(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】オンデマンド剥離挙動を示す接着剤組成物を含有する物品
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20240614BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240614BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240614BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240614BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240614BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J7/38
C09J11/06
C09J4/02
B32B7/022
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574314
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 IB2022054477
(87)【国際公開番号】W WO2022254268
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヘデガード,アーロン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】クラッパー,ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ,リンジー
(72)【発明者】
【氏名】河本 賢
(72)【発明者】
【氏名】ベーリング,ロス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン,ケヴィン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アリ,マッフーザ ビー.
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB01B
4F100AB01E
4F100AB31A
4F100AB31B
4F100AH03C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK25C
4F100AT00D
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA30C
4F100CB00C
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4F100DC15E
4F100DC16D
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4F100DG15E
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4F100GB41
4F100JB12C
4F100JG01A
4F100JG01B
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4F100YY00C
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004DB03
4J004EA05
4J004FA08
4J040DF061
4J040GA19
4J040GA27
4J040HB19
4J040KA13
4J040MA02
4J040MB03
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA15
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
第1の導電性表面を有する第1の構成要素と、第2の表面を有する第2の構成要素とを含む物品。硬化した重合性イオン液体を含む接着剤組成物は、第1の導電性表面と第2の表面との間に配置され、第1の構成要素を第2の構成要素に接合している。重合性イオン液体は、酸官能性モノマー及びイミダゾール化合物の共役酸を含む。表面積当たりの接着仕事量によって測定される、第1の成分を第2の成分から分離するのに必要とされる労力は、接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによって低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電性表面を有する第1の構成要素と、
第2の表面を有する第2の構成要素と、
前記第1の導電性表面と前記第2の表面との間に配置された接着剤組成物であって、硬化した重合性イオン液体を含む、接着剤組成物と、を含み、
前記接着剤組成物が、前記第1の構成要素を前記第2の構成要素に接合しており、
表面積当たりの接着仕事量によって測定される、前記第1の構成要素を前記第2の構成要素から分離するのに必要とされる労力が、前記接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによって低減され、
前記重合性イオン液体が、
重合性アニオンと、式Iのイミダゾール化合物
【化1】
(式中、
Zは、ケトン、エステル、アミド、ニトリル、又はアズラクトン官能基を含み、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1~C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、好ましくはHであり、
R
8は、2位、4位又は5位で置換されていてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、wは、0、1、2又は3であり、
ただし、Zがニトリル又はアズラクトン官能基を含む場合、R
1及びR
2はHである)
の共役酸に対応するカチオンと、を含む、物品。
【請求項2】
R
1がHであり、R
2がHであり、R
3がHであり、wが0であり、Zがエステルである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
Zが-C(O)-O-R
10であり、R
10がヒドロカルビル基であり、前記ヒドロカルビルが、任意にヒドロキシル基で置換されている、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記重合性アニオンが、エチレン性不飽和重合性基と、カルボン酸基(-COOH)、スルホン酸基(-SO
3H)、硫酸基(-SO
4H)、ホスホン酸基(-PO
3H
2)、リン酸基(-OPO
3H)、又はこれらの塩から選択される酸性基と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記重合性アニオンが、エチレン性不飽和重合性基及びカルボン酸基(-COOH)を含む、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記重合性イオン液体が、任意のモノマー成分を更に含み、前記任意のモノマー成分が、前記任意のモノマー成分の総重量に基づいて、
i.60重量%~99.5重量%の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、
ii.0重量%~30重量%の非酸性官能性エチレン性不飽和極性モノマーと、
iii.0重量%~20重量%の多官能性(メタ)アクリレートと、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記重合性イオン液体が、2重量%~75重量%の前記カチオンと、1重量%~35重量%の前記重合性アニオンと、5重量%~95重量%の前記任意のモノマー成分と、を含む、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記重合性イオン液体が、光開始剤を更に含む、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記第1の構成要素が、第1の非導電性材料と、前記第1の導電性表面を提供するための第1の導電性コーティングと、を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記第2の構成要素の第2の表面が、第2の導電性表面である、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記第2の構成要素が、第2の非導電性材料と、前記第2の導電性表面を提供するための第2の導電性コーティングと、を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記第1の導電性表面及び第2の導電性表面がそれぞれ、金属、混合金属、合金、金属酸化物、複合金属、導電性プラスチック、導電性ポリマー、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10又は11に記載の物品。
【請求項13】
前記第1の導電性表面の組成が、前記第2の導電性表面の組成とは異なる、請求項10~12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
前記第1の導電性表面の組成が、前記第2の導電性表面の組成と同じである、請求項10~12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
前記接着剤組成物が、
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを有するキャリアと、
前記キャリアの第1の主面上にある、硬化した第1の重合性イオン液体を含む第1の接着剤組成物と、
前記キャリアの第2の主面上にある、硬化した第2の重合性イオン液体を含む第2の接着剤組成物と、
を含む両面接着剤であり、
前記第1の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第1の構成要素の第1の導電性表面と接触しており、
前記第2の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第2の構成要素の第2の表面と接触しており、
前記第1及び第2の重合性イオン液体のそれぞれが、
重合性アニオンと、式Iのイミダゾール化合物
【化2】
(式中、
Zは、ケトン、エステル、アミド、ニトリル、又はアズラクトン官能基を含み、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1~C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、好ましくはHであり、
R
8は、2位、4位又は5位で置換されていてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、wは、0、1、2又は3であり、
ただし、Zがニトリル又はアズラクトン官能基を含む場合、R
1及びR
2はHである)
の共役酸に対応するカチオンと、を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
前記キャリアが、多孔質材料である、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記キャリアが、紙、織布若しくは不織布、多孔質フィルム、金属メッシュ、金属格子、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
前記キャリアが、導電性材料である、請求項15に記載の物品。
【請求項19】
前記キャリアが、金属メッシュ、金属格子、金属箔、金属板、導電性ポリマー、導電性発泡体、導電性ティッシュ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記第1の重合性イオン液体の組成が、前記第2の重合性イオン液体の組成と同じである、請求項15~19のいずれか一項に記載の物品。
【請求項21】
前記第1の重合性イオン液体の組成が、前記第2の重合性イオン液体の組成とは異なる、請求項12~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項22】
前記第2の構成要素の第2の表面が非導電性表面であり、前記接着剤組成物が、
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを有するキャリアと、
前記キャリアの第1の主面上にある、硬化した第1の重合性イオン液体を含む第1の接着剤組成物と、
前記キャリアの第2の主面上にある、硬化した第2の重合性イオン液体を含む第2の接着剤組成物と、
を含む両面接着剤であり、
前記第1の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第1の構成要素の第1の導電性表面と接触しており、
