(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】車両用センサデバイス、及びこれを使用するシートベルトリトラクタ
(51)【国際特許分類】
B60R 22/405 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
B60R22/405
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572504
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 KR2022005479
(87)【国際公開番号】W WO2022265212
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0077564
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ヒョン キ
(72)【発明者】
【氏名】ムーン,チャン キ
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018HA07
3D018HB03
3D018HC01
3D018HD01
3D018HE02
(57)【要約】
【解決手段】 車両用センサデバイス及びこれを備えたシートベルトリトラクタを開示する。車両センサ装置は、外観を形成する本体と、本体の1つの開放された表面に結合されるカバーと、本体の設置角度及び背もたれの傾きに応じて回動可能に本体に設置されるセンサハウジングと、センサハウジング内に設置され、車両の傾きの変化及び加速度の変化を感知するボールと、ボールの上部に配設されたセンサレバーであって、センサハウジングに回動可能に結合される一端を有するセンサレバーと、を備える。センサレバーは、ボールの移動に伴う回動動作により、ロック装置内に設けられたパイロットレバーを直線的に往復運動させる。センサレバーは、ボールが設置されたセンサハウジング内に設置され、車両の傾斜の変化及び加速度の変化によるボールの移動に応じて、センサレバーがセンサハウジングに結合された回動シャフトを中心に回動し、センサレバーに接続されたパイロットレバーを直線的に往復運動させて、パイロットレバーをロッキングデバイスに係合又はそれから係合解除させる。これにより、パイロットレバーの通常の操作範囲を拡大することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の傾きの変化及び加速度の変化を感知する車両用センサデバイスであって、
外観を形成する本体と、
前記本体の1つの開放表面に結合するカバーと、
前記本体の設置角度及び背もたれの傾きに応じて回動可能に前記本体に設置されるセンサハウジングと、
前記センサハウジング内に設置され、前記車両の前記傾きの変化及び前記加速度の変化を感知するボールと、
前記ボールの上部に配設されたセンサレバーであって、前記センサハウジングに回動可能に結合された一端を有するセンサレバーと、を備え、
前記センサレバーが、前記ボールの移動による回動動作によって、ロッキングデバイスに設けられたパイロットレバーを直線的に往復運動させる、車両用センサデバイス。
【請求項2】
前記センサレバーが、
前記ボールの前記上部に装着される装着部と、
前記装着部の上部に設けられ、前記パイロットレバーに結合されるレバー結合部と、
前記レバー結合部から一方の側に延出し、前記センサハウジングにシャフトによって結合されているシャフト結合部と、を備え、
前記車両の傾きの前記変化及び加速度の前記変化によって、前記レバー結合部が、前記センサハウジングに結合された回動シャフトを中心にして回動し、前記パイロットレバーを前記カバーの外に移動させる、請求項1に記載の車両用センサデバイス。
【請求項3】
前記パイロットレバーが、
前記カバーに形成された貫通孔に摺動可能に結合された本体部と、
前記レバー結合部の内部の空間に挿入されている球状部と、
前記本体部と前記球状部とを接続する接続部と、を備え、
前記レバー結合部の上端には、前記パイロットレバーの接続部が回動可能に結合されているスリットが、予め設定された長さだけ下方に切開されている、請求項2に記載の車両用センサデバイス。
【請求項4】
前記センサハウジングが、上面が開放された円筒状に形成されて、前記センサハウジング内に設置空間が形成され、前記ボールが、前記設置空間内に設置され、前記車両の傾斜の変化及び加速度の変化に応じて移動し、
前記センサハウジングの両側には、前記本体及び前記カバーに回動可能に結合された第1結合部及び第2結合部が形成され、
前記センサハウジングの一方の側には、前記シャフト結合部を外部に引き出すための引出孔が形成され、
