IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘレウス プレシャス メタルズ ノース アメリカ デイケム エルエルシーの特許一覧

特表2024-522530レジスト用途における光酸発生剤としてのオキサチアニウムイオン含有スルホン酸誘導体化合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】レジスト用途における光酸発生剤としてのオキサチアニウムイオン含有スルホン酸誘導体化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 309/10 20060101AFI20240614BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240614BHJP
   C07D 327/06 20060101ALI20240614BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240614BHJP
   G03F 7/039 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C07C309/10 CSP
C09K3/00 K
C07D327/06
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574233
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 US2022072986
(87)【国際公開番号】W WO2022272226
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/214,237
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517095467
【氏名又は名称】ヘレウス エプリオ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】シャーマ,ラム ビー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジュウェット,カイル
(72)【発明者】
【氏名】サカブイ,カウンバ
【テーマコード(参考)】
2H225
4H006
【Fターム(参考)】
2H225AF22P
2H225AF35P
2H225AF52P
2H225AF69P
2H225AN39P
2H225AN42P
2H225AN54P
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB81
(57)【要約】
【解決手段】 化学式(I)で表されるスルホン酸誘導体化合物。
【化1】
式中、Rは置換又は非置換のC~C12アルキル基であり、Zは置換又は非置換の多環式C~C30シクロアルキル基、置換又は非置換の単環式C~C30シクロアルキル基、及び置換又は非置換の単環式C~C30ヘテロアルキル基からなる群から選択される。本明細書に開示される化合物及び組成物は、様々な微細加工用途のための化学増幅レジスト組成物中の光活性成分として有用である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表され、
【化1】
式中、Rは、置換又は非置換のC-C12アルキル基であり、
Zは、置換又は非置換の多環式C~C30シクロアルキル基、置換又は非置換の単環式C~C30シクロアルキル基、及び置換又は非置換のC~C30単環式ヘテロアルキル基からなる群から選択される、スルホン酸誘導体化合物。
【請求項2】
Rは、置換又は非置換のC~Cアルキル基である、請求項1に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項3】
Rは、イソブチルである、請求項1又は2に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項4】
Zは、置換又は非置換の多環式C~C30シクロアルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項5】
Zは、アダマンチル、ノルボルニル、クビル、オクタヒドロ-インデニル、デカヒドロ-ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、及びビシクロ[3.3.1]ノニルからなる群から選択される、請求項4に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項6】
Zは、ノルボルニルである、請求項5に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項7】
Zは、アダマンチルである、請求項5に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項8】
Zは、置換又は非置換の単環式C~C30シクロアルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項9】
Zは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基からなる群から選択される、請求項8に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項10】
Zは、置換又は非置換の単環式C~C30ヘテロアリール基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項11】
Zは、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、アジリジニル、アゼチジニル、インドリニル、及びイソインドリニルからなる群から選択される、請求項10に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項12】
前記式(I)で表される化合物は、
【化2】
である、請求項1に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項13】
(i)請求項1~12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのスルホン酸誘導体化合物、
(ii)酸の存在下で水溶液への変化した溶解性を付与され得る、少なくとも1つのポリマー又はコポリマー、
(iii)有機溶媒、及び任意に
(iv)添加剤を含む、フォトレジスト組成物。
【請求項14】
前記有機溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
0.05~15重量%の前記スルホン酸誘導体化合物、
5~50重量%の前記少なくとも1つのポリマー又はコポリマー、及び
0~10重量%の前記添加剤を含み、
残りはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つのスルホン酸誘導体化合物は、
【化3】
である、請求項13~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
基板の表面上のパターン化構造の作製プロセスであって、
(a)請求項13~16のいずれか1項に記載の組成物の層を前記基板の表面に塗布し、少なくとも部分的に前記有機溶媒(iv)を除去する工程と、
(b)前記層を電磁放射線に露光し、それによって、前記電磁放射線に露光された区域において前記スルホン酸誘導体化合物(i)から酸を放出させる工程と、
(c)任意に、前記層を加熱して、前記酸が放出された区域に、化合物(ii)をもたらし、水溶液への溶解性を向上させる工程と、
(d)これらの区域における水溶液を有する前記層を少なくとも部分的に除去する工程と、を含む、プロセス。
【請求項18】
前記組成物中の前記少なくとも1つのスルホン酸誘導体は、
【化4】
である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記添加剤は、塩基性クエンチャ-である、請求項13~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記塩基性クエンチャ-は、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N1,N1,N3,N3-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イルカルバメート等の直鎖及び環状アミド並びにその誘導体、ピリジン及びジ-tert-ブチルピリジン等の芳香族アミン、トリイソプロパノールアミン、n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシエチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザントリイル))テトラエタノール、及び2-(ジブチルアミノ)エタノール、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノール等の脂肪族アミン、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、tert-ブチル1-ピロリジンカルボキシレート、tert-ブチル2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボキシレート、ジ-tert-ブチルピペラジン-1,4-ジカルボキシレート、及びN(2-アセトキシエチル)モルホリン等の環状脂肪族アミンからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記塩基性クエンチャーは、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記塗布工程は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、及びドクターブレーディングからなる群から選択される方法によって行われる、請求項17又は18に記載のプロセス。
