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特表2024-522474高圧単回使用型電気化学式分析センサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】高圧単回使用型電気化学式分析センサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20240614BHJP
   G01N 27/401 20060101ALI20240614BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G01N27/30 315A
G01N27/401 313A
G01N27/30 311D
G01N27/416 353Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571891
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022030266
(87)【国際公開番号】W WO2022246206
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/191,608
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ダーカー,アンドリュー・エス
(72)【発明者】
【氏名】ラッチ,タイレル・エル
(72)【発明者】
【氏名】マクガイア,チャド・エム
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジンポー
(72)【発明者】
【氏名】サムラル,リック・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アーメド,タウフィック
(57)【要約】
単回使用型電気化学式分析センサー(200)が提供される。センサー(200)は、プロセス流体と接触するように構成された検出電極(224)と、電解物質を含む比較チャンバー(260,202)とを含む。比較電極(225)は、電解物質内に配置される。比較液絡部(258)は、プロセス流体に接触するように構成され、さらにプロセス流体内に電解物質の流れを発生させるように構成される。比較チャンバー(260,202)は、減圧状態で保存され、作動前に加圧されるように構成される。単回使用型電気化学式センサーを作動させる方法(400)も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単回使用型電気化学式分析センサーであって、
プロセス流体に接触するように構成された検出電極、
電解物質を含む比較チャンバー、
前記電解物質内に配置された比較電極、
前記プロセス流体に接触するように構成された比較液絡部であって、さらに前記プロセス流体内に電解物質の流れを生成するように構成される、前記比較液絡部、
を含み、
前記比較チャンバーが、減圧状態で保存され、作動前に加圧されるように構成される、
単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項2】
作動時に、前記比較チャンバー内に圧力を発生するように構成された圧力作動機構、をさらに含む、請求項1に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項3】
前記圧力作動機構が、
第1の可動ピストンであって、前記第1の可動ピストンの移動に伴い、前記比較チャンバー内に圧力を発生させるように配置される、前記第1の可動ピストン、
を含む、請求項2に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項4】
前記第1の可動ピストンの周囲に配置されたOリングシール、をさらに含む、請求項3に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項5】
第2の可動ピストンであって、バネによって前記第1の可動ピストンから離間される前記第2の可動ピストン、をさらに含む、前記請求項3に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項6】
前記第2の可動ピストンを、加圧位置にロックする機械的ラッチ機構、をさらに含む、請求項5に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項7】
前記バネが、前記電解物質内の圧力を維持するために、前記電解物質が前記プロセス流体内に流入されるにつれて、第1の可動ピストンが第2の可動ピストンから離間させるように動作するように構成される、請求項5に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項8】
前記第1の可動ピストンを含む前記センサーの側壁が、前記側壁を通して前記ピストンの位置を視認することができる材料から構成される、請求項7に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項9】
