(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】細菌による真核細胞への抗体、抗体誘導体、およびポリペプチドの送達
(51)【国際特許分類】
C12N 15/70 20060101AFI20240614BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/74 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240614BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240614BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240614BHJP
C07K 16/12 20060101ALI20240614BHJP
C07K 16/14 20060101ALI20240614BHJP
C07K 16/08 20060101ALI20240614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/46 20060101ALN20240614BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C12N15/70 Z
C12N1/21 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12N15/74 Z
C12N15/13
C12N15/31
C12N15/12
C12N5/10
C12N15/87 Z
C07K16/18
C07K16/12
C07K16/14
C07K16/08
A61P35/00
A61K48/00
A61K47/46
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574383
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 US2022031949
(87)【国際公開番号】W WO2022256519
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522273458
【氏名又は名称】シベック バイオテクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リンケ,リンジー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,アシュリー,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】モラ,ダーシー
(72)【発明者】
【氏名】コックス,マデリン
(72)【発明者】
【氏名】エンロト,ティモシー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA26X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB12
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4C076BB27
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4C076CC27
4C076EE56
4C084AA13
4C084MA55
4C084MA57
4C084MA59
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4C084MA66
4C084NA13
4C084ZB261
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB23
4C085CC07
4C085CC31
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4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
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4C085GG10
4H045AA11
4H045CA11
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、疾患の治療、予防および診断に関する。本発明は、侵入性非病原性細菌を使用して、抗体、抗体誘導体、タンパク質/ポリペプチドを産生するための、かつ標的とされる真核細胞および組織に細胞内にそれらを送達するための細菌媒介プラットフォームを記載する。細菌は、タンパク質カーゴをコードする原核生物発現カセットを含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入性であるように操作されておりかつ細菌にとって外因性であるタンパク質をコードする少なくとも1つの発現カセットを有するように操作されている細菌を含むタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステムであって、外因性のタンパク質をコードする核酸の転写が、原核生物のプロモーターおよびターミネーターの制御下である、システム。
【請求項2】
前記原核生物のプロモーターおよびターミネーターが、合成のものであり、それにより前記プロモーターおよびターミネーターが、大腸菌において転写を促進するまたは転写を終結させる活性を有する、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項3】
前記コードされたタンパク質が、抗体または抗体誘導体である、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項4】
前記抗体または抗体誘導体が、マルチドメイン抗体から抽出された単一のタンパク質ドメインから本質的になる、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項5】
前記抗体誘導体が、単一のV
HH抗体ドメインまたはナノボディから本質的になる、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項6】
前記抗体または抗体誘導体が、前記抗体または抗体誘導体のFcドメインまたは他の抗体ドメイン(例えば、ペプチボディ)上にグラフトされた、生きている生物体、組織、細胞、または生化学プロセスに対し影響を有する生物学的に活性なペプチドを含む、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項7】
前記生物学的に活性なペプチドが、抗酸化性、抗微生物性、免疫調節性、細胞調節性(cytomodulatory)、および/または代謝を変化させる特性または効果を有するペプチドの群から選択されるペプチドである、請求項6に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項8】
前記抗体または抗体誘導体の構造ドメインが、細胞内タンパク質を標的とするエピトープを結合するアミノ酸配列を有しかつ前記細胞内タンパク質が、治療的に関連するタンパク質であるかまたは前記抗体もしくは抗体誘導体に対する結合標的として治療的に関連する、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項9】
前記抗体または抗体誘導体が、標的タンパク質と複合体を形成し、それにより他の分子との前記標的タンパク質の相互作用にとって重要な結合部位またはエピトープを隠す、占有する、またはさもなければ干渉する抗体により前記標的タンパク質を生物学的に不活性にすることにより真核細胞における特異的活性または細胞経路を調節する、かつ複合体化されない標的が、生物学的に活性である、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項10】
前記抗体または抗体誘導体が、前記抗体または抗体誘導体が抗腫瘍形成効果を有するように、細胞の生存、増殖、および化学療法剤に対する感受性に関連するものを含む特異的活性または細胞経路を調節するためにがん細胞内部の細胞内因子を結合する、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項11】
がん細胞内部の前記抗体または抗体誘導体により結合される前記細胞内因子が、変異されたHRAS、NRAS、またはKRASタンパク質である、請求項10に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項12】
前記抗体または抗体誘導体が、変異されたHRAS、NRAS、またはKRASタンパク質を結合する、請求項10に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項13】
前記抗体または抗体誘導体による結合が、特異的活性または細胞経路を調節しそれにより対象に投与されるまたは対象で行われる化学療法剤または他の療法の治療的有効性を向上させる、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項14】
前記抗体または抗体誘導体が、アポトーシス調節タンパク質またはアポトーシス関連タンパク質上のエピトープを結合する領域を含む、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項15】
