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特表2024-522537オンデマンド剥離挙動を示す接着剤組成物を含有する物品
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  • 特表-オンデマンド剥離挙動を示す接着剤組成物を含有する物品 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】オンデマンド剥離挙動を示す接着剤組成物を含有する物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240614BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20240614BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240614BHJP
   C09J 185/00 20060101ALI20240614BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240614BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240614BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/40
C09J201/00
C09J185/00
C09J133/06
B32B7/022
B32B27/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574313
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 IB2022054475
(87)【国際公開番号】W WO2022254267
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/202,300
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヘデガード,アーロン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】アリ,マッフーザ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】エル ヒドック,イブライム エー.
(72)【発明者】
【氏名】クラッパー,ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ,リンジー
(72)【発明者】
【氏名】ベーリング,ロス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン,ケヴィン ディー.
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AA17B
4F100AB01A
4F100AB01B
4F100AB01E
4F100AB31A
4F100AB31B
4F100AB33E
4F100AH03C
4F100AH05C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK25C
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA02C
4F100CB00C
4F100CB05C
4F100DC11E
4F100DC15E
4F100DC16E
4F100DJ01E
4F100EJ02E
4F100EJ42C
4F100EJ50C
4F100GB32
4F100GB41
4F100JG01A
4F100JG01B
4F100JK06
4F100JL11C
4F100JL13C
4F100JL14E
4F100JL16
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CB04
4J004DA04
4J004DB03
4J004EA05
4J004FA07
4J040DF061
4J040MA02
4J040MB03
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA15
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
第1の導電性表面を有する第1の構成要素と、第2の表面を有する第2の構成要素とを含む物品。双性イオンポリマーを含む接着剤組成物は、第1の導電性表面と第2の表面との間に配置され、第1の構成要素を第2の構成要素に接合している。表面積当たりの接着仕事量によって測定される、第1の構成要素を第2の構成要素から分離するために必要とされる労力は、接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによって低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電性表面を有する第1の構成要素と、
第2の表面を有する第2の構成要素と、
前記第1の導電性表面と前記第2の表面との間に配置された、双性イオンポリマーを含む接着剤組成物と、
を含む物品であって、
前記接着剤組成物が、前記第1の構成要素を前記第2の構成要素に接合しており、
表面積当たりの接着仕事量によって測定される、前記第1の構成要素を前記第2の構成要素から分離するために必要とされる労力が、前記接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによって低減される、物品。
【請求項2】
前記双性イオンポリマーが、
a.ポリマーの総重量に基づいて0.2重量%~16重量%の、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらの2つ以上の混合物を含むアニオン性モノマー(ここで、カルボン酸塩の量は、対応する遊離酸の重量に基づく)、
b.ポリマーの総重量に基づいて2重量%~25重量%の、アルキルアンモニウム官能基を有する、アクリル酸又はメタクリル酸エステルを含む1種以上のカチオン性モノマー、
c.ポリマーの総重量に基づいて50重量%~95重量%の、2~18個の炭素を有するアルコールの、アクリル酸又はメタクリル酸エステルを含む1種以上の非イオン性モノマー、及び
d.ポリマーの総重量に基づいて0重量%~40重量%の、1種以上の追加のモノマーと、
の重合生成物から本質的になる、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記1種以上の追加のモノマーのうちの少なくとも1つが、ポリマーの総重量に基づいて最大10重量%の架橋剤を含む、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記2~18個の炭素を有するアルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルが、イソオクチルアクリレートである、請求項2又は3に記載の物品。
【請求項5】
前記アルキルアンモニウム官能基を含むアクリル酸又はメタクリル酸エステルが、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート又は2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートの、1~24個の炭素原子を有する臭化アルキル又は塩化アルキルとの反応生成物である、請求項2~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記第1の構成要素が、第1の非導電性材料と、前記第1の導電性表面を提供するための第1の導電性コーティングと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記第2の構成要素の第2の表面が、第2の導電性表面である、請求項1~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記第2の構成要素が、第2の非導電性材料と、前記第2の導電性表面を提供するための第2の導電性コーティングと、を含む、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記第1の導電性表面及び第2の導電性表面がそれぞれ、金属、混合金属、合金、金属酸化物、複合金属、導電性プラスチック、導電性ポリマー、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7又は8に記載の物品。
【請求項10】
前記第1の導電性表面の組成が、前記第2の導電性表面の組成とは異なる、請求項7~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記第1の導電性表面の組成が、前記第2の導電性表面の組成と同じである、請求項7~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記接着剤組成物が、
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを有するキャリアと、
前記キャリアの第1の主面上にある、第1の双性イオンポリマーを含む第1の接着剤組成物と、
前記キャリアの第2の主面上にある、第2の双性イオンポリマーを含む第2の接着剤組成物と、
を含む両面接着剤であり、
前記第1の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第1の構成要素の第1の導電性表面と接触しており、
前記第2の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第2の構成要素の第2の表面と接触している、請求項7~11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記キャリアが多孔質材料である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記キャリアが、紙、織布若しくは不織布、多孔質フィルム、金属メッシュ、金属格子、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記キャリアが導電性材料である、請求項12に記載の物品。
【請求項16】
前記キャリアが、金属メッシュ、金属格子、金属箔、金属板、導電性ポリマー、導電性発泡体、導電性ティッシュ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記第1の双性イオンポリマーの組成が、前記第2の双性イオンポリマーの組成と同じである、請求項12~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