前記電解物質が、ゲルである、請求項1に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項10】
前記比較チャンバーが、90psiまで加圧されるように構成される、請求項1に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項11】
前記検出電極が、pHガラス電極である、請求項1に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項12】
前記比較液絡部が、多孔性のディスクである、請求項1に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項13】
前記ディスクが、セラミック及び高分子化合物からなる群から選択される材料で構成される、請求項12に記載の単回使用型電気化学式分析センサー。
【請求項14】
前記センサーに作動可能に結合される、下流の通過部分のプロセス結合器をさらに含む、請求項1に記載の単回使用型電気化学式センサー。
【請求項15】
前記センサー及び前記プロセス結合器の少なくとも一つが、殺菌される、請求項14に記載の単回使用型電気化学式センサー。
【請求項16】
単回使用型電気化学式分析センサーを作動する方法であって、
単回使用型電気化学式分析センサーを提供すること、
プロセス流体にアクセス可能なプロセス結合器を提供すること、
前記単回使用型電気化学式センサーの比較チャンバーを加圧すること、及び、
プロセス流体の特性を検出するために、前記加圧された単回使用型電気化学式センサーを使用すること、
を含む方法。
【請求項17】
前記比較チャンバーを加圧することが、圧縮ガス又は機械的油圧システムのいずれかによって達成され、前記比較チャンバーの内部圧力が、0から100psiの間である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記比較チャンバーを加圧する前に、前記単回使用型電気化学式センサー及び前記プロセス結合器の少なくとも一つを殺菌すること、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記殺菌プロセスが、ガンマ線放射及びX線放射の少なくとも一つを使用する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記単回使用型電気化学式センサーが、pHセンサーである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
過去20年の間に、単回使用型(single-use)又は使い捨て型(disposable)のバイオプロセシングシステムは、バイオ医薬品製造におけるステンレススチールシステムに取って代わる大きな勢いを得ている。ステンレススチールの装置で構築された従来のシステムとは対照的に、単回使用型システムは、高度に設計された高分子化合物に依存しており、ガンマ線照射によって予め殺菌される。最終使用者(end user)にとっては、それらは、プロセスのターンアラウンド時間の改善に加え、初期投資の削減、前洗浄、殺菌、検証などの複雑なプロセスの排除といった、いくつかの大きな利点を提供する。その結果、単回使用型バイオプロセシングシステムは、初期の研究開発をする研究施設から大規模な商業用医薬品の製造工程まで、加速度的に採用されている。
【0002】
pHは、バイオ医薬品製造の多くのプロセスにおける、重要なプロセスパラメーターである。バイオリアクターの上流(upstream)のアプリケーションにおいて、培地(medium culture)のpHは、狭い生理学的な範囲内で、連続的にモニターされ、且つ制御されており、この理想的なpH範囲からの逸脱は、生存細胞濃度、蛋白質の生産性及び品質に悪影響を及ぼす可能性を有する。バイオ医薬品の製造に使用される従来のpHセンサーは、pH感度の高いガラス電極及び比較電極を用いた電気化学式測定法に基づいている。これは、その高い信頼性、精度、及び安定性により、バイオテクノロジー及び製薬業界では、成果が証明されており確立された技術である。
【0003】
しかしながら、従来のpHセンサーは、従来のステンレススチールスタイルのバイオリアクターシステムに適合するように設計されているため、単回使用型システムで使用する場合、いくつかの重大な制限を有する。第一に、従来のセンサーは、最終使用者によって、オートクレーブ、スチーム・イン・プレイス、又はクリーン・イン・プレイスの手順を使用して、殺菌されなければならない。それらは、一般的に、ガンマ線照射がセンサーの構成要素を損傷して、望ましくない性能劣化を引き起こす可能性を有しているため、ガンマ線照射の殺菌プロセスに適合性を有していない。従来のpHセンサーは、十分な精度を確保するために、通常、使用前に最終使用者によって、2点校正が実施される必要があるが、これは煩雑であり、プロセスの複雑さを増加させる。さらに、従来のpHセンサーは、pH検出用のガラスが、経時的に劣化し、センサー性能が低下するため、通常、有している有効保存期間(shelf life)が1年間となる。単回使用型システムでは、残念なことに、センサーが、はるかに長い有効保存期間が期待される、一つの単一アセンブリとしてのプラスチック製のバイオリアクターバッグに取り付けられるか、又は、下流(downstream)のアプリケーション用のチューブセット内に取り付けられるため、センサーのより長い有効保存期間が、非常に望まれている。
