(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】間紙と共にガラスシートを梱包するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
D21H 27/10 20060101AFI20240614BHJP
B65D 85/48 20060101ALI20240614BHJP
B65D 57/00 20060101ALI20240614BHJP
D21H 11/02 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
D21H27/10
B65D85/48
B65D57/00 B
D21H11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571389
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 US2022028779
(87)【国際公開番号】W WO2022245608
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】カスティーリョ,ギルバート アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】モリン,エリザベス アイリーン ルーサー
(72)【発明者】
【氏名】ワルクザック,ワンダ ジャニナ
【テーマコード(参考)】
3E066
3E096
4L055
【Fターム(参考)】
3E066AA21
3E066CA03
3E066CA05
3E066HA05
3E066JA13
3E066NA30
3E096AA05
3E096AA15
3E096BA24
3E096BB05
3E096CA01
3E096CA19
3E096CA21
3E096DA03
3E096DB08
3E096EA01Y
3E096FA10
3E096GA11
4L055AG03
4L055AG44
4L055EA02
4L055EA04
4L055EA16
4L055EA19
4L055EA32
4L055EA35
4L055FA20
4L055FA30
4L055GA05
(57)【要約】
梱包装置および方法は梱包装置内に2枚以上のガラスシートを位置付ける工程およびその2枚以上のガラスシートの隣接するガラスシートの間に間紙を配置する工程を含む。この間紙は、少なくとも約5質量パーセントの総リグニン含量を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスシートを梱包する方法において、
梱包装置内に2枚以上のガラスシートを位置付ける工程、および
前記2枚以上のガラスシートの隣接するガラスシートの間に間紙を配置する工程、
を含み、
前記間紙は、少なくとも約5質量パーセントの総リグニン含量を有する、方法。
【請求項2】
前記間紙が、約5質量パーセントから約40質量パーセントの総リグニン含量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記間紙が約80質量パーセント以下の総多糖含量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記間紙に関する2ヶ月の経時劣化と洗浄の手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、約10度未満の水接触角を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記間紙に関する振動と洗浄の手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面で、約0.3マイクロメートルより大きい直径を有する粒子が1平方センチメートル当たり約30未満である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記間紙に関する流動電位手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、約-40mVから約-80mVに及ぶ約3のpHでのゼータ電位、約-70mVから約-110mVに及ぶ約7のpHでのゼータ電位、および約-80mVから約-120mVに及ぶ約11のpHでのゼータ電位を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記間紙に関する噴霧手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、洗浄後に目に見えるムラ欠陥を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記間紙の主面が、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)で決定して、約2未満の正規化マグネシウムイオン強度および約2未満の正規化アルミニウムイオン強度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
梱包装置において、