前記第2の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第2の構成要素の第2の表面と接触しており、
前記キャリアが導電性であり、
前記第1及び第2の重合性イオン液体のそれぞれが、
重合性アニオンと、式Iのイミダゾール化合物
【化3】
(式中、
Zは、ケトン、エステル、アミド、ニトリル、又はアズラクトン官能基を含み、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1~C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、好ましくはHであり、
R
8は、2位、4位又は5位で置換されていてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、wは、0、1、2又は3であり、
ただし、Zがニトリル又はアズラクトン官能基を含む場合、R
1及びR
2はHである)
の共役酸に対応するカチオンと、を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
前記キャリアが、多孔質材料である、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記キャリアが、金属メッシュ、金属格子、金属箔、金属板、導電性ポリマー、導電性発泡体、導電性ティッシュ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の物品。
【請求項25】
前記第1の重合性イオン液体の組成が、前記第2の重合性イオン液体の組成と同じである、請求項22~24のいずれか一項に記載の物品。
【請求項26】
前記第1の重合性イオン液体の組成が、前記第2の重合性イオン液体の組成とは異なる、請求項22~24のいずれか一項に記載の物品。
【請求項27】
前記接着剤組成物とは反対側の前記第1の構成要素の上にある第1の外側接着剤、前記接着剤組成物とは反対側の前記第2の構成要素の上にある第2の外側接着剤、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の物品。
【請求項28】
前記第1の外側接着剤及び第2の外側接着剤のうちの少なくとも1つが、感圧接着剤を含む、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記第1の構成要素とは反対側の前記第1の外側接着剤の上に、前記第2の構成要素とは反対側の前記第2の外側接着剤の上に、又はこれらの組み合わせの上にある剥離ライナーを更に含む、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
前記第1及び第2の構成要素のうちの少なくとも1つが、三次元体である、請求項1~29のいずれか一項に記載の物品。
【請求項31】
前記第1及び第2の構成要素のうちの少なくとも1つが、二次元体である、請求項1~30のいずれか一項に記載の物品。
【請求項32】
前記第1の構成要素及び第2の構成要素のうちの少なくとも1つが、リサイクル可能な構成要素である、請求項1~31のいずれか一項に記載の物品。
【請求項33】
前記第1の構成要素を前記第2の構成要素から分離するために必要とされる労力が、0V及び-25Vで100秒間における表面積当たりの接着仕事量の%変化によって測定されるとき、少なくとも20%である、請求項1~32のいずれか一項に記載の物品。
【請求項34】
請求項1に記載の物品中の構成要素を分離するための方法であって、前記方法が、前記接着剤組成物にわたってDC電位を印加して、前記第1の構成要素を前記第2の構成要素から分離させることを含む、方法。
【請求項35】
前記第2の構成要素の第2の表面が第2の導電性表面であり、前記第1の導電性表面又は第2の導電性表面が負極として機能し、前記第1の導電性表面又は第2の導電性表面の他方が正極として機能し、前記方法が、DC電位を印加して、それにより前記接着剤組成物を前記負極から剥離させ、前記第1の構成要素の前記第2の構成要素からの分離を生じさせることを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記接着剤組成物が、
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを有するキャリアと、
前記キャリアの第1の主面上にある、硬化した第1の重合性イオン液体を含む第1の接着剤組成物と、
前記キャリアの第2の主面上にある、硬化した第2の重合性イオン液体を含む第2の接着剤組成物と、
を含む両面接着剤であり、
前記第1の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第1の構成要素の第1の導電性表面と接触しており、
前記第2の接着剤組成物の、前記キャリアとは反対側の表面が、前記第2の構成要素の第2の表面と接触しており、
前記キャリアが導電性であり、
前記第1の導電性表面又はキャリアが負極として機能し、前記第1の導電性表面又はキャリアの他方が正極として機能し、
前記第1及び第2の重合性イオン液体のそれぞれが、
重合性アニオンと、式Iのイミダゾール化合物
【化4】
(式中、
Zは、ケトン、エステル、アミド、ニトリル、又はアズラクトン官能基を含み、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1~C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、好ましくはHであり、
R
8は、2位、4位又は5位で置換されていてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、wは、0、1、2又は3であり、
ただし、Zがニトリル又はアズラクトン官能基を含む場合、R
1及びR
2はHである)
の共役酸に対応するカチオンと、を含み、
前記方法が、DC電位を印加して、それにより前記接着剤組成物を前記負極から剥離させ、前記第1の構成要素の前記第2の構成要素からの分離を生じさせることを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記接着剤組成物の厚さが、10μm~2mmの範囲である、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記印加される電位が、最大1600V/mmである、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、オンデマンド剥離挙動を示す接着剤によって互いに接合された2つ以上の構成要素を含有する物品に関し、より詳細には、接着剤に電位を印加することによって2つ以上の構成要素に分離することができる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)を含む接着剤は、電子産業、自動車産業、航空宇宙産業、研磨産業、医療機器産業、及び包装産業を含む様々な産業において、部品を組み立てられた物品に結合するために一般的に使用される。物品中の構成要素間の接着剤の結合強度は、特定の用途のための所望の性能特性を達成するために重要である。多くの用途において、接着剤は、使用中の構成要素の分離又は剥離を防止するために高い剥離強度を示さなければならない。例えば、接着剤は、自動車又はトラックの側面にトリムを結合するために自動車産業において使用され得る。他の用途では、接着剤は再加工可能又は再配置可能でなければならない。典型的には、PSAは、別の構成要素よりも1つの構成要素により強く接着し、したがって、接着剤がより強く接着する構成要素の再配置又は交換を可能にする。例えば、PSAは、携帯電話、パーソナルコンピュータ、又はコンピュータタブレットなどの電子デバイスに保護カバーを結合するために使用され得る。物品のコストが高く、保護カバーのコストが比較的低いため、物品の修理、物品の修正、物品上の裏材の再配置、又は結合された物品のリサイクルのために、カバーを取り外す(剥離する)ことが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0003】
剥離のタイミングを制御すること、並びに接着剤が剥離する表面に影響を与えることが可能な接着剤組成物を含有する物品が必要とされている。本開示は、直流(DC)電位の印加によってオンデマンド剥離挙動を示す接着剤組成物によって互いに結合された2つ以上の構成要素を含む物品、及び構成要素を分離するための方法を提供する。接着剤組成物が剥離する表面は、接着剤組成物を横切る電位の方向によって影響され得る。本明細書に記載される物品及び方法は、例えば、高度な製造(例えば、部品を把持し、部品を別の場所に移送し、要求に応じて部品を解放するため)、デバイスメンテナンス(例えば、接着固定されたアクセスパネルを剥離するため)、及び/又は経済的若しくは環境的利益のためのリサイクル(例えば、異なるリサイクルプロセスを必要とする構成要素を分離するため)において使用することができる。
【0004】
第1の実施形態では、本開示は、
第1の導電性表面を有する第1の構成要素と、
第2の表面を有する第2の構成要素と、
第1の導電性表面と第2の表面との間に配置された接着剤組成物であって、硬化した重合性イオン液体を含む、接着剤組成物と、を含み、
接着剤組成物が、第1の構成要素を第2の構成要素に接合しており、
表面積当たりの接着仕事量によって測定される、第1の構成要素を第2の構成要素から分離するのに必要とされる労力が、接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによって低減され、
重合性イオン液体が、
重合性アニオンと、式Iのイミダゾール化合物
【化1】
(式中、
Zは、ケトン、エステル、アミド、ニトリル、又はアズラクトン官能基を含み、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1-C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1-C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、好ましくはHであり、
R
8は、2位、4位又は5位で置換されていてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、wは、0、1、2又は3であり、
ただし、Zがニトリル又はアズラクトン官能基を含む場合、R
1及びR
2はHである)
の共役酸に対応するカチオンと、を含む、物品を提供する。
【0005】
別の実施形態では、本開示は、物品内の構成要素を分離する方法であって、方法が、接着剤組成物にわたってDC電位を印加して、第1の構成要素を第2の構成要素から分離させることを含む、方法を提供する。
【0006】
本明細書で使用される場合、「接着剤組成物」という用語は、DC電位に曝されたときにオンデマンド剥離挙動を示す硬化した重合性イオン液体を含む接着剤又は複合体(例えば、片面又は両面テープ)を意味する。
【0007】
本明細書で使用される場合、「重合性イオン液体」という用語は、
重合性アニオンと、式Iのイミダゾール化合物
【化2】
(式中、
Zは、ケトン、エステル、アミド、ニトリル、又はアズラクトン官能基を含み、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1~C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、好ましくはHであり、
R
8は、2位、4位又は5位で置換されていてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、wは、0、1、2又は3であり
ただし、Zがニトリル又はアズラクトン官能基を含む場合、R
1及びR
2はHである)
の共役酸に対応するカチオンと、を含む組成物を意味する。
【0008】
重合性イオン液体は、任意に、それとブレンドされる1つ以上の追加の成分を含んでもよい。
【0009】
本明細書で使用される場合、「オンデマンド剥離」という用語は、接着接合された構成要素の分離(すなわち、剥離)を容易にする目的で、接着結合の強度を自由自在に低減する能力を意味する。
【0010】
本明細書で使用される場合、「感圧接着剤」又は「PSA」という用語は、以下の性質を有すると定義される:(1)アグレッシブで持続的な粘着性、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体に取り付く十分な能力、並びに(4)被着体からきれいに取り外し可能であるために十分な凝集力。PSAとして良好に機能することが見出されている材料としては、所望のバランスの粘着性、剥離接着性、及び剪断保持力をもたらす、必要な粘弾性特性を示すように設計及び配合されたポリマーが挙げられる。PSAは、通常は、室温で粘着性であることを特徴とする。PSAは、粘着性のDahlquist基準を満たす接着剤であり、これは、25℃及び1ヘルツ(6.28ラジアン/秒)で測定したときの剪断貯蔵弾性率が、典型的には3×105Pa(300kPa)以下であることを意味する。PSAは、典型的には、室温で、接着性、凝集力、従順性、及び弾性を呈する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「導電性(conductive)」及び「導電性(electrically conductive)」という用語は、互換的に使用される。