【請求項23】
前記基板は、シリコン、二酸化シリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、歪シリコン、ガリウムヒ素、及び被覆基板からなる群から選択され、前記コーティングは、窒化シリコン、酸窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、酸化ハフニウム、チタン、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17又は18に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規な光酸発生剤化合物(「PAG」)及びそのようなPAG化合物を含む組成物に関する。特には、本開示のPAG化合物は、有機溶媒への溶解性に優れ、フォトリソグラフィープロセスにおいて、従来のPAG化合物よりも感度が高く、性能が良い。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは、画像を基板に転写するための感光性フィルムである。それらは、ネガ又はポジ画像を形成する。基板上にフォトレジストをコーティングした後、コーティングは、パターン化されたフォトマスクを介して、紫外光のような活性化エネルギーの供給源にさらされて、フォトレジストコーティングに潜像を形成する。フォトマスクには、活性化放射線を通さない区域と通す区域があり、それらの区域が、下地基板に転写したい像を画定する。
【0003】
化学増幅型フォトレジストは、半導体の製造における超微細パターンを形成するためのプロセスにおいて、高い感度を達成するのに有用であることが証明されている。これらのフォトレジストは、PAGと、酸不安定性構造を有するポリマーマトリックスとをブレンドすることによって調製される。このようなフォトレジストの反応機構によれば、光源を照射すると、光酸発生剤が酸を発生させ、いわゆる「露光後ベーク」(PEB)において、その露光部又は照射部内のポリマーマトリックスの主鎖又は分岐鎖が、発生した酸と反応し、分解又は架橋されて、そのポリマーの極性が変化するようになる。この極性変化により、照射露光区域と非露光区域で現像液への溶解性に差が生じることで、マスクのポジ又はネガ画像が基板上に形成される。酸の拡散は、フォトレジストの感度及びスループットを高めるためのみならず、ショットノイズの統計的な値によるラインエッジラフネスを限定するためにも重要である。
【0004】
化学増幅フォトレジストでは、結像に必要な溶解性変換化学反応は、露光に直接起因するのではなく、むしろ、露光は、その後のPEB工程の際に溶解性変換化学反応を促す安定な触媒種を発生させるものである。「化学増幅」という用語は、光化学的に発生した各触媒分子が多数回の溶解性変換反応イベントを促し得ることに起因する。この変換反応の見かけの量子効率は、触媒発生の量子効率に、平均触媒連鎖長を乗じたものである。元の露光量は、その後の化学反応イベントの連鎖によって「増幅される」。触媒の触媒連鎖長は、非常に長くなり得(最大で数百回の反応イベント)、それにより、露光が著しく増幅される。
【0005】
化学増幅は、レジスト感度を飛躍的に高めることができる点では有益であるが、潜在的な欠点がないわけではない。例えば、触媒分子は、数百個の反応部位まで動き回るので、必ずしも、結像用放射線を露光した領域に触媒分子が制限されるわけではない。レジスト感度と結像忠実度は、潜在的にトレードオフの関係にある。例えば、増幅フォトレジストは、フォトマスクを介して露光させて、その露光領域に酸触媒を発生させる。PEBにおいてウエハの温度を上昇させ、それにより、化学反応を生じさせることによって、第1の工程で生成された酸潜像は、可溶性領域及び不溶性領域からなる像に変換される。一部の酸は、最初に露光した領域外に移動し、「微細寸法バイアス」の問題を引き起こす。ベーク後、溶媒で像を現像する。露光領域から非露光領域に酸が拡散すると、現像された形状の幅が、公称のマスク寸法よりも大きくなり得る。触媒拡散距離は、印刷される形状のサイズに比べれば些細なことであったため、増幅レジストの歴史の大半においては、このトレードオフ関係は、ほとんど問題とされなかったが、形状サイズが縮小されてきても、拡散距離は概ね同じままであり、触媒の拡散が、大きな関心事として台頭してきている。
【0006】
ポリマーの溶解性を変化させる酸を充分に発生させるには、特定の露光時間が必要になる。N-ヒドロキシナフタルイミドトリフレート(「NIT」)のような既知のPAG分子では、この露光時間は、かなり長い(365nm以上における吸収が小さいため)。しかしながら、PAGの溶解性が制限要因であるため、このようなPAGの濃度を上昇させても、露光時間は速くならない。別の可能性は、光を吸収し、エネルギーをPAGに伝達し、その結果、酸を遊離させる増感剤を加えることである。しかしながら、このような増感剤は、近接するPAGにエネルギーを伝達できるようにするには、かなり高濃度で使用しなければならない。増感剤は、そのような高い濃度では、吸収が大き過ぎることが多く、現像後のレジストプロファイルの形状に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当該技術分野においては、溶解性が向上したPAG(より多くの活性分子が、調合物にもたらされることを意味する)に対するニーズが存在し、これらの化合物を含むフォトレジスト組成物は、電磁放射線、特に、波長が200~500nmの電磁放射線に対する感度が高く、それと同時に、先行技術から公知のフォトレジスト組成物と比べて高い解像度で、パターン化構造を作製可能にする。
【0008】
この必要性は、本明細書に開示される化合物及び組成物によって満たされる。
【0009】
実施形態1。下記式Iで表されるスルホン酸誘導体化合物。
【化1】
式中、Rは、置換又は非置換のC-C12アルキル基であり、Zは、置換又は非置換の多環式C-C30シクロアルキル基、置換又は非置換の単環式C-C30シクロアルキル基、及び置換又は非置換のC-C30単環式ヘテロアルキル基からなる群から選択される。
【0010】
実施形態2。Rが、置換又は非置換のC-Cアルキル基である、実施形態1のスルホン酸誘導体化合物。
【0011】
実施形態3。Rがイソブチルである、実施形態1又は2に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【0012】
実施形態4。Zが、置換又は非置換の多環式C-C30シクロアルキル基である、前述の実施形態のいずれかのスルホン酸誘導体化合物。
【0013】
実施形態5。Zが、アダマンチル、ノルボルニル、クビル、オクタヒドロ-インデニル、デカヒドロ-ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、及びビシクロ[3.3.1]ノニルからなる群から選択される、実施形態4のスルホン酸誘導体化合物。
【0014】
実施形態6。Zがノルボルニルである、実施形態5のスルホン酸誘導体化合物。
【0015】
実施形態7。Zがアダマンチルである、実施形態5のスルホン酸誘導体化合物。
【0016】
実施形態8。Zが、置換又は非置換の単環式C-C30シクロアルキル基である、実施形態1、2及び3のいずれか1つのスルホン酸誘導体化合物。
【0017】
実施形態9。Zが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基からなる群から選択される、実施形態8のスルホン酸誘導体化合物。
【0018】
実施形態10。Zが、置換又は非置換のC-C30単環式ヘテロアリール基である、実施形態1、2及び3のいずれか1つのスルホン酸誘導体化合物。
【0019】
実施形態11。Zが、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、アジリジニル、アゼチジニル、インドリニル及びイソインドリニルからなる群から選択される、実施形態10のスルホン酸誘導体化合物。
【0020】
実施形態12。式(I)で表される化合物は、
【化2】
