(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】糸状耐食性ポリエステル/アクリルハイブリッドコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/06 20060101AFI20240614BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20240614BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240614BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240614BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240614BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20240614BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240614BHJP
B60B 3/00 20060101ALI20240614BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240614BHJP
B32B 15/082 20060101ALI20240614BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20240614BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20240614BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20240614BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240614BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240614BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240614BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240614BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C09D175/06
C09D5/03
C09D167/00
C09D133/00
C09D201/00
C09D5/08
C09D5/00 D
B60B3/00 A
B32B15/08 U
B32B15/082 Z
B32B15/09 Z
B32B15/092
B32B15/095
B32B27/26
B32B27/30 A
B32B27/36
B32B27/38
B32B27/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574357
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022072610
(87)【国際公開番号】W WO2022256784
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラリマー、トロイ ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ウッドワー、ブライアン エドワード
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AB03B
4F100AB10B
4F100AB31B
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AK51A
4F100AK53A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CC00C
4F100CC03A
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4J038NA03
4J038PA02
4J038PA07
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、エポキシ官能性アクリルポリマーと、最大10の酸価及び最大20,000g/モルの重量平均分子量を有する第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含むヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーと、酸官能性架橋剤と、ブロック化ポリイソシアネート架橋剤と、を含む粉末コーティング組成物であって、粉末コーティング組成物中の総樹脂固形分に基づいて、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及びブロック化ポリイソシアネート架橋剤の合計を少なくとも45重量%含む、粉末コーティング組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末コーティング組成物であって、
エポキシ官能性アクリルポリマーと、
最大10の酸価及び最大20,000g/モルの重量平均分子量を有する第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含む、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーと、
酸官能性架橋剤と、
ブロック化ポリイソシアネート架橋剤と、を含み、
前記粉末コーティング組成物が、前記粉末コーティング組成物中の総樹脂固形分に基づいて、前記ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及び前記ブロック化ポリイソシアネート架橋剤の合計を少なくとも45重量%含む、粉末コーティング組成物。
【請求項2】
前記粉末コーティング組成物が、前記粉末コーティング組成物中の前記総樹脂固形分に基づいて、前記エポキシ官能性アクリルポリマー及び前記酸官能性架橋剤の合計を10重量%~55重量%含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項3】
前記粉末コーティング組成物が、前記粉末コーティング組成物中の前記総樹脂固形分に基づいて、少なくとも35重量%の前記ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含む、請求項1又は2に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項4】
前記粉末コーティング組成物が、前記粉末コーティング組成物中の前記総樹脂固形分に基づいて、5重量%~50重量%の前記エポキシ官能性アクリルポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項5】
前記粉末コーティング組成物が、前記粉末コーティング組成物中の前記総樹脂固形分に基づいて、前記ヒドロキシル官能性ポリエステルポリエステルポリマー及び前記ブロック化ポリイソシアネート架橋剤の合計を少なくとも65重量%含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項6】
前記エポキシ官能性アクリルポリマーが、(i)前記エポキシ官能性アクリルポリマーを形成する成分の10重量%超かつ22重量%未満の範囲内の量を含む、少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、前記成分から得られる、請求項1~5のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項7】
(i)前記少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーが、エポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項6に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項8】
(i)前記エポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーが、モノエポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項7に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項9】
前記エポキシ官能性アクリルポリマーを形成する前記成分が、(ii)少なくとも1つの非官能性エチレン性不飽和モノマーを更に含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項10】
前記第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが、最大5の酸価を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項11】
前記第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが、少なくとも20、例えば20~200、例えば30~100のヒドロキシル値を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項12】
前記ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが、前記第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーとは異なる第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項13】
前記第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが、前記第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーのヒドロキシル値よりも大きいヒドロキシル値を有する、請求項12に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項14】
前記第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが、少なくとも150、例えば少なくとも200のヒドロキシル値を有する、請求項12又は13に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項15】
前記第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが、エポキシ官能性モノマーを実質的に含まない反応混合物から形成される、請求項1~14のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項16】
前記酸官能性架橋剤が、多官能性酸官能性架橋剤を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項17】
前記酸官能性架橋剤が、ドデカン二酸を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項18】
前記ブロック化イソシアネート架橋剤が、ウレトジオン;カプロラクタム、ピラゾール、トリアゾール、マロネート、オキシム、フェノール、及び/若しくはアルコール、並びに/又はそれらの組み合わせを含むブロック剤を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項19】
前記エポキシ官能性アクリルポリマーが、2,000g/モル~20,000g/モル、例えば、3,000g/モル~15,000g/モル、例えば、5,000g/モル~10,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項20】