【0012】
本明細書で使用される場合、「負極」及び「負の接着界面」という用語は互換的に使用され、「正極」及び「正の接着界面」という用語は互換的に使用される。
【0013】
本明細書で使用される場合、「重合性」という用語は、熱分解、酸化還元反応、又は光分解による開始の結果として、重合性及び/又は架橋性である「モノマー」とも呼ばれる化合物に適用される。このような化合物は、少なくとも1つのα,β-不飽和部位を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上のα,β-不飽和部位を有するモノマーは「架橋剤」と称されるが、用語「モノマー」には、状況に応じて適切に1つ以上のこのような部位を有する化合物が含まれることが理解されよう。
【0014】
本明細書で使用される場合、「実質的な」又は「実質的に」という用語は、述べられた性質、値、値の範囲、含量、式などからの比較的小さな変動又は収差を意味し、所与の組成物、物品、製品、又は方法の所望の特性に実質的に影響を及ぼさない追加の材料、より広い範囲の値などの存在を排除するものではない。
【0015】
本明細書では、用語「を含む」及びその変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、記述される1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを示唆するが、いかなる他の1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も除外されないことを示唆すると理解される。「からなる(consisting of)」は、この語句「からなる」の前のあらゆるものを含み、これらに限定することを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」は、この語句の後に列挙されたあらゆる要素、及びこれらの列挙された要素に関して本開示で特定した活性又は作用に干渉も寄与もしない他の要素に限定されるあらゆる要素を含むことを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよい、又は、しなくてもよいことを示す。
【0016】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、一般分類を含み、その一般分類の具体例は、例示のために使用し得る。用語「a」、「an」及び「the」は、語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」と互換的に使用される。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「又は」は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0018】
また、本明細書では、全ての数は用語「約」によって修飾されるものとみなされ、特定の実施形態では、用語「正確に」によって修飾されるものとみなされる。本明細書で使用される場合、測定した量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。本明細書では、「最大」数字(例えば、最大50)は、その数(例えば、50)を含む。
【0019】
また、本明細書においては、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0020】
本明細書全体にわたる「いくつかの実施形態」への言及は、実施形態に関して記載された特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書全体における様々な箇所でのこのような語句の出現は、必ずしも本開示の同一の実施形態を指しているわけではない。更に、特定の機能、構成、組成、又は特徴は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせてもよい。
【0021】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の恩恵を与え得る本開示の実施形態について言及するが、同じ又は他の状況下では、他の実施形態が好ましいこともある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0022】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本出願の1つの例示的な物品の概略側面図である。
【
図2A】本出願の別の例示的な物品の概略側面図である。
【
図3】実施例E4の引張力(ニュートン)(y軸)対0.01mm/秒の速度で分離されている2枚の8mmステンレス鋼板間の距離(ミリメートル)(x軸)のプロットである。
【
図4】印加されたDC電圧(y軸)及びプレートを分離する前に電圧が印加された持続時間(x軸)の関数としての、実施例E2の引張接着試験からの単位表面積当たりの接着仕事量(スケール上の陰影によって示される)の等高線表面プロットである。
【0024】
図を参照するとき、100の倍数を外したときに同様の参照番号(例えば、12と112又は30と130)は、同様の要素を示す。特に指示がない限り、本文書における全ての図及び図面は、縮尺どおりではなく、本発明の異なる実施形態を例示する目的で選択される。特に、様々な部材の寸法は、例示的な用語でしか記述されておらず、様々な部材の寸法間の関係は、指示がない限り、図面から推測されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示的な実施形態の以下の説明では、本明細書の一部を形成し、例示として特定の実施形態が示されている添付の図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造上の変更を加えることができることを理解されたい。
【0026】
本開示の物品は、一般に、第1の導電性表面を有する第1の構成要素と、第2の表面を有する第2の構成要素と、第1の導電性表面と第2の表面との間に配置された接着剤組成物とを含む。接着剤組成物(以下でより詳細に説明する)は、硬化した重合性イオン液体を含む接着剤を含み、DC電位に曝されたときにオンデマンド剥離挙動を示す。例えば、試験法2に従って表面積当たりの接着仕事量によって測定される、第1の構成要素を第2の構成要素から分離するための労力は、接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによって低減される。
【0027】
本開示における物品の形状及び形態は特に限定されない。物品は、完成品であってもよいし、別の物体に組み込まれるか又は取り付けられる部品であってもよい。物品は、典型的には、互いに接着結合され得る少なくとも2つの構成要素から構成され、物品は、二次元体又は三次元体の形状であり得る。同様に、物品を構成する構成要素の形状及び形態も特に限定されない。構成要素は、単一の要素又は要素の組合せであり得、構成要素は、二次元体又は三次元体であり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の構成要素が相互接続されるか、又は更には同じ材料の2つの異なる部分が相互接続される(例えば、材料の複合ストリップの一方の端部が、ストリップの反対側の端部に接着するように折り重ねられ得る)。
【0028】
接着剤組成物によって互いに接合された構成要素の分離を容易にするために、構成要素の分離前に接着剤組成物にわたってDC電位が印加される。例えば、電位は、一方の構成要素の表面が負極(又は負の接着界面)として機能し、他方の構成要素の表面が正極(又は正の接着界面)として機能するように、接着剤組成物の両側の2つの導電性構成要素にわたって印加されてもよい。あるいは、電位は、導電性構成要素又は導電性接着剤キャリアの表面が負の接着界面として機能し、導電性構成要素又は導電性接着剤キャリアの表面の他方が正の接着界面として機能する、両面テープの1つの導電性構成要素及び導電性接着剤キャリアにわたって印加されてもよい。DC電流の印加は、典型的に、負の接着剤界面における接着剤結合を弱め、したがって、物品内の構成要素を分離するために必要とされる労力の量を低減する。剥離の位置は、単に電位の極性を変えることによって逆にすることができる。
【0029】
図1は、接着剤組成物によって互いに接合された2つの導電性構成要素を含む本開示の物品の一実施形態を示す。
図1Aを参照すると、物品10は、第1の導電性表面14を有する第1の構成要素12と、第2の導電性表面24を有する第2の構成要素22と、を含む。第1及び第2の構成要素12、22はそれぞれ、導電性材料から作製される。導電性材料の性質は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、第1の導電性表面14及び第2の導電性表面24はそれぞれ、金属、混合金属、合金、金属酸化物、複合金属、導電性プラスチック、導電性ポリマー、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の導電性表面14の組成は、第2の導電性表面24の組成とは異なる。他の実施形態では、第1及び第2の導電性表面14、24の組成は同じである。
【0030】
接着剤組成物30は、第1の導電性表面14及び第2の導電性表面24において、第1及び第2の構成要素12、22を互いに接合する。接着剤組成物は、接着剤組成物30全体にDC電位を印加することによって、オンデマンド剥離挙動を示す。この特定の実施形態では、第1の導電性表面14は正の接着界面として機能し、第2の導電性表面24は負の接着界面として機能する。接着剤組成物30にわたるDC電位40の印加は、例えば、表面積当たりの接着仕事量に従って測定されるように、負の接着界面(すなわち、第2の導電性表面24)における接着結合の弱化をもたらし、したがって、第1の構成要素12から第2の構成要素22を分離することをより容易にする。好ましくは、分離後に第2の導電性表面24上に接着剤残留物がほとんど又は全く残らない。いくつかの実施形態では、(重量で)10%未満、5%未満、又は1%未満の接着剤組成物が、分離後に第2の構成要素22上に残る。いくつかの好ましい実施形態では、分離後に第2の構成要素22上に接着剤組成物が残らない。いくつかの実施形態では、接着剤組成物を再利用することが可能であり、第1の構成要素12を第2の構成要素22に再接合すること、又は完全に異なる構成要素若しくは物品に接着することを可能にする。分離後に接着剤が第2の構成要素22上に残ることが望ましい場合、DC電位の極性を逆にして、それにより第1の導電性表面14を負の接着界面として機能させることができる。
【0031】
導電性構成要素は、
図1Aに示すように、全体が導電性材料から作られた構成要素と、
図1Bに示すように、導電性材料でコーティングされた非導電性材料から作製された構成要素と、を含む。
図1Bを参照すると、第1の構成要素12は、第1の導電性表面14を提供するために、第1の非導電性材料16及び第1の導電性コーティング18を含む。同様に、第2の構成要素22は、第2の導電性表面24を提供するために、第2の非導電性材料26及び第2の導電性コーティング28を含む。代替的に(図示せず)、構成要素のうちの1つは、全体的に導電性材料から作製され得、他の構成要素は、導電性材料でコーティングされた非導電性材料から作製され得る。導電性コーティングは、
図1Bに示すように、構成要素を部分的にのみコーティングしてもよく、又は構成要素の外側表面を完全にコーティングしてもよい。本開示の目的のために、DC電位が接着剤組成物にわたって印加されるとき、接着剤組成物と直接接触する構成要素の表面が、負の接着界面における接着結合を弱めるために十分にコーティングされることのみが必要である。いくつかの実施形態では、コーティングは固体層である。他の実施形態では、コーティングは、構成要素の表面上にパターンコーティングされる。上述したように、導電性材料は特に限定されず、金属、混合金属、合金、金属酸化物、複合金属、導電性プラスチック、導電性ポリマー、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含むことができる。
【0032】
図1Bの接着剤組成物30は、第1及び第2の構成要素12、22を互いに接合する。第1の導電性表面14は正の接着界面として機能し、第2の導電性表面24は負の接着界面として機能する。接着剤組成物30にわたるDC電位40の印加は、例えば、表面積当たりの接着仕事量に従って測定されるように、負の接着界面(すなわち、第2の導電性表面24)における接着結合の弱化をもたらし、したがって、第1の構成要素12から第2の構成要素22を分離することをより容易にする。接着剤組成物が主に第2の構成要素上に残ることが望ましい場合、DC電位の極性を逆にして、それにより第1の導電性表面を負の接着界面として機能させることができる。