前記抗体または抗体誘導体が、サバイビン(BIRC5)、BCL-2、MCL-1、XIAP、BRUCE、または他の任意のアポトーシス阻害剤(IAP)ファミリータンパク質、または1つ以上の特徴的なBIRドメインを含むタンパク質を結合する領域を含む、請求項14に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項16】
前記抗体または抗体誘導体が、ウイルス、細菌、原生動物、または真菌タンパク質上のエピトープを結合する領域を含み、それにより前記エピトープを結合することがウイルス、細菌、原生動物、または真菌の複製を阻害する、請求項3に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項17】
前記細菌が、真核細胞中への非病原性細菌の侵入を促進するまたは真核細胞のファゴソームからの前記非病原性細菌の放出を引き起こすために少なくとも1つの侵入因子を有するように操作された非病原性細菌である、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項18】
前記侵入因子が、inv、hlyA、もしくはhlyE遺伝子またはそれらの任意の断片またはキメラ型もしくは組換え型によりコードされる、請求項17に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項19】
前記侵入因子が、異種タンパク質からの結合ドメインに融合された侵入タンパク質の非結合ドメインを含むキメラの、組換えの侵入タンパク質である、請求項17に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項20】
異種タンパク質からの結合ドメインが、GalNAc結合タンパク質、レクチン、細胞接着分子(CAM)のグループ、硫酸グリコサミノグリカン(GAG)結合タンパク質のグループ、セレクチン、インテグリン、ラミニン、カドヘリン、フィブロネクチン、コラーゲン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、テネイシン、アポリポタンパク質B、E、およびA-V、リポタンパク質リパーゼ、肝リパーゼ、Siglec、ガレクチン、免疫グロブリン、およびアネキシン、FimH、papG、PrsG、Afa-IE、DraA、MrpH、RodA、Mp1、ハイドロフォビン、熱ショックタンパク質、CspA、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、カプシドタンパク質、糖タンパク質、およびエンベロープタンパク質の結合ドメインから選択される、請求項17に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つの侵入因子が、前記細菌の染色体上に存在するように操作される、請求項17に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項22】
前記細菌が、少なくとも1つの細胞標的化因子(表面で発現される部分)を有するように操作された非病原性細菌である、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項23】
タンパク質をコードする前記発現カセットが、原核生物のプラスミドにより担持されるように操作される、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項24】
タンパク質をコードする前記発現カセットが、前記細菌の染色体上に存在するように操作される、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項25】
前記発現カセットが、約7,000塩基対以下の長さを有するプラスミド上にあり、それによりより大きいプラスミドと比較してプラスミドのサイズにおける減少が宿主細菌細胞に対するプラスミド誘導性負荷を減少させ、それにより細菌の成長速度を上昇させる、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項26】
前記発現カセットが、約7,000塩基対以下、約6,000塩基対以下、約5,000塩基対以下、約4,000塩基対以下、または約3,000塩基対以下の長さを有するプラスミド上にある、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項27】
前記侵入性細菌によりコードされるタンパク質が、標的真核細胞の細胞質に送達されかつ前記タンパク質が、真核細胞中で機能的でありかつ前記タンパク質の内因性レベルの臨床的に重大な不足を補うために前記標的真核細胞中のタンパク質のレベルを増加させる、請求項1に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項28】
ヒト患者または動物対象への投与が、筋肉内、非経口、血管内(静脈内を含む)、経皮、皮下、心臓内、大脳内、脳・脳室内、硝子体内、鼻腔内、吸入、腹腔内、腫瘍内(すなわち、腫瘍内に直接)、または腫瘍外(すなわち、腫瘍微小環境またはTME内)から選択され得る、請求項1~25のいずれか一項に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【請求項29】
1つ以上の原核生物プロモーターの制御下で1つ以上の抗体、1つのV
HH抗体ドメイン、ナノボディ、および/または他の抗体誘導体をコードする発現カセットを含む細菌と真核細胞を接触させるステップを含む真核細胞における特異的活性および/または経路を調節するための方法であって、前記細菌が、前記真核細胞に対し侵入性であるように操作されかつ前記1つ以上の抗体、1つのV
HH抗体ドメイン、ナノボディ、および/または他の抗体誘導体上の領域が、標的分子を結合しそれにより結合することが前記標的分子の活性を調節する、方法。
【請求項30】
プラスミドを有する遺伝子操作された細菌を含む組成物であって、前記プラスミドが、複製の起点と、選択マーカーならびに1つ以上の原核生物のプロモーターおよびターミネーターの制御下で1つ以上の抗体、1つのV
HH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体またはそれらの組み合わせをコードする発現カセットから本質的になりかつ前記細菌が、真核細胞に対し侵入性であるように操作される、組成物。
【請求項31】
前記プラスミドが、2つ以上の抗体、1つのV
HH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体またはそれらの組み合わせをコードしかつ前記抗体、1つのV
HH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体またはそれらの組み合わせの少なくとも2つが、異なるプロモーターの制御下にあり、これにより2つ以上の抗体、1つのV
HH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体、またはそれらの組み合わせの差次的発現を可能にする、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記抗体、1つのV
HH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体またはそれらの組み合わせの1つが、抗サバイビンナノボディである、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
標的細胞中で置換または補充を必要とする真核生物タンパク質をコードするかつ産生する発現カセットを含む細菌と前記真核生物標的細胞を接触させるステップを含む真核生物標的細胞において内因性真核生物タンパク質を置換するまたは補充するための方法であって、前記タンパク質の転写が、原核生物プロモーターの制御下でありかつ前記細菌が、前記真核細胞に対し侵入性であるように操作される非病原性細菌でありかつ外因的に送達された細菌で発現される真核生物タンパク質が、前記内因性真核生物タンパク質と同じ生物学的活性または生化学的活性を有しかつこの活性が、前記真核細胞中に存在する(すなわち、前記タンパク質が、その通常の機能を行う)、方法。
【請求項34】
真核細胞中への前記非病原性細菌の侵入を促進する前記侵入因子が、侵入タンパク質FimH、OmpA、IbeA、IbeB、IbeC、Opc、PilA、PilB、LOS、Lmb、FbsA、IagA、Vsp1、OspA、70-kDa PBP、エノラーゼ、Isc1、Yps3p、Stx、III型分泌系注射因子、EspF、Map、EspG)またはその任意の断片あるいはキメラ型または組換え型によりコードされる、請求項17に記載のタンパク質を生成するためのかつ真核細胞にタンパク質を送達するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年6月2日出願の米国仮出願第63/195,982号の利益を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、疾患の治療、予防および診断に関する。より具体的には、本発明は、侵入性の非病原性細菌を使用してポリペプチド、タンパク質、抗体、および抗体誘導体を産生し、かつ標的真核細胞および組織にそれらを細胞内送達する、細菌媒介プラットフォームに関する。
【背景技術】
【0003】
アゴニスト抗体およびアンタゴニスト抗体および抗体誘導体の使用は、主にそれらの標的特異性および低い免疫原性により、新規治療剤の開発において急速に関心が高まっている分野である。抗体の使用は、これまで創薬可能な標的が存在しなかった疾患に対する治療剤の開発を可能にする。現在まで、市場は、細胞外標的(すなわち細胞表面の)を対象とした抗体ベースの薬物によって支配されている。細胞内標的は依然として、ほとんどアクセスできない。アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体により細胞内標的を調節する膨大な治療可能性にもかかわらず、この能力におけるそれらの使用は、抗体が標的細胞膜を通過し細胞質に侵入できないため、制限されている。
