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特表2024-522531混合プラスチックからのポリカーボネートの効率的分離
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】混合プラスチックからのポリカーボネートの効率的分離
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574244
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 NL2022050305
(87)【国際公開番号】W WO2022255873
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21177209.0
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511095850
【氏名又は名称】ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト-ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ファン・デル・メール
(72)【発明者】
【氏名】リュシー・プリンス
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・クワケルナート
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド・フェルディナンド・へーラルト・へールス
(72)【発明者】
【氏名】コーネリス・ペートルス・マルクス・ロウランズ
(72)【発明者】
【氏名】アンネミーケ・ファン・デ・ルンストラート
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA11
4F401AA23
4F401AA27
4F401AC01
4F401AC05
4F401AC06
4F401BA13
4F401CA02
4F401CA03
4F401CA22
4F401CA30
4F401CA51
4F401CA54
4F401CA57
4F401EA55
4F401EA58
4F401EA59
4F401EA62
4F401EA67
4F401EA68
4F401FA07Z
(57)【要約】
本発明は、プラスチック廃棄物をリサイクリングする分野である。特に、本発明は、プラスチック廃棄物からポリカーボネート及び第一の成分を分離する方法を対象とする。特に、本発明による方法を使用して、ポリカーボネート及び第一の成分を高純度及び高収率で効率的に分離することができる。方法は、非選択的溶解及び選択的沈殿に基づいている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック廃棄物からポリカーボネート及び第一の成分を少なくとも部分分離する方法であって、
ポリカーボネート及び第一の成分を、溶媒に溶解して、ポリマー溶液を得る工程;
第一の成分を本質的に溶解状態に維持する一方で、本質的にポリカーボネートのみをポリマー溶液から沈殿させることができる貧溶媒である弱い貧溶媒を、ポリマー溶液に添加して、ポリカーボネートを沈殿させ、ポリカーボネート沈殿物を得る工程;
ポリマー溶液からポリカーボネート沈殿物を分離して、ポリカーボネートリッチな画分及び第一の成分リッチな溶液を得る工程;
第一の成分の沈殿を増強することができる貧溶媒である強い貧溶媒を、第一の成分リッチな溶液に添加して、第一の成分を沈殿させ、第一の成分沈殿物を得る工程
を含む方法。
【請求項2】
第一の成分が、ポリマー、好ましくはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)及びスチレン-アクリロニトリル(SAN)からなる群から選択されるポリマーを含み、より好ましくは第一の成分が、ABS又はHIPSを含み、最も好ましくは第一の成分がABSである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プラスチック廃棄物が、ブレンド、好ましくはポリカーボネート及び第一の成分の混和性ポリマーブレンドを含む、請求項1また2に記載の方法。
【請求項4】
溶媒が、ジクロロメタン(DCM)、C4以上の環(すなわち、4個以上の炭素原子)を含むシクロケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、クロロホルム、ベンズアルデヒド、アニリン、1,4-ジオキサン、塩化エチレン、N-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択され、好ましくは溶媒が、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