前記引出孔の両側には、一対のシャフト支持部がそれぞれ設けられ、前記回動シャフトの両端が、前記シャフト支持部に結合されて、前記シャフト支持部上に支持されている、請求項2に記載の車両用センサデバイス。
【請求項5】
前記本体が、その内側面に、前記第1結合部に結合されている回動シャフト部と、
前記センサハウジングの前後方向への回動角度を制限する角度制限部と、が設けられ、
前記第1結合部には固定突起が形成され、
前記角度制限部が、前記固定突起の前方回動角度を制限する第1ストッパーと、
前記固定突起の後方回動角度を制限するための第2ストッパーと、を備え、
前記第1ストッパーの位置及び前記第2ストッパーの位置が、シートの背もたれの回動角度に対応して設定されている、請求項4に記載の車両用センサデバイス。
【請求項6】
前記車両用センサデバイスが、シートの背もたれの傾きの変化に応じて前記本体に結合された前記センサハウジングが回動しても前記パイロットレバーと前記センサレバーとの接続を維持して、前記背もたれの全ての角度範囲で、正常動作が可能である、請求項2に記載の車両用センサデバイス。
【請求項7】
車両用センサデバイスを装備したシートベルトリトラクタであって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の構成を有して、車両の傾きの変化及び加速度の変化を感知する車両用センサデバイスと、
シートベルトウェビングが巻かれるスピンドルを有するスピンドルデバイスと、
車両衝突時に、前記シートベルトウェビングが抜けるのを防止する、ロッキング動作を実行するロッキングデバイスと、を含み、
前記パイロットレバーが、感知された前記車両の傾きの前記変化及び加速度の前記変化に応じて、直線的に往復運動して、前記ロック装置と係合又はそれから係合解除される、シートベルトリトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートベルトリトラクタに関し、より具体的には、車両の傾き及び加速度の変化を感知してシートベルトの抜けを防止する車両用センサデバイス、並びにこれを使用するシートベルトリトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両は、乗員の安全性を確保するためにシートベルト安全装置をシートに備えている。
【0003】
このシートベルト安全デバイスは、乗員を固定するための帯状のシートベルトウェビング(以下、「ウェビング」と称される)がスプールに巻き取られるか、又は引き出される(抜ける)ことを可能にするように作動するリトラクタと、ウェビングの一端に固定されたタングが取り外し可能に挿入されるバックルとを含む。
【0004】
リトラクタは、車両が車両事故によって突然停止又は加速するとき、シートベルトを着用した乗員が駆動慣性によって前方に放り出される、又はシートから引き離されることを防止する。係るリトラクタとしては、乗員がシートベルトを着用している通常の状態では、ウェビングの抜けを許容するが、車両衝突によってウェビングが抜ける加速度、又は車両の傾きが変化したことを検出すると、それ以上のウェビングの抜けを防止する装置、並びにウェビングのたるみ、又は垂れ下がり、つまりウェビングのたるみを低減する緊急用張力付与装置、及びプレテンション装置があり得る。
【0005】
例えば、以下の特許文献1及び特許文献2では、シートベルトウェビングの巻き取る動作及び巻きを戻す動作を制御するリトラクタ技術が開示されている。
【0006】
一方、車両衝突が発生したとき等、所定の値を超える加速度がリトラクタに水平方向で印加された場合、あるいは車両の傾きが変化した場合、加速度、又は傾きを検出する車両センサをリトラクタに適用してシートベルトのロッキングデバイスを動作させることで、シートベルトの抜けを防止する。
【0007】
慣性部材又は独立した慣性部材としてボールを使用する車両センサが、一般に当該技術分野で既知である。
【0008】
例えば、車両センサは、車両の通常のウェビングの減速度よりも高い減速度、又は傾きが車両にかかる危険な状況で動く慣性部材と、慣性部材に動かされてシートベルトリトラクタのスプールとともに回転する、制御ディスクの外歯と相互作用するセンサレバーとを備える。
【0009】
このようなシートベルトリトラクタは、車体、例えば、車両のセンターピラー、シートの背もたれ、リヤピラーなどに装着されることがある。したがって、センターピラー、シートの背もたれ、リヤピラーなどの構造に応じてシートベルトリトラクタの装着姿勢が多様に変更されることがある。すなわち、シートベルトリトラクタは、必ずしも水平状態で装着されるとは限らず、水平状態から左右方向又は前後方向に所定角度だけ傾いた状態で装着されることがある。
【0010】