前記第1の双性イオンポリマーの組成が、前記第2の双性イオンポリマーの組成とは異なる、請求項12~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項19】
前記第2の構成要素の第2の表面が非導電性表面であり、前記接着剤組成物が、
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを有するキャリアと、
前記キャリアの第1の主面上にある、第1の双性イオンポリマーを含む第1の接着剤組成物と、
前記キャリアの第2の主面上にある、第2の双性イオンポリマーを含む第2の接着剤組成物と、
を含む両面接着剤であり、
前記第1の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第1の構成要素の第1の導電性表面と接触しており、
前記第2の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第2の構成要素の第2の表面と接触しており、
前記キャリアが導電性である、請求項1に記載の物品。
【請求項20】
前記キャリアが多孔質材料である、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
前記キャリアが、金属メッシュ、金属格子、金属箔、金属板、導電性ポリマー、導電性発泡体、導電性ティッシュ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載の物品。
【請求項22】
前記第1の双性イオンポリマーの組成が、前記第2の双性イオンポリマーの組成と同じである、請求項19~21のいずれか一項に記載の物品。
【請求項23】
前記第1の双性イオンポリマーの組成が、前記第2の双性イオンポリマーの組成とは異なる、請求項19~21のいずれか一項に記載の物品。
【請求項24】
前記接着剤組成物とは反対側の前記第1の構成要素の上にある第1の外側接着剤、前記接着剤組成物とは反対側の前記第2の構成要素の上にある第2の外側接着剤、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の物品。
【請求項25】
前記第1の外側接着剤及び第2の外側接着剤のうちの少なくとも1つが、感圧接着剤を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記第1の構成要素とは反対側の前記第1の外側接着剤の上に、前記第2の構成要素とは反対側の前記第2の外側接着剤の上に、又はこれらの組み合わせの上にある剥離ライナーを更に含む、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記第1及び第2の構成要素のうちの少なくとも1つが、三次元体である、請求項1~26のいずれか一項に記載の物品。
【請求項28】
前記第1及び第2の構成要素のうちの少なくとも1つが、二次元体である、請求項1~27のいずれか一項に記載の物品。
【請求項29】
前記第1の構成要素及び第2の構成要素のうちの少なくとも1つが、リサイクル可能な構成要素である、請求項1~28のいずれか一項に記載の物品。
【請求項30】
前記第1の構成要素を前記第2の構成要素から分離するために必要とされる労力が、0V及び50Vで100秒間における表面積当たりの接着仕事量の%変化によって測定されるとき、少なくとも15%である、請求項1~29のいずれか一項に記載の物品。
【請求項31】
請求項1に記載の複合品中の構成要素を分離するための方法であって、前記方法が、前記接着剤組成物にわたってDC電位を印加して、前記第1の構成要素を前記第2の構成要素から分離させることを含む、方法。
【請求項32】
前記第2の構成要素の第2の表面が第2の導電性表面であり、前記第1の導電性表面又は第2の導電性表面が負極として機能し、前記第1の導電性表面又は第2の導電性表面の他方が正極として機能し、前記方法が、DC電位を印加して、それにより前記接着剤組成物を前記負極から剥離させ、前記第1の構成要素の前記第2の構成要素からの分離を生じさせることを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記接着剤組成物が、
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを有するキャリアと、
前記キャリアの第1の主面上にある、第1の双性イオンポリマーを含む第1の接着剤組成物と、
前記キャリアの第2の主面上にある、第2の双性イオンポリマーを含む第2の接着剤組成物と、
を含む両面接着剤であり、
前記第1の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第1の構成要素の第1の導電性表面と接触しており、
前記第2の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第2の構成要素の第2の表面と接触しており、
前記キャリアが導電性であり、
前記第1の導電性表面又はキャリアが負極として機能し、前記第1の導電性表面又はキャリアの他方が正極として機能し、
前記方法が、DC電位を印加して、それにより前記接着剤組成物を前記負極から剥離させ、前記第1の構成要素の前記第2の構成要素からの分離を生じさせることを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記接着剤組成物の厚さが、10μm~2mmの範囲である、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記印加される電位が、最大800V/mmである、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、オンデマンド剥離挙動を示す感圧接着剤によって互いに接合された2つ以上の構成要素を含有する物品に関し、より詳細には、感圧接着剤にわたって電位を印加することによって2つ以上の構成要素に分離することができる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)を含めた接着剤は、電子産業、自動車産業、航空宇宙産業、研磨産業、医療機器産業、及び包装産業を含めた様々な産業において、部品を組立物品に結合するために一般的に使用される。物品中の構成要素間のPSAの結合強度は、特定の用途のための所望の性能特性を達成するために重要である。多くの用途において、PSAは、使用中の構成要素の分離又は剥離を防止するために高い剥離強度を示さなければならない。例えば、PSAは、自動車又はトラックの側面にトリムを結合するために自動車産業において使用され得る。他の用途では、PSAは再加工可能又は再配置可能でなければならない。典型的には、そのようなPSAは、別の構成要素よりも一構成要素により強力に接着し、したがって、接着剤がより強力に接着する構成要素の再配置又は交換を可能にする。例えば、PSAは、携帯電話、パーソナルコンピュータ、又はコンピュータタブレット等の電子デバイスに保護カバーを結合するために使用され得る。物品のコストが高く、保護カバーのコストが比較的低いため、物品の修理、物品の修正、物品上のバッキングの再配置、又は結合された物品のリサイクルのためにカバーを取り外す(剥離する)ことが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0003】
剥離のタイミングを制御することと、接着剤が剥離する表面に影響を与えることと、が可能な接着剤組成物を含有する物品が必要とされている。本開示は、直流(DC)電位の印加によってオンデマンド剥離挙動を示す感圧接着剤組成物によって互いに結合された2つ以上の構成要素を含む物品、及び構成要素を分離するための方法を提供する。接着剤組成物が剥離する表面は、接着剤組成物を横切る電位の方向によって影響され得る。本明細書に記載される物品及び方法は、例えば、高度な製造(例えば、部品を把持し、部品を別の場所に移送し、要求に応じて部品を解放するため)、デバイスメンテナンス(例えば、接着固定されたアクセスパネルを剥離するため)、及び/又は経済的若しくは環境的利益のためのリサイクル(例えば、異なるリサイクルプロセスを必要とする構成要素を分離するため)において使用することができる。
【0004】
一実施形態において、本開示は、第1の導電性表面を有する第1の構成要素と、第2の表面を有する第2の構成要素と、第1の導電性表面と第2の表面との間に配置された、双性イオンポリマーを含む接着剤組成物と、を含む物品であって、接着剤組成物が、第1の構成要素を第2の構成要素に接合しており、表面積当たりの接着仕事量によって測定される、第1の構成要素を第2の構成要素から分離するために必要とされる労力が、接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによって低減される、物品を提供する。
【0005】
別の実施形態では、本開示は、複合品中の構成要素を分離する方法であって、方法が、接着剤組成物にわたってDC電位を印加して、第1の構成要素を第2の構成要素から分離させることを含む、方法を提供する。
【0006】
本明細書で使用される場合、用語「双性イオンポリマー」又は同様の用語は、単一ポリマー鎖内で共有結合した少なくとも1つのアニオン性部分及び少なくとも1つのカチオン性部分を有するポリマーを意味する。アニオン性部分及びカチオン性部分は、ポリマー主鎖内に適切に配置されているか、ポリマー主鎖に対してペンダントになっているか、又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、アニオン性部分及びカチオン性部分は、ポリマー鎖内にランダムに分布しており、他の実施形態では、アニオン性部分及びカチオン性部分は、ポリマー鎖内に交互パターン、ブロックパターン、又は別の規則的な若しくは半規則的なパターンで存在する。いくつかの実施形態では、アニオン性部分及びカチオン性部分は、ポリマー鎖内に1:1のモル比で存在する。他の実施形態では、アニオン性部分は、ポリマー鎖内のカチオン性部分に対してモル過剰で存在する。更に他の実施形態では、カチオン性部分は、ポリマー鎖内のアニオン性部分に対してモル過剰で存在する。いくつかの実施形態では、双性イオンポリマー中に共有結合した単一のアニオン性官能性モノマーが存在し、他の実施形態では、双性イオンポリマー中に共有結合した1つ以上のアニオン性官能性モノマーが存在する。いくつかの実施形態では、双性イオンポリマー中に共有結合した単一のカチオン性官能性モノマーが存在し、他の実施形態では、双性イオンポリマー中に共有結合した1つ以上のカチオン性官能性モノマーが存在する。いくつかの実施形態では、双性イオンポリマー中に共有結合した1つ以上の非イオン性部分が存在する。
【0007】