である、実施形態1のスルホン酸誘導体化合物。
【0021】
実施形態13。(i)前述の実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのスルホン酸誘導体化合物と、(ii)酸の存在下で水溶液への変化した溶解性を付与され得る、少なくとも1つのポリマー又はコポリマーと、(iii)有機溶媒と、任意に(iv)添加剤と、を含む、フォトレジスト組成物。
【0022】
実施形態14。有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である、実施形態13に記載の組成物。
【0023】
実施形態15。0.05~15重量%のスルホン酸誘導体化合物と、5~50重量%の少なくとも1つのポリマー又はコポリマーと、0~10重量%の添加剤と、を含み、残りはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、実施形態13又は14に記載の組成物。
【0024】
実施形態16。少なくとも1つのスルホン酸誘導体化合物が、
【化3】
である、実施形態13~16のうちの1つの組成物。
【0025】
実施形態17。基板の表面上のパターン化構造の作製プロセスであって、(a)実施形態13~16のいずれか1つに記載の組成物の層を基板の表面に塗布し、少なくとも部分的に有機溶媒(iv)を除去する工程と、(b)層を電磁放射線に露光し、それによって、電磁放射線に露光された区域においてスルホン酸誘導体化合物(i)から酸を放出させる工程と、(c)任意に、層を加熱して、酸が放出された区域に、化合物(ii)をもたらし、水溶液への溶解性を向上させる工程と、(d)これらの区域における水溶液を有する層を少なくとも部分的に除去する工程と、を含む、プロセス。
【0026】
実施形態18。組成物中の少なくとも1つのスルホン酸誘導体が、
【化4】
である、実施形態17に記載のプロセス。
【0027】
実施形態19。添加剤が塩基性クエンチャ-である、実施形態13~16のうちの1つの組成物。
【0028】
実施形態20。塩基性クエンチャ-が、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N1,N1,N3,N3-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イルカルバメート等の直鎖及び環状アミド並びにその誘導体;ピリジン及びジ-tert-ブチルピリジン等の芳香族アミン;トリイソプロパノールアミン、n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシエチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザントリイル))テトラエタノール及び2-(ジブチルアミノ)エタノール、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノール等の脂肪族アミン;1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、tert-ブチル1-ピロリジンカルボキシレート、tert-ブチル2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボキシレート、ジ-tert-ブチルピペラジン-1,4-ジカルボキシレート及びN(2-アセトキシエチル)モルホリン等の環状脂肪族アミンからなる群から選択される、実施形態19の組成物。
【0029】
実施形態21。塩基性クエンチャーが、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される、実施形態20の組成物。
【0030】
実施形態22。塗布工程が、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、及びドクターブレーディングからなる群から選択される方法によって行われる、実施形態17又は18に記載のプロセス。
【0031】
実施形態23。基板が、シリコン、二酸化シリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、歪シリコン、ガリウムヒ素、及び被覆基板からなる群から選択され、コーティングが、窒化シリコン、酸窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、酸化ハフニウム、チタン、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態17又は18に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲を含む、本出願で使用される以下の用語は、以下に示す定義を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0033】
範囲を含む、重量、pH、温度、時間、濃度、及び分子量などの全ての数値表示は、10%変動する近似値である。必ずしも明示的に示されているわけではないが、全ての数値表示の前には、「約」という語が付されていると理解されたい。必ずしも明示的に示されているわけではないが、本明細書に記載されている試薬は、例示的なものに過ぎず、そのような試薬の同等物は、当該技術分野において知られていることも理解されたい。
【0034】
本開示に関しては、本発明の明細書で用いられる技術用語及び科学用語は、別段に具体的な定義のない限り、当業者によって一般に理解される意味を有することになる。したがって、以下の用語は、以下の意味を有するように意図されている。
【0035】
本明細書で使用する場合、「部分」という用語は、分子の所定の部分又は官能基を指す。化学的部分は、認識されている化学的実体であって、分子に組み込まれたか又は付加された化学的実体であることが多い。
【0036】
本明細書で使用する場合、「脂肪族」という用語には、下に定められているように、それぞれ任意に置換されているアルキル、アルケニル、アルキニルという用語が含まれる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「アルキル」基とは、1~20個(例えば、2~18個、3~18個、1~8個、1~6個、1~4個又は1~3個)の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状又はこれらがいずれかに組み合わさったものであり得る。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、又は2-エチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、下に定められているように、1つ以上の置換基で置換(すなわち、任意に置換)されているか、又は多環式であり得る。
【0038】
「ハロゲン」は、周期表の17族の原子であり、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、単独で、又は「アラルキル」、「アラルコキシ」若しくは「アリールオキシアルキル」におけるように、大きい部分の一部として用いられている「アリール」基は、単環式(例えばフェニル);二環式(例えば、インデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル);及び三環式(例えば、フルオレニルテトラヒドロフルオレニル又はテトラヒドロアントラセニル、アントラセニル)の環系であって、その単環式の環系が芳香族であるか、又は二環式若しくは三環式の環系の少なくとも1つの環が芳香族である環系を指す。二環式及び三環式基は、2~3員のベンゾ縮合型炭素環式環を含む。例えば、ベンゾ縮合型基は、2つ以上のC4~8炭素環式部分と縮合したフェニルを含む。アリールは、以下に記載されるように、1つ以上の置換基で任意に置換される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「単環式C~C30シクロアルキル基」という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の3~30個の炭素原子を有する単環式脂肪族アルキル基を指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、「多環式C~C30シクロアルキル基」という用語は、3~30個の炭素原子を有する2つ以上の環(例えば、縮合又は架橋した二環式)を有する炭素環式部分を指す。例としては、アダマンチル、ノルボルニル、クビル、オクタヒドロ-インデニル、デカヒドロ-ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、及びビシクロ[3.3.1]ノナンが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「C~C30単環式ヘテロアルキル基」という用語は、環系中に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有することを除いて、上で定義された3~30員の単環式アルキル基を意味する。このような基の例は、例えば、モルホリン、チオモルホリン、ピロリジン、イミダゾリン、オキサゾリン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、アジリジン、アゼチジン、インドリン、イソインドリン等から誘導される一価の基である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」基という用語は、4~18個の環原子を有する単環式、二環式又は三環式の環系であって、その環原子のうちの1つ以上が、ヘテロ原子(例えば、N、O、S又はこれらを組み合わせたもの)であり、その単環式の環系が芳香族であるか、又はその二環式若しくは三環式の環系の少なくとも1つの環が芳香族である環系を指す。
