特表 2024-522510 キャスタ用の格納式ガードアセンブリ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2024-06-21

(54)【発明の名称】キャスタ用の格納式ガードアセンブリ

(51)【国際特許分類】

   B60B 33/00 20060101AFI20240614BHJP

【ＦＩ】

B60B33/00 X

【審査請求】未請求

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2023573191

(86)(22)【出願日】2022-06-06

(85)【翻訳文提出日】2023-11-27

(86)【国際出願番号】 IB2022055269

(87)【国際公開番号】W WO2023275641

(87)【国際公開日】2023-01-05

(31)【優先権主張番号】63/217,390

(32)【優先日】2021-07-01

(33)【優先権主張国・地域又は機関】US

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】319008904

【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド

(74)【代理人】

【識別番号】100099759

【弁理士】

【氏名又は名称】青木 篤

(74)【代理人】

【識別番号】100123582

【弁理士】

【氏名又は名称】三橋 真二

(74)【代理人】

【識別番号】100160705

【弁理士】

【氏名又は名称】伊藤 健太郎

(72)【発明者】

【氏名】ブランドン スポエルストラ

(57)【要約】

本明細書で開示される特定の実施形態は、可動式機器のキャスタに結合され、ハウジング（２０８）と、少なくとも部分的にハウジング内に配置された１つ以上のガード（２１０、２１２）とを備える、格納式ガードアセンブリ（１０４）を提供する。１つ以上のガードは、ハウジングに対して独立して移動可能なように結合されている。格納式ガードアセンブリは、１つ以上のガードを完全に展開された状態に向かって付勢するための、１つ以上のガード及びハウジングに結合された対応する１つ以上の付勢要素（３３０、３３２）を更に備える。１つ以上のガードが完全に展開された状態にある場合、固定物体と、ハウジングの外側に配置された、１つ以上のガードの一部分との間の接触が、１つ以上のガードを格納された状態に移行させ、その接触が取り除かれた場合、対応する１つ以上の付勢要素が、１つ以上のガードを完全に展開された状態に移行させる。
【選択図】図２Ｂ

【特許請求の範囲】

【請求項1】

可動式機器のキャスタに結合される格納式ガードアセンブリであって、
ハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジング内に配置された１つ以上のガードであって、前記ハウジングに対して独立して移動可能なように結合されている、１つ以上のガードと、
前記１つ以上のガードを完全に展開された状態に向かって付勢するための、前記１つ以上のガード及び前記ハウジングに結合された対応する１つ以上の付勢要素であって、
前記１つ以上のガードが前記完全に展開された状態にある場合、固定物体と、前記ハウジングの外側に配置された、前記１つ以上のガードの一部分との間の接触が、前記１つ以上のガードを格納された状態に移行させ、
前記１つ以上のガードが前記格納された状態にあるときに、前記接触が取り除かれると、前記対応する１つ以上の付勢要素が、前記１つ以上のガードを前記完全に展開された状態に移行させ、
前記完全に展開された状態では、前記１つ以上のガードは地面との間に第１のクリアランスを有し、
前記格納された状態では、前記１つ以上のガードは地面との間に第２のクリアランスを有し、
前記第２のクリアランスは前記第１のクリアランスよりも大きい、対応する１つ以上の付勢要素と、
を備える格納式ガードアセンブリ。

【請求項2】

前記１つ以上のガードの各々が、
前記ハウジングの第１のピンに対応する第１のスロットと、
前記ハウジングの第２のピンに対応する第２のスロットであって、前記１つ以上のガードの運動範囲が、前記第１のスロットと、対応する前記第１のピンとの間の第１の接触部と、前記第２のスロットと、対応する前記第２のピンとの間の第２の接触部とにより定められる領域に限定される、第２のスロットと、を備える、請求項１に記載の格納式ガードアセンブリ。

【請求項3】

前記１つ以上のガードの各々が、
前記ハウジング内に配置された第１の端部と、前記ハウジングの外側に配置された第２の端部とを有する本体を更に備え、前記本体は、
内側キャビティを定める側壁と、
一方の側部で前記内側キャビティを取り囲む外面であって、前記第１のスロット及び前記第２のスロットは前記外面で定められる、外面と、
前記対応する１つ以上の付勢要素を前記１つ以上のガードに結合するように構成された、前記本体の前記第１の端部におけるフックと、を備える、請求項２に記載の格納式ガードアセンブリ。

【請求項4】

前記側壁は、前記本体の前記第１の端部に切欠きを備え、前記対応する１つ以上の付勢要素が、前記内側キャビティ内に嵌まり、前記切欠きを通って延び前記フックに結合する、請求項３に記載の格納式ガードアセンブリ。

【請求項5】

前記第１のスロットは、任意の方向への前記１つ以上のガードの並進運動を許容するように構成され、前記第２のスロットは、前記１つ以上のガードの並進運動を２つの方向にだけ限定するように構成されている、請求項２に記載の格納式ガードアセンブリ。

【請求項6】

前記格納された状態への前記１つ以上のガードの前記移行は、第１のスロットの周辺部と前記対応する第１のピンとの間の前記第１の接触部によって、及び前記第２のスロットの周辺部と前記対応する第２のピンとの間の前記第２の接触部によって導かれ、
前記格納された状態への前記移行中に、前記第２のスロットは、前記第２のピンの長手方向軸を中心として回転し、第１の軸に沿って第１の方向に並進移動し、
前記格納された状態への前記移行中に、前記第１のスロットは、前記第１の軸に沿った第１の部分と、前記第１の軸と直角をなす第２の軸に沿った第２の部分とを含む、第２の方向に並進移動する、請求項２に記載の格納式ガードアセンブリ。

【請求項7】

前記１つ以上のガードが前記完全に展開された状態にある場合、前記第１のピンは前記対応する第１のスロットの第１の上端部に配置され、前記第２のピンは前記対応する第２のスロットの第２の上端部に配置され、
前記１つ以上のガードが完全に格納された状態にある場合、前記第１のピンは前記対応する第１のスロットの第１の下端部に配置され、前記第２のピンは前記対応する第２のスロットの第２の下端部に配置される、請求項２に記載の格納式ガードアセンブリ。

【請求項8】

前記完全に展開された状態において、前記１つ以上のガードは、前記可動式機器が移動している際中に物体を押し退けるように構成され、
前記格納された状態において、前記可動式機器が固定物体を越えて移動することが可能なように、前記第２のクリアランスが前記地面から十分な距離を提供する、請求項１に記載の格納式ガードアセンブリ。