本明細書で用いる場合、「接着剤組成物」という用語は、DC電位に曝されたときにオンデマンド剥離挙動を示す、双性イオンポリマー及び一緒にブレンドされる任意選択の1種以上の追加の成分を含むPSA又はPSAを含む複合体(例えば、片面又は両面テープ)を意味する。「オンデマンド剥離」という用語は、接着接合された構成要素の分離(すなわち、剥離)を容易にする目的で、接着結合の強度を自由自在に低減する能力を意味する。
【0008】
本明細書で用いる場合、「感圧接着剤」は、以下の特性:(1)強力かつ永久的な粘着性、(2)指圧以下での接着、(3)被着体上に保持されるのに十分な能力、及び(4)被着体からきれいに除去されるのに十分な凝集強さを有すると定義される。PSAとして良好に機能することが見出されている材料としては、所望のバランスの粘着性、剥離接着性、及び剪断保持力をもたらす、必要な粘弾性特性を示すように設計及び配合されたポリマーが挙げられる。PSAは、通常は、室温で粘着性であることを特徴とする。PSAは、粘着性のダールキスト評価基準(Dahlquist criteria)を満たす接着剤であり、これは、25℃及び1ヘルツ(6.28ラジアン/秒)で測定したときの剪断貯蔵弾性率が、典型的には3×10Pa(300kPa)以下であることを意味する。PSAは、典型的には、室温で、接着性、凝集力、従順性、及び弾性を呈する。
【0009】
本明細書で用いる場合、「導電性(conductive)」及び「導電性(electrically conductive)」という用語は、区別なく使用される。
【0010】
本明細書で用いる場合、「負極」及び「負の接着界面」という用語は区別なく使用され、「正極」及び「正の接着界面」という用語は区別なく使用される。
【0011】
本明細書で用いる場合、「重合性」という用語は、熱分解、酸化還元反応、又は光分解による開始の結果として、重合性及び/又は架橋性である「モノマー」とも呼ばれる化合物に適用される。このような化合物は、少なくとも1つのα,β-不飽和部位を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上のα,β-不飽和部位を有するモノマーは「架橋剤」と称されるが、用語「モノマー」には、状況に応じて適切に1つ以上のこのような部位を有する化合物が含まれることが理解されよう。
【0012】
本明細書で用いる場合、「実質的な」又は「実質的に」という用語は、指定された性質、値、値の範囲、含有量、式などからの比較的小さな変動又は収差を意味し、所与の組成物、物品、製品、又は方法の所望の特性に実質的に影響を及ぼさない追加の材料、より広い範囲の値などの存在を排除するものではない。
【0013】
本明細書では、用語「を含む」及びその変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、指定される1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを示唆するが、いかなる他の1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も除外されないことを示唆すると理解されよう。「からなる(consisting of)」は、この語句「からなる」の前のあらゆるものを含み、これらに限定することを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」は、この語句の後に列挙されたあらゆる要素、及びこれらの列挙された要素に関して本開示で特定した活性又は作用に干渉も寄与もしない他の要素に限定されるあらゆる要素を含むことを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在しても又はしなくてもよいことを示す。
【0014】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」等の用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、一般分類を含み、その一般分類の具体例は、例示のために使用され得る。用語「a」、「an」及び「the」は、語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」と区別なく使用される。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0015】
本明細書で用いる場合、用語「又は」は、内容が別途明示しない限り、全般的に、「及び/又は」を含む通常の意味で用いられる。用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0016】
また、本明細書では、全ての数は用語「約」によって修飾されるものとみなされ、特定の実施形態では、用語「正確に」によって修飾されるものとみなされる。本明細書で用いる場合、測定した量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。本明細書では、「最大」数字(例えば、最大50)は、その数(例えば、50)を含む。
【0017】
また、本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0018】
本明細書全体にわたる「いくつかの実施形態」への言及は、実施形態に関して記載された特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書全体における様々な箇所でのこのような語句の出現は、必ずしも本開示の同一の実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせてもよい。
【0019】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の恩恵を与え得る本開示の実施形態について言及するが、同じ又は他の状況下で、他の実施形態が好ましいこともある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0020】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本出願の1つの例示的な物品の概略側面図である。
図1B図1Aの物品の変形例の概略側面図である。
図1C図1Aの物品の別の変形例の概略側面図である。
図2A】本出願の別の例示的な物品の概略側面図である。
図2B図2Aの物品の変形例の概略側面図である。
図3】実施例1の引張力(ニュートン)(y軸)対0.01mm/秒の速度で分離されている2枚の8mmステンレス鋼プレート間の距離(ミリメートル)(x軸)のプロットである。
図4】印加されたDC電圧(x軸)及びプレートを分離する前に電圧が印加された持続時間(y軸)の関数としての、実施例1の引張接着試験からの単位表面積当たりの接着仕事量(スケール上の陰影によって示される)の等高線表面プロットである。
【0022】
図を参照するとき、100の倍数を外したときに同様の参照番号(例えば、12と112又は30と130)は、同様の要素を示す。特に指示がない限り、本文書における全ての図及び図面は、縮尺どおりではなく、本発明の異なる実施形態を例示する目的で選択される。特に、様々な構成要素の寸法は、例示的な用語でしか記述されておらず、様々な構成要素の寸法間の関係は、指示がない限り、図面から推測されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の例示的な実施形態の説明において、その一部を形成し、例示として特定の実施形態が示されている添付の図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造上の変更を加えることができることを理解されたい。
【0024】
本開示の物品は概して、第1の導電性表面を有する第1の構成要素と、第2の表面を有する第2の構成要素と、第1の導電性表面と第2の表面との間に配置された接着剤組成物とを含む。接着剤組成物(以下でより詳細に説明する)は、双性イオンポリマーを含む感圧接着剤と、任意選択で、それとブレンドされた1種以上の追加の成分とを含み、DC電位に曝されたときにオンデマンド剥離挙動を示す。例えば、試験法1に従って表面積当たりの接着仕事量によって測定される、第1の構成要素を第2の構成要素から分離するために必要とされる労力は、接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによって低減される。
【0025】
本開示における物品の形状及び形態は特に限定されない。物品は、完成品であってもよいし、別の物体に組み込まれるか又は取り付けられる部品であってもよい。物品は、典型的には、互いに接着結合され得る少なくとも2つの構成要素から構成され、物品は、二次元体又は三次元体の形状であり得る。同様に、物品を構成する構成要素の形状及び形態も特に限定されない。構成要素は、単一の要素又は要素の組み合わせであり得、構成要素は、二次元体又は三次元体であり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の構成要素が相互接続されるか、又は更には同じ材料の2つの異なる部分が相互接続される(例えば、材料の複合ストリップの一方の端部が、ストリップの反対側の端部に接着するように折り重ねられ得る)。
【0026】
接着剤組成物によって互いに接合された構成要素の分離を容易にするために、構成要素の分離前に接着剤組成物にわたってDC電位が印加される。例えば、電位は、一方の構成要素の表面が負極(又は負の接着界面)として機能し、構成要素の表面の他方が正極(又は正の接着界面)として機能するように、接着剤組成物の両側の2つの導電性構成要素にわたって印加されてもよい。あるいは、電位は、導電性構成要素又は導電性接着剤キャリアの表面が負の接着界面として機能し、導電性構成要素又は導電性接着剤キャリアの表面の他方が正の接着界面として機能する、両面テープの1つの導電性構成要素及び導電性接着剤キャリアにわたって印加されてもよい。DC電流の印加は、典型的には、負の接着界面における接着結合を弱め、したがって、物品中の構成要素を分離するために必要とされる労力の量を低減する。剥離の位置は、単純に電位の極性を変えることによって逆にすることができる。
【0027】
図1は、接着剤組成物によって互いに接合された2つの導電性構成要素を含む本開示の物品の一実施形態を例示する。図1Aを参照すると、物品10は、第1の導電性表面14を有する第1の構成要素12と、第2の導電性表面24を有する第2の構成要素22と、を含む。第1及び第2の構成要素12及び22はそれぞれ、導電性材料から作製される。導電性材料の性質は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、第1の導電性表面14及び第2の導電性表面24はそれぞれ、金属、混合金属、合金、金属酸化物、複合金属、導電性プラスチック、導電性ポリマー、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の導電性表面14の組成は、第2の導電性表面24の組成とは異なる。他の実施形態では、第1及び第2の導電性表面14及び24の組成は同じである。