弱い貧溶媒が、アセトン、MIBK、MEK及びそれらの組合せ等の低級ケトンからなる群から選択され、かつ/又は強い貧溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック廃棄物が、非可溶性画分を更に含み、前記方法が、弱い貧溶媒を添加する前に、ポリマー溶液から前記非可溶性画分を除去する工程を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー溶液からポリカーボネート沈殿物を分離する工程が、濾過、好ましくは濾紙及び濾過助剤を含む調製濾床を用いた濾過を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリカーボネートリッチな画分が、画分の溶質含有量に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の純度を有し、かつ/又は第一の成分リッチな溶液が、溶液の溶質含有量に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%の純度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
強い貧溶媒を添加する前に、第一の成分リッチな溶液から弱い貧溶媒を実質的に除去する工程を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリカーボネートリッチな画分からポリカーボネートを、好ましくは溶媒及び弱い貧溶媒を実質的に除去することによって回収する工程を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第一の成分リッチな溶液から第一の成分沈殿物を分離して、第一の成分リッチな画分及び残渣溶液を得る工程を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第一の成分リッチな画分から第一の成分を、好ましくは溶媒、強い貧溶媒及び任意選択で弱い貧溶媒を実質的に除去することによって回収する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶媒、弱い貧溶媒及び/又は強い貧溶媒を、方法において再使用されるのに適した個別のストリームとして少なくとも部分回収する工程を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
プラスチック廃棄物が、電気電子機器廃棄物及び/又は自動車スクラップ部品、好ましくは電気電子機器廃棄物、より好ましくは欧州連合のWEEE指令(2012/19/EU)による電気電子機器廃棄物を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
閉ループシステム中で実施される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック廃棄物をリサイクリングする分野である。特に、本発明は、プラスチック廃棄物からポリカーボネート及び第一の成分を分離する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、典型的に主に化石燃料ベースの石油化学製品に由来するポリマーを含み、環境に対するその悪影響のために、バイオベースの材料等の代替原料又はリサイクリング方法が求められている。
【0003】
プラスチック廃棄物のリサイクリングは、極めて研究された論題であり、循環型経済(すなわち、再生可能源が使用され、使用された材料ができるだけ値を失わない閉ループのシステム)の発展を更に手助けすることができる。
【0004】
製品が寿命に達した後、典型的に廃棄物と考えられ、この時点で通常のリサイクリング方法が典型的に始まる。廃棄物の収集及び分別を行うことができ、分別は、典型的に最初に材料(例えば、プラスチック、紙)のタイプによって機械的分別を含む。更に下流で、プラスチックをポリマーのタイプによって、例えば赤外分光法を使用することによって分別して、廃棄物ストリーム及びいくつかのモノストリームを得る。モノストリームは、理想的に1つのタイプのポリマー又は複数の同様なタイプのポリマー、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)を含むが、しかしモノストリームは典型的に94%を超える純度に達しない。更に、大部分は、結局廃棄物ストリームになる可能性があり、それによって分別プロセスの収率が限定される。
【0005】
一般に、モノストリームの94%以下の純度は、使用するのにも、未使用の材料と交換可能とするのにも十分ではない。したがって、モノストリームは、とりわけ細断及び洗浄によって更に処理されうる。リサイクル材(すなわち、新しい製品のために使用することができる、リサイクリングプロセス後に残っている材料)の品質は、リサイクル材が未使用のポリマーと交換可能であるには依然として十分でないことが多い。リサイクル材は、押出成形される可能性があり、ベンチ等の新しい製品をそれで形成することができる。
【0006】