【0044】
「任意に置換された」という語句は、「置換又は非置換の」という語句と同義的に使用されている。本明細書に記載されているように、本開示の化合物は、上記に概ね示されているか、又は本開示の化合物の特定の部類、下位部類及び種によって例示されているように、1つ以上の置換基で任意に置換され得る。本明細書に記載されているように、上記部分又は下記に示されている部分のいずれも、本明細書に記載されている1つ以上の置換基で任意に置換され得る。特定の基の各置換基は、1~3個のハロ、シアノ、オキソアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、ハロアルキル、及びアルキルで更に任意に置換される。例えば、アルキル基はアルキルスルファニルで置換されていてもよく、アルキルスルファニルは、ハロ、シアノ、オキソアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、ハロアルキル、及びアルキルのうちの1~3個で任意に置換されていてもよい。
【0045】
一般に、「置換された」という用語は、「任意に」という用語がその前に付されているか否かにかかわらず、所定の構造内の水素ラジカルが所定の置換基のラジカルに置き換わっていることを指す。特定の置換基は、定義内で上記されており、化合物の説明及びその実施例において後述されている。別段に示されていない限り、任意に置換された基は、その基の置換可能な各位置に置換基を有することができ、いずれかの所定の構造内の2つ以上の位置を、所定の基から選択した2つ以上の置換基で置換できるときには、その置換基は、全ての位置において同じであることも、異なることもできる。ヘテロシクロアルキルのような環置換基は、シクロアルキルのような別の環に結合して、スピロ二環式の環系を形成でき、例えば、両方の環が、1つの共通の原子を共有する。当業者に認識されるように、本開示によって想定されている置換基の組み合わせは、安定な化合物又は化学的に可能な化合物を形成させる組み合わせである。
【0046】
本明細書の全体を通じて開示されている化合物の改変形態又は誘導体は、本開示の方法及び組成物とともに、有用なものとして企図されている。誘導体を調製してもよく、そのような誘導体の特性は、当業者に知られているいずれかの方法によって、その所望の特性についてアッセイしてよい。特定の態様では、「誘導体」とは、化学的に改変した化合物であって、その化学的改変を行う前の化合物の所望の作用を保持し続けている化合物を指す。
【0047】
光酸発生剤化合物であるスルホン酸誘導体
化学線に露光されたとき、特に、電子ビーム、X線、及び13.5nmの波長を有する超紫外線(EUV)等の高度なリソグラフィーのための放射線に露光されるフォトレジスト組成物に使用されたときに、低いガス放出特性を有する新規な光酸発生剤(本明細書ではPAG)が本明細書に開示される。光酸発生剤は、これらの化学線に対して高い感度を有するオキサチアニウムカチオンの塩であるが、これらのPAGの分解生成物は、フォトレジスト組成物、露光、及び処理の同様の条件下で従来のPAGと比較して低減される。
【0048】
本明細書に開示されるPAGは、カチオンがアリール置換オキサチアニウムカチオンである、カチオン-アニオン構造に基づく。本明細書で使用される場合、「オキサチアニウム」は、以下の構造(Ia)を有するスルホニウムカチオンを指す。
【化5】
【0049】
式(Ia)において、Rは、置換又は非置換のC~C12アルキル基である。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
【0050】
本明細書に開示されるPAGは、スルホン酸誘導体のオキサチアニウ塩であり、式(I)によって表される。
【化6】
式中、Rは置換又は非置換のC~C12アルキル基であり、Zは置換又は非置換の多環式C~C30シクロアルキル基、置換又は非置換の単環式C~C30シクロアルキル基、及び置換又は非置換のC~C30単環式ヘテロアリール基からなる群から選択される。
【0051】
式Iにおいて、Rは置換又は非置換C~C12アルキル基であり、好ましくはC~Cアルキル基である。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態において、Zは、置換又は非置換の多環式C~C30シクロアルキル基であり、アダマンチル、ノルボルニル、クビル、オクタヒドロ-インデニル、デカヒドロ-ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、及びビシクロ[3.3.1]ノニルからなる群から選択される。
【0053】
他の実施形態において、Zは、置換又は非置換の単環式C~C30シクロアルキル基であり、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基からなる群から選択される。
【0054】
更に他の実施形態において、Zは、置換又は非置換のC~C30単環式ヘテロアリール基であり、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、アジリジニル、アゼチジニル、インドリニル、及びイソインドリニルからなる群から選択される。
【0055】
好ましい実施形態において、アニオンは5-ノルボルニルオクタフルオロ-3-オキサペンタンスルホネート、
【化7】
であり、オキサチアニウムイオンは
【化8】
である。
【0056】
本明細書に開示されるスルホン酸誘導体化合物は、以下でより詳細に説明するように、光酸発生剤として使用することができる。驚くべきことに、本明細書に開示されるPAG化合物は、優れた溶解性及び電磁放射線に対する、特に150~500nmの範囲、好ましくは300~450nmの範囲、より好ましくは350~440nmの範囲の波長、より好ましくは365nm(i線)、405nm(h線)及び436nm(g線)の波長を有する電磁放射線に対する光反応性を特徴とすることが発見された。
【0057】
本開示によるPAGは、フォトリソグラフィープロセスに高度な効率を付与し、レジスト組成物の露光領域と非露光領域の間のコントラスト及び解像度を向上させる。PAG、及びUV照射によって供給するエネルギーの量は、所望の重縮合を可能にするのに充分な量となるように選択される。
【0058】
本開示のPAGは、ポジ型又はネガ型の化学増幅フォトレジスト、すなわち、光酸によって架橋反応を促して、レジストのコーティング層の露光領域において、現像液への可溶性が非露光領域よりも低くなるようにするネガ型レジスト組成物、及び光酸によって、1つ以上の組成物成分の酸不安定基の脱保護反応を促して、レジストのコーティング層の露光領域において、水性現像液への可溶性が非露光領域よりも高くなるようにするポジ型レジスト組成物で好適に使用され得る。
【0059】
本明細書に開示されるフォトレジストの好ましい結像波長としては、300nm未満の波長、例えば248nm、及び200nm未満の波長、例えば193nm及びEUV、より好ましくは200~500nmの範囲、好ましくは300~450nmの範囲、更により好ましくは350~440nmの範囲、最も好ましくは365nm(i線)、405nm(h線)及び436nm(g線)の波長が挙げられる。
【0060】
フォトレジスト組成物
本明細書に開示されるフォトレジスト組成物は、(i)式(I)から選択される少なくとも1つの光酸発生剤、(ii)塩基可溶性又は不溶性であり得る少なくとも1つのフォトレジストポリマー又はコポリマー、(iii)有機溶媒と、任意に(iv)添加剤と、を含む、フォトレジスト組成物。
【0061】
式(I)の光酸発生剤を含む、本開示によるフォトレジスト組成物は、様々な用途でのフォトレジストとして、特に、フラットパネルディスプレイ(この場合、フォトレジストは、コーティングガラス基板又は酸化インジウムスズの層であり得る)、及び半導体デバイス(この場合、フォトレジストは、シリコンウエハ基板上にコーティングできる)を含む電子デバイスの作製用途でのフォトレジストとして使用するのに適する。200~500nm、好ましくは300~450nmの範囲、より好ましくは350~440nmの範囲、更により好ましくは365nm(i線)、436nm(g線)又は405nm(h線)の波長を有する電磁放射線による露光を含む様々な露光放射線を使用することができ、365nmの波長を有する電磁放射線が特に好ましい。
【0062】
