(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】磁気遮蔽体
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20240614BHJP
A61B 5/245 20210101ALI20240614BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G01R33/02 W
G01R33/02 R
A61B5/245
H05K9/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573599
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2022063808
(87)【国際公開番号】W WO2022238588
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523447498
【氏名又は名称】マグネティック シールズ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523449676
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ノッティンガム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ウルガー、 デビッド
(72)【発明者】
【氏名】チャルマース、 ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー、 ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン、 エリオット
(72)【発明者】
【氏名】ボウテル、 リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス、 マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ホームズ、 ニアル
(72)【発明者】
【氏名】グローバー、 ポール
【テーマコード(参考)】
2G017
4C127
5E321
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA03
2G017AA08
2G017AB01
2G017AB09
2G017AC01
2G017AD04
2G017BA15
4C127AA10
4C127CC02
5E321AA33
5E321GG07
(57)【要約】
能動磁気遮蔽システムが、局所磁場を検知するべく配列される一アレイの磁場センサを含む。一アレイの磁場要素が配列されて磁場をもたらす。各磁場要素は、囲まれた相殺容積を画定するべく少なくとも3つの平面に配列されてベクトル磁場パターンをもたらす複数の表面に取り付けられる単位コイルを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動磁気遮蔽システムであって、
局所磁場を検知するべく配列される一アレイの磁場センサと、
-20nTから+20nTの磁場をもたらすべく配列される一アレイの磁場要素であって、
各磁場要素が、囲まれた相殺容積を画定するべく少なくとも3つの平面に配列された複数の表面に取り付けられる単位コイルを含み、各単位コイルが、ベクトル磁場パターンをもたらすべく配列されるコイル配線経路を含む、一アレイの磁場要素と、
各単位コイルに制御電流を与えるべく配列される電流ソースと、
検知された局所磁場を最小にするように各単位コイルに対して前記電流ソースを制御するフィードバックアルゴリズムと
を含む、能動磁気遮蔽システム。
【請求項2】
前記単位コイルは、囲まれた相殺容積を画定するべく3平面に配列される、請求項1に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項3】
前記一アレイの磁場要素をサポートするべく配列される受動磁気遮蔽体をさらに含む、請求項1又は2に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項4】
前記受動磁気遮蔽体は少なくとも、高透磁率材料から形成される第1層と、高導電率材料から形成されるさらなる層とを含む、請求項3に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項5】
前記受動磁気遮蔽体は磁気遮蔽室(MSR)を含み、前記一アレイの磁場要素が前記MSRの各壁上に又は各壁の中に配置される、請求項3又は4に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項6】
前記ベクトル磁場パターンは5nT以下の大きさを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項7】
各単位コイルは正方形コイルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項8】
前記正方形コイルは、前記3平面のそれぞれにおいて2×2グリッド構成に配列される、請求項7に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項9】
前記一アレイの磁場要素は、重なり合う単位コイルを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項10】
脳磁図(MEG)において使用される請求項1から9のいずれか一項に記載の能動磁気遮蔽システム。
【請求項11】
能動磁気遮蔽体をもたらす方法であって、
磁場を、
一アレイの磁場要素を与えることであって、各磁場要素が単位コイルを含むことと、
各単位コイルにおいて一セットのコイルパラメータを特定することと、
標的容積に広がる一グリッドの標的ポイントにわたって各単位コイルに電流を印加することと、
各標的ポイントにおいて各単位コイルが生成する単位電流あたりの磁場を計算することと、
計算された単位電流あたりの磁場を標的磁場にマッピングすることと、
各単位コイルに対して最適なコイル電流を決定することと
によって生成することと、
生成された磁場と前記標的磁場とを比較することと
を含む、能動磁気遮蔽体をもたらす方法。
【請求項12】
最適なコイル電流が、前記電流値の合計を最小にすることと、印加される電流の最大値を画定するしきい値を適用することとによって決定される、請求項11に記載の能動磁気遮蔽体をもたらす方法。
【請求項13】
各磁場センサにおいて各コイルがもたらす前記単位電流あたりの磁場が、既知の標的ポイントの位置を使用して計算される、請求項11又は12に記載の能動磁気遮蔽体をもたらす方法。
【請求項14】
各磁場センサにおいて各コイルがもたらす前記単位電流あたりの磁場が、既知の電流を各コイルに順番に印加することによって測定される、請求項11又は12に記載の能動磁気遮蔽体をもたらす方法。
【請求項15】
各単位コイルにおけるコイルパラメータが、単位コイルの幾何学形状と単位コイル間のオフセットとに基づく、請求項11から14のいずれか一項に記載の能動磁気遮蔽体をもたらす方法。
【請求項16】
生成された磁場と前記標的磁場との比較に基づいて各単位コイルにおけるコイルパラメータを変化させることと、
請求項10から14のいずれか一項のステップを、生成された磁場と前記標的磁場とが一致するまで繰り返すことと
をさらに含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の能動磁気遮蔽体をもたらす方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気遮蔽システムに関する。詳しくは、本発明は、磁気遮蔽システムの設計、最適化及び動作の原理に関する。
【背景技術】
【0002】
センサ及び機器を磁場から遮蔽することは、基礎物理学実験及び衛星測定を含む多くのアプリケーションにおいて重要である。かかる遮蔽はまた、脳磁図(MEG)及び磁気共鳴イメージング(MRI)を含む医用イメージングにおいても重要である。
【0003】
磁気遮蔽体は、2つのタイプに分類される。能動遮蔽体と受動遮蔽体である。受動遮蔽は、遮蔽される空間を隔離するべく導電性又は磁性材料の障壁によって磁場をブロックすることによって達成される。静的に又は緩やかに変化する磁場に対し、遮蔽される容積まわりに磁気遮蔽ラインのための経路を与えるようにパーマロイ又はミューメタルの遮蔽体が使用される。
【0004】
したがって、磁気遮蔽体の最も効果的な形状は、遮蔽される容積を取り巻く閉じた容器の形状である。
【0005】
受動遮蔽の限界を超えるように遮蔽するべく、受動的に遮蔽される容積の中で能動遮蔽も使用される。能動遮蔽は、電磁石によって生成された磁場を使用して、周囲磁場の幾何学形状に一致するカウンター磁場をもたらすことにより、容積内の周囲磁場を相殺する。
【0006】
人間の脳は、数千億個の電流を搬送するニューロンを含む非常に複雑な電気回路と考えることができる。電線を流れる電流とちょうど同じように、ニューロンを流れる小電流が磁場を生成する。これらの磁場を測定すれば、ミリ単位の精度で脳機能に関する独自の洞察を得ることができ、てんかん活動の部位のような臨床マーカーを特定するために使用できる。ミリ秒の時間分解能も得ることができ、環境に応じた脳状態のリアルタイム変化の研究に利用できる。
【0007】
脳磁図検査(通常MEGとして知られている)は、頭皮に配置され又は頭皮の近くに保持される複数アレイの磁場センサを使用して、脳が生成する磁場を非侵襲的に測定する。
【0008】
磁場は、医療環境及び診断環境において心臓(MCG)、脊椎(MSG)、腸(MGG)、筋系(MMG)からも測定することができる。かかるイメージングプロセスはまた、身体の一部及び体外神経等のイメージング及び分析にも適している。これらのアプリケーションは本質的に、同様のレベルの遮蔽を必要とする。
【0009】
MEGは、脳からの磁場が地球の磁場の1,000億倍以上小さく、電子デバイス、自動車、リフト及び主電源が生成する磁場のような、他の磁気干渉の外部ソースよりも桁違いに小さいため、著しい工学的課題を抱えている。その結果、脳機能によってもたらされた磁気信号は、環境磁気干渉によって不明瞭になり得る。
【0010】
磁場は一般的に、磁場センサによって磁場を取り囲むことによって測定される。ここで、強度及び磁場方向は、磁場センサの磁石、コイル及び/又は電気コンポーネントへの磁場の影響に基づいて計算される。地磁場センサは、10pTから1mTの範囲で動作することに留意する必要がある。
【0011】
MEGシステム、電子顕微鏡、及び原子物理学実験で使用される機器を含む多くのシステムは、磁気遮蔽室(MSR)の形態の受動シールドによって磁気干渉の外部ソースから遮蔽することができる。これは典型的に、高透磁率の材料(例えばミューメタルのようなニッケル鉄合金)の2以上の層と、高導電率の材料(例えば銅又はアルミニウム)の1層とから構成される。
【0012】