【発明の概要】
【0004】
概要
単回使用型電気化学式分析センサーが提供される。センサーは、プロセス流体と接触するように構成された検出電極と、電解物質を含む比較チャンバーと、を含む。比較電極は、電解物質内に配置される。比較液絡部(reference junction)は、プロセス流体に接触するように構成され、さらにプロセス流体内に電解物質の流れを生成するように構成される。比較チャンバーは、減圧状態で保存され、その後、作動前に加圧されるように構成される。単回使用型電気化学式センサーを作動させる方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】低圧のバイオリアクターアプリケーション用のpHセンサーの保存位置を示している模式図である。
図1B】低圧のバイオリアクターアプリケーション用のpHセンサーの作動位置を示している模式図である。
図2】pHセンサーの比較チャンバーの圧力の経時的な減衰を示しているグラフである。
図3A】一実施形態に係る、下流のアプリケーション用のpHセンサーの模式図である。
図3B】一実施形態に係る、下流のアプリケーション用のpHセンサーの模式図である。
図4】一実施形態に係る、単回使用型電気化学式分析センサーの作動方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1A及び図1Bは、それぞれ、低圧(すなわち、上流)のバイオリアクターアプリケーション用のpHセンサーの保存位置及び作動位置を示している模式図である。単回使用型機器の供給者は、通常、pHセンサーを、チューブセットに組み立て(assemble)、そのアセンブリにガンマ線を照射して殺菌する。このようなセンサーついては、サプライチェーンが効率的に管理され、使用者に妥当な有効保存期間を提供できるように、このアセンブリの有効保存期間が2年であることが望ましくなっている。センサーの製造時において比較チャンバーを加圧する場合に、この小さな密閉容積内のいかなる流体の損失も、著しく圧力を低下させる。
【0007】
図1Aは、pHセンサーの保存位置を示している模式図である。図示された例においては、pHセンサーが、一般的に、バイオリアクターバッグのようなプロセスに係合するように構成される遠位端部102と、計測器に結合するように構成される電気コネクター106を有する近位端部104と、を有する断面図で示される。コネクター106の一例としては、バリオピンコネクターとして知られている。
【0008】
いくつかの電気化学式分析センサーは、pHのようなプロセス変数を示している電流を生成することから、電流測定型のセンサーと考えられる。他のタイプのセンサーは、プロセス変数を示している電位を生成することから、電位差測定型のセンサーと考えられる。本明細書内で用いられるように、電気化学式分析センサーについては、プロセス変数によって変化する電気的特性を有する任意の分析センサーを含むことが意図されている。
【0009】
図1Aに示されるように、センサー100は、プロセスプランジャー108がロック部材110から離間された保存位置の構成で提供される。保存構成にあるときの、pH検出用ガラス電極112は、緩衝液で満たされた保存チャンバー114内に保持される。図1Aに参照されるように、比較電極116が電解物質118内に設けられており、この電解物質118は、比較液絡部120によりプロセスに電気的に結合するように構成される。センサー100は、保存と、作動の直前の校正との両方のために、保存位置に保持される。これは、保存チャンバー114内の緩衝液が既知のpHを有し、電極112でpHを測定し、測定値を緩衝液の既知のpHと比較することにより、センサーが校正されることか、又は他の方法で特性化させることができるからである。
【0010】
図1Bは、pHセンサー100の作動位置を示している模式図である。図1B図1Aを対比させることで、プロセスプランジャー108がロック部材110に近接するようにスライドされていることが示される。このスライド動作により、端部122が側壁124から延出され、それによりpHガラス電極112がプロセス126に対して露出される。図に参照されるように、プロセス126は、比較液絡部120にも露出される。このように、保存位置から作動位置へのスライド動作は、湿潤保存チャンバー114を、プロセス126に対して露出させる。図1Bに示された構成では、センサー100は、生物反応液(bioreaction fluid)、細胞培養液(cell culture)、マッシュ(mash)などのプロセス流体のpHを検出するために使用されることができる。