【0028】
接着剤組成物30は、第1の導電性表面14及び第2の導電性表面24において、第1及び第2の構成要素12及び22を互いに接合している。接着剤組成物は、接着剤組成物30にわたってDC電位を印加することによってオンデマンド剥離挙動を示す。この特定の実施形態では、第1の導電性表面14は正の接着界面として機能し、第2の導電性表面24は負の接着界面として機能する。接着剤組成物30にわたるDC電位40の印加は、例えば、表面積当たりの接着仕事量に従って測定されるように、負の接着界面(すなわち、第2の導電性表面24)における接着結合の弱化をもたらし、したがって、第1の構成要素12から第2の構成要素22を分離することをより容易にする。好ましくは、分離後に第2の導電性表面24上に接着剤残留物がほとんど又は全く残らない。いくつかの実施形態では、10(重量)%未満、5(重量)%未満、又は1(重量)%未満の接着剤組成物が、分離後に第2の構成要素22上に残る。いくつかの好ましい実施形態では、分離後に第2の構成要素22上に接着剤組成物が残らない。いくつかの実施形態では、接着剤組成物を再利用することが可能であり、第1の構成要素12を第2の構成要素22に再接合すること、又は完全に異なる構成要素若しくは物品に接着することを可能にする。分離後に接着剤が第2の構成要素22上に残ることが望ましい場合、DC電位の極性を逆にして、それにより第1の導電性表面14を負の接着界面として機能させることができる。
【0029】
導電性構成要素は、図1Aに例示するような全体が導電性材料から作られた構成要素と、図1Bに例示するような導電性材料でコーティングされた非導電性材料から作製された構成要素と、を含む。図1Bを参照すると、第1の構成要素12は、第1の導電性表面14を提供するために、第1の非導電性材料16及び第1の導電性コーティング18を含む。同様に、第2の構成要素22は、第2の導電性表面24を提供するために、第2の非導電性材料26及び第2の導電性コーティング28を含む。別法で(図示せず)、構成要素のうちの1つは、全体的に導電性材料から作製され得、他の構成要素は、導電性材料でコーティングされた非導電性材料から作製され得る。導電性コーティングは、図1Bに例示されるように、構成要素を部分的にのみコーティングしてもよく、又は構成要素の外面を完全にコーティングしてもよい。本開示の目的のために、DC電位が接着剤組成物にわたって印加されるとき、接着剤組成物と直接接触する構成要素の表面が、負の接着界面における接着結合を弱めるために十分にコーティングされることのみが必要である。いくつかの実施形態では、コーティングは固体層である。他の実施形態では、コーティングは、構成要素の表面上にパターンコーティングされる。上述したように、導電性材料は特に限定されず、金属、混合金属、合金、金属酸化物、複合金属、導電性プラスチック、導電性ポリマー、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を挙げることができる。
【0030】
図1Bの接着剤組成物30は、第1及び第2の構成要素12及び22を互いに接合している。第1の導電性表面14は正の接着界面として機能し、第2の導電性表面24は負の接着界面として機能する。接着剤組成物30にわたるDC電位40の印加は、例えば、表面積当たりの接着仕事量に従って測定されるように、負の接着界面(すなわち、第2の導電性表面24)における接着結合の弱化をもたらし、したがって、第1の構成要素12から第2の構成要素22を分離することをより容易にする。接着剤組成物が主に第2の構成要素上に残ることが望ましい場合、DC電位の極性を逆にして、それにより第1の導電性表面を負の接着界面として機能させることができる。
【0031】
図1A~Bの物品は、図1Cに例示するように、接着剤組成物を使用して非導電性物体又は要素を接合し、続いて剥離するように更に適合させることができる。図1Cの物品は、第1の導電性表面14を有する導電性の第1の構成要素12と、第2の導電性表面24を有する導電性の第2の構成要素22とを含む。第1及び第2の構成要素12及び22は、接着剤組成物30によって互いに接合される。第1及び第2の構成要素は、導電性材料から作製され得るが、第1及び/又は第2の構成要素は、図1Bに例示されるように、非導電性材料から作製され、導電性材料でコーティングされ得ることも理解されるべきである。図1Cは、第1の外側接着剤50が接着剤組成物30とは反対側の第1の構成要素12の第2の側19に追加され、第2の外側接着剤60が接着剤組成物30とは反対側の第2の構成要素22の第1の側29に追加されるという点で図1A~Bと異なる。外側接着剤50及び60は、同じであっても異なっていてもよく、外側接着剤50及び60が非導電性物体又は要素に結合し、意図された用途のために機能する限り、特に限定されない。いくつかの実施形態では、外側接着剤は、感圧接着剤である。いくつかの更なる実施形態において、外側接着剤は、本明細書で定義されるような接着剤組成物である。物品の輸送及び保管中に外側接着剤を保護するために、任意選択の剥離ライナー(図示せず)を第1の外側接着剤50、第2の外側接着剤60、又はその両方に適用してもよい。いくつかの実施形態では、剥離ライナーが、第1及び第2の外側接着剤のそれぞれに適用される。他の実施形態では、保管及び輸送の目的で外側接着剤のうちの1つに剥離ライナーが適用され、物品がそれ自体に巻かれていることにより、他の外側接着剤が剥離ライナーの剥離剤と直接接触している。次いで、接着剤組成物は、使用の準備ができたときに巻き出すことができる。剥離ライナーは、例えば、クラフト紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、又はこれら材料のうちのいずれかの複合体で作製することができる。これらのライナーは、好ましくは、フルオロケミカル又はシリコーン等の剥離剤でコーティングされている。いくつかの好ましい実施形態では、ライナーは、シリコーン剥離材でコーティングされた紙、ポリオレフィンフィルム、又はポリエステルフィルムである。市販の剥離ライナーの例としては、Loparex(Cary,NC)から入手可能なPOLYSLIK(商標)シリコーン剥離紙、Infiana(Forchheim,Germany)製のSilicone 1750コーティングフィルム、H.P.Smith Co.(Stoneham,MA)から入手可能なシリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び3M Company(St.Paul,MN)製の3M Scotchpak(商標)9741剥離ライナーが挙げられる。
【0032】
図1Cに例示される実施形態では、第1及び第2の構成要素は、二次元体(例えば、シート又は多層フィルム)である。しかしながら、それは必須ではなく、構成要素の一方又は両方のいずれかが三次元体である用途(例えば、非導電性物体を着座させるための成形されたくぼみ等の特別な取付け機能)を考えることができる。実際には、任意選択の剥離ライナーの1つが第1の外側接着剤50から除去され、第1の外側接着剤が非導電性物体に接着される。次いで、第2の任意選択の剥離ライナーが第2の外側接着剤60から除去され、第2の外側接着剤60が異なる非導電性物体に接着されて、したがって非導電性物体が接着接合される。非導電性物体は、図1A~Bに図示するように、接着剤組成物にわたって電位を印加することによってオンデマンドで分離することができる。この場合、分離により、第1の構成要素が接着接合された一方の非導電性物体と、第2の構成要素が接着接合された他方の非導電性物体と、が得られる。
【0033】
図2は、接着剤組成物が第1及び第2の構成要素を互いに接合している両面テープである、本出願の物品110の別の実施形態を示す。
【0034】
図2Aを参照すると、物品110は、第1の導電性表面114を有する第1の構成要素112と、第2の導電性表面124を有する第2の構成要素122と、を含む。第1及び第2の構成要素は、図2Aに図示するように、導電性材料(複数可)から作製することができるか、又は第1及び第2の構成要素の一方若しくは両方は、図1に関して上記で記載されるように、非導電性材料(複数可)から作製し、少なくとも部分的に導電性材料(複数可)でコーティングすることができる。接着剤組成物130は、第1の導電性表面114と第2の導電性表面124との間に配置され、第1の構成要素112を第2の構成要素122に結合する。
【0035】
接着剤組成物130は、第1の主面172と、第1の主面の反対側の第2の主面174とを有するキャリア170を更に含む両面接着剤である。第1の双性イオンポリマーを含む第1の接着剤組成物132は、キャリア170の第1の主面172上にある。同様に、第2の双性イオンポリマーを含む第2の接着剤組成物134は、キャリア170の第2の主面174上にある。いくつかの実施形態では、第1の双性イオンポリマーの組成は、第2の双性イオンポリマーの組成と同じである。他の実施形態では、第1の双性イオンポリマーの組成は、第2の双性イオンポリマーの組成とは異なる。第1の接着剤組成物132の、キャリア170とは反対側の表面136は、第1の構成要素112の第1の導電性表面114と接触している。第2の接着剤組成物134の、キャリア170とは反対側の表面138は、第2の構成要素122の第2の導電性表面124と接触している。
【0036】
いくつかの実施形態では、キャリアは、第1の接着剤組成物と第2の接着剤組成物との間の物理的接触を可能にする多孔質材料である。例示的なキャリアとしては、紙、織布若しくは不織布、多孔質フィルム、金属メッシュ、金属格子、又はこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、キャリアは導電性である。そのような導電性キャリアは、多孔質であっても無孔質であってもよく、金属メッシュ、金属格子、金属箔、金属板、導電性ポリマー、導電性発泡体、導電性ティッシュ、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0037】
図2Aに例示される実施形態では、第1の導電性表面114は正の接着界面として機能し、第2の導電性表面124は負の接着界面として機能する。キャリアが多孔質材料から作製される場合、接着剤組成物130にわたるDC電位140の印加は、例えば、表面積当たりの接着仕事量に従って測定されるように、負の接着界面(すなわち、第2の導電性表面124)における接着結合の弱化をもたらし、したがって、第1の構成要素112から第2の構成要素122を分離することをより容易にする。接着剤組成物を第1の構成要素から分離することが望ましい場合、DC電位の極性を逆にして、それにより第1の導電性表面を負の接着界面として機能させることができる。