【請求項9】

前記１つ以上のガードは、前記キャスタの車輪の対向する側部に対称的に配置された２対のガードを備える、請求項１に記載の格納式ガードアセンブリ。

【請求項10】

可動式機器のキャスタアセンブリであって、
キャスタホイールを備えるキャスタと、
前記キャスタに結合された格納式ガードアセンブリであって、前記格納式ガードアセンブリは、
ハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジング内に配置された１つ以上のガードであって、前記ハウジングに対して独立して移動可能なように結合されている、１つ以上のガードと、
前記１つ以上のガードを完全に展開された状態に向かって付勢するための、前記１つ以上のガード及び前記ハウジングに結合された対応する１つ以上の付勢要素であって、
前記１つ以上のガードが前記完全に展開された状態にある場合、固定物体と、前記ハウジングの外側に配置された、前記１つ以上のガードの一部分との間の接触が、前記１つ以上のガードを格納された状態に移行させ、
前記１つ以上のガードが前記格納された状態にあるときに、前記接触が取り除かれると、前記対応する１つ以上の付勢要素が、前記１つ以上のガードを前記完全に展開された状態に移行させ、
前記完全に展開された状態では、前記１つ以上のガードは地面との間に第１のクリアランスを有し、
前記格納された状態では、前記１つ以上のガードは地面との間に第２のクリアランスを有し、
前記第２のクリアランスは前記第１のクリアランスよりも大きい、対応する１つ以上の付勢要素とを備える、格納式ガードアセンブリと、
を備えるキャスタアセンブリ。

【請求項11】

前記１つ以上のガードの各々が、
前記ハウジングの第１のピンに対応する第１のスロットと、
前記ハウジングの第２のピンに対応する第２のスロットであって、前記１つ以上のガードの運動範囲が、前記第１のスロットと、対応する第１のピンとの間の第１の接触部と、前記第２のスロットと、対応する第２のピンとの間の第２の接触部とにより定められる領域に限定される、第２のスロットと、を備える、請求項１０に記載のキャスタアセンブリ。

【請求項12】

前記１つ以上のガードの各々が、
前記ハウジング内に配置された第１の端部と、外側に配置された第２の端部とを有する本体、前記ハウジング内に配置された第１の端部と、前記ハウジングの外側に配置された第２の端部とを有する本体を更に備え、前記本体は、
内側キャビティを定める側壁と、
一方の側部で前記内側キャビティを取り囲む外面であって、前記第１のスロット及び前記第２のスロットは前記外面で定められる、外面と、
前記対応する１つ以上の付勢要素を前記１つ以上のガードに結合するように構成された、前記本体の前記第１の端部におけるフックと、を備える、請求項１１に記載のキャスタアセンブリ。

【請求項13】

前記第１のスロットは、任意の方向への前記１つ以上のガードの並進運動を許容するように構成され、前記第２のスロットは、前記１つ以上のガードの並進運動を２つの方向にだけ限定するように構成されている、請求項１１に記載のキャスタアセンブリ。

【請求項14】

前記格納された状態への前記１つ以上のガードの前記移行は、第１のスロットの周辺部と前記対応する第１のピンとの間の前記第１の接触部によって、及び前記第２のスロットの周辺部と前記対応する第２のピンとの間の前記第２の接触部によって導かれ、
前記格納された状態への前記移行中に、前記第２のスロットは、前記第２のピンの長手方向軸を中心として回転し、第１の軸に沿って第１の方向に並進移動し、
前記格納された状態への前記移行中に、前記第１のスロットは、前記第１の軸に沿った第１の部分と、前記第１の軸と直角をなす第２の軸に沿った第２の部分とを含む、第２の方向に並進移動する、請求項１１に記載のキャスタアセンブリ。

【請求項15】

前記完全に展開された状態において、前記１つ以上のガードは、前記可動式機器が移動している際中に物体を押し退けるように構成され、
前記格納された状態において、前記可動式機器が固定物体を越えて移動することが可能なように、前記第２のクリアランスが前記地面から十分な距離を提供する、請求項１０に記載のキャスタアセンブリ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

優先権の主張
本出願は、発明者がＢｒａｎｄｏｎ Ｌ．Ｓｐｏｅｌｓｔｒａである２０２１年７月１日に出願された「ＲＥＴＲＡＣＴＡＢＬＥ ＧＵＡＲＤ ＡＳＳＥＭＢＬＩＥＳ」と題する米国仮特許出願第６３／２１７，３９０号明細書の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【0002】

本開示は、一般に、医療機器又は非医療機器などの可動式機器のキャスタに関連して使用するための格納式ガードアセンブリに関する。

【背景技術】

【0003】

多くのタイプの機器、特に医療機器は、可動式とすることができて、あちこちに移動させることができるように、回転するキャスタホイールを有する。例えば、このように可動であることにより、医療スタッフは、手術室内、手術室間、フロア間（例えば、エレベータを使用）などであちこちに医療機器を移動させることができる。しかしながら、場合によっては、キャスタホイールに載せられて進む機器（例えば、医療機器）が、電気ケーブル、流体ホース、及び他の同様の物体の上に乗り上げたときに引っ掛かることがある。このことは、機器の操作者にとって煩わしいことであり、機器の機動性を低下させる。更に、このことは、機器を転倒させ、電気ケーブルを損傷させ、ホースを挟んで閉塞させ、及び他の同様の問題をもたらす可能性がある。

【0004】

場合によっては、機器がケーブル及びホースの上に乗り上げて上記のような問題を発生させることを防止するためにケーブル及びホースを押し退ける目的で、特定の既存のケーブルガードがキャスタと共に使用される。しかしながら、既存のケーブルガードは、特定の更なる望ましくない問題を発生させる。例えば、ドアの敷居及びエレベータの敷居などの固定障害物、又はフロアマットなどの非固定であるが動かしにくい障害物を越えて機器を移動させる場合、いくつかの既存のケーブルガードは取り外して収納しなければならない。しかしながら、そのような物体を越えて機器を移動させなければならない場合に、毎回ケーブルガードを取り外して収納することを機器の操作者に強いることは、操作者にとって極めて重荷となる。

【0005】

いくつかの他の既存のケーブルガードは固定位置にあるため、固定障害物を越えて機器を移動させようとする場合に取り外すことさえできない。そのため、固定ケーブルガードがそのような障害物に引っ掛かり、機器を転倒させる可能性がある。

【発明の概要】

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示は、一般に、医療機器又は非医療機器などの可動式機器のキャスタに関連して使用するための格納式ガードアセンブリに関する。

【0007】

本明細書で開示される特定の実施形態は、可動式機器のキャスタに結合され、ハウジングと、少なくとも部分的にハウジング内に配置された１つ以上のガードとを備える、格納式ガードアセンブリを提供する。１つ以上のガードは、ハウジングに対して独立して移動可能なように結合されている。格納式ガードアセンブリは、１つ以上のガードを完全に展開された状態に向かって付勢するための、１つ以上のガード及びハウジングに結合された対応する１つ以上の付勢要素を更に備える。１つ以上のガードが完全に展開された状態にある場合、固定物体と、ハウジングの外側に配置された、１つ以上のガードの一部分との間の接触が、１つ以上のガードを格納された状態に移行させる。１つ以上のガードが格納された状態にあるときに、その接触が取り除かれると、対応する１つ以上の付勢要素が、１つ以上のガードを完全に展開された状態に移行させる。完全に展開された状態では、１つ以上のガードは地面との間に第１のクリアランスを有する。格納された状態では、１つ以上のガードは地面との間に第２のクリアランスを有し、第２のクリアランスは第１のクリアランスよりも大きい。