とりわけ、シートベルトリトラクタがシートの背もたれに設置されている場合、背もたれの回動に応じてシートベルトリトラクタの傾きを変えることができる。
【0011】
しかしながら、上記のように、関連技術のシートベルトリトラクタの姿勢が特定の範囲を超えて変化すると、加速度及び傾きを適切に検出することができない。
【0012】
例えば、車両センサを有するシートベルトリトラクタが水平状態から特定の範囲を超えて傾いた姿勢になると、制御ディスクと車両センサのセンサレバーとの間の距離が過度に近くなり、その結果、センサレバーが敏感に動作して、ロッキング動作を適切に実行できなくなる。
【0013】
更に、車両センサを有するシートベルトリトラクタがシートの背もたれに取り付けられ、シートの背もたれが車両の前方に傾いていると、車両センサのセンサレバーが制御ディスクの外歯に引っ掛かり、スプールの回動が制限される。
【0014】
このため、乗員がシートベルトを着用しようとしても、スプールの回動が制限されるために、シートベルトを着用できない場合がある。
【0015】
上記の問題を解決するために、本発明の出願人は、以下の特許文献3における、固定構造が改善された車両センサを有するシートベルトリトラクタを開示する特許出願を提出しており、現在登録済みである。
【0016】
一方、最近の自律走行車両の開発に伴い、車両に適用されるシート及びシートベルトリトラクタの体積を最小化する技術が開発されている。
【0017】
更に、シートと一体化された一体型シートベルト(ベルトインシート(belt in seat、BIS))が適用される場合もある。
【0018】
関連技術のシートベルトリトラクタの車両センサでは、内部に重錘を有するジンバルを適用することにより、車両の傾きを測定する。
【0019】
係る車両センサは、シートに設けられた背もたれの角度が変化しても、車両の傾きを測定することができる。
【0020】
しかし、関連技術のシートベルトリトラクタが設置されたシート、例えば、背もたれの回動角度が所定の角度範囲を超えると、ジンバルに接続するセンサレバーがパイロットレバーを適切に制御できなくなり、正常な動作ができなくなるという問題が起こる場合がある。
【0021】
したがって、背もたれの回動が原因で生じる異常な動作範囲を最小限に抑えることで、正常に動作できる角度範囲を広げられる車両センサを使用するシートベルトリトラクタの開発が、求められている。
【0022】
(特許文献1)米国特許第6,499,554号(2002年12月31日登録済み)
(特許文献2)米国特許第6,443,382号(2002年9月3日登録済み)
(特許文献3)韓国特許登録第10-1766844号(2017年8月9日発行済み)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本開示の目的は、上述の課題を解決することであり、車両の傾きの及び加速度の変化を感知するための車両用センサデバイス、及びこれを使用するシートベルトリトラクタを提供することである。
【0024】
本開示の別の目的は、背もたれの回動角度及び設置角度に関わらず、パイロットレバーを制御することにより、正常に動作できる角度範囲を広げられる車両用センサデバイス、並びにこれを使用するシートベルトリトラクタを提供することである。
【0025】
本開示の更に別の目的は、1つのボールを適用することにより、車両の傾き及びシートの背もたれの角度を検出可能とする車両用センサデバイス、及びこれを使用するシートベルトリトラクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するために、本開示に係る車両用センサデバイスは、外観を形成する本体と、本体の1つの開放表面に結合するカバーと、本体の設置角度及び背もたれの傾きに応じてよって回動可能に、本体に設置されるセンサハウジングと、センサハウジングの内部に設置されて、車両の傾き及び加速度の変化を感知するボールと、ボールの上部に配設され、一端がセンサハウジングに回動可能に結合されるセンサレバーと、を備え、センサレバーは、ボールの移動による回動動作によってロッキングデバイスに備えられたパイロットレバーを直線的に往復運動させ得る。
【0027】
更に、上記の目的を達成するために、本開示に係る車両用センサデバイスを装備するシートベルトリトラクタは、車両の傾き及び加速度の変化を感知する車両用センサデバイスと、シートベルトウェビングが巻かれるスピンドルを含むスピンドルデバイスと、車両衝突時にシートベルトウェビングが抜けるのを防止するロッキング動作を実行するロッキングデバイスと、を含み得る。また、車両の傾き及び加速度の変化が感知されたことに基づいて、パイロットレバーをロッキングデバイスとの係合又はそれから係合解除するように、直線的に往復運動させ得る。