【0011】
図1A及び図1Bに示されるように、図示されたセンサーは、別個である保存チャンバー、及びスタートアップ時にプロセスコネクター内を軸方向に移動してプロセス内に入るスライド型のセンサーアセンブリにより、pHガラス及び比較液絡部に対する湿潤保存を提供する。スライド型のセンサーアセンブリは、低いプロセス圧力において、信頼性の高い測定を提供する。なお、プロセスコネクターのスリーブは、プロセス培地(process media)に対して固定されたままであり、センサーが、プロセスに挿入される際に移動することに留意されたい。
【0012】
単回使用型pHセンサーは、ガンマ線照射の殺菌に適合し、単回使用型バイオリアクターバッグに取り付けて一つのアセンブリを形成することができる。センサーは、独自の保存用緩衝液が組み込まれているため、最終使用者による2点校正を必要とせず、この保存用緩衝液を用いて1点標準化させることができる。さらに重要なことは、センサーが保存されている間中、pH電極と比較電極に保存用緩衝液が接触しているので、それらが湿らされて新鮮な状態が保たれることである。この湿潤保存は、高精度、高感度、高安定性を含む卓越したセンサー性能を有しながら、2年間という長い有効保存期間をもたらした。エイジング(aged)されなかった試作品、1年間エイジングされた試作品、及び2年間エイジングされた試作品、を用いた厳密な実時間の試験により、2年間の保存後も、センサーは、性能が劣化することなく高いレベルを維持することが実証された。
【0013】
細胞培養プロセスがバイオリアクターバッグ内で完了した後、培地(media)はプロセスの下流の部分に移動される。ここでは、培地は、90psi(pounds per square inch absolute)までの高圧で、小さな管径のチューブ内の濾過段階を経て、押し通される。この高いプロセス圧力は、従来のpHセンサーに問題を引き起こす可能性がある。従来のガラス電極pHセンサーには、センサーの比較チャンバー、及びその中の電解質緩衝液を、プロセスに接続するための制限された経路である比較液絡部がある。この液絡部の例は、比較チャンバーと、使用者のプロセスと、の間に配置された、多孔質セラミックのシリンダーである。別の例としては、高分子化合物の液絡部である。センサーが適切に作動するためには、センサーの比較チャンバーからプロセス流体への、正のイオン流がなければならない。
【0014】
下流のアプリケーションのより高いプロセス圧力は、このイオン流を途絶させることができ、pH測定値の変動、又はドリフトをもたらす。この途絶は、比較チャンバーを加圧することによって改善することができる。しかし、従来の比較加圧の方法では、工場において特別な方法を用いた加圧が要求された。比較液絡部は多孔質であり、比較チャンバーは加圧されていることから、時間が伸びるに従い圧力が減衰し、センサーの有効保存期間と耐用年数は制限される。
【0015】
図2は、pHセンサーの比較圧力の経時的な減衰を示しているグラフである。より詳細には、図2は、改良された市販のセンサー(密閉された液絡部、空気を充填)において、60日目から14日間の圧力減衰データをデータソースとして、比較圧力の減衰をカーブフィッティングしたデータを示している。図2のデータは、カーブフィッティングされており、-60日から+180日までが推定されている。図2の試験データは、センサーの比較チャンバーが最初に90psiに加圧されており、センサーが適切に機能するためには最低で30psiの比較チャンバーの圧力が必要であると仮定した場合、可能な有効保存期間が最大で6ヶ月であることを示している。さらに、センサーを「作動」位置に移動させると、比較液絡部(多孔質材料)が、本質的な漏洩箇所(leak point)となって、使用中に圧力は減衰され、作動寿命は制限される。上述したように、上流のセンサー(2年)と同程度の実施可能な有効保存期間を有して、下流に適合性を有する単回使用型pHセンサーを提供することが望まれている。
【0016】
図3Aは、一実施形態に係る、下流のアプリケーション用のpHセンサーの模式図である。図示の例では、pHセンサー200は、設置時に加圧することが可能である比較チャンバー202を備える。これは、比較流体を比較液絡部又はシールを介して押し出すための差圧がないため、したがって、保存中に圧力が失われることもなくなるため、ユニットの有効保存期間を最大化する。代わりに、比較チャンバー202内に所望の圧力を発生させるために、使用者が操作可能な機構204が使用される。一例としては、プロセスのスタートアップ時に、所望の圧力を発生させるために、ピストン206が、比較チャンバー202の一部であるか又は比較チャンバー202と流体的に結合されているシリンダー208内で、押し込まれるか又は他の方法で作動させられる。ピストン206への力は、二次の比較チャンバー202内の流体が多孔性の比較液絡部を通してゆっくりと押し出される場合に、径時的にほぼ一定の圧力が提供されるように、波形バネ(wave spring)のようなバネ210を圧縮することによって提供されることができる。他のタイプのバネについては、一定の圧力を提供するために、加圧下での比較チャンバー自体の膨張をポテンシャルエネルギー源として使用すること、又はチャンバー内の気体を圧縮すること、でバネとして作用させることを含めて、使用することができる。これは、有効保存期間の問題を解決するだけでなく、より長い作動寿命を提供できる。
