(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】硬化性シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240614BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240614BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240614BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240614BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20240614BHJP
C08K 5/057 20060101ALI20240614BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20240614BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20240614BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
C08K3/26
C08K9/04
C08K5/057
C08K5/101
C08K5/5419
C09K3/10 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572577
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2021099606
(87)【国際公開番号】W WO2022257095
(87)【国際公開日】2022-12-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】スー、フォンイー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ペン
(72)【発明者】
【氏名】グオ、イー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チュン ミン
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA03
4H017AA25
4H017AA27
4H017AB15
4H017AC03
4H017AD01
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002DE236
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002EC077
4J002EH079
4J002EX038
4J002EX039
4J002FD016
4J002GJ02
(57)【要約】
本開示は、現場硬化ガスケット(CIPG)の製造における使用に好適な硬化性シリコーンゴム組成物、当該組成物の硬化から得られるシリコーンエラストマー、及び当該硬化性シリコーンゴム組成物から現場硬化ガスケットを製造する方法に関する。1分子当たり少なくとも2つのトリアルコキシシリル基、少なくとも2つのジアルコキシアルキルシリル基、又は2つ以上のトリアルコキシシリル基とジアルコキシアルキルシリル基との混合物を有する化合物であって、
(i)(R10)z(R11)3-zSi-(W)-Si(R11)3-z(R10)z
[式中、各R11は、同じか又は異なり、かつ炭素数1~6のアルコキシ基であり;各R10は、同じか又は異なり、かつR11であるか、又は炭素数1~6のアルキル基であり、zは、0又は1であり、Wは、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキレンである];又は
(ii)1,3,5-トリス[3-((R10)z(R11)3-zSi)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
[式中、R11、R10及びzは、上記定義の通りであり、Dは、炭素数1~6のアルキレン基である]から選択される、化合物を含めることは、アルミニウムへの良好な接着性及び良好な圧縮永久歪の両方を示すCIPGを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーンゴム組成物であって、以下の成分:
a)1分子当たり、アルケニル基又はアルキニル基から選択される少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンと;
b)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と;
c)少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は石英、珪藻土及び炭酸カルシウムから選択される1つ以上の非補強性充填剤又は両方の混合物であって、存在する各充填剤は疎水化処理されている、少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は1つ以上の非補強性充填剤又は両方の混合物と;
d)白金族金属又はその化合物を含むか又はそれからなるヒドロシリル化触媒と;
e)テトラアルキルチタネートであって、各アルキル基は同じか又は異なっていてもよく及び1~20個の炭素原子を有し、前記組成物の0.01~0.15重量%の量で存在する、テトラアルキルチタネートと;
f)アルキルポリシリケートであって、前記アルキル基は同じか又は異なっていてもよく及び1つの基当たり最大6個の炭素原子を含んでよく、前記組成物の0~2.5重量%の量で存在する、アルキルポリシリケートと;
g)前記組成物の0.1~2.5重量%の量で存在する、好適な(メタ)アクリレート化合物と、
h)1分子当たり少なくとも2つのトリアルコキシシリル基、少なくとも2つのジアルコキシアルキルシリル基、又は2つ以上のトリアルコキシシリル基とジアルコキシアルキルシリル基との混合物を有する化合物であって、
(i)(R
10)
z(R
11)
3-zSi-(W)-Si(R
11)
3-z(R
10)
z
[式中、各R
11は、同じか又は異なり、かつ炭素数1~6のアルコキシ基であり;各R
10は、同じか又は異なり、かつR
11であるか、又は炭素数1~6のアルキル基であり、zは、0又は1であり、Wは、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキレンである];又は
(ii)1,3,5-トリス[3-((R
10)
z(R
11)
3-zSi)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
[式中、R
11、R
10及びzは、上記定義の通りであり、Dは、炭素数1~6のアルキレン基である]から選択される、化合物と、を含む、硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
成分(h)が、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサンから選択され、及び/又は1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオンである、請求項1に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記組成物が、1つ以上の硬化抑制剤、金属不活性化剤及び/又は耐油剤を更に含む、請求項1又は2に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記金属不活性化剤が、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]であり、及び/又は前記耐油剤が、水酸化マグネシウムである、請求項3に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
成分c)が、少なくとも1つのシリカ補強性充填剤及び石英を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
上記硬化性シリコーンゴム組成物を硬化して得られる、硬化シリコーンゴム。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物の硬化生成物を含むか、又はそれからなる、現場硬化ガスケット。
【請求項8】
アルミニウム基材に接着された、請求項7に記載の現場硬化ガスケット。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を混合及び硬化することによる、硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法。
【請求項10】
前記シリコーンゴム組成物が、適切なアプリケーターから標的表面上へのシリコーンゴム組成物のビーズ又は糸として基材上に適用される、請求項9に記載の硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法。
【請求項11】
前記アプリケーターが、前記シリコーンゴム組成物の糸の導入を制御して、所望の形状を有し、廃棄物を最小限に抑えるガスケットを提供することができるように予めプログラムされたロボットアプリケーターである、請求項10に記載の硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法。
【請求項12】
前記方法が、ロボットアプリケーターを使用して前記組成物を適用するように設計された位置に各基材を輸送するコンベヤベルト上の予め規定された位置に標的基材を配置し、前記アプリケーターが予めプログラムされたパターンで組成物を適用し、次いで前記基材を前記コンベヤベルト上で120℃~180℃の所望の温度で2~20分間コンベヤオーブンの加熱ゾーンを通して輸送するように連続的である、請求項9~11のいずれか一項に記載の硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を混合及び硬化することによって得られるか若しくは得ることができる硬化シリコーンゴム、及び/又は請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を好適な基材上で混合及び硬化することによって得られるか若しくは得ることができる現場硬化ガスケット(CIPG)。
【請求項14】
ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後に、40%以下の圧縮永久歪を保持しながら、ASTM D816-82(2001年再承認)に従って測定されるラップせん断が1.5MPa超(>)であるようにアルミニウム基材に接着する硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物の、使用。
【請求項15】
空気、粉塵、騒音、液体、ガス状物質、若しくは汚れの吸収又は浸透を防止するための障壁として;音響減衰、振動減衰、衝撃吸収要素、防湿、化学的防護、及びエアシール、並びに/又は自動車用途のためのエアフィルター、オイルパンガスケット、オイルシールケースガスケット、オイルスクリーンガスケット、タイミングベルトカバー上部ガスケット、タイミングロッカーカバー下部ガスケットとして;防水コネクタ、エアコン、照明装置、電子部品等の電気機器用ガスケットとして使用するための硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物の、使用。