【0008】

本明細書で開示される特定の実施形態が、キャスタホイールを備えるキャスタと、キャスタに結合された格納式ガードアセンブリとを備える、可動式機器のキャスタアセンブリを提供する。格納式ガードアセンブリは、ハウジングと、少なくとも部分的にハウジング内に配置された１つ以上のガードとを備える。１つ以上のガードは、ハウジングに対して独立して移動可能なように結合されている。格納式ガードアセンブリは、１つ以上のガードを完全に展開された状態に向かって付勢するための、１つ以上のガード及びハウジングに結合された対応する１つ以上の付勢要素を更に備える。１つ以上のガードが完全に展開された状態にある場合、固定物体と、ハウジングの外側に配置された、１つ以上のガードの一部分との間の接触が、１つ以上のガードを格納された状態に移行させる。１つ以上のガードが格納された状態にあるときに、その接触が取り除かれると、対応する１つ以上の付勢要素が、１つ以上のガードを完全に展開された状態に移行させる。完全に展開された状態では、１つ以上のガードは地面との間に第１のクリアランスを有する。格納された状態では、１つ以上のガードは地面との間に第２のクリアランスを有し、第２のクリアランスは第１のクリアランスよりも大きい。

【0009】

以下の説明及び関連する図面は、１つ以上の実施形態の特定の例示的な特徴を詳述する。

【0010】

添付の図面は、１つ以上の実施形態の特定の態様を示すものであり、したがって本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本開示の特定の実施形態による、４つのキャスタアセンブリを含む医療機器を示す。

【図2A】本開示の特定の実施形態による、展開された状態にある格納式ガードアセンブリを含む図１のキャスタアセンブリの側面図を示す。

【図2B】本開示の特定の実施形態による、図２Ａのキャスタアセンブリの斜視図を示す。

【図2C】本開示の特定の実施形態による、前方ガードが格納された状態にある格納式ガードアセンブリを含む図２Ｂのキャスタアセンブリの斜視図を示す。

【図3A】本開示の特定の実施形態による、図２Ａ～図２Ｃのキャスタアセンブリの分解図を示す。

【図3B】本開示の特定の実施形態による、キャスタアセンブリの実施形態の断面に対して示す、想定される寸法を表す。

【図3C】本開示の特定の実施形態による、キャスタアセンブリの実施形態の断面に対して示す、想定される寸法を表す。

【図4A】本開示の特定の実施形態による、展開された状態にある前方ガード及び後方ガードの内側側面図を示す。

【図4B】本開示の特定の実施形態による、格納された状態にある図４Ａの前方ガードの内側側面図を示す。

【図5A】本開示の特定の実施形態による、固定物体に接触している間の、及びその後のその物体を越える移動中の、図４Ａの前方ガードの動きを表す。

【図5B】本開示の特定の実施形態による、固定物体に接触している間の、及びその後のその物体を越える移動中の、図４Ａの前方ガードの動きを表す。

【図5C】本開示の特定の実施形態による、固定物体に接触している間の、及びその後のその物体を越える移動中の、図４Ａの前方ガードの動きを表す。

【図5D】本開示の特定の実施形態による、固定物体に接触している間の、及びその後のその物体を越える移動中の、図４Ａの前方ガードの動きを表す。

【発明を実施するための形態】

【0012】

理解を促進するために、複数の図面に共通する同じ要素を指示するために、可能な限り同じ参照番号が使用されている。一実施形態の要素及び特徴が、更なる説明を伴わずに他の実施形態に有益に組み込むことができるように企図されている。

【0013】

本開示の特定の実施形態は、可動式機器のキャスタに関連して使用されてもよい格納式ガードアセンブリを提供する。以下の実施形態は、キャスタ上に取り付けられ、眼科手術用コンソールなどの医療機器に関連して使用される格納式ガードアセンブリについて説明するが、本明細書で説明される格納式ガードアセンブリは、様々な医療機器及び非医療機器と連係して使用されてもよいことが当業者には理解されよう。このような医療機器の例としては、手術用コンソール及び非手術用コンソール、診断機器、病院用ベッド、病院用カート、ストレッチャ、ＩＶ（点滴）ポール、並びに他の可動式医療機器が挙げられる。非医療機器の例としては、キャスタを有する任意の可動式で電気式及び／又は機械式のデバイス及び付属品が挙げられる。

【0014】

本明細書で開示される実施形態は、対応するキャスタホイールが固定物体に遭遇すると自動格納する格納式ガードアセンブリを有するキャスタを提供する。自動格納式ガードアセンブリにより、可動式機器が、ユーザによる動作を必要とすることなく容易に固定物体を越えて移動することが可能になる。更には、本明細書で開示される格納式ガードアセンブリは、閾値状態を満たすのに十分に大きい反力を（格納式ガードアセンブリの対応するガードに対して）加える物体に接触した場合にだけ格納される。この機構は、格納式ガードアセンブリが、対応するキャスタホイールの経路から不安定な物体を押し退けて、キャスタホイールが不安定な物体に引っ掛かることを防止することを可能にすると同時に、キャスタホイールが固定物体を越えて移動することを可能にする。加えて、本明細書で開示される格納式ガードアセンブリは、前方、後方、又は下方（例えば、可動式機器が降ろされる場合、又は出張りを登るか降りるように操作される場合）を含む任意の方向から接近する固定物体に道を譲るように設計されている。

【0015】

図１は、４つのキャスタアセンブリ１０２ａ、１０２ｂ、１０２ｃ、及び１０２ｄ（図示せず）を含む医療機器１００を示す。図示するように、各キャスタアセンブリ１０２は、回転するキャスタホイール（「キャスタホイール」）１０１とキャスタロックトーホールド１０６とを有するキャスタ（例えば、図３Ａに示すキャスタ３０３）を含む。キャスタロックトーホールド１０６を押すと、キャスタロックトーホールド１０６が地面と接触するため、対応するキャスタホイール１０１の回転を防止し得る摩擦が生じる。