最近まで、すべてのMEGシステム及び同様のシステムは、脳からの磁場を測定するために超伝導量子干渉デバイス(SQUID)を使用していた。SQUIDは、1fT(フェムトテスラ)のオーダーにある低い値の磁場を検出する低磁場センサである。
【0013】
SQUIDは、利用可能な最も感度の高い磁場検出器の一つであるが、-269℃の液体ヘリウムによる極低温冷却を必要とする。関連するコストと、例えば幼児のような小さな頭の参加者のスキャンには適さない設計の必須標準化、及びスキャン中に参加者が静止しなければならない必要性を含む実際的な制限とにより、MEGの取り込みは著しく制限されている。
【0014】
MEGシステムを利用しやすくするべく、MEGシステムにおいてSQUIDの代わりに光ポンピング磁力計(OPM)が使用されている。この種の磁場センサの小型化及び商業化により、多くの異なるスキャン状況に適合し得る装着可能システムの開発が可能となっている。OPM‐MEGシステムは、例えば、SQUID‐MEGシステムから得られない測定値を得るべく、動いている成人被験者、幼児、並びにパーキンソン病及びトゥレット症候群のような状態の患者を含む、以前には不適切な被験者をスキャンするために使用されている。
【0015】
しかしながら、OPM‐MEGシステムは固有の欠点を有する。SQUIDとOPMとの間には、時間と共に非常にゆっくりと(典型的には<1Hzの周波数で)変化する静磁場(又は直流(DC)磁場)に応答する態様に著しい違いが存在する。
【0016】
SQUIDは、一定オフセット磁場に対する時間変化磁場又はAC磁場の変化を測定するので、静的磁場にはほぼ鈍感である。対照的に、OPMは「ゼロ磁場共鳴」の近辺で動作し、約±5nT(ナノテスラ)の狭い範囲内の磁場にのみ敏感である。
【0017】
当業読者であれば、5nT(10-9T)と、緯度50°における地球の磁場の強度58μT(10-5T)との桁違いの差異がわかるであろう。
【0018】
最先端のMSRは、地球及び他の干渉ソースの磁場を約2nTまで低減し、約2nT/mの割合で空間位置に応じて変化する磁場を残すことができるが、これらの低減された磁場でも、頭部のセンサの小さな動きは、信号損失をもたらすセンサのダイナミックレンジを容易に超え得る磁場の大きな変化をもたらす。
【0019】
伝統的に、すべてのアプリケーションの能動遮蔽システムは、固定された容積にわたって制御された磁場パターンを生成する直交円形ループ(「ヘルムホルツケージ」として知られる)のような単純なコイル設計に依存してきた。単一のヘルムホルツコイルは典型的に、共通軸に沿って対称的に配置される2つの同一円形の磁気コイルから構成される。これらの磁気コイルは遮蔽される容積の両側に一つずつ配置され、コイルの半径に等しい距離だけ離間される。各コイルは同じ方向に同じ電流を搬送する。ヘルムホルツコイルは、受動遮蔽体の内側にある地球の磁場を相殺するべく使用され、磁場強度がはるかにゼロに近い領域をもたらす。
【0020】
スキャンされている被験者が、ヘルムホルツコイルによって形成される囲いに物理的に出入りすることは困難であり、相殺配列の固定された性質によって利用可能な動き又は実験が制限される。コイル巻線が2つの平面に制限される複数の2平面設計を生成し得るが、これらは少なくとも8層の入り組んだ配線経路の製造を必要とする。さらに、相殺容積が固定されたままなので、大きな予測不可能な動きには不向きな非柔軟性のシステムがもたらされる。
【0021】
能動遮蔽コイルによって生成される磁場とMSRの構築に使用される高透磁率材料との相互作用により、もたらされる磁場の予想される形状からの歪みと、もたらされる磁場強度の、印加されるコイル電流に対する比の、遮蔽不良をもたらす変化とがもたらされる。これらの相互作用をコイル設計に組み入れることができるが、結果として得られるシステムは固定相殺領域に限られたままである。
【発明の概要】
【0022】
本発明は、既知の磁場を生成するべく配列される磁場制御システムに関する。本発明の一実施形態は、MSRにおける残留磁場を低減するべく配列される磁気遮蔽システムを与え、磁気遮蔽体デバイスにおいて被験者が動いている間の信号損失を最小にする。
【0023】
したがって、本発明は、能動磁気遮蔽システムを与える。このシステムは、局所磁場を検知するべく配列される一アレイの磁場センサと、-20nTから+20nTの磁場をもたらすべく配列される一アレイの磁場要素とを含み、各磁場要素は、囲われた相殺容積を画定する少なくとも3つの平面に配列される複数の表面に取り付けられる単位コイルを含む。各単位コイルは、ベクトル磁場パターンをもたらすべく配列されるコイル配線経路を含み、電流ソースが、制御された電流を各単位コイルに与えるように配列される。フィードバックアルゴリズムが、検知された局所磁場を最小にするように各単位コイルに対して電流ソースを制御するように配列される。
【0024】
複数の単位コイルは、囲まれた相殺容積を画定するべく3平面に配列され得るが、相殺容積のサイズ及び形状に従って6平面まで配列され得る。
【0025】
能動磁気遮蔽システムはさらに、当該一アレイの磁場要素を支持するべく配列される受動磁気遮蔽体を含む。受動磁気遮蔽体は、高透磁率材料から形成される少なくとも第1層と、高導電率材料から形成される一のさらなる層とを含み得る。受動磁気遮蔽体はまた、磁気遮蔽室(MSR)も含み得る。一アレイの磁場要素がMSRの各壁に配置される。好ましくは、磁場要素は、MSRの各壁の内面に貼り付けられる。
【0026】
能動磁気遮蔽システムは好ましくは、5nT以下の大きさを有するベクトル磁場パターンをもたらす。
【0027】
好ましくは、各単位コイルは正方形コイルである。正方形コイルは、3平面の各平面において2×2グリッド構成に配列してよい。
【0028】
好ましくは、一アレイの磁場要素は、重複する単位コイルを含む。
【0029】
能動磁気遮蔽システムは、脳磁図(MEG)又はMRIアプリケーションでの使用を目的として配列されてよい。
【0030】
本発明はさらに、能動磁気遮蔽をもたらす方法を与える。方法は、一アレイの磁場要素を作ることによって磁場を生成することであって、各磁場要素が単位コイルを含むことと、各単位コイルに一セットのコイルパラメータを特定することと、標的容積に広がる一グリッドの標的ポイントを経由して各単位コイルに電流を印加することと、各標的ポイントにおいて各単位コイルが生成する単位電流あたりの磁場を計算することと、計算された単位電流あたりの磁場を標的磁場にマッピングすることと、各単位コイルに対して最適なコイル電流を決定することと、生成された磁場を標的磁場と比較することとを含む。
【0031】
好ましくは、能動磁気遮蔽をもたらす方法は、電流値の合計を最小にすることと、印加電流の最大値を画定するしきい値を適用することとによって、最適なコイル電流を決定する。単位電流当たりの磁場は、好ましくは、各磁場センサにおける各コイルによってもたらされ、その既知の標的ポイントの位置を使用して計算される。各磁場センサにおける各コイルによってもたらされる単位電流当たりの磁場は、既知の電流を各コイルに順番に印加することによって測定することができる。好ましくは、各単位コイルにおけるコイルパラメータは、単位コイルの幾何学形状と単位コイル間のオフセットとに基づく。
【0032】
能動磁気遮蔽をもたらす方法は、好ましくは、生成された磁場と標的磁場との比較に基づいて各単位コイルにおけるコイルパラメータを変化させることと、生成された磁場と標的磁場とが一致するまで本方法のステップを繰り返すこととをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の一実施形態が、添付図面を参照する例を介して以下に記載される。
【0034】
【
図2A】本発明に係る例示的な能動磁気遮蔽システムの第1視図である。
【
図2B】
図2Aの例示的な能動磁気遮蔽システムの第2視図である。
【
図3A】本発明に係る第1コイルパネルの第1平面図である。
【
図3C】
図3Aの第1コイルパネルのコイルの切り取り断面図である。
【
図3D】
図3Aの第1コイルパネルのコイル接続部の第2平面図である。
【
図4A】本発明に係る第2コイルパネルの平面図である。
【
図4C】
図4Aの第2コイルパネルの一配列のコイルの切り取り断面図である。
【
図4D】
図4Aの第2コイルパネルのコイル接続部の切り取り断面図である。
【
図5A】本発明に係る第3コイルパネルの平面図である。
【
図5C】
図5Aの第3コイルパネルの一配列のコイルの切り取り断面図である。
【
図5D】
図5Aの第3コイルパネルのコイル接続部の切り取り断面図である。
【
図6A】本発明に係る第4コイルパネルの平面図である。
【
図6C】
図6Aの第4コイルパネルの一配列のコイルの切り取り断面図である。
【
図6D】
図6Aの第4コイルパネルのコイル接続部の切り取り断面図である。
【
図7A】本発明に係る第5コイルパネルの平面図である。
【
図7C】
図7Aの第5コイルパネルの一配列のコイルの切り取り断面図である。
【
図7D】
図7Aの第5コイルパネルのコイル接続部の切り取り断面図である。
【
図8A】本発明に係る第6コイルパネルの平面図である。
【
図8C】
図8Aの第6コイルパネルの一配列のコイルの切り取り断面図である。
【
図8D】
図8Aの第6コイルパネルのコイル接続部の切り取り断面図である。
【
図9A】本発明に係る第7コイルパネルの平面図である。
【
図9C】
図9Aの第7コイルパネルの一配列のコイルの切り取り断面図である。
【
図9D】
図9Aの第7コイルパネルのコイル接続部の切り取り断面図である。
【
図10】本発明に係る例示的な窓コイルシステムの表現である。
【
図11】本発明に係る行列構成にある窓コイルシステムの一例の表現である。
【
図12】本発明に係る行列構成にある窓コイルのさらなる実施形態に係る行列構成にある窓コイルパネルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、磁気遮蔽室10の文脈にある周知の2平面コイルシステムを示す。第1セットのコイル巻線11が実質的に鉛直な態様で、遮蔽される容積13の第1側に配列される。第2セットのコイル巻線12が実質的に鉛直な態様で、遮蔽される容積13(相殺容積とたびたび称される)の第2側に配列される。第1コイル巻線11及び第2コイル巻線12は2つの平面に制限される。第1コイル巻線11及び第2コイル巻線12はそれぞれが、いくつかの層の入り組んだ配線経路を含む。これらの配線経路の層は、3から8又はこれ以上の数にしてよい。本実施形態において、第1コイル巻線11及び第2コイル巻線12は少なくとも8層を含む。相殺容積13が固定され、コイルの2平面配列によって限られる。これにより、被験者は、容積13の中に囲まれたときに静止したままでなければならず、処理中に得られるデータにおいて説明され得る小さく予測可能な動きのみがもたらされる。
【0036】
第1コイル巻線11及び第2コイル巻線12が生成する磁場は、互いの間で相互作用し、磁気遮蔽室10の構築に使用される高透磁率材料との相互作用もする。これらの相互作用により、もたらされる磁場が、その予測される形状から歪み、もたらされる磁場強度の、印加されるコイル電流との比が変化し、遮蔽の効率性が悪影響を受ける。これらの相互作用をコイル設計に組み入れることができるが、得られるシステムは依然として、固定された相殺容積13と当該容積13の中にいる被験者の許容パラメータとによって制限される。