【請求項16】
前記自動車用途が、電動ビークル(EV)電池パック用ガスケット、EV電池用ガスケット、EVにおけるモーター制御ユニット用ガスケット、ハウジングシール、及び冷却剤領域シールから選択される自動車ガスケット用途を含む、請求項15に記載の硬化性シリコーンゴム組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、現場硬化ガスケット(CIPG)の製造における使用に好適な硬化性シリコーンゴム組成物、当該組成物の硬化から得られるシリコーンエラストマー、及び当該硬化性シリコーンゴム組成物から現場硬化ガスケットを製造する方法に関する。
【0002】
アルケニル及び/又はアルキニル基から選択される平均2つ以上の不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンポリマー、ケイ素結合水素(Si-H)基を含有するオルガノハイドロジェンシロキサン、並びに白金族含有触媒を含む、ヒドロシリル化又は付加硬化性液体シリコーンゴム組成物と呼ばれることが多い硬化性シリコーンゴム組成物は、周知であり、多種多様な用途に使用されている。しかしながら、そのような組成物は、組成物が硬化される基材に対して/その上に接着しにくいこともよく知られている。そのような組成物の基材への良好な接着性を得ようとして、多くの添加剤が開発されてきた。しかしながら、これらの添加剤の多くが接着性を得るために使用される場合、得られるエラストマーの圧縮永久歪(すなわち、特定の温度で特定の時間にわたって加えられた力を除去した後に残る永久変形)が著しく増加し、これは、低い圧縮永久歪を必要とする用途にとって明らかに問題である。例えば、現場硬化ガスケット(cured-in-place gasket)は、多種多様な自動車用途及び工業用途を封止する好ましい手段である。シリコーンゴム組成物は、通常、現場硬化ガスケットの場合、シリコーンゴム組成物のビード又は糸として、所望のガスケットのための型を効果的に作り出す適切なアプリケーターから標的表面上に適用される。使用されるアプリケーターは、シリコーンゴム組成物の糸の導入を制御して、所望の形状を有し、無駄を最小限に抑えるガスケットを提供することができるように予めプログラムされたロボットアプリケーターであってもよい。シリコーンゴム組成物が完全に導入されると、その場で硬化される。
【0003】
現場硬化ガスケット(CIPG)材料の調製におけるシリコーンゴム組成物は、通常、早期硬化を防止するために2成分組成物として貯蔵されるが、2成分が一緒に混合される場合、液体形態で適用される反応性混合物が、アプリケーターの汚染及び/又はブロッキングを防止するために十分に長い時間、液体状態のままであることが重要である。更に、硬化に続いて、得られたCIPGは、良好な熱安定性、低い圧縮永久歪、及び任意選択で低いデュロメータ(例えば、30~40ショアA)製品特性も有しながら、それが適用される基材への下塗りされていない結合を形成しなければならない。
【0004】
現場硬化ガスケット(CIPG)は、多種多様な自動車及び工業用封止用途において使用され、アルミニウム(電動ビークル(EV)モーター制御ユニット(MCU)デバイスにおける主要な基材の1つ)などの多種多様な金属製基材、コーティングされた金属製基材及び/又はプラスチック基材に接着することが必要とされ得る。CIPGは、例えば、自動車エンジンにおけるバルブカバー、ロッカーカバー、タイミングチェーンカバー、オイルパンなどのエンジン部品、並びに例えば、電動ビークル(EV)用の前述のモーター制御ユニット(MCU)デバイスにおけるハウジングシール及び冷却剤領域シール、更には様々な他の産業用シール用途の封止のために利用され得る。
【0005】
異なる部品間に形成される接合部での漏れを防止するためにガスケットが設けられるので、低い圧縮永久歪が必要とされる。低い圧縮永久歪は、ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後40%までの圧縮永久歪と見なされ、これは最大許容可能な結果である。アルミニウム基材への良好な接着性及び上記で定義された低い圧縮永久歪の両方を有するCIPGを特定する能力は、既存のCIPGシリコーンゴム組成物がどちらか一方を示すことはできるが、両方を示すことができないことを考えると、業界にとって長期的な問題であった。低圧縮永久歪、非スランプ、急速硬化のシリコーンゴム組成物が知られているが、アルミニウム基材とのそれらの接着は、特に低いショアA(例えば30~40)CIPG製品において安定ではない。接着促進剤パッケージ、例えば、ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート/γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アルミニウムアセチルアセトネート及びその溶媒-トルエン、テトラn-ブチルチタネート、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、メチルメタクリレート及び/又はテトラプロピルオルトシリケートを、様々な金属及びプラスチック基材への下塗りされていない接着のために使用することで、アルミニウム基材との安定した接着を達成することができるが、一方そのような接着促進剤の使用は、ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後に48%以上の範囲の許容できない高い値の圧縮永久歪をもたらす。上記を考慮すると、硬化時に、ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後に40%以下、代替的に39%以下の低い圧縮永久歪、及びアルミニウム基材との良好な接着を提供する、硬化性のシリコーン組成物を提供する機会が残っている。
【0006】
以下の成分を含む硬化性シリコーンゴム組成物が本明細書で提供される:
a)1分子当たり、アルケニル基又はアルキニル基から選択される少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンと;
b)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と;
c)少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は石英、珪藻土及び炭酸カルシウムから選択される1つ以上の非補強性充填剤又は両方の混合物であって、存在する各充填剤が疎水化処理されている、少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は1つ以上の非補強性充填剤又は両方の混合物と;
d)白金族金属又はその化合物を含むか又はそれからなるヒドロシリル化触媒と;
e)テトラアルキルチタネートであって、各アルキル基は同じか又は異なっていてもよく及び1~20個の炭素原子を有し、組成物の0.01~0.15重量%の量で存在する、テトラアルキルチタネートと;
f)アルキルポリシリケートであって、アルキル基は同じか又は異なっていてもよく及び1つの基当たり最大6個の炭素原子を含んでよく、組成物の0~2.5重量%の量で存在する、アルキルポリシリケートと;
g)組成物の0.1~2.5重量%の量で存在する、好適な(メタ)アクリレート化合物と、
h)1分子当たり少なくとも2つのトリアルコキシシリル基、少なくとも2つのジアルコキシアルキルシリル基、又は2つ以上のトリアルコキシシリル基とジアルコキシアルキルシリル基との混合物を有する化合物であって、
(i)(R10)z(R11)3-zSi-(W)-Si(R11)3-z(R10)z
[式中、各R11は、同じか又は異なり、かつ炭素数1~6のアルコキシ基であり;各R10は、同じか又は異なり、かつR11であるか、又は炭素数1~6のアルキル基であり、zは、0又は1であり、Wは、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキレンである];又は
(ii)1,3,5-トリス[3-((R10)z(R11)3-zSi)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
[式中、R11、R10及びzは、上記定義の通りであり、Dは、炭素数1~6のアルキレン基である]から選択される、化合物。
【0007】
また、本発明は、上記硬化性シリコーンゴム組成物を硬化して得られる硬化シリコーンゴムを提供する。
【0008】
また、本発明は、上記硬化性シリコーンゴム組成物を混合及び硬化することによって得られるか若しくは得ることができる硬化シリコーンゴム、及び/又は上記硬化性シリコーンゴム組成物を混合及び硬化することによって得られるか若しくは得ることができる現場硬化ガスケット(CIPG)に関する。上記の硬化性シリコーンゴム組成物の硬化生成物を含む硬化シリコーンゴム又は現場硬化ガスケット(CIPG)も提供される。
【0009】
以下の成分を含む硬化性シリコーンゴム組成物を混合及び硬化することによる、硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法が提供される:
a)1分子当たり、アルケニル基又はアルキニル基から選択される少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンと;
b)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と;
c)少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は石英、珪藻土及び炭酸カルシウムから選択される1つ以上の非補強性充填剤又は両方の混合物であって、存在する各充填剤が疎水化処理されている、少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は1つ以上の非補強性充填剤又は両方の混合物と;
d)白金族金属又はその化合物を含むか又はそれからなるヒドロシリル化触媒と;
e)テトラアルキルチタネートであって、各アルキル基は同じか又は異なっていてもよく及び1~20個の炭素原子を有し、組成物の0.01~0.15重量%の量で存在する、テトラアルキルチタネートと;
f)アルキルポリシリケートであって、アルキル基は同じか又は異なっていてもよく及び1つの基当たり最大6個の炭素原子を含んでよく、組成物の0~2.5重量%の量で存在する、アルキルポリシリケートと;
g)組成物の0.1~2.5重量%の量で存在する、好適な(メタ)アクリレート化合物と;h)1分子当たり少なくとも2つのトリアルコキシシリル基、少なくとも2つのジアルコキシアルキルシリル基、又は2つ以上のトリアルコキシシリル基とジアルコキシアルキルシリル基との混合物を有する化合物であって、
(i)(R10)z(R11)3-zSi-(W)-Si(R11)3-z(R10)z
[式中、各R11は、同じか又は異なり、かつ炭素数1~6のアルコキシ基であり;各R10は、同じか又は異なり、かつR11であるか、又は炭素数1~6のアルキル基であり、zは、0又は1であり、Wは、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキレンである];又は
(ii)1,3,5-トリス[3-((R10)z(R11)3-zSi)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
[式中、R11、R10及びzは、上記定義の通りであり、Dは、炭素数1~6のアルキレン基である]から選択される、化合物。
【0010】
ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後に40%以下、代替的に39%以下の圧縮永久歪を保持しながらアルミニウム基材に接着する硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造するための硬化性シリコーンゴム組成物の使用も提供される。
【0011】
驚くべきことに、上記組成物中に成分(h)を導入すると、アルミニウム基材に対する組成物の接着性が驚くほど改善されることが見出された。当該基材への接着、すなわち、アルミニウム基材へのCIPGの良好/安定な接着を可能にする能力(すなわち、ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後に40%以下、代替的に39%の圧縮永久歪を保持しながら、ASTM D 816-82(2001年再承認)に従ってその
図1のタイプIラップ試験片を使用して測定されるラップせん断が1.5MPa超(>))は、これまでの長期的な課題であった。通常、接着促進剤の添加は、良好/安定な接着をもたらすが、ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後に40%超、例えば48%以上の圧縮永久歪の大幅な増加を引き起こす。
【0012】
本明細書で言及されている全ての粘度測定は、別段指示がない限り25℃にて測定した。
【0013】
「ヒドロカルビル」は、置換又は非置換であり得る一価の炭化水素基を意味する。ヒドロカルビル基の具体的な例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
【0014】
「アルキル」は、非環状、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。「アリール」は、完全に不飽和の環状炭化水素基を意味する。「アラルキル」とは、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を意味する。
【0015】
「アルケニレン」とは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非環式の分岐又は非分岐の二価炭化水素基を意味する。「アルキレン」は、非環状、分岐状又は非分岐状の飽和二価炭化水素基を意味する。「アルキニレン」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する非環状、分岐状又は非分岐状の二価炭化水素基を意味する。「アリーレン」は、環状の完全不飽和二価炭化水素基を意味する。
【0016】
別の基、例えばヒドロカルビル基に関連して使用されている「置換されている」という用語は、別段指示がない限り、1個以上の水素原子が、ヒドロカルビル基において別の置換基で置き換えられていることを意味する。そのような置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子、例えば塩素、フッ素、臭素及びヨウ素、クロロメチル基、ペルフルオロブチル基、トリフルオロエチル基、及びノナフルオロヘキシル基などのハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル基及びカルボキシル基などの酸素原子含有基、が挙げられる。
【0017】
M、D、T及びQ単位は、概して、RuSiO(4-u)/2[式中、uは、M、D、T及びQに対してそれぞれ3、2、1及び0であり、Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基である]として表される。M、D、T、Qは、分子構造の残部に連結する、ケイ素原子に共有結合した1個の(モノ)、2個の(ジ)、3個の(トリ)又は4個の(クアッド)酸素原子を指定する。
【0018】
成分(a)
成分(a)は、1分子当たり、アルケニル基又はアルキニル基から選択される少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンである。代替的に、成分(a)は、1分子当たり少なくとも3つの不飽和基を有する。
【0019】
成分(a)の不飽和基は、成分(a)の末端、ペンダント、又はその両方の位置であってもよい。例えば、不飽和基は、アルケニル基及び/又はアルキニル基であってもよい。アルケニルは、ビニル基、アリル基、メタリル基、プロペニル基、及びヘキセニル基によって例示されるが、これらに限定されない。アルケニル基は、2~30個、代替的に2~24個、代替的に2~20個、代替的に2~12個、代替的に2~10個、代替的に2~6個の炭素原子を有してもよい。アルキニルは、エチニル基、プロピニル基、及びブチニル基によって例示されてもよいが、これらに限定されない。アルキニル基は、2~30個、代替的に2~24個、代替的に2~20個、代替的に2~12個、代替的に2~10個、代替的に2~6個の炭素原子を有してもよい。
【0020】
成分(a)は、式(I):
RaSiO(4-a)/2 (I)
[式中、各Rは独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族ヒドロカルビル基、又はオルガニル基(すなわち、官能基の種類とは無関係に、炭素原子において1つの自由原子価を有する、任意の有機置換基)から選択される]の複数の単位を有する。飽和脂肪族ヒドロカルビルは、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、並びにシクロヘキシルなどのシクロアルキル基によって例示されるが、これらに限定されない。不飽和脂肪族ヒドロカルビルは、上記のアルケニル基及びアルキニル基によって例示されるが、これらに限定されない。芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、及び2-フェニルエチルが例示されるが、それらに限定されない。オルガニル基としては、クロロメチル及び3-クロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基(フルオロ含有基を除く)、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基などの窒素含有基、ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基が例示されるが、それらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、ホウ素含有基が挙げられ得る。下付き文字「a」は0、1、2、又は3である。
【0021】
シロキシ単位は、上述したように、短縮(略記)命名法、すなわち、「M」、「D」、「T」、及び「Q」で記述され得る(シリコーン命名法についての更なる教示は、Walter Noll,Chemistry and Technology of Silicones,dated 1962,Chapter I,pages 1-9に見出され得る)。M単位は、式中、a=3であるシロキシ単位、すなわち、R3SiO1/2に相当し、D単位は、式中、a=2であるシロキシ単位、すなわち、R2SiO2/2に相当し、T単位は、式中、a=1であるシロキシ単位、すなわち、R1SiO3/2に相当し、Q単位は、式中、a=0であるシロキシ単位、すなわち、SiO4/2に相当する。成分(a)のポリジオルガノシロキサンは実質的に直鎖状であるが、ある割合で含有してもよいが、分子内での(上述したような)T単位の存在に起因していくらかの分岐があり得、したがって構造(I)におけるaの平均値は約2である。
【0022】
成分(a)上の典型的なR基の例としては、主にアルケニル、アルキニル、アルキル、及び/又はアリール基、代替的にアルケニル、アルキル、及び/又はアリール基が挙げられる。基は、ペンダント位置(D又はTシロキシ単位上)であってもよい、又は末端(Mシロキシ単位上)であってもよい。
【0023】
アルケニル基又はアルキニル基から選択される1分子当たり少なくとも2つの不飽和基以外の成分(a)に結合するケイ素結合有機基は、典型的には、1~10個の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基及び典型的には6~12個の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から選択され、これらは、非置換であるか、又は本発明の組成物の硬化を妨げない基、例えば、ハロゲン原子で置換される。ケイ素結合有機基の好ましい種は、例えば、メチル、エチル、及びプロピルなどのアルキル基、並びにフェニルなどのアリール基である。
【0024】
成分(a)は、例えばアルケニル基及び/又はアルキニル基を含有する、ポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はこれらのコポリマーから選択されてもよく(アルキルに対する言及は、2個以上の炭素を有するアルキル基を意味する)、任意の好適な末端基を有してよく、それらは、例えば、トリアルキル末端、アルケニルジアルキル末端 アルキニルジアルキル末端であってもよい、又は各ポリマーが1分子当たりアルケニル基及びアルキニル基から選択される少なくとも2つの不飽和基を含有するという条件で、任意のその他の好適な末端基の組み合わせで終端されてもよい。一実施形態では、このようなポリマーの末端基はシラノール末端基を有しない。
【0025】
したがって、成分(a)は、例えば、以下のものであってもよい:
ジアルキルアルケニル末端ポリジメチルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、ジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマー、ジアルキルビニル末端メチルフェニルポリシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、又はトリメチル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン。
【0026】
これらの実施形態では、25℃の温度で、成分(a)の一般に実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、典型的には流動性液体である。一般に、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、25℃で100~1,000,000mPa・s、代替的に100~100,000mPa・sの粘度を有する。粘度は、スピンドルLV-4(1,000~2,000,000mPa.sの範囲の粘度用に設計)を備えるBrookfield(登録商標)回転粘度計又は1000mPa・s未満の粘度についてはスピンドルLV-1(15~20,000mPa・sの範囲の粘度用に設計)を備えるBrookfield(登録商標)回転粘度計のいずれかを使用し、ポリマー粘度に従ってせん断速度を適合させて測定し得る。
【0027】
成分(b)
成分(b)は、1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物である。有機ケイ素化合物(b)は、下記の成分(d)によって触媒される、成分(a)中の不飽和基とのケイ素結合水素原子の付加反応によって、成分(a)を硬化させるための架橋剤として作用する。通常、成分(b)は、この成分の水素原子が成分(a)の不飽和基と十分に反応してネットワーク構造を形成し、それによって組成物を硬化させることができるように、3つ以上のケイ素結合水素原子を含有する。代替的に、成分(a)が1分子当たり2つ超(>)の不飽和基、代替的にアルケニル基を有する場合、成分(b)のいくつか又は全てが1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有していてもよい。