【0033】
図1A~Bの物品は、
図1Cに示すように、接着剤組成物を使用して非導電性物体又は要素を接合し、続いて剥離するように更に適合させることができる。
図1Cの物品は、第1の導電性表面14を有する導電性の第1の構成要素12と、第2の導電性表面24を有する導電性の第2の構成要素22とを含む。第1及び第2の構成要素12、22は、接着剤組成物30によって互いに接合される。第1及び第2の構成要素は、導電性材料から作製され得るが、第1及び/又は第2の構成要素は、
図1Bに図示されるように、非導電性材料から作製され、導電性材料でコーティングされ得ることも理解されるべきである。
図1Cは、第1の外側接着剤50が接着剤組成物30と反対側の第1の構成要素12の第2の側19に添加され、第2の外側接着剤60が接着剤組成物30と反対側の第2の構成要素22の第1の側29に加えられるという点で
図1A~Bと異なる。外側接着剤50、60は、同じであっても異なっていてもよく、外側接着剤50、60が非導電性物体又は要素に結合し、意図された用途のために機能する限り、特に限定されない。いくつかの実施形態では、外側接着剤は、感圧接着剤である。いくつかの更なる実施形態において、外側接着剤は、本明細書で定義されるような接着剤組成物である。物品の輸送及び保管中に外側接着剤を保護するために、任意の剥離ライナー(図示せず)を第1の外側接着剤50、第2の外側接着剤60、又はその両方に適用してもよい。いくつかの実施形態では、剥離ライナーが、第1及び第2の外側接着剤のそれぞれに適用される。他の実施形態では、保管及び輸送の目的で外側接着剤のうちの1つに剥離ライナーが適用され、物品がそれ自体に巻かれていることにより、他の外側接着剤が剥離ライナーの剥離剤と直接接触している。次いで、接着剤組成物は、使用の準備ができたときに巻き出すことができる。剥離ライナーは、例えば、クラフト紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、又はこれら材料のうちのいずれかの複合材で作製することができる。これらのライナーは、好ましくは、フルオロケミカル又はシリコーンなどの、剥離剤でコーティングされている。いくつかの好ましい実施形態では、ライナーは、シリコーン剥離材でコーティングされた紙、ポリオレフィンフィルム、又はポリエステルフィルムである。市販の剥離ライナーの例としては、Loparex(Cary,NC)から入手可能なPOLYSLIK(商標)シリコーン剥離紙、Infiana(Forchheim,Germany)製のSilicone 1750コーティングフィルム、H.P.Smith Co.(Stoneham,MA)から入手可能なシリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び3M Company(St.Paul,MN)製の3M Scotchpak(商標)9741剥離ライナーが挙げられる。
【0034】
図1Cに示す実施形態では、第1及び第2の構成要素は、二次元(例えば、シート又は多層フィルム)である。しかしながら、それは必須ではなく、構成要素の一方又は両方が三次元体である用途(例えば、非導電性物体を着座させるための成形されたくぼみなどの特別な取付け特徴)を考えることができる。実際には、任意の剥離ライナーの1つが第1の外側接着剤50から除去され、第1の外側接着剤が非導電性物体に接着される。次いで、第2の任意の剥離ライナーが第2の外側接着剤60から除去され、第2の外側接着剤60が異なる非導電性物体に接着されて、非導電性物体が接着接合される。非導電性物体は、
図1A~Bに図示するように、接着剤組成物全体に電位を印加することによってオンデマンドで分離することができる。この場合、分離により、第1の構成要素が接着接合された一方の非導電性物体と、第2の構成要素が接着接合された他方の非導電性物体と、が得られる。
【0035】
図2は、接着剤組成物が第1及び第2の構成要素を互いに接合する両面テープである、本出願の物品110の別の実施形態を示す。
【0036】
図2Aを参照すると、物品110は、第1の導電性表面114を有する第1の構成要素112と、第2の導電性表面124を有する第2の構成要素122と、を含む。第1及び第2の構成要素は、
図2Aに図示するように、導電性材料(複数可)から作製することができるか、又は第1及び第2の構成要素の一方又は両方は、
図1に関して上記で記載されるように、非導電性材料(複数可)から作製し、少なくとも部分的に導電性材料(複数可)でコーティングすることができる。接着剤組成物130は、第1の導電性表面114と第2の導電性表面124との間に配設され、第1の構成要素112を第2の構成要素122に結合する。
【0037】
接着剤組成物130は、第1の主面172と、第1主面とは反対側の第2の主面174を有するキャリア170とを更に含む両面接着剤である。硬化した第1の重合性イオン液体を含む第1の接着剤組成物132は、キャリア170の第1の主面172上にある。同様に、硬化した第2の重合性イオン液体を含む第2の接着剤組成物134は、キャリア170の第2の主面174上にある。いくつかの実施形態では、第1の重合性イオン液体の組成は、第2の重合性液体の組成と同じである。他の実施形態では、第1の重合性液体の組成は、第2の重合性液体の組成とは異なる。第1の接着剤組成物132の、キャリア170とは反対側の表面136は、第1の構成要素112の第1の導電性表面114と接触している。第2の接着剤組成物134の、キャリア170とは反対側の表面138は、第2の構成要素122の第2の導電性表面124と接触している。
【0038】
いくつかの実施形態では、キャリアは、第1の接着剤組成物と第2の接着剤組成物との間の物理的接触を可能にする多孔質材料である。例示的なキャリアとしては、紙、織布若しくは不織布、多孔質フィルム、金属メッシュ、金属グリッド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、キャリアは導電性である。そのような導電性キャリアは、多孔質又は非多孔質であってもよく、金属メッシュ、金属格子、金属箔、金属板、導電性ポリマー、導電性発泡体、導電性ティッシュ(conductive tissue)、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0039】
図2Aに示される実施形態では、第1の導電性表面114は正の接着界面として機能し、第2の導電性表面124は負の接着界面として機能する。キャリアが多孔質材料から作成される場合、接着剤組成物130にわたるDC電位140の印加は、例えば、表面積当たりの接着仕事量に従って測定されるように、負の接着界面(すなわち、第2の導電性表面124)における接着結合の弱化をもたらし、したがって、第1の構成要素112から第2の構成要素122を分離することをより容易にする。接着剤組成物を第1の構成要素から分離することが望ましい場合、DC電位の極性を逆にして、それにより第1の導電性表面を負の接着界面として機能させることができる。
【0040】
図2Aのキャリアが非多孔質導電性材料であるとき、接着剤組成物130にわたるDC電位140の印加は、負の接着剤界面(すなわち、第2の導電性表面124)及びキャリア170の第1の主面172における接着剤接合の弱化をもたらし得る。
【0041】
別の実施形態では、キャリア170は、剥離プロセス中に正又は負の接着界面のいずれかとして機能する導電性材料である。例えば、
図2Bを参照すると、第1の構成要素112の第1の導電性表面114は正の接着界面であり、キャリア170の第1の主面172は負の接着界面である。第1の接着剤組成物132にわたってDC電位140を印加すると、キャリア170の第1の主面172において第1の構成要素112と第2の構成要素122とが分離する。あるいは、第1の構成要素112は、DC電位の極性を反転させることによって、第1の接着剤組成物132から除去することができる。
【0042】
追加の実施形態では、第2の構成要素122の導電性表面124又はキャリア170の第2の主面174は、負の接着界面とすることができ、第2の構成要素122の導電性表面124又はキャリア170の第2の主面174の他方は、正の接着界面とすることができる。
【0043】
図2Bを参照すると、キャリア170が負又は正の接着界面として機能し、第1の構成要素112の第1の導電性表面114が負又は正の接着界面の他方として機能する場合、DC電位が印加される第1の接着剤組成物132のみが硬化重合性イオン液体を含む必要があることが理解されるべきである。第2の接着剤組成物134は、実際には、任意のタイプの接着剤であり得る。同様に、キャリア170が負又は正の接着界面として機能し、第2の構成要素122の第2の導電性表面124が負又は正の接着界面の他方として機能する場合、DC電位が印加される第2の接着剤組成物134のみが硬化重合性イオン液体を含む必要がある。第1の接着剤組成物132は、実際には、任意のタイプの接着剤であり得る。したがって、このような実施形態では、両面テープを使用して、接着剤の一方のみが硬化重合性イオン液体を含む、両面に接着剤を有するキャリアを含む物品を作製することができる。この構造は、第2の構成要素22がキャリアである
図1Cに図示されるものと同様である。
【0044】
上に示したように、導電性キャリアを有する両面テープは、ユーザが物品内の剥離位置をより戦略的に調整することを可能にする。これは、リサイクル前に構成要素から接着剤を除去する必要があるとき、及び/又は同じ若しくは異なる物品への再位置決め又は接着のために構成要素上に接着剤を残す必要があるときに特に有利である可能性がある。
【0045】
更に、導電性キャリアを有する両面テープを使用することによって、第1の構成要素を第2の構成要素から分離するために、構成要素のうちの少なくとも1つが導電性である必要はない。キャリアは、電極のうちの1つとして機能することができ、したがって、物品に含まれ得る材料のタイプを増加させる(すなわち、2つの導電性構成要素を接着するか、又は導電性構成要素を非導電性構成要素に接着する)。
【0046】
上記の実施形態は、本開示の物品の例示的な構成、及びこれらの物品内の構成要素を剥離する方法を示す。ここで、接着剤組成物を更に詳細に説明する。
【0047】
接着剤組成物
本開示の接着剤組成物は、硬化重合性イオン液体を含む。重合性イオン液体は、
重合性アニオンと、式Iのイミダゾール化合物
【化3】
(式中、
Zは、ケトン、エステル、アミド、ニトリル、又はアズラクトン官能基を含み、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1-C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、好ましくはHであり、
R
8は、2位、4位又は5位で置換されていてもよい(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、wは、0、1、2又は3であり、
ただし、Zがニトリル又はアズラクトン官能基を含む場合、R
1及びR
2はHである)
の共役酸に対応するカチオンと、を含む。
【0048】
Zがアズラクトン官能基である式Iの実施形態では、Zは次式のものである:
【化4】
(式中、
各R
9は、独立して、H、又は1個~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは0又は1である)。
【0049】
Zがエステル、アミド又はケトン官能基を含む他の実施形態では、Zは式-C(O)-(X1)a-R10のものである(式中、R10は、(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、この(ヘテロ)ヒドロカルビルは、任意に1つ以上のヒドロキシル基で置換されており、X1は、-O-又は-NR6-であり、R6は、H又はC1~C6アルキルであり、aは、0又は1である)。好ましくは、R10はヒドロカルビル基であり、より好ましくは、R10は1~25個の炭素原子のアルキル基である。R10は、任意にヒドロキシル基で置換されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、R1はHであり、R2はHであり、R3はHであり、wは0であり、Zはエステルである。同じ又は異なる実施形態では、Zが-C(O)-O-R10であり、R10がヒドロカルビル基であり、このヒドロカルビルが、任意にヒドロキシル基で置換されている。
【0051】
本明細書で使用するとき、
「アクリロイル」は一般的な意味で用いられ、アクリル酸の誘導体だけなくアミン誘導体及びアルコール誘導体もそれぞれ意味する;
「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイル基の両方を含み、すなわち、エステル及びアミドの両方を含む。
【0052】
「ポリ(メタ)アクリロイル」は、マイケルアクセプターとして機能し得る2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。
【0053】