本明細書に開示されるフォトレジスト組成物は、成分(ii)として、現像液に可溶性であっても不溶性であってもよい1つ以上のフォトレジストポリマー又はコポリマーを含む。本明細書に開示されるフォトレジスト組成物は、ポジティブトーン又はネガティブトーン組成物用であってもよい。ポジティブトーン組成物の場合、成分(ii)の溶解性は、本明細書に開示される化合物(複数可)から放出される酸と反応すると向上する。この場合、塩基水溶液に不溶であるが、酸の存在下で触媒によって脱保護されると、溶液に可溶となる成分(ii)として、酸不安定基を有するフォトレジストポリマー又はコポリマーが用いられる。ネガティブトーン組成物の場合には、成分(ii)の溶解性は、本明細書に開示される化合物から放出された酸と反応すると低下する。この場合、現像液に可溶であるが、酸の存在下で架橋されると、塩基水溶液に不溶となる成分(ii)として、フォトレジストポリマー又はコポリマーが用いられる。すなわち、フォトレジストポリマー又はコポリマーは、酸の存在下で、現像液への溶解性を変化させることができる。好ましくは、現像液は水溶液であり、より好ましくは、塩基水溶液である。
【0063】
ポジティブトーン組成物の成分(ii)として用いてよいフォトレジストポリマーの例としては、限定されないが、酸不安定基で保護されたヒドロキシスチレンのホモポリマー又はコポリマーのような芳香族ポリマー、例えば、ペンダント脂環族基を含む単位を少なくとも1つ有するとともに、ポリマー骨格から及び/又は脂環族基から枝分かれしている酸不安定基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルのようなアクリル酸エステル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンマレイン酸無水物コポリマー、シクロオレフィンビニルエーテルコポリマー、シロキサン、シルセスキオキサン、カルボシラン、並びにポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン、炭水化物及びその他のかご状化合物を含むオリゴマーが挙げられる。上記のポリマー又はオリゴマーは適宜、必要に応じて、水性塩基可溶性基、酸不安定基、極性官能基及びシリコン含有基で官能化されている。
【0064】
本開示のポジティブトーン組成物の成分(ii)として用いてよいコポリマーの例としては、限定されないが、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)-メチルアダマンチルメタクリレート(PHS-MAdMA)、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)-2-エチル-2-アダマンチルメタクリレート(PHS-EAdMA)、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)-2-エチル-2-シクロペンチルメタクリレート(PHS-ECpMA)、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)-2-メチル-2-シクロペンチルメタクリレート(PHS-mCPMA)又はPHS-EVEが挙げられる。
【0065】
好ましくは、ポジティブトーン組成物の少なくとも1つの成分(ii)は、少なくとも一部のヒドロキシ基が保護基によって置換されているポリ(ヒドロキシスチレン)樹脂である。好ましい保護基は、tert-ブトキシカルボニルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、tert-アミロキシカルボニルオキシ基及びアセタール基からなる群から選択される。更に、成分ii)として適しているのは、EP1586570A1の段落[0068]~[0114]に「酸解離性基含有樹脂」として記載されている全てのポリマー及びコポリマーである。これらの樹脂に関するEP1586570A1の開示は、参照により本明細書に組み込まれ、本開示の一部を形成する。
【0066】
好ましいネガティブトーン組成物は、酸に曝露されると、硬化するか、架橋するか又は固くなる物質の混合物を含む。好ましいネガ型組成物は、成分(ii)として、フェノール系又は非芳香族ポリマーなどのポリマーバインダー、添加剤(iv)としての架橋剤成分、及び成分(i)として本明細書に開示される光酸発生剤成分を含む。このようなネガティブトーンフォトレジスト組成物のための適切なポリマーバインダー及び架橋剤並びにそれらの使用は、EP-A-0164248及びUS5,128,232に開示されている。成分(ii)として使用するのに好ましいフェノール系ポリマーとしては、ノボラック及びポリ(ビニルフェノール)が挙げられる。ノボラック樹脂は、フェノールとアルデヒドとの熱可塑性縮合生成物である。ノボラック樹脂の形成のためのアルデヒド、特にホルムアルデヒドとの縮合に適したフェノールの例としては、フェノール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール及びチモールが挙げられる。酸触媒縮合反応により、分子量が約500~100,000ダルトンで変化し得る適切なノボラック樹脂が形成される。ポリビニルフェノール樹脂は、カチオン性触媒の存在下で、対応するモノマーのブロック重合、乳化重合又は溶液重合によって形成され得る熱可塑性ポリマーである。ポリビニルフェノール樹脂の作製に有用なビニルフェノールは、例えば、市販のクマリン又は置換クマリンを加水分解してから、得られたヒドロキシケイ皮酸を脱炭酸することによって調製し得る。有用なビニルフェノールは、対応するヒドロキシアルキルフェノールを脱水するか、又は置換若しくは非置換のヒドロキシベンズアルデヒドとマロン酸との反応から得られたヒドロキシケイ皮酸を脱炭酸することによっても調製し得る。このようなビニルフェノールから調製される好ましいポリビニルフェノール樹脂は、約2,000~約60,000ダルトンの範囲の分子量を有する。成分(iv)として使用するのに好ましい架橋剤としては、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン系材料及び尿素系材料を含むアミン系材料が挙げられる。メラミン-ホルムアルデヒドポリマーがしばしば特に好適である。このような架橋剤は市販されており、例えば、メラミンポリマー、グリコールウリルポリマー、尿素系ポリマー及びベンゾグアナミンポリマー、例えばCytec社によってCymel(商標)301、303、1170、1171、1172、1123及び1125並びにBeetle(商標)60、65及び80の商品名で販売されているものがある。
【0067】
成分(iii)として、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1つの有機溶媒を含む。有機溶媒としては、成分(ii)及び成分(i)を溶解させて均一な溶液とすることができるものであればよく、従来の、化学増幅型レジストの溶媒として使用される公知の材料の中から選択された1つ以上の溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、若しくはモノフェニルエーテル等の多価アルコール及びその誘導体、ジオキサン等の環状エーテル、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル及びエトキシプロピオン酸エチル等のエステル等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いることも、2つ以上の異なる溶媒を含む混合溶媒として用いることもできる。特に好ましい有機溶媒(iii)は、ケトン、エーテル及びエステルからなる群から選択される。
【0068】
更に、本開示による組成物は任意に、成分(i)、(ii)及び(iii)とは異なる添加剤も少なくとも1つ含んでよい。例えば、他の任意の添加剤としては、化学線作用性色素及びコントラスト色素、ストリエーション防止剤、可塑剤、速度促進剤、増感剤等が挙げられる。このような任意の添加剤は、比較的高い濃度(例えば、レジストの乾燥成分の総重量の5~30重量パーセントの量)であってよいフィラー及び色素を除き、典型的には、低い濃度でフォトレジスト組成物に存在することになる。
【0069】
本開示によるフォトレジスト組成物で典型的に用いられる添加剤の1つは、塩基性クエンチャーである。塩基性クエンチャーは、フォトレジスト層の非露光領域(暗領域)となるように意図されている領域に届く逆光によって、下のフォトレジスト層の表面領域で、発生した酸を中和するためのものである。これにより、非露光区域において、望ましくない脱保護反応を制御することによって、デフォーカス領域の焦点深度、及び露光余裕度を向上可能になる。その結果、プロファイルにおける凹凸、例えば、形成されたレジストパターンにおけるネッキング及びT-トップ化を最小限にするか、又は回避することができる。
【0070】