【0004】
現在まで、標的細胞へのタンパク質、抗体、抗体誘導体の効率的なin vivo送達は、依然として困難である。現在の抗体送達戦略のほとんどは、主に機械的アプローチ(例えば、エレクトロポレーション、流体力学的注射、マイクロインジェクション)およびウイルスベクター送達(例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス)に基づいている。これらの方法の多くは、in vitroでは有用であるが、動物またはヒトの患者に容易に臨床的に転用できない。リポソームおよびナノ粒子などの、非ウイルス送達方法も使用されるが、それらが担持できる抗体または他のタンパク質のサイズおよび数は、大きく制限される。抗体および抗体誘導体は、細胞外、特に細胞内の両方の治療効果を達成するためにより効率的に送達されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、非病原性細菌送達プラットフォームを使用する、ポリペプチド、タンパク質、抗体、および抗体誘導体の産生および/または真核細胞へのそれらの細胞内送達のためのシステムを提供する。送達されるタンパク質は、標的細胞内の特定の標的分子と相互作用することにより、細胞内経路に対しアゴニスト的またはアンタゴニスト的であり得る。例えば、標的分子は、抗体誘導体と複合体を形成しないときは活性であるが、複合体を形成したときには不活性であり得る。例えば、サバイビン分子と複合体を形成してがん細胞の増殖を阻害する、シングルドメイン抗体(ナノボディ)の送達である。抗体、抗体誘導体、およびポリペプチドは、以下を含み得る:IgG、IgG断片(Fab、Fab’、F(ab’)2)、VHH部分、一本鎖可変断片(scFv)、ジ-scFv、シングルドメイン抗体(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科IgG抗体、ラマIgG抗体、ペプチボディ、任意の他の免疫ポリペプチド、および治療用タンパク質分子を形成するアミノ酸残基から構成される任意のポリペプチド。本発明は標的真核細胞へのこれらの分子の効果的な送達を提供できると、企図される。
【0006】
第1の態様では、本発明は、ポリペプチド、タンパク質、抗体、および抗体誘導体(「タンパク質カーゴ」)を産生するために、かつ標的真核細胞および組織にそれらを細胞内送達するために、侵入性の非病原性細菌を使用する細菌媒介プラットフォームを提供する。細菌は、原核生物プロモーターの制御下でタンパク質カーゴをコードする原核生物発現カセットを含み得る。治療用抗体、抗体誘導体、またはタンパク質のための新規細菌送達プラットフォームは、あらゆる細胞周期段階(分裂、非分裂、静止)の真核細胞において、タンパク質および/または抗体の組織特異的および細胞特異的な送達、ならびに細胞内化(intracellularization)を提供できる。所望の真核細胞への標的化は、特定の標的細胞表面部分と相互作用する侵入因子の選択によって制御され得る。
【0007】
第2の態様では、本発明は、真核細胞における、タンパク質の置換(例えば、酵素置換療法)または特異的活性および/もしくは経路を調節するための方法を提供する。タンパク質置換の場合、本方法は、機能しない(例えば、変異による)または欠損している(例えば、ハプロ不全による)特定の真核生物タンパク質を置換するために、原核細菌細胞によってコードされ産生される真核生物タンパク質を送達するステップを含み得る。真核細胞における特異的活性および/または経路を調節する場合、この方法は、真核細胞を、1つ以上の原核生物プロモーターの制御下で、1つ以上のカーゴ分子、例えば、抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドとして集合的に知られている、IgG、IgG断片[Fab、Fab’、F(ab’)2]、VHH部分、一本鎖可変断片(scFv)、ジ-scFv、シングルドメイン抗体(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科IgG抗体、ラマIgG抗体、ペプチボディ、任意の他の免疫ポリペプチド、または治療用タンパク質分子を形成するアミノ酸残基から構成される任意のポリペプチドをコードする発現カセットを含む細菌と接触させるステップを含んでよく、ここで、上記のコードされたカーゴ分子は、細菌によって産生され、この細菌は、真核細胞に侵入するように操作されており、1つ以上の抗体または他の抗体誘導体上の領域は、標的細胞内の標的分子を結合して真核細胞中のその標的分子の活性を調節する。
【0008】
第3の態様では、本発明は、治療用ナノボディの産生および細胞内送達のための細菌媒介プラットフォームを提供する。細菌中で構造的に無傷で機能的な抗体を産生することは、特にそれらの大きなサイズとジスルフィド結合(これは、大腸菌細胞のペリプラズム空間でのみ形成され得る)が原因で、困難である。このため(および他の多くの理由により)、ナノボディとしても知られる、シングルドメイン抗体(sdAb)への関心が高まっている。これらのタンパク質は、サイズが12~15kDa(一般的な抗体の場合の150~160kDaに対し)の範囲にあり、1つの単量体可変抗体ドメインのみを含む。重要なことに、比較的大きな巨大分子として、ナノボディは、例えば、生化学的効果を発揮するためにタンパク質の表面全体(小さいポケットではなく)に結合することにより、標的タンパク質の微細構造に対しそれほど感受性でない可能性がある。この理由から、ナノボディは、貴重な変異不応性の治療モダリティである。ナノボディの阻害機構のため、ナノボディベースの治療法は、獲得された耐性、特に標的タンパク質中の同時変異によりそれほど影響されないと予想される。
【0009】
第4の態様では、本発明は、タンパク質を生成するための、および真核細胞にそれらを送達するためのシステムを提供する。このシステムは、侵入性であるように操作され、かつ細菌にとって外因性であるタンパク質をコードする少なくとも1つの発現カセットを有するように操作された、細菌を使用する。外因性タンパク質をコードする核酸の転写は、原核生物のプロモーターおよびターミネーターの制御下にある。
【0010】
有利な実施形態では、原核生物のプロモーターおよびターミネーターは、合成のものである。合成プロモーターまたはターミネーターは、大腸菌において転写促進活性または転写終結活性を有し得る。
【0011】
さらに有利な実施形態では、コードされるタンパク質は、抗体または抗体誘導体である。抗体または抗体誘導体は、マルチドメイン抗体から抽出された1つのタンパク質ドメインから本質的になり得る。抗体誘導体は、1っのVHH抗体ドメインまたはナノボディから本質的になる。抗体または抗体誘導体は、抗体または抗体誘導体のFcドメインまたは他の抗体ドメイン(例えば、ペプチボディ)にグラフトされた生物学的に活性なペプチド(生きている生物体、組織、細胞、または生化学プロセスに影響を有する)を有し得る。生物学的に活性なペプチドは、抗酸化性、抗微生物性、免疫調節性、細胞調節性(cytomodulatory)、および/または代謝を変化させる特性または効果を有するペプチドであり得る。
【0012】
抗体または抗体誘導体の構造ドメインは、細胞内タンパク質を標的とするエピトープを結合するアミノ酸配列を有してよく、ここで細胞内タンパク質は、治療的に関連するタンパク質であるか、または抗体もしくは抗体誘導体の結合標的として治療的に関連する。
【0013】
抗体または抗体誘導体は、標的タンパク質と複合体を形成でき、それにより、標的タンパク質と他の分子との相互作用にとって重要である結合部位またはエピトープを隠す、占有する、またはさもなければ干渉する抗体により標的タンパク質を生物学的に不活性にすることにより、真核細胞における特異的活性または細胞経路を調節し、一方で複合体を形成していない標的は、生物学的に活性なタンパク質である。
【0014】
特定の実施形態では、抗体または抗体誘導体は、がん細胞内部の細胞内因子に結合して、細胞の生存、増殖、および化学療法剤に対する感受性に関連するものを含む、特異的活性または細胞経路を調節し、これにより抗体または抗体誘導体は、抗腫瘍形成効果を有するようになる。有利な実施形態では、がん細胞内部の抗体または抗体誘導体により結合される細胞内因子は、変異されたHRAS、NRAS、またはKRASタンパク質であり得る。換言すれば、抗体または抗体誘導体は、変異されたHRAS、NRAS、またはKRASタンパク質を結合する。
【0015】
さらに有利な実施形態では、抗体または抗体誘導体による結合は、特異的活性または細胞経路を調節し、それにより対象に投与されるまたは対象で行われる化学療法剤または他の療法の治療的有効性を向上させる。抗体または抗体誘導体は、化学療法剤または他の療法の前に、連続的にまたはその後で投与され得る。
【0016】
特定の実施形態では、抗体または抗体誘導体は、アポトーシス調節タンパク質またはアポトーシス関連タンパク質上のエピトープを結合する領域を含む。抗体または抗体誘導体は、サバイビン(BIRC5)、BCL-2、MCL-1、XIAP、BRUCE、または他の任意のアポトーシス阻害剤(IAP)ファミリータンパク質、または1つ以上の特徴的なBIRドメインを含むタンパク質を結合する領域を含み得る。抗体または抗体誘導体は、ウイルス、細菌、原生動物、または真菌タンパク質上のエピトープを結合する領域を含んでよく、それによりエピトープを結合することがウイルス、細菌、原生動物、または真菌の複製を阻害する。
【0017】