【0028】
発明の効果
上述したように、本発明に係る車両用センサデバイス及びこれを使用したシートベルトリトラクタは、ボール及びセンサハウジングを用いて、車両の傾き及び加速度の変化、並びに背もたれの傾きの変化を感知し得るが、更にセンサレバーを回動させて、パイロットレバーを制御し得る。
【0029】
すなわち、本発明によれば、ボールの上部にセンサレバーが設置され、車両の加速度及び傾斜度の変化によるボールの移動によってセンサレバーがセンサハウジングに結合された回動シャフトを中心に回動することによって、センサレバーに接続されたパイロットレバーが直線的に往復運動し得る。
【0030】
したがって、本開示では、パイロットレバーをカバーの外側に突出させ、パイロットレバーをロッキングデバイスと係合又はそれから係合解除させることによって、ウェビングの抜けやすさを制御し得る。
【0031】
特に、本発明によれば、パイロットレバーに球状部が設けられ、センサレバーの上部に回動可能に結合されることにより、シート背もたれの角度を調節することにより、センサデバイスが回動され、配設される角度に関わらず、パイロットレバーが直線的に往復運動するように正常に制御し得る。
【0032】
すなわち、本発明によれば、シートの背もたれの角度を基準位置に関して前方10°~後方90°の範囲内で調節することによって、変化するセンサデバイスの配置角度に応じてパイロットレバーを正常に制御し得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、関連技術のシートベルトリトラクタの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の好ましい一実施形態に係る車両用センサデバイスを使用するシートベルトリトラクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2で示すシートベルトリトラクタの部分分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4で示すセンサデバイスの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4で示すセンサデバイスの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、センサデバイスが設置されたリトラクタの回動動作を説明するための作動状態を示す図である。
【
図8】
図8は、レトラクタに設置されたセンサデバイスの断面図である。
【
図9】
図9は、ボールの移動によるセンサレバーの回動動作を説明するための作動状態をそれぞれ示す図である。
【
図10】
図10は、ボールの移動によるセンサレバーの回動動作を説明するための作動状態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示の好ましい実施形態による車両用センサデバイス及びそれを使用するシートベルトリトラクタついて、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
本開示の好ましい実施形態に係るシートベルトリトラクタの構成について説明する前に、
図1を参照しながら、関連技術に係るシートベルトリトラクタの構成について、概略的に説明する。
【0036】
図1は、関連技術のシートベルトリトラクタの一例を示す図である。
【0037】
図1で見られるように、関連技術のシートベルトリトラクタ1は、シートベルトウェビング(以下、「ウェビング」と称する)2が巻かれたスピンドル3と、車両の傾きを検出するセンサユニット4と、車両衝突時にウェビング2を巻くことでたるみを減らす緊急用張力付与ユニット5と、車両の通常運転中にはウェビング2を滑らかに引き出し、車両衝突直前にウェビング2を巻くことでたるみを減らすプレテンションユニット6とを、含み得る。
【0038】
センサユニット4は、車両衝突が原因で生じる、ウェビングが引き出される加速度の変化、又は車両の傾きの変化を検出する。
【0039】
緊急用張力付与ユニット5は、車両衝突を検出した検出信号に応じて内部に火薬を埋め込んだインフレータ(図示せず)を動作させ、発生したガスの圧力を使用することによりスピンドル3にウェビング2を巻くことができる。したがって、緊急用張力付与ユニット5は、車両衝突時にウェビング2を巻くことでウェビング2のたるみを減らし、乗員が受ける傷害の度合を抑え得る。
【0040】
