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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】運搬装置及び運搬装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 54/02 20060101AFI20240614BHJP
   H02P 25/064 20160101ALI20240614BHJP
【FI】
B65G54/02
H02P25/064
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023574352
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2022064872
(87)【国際公開番号】W WO2022253883
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】A50448/2021
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518184708
【氏名又は名称】ベーウントエル・インダストリアル・オートメイション・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】アルメーダー・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ラスムスン・イェスパ・スパングゴー
【テーマコード(参考)】
3F021
5H540
【Fターム(参考)】
3F021AA05
3F021BA02
3F021DA05
5H540AA01
5H540BA03
5H540BB03
5H540BB05
5H540BB09
5H540FA03
5H540FC07
(57)【要約】
少なくとも一つの運搬セグメントTSを備えた運搬装置1において、この運搬セグメントに沿って、少なくとも一つの運搬ユニットTE1,TE2が少なくとも一次元形態で動かされ、この運搬セグメントには、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数の位置センサーが配備されており、運搬装置1の動作中に熱の発生に関係なく、運搬ユニットTE1,TE2の出来る限り精確な位置特定を可能にするために、本発明では、運搬セグメントTSの局所的なセグメント温度をそれぞれ検出する、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数の温度センサーが配備されることと、制御ユニット6に、局所的なセグメント温度を計算するための温度モデルが保存されることとの中の一つ以上であることと、制御ユニット6が、運搬セグメントTSの熱膨張を考慮するために、所与の補正モデルを用いて、特定された局所的なセグメント温度に基づき運搬ユニット位置を校正するように構成されていることとが規定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの運搬セグメント(TS)を備えた運搬装置(1)であって、この運搬セグメントに沿って、少なくとも一つの運搬ユニット(TE)を少なくとも一次元形態で動かすことが可能であり、この運搬セグメント(TS)には、運搬ユニット(TE)が各位置センサー(18i)のセンサー領域内に在る時に、それぞれセンサー信号を発生させるために、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数(i個)の位置センサー(18i)が配備されており、この運搬装置(1)には、受け取った位置センサー(18i)のセンサー信号に依存して、運搬装置(1)の定められた基準点(PB)に対して相対的な運搬ユニット(TE)の運搬ユニット位置を特定するように構成された制御ユニット(6)が配備されている運搬装置において、
この運搬装置(1)に、有利には、この運搬セグメント(TS)に、運搬セグメント(TS)の局所的なセグメント温度(θSi)をそれぞれ検出する、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数(i個)の温度センサー(19i)が配備されていることと、この制御ユニット(6)に、局所的なセグメント温度(θSi)を計算するための温度モデルが保存されていることとの中の一つ以上であることと、
この制御ユニット(6)が、運搬セグメント(TS)の熱膨張を考慮するために、所与の補正モデルを用いて、特定された局所的なセグメント温度(θSi)に基づき運搬ユニット位置を校正するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運搬装置(1)において、
前記の補正モデルが運搬セグメント(TS)の温度に依存する補正係数を含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、運搬ユニット位置を校正するために、特定された運搬ユニット位置に、この温度に依存する補正係数を乗算するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運搬装置(1)において、
前記の複数(i個)の位置センサー(18i)に対して、それぞれ所与の基準温度(θ)に関するセンサー位置(Xi)が定められていることと、
前記の補正モデルが、運搬セグメント(TS)の特定された局所的なセグメント温度(θSi)、基準温度(θ)及び所与の膨張係数(K)に基づき、各位置センサー(18i)に関するセンサー変位(ΔXi)を特定することを含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、この特定されたセンサー変位(ΔXi)に基づき、各位置センサー(18i)に関する校正済みのセンサー位置(Xi_corr)を特定して、この校正済みのセンサー位置(Xi_corr)に基づき運搬ユニット位置を校正するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の温度センサー(19i)の中の少なくとも一つが、運搬セグメント(TS)において位置センサー(18i)の中の一つと同じ位置に配置されていることと、
前記の位置センサー(18i)の中の少なくとも一つと温度センサー(19i)の中の少なくとも一つが構造的に一体化されていることと、の中の一つ以上を特徴とする運搬装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の運搬セグメント(TS)が、運搬装置(1)の定められた基準点(PB)に対して相対的な固定位置が既知である、有利には、移動方向に対して中央の所に在る固定ベアリング(12)を用いて、運搬装置(1)の固定位置のガイド機器(8)に固定されたセグメント支持体(14)を備え、前記の複数(i個)の位置センサー(18i)が、このセグメント支持体(14)に配置されていることと、
前記の制御ユニット(6)が、基準位置を出発点として運搬ユニット位置を校正するように、特に、基準位置を出発点として位置センサー(18i)のセンサー変位(ΔXi,ΔXi)を特定するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の運搬セグメント(TS)に、有利には、前記のセグメント支持体(14)に、少なくとも一つの固定子ユニット(15)が配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)の移動方向を定義する少なくとも一つの配置方向に順番に配置されており、これらの駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)と電磁気的に協力して動作して、運搬ユニット(TE)を移動方向に少なくとも一次元形態で動かすための駆動力を発生させるように、制御ユニット(6)によって駆動可能であること、或いは
前記の運搬セグメント(TS)に、有利には、前記のセグメント支持体(14)に、一つの固定子ユニット(15)が配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)のそれぞれ一つの移動方向を定義する少なくとも二つの異なる配置方向に順番に配置されており、これらの駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)と電磁気的に協力して動作して、運搬ユニット(TE)を二つの移動方向に少なくとも二次元形態で動かすための駆動力を発生させるように、制御ユニット(6)によって駆動可能であること、を特徴とする運搬装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の複数(i個)の位置センサー(18i)及び/又は複数(i個)の温度センサー(19i)が、移動方向に運搬セグメント(TS)に対して、特に、固定子ユニット(15)に対して平行に延びるセンサープレート(20)に配置されており、このセンサープレート(20)が、有利には、セグメント支持体(14)に配置されていることを特徴とする運搬装置。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の固定子ユニット(15)が、膨張率(αFE)が既知である鉄含有材料から構成されることと、前記のセグメント支持体(14)が、膨張率(αAL)が既知である材料、有利には、アルミニウム含有材料から構成されることとの中の一つ以上であることと、