第4の態様による細菌は、真核細胞中への非病原性細菌の侵入を促す、または真核細胞のファゴソームからの非病原性細菌の放出を引き起こす少なくとも1つの侵入因子を有するように操作された非病原性細菌であり得る。侵入因子は、inv、hlyA、もしくはhlyE遺伝子、またはそれらの任意の断片、またはキメラもしくは組換え型によってコードされ得る。侵入因子は、異種タンパク質からの結合ドメインに融合されたインベイジンタンパク質の非結合ドメインを含むキメラの組換え侵入タンパク質であり得る。異種タンパク質からの結合ドメインは、GalNAc結合タンパク質、レクチン、細胞接着分子(CAM)のグループ、硫酸グリコサミノグリカン(GAG)結合タンパク質のグループ、セレクチン、インテグリン、ラミニン、カドヘリン、フィブロネクチン、コラーゲン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、テネイシン、アポリポタンパク質B、E、およびA-V、リポタンパク質リパーゼ、肝リパーゼ、Siglec、ガレクチン、免疫グロブリン、およびアネキシン、FimH、papG、PrsG、Afa-IE、DraA、MrpH、RodA、Mp1、ハイドロフォビン、熱ショックタンパク質、CspA、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、カプシドタンパク質、糖タンパク質、およびエンベロープタンパク質の結合ドメインであり得る。特定の実施形態では、侵入因子は、細菌の染色体上に存在するように操作される。
【0018】
タンパク質をコードする発現カセットは、原核生物のプラスミドによってまたは細菌の染色体上に担持されるように操作される。発現カセットは、約7,000塩基対以下、約6,000塩基対以下、約5,000塩基対以下、約4,000塩基対以下、または約3,000塩基対以下の長さを有するプラスミド上にあり得る。より大きいプラスミドと比較してプラスミドのサイズにおける減少は、宿主細菌細胞に対するプラスミド誘導性負荷を減少させ、それにより細菌の成長速度を上昇させる。
【0019】
侵入細菌によりコードされるタンパク質は、標的真核細胞の細胞質に送達される。特定の実施形態では、このタンパク質は、真核細胞内において機能的であり、このタンパク質の内因性レベルにおける臨床的に重大な不足を補うために標的真核細胞内のタンパク質のレベルを増加させ、それにより標的細胞および対象に治療上利益を付与する。
【0020】
第5の態様では、本発明は、真核細胞における特異的活性および/または経路を調節するための方法を提供し、本方法は、1つ以上の原核生物プロモーターの制御下で1つ以上の抗体、1つのVHH抗体ドメイン、ナノボディ、および/または他の抗体誘導体をコードする発現カセットを含む細菌と真核細胞を接触させるステップを含み、ここで細菌は、真核細胞に侵入するように操作され、かつ1つ以上の抗体、1つのVHH抗体ドメイン、ナノボディ、および/または他の抗体誘導体上の領域は、標的分子を結合し、それにより結合が、標的分子の活性を調節する。
【0021】
第6の態様では、本発明は、プラスミドを有する操作された細菌を含む組成物を提供し、プラスミドは、複製起点と、選択マーカーならびに1つ以上の原核生物のプロモーターおよびターミネーターの制御下で1つ以上の抗体、1つのVHH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体またはそれらの組み合わせをコードする発現カセット、から本質的になり、細菌は、真核細胞に対し侵入性であるように操作される。プラスミドは、2つ以上の抗体、1つのVHH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体またはそれらの組み合わせをコードでき、かつ抗体、1つのVHH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体またはそれらの組み合わせの少なくとも2つは、異なるプロモーターの制御下にあり、これにより2つ以上の抗体、1つのVHH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体、またはそれらの組み合わせの差次的発現を可能にする。有利な実施形態では、抗体、1つのVHH抗体ドメイン、ナノボディ、抗体誘導体、またはそれらの組み合わせの1つは、抗サバイビンナノボディである。
【0022】
第7の態様では、本発明は、真核生物標的細胞中で内因性真核生物タンパク質を置換するまたは補充するための方法を提供し、本方法は、真核生物標的細胞を、標的細胞中で置換または補充を必要とする真核生物タンパク質をコードし産生する発現カセットを含む細菌と接触させるステップを含み、ここでタンパク質の転写は、原核生物プロモーターの制御下にあり、細菌は、真核細胞に対し侵入性であるように操作された非病原性細菌であり、外因的に送達される細菌で発現される真核生物タンパク質は、内因性真核生物タンパク質と同じ生物学的活性または生化学的活性を有し、この活性は、真核細胞中に存在する(すなわち、タンパク質は、その通常の機能を行う)。
【0023】
本発明をより完全に理解するために、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】pSiVEC2_survivin_nbプラスミドを示す図である。クローン化されたナノボディ(「nb」)配列は、nbのC末端に、翻訳的に融合される6XHisアフィニティータグもコードする。pSiVEC2_survivin_nbでは、抗サバイビンnbタンパク質の原核生物の発現は、原核生物プロモーター(すなわち、細菌細胞においてのみ活性なプロモーター)により制御される。したがって、細菌は、抗サバイビンnbを産生(転写および翻訳)し、かつ送達する。
【
図2】FEC21/pSiVEC2_survivin_nbの4つの独立したクローン(#9、#10、#12、および#16と標識)のウエスタンブロットの結果を示す画像である。陰性対照レーンには存在しなかった、約15kDaのタンパク質を表す強いバンドは、抗サバイビンnbの強力な細菌での発現を確認する。
【
図3】本明細書に記載の細菌送達システムを介して抗サバイビンnbを受けるA549上皮がん細胞が、スクランブル配列を受けた細胞(nbなし対照)と比較して、増殖における持続的な減少を有することを示すグラフである。
【
図4】本明細書に記載の細菌送達システムを介して抗サバイビンnbを受けるA549上皮がん細胞が、1)増殖における持続的な減少(「対照」を「抗サバイビン」と比較)、および2)シスプラチンの存在下の増殖に対するより強力な効果によって示されるとおり抗サバイビンに対する増加された感受性(「対照」と「対照+シスプラチン(25mM)」および「抗サバイビン」と「抗サバイビン+シスプラチン」の間のシスプラチンの添加の効果を比較))、を有することを示すグラフである。
【
図5】抗サバイビンnb処理A549上皮がん細胞へのシスプラチンの添加はシスプラチン添加後少なくとも98時間持続するアポトーシス細胞の数を増加させたことを示す、明視野画像の一群である。三角形は、例示的なアポトーシス細胞を示す。
【
図6】大腸菌に最適化された抗サバイビンナノボディ(「nb」)配列を示す図である(C末端の四角で囲まれたアスタリスク(複数可)は、終止コドンを示す)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
アゴニスト抗体およびアンタゴニスト抗体および抗体誘導体の使用は、主にそれらの標的特異性および低い免疫原性により、新規治療剤の開発において急速に関心が高まっている分野である。このような分子の使用は、これまで創薬可能な標的が存在しなかった疾患に対する治療剤の開発を可能にしている。現在まで、市場は、細胞外標的(すなわち細胞表面上の標的)を対象とした抗体ベースの薬物によって支配されている。細胞内の標的は依然として、ほとんどアクセスできない。アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体により細胞内標的を調節する膨大な治療可能性にもかかわらず、この能力におけるそれらの使用は、抗体が標的細胞膜を通過し細胞質に侵入できないため、制限されている。循環中の遊離抗体は、そのFcドメイン、典型的には細胞表面に見られるタンパク質によって免疫細胞により非特異的に取り込まれ、それにより全身的な枯渇により目的の細胞内標的に到達する抗体の能力を制限する。これらの理由のため、細胞内標的はしばしば、治療用抗体、抗体誘導体、タンパク質/ポリペプチドの文脈で「創薬不可能」と呼ばれる。この課題は、Fc領域を含まないより小さい抗体誘導体、例えばシングルドメイン抗体またはナノボディの発見および開発により部分的に対処されている。それにもかかわらず、このような抗体誘導体は依然として、身体により急速に除去される;したがって、(1)抗体を所望の細胞に標的化する、(2)抗体を、それらの移動中および標的細胞中への侵入時に保護する、ならびに(3)抗体が標的細胞膜を通過して細胞質に入ることを可能にする、送達アプローチが必要である。これらの問題は、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを標的細胞に機械的に導入することにより(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションにより)、固有であるが異種の特性により細胞膜を通過してそれらの標的細胞に入るように抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを直接修飾することにより(例えば、細胞透過性ペプチドへのコンジュゲーションを介して)、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを様々なタイプの送達ビヒクル(例えば、ナノ粒子、リポソームなど)に会合させることにより、解決可能である。しかし、これらの潜在的な解決策のそれぞれは、以下を含む、それらの有用性を制限する重大な制限を有する:(1)マイクロインジェクションおよびエレクトロポレーションは典型的には、in vitro条件下で使用され、両方は、高い細胞毒性を呈しかつ非常に労力を要する;(2)細胞透過性ペプチドは、より効率的な送達を促進するが、送達中に抗体を保護せずまたは特定の細胞標的を可能にしない;(3)ナノ粒子(リポソーム、LNPなどを含む)は、送達中に抗体を保護し、ある程度の標的化を可能にするが、それらは、大量の産生要求、低いカプセル化効率、限られたローディング容量、および細胞毒性の問題がある可能性がある。最後に、これらの送達システムの共通の問題となる特徴は、エンドソームでの捕捉およびその後の分解であり、これは、抗体が無傷で細胞質標的に到達することを妨げる。理想的な送達アプローチは、(1)抗体の効率的で安定なかつ堅牢な原核生物でのコード化および産生、(2)in vivoでの高い送達効率および細胞内化、(3)活性形態での抗体の送達、(4)特定の細胞/組織への標的化、(5)分解/クリアランスからの抗体の保護、(6)毒性および免疫原性の欠如、を含む、いくつかの重要な特徴を有する。現在まで、これらの機能要件をすべて満たす送達プラットフォームはない。