下のフォトレジスト層の暗領域で、塩基性クエンチャーと、発生する酸との有効な相互作用が可能となるには、塩基性クエンチャーは、非界面活性剤型である必要がある。つまり、塩基性クエンチャーは、例えば、表面自由エネルギーがオーバーコート組成物の他の成分よりも低いために、オーバーコート層の上面に移動する種類のものであってはならない。このような場合には、塩基性クエンチャーは、発生した酸と相互作用して、酸による脱保護を防ぐためには、フォトレジスト層界面にあまり存在しないことになる。したがって、塩基性クエンチャーは、オーバーコート層の全体にわたって均一に分散するか、又はオーバーコート層/フォトレジスト層界面に、傾斜層若しくは分離層を形成するかにかかわらず、オーバーコート層/フォトレジスト層界面に存在する種類のものでなければならない。このような分離層は、オーバーコート組成物の他の成分と比べて表面自由エネルギーが高い塩基性クエンチャーを選択することによって実現できる。
【0071】
好適な塩基性クエンチャーとしては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバルアミド,N,N-ジエチルアセトアミド、N1,N1,N3,N3-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イルカルバメート等の直鎖及び環状アミド及びその誘導体、ピリジン及びジ-tert-ブチルピリジン等の芳香族アミン、トリイソプロパノールアミン、n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシエチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザントリイル))テトラエタノール及び2-(ジブチルアミノ)エタノール、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノール等の脂肪族アミン、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、tert-ブチル1-ピロリジンカルボキシレート、tert-ブチル2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボキシレート、ジ-tert-ブチルピペラジン-1,4-ジカルボキシレート及びN(2-アセトキシエチル)モルホリン等の環状脂肪族アミンが挙げられる。これらの塩基性クエンチャーのうち、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン及びトリイソプロパノールアミンが好ましい。塩基性クエンチャーの含有量は、例えば、下にあるフォトレジスト層中の光酸発生剤の含有量に依存するが、典型的には、オーバーコート組成物の全固形分に基づいて、0.1~5重量%、好ましくは0.5~3重量%、より好ましくは1~3重量%の量で存在する。
【0072】
別の考え方は、塩基性部分をPAG分子に結合することである。この場合には、クエンチャーは、PAGの一部であり、照射により形成される酸に近接している。これらの化合物は、電磁放射線、特に、波長が200~500nmの範囲の電磁放射線、より特定的には、波長が365nmの電磁放射線(i線)に対する感度が高く、それと同時に、先行技術から公知のフォトレジスト組成物のうち、クエンチャーを添加剤として含むフォトレジスト組成物と比べて高い解像度で、パターン化構造を作製可能にする。
【0073】
本開示のレジストの樹脂バインダー成分は典型的には、レジストの露光コーティング層を水性アルカリ溶液などによって現像可能にするのに充分な量で使用する。更に詳細には、樹脂バインダーは好適には、レジストの全固形分の50~約90重量パーセントを占めることになる。光活性成分は、レジストのコーティング層に潜像を形成させるのに充分な量で存在しなければならない。より具体的には、光活性成分は好適には、レジストの全固形分の約1~40重量パーセントの量で存在することになる。典型的には、化学増幅レジストでは、光活性成分の量が少ないほど好適となる。
【0074】
好ましい実施形態によれば、本明細書に開示される組成物は、
【0075】
(i)0.05~15重量%、好ましくは0.1~12.5重量%、最も好ましくは1~10重量%の少なくとも1つの式(I)の光酸発生剤化合物と、
【0076】
(ii)5~50重量%、好ましくは7.5~45重量%、最も好ましくは10~40重量%の、塩基可溶性又は不溶性であってよい少なくとも1つのフォトレジストポリマー又はコポリマーと、
【0077】
(iv)0~10重量%、好ましくは0.01~7.5重量%、最も好ましくは0.1~5重量%の更なる添加剤と、を含み、組成物中の残りは有機溶媒(iii)である。
【0078】
本開示による化合物では、電磁放射線を照射すると放出される酸基に対するクエンチャーとして機能する塩基性官能基は、光酸発生剤化合物の一部であるので、別個の塩基性成分をクエンチャーとして加える必要がない(先行技術から公知のフォトレジスト組成物では、加える必要がある)。本開示による組成物の好ましい実施形態によれば、この組成物は好ましくは、水酸化物、カルボキシレート、アミン、イミン及びアミドのように、成分(i)~(iv)とは異なる塩基性化合物の含有量が5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、更に好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0重量%である。
【0079】
本開示のフォトレジストは概して、類似のフォトレジストの調合に用いる従来の光活性化合物を本開示のPAGに置き換えることを除いて、既知の手順に従って調製する。例えば、本開示のレジストは、例えば、2-メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル、乳酸エチル又は乳酸メチル等の、ただし乳酸エチルが好ましい乳酸塩、プロピオン酸塩、特にプロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチル、メチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、又はメチルエチルケトン、シクロヘキサノン及び2-ヘプタノン等のケトンのような好適な溶媒に、そのフォトレジストの成分を溶解させることによって、コーティング組成物として調製され得る。典型的には、フォトレジストの固形分は、フォトレジスト組成物の総重量の5~35重量パーセントの間で変動する。
【0080】
本開示のフォトレジスト組成物は、既知の手順に従って使用できる。本開示のフォトレジストは、ドライフィルムとして塗布してよいが、好ましくは、基板上に液体コーティング組成物として塗布し、好ましくはコーティング層がタックフリーになるまで、加熱によって乾燥して溶媒を除去し、フォトマスクを介して活性化放射線を照射し、任意に露光後ベークを行って、レジストコーティング層の露光領域と非露光領域との溶解度差を発生又は拡大させ、その後、好ましくは水性アルカリ性現像液で現像して、レリーフ像を形成する。本開示のレジストを塗布して処理する基板は好適には、マイクロエレクトロニクスウエハなど、フォトレジストを伴うプロセスで用いられるいずれの基板であることもできる。例えば、その基板は、シリコン、二酸化シリコン又はアルミニウム-酸化アルミニウムのマイクロエレクトロニクスウエハであり得る。ガリウムヒ素、セラミック、石英又は銅の基板もまた用いられ得る。液晶ディスプレイ用途及び他のフラットパネルディスプレイ用途で用いられる基板、例えば、ガラス基板、酸化インジウムスズ被覆基板なども好適に用いられる。液体コーティングレジスト組成物は、スピニング、ディッピング又はローラーコーティングのようないずれかの標準的な手段によっても塗布してよい。露光エネルギーは、感放射線性系の光活性成分を有効に活性化して、レジストコーティング層に、パターン化された画像を形成させるのに充分なエネルギーでなければならない。適切な露光エネルギーは、典型的には約1~300mJ/cmの範囲である。上述のように、好ましい露光波長としては、193nm等の200nm未満の波長が挙げられる。好適な露光後ベーク温度は、約50℃以上、より具体的には約50~140℃である。酸硬化性ネガ型レジストでは、所望の場合、約100~150℃の温度で数分間以上、現像後ベークを用いて、現像時に形成されたレリーフ像を更に硬化させることができる。現像及び任意の現像後硬化の後、現像によって露出した基板表面を選択的に処理してよく、例えば、当該技術分野において知られている手順に従って、フォトレジストが除去された露出した基板区域のケミカルエッチング又はメッキを行ってよい。適切なエッチャントとしては、フッ化水素酸エッチング液、及び酸素プラズマエッチング剤のようなプラズマガスエッチング剤が挙げられる。
【0081】
複合体
本明細書は、基板と、その基板上にパターン化構造で塗布されているコーティングとを含む複合体の作製プロセスであって、
【0082】
(a)本開示による組成物の層を基板の表面上に塗布し、有機溶媒(iii)を少なくとも部分的に除去する工程、
【0083】
(b)その層の選択された区域を電磁放射線に露光し、それによって、電磁放射線を露光した区域において、化合物(i)から酸を放出させる工程、
【0084】