これらの固定子ユニット(15)の膨張率(αFE)及び/又はセグメント支持体(14)の膨張率(αAL)が補正モデルにおいて考慮されることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の運搬装置(1)において、
前記の補正モデルが、センサープレート(20)の温度(θ)、センサープレート(20)の位置シフト率(K)及び基準温度(θ)に基づき、センサープレート(20)の位置シフト(Xoffset)を特定することを含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、このセンサープレート(20)の位置シフト(Xoffset)と特定されたセンサー変位(ΔX)から、少なくとも一つの位置センサー(18)の全体的なセンサー変位(ΔX_gesamt)を特定して、この全体的なセンサー変位(ΔX_gesamt)を校正済みのセンサー位置(Xcorr)を特定するために使用するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項10】
少なくとも一つの運搬セグメント(TS)を備えた運搬装置(1)を動作させる方法であって、この運搬セグメントに沿って、少なくとも一つの運搬ユニット(TE)が少なくとも一次元形態で動かされ、この運搬セグメント(TS)には、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数(i個)の位置センサー(18i)が配備されており、これらの位置センサー(18i)は、運搬ユニット(TE)が各位置センサー(18i)のセンサー領域内に在る時に、それぞれセンサー信号を発生させ、制御ユニット(6)が、受け取った位置センサー(18i)のセンサー信号に基づき、運搬装置(1)の定められた基準点(PB)に対して相対的な運搬ユニット(TE)の運搬ユニット位置を特定する方法において、
これらの移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数(i個)の温度センサー(19i)を用いて、運搬セグメント(TS)の局所的なセグメント温度(θSi)がそれぞれ検出されることと、制御ユニット(6)に実装された、運搬セグメント(TS)の温度モデルを用いて、運搬セグメント(TS)の局所的なセグメント温度(θSi)が特定されることとの中の一つ以上であることと、
この制御ユニット(6)が、運搬セグメント(TS)の熱膨張を考慮するために、所与の補正モデルを用いて、この特定された局所的なセグメント温度(θSi)に基づき運搬ユニット位置を校正することと、を特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記の補正モデルが運搬セグメント(TS)の温度に依存する補正係数を含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、運搬ユニット位置を校正するために、特定された運搬ユニット位置に、この温度に依存する補正係数を乗算することと、を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、
前記の複数(i個)の位置センサー(18i)に対して、それぞれ所与の基準温度(θ)に関するセンサー位置(Xi)が定められることと、
前記の補正モデルが、運搬セグメント(TS)の特定された局所的なセグメント温度(θSi)、基準温度(θ)及び所与の膨張係数(K)に基づき、各位置センサー(18i)に関するセンサー変位(ΔXi)を特定することを含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、この特定されたセンサー変位(ΔXi)に基づき、各位置センサー(18i)に関する校正済みのセンサー位置(Xi_corr)を特定して、この校正済みのセンサー位置(Xi_corr)に基づき運搬ユニット位置を校正することと、を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の方法において、
前記の温度センサー(19i)の中の少なくとも一つが、位置センサー(18i)の中の一つと同じ位置に配置されることと、
構造的に一体化された少なくとも一つの位置センサー(18)と温度センサー(19)が使用されることと、の中の一つ以上を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の方法において、
前記の運搬セグメント(TS)が、運搬装置(1)の定められた基準点(PB)に対して相対的な固定位置が既知である、有利には、移動方向に対して中央の所に在る固定ベアリング(12)を用いて、運搬装置(1)の固定位置のガイド機器(8)に固定されたセグメント支持体(14)を備え、前記の複数(i個)の位置センサー(18i)が、このセグメント支持体(14)に配置されることと、
前記の制御ユニット(6)が、基準位置を出発点として運搬ユニット位置を校正する、特に、基準位置を出発点として位置センサー(18i)のセンサー変位(ΔXi,ΔXi)を特定することと、を特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載の方法において、
前記の運搬セグメント(TS)に、有利には、前記のセグメント支持体(14)に、一つの固定子ユニット(15)が配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)の移動方向を定義する少なくとも一つの配置方向に順番に配置されており、これらの駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)と電磁気的に協力して動作して、駆動力を発生させるように、制御ユニット(6)によって駆動され、この駆動力によって、運搬ユニット(TE)が移動方向に少なくとも一次元形態で動かされること、或いは
前記の運搬セグメント(TS)に、有利には、前記のセグメント支持体(14)に、一つの固定子ユニット(15)が配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイルが、運搬ユニット(TE)のそれぞれ一つの移動方向を定義する少なくとも二つの異なる配置方向に順番に配置されており、これらの駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)と電磁気的に協力して動作して、駆動力を発生させるように、制御ユニット(6)によって駆動され、この駆動力によって、運搬ユニット(TE)が少なくとも二つの移動方向に少なくとも二次元形態で動かされること、を特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか1項に記載の方法において、
前記の複数(i個)の位置センサー(18i)及び/又は複数(i個)の温度センサー(19i)が、移動方向に運搬セグメント(TS)に対して、特に、固定子ユニット(15)に対して平行に延びるセンサープレート(20)に配置され、この固定子ユニット(15)及び/又はセンサープレート(20)が、有利には、セグメント支持体(14)に配置されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの運搬セグメントを備えた運搬装置であって、この運搬セグメントに沿って、少なくとも一つの運搬ユニットを少なくとも一次元形態で動かすことが可能であり、この運搬セグメントには、運搬ユニットが各位置センサーのセンサー領域内に在る時にそれぞれセンサー信号を発生させる、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数の位置センサーが配備されており、この運搬装置には、受け取った位置センサーのセンサー信号に応じて、運搬装置の定められた基準点に対して相対的な運搬ユニットの運搬ユニット位置を特定するように構成された制御ユニットが配備されている運搬装置に関する。本発明は、更に、少なくとも一つの運搬セグメントを備えた運搬装置を動作させる方法であって、この運搬セグメントに沿って、少なくとも一つの運搬ユニットが少なくとも一次元形態で動かされ、この運搬セグメントには、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数の位置センサーが配備されており、これらの位置センサーは、運搬ユニットが各位置センサーのセンサー領域内に在る時にそれぞれセンサー信号を発生させ、制御ユニットが、受け取った位置センサーのセンサー信号に基づき、運搬装置の定められた基準点に対して相対的な運搬ユニットの運搬ユニット位置を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモーターでは、一次部分(固定子)と二次部分(可動子)が配備されており、二次部分を一次部分に対して相対的に動かすことが可能である。一次部分には、駆動コイルが配置され、二次部分には駆動磁石が配置されているか、或いはその逆である。駆動磁石は、永久磁石、電気コイル又は短絡巻線として実現される。駆動コイルは、電磁界を発生させるためにコイル電圧の印加によって電流を流される電気コイルである。駆動磁石と駆動コイルの(電)磁界の協力した動作によって、一次部分に対して相対的に二次部分を動かす力が二次部分に作用する。リニアモーターは、例えば、同期機械又は非同期機械として実現することができる。リニアモーターの駆動コイルは、移動方向に順番に、或いは移動面内に配置される。二次部分は、移動面に沿って一つの移動方向に動かすか、或いは少なくとも二次元形態で移動面内を二つの移動方向に動かすことができる。短固定子リニアモーターと長固定子リニアモーターの間を区別することもでき、長固定子リニアモーターでは、二次部分が一次部分よりも短いか、或いは小さく、短固定子リニアモーターでは、一次部分が二次部分よりも短いか、或いは小さい。