「硬化性」とは、コーティング可能な材料が、冷却(ホットメルトを固化させるため)、加熱(溶媒中で材料を乾燥及び固化させるため)、化学架橋、放射線架橋などによって、固体の実質的に非流動性の材料に変換され得ることを意味する。
【0054】
「アルキル」は、直鎖、分枝状、及び環状アルキル基を含み、非置換と置換アルキル基の両方を含む。別段の指示がない限り、アルキル基は、典型的には、1個~20個の炭素原子を含有する。本明細書で使用される場合、「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル及びノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途注記のない限り、アルキル基は、一価であっても多価であってもよい。
【0055】
「ヘテロアルキル」は、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方とともにS、O及びNから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を有する直鎖、分枝状、及び環状のアルキル基をいずれも包含する。別段の指示がない限り、ヘテロアルキル基は、典型的には、1個~20個の炭素原子を含有する。「ヘテロアルキル」は、下記の「1つ以上のS、N、O、P、又はSi原子を含有するヒドロカルビル」の部分集合である。本明細書で使用するとき、「ヘテロアルキル」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、3,6-ジオキサヘプチル、3-(トリメチルシリル)-プロピル、及び4-ジメチルアミノブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途注記のない限り、ヘテロアルキル基は、一価であっても多価であってもよい。
【0056】
「アリール」は、6個~18個の環原子を含有する芳香族基であり、任意の縮合環を含有してもよく、これは、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルが挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素、又は硫黄などの1個~3個のヘテロ原子を含有するアリールであり、縮合環を含有してもよい。ヘテロアリール基のいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンゾチアゾリル(benzthiazolyl)である。別途注記のない限り、アリール及びヘテロアリール基は、一価であっても多価であってもよい。
【0057】
「(ヘテロ)ヒドロカルビル」は、ヒドロカルビルアルキル基及びアリール基、並びにヘテロヒドロカルビルヘテロアルキル基及びヘテロアリール基を包括し、後者はエーテル基又はアミノ基などの、カテナリー酸素ヘテロ原子を1つ以上含む。ヘテロヒドロカルビルは、任意に、エステル官能基、アミド官能基、尿素官能基、ウレタン官能基、及びカーボネート官能基などの、1つ以上の懸垂型(鎖中)官能基を含有し得る。特に指示がない限り、非ポリマー(ヘテロ)ヒドロカルビル基は、典型的には、1個~60個の炭素原子を含有する。本明細書で用いられるようなヘテロヒドロカルビルのいくつかの例としては、これらに限定されるものではないが、上記の「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」について記載されたものに加え、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、4-ジフェニルアミノブチル、2-(2’-フェノキシエトキシ)エチル、3,6-ジオキサヘプチル、3,6-ジオキサヘキシル-6-フェニルが挙げられる。
【0058】
式Iのイミダゾール化合物は、イミダゾール化合物とマイケルアクセプター化合物とのマイケル付加生成物であり、すなわち、α、β-不飽和エステル、アミド、ケトン、ニトリル及びアズラクトンといった、電子不足二重結合及び電子吸引性官能基を有する化合物である。αβこのような化合物は、スキームIに記載されるように調製され得る。
【化5】
(式中、
Zは、ケトン、エステル、アミド、ニトリル、又はアズラクトン官能基を含み、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1-C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、
R
8は、アルキル及びアリールを含む(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくはアルキル基であり、wは0、1、2又は3である)。
【0059】
例示的なマイケルアクセプター化合物としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール;3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、シトロネロール、及びジヒドロシトロネロールなどの非第三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。他の例示的マイケルアクセプターとしては、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N-オクチルアクリルアミド、及びプロピルメタクリレートが挙げられる。更に他の例示的なマイケルアクセプター化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、及びポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート(例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート)が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、イミダゾール化合物は、スキームIIに示すように、ポリ(メタ)アクリロイル化合物へのイミダゾール化合物のマイケル付加反応によって調製することができる:
【化6】
(式中、
R
1は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、
R
2は、H又は-CO-X
1-R
5であり、R
5は、H又はC
1~C
25アルキル基であり、X
1は、-O-又は-NR
6-であり、R
6は、H又はC
1-C
6アルキルであり、
R
3は、H又はCH
3であり、
R
4は、エステル、アミド、ウレタン及び他の官能基を含む1つ以上のカテナリー(鎖内)官能基を更に含み得る(ヘテロ)ヒドロカルビル連結基であり、好ましくは、任意に1つ以上のヒドロキシル基で任意に置換されている、アルキレン、シクロアルキレン、又はこれらの組み合わせを含むヒドロカルビル基であり、
R
8は、(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、wは、0、1、2、又は3であり、
X
1は、-O-又はNR
6-であり、R
6が、H又はC
1~C
6アルキルであり、
xは1~6であり、好ましくは1~4であり、
yは、0~2であり、
vは、x+yである)。
【0061】
例示したように(上記)、式IIの化合物は、ポリアクリロイル化合物へのイミダゾール化合物のマイケル付加によって調製することができる。有用なフルオロケミカル一官能性化合物としては、次式:
【化7】
のものが含まれる
(式中、各X
1は、アルキレン、-O-、又は-NR
6-から選択され、各R
6は、独立して、H又は1個~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
R
1、R
2及びR
3は、スキームIIについて上に列挙したものと同じであり、
R
4は、エステル、アミド、ウレタン及び他の官能基を含む1つ以上のカテナリー(鎖内)官能基を更に含み得る(ヘテロ)ヒドロカルビル連結基であり、好ましくは、任意に1つ以上のヒドロキシル基で置換されている、アルキレン、シクロアルキレン、又はこれらの組み合わせを含むヒドロカルビル基であり、
vは1より大きく、好ましくは2以上であり、一般に2~6である)。
【0062】
一実施形態では、R4は、少なくとも2の原子価を有する多価有機基であってもよい。多価基R4の例としては、ブチレン、エチレン、プロピレン、及び4-オキサヘプタレン、ヘキシレン、並びに1,4-ビス(メチル)シクロヘキシレンが挙げられる。1,2-、1,3-及び1,4-ブチレン異性体などの全ての異性体又はアルキレン基が想定される。アルキレンは更にヒドロキシル基で置換されていてもよく、例えば2-ヒドロキシ-1,3-プロピレンである。
【0063】
有用なポリアクリル化合物としては、例えば、(a)ジアクリル含有化合物、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノール-Aジアクリレート、エトキシル化ビスフェノール-Aジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート;(b)トリアクリル含有化合物、例えば、グリセロールトリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;(c)高官能性アクリル含有化合物、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート;(d)オリゴマーアクリル化合物、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート;前述のポリアクリルアミド類似体;及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアクリレートモノマーが挙げられる。
【0064】
そのような化合物は、Sartomer Company,Exton,Pennsylvania;UCB Chemicals Corporation,Smyrna,Georgia;及びAldrich Chemical Company,Milwaukee,Wisconsinなどの供給業者から入手可能である。追加の有用なアクリレート材料としては、ヒダントイン部分含有ポリアクリレート、例えば、米国特許第4,262,072号(Wendlingら)に報告されているものが挙げられる。
【0065】
他の有用なポリアクリル化合物としては、例えば、ペンダント(メタ)アクリル基を有するフリーラジカル重合性アクリレートオリゴマー及びポリマーも挙げられ、(メタ)アクリル基の少なくとも2つはアクリル基である。マイケル型付加に関して、アクリル基とメタクリル基との間に異なる反応性が存在する。マイケル型付加は、典型的には、アクリル基では容易に起こるが、メタクリル基の場合には、起こるとしても困難を伴ってのみ起こり得る。このような理由で、ポリアクリル成分は、典型的には、少なくとも2つのアクリル基(例えば、アクリルオキシ又はアクリルアミド官能基の一部として)を有するが、ポリ(メタ)アクリル化合物はまた、追加の(メタ)アクリル基(例えば、メタクリレート又はメタクリルアミド官能基の一部として)を有してもよい。有利には、アクリル基を介してマイケル付加が起こり、メタクリル基が未反応のまま残る組成物を調製することができる。このような未反応のメタクリル基は、続いてフリーラジカル重合され得る。
【0066】
上記の有用なポリアクリル化合物に関して、対応するアミド又はチオエステルも有用であることが理解されるであろう。多官能性エチレン性不飽和モノマーは、好ましくはアクリル酸のエステルである。より好ましくは、これは、アクリルの二官能性エチレン性不飽和エステル、アクリルの三官能性エチレン性不飽和エステル、アクリルの四官能性エチレン性不飽和エステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。これらのうち、アクリル酸の二官能性及び三官能性エチレン性不飽和エステルがより好ましい。
【0067】
他の有用なアクリレートオリゴマーとしては、アクリル化エポキシ、例えば、エポキシ官能性材料のジアクリレート化エステル(例えば、ビスフェノールAエポキシ官能性材料のジアクリレート化エステル)及びアクリル化ウレタンが挙げられる。有用なアクリル化エポキシとしては、例えば、UCB Chemicals Corporationから商品名「EBECRYL 3500」、「EBECRYL 3600」、「EBECRYL 3700」、及び「EBECRYL 3720」で入手可能なアクリル化エポキシが挙げられる。有用なアクリル化ウレタンとしては、例えば、UCB Chemicals Corporationから商品名「EBECRYL 270」、「EBECRYL 1290」、「EBECRYL 8301」、及び「EBECRYL 8804」で入手可能なアクリル化ウレタンが挙げられる。
【0068】
多官能性エチレン性不飽和モノマーは、好ましくはアクリル酸のエステルである。より好ましくは、これは、アクリルの二官能性エチレン性不飽和エステル、アクリルの三官能性エチレン性不飽和エステル、アクリルの四官能性エチレン性不飽和エステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。これらのうち、アクリル酸の二官能性及び三官能性エチレン性不飽和エステルがより好ましい。