前記第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及び前記エポキシ官能性アクリルポリマーが、各々、熱硬化性ポリマーを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項21】
コーティングされた物品であって、
基材と、
前記基材の少なくとも一部分の上に配置された第1のコーティング層であって、請求項1~20のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物から形成された、第1のコーティング層と、を含む、コーティングされた物品。
【請求項22】
前記第1のコーティング層が、トップコート層を含む、請求項21に記載のコーティングされた物品。
【請求項23】
前記第1のコーティング層が、着色された層を含む、請求項21又は22に記載のコーティングされた物品。
【請求項24】
前記第1のコーティング層が、クリアコート層を含む、請求項21又は22に記載のコーティングされた物品。
【請求項25】
前記コーティングされた物品が、前記基材の上に配置された単一のコーティング層を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項26】
前記第1のコーティング層と前記基材の一部との間に配置された第2のコーティング層を更に含む、請求項21~24のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項27】
前記基材が、アルミニウム、鋼、マグネシウム、又はそれらの合金を含む、請求項21~26のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項28】
前記基材が、ホイールを含む、請求項21~27のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項29】
糸状腐食を低減する方法であって、
基材の表面に、請求項1~20のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物を適用することを含む、方法。
【請求項30】
糸状腐食を低減するための、請求項1~20のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビークルで使用されるものを含む金属基材などの基材は、多くの場合、耐食性を提供するためにコーティングが提供される。例えば、基材は、耐食性特性を提供するために耐食性コーティングでコーティングされている。耐食性特性を有するコーティングは、当該基材の上に適用され、経時的な腐食から基材を保護し得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、エポキシ官能性アクリルポリマーと、最大10の酸価及び最大20,000g/モルの重量平均分子量を有する第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含むヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーと、酸官能性架橋剤と、ブロック化ポリイソシアネート架橋剤と、を含む、粉末コーティング組成物であって、粉末コーティング組成物中の総樹脂固形分に基づいて、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及びブロック化ポリイソシアネート架橋剤の合計を少なくとも45重量%含む、粉末コーティング組成物を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の詳細な説明の目的のために、本発明が、明示的に反対の定めがある場合を除き、様々な代替の変形及びステップの順序をとり得ることが理解されるべきである。更に、任意の実施例以外で、又は別段の指示がない限り、例えば、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量を表す全ての数は、「約」という用語によっていかなる場合も修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有意な桁の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0005】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の例において記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準変動から必然的に得られる特定の誤差を本質的に含有する。
【0006】
また、本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その中に包含される全ての部分範囲を含むことを意図していることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、記載された最小値1と記載された最大値10との間の(及びそれらを含む)全ての部分的な範囲、すなわち、1以上の最小値と、10以下の最大値と、を有することが意図される。
【0007】
本出願では、別段の明記がない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。加えて、本出願では、「及び/又は」がある特定の場合において明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「又は」の使用は、「及び/又は」を意味する。更に、本出願では、「a」又は「an」の使用は、別段の明記がない限り、「少なくとも1つの」を意味する。例えば、「1つの」架橋剤、「1つの」エポキシ官能性ポリマーなどは、これらの項目のうちのいずれかのうちの1つ以上を指す。また、本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、プレポリマー、オリゴマー、及びホモポリマーとコポリマーとの両方を指す。「樹脂」という用語は、「ポリマー」と交換可能に使用される。
【0008】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という移行句(及び他の同等の用語、例えば、「含有する(containing)」及び「含む(including)」)は、「非限定的」であり、不特定の事柄を包含するように限定されていない。「含む」という観点から記載されているが、「から本質的になる」及び「からなる」という用語もまた、本発明の範囲内である。
【0009】
本発明は、エポキシ官能性アクリルポリマーと、最大10の酸価及び最大20,000g/モルの重量平均分子量を有する第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含むヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーと、酸官能性架橋剤と、ブロック化ポリイソシアネート架橋剤と、を含む粉末コーティング組成物であって、粉末コーティング組成物中の総樹脂固形分に基づいて、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及びブロック化ポリイソシアネート架橋剤の合計を少なくとも45重量%含む、粉末コーティング組成物を対象とする。
【0010】
粉末コーティング組成物は、エポキシ官能性アクリルポリマーを含む。エポキシ官能性アクリルポリマーは、当該技術分野で既知の任意の技術によって形成され得る。例えば、エポキシ官能性アクリルポリマーは、付加重合によって形成され得、エポキシ官能性アクリルポリマーは、他の副生成物の共生成なしにモノマーの連結から形成される。エポキシ官能性アクリルポリマーを形成するために使用される成分は、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。
【0011】
粉末コーティング組成物のエポキシ官能性アクリルポリマーは、エチレン性不飽和モノマーから誘導され得る(例えば、エマルション重合による)。本明細書で使用される場合、「エチレン性不飽和」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する基を指す。エチレン性不飽和基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を指す。また、「(メタ)アクリルアミド」及び同様の用語は、アクリルアミド及びメタクリルアミドの両方を指す。
【0012】
エポキシ官能性アクリルポリマーは、少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む成分から得られる。例えば、エポキシ官能性アクリルポリマーは、少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和(メタ)アクリルモノマーから得られ得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、追加のエチレン性不飽和モノマーなどの追加の成分から得られ得る。追加のエチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとは異なっていてもよい。
【0013】
エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、3,4-エポキシ-1-ブテン、(R)-(+)-1,2-エポキシ-9-デセンが挙げられ得る。例えば、1つの非限定的なエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーは、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から市販されているエポキシ包埋剤キットを含み得る。エポキシ官能性エチレン性不飽和(メタ)アクリルモノマーは、モノエポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーを含み得る。
【0014】
エポキシ官能性アクリルポリマーを形成するために使用される成分は、エポキシ官能性アクリルポリマーを形成する成分に基づいて、5重量%超、又は10重量%超、又は15重量%超、又は20重量%超、又は30重量%超、又は40重量%超、又は50重量%超の量でエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。エポキシ官能性アクリルポリマーを形成するために使用される成分は、エポキシ官能性アクリルポリマーを形成する成分に基づいて、最大70重量%、又は最大60重量%、又は最大50重量%、又は最大40重量%、又は最大30重量%の量でエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。エポキシ官能性アクリルポリマーを形成するために使用される成分は、エポキシ官能性アクリルポリマーを形成する成分に基づいて、5重量%~70重量%の範囲、又は10重量%~50重量%の範囲、又は10重量%~40重量%の範囲、又は15重量%~30重量%の範囲、又は20重量%~30重量%の範囲、又は10重量%~22重量%の範囲、又は15重量%~20重量%の範囲の量でエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0015】
エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマー中に少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つのエポキシ官能基を含み得る。エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーがモノエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーであるように、正確に1つのエポキシ官能基を含み得る。エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマー中に1~3つのエポキシ官能基を含み得る。