【0003】
長固定子リニアモーターとは、二次部分が一つの移動方向に一次元形態で動かされる直線的な長固定子リニアモーターであるとも、しばしば平面モーターとも呼ばれる、二次部分が移動面内を少なくとも二次元形態で動かされる平面的な長固定子リニアモーターであるとも理解される。長固定子リニアモーターでは、一般的に複数の二次部分が同時に互いに独立して一次部分に沿って(一つの移動方向に、或いは移動面内を)動かされる。従って、長固定子リニアモーターは、多くの場合、運搬課題を実行するために複数の運搬ユニット(二次部分)が同時に動かされる電磁式運搬システムに採用されている。その場合、一次部分(固定子)が、運搬区間又は運搬面を構成し、それに沿って運搬ユニットを動かすことができる。
【0004】
ここで、長固定子リニアモーターをモジュール式に構築することも既に知られている。その場合、運搬区間又は運搬面(一次部分)を(以下において、「運搬セグメント」とも称する)複数の別個の構成要素に分割することができる。そのため、各運搬セグメントが、一次部分の一部を構成し、各運搬セグメントには、所定の数の駆動コイルを配置することができる。そして、有利には、標準化された個々の運搬セグメントを所望の長さ及び/又は形状の運搬区間又は運搬面に組み立てることができる。例えば、特許文献1が、そのようなモジュール構成の直線的な長固定子リニアモーターを提示している。特許文献2は、固定子モジュールから成る平面モーターの形の長固定子リニアモーターを提示している。
【0005】
一般的に、駆動コイルに電流を流すために、駆動コイルの所要の電気制御変量、例えば、コイル電圧、コイル電流又は磁気流量に転換するパワーエレクトロニクス機器が配備されている。そのパワーエレクトロニクス機器には、例えば、電流が流れることによって、動作時に負荷が加わる電気部品が組み込まれている。しかし、許容電流は、パワーエレクトロニクス機器の部品及び/又は電気構成によって制限される。コイル電圧の印加により駆動コイルに電流を流すことによって、運搬セグメントに熱も発生し、それによって、運搬セグメントの温度が上昇する可能性がある。従って、リニアモーターの固定子を冷却することも既に知られている。例えば、特許文献3又は4は、リニアモーターの固定子を冷却することを提示しており、そこでは、固定子又は固定子に設置された部品内に配管を配置して、その配管に冷媒を貫流させている。それにより、冷媒が固定子から熱を吸収して、それを排出する。それに対して、長大な長さに渡って延びる可能性がある長固定子リニアモーターの固定子を冷却することは、特に、運搬装置として使用した場合などの固定子の長さが長大となる場合には、構造的に負担がかかりコストも上昇させてしまう。従って、多くの場合、冷却部は設けられていない。
【0006】
通常、個々の運搬ユニットの動きの制御は、運搬装置の一つ又は複数の好適な制御ユニットによって行われる。その場合、例えば、固定的に予め与えられた運動プロファイル、例えば、所定の行程対時間プロファイル又は速度対時間プロファイルを制御ユニットに実装するか、或いは、例えば、上位の設備制御ユニットから与えることができる。制御ユニットは、そのプロファイルから駆動コイルに関する好適な制御変量、例えば、電流、電圧を計算し、それに対応して、パワーエレクトロニクス機器により駆動コイルを駆動して、各運動プロファイルに設定している、特に、調節している。その場合、所定の目標変量、例えば、運搬区間又は運搬面に沿った運搬ユニットの目標位置に調節するために、一つ又は複数の好適なコントローラを配備することもできる。通常、制御に必要な実際変量を提供するために、運搬区間又は運搬面に沿って一つ又は複数のセンサーも配備されている。
【0007】
多くの場合、例えば、好適な位置センサーが、例えば、周知の磁気方式の位置センサー、特に、AMRセンサーとも呼ばれる異方性磁気抵抗センサー、或いは、TMRセンサーとも呼ばれるトンネル磁気抵抗センサーの形の位置センサーが配備されている。それらのセンサーを用いて、運搬ユニット又はその一部がセンサー領域内に在る時に、運搬ユニットの存在、特に、運搬ユニットの駆動磁石が発生する磁界を非接触方式により検出することができる。運搬装置の定義された基準点に対して相対的なセンサーの組込位置が通常既知であることによって、運搬装置の基準点又はそれ以外の既知の基準点に対する運搬ユニット位置の一義的な関連付けを行うことができる。
【0008】
運搬装置の動作時に、前記の熱の発生によって、運搬装置の個々のコンポーネント、特に、運搬セグメントの異なる熱膨張が起こる可能性がある。そのことは、場合によっては、制御ユニットが位置センサーを用いて特定した運搬ユニット位置が実際の位置と相違することを引き起こす可能性がある。そのことは、例えば、一つ又は複数の外部装置の動きと同期させる運搬プロセスにおいて、問題を引き起こす可能性がある。例えば、運搬ユニットにより運搬される物体を所与の位置で、例えば、産業ロボットなどの取扱装置によって取り上げるか、物体を運搬ユニットに据え付けるか、或いは動いている運搬ユニット上で移動中に物体を処理すると規定することができる。運搬ユニット位置の特定が正しくない、それにより位置制御が正しくない場合、位置シフトのために、据え付ける、取り上げる、或いは処理する際に問題を引き起こす可能性があり、それは、当然のことながら望ましいことではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開第2015/042409号明細書
【特許文献2】米国特許登録第9,202,719号明細書
【特許文献3】米国特許登録第5,783,877号明細書
【特許文献4】米国特許登録第7,282,821号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことから、本発明の課題は、運搬装置の動作中における熱の発生に関係なく、運搬ユニットの出来る限り精確な位置特定を可能にする運搬装置及び運搬装置の動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、冒頭で述べた運搬装置において、本発明に基づき、運搬装置に、有利には、運搬セグメントに、移動方向に互いに間隔を開けて配置された、運搬セグメントの局所的なセグメント温度をそれぞれ検出する複数の温度センサーが配備されることと、制御ユニットに、局所的なセグメント温度を計算する温度モデルが保存されることとの中の一つ以上と、熱膨張を考慮するために、制御ユニットが、所与の補正モジュールを用いて、特定された局所的なセグメント温度に基づき運搬ユニット位置を校正するように構成されることとによって解決される。これによって、動作中に、例えば、駆動コイルでの熱の発生の結果生じる、運搬セグメントの局所的な熱膨張に応じて、運搬ユニット位置を校正することができる。これによって、運搬セグメントの局所的に異なる熱の発生を、それ故局所的に異なる熱膨張を考慮することができ、これにより、より精確な位置補正が実現される。局所的に異なる熱の発生は、例えば、駆動コイルが個別に駆動されて、異なる大きさの負荷を加えられた場合に生じる可能性がある。これによって、有利には、運搬セグメントの異なる箇所での異なる熱膨張を考慮することができる。
【0012】
最も簡単な場合、例えば、セグメント温度の関数として、校正済みの運搬ユニット位置を表現した特性曲線を制御ユニットに保存することができる。しかし、セグメント温度と一つ又は複数の別のパラメータの関数として、校正済みの運搬ユニット位置を表現した特性マップを保存することもできる。これらの温度センサーは、例えば、運搬セグメントに直に配置することができる。しかし、離れた所から温度を検出するのに適した、運搬セグメントから間隔を開けた所に配置された温度センサー、例えば、赤外線センサーなどを使用することもできる。
【0013】
有利には、この補正モデルは、運搬セグメントの温度に依存する補正係数を含み、制御ユニットが、運搬ユニット位置を校正するために、特定された運搬ユニット位置に、この温度に依存する補正係数を乗算するように構成される。これによって、例えば、実験により特定できる係数によって、熱膨張が簡単な手法で考慮される。
【0014】
有利な実施形態では、複数の位置センサーに対して、それぞれ所与の基準温度に関するセンサー位置が定められることと、この補正モデルが、運搬セグメントの特定された局所的なセグメント温度、基準温度及び所与の膨張係数に基づき位置センサーの各々に関する位置センサー変位を特定することを含むことと、制御ユニットが、この特定されたセンサー変位に基づき、各位置センサーに関する校正済みのセンサー位置を特定して、この校正済みのセンサー位置に基づき運搬ユニット位置を校正するように構成されていることとが規定される。これによって、温度差に依存するとともに、膨張係数に依存する形で熱膨張の物理的な関係を運搬ユニット位置の補正に用いることができる。最も簡単な場合、例えば、経験的な係数又は実験により特定された係数を膨張係数として使用することができる。
【0015】
有利には、温度センサーの中の少なくとも一つが、運搬セグメントにおいて位置センサーの中の一つと同じ位置に配置されることと、位置センサーの中の少なくとも一つと温度センサーの中の少なくとも一つが構造的に一体化されることとの中の一つ以上である。これによって、一方で、温度測定が、有利な手法により位置測定の箇所で直に行われ、他方で、必要なセンサーが少なくなり、それにより、構造が簡単になる。
【0016】