【0037】
図2Aは、本発明に係る例示的な能動磁気遮蔽体配列の第1の部分図である。図示の実施形態は、本発明の一実施形態に係る「窓コイル」システムの実施形態である。
【0038】
能動磁気遮蔽システムは、局所磁場を検出するべく配列される一アレイの磁場センサを含む。磁気遮蔽体を生成するべく一アレイの磁場要素が設けられる。各磁場要素は、「窓」構成に配列される複数の単位コイルを含む。磁場要素は別個とされ、磁場センサから物理的に変位される。単位コイルは、遮蔽対象空間において「死角」を打ち消すように少なくとも3つの平面に配列される。立方体形状空間にわたって磁場が生成される場合、単位コイルは6つの平面に配列される。
【0039】
簡単な単位コイル配列は、矩形、正方形及び円形の配線経路を含む様々な幾何学的形状の配線経路を含む。コイルは、任意の形状に配列することができ、相殺容積の表面に適合するように選択することができる。配線経路は、MSRの壁の内面に直接配置してよく、又はその中に埋め込んでもよい。レイアウトの例が
図2Aから
図9Dに示され、例示的な設置システムが
図10に示される。
【0040】
MSRの使用に特に適しているが、能動磁気遮蔽体配列を単独で使用してもよい。
【0041】
図2Aは、壁面21、22の2つにおける、及び磁気遮蔽室(MSR)20の最上天井面24における、コイルの配列を示す。磁気遮蔽室20は、部屋の外部のソースから放出されるスプリアスな電磁場を減衰させるべく、良好な導電体である高透磁率金属の層を含むシェルを有する囲いである。高透磁率金属は典型的に、受動遮蔽体を形成するミューメタルを含む。
【0042】
受動遮蔽体は、ミューメタル又は他の、金属合金、ニッケル等のようなもののような、高透磁率を有する単数層の材料を含んでよい。受動遮蔽体は、銅又はアルミニウムのような、高導電率を有するさらなる層の材料も含んでよい。代替的に、受動遮蔽体は、高透磁率及び/又は高導電率の2以上の層から構築されてよい。
【0043】
本発明がMRIアプリケーションに使用される場合、受動遮蔽体は、銅、鋼若しくは他の鉄合金、又はアルミニウムを含む材料から形成され得る。かかる材料は、MRI機器によってもたらされる磁場を含む。
【0044】
MSR20における残留磁場をさらに低減するべく、ミューメタルにより与えられる受動遮蔽体は、「能動」遮蔽システムによって補完される。能動遮蔽は、電磁コイルを使用して室内の磁場と同等かつ反対の磁場を生成し、ヘッドフォンにおけるアクティブノイズキャンセリング技術とほぼ同様に機能して相殺空間内の周囲磁場を「相殺」する。
【0045】
磁場要素は、囲まれた空間の各表面にわたって複数の単位コイルを与えるように配列される。単位コイルは、3平面に配列される。単位コイルは協働して相殺容積を画定する。単位コイルは、好みに応じて調整又は画定できる3次元ベクトル磁場パターンをもたらし得る。
【0046】
壁面21上のコイル配線経路配列は、2×2パターンに配列された4グリッドの正方形コイルパネルを含み、各グリッドは、「窓」の全体的な視覚的外観を有する。4グリッドの壁面21は、
図3A~
図3Eに記載されるコイルパネル1である。
【0047】
コイルパネルは、取り付けられる壁面の有意な比率をカバーするように配列される。壁面22は、実質的に垂直な1×2配置で互いに隣接するように配列される
図5A~
図5Dにおいてさらに画定される2つのコイルパネル3を有する。壁面22は、MSR20の内部容積25にアクセスするための開口を有する。ドア面23は、結合された第2壁面22とドア面23とが、壁面22にわたって2×2コイルパネル配列を含むように、実質的に垂直な1×2配列に配列された2つのコイルパネルを含む。ドア面23の最下部は、
図8A~
図8Dに関連してさらに記載されるコイルパネル6を含む。ドア面23の最上部は、
図7A~
図7Dに関連してさらに記載されるコイルパネル5を含む。
【0048】
大抵の既知のMSR設計では、ドア開口、機器用の孔、及び取り外し可能パネルのような特徴部は「デッド」エリアであり、かかるエリアにおいて高透磁率金属を利用することが必ずしも可能又は実用的とは限らないので、遮蔽がなく、受動遮蔽体にはギャップが残っている。本発明では、能動遮蔽コンポーネントを、相殺容積のアクセス及び機能性に関連するドア、通気孔、又は他の開口のような部屋特徴部を、かかる特徴部を塞ぐことのないように適切な寸法のコイルパネルを与えることによって、設計プロセスにおいて組み入れるように配列することができる。その結果、部屋特徴部を組み入れない表面は、必要なコイルが少なくて済む。
【0049】
天井面24は、5つのコイルパネルが配列されている。これらのパネルは天井面24の実質全体にわたって延びる。2つのコイルパネル1が互いに隣接するように配列され、一方のコイルパネル1が壁面22の最上コイルパネル3に隣接し、天井面24の他方のコイルパネル1が、第1側のドア面23のコイルパネル5及び第2側の壁面21の最上コイルパネル1に隣接する。2つのさらなるコイルパネル2が、四角形天井面24の角に配列され、さらなるコイルパネル4が、コイルパネル2間に設けられて天井面24が完全に覆われる。
【0050】
簡単な幾何学的コイル設計により、アレイの製造及び設置が容易となる。コイルアレイを遮蔽体容積又はMSRの壁又は表面上に位置決めすることは、磁気遮蔽システムが、遮蔽容積において付加的な空間を占有しないことを意味する。コイルは、遮蔽容積の壁又は表面の中央部分を覆うように配列される。
【0051】
図2Bは、
図2Aの「窓コイル」構成に配列される例示的な能動磁気遮蔽システムの第2の部分図である。
図2Aの特徴に合わせて配列されると、
図2Aと
図2Bとの組み合わせられた特徴が、磁気遮蔽室20のすべての表面を覆って単一相殺容積25を画定するシステムを形成する。
【0052】
床面28は、壁面21と実質的に同じ窓コイル配列を有する。窓コイルは、2×2パターンに配列されるが、4つのコイルパネル7から形成されるコイルパネル7は、
図9A~
図9Dに関連してさらに記載される。
【0053】
壁面26及び壁面27は、それぞれの壁面を均一に覆うべく5つの単位コイルの一アレイから形成される天井面24と実質的に同じ窓コイルレイアウトを有する。壁面26、27はそれぞれが、互いに対して隣接かつ水平に配列される2つのコイルパネル1を有する。コイルパネル2は、壁面26、27の四角形の第1上角を形成するコイルパネル4に隣接するように配列される。四角形第2コイルパネル2が、コイルパネル2に対向するように配列され、壁面26、27の四角形の第1上角に対向する第2上角に遮蔽を与える。壁面26、27のコイルパネル4は、形状が矩形であり、コイルパネル2の2つの長辺それぞれが、その間にあるコイルパネル2の辺に隣接するように配列される。2つの短辺の最下部が壁面26、27のコイルパネル1に隣接する。
【0054】
ここに記載される本実施形態の規則性グリッドパターンは簡単な例であるが、実際にはアレイに対して任意数のコイル配線経路を選択することができ、広い範囲のパラメータを考慮することができる。例えば、各磁場要素のコイルは任意の形状を有し得る。MSRの異なる面が、異なるコイルアレイレイアウトを特徴としてよく、コイルは互いに重なり合い又は互いに個別に配列されてよい。
【0055】
コイル配線経路を重なり合わせると、すべての面にコイルを配置する必要なしに、磁場方向を部分的に制御することができる。
【0056】
図2Cは、相殺容積25を画定するMSR20の表面21、22、26、27、23、24、28に適用される複数の磁場要素を示す。コイルパネルの第2平面が示され、各コイルパネルの、それぞれのコイル配線経路は隠されている。コイル配線経路の接続コンポーネントが、各コイルパネルの角部分において可視である。
【0057】
このシステムは、典型的な磁気遮蔽室において24から48又はそれ以上の数の多くのコイル配線経路を特徴とする。コイル配線経路の数は、単位コイルが貼り付けられる表面の数に影響する遮蔽対象空間の形状によって決定される。したがって、本実施形態は、説明を目的として、標準的な実質的に矩形の部屋に合わせる。
【0058】
図2Dは、
図2Cの視図において隠れていた一アレイに配列される磁場要素の単位コイルを示す。
図2A及び
図2Bに示される各コイルパネルのタイプが示され、各コイルパネルの配線経路が可視である。コイルパネル1~7それぞれが本来の位置で示され、コイル配線経路が可視となるように第1平面側から見られている。本実施形態において、磁場システムは、各タイプのコイルパネルの倍数を組み入れている。すなわち、10×コイルパネル1、6×コイルパネル2、2×コイルパネル3、3×コイルパネル4、コイルパネル5及びコイルパネル6の各1、並びに4×コイルパネル7である。
【0059】
図3Aは、本発明に係る第1コイルパネル1の平面図である。コイルパネル1は、平面図にアセンブリとして示される。コイル配線経路30は、支持パネル31の第1平面に貼り付けられる。コイル配線経路30は、支持パネル31の平面の周縁まわりに正方形の形状で延び、本実施形態においてやはり正四角形であるパネルの表面エリア内に適合する。コイル配線経路30は、実質的に等しい各パネル側長32に沿って延びる。コイル配線経路30は、形成された連続巻線であり、又は一個別片、若しくは隣接セクションの一コイルを形成するように繰り返し巻かれる単一配線を形成するべく接合された数個片のいずれかである。
【0060】
コイルパネル1は、MSR20の選択された表面上の本来の位置に配置される場合、配線経路30がMSR20の表面に隣接して相殺容積25から見るとパネル31によって隠されるように取り付けられる。いくつかの実施形態において、配線経路30は、MSR20の表面に埋め込まれる。しかしながら、コイルパネル1はまた、配線経路30が露出されて相殺容積25に面するように配列されてよい。
【0061】
所定のコイルパラメータが決定される。これは、本実施形態において、各コイル正方形30の対称側長32、コイル中心33間の規則的な間隔、及び2×2グリッドの中心の、MSRの各表面の中心からの距離である。所与セットのコイルパラメータに対し、関心容積に広がる「標的ポイント」の規則的なグリッドにわたって、各コイルにおいて一単位の印加電流により生成される磁場が計算される。磁場計算は、関連する場合又は望ましい場合、MSR20の表面の近隣ミューメタルとの相互作用に関するデータを組み入れてよい。
【0062】
各標的ポイントが、ユーザの好みに従って決定される。好ましい配列において、相殺容積は、センサアレイの配列及び覆われる面積によって画定される。これらのパラメータは、標的ポイントのグリッドがマッピングされる近似的な立方相殺容積を決定するべく使用される。標的ポイントの数は、所望の解像度に従って決定される。好ましい実施形態において、標的ポイントは、立方相殺容積全体にわたって5cmのインターバルで設定してよい。
【0063】