【0016】

各キャスタアセンブリ１０２はまた、以下でより詳細に説明するように、格納式ガードアセンブリ１０４を含む。特定の実施形態では、各格納式ガードアセンブリ１０４が、製造プロセス中に対応するキャスタに取り付けられる。図２Ａ～図２Ｃに関して更に記載されているように、各格納式ガードアセンブリ１０４は、互いに対して及びキャスタアセンブリ１０２に対して独立して移動可能な１つ以上のガードを備える。展開されると、ガードは、ケーブル、ホース、及び他の同様の物体などの物体を押し退けるように構成される。展開された状態において、ガードは、医療機器１００をあちこちに移動させることができるように、地面との間に特定の量のクリアランスを提供する。しかしながら、クリアランス（例えば、ガードの底部と地面との間の距離）は、ガードがケーブル、ホース、及び他の同様の物体に接触してそれらを押し退けることが依然として可能であるように構成される。押し退けることを意図していない物体にガードのうちの１つ以上が接触した場合、対応するガードが格納され、それにより地面との間のクリアランスが大きくなり、その結果、ドアの敷居及びエレベータの敷居などの固定物体（例えば、障害物）、及びフロアマットなどの動かしにくい障害物を越えて、医療機器１００を容易に移動させることができるようになる。特定の実施形態では、いかなる動かしにくい障害物も、固定物体とみなすことができることに留意されたい。本明細書で使用する場合、用語「固定物体」は、ガードのうちの少なくとも１つに十分に大きな力を作用させることによりガードを格納させる任意の物体を指す。

【0017】

図２Ａは、いくつかの実施形態による、展開された状態にある格納式ガードアセンブリ１０４を含む図１のキャスタアセンブリ１０２の側面図を示す。図２Ｂは、いくつかの実施形態による、展開された状態にある格納式ガードアセンブリ１０４を含むキャスタアセンブリ１０２の斜視図を示す。図２Ｃは、いくつかの実施形態による、格納された状態にある前方ガード２１０ａを有する格納式ガードアセンブリ１０４を含むキャスタアセンブリ１０２の斜視図を示す。図２Ａ～図２Ｃに示すキャスタアセンブリ１０２は、図１のキャスタアセンブリ１０２ａ、１０２ｂ、１０２ｃ、又は１０２ｄのうちのいずれか１つであり得る。明確にするために、本明細書では図２Ａ～図２Ｃを一緒に説明する。

【0018】

格納式ガードアセンブリ１０４は、他の構成要素の中でも、キャスタホイール１０１とキャスタロックトーホールド１０６とを含むキャスタ（図３Ａにキャスタ３０３として示す）に取り付けられている。格納式ガードアセンブリ１０４は、ハウジング２０８と、前方ガード２１０と、後方ガード２１２と、カラー２１６と、ねじ２１８と、図３Ａに詳細に示す他の構成要素とを備える。ハウジング２０８は、２つのハウジングピース２０９ａ及び２０９ｂを備える。図２Ａでは、ハウジングピース２０９ａのみが示されているが、図２Ｂ及び図２Ｃでは、ハウジングピース２０９ｂが部分的に示されている。ハウジングピース２０９ａ及び２０９ｂは、ねじ２１８ａ～２１８ｃを使用して一緒に結合されている。ハウジングピース２０９ａ及び２０９ｂは、カラー２１６を介して間接的に一緒に結合されている。ハウジングピース２０９ａはねじ２１８ｄを使用してカラー２１６に結合され、ハウジングピース２０９ｂはねじ２１８ｅを使用してカラー２１６に結合されている。前方ガード２１０及び後方ガード２１２は、少なくとも部分的にハウジング２０８内に配置されている。ハウジング２０８の外側に配置されている、前方ガード２１０及び後方ガード２１２の一部分だけが、図２Ａ～図２Ｃで見える。図示するように、前方ガード２１０ａ及び２１０ｂは、キャスタホイール１０１の両側に１つずつ前方ガードが存在するように対称に配置される。後方ガード２１２ａ及び２１２ｂもまた、キャスタホイール１０１の両側に１つずつ後方ガードが存在するように対称に配置されている。

【0019】

上記のように、展開された状態において、前方ガード２１０及び後方ガード２１２が地面との間に最小限の量のクリアランスを提供して、医療機器１００がケーブルなどのいかなる物体をも進路から押し出しながらあちこち移動することが可能である。前方ガード２１０及び後方ガード２１２が完全に展開された状態（図２Ｂに示す）にある場合、固定物体２１４（図２Ｃに示す）とハウジング２０８の外側に配置された、前方ガード２１０又は後方ガード２１２のいずれか一方の一部分との間の接触が、対応するガードを格納された状態に移行させる。ガードは互いに対して独立に移動可能であるため、４つのガードのうちのいずれか１つが格納される一方で、他のガードが展開されたままであることが可能であることに留意されたい。例えば、図２Ｃに示すように、前方ガード２１０ａ及び２１０ｂは格納された状態にあり、後方ガード２１２ａ及び２１２ｂは展開された状態のままである。図２Ｃにおいて、前方ガード２１０ａ及び２１０ｂは、後方ガード２１２ａ及び２１２ｂよりも大きな、地面との間のクリアランスを有する。加えて、格納された状態（図２Ｃに示される）にある前方ガード２１０ａ及び２１０ｂは、完全に展開された状態（図２Ｂに示される）にある前方ガード２１０ａ及び２１０ｂよりも大きな、地面との間のクリアランスを有する。

【0020】

前方ガード２１０が格納された状態（図２Ｃに示す）にあるときに、固定物体２１４との接触が取り除かれると、対応するガードが、完全に展開された状態（図２Ｂに示す）に自動展開する又は元の状態に移行する。後方ガード２１２は、完全に展開された状態だけが示されているが、後方ガード２１２は前方ガード２１０と同様に機能する。図３Ａ～Ｃ、及び図４Ａ～図４Ｂに関して以下でより詳細に説明するように、完全に展開された状態への移行は、各ガードを完全に展開された状態に付勢するか、又は予め負荷を加える、対応する付勢要素によって生じる。

【0021】

図３Ａは、特定の実施形態による、図２Ａ～図２Ｃのキャスタアセンブリ１０２の分解図を示す。図示するように、ねじ３２２を使用してカバー３２０ｂがハウジングピース２０９ｂに結合される。ねじ３２２ａ～３２２ｄは、カバー３２０ｂの対応する開口部及びハウジングピース２０９ｂの対応するねじ穴の中に、この順序で挿入されるように構成されている。ねじ３２２ａ～３２２ｄが、そのような開口部の全ての中に挿入されたとき、前方ガード２１０ｂ及び後方ガード２１２ｂが、少なくとも部分的にハウジング内に配置されて、カバー３２０ｂとハウジングピース２０９ｂとの間で移動可能に結合されるように、ねじ３２２ａ～３２２ｄはカバー３２０ｂ及びハウジングピース２０９ｂを一緒に保持する。カバー３２０ａは、カバー３２０ｂと同様に機能する。カバー３２０ａは、ねじ３２１を使用してハウジングピース２０９ａに結合される。ねじ３２１ａ～３２１ｄは、カバー３２０ａの対応する開口部及びハウジングピース２０９ａの対応するねじ穴の中に、この順序で挿入されるように構成されている。ねじ３２１ａ～３２１ｄが、そのような開口部の全ての中に挿入されたとき、前方ガード２１０ａ及び後方ガード２１２ａが、少なくとも部分的にハウジング内に配置されて、カバー３２０ａとハウジングピース２０９ａとの間で移動可能に結合されるように、ねじ３２１ａ～３２１ｄはカバー３２０ａ及びハウジングピース２０９ａを一緒に保持する。