【0038】
図2Aのキャリア無孔質導電性材料であるとき、接着剤組成物130にわたるDC電位140の印加は、負の接着界面(すなわち、第2の導電性表面124)及びキャリア170の第1の主面172における接着接合の弱化をもたらすことができる。
【0039】
別の実施形態では、キャリア170は、剥離プロセス中に正又は負の接着界面のいずれかとして機能する導電性材料である。例えば、図2Bを参照すると、第1の構成要素112の第1の導電性表面114は正の接着界面であり、キャリア170の第1の主面172は負の接着界面である。第1の接着剤組成物132にわたるDC電位140の印加は、キャリア170の第1の主面172における第1の構成要素112と第2の構成要素122との分離をもたらす。あるいは、第1の構成要素112は、DC電位の極性を逆にすることによって、第1の接着剤組成物132から除去することができる。
【0040】
追加の実施形態では、第2の構成要素122の導電性表面124又はキャリア170の第2の主面174は、負の接着界面とすることができ、第2の構成要素122の導電性表面124又はキャリア170の第2の主面174の他方は、正の接着界面とすることができる。
【0041】
図2Bを参照すると、キャリア170が負又は正の接着界面として機能し、第1の構成要素112の第1の導電性表面114が負又は正の接着界面の他方として機能する場合、DC電位が印加される第1の接着剤組成物132のみが双性イオンポリマーを含む必要があることを理解すべきである。第2の接着剤組成物134は、実際には、いずれのタイプの接着剤であってもよい。同様に、キャリア170が負又は正の接着界面として機能し、第2の構成要素122の第2の導電性表面124が負又は正の接着界面の他方として機能する場合、DC電位が印加される第2の接着剤組成物134のみが双性イオンポリマーを含む必要がある。第1の接着剤組成物132は、実際には、いずれのタイプの接着剤であってもよい。したがって、このような実施形態では、両面テープを使用して、接着剤の一方のみが双性イオンポリマーを含む、両面に接着剤を有するキャリアを含む物品を作製することができる。この構造は、第2の構成要素22がキャリアである図1Cに図示されるものと同様であると考えられる。
【0042】
上に示したように、導電性キャリアを有する両面テープは、使用者が物品内の剥離位置をより戦略的に調整することを可能にする。これは、リサイクル前に構成要素から接着剤を除去する必要があるとき、及び/又は同じ若しくは異なる物品への再配置又は接着のために構成要素上に接着剤を残す必要があるときに特に有利であり得る。
【0043】
更に、導電性キャリアを有する両面テープを使用することによって、第1の構成要素を第2の構成要素から分離するために、構成要素のうちの少なくとも1つが導電性である必要はない。キャリアは、電極のうちの1つとして機能することができ、したがって、物品に含まれ得る材料のタイプを増加させることができる(すなわち、2つの導電性構成要素を接着するか、又は導電性構成要素を非導電性構成要素に接着する)。
【0044】
上記の実施形態は、本開示の物品の例示的な構成、及びこれらの物品内の構成要素を剥離する方法を例示する。ここで、接着剤組成物、特に接着剤組成物のPSAをより詳細に説明する。
【0045】
接着剤組成物
本開示の接着剤組成物は、双性イオンポリマー、及び任意選択で1種以上の追加の成分を含む。追加の成分には、接着力促進剤、粘着付与剤、界面活性剤、防汚剤、熱安定剤若しくは酸化安定剤、着色剤、補助剤、可塑剤、溶媒、架橋剤、又はこれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0046】
本開示の双性イオンポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、それらのカルボン酸塩、又はそれらのブレンドであるアニオン性モノマー;アルキルアンモニウム官能基を有する、アクリル酸又はメタクリル酸エステルであるカチオン性モノマー;及び2~18個の炭素を有するアルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルの重合生成物を含むコポリマーである。任意選択の1種以上の追加のモノマーが、本発明の双性イオンポリマーに含まれる。いくつかの実施形態において、アニオン性モノマーはアクリル酸又はメタクリル酸であり、この酸は、重合の前又は後のいずれかに、中和によって対応するカルボキシレートに変換される。いくつかの実施形態において、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの塩は、これらのうちの2種以上の混合物である。いくつかの実施形態において、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、2種以上のこのようなエステルの混合物であり、いくつかの実施形態において、カチオン性モノマーは、2種以上のこのようなカチオン性モノマーの混合物である。
【0047】
いくつかの実施形態において、アクリル酸、メタクリル酸、これらのカルボン酸塩又はこれらのブレンドは、双性イオンポリマー中に、双性イオンポリマーの総重量に基づいて0.2重量%~16重量%、0.2重量%~10重量%、1重量%~8重量%、若しくは2重量%~6重量%、又は様々な中間レベル、例えば2.3重量%、2.4重量%、2.6重量%、2.7重量%、及び0.2~16.0重量%の間の0.1重量%刻みで表される他のこのような個別の値全て、並びに0.1重量%刻みのこれらの個別の値のいずれかの間の範囲、例えば0.2重量%~9.5重量%、1.9重量%~6.2重量%等の量で存在する。これらの量は、プレポリマー反応混合物中の未反応アクリル酸、メタクリル酸、これらのカルボン酸塩又はこれらのブレンドの量にも適用される。
【0048】
カチオン性モノマーは、アルキルアンモニウム官能性を含むアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。いくつかの実施形態では、カチオン性モノマーは、2-(トリアルキルアンモニウム)エチルアクリレート又は2-(トリアルキルアンモニウム)エチルメタクリレートである。かかる実施形態において、アルキル基の性質は特に限定されないが、コスト及び実用性によって有用な実施形態の数が限定され得る。いくつかの実施形態では、2-(トリアルキルアンモニウム)エチルアクリレート又は2-(トリアルキルアンモニウム)エチルメタクリレートは、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート又は2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートの、ハロゲン化アルキルとの反応から形成され、このような実施形態では、2-(トリアルキルアンモニウム)エチルアクリレート又は2-(トリアルキルアンモニウム)エチルメタクリレートの3つのアルキル基のうちの少なくとも2つはメチルである。いくつかの実施形態では、3個のアルキル基全てがメチル基である。他の実施形態では、3個のアルキル基のうちの2個がメチルであり、3個目は、2~24個の炭素原子、又は6~20個の炭素原子、又は8~18個の炭素原子、又は10個及び16個の炭素原子を有する直鎖、分枝状、環状、又は脂環式基である。いくつかの実施形態では、カチオン性モノマーは、これらの化合物の2種以上の混合物である。
【0049】
カチオン性モノマーのアンモニウム官能性に関連するアニオンは、特に限定されず、本発明の様々な実施形態と関係して、多くのアニオンが有用である。いくつかの実施形態では、アニオンは、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド等のハライドアニオンであり、いくつかのかかる実施形態では、アニオンはクロリドである。他の実施形態では、アニオンは、BF、N(SOCF、OSCF、又はOSCである。他の実施形態では、アニオンはメチルサルフェートである。更に他の実施形態では、アニオンはヒドロキシドである。いくつかの実施形態では、1つ以上のカチオン性モノマーは、これらのアニオンの2種以上の混合物を含む。いくつかの実施形態において、重合は、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート又は2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを用いて実施され、ポリマー内に存在するアミノ基が好適なアルキルハライドと反応して対応するアンモニウムハライド官能性を形成することによって、対応するアンモニウム官能性がin situで形成される。他の実施形態において、アンモニウム官能性モノマーは、双性イオンポリマーに組み込まれ、次いで、アニオンが交換されて異なるアニオンをもたらす。かかる実施形態において、イオン交換は、当業者に既知であり、当業者に一般的に用いられている従来プロセスのいずれかを使用して実施される。
【0050】
実施形態において、カチオン性モノマーは、双性イオンポリマー中に、双性イオンポリマーの総重量に基づいて2重量%~25重量%、2重量%~20重量%、4重量%~16重量%、8重量%~16重量%、若しくは12重量%~16重量%、又は様々な中間レベル、例えば3重量%、5重量%、6重量%、8重量%、及び2~25重量%の間の1重量%刻みで表される他のこのような個別の値全て、並びに1重量%刻みのこれらの個別の値のいずれかの間の範囲、例えば2重量%~4重量%、7重量%~22重量%、10重量%~16重量%等の量で存在する。これらの量はまた、プレポリマー反応混合物中の未反応カチオン性モノマーの量にも適用される。
【0051】
実施形態において、2~18個の炭素を有するアルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、直鎖状、分枝状、又は環状アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを含む。限定するものではないが、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに有用なアルコールの例としては、エチル、プロピル、n-ブチル、secーブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシルアルコールが挙げられる。実施形態において、アルコールはイソオクチルアルコールである。いくつかの実施形態において、2~18個の炭素を有するアルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、2種以上のそのような化合物の混合物である。
【0052】