運搬セグメントが、運搬装置の定められた基準点に対して相対的な固定位置が既知である、有利には、移動方向に対して中央の所に在る固定ベアリングを用いて、運搬装置の固定位置のガイド機器に固定されたセグメント支持体を備え、このセグメント支持体に複数の位置センサーが配置されることと、制御ユニットが、この固定位置を出発点として運搬ユニット位置を校正するように、特に、この固定位置を出発点として位置センサーのセンサー変位を特定するように構成されていることとが有利である。これによって、移動方向へのほぼ自由な熱膨張が可能となり、それにより、熱によって生じる応力が低減される。熱膨張が既知の点を出発点とすることによって、二つの方向において、簡単な位置補正を行うことができる。
【0017】
有利には、固定子ユニットが、運搬セグメントに、有利には、セグメント支持体に配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイルが、運搬ユニットの移動方向を定義する少なくとも一つの配置方向に順番に配置され、これらの駆動コイルが、運搬ユニットと電磁気的に協力して動作して、運搬ユニットを移動方向に少なくとも一次元形態で動かす駆動力を発生させるように、制御ユニットによって駆動可能である。これに代わって、固定子ユニットが、運搬セグメントに、有利には、セグメント支持体に配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイルが、運搬ユニットのそれぞれ一つの移動方向を定義する少なくとも二つの異なる配置方向に順番に配置され、これらの駆動コイルが、運搬ユニットと電磁気的に協力して動作して、運搬ユニットを二つの移動方向に少なくとも二次元形態で動かす駆動力を発生させるように、制御ユニットによって駆動可能である。これによって、運搬ユニットの移動方向が一次元である長固定子リニアモーターの場合でも、移動方向が複数次元である平面モーターの場合でも、この位置補正を使用することができる。
【0018】
有利には、複数の位置センサー及び/又は複数の温度センサーが、移動方向に運搬セグメントに対して、特に、固定子ユニットに対して平行に延びるセンサープレートに配置され、このセンサープレートが、有利には、セグメント支持体に配置される。これによって、運搬セグメントの構造と組立が簡単になる。
【0019】
有利には、固定子ユニットが、膨張率が既知である鉄含有材料から構成されることと、セグメント支持体が、膨張率が既知である材料、有利には、アルミニウム含有材料から構成されることとの中の一つ以上であり、この固定子ユニットの膨張率及び/又はセグメント支持体の膨張率が補正モデルにおいて考慮される。これによって、運搬装置のモジュール構造を実現することができ、各コンポーネントに対して、位置補正において熱膨張特性を考慮できる有利な材料を使用することが可能になる。
【0020】
別の有利な実施形態では、補正モデルが、センサープレートの温度、センサープレートの位置シフト率及び基準温度に基づきセンサープレートの位置シフトを特定することを含むことと、制御ユニットが、このセンサープレートの位置シフトと特定されたセンサー変位から、少なくとも一つの位置センサーの全体的なセンサー変位を特定して、この全体的なセンサー変位を校正済みのセンサー位置を特定するために使用するように構成されることとが規定される。これによって、校正済みの運搬ユニット位置を計算する際に、各位置センサーに関して大きさが同じである、センサープレート全体の位置オフセットを考慮することもできる。
【0021】
更に、この課題は、冒頭で述べた方法において、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数の温度センサーを用いて、運搬セグメントの局所的なセグメント温度をそれぞれ検出することと、制御ユニットに実装された、運搬セグメントの温度モデルを用いて、運搬セグメント(TS)の局所的なセグメント温度を特定することとの中の一つ以上と、運搬セグメントの熱膨張を考慮するために、制御ユニットが、所与の補正モジュールを用いて、この特定された局所的なセグメント温度に基づき運搬ユニット位置を校正することとによって解決される。
【0022】
本方法の有利な実施形態は、従属請求項11~16に提示されている。
【0023】
以下において、本発明の有利な実施例を模式的に図示した、本発明を制限するものではない図1~2を参照して、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】有利な実施構成による長固定子リニアモーターの形の運搬装置の模式図
図2】運搬装置の運搬セグメントの模式的な平面図と側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、(以下においてLLMと称する)長固定子リニアモーターの形の運搬装置1が上方から見た図で模式的に図示されている。LLMの構造と機能は、十分に知られており、そのため、本発明に関して重要な点だけを詳しく取り上げる。この運搬装置1は、複数の運搬セグメントTSからモジュール式に構成された運搬区間2を有する。この運搬区間2に沿って、一つ又は複数の運搬ユニットTEが、周知の手法で電磁力を発生させることにより動かされる。そのために、運搬区間2には、周知の手法で、多数の駆動コイル4が、運搬ユニットTEに関する移動方向を形成する配置方向に順番に配置されている。これらの運搬ユニットTEには、それぞれ異なる磁極の複数の駆動磁石5が移動方向に順番に配置されている。これらの駆動磁石5は、運搬区間2の駆動コイル4の方を向いており、駆動力を発生させるために磁気的に駆動コイル4と協力して動作し、この駆動力によって、運搬ユニット2を運搬区間2に沿って動かすことができる。駆動磁石5として、例えば、異なる磁極の複数の永久磁石を配備することができる。
【0026】
駆動磁石5と駆動コイル4の間には、通常空隙が設けられており、その中に磁気回路が形成される。駆動力以外に、運搬ユニットTEを運搬区間2に保持するための保持力を発生させることもできる。平面モーターとして構成されたLLMの場合、保持力の代わりに、運搬ユニットTEを浮遊状態に保持して、空隙を保つための逆向きの浮遊力を発生させることもできる。運搬区間2には、運搬ユニットTEの好適なガイド部品、例えば、回転可能に軸支された車輪9と協力して動作する好適なガイド機器8(図2を参照)を配備することもできる。これによって、一方で、例えば、コーナリングフォースによって、運搬ユニットTEが望ましくない形で運搬区間2から外れないことを保証できる。これによって、他方で、空隙をほぼ一定に保持することもでき、このことは、制御を改善する。
【0027】
図示されて例では、移動方向が運搬区間2の構造又は形状によって規定され、その結果、所与の移動方向における運搬ユニットTEの一次元の動きが可能である。しかし、冒頭で述べた通り、当然のことながら運搬セグメントTSが運搬面を構成して、その面内に一つ又は複数の運搬ユニットTEを少なくとも二次元形態で複数の移動方向に動かすことができる所謂平面モーターとしてもLLMを構成することができるので、図示された「一次元の」実施構成は単なる例であると理解されたい。従って、平面モーターでは、駆動コイルが一次元の配置方向に順番に配置されるだけでなく、複数の配置方向に配置されている。
【0028】
例えば、第一のグループの駆動コイル4を第一の配置方向に順番に配置して、第二のグループの駆動コイル4を第一の配置方向と異なる第二の配置方向に順番に配置することができる。例えば、第一の平面に第一のグループの駆動コイル4を配置することができ、第一の平面の上方又は下方に在る第二の平面に第二のグループの駆動コイル4を配置することができる。しかし、同じ面内に配置することも可能である。二つの配置方向は、例えば、互いに直交するか、或いはそれ以外の角度で互いに交差することができる。以下では、例えば、図示された一次元の運搬装置1に基づき本発明を説明する。しかし、当然のことながら、本発明には、平面モーターの形の複数次元の運搬装置も含まれる。
【0029】
ここで、運搬区間2は、それぞれ複数の運搬セグメントTSから構成される二つの別個の運搬区間区画2a,2bを有する。しかし、当然のことながら、それよりも多い又は少ない運搬区間区画2iを配備することもできる。最も簡単な場合、単一の運搬セグメントTSだけを配備して、運搬区間2を構成することもできる。これらの運搬セグメントTSは、例えば、これまた底面に固定して配置された好適な動かない保持機器3に固定することができる。図示された例では、保持機器3は、(図1に図示されていない)ガイド機器8によって接続されている。保持機器3とガイド機器8は、一緒になって固定位置の構造を構成し、この構造に、個々の運搬セグメントが保持されている。
【0030】
二つの運搬区間区画2a,2bが重なり合う領域が、運搬区間区画2a,2bの間で好適な運搬ユニットTEを受け渡しできる所謂受け渡し位置である。この場合、好適な運搬ユニットTEとは、例えば、運搬ユニットTE2により示される通り、互いに逆の側に駆動磁石5a,5bを有する運搬ユニットTEであると理解されたい。従って、移動パスB1によって示される通り、第一の運搬区間区画2aの駆動コイル4が駆動磁石5aと協力して動作することによって、閉じた第一の運搬区間区画2aに沿って運搬ユニットTE2を動かすことができる。しかし、第二の運搬区間区画2bの駆動コイル4が駆動磁石5bと協力して動作することによって、ここでは、開いた第二の運搬区間区画2bに運搬ユニットTEを引き渡して、第二の運搬区間区画2bに沿って動かすこともできる。
【0031】
運搬ユニットTEの動きの制御は、例えば、好適なハードウェア及び/又はソフトウェアとして実現できる好適な制御ユニット6によって行われる。この制御ユニット6は、例えば、運搬ユニットTEの動きを外部の装置、例えば、産業ロボットなどの取扱装置の動きと同期させるために、例えば、これまた(図示されていない)上位の設備制御ユニットと通信することができる。この制御ユニット6に好適なコントローラを実装することもでき、それを用いて、運搬ユニットTEの所定の運動変量、例えば、位置、速度などを調節することができる。例えば、制御ユニット6によって駆動される別の下位のコントロールユニットを配備することもできる。