【0022】

図示するように、前方ガード２１０ｂは、ハウジングピース２０９ｂの下側ピン３２６ｂに対応する下側スロット３１１ｂと、ハウジングピース２０９ｂの上側ピン３２８ｂに対応する上側スロット３１３ｂとを有する。カバー３２０ｂがハウジングピース２０９ｂに結合されているとき、下側ピン３２６ｂは下側スロット３１１ｂ内に配置され、上側ピン３２８ｂは上側スロット３１３ｂ内に配置されている。図４Ａ及び図４Ｂに関して以下でより詳細に説明するように、下側スロット３１１ｂの周辺部と、対応する下側ピン３２６ｂとの間の第１の接触インターフェース、及び上側スロット３１３ｂの周辺部と、対応する上側ピン３２８ｂとの間の第２の接触インターフェースが、運動範囲を限定し、前方ガード２１０ｂの移動を導く。

【0023】

後方ガード２１２ｂは前方ガード２１０ｂと同様に機能する。後方ガード２１２ｂは、ハウジングピース２０９ｂの下側ピン３２７ｂに対応する下側スロット３１５ｂと、ハウジングピース２０９ｂの上側ピン３２９ｂに対応する上側スロット３１７ｂとを有する。カバー３２０ｂがハウジングピース２０９ｂに結合されているとき、下側ピン３２７ｂは下側スロット３１５ｂ内に配置され、上側ピン３２９ｂは上側スロット３１７ｂ内に配置されている。前方ガード２１０ａ及び後方ガード２１２ａは、前方ガード２１０ｂ及び後方ガード２１２ｂと同様に機能する。前方ガード２１０ａは、ハウジングピース２０９ａの下側ピン３２６ａ（図４Ａに示す）に対応する下側スロット３１１ａと、ハウジングピース２０９ａの上側ピン３２８ａに対応する上側スロット３１３ａとを有する。カバー３２０ａがハウジングピース２０９ａに結合されているとき、下側ピン３２６ａは下側スロット３１１ａ内に配置され、上側ピン３２８ａは上側スロット３１３ａ内に配置されている。後方ガード２１２ａは、ハウジングピース２０９ａの下側ピン３２７ａ（図４Ａに示す）に対応する下側スロット３１５ａと、ハウジングピース２０９ａの上側ピン３２９ａに対応する上側スロット３１７ａとを有する。カバー３２０ａがハウジングピース２０９ａに結合されているとき、下側ピン３２７ａは下側スロット３１５ａ内に配置され、上側ピン３２９ａは上側スロット３１７ａ内に配置されている。

【0024】

図示するように、下側ピン３２６ａ、３２６ｂ、３２７ａ及び３２７ｂは、上側ピン３２８ａ、３２８ｂ、３２９ａ及び３２９ｂから垂直に間隔を空けており、これは、上側ピン３２８ａ、３２８ｂ、３２９ａ及び３２９ｂと比較して下側ピン３２６ａ、３２６ｂ、３２７ａ及び３２７ｂが地面により接近して位置する場合があることを意味する。図示するように、下側ピン３２６ａ、３２６ｂ、３２７ａ及び３２７ｂ及び上側ピン３２８ａ、３２８ｂ、３２９ａ及び３２９ｂは、対応するハウジングピース２０９ａ～２０９ｂから内向きに延びて、地表面に平行な軸上に配置されている（例えば、カバーの全ての開口部を通過する軸であって、キャスタホイール１０１の外面と直角をなす軸）。加えて、後述するように、下側ピン３２６ａ、３２６ｂ、３２７ａ及び３２７ｂは、対応するハウジングピース２０９ａ～２０９ｂに結合された対応するカバー３２０ａ～３２０ｂを係合するために、上側ピン３２８ａ、３２８ｂ、３２９ａ及び３２９ｂよりも長い。下側ピン３２６ａ、３２６ｂ、３２７ａ及び３２７ｂが対応するスロット３１１ａ、３１１ｂ、３１５ａ及び３１５ｂを通して挿入された後、下側ピン３２６ａ、３２６ｂ、３２７ａ及び３２７ｂは、カバー３２０ａ～３２０ｂの対応する開口部の中に更に挿入される。したがって、前方ガード２１０ａ及び後方ガード２１２ａは、ハウジングピース２０９ａと対向するカバー３２０ａとの間で移動可能に係止され、前方ガード２１０ｂ及び後方ガード２１２ｂは、ハウジングピース２０９ｂと対向するカバー３２０ｂとの間で同様に移動可能に係止される。前方ガード２１０及び後方ガード２１２は、地表面に対して略垂直に長手方向に向けられている。ガードの移動は、垂直面（例えば、地表面と直角をなす平面）内に実質的に限定される。図４Ａ及び図４Ｂに関して以下でより詳細に説明するように、各ガードの運動範囲は、各スロットと対応するピンとの間の接触により定められる領域に限定される。

【0025】

図示するように、付勢要素３３０ｂが、その下端部にて下側ピン３２６ｂに結合され、その上端部にて前方ガード２１０ｂのフック３３４ｂに結合されるように構成されている。各付勢要素の下端部は、地面に近い方の端部を指す。各付勢要素の上端部は、地面から遠い方の端部を指す。付勢要素３３０ｂは、前方ガード２１０ｂの上端部を下側ピン３２６ｂの方向に付勢する。下側ピン３２６ｂはハウジングピース２０９ｂに固定されているので、前方ガード２１０ｂは下向きに付勢されて完全に展開された状態（図２Ｂに示される）になっている。付勢要素３３２ｂは、付勢要素３３０ｂと同様に機能する。付勢要素３３２ｂは、その下端部にて下側ピン３２７ｂに結合され、その上端部にて後方ガード２１２ｂのフック３３６ｂに結合されるように構成されている。付勢要素３３０ａ及び３３２ａは、付勢要素３３０ｂ及び３３２ｂと同様に機能する。付勢要素３３０ａは、その下端部にて下側ピン３２６ａに結合され、その上端部にて前方ガード２１０ａのフック３３４ａに結合されるように構成されている。付勢要素３３２ａは、その下端部にて下側ピン３２７ａに結合され、その上端部にて後方ガード２１２ａのフック３３６ａに結合されるように構成されている。