標的ポイントにおいて生成される単位電流あたりの計算された磁場がその後、最適なコイル電流を特定することによって標的磁場にマッピンうされる。標的磁場は、「均一磁場」として知られる各標的ポイントにおいて同じ値を有する磁場として選択することができる。代替的に、標的磁場は、「磁場勾配」として知られる位置に応じて線形的に変化する磁場としてもよい。本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも一つの均一標的磁場を使用し、他の複数の実施形態が、少なくとも一つの磁場勾配標的磁場を使用する。さらなる実施形態が、均一標的磁場と磁場勾配標的磁場との混合を使用してよく、又は任意数のそれぞれを組み合わせて使用してよい。
【0064】
図3Bは、
図3Aの第1コイルパネルの断面図である。コイル配線経路30は、支持パネル31の平面の中への凹部として示される。支持パネル31は、任意の適切な非金属及び/又は非磁性材料から形成される。しかしながら、いくつかの実施形態において、支持パネルは、支持パネルが受動遮蔽を与えるのに適切な材料から形成されてよい。
【0065】
コイル配線経路30の単位コイル巻線は典型的に、3mmの深さまで凹み、支持パネル31の第1面において可視のままである。各連続巻線は、前の巻線から2mmだけオフセットされる。配線経路30の各配線は典型的に、直径1.5mmである。
【0066】
支持パネル31の表面は、いくつかの実施形態において、単位コイルを保護するべく又は単に隠すべく覆われてよい。
【0067】
図3Cは、
図3Aの第1コイルパネル1のコイル配線経路30の切り取り断面図であり、コイル配線経路30及び関連接続部が示される。コイル配線経路30は、各連続巻線が前の反復に隣接するように支持パネル31の平面の周縁まわりに配列される単一巻線から形成される。
【0068】
本実施形態のコイル配線経路30は、コイル端子34とコイル端子36との間に延びる20の巻線から形成される。磁場強度は、B~NIに対して直線的に拡大する。ここで、Iは電流、Nは巻線数である。本実施形態では、十分な磁場をもたらすべくN=20を選択する。
【0069】
電流ソースの既知の最大電流とMSR内の磁場の推定値に基づいて、必要な強度の磁場をもたらすのに十分な磁場がシステムによって生成されることを保証するようにNを選択し得る。
【0070】
コイルブリッジセクション37が、コイル端子34とコイル端子36との間に延びる。外部コネクタ35が、コイル端子36及びコイルブリッジセクション37の双方を外部電流ソースに接続し、コイルブリッジセクション37はコイルブリッジコネクタ38を介して接続される。
【0071】
外部電流ソースは、各コイル配線経路のコイルが、各単位コイルに印加される電流に応じて任意のベクトル磁場パターンをもたらすように、一セットの電流値を与えるように配列される。磁場パターンは、x、y又はz方向の磁場に限られない。したがって、測定の被験者は、遮蔽された相殺容積内の任意箇所に配置され得る。
【0072】
外部電流ソースは、一定範囲の基準に基づいてもたらされる磁場パターンを変化させるべく、様々な電流値を単位コイルに印加するように配列される。磁場パターンは、磁場センサ測定値、又は外部干渉の変化に関連する他のデータに基づいて、局所磁場を良好に減衰させるように更新されてよい。磁場パターンはまた、相殺空間内で動く被験者を追跡するように動的に更新されてよい。
【0073】
電流値は、フィードバックアルゴリズムによって、又は事前に決定され若しくは測定された値によって決定されてよい。電流計算方法は、受動遮蔽が使用される場合、磁場要素と受動遮蔽体との間の相互作用を補償するように配置することができる。
【0074】
図3Dは、
図3Cの第1コイルパネル1のコイル接続部の第2平面図である。コイル端子34、36、コイルブリッジセクション37、コイルブリッジコネクタ38、及び外部コネクタ35が、支持パネル31の、第1平面の反対側の第2平面に配置される。コイル配線経路30は、支持パネル31の第2平面に配置されるコンポーネントのみが可視及び/又はアクセス可能となるように、第1平面に配置される。コイル配線経路30が、磁気遮蔽室20の相殺容積25内から見える支持パネル31の平面上に存在する実施形態において、コイル端子34、36、コイルブリッジセクション37、コイルブリッジコネクタ38、及び外部コネクタ35は、コイル配線経路30の平面と同じ平面に配置される。
【0075】
図3Eは、外部コネクタ35の断面図であり、標準的な製造プロセスによって形成された凹部39が示される。この凹部は、コイル配線経路30を収容するために存在し得る。ここで、面一のパネル表面プロファイルが好ましい。コネクタ凹部39は、設置時の取り付けを容易にするべく、コイルの戻り線がパネルの表面に面一となることを保証する。
【0076】
図4Aは、本発明に係る第2コイルパネル2の平面図である。コイルパネル2は、平面図において一アセンブリとして示される。コイル配線経路40は、支持パネル41の第1平面に貼り付けられる。コイル配線経路40は、支持パネル41の平面の周縁に隣接するように矩形の形状に延び、本実施形態ではやはり矩形であるパネルの表面エリア内に適合する。支持パネル41は、長さがパネル側長43より短いパネル側幅42を有する。したがって、パネル側長43に隣接するように延びるコイル配線経路40のセクションが、パネル側幅42に隣接するように延びるコイル配線経路40のセクションよりも大きな長さにわたって延びる。
【0077】
コイル配線経路40は、第1パネル側幅42、第1パネル側長43、第2パネル側幅42、及び第2パネル側長43に沿うように延びて矩形のフットプリントを形成する。コイル配線経路40は、形成された連続巻線であり、又は個別片、若しくは選択された反復回数で隣接セクションのコイルを形成するように繰り返し巻かれる単一配線を形成するべく接合された数個片のいずれかである。
【0078】
コイルパネル2は、MSR20の選択された表面上の本来の位置に配置される場合、配線経路40がMSR20の表面に隣接して相殺容積25から見るとパネル41によって隠されるように取り付けられる。いくつかの実施形態において、配線経路40は、MSR20の表面に埋め込まれる。しかしながら、コイルパネル2はまた、配線経路40が露出されて相殺容積25に面するように配列されてよい。
【0079】
関連コイルパラメータが決定される。これは、本実施形態において、各コイル配線経路40の側幅42及び側長43、コイル中心49と隣接コイルの中心との間の規則的な間隔、並びにMSR20の各表面の中心から2×2グリッドの中心までの距離である。
【0080】
好ましい実施形態では、相殺容積が受動遮蔽体において「孔」又は非遮蔽エリアを有しない立方体であることを仮定することによってコイルパラメータが決定される。4つのコイルの配列体が各表面に適用される。側長、中心からのオフセット、及び配列体の高さが変化し、各コンポーネントに対するソリューションの品質が記録される。ソリューションの品質は、各標的ポイントにおける所望磁場と各標的ポイントにおいてコイルパラメータがもたらす磁場との間の二乗差の和の平方根から導出される。コイルが所望磁場を完全に再現する場合、ソリューションの品質はゼロとなる。
【0081】
品質のデータは、各表面に対する単一品質係数を決定するべく結合される。各表面に必要なパラメータは、面対面基準ではなく同時に計算されるように共最適化される。この態様でベクトル磁場パターンが最適化される。
【0082】
所与セットのコイルパラメータに対し、相殺容積25に広がる「標的ポイント」の規則的なグリッドにわたり、各コイルにおいて単位印加電流により生成される磁場が計算される。適切な場合には、磁場計算は、MSR20の表面の近隣ミューメタルとの相互作用に関連するデータを組み入れてよい。
【0083】
ほとんどの局面において、コイルパネル2は、形態、構造及び材料がコイルパネル1と実質的に同じである。コイルパネル3、4、5、6及び7も同様である。したがって、コイルパネル1の説明は、個別のパネルの説明に別段の記載がある場合を除き、本実施形態のすべてのコイルパネルに適用可能である。
【0084】
図4Bは、
図4Aの第2コイルパネルの断面図であり、支持パネル41が断面で示される。コイル配線経路40は、支持パネル41の平面の中への凹部として示される。コイル配線経路40の巻線は典型的に、支持パネル41の表面の中へ凹み、その第1平面において可視のままである。各連続巻線が、巻線の単層を含むコイルにおいて、前の巻線からオフセットされる。
【0085】
図4Cは、
図4Aの第2コイルパネル2のコイル配線経路40の切り取り断面図であり、コイル配線経路40及び関連接続部が示される。コイル配線経路40は、各連続巻線が前の巻線に隣接するように支持パネル41の平面の周縁まわりに配列される単一巻線から形成される。本実施形態のコイル線経路40は、コイル端子44とコイル端子46との間に延びる20の巻線から形成される。
【0086】
コイルブリッジセクション47が、コイル端子44とコイル端子46との間に延びる。外部コネクタ45が、コイル端子46及びコイルブリッジセクション47の双方を外部電流ソースに接続する。コイルブリッジセクション47は、コイルブリッジコネクタ48を介して外部コネクタ45に接続される。
【0087】
図4Dは、
図4Cの第2コイルパネル2のコイル接続部の第2平面図である。コイル端子44、46、コイルブリッジセクション47、コイルブリッジコネクタ48、及び外部コネクタ45が、支持パネル41の、第1平面の反対側の第2平面に配置される。コイル配線経路40は、支持パネル41の第2平面に配置されるコンポーネントのみが可視及び/又はアクセス可能となるように、第1平面に配置される。
【0088】
図5Aは、本発明に係る第3コイルパネルの平面図である。コイルパネル3は、平面図において一アセンブリとして示される。コイル配線経路50は、支持パネル51の第1平面に貼り付けられる。コイル配線経路50は、支持パネル51の平面の周縁に隣接するように矩形の形状に延び、本実施形態ではやはり矩形であるパネルの表面エリア内に適合する。支持パネル51は、長さがパネル側長53より短いパネル側幅52を有する。したがって、パネル側幅52に隣接するように延びるコイル配線経路50のセクションが、パネル側長53に隣接するように延びるコイル配線経路50のセクションよりも大きな長さにわたって延びる。
【0089】
コイル配線経路50は、第1パネル側幅52、第1パネル側長53、第2パネル側幅52、及び第2パネル側長53に沿うように延びて矩形のフットプリントを形成する。コイル配線経路50は、形成された連続巻線であり、又は個別片、若しくは隣接セクションの一コイルを形成するように繰り返し巻かれる単一配線を形成するべく接合された数個片のいずれかである。
【0090】
関連コイルパラメータが決定される。これは、本実施形態において、各コイル配線経路50の側幅52及び側長53、コイル中心59と隣接コイルの中心との間の規則的な間隔、並びにMSR20の各表面の中心から2×2グリッドの中心までの距離である。
【0091】