【0016】
エポキシ官能性アクリルポリマーは、エポキシ官能性アクリルポリマーの反復単位当たり少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つのエポキシ官能基を含み得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、エポキシ官能性アクリルポリマーの反復単位当たり正確に1つのエポキシ官能基を含み得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、エポキシ官能性アクリルポリマーの反復単位当たり1~3つのエポキシ官能基を含み得る。
【0017】
追加のエチレン性不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー、マルチエチレン性不飽和モノマー、又はそれらの組み合わせを含み得る。モノエチレン性不飽和モノマーは、1つのエチレン性不飽和基のみを含むモノマーを指し、マルチエチレン性不飽和モノマーは、2つ以上のエチレン性不飽和基を含むモノマーを指す。
【0018】
エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとは異なる追加のエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシルアルキルエステル、酸基含有エチレン性不飽和モノマー、ビニルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの非限定的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。他の非限定的な例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の2当量の縮合から形成されるジ(メタ)アクリレートアルキルジエステルが挙げられる。ブタンジオール及びヘキサンジオールなどのC2-C24ジオールから形成されたジ(メタ)アクリレートアルキルジエステルも使用され得る。
【0020】
(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの非限定的な例としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
酸基含有エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アスパラギン酸、リンゴ酸、メルカプトスクシン酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
ビニル芳香族モノマーの非限定的な例としては、スチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族モノマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリルアミドモノマーの非限定的な例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビサクリルアミドなどのジ-(メタ)アクリルアミド官能性モノマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
追加のエチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとは異なる官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「官能性エチレン性不飽和モノマー」という用語は、エチレン性不飽和炭素-炭素二重結合に加えて、粉末コーティング組成物の別の成分の官能性と反応性である基を含むエチレン性不飽和モノマーを指す。官能性エチレン性不飽和モノマーは、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバメート基、アミド基、尿素基、カルボキシル基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、種々の反応性官能基のうちの少なくとも1つを有し得る。官能性エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル、及びヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシル官能性モノマーが挙げられる。1つの非限定的な例では、官能性エチレン性不飽和モノマーは、粉末コーティング組成物の別の成分の官能基と反応性であるが、エポキシ官能性アクリルポリマーを得るために使用される少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーのエポキシ官能基と反応性ではない追加の基を含み得る。
【0025】
追加のエチレン性不飽和モノマーは、非官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「非官能性エチレン性不飽和モノマー」という用語は、エチレン性不飽和二重結合に加えて、粉末コーティング組成物の別の成分の官能性と反応性である基を含まないエチレン性不飽和モノマーを指す。非官能性エチレン性不飽和モノマーは、脂肪族非官能性エチレン性不飽和モノマー及び/又は芳香族非官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。非官能性エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、スチレン、メチルメタクリレート、及びn-ブチルメタクリレートが挙げられる。
【0026】
追加のエチレン性不飽和モノマーは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又はより多くの異なるエチレン性不飽和モノマーを含み得る。追加のエチレン性不飽和モノマーは、官能性エチレン性不飽和モノマーのみ、又は非官能性エチレン性不飽和モノマーのみ、又は官能性及び非官能性エチレン性不飽和モノマーの両方の組み合わせを含み得る。追加のエチレン性不飽和モノマーは、複数の異なる非官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。非官能性エチレン性不飽和モノマーは、脂肪族非官能性エチレン性不飽和モノマー及び芳香族非官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0027】
エポキシ官能性アクリルポリマーを形成するために使用される成分は、エポキシ官能性アクリルポリマーを形成する成分に基づいて、少なくとも50重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は78重量%を超える量で追加のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。エポキシ官能性アクリルポリマーを形成するために使用される成分は、エポキシ官能性アクリルポリマーを形成する成分に基づいて、最大90重量%、最大85重量%、又は最大80重量%、又は最大75重量%の量で追加のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。エポキシ官能性アクリルポリマーを形成するために使用される成分は、エポキシ官能性アクリルポリマーを形成する成分に基づいて、50重量%~85重量%の範囲、例えば55重量%~80重量%、又は60重量%~75重量%、又は65重量%~75重量%、又は78重量%~90重量%の範囲で追加のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0028】
エポキシ官能性アクリルポリマーは、少なくとも1,000g/モル、又は少なくとも2,000g/モルの数平均分子量を有し得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、最大8,000g/モル、又は最大5,000g/モルの数平均分子量を有し得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、1,000g/モル~8,000g/モル、例えば2,000g/モル~5,000g/モルの範囲の数平均分子量を有し得る。
【0029】
エポキシ官能性アクリルポリマーは、少なくとも2,000g/モル、又は少なくとも3,000g/モル、又は少なくとも4,000g/モル、又は少なくとも5,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、最大20,000g/モル、又は最大16,000g/モル、又は最大15,000g/モル、又は最大12,000g/モル、又は最大10,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、2,000g/モル~20,000g/モルの範囲、又は3,000g/モル~16,000g/モルの範囲、又は3,000g/モル~15,000g/モルの範囲、又は4,000g/モル~12,000g/モルの範囲、又は5,000g/モル~10,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有し得る。例えば、エポキシ官能性アクリルポリマーは、7,000g/モル~8,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0030】
分子量(数及び重量平均の両方)は、本明細書で使用される場合、ASTM D6579-11に従ってポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって決定される(Waters2414示差屈折計(RI検出器)を備えたWaters2695分離モジュールを使用して実行され、テトラヒドロフラン(THF)を1ml/分の流速で溶出剤として使用し、室温での分離のために2つのPLgel Mixed-C(300×7.5mm)カラムを使用し、ポリマー試料の重量及び数平均分子量は、800~900,000Daの直鎖ポリスチレン標準に対するゲル透過クロマトグラフィーによって測定することができる)。
【0031】
エポキシ官能性アクリルポリマーは、少なくとも25℃、又は少なくとも30℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも50℃のTgを有し得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、最大175℃、又は最大150℃、又は最大100℃、又は最大90℃、又は最大80℃、又は最大70℃のTgを有し得る。エポキシ官能性アクリルポリマーは、25℃~175℃の範囲、又は25℃~150℃の範囲、又は25℃~100℃の範囲、又は25℃~90℃の範囲、又は30℃~90℃の範囲、又は40℃~90℃の範囲、又は40℃~80℃の範囲、又は50℃~80℃の範囲、又は50℃~70℃の範囲のTgを有し得る。本明細書で使用される場合、「Tg」という用語は、別段の指示がない限り、ASTM D3418-12に従って示差走査熱量測定によって測定されるガラス転移温度を指す。
【0032】
エポキシ官能アクリルポリマーは、熱硬化性ポリマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「熱硬化性」ポリマーは、硬化又は架橋時に不可逆的に「硬化」される樹脂を指し、ポリマー成分のポリマー鎖は、共有結合によって一緒に結合される。一度硬化又は架橋すると、熱硬化性ポリマーは、熱の印加時に溶融せず、溶媒に不溶である。更に、本明細書で使用される場合、「熱可塑性」ポリマーは、共有結合によって結合されず、それにより、加熱時に液体の流れを受ける可能性があり、溶媒に可溶であるポリマー成分を含むポリマーを指す。