【0017】
図3Aは、その内部に複数の電気接点222を備える電気コネクター220を有するセンサー200を示している。接点222は、pHガラス電極224及び比較電極225のような、センサー200内の検出素子に結合される。さらに、センサー200に温度センサー及び/又は圧力センサーのような追加の検出素子が採用される場合、接点222は、そのような素子への電気的接続を容易にする。コネクター220は、外向ネジ山領域228のような、相手側コネクターとの協働を容易にする任意の適切な特徴を含むことができる。コネクター220は、好ましくは、内部空洞226が、コネクター220に結合されるケーブル又はコネクターから流体的に隔離されるように、密閉された電気コネクターである。一実施形態としては、コネクター220は、バリオピンコネクターである。コネクター220は、側壁232を、側壁236の端部234と接触させるスリーブ230によって、センサー200に固定される。さらに、側壁236は、好ましくは、Oリング240が配置される溝238を含む。そして、スリーブ230が側壁232にネジ込まれると、スリーブ230の内面がOリング240に対してシールされる。
【0018】
側壁236は、側壁248の端部246を越えてその周囲に延伸されるようにサイズ調整されたフランジ244を含む端部242に、取り付けられるか又は他の方法で固定される。端部242は、側壁236及び/又は側壁248と同じ高分子化合物から構成され、それらに、溶剤溶着、接着剤、超音波溶着などを含む任意の適切な方法によって取り付けられる。
【0019】
センサー200は、また、側壁248の内径252に接触し、センサー200の長手方向軸に沿ってpH電極224を取り付けられるようにサイズ調整された中心ボア254を含む、インサート250を含む。インサート250は、また、pH電極224の長さに沿って、比較液絡部ディスク258の開口部を通過するように延伸されるスリーブ256を含む。ディスク258は、プロセス内に、経時的に制御された量の電解物質を放出するように構成された多孔質セラミックディスクとすることができる。しかしながら、実施形態では、比較液絡部が、小さな導管、又は複数のそのような導管のような、他のタイプの物理的構成を有する場合でも実施することができる。
【0020】
側壁248は、一対の比較チャンバー260、202と、一次の比較チャンバー260を二次の比較チャンバー202に流体的に結合する導管262と、を規定する。比較チャンバー260、202内には、少なくとも部分的に、流動性の電解物質が配置される。電解物質は、液体でもゲルでもよいが、比較液絡部258をある程度流れる能力を有していなければならない。図に参照されるように、二次の比較チャンバー202を加圧することにより、一次の比較チャンバー260も加圧される。この加圧は、プロセスの流体圧が上昇しても、比較液絡部からの電解物質の流れを維持するのに役立つ。図3Aに示されている構成では、圧力作動機構204は、側壁248の外向ネジ山部264に結合される内向ネジ山部を含む。圧力作動機構は、ピストン206及びピストン266が圧力作動機構204の近くにあり、実質的にネジ山部264内に配置された、休眠中の構成が示される。
【0021】
図3Bは、センサー200の加圧作動後の構成の模式図である。図3B図3Aと対比すると、圧力作動機能部204の作動が、ピストン266及び206を電極224に向かって移動させ、それによって二次の比較チャンバー202のサイズが縮小され、一次の比較チャンバー260が加圧されたことが示されている。さらに、図示された構成では、ピストン266と206の両方が、同じ距離だけ移動されている。電解物質が、比較液絡部258を通ってゆっくり流れ出るにつれて、バネ210のような圧力補償機構は、ピストン206が、固定されていたピストン266の加圧作動位置から離れるように移動させる。このようにして、一次の比較チャンバー260の圧力は、ピストン206が側壁248に対して底をつくまで、所望のレベルに維持される。一実施形態としては、側壁248又はその一部は、圧力補償機構で圧力が補償される残りの寿命を判定するために、使用者によってピストン206の位置が視認できるように、透明又は半透明の材料で形成されている。
【0022】
図3A図3Bは、プロセスアダプター280に結合されたセンサー200を示しており、プロセスアダプター280は、センサーの検出素子をプロセス流体内に配置するように構成されている。図示された例では、プロセスアダプター280は、センサー200の外向ネジ山284を受けるように構成された内向ネジ山型センサーポート282を含む。センサー200は、また、プロセスアダプター280に係合し、シールするように構成された一つ以上のOリング286を含むことができる。プロセスアダプター280は、対応するフランジに結合するための清潔なフランジ290を有するように示されているが、任意の適切な結合機構を使用することができる。