【0028】
成分(b)は、各分子が1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有するという条件で、シロキサン、例えばオルガノハイドロジェンシロキサン、又はシラン、例えばモノシラン、ジシラン、トリシラン、若しくはポリシランであってもよい。非環状ポリシラン及びポリシロキサンでは、ケイ素結合水素原子は、末端、ペンダント、又は末端及びペンダントの両方の位置に位置していてよい。シクロシラン及びシクロシロキサンは、典型的には、3~12個のケイ素原子、代替的に3~10個のケイ素原子、代替的に3~4個のケイ素原子を有する。
【0029】
成分(b)がシロキサンである場合、それはオルガノハイドロジェンシロキサンを含んでいてもよく、それはジシロキサン、トリシロキサン又はポリシロキサンであってもよい。オルガノハイドロジェンシロキサンは、成分(b)が、少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含む限り、M、D、T及び/又はQシロキシ単位の任意の組み合わせを含み得る。これらのシロキシ単位を様々な様式で組み合わせて、環状、直鎖状、分岐状、及び/又は樹脂状(三次元網目状)の構造を形成することができる。成分(b)は、M、D、T、及び/又はQ単位の選択に応じて、モノマー状、ポリマー状、オリゴマー状、直鎖状、分岐状、環式、及び/又は樹脂状であり得る。
【0030】
成分(b)の例としては、
(i)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(ii)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(iii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、
(iv)ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン環状コポリマー、
(v)(CH3)2HSiO1/2単位及びSiO4/2単位で構成されるコポリマー、
(vi)(CH3)3SiO1/2単位、(CH3)2HSiO1/2単位、及びSiO4/2単位で構成されるコポリマー、並びに
(vii)上記の(CH3)2HSiO1/2単位及び(R2Z)d(R3)eSiO(4-d-e)/2を含有するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
この成分の粘度は、特に制限されないが、粘度は、スピンドルLV-4(1,000~2,000,000mPa・sの範囲の粘度用に設計)を備えるBrookfield(登録商標)回転粘度計又は1000mPa・s未満の粘度についてはスピンドルLV-1(15~20,000mPa・sの範囲の粘度用に設計)を備えるBrookfield(登録商標)回転粘度計のいずれかを使用し、ポリマー粘度に従ってせん断速度を適合させることにより、典型的には、25℃で0.001~50Pa・sであり得る。
【0032】
成分(b)は、典型的には、成分(b)中のケイ素結合水素原子と、組成物中の全ての不飽和基のものとのモル比が、0.5:1~20:1、代替的に0.5:1~5:1、代替的に0.6:1~3:1となるような量で、添加される。この比が0.5:1未満である場合、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1を超える場合、加熱された場合に、硬化した組成物の硬度が増加する傾向がある。上記比率で記載された各基の量、例えばオルガノハイドロジェンポリシロキサン(b)のケイ素結合水素(Si-H)含量は、所望であれば、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して決定することができる。
【0033】
典型的には、成分(b)は、全組成物の0.5~10重量%の量で組成物中に存在し、この量は、成分(b)中のケイ素結合水素原子の総数の、成分(a)中の全てのアルケニル及びアルキニル基の総数に対する必要なモル比に応じて決定される。
【0034】
成分(c)
成分(c)は、少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は石英、珪藻土及び炭酸カルシウムから選択される1つ以上の非補強性充填剤(複数可)又は両方の混合物である。代替的に、成分(c)は、1つ以上の微粉化シリカ補強性充填剤と、石英、珪藻土及び炭酸カルシウムから選択される1つ以上の非補強性充填剤(複数可)であり、代替的に、成分(c)は、1つ以上の微粉化シリカ補強性充填剤及び石英である。上記の各選択肢の場合、存在するそれぞれの充填剤は疎水化処理されている。
【0035】
成分(c)が1つ以上の補強性充填剤を含む場合、補強性充填剤は、微粉化ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び/又は微粉化沈降性シリカによって例示され得る。
【0036】
沈降性シリカ、ヒュームドシリカ及び/又はコロイダルシリカが、典型的には少なくとも50m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)であり、代替的に、50~450m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する、代替的に50~300m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する比較的高い表面積から特に好ましく、典型的に使用される。これらの種類のシリカは全て市販されている。
【0037】
成分(c)のシリカ補強性充填剤(複数可)は本来親水性であり、それらを疎水性にするために処理剤で処理される。これらの成分(c)の表面改質された補強性充填剤は、表面処理により充填剤がポリジオルガノシロキサンポリマー(a)によって容易に湿潤することから、凝集せず、以下に記載のポリジオルガノシロキサンポリマー(a)に均質に組み込むことができる。
【0038】
補強性充填剤(複数可)は、加工中のLSR組成物のクレーピングを防止するために適用可能である当技術分野で開示されている任意の好適な低分子量有機ケイ素化合物を用いて表面処理され得る。例えば、オルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、又はオルガノシラザン、例えばヘキサアルキルジシラザン及び短鎖シロキサンジオールである。具体例としては、限定されないが、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、シラノール末端ビニルメチル(vinyl methyl、ViMe)シロキサン、シラノール末端メチルフェニル(methyl phenyl、MePh)シロキサン、各分子中に平均2~20個のジオルガノシロキサンの繰り返し単位を含有する液体ヒドロキシルジメチル末端ポリジオルガノシロキサン、ヒドロキシルジメチル末端フェニルメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンなどのヘキサオルガノジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane、HMDZ)、ジビニルテトラメチルジシラザン、及びテトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザンなどの、ヘキサオルガノジシラザン;ヒドロキシルジメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、並びに限定されないが、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシランを含むシランが挙げられる。
【0039】
一実施形態では、処理剤は、シラノール末端ビニルメチル(ViMe)シロキサン、各分子中に平均2~20個のジオルガノシロキサンの繰り返し単位を含有する液体ヒドロキシルジメチル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンなどのヘキサオルガノジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン; ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)などのヘキサオルガノジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン;並びにヒドロキシルジメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、並びにメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及び/又はビニルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されないシランから選択され得る。少量の水が、加工助剤としてシリカ処理剤と一緒に添加され得る。
【0040】
成分(c)の未処理の補強性充填剤の表面処理は、組成物中に導入する前に、又はin situで(すなわち、本明細書の組成物の他の原料の少なくとも一部の存在下で、充填剤が完全に処理されるまで、これらの原料を一緒に室温以上でブレンドすることによって)行われ得る。典型的には、未処理の補強性充填剤(c)を、ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)の存在下、in situで、処理剤で処理し、それにより、後で他の成分と混合することができるシリコーンゴムのベース材料を調製する。
【0041】
先に示したように、成分(c)はまた、代替的に又は追加的に、石英、珪藻土及び炭酸カルシウムから選択される1つ以上の非補強性充填剤を含有してもよい。各非補強性充填剤もまた、存在する場合、補強性充填剤に関して上述したような処理剤で疎水化処理される。
【0042】
成分(c)は、任意選択的に、組成物の最大40重量%、代替的に組成物の1.0~40重量%、代替的に組成物の5.0~35重量%、代替的に組成物の10.0~35重量%の量で存在する。
【0043】
成分(d)
硬化性シリコーンゴム組成物の成分(d)は、白金族金属系ヒドロシリル化硬化触媒である。これらは、通常、白金族金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)、又はこのような金属のうちの1つ以上の化合物の触媒から選択される。例えば、触媒(d)は、白金族金属、担体、例えば活性炭、酸化アルミニウム若しくは二酸化ケイ素などの金属酸化物、シリカゲル若しくは粉末状木炭などの上に堆積された白金族金属、又は白金族金属の化合物若しくは錯体であり得る。好ましくは、触媒中に含まれる白金族金属は、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の高い活性レベルのために白金又はロジウムであり、白金が最も好ましい。ヒドロシリル化(又は付加)反応において、本明細書における成分(d)などのヒドロシリル化触媒は、不飽和基、通常はアルケニル基、例えばビニルとSi-H基との間の反応に触媒作用を及ぼす。
【0044】
