造した。固体成分を主供給装置で計量供給し、液体成分をその下流で溶融物に計量供給した。ハウジング温度を表1に示す。ペレット化は、ストランド式ペレット化とその後の乾燥空気室乾燥機での80℃、12時間の乾燥により行った。
【0123】
実験例2:試験片の作製
試験片は、DINENISO294-1およびDINENISO16396-2に準拠した射出成形法により作製した。射出速度は200mm/秒、材料温度はすべて240℃であり、対応する金型温度を表1に示す。典型的な材料特性を測定するために以下の試料を得た。
‐機械試験用のDINENISO527-2に準拠したの1A型多目的試験片
‐UL94Vおよび移動による質量損失用のUL94試験片(172mm×12.7mm×0.8mm)
‐電気測定用のプレート(130mm×130mm×1mm)
【0124】
実験例3:機械的および電気的試験
破断点伸びをDINENISO527-1に準拠して測定した。
絶縁耐力をDINEN60243-1、ACK20/K20に準拠して測定した。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表1-1】
【0128】
【表1-2】
【0129】
驚くべきことだが、実験例は、本発明のアリールホスフェートを使用する場合、移動による質量損失が、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレン基を含む高分子量アリールホスフェート、特にフェニレン基を含むアリールホスフェートを使用する場合よりも少ないことを示している。
【0130】
実験例から、難燃性および移動による質量損失に関する所望の特性は、無金属アリールホスフェートとアリールホスホネートとの組み合わせによってのみ達成可能であることが分かる。これに関連して、無金属アリールホスフェートとアルキルホスホネートとの組み合わせは、適切ではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミド単位当たり少なくとも8個の炭素原子を有する1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックス、
(B)以下:
(B1)少なくとも1つの無金属アリールホスフェート、
(B2)少なくとも1つのアリールホスホネート、
(B3)炭水化物ポリオール、
(B4)メラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、非リン含有難燃剤
を含む難燃性組成物
を含むポリアミド成形材料であり、
前記難燃性組成物全体のリン含有量は、前記ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%である、ポリアミド成形材料。
【請求項2】
前記ポリアミドは、PA8、PA9、PA10、PA11、PA12、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA8.10、PA9.10、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA12.12、PA6.16およびPA10.16から選択される、請求項1記載のポリアミド成形材料。
【請求項3】
前記(B2)に対する前記(B1)の質量比は、0.25~4、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、特に好ましくは0.75~1.5である、請求項1または請求項2記載のポリアミド成形材料。
【請求項4】
前記無金属アリールホスフェート(B1)は、
少なくとも1つの式(I):
【化1】
の単位、好ましくは1つまたは2つの前記単位と、
少なくとも2つの式(II):
【化2】
の単位、好ましくは2つまたは3つの前記単位と、
を含み、
前記式(I)の単位または前記式(II)の単位は交互に存在し、
前記式(II)の単位数は、常に前記式(I)の単位数より1つ多く、
前記式(I)中、Arはオルト-、メタ-、パラ-フェニレン、ナフチレンまたはビフェニレンであり、
前記式(II)中、Phはフェニル基であり、必要に応じてC1~C4アルキル基による所望の置換基を有している
請求項1~請求項3のいずれか一項記載のポリアミド成形材料。
【請求項5】
前記アリールホスホネート(B2)は、式(III):
【化3】
(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、
BArは、それぞれ独立して、芳香族基、好ましくは少なくとも2員環を有する芳香族基、より好ましくはビフェニレンまたは4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニレンである。)
で示される繰り返し単位を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項記載のポリアミド成形材料。
【請求項6】
部品の製造のための、請求項1~請求項5のいずれか一項記載のポリアミド成形材料の使用。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか一項記載のポリアミド成形材料を押出法もしくは中空押出法、射出成形法またはインサート成形法で電流軸受部品に成形する、電流軸受部品の絶縁方法。
【請求項8】
コーティングされた金属体からなるハイブリッド部品であり、
前記コーティングは、
(A)アミド単位当たり少なくとも8個の炭素原子を有する1つまたは複数のポリアミドを含むポリアミドマトリックス、
(B)以下:
(B1)少なくとも1つの無金属アリールホスフェート、
(B2)少なくとも1つのアリールホスホネート、
(B3)炭水化物ポリオール、
(B4)メラミンシアヌレート、
(B5)必要に応じて、非リン含有難燃剤
を含む難燃性組成物
を含むポリアミド成形材料からなり、
前記難燃性組成物全体のリン含有量は、前記ポリアミド成形材料に対し、0.5重量%~1.5重量%である、ハイブリッド部品。
【請求項9】
電流を伝導するための、請求項7記載のハイブリッド部品の使用。
【国際調査報告】