【0026】

ねじ３２１ａ～３２１ｄを使用して一緒に保持されている構成要素と、ねじ３２２ａ～３２２ｄを使用して一緒に保持されている構成要素とは、ねじ２１８ａ～２１８ｃを使用してハウジングピース２０９ａをハウジングピース２０９ｂにねじ込むことにより、一緒に結合されるように構成されている。ねじ２１８ａ～２１８ｃは、ハウジングピース２０９ａの対応する開口部及びハウジングピース２０９ｂの対応するねじ穴の中に、この順序で挿入されるように構成されている。ハウジングピース２０９ａ及びハウジングピース２０９ｂが一緒に結合され、対応するキャスタ上に取り付けられる場合、ねじ２１８ｄ～２１８ｅ及び対応するねじキャップ３１９ｄ～３１９ｅを使用して、組み立てられたハウジングピースにカラー２１６が結合される。

【0027】

図３Ｂ～Ｃは、本開示の特定の実施形態による、キャスタアセンブリの実施形態の断面に対して示す、想定される寸法を表す。図３Ｃは、図３Ｂに示すＡでとった断面図を表す。図３Ｃに示す断面図では、明確化のため、ねじ３２２ａ～ｄ、並びに付勢要素３３０ｂ及び３３２ｂは取り除かれている。いくつかの実施形態では、中心線と上側ピン３２９ｂとの間の距離３５０は、ほぼ１０ｍｍ（０．４インチ）～３５．６ｍｍ（１．４インチ）の範囲、例えば２３ｍｍ（０．９インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、上側ピン３２９ｂと、後方ガード３１２ｂの左半径方向形成部との間の水平距離３５２は、ほぼ１．３ｍｍ（０．０５インチ）～１８ｍｍ（０．７インチ）の範囲、例えば８．７４ｍｍ（０．３４４インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、上側ピン３２９ｂと、後方ガード３１２ｂの右半径方向形成部との間の水平距離３５４は、ほぼ６．４ｍｍ（０．２５インチ）～２０ｍｍ（０．８インチ）の範囲、例えば１３．９ｍｍ（０．５４９インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、上側ピン３２９ｂと下側ピン３２７ｂとの間の距離３５６は、ほぼ３０ｍｍ（１．２インチ）～５７ｍｍ（２．２５インチ）の範囲、例えば４４．９６ｍｍ（１．７７０インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、上側ピン３２９ｂと、後方ガード３１２ｂの右半径方向形成部との間の垂直距離３５８は、ほぼ７．６ｍｍ（０．３インチ）～２３ｍｍ（０．９インチ）の範囲、例えば１５．１ｍｍ（０．５９４インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、上側ピン３２９ｂと、後方ガード３１２ｂの左半径方向形成部との間の垂直距離３６０は、ほぼ７．６ｍｍ（０．３インチ）～２３ｍｍ（０．９インチ）の範囲、例えば１４．４ｍｍ（０．５６８インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、スロット３１５ｂの長さ３６２は、ほぼ６．４ｍｍ（０．２５インチ）～２５．４ｍｍ（１．０インチ）の範囲、例えば１６．５ｍｍ（０．６５０インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、スロット３１５ｂの幅３６４は、ほぼ１．３ｍｍ（０．０５インチ）～１０ｍｍ（０．４インチ）の範囲、例えば４．６ｍｍ（０．１８０インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、中心線と、スロット３１５ｂの中心及び上側ピン３２９ｂを通るラインとの間の角度３６６は、ほぼ５～２５度の範囲、例えば１０度であってもよい。いくつかの実施形態では、左半径方向形成部及び右半径方向形成部と、後方ガード３１２ｂの底部との間の垂直距離３６８は、ほぼ２５．４ｍｍ（１インチ）～１０２ｍｍ（４インチ）の範囲、例えば６０．１２ｍｍ（２．３６７インチ）であってもよい。いくつかの実施形態では、ホイール直径３７０は、ほぼ７６ｍｍ（３インチ）～１７８ｍｍ（７インチ）の範囲、例えば１２５．０ｍｍ（４．９２１インチ）であってもよい。いくつかの例示的な寸法が上記で提供されたが、他の寸法も想定されることを理解されたい。例えば、ホイール直径が、上記で示された寸法よりも小さい又は大きい場合、その寸法は、異なるサイズのホイールに適するように適切に拡大縮小されてもよい。更に、本明細書に記載されているキャスタにとっては他の角度及び寸法も好適であり、上記の実施例は限定的であることを意図しておらず、むしろ予想されるキャスタの実施形態の例示である。

【0028】

図４Ａは、前方ガード２１０ａ、後方ガード２１２ａ、及びハウジングピース２０９ａの内部側面図を表す。図４Ａでは、前方ガード２１０ａ及び後方ガード２１２ａは完全に展開された状態にある。完全に展開された状態では、下側ピン３２６ａ及び３２７ａは、下側スロット３１１ａ及び３１５ａの各々の上端部に配置される。更に、完全に展開された状態では、上側ピン３２８ａ及び３２９ａ（これらは、図４Ａにおいて対応する付勢要素３３０ａ及び３３２ａの裏側に位置するので見えない）は、上側スロット３１３ａ及び３１７ａの各々の上端部に配置される。各スロットの上端部は、地面から遠い方の端部を指す。各スロットの下端部は、地面に近い方の端部を指す。図示するように、前方ガード２１０ａの本体４４０ａは、ハウジングピース２０９ａの周辺部の内側に配置された第１の端部４４２ａと、ハウジングピース２０９ａの周辺部の外側に配置された第２の端部４４４ａとを有する。ハウジングピース２０９ａの周辺部は、側面から見たときにハウジングピース２０９ａの内側の領域を指す。完全に展開された状態では、前方ガード２１０ａは、地面との間に最小限の第１のクリアランスを有する。地面との間のクリアランスは、地面から第２の端部４４４ａまでの距離を指し、この距離は、地表面に対して垂直に測定される。

【0029】

本体４４０ａは、少なくとも部分的に本体４４０ａの周辺部の周囲に延びている側壁４４６ａを有する。側壁４４６ａは、側壁４４６ａの対向する部分間に内側キャビティ４４８ａを画定する、本体４４０ａの隆起部分を指す。本体４４０ａは、ハウジングピース２０９ａの周辺部の外側に配置された側壁４４６ａの一部分に沿って形成された先端エッジ４５４ａを有する。先端エッジは、医療機器１００がキャスタアセンブリ１０２上であちこちに移動する際に、物体に最初に接触するように構成された、各ガードの外向きに面する部分を指す。先端エッジ４５４ａは、地表面に対して垂直であって、物体が前面から前方ガード２１０ａに接触するための大きな表面領域を提供する。特定の他の実施形態では、先端エッジ４５４ａは、地表面に対して非垂直である。特定の実施形態では、先端エッジ４５４ａと接触物体との間の摩擦を増加させて滑りを防止するために、先端エッジ４５４ａは、表面プロファイル（例えば、水平若しくは垂直な隆起、格子パターン、又は任意の好適な表面テクスチャ）を有する。