好ましいヒドロシリル化触媒(d)の例は、白金系触媒、例えば白金黒、酸化白金(Adams触媒)、様々な固体支持体上の白金、塩化白金酸、例えばヘキサ塩化白金酸(Pt酸化状態IV)(Speier触媒)、アルコール、例えばイソオクタノール又はアミルアルコールの溶液中の塩化白金酸(Lamoreaux触媒)、並びに塩化白金酸とエチレン性不飽和化合物、例えばオレフィン、及びエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体、例えばテトラ-ビニル-テトラメチルシクロテトラシロキサン-白金錯体(Ashby触媒)である。使用可能な可溶性白金化合物としては、例えば、式(PtCl2(オレフィン)2及びH(PtCl3.オレフィン)の白金-オレフィン錯体を挙げることができ、この文脈では、エチレン、プロピレン、ブテンの異性体及びオクテンの異性体など、2~8個の炭素原子を有するアルケン、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、及びシクロヘプテンなど、5~7個の炭素原子を有するシクロアルカンの使用が好ましい。他の可溶性白金触媒は、例えば、式(PtCl2C3H6)2の白金-シクロプロパン錯体であり、ヘキサクロロ白金酸の、アルコール、エーテル、及びアルデヒド、若しくはこれらの混合物との反応生成物、又はヘキサクロロ白金酸及び/若しくはその変換生成物と、メチルビニルシクロテトラシロキサンなどのビニル含有シロキサンとのエタノール性溶液中の重炭酸ナトリウムの存在下での反応生成物である。リン、硫黄、及びアミン配位子を有する白金触媒、例えば、(Ph3P)2PtCl2、及びsym-ジビニルテトラメチルジシロキサンなど、ビニルシロキサンとの白金の錯体も、使用することができる。
【0045】
したがって、好適な白金系触媒の具体的な例としては、
(i)米国特許第3,419,593号に記載されている、塩化白金酸のエチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体;
(d)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸、
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒、
(iv)(COD)Pt(SiMeCl2)2(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体、及び/又は
(v)典型的にはビニルシロキサンポリマー中に、典型的には約1重量%の白金を含有する、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である、Karstedtの触媒が挙げられる。トルエンなどの有機溶媒のような溶媒は、歴史的に代替物として使用されてきたが、ビニルシロキサンポリマーの使用がはるかに好ましい選択である。これらは、米国特許第3,715,334号及び米国特許第3,814,730号に記載されている。好ましい一実施形態では、成分(d)は、白金の配位化合物から選択され得る。一実施形態では、ヘキサクロロ白金酸及びビニル含有シロキサンとのその変換生成物、Karstedtの触媒、並びにSpeier触媒が好ましい。
【0046】
触媒は、単一種として、又は2つ以上の異なる種の混合物として添加され得る。典型的には、触媒が提供される形態/濃度に依存して、存在する白金族金属の量、代替的に、存在する白金金属の量は、組成物の0.1~1.5重量%、代替的に、0.1~1.0重量%、代替的に、組成物の0.1~0.5重量%の範囲内となる。
【0047】
成分(e)及び(g)は必須であるが、成分(f)は任意選択である。
【0048】
成分(e)
成分(e)はテトラアルキルチタネートである。テトラアルキルチタネート(e)の各アルキル基は、同じであっても異なっていてもよいが、通常は同じであり、20個までの炭素原子を有するアルキル基から選択される。有用なテトラアルキルチタネートとしては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート及びテトラオクチルチタネートが挙げられる。成分(e)のテトラアルキルチタネートは、典型的には、組成物の0.01~0.15重量%の量で、代替的に、組成物の0.01~0.1重量%の量で、代替的に、組成物の0.02~0.075重量%の量で使用される。
【0049】
成分(f)
任意選択的に、組成物は、成分(f)のアルキルポリシリケートを含んでもよい。アルキルポリシリケートは、部分的に加水分解されたテトラアルキルシリケートであってもよく、アルキル基は同じであっても異なっていてもよく、1つの基当たり最大6個の炭素、代替的に1つの基当たり最大4個の炭素原子を含んでもよい。成分(f)の例としては、存在する場合、エチルポリシリケート及びブチルポリシリケートが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルポリシリケート(f)は、組成物の最大2.5重量%の量で、代替的に、組成物の0(ゼロ)~2.0重量%の量で存在してもよい。存在する場合、アルキルポリシリケート(f)は、組成物の0.5~2重量%の量で存在してもよい。
【0050】
成分(g)
アクリル酸又はメタクリル酸のアルキル、アルケニル及びアリールエステル、すなわち、本明細書において(メタ)アクリレートと称されるアクリレート又はメタクリレートなどの成分(g)の好適な(メタ)アクリレート化合物も提供される。各アルキル基は、存在する場合、1つのアルキル基当たり1~10個の炭素、代替的に1つのアルキル基当たり1~6個の炭素を含み、具体例としては、メチル、エチル、ブチル及びオクチルが挙げられるが、これらに限定されず、各アルケニル基は、典型的には、1つのアルケニル基当たり2~10個の炭素原子、代替的に2~6個の炭素を含有し、例としては、ビニル、アリル及び/又はブテニル基を挙げることができ、アリール基は、典型的にはエステル中に6~10個の炭素原子を含有する。アリール基は、フェニル又はナフチルであってもよい。(メタ)アクリレート化合物は、限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ウレイド(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート及びデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートから選択されてもよく、アルケニル(メタ)アクリレートとしては、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート及びブテニル(メタ)アクリレートが挙げられる。アリール(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート及びトリル(メタ)アクリレートが挙げられる。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、フェニルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリレート化合物は、アルキル(メタ)アクリレートである。(メタ)アクリレート化合物は、典型的には、組成物の0.1~2.5重量%の量、代替的に組成物の0.1~2.0重量%の量、代替的に0.5~2.0重量%の量で存在する。
【0051】
成分(h)
硬化性シリコーンゴム組成物の成分(h)は、1分子当たり少なくとも2つのトリアルコキシシリル基、少なくとも2つのジアルコキシアルキルシリル基、又は2つ以上のトリアルコキシシリル基とジアルコキシアルキルシリル基との混合物を有する化合物であって、
(i)(R10)z(R11)3-zSi-(W)-Si(R11)3-z(R10)z
[式中、各R11は、同じか又は異なり、かつ炭素数1~6のアルコキシ基であり;各R10は、同じか又は異なり、かつR11であるか、又は炭素数1~6のアルキル基であり、zは、0又は1であり、Wは、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である];又は
(ii)1,3,5-トリス[3-((R10)z(R11)3-zSi)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
[式中、R11、R10及びzは、上記定義の通りであり、Dは、炭素数1~6のアルキレン基である]から選択される、化合物である。
【0052】
1つの選択肢では、硬化性シリコーンゴム組成物の成分(h)は、下記式の1分子当たり少なくとも2つのトリアルコキシシリル基、少なくとも2つのジアルコキシアルキルシリル基、又は2つ以上のトリアルコキシシリル基とジアルコキシアルキルシリル基との混合物を有する化合物であってもよく、
(i)(R10)z(R11)3-zSi-(W)-Si(R11)3-z(R10)z
式中、各R11は、同じか又は異なり、1~6個の炭素、代替的に1~4個の炭素を有するアルコキシ基であり、代替的にメトキシ、エトキシ又はプロポキシから選択され、代替的にメトキシであり;各R10は、同じか又は異なり、かつR11であるか、又は1~6個の炭素を有するアルキル基であり、代替的にR11又は1~4個の炭素を有するアルキル基、代替的にR11又はメチル、エチル若しくはプロピル基であり; 下付き文字zは0又は1であるが、好ましくは下付き文字zは0である。Wは、1~12個の炭素を有する直鎖又は分岐アルキレン、代替的に1~6個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン、代替的に1~4個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり、代替的にWは直鎖である。したがって、一実施形態では、zが0である場合、成分(h)(i)は、下記式を有する。
(R11)3-Si-(W)-Si(R11)3
更に、別の実施形態では、各R11がメトキシ基又はエトキシ基である場合、(h)(i)は下記式を有し、
(MeO)3Si-(W)-Si(OMe)3又は(EtO)3Si-(W)-Si(OEt)3
式中、Meはメチルであり、Etはエチルである。その場合、成分(h)(i)は、例えば、それぞれビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン又はビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ペンタン若しくはビス(トリエトキシシリル)ヘキサンであってもよい。
【0053】
代替的に、硬化性シリコーンゴム組成物の成分(h)は、下記式の1分子当たり少なくとも2つのトリアルコキシシリル基、少なくとも2つのジアルコキシアルキルシリル基、又は2つ以上のトリアルコキシシリル基とジアルコキシアルキルシリル基との混合物の化合物であってもよく、
(ii)1,3,5-トリス[3-((R10)z(R11)3-zSi)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
式中、各R11は、同じか又は異なり、1~6個の炭素、代替的に1~4個の炭素を有するアルコキシ基であり、代替的にメトキシ、エトキシ又はプロポキシから選択され、代替的にメトキシであり;各R10は、同じか又は異なり、かつR11であるか、又は1~6個の炭素を有するアルキル基であり、代替的にR11又は1~4個の炭素を有するアルキル基、代替的にR11又はメチル、エチル若しくはプロピル基であり; 下付き文字zは0又は1であるが、好ましくは下付き文字zは0である。Dは、1~12個の炭素を有する直鎖又は分岐アルキレン、代替的に1~6個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン、代替的に1~4個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり、代替的にDは直鎖である。したがって、一実施形態では、zが0である場合、成分(h)(ii)は、下記式を有する。