車両に適用されたセンサを通じて、車両衝突が予測された場合、プレテンションユニット6は、回転及び逆回転に対応したモータを動作させることによりスピンドルにウェビング2を巻くことができる。すなわち、プレテンションユニット6は、車両の正常走行時には、事故が発生しなくても、車両のより強い加速又は減速が発生するまで、着用されたウェビング2の張力を維持してウェビング2が緩むことを防止することができ、車両の衝突直前にウェビング2を巻き取ることによりウェビング2のたるみを減らすことによって乗員の傷害の度合を抑え得る。
【0041】
ここで、スピンドル3は固定フレーム7の内側に設置され、センサユニット4、緊急用張力付与ユニット5、及びプレテンションユニット6は固定フレーム7の両側に配設され、更に、各ユニットの外側には左右のハウジング8、9が結合している。
【0042】
すなわち、それぞれのユニット4、5、6は、スピンドル2の横方向に沿って両側に配設されている。
【0043】
上述した関連技術のシートベルトリトラクタ1において、スピンドルは、シートの背もたれ内に、幅方向つまり左右方向に沿って、設置されている。それ故、スプール上で巻かれているウェビング2の長さが長くなると、前後方向の厚さ(以下、「厚さ」と称する)も増すので、スリムシートの背もたれにシートベルトリトラクタを適用しにくくなるという問題があった。
【0044】
この問題を解決するために、本開示は、ウェビングが巻かれたスピンドルの設置方向を回動させることで、シートベルトリトラクタの厚みを最小限に抑え、ひいてはシートベルトリトラクタをスリムシートに適用する。
【0045】
これとともに、本開示は、ジンバルの回動角度に応じて生じる、センサレバーとパイロットレバーとの間の接続が不安定になるという問題を、車両用センサデバイスの構造を強化することで解決することができる。
【0046】
以後、本開示の好ましい一実施形態に係る車両用センサデバイスを使用したシートベルトリトラクタの構成について、
図2~
図3を参照しながら説明する。
【0047】
以下の説明では、シートを基準にしてステアリングホイールが設置されている方向、車両の移動方向を「前方方向」、その反対方向を「後方方向」と称する。更に、「左側」、「右側」、「上向き方向」、及び「下向き方向」等の方向を示す用語は、上述した前方方向及び後方方向を基準としたそれぞれの方向を示すように定義される。
【0048】
したがって、各図において、X軸方向が前方向に対応し、Y軸方向が右側に対応し、Z軸方向が上方向に対応する。
【0049】
図2は、本開示の好ましい一実施形態に係る車両用センサデバイスを使用するシートベルトリトラクタの斜視図であり、
図3は、
図2で示すシートベルトリトラクタの部分分解斜視図である。
【0050】
本実施形態において、シートへと一体的に取り付けられる一体型シートベルト(BIS)に適用されるシートベルトリトラクタの構成について説明する。
【0051】
本開示がこれに限定されるものではないことは言うまでもなく、一体型シートベルトだけでなく通常の車両、又は自律走行車にも適用できるよう、様々な構造及び形状のシートベルトリトラクタが提供され得るということに留意されたい。
【0052】
図2と
図3で見られるように、本開示の好ましい一実施形態に係る車両用センサデバイスを使用するシートベルトリトラクタ10は、スピンドルデバイス20、車両用センサデバイス(以下、「センサデバイス」と称する)30、及びロッキングデバイス40を含み得る。
【0053】
これらとともに、シートベルトリトラクタ10は、車両衝突の直前にウェビング21を巻くことによってたるみを減らすプレテンション装置も更に含み得る。
【0054】
スピンドルデバイス20及びセンサデバイス30は、シートベルトリトラクタ10を構成する基本モジュールであり、別個のモジュールとして製造、組み立て、あるいは1つのモジュールに統合して設けることもできる。
【0055】
スピンドルデバイス20は、ウェビング21が巻かれるスピンドル22を備え、スピンドルデバイス及びセンサデバイスはハウジング23内に設置され得る。
【0056】
センサデバイス30は、ウェビング21が引き出される加速度の変化を検出する加速度センサ、又は車両の傾きの変化を検出する傾きセンサを含み得る。
【0057】
本実施形態において、車両の傾きの変化を感知する傾きセンサを使用するセンサデバイス30の構成について、
図4~
図6を参照しつつ詳細に説明する。また、センサデバイス30は、車両の傾きの変化だけでなく加速度の変化を感知してもよい。
【0058】
図4は、
図2で示すセンサデバイスの拡大図であり、
図5及び
図6は、
図4で示すセンサデバイスの分解斜視図である。
【0059】
本実施形態において、
図2~
図3で示したシートベルトリトラクタの構成に適用されるセンサデバイスの構成について説明する。
【0060】
本開示が上記構成に限定されるものではないことは言うまでもなく、本開示は、
図1で見られるようなシートベルトリトラクタ等の様々な構成を有するシートベルトリトラクタに適用できるよう、変更できるということに留意されたい。