【0032】
例えば、各運搬セグメントTSの駆動コイル4を駆動するために、運搬セグメントTS毎に、独自のセグメントコントロールユニット7を配備することができる。図1では、このことが、代表して二つの運搬セグメントTSに対してだけ示されている。運搬セグメントTSには、一般的に、駆動コイル4に必要な電気変量(電流、電圧)を好適な手法で提供する(図示されていない)パワーエレクトロニクス機器を配備することもできる。運搬ユニットTEの所望の運動プロファイルに応じて、制御ユニット6が、それに対応して駆動コイル4を駆動して、運搬ユニットを所望の手法で動かすための移動磁界を移動方向に発生させる。有利には、各駆動コイル4は、それ以外の駆動コイル4と独立して個別に駆動することができる。
【0033】
図2の左側には、運搬セグメントTSの領域内における運搬区間2の一つの区画が、運搬ユニットTEが無い形の(移動方向に対して直角に)前方から見た図で図示されている。図2の右側は、運搬ユニットTEが在る形の(移動方向における)側面図を図示している。図1に基づき説明した通り、運搬セグメントTSは、一つ又は複数の好適な固定位置の保持機器3に固定することができ、図2には、一つの保持機器3だけが図示されている。この保持機器3には、ガイド機器8が配備されている。このガイド機器8は、運搬区間2全体に沿って、有利には、連続して、即ち、中断すること無く延びている。このガイド機器8は、例えば、保持機器3と固定的に接続する、例えば、ねじ止めすることができる。図示された例では、ガイド機器8は、上方のガイドレールと下方のガイドレールを備えている。ガイド機器8と協力して動作する回転可能なローラー又は車輪9を運搬ユニットTEに配置することができる。例えば、運搬ユニットTEは、一方の側(又は互いに逆の側)に駆動磁石5が配置された基礎部材10を備えることができる。この基礎部材10の側方に、車輪9を回転可能な形で軸支して配置することができる。図示された例では、上方のガイドレール8が、車輪9を転がすための溝を有する。これによって、横方向に、即ち、移動方向に対して直角の方向に運搬ユニットTEを案内することができる。
【0034】
図示された例では、運搬セグメントTSがガイド機器8に固定されている。この場合、固定は、有利には、移動方向における運搬セグメントTSの熱膨張が可能であり、その結果、望ましくない機械的な応力と、場合によっては、変形とを生じさせないように行われている。図示された例では、運搬セグメントTSが、その運搬セグメントTSの長手方向に対して中央の所に配置された一つの固定ベアリング12と、それぞれ終端の領域に配備された二つの可動ベアリング13とによりガイド機器8に固定されている。図2では、これらのベアリング12,13が単に模式的に図示されており、構造的に好適な手法で構成することができる。そのため、固定ベアリング12の所では、運搬セグメントTSがガイド機器8と固定的に接続されており、その結果、運搬セグメントTSの熱膨張の際に、相対的な動きが起こらない。熱膨張は可動ベアリング13によって吸収され、その結果、運搬セグメントTSが、固定ベアリング12を出発点として、中心の周りをほぼ対称的に互いに逆方向に膨張することができる。従って、図2で、例えば、運搬セグメントTSi,TSi+1,TSi-1により表示されている通り、互いに連続する運搬セグメントTSが、移動方向に見て、有利には、互いに間隔(セグメント間隔s)を開けた形でガイド機器8に配置されている。
【0035】
図示された例では、運搬セグメントTSが、セグメント支持体14と、セグメント支持体に配置された固定子ユニット15とを備えている。このセグメント支持体14は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム含有材料から構成することができる。この固定子ユニット15は、有利には、鉄又は好適な鉄含有材料から構成される。この固定子ユニット15には、駆動コイル4が好適な手法で固定されている。そのため、固定子ユニット15は、有利な手法により駆動コイル4に対する鉄心を形成する。運搬セグメントTSの運搬ユニットTEの方を向いた側には、少なくとも駆動コイル4を遮蔽して、ほぼ閉鎖された面を形成するために、好適な金属材料から成るセグメントカバー16を配備することもできる。運搬セグメントTSの駆動コイル4に対して逆の裏側には、好適な手法で駆動コイル4と電気的に接続されたパワーエレクトロニクス機器17を配置することができる。このパワーエレクトロニクス機器17は、例えば、一つ又は複数の周知の基板又は回路基板の形で構成することができ、この基板の上に、相応の電子部品が配備されている。
【0036】
運搬セグメントTSには、更に、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数の位置センサー18iが、それぞれ定められたセンサー位置Xiの所に配備されている。これらの位置センサー18iは、運搬ユニットTEが、特に、駆動磁石5が発生する磁界が各位置センサー18のセンサー領域内に在る場合に、それぞれセンサー信号を発生させる。この場合、位置センサー18iは、運搬セグメントTSにおいて、有利には、定められたセンサー位置Xiの所に配置され、このセンサー位置Xiは、例えば、運搬装置1の固定位置の基準点PBに対して相対的に定めることができ、この基準点は、例えば、ガイド機器8又はそれ以外の任意の箇所に置くことができる(図1)。この場合、位置センサー18iのセンサー位置Xiは、有利には、所与の基準温度θ、例えば、20°C~30°Cの範囲内の平均的な周囲温度に対して定められる。
【0037】
この場合、位置センサー18iは、図2に図示されている通り、定められた、有利には、一定のセンサー間隔(L=一定)で移動方向に互いに間隔を開けて配置されている。しかし、不規則な間隔(L≠一定)を規定することもできる。センサー間隔Lは、例えば、それぞれ二つの隣り合う位置センサー18iの間の中心により計測することができ、例えば、5~30mmの範囲内であるとすることができる。例えば、運搬セグメントTSの両端の二つの位置センサー18iまでの全ての位置センサー18iを一定の間隔を開けて配置することができる。これらの両端の二つの位置センサー18iは、例えば、それぞれその前に在るセンサーまでの間隔を短くすることができ、その結果、各セグメント終端までの十分に大きな間隔が規定される。これに追加して、場合によっては、二つの運搬セグメントTSi-1,TS,TSi+1の間の移行領域内に、これらの運搬セグメントTSi-1,TS,TSi+1の間の移行領域内の状況を特に観察するために(図示されていない)追加の位置センサー18を配備することができる。
【0038】
一定数の位置センサー18iに対して定められたセンサー位置Xiは、例えば、これまた運搬装置1の固定位置の基準点PB(図1)に関連付けることができる。位置センサー18iによって検出されたセンサー信号は、例えば、運搬装置1の制御ユニット6(図1)などの制御ユニットに送られる。そして、制御ユニット6は、受け取った位置センサー18iのセンサー信号に基づき、運搬装置1の基準点PBに対して相対的な運搬ユニットTEの運搬ユニット位置を特定する。この基準点PBに基づき、例えば、産業ロボットなどの取扱装置と運搬ユニット位置を同期させることができる。
【0039】
位置センサー18iは、例えば、移動方向に固定子ユニット15に対して平行に延びるセンサープレート20に配置することができる。図示された例では、例えば、二つの別個のセンサープレート20が配備されており、これらのプレートは、セグメント支持体14におけるガイド機器8の上方のガイドレールとセンサーユニット15の間に配置されている。しかし、当然のことながら、それよりも多い又は少ないセンサープレート20を使用することもでき、センサープレート20を運搬セグメントTSのそれ以外の箇所に配置することもできる。少なくとも一つのセンサープレート20は、如何なる場合でも、そこに在る位置センサー18iがセンサー領域内における運搬ユニットTEの存在を検知できるように配置される。パワーエレクトロニクス機器17と同様に、センサープレート20は、例えば、周知の基板又は回路基板として構成することができ、位置センサー18は、周知のAMRセンサー又はTMRセンサーの形で構成することができる。
【0040】
冒頭で述べた通り、運搬装置1の動作時に、通常は運搬セグメントTSにおいて、特に、駆動コイル4とパワーエレクトロニクス機器17の領域において熱の発生が起こる。このことは、運搬セグメントTSのセグメント温度θの上昇を引き起こし、それが、更なる結果として、移動方向における運搬セグメントTSの熱膨張を引き起こす。この熱膨張の大きさは、例えば、運搬セグメントTSの基準温度θ、セグメント温度θ及びコンポーネントの使用材料に依存する。
【0041】
図示された例では、セグメント支持体14が、相応の膨張率αALを有するアルミニウムから構成され、固定子ユニット15が、相応の膨張率αFEを有する鉄から構成され、センサープレート20が、相応の膨張率αKUを有する好適なプラスチックから構成されている。この場合、αAL>αFE>αKUが成り立ち、αKUは、ほぼ無視できる。このことから、センサープレート20が固定子ユニット15及びセグメント支持体14と比べて無視できる小さな熱膨張を起こすことは明らかである。即ち、温度の上昇時に、固定子ユニット15とセグメント支持体14は異なる形で膨張するが、位置センサー18i又はセンサープレート20は非常に僅かしか膨張しない。これに追加して、センサープレート20全体が、発生する機械的な応力によって位置シフトを引き起こす可能性がある。ここで、これらの効果は、温度の上昇時に、移動方向に見て、それぞれ既知のセンサー位置Xiに対して相対的な位置センサー18iの或る程度のセンサー変位ΔXiを生じさせ、その結果、制御ユニット6によって特定される運搬ユニット位置が最早正しくないことを引き起こす。