その中に位置付けられた2枚以上のガラスシートと、
前記2枚以上のガラスシートの隣接するガラスシートの間に配置された間紙と、
を含み、
前記間紙は、少なくとも約5質量パーセントの総リグニン含量を有する、梱包装置。
【請求項10】
前記間紙が約80質量パーセント以下の総多糖含量を有する、請求項9記載の梱包装置。
【請求項11】
前記間紙に関する2ヶ月の経時劣化と洗浄の手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、約10度未満の水接触角を有する、請求項9記載の梱包装置。
【請求項12】
前記間紙に関する振動と洗浄の手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面で、約0.3マイクロメートルより大きい直径を有する粒子が1平方センチメートル当たり約30未満である、請求項9記載の梱包装置。
【請求項13】
前記間紙に関する流動電位手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、約-40mVから約-80mVに及ぶ約3のpHでのゼータ電位、約-70mVから約-110mVに及ぶ約7のpHでのゼータ電位、および約-80mVから約-120mVに及ぶ約11のpHでのゼータ電位を有する、請求項9記載の梱包装置。
【請求項14】
前記間紙に関する噴霧手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、洗浄後に目に見えるムラ欠陥を示さない、請求項9記載の梱包装置。
【請求項15】
前記間紙の主面が、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)で決定して、約2未満の正規化マグネシウムイオン強度および約2未満の正規化アルミニウムイオン強度を有する、請求項9記載の梱包装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2021年5月19日に出願された米国仮特許出願第63/190501号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、間紙と共にガラスシートを梱包するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイ用途に使用されるガラスシートなどのガラスシートの梱包と輸送において、ガラスシートを損傷から保護するのに役立てるために、シート間に間紙などの間紙材料が一般に挟まれる。間紙材料は、物理的保護を与えるのに加え、ガラス表面上に汚染物質が移るのを最小にするようにも設計される。それに加え、そのような間紙材料は、望ましくないレベルの帯電をガラスに与えるべきではない、またはガラス表面に望ましくないほど接着すべきではない。さらに、そのような材料は、変動する温度および/または湿度条件などの様々な異なる環境において、時間の経過と共にうまく機能すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対費用効果的なやり方でこれらと他の要件を満たす間紙材料が、引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに開示された実施の形態は、ガラスシートを梱包する方法を含む。この方法は、梱包装置内に2枚以上のガラスシートを位置付ける工程を含む。この方法は、その2枚以上のガラスシートの隣接するガラスシートの間に間紙を配置する工程も含む。この間紙は、少なくとも約5質量パーセントの総リグニン含量を有する。
【0006】
ここに開示された実施の形態は、梱包装置も含む。その梱包装置は、その中に位置付けられた2枚以上のガラスシートを含む。この梱包装置は、その2枚以上のガラスシートの隣接するガラスシートの間に配置された間紙も含む。この間紙は、少なくとも約5質量パーセントの総リグニン含量を有する。
【0007】
ここに開示された実施の形態の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載されたような開示の実施の形態を実施することによって、認識されるであろう。
【0008】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも、請求項に記載された実施の形態の性質と特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図された実施の形態を提示することを理解すべきである。添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施の形態を示しており、説明と共に、その原理と作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ここに開示された実施の形態による例示の梱包装置の側面斜視図
【
図2】ここに開示された実施の形態による例示の梱包装置内の複数のガラスシートおよび隣接するガラスシートの間に配置された間紙の側面斜視図
【
図3】ここに開示された実施の形態による例示のガラスシートの斜視図
【