実施形態において、2~18個の炭素を有するアルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、双性イオンポリマー中に、双性イオンポリマーの総重量に基づいて50重量%~95重量%、60重量%~90重量%、若しくは75重量%~85重量%、又は様々な中間レベル、例えば、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、及び50重量%~95重量%の間の1重量%刻みで個別に表される他のこのような値全て、並びに1重量%刻みのこれらの個別の値のいずれかの間の範囲、例えば約54重量%~81重量%、約66重量%~82重量%、約77重量%~79重量%等の量で存在する。これらの量は、プレポリマー反応混合物中の8~12個の炭素を有するアルコールの未反応アクリル酸又はメタクリル酸エステルの量にも適用される。
【0053】
実施形態では、1つ以上の追加のモノマーの重合生成物が、本発明の双性イオンポリマーに含まれる。このような追加のモノマーは、構造によって特に限定されるものではないが、得られた双性イオンポリマーに様々な所望の特性を付与するように選択され得る。追加のモノマーとしては、いくつかの実施形態では、アニオン性官能性モノマーを挙げることができる。追加のモノマーの非限定的な例は、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、又はヒドロキシエチルメタクリレートである。いくつかの実施形態では、追加のモノマーは、これらのモノマーの2つ以上の混合物である。いくつかのこのような実施形態では、追加のモノマーは酢酸ビニルである。
【0054】
1種以上の追加のモノマーの重合生成物が、双性イオンポリマー中に、双性イオンポリマーの総重量に基づいて0重量%~40重量%、0重量%~30重量%、2重量%~20重量%、3重量%~15重量%、若しくは5重量%~10重量%、又は様々な中間レベル、例えば、1重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、及び0重量%~40重量%の間の1重量%刻みで個別に表される他のこのような値全て、並びに1重量%刻みのこれらの個別の値のいずれかの間の範囲、例えば約2重量%~4重量%、約11重量%~28重量%、約7重量%~17重量%等の量で存在する。全てのそのような範囲は、好適には0%を含む。これらの量は、プレポリマー反応混合物中の未反応の追加モノマーの量にも適用される。
【0055】
いくつかの実施形態では、追加のモノマーは、2つ以上の重合性官能性を有し、このようなモノマーは架橋剤と称される。双性イオンポリマーの形成で有用である架橋剤としては、エチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート、グリセロールトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリアクリレート、エリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのテトラアクリレート、ジビニルベンゼン、及びその誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、架橋剤は光活性架橋剤である。光活性架橋剤には、例えば、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、アントラキノン、置換アントラキノン、様々なベンゾフェノン型化合物、及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-p-メトキシスチリル-s-トリアジンなどの特定の発色団置換ビニルハロメチル-s-トリアジンが挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、架橋剤は、追加のモノマーとして、双性イオンポリマーの総重量に基づいて最大10重量%の量で存在し、他の実施形態では、架橋剤の重合生成物は、双性イオンポリマー中に、ポリマーの総重量に基づいて約0重量%~10重量%、例えば約0.01重量%~5重量%又は約0.1重量%~2重量%で存在する。これらの量は、プレポリマー反応混合物中の未反応架橋剤の量にも適用される。
【0057】
いくつかの実施形態において、本開示の双性イオンポリマーは、メタクリル酸、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート塩化メチル、及びイソ-オクチルアクリレートの重合生成物を含むコポリマーである。加えて、いくつかの実施形態は、酢酸ビニルを含む。
【0058】
双性イオンポリマーは、乳化重合のプロセスによって作製することができる。モノマーのエマルションが形成され、重合反応のUV又は熱開始を用いて重合が行われる。いくつかの実施形態において、空気は、重合中に部分的に排除又は制限される。エマルションは、油中水型又は水中油型エマルションであり得る。いくつかのこのような実施形態では、エマルションは水中油型エマルションであり、1種以上のモノマーは、1種以上の界面活性剤を使用することによってバルク水相中で安定化される。様々な実施形態では、界面活性剤は、本質的にカチオン性、アニオン性、両性イオン性、又は非イオン性であり、その構造は別段特に限定されない。いくつかの実施形態では、界面活性剤はモノマーでもあり、双性イオンポリマー中に組み込まれるようになる。他の実施形態では、界面活性剤は重合反応容器中に存在するが、重合反応の結果として、カチオン性又は双性イオンポリマー中には組み込まれない。
【0059】
双性イオンポリマーを形成するために用いられるモノマーの水中油型エマルションを形成するのに有用なアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、ラウリルスルホン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、ジオクチルナトリウムスルホコハク酸、ペルフルオロブタンスルホン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、ペルフルオロオクタン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、パレス硫酸ナトリウム、ステアリン酸のアンモニウム、ナトリウム、リチウム、又はカリウム塩、及びこれらの1つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0060】
双性イオンポリマーを形成するために使用されるモノマーの水中油型エマルションを形成するのに有用な非イオン性界面活性剤の非限定的な例は、BASF Corporation(Charlotte,NC)によって商品名PLURONIC(登録商標)、KOLLIPHOR(登録商標)、又はTETRONIC(登録商標)で販売されているもの等のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー;Dow Chemical Company(Midland,MI)によって商品名TRITON(登録商標)で販売されているものを含む、エチレンオキシドの、脂肪アルコール、ノニルフェノール、ドデシルアルコール等との反応によって形成されたエトキシレート;オレイルアルコール;ソルビタンエステル;デシルグルコシド等のアルキルポリグリコシド;ソルビタントリステアレート、及びそれらの1つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0061】
カチオン性又は双性イオンポリマーを形成するために使用されるモノマーの水中油型エマルションを形成するのに有用なカチオン性界面活性剤の非限定的な例には、塩化ベンザルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化デメチルジオクタデシルアンモニウム、ラウリルメチルグルセト-10ヒドロキシプロピルジアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロリド、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルエチルメチルアンモニウムエトスルフェート、トリアルキルメチルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンモノアルキルメチルアンモニウムクロリド、及びジ-第四級アンモニウムクロリド、Akzo Nobel N.V.(Amsterdam,the Netherlands)によって商品名ETHOQUAD(登録商標)、ARQUAD(登録商標)、及びDUOQUAD(登録商標)で販売されているアンモニウム官能性界面活性剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。本発明の双性イオンポリマーの重合のための水中油型エマルションの形成において特に使用されるものは、ETHOQUAD(登録商標)界面活性剤、例えばETHOQUAD (登録商標)C/12、C/25、C/12-75等である。いくつかの実施形態では、ETHOQUAD (登録商標)C/25は、本発明の双性イオンポリマーを製造するために使用されるモノマーの水中に高固形分のエマルションを製造するために有用に使用される。
【0062】
カチオン性界面活性剤が水中油型乳化重合反応で使用される場合、これは、モノマーの総重量に基づいて約1.0重量%~6.0重量%の量で、若しくはモノマーの約2.0重量%~4.0重量%の量で、又は様々な中間レベル、例えば、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.1重量%、2.2重量%、及び1.0~6.0重量%の間の0.1重量%刻みで個別に表される他のこのような値全て、並びに0.1重量%刻みのこれらの個別の値のいずれかの間の範囲、例えば2.3重量%~4.6重量%、4.5重量%~4.7重量%等の量で使用される。
【0063】