特に、ブレンド等ポリマーの混合物を含むプラスチック廃棄物をリサイクルすることは、難しい課題である。例えば、ポリカーボネート(PC)を含むブレンドをリサイクルすることは難しい課題でありうる。ポリカーボネートは、熱、化学物質及び衝撃に非常に抵抗性を示す熱可塑性ポリマーである。とりわけ、電子応用、建設材料、及び自動車産業において使用されることが多い。ポリカーボネートの耐引掻性を高めるために、コーティングを塗布してもよい。PCを含むブレンドの例としては、PC/アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ブレンド及びPC/耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)ブレンドが挙げられる。これらのブレンドは、典型的に電気電子機器廃棄物と呼ばれることもある電気又は電子機器からの廃棄物において生じる。このストリームは、リサイクルすることが特に困難である。というのは、新しい製品の製造には、所望の機械的特性を有するブレンドを作製するために純粋なABS、HIPS又はPC(すなわち、添加剤を含まない)を必要とすることが多いからである。
【0007】
リサイクリングプロセスを更に改良するために、いくつかの方法がプラスチック廃棄物からポリマーを単離するのに利用可能である。
【0008】
個別のポリマーを回収する一方法が、米国特許第8492501号に開示され、液体クロマトグラフィーを使用してブレンドからポリカーボネートを回収する方法が記載されている。しかし、残留画分中のポリマーは回収するのが難しい。
【0009】
ポリマーを個別に回収する別法は、溶解及び沈殿に基づいている。プラスチック廃棄物のこのタイプの溶媒ベースのリサイクリングの概説が、Zhao等(Chemosphere、209、2018、707~720)によって記載されている。その例は、米国特許出願公開第2003/0191202号に挙げられ、標的ポリマー及びそれらの添加剤を溶媒に溶解することによって、これらを分離及び回収する方法が開示されている。この溶液を、溶媒と混和可能な非水性溶液に入れて、添加剤が溶解したままでありながら標的ポリマーを沈殿させる。標的ポリマーの沈殿時に溶解したままである、第二のポリマーが存在してもよい。
【0010】
別の例が、Zhao等(Waste Management、69、2017、393~399)によって挙げられ、混合物中に存在するポリマーを選択的な溶解及び沈殿によって個別に分離する工程を含む方法が記載されている。
【0011】
国際公開第2005/100461号には、相分離剤を使用してプラスチックを溶解し、次に貧溶媒を使用してプラスチックを沈殿させる方法が開示される。
【0012】
別の例が、国際公開第2015/076868号に開示され、ポリマーを回収する方法であって、標的ポリマー及び第1及び第二の成分の材料を溶媒媒体と接触させて、液固相分離を達成する工程を含む方法が開示されている。標的ポリマー及び第二の成分は固体材料に残る。この固体材料を、続いて溶媒媒体と接触させて、液固相分離を更に達成し、それからポリマーを回収することができる。
【0013】
別の例が、Chandrasekaran等(ACS Sustainable Chem. Eng.、2018、6、4、4594~4602)によって開示され、とりわけポリカーボネート及びポリアミドの混合物をジクロロメタン又はN-メチル-2-ピロリドンに溶解し、次に貧溶媒を使用してポリカーボネートを沈殿させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第8492501号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0191202号
【特許文献3】国際公開第2005/100461号
【特許文献4】国際公開第2015/076868号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Zhao等、Chemosphere、209、2018、707~720
【非特許文献2】Waste Management、69、2017、393~399
【非特許文献3】Chandrasekaran等、ACS Sustainable Chem. Eng.、2018、6、4、4594~4602
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
方法は、典型的にポリマーブレンドに十分な収率及び純度をもたらさない。したがって、プラスチック廃棄物、特にポリマーブレンドを含むプラスチック廃棄物から、ポリマーを高純度及び収率で効率的に分離する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、上記の欠点の少なくとも一部を克服する、プラスチック廃棄物からポリカーボネート及び第一の成分を少なくとも部分分離する別の、好ましくは改良された方法を提供することである。特に、本発明による方法を使用して、ポリカーボネート及び第一の成分を高純度及び収率で効率的に分離することができる。本発明者等は、驚くべきことに非選択的溶解及び選択的沈殿に基づく方法がそのような高純度を可能にすることを見出した。