図4】ここに開示された実施の形態による例示の間紙の斜視図
【
図5】様々な間紙に関する、接触経時劣化後および接触経時劣化とそれに続く洗浄後のガラスシートの主面の水接触角を示すチャート
【
図6】様々な間紙に関する、接触後および接触とそれに続く洗浄後のガラスシートの主面の粒子密度を示すチャート
【
図7】様々な間紙との接触後のガラスシートのゼータ電位を示すチャート
【
図8A】様々な間紙に関する、マグネシウムイオンの表面濃度を示すチャート
【
図8B】様々な間紙に関する、アルミニウムイオンの表面濃度を示すチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、その例が添付図面に示された、本開示の現在好ましい実施の形態を詳しく参照する。できるときはいつでも、同じまたは同様の部分を称するために、図面に亘り、同じ参照番号が使用される。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化されることがあり、ここに述べられた実施の形態に限定されると考えるべきではない。
【0011】
範囲が、「約」1つの特定値から、および/または「約」別の特定値までと本明細書に表すことができる。そのような範囲が表された場合、別の実施の形態は、その1つの特定値から、および/または他の特定値までを含む。同様に、値が、例えば、「約」という先行詞の使用により、近似として表される場合、特定の値は別の実施の形態を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点は、他方の端点と関係してと、他方の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0012】
ここに用いられているような方向を表す用語-例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部-は、描かれている図面に関してのみ使用され、絶対的な向きを暗示する意図はない。
【0013】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程を特定の順序で行うことを必要とすると解釈されることも、またはどの装置についても、特定の向きが要求されていることも決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に挙げていない場合、または装置の請求項が、個々の構成部材に対する順序または向きを実際に列挙していない場合、もしくはそれらの工程が特定の順序に限定されるべきことが、請求項または説明において他に具体的に述べられていない場合、もしくは装置の構成部材に対する特定の順序または向きが列挙されていない場合、順序または向きがいかようにも暗示されることは決して意図されていない。このことは、工程の配列、操作の流れ、構成部材の順序、または構成部材の向き;文法構成または句読法に由来する明白な意味;および明細書に記載された実施の形態の数またはタイプに関する論理事項を含む、解釈に関するどの可能性のある非表現基準にも適用される。
【0014】
ここに用いられているように、名詞は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の対象を含む。それゆえ、例えば、成分に対する言及は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような成分を2つ以上有する態様を含む。
【0015】
ここに用いられているように、リグニンという用語は、モル当たり少なくとも約5,000グラムの重量平均分子量を有する架橋したフェノール系生体高分子を称する。
【0016】
ここに用いられているように、多糖という用語は、グリコシド結合で結合された単糖単位を有する高分子炭水化物を称する。その例に、セルロース、アミロース、グルカン、キシラン、マンナン、アラビナン、およびガラクタンがある。
【0017】
ここに用いられているように、「間紙に関する2ヶ月経時劣化手順(two month aging procedure with the paper interleaf)」という用語は、2ヶ月間に亘り、約54%の相対湿度および約20℃で、隣接したガラスシートの間に間紙を配置した積層体に加重し、その後、ガラスシートと間紙を分離し、続いて、ガラスシートを、約1%のSemiclean KGを含有する水溶液で約1分間洗浄し、続いて、脱イオン水中で約1分間濯ぎ、これを2回繰り返す、ここに記載された試験方法を称する。
【0018】
ここに用いられているように、「間紙に関する振動手順(vibration procedure with the paper interleaf)」という用語は、隣接するガラスシートの間に間紙を配置し、Telecordia Standardを使用して振動させ、その後、ガラスシートと間紙を分離し、続いて、ガラスシートを、約70℃で、超音波の下で、約4%のSemiclean KGを含有する水溶液で約12分間洗浄し、その後、約70℃で、超音波の下で、脱イオン水中で12分間濯ぐ、ここに記載された試験方法を称する。
【0019】