【0033】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも18重量%、又は少なくとも20重量%の量でエポキシ官能性アクリルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、最大53重量%、又は最大50重量%、又は最大45重量%、又は最大40重量%、又は最大35重量%、又は最大30重量%の量でエポキシ官能性アクリルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、5重量%~53重量%の範囲、又は5重量%~50重量%の範囲、又は10重量%~45重量%の範囲、又は15重量%~40重量%の範囲、又は18重量%~35重量%の範囲、又は20重量%~30重量%の範囲の量でエポキシ官能性アクリルポリマーを含み得る。
【0034】
粉末コーティング組成物は、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含む。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、少なくとも35重量%、又は少なくとも45重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも65重量%の量でヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、最大89重量%、又は最大85重量%、又は最大80重量%の量でヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、35重量%~89重量%の範囲、又は45重量%~85重量%の範囲、又は55重量%~85重量%の範囲、又は55重量%~80重量%の範囲、又は65重量%~80重量%の範囲の量でヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。
【0035】
ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、当該技術分野で既知の任意の技術によって形成され得る。例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、ステップ成長重合によって形成され得、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、二官能性又は多官能性モノマーの反応から形成され、第1のダイマー、次いでトリマー、次いでオリゴマー、及び最終的には長鎖ポリマーを形成する。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するステップ成長重合は、縮合重合であり得、二官能性又は多官能性モノマーの反応は、副生成物化合物を共生成する。例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーの縮合重合は、水又はHClなどの副生成物化合物を共生成し得る。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される成分は、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。
【0036】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、反応物の混合物から形成される反応生成物であり得る。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、任意の数の反応物を含み得る。例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、ポリオール及びポリアシドを含む反応物質の混合物から形成される反応生成物であり得る。
【0037】
例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応剤の混合物は、ポリオールを含み得る。本明細書で使用される場合、「ポリオール」は、2つ以上のヒドロキシル基を含む化合物を指す。例えば、反応物の混合物のポリオールは、3つ以上のヒドロキシル基、又は4つ以上のヒドロキシル基、又は5つ以上のヒドロキシル基を含み得る。反応物の混合物のポリオールは、最大6つのヒドロキシル基、又は最大5つのヒドロキシル基、又は最大4つのヒドロキシル基を含み得る。反応物の混合物のポリオールは、2~6つのヒドロキシル基、又は3~6つのヒドロキシル基、又は3~5つのヒドロキシル基、又は3~4つのヒドロキシル基を含み得る。
【0038】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーの調製のための好適なポリオールとしては、ポリエステルを作製することが知られている任意のポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール;水素化ビスフェノールA;シクロヘキサンジオール;1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブチルエタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールを含むプロパンジオール;1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、及び2-エチル-1,4-ブタンジオールを含むブタンジオール;トリメチルペンタンジオール及び2-メチルペンタンジオールを含むペンタンジオール;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール;1,6-ヘキサンジオールを含むヘキサンジオール;2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、カプロラクトンジオール(例えば、イプシロン-カプロラクトンとエチレングリコールとの反応生成物);ヒドロキシアルキル化ビスフェノール;ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール;トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、ジメチロールシクロヘキサン、グリセリン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、ポリオールの組み合わせを含み得る。例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、少なくとも2つの異なるポリオール、又は少なくとも3つの異なるポリオール、又は少なくとも4つの異なるポリオールを含み得る。
【0040】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、ポリアシドを含み得る。本明細書で使用される場合、「ポリアシド」は、2つ以上の酸又は酸当量基(又はそれらの組み合わせ)を有する化合物を指し、酸のエステル及び/又は無水物を含む。「酸当量基」は、酸基中の非二重結合酸素が、ハロゲン化物成分などの別の成分で置換されていることを意味する。したがって、ポリ酸としては、ポリ酸ハロゲン化物又は他のポリ酸等価物が挙げられ得る。
【0041】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーの調製に好適なポリ酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、オクタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、テトラデカン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサン二酸、水素化C36ダイマー脂肪酸、並びにそれらのエステル及び無水物などのポリ酸が挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリアシドとしては、ポリアシドハロゲン化物が挙げられる。
【0042】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、ポリアシドの組み合わせを含み得る。例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、少なくとも2つの異なるポリアシド、又は少なくとも3つの異なるポリアシド、又は少なくとも4つの異なるポリアシドを含み得る。
【0043】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、追加のモノマーを含み得る。例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、エポキシ官能性モノマーを含み得る。代替的に、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、エポキシ官能性モノマーを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、又は完全に含み得ない。「エポキシ官能性モノマーを実質的に含まない」という語句は、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物が、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物の総樹脂固形分重量に基づいて、1重量%未満のエポキシ官能性モノマーを含有することを意味し、「エポキシ官能性モノマーを本質的に含まない」は、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物が、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物の総樹脂固形分重量に基づいて、0.5重量%未満のエポキシ官能性モノマーを含有することを意味し、「エポキシ官能性モノマーを完全に含まない」は、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物が、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物の総樹脂固形分重量に基づいて、0.1重量%未満のエポキシ官能性モノマーを含有することを意味する。
【0044】
1つの非限定的な実施形態では、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、エポキシ官能性モノマーを含まない。したがって、得られた第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、エポキシ官能性を含まなくてもよい。
【0045】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、追加の成分を含み得る。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用され得る追加の成分の非限定的な例としては、(メタ)アクリル官能性モノマー、シラン官能性モノマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。代替的に、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される反応物の混合物は、(メタ)アクリル官能性モノマー、シラン官能性モノマー、及び/又はそれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0046】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、最大10、又は最大8、又は最大5、又は最大3、又は最大1の酸値を有し得る。例えば、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが0の酸値を有するように、カルボン酸官能基を含まなくてもよい。十分に高い酸価を有する第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、コーティング組成物のゲル化速度の増加をもたらし得、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを、所望の糸状耐食性又は物理的特性を生成し得ないエポキシ官能性アクリルポリマーと反応させる。本明細書で使用される場合、「酸価」は、エンドポイント決定にpH電極を使用し、滴定に使用される溶媒に20/80比のプロプリエングリコール/テトラヒドロフランを使用したことを除いて、ASTM D1639に従って決定される。