(c)任意に、その層を加熱して、酸が放出された区域に、化合物(ii)をもたらし、水溶液への溶解性を変化させる工程、及び
【0085】
(d)その層を少なくとも部分的に除去する工程、を含む、プロセスを開示する。
【0086】
プロセス工程(a)では、本開示による組成物の層を基板の表面上に塗布してから、有機溶媒(iii)を少なくとも部分的に除去する。
【0087】
基板は、いずれの寸法及び形状であってもよく、好ましくは、シリコン、二酸化シリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、歪シリコン、ガリウムヒ素、被覆基板(窒化シリコン、酸窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタルで被覆された基板を含む)、酸化ハフニウムのような極薄ゲート酸化物、金属又は金属被覆基板(チタン、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、これらの合金で被覆された基板を含む)、並びにこれらを組み合わせたものなど、フォトリソグラフィーに有用な基板である。好ましくは、本明細書における基板の表面は、例えば、半導体製造用の、基板上の1つ以上のゲートレベル層又はその他の微細寸法層を含め、パターン化される微細寸法層を含む。このような基板は好ましくは、例えば、直径が20cm、30cm若しくはそれを上回る値、又はウエハのファブ生産に有用なその他の寸法などの寸法である円形ウエハとして形成されたシリコン、SOI、歪シリコン及び他の類似の基板材料を含んでよい。
【0088】
本開示による組成物の基板上への塗布は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレードなどを含むいずれかの好適な方法によって行ってよい。フォトレジスト層の塗布は好ましくは、フォトレジストをスピニングウエハ上に分注するコーティングトラックを用いて、フォトレジストをスピンコーティングすることによって行う。スピンコーティングプロセスの間、ウエハを最大で4,000rpm、好ましくは約500~3,000rpm、より好ましくは1,000~2,500rpmの速度で回転させてよい。コーティングしたウエハを回転させて、有機溶媒(iii)を除去し、ホットプレート上でベークして、その膜から残存溶媒及び自由体積を除去し、膜の密度を均一にする。
【0089】
プロセス工程(b)では、その層の選択された区域に電磁放射線を露光し、それによって、電磁放射線を露光した区域において、酸を化合物(i)から放出させる。上述したように、波長が365nm(i線)、436nm(g線)又は405nm(h線)の電磁放射線による露光を含め、様々な露光照射を使用でき、波長が365nmの電磁放射線が特に好ましい。
【0090】
このようなパターン状での露光は、ステッパーのような露光ツールを用いて行うことができ、その際には、パターンマスクを介して膜に照射し、それによって、パターン状に露光する。その方法では好ましくは、超紫外線(EUV)又は電子ビーム線を含め、高い解像度が可能な波長の活性化放射線を発生させる高度な露光ツールを使用する。活性化放射線を用いた露光により、本開示による成分のうち、露光区域内のフォトレジスト層に含まれる成分が分解され、酸及び分解副生成物が発生すること、並びに、その後に、酸が、ポリマー化合物(ii)において化学変化を引き起こす(露光区域において、酸感受性基を脱ブロック化して、塩基可溶性基を生成させるか、あるいは、架橋反応を触媒する)ことは明らかであろう。このような露光ツールの解像度は、30nm未満であり得る。
【0091】
プロセス工程(c)では、その層を任意に加熱して、酸が放出された区域に、化合物(ii)をもたらし、水溶液への溶解性を変化させることができる。このいわゆる「露光後ベーク」では、コーティング層の露光領域と非露光領域との溶解度差が発生又は拡大する。典型的には、露光後ベーク条件としては、約50℃以上の温度、より具体的には約50℃~約160℃の温度で10秒~30分、好ましくは30~200秒という条件が挙げられる。本開示によるプロセスの特定の実施形態によれば、熱処理は、プロセス工程(b)の前及びプロセス工程(d)の後には行わない。
【0092】
プロセス工程(d)では、その層を、水性溶液、好ましくは塩基水溶液で少なくとも部分的に除去する。これは、その膜の露光部を選択的に除去できる好適な現像液で、露光したフォトレジスト層を処理する(この場合、フォトレジストはポジティブトーンである)か、又はその膜の非露光部分を除去する(この場合、フォトレジストはネガティブトーンである)ことによって行うことができる。好ましくは、フォトレジストは、酸感受性基(脱保護可能基)を有するポリマーベースのポジティブトーンであり、現像液は好ましくは、金属イオンを含まないテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液である。
【0093】
本開示に従って作製した複合体は、基板、及びその基板の表面上にパターン化構造で塗布されたコーティングを含み、そのコーティングが、本開示による化合物を含む。
【0094】
光誘導性重合、光誘導性架橋、光誘導性分解及び官能基の光誘導性変換のために、式(I)の光酸発生剤化合物を使用することも、本開示の範囲内である。本開示による化合物は、保護コーティング、スマートカード、3Dラピッドプロトタイピング若しくは添加剤の製造、犠牲コーティング、接着剤、反射防止コーティング、ホログラム、ガルバノマスク及びメッキマスク、イオン注入マスク、エッチングレジスト、化学増幅レジスト、光感知用途、PCB(プリント回路基板)のパターニング、MEMSの作製、フラットパネルディスプレイでのTFT層のパターニング、フレキシブルディスプレイでのTFT層のパターニング、ディスプレイ用、又はLCD用のカラーフィルター若しくはブラックマトリックス内のピクセルパターニング、あるいはパッケージングプロセスでの半導体パターニング、及び半導体製造保護コーティング、スマートカード、3Dラピッドプロトタイピング若しくは添加剤の製造、犠牲コーティング、接着剤、反射防止コーティング、ホログラム、ガルバノマスク及びメッキマスク、イオン注入マスク、エッチングレジスト、化学増幅レジスト、光感知用途又はカラーフィルターにおけるTSV関連のパターニングでの使用に特に適する。
【0095】
以下の実施例は、上記の開示を例示することを意図しており、その範囲を狭めるように解釈されるべきではない。当業者は、これらの実施例が、本開示が実施され得る多くの他の方法を示唆することを容易に認識する。本開示の範囲内に留まりながら、多くの変形及び修正を行うことができることを理解されたい。
【実施例
【0096】
溶解性
溶解性は、PAGの評価における重要な因子である。高い溶解性は、PAGを容易に精製させるだけでなく、PAGがフォトレジスト及び様々な溶媒系において広範囲の濃度で使用されることを可能にする。PAGの溶解性を試験するために、PAGを完全に溶解させ、透明な溶液中に濁りが観察されなくなるまで、溶媒をゆっくり添加する。表1は、米国特許第9,507,259号に開示されている化合物に対する、本開示による代表的なオキサチアニウム含有PAGの溶解性(w/w%)を列挙している。
【0097】
【表1】
*=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0098】
表1に示されるように、化合物Aは、先行技術由来の比較化合物よりも、フォトレジストのために最も使用される溶媒であるPGMEAを含む様々な溶媒中でより高い溶解性を示す。これは、化合物Aが、ArF(193nm)フォトレジスト用途のための潜在的に有用な光酸発生剤(PAG)であることを示す。
【0099】
合成
以下は、上記化合物Aを製造するための合成の非限定的な例である。ビス(t-ブチルフェニル)ヨードニウム5-(2-ノルボルニル)オクタフルオロ-3-オキサペンタンスルホネート(I)を、文献アプローチ(US9,507,259)に従って同様に合成した。
化合物Aの合成
【化9】
【0100】
1Lの4つ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、凝縮器、及びNガス入口を取り付けた。100g(127mmol)のビス(t-ブチルフェニル)ヨードニウム5-(2-ノルボルニル)オクタフルオロ-3-オキサペンタンスルホネート(I)、14.6g(140mmol)の1,4-チオキサン、及び1.16g(6.4mmol)の酢酸銅を、402gの無水クロロベンゼン中で混合した。反応混合物を120℃に4時間加熱し、一晩冷却した。クロロベンゼンをロータリーエバポレーターにより60℃で除去した。200gのt-ブチルメチルエーテル(MTBE)を反応フラスコに添加した。得られた沈殿物を濾過により集め、固形物を200gの塩化メチレンに再溶解した。溶解しなかった酢酸銅を濾別した。溶液を2%HCl、3%水酸化アンモニウム水溶液、10%クエン酸溶液、次いで脱イオン水で洗浄した。塩化メチレン溶液をロータリーエバポレーターにより除去した。次いで、600gのMTBEを添加して固形物を沈殿させた。回収した固形物をi-プロパノールから再結晶させ、真空オーブン中、45℃で24時間乾燥させて、40gの化合物Aを得た(収率:50%)。