ここに用いられているように、「間紙に関する流動電位手順(streaming potential procedure with the paper interleaf)」という用語は、約24時間の期間に亘り、約54%の相対湿度および約20℃で、ガラスシート上に間紙を置き、その後、ガラスシートと間紙を分離する、ここに記載された試験方法を称する。
【0020】
ここに用いられているように、「間紙に関する噴霧手順(fogging procedure with the paper interleaf)」という用語は、約24から48時間の期間に亘り、約54%の相対湿度および約20℃で、ガラスシート上に穴開き間紙を置き、その後、間紙を取り除き、ガラスシートを蒸気に曝露し、その後、ガラスシートを、約1%のSemiclean KGを含有する水溶液で約1分間洗浄し、続いて、脱イオン水中で約1分間濯ぎ、続いて、ガラスシートを蒸気にさらに曝露する、ここに記載された試験方法を称する。
【0021】
ここに用いられているように、「ムラ欠陥(Mura defects)」という用語は、当業者に公知であり、例えば、米国特許第5917935号明細書に記載されているように、表面上で見える不均一性を称する。
【0022】
図1は、ここに開示された実施の形態による例示の梱包装置100の側面斜視図を示す。梱包装置100は、カバー102、支持部材104、台106、パレット108、および少なくとも1つの支柱110を備える。梱包装置100は、その中に位置付けられた複数のガラスシートを囲むように作られている。
【0023】
ある例示の実施の形態において、カバー102は、金属、高分子、高分子複合体、および/または金属/高分子積層板から作ることができる。ある例示の実施の形態において、支持部材104、台106、パレット108、および/または支柱110は、アルミニウムやステンレス鋼などの金属、または高分子複合体から作ることができる。
【0024】
図2は、ここに開示された実施の形態による、例示の梱包装置100内の複数のガラスシート10および隣接したガラスシート10の間に配置された間紙20の側面斜視図を示す。ガラスシート10および間紙20は、緩衝部材112上に位置付けられ、この緩衝部材は次に台106上に位置付けられ、緩衝部材112は、適切な接着剤で台106に接着されることがある。緩衝部材112は、例えば、エチレン-プロピレン-ジエン・ターポリマーを含む材料など、弾性高分子材料から作られることがある。
【0025】
図3は、ここに開示された実施の形態による例示のガラスシート10の斜視図を示す。ガラスシート10は、第1の主面12、その第1の主面12に対して略平行な方向に延在する(ガラスシート10の、第1の主面12と反対側にある)反対の第2の主面14、および第1の主面12と第2の主面14との間に延在し、第1と第2の主面12、14に略垂直な方向に延在するエッジ面16を有する。
【0026】
図4は、ここに開示された実施の形態による例示の間紙20の斜視図を示す。間紙20は、第1の主面22およびその第1の主面22に対して略平行な方向に延在する(間紙20の、第1の主面22と反対側にある)反対の第2の主面24を有する。
【0027】
ここに開示された実施の形態は、間紙20が、約5質量パーセントから約40質量パーセントを含む、さらに約10質量パーセントから約35質量パーセントを含む、またさらに約20質量パーセントから約30質量パーセントを含む、少なくとも約10質量パーセント、さらに少なくとも約15質量パーセント、またさらに少なくとも約20質量パーセントなど、少なくとも約5質量パーセントの総リグニン含量を有するものを含む。
【0028】
ここに開示された実施の形態は、間紙20が、約40質量パーセントから約80質量パーセントを含む、さらに約45質量パーセントから約75質量パーセントを含む、またさらに約50質量パーセントから約70質量パーセントを含む、約75質量パーセント以下、さらに約70質量パーセント、またさらに約65質量パーセント以下など、約80質量パーセント以下の総多糖含量を有するものを含む。
【0029】
表1には、5種類の間紙の含有量が纏められており、最初の2つは比較の間紙であり、最後の3つはここに開示された実施の形態による例示の間紙である。比較の間紙は、「紙1」および「紙2」と表1に表記されており、具体的に、市販の多糖系間紙である。例示の間紙は、「紙3」、「紙4」、および「紙5」と表1に表記されており、具体的に、市販のリサイクル新聞紙(「紙3」の場合)および市販の未使用の(virgin)新聞紙(「紙4」および「紙5」の場合)である。紙の組成は、Celignis Biomass Analysis Laboratory P10プロトコルの下で各紙約30グラムをバルクリグノセルロース分析にかけることによって、決定した。
【0030】
【0031】