【0069】
アクリル酸の好ましい多官能性エチレン性不飽和エステルは、次式:
【化8】
で表すことができ、R
11は、任意にヒドロキシル基で置換されているアルキレン、シクロアルキレン、又はこれらの組み合わせであり、一般に、R
10はポリオールの残基であり、
vは1より大きく、好ましくは2以上であり、一般に2~6である。
【0070】
アクリル酸の好適な多官能性エチレン性不飽和エステルの例は、例えば、脂肪族ジオールのジアクリル酸及びジメチルアクリル酸エステル、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1-エトキシ-2,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,6-シクロヘキサンジメタノール;脂肪族トリオールのトリアクリル酸エステル、例えば、グリセリン、1,2,3-プロパントリメタノール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5ペンタントリオール、1,3,6-ヘキサントリオール、及び1,5,10-デカントリオール;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリル酸エステル;脂肪族トリオールのテトラアクリル酸エステル、例えば、1,2,3,4-ブタンテトロール、1,1,2,2-テトラメチロールエタン、1,1,3,3-テトラメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールテトラアクリレート;脂肪族ペントールのペンタアクリル酸エステル及びペンタメタクリル酸エステル、例えば、アドニトール;ヘキサノールのヘキサアクリル酸エステル、例えば、ソルビトール及びジペンタエリスリトール;芳香族ジオールのジアクリル酸エステル、例えば、レゾルシノール、ピロカテコール、ビスフェノールA、及びビス(2-ヒドロキシエチル)フタレート;芳香族トリオールのトリアクリル酸エステル、例えば、ピロガロール、フロログルシノール、及び2-フェニル-2,2-メチロールエタノール;及びジヒドロキシエチルヒダントインのヘキサアクリル酸エステル;並びにそれらの混合物を含む、多価アルコールのポリアクリル酸又はポリメタクリル酸エステルである。
【0071】
式IIの化合物は、反応性モノマーとして機能し、したがって、硬化性組成物が基材に適用される時点で硬化性組成物中で実質的に未重合である。したがって、硬化性組成物は、(例えば、多官能性)重合性イオン液体のエチレン性不飽和基の重合による硬化時に硬化する。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態では、式II及びIVの化合物は、それらが反応性希釈剤として作用するように粘度が十分に低い。このような実施形態では、組成物は、有利には、溶媒、特に有機溶媒を実質的に含まなくてもよい。これは、硬化前に組成物を乾燥させることを低減又は排除することによって、製造時間並びにエネルギー消費に関する効率の増加をもたらすことができる。これはまた、組成物の揮発性有機成分(VOC)放出を低減することができる。
【0073】
Zがアズラクトン官能基である式Iの化合物は、スキームIIIに示されるように、アズラクトン化合物へのイミダゾール化合物のマイケル付加によって調製することができる:
【化9】
(式中、
R
1及びR
2は、Hであり、
R
3は、H又はCH
3であり、
R
8は、アルキル及びアリールを含む(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくはアルキル基であり、wは0、1、2又は3であり、
各R
9は、独立して、H、又は1個~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは0又は1である)。
【0074】
重合性イオン液体のアニオン性モノマーは、エチレン性不飽和重合性基及び酸基を有する。酸官能基は、カルボン酸などの酸それ自体であってもよく、又は一部は、その共役塩基であってもよい。イミダゾール化合物の存在下で、これらの酸官能性モノマーは共役塩基を形成する。
【0075】
有用な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0076】
入手が容易なため、酸官能性モノマーは一般にエチレン性不飽和カルボン酸、すなわち(メタ)アクリル酸から選択される。更により強い酸が所望である場合、酸性モノマーとしては、エチレン性不飽和スルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸が挙げられる。所望の最終用途及び最終組成物の物理的特性に依存して、酸官能性モノマーは、イミダゾール基のモル当量に対して5モル当量以上の量で使用され得る。いくつかの実施形態では、酸基対イミダゾール基のモル比は、およそ等モル±20%である。
【0077】
好ましい重合性イオン液体は、高い空気対窒素硬化発熱比を示す。空気対窒素硬化比は、典型的には少なくとも0.70である。好ましい実施形態において、空気対窒素硬化発熱比は、典型的には少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.90である。重合性イオン液体の空気対窒素硬化比が十分に高い実施形態では、重合性イオン液体は、有利には、酸素の不在下での硬化を必要とするのではなく、空気中(すなわち、酸素が豊富な環境)で実質的に完全に硬化することができる。
【0078】
重合性イオン液体はまた、他の従来の(例えば、(メタ)アクリレート)エチレン性不飽和モノマー(複数可)、オリゴマー(複数可)、又はポリマー(複数可)を含んでもよい。「任意のモノマー」とは、重合性イオン液体ではないエチレン性不飽和モノマーを意味し、本明細書でより完全に記載されるように、極性及び非極性モノマー及びオリゴマーを含む。従来のモノマーは重合性であり、多くは25℃で液体であるが、従来のモノマーは典型的には非イオン性であり、カチオン及びアニオンを欠いている。
【0079】
従来の(メタ)アクリレートモノマーは、典型的には、0.50以下、0.40以下、0.35以下、0.20以下、又は0.25以下の空気対窒素硬化発熱比を有する。例えば、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGMA)は、約0.36の空気対窒素硬化発熱比を有することが見出されているが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)は、0.25未満の空気対窒素硬化発熱比を有することが見出されている。従来の(メタ)アクリレートモノマー及び特にメタクリレートモノマーの光硬化は、典型的には、空気中に存在する酸素によって阻害されるが、(例えば、多官能性)重合性イオン液体を含めることにより、混合物の空気から窒素への硬化発熱を十分に増加させることができ、その結果、混合物を有利には空気中で実質的に完全に硬化させることができる。組成物が空気中で硬化され、多官能性重合性イオン液体が、より低い空気対窒素硬化発熱比を示す「任意の」重合性(メタ)アクリレートモノマーと組み合わされる実施形態では、本明細書に記載の(例えば、多官能性)重合性イオン液体の空気対酸素硬化発熱比は、少なくとも0.85、好ましくは少なくとも0.90、より好ましくは少なくとも0.95である。
【0080】
重合性イオン液体組成物は、「任意の」モノマーとして(メタ)アクリレートエステルモノマーを更に含んでもよい。酸官能性(メタ)アクリレート接着剤コポリマーの調製に有用な(メタ)アクリレートエステルモノマーは、非第三級アルコールの(メタ)アクリルエステルモノマーであり、このアルコールは、1個~14個の炭素原子、好ましくは平均して4個~12個の炭素原子を含有する。
【0081】
(メタ)アクリレートエステルモノマーとして用いるのに好適なモノマーの例としては、非三級アルコール、例えばエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、シトロネロール、ジヒドロシトロネロールなどと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なる(メタ)アクリレートエステルモノマーの組み合わせが好適であるが、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーは、ブチルアルコール又はイソオクチルアルコール、又はこれらの組み合わせと、(メタ)アクリル酸とのエステルである。いくつかの実施形態では、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーは、2-オクタノール、シトロネロール、ジヒドロシトロネロール等の再生可能資源に由来するアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステルである。その他の適切なモノマーには、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,137,807号(Clapperら)に記載されているものなどの分岐長鎖アクリレートが含まれる。追加の好適なアルキルモノマーとしては、米国特許第9,102,774号(Clapperら)に記載されているものなどの第二級アルキルアクリレートが挙げられる。
【0082】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが高Tgモノマーを含み、少なくとも25℃、好ましくは少なくとも50℃のTgを有することが望ましい。好適な高Tgモノマーには、本発明において有用な好適なモノマーの例が含まれ、これらには、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N-オクチルアクリルアミド、及びプロピルメタクリレート又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
(メタ)アクリレートエステルモノマーは、ポリマーを調製するのに使用される100部の総「任意の」モノマー含量に基づいて、60重量部~99.5重量部の量で存在する。好ましくは、(メタ)アクリレートエステルモノマーは、合計100重量部のモノマー含量を基準として80重量部~95重量部の量で存在する。高Tgモノマーが含まれるとき、コポリマーは、最大40重量部、好ましくは最大20重量部の、60重量部~99.5重量部の(メタ)アクリレートエステルモノマー成分を含んでもよい。
【0084】
重合性イオン液体は、任意の「他のモノマー」として極性モノマーを更に含んでもよい。コポリマーの調製に有用な極性モノマーは、油溶性と水溶性の両方の性質をある程度有し、その結果、乳化重合中の水相と油相との間に、極性モノマーが分配される。本明細書で使用するとき、用語「極性モノマー」は、酸官能性モノマーを含まない。
【0085】
好適な極性モノマーの代表的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;N-ビニルピロリドン;N-ビニルカプロラクタム;アクリルアミド;モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド;t-ブチルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド;N-オクチルアクリルアミド;ポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート、例えば2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど;アルキルビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテルなど;並びにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい極性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びN-ビニルピロリジノンからなる群から選択されるものが挙げられる。極性モノマーは、「任意の」モノマー100重量部を基準として、0重量部~30重量部、好ましくは0.5重量部~15重量部の量で存在してよい。
【0086】
重合性イオン液体は、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート及びビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン)、ビニルハライド、及びこれらの混合物をはじめとする、ビニルモノマーを任意の「任意の」モノマーとして更に含んでもよい。α本明細書で使用するとき、ビニルモノマーは、酸官能性モノマー、アクリレートエステルモノマー及び極性モノマーを除外する。そのようなビニルモノマーは一般に、100重量部の「任意の」モノマーを基準として0重量部~5重量部、好ましくは1重量部~5重量部で使用される。
【0087】