【0061】
図4~
図6に示すように、本発明の好ましい一実施形態によるシートベルトリトラクタ10に適用される車両用センサデバイス(以下、「センサデバイス」という)30は、外観を形成する本体31と、本体31の開放された一面に結合されるカバー32と、本体31の設置角度及び背もたれの傾きによって本体31内に回動可能に設置されるセンサハウジング33と、センサハウジング33の内部に設置され、センサデバイス30が設置された車両の傾き及び加速度の変化を感知するボール34と、ボール34の上部に配設され、一端がセンサハウジング33に回動可能に結合され、ボール34の移動による回動作用によってパイロットレバー41を移動させるセンサレバー35と、を備える。
【0062】
本体31は、1つの開放表面を有し、ある側から見た断面が実質的に四角形又は三角形である、円筒形状に形成され得る。
【0063】
一対の固定突起部311は、本体31の上端及び下端からそれぞれ突出し、ボルトなどで締結して本体31をスピンドルデバイス20にそれぞれ固定することができる。
【0064】
カバー32の一面には、縁部に沿って本体31に向かって結合リブ321が突設され、本体31の開口部の縁部には、開口部の外面から段差が形成されて結合リブ321と結合される結合凹部312が形成され得る。
【0065】
カバー32の前端には、本体31に向かって結合突起部322が突設され、本体31の前端には、結合突起部322と結合される結合凹部313が形成され得る。
【0066】
貫通孔部323は、パイロットレバー41が貫通して直線的に往復運動するようにカバー32から本体31に向かって突出してもよい。
【0067】
本体31及びカバー32は、互いに結合されたままで、スピンドル22の設置方向、つまりX軸方向に沿って配設され得る。
【0068】
パイロットレバー41は、センサレバー35の回動動作によって、Y軸方向に沿って直線的に往復運動する。
【0069】
つまり、パイロットレバー41が
図5で見て右側に移動すると、パイロットレバー41の右端が、ロッキングデバイス40に設けられたステアリングディスク(図示せず)の外周上に形成された複数の突起部のいずれか1つに係合し、ロッキングデバイス40は、ウェビング21が抜けないよう、ロッキング動作を行う。
【0070】
一方、パイロットレバー41が左側に移動すると、パイロットレバー41とロッキングデバイス40が互いから係合解除してウェビング21を自由に引き出し得る。
【0071】
センサハウジング33は、センサハウジング33内部に設置空間が形成されるように上面が開放された実質的に円筒状に形成され得るが、ボール34は、設置空間内に設置され、車両の傾きの変化に応じて移動する。センサハウジング33の下面は、ボール34の下部に対応するように、下方に凸状に湾曲していてもよい。
【0072】
センサハウジング33の上端の左側及び右側には、本体31の回動シャフト部314が結合される第1結合部331と、カバー32の貫通孔部323に結合される第2結合部332とが、それぞれ設けられ得る。
【0073】
したがって、センサハウジング33は、第1結合部331及び第2結合部332を基準として前後方向に回動動作を行うことができる。
【0074】
第1結合部331は、内部に回動シャフト部314が結合され得るが、更に、回動シャフト部314の外径に対応する内径を有し得る。
【0075】
第2結合部332は、内部に貫通ホール部323が結合され得るが、貫通ホール部323の外径に対応する内径を有し得る。
【0076】
ここで、回動シャフト部314は、本体31の左側壁の内面からカバー32に向かって突出しており、センサハウジング33を、その周りに回動させるための回動シャフトとして機能する。
【0077】
回動シャフト部314の近傍には、センサハウジング33の回動角度を制限する角度制限部315が形成され得る。
【0078】
角度制限部315は、回動シャフト部314を中心に回動するセンサハウジング33の前方回動角度を制限する第1ストッパー316と、センサハウジング33の後方回動角度を制限する第2ストッパー317とを含み得る。
【0079】
ここで、第1ストッパー316の位置及び第2ストッパー317の位置は、センサハウジング33の回動角度を背もたれの回動角度に制限するように設定され得る。
【0080】
例えば、背もたれの上端は、背もたれの下端を基準に前方及び下方に約10°回動し、後方及び下方に最大約90°回動し得る。
【0081】
したがって、第1ストッパー316は、センサハウジング33の第1結合部331の下端に形成された固定突起333が前方に約10°回動した位置に形成され、第2ストッパー317は、固定突起333が後方に約90°回動した位置に形成され得る。