ガラスシート10は、様々なガラス組成物から作られることがある。例えば、ここに開示された実施の形態は、ガラスシート10が、58~65質量パーセント(質量%)のSiO2、14~20質量%のAl2O3、8~12質量%のB2O3、1~3質量%のMgO、5~10質量%のCaO、および0.5~2質量%のSrOを含む無アルカリガラス組成物から作られるものを含む。ガラスシート10は、58~65質量%のSiO2、16~22質量%のAl2O3、1~5質量%のB2O3、1~4質量%のMgO、2~6質量%のCaO、1~4質量%のSrO、および5~10質量%のBaOを含む無アルカリガラス組成物から作られることもある。それに加え、ガラスシート10は、57~61質量%のSiO2、17~21質量%のAl2O3、5~8質量%のB2O3、1~5質量%のMgO、3~9質量%のCaO、0~6質量%のSrO、および0~7質量%のBaOを含む無アルカリガラス組成物から作られることがある。ガラスシート10は、55~72質量%のSiO2、12~24質量%のAl2O3、10~18質量%のNa2O、0~10質量%のB2O3、0~5質量%のK2O、0~5質量%のMgO、および0~5質量%のCaOを含み、ある実施の形態では、1~5質量%のK2Oおよび1~5質量%のMgOも含むことがあるアルカリ含有ガラス組成物から作られることもある。
【0032】
ある例示の実施の形態において、ガラスシート10は、約0.5ミリメートルを含む、約0.2ミリメートルから約0.8ミリメートルを含む、さらに約0.3ミリメートルから約0.7ミリメートルを含む、約0.1ミリメートルから約1ミリメートルに及ぶ厚さなど、約1ミリメートル未満の厚さを有する。
【実施例】
【0033】
ここに開示された実施の形態を、以下の非限定例によって、さらに説明する。
【0034】
実施例1:
2ヶ月の期間に亘り、約54%の相対湿度および約20℃で、清浄なCorning(登録商標)Eagle XG(登録商標)ガラスシート(約4インチ×4インチ(約10cm×10cm)の主表面積を有する)の間に間紙を配置した積層体に約5キログラムで加重する、間紙に関する2ヶ月経時劣化手順を行った。次に、ガラスシートと間紙を分離し、続いて、ガラスシートを、約1%のSemiclean KG(横浜油脂工業株式会社により製造されている)を含有する水溶液で約1分間洗浄し、続いて、脱イオン水中で約1分間濯ぎ、これを2回繰り返した。この手順を5種類の間紙、具体的に、表1を参照して先に記載した、紙1、紙3、紙4、および紙5、並びに追加の市販の未使用の新聞紙(「紙6」)について行った。Kruss DSA 100E Drop Shape Analyzerで決定される(試料毎に5回の測定)、約2マイクロリットルの水滴がガラス面と作る角度を測定することによって、各間紙と接触したガラスシートの主面の水接触角を、洗浄および濯ぎ工程の前後に測定した。その結果が
図5に示されている。
図5から分かるように、洗浄および濯ぎ工程の後に、ガラスシートの全てについて、約10度未満の水接触角が観察された。約10度未満の水接触角は、親水性が許容できるガラスシートの主面を表す。
【0035】
実施例2:
隣接した「Corning」「Eagle XG」ガラスシート(合計で20枚、各々約4インチ×4インチ(約10cm×10cm)の主表面積を有する)の間に間紙を配置し、Telecordia Standard(GR63、Transportation Vibration、Section 4.4.5)を使用して振動させる、間紙に関する振動手順を行った。次に、ガラスシートと間紙を分離し、続いて、ガラスシートを約70℃で、超音波の下で、約4%のSemiclean KGを含有する水溶液で約12分間洗浄し、その後、約70℃で、超音波の下で、脱イオン水中で12分間濯いだ。この手順を、4種類の間紙(間紙毎に2回の実験を行う)、具体的に、表1を参照して先に記載した、紙1、紙3、紙4、および紙5について行った。それに加え、各間紙について、約20℃で、約20%、約50%、および約80%の相対湿度で、振動手順を行った。各実験の実施後、Toray EngineeringモデルHS830粒子計数機を使用して、洗浄および濯ぎ工程の前後に、各ガラスシートの主面上で約0.3マイクロメートルより大きい直径を有する粒子を計数した。その結果が
図6に示されている。
図6から分かるように、ガラスシートの各々の主面では、洗浄後に約0.3マイクロメートルより大きい直径を有する粒子が、1平方センチメートル当たり約30より少ない。
【0036】
実施例3:
約24時間の期間に亘り、約54%の相対湿度および約20℃で、清浄な「Corning」「Eagle XG」ガラスシート(約2インチ×2インチ(約5cm×5cm)の主表面積を有する)上に間紙を置く、間紙に関する流動電位手順を行った。この手順を、4種類の間紙、具体的に、表1を参照して先に記載した、紙1、紙3、紙4、および紙5について行った。次に、ガラスシートと間紙を分離し、ガラス表面を、動電分析のためのAnton Paar SurPassシステムを使用して、ゼータ電位について分析した。その結果が
図7に示されている。このシステムは、pHの関数として、流動電位法および荷電電流法によりガラス表面のゼータ電位を測定する。
図7から分かるように、ガラスシートの各々の主面は、約-40mVから約-80mVに及ぶ約3のpHでのゼータ電位、約-70mVから約-110mVに及ぶ約7のpHでのゼータ電位、および約-80mVから約-120mVに及ぶ約11のpHでのゼータ電位を有し、対照から区別できない。そのようなゼータ電位は、ガラスシートと間紙との間の許容できるレベルの静電反発力を表す。