双性イオンポリマーを形成するために使用されるモノマーの水中油型エマルションを形成するために有用な双性イオン界面活性剤の非限定的な例には、コカミドプロピルベタイン、ヒドロキシスルタイン、及びコカミドプロピルヒドロキシスルタイン等のベタイン及びスルタインが挙げられ、他には、レシチン、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、及び2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ウンデシル-4,5-ジヒドロイミダゾール-1-イウム-1-イル]酢酸ナトリウム(ラウロアンホ酢酸ナトリウム)が挙げられる。双性イオン界面活性剤が水中油型乳化重合反応で使用される場合、これは、モノマーの総重量に基づいて約1.0重量%~10.0重量%の量で、若しくはモノマーの約2.0重量%~6.0重量%の量で、又は様々な中間レベル、例えば、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.1重量%、2.2重量%、及び1.0~10.0重量%の間の0.1重量%刻みで個別に表される他のこのような値全て、並びに0.1重量%刻みのこれらの個別の値のいずれかの間の範囲、例えば2.3重量%~4.6重量%、4.5重量%~4.7重量%等の量で使用される。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明の双性イオンポリマーを作製するために用いられるモノマーの乳化重合は、モノマー、界面活性剤、及びUV開始剤を水中でブレンドし、続いて、選択された開始剤の好ましい分解波長に対応する波長のUV放射線を一定期間照射することによって行われる。他の実施形態では、本発明の双性イオンポリマーを製造するために使用されるモノマーの乳化重合は、モノマー、界面活性剤、及び熱開始剤を水中でブレンドし、続いて、熱開始剤の分解が適切な速度で誘導される温度にエマルションを加熱することによって行われる。メタクリル酸又はアクリル酸がモノマー混合物中で使用されるいくつかの実施形態では、水酸化ナトリウム、リチウム、アンモニウム又はカリウムをモノマー混合物に添加して、酸性官能性を中和して対応する塩を形成する。他の実施形態では、このような中和は、重合反応の完了後に行われる。実施形態では、中和は、水相のpHを約2~3から約4~7、例えば約5~6に調整することを意味する。
【0065】
いくつかの実施形態において、ETHOQUAD(登録商標)C/25は、モノマーの高固形分エマルションを作製するために有用に使用される。この文脈において、「固形分」は、水以外のエマルションの全ての成分として定義される。高固形分エマルションは、例えば、水中約15重量%及び60重量%の総固形分、又は水中約25重量%~60重量%の総固形分、又は水中約30重量%~50重量%の固形分、又は様々な中間レベル、例えば、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、26重量%、27重量%、及び水中15重量%~60重量%の間の1重量%刻みで個別に表される他のこのような値全て、並びに1重量%刻みのこれらの個別の値のいずれかの間の範囲、例えば23重量%~46重量%、45重量%~57重量%等で形成される。
【0066】
一般的に、使用されるエマルション重合及び方法論の条件は、従来のエマルション重合法で使用されるものと同じであるか又は同様である。いくつかの実施形態では、水中油型エマルション重合は、熱開始反応を用いて行われる。このような実施形態では、1つの有用な重合開始剤は、V-50(和光純薬工業(株)(大阪、日本)から入手)である。いくつかのそのような実施形態において、エマルションの温度は、重合前及び重合中に約30℃~100℃、例えば約40℃~80℃、又は約40℃~60℃、又は約45℃~55℃に調整される。高温でのエマルションの撹拌は、実質的に全ての熱開始剤を分解し、エマルションに添加された実質的に全てのモノマーを反応させて重合エマルションを形成するのに好適な時間の間行われる。いくつかの実施形態では、高温は、約2時間~24時間、又は約4時間~18時間、又は約8時間~16時間の間維持される。重合中、いくつかの実施形態では、追加の熱開始剤を添加して、反応容器に添加された実質的に全てのモノマー含量の反応を完了させることが必要である。重合の完了は条件の慎重な調整によって達成され、残留モノマー含量のガスクロマトグラフィー分析などの標準的な分析技術は、重合の完了について当業者に知らせることが理解されよう。
【0067】
コーティングプロセス
双性イオンポリマー、及び任意選択で1種以上の追加の成分を含む接着剤組成物は、成分(例えば、キャリア、基材、物品の表面など)の表面上にエマルションとしてコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、乳化双性イオンポリマーは、乳化重合プロセスの終わりに、接着剤組成物として使用され、1つ以上の構成要素上に「そのまま」コーティングされる。このような実施形態では、重合に使用される水及び1種以上の界面活性剤は、任意の残留する未反応モノマー又は開始剤と共に、接着剤組成物と結合したままであろう。接着剤組成物をコーティングし、水の実質的な部分を除去するために十分な時間にわたって乾燥するが、ほとんどの実施形態では、使用される界面活性剤は、このような界面活性剤がポリマーと反応してポリマーの一部となるか否かにかかわらず、乾燥したコーティング中に残るであろう。いくつかの実施形態では、エマルションの乾燥は、任意の未反応の揮発性モノマーの一部又は実質的な部分の除去ももたらす。いくつかの実施形態では、1種以上の追加の成分を、双性イオンポリマーを含有するエマルションに添加して、接着剤組成物を形成し、修正されたエマルションを用いて1つ以上の構成要素をコーティングし、乾燥して、水の実質的な部分及び任意の他の残留する揮発性成分の一部又は実質的な部分を除去する。乾燥後に、乳化接着剤組成物は、未反応モノマーを、乳化重合反応容器に添加されたモノマーの総重量に基づいて、1重量%以下、例えば0.5重量%~5ppm、又は約500ppm~10ppm、又は約100ppm~1ppmを含むことが望ましい。
【0068】
本発明のカチオン的に乳化された接着剤組成物は、優れたコーティング粘度及び高い剪断安定性を特徴とする。実施形態では、本開示のカチオン的に安定化された接着剤組成物の粘度は、約20cP~2500cP、又は約100cP~1500cP、又は約400cP~1000cPである。エマルション粘度は、エマルションの固形分及び形成された双性イオンポリマーの分子量によって部分的に決定される。エマルションは、剪断不安定性の開始が少なくとも約80Pa以上、例えば約90Pa~300Pa又は約100Pa~200Paで起こるような剪断応力下で安定性である。本開示のカチオン的に乳化された接着剤組成物の粘度及び剪断安定性は、接着剤組成物を1つ以上の構成要素上にコーティングするためのコーティング方法の選択において幅広い柔軟性を提供する。カチオン的に乳化された接着剤組成物と共に使用される有用なコーティングプロセスの非限定的な例には、ナイフコーティング、スロットコーティング、ダイコーティング、フラッドコーティング、ロッドコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、浸漬コーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、印刷コーティング作業(フレキソ、インクジェット、又はスクリーンプリントコーティング等)などが挙げられる。いくつかの実施形態において、接着剤組成物は、連続コーティングとしてコーティングされ、他の実施形態では、それらは、米国特許第4,798,201号及び同第5,290,615号に記載されるように、又は別の技術を使用してパターンコーティングされる。
【0069】
乳化された接着剤組成物のコーティングに続いて、エマルション混合物に付随する水及び任意の他の揮発性物質の実質的な部分を除去するために十分な乾燥のための適切な温度及び時間を用いる乾燥が行われる。
【0070】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物の厚さは、少なくとも10μm、少なくとも100μm、少なくとも500μm、又は少なくとも1000μmである。いくつかの実施形態において、接着剤組成物の厚さは、最大2mm、最大1000μm、最大500μm、又は最大100μmである。いくつかの実施形態では、接着剤組成物の厚さは10μm~2mmの範囲である。
【0071】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物は、双性イオンポリマー、及び任意選択で1種以上の追加の成分を含む。他の実施形態において、接着剤組成物は、キャリアと、キャリアの片面に適用された双性イオンポリマー及び任意選択の1種以上の追加の成分とを含む片面テープである。更に他の実施形態では、接着剤組成物は、キャリアと、キャリアの片側に適用された第1の双性イオンポリマー及び任意選択の1種以上の追加の成分と、キャリアの反対側に適用された第2の双性イオンポリマー及び任意選択の1種以上の追加の成分とを含む両面テープである。第1及び第2の双性イオンポリマーは、同一であっても、異なっていてもよい。好適なキャリア材料は上に記載されている。
【0072】
用途
本開示の物品は、多くの利点を提供することができる。物品中の構成要素は、オンデマンドで分離(すなわち、剥離)されてもよい。上記のように、物品中のオンデマンド剥離は、接着剤組成物にわたってDC電位を印加して、負の接着界面(すなわち、負電極)における接着結合の弱化を引き起こすことによって起こり、したがって、物品中の構成要素を分離するために必要とされる労力を低減する。接着結合の弱化は、DC電位(電圧)の増加、印加されたDC電位の持続時間の増加、又はこれらの組み合わせと共に増加する。したがって、使用者は、オンデマンド剥離のための条件を用途又は必要性に合わせることができる。例えば、使用者は、用途がより低い電圧を必要とする場合、印加されるDC電位の持続時間を増加させることができる。いくつかの実施形態では、オンデマンド剥離は、最大800V/mm、最大250V/mm、又は最大90V/mmの印加DC電位で生じる。いくつかの実施形態では、オンデマンド剥離は、印加DC電位の印加後、20秒未満、15秒未満、10秒未満、5秒未満、3秒未満、又は1.5秒未満で生じる。
【0073】
接着結合の弱化は、例えば、接着剤組成物で一緒に結合された2つの構成要素の表面積当たりの接着仕事量の変化%によって測定することができる。いくつかの実施形態では、0V及び50Vで100秒間における表面積当たりの接着仕事量の変化%は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、0V及び50Vで100秒間において、接着剤組成物を用いて物品に接着結合された構成要素の表面積当たりの接着仕事量の変化%は、10%~100%、10%~99%、40%~99%、60%~99%、70%~99%、又は80%~99%の範囲である。いくつかの実施形態では、DC印加電位は、使用者の介入なしに物品から構成要素を完全に切り離すのに十分である。
【0074】