【0047】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、少なくとも20、又は少なくとも25、又は少なくとも30のヒドロキシル値を有し得る。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、最大200、又は最大150、又は最大100、又は最大75、又は最大50のヒドロキシル値を有し得る。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、20~200の範囲、又は25~100の範囲、又は30~100の範囲、又は30~75の範囲、又は30~50の範囲のヒドロキシル値を有し得る。本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル値」は、室温で過剰な酢酸無水物による試料のエステル化によって決定される。過剰な酢酸無水物は、加水分解によって酢酸に変換され、標準水酸化カリウムで電位差で滴定される。空試験値(反応なし)と試料測定値との間のミリメートル単位の体積差は、試料のヒドロキシル含有量に対応する。
【0048】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、少なくとも500g/モル、又は少なくとも1,000g/モル、又は少なくとも2,000g/モル、又は少なくとも5,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、最大20,000g/モル、又は最大17,000g/モル、又は最大15,000g/モル、又は最大12,000g/モル、又は最大10,000g/モル、又は最大9,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、500g/モル~20,000g/モルの範囲、又は1,000g/モル~17,000g/モルの範囲、又は2,000g/モル~15,000g/モルの範囲、又は2,000g/モル~12,000g/モルの範囲、又は5,000g/モル~9,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0049】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、熱硬化性ポリマーを含み得る。
【0050】
ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及び第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーのみを含み得る。ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーのみを含む場合、粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、少なくとも35重量%、又は少なくとも45重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも65重量%の量で第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、最大89重量%、又は最大85重量%、又は最大80重量%の量で第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、35重量%~89重量%の範囲、又は45重量%~85重量%の範囲、又は55重量%~85重量%の範囲、又は55重量%~80重量%の範囲、又は65重量%~80重量%の範囲の量で第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。
【0051】
ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、2つ以上のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。ヒドロキシル官能性ポリエステルは、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つの異なるヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。例えば、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及び第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーとは異なっていてもよい。粉末コーティング組成物の第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーに関連して前述したような、反応物の混合物から形成された反応生成物であり得る。第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを形成するために使用される成分は、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。
【0052】
第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーのヒドロキシル値よりも大きいヒドロキシル値を有し得る。第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、少なくとも80、又は少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも200、又は少なくとも250のヒドロキシル値を含み得る。
【0053】
1つの非限定的な実施形態では、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及び第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、30~75のヒドロキシル値を有し得、第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、少なくとも80のヒドロキシル値を有し得る。別の非限定的な実施形態では、ヒドロキシル官能ポリエステルポリマーは、第1のヒドロキシル官能ポリエステルポリマー及び第2のヒドロキシル官能ポリエステルポリマーを含み得、第1のヒドロキシル官能ポリエステルポリマーは、30~50のヒドロキシル値を有し得、第2のヒドロキシル官能ポリエステルポリマーは、少なくとも100のヒドロキシル値を有し得る。
【0054】
第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、最大10、又は最大8、又は最大5、又は最大3、又は最大1の酸値を有し得る。例えば、第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが0の酸値を有するように、カルボン酸官能基を含まなくてもよい。
【0055】
第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーは、熱硬化性ポリマーを含み得る。
【0056】
ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及び第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含む場合、粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%の量で第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、最大86重量%、又は最大78重量%、又は最大70重量%、又は最大60重量%、又は最大50重量%、又は最大40重量%の量で第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、15重量%~86重量%の範囲、又は20重量%~78重量%の範囲、又は20重量%~70重量%の範囲、又は25重量%~60重量%の範囲、又は25重量%~50重量%の範囲、又は30重量%~40重量%の範囲の量で第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。
【0057】
ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーが、第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及び第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含む場合、粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、少なくとも3重量%、又は少なくとも6重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の量で第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、最大40重量%、又は最大30重量%、又は最大25重量%、又は最大20重量%の量で第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、3重量%~40重量%の範囲、又は6重量%~30重量%の範囲、又は10重量%~25重量%の範囲、又は15重量%~20重量%の範囲の量で第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含み得る。
【0058】
第1のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及びエポキシ官能性アクリルポリマーは、各々、熱硬化性ポリマーを含み得る。第1及び第2のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及びエポキシ官能性アクリルポリマーは、各々、熱硬化性ポリマーを含み得る。
【0059】
粉末コーティング組成物は、酸官能性架橋剤を含む。本明細書で使用される場合、「架橋剤」は、他の官能基と反応性であり、共有結合を通して2つ以上のモノマー又はポリマー分子を連結することができる2つ以上の官能基を含む化学種を指す。酸官能性架橋剤は、エポキシ官能性アクリルポリマーのエポキシド基などのエポキシド基と反応性であり得る。酸官能性架橋剤は、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。
【0060】
酸官能性架橋剤は、様々なタイプのポリアシドを含み得る。酸官能性架橋剤は、2つ以上のカルボン酸官能基を有するC3-C30アルキル、アルケニル、又はアルキニル化合物を含み得る。酸官能性架橋剤は、以下の式によって説明され得る:
HO2C-[(CH2)n]-CO2H
(式中、nは、1~18の範囲内の整数である)。カルボン酸官能性架橋剤の例としては、例えば、ドデカン二酸及びその誘導体、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、コハク酸、ピメリン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸などのポリカルボキシ化合物が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の更なる例としては、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ポリカルボン酸化合物の更なる例としては、マレイン酸、クエン酸、イタコン酸、アコニット酸などが挙げられる。