【0023】
図4は、一実施形態に係る、単回使用型電気化学式分析センサーの作動方法のフロー図である。方法400は、単回使用型電気化学式センサーが提供されるブロック402から始まる。センサーは、pHセンサー404、イオンセンサー406、又はセンサー信号を生成するためにプロセス流体内に流入れなければならない電解物質を含むその他のセンサー408、であることができる。ブロック410では、プロセス結合器が得られる。センサーが下流の単回使用型プロセスに結合される場合、プロセス結合器は、プロセス結合器280(図3Bに示されている)であることができる。しかしながら、プロセス結合器は、一般的に、プロセスの設置に固有であり、プロセス変数の信号を得るために、プロセス流体内又はプロセス流体の適切な近傍にセンサーを配置するように構成される。次に、任意のブロック412では、センサーとプロセス結合器は殺菌されることができる。これは、ガンマ線照射414、X線照射、又はその他の適切な方法416、を用いて行うことができる。殺菌されたセンサー及び/又はプロセス結合器は、パッケージされるか、又は他の方法で、使用の要求がされるまで殺菌された状態で保持される。そのような使用が要求されると、ブロック418が実行され、そこでセンサーは使用直前に加圧される。このような加圧は、好ましくは、ノブ、又は機構204(図3Bに示される)のような使用者が操作可能な圧力作動機構、の手動操作を介して行われる。最後に、ブロック420で、加圧されたセンサーは、プロセス流体を検出するために使用される。
【0024】
従って、図に参照されるように、保存中にはセンサーが加圧されないため、長期保存が容易であるセンサー及び方法が提供される。そして、下流のプロセスのような、加圧されたプロセス流体環境において、正確で精密な作動を可能にするために、作動の直前に、センサーが加圧される。さらに、pHセンサーの有効保存期間及び製品寿命は、装置内の比較電解物質の粘度を増加させることにより延長させることができると信じられている。例えば、この目的のために、濃厚な比較ゲルを使用することができる。より粘度の高い比較ゲルを使用することで、より長い耐用年数を得ることができる。さらに、比較ゲルを導入することで、高い外部プロセス圧力下で、センサーを良好に作動させるために必要な内部圧力を低減させることができる。
【0025】
ピストンの作動はいくつかの方法で行うことができる。一実施形態としては、バネがセンサーの組み立て中に圧縮され、ピストンが、システムに圧力がかからない所定の位置に、シリンダー本体内の機構によってロックされる。ピストンキャップを90度回転させると、ピストンは、保持機構から移動して外れ、システムに圧力を発生させる力を供給する。さらに、作動するピストンは、ロック機構によって、作動位置にロックさせることもできる。
【0026】
別の実施形態では、設置者がピストンのキャップを押し込んだり引き出したりする一方で、使用者がキャップを90度回転させるとシリンダー本体上の機構がキャップを保持する。あるいは、キャップは、回転させずに、スナップ留め機構によって保持させることもできる。
【0027】
なお、本明細書に記載された加圧方法は、pHセンサーのみに限定されるものではなく、他の電位差型のイオンセンサーに全般的に適用できることに留意されたい。これらのイオンセンサーには、カリウムセンサー、ナトリウムセンサー、塩化物センサー、フッ化物センサーなどが含まれるが、これらに限定されるものではなく、これらはほんの一部の例にすぎない。センサーの比較電極が、多孔質の液絡部材料を介して内部の比較電解物質を拡散することに依存する限り、上述した方法により加圧することができる。
【0028】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態的及び詳細に変更を加えることができることを認識するであろう。例えば、上記に提供された説明では、ある特定の方法で比較チャンバーを加圧することを例示したが、このような加圧は様々な形態をとることができる。センサーは、工場で予め圧縮され、比較チャンバーに圧力を加えるために現場で解放されるバネ部材を含むことができる。別の例としては、無圧縮のバネ部材を、現場で、押し込むことにより圧縮させることもできる。さらに別の例としては、無圧縮のバネ部材を、現場で、引き出すことにより圧縮させることができる。さらに別の例としては、無圧縮のバネ部材を、現場で、ネジ部材により圧縮させることができる。別の例としては、無圧縮のバネ部材を、現場で、押し込むこと及び捻ることにより圧縮させることができる。別の例としては、無圧縮のバネ部材を、現場で、引き出すこと及び捻ることにより圧縮させることができる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】