【0018】
したがって、第1の態様において、本発明は、プラスチック廃棄物からポリカーボネート及び第一の成分を少なくとも部分分離する方法であって、
- ポリカーボネート及び第一の成分を溶媒に溶解して、ポリマー溶液を得る工程;
- 弱い貧溶媒をポリマー溶液に添加して、ポリカーボネートを沈殿させ、ポリカーボネート沈殿物を得る工程;
- ポリマー溶液からポリカーボネート沈殿物を分離して、ポリカーボネート画分及び第一の成分リッチな溶液を得る工程;
- 強い貧溶媒を第一の成分リッチな溶液に添加して、第一の成分を沈殿させ、第一の成分沈殿物を得る工程
を含む方法を対象とする。
【0019】
本発明による方法は、複数の沈殿工程を必要とするが、リサイクルし、精製する必要がある固形物について例えば分離カラムの使用を必要としない簡易技法を提供する。
【0020】
ポリカーボネート及び第一の成分は、プラスチック廃棄物から少なくとも部分分離され、典型的にモノストリームとして提供される。プラスチック廃棄物は、ポリカーボネート及び第一の成分を溶媒に溶解する前に前処理工程にかけてよい。この前処理工程は、とりわけ更なる細断及び/又は色のついた不純物の除去を含んでもよい。
【0021】
プラスチック廃棄物は、電気電子機器廃棄物及び/又は自動車スクラップ部品、好ましくは電気電子機器廃棄物を含むことが好ましい。電気電子機器廃棄物は、すべての電気又は電子廃棄物を記述するのに使用される一般用語である。それは、家電製品(例えば、電子レンジ)、消費者用電子機器(例えば、テレビ)及びランプ(例えば、LED)等であるが、これらに限定されないカテゴリーを包含する。より好ましくは、本発明の方法は、欧州連合のWEEE指令(2012/19/EU)による電気電子機器廃棄物に特に適している。
【0022】
更に、プラスチック廃棄物は、好ましくは弱い貧溶媒を添加する前に除去される非可溶性画分を含んでもよい。非可溶性画分は、不溶性ポリマー、鉱物又は金属小粒子を含んでもよい。非可溶性画分は、濾過等当技術分野において公知の任意の手段によって除去されうる。好ましくは、非可溶性画分は、濾紙及び濾過助剤を含む調製濾床を使用する濾過によって除去される。そのようなフィルターは、典型的に非可溶性画分のすべてを除去するのに十分であり、ポリカーボネート及び/又は第一の成分が濾液中に残ることが可能になる。溶解前の不純物除去により、典型的に、沈殿したポリカーボネート及び/又は第一の成分の純度が高まる。
【0023】
第一の成分は、好ましくはポリマーを含み、より好ましくは第一の成分は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)及びスチレン-アクリロニトリル(SAN)からなる群から選択されるポリマーを含み、特に第一の成分がABS又はHIPSを含むことが好ましく、より好ましくは第一の成分はABSである。これらのポリマーは、好ましい電気電子機器廃棄物及び/又は自動車スクラップ部品中に存在することが多い。
【0024】
ABSは、多くの電気器具の筺体及び自動車産業に頻用される。ABS熱可塑性ポリマーは、乳化重合又は塊状重合によって製造することができ、それぞれポリブタジエン主鎖にグラフトされたSANコポリマー鎖(E-ABS)又は粒子にグラフトされたSANのある部分及び粒子に吸蔵されたSANの別の部分(M-ABS)を有するばらばらのゴムポリブタジエン粒子を形成する。スチレン、アクリロニトリル及びポリブタジエンの割合は、所望の特性に応じて変更しうる。ABSが溶解される場合、SANコポリマーは、典型的にポリブタジエンから分離する。したがって、ABSが溶解される場合、SANは、完全に溶解される可能性があり、ポリブタジエン小粒子は、溶媒に分散される可能性がある。本発明の内容において、ABSの溶解は、SANが溶解し、ポリブタジエン粒子が溶媒に分散されることを記載するのにも使用される。
【0025】
特に、プラスチック廃棄物は、ポリカーボネート及び第一の成分のブレンドを含むことが好ましい。
【0026】
ポリマーブレンドは、非混和性ポリマーブレンド、相溶性ポリマーブレンド及び混和性ポリマーブレンドの3群に大別することができる。非混和性ポリマーブレンドは、不均質ポリマーブレンドとも呼ばれることがある。これらのブレンド中のポリマーは、典型的に別の相を形成し、それらの対応する個別のガラス転移温度が観察されうる。相溶性ポリマーブレンドは、典型的にポリマー間の相互作用が十分に強いために巨視的に一様な物理的特性を有する非混和性ポリマーブレンドである。混和性ポリマーブレンドは、均質ポリマーブレンドと考えることもでき、典型的に1つのガラス転移温度が観察されうる単一相構造を有する。
【0027】
本発明は、混和性ポリマーブレンドに特に適している。混和性ブレンドでは、ブレンドの第1のポリマーは、典型的にブレンドの第二のポリマーも溶解し、溶媒に十分に接近可能な場合にのみ、溶解されることに十分に接近可能である。更に、本発明による方法は、接近不可能なブレンドに好適でありうる。これは、例えば塗布されたコーティングのために溶媒が少なくとも部分的に到達し得ないブレンドを記載するための用語である。