【0061】
酸官能性架橋剤は、カルボン酸基含有ポリマーを含み得る。カルボン酸基含有ポリマーの例としては、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、及びポリウレタンポリマーが挙げられ、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、及び/又はポリウレタンポリマーは、2つ以上のカルボン酸基を含有する。
【0062】
酸官能性架橋剤は、ポリアシドの組み合わせを含み得る。ポリアシドの組み合わせは、酸官能性架橋剤における使用に好適であるように先に開示されたポリアシドのいずれかを含み得る。例えば、酸官能性架橋剤は、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つのポリアシドの組み合わせを含み得る。1つの非限定的な実施形態では、酸官能性架橋剤は、セバシン酸とドデカン酸とを含むポリア酸の組み合わせを含む。
【0063】
酸官能性架橋剤は、2つ以上のカルボン酸基、又は3つ以上のカルボン酸基、又は4つ以上のカルボン酸基を含む多官能性酸官能性架橋剤を含み得る。酸官能性架橋剤は、2つのカルボン酸基を含む二官能性酸官能性架橋剤を含み得る。
【0064】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の量で酸官能性架橋剤を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、最大30重量%、又は最大25重量%、又は最大22重量%、又は最大20重量%の量で酸官能性架橋剤を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、2重量%~30重量%の範囲、又は5重量%~25重量%の範囲、又は10重量%~22重量%の範囲、又は15重量%~20重量%の範囲の量で酸官能性架橋剤を含み得る。
【0065】
酸官能性架橋剤は、エポキシ官能性アクリルポリマーと反応して、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む反応生成物を形成し得る。架橋剤の少なくとも1つの酸基は、エポキシ官能性アクリルポリマーの少なくとも1つのエポキシ基と反応し得る。
【0066】
粉末コーティング組成物は、0.6:1超、又は0.8:1超、又は1:1超のエポキシ基対カルボン酸基の比率を含み得る。粉末コーティング組成物は、最大3:1、又は最大2:1、又は最大1.75:1、又は最大1.5:1のエポキシ基対カルボン酸基の比率を含み得る。粉末コーティング組成物は、0.6:1~3:1の範囲、又は0.8:1~2:1の範囲、又は1:1~1.75:1の範囲、又は1:1~1.5:1の範囲のエポキシ基対カルボン酸基の比率を含み得る。
【0067】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、エポキシ官能性アクリルポリマー及び酸官能性架橋剤の合計を少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%の量で含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、エポキシ官能性アクリルポリマー及び酸官能性架橋剤の合計を最大55重量%、又は最大50重量%、又は最大45重量%、又は最大40重量%の量で含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、エポキシ官能性アクリルポリマー及び酸官能性架橋剤の合計を10重量%~55重量%の範囲、又は15重量%~50重量%の範囲、又は20重量%~45重量%の範囲、又は25重量%~40重量%の範囲、又は30重量%~40重量%の範囲で含み得る。
【0068】
粉末コーティング組成物は、ブロック化ポリイソシアネート架橋剤を含む。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート官能基を含有する化合物を指す。ブロック化ポリイソシアネート架橋剤(一度ブロック解除されると)は、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーのヒドロキシル基などのヒドロキシル基と反応する2つ以上のイソシアネート官能基を含み得る。ブロック化ポリイソシアネート架橋剤は、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。
【0069】
使用され得るポリイソシアネートとしては、脂肪族及び芳香族ジイソシアネート、並びにより高い官能性ポリイソシアネートが挙げられる。好適なポリイソシアネートの非限定的な例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4′-ジイソシアネート(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m-TMXDI)、p-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p-TMXDI)、エチレンジイソシアネート、1,2-ジイソシアナトプロパン、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネート又はHDI)、1,4-ブチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,4-メチレンビス-(シクロヘキシルイソシアネート)、トルエンジイソシアネート(TDI)、m-キシリレンジイソシアネート(MXDI)及びp-キシレンジイソシアネート、4-クロロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロ-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジベンジルジイソシアネート、及び1,2,4-ベンゼントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、並びにそれらの混合物又は組み合わせが挙げられる。
【0070】
いくつかの実施例では、2つ以上のイソシアネート官能性架橋剤をダイマー及び/又はトリマーとして一緒に連結して、IPDIのトリマーなどのポリイソシアネートを形成し得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ブロック化イソシアネート」という用語は、内部ブロックされ、かつ/又は外部ブロッキング剤と反応し、かつ内部ブロッキング剤及び/又は外部ブロッキング剤が、熱などの外部刺激への曝露時などに除去されるまで、イソシアネート官能基が反応することを防止するイソシアネート官能基を有する化合物を指す。外部ブロッキング剤の非限定的な例としては、フェノール、ピリジノール、チオフェノール、メチルエチルケトキシム、アミド、カプロラクタム(例えば、ε-カプロラクタム)、イミダゾール、トリアゾール、マロネート、オキシム、フェノール、アルコール、ピラゾール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ブロック化イソシアネート架橋剤は、内部ブロックされ得る。ブロック化イソシアネート架橋剤は、ウレトジオン内部ブロック化イソシアネート付加物などのウレトジオンイソシアネートを含み得る。
【0072】
ポリイソシアネート架橋剤は、ε-カプロラクタムブロック化イソホロンジイソシアネートを含み得る。ε-カプロラクタムブロック化イソホロンジイソシアネートは、主に、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのシス及びトランス異性体の混合物、そのブロック化二官能性ダイマー、そのブロック化三官能性トリマー、又はモノマー、ダイマー、及び/若しくはトリマー形態の混合物などのブロック化二官能性モノマーイソホロンジイソシアネートを含み得る。ポリイソシアネート架橋剤は、ε-カプロラクタムブロック化二官能性モノマーイソホロンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのε-カプロラクタムブロック化三官能性トリマーを含む混合物を含み得る。
【0073】
ポリイソシアネート架橋剤は、イソホロンジイソシアネートの1,3-ジアゼチジン-2,4-ジオンダイマーと、以下の構造を有するジオールとの付加物を含み得る:
【化1】
(式中、nは、1以上であり、R
1は、二価1-メチレン-1,3,3-トリメチル-5-シクロヘキシルラジカル、例えば、以下の構造を有するラジカルである):
【化2】
(式中、R
2は、ジオールの二価脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、又は芳香族残基であり、Xは、1,3-ジアゼチジン-2,4-ジオシオンジイルラジカル、例えば、以下の構造を有するラジカルである):
【化3】
付加物の形成におけるNCO対OH基の比率は、1:0.5~1:0.9であり得る。ジアゼチジンジオン対ジオールのモル比は、2:1~10:9であり得る。付加物中の遊離イソシアネート基の含有量は、8重量%以下であり得る。付加物は、500~4000の重量又は数分子量、並びに40℃~130℃の融点及び/又はTgを有し得る。本明細書で使用される場合、融点は、別途記載されない限り、ASTM D3418-12に従って示差走査熱量測定を使用して測定される。
【0074】
イソホロンジイソシアネートの1,3-ジアゼチジン-2,4-ジオンダイマー及びジオールの付加物は、いくつかの例では、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートトリマーを含まないイソホロンジイソシアネートのジアゼチジンダイマーを、1:0.5~1:0.9、例えば1:0.6~1:0.8のイソシアント:ヒドロキシル比として与える反応物の比で、ジオールと反応させることによって調製され得る。付加物は、1450~2800の重量又は数平均分子量、及び85℃~120℃の融点を有し得る。ジオール反応物は、1,4-ブタンジオールを含み得る。
【0075】
例えば、ブロック化ポリイソシアネート架橋剤は、Evonik Industries(Essen,Germany)から市販されているウレチドンブロック化ポリイソシアネート及び/又は外部ブロック化ポリイソシアネートを含み得る。
【0076】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、少なくとも1重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも18重量%の量でブロック化ポリイソシアネート架橋剤を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、最大55重量%、又は最大50重量%、又は最大40重量%、又は最大30重量%の量でブロック化ポリイソシアネート架橋剤を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、1重量%~55重量%の範囲、又は5重量%~50重量%の範囲、又は10重量%~40重量%の範囲、又は15重量%~30重量%の範囲、又は18重量%~25重量%の範囲の量でブロック化ポリイソシアネート架橋剤を含み得る。
【0077】