【0026】
送達前の原核生物でのタンパク質のコード化および産生の効率および有効性は、他の種由来の(すなわち、異種の)または宿主種由来の(すなわち、同種の)非効率なまたは最適ではない天然に存在する原核生物調節配列(例えば、プロモーターおよびターミネーター)への依存により妨げられることがある。異種原核生物の調節配列の活性(転写を促進することまたは転写を終結することのいずれかにおける)は、最適未満である可能性があり、したがって、治療部分の限定的な産生のために送達システムの治療の可能性を減退させる。相同な原核生物の調節配列の使用は、相同組換え事象を許容し得、染色体および/またはプラスミドDNA配列への意図しない変異および一般的な細菌のゲノム不安定性をもたらす。宿主種において最適な活性を有するように合理的かつ計算的に設計された(例えば、大腸菌での使用のために設計された)調節エレメントである、高度に最適化された合成の調節エレメントの使用は、これらの欠点を克服できる。本発明に記載の細菌細胞の内部の抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドの発現を調節するために使用される高度に最適化された合成エレメントの例を、下の表1および表2に示す。タンパク質産生の大幅な改善が、原核生物システムにおいて機能的であるが原核生物において天然に存在しない合成プロモーターを使用することに切り替えることにより、観察された。合成の原核生物プロモーターを使用することにより、これらのタンパク質の細菌による産生を劇的に増加させることができ、これは今度は、システムの全体の組成を改善し、かつより多くのタンパク質が、送達に利用できる。
【0027】
まとめると、現在の送達プラットフォームの制限は、研究室から臨床使用への細胞内抗体送達の移行を遅らせ、細胞内標的を用いた抗体ベース薬物の可能性を妨げる。したがって、抗体、抗体誘導体、抗体断片、抗体様分子、および標的細胞の細胞膜を通過する能力が限られている他のタンパク質またはポリペプチドのための、より堅牢な産生および送達のシステムが緊急に必要とされている。
【0028】
本発明の態様による細菌システムは、その発現が、プラスミド上のまたは細菌染色体上の合成の原核生物発現配列(例えば、大腸菌での効率的な使用のために高度に最適化されるが、宿主の原核生物種において天然に存在しない、すなわち合成の、原核生物のプロモーターおよびターミネーター)により調節される抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドをコードする配列を保有するように遺伝子操作されたプラスミドまたは細菌を含む。細菌細胞は、したがって、細菌により発現された治療部分を標的とされる真核細胞に輸送するための送達様式として次いで働くことに加えて、治療部分の産生の場所としても働く。本発明の一実施形態では、原核生物プロモーターを使用して抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドの発現を駆動するプラスミドは、非病原性細菌細胞中に形質転換される。別の実施形態では、抗体または抗体誘導体をコードする遺伝子(複数可)は、その発現を駆動するために原核生物プロモーター(例えば、最適化された合成のプロモーター)と共に細菌染色体に挿入される。さらに、細菌細胞は、侵入性であるように操作され、それらが受容体媒介食作用を介して真核細胞に入ることを可能にする。小さい構造(例えば、LNP、タンパク質コンジュゲート体など)は、エンドサイトーシスを介して標的細胞に取り込まれ、一方でより大きい構造(例えば、細菌細胞)は、食作用により取り込まれる。この細菌媒介送達システムの文脈では、他の送達プラットフォームに関して、エンドソームおよびファゴソームは、いずれも膜結合コンパートメントであり、細胞質送達に対しほぼ同等の障壁である。さらに、細菌細胞は、送達された抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドの効率的なファゴソームエスケープを可能にするために遺伝子修飾される。細菌と、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチド(原核生物の調節/発現配列を含む)をコードする遺伝子とを組み合わせた構築物は、プラスミドベースまたは染色体ベースのいずれかにかかわらず、細菌媒介抗体送達プラットフォームを構成し、このプラットフォームにより、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドが産生され、標的化された真核細胞に細胞内に送達され得る。標的化は、侵入因子、例えば、標的細胞の表面上の受容体を優先的に結合する、細菌システムの表面に提示される部分、の選択により指示できる。侵入因子は、標的細胞への付着および取り込みを促す因子(例えば、インベイジンタンパク質)および/または取り込み時にファゴソームからの放出を促す因子(例えば、リステリオリシンO、LLO)であり得る。侵入因子は、細菌細胞の染色体またはプラスミドから発現される遺伝子から産生され得る。特定の実施形態では、細菌は、特定の侵入因子を発現するように操作され、この侵入因子が送達プラットフォームの標的細胞への標的化を導びく。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明は、真核細胞に抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを細胞内送達するための、侵入性の非病原性細菌から構成される細菌媒介の産生および送達プラットフォームを提供し、ここで産生され、送達される抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドは、細菌ビヒクルにとって内因性でない。「非病原性細菌」とは、細菌が疾患を引き起こす能力がなく、非病原性であるように操作されるか、または天然で非病原性であるかのいずれかであり得るが、細菌は、標的細胞に送達するように細菌が操作された因子(例えば、ポリペプチド、抗体誘導体)の結果として標的細胞において細胞傷害性のまたは有害な影響を有する可能性がある。
【0030】
この細菌媒介送達システムは、上記のように他の現在の技術の欠点を独自に克服し、以下を提供する:
(1)高い送達効率-真核細胞中への侵入時に、細菌は、細胞質中にファゴソームから抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを放出するように操作される(すなわち、治療様式のエンドソームまたはファゴソームのエスケープはいくつかの送達システムでは引き続き問題であるがファゴソームからのエスケープは、我々の操作されたシステムでは制限的なステップでない)。
【0031】
(2)活性形態での抗体の送達-細菌自体が、抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドを産生する;したがって、各細胞は、そのカーゴがあらかじめロードされ、それにより成熟抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドが真核細胞への送達後に標的細胞内分子と迅速に相互作用することを可能にする。
【0032】
(3)特定の細胞および組織への標的化-細菌は、受容体媒介の食作用を介して真核細胞に対し侵入性であるように操作される。患者への投与時に、細菌細胞は、遠位の組織に移動するか、局所的な組織に留まり、標的組織への高効率かつ集中的な送達をさらに確実にする。特定の表面タンパク質を発現する細胞または化学部分への細菌の正確な標的化はまた、細菌細胞表面に存在する侵入因子を修飾することによっても可能である。
【0033】
(4)分解/クリアランスからの抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドの保護-抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドは、細菌細胞内部で担持され、これは、それらの標的の真核細胞への途中での分解からの保護を提供する。
【0034】
(5)有利な安全性プロファイル-in vivoで実証された毒性および免疫原性の欠如は、細菌が良好に許容され、かつ反復投与に適合することを示す。
【0035】