重合性イオン液体は、「任意の」モノマーの成分として重合性モノマーのブレンドに組み込まれた多官能性ポリ(メタ)アクリロイルモノマーを更に含んでもよい。多官能性アクリレートは、乳化重合又はUV重合に特に有用である。有用な多官能性(メタ)アクリレートの例としては、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレート、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。多官能性(メタ)アクリレートの量及び種類は、特定の用途に応じて調整される。
【0088】
典型的には、多官能性(メタ)アクリレートは、接着剤組成物の総乾燥重量に基づいて、5重量部未満の量で存在する。より具体的には、架橋剤は、100部の接着剤組成物の「任意の」モノマーを基準として、0.05部~20部、好ましくは0.05部~1部の量で存在し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、「任意の」モノマーは、任意のモノマー成分の総重量に基づいて、
i.60重量%~99.5重量%の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、
ii.0重量%~30重量%の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマーと、
iii.0重量%~20重量%の多官能性(メタ)アクリレートと、
を含んでもよい。
【0090】
更なる実施形態では、「任意の」モノマー成分は、任意のモノマー成分の総重量に基づいて、
i.60重量部~99.5重量部の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、
ii.0.5重量部~15重量部の酸官能性エチレン性不飽和モノマーと、
iii.0重量部~30重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマーと、
iv.0部~5部のビニルモノマーと、
v.0部~20部の多官能性(メタ)アクリレートと、
を含んでもよい。
【0091】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位のいくつかの部分は、コポリマーが調製された後に加水分解され得る。
【0092】
任意に、組成物は、溶媒(例えば、アルコール(例えば、プロパノール、エタノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、他の非水性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノン))、及び水を含有してもよい。
【0093】
所望により、組成物は、添加剤、例えば、インジケーター、色素、顔料、充填剤、阻害剤、促進剤、粘度調整剤、湿潤剤、緩衝剤、ラジカル及びカチオン性安定剤(例えば、BHT)、並びに、当業者には明白である他の類似成分を含有することができる。
【0094】
「任意の」モノマーを含む重合性イオン液体は、任意の従来のフリーラジカル重合法により調製してもよく、これには溶液、放射線、バルク、分散、乳化、及び懸濁プロセスが含まれる。得られる(コ)ポリマーは、ランダム又はブロック(コ)ポリマーであり得る。
【0095】
本発明において使用される(メタ)アクリレート接着剤コポリマーを調製するのに有用な開始剤は、熱への曝露時に、モノマー混合物の(共)重合を開始するフリーラジカルを発生させる開始剤である。乳化重合によって(メタ)アクリレートポリマーを調製するためには、水溶性開始剤が好ましい。好適な水溶性開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物;前述の過硫酸塩の反応生成物などの酸化還元開始剤、並びにメタ重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムからなる群から選択されるものなどの還元剤;並びに4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい水溶性開始剤は、過硫酸カリウムである。好適な油溶性開始剤としては、アゾ化合物、例えば、双方がE.I.du Pont de Nemours CO.から入手可能なVAZO(商標)64(2,2’-(アゾビス(イソブチロニトリル))及びVAZO(商標)52(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル))、過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイル、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい油溶性熱開始剤は、(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))である。使用する場合、開始剤は、感圧接着剤中のモノマー成分100重量部に基づいて、約0.05重量部~約1重量部、好ましくは約0.1重量部~約0.5重量部で含まれ得る。
【0096】
代替的には、混合物は、溶媒重合、分散重合、及び無溶媒バルク重合の従来の技法を含むがこれらに限定されない技法によって、重合することができる。モノマー混合物は、前に記載したように、コモノマーを重合させるのに有効なタイプ及び量の重合開始剤、とりわけ熱開始剤又は光開始剤を含み得る。
【0097】
典型的な溶液重合法は、モノマー、好適な溶媒、及び任意の連鎖移動剤を反応槽に加えること、フリーラジカル開始剤を添加すること、窒素でパージすること、並びに反応槽を、バッチサイズ及び温度に応じて、反応が完了するまで、典型的には約1時間~20時間にわたって高温(典型的には約40℃~100℃の範囲の高温)に維持すること、によって実施される。溶媒の例は、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアセテート、エチルアセテート、トルエン、キシレン、及びエチレングリコールアルキルエーテルである。これらの溶媒は単独で、又はこれらの混合物として使用することができる。
【0098】
典型的な光重合法では、モノマー混合物に、光重合開始剤(すなわち、光開始剤)の存在下において紫外(ultraviolet、UV)光線を照射され得る。好ましい光開始剤は、Ciba Specialty Chemical Corp.,Tarrytown,NYから商品名IRGACURE(商標)及びDAROCUR(商標)で入手可能なものであり、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE(商標)184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE 651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(商標)819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE(商標)2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE(商標)369)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IRGACURE(商標)907)、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR(商標)1173)が挙げられる。特に好ましい光開始剤は、IRGACURE(商標)819、651、184、及び2959である。
【0099】
無溶媒重合法、例えば、米国特許第4,619,979号及び同第4,843,134号(Kotnourら)に記載されている連続フリーラジカル重合法;米国特許第5,637,646号(Ellis)に記載されている、バッチ反応器を使用した本質的に断熱性の重合法;並びに米国特許第5,804,610号(Hamerら)に記載されている、パッケージ化されたプレ接着剤組成物を重合するために記述された方法も、ポリマーを調製するために利用してもよい。
【0100】
コーティングプロセス
重合性イオン液体は、様々な従来のコーティング方法を使用して、構成要素(例えば、キャリア、基材、物品の表面など)の表面に適用することができる。いくつかの実施形態では、任意の「任意の」モノマーを含む重合性イオン液体は、式I又はIIのイミダゾール化合物の共役酸及び重合性アニオン性モノマーを含むプレ接着剤組成物である。好適なコーティング方法としては、例えば、スピンコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティング、ワイヤコーティング、フラッドコーティング、パディング、噴霧、ロールコーティング、浸漬、ブラッシング、泡付与などが挙げられる。コーティングは、任意に乾燥され、エネルギー源を使用して少なくとも部分的に、典型的には完全に硬化される。いくつかの実施形態では、プレ接着剤混合物は光開始剤を含み、混合物はUV照射によって硬化又は部分的に硬化されて接着剤組成物を形成する。
【0101】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、未硬化重合性イオン液体を実質的に含まない、すなわち、<10%抽出可能である。硬化の程度は、当技術分野において既知の様々な方法によって決定することができる。1つの一般的な方法は、溶媒抽出によって未硬化材料の量を決定することである。いくつかの実施形態では、未硬化の抽出可能な重合性イオン液体の量は、硬化組成物の10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。
【0102】
いくつかの実施形態では、硬化後の接着剤組成物の厚さは、少なくとも10μm、少なくとも100μm、少なくとも500μm、又は少なくとも1000μmである。いくつかの実施形態では、接着剤組成物の厚さは、最大2mm、最大1000μm、最大500μm、又は最大100μmである。いくつかの実施形態では、接着剤組成物の厚さは、10μm~2mmの範囲である。
【0103】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、硬化した重合性イオン液体を含む。他の実施形態では、接着剤組成物は、キャリアと、キャリアの片面に適用された硬化した重合性イオン液体とを含む片面テープである。更に他の実施形態では、接着剤組成物は、キャリアと、キャリアの片側に適用された硬化した第1の重合性イオン液体と、キャリアの反対側に適用された硬化した第2の重合性イオン液体とを含む両面テープである。第1及び第2の重合性イオン液体は、同一であり得るか、又は異なり得る。好適なキャリア材料は上に記載されている。
【0104】
用途
本開示の物品は、多くの利点を提供することができる。物品内の構成要素は、オンデマンドで分離(すなわち、剥離)され得る。上記のように、物品内のオンデマンド剥離は、接着剤組成物にわたってDC電位を印加して、負の接着剤界面(すなわち、負電極)における接着剤結合の弱化を引き起こすことによって起こり、したがって、物品内の構成要素を分離するために必要とされる労力を減少させる。接着結合の弱化は、DC電位(電圧)の増加、印加されたDC電位の持続時間の増加、又はそれらの組み合わせとともに増加する。したがって、ユーザは、オンデマンド剥離のための条件を用途又は必要性に合わせることができる。例えば、ユーザは、用途がより低い電圧を必要とする場合、印加されるDC電位の持続時間を増加させることができる。いくつかの実施形態では、オンデマンド剥離は、最大1600V/mm、最大800V/mm、最大250V/mm、又は最大90V/mmの印加DC電位で生じる。いくつかの実施形態では、オンデマンド剥離は、印加DC電位の印加後、20秒未満、15秒未満、10秒未満、5秒未満、3秒未満、又は1.5秒未満以内に生じる。
【0105】
本開示の物品はまた、接着剤組成物中のイオン含量の性質及び程度から利益を得る。例えば、重合されたイオン含量は、典型的には、未重合(すなわち、遊離)形態で同じイオン含量を含有する組成物よりも良好な接着を提供し、したがって、構成要素が使用中に時期尚早に係合離脱しないことを確実にする。いくつかの実施形態では、本開示の接着剤組成物は、試験方法1に従って測定して、少なくとも0.5N/cm、1.0N/cm、1.5N/cm、2.0N/cm、2.5N/cm、3.0N/cm、3.5N/cm、又は4.0N/cmの12インチ/分(30.48cm/分)でのガラスからの180°剥離を示す。
【0106】