ブロック化ポリイソシアネート架橋剤は、粉末コーティング組成物を少なくとも100℃、又は少なくとも120℃、又は少なくとも150℃、又は少なくとも180℃の温度に加熱するとブロックされなくなり得、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーのヒドロキシル基と反応するために利用可能なイソシアネート基をレンダリングする。ポリイソシアネート架橋剤とヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーとの間の架橋反応は、得られたコーティングに改善された耐酸エッチング性を提供し得る。
【0078】
粉末コーティング組成物は、1:1超、又は1.1:1超、又は1.2:1超、又は1.4:1超、又は2:1超のイソシアネート基対ヒドロキシル基の比率を含み得る。粉末コーティング組成物は、最大3:1、又は最大2:1、又は最大1.8:1、又は最大1.6:1のイソシアネート基対ヒドロキシル基の比率を含み得る。粉末コーティング組成物は、1:1~3:1の範囲、又は1:1~2:1の範囲、又は1.1:1~1.8:1の範囲、又は1.2:1~1.6:1の範囲でイソシアネート基対ヒドロキシル基の比率を含み得る。
【0079】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及びブロック化ポリイソシアネート架橋剤の合計を少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%の量で含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及びブロック化ポリイソシアネート架橋剤の合計を最大90重量%、又は最大85重量%、又は最大80重量%、又は最大77重量%の量で含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づいて、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマー及びブロック化ポリイソシアネート架橋剤の合計を45重量%~90重量%の範囲、又は50重量%~85重量%の範囲、又は55重量%~80重量%の範囲、又は60重量%~80重量%の範囲、又は65重量%~77重量%の範囲で含み得る。
【0080】
粉末コーティング組成物は、追加の材料を含み得る。粉末コーティング組成物中に含まれ得る材料の非限定的な例としては、可塑剤、酸化防止剤、流動剤、表面制御剤(例えば、クレーター防止添加剤)、チキソトロープ剤、スリップ助剤、触媒、ベンゾインなどのガス抑制剤、反応阻害剤(例えば、腐食抑制剤)、テクスチャライザー、UV吸収剤、熱酸化防止安定剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン光安定剤(HALS))、及び他の慣習的な補助剤が挙げられる。
【0081】
粉末コーティング組成物は、顔料を含み得る。代替的に、粉末コーティング組成物は、顔料を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、又は完全に含み得ない。「顔料を実質的に含まない」という語句は、コーティング組成物が、粉末コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、5重量%未満の顔料を含有することを意味し、「顔料を本質的に含まない」は、コーティング組成物が、粉末コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、1重量%未満の顔料を含有することを意味し、「顔料を完全に含まない」は、コーティング組成物が、粉末コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%未満の顔料を含有することを意味する。
【0082】
例示的な顔料及び/又は顔料組成物としては、カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジアゾ、ナフトールAS、塩型(フレーク)、ベンジミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン及び多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダンスロン、アントラピリミジン、フラバンスロン、ピランスロン、アンサンスロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、黒色炭素、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明はまた、コーティングされた物品を形成するために、本明細書に記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた物品に関する。物品は、コーティング組成物でコーティングされた少なくとも1つの基材を含み得る。コーティング組成物は、基材に適用され、その上にコーティング層を形成し得る。例えば、粉末コーティング組成物は、ビークル基材、工業基材、航空宇宙基材、海洋基材、包装基材、電子機器、建築基材などを含むビークル基材に適用され得る。
【0084】
本開示において、「ビークル」という用語は、最も広い意味で使用され、あらゆる種類の航空機、宇宙船、船舶、及び地上ビークルが挙げられる。例えば、ビークルとしては、例えば、飛行機(例えば、自家用飛行機、並びに小型、中型、又は大型商用旅客、貨物、及び軍用飛行機)、ヘリコプター(例えば、自家用、商用、及び軍用ヘリコプター)、航空宇宙ビークル(例えば、ロケット及び他の宇宙船)などのような航空機などの航空宇宙基材を挙げることができるが、これらに限定されない。ビークルとしてはまた、例えば、動物トレーラー(例えば、馬のトレーラー)、車、トラック、バス、バン、ヘビーデューティ機器、ゴルフカート、オートバイ、自転車、列車、鉄道車などのような地上ビークルも挙げられ得る。ビークルとしてはまた、例えば、船、ボート、ホバークラフトなどのような船舶も挙げられ得る。
【0085】
コーティング組成物は、ツール、ヘビーデューティ機器、オフィス家具などの家具(例えば、オフィスチェア、デスク、ファイリングキャビネットなど)、冷蔵庫、オーブン及びレンジ、食器洗い機、電子レンジ、洗濯機、乾燥機、小型家電(例えば、コーヒーメーカー、スロークッカー、圧力鍋、ブレンダーなど)、金属金具、窓枠に使用される押出アルミニウムなどの押出金属、他の屋内及び屋外の金属建材などを含み得る工業用基材の上に適用され得る。
【0086】
コーティング組成物が適用され得る好適な建築基材としては、コンクリート、スタッコ、石積み要素、セメント板、MDF(中密度ファイバーボード)及びパーティクルボード、石膏ボード、木材、石、金属、プラスチック(例えば、ビニルサイディング及びリサイクルプラスチック)、壁紙、織物、石膏、ガラス繊維、セラミックなどを含むが、これらに限定されない金属又は非金属基材が挙げられ、これらは、水性又は溶媒性プライマーによって事前プライミングされ得る。建築基材は、建物又は住宅の内壁(又は他の内面)であり得る。建築基材は、屋外条件に曝露された屋外基材であり得る。建築基材は、滑らかであり得るか、又はテクスチャ加工され得る。
【0087】
特定の非限定的基材としては、車、トラック、船舶、容器、陸上及びオフショア設備、貯蔵タンク、風車、原子力発電所などの電力産業基板、電線、電池及び電池部品、バスバー、金属ワイヤ、銅又はアルミニウム導体、木製フローリング及び家具、アパレル、ハウジング及び回路基板、ガラス及び透明シート、ゴルフボールを含むスポーツ用品、スタジアム、建物、橋などが挙げられる。
【0088】
粉末コーティング組成物は、自動車の金属ホイールなどのビークルの構成要素として含まれる金属ホイールなどの金属ホイールを含む基材の少なくとも一部分の上に適用され得る。金属ホイールは、アルミニウム、鋼、マグネシウム、又はそれらの合金を含み得る。粉末コーティング組成物は、金属ホイールの少なくとも一部分の上に適用され得る。粉末コーティング組成物は、金属ホイールの上のモノコートとして、又は金属ホイールに適用される多層コーティングシステムにおけるコーティング層として適用され得る。
【0089】
基材は、例えば、金属又は非金属基材を含み得る。金属基材としては、スズ、鋼(中でも、電気亜鉛めっき鋼、冷間圧延鋼、熱浸亜鉛めっき鋼を含む)、マグネシウム、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金でコーティングされた鋼、及びアルミニウムめっき鋼が挙げられるが、これらに限定されない。金属基材は、アルミニウム、鋼、マグネシウム、又はそれらの合金を含み得る。非金属基材としては、ポリマー化合物、プラスチック、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セルロース化合物、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、EVOH、ポリ乳酸、他の「環境に優しい」ポリマー基材、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリカーボネート、ポリカーボネートアクリロブタジエンスチレン(PC/ABS)、ポリアミド、木材、ベニア、木製複合材料、パーティクルボード、中密度ファイバーボード、セメント、石、ガラス、紙、段ボール、織物、合成及び天然の両方の皮革などが挙げられる。
【0090】
コーティング組成物は、基材に適用され、モノコートを形成し得る。本明細書で使用される場合、「モノコート」は、追加のコーティング層を含まない単層コーティングシステムを指す。したがって、コーティング組成物は、基材に直接適用され、硬化して単層コーティング、すなわちモノコートを形成し得る。単一のコーティング層は、以下に定義されるように、コーティング層ではない前処理層の上に適用され得る。硬化性コーティング組成物を基材に適用してモノコートを形成する場合、コーティング組成物は、他の所望の特性を提供するために追加の成分を含み得る。例えば、硬化性コーティング組成物はまた、腐食抑制剤として作用する無機成分を含み得る。本明細書で使用される場合、「腐食抑制剤」は、金属又は金属合金基材上の表面の腐食の速度又は重症度を低減する材料、物質、化合物、又は複合体などの成分を指す。腐食抑制剤として作用する無機成分としては、アルカリ金属成分、アルカリ土類金属成分、遷移金属成分、又はそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0091】
「アルカリ金属」という用語は、化学元素の周期表の1族(国際純粋応用化学連合(IUPAC))の元素を指し、例えば、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、及びナトリウム(Na)を含む。「アルカリ土類金属」という用語は、化学元素の周期表の2族(IUPAC)の元素を指し、例えば、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、及びストロンチウム(Sr)を含む。「遷移金属」という用語は、化学元素の周期表の3~12族(IUPAC)の元素を指し、例えば、とりわけ、チタン(Ti)、クロム(Cr)、及び亜鉛(Zn)を含む。
【0092】
腐食抑制剤として作用する無機成分の特定の非限定的な例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、ケイ酸亜鉛、亜鉛粉塵、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
本発明の組成物は、単独で、又は2つ以上のコーティング層を有するコーティングシステム(多層コーティングシステム)などの1つ以上の他の組成物との組み合わせで使用され得る。第2のコーティング層は、基材と、本発明のコーティング組成物から形成される第1のコーティング層との間に配置され得る。
【0094】
例えば、本発明の組成物は、顔料を含んでも含まなくてもよく、プライマー層、ベースコート、及び/又はトップコートとして使用され得る。
【0095】
コーティング組成物を使用して、プライマー層を形成し得る。本明細書に記載されるように、「プライマー層」は、保護又は装飾コーティングシステムの適用のための表面を準備するために、基材上に堆積され得るアンダーコーティングを指す。