コイルパネル1、2、3、5、6及び7と同様に、支持パネル51は、コイル配線経路50によって周縁が画定されるコイルパネル51の中央部分に切り取りを有する。4つの切り取られたセクションが2×2パターンで対称的に配列される。支持パネル51の中央部分の材料が十字形状に配列されて剛性を与える一方で、例えば、ミューメタルパネルにおける小さなアクセス孔又はボルトのような基本的な特徴部へのアクセスも与える。代替的に、各コイル配線経路50は、中実の正方形に取り付けられる。十字形状の水平成分はパネル側幅52に実質的に平行であり、垂直成分はパネル側長53に実質的に平行である。コイル中心59は、中央部分において支持パネル51材料の水平成分と垂直成分との交点に配置される。支持パネル51の中央部分の水平成分及び垂直成分は双方とも同じ幅及び深さである。
【0092】
図5Bは、
図5Aの第2コイルパネルの断面図であり、支持パネル51が断面で示される。コイル配線経路50は、支持パネル51の平面の中への凹部として示される。コイル配線経路50の巻線は典型的に、支持パネル51の表面の中へ凹み、その第1平面において可視のままである。
【0093】
図5Cは、
図5Aの第3コイルパネル3のコイル配線経路50の切り取り断面図であり、コイル配線経路50及び関連接続部が示される。コイル配線経路50は、各連続巻線が前の巻線に隣接するように支持パネル51の平面の周縁まわりに配列される単一巻線から形成される。本実施形態のコイル線経路50は、コイル端子54とコイル端子56との間に延びる20の巻線から形成される。
【0094】
図5Dは、
図5Cの第3コイルパネル3のコイル接続部の第2平面図である。コイル端子54、56、コイルブリッジセクション57、コイルブリッジコネクタ58、及び外部コネクタ55が、支持パネル51の、第1平面の反対側の第2平面に配置される。コイル配線経路50は、支持パネル51の第2平面に配置されるコンポーネントのみが可視及び/又はアクセス可能となるように、第1平面に配置される。
【0095】
図6Aは、本発明に係る第4コイルパネル4の平面図である。コイルパネル4は、平面図において一アセンブリとして示される。コイル配線経路60は、支持パネル61の第1平面に貼り付けられる。コイル配線経路60は、支持パネル61の平面の周縁に隣接するように矩形の形状に延び、本実施形態ではやはり矩形であるパネルの表面エリア内に適合する。支持パネル61は、長さがパネル側長63より短いパネル側幅62を有する。したがって、パネル側長63に隣接するように延びるコイル配線経路60のセクションが、パネル側幅62に隣接するように延びるコイル配線経路60のセクションよりも大きな長さにわたって延びる。
【0096】
支持パネル61は、コイル配線経路60によって画定される支持パネル61の中央部分の中に3つの切り取りセクションを含む。支持パネル61の第1中央片が、コイル中心69が支持パネル61の中央片内に収まるようにパネル側長63間に延びる。支持パネル61の第2中央片が、パネル側幅62の一方から延びて「t」字形状部材を形成する。支持パネル61の第1中央片及び第2中央片は互いに実質的に同じ幅を有する。支持パネル61は、一貫した断面積を有する。
【0097】
コイルパネル4は、MSR20の選択された表面上の本来の位置に配置される場合、配線経路60がMSR20の表面に隣接して相殺容積25から見るとパネル61によって隠されるように取り付けられる。いくつかの実施形態において、配線経路60は、MSR20の表面に埋め込まれる。しかしながら、コイルパネル4はまた、配線経路60が露出されて相殺容積25に面するように配列されてよい。
【0098】
図6Bは、
図6Aの第4コイルパネル4の断面図であり、支持パネル61が断面で示される。コイル配線経路60は、支持パネル61の平面の中への凹部として示される。コイル配線経路60の巻線は典型的に、支持パネル61の表面の中へ凹む。
【0099】
図6Cは、
図6Aの第4コイルパネル4のコイル配線経路60の切り取り断面図であり、コイル配線経路60及び関連接続部が示される。コイル配線経路60は、各連続巻線が前の巻線に隣接して配置されるように支持パネル61の平面の周縁まわりに配列される単一巻線から形成される。本実施形態のコイル線経路60は、コイル端子64とコイル端子66との間に延びる20の巻線から形成される。
【0100】
図6Dは、
図6Cの第4コイルパネル4のコイル接続部の第2平面図である。コイル端子64、66、コイルブリッジセクション67、コイルブリッジコネクタ68、及び外部コネクタ65が、支持パネル61の、第1平面の反対側の第2平面に配置される。コイル配線経路60は、支持パネル61の第2平面に配置されるコンポーネントのみが可視及び/又はアクセス可能となるように、第1平面に配置される。
【0101】
図7Aは、本発明に係る第5コイルパネル5の平面図である。コイルパネル5は平面図に示される。コイル配線経路70は、支持パネル71の第1平面に貼り付けられる。コイル配線経路70は、支持パネル71の平面の周縁まわりに正方形の形状で延び、本実施形態においてやはり正四角形であるパネルの表面エリア内に適合する。コイル配線経路70は、実質的に等しい各パネル側長72、73に沿って延びる。コイル配線経路70は、形成された連続巻線であり、又は個別片、若しくは隣接セクションの一コイルを形成するように繰り返し巻かれる単一配線を形成するべく接合された数個片のいずれかである。
【0102】
コイルパネル5は、配線経路70がMSR20の表面に隣接して相殺容積25から見るとパネル71によって隠されるように配列される。いくつかの実施形態において、配線経路70は、MSR20の表面に埋め込まれる。しかしながら、コイルパネル5はまた、配線経路70が露出されて相殺容積25に面するように配列されてよい。支持パネル71の表面は、いくつかの実施形態において、単位コイルを保護するべく又は単に隠すべく覆われてよい。
【0103】
所定のコイルパラメータが決定される。これは、本実施形態において、各コイル正方形70の対称側長72、73、コイル中心79間の規則的な間隔、及び2×2グリッドの中心の、MSRの各表面の中心からの距離である。所与セットのコイルパラメータに対し、関心容積に広がる「標的ポイント」の規則的なグリッドにわたって、各コイルにおいて一単位の印加電流により生成される磁場が計算される。磁場計算は、MSR20の表面の近隣ミューメタルとの相互作用に関連するデータを組み入れてよい。各標的ポイントが、これまでのように決定される。
【0104】
図7Bは、
図7Aの第5コイルパネル5の断面図である。コイル配線経路70は、支持パネル71の平面の中への凹部として示される。支持パネル71は、プラスチック又は木の材料から形成される。
【0105】
いくつかの実施形態において、支持パネルは、支持パネルが受動遮蔽を与えるのに適切な材料から形成されてよい。
【0106】
コイル配線経路70の単位コイル巻線は典型的に、3mmの深さまで凹み、支持パネル71の第1面において可視のままである。各連続巻線は、前の巻線から2mmにオフセットされる。配線経路70の各配線は典型的に、直径1.5mmである。
【0107】
図7Cは、
図7Aの第5コイルパネル5のコイル配線経路70の切り取り断面図であり、コイル配線経路70及び関連接続部が示される。コイル配線経路70は、各連続巻線が前の反復に隣接するように支持パネル71の平面の周縁まわりに配列される単一巻線から形成される。本実施形態のコイル線経路70は、コイル端子74とコイル端子76との間に延びる20の巻線から形成される。
【0108】
コイルブリッジセクション77が、コイル端子74とコイル端子76との間に延びる。外部コネクタ75が、コイル端子36及びコイルブリッジセクション77の双方を外部電流ソースに接続し、コイルブリッジセクション77はコイルブリッジコネクタ78を介して接続される。
【0109】
外部電流ソースは、コイル配線経路70のコイルが、各単位コイルに印加される電流に応じて任意のベクトル磁場パターンをもたらすように、一セットの電流値を与えるように配列される。
【0110】
図7Dは、
図7Cの第5コイルパネル5のコイル接続部の第2平面図である。コイル端子74、76、コイルブリッジセクション77、コイルブリッジコネクタ78、及び外部コネクタ75が、支持パネル71の、第1平面の反対側の第2平面に配置される。コイル配線経路70は、支持パネル71の第2平面に配置されるコンポーネントのみが可視及び/又はアクセス可能となるように、第1平面に配置される。コイル配線経路70が、磁気遮蔽室20の相殺容積25内から見える支持パネル71の平面上に存在する実施形態において、コイル端子74、76、コイルブリッジセクション77、コイルブリッジコネクタ78、及び外部コネクタ75は、コイル配線経路70の平面と同じ平面に配置される。
【0111】
図8Aは、本発明に係る第6コイルパネル6の平面図である。コイルパネル6は平面図に示される。コイル配線経路80は、支持パネル81の第1平面に貼り付けられる。コイル配線経路80は、支持パネル81の平面の周縁に隣接するように矩形の形状に延び、本実施形態ではやはり矩形であるパネルの表面エリア内に適合する。支持パネル81は、長さがパネル側長83より短いパネル側幅82を有する。したがって、パネル側長83に隣接するように延びるコイル配線経路80のセクションが、パネル側幅82に隣接するように延びるコイル配線経路40のセクションよりも大きな長さにわたって延びる。
【0112】
コイル配線経路80は、第1パネル側幅82、第1パネル側長83、第2パネル側幅82、及び第2パネル側長83に沿うように延びて矩形のフットプリントを形成する。コイル配線経路80は、形成された連続巻線であり、又は個別片、若しくは隣接セクションの一コイルを形成するように繰り返し巻かれる単一配線を形成するべく接合された数個片のいずれかである。
【0113】
コイルパネル6は、配線経路80がMSR20の表面に隣接して相殺容積25から見るとパネル81によって隠されるように取り付けられる。いくつかの実施形態において、配線経路80は、MSR20の表面に埋め込まれる。しかしながら、コイルパネル6はまた、配線経路80が露出されて相殺容積25に面するように配列されてよい。
【0114】
関連コイルパラメータが決定される。これは、本実施形態において、各コイル配線経路80の側幅82及び側長83、コイル中心89と隣接コイルの中心との間の規則的な間隔、並びに3平面に配列される各表面の中心から2×2グリッドの中心までの距離である。所与セットのコイルパラメータに対し、相殺容積25に広がる「標的ポイント」の規則的なグリッドにわたり、各コイルにおいて単位印加電流により生成される磁場が計算される。
【0115】
図8Bは、
図8Aの第2コイルパネルの断面図であり、支持パネル81が断面で示される。コイル配線経路80は、支持パネル81の平面の中への凹部として示される。コイル配線経路80の巻線は典型的に、支持パネル81の表面の中へ凹み、その第1平面において可視のままである。各連続巻線が、単層を有するコイル配線経路において、前の巻線からオフセットされる。
【0116】
図8Cは、