【0082】
しかし、本開示はこれに限定されるものではなく、第1ストッパー及び第2ストッパーの位置を調節することによって、回動角度を多様に調節し得る。
【0083】
例えば、第1結合部の固定突起が前方に約90°回動し得るように、第1ストッパーが、約90°回動した位置に形成され得ると、本開示を変更してもよい。
【0084】
また、本実施形態では、センサハウジング33が回動動作を行うということを例示したが、実際には、本体31及びカバー32が、背もたれの回動角度に応じて回動動作を行うことができ、センサハウジング33は、ボール34の重さによって常に垂直な位置にとどまるとしてもよい。
【0085】
ボール34は、センサハウジング33の内部の設置空間に配設され、設置空間に対応する直径を有し、所定の重さを有するように設けられ得る。
【0086】
したがって、ボール34は、センサハウジング33の内部に設置された状態で、車両の傾きの変化に応じて前後方向及び左右方向などの多様な方向に移動して傾きの変化を感知することができる。
【0087】
センサレバー35は、ボール34の上部に装着された状態で、車両の傾きの変化によってボール34が左右方向に移動することによって、センサハウジング33に結合された一端を中心に左右方向に回動し得る。
【0088】
センサレバー35は、ボール34の上部に装着される装着部36と、装着部36の上部に設けられてパイロットレバー41に結合されるレバー結合部37と、レバー結合部37から一方の側に延びて、センサハウジング33にシャフトを介して結合されるシャフト結合部38と、を含み得る。
【0089】
装着部36は、実質的に円板状に形成され、装着部36の下面は、ボール34の上端に対応して上方に凹むように湾曲していてもよい。
【0090】
レバー結合部37は、装着部36の上面から上方に延びてもよい。
【0091】
レバー結合部37は、実質的に円筒状に形成されてもよく、それによって、パイロットレバー41の先端に形成された球状部43が結合される空間を提供するようになっていてもよい。
【0092】
すなわち、パイロットレバー41は、カバー32の貫通孔部323に摺動可能に結合される本体部42と、レバー結合部37の内部空間に挿入される球状部43と、本体部42と球状部43とを接続する接続部44と、を含むことができる。
【0093】
本体部42は、貫通孔部323に形成される貫通孔の形状に対応するように、断面が実質的に
【0094】
【数1】
形状に形成されてもよい。このため、パイロットレバー41は、センサレバー35に結合されているが、センサレバー35がセンサハウジング33とともに前後方向に回動してもセンサレバー35とともに回動はしない。
【0095】
接続部44は、本体部42の幅及び高さより小さい幅及び高さを有する、実質的に棒状に形成されてもよい。
【0096】
したがって、レバー結合部37の内部空間は、パイロットレバー41の球状部43の外径と同一又は若干大きい内径に形成されてもよい。
【0097】
また、レバー結合部37の上端には、パイロットレバー41の接続部44が回動可能に結合されているスリット371が予め設定された長さだけ下方に切開される。
【0098】
シャフト結合部38は、レバー結合部37及び装着部から一方側に延長され、
図6で見ると、シャフト結合部38は、右側下方に延長され、下端に回動シャフト382が結合されるようにシャフト結合孔381が形成され得る。
【0099】
ここで、センサハウジング33には、シャフト結合部38を外部に引き出すための引出孔334が形成され得るが、引出孔334の両側、すなわち、前方及び後方には、それぞれ、回動シャフト382の両端が結合されて支持される一対のシャフト支持部335が設けられ得る。
【0100】
一方、シャフト結合部38は、レバー結合部37及び装着部36から右下に向かって凸となる円弧状に形成されてもよく、又はボールの形状に対応するように傾斜して形成されてもよい。
【0101】
上述のように構成されたセンサレバー35は、ボール34の全方向、すなわち前後方向、左右方向及び上方向への移動によって、回動シャフト382を基準として左右方向への回動動作を行い得る。したがって、センサレバー35の上端に結合されたパイロットレバー41は、センサレバー35の回動動作によって左右方向に直線的に往復運動し得る。
【0102】
上述したように、本発明に係る車両用センサデバイスは、シートの背もたれの傾きの変化に応じて本体に結合されたセンサハウジングが回動してもパイロットレバーの球面部とセンサレバーのレバー結合部との接続を維持することができるので、背もたれの全ての角度範囲で正常動作が可能である。
【0103】
以後、本開示の好ましい一実施形態に係る車両用センサデバイスの動作方法について、
図7~