【0096】
コーティング組成物を使用して、トップコート層を形成し得る。本明細書に記載され場合、「トップコート」は、保護層及び/又は装飾層を提供するために、ベースコートなどの別のコーティング層の上に堆積される最上部コーティングを指す。トップコート層は、着色されたトップコート層であり得る。トップコート層は、クリアコート層であり得る。クリアコート層は、実質的に透明又は半透明であるコーティング層として理解されるであろう。したがって、クリアコート層は、クリアコートを不透明にするか、又はさもなければ下地基材を見せる機能に著しい程度まで影響を与えない限り、ある程度の色を有し得る。例えば、コーティング組成物を使用して、色付けされたクリアコート層を形成し得る。本明細書で使用される場合、「色付けされたクリアコート層」は、色付けされたクリアコート層を形成するために使用されるコーティング組成物の固形分重量に基づいて、0重量%超かつ5重量%未満、又は0重量%超かつ1重量%未満、又は0重量%超かつ0.1重量%未満の着色剤を含むクリアコート層を指す。クリアコート層は、例えば、着色されたベースコートと併用され得る。コーティング組成物を基材の上のトップコート層として使用して、基材に耐久性を提供し得る。
【0097】
コーティング組成物を使用して、ベースコート層を形成し得る。多層コーティングシステムは、第1のベースコート及び第1のベースコートの上にコーティングされた第2のベースコートを有し得る。本明細書に記載される場合、「ベースコート」は、プライマー上及び/又は基材上に直接堆積されるコーティングを指し、任意選択で、色に影響を与えるかつ/又は他の視覚的影響を提供する成分(顔料など)を含む。多数のベースコート層でコーティングされている基材では、それらのベースコート層のうちの1つ以上は、本明細書に記載のコーティング組成物から形成され得る。
【0098】
組成物は、クリアコートと併用される着色されたベースコート、又は着色されたモノコートなどの顔料を含み得る。かかるコーティング層は、装飾及び/又は保護仕上げを付与するために様々な産業で使用され得る。例えば、かかるコーティング又はコーティングシステムは、ビークル、例えば、ビークルのホイールなどに適用され得る。本発明に従ってコーティングされるビークルの一部分は、コーティングが使用される理由に応じて変動し得ることが理解されるであろう。着色ベースコート又はモノコートとして使用される場合、本コーティングは、車の屋根、フード、ドア、トランクの蓋などのような人目につくビークルのそれらの部分に適用され得るが、特に組成物が密封剤又は接着剤として配合される場合、トランク内部、ドア内部などのような他の領域にも適用され得、例えば、組成物は、それらがビークルに音及び/又は振動減衰を提供するような粘度を有するように配合され得る。本組成物はまた、ハンドル、ダッシュボード、ギアシフト、制御装置、ドアハンドルなどのようなドライバー及び/又は乗客と接触するビークルのそれらの部分にも適用され得る。クリアコートは、ビークルの外装に適用され得る。
【0099】
基材は、基材の上に配置された前処理層と、前処理層の少なくとも一部分の上に配置された本明細書に記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングとを含み得る。本明細書で使用される場合、「前処理層」は、以下のうちの少なくとも1つを達成する基材表面と反応し、基材表面を化学的に変化させる組成物から形成される層を指す:1)保護層の形成、2)コーティング接着を強化するための基材の形状若しくは反応性の改善、又は3)前処理なしで基材と比較してコーティング接着が改善された保護層の形成。前処理層は、表面の上に連続層又は不連続層を形成し得る。前処理層組成物の非限定的な例としては、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、希土類金属、過マンガン酸若しくはマンガン、モリブデート若しくはモリブデン、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、ランタニド、アルコキシシランなどのシラン、加水分解シラン及びシランオリゴマー及びポリマー、金属キレート、三価クロム(TCP)、シリケート、シリカ、ホスホン酸、クロメート変換コーティング、水滑石、層状二重水酸化物、金属酸化物、IV族金属などの他の金属、又はそれらの任意の組み合わせを含む組成物が挙げられる。有機前処理の非限定的な例としては、リン酸化エポキシ、シラン化エポキシ、及びアミノ官能性樹脂などの化学修飾樹脂が挙げられ得る。前処理はまた、例えば、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、酒石酸、及び/又は他の陽極酸化方法を使用した陽極酸化を含み得る。前処理層組成物は、ソルゲル、液体、又は固体の形態であり得る。いくつかの例では、前処理は、オリゴマー又はポリマー溶液又は懸濁液を含有してもよく、又はそれを使用して密封してもよい。更に他の例では、前処理組成物は、反応性官能基を有する小さい有機分子、又は腐食抑制剤として機能する小さい有機分子を含有し得る。前処理層は、最大10ミクロン、又は最大8ミクロン、又は最大5ミクロン、又は最大2ミクロンの厚さを有し得る。
【0100】
本発明はまた、本明細書に記載の粉末コーティング組成物を基材の表面に適用することによって、線状腐食を低減する方法に関する。粉末コーティング組成物は、一度調製されると、基材の少なくとも一部分に適用され、硬化してコーティングを形成し得る。粉末コーティング組成物は、任意の好適な技術を使用して基材に適用され得る。前述の基材のいずれかに粉末コーティング組成物を適用するための好適な方法としては、静電スプレー、浸漬などが挙げられる。粉末コーティングは、1~10ミル、例えば、1~5ミルの硬化後の厚さを有するフィルムを提供するために、1回の通過又は数回の通過で適用され得る。適用後、本組成物は、3分~30分、例えば、15~25分の範囲の期間の間、120℃~220℃、例えば、140℃~190℃、例えば、160℃~180℃の温度に加熱することによって硬化され得る。コーティングされた基材をオーブンに入れるなどによる、当該技術分野で既知の任意の手段による加熱は、有効であり得る。IR照射を使用して、コーティングされた基材を硬化し得る。
【0101】
粉末コーティング組成物を使用して、糸状腐食を低減し得る。本明細書で使用される場合、「糸状腐食」は、コーティングの表面上及び/又は表面下の糸のようなフィラメント欠陥を特徴とする薄膜及びコーティングで生じる腐食のタイプを指す。粉末コーティング組成物は、基材の少なくとも一部分の上にコーティングを形成し得、同じ条件(すなわち、同じ環境条件)下で粉末コーティング組成物から形成されたコーティングを有しない同一の基材と比較して、コーティングされた基材の糸状腐食の量を低減し得る。例えば、本発明のコーティングされた基材は、本発明の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングを含まない同じコーティングされた基材と比較して、改善された糸状耐食性(SAE J2635「塗装されたアルミニウムホイール及び塗装されたアルミニウムホイールトリムの糸状腐食試験手順」に従って試験された)を提供し得ることが見出された。
【実施例】
【0102】
以下の例は、本発明の一般原理を実証するために提示される。本発明は、提示される特定の例に限定されるものとみなされるべきではない。
【0103】
例1~7
コーティング組成物の調製
7つの(7)硬化性コーティング組成物を、表1に記載した成分(グラムで測定した)から調製した。
【表1】
【0104】
表1の各例について、各成分を容器中で秤量し、次いで、例の成分の全てを組み合わせ、プリズム高速ミキサー中で30秒間、2500RPMで一緒に混合して、乾燥した均質な混合物を形成した。次いで、強いスクリュー構成及び500RPMの速度を有するWerner Pfleiderer 19mm二軸押出機で、混合物を融解混合した。二軸スクリュー押出機のスクリューは、第1の区域が50℃に設定され、第2、第3、及び第4の区域が120℃に設定された4つの加熱区域を含んでいた。二軸スクリュー押出機の供給速度は、装置上で30~45%のトルクが観察されるようなものであった。次いで、混合物をMikro ACM-1空気分級ミルで粉砕して、10ミクロン~100ミクロンの平均粒径を得た。別段の定めのない限り、本明細書では、Beckman-Coulter LS 13 320のマニュアルに記載された指示を使用して、Beckman-Coulter LS 13 320のレーザ回折粒径分析器を使用して粒径を測定した。表1の例の各々について得られたコーティング組成物は、自由に流動する固体微粒子粉末コーティング組成物であった。
【0105】
例8
コーティング組成物の適用
A-412アルミニウムQ-パネルを、PPG Industries,Inc.(Pittsburgh,PA)から市販されているULTRAX 14アルカリ洗浄剤を使用して洗浄した。次いで、パネルを、PPG Industries,Inc.(Pittsburgh,PA)から市販されているAMC66AW酸エッチング溶液中で脱酸化し、次いで、PPG Industries,Inc.(Pittsburgh,PA)から市販されているXBOND 4000ジルコニウム前処理を使用して前処理した。次いで、表1の各コーティング組成物を、2.5ミル~5ミルのフィルムビルドでパネルに静電適用した。コーティングしたパネルを177℃で20分間焼成した。
【0106】
例9
糸状耐食性の評価
表1のコーティング組成物例から調製したコーティングされたパネルの各々を、糸状耐食性について評価した。糸状耐食性は、SAE J2635に従って決定され、表2に記載した。
【表2】
【0107】
表2に示されるように、多量のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを有する例(比較例2及び4~5、並びに例3)は、良好な糸状耐食性を呈する。例えば、最低量のヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含む比較例6は、糸状耐食性が悪いことが示される。更に、ヒドロキシル官能性ポリエステルポリマーを含まない比較例1は、最も悪い糸状耐食性を呈する。
【0108】
例10
物理的特性の評価
糸状耐食性に加えて、各コーティングされたパネルを様々な物理的特性及び外観について試験した。接着力をISO 2409に従って測定した。浸水接着力をNES M0007,29に従って測定した(60℃の浸水3日間、続いてクロスハッチ接着)。4271Z-SNA-A000に従ってガソリン耐性試験を実施した(室温でガソリン中6.18~7時間、外観又は接着力の変化をチェックする)。ガソリン試験後の外観及び光沢を、光沢計及びBYK-MACカラーリーダを使用して測定した。各例についてこれらの試験から生成されたデータを表3に記載する。
【表3】
【0109】
表3に示すように、ポリエステルに対してアクリルの量を増加させると、黄変及び光沢損失の増加が観察される。例えば、例3から比較例4~6に移るとき、アクリル樹脂含有量は、その後の各例におけるポリエステル含有量に対して増加し、より多くの黄変及びより低い光沢が観察される。また、ポリエステルのみを含み、アクリル樹脂を含まない配合物(比較例2)では、接着が観察されないことも観察される。同様に、カルボン酸官能性ポリエステルのみを含む配合物(比較例7)も、接着を呈さない。本明細書で論じられるように、粉末コーティング組成物の成分を慎重に選択することによって、本明細書で論じられるように、粉末コーティング組成物から形成されるコーティングが、低い糸状腐食だけでなく、下地基材への優れた接着性、透明で光沢のある外観を含む良好なガソリン耐性、及び低い黄変を有することを見出すことは、予想外であり、驚くべきことであった。
【0110】
本発明の特定の実施形態が、例示の目的で上に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細に多数の変更が行われ得ることは、当業者に明らかであろう。
【国際調査報告】