【0042】
従って、本発明では、運搬装置1に、特に、運搬セグメントTSに、移動方向に互いに間隔を開けて配置された、それぞれ運搬セグメントTSの局所的なセグメント温度θSiを検出する複数の温度センサー19iが配備される。これに代わって、或いはこれに追加して、制御ユニット6に、運搬セグメントTSの局所的なセグメント温度θSiを特定するための温度モデルを保存することができる。そのために、制御ユニット6は、運搬セグメントTSの熱膨張を考慮するために、所与の補正モデルを用いて、特定された局所的なセグメント温度θSiに基づき運搬ユニット位置を校正するように構成される。この場合、温度センサー19iは、例えば、図2に図示されている通り、運搬セグメントTSの局所的なセグメント温度θSiを直に検出するために、運搬セグメントTSに、有利には、センサープレート20に直に配置することができる。しかし、基本的に、例えば、赤外線センサーなどの運搬セグメントTSの局所的なセグメント温度θSiを離れた所から検出できる好適なセンサーを温度センサー19iとして使用することもできる。そのため、そのようなセンサーは、必ず運搬セグメントTSに直に配置しなければならないのではなく、例えば、運搬セグメントTSから間隔を開けた所に、例えば、好適な(図示されていない)固定位置の構造に配置することもできる。
【0043】
例えば、最も簡単な場合、校正済みの運搬ユニット位置を局所的なセグメント温度θSiの関数として表現した特性曲線を補正モデルとして使用することができる。しかし、校正済みの運搬ユニット位置を局所的なセグメント温度θSiと少なくとも一つの別のパラメータとの関数として表現した特性マップを補正モデルとして使用することもできる。この(又はこれらの)別のパラメータによって、例えば、運搬セグメントTSの熱膨張に影響を及ぼす別の影響を及ぼす変量、例えば、運搬セグメントTSの建築構造、使用する材料又はセンサー位置Xiを定めた時の基準温度θを考慮することができる。この補正モデル(特に、特性曲線又は特性マップ)は、例えば、既知の参照表として制御ユニット6に、或いは制御ユニット6が通信する上位の(設備)制御ユニットに保存することができる。制御ユニット6は、運搬装置1の動作時に、検出又は特定された局所的なセグメント温度θSiに応じて、補正モデルから校正済みの運搬ユニット位置を特定することができる。
【0044】
この補正モデルは、例えば、運搬セグメントTSの温度に依存する補正係数を含むことができるとともに、特定された運搬ユニット位置に、この温度に依存する補正係数を乗算して、運搬ユニット位置を校正するように、そのため、校正済みの運搬ユニット位置を特定するように、制御ユニット6を構成することができる。一般的に、この補正モデルは、特に、補正係数は、例えば、試験によって実験的に特定するか、或いは物理的な関係に基づくこともできる。例えば、運搬ユニット位置の測定を異なる温度で行うことができ、測定された運搬ユニット位置を局所的なセグメント温度θSiの関数の形で校正済みの運搬ユニット位置として補正モデルに保存することができる。
【0045】
有利な手法により、例えば、20~30°Cの所与の基準温度θに関して、運搬セグメントTSにおける位置センサー18iのセンサー位置Xiが定められるとともに、補正モデルが、運搬セグメントTSの(温度センサー19i及び/又は温度モデルにより)特定された局所的なセグメント温度θSi、基準温度θ及び所与の熱膨張係数Kに基づき各位置センサー18iに関する(移動方向に見た)センサー変位ΔXiを特定することを含む。そして、制御ユニット6は、それぞれ特定されたセンサー変位ΔXiに基づき、位置センサー18iに関する校正済みのセンサー位置Xicorrを特定して、この校正済みのセンサー位置Xicorrに基づき運搬ユニット位置を校正することができる。
【0046】
センサー変位ΔXiを特定するために、例えば、これまた少なくともセグメント温度θに依存する形で位置センサー18iのセンサー変位ΔXi又は校正済みのセンサー位置Xicorrを表現した特性曲線又は特性マップを(例えば、参照表として)制御ユニット6に保存することができる。これによって、例えば、位置センサー18iのセンサー変位ΔXiを特定するために、或いは校正済みのセンサー位置Xicorrを直に特定するために、局所的なセグメント温度θSiと基準温度θ(例えば、平均的な周囲温度)の間の温度差及び膨張係数Kを考慮した、熱膨張の既知の物理的な関係を使用することができる。
【0047】
この膨張係数Kは、ほぼ使用する材料と運搬セグメントTSの構造的な実施形態及び組込状況に依存し、既知であると見做すことができる。例えば、経験的な値を膨張係数Kとして使用するか、例えば、実験により、例えば、異なる温度における熱膨張を測定することにより、膨張係数Kを特定することもできる。しかし、膨張係数Kは、例えば、解析により特定することもできる。運搬セグメントTS、特に、セグメント支持体14が、図示された例の通り、運搬装置1の定められた基準点PBに対する相対的な固定位置が既知である、中央の固定ベアリング12を用いて、運搬装置1の固定位置の構造(ガイド機器8+保持機器3)に固定されている場合、制御ユニット6は、固定ベアリング12の固定位置を出発点として位置センサー18iのセンサー変位ΔXiを特定することができる。そのため、図2に示されている通り、正のセンサー変位ΔXと負のセンサー変位ΔXが得られる。
【0048】
局所的に異なる温度を、従って、局所的に異なる熱膨張を考慮できるためには、局所的なセグメント温度θSiを特定することが有利である。このケースは、例えば、異なる駆動コイル4が、例えば、所定の予め与えられた運搬プロセスのために、移動方向に見て異なる大きさの負荷を加えられて、その結果、これらの駆動コイルが異なる熱量を発生させる場合であるとすることができる。
【0049】
有利には、温度センサー19iの中の少なくとも一つが、位置センサー18iの中の一つと同じ位置に配置されるか、或いは位置センサー18iの中の少なくとも一つが温度センサー19iの中の一つと構造的に一体化される。図示された例では、斜線を付けたブロックにより表示されている通り、例えば、二つ毎の位置センサー18iが、各温度センサー19iの領域内の局所的なセグメント温度θSiを検出する温度センサー19iとしても構成されている。位置と温度を検出するために組み合わされたセンサーとして、例えば、前記のAMRセンサーを使用することができる。この場合、二つの温度センサー19iの間に在る、温度測定が行われない、位置センサー18iの領域内の局所的なセグメント温度θSiは、隣り合う温度センサー19iの局所的なセグメント温度θSiの平均から特定することができる。この、或いはこれらの温度センサー19iは、例えば、位置センサー18iと同様に、移動方向に固定子ユニット15に対して平行に延びるセンサープレート20に配置することができる。図示された例では、例えば、二つの別個のセンサープレート20が配備されている。しかし、当然のことながら、それよりも多い又は少ないセンサープレート20を使用することもできる。
【0050】
固定子ユニット15は、有利には、駆動コイル4に対する鉄心を形成し、従って、前述した通り、膨張率αFEが既知である鉄含有材料から構成することができる。そして、制御ユニット6は、運搬ユニット位置を補正するための補正モデルにおいて、位置センサー18iのセンサー変位ΔXi又は校正済みのセンサー位置Xicorrを特定する際に、例えば、膨張係数Kにおいて固定子ユニット15の膨張率αFEを考慮することができる。セグメント支持体14は、前述した通り、有利には、相応の膨張率αALが既知であるアルミニウムから構成される。そのため、制御ユニット6は、場合によっては、運搬ユニット位置を補正するための補正モデルにおいて、位置センサー18iのセンサー変位ΔXiを特定する際に、例えば、これまた補正モデルの膨張係数Kにおいてセグメント支持体14の膨張率αALも考慮することができる。
【0051】
運搬セグメントTSは、例えば、移動方向に見て複数(j個)の膨張ゾーンnjに分割することができ、膨張ゾーンnj毎に膨張ΔLnjを計算することができる。そして、所定の位置センサー18iに関するセンサー変位ΔXiは、膨張ゾーンnjの個々の膨張ΔLnjを合計するか、或いは積分することから特定することができる。例えば、膨張ゾーンnjの長さをセンサー間隔Lと一致させることができ、その結果、図2に示されている通り、膨張ゾーンnj毎に一つの位置センサー18iが配備される。このケースでは、膨張ゾーンnjの数jが位置センサー18iの数iに等しい。しかし、基本的に一つの膨張ゾーンnjに複数の位置センサー18iを配置することもできる。このケースでは、一つの膨張ゾーンnjの全ての位置センサー18iに関して、同じセンサー変位ΔXiが特定される。
【0052】