図8Aの第6コイルパネル6のコイル配線経路80の切り取り断面図であり、コイル配線経路80及び関連接続部が示される。コイル配線経路80は、各連続巻線が前の巻線に隣接するように支持パネル81の平面の周縁まわりに配列される単一巻線から形成される。本実施形態のコイル線経路80は、コイル端子84とコイル端子86との間に延びる20の巻線から形成される。
【0117】
コイルブリッジセクション87が、コイル端子84とコイル端子86との間に延びる。外部コネクタ85が、コイル端子86及びコイルブリッジセクション87の双方を外部電流ソースに接続する。コイルブリッジセクション87は、コイルブリッジコネクタ88を介して外部コネクタ85に接続される。
【0118】
図8Dは、
図8Cの第6コイルパネル6のコイル接続部の第2平面図である。コイル端子84、86、コイルブリッジセクション87、コイルブリッジコネクタ88、及び外部コネクタ85が、支持パネル81の、第1平面の反対側の第2平面に配置される。コイル配線経路80は、支持パネル81の第2平面に配置されるコンポーネントのみが可視及び/又はアクセス可能となるように、第1平面に配置される。
【0119】
図9Aは、本発明に係る第7コイルパネル7の平面図である。コイルパネル7は平面図に示される。コイル配線経路90は、支持パネル91の第1平面に貼り付けられる。コイル配線経路90は、支持パネル91の平面の周縁に正方形の形状で延び、本実施形態においてやはり正四角形であるパネルの表面エリア内に適合する。コイル配線経路90は、実質的に等しい各パネル側長92、93に沿って延びる。コイル配線経路90は、形成された連続巻線であり、又は個別片、若しくは隣接セクションの一コイルを形成するように繰り返し巻かれる単一配線を形成するべく接合された数個片のいずれかである。
【0120】
コイルパネル7は、配線経路90がMSR20の表面に隣接して相殺容積25から見るとパネル91によって隠されるように配列される。いくつかの実施形態において、配線経路90は、MSR20の表面に埋め込まれる。しかしながら、コイルパネル7はまた、配線経路90が露出されて相殺容積25に面するように配列されてよい。支持パネル91の表面は、いくつかの実施形態において、単位コイルを保護するべく又は単に隠すべく覆われてよい。
【0121】
所定のコイルパラメータが決定される。これは、本実施形態において、各コイル正方形90の対称側長92、93、コイル中心99間の規則的な間隔、及び2×2グリッドの中心の、MSRの各表面の中心からの距離である。所与セットのコイルパラメータに対し、関心容積に広がる「標的ポイント」の規則的なグリッドにわたって、各コイルにおいて一単位の印加電流により生成される磁場が計算される。磁場計算は、MSR20の表面の近隣ミューメタルとの相互作用に関連するデータを組み入れてよい。
【0122】
図9Bは、
図9Aの第7コイルパネル7の断面図である。コイル配線経路90は、支持パネル91の平面の中への凹部として示される。支持パネル91は、非金属材料から形成される。しかしながら、いくつかの実施形態において、支持パネルは、支持パネルが受動遮蔽を与えるのに適切な材料から形成されてよい。
【0123】
コイル配線経路90の単位コイル巻線は典型的に、3mmの深さまで凹み、支持パネル91の第1面において可視のままである。各連続巻線は、前の巻線から2mmにオフセットされる。配線経路90の各配線は典型的に、直径1.5mmである。
【0124】
図9Cは、
図9Aの第7コイルパネル7のコイル配線経路90の切り取り断面図であり、コイル配線経路90及び関連接続部が示される。コイル配線経路90は、各連続巻線が前の反復に隣接するように支持パネル91の平面の周縁まわりに配列される単一巻線から形成される。本実施形態のコイル線経路90は、コイル端子94とコイル端子96との間に延びる20の巻線から形成される。
【0125】
コイルブリッジセクション97が、コイル端子94とコイル端子96との間に延びる。外部コネクタ95が、コイル端子96及びコイルブリッジセクション97の双方を外部電流ソースに接続し、コイルブリッジセクション97はコイルブリッジコネクタ98を介して接続される。
【0126】
外部電流ソースは、コイル配線経路90のコイルが、各単位コイルに印加される電流に応じて任意のベクトル磁場パターンをもたらすように、一セットの電流値を与えるように配列される。
【0127】
図9Dは、
図9Cの第7コイルパネル7のコイル接続部の第2平面図である。コイル端子94、96、コイルブリッジセクション97、コイルブリッジコネクタ98、及び外部コネクタ95が、支持パネル91の、第1平面の反対側の第2平面に配置される。コイル配線経路90は、支持パネル91の第2平面に配置されるコンポーネントのみが可視及び/又はアクセス可能となるように、第1平面に配置される。コイル配線経路90が、磁気遮蔽室20の相殺容積25内から見える支持パネル91の平面上に存在する実施形態において、コイル端子94、96、コイルブリッジセクション97、コイルブリッジコネクタ98、及び外部コネクタ95は、コイル配線経路90の平面と同じ平面に配置される。
【0128】
支持パネル91はMSR20の床面のために存在する。典型的に、基礎となる床は、ミューメタル層及び導電層を有する建物基礎から形成される。支持パネル91は典型的に、仕上げられた床被覆によって隠される。支持パネル91は、仕上げられた床被覆が建物基礎に結合されるように、床の複数の層を貫通し得るボルト又は他の固定具を収容するノッチを有する。
【0129】
図10は、本発明に係る能動磁気遮蔽システムの回路の表現である。例示的な窓コイルシステム1000において、センサアレイ1001が単位コイル1007に隣接するように配置される。本実施形態において、センサアレイ1001はセンサ1002及びセンサ1003を含み、相殺容積を画定する囲い1008の中の中央に配列される。
【0130】
センサはコイル囲い内の任意の位置に配置してよい。窓コイルが位置の変更に順応するからである。位置は、遮蔽対象の容積のサイズと測定される磁場の複雑性とに基づいて選択される。典型的に、磁場の全ベクトルの3回以上の測定が必要である。これは、磁場ベクトルの単一成分を測定する3つの3軸磁場検出器又は9つの磁場検出器によって行うことができる。
【0131】
センサアレイ1001は磁場測定値1004を与えるように配列される。磁場測定値1004は、少なくとも一つの電流ソース1006からの電流出力を決定するべくアルゴリズム1005によって処理される。囲い1008内に能動磁気遮蔽体を生成するべく電流出力が単位コイル1007に供給される。囲い1008は、いくつかの実施形態において、受動磁気遮蔽体から形成される。
【0132】
能動磁気遮蔽体は、ここに記載される一アレイの磁場要素を与えることによって生成され、各磁場要素は単位コイル1007を含み、各単位コイルは、ここに記載される配線経路を含む。一セットのコイルパラメータが、囲い1008の標的容積に広がる標的ポイントのグリッドに対応するように、電流ソール1006によって電流が印加される各単位コイル1007において特定される。各標的ポイントにおいて各単位コイル1007が生成する単位電流あたり磁場が計算される。計算された単位電流あたりの磁場が標的磁場にマッピングされ、各単位コイルの最適コイル電流が決定される。
【0133】
好ましい実施形態において、標的磁場は、センサアレイ1001のセンサ1002及び1003が与える磁場測定値1004から導出される。生成された磁場が標的磁場と比較される。
【0134】
しかしながら、所望の標的磁場は、事前に決定された磁場であるか、又は磁場センサ1002、1003から検知されたデータに基づくかのいずれかでよい。
【0135】
好ましい実施形態において、最適なコイル電流は、電流値の合計を最小化することと、印加電流の最大値を画定するしきい値を適用することとによって決定される。各磁場センサ1002、1003における各単位コイル1007が生成する単位電流あたりの磁場が、その既知の標的ポイント位置を使用して計算される。
【0136】
各磁場センサ1002、1003における各単位コイル1007が生成する単位電流あたりの磁界が、各コイルに順番に既知の電流を印加することによって測定される。
【0137】
各単位コイル1007におけるコイルパラメータは、単位コイルの形状と、単位コイル間のオフセットとに基づく。各単位コイルにおけるコイルパラメータは、生成された能動磁場と標的磁場との比較に従って変化させることができる。
【0138】
生成された磁場が標的磁場と比較され、結果として得られたデータが必要なしきい値を満たさない場合、コイルパラメータを変化させて修正磁場を生成することができる。これが標的磁場と比較される。修正磁場間の不一致がしきい値を超える場合、生成された磁場と標的磁場とが一致し、好ましい範囲内に収まり、又はしきい値内に収まるまで、プロセスが繰り返され得る。
【0139】
コイル電流最適化の目的は、電流値の合計を可能な限り低く保つことにより、システムにわたって散逸する総電力を最小化することにある。しきい値は、最大印加電流を決定するように、かつ、窓コイルアレイが物理的に実現可能な電源で動作することを保証するように、設定される。
【0140】
この制約付き最適化に続いて、シミュレーションされたシステムの精度に基づいてソリューションの品質が評価される。本実施形態では正方形の辺長、コイル中心間のオフセット、及びグリッド中心のオフセットであるコイルパラメータが、最適セットのパラメータが所望の標的磁場に基づいて見つかるまで変更される。
【0141】
各標的ポイントにおいて多くの異なる標的磁場がもたらされるのが望ましい。遮蔽が要求されるすべての領域で磁場成分をもたらす単一セットのコイルパラメータを見つけるべく、最適化が繰り返される。好ましい実施形態において、少なくとも8つの磁場成分がもたらされる。3つは均一磁場であり、5つは磁場勾配である。
【0142】
従来型コイル配線経路は、磁場の単一の既知成分、すなわちx、y又はz方向の磁場、を生成するように設計されている。ここに開示される発明では、任意のベクトル磁場パターンを生成するべくコイルにおいて必要な電流値のセットが計算及び適用される。窓コイルシステムは本質的に、異なる磁場をもたらすように自身を「再設計」する。窓コイルシステムがもたらす柔軟性により、遮蔽容積をMSR内の任意の場所に配置することが許容され、当該磁場は、外部干渉の変化を補償したり、又はMSRを動き回る参加者を「追跡」したりするために動的に更新され得る。これはいずれも、コイルを物理的に並進移動させずに固定された磁場パターンをもたらす能力を有する従来型システムによっては不可能である。
【0143】
MSR20の中に位置する参加者は、被験者頭部の解剖学的スキャンをもたらすべく参加者が着用するのが典型的な、一アレイの光ポンピング磁力計(OPM)に基づくシステムを使用してモニタリングされ得る。これらの磁場センサは、センサ冷却のための極低温の適用なしに生体磁気信号を記録することができる。各OPMセンサは、約150℃まで加熱された87Rb蒸気を含むガラスセルを含む。795nmレーザビームを使用して原子をスピン分極させ、セルを透過した光の強度を、フォトダイオードを使用して検出する。ゼロ磁場条件において、スピン磁気モーメントがレーザビームに整列し、レーザ光の透過が最大になる。ビームに垂直な磁場の存在により、光透過に測定可能な低下が引き起こされるので、従来型MSR20においては追加の遮蔽が必要となる。OPMセンサは、SQUIDに匹敵するノイズレベル、及び±5nTのダイナミックレンジを有する。