融点:129.5℃。H NMR(300MHz,CDCl)δ:1.12-1.23(m,3H),1.33(s,9H),1.43-1.52(m,4H),1.65-1.69(m,1H),2.08-2.22(m,1H),2.27(s,1H),2.56(s,1H),3.67(t,2H),3.93(d,2H),4.07(t,2H),4.35(d,2H),7.66(d,2H),7.87(d,2H)。13C NMR(75.4MHz,CDCl)δ:27.8,30.3,30.8,31.7,35.4,35.6,36.8,39.0,42.6(t,20.8Hz,F-Cカップリング,1C),64.0,108-122(m,F-Cカップリング,4C),118.8,128.5,129.7,158.8。19F NMR(282.2MHz,CDCl)δ:-120.1(m,AB,2F),-118.0(s,2F),-86.0(m,AB,2F),-82.8(m,2F)。
【0101】
特定の具体的な実施形態及び実施例を参照して上に図示して説明したが、本開示は示した詳細に限定されるようには意図されていない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲及び範囲内で、本開示の趣旨から逸脱することなく、詳細において様々な修正を行うことができる。例えば、本書において記載されている全ての広義の範囲は、広義の範囲に含まれる全ての狭義の範囲もその範囲に含まれることが明示的に意図されている。加えて、ある1つの実施形態の特徴は、別の実施形態に組み込まれ得る。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表され、
【化1】
式中、Rは、置換又は非置換のC-C12アルキル基であり、
Zは、置換又は非置換の多環式C~C30シクロアルキル基、置換又は非置換の単環式C~C30シクロアルキル基、及び置換又は非置換のC~C30単環式ヘテロアルキル基からなる群から選択される、スルホン酸誘導体化合物。
【請求項2】
Rは、置換又は非置換のC~Cアルキル基である、請求項1に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項3】
Rは、イソブチルである、請求項1又は2に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項4】
Zは、置換又は非置換の多環式C~C30シクロアルキル基である、請求項1又は2に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項5】
Zは、アダマンチル、ノルボルニル、クビル、オクタヒドロ-インデニル、デカヒドロ-ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、及びビシクロ[3.3.1]ノニルからなる群から選択される、請求項4に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項6】
Zは、ノルボルニルである、請求項5に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項7】
Zは、アダマンチルである、請求項5に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項8】
Zは、置換又は非置換の単環式C~C30シクロアルキル基である、請求項1又は2に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項9】
Zは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基からなる群から選択される、請求項8に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項10】
Zは、置換又は非置換の単環式C~C30ヘテロアリール基である、請求項1又は2に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項11】
Zは、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、アジリジニル、アゼチジニル、インドリニル、及びイソインドリニルからなる群から選択される、請求項10に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項12】
前記式(I)で表される化合物は、
【化2】
である、請求項1に記載のスルホン酸誘導体化合物。
【請求項13】
(i)請求項1に記載の少なくとも1つのスルホン酸誘導体化合物、
(ii)酸の存在下で水溶液への変化した溶解性を付与され得る、少なくとも1つのポリマー又はコポリマー、
(iii)有機溶媒、及び任意に
(iv)添加剤を含む、フォトレジスト組成物。
【請求項14】
前記有機溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
0.05~15重量%の前記スルホン酸誘導体化合物、
5~50重量%の前記少なくとも1つのポリマー又はコポリマー、及び
0~10重量%の前記添加剤を含み、
残りはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つのスルホン酸誘導体化合物は、
【化3】
である、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
基板の表面上のパターン化構造の作製プロセスであって、
(a)請求項13~16のいずれか1項に記載の組成物の層を前記基板の表面に塗布し、少なくとも部分的に前記有機溶媒(iv)を除去する工程と、
(b)前記層を電磁放射線に露光し、それによって、前記電磁放射線に露光された区域において前記スルホン酸誘導体化合物(i)から酸を放出させる工程と、
(c)任意に、前記層を加熱して、前記酸が放出された区域に、化合物(ii)をもたらし、水溶液への溶解性を向上させる工程と、
(d)これらの区域における水溶液を有する前記層を少なくとも部分的に除去する工程と、を含む、プロセス。
【請求項18】
前記組成物中の前記少なくとも1つのスルホン酸誘導体は、
【化4】
である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記添加剤は、塩基性クエンチャ-である、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
前記塩基性クエンチャ-は、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N1,N1,N3,N3-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イルカルバメート等の直鎖及び環状アミド並びにその誘導体、ピリジン及びジ-tert-ブチルピリジン等の芳香族アミン、トリイソプロパノールアミン、n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシエチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザントリイル))テトラエタノール、及び2-(ジブチルアミノ)エタノール、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノール等の脂肪族アミン、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、tert-ブチル1-ピロリジンカルボキシレート、tert-ブチル2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボキシレート、ジ-tert-ブチルピペラジン-1,4-ジカルボキシレート、及びN(2-アセトキシエチル)モルホリン等の環状脂肪族アミンからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記塩基性クエンチャーは、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記塗布工程は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、及びドクターブレーディングからなる群から選択される方法によって行われる、請求項17又は18に記載のプロセス。
【請求項23】
前記基板は、シリコン、二酸化シリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、歪シリコン、ガリウムヒ素、及び被覆基板からなる群から選択され、前記コーティングは、窒化シリコン、酸窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、酸化ハフニウム、チタン、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17又は18に記載のプロセス。

【国際調査報告】