1,3,5-トリス[3-((R11)3Si)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
更に、代替的実施形態では、各R11がメトキシ基である場合、(h)(ii)は下記式を有する。
1,3,5-トリス[3-((MeO)3Si)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
組成物中の成分(h)の含有量は、組成物の約0.2~約5重量%、代替的に組成物の0.2~2.5重量%、代替的に組成物の0.2~1.5重量%である。重要な側面は、成分(h)の導入により、硬化シリコーンゴムが圧縮永久歪の大幅な増加なしにアルミニウム基材に接着することが可能になることである。
【0054】
任意選択の添加剤(複数可)
組成物は、任意選択で、組成物又は後に硬化される材料に利益を提供し、硬化性シリコーンゴム組成物の硬化を妨げない、以下で「任意選択の添加剤」と称される追加の成分を更に含んでもよい。
【0055】
追加成分の例としては、これらに限定されるものではないが、硬化抑制剤、界面活性剤、染料及び顔料を含む着色剤、抗酸化剤、担体媒体、熱安定剤、難燃剤、金属不活性化剤、流動制御剤、潤滑油、オイルブリード剤、接着促進剤、安定剤、例えば熱安定剤、導電性安定性向上剤、気泡安定剤及び/又はUV安定剤、分散剤、スリップ剤、強化剤、抗酸化剤及びチキソトロープ剤が挙げられる。
【0056】
添加剤のうちの1つ以上は、組成物の任意の好適な重量パーセント(重量%)として存在することができ、例えば、組成物の約0.1重量%~約15重量%、約0.5重量%~約5重量%、又は約0.1重量%以下、約1重量%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は約15重量%以上として存在することができる。顔料及び/又は着色剤の場合、存在する量は、必要と見なされる場合、組成物の20重量%程度であってもよい。当業者であれば、例えば添加剤のタイプ及び所望の結果に応じて、添加剤の好適な量を容易に決定することができる。ある特定の任意選択的な添加剤を、以下、より詳細に記載する。
【0057】
本明細書に記載される組成物は、組成物の硬化を阻害するためにヒドロシリル化反応抑制剤を更に含んでもよい。ヒドロシリル化反応抑制剤は、必要に応じて、特に保管中にヒドロシリル化反応硬化プロセスを防止又は遅延するために使用される。白金系触媒の任意選択的なヒドロシリル化反応抑制剤は、当該技術分野において周知であり、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、マレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン、例えば、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、ヒドロペルオキシド、ニトリル、並びにジアジリジンが挙げられる。米国特許第3989667号に記載されているようなアルケニル置換シロキサンを使用することができ、その中で、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンなどの環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0058】
公知のヒドロシリル化反応抑制剤の一分類としては、米国特許第3445420号に開示されているアセチレン系化合物が挙げられる。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレン系アルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する好ましい種類の抑制剤を構成する。典型的には、これらの抑制剤を含有する組成物は、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度に加熱する必要がある。
【0059】
アセチレン系アルコール及びそれらの誘導体の例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、1-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びこれらの混合物が挙げられる。アセチレン系アルコールの誘導体としては、少なくとも1個のケイ素原子を有するこれらの化合物が挙げられてもよい。
【0060】
場合によっては、存在するとき、触媒の金属1モル当たり抑制剤1モル程度の低い抑制剤濃度は、満足な保管安定性及び硬化速度を付与するであろう。他の場合では、触媒の金属1モル当たり最大500モルの抑制剤という抑制剤濃度が必要である。所与の組成物における、所与の抑制剤に対する最適な濃度は、日常的な実験によって容易に決定される。組成物中に存在するとき、選択された抑制剤が提供される/市販されている濃度及び形態に応じて、抑制剤は、典型的には、組成物の0.0125~10重量%の量で存在する。
【0061】
本明細書に記載される組成物は、必要に応じて添加され得る1つ以上の顔料及び/又は着色剤を更に含んでもよい。顔料及び/又は着色剤は、有色、白色、黒色、金属効果、及び発光性、例えば蛍光性及びリン光性であってもよい。
【0062】
好適な白色顔料及び/又は着色剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、硫化亜鉛、リトポン、酸化ジルコニウム、及び酸化アンチモンが挙げられる。
【0063】
好適な非白色無機顔料及び/又は着色剤としては、針鉄鉱、鱗鉄鉱、赤鉄鉱、マグヘマイト、及びマグネタイト黒酸化鉄、黄酸化鉄、褐色酸化鉄、及び赤酸化鉄などの酸化鉄顔料と、青鉄顔料と、酸化クロム顔料と、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウム辰砂等のカドミウム顔料と、バナジン酸ビスマス、バナジン酸モリブデン酸ビスマスなどのビスマス顔料と、チタン酸コバルトグリーンなどの混合金属酸化物顔料と、クロムイエロー、モリブデン酸レッド、及びモリブデン酸オレンジなどの、クロム酸塩顔料及びモリブデン酸顔料と、ウルトラマリン顔料と、酸化コバルト顔料と、チタン酸ニッケルアンチモンと、鉛クロムと、カーボンブラックと、ランプブラック、及び金属効果顔料、例えばアルミニウム、銅、酸化銅、青銅、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、及び黄銅と、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
好適な有機非白色顔料及び/又は着色剤としては、フタロシアニン顔料、例えばフタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンと、モノアリーリドイエロー、ジアリーリドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、複素環式イエロー、DANオレンジ、キナクリドン顔料、例えばキナクリドンマゼンタ及びキナクリドンバイオレットと、金属化アゾレッド及び非金属化アゾレッド及びその他のアゾ顔料を含む有機レッド、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアゾ縮合顔料、イソインドリノン、及びイソインドリン顔料、多環式顔料、ペリレン及びペリノン顔料、チオインディゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンサントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、及びジケトピロロピロール顔料と、が挙げられる。
【0065】
典型的には、顔料及び/又は着色剤は、微粒子であるとき、10nm~50μmの範囲、好ましくは40nm~2μmの範囲の平均粒径を有する。顔料及び/又は着色剤は、存在するとき、組成物の2重量%から、代替的に3重量%から、代替的に5重量%から組成物の20重量%まで、代替的に15重量%まで、代替的に10重量%までの範囲で存在する。
【0066】
本明細書における別の任意選択の添加剤は、金属不活性化剤、すなわち、主に燃料中の天然に存在する酸及び潤滑剤中で生成される酸の作用により、システムの金属部分との酸化プロセスによって導入される金属イオンを不活性化(通常は封鎖することによって)することによって流体を安定化するために使用される燃料添加剤及びオイル添加剤であり、例えばドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]である。
【0067】
組成物はまた、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)などの1つ以上の耐油剤を含んでもよい。
【0068】
本明細書に記載される硬化性シリコーンゴム組成物は、通常、早期硬化を回避するために2つの部分で貯蔵される。2つの部分は、概して、A部及びB部と称される。2成分組成物は、成分(b)架橋剤及び(d)触媒が早期硬化を回避するために同じ部分に一緒に貯蔵されないように調製される。例えば、A部は成分(a)ポリマー、(c)充填剤及び(d)触媒を含んでもよく、B部は少なくとも成分(a)ポリマー及び(b)架橋剤及び通常は(c)充填剤を含み、A部は成分(b)架橋剤を含まず、B部は成分(d)触媒を含まない。典型的には、成分(e)はA部中に存在してもよく、成分(f)、(g)及び(h)はB部組成物に添加される。
【0069】
好ましくは、存在する場合、硬化抑制剤は成分(d)と共にA部中に存在する。組成物の他の任意成分は、A部及びB部のいずれか又は両方に存在することができ、又は所望であれば、2つの部分とは別の1つ以上の追加の部に導入されてもよい(それによって、系は3つ以上の部分の系と成り得る)。2成分組成物は、各部分に存在する成分の含量及び濃度に応じて任意の好適な比で一緒に混合されるように設計されてもよく、例えば、2成分組成物は、5:1~1:5のA部:B部の重量比で混合されてもよい。
【0070】
任意の好適な方法を利用して、本明細書に記載される組成物を用いて現場硬化ガスケット(CIPG)を製造することができ、例えば、方法は、例えば以下の工程:
(i)A部組成物とB部組成物とを所定の重量比で混合する工程と、
(ii)工程(i)で調製された混合物を適切なアプリケーターに輸送する工程と、
(iii)得られた混合物をアプリケーターから基材表面上に分配する工程と、
(iv)混合物を硬化させて、シリコーン現場硬化ガスケットを提供させる工程と、を含んでもよい。
【0071】
上記方法の工程(i)の前に、A部組成物の原料成分を一緒にブレンドし、別にB部組成物の原料成分も一緒にブレンドして、それぞれのA部及びB部組成物を形成する。
【0072】
典型的には、A部及びB部組成物は、使用前に一定期間保管される。工程(i)において、A部組成物とB部組成物とを混合して、上記のシリコーンゴム組成物の硬化性混合物を形成する。任意の好適なミキサーが使用されてもよく、例えば、ミキサーは、それぞれのブレンド組成物の完全な混合を行うのに好適なスタティックミキサー又は撹拌タンク等であってもよい。任意選択で、混合容器は、混合されるA部組成物及びB部組成物が所望の温度範囲内に維持され得るように温度制御可能である。
【0073】