本出願の物品の別の関連する利点は、接着剤組成物にわたって印加される電位の方向によって剥離の位置を決定する能力である。本出願の接着剤組成物は、典型的には、負の接着界面から剥離する。好ましくは、分離後に負の接着界面上に接着剤残留物がほとんど又は全く残らない。いくつかの実施形態では、10(重量)%未満、5(重量)%未満、又は1(重量)%未満の接着剤組成物が、剥離後に負の接着界面上に残る。いくつかの好ましい実施形態では、剥離後に負の接着界面上に接着剤組成物が残らない。これにより、使用者は、最適な界面で構成要素をきれいに分離することが可能になる。いくつかの構造体では、リサイクル及び環境の規制が要求し得るように、物品の寿命の間に1つの界面で接着剤組成物を剥離し、物品の寿命の終わりに別の界面で接着剤組成物を剥離することが可能であり得る。
【0075】
加えて、接着剤組成物は硬化性接着剤とは対照的にPSAであるため、剥離された接着剤組成物は典型的にはその粘着性を保持し、必要に応じて再使用又は再配置されてもよく、したがって、より低い剥離強度を有するPSAに起因することが多い特性を示す。
【0076】
本出願の物品は、様々なオンデマンド剥離解決策を提供することができる。ロボット工学において、物品は、様々な作業を行うために使用される物体(例えば、構成要素)を把持する際に使用するための接着剤組成物で一端がコーティングされた機械アームを含んでもよい。例えば、物体は、ねじ回し又ははんだ付け装置であってもよい。作業が完了したら、接着剤組成物にわたって電位を印加することによって物体を取り外すことができる。いくつかの実施形態において、分離は、接着剤組成物が、新たな異なる物体を把持するために機械的アーム上に残るように設計され得る。
【0077】
本出願の物品は、例えば、動物追跡首輪において使用され得、ここで、研究者は、典型的には、首輪の適用及び除去の両方の間に動物を鎮静させなければならない。本出願の物品を使用して、そのライフサイクルの終わりに脱落するように設計された首輪を作製することが可能である。例えば、首輪は、接着剤組成物を使用して動物の首の周りに固定することができる。追跡情報を収集するために使用される小型電池を、収集サイクルの終わり近くで使用して、接着剤組成物にわたって電位を印加することもでき、これによって、次いで、接着剤を剥離すると考えられ、首輪が地面に落ちることを可能にする。次いで、首輪は、追跡デバイスを使用して、研究者によって拾い上げられ得る。
【0078】
別の用途では、物品は、包装及び運送業において使用することができる。接着剤組成物は、パッケージを一緒に束ねるために使用することができる。配達先に到着すると、運送業者の従業員は、配達のためにパッケージを分離するために電流を印加することができる。
【0079】
物品はまた、定期的なサービス又は交換を必要とする1つ以上の構成要素を含む機器又は消費者製品の一部であってもよい。例えば、サービスパネルを接着剤組成物によって筐体に接着接合し、接着剤組成物にわたってDC印加電位を印加することによってパネルを除去することができる。次いで、パネルは、サービス後に交換され得、いくつかの実施形態では、製造中に最初に適用された同じ接着剤組成物を使用して再配置され得る。
【0080】
物品はまた、その製品のライフサイクルの終わりに達した多成分製品であってもよく、構成要素のすべてではないにしても少なくとも一部はリサイクル可能である。構成要素が接着剤組成物によって接合される場合、接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによってリサイクル可能な構成要素をきれいに分離することが可能である。
【0081】
上記の用途は、限定されることを意図するものではない。本出願の物品及び方法は、オンデマンド接着剤剥離から利益を得る任意の様々な用途における使用を見出すことができる。
【実施例
【0082】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0083】
別段の記載がない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量基準である。
【表1】
【0084】
比較例C1 非イオン性ポリマーを含む接着剤配合物の調製
撹拌反応器に、脱イオン水(582.3g)、非イオン性界面活性剤(Igepal CA-897、17.1g)、及びNVP(8.05g)を、HDDA(0.31g)及びIOA(391.7g)と共に添加した。反応器中の成分を撹拌して、反応器中にエマルションを生成した。得られたエマルションをManton-Gaulinホモジナイザーに2回通した。均質化したエマルションを撹拌反応器に戻し、脱酸素し、60℃に加熱した。反応物が60℃に達したら、過硫酸カリウム(0.51g)を反応器に添加した。反応の開始は発熱を合図とし、90℃~98℃のピーク温度まで進行させた。次いで、反応物を70℃に冷却させ、その温度で2時間保持した。次いで、混合物を冷却し、濾過して全ての凝塊を除去した。濾過された混合物は約40%の固形分を有していた。
【0085】
比較例C2~C3及び実施例E1~E13 接着剤配合物の調製
各実施例で、成分DMAEA-MCl、IOA、C12-アクリレート、Vac、MAA、EQ-C25、IOTG、脱イオン水、及びV-50を、表2に示される量を使用して、清浄な32オンス反応ボトルに逐次的に順に投入した。混合物を窒素で2分間パージした。ボトルを密閉し、回転装置を備えた一定温度の水浴に入れた。反応ボトルを回転させながら、18時間、50℃に加熱した。反応ボトルを取り外し、室温に冷却した。反応混合物をスクリーンに通して濾過した。凝塊は得られなかった。次いで、反応物をガスクロマトグラフィー(GC)によって分析し、固形分%を決定した。分析により、99%超の変換率が明らかになった。
【0086】
単層転写接着剤の調製
シリコーン処理したPET剥離ライナー(SKC Haas(Seoul、SK)から入手可能なRF02N/RF32N)間に、比較例C1~C3及び実施例1~12の接着剤配合物を0.30ミリメートル(mm)の湿潤コーティング重量でコーティングした。次いで、この構造体を溶媒オーブン(Model LAC2-12-8、Despatch Thermal Processing Technology(Minneapolis,MN))中で、65℃にて10分間乾燥した。
【0087】
キャリア層を有する両面コーティング接着剤の調製
ティッシュキャリア層上の両面コーティング接着剤の調製は、以下の例外を除いて、単層転写接着剤の調製と同様の方法で行った。実施例13の接着剤配合物を、シリコーン処理されたPETライナー上に0.1mmの厚さでコーティングし、溶媒オーブン中65℃で10分間乾燥した。次いで、ティッシュ材料を乾燥接着剤に積層した。同じ接着剤配合物の第2の層を、構造体のティッシュ側の上に0.1mmの厚さでコーティングし、次いで溶媒オーブン中65℃で10分間乾燥した。
【表2】
【0088】
試験方法1:電位を印加した場合と印加しない場合の表面積当たりの接着仕事量
2つの平行に結合された試験表面を分離するのに必要な表面積当たりの接着仕事量を、特定の除去速度で結合材料の厚さ方向に表面を分離しながら測定した。
【0089】
表面積当たりの接着仕事量は、結合表面1平方センチメートル当たりのニュートンに、プレート間の移動距離(センチメートル)を乗じて表される(N/cmの単位)。これは、結合表面間の間隙の変化(センチメートル(cm))に対してプロットされた引張力(ニュートン(N))の曲線下面積を積分し、次いで、その値を、結合試験表面の接触面積(平方センチメートル(cm))で割ることによって分析された。
【0090】
試験は、電気粘性アクセサリを備えた歪み制御レオメーター(TA Instruments(New Castle,Delaware)製のARES G2)を使用して行った。試験固定具は、直径8mmのステンレス鋼平行プレートであった。温度制御のために、底部プレートを水冷Advanced Peltier System(TA Instruments(New Castle,Delaware)製のAPS)に取り付けた。全ての接着試験で、温度を25℃に調節した。電位の印加のために、任意波形発生器(Keysight Technologies(Santa Rosa,California)製の33210A)を高電圧増幅器(Trek Inc.(Lockport,New York)製のTrek Model 609E-6)に接続し、これをレオメーター上の上部形状に接続した。下部形状は接地された。これにより、レオメータープレート間の試験片にわたって0~±4000ボルトの範囲の直流(V DC)の電位を印加することが可能になった。
【0091】
各試験で、直径8mmの平行プレート固定具をレオメーターに取り付け、プレート間の間隙をゼロにした。直径8mmのディスクを単層転写接着剤(C1~C3及びE1~E12)又は両面コーティング接着剤(E13)から切り取り、剥離層の1つをコーティング接着剤から剥がし、レオメーターの下部形状(直径8mmのステンレス鋼プレート)の清浄な表面に適用した。第2の剥離ライナーをコーティング接着剤から剥がした。温度を25℃で1分間平衡化した。次いで、上部プレートを下げて、5Nの圧縮負荷で500秒間接着剤に接触させて圧縮した。圧縮工程中、最後の100秒間の圧縮負荷中に、0V DC(対照試験)又はー50V DCのいずれかの電圧でDC電位を印加した。圧縮負荷の終わりに、プレートを0.001cm/sの速度で分離し、プレートを分離するのに必要な引張力を、プレート分離距離の関数として測定した。各実施例の各条件について3回の試験を行い、平均して表3にまとめた表面積当たりの接着仕事量の値を得た。
【0092】
表面積当たりの接着仕事量の減少パーセント(%)は、-50V DC印加電位でのそれぞれの平均値を、電圧を印加していない対応する平均値から差し引き、次いで、その差を電圧を印加していない値で割ることによって計算した。減少%の正の値は、-50VのDC電位の印加後の表面積当たりの接着仕事量の減少を示す。各実施例についてのこれらの%減少値も表3に記録する。
【0093】
試験された実施例において、負のDC電位は、上部プレートからの優先的な剥離をもたらし、一方、正のDC電位は、下部(接地)プレートからの優先的な剥離をもたらした。
【0094】
実施例1の引張接着プロファイルを図3に例示する。試験は、圧縮工程の最後の100秒の間に印加された0V及びー50VのDC電位で行われた。引張力(ニュートン)をy軸上にプロットし、0.01mm/秒の速度で分離された直径8mmのステンレス鋼平行プレート間の距離をx軸上にプロットする。電位の印加は、接着仕事量(曲線下面積によって説明される)の減少によって示されるように、接着剤の接着強度を低下する。
【表3】
【0095】
図4は、印加DC電圧(x軸)及びプレートを分離する前に電圧が印加された持続時間(y軸)の関数としての、実施例1の引張接着試験からの単位表面積当たりの接着仕事量(グレースケールによって示される)の等高線表面プロットを示す。
【0096】
したがって、本開示は、とりわけ、オンデマンド剥離挙動を示す接着剤組成物を含有する物品を提供する。本開示の様々な特徴及び利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
【国際調査報告】