【0030】

本体４４０ａは、一方の側（例えば、示されるハウジングピース２０９ａに近い方の側）に、内側キャビティ４４８ａを取り囲む外面４５０ａを有する。外面４５０ａは、側壁４４６ａの対向する部分の間に延びている。下側スロット３１１ａ及び上側スロット３１３ａは、外面４５０ａに定められる。フック３３４ａが、本体４４０ａの第１の端部４４２ａに配置されている。付勢要素３３０ａの上端部は、フック３３４ａの周囲に嵌合して、付勢要素３３０ａを前方ガード２１０ａに結合させている。本体４４０ａの第１の端部４４２ａにおいて、側壁４４６ａを通して切欠き４５２ａが形成されている。切欠き４５２ａは、付勢要素３３０ｂがフック３３４ａに結合するために、側壁４４６ａを通って延びるための、付勢要素３３０ｂのための開口部を提供する。図示するように、付勢要素３３０ａは、内側キャビティ４４８ａ内に嵌まる。付勢要素３３０ａの下端部は、下側ピン３２６ａの周囲に嵌合して、付勢要素３３０ａはハウジングピース２０９ａに結合される。

【0031】

後方ガード２１２ａ、前方ガード２１０ｂ及び後方ガード２１２ｂは、各々が、前方ガード２１０ａと同様に構築され構成されている。例えば、後方ガード２１２ａ（図４Ａに示す）を参照すると、後方ガード２１２ａの本体４４１ａは、ハウジングピース２０９ａの周辺部の内側に配置された第１の端部４４３ａと、ハウジングピース２０９ａの周辺部の外側に配置された第２の端部４４５ａとを有する。本体４４１ａは、少なくとも部分的に本体４４１ａの周辺部の周囲に延びている側壁４４７ａを有する。本体４４１ａは、ハウジングピース２０９ａの周辺部の外側に配置された側壁４４７ａの一部分に沿って形成された先端エッジ４５５ａを有する。先端エッジ４５５ａは、地表面に対して垂直であって、物体が背面から後方ガード２１２ａに接触するための大きな表面領域を提供する。特定の他の実施形態では、先端エッジ４５５ａは、地表面に対して非垂直である。特定の実施形態では、先端エッジ４５５ａと接触物体との間の摩擦を増加させて滑りを防止するために、先端エッジ４５５ａは、表面プロファイル（例えば、水平若しくは垂直な隆起、格子パターン、又は任意の好適な表面テクスチャ）を有する。付勢要素３３２ａの背後に示されるように、本体４４１ａは、一方の側（例えば、示されるハウジングピース２０９ａに近い方の側）に、内側キャビティ４４９ａを取り囲む外面４５１ａを有する。外面４５１ａは、側壁４４７ａの対向する部分の間に延びている。下側スロット３１５ａ及び上側スロット３１７ａは、外面４５１ａに定められる。フック３３６ａが、本体４４１ａの第１の端部４４３ａに配置されている。付勢要素３３２ａの上端部は、フック３３６ａの周囲に嵌合して、付勢要素３３２ａを後方ガード２１２ａに結合させている。本体４４１ａの第１の端部４４３ａにおいて、側壁４４７ａを通して切欠き４５３ａが形成されている。切欠き４５３ａは、付勢要素３３２ｂがフック３３６ａに結合するために、側壁４４７ａを通って延びるための、付勢要素３３２ｂのための開口部を提供する。図示するように、付勢要素３３２ａは、内側キャビティ４４９ａ内に嵌まる。付勢要素３３２ａの下端部は、下側ピン３２７ａの周囲に嵌合して、付勢要素３３２ａはハウジングピース２０９ａに結合される。

【0032】

図４Ｂは、前方ガード２１０ａ、後方ガード２１２ａ、及びハウジングピース２０９ａの内部側面図を表す。図４Ｂでは、後方ガード２１２ａは完全に展開された状態のままであるが、前方ガード２１０ａは格納された状態に移行している。図示するように、前方ガード２１０ａは、完全に格納された状態にある。特定の実施形態では、完全に展開された状態以外のあらゆる状態が、格納された状態又は部分的に格納された状態とみなされ得ることに留意されたい。このような状態はまた、部分的に展開された状態ともみなされ得る。図示するように、ハウジング２０９ａの外側に配置された、前方ガード２１０ａの一部分（例えば、先端エッジ４５４ａ又は第２の端部４４４ａ）と、固定物体２１４との間の接触が、前方ガード２１０ａを格納された状態に移行させる。完全に格納された状態では、下側ピン３２６ａは下側スロット３１１ａの下端部に配置され、上側ピン３２８ａ（図４Ｂでは、付勢要素３３０ａの背後に位置する）は上側スロット３１３ａの下端部に配置されている。格納された状態では、前方ガード２１０ａは付勢要素３３０ａの下向きの付勢力に抗して上向きに移行している。格納された状態では、前方ガード２１０ａは、図４Ａに示す第１のクリアランスよりも大きい、地面との間の第２のクリアランスを有する。完全に格納された状態の前方ガードを示す図４Ｂでは、第２のクリアランスは最大である。格納された状態では、付勢要素３３０ａは、展開された状態の同じ付勢要素と比較して伸びている。図４Ｂに示すように、付勢要素３３０ａはまた、付勢要素３３２ａと比較して延長されている。前方ガード２１０ａの格納については、図５Ａ～図５Ｄを参照して以下で更に詳細に説明されている。

【0033】

図５Ａ～図５Ｄは、固定物体２１４との接触中、及びその後の固定物体を越える運動中の、下側ピン３２６ａ及び上側ピン３２８ａに対する前方ガード２１０ａの運動を示す。明確にするため、キャスタアセンブリ１０２の他の全ての構成要素は、仮想線で示すキャスタホイール１０１を除いて図５Ａ～図５Ｄから省略されている。図５Ａに示すように、キャスタホイール１０１は固定物体２１４の左側に配置され、前方ガード２１０は完全に展開された状態にある。完全に展開された状態では、下側ピン３２６ａは下側スロット３１１ａの上端部に配置され、上側ピン３２８ａは上側スロット３１３ａの上端部に配置される。前方ガード２１０ａは、上端部で収束する上側スロット３１３ａの形状と組み合わされて前方ガード２１０ａが下向きに付勢されていることに起因して、上側ピン３２８ａに対して中心に配置されている。