【0028】
ポリカーボネート及び第一の成分の溶解は非選択的と考えられうるので、本発明は特に適している。非選択的は、本明細書でポリカーボネートも第一の成分も十分に溶解していることを記載するために使用される。非選択的溶解は、したがってブレンドにおいてポリマーを一緒に保持する凝集及び非共有結合の破壊を可能にすることができる。これは、更に典型的に、ポリカーボネート及び第一の成分が溶液として存在するようにポリマーブレンドのすべての成分が接近可能で、解離されているので、より高い収率及び純度を提供する。
【0029】
ポリカーボネート及び第一の成分は溶媒に溶解されるが、それは昇温(すなわち、20℃超)で行われうる。より高い温度は、典型的にポリオレフィンの溶解を加速する。
【0030】
方法の少なくとも一部の間に、例えば撹拌することによってポリマー溶液の連続的循環を提供することも好ましいことがありうる。これは、典型的に溶解を増強することができるので、溶解時に好ましい。
【0031】
溶媒は、ポリカーボネート及び第一の成分が可溶であるように選択される。典型的な溶媒としては、ジクロロメタン(DCM)、C4以上の環(すなわち、4個以上の炭素原子)を含むシクロケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、クロロホルム、ベンズアルデヒド、アニリン、1,4-ジオキサン、塩化エチレン、N-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0032】
溶媒は、更に好ましくは、化学物質のリスクからのヒト健康及び環境の保護を改善するように適合された欧州連合の規則であるRegistration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals(REACH)規則の下で許可されている。
【0033】
更に詳細には、溶媒は、好ましくはシクロペンタノン、シクロヘキサノン及びそれらの組合せからなる群から選択される。驚くべきことに、これらの溶媒は、PC/ABS及びPC/HIPSブレンドを溶解するのに特に適しており、したがって高純度及び収率での分離を可能にすることができることが見出された。
【0034】
ポリマー溶液からポリカーボネートを選択的に沈殿させて、ポリカーボネート沈殿物を得るために、弱い貧溶媒が添加される。本明細書では弱い貧溶媒という用語は、原則としてポリカーボネートがポリマー溶液から沈殿することだけを可能にする貧溶媒であることを示すために使用される。貧溶媒の添加が、溶質の沈殿を増強できることは当技術分野において周知である。貧溶媒は、典型的に溶質の溶解度を低下させ、したがって溶質は、ポリマー溶液から沈殿する方向に推進される。好適な弱い貧溶媒の例には、アセトン、MIBK及びメチルエチルケトン(MEK)等の低級ケトンである。ケトンについて「低級」という用語は、前記ケトンの分子量を指し、好ましくは200g/mol未満、より好ましくは150g/mol未満である。
【0035】
ポリカーボネートが沈殿した後、ポリカーボネート沈殿物を、ポリマー溶液の残部から分離して、ポリカーボネートリッチの画分及び第一の成分リッチな溶液を得ることができる。本発明者等は、驚くべきことに第一の成分の品質がポリカーボネートの沈殿によって影響されないことを見出した。例えば、ABS又はHIPSが第一の成分であるとき、本発明者等は、ポリカーボネートの沈殿時に、ポリカーボネート沈殿物の中にポリブタジエンは全く被包されず、又は多くとも最少量しか被包されないことを見出した。ポリカーボネート沈殿物は、好ましくは濾紙及び濾過助剤を含むフィルターを使用して、ポリマー溶液から濾別されうる。ABSが第一の成分である場合、分散しているポリブタジエン粒子が通過し、濾液中に残ることができるように細かなフィルターが選択される。
【0036】
ポリカーボネートリッチな画分の純度は、画分の溶質含有量に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のポリカーボネートでありうる。第一の成分リッチな溶液は、溶液の溶質含有量に対して少なくとも85%の純度を有することができる。これらの純度は、一般に新しい材料及び物品へと更に処理するのに十分であると考えられる。純度は、好ましくは未使用の材料と交換可能なほど十分に高い。
【0037】
ポリカーボネートリッチな画分は、典型的にフレーク等のポリカーボネート沈殿物を含み、固体又はスラリーと考えられうる。ポリカーボネートは、好ましくは、ポリカーボネートリッチな画分から例えば溶媒及び弱い貧溶媒を実質的に除去することによって回収される。溶媒及び弱い貧溶媒は、ポリカーボネートの総質量に対して約1~2%に至るまで除去されうる。その除去は、蒸発又は凍結乾燥等当技術分野において公知の任意の手段によって達成されうる。追加的に、回収されたポリカーボネートは、例えば真空捏和によって更に処理することができ、典型的には溶媒及び弱い貧溶媒の含有量を0.1%以下にする。