(6)堅牢な抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドの発現-大腸菌で機能的であるように設計された高度に最適化された合成の調節エレメントの使用は、治療用の抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチド(特に、細菌送達ビヒクルに対し外因性であるか、または細菌送達ビヒクル内に天然に存在しないポリペプチド)の高い発現レベルおよびより信頼できる終結を確実にする。
【0036】
本発明は、現在の最先端技術に対する多くの実質的な改善を提供する。本発明は、プラスミド上でまたは染色体上でコードされた原核生物発現カセットを含む細菌細胞を利用して、真核細胞へのカーゴとして機能性抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを産生し送達する。原核生物の発現カセットをコードする細菌を使用する利点は、抗体が、細菌によってのみ発現されること、および送達前に細菌により生成されることであり、真核生物の発現システムと比較して、より高い安全性、用量を制御する能力、およびより速い効果までの時間を提供する。このシステムの別の重要な利点は、侵入因子および抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドの発現を駆動するための合成の原核生物調節エレメント(プロモーターおよびターミネーター)の使用である。この戦略は、様々な方法論がこれらの配列を最適化して、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドの高い発現レベルおよびより信頼できる終結を確実にするために使用されているため、有利である。いったん細菌細胞が真核細胞の細胞質中に取り込まれると、プラスミドにコードされた抗体の配列は、適合しない配列要件のため真核細胞により発現され得なくなる。
【0037】
本発明のシステムの別の重要な利点は、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドをコードする原核生物の発現プラスミドのサイズに関連し、ここでプラスミド骨格のサイズは、減少されて、宿主細菌細胞に対するプラスミド誘導性負担を減少させ、これにより細菌成長速度を増大させる。理想的には、プラスミド骨格は、10,000塩基対未満であり、場合によっては7,000塩基対未満、または5,000塩基対未満、または3,000塩基対未満である。プラスミドのサイズは、特定の遺伝子(例えば、侵入因子)を細菌の染色体に導入することにより対処され得る。プラスミドのサイズの減少は、細胞中のプラスミドのコピー数を増加させ、かつプラスミド遺伝子の発現レベルを増加させ得る。
【0038】
大腸菌および一般的な細菌生物学および遺伝学の深い知識に基づき、本発明の追加の利点は、細菌組成物が、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドカーゴの発現効率を高めるために、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドの機能を高めるために、細菌細胞の安全性プロファイルを強化するために、反復投与に対する細菌細胞の免疫耐性プロファイルを強化するために、および侵入因子を変更することまたは細菌細胞の物理的サイズを変更することにより特定の真核生物の組織、臓器および細胞を標的にする能力を含む、送達の他の態様を強化および/または最適化するために、追加のまたは新しい機能を含むようにさらに修飾され得ることである。
【0039】
例えば、細菌の表面に露出された侵入因子インベイジン(インベイジンタンパク質の断片またはドメインを含む)は、標的真核細胞の表面で発現される異なる標的タンパク質(例えば、インテグリンなどの細胞表面受容体)または標的真核細胞の表面で発現される様々な標的化学部分(例えば、表面にアクセス可能なN-アセチルガラクトサミン、GalNAc)への細菌の結合を促すために、遺伝子操作を介して修飾できる。さらなる例として、キメラタンパク質または融合タンパク質は、インベイジンポリペプチドの膜貫通ドメインおよび第2のタンパク質の結合ドメインを利用して作製できる。第2のタンパク質の結合ドメインの例としては、結合ドメイン(特に、例えば、GalNAc結合タンパク質、レクチン、細胞接着分子(CAM)のグループ、硫酸グリコサミノグリカン(GAG)結合タンパク質のグループ、セレクチン、インテグリン、ラミニン、カドヘリン、フィブロネクチン、コラーゲン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、テネイシン、アポリポタンパク質B、E、およびA-V、リポタンパク質リパーゼ、肝リパーゼ、Siglec、ガレクチン、免疫グロブリン、およびアネキシン、FimH、papG、PrsG、Afa-IE、DraA、MrpH、RodA、Mp1、ハイドロフォビン、熱ショックタンパク質、CspA、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、カプシドタンパク質、糖タンパク質、およびエンベロープタンパク質)を有する動物由来の、細菌由来の、真菌由来のおよび/またはウイルス由来の異種タンパク質が挙げられる。このアプローチは、細菌が特定の細胞型に標的化されることを可能にし、これにより潜在的なオフターゲット効果または望ましくない免疫刺激を低下させるか、または所望の免疫刺激を誘導する。
【0040】
大腸菌細胞(または他の細菌)のサイズは、特にそれらが循環系を通り小さい毛細血管に入る場合、標的組織および臓器へのそれらのアクセスを制限する可能性がある。したがって、送達ビヒクルのサイズ/寸法を縮小するための戦略を用いて、さもなければアクセスが困難になり得る特定の標的領域への送達を容易にできる。変異が、細胞の寸法を縮小するために大腸菌ゲノム(例えば、fabH遺伝子)中に導入され得る。
【0041】
第3のアプローチは、標的細胞に対し毒性であるまたはさもなければ有害であることが判明し得る細菌細胞成分を制限することに取り組むことである。いくつかの標的細胞型は、真核細胞への侵入およびカーゴ送達後に沈着される残留細菌成分(例えば、リポ多糖、LPS)に対しより感受性であり得、細胞毒性および細胞死を引き起こす可能性がある。場合によっては、この細胞死は、1つの経路(例えば、カスパーゼ媒介細胞死)に起因し得る。細菌は、そのような効果を改善する追加の異種因子(例えば、カスパーゼ阻害ウイルスタンパク質)を送達するように遺伝子修飾され得る。このアプローチは、侵入された真核細胞の健康を保持すること、および好ましくない細胞毒性を防ぐことにより、送達効率を上昇させる、さらなる利点を提供する。さらに、細菌は、細菌病原性因子を変更すること、修飾すること、変異させること、または除去することにより病原性および免疫刺激を制限するように遺伝子修飾され得る(例えば、msbB遺伝子を変異させ、リピドAのミリストイル脂肪酸部分を欠くLPSをもたらす)。
【0042】
いくつかの用途では、細菌は、標的細胞または組織に到達するために内皮細胞層を通らなければならない(例えば、毛細血管壁を通って循環から出るために)。細菌は、そのような障壁を通る様々なレベルの能力を有し、これらの能力は、1つのまたは少数の細菌にコードされたタンパク質によって付与され得る。送達効率を向上させるために、そのようなタンパク質(「エントリータンパク質」)は、1つの細菌種または細菌株から借用されて、送達株中にこの能力を導入できる。例えば、大腸菌および他の細菌のいくつかの株は、内皮層を容易に通り、これらのタンパク質をコードする遺伝子は、送達細菌株中に導入されて、複数の細胞層にわたり組織の生体内分布を強化でき、それにより送達効率を向上させる。このような侵入タンパク質の例としては、FimH、OmpA、IbeA、IbeB、IbeC、Opc、PilA、PilB、LOS、Lmb、FbsA、IagA、Vsp1、OspA、70-kDa PBP、エノラーゼ、Isc1、Yps3p、Stx、III型分泌系注射因子、EspF、Map、EspG)が挙げられる。
【0043】
抗体コンジュゲート体を生成するためのアプローチは、技術的に複雑であり、コンジュゲートされたエレメントは、毒性効果を有し得る。本発明で記載される細菌媒介システムは、潜在的に有毒な化合物への治療部分のコンジュゲーションまたは毒性を呈し得る粒子(例えば、LNP)中のパッケージングを必要としないため、これらの問題を克服する。さらに、本発明は、複雑な製造ステップ、例えば、化学的コンジュゲーション、ナノ粒子の産生およびナノ粒子へのパッケージングなどを除く。他のシステム、特に細胞透過部分にコンジュゲートされた遊離抗体を含むものにおける顕著な問題は、身体内(特に循環システム)への導入時に、抗体を分解から保護する困難である。本明細書で教示される細菌媒介システムは、治療部分が、それが標的宿主細胞中に到達し送達されるまで、細菌細胞内で保護されるため、この課題を克服する。
【0044】