【0037】
実施例4:
約24から48時間の期間に亘り、約54%の相対湿度および約20℃で、「Corning」「Eagle XG」ガラスシート(約4インチ×4インチ(約10cm×10cm)の主表面積を有する)上に、約4インチ×4インチ(約10cm×10cm)の主表面積を有し、直径約0.25インチ(約6.3mm)の穴が開けられた紙を置く、間紙に関する噴霧手順を行った。次に、ガラスシートを紙から分離し、短期間、蒸気の噴射に曝露した。次に、ガラスシートを、約50℃で、約1%のSemiclean KGを含有する水溶液で約1分間洗浄し、続いて、脱イオン水中で約1分間濯ぎ、これを2回繰り返した。この工程の後、ガラスシートを短期間、蒸気の噴射にさらに曝露した。この手順を、2種類の間紙、具体的に、表1を参照して先に記載した、紙1および紙3に行った。紙3の間紙の場合、ガラスシートの主面は、最初の蒸気の噴射に曝露した後、目に見えるムラ欠陥を示したが、これらの目に見える欠陥は、紙1および紙3の両方の間紙について、2回目の蒸気の噴射に曝露した後には存在しなかった。
【0038】
実施例5:
紙1、紙3、紙4、紙5、および紙6の間紙(各々、約1インチ×1インチ(約2.5cm×2.5cm)の主表面積を有する)の各々を、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を使用して分析した。正規化されたマグネシウムイオンとアルミニウムイオンの強度に関する結果が、それぞれ、
図8Aおよび8Bに示されている。具体的に、M6分析器を備えたIONTOF ToF-SIMS NCSを使用した(イオンビーム特徴:Bi3+、質量分析モード、400マイクロメートルのビーム画成開口、128×128画素密度での200マイクロメートル×200マイクロメートルのランダムラスター区域、350マイクロ秒のサイクル時間、および約0.7~0.8pAのパルス電流)。分析中、電荷補償に低エネルギーフラッドガンを使用した。分析時間は約3分であり、これには、31ビーム走査および1平方センチメートル当たり約1.94×10
11イオンの全イオン線量が含まれた。ピーク面積を、検出した全イオンの合計で正規化した。間紙当たり4回の分析を行い(正モード)、示されたプロットは、4回の分析から平均化されており、エラーバーは標準偏差を表す。
図8Aおよび8Bから分かるように、紙3~紙6の各々の主面は、約2未満の正規化マグネシウムイオン強度および約2未満の正規化アルミニウムイオン強度を有した。マグネシウムとアルミニウムは、タルクとケイ酸アルミニウムの存在を表す。
【0039】
特定の例示の実施の形態において、間紙に関する2ヶ月の経時劣化手順と洗浄の後、ガラスシートの主面は、約1度から約10度、さらに約2度から約8度、およびまたさらに約3度から約6度など、約8度未満、さらに約6度未満、またさらに約4度未満など、約10度未満の水接触角を有する。
【0040】
特定の例示の実施の形態において、間紙に関する振動手順の後、ガラスシートの主面は、洗浄後の1平方センチメートル当たり約0.3マイクロメートルより大きい直径を有する、約5粒子から約30粒子、さらに約10粒子から約25粒子を含む、約25未満の粒子、さらに約20未満の粒子、またさらに約15未満の粒子など、約30未満の粒子を有する。
【0041】
特定の例示の実施の形態において、間紙との接触の前後のガラスシートの流動電位の分析後、ガラスシートの主面は、約-45mVから約-75mVなど、約-40mVから約-80mVに及ぶ約3のpHでのゼータ電位、約-75mVから約-105mVなど、約-70mVから約-110mVに及ぶ約7のpHでのゼータ電位、および約-85mVから約-115mVなど、約-80mVから約-120mVに及ぶ約11のpHでのゼータ電位を有する。
【0042】
特定の例示の実施の形態において、間紙に関する噴霧手順の後、ガラスシートの主面は、目に見えるムラ欠陥を示さない。
【0043】
特定の例示の実施の形態において、間紙の主面は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により決定して、約0.5から約2、さらに約1から約1.5を含む、約1.5未満などの約2未満の正規化マグネシウムイオン強度、および約0.5から約2、さらに約1から約1.5を含む、約1.5未満などの約2未満の正規化アルミニウムイオン強度を有する。
【0044】
ここに開示された実施の形態は、例えば、親水性が許容できる、1マイクロメートル未満の粒子密度が減少した、流動電位が許容できる、目に見えるムラ欠陥がない、およびタルク汚染が減少した、主面を有する、ディスプレイ用途に使用されるガラスシートなどのガラスシートの対費用効果的な梱包および輸送を可能にできる。
【0045】
本開示の精神および範囲から逸脱せずに、本開示の実施の形態に様々な改変および変更を行えることが当業者に明白であろう。それゆえ、本開示は、そのような改変および変更を、それらが、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲に入るという条件で、含むことが意図されている。