【0144】
本発明の遮蔽システムの動作には、一アレイの磁場センサ、当該アレイにある各コイルのための制御可能な電流ソース、及び最適電流を計算するためのフィードバックアルゴリズムが必要である。一アレイの磁場センサから収集されたデータは、所望の磁場出力をもたらすべく各磁場要素に印加される電流を決定するために使用される。
【0145】
実際には、各磁場要素における各コイルがもたらす単位電流あたりの磁場は、MSR内の既知の位置を使用して計算することができ、又は各コイルに既知の電流を順番に印加することによって測定することができる。結果として得られた単位電流あたりの磁場の値がその後、各磁場センサにおいて所望の応答を生成するコイル電流を見つけるべく使用され得る。応答の例は、磁気遮蔽のためにすべての出力をゼロまで駆動することを含むが、同アプローチは、アレイにわたって既知の磁場をもたらすことにもなる。アレイにわたって既知の磁場をもたらすこの能力は特に、システムが磁場とどのように相互作用するかを調査する実験にとって、又は磁気共鳴イメージング(MRI)のような技法において、有用である。
【0146】
電流計算方法は、遮蔽の品質を高めるべく、受動遮蔽材料との相互作用の形態にある干渉を考慮に入れて調整することができる。固定磁場パターンをもたらすことしかできない従来型システムとは異なり、遮蔽対象の各囲い又は空間に対してコイルの数を、その形状、サイズ及び位置とともに最適化することができる。これにより、関連するサイズ及び形状の相殺容積における良好な相殺が保証される。
【0147】
ここに開示される配列により、MSR内の平均頭部サイズと等価な容積にわたって磁場を~5nTから<0.2nTまで低減することができるので、OPM-MEGアプリケーションに適した超低磁場環境が得られる。したがって、このシステムによると、地球の磁場の典型的な低減が従来型MEG MSRの10,000倍から250,000倍まで増加する。この低減により、OPM-MEGを神経科学アプリケーションにおいて使用することができる。ここで、複数の被験者が同時にスキャンされ、成人同士の間の又は親と子の間のリアルタイムの対面の相互作用に追従して空間ナビゲーションが調査される。
【0148】
臨床アプリケーションは、例えば、従来型システムにおいてじっとしままでいることが非現実的かつ不快なてんかん性活動の長期モニタリングを含む。磁場センサが回転又は並進すると、動作中の磁場のサイズに等価な磁場の変化が測定される。データのこの部分には脳の情報が含まれていないので、望ましくない。ここに記載のシステムは、当該磁場を低減し、その結果、データ内の不要なアーチファクトのサイズを低減し、信号損失なしで被験者の大きな動きを許容する。
【0149】
図11は、本発明に係る窓コイルシステムのさらなる実施形態を示し、行列構成にある窓コイルシステムの表現を示す。
【0150】
ここで上述された受動遮蔽体を形成する磁気遮蔽室20が与えられる。受動遮蔽空間内のヌル残留磁場に対して受動遮蔽体20内に設けられる能動磁気遮蔽体は、上述したように、配線経路が設けられる一定数のコイルパネルを含む。
【0151】
第1セットのコイル配線経路1100、1110は壁面26上に配置される。第2セットのコイル配線経路1120、1130は壁面21上に配置される。壁面21は、相殺容積25の対向側面を画定するべく壁面26に対向かつ平行に配列される。2セットのコイル配線経路1100、1110、1120、1130が、受動的に遮蔽された部屋20の中に能動的磁気遮蔽体を形成する。
【0152】
第1セットのコイル配線経路1100は、4つの配線経路1100A、1100B、1100C、1100Dの4列からなる。第1セットのコイル配線経路1100の各コイル配線経路は、
図2から
図10に関連して記載された窓コイルの以前の実施形態のように配列され、コイルがグリッドパターンの単一平面内に配列される。コイルは、垂直方向及び水平方向の双方において互いに隣接して配列される。
【0153】
第1セットの重なり合うコイル1120は8つのコイルを含み、これら8つのコイルはそれぞれが、壁面26に貼り付けられた第1コイル配線経路1100の2×2グリッドのコイルの中央交差部に重なるように配列される。コイルは2平面配列で配列されているが、重なり合うコイルの存在により、ヘルムホルツコイルシステムとは異なり、x平面、y平面及びz平面に磁場が発生する。
【0154】
同様に、第2セットのコイル配線経路1120は、4つの配線経路1120A、1120B、1120C、1120Dの4列からなる。第2セットのコイル配線経路1120の各コイル配線経路は、グリッドパターンにある単一平面内に配列される。コイルは、垂直方向及び水平方向の双方において互いに隣接して配列される。第2セットの重なり合うコイル1130は8つのコイルを含み、これら8つのコイルはそれぞれが、壁面21に貼り付けられた第2コイル配線経路1120のコイルの2×2グリッドの中央交差部に重なるように配列される。
【0155】
本実施形態の能動磁気遮蔽システムの特定の配列が
図11に提示される。
【0156】
データ取得ユニット1170は、OPMセンサ制御ユニット1160からセンサデータを受信するように配列される。データ取得ユニット1170は典型的に、センサアレイ1001によって利用又は検出される電圧、電流、温度、圧力及び音のような電気的又は物理的パラメータの測定及び/又は制御を許容するソフトウェアを含む。本実施形態において、データ取得ユニットは、センサからの情報を受信するように配列されたプログラム可能なソフトウェアを有するコンピュータプロセッサと、信号調整要素とを含む。
【0157】
ここに開示される好ましい実施形態において、各OPMセンサは、好ましくは、ルビジウム原子の蒸気を含む加熱ガラスセルと、ルビジウムのD1遷移に同調する795nm波長ダイオードレーザと、光検出器とを組み入れた小型統合ユニットである。光ポンピングに引き続き、ゼロ磁場において、ルビジウム原子は偏光レーザ光の光子に対して鈍感である。したがって、セルを通過して光検出器に至る光の強度は最大である。セルが経験する磁場の変化が、測定されるレーザ強度の減少をもたらす。光子が当該原子によって吸収されるからである。したがって、光検出器信号を、磁場の感度尺度として使用することができる。OPMは典型的に、互いに横切る2つの平面において測定される。しかしながら、他の適切な周知のベクトル磁場センサを使用してもよい。
【0158】
センサアレイ1001からのデータが、MEG記録を開始する前に、行列コイル磁場ヌル化プロセスを駆動するべく使用される。光トラッキングが、MEG記録中の参加者の動きを記録する。第1セットの標的ポイント1140及び第2セットの標的ポイント1150のセンサアレイ1001の位置が、測定中のセンサの位置及び状態についてのデータを与えるべく使用される。標的ポイントの単一クラスタを利用してもよく、又は標的ポイントの複数クラスタを利用してもよい。それぞれのクラスタが、それらが貼り付けられた被験者又は参加者に関連する測定値の個別のセットを与える。データ取得ユニット1170は、制御PC1180及びコイル増幅器1190にデータを与える。
【0159】
データ取得ユニット1170は、刺激PC1200から刺激トリガに関する情報を受信し、刺激PC1200は、スピーカ1220を通して発せられる聴覚指示を介して参加者にデータを与える。
【0160】
刺激PC1200は、相殺容積25内の参加者の身体の動きを記録するモーションキャプチャシステム1210にデータを与え、モーションキャプチャシステム1210からデータを受信する。参加者は、相殺容積25内のどこにいてもよい。本実施形態において、「オプティトラック」システムが使用されるが、人体のあらゆるタイプの動きをキャプチャする他の周知のシステムが使用されてよい。モーションキャプチャシステム1210は、微妙な動きと速い動きの双方を含む剛体の動きをキャプチャする。身体の動きは、身体に貼り付けられた可視マーカーの使用を介してキャプチャされる。その数は、典型的に、モーションキャプチャシステム1210にとって可視となる少なくとも3つのマーカーである。顔の動き、筋肉の動き、及び骨格の動きを追跡することができる。マーカーの位置と数は、行われる実験プログラムに応じて、及び選択される刺激に応じて、選択される。
【0161】
各単位コイル1100、1110、1120、1130は、
図11にコイル増幅器1190として示される48チャネルの低ノイズ電圧増幅器の単一出力に接続される。チャネルの数は、アレイに存在するコイルの数と一致する。コイル増幅器1190は、データ取得ユニット1170におけるデジタル・アナログ変換器とのインタフェイスをなす。
【0162】
本実施形態において、増幅器入力に印加される電圧は±10Vの範囲である。各コイルにおける最大電流は、追加の直列抵抗器によって調整される。直列抵抗器は、コイルが生成する磁場ノイズがOPMセンサアレイ1001の低ノイズしきい値を下回るように1.2kΩとして選択された。OPMの低ノイズしきい値は典型的に、選択された周波数範囲において15fT/√Hzとなる。この抵抗器におけるコイルドライバ電流ノイズは、1~100Hz帯域において<10nA/√Hzである。これは、2つの壁面平面21、26の実質的に中心にある各コイルからの二乗ベクトル磁場成分の合計からシミュレーションされた磁場内の0.1fT/√Hz未満のノイズに変換される。
【0163】
この例示的な実験プログラムのMSR20は、4層のミューメタル、1層の銅、及び消磁コイルを含む。典型的な残留磁場及び勾配は、磁気遮蔽室20の中心において、2nT及び2nT/mオーダーである。
【0164】
48コイルの2平面行列コイルシステムが与えられる。24個のコイルが、壁面21上の第1セットのコイル配線経路1100と第1セットの重なり合ったコイル1110とから形成され、さらなる24個のコイルが、壁面26上の第2セットのコイル配線経路1120と第2セットの重なり合ったコイル1130から形成される。
【0165】
例示的な実験プログラムにおいて、行列コイルシステムの有効性とそのバックグラウンド磁場への効果及び得られたデータ品質が、簡単なボールゲームを行う2人の参加者の生体磁気測定を行うことによって評価される。例示的な実験プログラムにおいて、第1参加者及び第2参加者が、磁気遮蔽室20の壁面21、26間の相殺容積25内に配置される。センサアレイ1101から形成される第1アレイの標的ポイント1140が一方の参加者に貼り付けられ、センサアレイ1101から形成される第2アレイの標的ポイント1150が他方の参加者に貼り付けられる。標的ポイント1140、1150の各アレイは、脳磁図データをキャプチャするように配列された12のOPMセンサのアレイを含む。OPMの位置は、必要とされる測定値、及び参加者の基礎解剖学的構造に従って選択される。他の好ましい実施形態において、各参加者は、特定の解剖学的構造(例えば左の感覚運動皮質)にわたって配置された、又は頭部全体に均等に分散された、16のOPMのアレイを支持し得る。センサの数及び位置は、収集されたデータの性質、及び/又は脳磁図の目的、並びに被験者/参加者の配列及びサイズに従って変更し得る。