膨張ゾーンnjの位置センサー18iが同時に温度センサー19iである場合、各膨張ゾーンnjに関する局所的なセグメント温度θSnjを直に検出することができる、即ち、θSnj=θSiである。温度センサー19iの無い膨張ゾーンnjに関しては、隣り合う膨張ゾーンnj+1,nj-1の検出された局所的なセグメント温度θSnjの平均から、それぞれ局所的なセグメント温度θSnjを特定することができる。図2の通り、運搬セグメントTSが固定されている場合、運搬セグメントTSは、固定ベアリング12を出発点として二つの方向に膨張し、例えば、運搬セグメントTSが均一に熱せられた場合、固定ベアリング12の周りをほぼ対称的に膨張する。その結果、固定ベアリング12の領域内に配置された位置センサー18iのセンサー変位ΔXiが、固定ベアリング12から離れた所に配置された(例えば、可動ベアリング13の領域内の)別の位置センサー18iよりも小さくなる。膨張ゾーンnjの膨張ΔLnjは、以下の関係式によって決定することができる。
ΔLnj=Knj*(θSnj-θ
ここで、KnjとθSnjは、各膨張ゾーンnjの膨張係数と(局所的な)セグメント温度)であり、θは、例えば、20~30°Cの基準温度である。図示されている通り、膨張ゾーンnjの長さがセンサー間隔Lに等しい場合、それぞれ温度センサー19iにより検出された局所的なセグメント温度θSiを膨張ゾーンnjの局所的なセグメント温度θSnjとして使用することができる。しかし、例えば、全ての膨張ゾーンnjに対して、同じ膨張係数Knj=Kを使用することもできる。そして、上記の関係式が、ΔLnj=K*(θSnj-θ)として簡単になる。そして、各位置センサー18iのセンサー変位ΔXiを得るために、固定ベアリング12を出発点として、個々の膨張ΔLniを二つの方向において合算することができる。
【0053】
これに追加して、任意選択として、補正モデルにおいて、以下の関係式に基づきセンサープレート20全体の位置シフトを考慮することもできる。そのため、センサープレート20全体の位置シフトは、センサープレート20上の各位置センサー18iに関して同じ大きさである。
offset=K*(θ-θ
ここで、Xoffsetは、センサープレート20全体の位置シフトであり、Kは、位置シフト率であり、θは、例えば、測定された、或いはモデルから得られた局所的なセグメント温度θSi(又は平均的な局所的なセグメント温度θSi)に等しいとすることができる、センサープレート20の温度である。θは、これまた基準温度である。
【0054】
以下において、有利な位置補正のフローを再度短く要約する。利用可能な位置センサー18iの検出されたセンサー信号と運搬装置1の基準点PBに対して相対的な既知のセンサー位置Xiから運搬ユニットTEの運搬ユニット位置の特定が行われる。ここで、膨張ゾーンnj毎に、検出された、或いはモデルから得られた局所的なセグメント温度θSnjを用いて、有利には、定義された基準温度θ(例えば、θ=30°C)に関する、位置センサー18i毎の温度に依存するセンサー変位ΔXiを特定することができる。
【0055】
運搬セグメントTSは、例えば、(センサーの中心間の)センサー間隔Lに等しい、それぞれ所定の長さの一定数(j個)の同じ大きさの膨張ゾーンnjを有する。そのため、各膨張ゾーンnjが一つの位置センサー18iに割り当てられる。これに追加して、セグメント終端に対して、より小さな長さ(例えば、それぞれL-所定のセンサー周縁間隔L<L)の二つの膨張ゾーンnjを規定することができる。全ての利用可能な温度センサー19i(ここでは、同時に位置センサー18と温度センサーである二つ毎のセンサー)が制御ユニット6によって読み取られる。温度センサー19iが配置されている膨張ゾーンnjの局所的なセグメント温度θSnjは、各温度センサー19iによって直に検出することができる、即ち、θSnj=θSiである。独自の温度センサー19iが無い膨張ゾーンnjの局所的なセグメント温度θSnjは、隣り合う温度センサー19i+1,19i-1の温度の平均から特定することができる。セグメント終端における二つの膨張ゾーンnjに関するセグメント温度θSnjとしては、例えば、それぞれそこに在る温度センサー19iの測定温度を使用することができる。
【0056】
位置センサー18iの各センサー変位ΔXi,ΔXiは、各センサー位置Xiに関して、固定ベアリング12を出発点として二つの方向に対して、上記の関係式ΔLnj=Knj*(θSnj-θ)に基づき各膨張ゾーンnjの長さ変化ΔLnjを合計することによって特定することができる。第一の半分(図2の左側)に関しては、ΔXi=+ΣΔLnjが成り立ち、それぞれ他方の半分(例えば、図2の右側)に関しては、ΔXi=-ΣΔLnjが成り立つ。
【0057】
これに追加して、上記の関係式Xoffset=K*(θ-θ)に基づき、センサープレート20全体の位置シフトXoffsetを考慮することができる。そして、このセンサープレート20の位置シフトXoffsetは、次の通り(ΔXi_gesamt=Xoffset+ΔX)の全体的なセンサー変位ΔXi_gesamtとして、特定されたセンサー変位ΔXiに加算することができる。次に、以下の関係式に基づき、位置センサー18iに関する関心を寄せている校正済みのセンサー位置Xi_corrを得るために、そのようにして特定した全体的なセンサー変位ΔXi_gesamtを基準温度θにおける既知のセンサー位置Xiに加算することができる。
i_corr=Xi+ΔXi_gesamt
【0058】
これに追加して、冒頭で述べた通り、運搬セグメントTSを冷却する(図示されていない)冷却機器を配備することもできる。そのために、例えば、駆動コイル4とパワーエレクトロニクス機器17の間に好適なヒートシンクを配備して、運搬装置1の動作時に(例えば、駆動コイル4及び/又はパワーエレクトロニクス機器17が)発生する熱を運搬セグメントTSから排出することができる。例えば、冷媒が貫流する好適な熱交換器をヒートシンクとして配備することができる。この冷却機器は、場合によっては、同じく運搬装置1の制御ユニット6によって制御することができる。例えば、冷却機器においても、温度センサー19iによって検出された(局所的な)(実際の)セグメント温度θSiを所望の予め与えられた(目標の)セグメント温度θに調節するための実際値として使用することができる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの運搬セグメント(TS)を備えた運搬装置(1)であって、この運搬セグメントに沿って、少なくとも一つの運搬ユニット(TE)を少なくとも一次元形態で動かすことが可能であり、この運搬セグメント(TS)には、運搬ユニット(TE)が各位置センサー(18i)のセンサー領域内に在る時に、それぞれセンサー信号を発生させるために、運搬ユニット(TE)の移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数(i個)の位置センサー(18i)が配備されており、この運搬装置(1)には、受け取った位置センサー(18i)のセンサー信号に依存して、運搬装置(1)の定められた基準点(PB)に対して相対的な運搬ユニット(TE)の運搬ユニット位置を特定するように構成された制御ユニット(6)が配備されている運搬装置において、
この運搬装置(1)に、有利には、この運搬セグメント(TS)に、運搬セグメント(TS)の局所的なセグメント温度(θSi)をそれぞれ検出する、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数(i個)の温度センサー(19i)が配備されていることと、この制御ユニット(6)に、局所的なセグメント温度(θSi)を計算するための温度モデルが保存されていることとの中の一つ以上であることと、
この制御ユニット(6)が、運搬セグメント(TS)の熱膨張を考慮するために、所与の補正モデルを用いて、特定された局所的なセグメント温度(θSi)に基づき運搬ユニット位置を校正するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運搬装置(1)において、
前記の補正モデルが運搬セグメント(TS)の温度に依存する補正係数を含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、運搬ユニット位置を校正するために、特定された運搬ユニット位置に、この温度に依存する補正係数を乗算するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運搬装置(1)において、
前記の複数(i個)の位置センサー(18i)に対して、それぞれ所与の基準温度(θ)に関するセンサー位置(Xi)が定められていることと、
前記の補正モデルが、運搬セグメント(TS)の特定された局所的なセグメント温度(θSi)、基準温度(θ)及び所与の膨張係数(K)に基づき、各位置センサー(18i)に関するセンサー変位(ΔXi)を特定することを含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、この特定されたセンサー変位(ΔXi)に基づき、各位置センサー(18i)に関する校正済みのセンサー位置(Xi_corr)を特定して、この校正済みのセンサー位置(Xi_corr)に基づき運搬ユニット位置を校正するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の温度センサー(19i)の中の少なくとも一つが、運搬セグメント(TS)において位置センサー(18i)の中の一つと同じ位置に配置されていることと、
前記の位置センサー(18i)の中の少なくとも一つと温度センサー(19i)の中の少なくとも一つが構造的に一体化されていることと、の中の一つ以上を特徴とする運搬装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の運搬セグメント(TS)が、運搬装置(1)の定められた基準点(PB)に対して相対的な固定位置が既知である、有利には、移動方向に対して中央の所に在る固定ベアリング(12)を用いて、運搬装置(1)の固定位置のガイド機器(8)に固定されたセグメント支持体(14)を備え、前記の複数(i個)の位置センサー(18i)が、このセグメント支持体(14)に配置されていることと、