図10を参照しつつ詳細に説明する。
【0104】
図7は、センサデバイスがその中に設置されたリトラクタの回動動作を説明するための作動状態を示す図であり、
図8は、リトラクタ内に設置されたセンサデバイスの断面図である。また、
図9及び
図10は、ボールの移動によるセンサレバーの回動動作を説明するための作動状態をそれぞれ示す図である。
【0105】
図7及び
図8に示すように、センサデバイス30は、リトラクタ10内に設置された状態で、背もたれの前方回動動作及び後方回動動作によって、前方方向及び後方方向に回動し得る。
【0106】
すなわち、リトラクタ10は、背もたれの前方回動動作によって前方に約10°回動し、背もたれの後方回動動作によって後方に最大約90°回動し得る。
【0107】
したがって、センサデバイス30の本体31及びカバー32は、背もたれ及びリトラクタ10の前後回動動作によって前方に約10°回動し、最大約90°回動し得る。
【0108】
この場合、センサデバイス30の内部に回動可能に設置されたセンサハウジング33は、常に垂直な姿勢を維持し得る。
【0109】
すなわち、センサハウジング33とその内部に設置されたボール34及びセンサレバー35は、本体31及びカバー32の内部で第1結合部331及び第2結合部332を中心に回動し、常に直立した姿勢を維持し得る。
【0110】
一方、
図9に示すように、車両の傾斜が変化する前には、センサレバー35の装着部36がボール34の上部に装着されて水平状態を維持し得る。
【0111】
これにより、本体部37の上端に球状部43が結合されたパイロットレバー41は、カバー32から本体31側、すなわち左側に移動し、この状態を維持する。
【0112】
上述のように、パイロットレバー41が左側に移動すると、パイロットレバー41とロッキングデバイス40が互いの係合を解除し、ウェビング21を自由に引き抜くことができるようになる。
【0113】
一方、車両の傾きが変化して、
図10に示すように、ボール34が一方の側、例えば左側に移動すれば、センサレバー35はセンサハウジング33に結合された回動シャフト382を中心に反時計方向に回動してパイロットレバー41を右側に移動させる。
【0114】
つまり、センサレバー35の上端に結合されたパイロットレバー41は、カバー32上に形成された貫通孔323を通過してカバー32の外側、つまり、右側に移動し、そこから突出する。
【0115】
上述のように、パイロットレバー41がカバー32の外に突出すると、パイロットレバー41の右端がロッキングデバイス40のステアリングディスクの外周上に形成された複数の突起部のいずれか1つに係合することで、ロッキングデバイス40は、ウェビング21が抜けないようにロッキング動作を行う。
【0116】
上述したように、本発明は、ボールとセンサハウジングを用いて車両の傾き及び加速度の変化と背もたれの傾きの変化を感知し、センサレバーを回動させてパイロットレバーを制御し得る。
【0117】
すなわち、本発明によれば、ボールの上部にセンサレバーが設置され、車両の加速度及び傾斜度の変化によるボールの移動によってセンサレバーがセンサハウジングに結合された回動シャフトを中心に回動することによって、センサレバーに接続されたパイロットレバーが直線的に往復運動し得る。
【0118】
したがって、本開示では、パイロットレバーをカバーの外側に突出させ、パイロットレバーをロッキングデバイスと係合又はそれから係合解除させることによって、ウェビングの抜けやすさを制御し得る。
【0119】
特に、本発明によれば、パイロットレバーに球状部が設けられ、センサレバーの上部に回動可能に結合されることにより、シートの背もたれの角度を調節することにより、センサデバイスが回動され、配設される角度に関わらず、パイロットレバーが直線的に往復運動するように正常に制御し得る。
【0120】
すなわち、本発明によれば、シートの背もたれの角度を基準位置に関して前方10°~後方90°まで、又は前方90°~後方90°までの範囲内で調節することによって、変化するセンサデバイスの配置角度に応じてパイロットレバーを正常に制御し得る。
【0121】
以上、上記実施形態に基づいて、本願の発明者らによってなされた発明を具体的に説明してきたが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的本質の範囲内で様々な変更が可能である。
【0122】
産業上の適用可能性
本開示は、車両の加速度及び傾きの変化を感知するセンサデバイスにセンサレバーを設置し、更に、車両の加速度及び傾きの変化に応じたボールの移動により、回動シャフトを中心にセンサレバーを回動させることで、センサレバーに接続したパイロットレバーを移動させるシートベルトリトラクタの技術に適用される。
【国際調査報告】