本発明は、真核細胞への抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドの細胞内送達のための、侵入性非病原性細菌から構成される細菌媒介の産生および送達プラットフォームを提供する。細菌は、抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドカーゴをコードする原核生物発現カセットを含み得る。より具体的には、この細菌送達システムは、細菌染色体に組み込まれる、または細菌内の少なくとも1つのプラスミドから発現される、少なくとも1つの抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドヌクレオチドコード配列から構成される。本発明の産生および送達システムで使用される細菌は、ラクトバチルス属、エルシニア属、エシェリヒア属、クレブシエラ属、ボルデテラ属、ナイセリア属、エロモナス属、フランシセラ属、コリネバクテリウム属、シトロバクター属、クラミジア属、ヘモフィルス属、ブルセラ属、マイコバクテリウム属、レジオネラ属、ロドコッカス属、シュードモナス属、ヘリコバクター属、サルモネラ属、ビブリオ属、バチルス属、リーシュマニア属およびエリジペロスリックス属、シゲラ属、リステリア属、リケッチア属、アセトアナエロビウム属、アエロコックス科、カルノバクテリウム科、エンテロコッカス科、ロイコノストック科、レンサ球菌科、ビフィドバクテリウム属などの種、一般に安全とみなされる(「GRAS」)ステータスを有する細菌を含む、様々な種に由来する細菌であり得る。好ましい態様では、細菌は、大腸菌である。抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドをコードする核酸の制御されたおよび強化された転写のために、核酸コード配列は、合成の原核生物プロモーターおよび合成の原核生物ターミネーターにより制御される。さらに、細菌は、受容体媒介食作用を介して真核細胞中への侵入を容易にする侵入因子(例えば、インベイジン、その完全または断片、HylA、HlyE、インフルエンザHA-1)を発現することにより真核細胞の細胞質中に抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドを送達でき、その後に送達された抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドの効率的なファゴソームエスケープが続く。細菌によりコードされ送達される抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドは、真核細胞の細胞質内部に位置する少なくとも1つの細胞内因子の活性または機能を改変できる。送達される抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドは、特定の標的分子と相互作用することにより、細胞内経路に対して作動性または拮抗性であり得る。細胞内経路の例としては、細胞内細菌性病原体、原生動物性病原体、ウイルス、および真菌性病原体を含む、感染性病原体の複製および生存機構の標的化および/または不活性化が挙げられる。治療用途の他の例としては、がん、代謝性疾患、神経変性、タンパク質の過剰発現/凝集障害(例えば、アルツハイマー病およびパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、ハンチントン病、アミロイドトランスサイレチン心筋症、2型糖尿病、および他の型のアミロイドーシス)、炎症性障害、および自己炎症性疾患に関連する細胞内因子を標的および/または不活化する抗体、抗体誘導体、タンパク質/ポリペプチドを産生すること、および送達することが挙げられる。がんへの適用として、抗体の送達は、一連の変異を担持するタンパク質(複数可)の複数のアイソフォームを標的にできる利点を提供し得る。例えば、がん原遺伝子KRASにおける変異は、多くの種類のヒトのがん中に存在するが、変異の範囲は、多様である。この多様性は、KRASタンパク質の他の構造的機能に加えて、治療用KRAS阻害剤の発見を非常に困難にする。それらのサイズおよびエピトープとの直接相互作用に影響しないわずかな構造的機能に対する不応性により、1つの抗体または抗体誘導体(例えば、ナノボディ)は、複数のRASアイソフォーム(例えば、KRAS4A、KRAS4B、HRAS、およびNRAS)および多数の変異されたKRASタンパク質を含む、様々なタンパク質の堅牢な阻害剤として使用され得る。この阻害効果は、本明細書に記載されるものなどの堅牢な送達プラットフォームと組み合わされると、RAS標的がん治療剤と幅広い標的の柔軟性から恩恵を受ける治療薬の両方の開発に新たな機会を開く。追加の治療用途としては、ワクチン用途において、抗体応答を刺激する抗原として作用し得るポリペプチド、および/または疾患状態もしくは遺伝性疾患により、その産生が調節不全であるかまたは変化された内因性ポリペプチドを補充または置換する酵素またはタンパク質などのポリペプチドの産生および送達が挙げられる。本発明にはまた、診断用細胞内イメージングプロセスに関連する用途を含む、診断用途もある。例えば、送達されるタンパク質は、アフィボディであり得る、または疾患を示す細胞内標的を検出するための細胞内プローブとして作用し得る。これは、例えば、がん中で過剰発現される遺伝子(上皮間葉転換、がん遺伝子、チミジンキナーゼ、テロメラーゼなど)をコードするmRNA、ATPの細胞内レベル、pH値、および無機イオンなどの、細胞内標的を検出するために使用できるナノフレア(プローブ様分子)の送達を含む。これはまた、疾患の診断および/またはリアルタイムでの生細胞内の細胞内プロセスの解明を可能にする。
【0045】
治療用途(ヒトおよび動物に対する)としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない;
ウイルス学:抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドが、細胞内ウイルス複製に必要とされる必須タンパク質を標的とし不活化するために、本発明を使用して産生されおよび送達され得る。この不活化は、例えば、抗体、抗体誘導体、またはタンパク質/ポリペプチドによる、適切なタンパク質フォールディングの崩壊、アロステリック構造変化の遮断、活性部位の遮断、相互作用するタンパク質の結合部位の遮断、または補因子(例えばATP、GTPなど)の結合部位の遮断を介して起こる。考えられる用途としては、HIVインテグラーゼ活性の阻害によるHIV複製の阻害;ノロウイルスの複製の阻害;インフルエンザA型複製の阻害;エボラウイルスの複製の阻害;肝炎ウイルスの複製(すべてのタイプ)の阻害;コロナウイルスの複製(すべてのタイプ)の阻害が挙げられる。
【0046】
細菌学:抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドが、細胞内細菌性病原体の細胞内ライフスタイルに必要とされる必須タンパク質、例えば細菌宿主からの栄養摂取(シデロフォアなど)に必要とされるタンパク質、を標的化する/不活化するために、本発明を使用して産生されおよび送達され得る。考えられる用途としては、エーリキア・シャフェンシス、黄色ブドウ球菌、クラミジア属、リケッチア属、コクシエラ属、マイコバクテリウム属の種、ブルセラ属、レジオネラ属、ノカルジア属、ナイセリア属、ロドコッカス・エクイ、エルシニア属、フランシセラ属ツラレンシス種、およびバルトネラ・ヘンセレの除去が挙げられる。
【0047】
原生動物:抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドが、細胞内原生動物性病原体の細胞内ライフスタイルに必要とされる必須タンパク質、例えば原生動物宿主からの栄養摂取に必要とされるタンパク質、を標的化する/不活化するために、本発明を使用して産生されおよび送達され得る。考えられる用途としては、トリパノソーマ属(例えば、リーシュマニア属の種、トリパノソーマ属の種)、アピコンプレックス門(例えば、マラリア原虫属の種、トキソプラズマ・ゴンディ、クリプトスポリジウム属パルバム)の除去が挙げられる。
【0048】
真菌学:抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドが、細胞内真菌性病原体の細胞内ライフスタイルに必要とされる必須タンパク質、例えば真菌宿主からの栄養摂取に必要とされるタンパク質、を標的化する/不活化するために、本発明を使用して産生されおよび送達され得る。考えられる用途としては、ニューモシスチス・イロベチイ、ヒストプラズマ・カプスラツム、カンジダ・アルビカンス、クリプトコッカス・ネオフォルマンスの除去が挙げられる。
【0049】
抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドもまた、治療可能性を有する細胞内シグナル伝達経路におけるタンパク質を標的化する/不活化するために、本発明を使用して生成されおよび送達され得る。経路、標的タンパク質、および関連する治療領域の例は、以下を含む:
(1)アポトーシス/細胞死/細胞増殖、および関連障害、例えば、PI3K、Akt、HIF1A、p53、Blc2、Bcl-XL、Bcl-w、BRUCE、MCL-2、XIAP、cIAP1、C-IAP2、NAIP、リビン、サバイビン(BIRC5)、がん。
(2)ワールブルグ効果関連タンパク質および関連疾患(例えば、GLUT1、GLUT3、PDK1、PDK2、MAGL、HK、PKM2、LDHA、G6PD、MCT1、PKB;がん、代謝障害)。
(3)栄養シグナル伝達タンパク質および関連障害(例えば、mTor、またはmTORC1もしくはmTORC2複合体中に見られる任意のタンパク質、がん、神経変性関連の認知機能低下の軽減、代謝性疾患)。
(4)Wnt経路および関連障害(例えば、Wnt、Frizzled、LRP5/6など;がん)。
(5)NFkB経路および関連障害(例えば、TNF-α、JAK1など、がん、炎症性障害)。
(6)Notch経路および関連障害(例えば、g-セクレターゼ、Notch1、Notch2、Notch3;がん)。
(7)ソニックヘッジホッグ経路および関連障害(例えば、GLI1、GLI2、SMO;がん)。
(8)TLRシグナル伝達および関連障害(TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、TLR13;白血病、結腸がん、骨髄異形成症候群、自己炎症性疾患、炎症性疾患)。
【0050】