工程(ii)では、工程(i)で製造された組成物を適切なアプリケーターに輸送する。これはポンプによるものであってもよい。組成物が現場硬化ガスケット(CIPG)を製造するために使用されることを考慮すると、好ましくは、アプロケーターは、予めプログラムされた又はプログラム可能なロボットアプロケーターであり、これは、平坦であってもよいが、組成物が受容されることが意図される溝が設けられている可能性が高い標的基材表面に組成物を適用するために使用することができる。組成物は、十分に機能するガスケットを提供する一方で無駄を最小限に抑える量で適用されるべきである。典型的には、アプリケーターは、ガスケットが必要に応じて必要な場所に形成され、次いで適所で硬化されるように、所定の分配流量で最適化された量の組成物を適用するようにプログラムされる。本明細書の組成物はヒドロシリル化/付加硬化されるので、硬化工程は通常高温で行われ、したがって連続プロセスの場合、ロボットアプリケーターを使用して組成物を適用するように設計された位置に各基材を輸送するコンベヤベルト上の所定の位置に対象基材を配置することができる。アプリケーターは、予めプログラムされたパターンで組成物を適用し、次いで、基材は、所望の温度、例えば120℃~180℃、代替的に130℃~160℃、代替的に145℃~160℃の温度で、所望の時間、例えば、数分間、例えば、2~20分間、代替的に5~20分間、代替的に5~15分間、コンベヤオーブンの加熱領域を通してコンベヤベルト上で移送される。所望であれば、CIPGを製造するために組成物を適用する前に、基材を予熱オーブンに通してもよい。
【0074】
本明細書に記載の組成物は、高温で硬化する。硬化後、ガスケットは任意選択で後硬化工程に供されてもよい。後硬化を利用して、短時間、例えば30分~3時間、例えば1時間で、硬化したガスケットの性能を安定化させることができる。
【0075】
硬化後、及び任意に後硬化後、適切な柔軟性、圧縮永久歪、及び場合によっては高いガスケット高さ対幅比が必要とされる。未硬化状態及び硬化状態における特性調整は、反応物の相対化学量論である反応物の関数である。
【0076】
特性のバランスは、現場成形ガスケットの所与の用途の特定の要件に応じて変化する。カスタム配合は、本明細書に記載されるガスケット配合物のための多くの用途を満足させるための重要な課題となる。
【0077】
本開示の場合、本明細書に記載の硬化性シリコーンゴム組成物のビーズが適用されて未硬化CIPGを形成する基材は、硬化前に、少なくとも部分的にアルミニウムから作製されるか、代替的にアルミニウム基材であることが好ましい。これによって、CIPGを製造するために本明細書の組成物を使用するときに特定される予想外の利益を有効とすることができ、すなわち、ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後に、40%以下、代替的には39%以下の低い圧縮永久歪を維持しながら、アルミニウムへの接着性が向上する。
【0078】
最適な性能のために、CIPGは、好ましくは特性のバランスを必要とする。本明細書の組成物などの未硬化CIPG組成物は、アプリケーターを介して容易に分配する(及びアプリケーター内の閉塞を回避する)ために十分に低い粘度を有する液体であるが、分配後、所定の位置で硬化するまで意図されたガスケットの形状及び寸法を維持するために非スランピング性(non-slumping)である。したがって、最初に形成されたとき、A部、B部及びそれらの得られた組合せの各ブレンド/組成物は、使用される成分に応じて広い粘度範囲を有することができる。様々な実施形態では、組成物は、約1,000~約100,000mPa・s、代替的に約1,000~約50,000mPa・s、代替的に約1,000~約25,000mPa・s、代替的に約1,000~約10,000mPa・s、代替的に約1,000~約7,500mPa・s、代替的に約2,500~約5,000mPa・sの粘度を有する。粘度は、当技術分野において理解されている任意の好適な方法を使用して、例えば、スピンドルLV-4(1,000~2,000,000mPa・sの範囲の粘度用に設計されている)を備えたBrookfield(登録商標)回転粘度計又は1000mPa・s未満の粘度についてはスピンドルLV-1(15~20,000mPa・sの範囲の粘度用に設計)を備えるBrookfield(登録商標)回転粘度計を使用し、ポリマー粘度に従ってせん断速度を適合させて決定し得る。
【0079】
本明細書のCIPG、組成物、及び方法は、空気、粉塵、騒音、液体、ガス状物質、若しくは汚れの吸収又は浸透を防止するための障壁として作用するなどの用途に有用である。ガスケットは、音響減衰、振動減衰、衝撃吸収要素、防湿、化学的防護、及びエアシールに理想的である。好適な自動車用途の例としては、自動車ガスケット用途、例えば、電動ビークル(EV)電池パック、EV電池、EVにおける制御ユニットのためのガスケット、例えば、モーター制御ユニット(MCU)デバイスにおけるハウジングシール及び冷却剤領域シール、ランプハウジング、ヒューズボックス、エアフィルター、オイルパンガスケット、オイルシールケースガスケット、オイルスクリーンガスケット、タイミングベルトカバー上部ガスケット、タイミングロッカーカバー下部ガスケット;本明細書に記載されるように、in situで基材に対して発泡させることによって取り付けられる、防水コネクタ、エアコン、照明装置、電子部品、ハウジング、好ましくは制御キャビネット、ランプ、ドラム(包装)又はフィルターハウジングなどの電気機器用ガスケット、が挙げられる。他の用途としては、外部防水用途が挙げられる。
【0080】
組成物、CIPG、及び方法を説明する以下の実施例は、本明細書の本開示を説明することを意図しており、本開示を限定することを意図していない。
【実施例】
【0081】
異なるタイプ及び量の成分を利用して組成物を生成した。これらについては、以下で詳しく説明する。全ての量は、特に指定しない限り、重量%単位である。上述したように、全ての粘度は25℃で測定する。個々の原料成分の粘度は、任意の好適な方法によって、例えば、スピンドルLV-4(1,000~2,000,000mPa・sの範囲の粘度用に設計)を備えるBrookfield(登録商標)回転粘度計又は1000mPa・s未満の粘度についてはスピンドルLV-1(15~20,000mPa・sの範囲の粘度用に設計)を備えるBrookfield(登録商標)回転粘度計を使用し、ポリマー粘度に従ってせん断速度を適合させて決定し得る。ポリマーのアルケニル及び/又はアルキニル含有量並びに原料成分のケイ素結合水素(Si-H)の含有量及び/又はシラノール含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して決定した。
【0082】
以下の実施例及び比較例において、充填剤(ヒュームドシリカ及び石英)をin situで処理することを目的として、2つの異なるマスターバッチ(MB)を調製し、その組成を以下の表1に示す。
【0083】
【0084】
BET値は、ISO 9277に従って測定した。
【0085】
メチルビニルジオールは、25℃で約30mPa・sの粘度及び約12.0重量%のビニル含有量を有するジメチルヒドロキシ末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンである。
【0086】
実施例及び比較例の混合物を調製した。全ての実施例がヒドロシリル化硬化組成物であることを考慮して、組成物を2つの部分で調製した。上記のように、A部組成物は触媒を含有し、B部組成物は架橋剤を含有する。実施例1~10についてのA部組成物を表2aに示し、この中で、実施例1~8のA部組成物が同じであることが分かるであろう。
【0087】
【0088】
アルミニウムアセトネートはトルエン中の溶液として供給される。
【0089】
実施例1~5のB部組成物を表2bに示し、実施例6~10のB部組成物を表2cに示す。
【0090】
【0091】
上記の表において、
SiH架橋剤は、25℃で25mPa・sの粘度及び約9,600ppmのケイ素結合水素含有量を有するSi-Hジメチル末端樹脂性Si-Hポリシロキサンであり、
成分(h)1(Comp.(h)1)は、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンであり、
成分(h)2(Comp.(h)2)は、1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンであり;
接着促進剤1は、グリシドキシプロピルトリメトキシシランであった。
【0092】
【0093】
上記の成分(h)3は、ビス(トリメトキシシリル)エタンである。実験室試験のために、各実施例及び比較例のA部及びB部組成物を独立して均一に混合し、次いでそれぞれのA部及びB部を1:1の重量比で組み合わせた。合わせた混合物も12秒間均一に混合し、スピードミキサーを使用して脱気した。次いで、ミキサーの壁をこすり落とし、混合物を更に12秒間再び混合した。
【0094】
得られた組成物の試料を、スランプ/フローに関して試験し、ASTM D2202に従って測定した(mm)。スランプジグに、A部をB部と混合する2×12秒サイクルから得られた混合物を充填した。過剰分を除去し、固定具を垂直に移動させた。組成物のスランプ/フローの読み取りを10分後に行い、以下の物理的性質の表3a及び3bに示す。
【0095】
得られた脱気混合物を金型キャビティに導入し、硬さ(ショアA)、並びに引張強度及び破断点伸び試験用の試料を調製するために、150℃で5分間プレス硬化することによって硬化させて、厚さ2.0mmの好適な試験シートを作製した。圧縮永久歪試験のための試験片を作製する場合、12.0~13.0mmの厚さの試験片(小ディスク)を150℃で10分間プレス硬化させた。行った試験に関係なく、全ての試験片を、物理的特性試験の前に室温で16~24時間保管した。
【0096】
次に、以下の方法論を用いて、異なる実施例の物理的特性試験を行った。
【0097】
ショアA硬度
ショアA硬度を、ASTM D2240-97に従って測定した。
【0098】
引張強度及び破断点伸び
引張強度及び破断点伸びの結果は、ASTM D412-98Aによって得た。
【0099】
圧縮永久歪(%)
圧縮永久歪の結果は、ASTM D395方法Bに従って、177℃で22時間後に得た。
【0100】
ラップせん断接着力
アルミニウム/アルミニウム(AL/AL)及びポリアミド(ナイロン)66/ポリアミド66(PA66/PA66)のラップせん断接着力(MPa)は両方とも、ASTM D816-82(再承認2001年)に従って、その
図1からのタイプIラップ試験片を使用して測定した。ラップせん断試験中のアルミニウムパネルは、Q-Lab Corporation製のALCLAD 2024T3パネルであり、幅は2.54cmであった。実施例中のPA66パネルは、Shanghai Qiyao Chemical Co.LtdからののPA66 GF30タイプであり、同様に幅2.54cmであった。
【0101】
各アルミニウム及びポリアミド66基材パネルを、まずイソプロピルアルコール(IPA)溶媒を用いて洗浄し、次いで室温で少なくとも30分間乾燥させた。試験は、最初にそれぞれの未硬化組成物を、1cmの重なりを与えた上部パネルと下部パネルとの間に適用することによって行った。次に、得られた試験片を室温で10分間放置し、次にオーブン中で150℃にて15分間硬化させ、最後に試験前に24時間冷却した。実施例1~5についての結果を表3aに示し、実施例6~10についての結果を表3bに示す。
【0102】
【0103】
【0104】