【0166】
各参加者には、脳からの電気生理学的データを記録するためのセンサアレイ1001を含む装着可能な脳磁図が備えられる。バックグラウンド磁場の高忠実度制御により、同時にスキャンされた一人以上の参加者の自由な動きが可能になるので、各参加者が同じ相殺空間内で別個にスキャンされる。したがって、2人の参加者を単一の機械において、又は電子的手段によってリンクされた別個の機械において、囲う必要がない。
図2から
図10に関連して記載された窓コイル配列のとおり、単位コイルは、ヌル要件に従って相殺容積内で調整又は画定できる3Dベクトル磁場パターンをもたらす。重なり合うコイルなしで窓コイルアレイが配列される実施形態では、立方体相殺容積の6面すべてにコイルを配置する必要がある。センサアレイが画定する標的ポイントのクラスタを、遮蔽容積25内のいずれの場所にも配置することができる。これにより、スキャンされる被験者が、又は一人を超える被験者が存在する場合の参加者が、遮蔽空間とともに移動することができ、複数人のスキャンを同時に実行することができる。
【0167】
48コイル配線経路のそれぞれの電流が個別に制御され、標的センサアレイ1140、1150のそれぞれの位置においてMSR20内の残留磁場を相殺するのに必要な磁場が生成される。
【0168】
例示的な2人ボールゲームの間、-8mAから+9mAの電流分布が使用された。直流磁場の強度が、各参加者に関連して配列されたセンサアレイ1140、1150からの48の全磁場測定値によって報告された。
【0169】
OPMセンサが典型的に、±50nTまでの局所静磁場を補償する「オンセンサ」コイルを特徴とするにもかかわらず、このオフセットに関連して測定されるデータは約±5nTの狭いダイナミックレンジ内にあり、バックグラウンド磁場に関連するOPMのその後の動きが、測定される磁場の変化を誘起する。これにより、>5nTの磁場シフトがセンサ出力を飽和させてデータを収集できなくなり、測定されるデータに有意な不正確さをもたらすセンサ利得が変化し、及び/又は、磁場においてセンサを回転させることにより、若しくは脳活動測定を困難にする磁場勾配でセンサを並進させることによりアーチファクトが引き起こされる。
【0170】
残留磁場が補償されない場合、脳磁図データは有意なアーチファクトにより破壊されるので、能動遮蔽がコイル配線経路によって開始され、各参加者の感覚運動領域における生体磁気活動が記録され、刺激PC1200からの刺激命令と、及びモーションキャプチャシステム1210からのデータと、関連付けられる。
【0171】
実験中、15の赤外LEDのアレイをそれぞれが有する2つのカメラが赤外反射マーカーを照射するモーションキャプチャシステム1210を使用して参加者の動きが追跡された。複数のマーカーの組み合わせ座標が使用される。6自由度(x並進、y並進及びz並進、ピッチ回転、ヨー回転、ロール回転)によって参加者の身体が追跡される。
【0172】
「ハイパースキャン」が、2人の相互作用する個人の脳機能を同時に評価する手段を与える。現在の技術は、性能又は不自然なスキャン環境のいずれかによって極端に制限されているが、ここに記載される窓コイルの重なり合い行列を与えることによって、自然なハイパースキャンが可能となる。単一の磁場ベクトルをもたらすべく2つの平面を使用するヘルムホルツコイル配列のような従前の能動磁気遮蔽システムとは異なり、行列窓コイルの配列は、コイルセットにより取り囲まれた相殺容積にわたってどこでも正確な磁場制御を可能にする。2つの空間的に分離されたゼロ磁場領域を、相互作用する被験者が装着するOPMセンサアレイにわたって配置することにより、2人実験における高品質MEGデータの収集に必要な環境が達成され得る。第1センサアレイ1140及び第2センサアレイ1150の双方の位置において行列コイルシステムを使用することにより、相殺容積内の残留磁場をヌルにすることができる。
【0173】
図12は、窓コイルのさらなる実施形態に係る行列構成に配列された2つの窓コイルパネルのうちの一方の平面図である。
図11に開示された配列により、コイル経路はMSR20の2つの表面上に配列されるが、3Dベクトルパターンをもたらすように配列される。
【0174】
本実施形態の能動遮蔽体は、
図11の実施形態の24のコイルではなく、25の個別に制御可能な正方形「窓」のコイルをそれぞれが含む2つの平面を含む。重なり合うコイル1110、1130が3×3のグリッドに配列され、重なり合うコイル1110、1130はそれぞれが、窓コイル110、1120の4つの一部分に重なり、これらの窓コイルは、実質的に
図11に関連して記載されたように配列される。
【0175】
それぞれが独立して制御可能電流を搬送するコイルが生成する磁場の重ね合わせにより、3Dベクトルパターンにおける選択された標的容積内の磁場変動の任意パターンの生成が可能となる。簡単にいえば、重なり合うコイルは、4×4行列に配列された基礎となる窓コイルが生成する磁場を相殺することができる。したがって、得られたパターンにおいて方向性相殺の微調整を達成することができる。これが、コイル配線経路1100、1120及び重なり合う配線経路1110、1130によってもたらされる磁場の分解能となる。その結果、細かい分解能が利用可能となる。重なり合うコイルレイアウトによって、3次元ベクトル相殺を可能にする軸外ベクトル成分の生成が許容される。
【0176】
この例示的な実施形態において、各コイルが38cmの正方形辺長を有し、10回巻きの銅配線から形成された小型遮蔽体が記載される。重なり合わない窓コイル配列の規則的な4×4グリッドがコイル配線経路1100、1120であり、それぞれ各面26、21上に巻かれている。一グリッドの重なり合うコイル1110、1130がそれぞれ、各面26、21に適用される。コイル平面が、150cmだけ分離され、コイルアレイの中心が床から130cmの高さになるように配置された。アレイは、選択された範囲の成人参加者を収容するように50cmから210cmの高さ範囲に広がる。
【0177】
図11及び
図12に示されるもののような重なり合う単位コイルがMSR20に設けられている実施形態において、コイルを立方体遮蔽容積25の6面すべてに配置する必要はない。しかしながら、重なり合うコイルアレイを立方体MSR20の6面すべてに設けることにより、多種多様な磁気遮蔽体をもたらすことが可能となる。
【0178】
窓コイル配列のモジュール性は、分散コイルシステムが要求する複雑な配線経路のモジュール性よりも設計及び構築が簡単である。窓コイル配列が隣接コイルを含むか、又は隣接コイルと重なり合いコイルとの組み合わせを含むかにかかわらず、複雑さはコイルからコイル増幅器及び磁場制御システムにシフトする。データ駆動型磁場相殺アプローチは、相殺容積25内のセンサアレイの任意の位置、コイルレイアウト、及び受動遮蔽内のミューメタルの存在によって引き起こされる磁場歪みに便宜を図る。したがって、MSR20は特定の形状に限られない。
【0179】
センサアレイ1001における各センサが経験する(センサアレイ1001の縦軸及び横軸に沿って投影される)MSR20内の残留磁場が、48個の行列コイルのそれぞれによって、単位電流あたりに生成された磁場を含む較正行列とともに測定される。OPMアレイが経験する磁場を最適にヌルにするコイル電流が計算される。
【0180】
脳磁図実験中にMSR内の残留磁場をヌルにするために、以下の式が使用される。M(=48)個の行列コイルの一セットにおけるm番目のコイルの単位電流に起因してN個のセンサの一アレイにおけるn番目のOPMが測定した磁場が
【数1】
と記述される場合、完全なセットの値から(N×M)コイル較正行列Aを形成することができる。その後、以下の行列式を使用して磁場ヌル化問題を記載し得る。
【数2】
(M×1)列ベクトルxが、各コイルに印加される電流を含み、(N×1)列ベクトルbが、相殺対象の磁場を特徴付ける。bは、センサにおいて測定されたDC磁場値を使用して形成され、マイナス符号は、計算される電流が、アレイが測定する磁場をヌルにすることを保証するように使用される。
【0181】
測定された磁場値の二乗和を最小にするべく必要な最適なコイル電流を、ムーア・ペンローズの疑似逆行列A
【数3】
の負を同定することによって求めることができる。
【0182】
システムが消費する電力を最小にしてソリューションが物理的に実現可能であることを保証するべく、行列αIを加えることによって反転する前に行列
【数4】
を正則化することができる。ここで、Iは
【数5】
と同じ次元の単位行列であり、αは正規化パラメータ
【数6】
である。
【0183】
コイル電流を許容範囲内に保つべく、前式はフィードフォワード制御器としてキャストされる。各時点iにおける要求電流が、先行時点において印加された電流と現時点において測定された磁場とに関連する。
【数7】
利得係数Gは、測定された磁場を、数秒の時間スケールにおいてゼロに向かって安定に低減させるように経験的に設定される。
【0184】
したがって、このシステムは、単位コイルの数及び形状の変化に適応し、それぞれが相殺容積25における参加者を表す複数のセンサアレイ1001を柔軟に組み入れることができる。
【0185】
行列Aを埋めるためのコイル較正データは、利用可能なセンシング技術に応じて、例えば、各コイルに順番にパルスを与えることによって、又は各コイルに既知の正弦波電流を印加することによって、様々な方法で収集することができる。値はまた、既知のセンサ位置、コイル設計、及びMSR20の形状に基づいても計算し得る。
【0186】
参加者は典型的に、5V(4.16mA)100msのパルスが各コイルに順番に印加されている間、ヌル化プロセス中に静止している必要がある。ヌル化容積は、コイル間の任意の位置に配置することができ、これは、立っている、座っている、又は複数の被験者と一緒にいる単一の被験者によって実験を行うことができることを意味する。ヌル化が、所与の参加者に対し平均バックグラウンド磁場を、6倍から10倍まで減少させることが発明者によって見出されている。
【0187】
較正プロセスに必要な時間は、コイルの数に応じて変化し、48コイルシステムに対しては完了まで約1分かかる。較正に先立って各センサが報告する磁場値は、コイル較正行列、各コイルに適用された最終電圧、及び最終磁場値とともに格納される。
【0188】
本発明は、磁気遮蔽又は他の形態の磁場制御が必要とされる他のアプリケーションに適用することができる。診断及び医用イメージング以外では、ここに開示される配列は、仮想現実体験のためのスキャナと組み合わせてもよい。
【0189】
もちろん、本発明の範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に対して多くの変形をなし得ることが理解される。例えば、ここに記載される立方体形状の代わりに、円筒の遮蔽体を使用してよい。かかる例では、標準的な3平面座標系の代わりに、適切な座標系が使用される。
【国際調査報告】