更に、イオン性液体の重合によって、接着剤組成物中のより高いレベルのイオン含量を達成することが可能である。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%の重合イオン含量を含む。より高いイオン含量は、一般に、DC印加電位の印加時に接着剤剥離を改善することが分かった。剥離中の接着結合の弱化は、例えば、接着剤組成物で一緒に結合された2つの構成要素の表面積当たりの接着仕事量の%変化によって測定することができる。いくつかの実施形態では、0V及び-25Vで100秒間における表面積当たりの接着仕事量の%変化は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、0V及び-25Vで100秒間における、接着剤組成物を用いて物品に接着結合された構成要素の表面積当たりの接着仕事量の%変化は、10%~100%、10%~99%、40%~99%、60%~99%、70%~99%、又は80%~99%の範囲である。いくつかの実施形態では、DC印加電位は、ユーザの介入なしに物品から構成要素を完全に係合離脱するのに十分である。
【0107】
したがって、構成要素は、接着剤組成物を使用して互いにしっかりと接着され、DC印加電位の印加時に好都合に分離され得る。いくつかの実施形態では、本開示の接着剤組成物は、12インチ/分(30.48cm/分)で少なくとも0.5N/cmのガラスからの180°剥離、並びに0V及び-25Vで100秒間における表面積当たりの少なくとも10%の接着仕事量の%変化を示す。
【0108】
本出願の物品の別の関連する利点は、接着剤組成物にわたって印加される電位の方向によって剥離の位置を決定する能力である。本出願の接着剤組成物は、典型的には、負の接着剤界面から剥離する。好ましくは、分離後に負の接着剤界面上に接着剤残留物がほとんど又は全く残らない。いくつかの実施形態では、(重量で)10%未満、5%未満、又は1%未満の接着剤組成物が、剥離後に負の接着剤界面上に残る。いくつかの好ましい実施形態では、剥離後に負の接着剤界面上に接着剤組成物は残らない。これにより、ユーザは、選択した界面で構成要素をきれいに分離することができる。いくつかの構成体では、リサイクル及び環境規制が要求し得るように、物品の寿命の間に1つの界面で接着剤組成物を剥離し、物品の最終寿命で別の界面で接着剤組成物を剥離することが可能であり得る。
【0109】
本出願の物品は、様々なオンデマンド剥離解決策を提供することができる。ロボット工学において、物品は、様々な作業を行うために使用される物体(例えば、構成要素)を把持する際に使用するための接着剤組成物で一端がコーティングされた機械アームを含んでもよい。例えば、物体は、ドライバー又ははんだ付け装置であってもよい。作業が完了したら、接着剤組成物に電位を印加することによって物体を分離することができる。いくつかの実施形態において、分離は、接着剤組成物が、新たな異なる物体を把持するために機械的アーム上に残るように設計され得る。
【0110】
本出願の物品は、例えば、動物追跡首輪において使用することができ、ここでは、研究者は、典型的には、首輪の適用及び除去の両方の間に動物を鎮静させなければならない。本出願の物品を使用して、そのライフサイクルの終わりに脱落するように設計された首輪を作製することが可能である。例えば、首輪は、接着剤組成物を使用して動物の首の周りに固定することができる。追跡情報を収集するために使用される小型電池を、収集サイクルの終わり近くで使用して、接着剤組成物にわたって電位を印加することもでき、これは、次いで、接着剤を剥離し、首輪が地面に落ちることを可能にする。次いで、首輪は、追跡デバイスを使用して、研究者によって回収され得る。
【0111】
別の用途では、物品は、包装業界及び運送業で使用することができる。接着剤組成物は、パッケージを一緒に束ねるために使用することができる。配達先に到着すると、運送業者の従業員は、配達のために荷物を分離するために電流を印加することができる。
【0112】
物品はまた、定期的なサービス又は交換を必要とする1つ以上の構成要素を含む機器又は消費者向け製品の一部であってもよい。例えば、サービスパネルを接着剤組成物によってハウジングに接着接合し、接着剤組成物にDC印加電位を印加することによってパネルを除去することができる。次いで、パネルは、サービス後に交換されることができ、いくつかの実施形態では、製造中に最初に適用された同じ接着剤組成物を使用して再配置され得る。
【0113】
物品はまた、その製品ライフサイクルの終わりに達した複合要素製品であってもよく、構成要素の全てではないにしても少なくともいくつかはリサイクル可能である。構成要素が接着剤組成物によって接合される場合、接着剤組成物にわたってDC電位を印加することによってリサイクル可能な構成要素をきれいに分離することが可能である。
【0114】
上記用途は、限定を意図するものではない。本出願の物品及び方法は、オンデマンド接着剤剥離から利益を得る任意の様々な用途における使用を見出すことができる。
【実施例】
【0115】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0116】
別段の記載がない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量基準である。
【表1】
【0117】
プレポリマー溶液の調製
275グラム(g)のnHA、150gのIBOA、75gのHEA、及び0.15gのD1173を、透明ガラスジャー内で一緒に混合した。次いで、ガラスジャーを窒素で5分間パージして溶存酸素を除去し、次いで、コーティング可能な粘度が達成されるまで、0.3ミリワット/平方センチメートル(mW/cm2)の強度で365ナノメートル(nm)の波長を有する紫外線(UV)光の前に置いた。この工程のコーティング可能な粘度の典型的な目標は、室温で約3000センチポアズ(cP)である。
【0118】
比較例C1~C6及び実施例E1~E8 プレ接着剤配合物の調製
プレポリマー溶液を表2にまとめた成分と混合することによって、プレ接着剤配合物を調製した。成分を列挙した量で合わせ、24時間混合した。重合性イオン含量は、イオン性及び重合性の両方と考えられる全ての成分を合計することによって、重量%基準で計算した。全イオン含量は、イオン性であると考えられる全ての成分を合計することによって重量%基準で計算した。結果を表2にまとめる。
【0119】
単層転写接着剤の調製
シリコーン処理したPET剥離ライナー(SKC Haas(Seoul,South Korea)から入手可能なRF02N/RF32N)の間に、比較例C1~C6及び実施例E1~E6のプレ着剤配合物をそれぞれ0.15ミリメートル(mm)の湿潤コーティング重量でコーティングした。次いで、この構造体を、約950ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm2)の360nm波長のUV照射を用いて硬化させた。
【0120】
キャリア層を有する二重コーティングされた接着剤の調製
ナイロン又はティッシュキャリア層上の二重コーティング接着剤の調製は、以下の例外を除いて、上記で提供された単層転写接着剤の調製と同様の方法で行った。実施例E5のプレ接着剤配合物は、2つのシリコーン処理されたPETライナーの間に0.05mmの厚さでコーティングし、360nm波長のUV照射の約950mJ/cm
2を使用して硬化させた。上部ライナーを除去し、ティッシュ又はナイロン材料の0.05mmの層を接着剤の露出面に積層した。同じプレ接着剤配合物の第2の層を、構成体のナイロン側又はティッシュ側に0.05mmの厚さでコーティングし、次いで360nm波長のUV照射の約950mJ/cm
2を使用して硬化させた。
【表2】
【0121】
試験法1 180°剥離接着力
剥離接着性は、特定の角度及び除去速度で測定される、コーティングされた可撓性シート材を試験パネルから除去するのに必要とされる力である。本発明の実施例において、力は、コーティングされたシートの幅当たりのオンス(oz./in)で表され、次いでニュートン/cmに変換される。各試験について、約5インチ(12.7cm)長さの接着剤がコーティングされたシート材料の0.5インチ(1.27cm)幅を切断し、剥離ライナーの1つをコーティングされた接着剤から剥がした。標準フロートガラス試験パネルの一方の面を、イソプロパノール及びリントフリーワイパーを使用して清浄にし、次いで接着剤ストリップをガラス試験パネルの清浄な面に適用した。重いゴムローラーを使用してストリップを適用した。除去角度が180度になるように、コーティングされたストリップの自由端を折り返した。この自由端を接着力試験機の水平アームに取り付けた。次いで、ガラスプレートを、制御された速度(12インチ/分)(30.48cm/分)でスケールから離れるように移動するように機械化された機器のプラットフォームに固定した。接着剤を基材に適用してから約1分後に剥離試験を開始した。試験中に、剥離中のピーク力及び最小力の両方の平均として、オンス単位のスケール読み取り値を読み取った。3回の剥離試験を各例に対して実施し、平均値を求め、剥離接着力の値を得た。結果を表3にまとめる。
【0122】
剥離接着力試験中に各例について破壊モードも記録し、結果を表3に更にまとめ、「ad」は基材からの接着破壊を示し、「co」は接着材料の凝集破壊を示す。
【0123】
試験法2 電位を印加した場合と印加しない場合の表面積当たりの接着仕事量
2つの平行な結合された試験表面を分離するのに必要とされる表面積当たりの接着仕事量を、特定の除去速度で結合材料の厚さ方向に表面を分離しながら測定した。
【0124】
表面積当たりの接着仕事量は、接合表面1平方センチメートル当たりのニュートンに、プレート間の移動距離(センチメートル間の移動距離(N/cmの単位)を乗じて表される。これは、センチメートル(cm)単位の結合表面間の間隙の変化に対してプロットされたニュートン(N)単位の引張力の曲線下面積を積分し、次いで、その値を、結合試験表面の平方センチメートル(cm2)単位の初期接触面積で割ることによって分析された。
【0125】
試験は、電気レオロジー付属品を備えたひずみ制御レオメーター(ARES G2、TA Instruments,New Castle,Delaware製)を使用して実施した。試験固定具は、直径8mmのステンレス鋼平行板であった。温度制御のために、底部プレートを水冷Advanced Peltier System(APS、TA Instruments,New Castle,Delaware製)に取り付けた。全ての接着試験について温度を25℃に調節した。電位の印加のために、任意波形発生器(33210A、Keysight Technologies,Santa Rosa,California製)を高電圧増幅器(Trek Model 609E-6,from Trek Inc.,Lockport,New York)に接続し、これをレオメーター上の上部形状に接続した。下部何形状は接地された。これにより、レオメータープレート間の試験片に0~±4000ボルト直流(VDC)の範囲の電位を印加することが可能になった。
【0126】
各試験について、直径8mmの平行プレート固定具をレオメーターに取り付け、プレート間のギャップをゼロにした。直径8mmのディスクを単層転写接着剤(C1~C6及びE1~E6)又は二重コーティング接着剤(E7及びE8)から切断した。剥離ライナーの1つをディスクから剥がし、露出した接着剤を、レオメーターの下部8mm直径のステンレス鋼板形状の清浄な表面に塗布した。第2の剥離ライナーをコーティングされた接着剤から剥がした。温度を25℃で1分間平衡化した。次に、上部プレートを下げて、5Nの圧縮荷重で500秒間接着剤に接触させて圧縮した。圧縮工程中、最後の100秒間の圧縮負荷中に、0VのDC(対照試験として)又は-25VのDCのいずれかの電圧でDC電位を印加した。圧縮荷重の終わりに、プレートを0.001cm/秒の速度で分離し、プレートを分離するのに必要とされる引張力をプレート分離距離の関数として測定した。各例の各条件について3回の試験を行い、平均して表3にまとめた表面積当たりの接着仕事量の値を得た。
【0127】
表面積当たりの接着仕事量の低減率(%)は、-25VのDC印加電位でのそれぞれの平均値を、電圧を印加していない対応する平均値から差し引き、次いで、その差を電圧を印加していない値で割ることによって計算した。低減率の正の値は、-25VのDC電位の印加後の表面積当たりの接着仕事量の低減を示す。各例についてのこれらの低減率の値も表3にまとめる。
【0128】
試験された例において、負のDC電位は、上部プレートからの優先的な剥離をもたらし、一方、正のDC電位は、下部(接地)プレートからの優先的な剥離をもたらした。
【0129】
実施例E4についての引張接着力プロファイルを
図3に示す。試験は、圧縮工程の最後の100秒間に印加された0V及び-25VのDC電位で行った。ニュートン単位の引張力をy軸上にプロットし、0.01mm/秒の速度で分離された直径8mmのステンレス鋼平行板間の距離をx軸上にプロットする。電位の印加は、接着仕事量(曲線下面積によって説明される)の低減によって示されるように、接着剤の結合強度を減少させる。
【表3】
【0130】
図4は、印加されたDC電圧(y軸)及びプレートを分離する前に電圧が印加された持続時間(x軸)の関数としての、実施例E2の引張接着試験からの単位表面積当たりの接着仕事量(グレイスケールによって示される)の等高線表面プロットを示す。
【0131】
したがって、本開示は、とりわけ、オンデマンド剥離挙動を示す接着剤組成物を含有する物品を提供する。本開示の様々な特徴及び利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】