前記の制御ユニット(6)が、基準位置を出発点として運搬ユニット位置を校正するように、特に、基準位置を出発点として位置センサー(18i)のセンサー変位(ΔXi,ΔXi)を特定するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の運搬セグメント(TS)に、有利には、前記のセグメント支持体(14)に、少なくとも一つの固定子ユニット(15)が配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)の移動方向を定義する少なくとも一つの配置方向に順番に配置されており、これらの駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)と電磁気的に協力して動作して、運搬ユニット(TE)を移動方向に少なくとも一次元形態で動かすための駆動力を発生させるように、制御ユニット(6)によって駆動可能であること、或いは
前記の運搬セグメント(TS)に、有利には、前記のセグメント支持体(14)に、一つの固定子ユニット(15)が配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)のそれぞれ一つの移動方向を定義する少なくとも二つの異なる配置方向に順番に配置されており、これらの駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)と電磁気的に協力して動作して、運搬ユニット(TE)を二つの移動方向に少なくとも二次元形態で動かすための駆動力を発生させるように、制御ユニット(6)によって駆動可能であること、を特徴とする運搬装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の複数(i個)の位置センサー(18i)及び/又は複数(i個)の温度センサー(19i)が、運搬ユニット(TE)の移動方向に運搬セグメント(TS)に対して、特に、固定子ユニット(15)に対して平行に延びるセンサープレート(20)に配置されており、このセンサープレート(20)が、有利には、セグメント支持体(14)に配置されていることを特徴とする運搬装置。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の運搬装置(1)において、
前記の固定子ユニット(15)が、膨張率(αFE)が既知である鉄含有材料から構成されることと、前記のセグメント支持体(14)が、膨張率(αAL)が既知である材料、有利には、アルミニウム含有材料から構成されることとの中の一つ以上であることと、
これらの固定子ユニット(15)の膨張率(αFE)及び/又はセグメント支持体(14)の膨張率(αAL)が補正モデルにおいて考慮されることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の運搬装置(1)において、
前記の補正モデルが、センサープレート(20)の温度(θ)、センサープレート(20)の位置シフト率(K)及び基準温度(θ)に基づき、センサープレート(20)の位置シフト(Xoffset)を特定することを含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、このセンサープレート(20)の位置シフト(Xoffset)と特定されたセンサー変位(ΔX)から、少なくとも一つの位置センサー(18)の全体的なセンサー変位(ΔX_gesamt)を特定して、この全体的なセンサー変位(ΔX_gesamt)を校正済みのセンサー位置(Xcorr)を特定するために使用するように構成されていることと、を特徴とする運搬装置。
【請求項10】
少なくとも一つの運搬セグメント(TS)を備えた運搬装置(1)を動作させる方法であって、この運搬セグメントに沿って、少なくとも一つの運搬ユニット(TE)が少なくとも一次元形態で動かされ、この運搬セグメント(TS)には、移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数(i個)の位置センサー(18i)が配備されており、これらの位置センサー(18i)は、運搬ユニット(TE)が各位置センサー(18i)のセンサー領域内に在る時に、それぞれセンサー信号を発生させ、制御ユニット(6)が、受け取った位置センサー(18i)のセンサー信号に基づき、運搬装置(1)の定められた基準点(PB)に対して相対的な運搬ユニット(TE)の運搬ユニット位置を特定する方法において、
これらの運搬ユニット(TE)の移動方向に互いに間隔を開けて配置された複数(i個)の温度センサー(19i)を用いて、運搬セグメント(TS)の局所的なセグメント温度(θSi)がそれぞれ検出されることと、制御ユニット(6)に実装された、運搬セグメント(TS)の温度モデルを用いて、運搬セグメント(TS)の局所的なセグメント温度(θSi)が特定されることとの中の一つ以上であることと、
この制御ユニット(6)が、運搬セグメント(TS)の熱膨張を考慮するために、所与の補正モデルを用いて、この特定された局所的なセグメント温度(θSi)に基づき運搬ユニット位置を校正することと、を特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記の補正モデルが運搬セグメント(TS)の温度に依存する補正係数を含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、運搬ユニット位置を校正するために、特定された運搬ユニット位置に、この温度に依存する補正係数を乗算することと、を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、
前記の複数(i個)の位置センサー(18i)に対して、それぞれ所与の基準温度(θ)に関するセンサー位置(Xi)が定められることと、
前記の補正モデルが、運搬セグメント(TS)の特定された局所的なセグメント温度(θSi)、基準温度(θ)及び所与の膨張係数(K)に基づき、各位置センサー(18i)に関するセンサー変位(ΔXi)を特定することを含むことと、
前記の制御ユニット(6)が、この特定されたセンサー変位(ΔXi)に基づき、各位置センサー(18i)に関する校正済みのセンサー位置(Xi_corr)を特定して、この校正済みのセンサー位置(Xi_corr)に基づき運搬ユニット位置を校正することと、を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の方法において、
前記の温度センサー(19i)の中の少なくとも一つが、位置センサー(18i)の中の一つと同じ位置に配置されることと、
構造的に一体化された少なくとも一つの位置センサー(18)と温度センサー(19)が使用されることと、の中の一つ以上を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の方法において、
前記の運搬セグメント(TS)が、運搬装置(1)の定められた基準点(PB)に対して相対的な固定位置が既知である、有利には、移動方向に対して中央の所に在る固定ベアリング(12)を用いて、運搬装置(1)の固定位置のガイド機器(8)に固定されたセグメント支持体(14)を備え、前記の複数(i個)の位置センサー(18i)が、このセグメント支持体(14)に配置されることと、
前記の制御ユニット(6)が、基準位置を出発点として運搬ユニット位置を校正する、特に、基準位置を出発点として位置センサー(18i)のセンサー変位(ΔXi,ΔXi)を特定することと、を特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載の方法において、
前記の運搬セグメント(TS)に、有利には、前記のセグメント支持体(14)に、一つの固定子ユニット(15)が配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)の移動方向を定義する少なくとも一つの配置方向に順番に配置されており、これらの駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)と電磁気的に協力して動作して、駆動力を発生させるように、制御ユニット(6)によって駆動され、この駆動力によって、運搬ユニット(TE)が移動方向に少なくとも一次元形態で動かされること、或いは
前記の運搬セグメント(TS)に、有利には、前記のセグメント支持体(14)に、一つの固定子ユニット(15)が配備され、この固定子ユニットには、複数の駆動コイルが、運搬ユニット(TE)のそれぞれ一つの移動方向を定義する少なくとも二つの異なる配置方向に順番に配置されており、これらの駆動コイル(4)が、運搬ユニット(TE)と電磁気的に協力して動作して、駆動力を発生させるように、制御ユニット(6)によって駆動され、この駆動力によって、運搬ユニット(TE)が少なくとも二つの移動方向に少なくとも二次元形態で動かされること、を特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか1項に記載の方法において、
前記の複数(i個)の位置センサー(18i)及び/又は複数(i個)の温度センサー(19i)が、運搬ユニット(TE)の移動方向に運搬セグメント(TS)に対して、特に、固定子ユニット(15)に対して平行に延びるセンサープレート(20)に配置され、この固定子ユニット(15)及び/又はセンサープレート(20)が、有利には、セグメント支持体(14)に配置されることを特徴とする方法。
【国際調査報告】