【0046】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0047】
実施形態1
ガラスシートを梱包する方法において、
梱包装置内に2枚以上のガラスシートを位置付ける工程、および
前記2枚以上のガラスシートの隣接するガラスシートの間に間紙を配置する工程、
を含み、
前記間紙は、少なくとも約5質量パーセントの総リグニン含量を有する、方法。
【0048】
実施形態2
前記間紙が、約5質量パーセントから約40質量パーセントの総リグニン含量を有する、実施形態1に記載の方法。
【0049】
実施形態3
前記間紙が約80質量パーセント以下の総多糖含量を有する、実施形態1に記載の方法。
【0050】
実施形態4
前記間紙が、約40質量パーセントから約80質量パーセントの総多糖含量を有する、実施形態3に記載の方法。
【0051】
実施形態5
前記間紙に関する2ヶ月の経時劣化と洗浄の手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、約10度未満の水接触角を有する、実施形態1に記載の方法。
【0052】
実施形態6
前記間紙に関する振動と洗浄の手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面で、約0.3マイクロメートルより大きい直径を有する粒子が1平方センチメートル当たり約30未満である、実施形態1に記載の方法。
【0053】
実施形態7
前記間紙に関する流動電位手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、約-40mVから約-80mVに及ぶ約3のpHでのゼータ電位、約-70mVから約-110mVに及ぶ約7のpHでのゼータ電位、および約-80mVから約-120mVに及ぶ約11のpHでのゼータ電位を有する、実施形態1に記載の方法。
【0054】
実施形態8
前記間紙に関する噴霧手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、洗浄後に目に見えるムラ欠陥を示さない、実施形態1に記載の方法。
【0055】
実施形態9
前記間紙の主面が、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)で決定して、約2未満の正規化マグネシウムイオン強度および約2未満の正規化アルミニウムイオン強度を有する、実施形態1に記載の方法。
【0056】
実施形態10
梱包装置において、
その中に位置付けられた2枚以上のガラスシートと、
前記2枚以上のガラスシートの隣接するガラスシートの間に配置された間紙と、
を含み、
前記間紙は、少なくとも約5質量パーセントの総リグニン含量を有する、梱包装置。
【0057】
実施形態11
前記間紙が、約5質量パーセントから約40質量パーセントの総リグニン含量を有する、実施形態10に記載の梱包装置。
【0058】
実施形態12
前記間紙が約80質量パーセント以下の総多糖含量を有する、実施形態10に記載の梱包装置。
【0059】
実施形態13
前記間紙が、約40質量パーセントから約80質量パーセントの総多糖含量を有する、実施形態12に記載の梱包装置。
【0060】
実施形態14
前記間紙に関する2ヶ月の経時劣化と洗浄の手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、約10度未満の水接触角を有する、実施形態10に記載の梱包装置。
【0061】
実施形態15
前記間紙に関する振動と洗浄の手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面で、約0.3マイクロメートルより大きい直径を有する粒子が1平方センチメートル当たり約30未満である、実施形態10に記載の梱包装置。
【0062】
実施形態16
前記間紙に関する流動電位手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、約-40mVから約-80mVに及ぶ約3のpHでのゼータ電位、約-70mVから約-110mVに及ぶ約7のpHでのゼータ電位、および約-80mVから約-120mVに及ぶ約11のpHでのゼータ電位を有する、実施形態10に記載の梱包装置。
【0063】
実施形態17
前記間紙に関する噴霧手順後、前記2枚以上のガラスシートのいずれか1枚の主面が、洗浄後に目に見えるムラ欠陥を示さない、実施形態10に記載の梱包装置。
【0064】
実施形態18
前記間紙の主面が、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)で決定して、約2未満の正規化マグネシウムイオン強度および約2未満の正規化アルミニウムイオン強度を有する、実施形態10に記載の梱包装置。
【符号の説明】
【0065】
10 ガラスシート
12 ガラスシートの第1の主面
14 ガラスシートの第2の主面
16 ガラスシートのエッジ面
20 間紙
22 間紙の第1の主面
24 間紙の第2の主面
100 梱包装置
102 カバー
104 支持部材
106 台
108 パレット
110 支柱
112 緩衝部材
【国際調査報告】