【0038】
第一の成分リッチな溶液に、強い貧溶媒が添加される。本明細書では強い貧溶媒は、第一の成分の沈殿を増強することができる貧溶媒を記載するために使用される。強い貧溶媒の選択は、第一の成分に依存することができる。典型的に、強い貧溶媒は、アセトン等の低級ケトン並びに/又はメタノール、エタノール及び/若しくはプロパノール等の低級アルコールを含む。好ましくは、強い貧溶媒は、メタノール及び/又はアセトンを含む。アルコールについて「低級」という用語は、前記アルコールの分子量を指し、好ましくは150g/mol未満、より好ましくは100g/mol未満、最も好ましくは60g/mol以下である。
【0039】
溶媒、弱い及び/又は強い貧溶媒が同一とすることができると認識されうる。特定の流体(すなわち、溶媒、貧溶媒)の機能は、とりわけプラスチック廃棄物から分離されるポリマーのタイプ及び使用される流体の特定の組合せに依存することができる。例えば溶媒及び弱い貧溶媒の特定の組合せは、溶液に対する親和性及び第一の成分の溶解度が変化するような形で環境を変更することができる。次いで、ある量の強い貧溶媒、例えば同一の流体を弱い貧溶媒に添加することにより、第一の成分を、第1の量の流体を弱い貧溶媒として添加しながら沈殿させることができるが、これが当てはまらないこともある。したがって、流体の機能は、使用する流体の量にも依存することができる。したがって、強い貧溶媒は、より少ない量で添加された場合、弱い貧溶媒として機能することができる。
【0040】
本発明による方法は、第一の成分リッチな溶液から第一の成分沈殿物を分離して、第一の成分リッチな画分及び残渣溶液を得る工程を更に含んでもよい。この残渣溶液は、溶媒及び強い貧溶媒を含んでもよい。更に、残渣溶液は、弱い貧溶媒を含んでもよい。或いは、弱い貧溶媒は、強い貧溶媒を添加する前に少なくとも実質的に除去されうる。強い貧溶媒の添加前に弱い貧溶媒を除去することが好ましいことがある。というのは、これは、典型的に相対的に最小の複合混合物である2つの液体(すなわち、溶媒及び弱い貧溶媒)の分離を必要とするからである。
【0041】
更に、本発明による方法は、第一の成分リッチな画分から第一の成分を回収する工程を含んでもよい。これは、例えば、溶媒、強い貧溶媒及び任意選択で弱い貧溶媒を、好ましくは第一の成分の総質量に対して95%を超える純度まで実質的に除去することによって行われうる。
【0042】
追加的に、残渣溶液、ポリカーボネートリッチな画分及び/又は第一の成分リッチな画分から溶媒、強い貧溶媒及び/又は弱い貧溶媒を分離することが好ましいことがありうる。この分離は、好ましくは溶媒、弱い貧溶媒及び/又は強い貧溶媒のそれぞれが、方法において再使用されるのに適した個別のストリームとして回収されうる範囲である。分離及び回収は、例えば蒸留によって行われうる。言い換えれば、溶媒は、溶媒として再使用されるために十分に高純度で回収されうる。回収された溶媒には、例えば貧溶媒からのいくつかの不純物が認められるが、しかしその量は、溶媒としてのその機能を損なうべきでない。同様に、弱い貧溶媒及び/又は強い貧溶媒は、これらが本発明による方法の2サイクル目以上の貧溶媒としての機能を果たすことができるような高純度でそれぞれ回収される。したがって、方法は、好ましくは閉ループシステム中で実施され、追加の溶媒、弱い貧溶媒及び/又は強い貧溶媒の添加をほとんど必要としない。
【0043】
最も好ましい実施形態において、第一の成分は、ポリカーボネートとのブレンド中に存在するABSである。この最も好ましい実施形態において、溶媒はシクロペンタノンを含み、弱い貧溶媒はアセトンを含み、強い貧溶媒はメタノールを含む。これにより、典型的に選択的沈殿並びにPC及びABSの高純度及び収率での回収が可能になる。
【0044】
明確にし、簡潔に説明するために、特徴が、同じ又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載されているが、しかし、本発明の範囲は、記載されている特徴のすべて又は一部の組合せを有する実施形態を含んでもよいと認識されている。
【0045】
本発明は、以下の非限定的実施例によって説明されうる。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0046】
72質量%のPC、24質量%のABS及び4質量%の不純物のブレンド215gを、連続して水及びアセトンで洗浄して、表面不純物を除去する。乾燥した後、それを2Lのシクロペンタノンに100℃で2時間溶解し、濾過助剤を含む濾紙で濾過する。溶液を、1体積の溶液当たり2体積のアセトンと混合し、数時間放置して、沈殿させる。沈殿物を濾別し、アセトンで洗浄し、真空オーブン中で乾燥して、125gのポリカーボネートを95%超の純度で得る。最も顕著な混入物は溶媒であり、その後のプロセス工程において(例えば、真空捏和機中で)除去されうる。溶液(約6L)を蒸発させて、24グラムの固体材料、主にABSを得る。しかし、この溶液を強い貧溶媒で再処理して、ABSを更に精製することができる。
【国際調査報告】