【0034】

図５Ｂに示すように、キャスタホイール１０１は固定物体２１４に近づいており、前方ガード２１０ａは第１の格納された状態に移行している。図５Ｂに示す位置では、キャスタホイール１０１が依然として固定物体２１４から間隔を空けていることに留意されたい。図示するように、前方ガード２１０ａの先端エッジ４５４ａは固定物体２１４の左側２１４ａに接触している。前方ガード２１０ａの移動（例えば、格納）は、下側スロット３１１ａの周辺部と、対応する下側ピン３２６ａとの間の接触による第１の部分、及び上側スロット３１３ａの周辺部と、対応する上側ピン３２８ａとの間の接触による第２の部分により導かれる。下側スロット３１１ａは、前方ガード２１０ａの並進運動を２つの方向にだけに限定するように構成された直線形状を有する。換言すれば、下側ピン３２６ａが下側スロット３１１ａ内で２つの方向（例えば、上及び下）にのみ移動できるように、下側スロット３１１ａの幅は下側ピン３２６ａの直径とほぼ同じである。下側スロット３１１ａとは対照的に、上側スロット３１３ａは、任意の方向への前方ガード２１０ａの並進運動を許容するように構成された非線形形状を有する。換言すれば、上側ピン３２８ａが上側スロット３１３ａ内で任意の方向（例えば、上、下、左、及び右）に移動できるように、上側スロット３１３ａの幅及び長さは両方とも上側ピン３２８ａの直径よりも大きい。図示するように、上側スロット３１３ａは、三角形である。代わりに、上側スロット３１３ａは、正方形、矩形、円形、又は他の任意の好適な非線形形状であってもよい。

【0035】

上側スロット３１３ａが上側ピン３２８ａに対して任意の方向に運動することにより、下側スロット３１１ａが、下側スロット３１１ａの長手方向軸に沿って並進運動することに加えて、下側ピン３２６ａの長手方向軸を中心として回転することが可能である。したがって、前方ガード２１０ａが先端エッジ４５４ａにて固定物体２１４の左側２１４ａに接触するにつれて、前方ガード２１０ａに横方向の力が作用して、前方ガード２１０ａ及び下側スロット３１１ａを下側ピン３２６ａの長手方向軸を中心として時計回りに回転させる。前方ガード２１０ａの回転は、（スロット３１３ａの周辺部に対応する）側壁４４６ａの左側を上側ピン３２８ａに接触させて並進移動させる。図示するように、上側スロット３１３ａの（下向きに広がる）形状及び側壁４４６ａの余角は、前方ガード２１０ａを上向きに移動させて、下側スロット３１１ａを下側ピン３２６ａに接触させて並進移動させる。

【0036】

図５Ｃに示すように、キャスタホイール１０１は移動して固定物体２１４と接触し、前方ガード２１０ａは、地面との間に、図５Ｂに示す第１の格納された状態と比較して、より大きなクリアランスを有する第２の格納された状態に移行している。図５Ｃでは、キャスタホイール１０１は、固定物体２１４の側面２１４ａ及び上面２１４ｂを接続するエッジに接触している。図５Ｂ及び図５Ｃを比較すると、前方ガード２１０ａに横方向の力を印加し続けることにより、下側ピン３２６ａの長手方向軸を中心とする前方ガード２１０ａ及び下側スロット３１１ａが時計回りに回転し続け、それにより、側壁４４６ａの左側が上側ピン３２８ａに接触して並進移動し続け、下側スロット３１１ａが下側ピン３２６ａに接触して並進移動し続けるにつれて、前方ガード２１０ａが上向きに移動し続ける。図５Ｃに示すように、前方ガード２１０ａは完全にキャスタホイール１０１の周辺部内に配置されている。したがって、固定物体２１４を越えるキャスタホイール１０１の図示する移動に対して、前方ガード２１０ａの格納は最大である。

【0037】

図５Ｄに示すように、キャスタホイール１０１は固定物体２１４の上面２１４ｂ上に移動しており、前方ガード２１０ａは完全に展開された状態に移行している。図示していないが、キャスタホイール１０１が固定物体２１４の上面２１４ｂ上に最初に移動した後、前方ガード２１０ａの第２の端部４４４ａが移動して上面２１４ｂに接触する。この時点で、前方ガード２１０ａに作用する横方向の力は取り除かれる。代わりに、第２の端部４４４ａに対して鉛直力が作用して、前方ガード２１０ａを格納された状態に維持している。上面２１４ｂに沿ったキャスタホイール１０１の継続的な移動により、前方ガード２１０ａの第２の端部４４４ａと固定物体２１４の上面２１４ｂとの間により大きなクリアランスがもたらされ、前方ガード２１０ａが、図５Ｄに示す完全に展開された状態に移行することが可能になる。図示していないが、キャスタホイール１０１が図示する方向に継続して移動すると、その結果、キャスタホイール１０１が固定物体２１４から離れて地表面上に戻るにつれて、後方ガード２１２ｂが固定物体２１４の右側に接触し得る。特定の実施例では、（図４Ａ～図４Ｂに示す）先端エッジ４５５ａに対向する、後方ガード２１２ａの後端エッジ、又は後方ガード２１２ａの第２の端部４４５ａが、固定物体２１４の右側に接触して、後方ガード２１２ａを第３の格納された状態に移行させることができる。

【0038】

動作では示していないが、（図４Ａ～図４Ｂに示す）後方ガード２１２ａの構造及び機能は、前方ガード２１０ａの構造及び機能を反転したものであり、その結果、後方ガード２１２ａは、図５Ａ～図５Ｄに示す方向とは反対方向から接近する固定物体に道を譲ることが可能である。そのような実施例では、後方ガード２１２ａが先端エッジ４５５ａにて固定物体２１４の右側に接触するにつれて、後方ガード２１２ａに横方向の力が作用して、後方ガード２１２ａ及び下側スロット３１５ａを下側ピン３２７ａの長手方向軸を中心として反時計回りに回転させる。後方ガード２１２ａの回転により、（スロット３１７ａの周辺部に対応する）側壁４４７ａの右側を上側ピン３２９ａに接触させて並進移動させる。上側スロット３１７ａの（下向きに広がる）形状及び側壁４４７ａの余角は、後方ガード２１２ａは上向きに移動させて、下側スロット３１５ａを下側ピン３２７ａに接触させて並進移動させる。

【0039】

したがって、本明細書で説明された特定の実施形態は、機器のキャスタホイールと共に使用できる格納式ガードアセンブリを提供する。格納式ガードアセンブリは、機器をあちこちに移動させる際にケーブル及びホースなどの物体を押し退けるように展開され得る。格納式ガードアセンブリはまた、ドアの敷居及びエレベータの敷居などの固定障害物、又はフロアマットなどの非固定であるが動かしにくい障害物を越えて機器を移動させる場合、格納され得る。

【0040】

前述の説明は、いかなる当業者も本明細書に記載される様々な実施形態を実践できるようにするために提供されている。これらの実施形態に対する様々な修正形態が当業者に容易に明らかであり、本明細書で定義する一般的な原理は、他の実施形態に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図されるものではなく、特許請求の範囲の文言と整合する全範囲が認められるべきである。

【図1】

【図2A-2C】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図4A-4B】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】

【国際調査報告】