全ての実施例1~11が、40未満の圧縮永久歪値を有していたことが分かり、実際に実施例11を除く全てが35未満の圧縮永久歪値を有していた。しかしながら、それらがそのような優れた圧縮永久歪値を有するだけでなく、それらが困難な基材アルミニウムに関して2.25MPaを超える優れたラップせん断結果も有することに特に留意すべきである。実施例11では、圧縮永久歪及びラップせん断の両方の結果が許容可能であったが、石英が存在しないことは、性能に対して有害であるように思われるが、石英が存在しない場合であっても、圧縮永久歪は、成分(h)1が存在する場合、依然として40%未満であったことが分かる。圧縮永久歪及びラップせん断の両方の結果は許容できるものであったが、石英が存在しないと、より劣った結果となる。これは、標準的な接着促進剤に加えて成分(h)の添加が、アルミニウムへの接着のレベルを高めるために接着促進剤の存在を増加させることによって圧縮永久歪が損なわれるという既知の問題なしに、優れた圧縮永久歪を提供することを示す。また、使用された組成物は効果的に非スランプ性であり、全てが硬化後に優れた物理的特性を維持することが分かる。
【0105】
一連の比較例(C.1~C.6)も全く同じ方法論を用いて行った。使用した組成物を表4a(A部組成物)及び表4b(B部組成物)に示す。
【0106】
【0107】
上記において、ジルコニウム(IV)AcAcは、約450mPa・sの粘度を有するビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサンポリマー中の50重量%のジルコニウム(IV)アセチルアセトネートのマスターバッチである
【0108】
【0109】
上記表4bにおいて
接着促進剤2は、グリシドキシプロピルトリメトキシシランとジメチルヒドロキシ末端ジメチルメチルビニルシロキサンとの反応生成物である。
【0110】
接着促進剤3はビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンである。
【0111】
同じ試験方法を使用して類似の試験を行い、比較例の結果を以下の表5に示す。しかしながら、結果はC.1~C.5についてのみ提供されており、なぜなら、C.6は硬化しなかったためである。
【0112】
【0113】
アルミニウム基材については、比較例C.1は、優れた圧縮永久歪を提供するが、アルミニウム基材間のラップせん断の結果は、望ましくないことが見出され、不十分であることが分かる。
【0114】
比較例C.2では、望ましくないスランプ/フロー(mm)結果が生じるが、C.2はまた、アルミニウム基材について劣ったラップせん断結果を有することが分かる。(現在の理論に束縛されるものではないが)不十分なスランプ/フロー結果は、石英非補強性充填剤がC.2の組成物中に存在するが、それが未処理であったという事実に起因すると考えられる。したがって、石英が組成物中に存在する場合、それは疎水化処理される必要があると思われる。比較例3及び4は、増加したレベルの標準的な接着促進剤を含有し、その結果、アルミニウムラップせん断試験において改善された接着性を示す。しかしながら、それらは、全てが本組成物中に成分(h)を含有する実施例1~11の組成物とは異なり、劣った圧縮永久歪結果を与える。また、成分(h)を接着促進剤3で置き換えることによって、接着促進剤3中のアミン基の存在がC.6が硬化していない原因であると思われることも分かった。
【0115】
したがって、比較例は、アルミニウムに対する良好なラップせん断接着力又は良好な圧縮永久歪のいずれかを有するが、両方ではない製品をもたらすことが分かり、本明細書に記載される成分(h)の使用は、ラップせん断結果から証明されるように、アルミニウム基材に対する良好な接着力を維持しながら、良好な圧縮永久歪、すなわち40%未満という両方を提供して、この問題を予想外に克服することが本明細書において見出された。これは、封入された(enclosed)組成物が、良好な圧縮永久歪と共にアルミニウム基材の接着力の必要性を伴う用途に適していることを意味する。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーンゴム組成物であって、以下の成分:
a)1分子当たり、アルケニル基又はアルキニル基から選択される少なくとも2つの不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンと;
b)1分子当たり少なくとも2つ、代替的に少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と;
c)少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は石英、珪藻土及び炭酸カルシウムから選択される1つ以上の非補強性充填剤又は両方の混合物であって、存在する各充填剤は疎水化処理されている、少なくとも1つのシリカ補強性充填剤又は1つ以上の非補強性充填剤又は両方の混合物と;
d)白金族金属又はその化合物を含むか又はそれからなるヒドロシリル化触媒と;
e)テトラアルキルチタネートであって、各アルキル基は同じか又は異なっていてもよく及び1~20個の炭素原子を有し、前記組成物の0.01~0.15重量%の量で存在する、テトラアルキルチタネートと;
f)アルキルポリシリケートであって、前記アルキル基は同じか又は異なっていてもよく及び1つの基当たり最大6個の炭素原子を含んでよく、前記組成物の0~2.5重量%の量で存在する、アルキルポリシリケートと;
g)前記組成物の0.1~2.5重量%の量で存在する、好適な(メタ)アクリレート化合物と、
h)1分子当たり少なくとも2つのトリアルコキシシリル基、少なくとも2つのジアルコキシアルキルシリル基、又は2つ以上のトリアルコキシシリル基とジアルコキシアルキルシリル基との混合物を有する化合物であって、
(i)(R
10)
z(R
11)
3-zSi-(W)-Si(R
11)
3-z(R
10)
z
[式中、各R
11は、同じか又は異なり、かつ炭素数1~6のアルコキシ基であり;各R
10は、同じか又は異なり、かつR
11であるか、又は炭素数1~6のアルキル基であり、zは、0又は1であり、Wは、炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキレンである];又は
(ii)1,3,5-トリス[3-((R
10)
z(R
11)
3-zSi)-D]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
[式中、R
11、R
10及びzは、上記定義の通りであり、Dは、炭素数1~6のアルキレン基である]から選択される、化合物と、を含む、硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
成分(h)が、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサンから選択され、及び/又は1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオンである、請求項1に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記組成物が、1つ以上の硬化抑制剤、金属不活性化剤及び/又は耐油剤を更に含む、請求項1に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記金属不活性化剤が、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]であり、及び/又は前記耐油剤が、水酸化マグネシウムである、請求項3に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
成分c)が、少なくとも1つのシリカ補強性充填剤及び石英を含む、請求項1に記載の硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を硬化して得られる、硬化シリコーンゴム。
【請求項7】
請求項1に記載の硬化性シリコーンゴム組成物の硬化生成物を含むか、又はそれからなる、現場硬化ガスケット。
【請求項8】
アルミニウム基材に接着された、請求項7に記載の現場硬化ガスケット。
【請求項9】
請求項1に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を混合及び硬化することによる、硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法。
【請求項10】
前記シリコーンゴム組成物が、適切なアプリケーターから標的表面上へのシリコーンゴム組成物のビーズ又は糸として基材上に適用される、請求項9に記載の硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法。
【請求項11】
前記アプリケーターが、前記シリコーンゴム組成物の糸の導入を制御して、所望の形状を有し、廃棄物を最小限に抑えるガスケットを提供することができるように予めプログラムされたロボットアプリケーターである、請求項10に記載の硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法。
【請求項12】
前記方法が、ロボットアプリケーターを使用して前記組成物を適用するように設計された位置に各基材を輸送するコンベヤベルト上の予め規定された位置に標的基材を配置し、前記アプリケーターが予めプログラムされたパターンで組成物を適用し、次いで前記基材を前記コンベヤベルト上で120℃~180℃の所望の温度で2~20分間コンベヤオーブンの加熱ゾーンを通して輸送するように連続的である、請求項9~11のいずれか一項に記載の硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造する方法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を混合及び硬化することによって得られるか若しくは得ることができる硬化シリコーンゴム、及び/又は請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物を好適な基材上で混合及び硬化することによって得られるか若しくは得ることができる現場硬化ガスケット(CIPG)。
【請求項14】
ASTM D395方法Bに従って177℃で22時間試験した後に、40%以下の圧縮永久歪を保持しながら、ASTM D816-82(2001年再承認)に従って測定されるラップせん断が1.5MPa超(>)であるようにアルミニウム基材に接着する硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーンゴム組成物の、使用。
【請求項15】
空気、粉塵、騒音、液体、ガス状物質、若しくは汚れの吸収又は浸透を防止するための障壁として;音響減衰、振動減衰、衝撃吸収要素、防湿、化学的防護、及びエアシール、並びに/又は自動車用途のためのエアフィルター、オイルパンガスケット、オイルシールケースガスケット、オイルスクリーンガスケット、タイミングベルトカバー上部ガスケット、タイミングロッカーカバー下部ガスケットとして;防水コネクタ、エアコン、照明装置、電子部品等の電気機器用ガスケットとして使用するための硬化シリコーンゴム及び/又は現場硬化ガスケット(CIPG)を製造するための、請求項1に記載の硬化性シリコーンゴム組成物の、使用。
【請求項16】
前記自動車用途が、電動ビークル(EV)電池パック用ガスケット、EV電池用ガスケット、EVにおけるモーター制御ユニット用ガスケット、ハウジングシール、及び冷却剤領域シールから選択される自動車ガスケット用途を含む、請求項15に記載の硬化性シリコーンゴム組成物の使用。
【国際調査報告】