実施例: サバイビンを不活性化するシングルドメイン抗体(ナノボディ)の送達は、がん細胞の増殖を阻害する。
【0051】
真核細胞において、サバイビン/BIRC5(アポトーシス阻害剤タンパク質ファミリーのメンバー)は、カスパーゼの活性化を遮断することによりアポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)を阻害する。サバイビンは、多くの増殖中のヒトがん細胞型中で高度に発現され、最終分化した有糸分裂後の細胞中には存在せず、したがって、サバイビン阻害は、増殖中のがん細胞に優先的に影響する。
【0052】
がん細胞は、多くの場合アポトーシスの欠陥を原因とする、制御されない増殖により特徴づけられる。がん/腫瘍の成長を制限するための強力な治療アプローチは、アポトーシス、特に過剰なDNA損傷によって引き起こされるアポトーシス、を増加させることである。
【0053】
サバイビン機能の破壊は、増加されたアポトーシスと減少されたがん細胞の増殖をもたらす。これらの特徴は、がん細胞と正常細胞の識別を可能にする潜在的ながん治療標的としてサバイビンを強調し、実際に、サバイビンは、20年以上の間がん治療薬として研究されてきた。残念なことに、サバイビンをベースにした治療法の複数の臨床試験は、失敗した。永続的な課題は、そこでサバイビンがその機能を発揮するのと同じ細胞区画(細胞質)中のがん細胞へのサバイビン阻害部分の送達である。本明細書に記載される細菌ベースの送達システムは、サバイビンを特異的に阻害する、細菌によりコードされ発現されるシングルドメイン抗体(ナノボディ)を標的細胞の細胞質に送達することにより、この課題を克服する。
【0054】
細胞により蓄積されたDNA損傷の量が閾値に達すると、アポトーシスカスケードが開始されて、アポトーシスまたはプログラム細胞死を介して集団から細胞を除去する。しかし、サバイビンは、アポトーシスの開始のために到達されなければならない閾値を効率的に上昇させることにより、がん細胞死を阻害する。がんの治療に使用されるほとんどの化学療法薬物は、腫瘍細胞に対してのみでなく正常組織に対しても毒性であり;したがって、全身化学療法は、重大なオフターゲット効果を有し得る。したがって、これらの望ましくない効果を最小に抑えるために、最も低い有効な用量を使用することが有利である。多くの化学療法剤は、上記の閾値を超えるために十分なDNA損傷を誘導することにより、細胞中のアポトーシスを活性化する。サバイビンは、この閾値に対するその影響のため、アポトーシス活性化に対する障壁である。したがって、化学療法剤の投与量は、それを克服するのに十分高い量でなければならない。例えばナノボディによる、サバイビンの不活化は、アポトーシス活性化の閾値を低下させることができ、それにより化学療法剤の有効用量を減少させ、おそらくその抗腫瘍効果を損なうことなくオフターゲット効果を減少させる。このアプローチでは、本発明の細菌システムを用いて産生され送達されるサバイビン不活性化ナノボディは、化学療法エンハンサーとして、または場合により、化学療法アジュバント療法として機能するであろう。
【0055】
ここで、腺癌ヒト肺胞基底上皮細胞(一般的なモデルがん細胞株であるA549細胞)の増殖ががん細胞の細胞質に抗サバイビンnbを送達する侵入細菌による細胞の処理時に遅延されることを示すことにより、ジアミノピメリン酸要求性大腸菌(FEC21)からなる、本明細書に記載の侵入性細菌送達システムを使用する、機能的な、細菌で発現されるサバイビン阻害ナノボディ(nb)タンパク質(すなわち、抗サバイビンnb)の良好な送達を確認する。これらの結果は、がん細胞の機能と干渉するタンパク質因子の送達に基づくがん治療薬を開発するための新しいアプローチとしての、この細菌送達システムの可能性を示す。
【0056】
大腸菌に最適化された抗サバイビンnb(
図6、四角で囲まれたアスタリスクは、終止コドンを示す)配列を、空のpSiVEC2ベクターにクローニングして、pSiVEC2_survivin_nbプラスミドを生成した(
図1)。クローン化された配列はまた、nbのC末端に、翻訳的に融合される6XHisアフィニティータグをコードする。pSiVEC2_survivin_nbでは、抗サバイビンnbタンパク質の原核生物での発現は、原核生物プロモーター(すなわち、細菌細胞でのみ活性なプロモーター)によって制御される。したがって、細菌は、抗サバイビンnbを産生(転写および翻訳)し、かつ真核細胞にそれを送達する。
【0057】
pSiVEC2_survivin_nbを、FEC21大腸菌に形質転換して、FEC21/pSiVEC2_survivin_nb株を生成した。FEC21細菌をさらに、それぞれ、インベイジンおよび受容体が媒介する貪食およびHylAが媒介するエンドソーム放出のために、invおよびhlyA遺伝子の染色体組み込みを介して、真核細胞に対し侵入性であるようにさらに操作した。pSiVEC2_survivin_nbで形質転換されたFEC21細胞を、選択用の適切な抗生物質を含むブレインハートインフュージョン(BHI)寒天上にプレーティングした。FEC21/pSiVEC2_survivin_nbクローンを、20%グリセロール中にて-80℃で凍結した。
【0058】
抗サバイビンnbの細菌での発現を、抗サバイビンnb細胞に融合されたC末端6XHisタグに結合する抗6XHisタグ抗体(1:500希釈)を使用して、FEC21/pSiVEC2_survivin_nb細胞の変性タンパク質サンプルのウエスタンブロッティングにより確認した。
図2は、FEC21/pSiVEC2_survivin_nbの4つの独立したクローン(#9、#10、#12、および#16と標識)のウエスタンブロットの結果を示す。陰性対照レーンには存在しなかった、約15kDaのタンパク質を表す強いバンドは、抗サバイビンnbの強力な細菌での発現を確認する。
【0059】
標準的な侵入アッセイ(すなわち、FEC21細菌が哺乳類細胞とインキュベートされ、哺乳動物細胞に侵入して、細胞内化する場合)を使用して、侵入性FEC21(
図3、クローン#10)細菌による細菌により発現された抗サバイビンnbの送達が、一般的ながん細胞株である肺胞基底上皮細胞(A549)の増殖を減少させ得るかを決定した。A549細胞を、37℃にて5%CO
2インキュベーションで10%ウシ胎児血清、2mMGlutaMAX、100U/mLペニシリン、および100μg/mLストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。侵入性細菌(invおよびhlyAをコードすることによる)は、RMEを介してA549細胞に入って、それらの細菌によりコードされ発現されたカーゴ(すなわち、抗サバイビンnb)を送達する。この侵入アッセイは、次の手順を含む;A549細胞を黒色の24ウェルプレート中に固定濃度で播種する。細菌の侵入の日に、2つの細菌ストックを、解凍する:1)FEC21/pSiVEC2_survivin_nb(クローン#10)および2)FEC21/pSiVEC2_Scramble(ノンコーディングスクランブル配列を担持するプラスミドで形質転換された侵入性陰性対照細菌株)。細菌細胞を、遠心分離し、0.004の吸光度600(A
600)でDMEM(-)(血清および抗生物質を含まない、高グルコースDMEM)に再懸濁する。A549細胞を、DMEM(-)で洗浄して抗生物質を除去し、各細菌懸濁液の0.5mLと2時間(37℃、5%CO2)インキュベートし、その後DMEMですすぎ洗いして、A549細胞に侵入しなかった残留細菌を除去する。Nexcelom Celigo機器(明視野チャネルで)を使用して、侵入後0時間、18時間、28時間、52時間、および76時間での細胞コンフルエンス(細胞増殖の指標)を測定した。
【0060】
図3は、本明細書に記載の細菌送達システムを介して抗サバイビンnbを受けるA549細胞が、スクランブル配列を受けた細胞(ナノボディなし対照)と比較して、増殖における持続的な減少を有することを示す。まとめると、これらの結果は、侵入性FEC21細菌送達プラットフォームが、機能的な抗サバイビンnbタンパク質を肺上皮細胞に発現しかつ送達して、その増殖を制限できることを実証する。各条件の時点ごとに、N=6の生物学的複製。各時点での細胞コンフルエンスを、その条件の開始コンフルエンスに対し正規化した。示されるデータは、平均標準偏差である。
【0061】
図4は、化学療法アジュバントとして同じ抗サバイビンnbの使用を示す。A549細胞を、上記のように抗サバイビンナノボディを発現する侵入性細菌(FEC21/pSiVEC2_survivin_nbクローン#10)で処理し、細菌処理後の最初の24時間の間、DNA損傷を誘導することによりがん細胞中のアポトーシスを活性化する、一般的な化学療法剤シスプラチン(25mM)に次いで曝露した。細胞コンフルエンスを、上記のように測定し、分析し、プロットした。プロットに示されるとおり、本明細書に記載される細菌媒介送達システムを介する抗サバイビンnbの送達は、細胞増殖に対するシスプラチン治療の効果を増強し、化学療法エンハンサーとしてFEC21/pSiVEC2_survivin_nbを確立する、すなわち、抗サバイビンnbの送達は、所定の用量のシスプラチンの有効性を増大する。堅牢な統計的有意性(p<0.005)を、二元配置分散分析により評価した。
【0062】
図5は、
図4の産生について分析された細胞中の増加されたアポトーシスの率を示す一連の画像である。
【0063】
【0064】
定義
本出願で使用される場合、用語「a」および「an」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、参照される構成要素またはステップの「少なくとも1つ」、「少なくとも第1の」、「1つ以上の」、または「複数」を意味する認識で使用される。例えば、用語「細胞(a cell)」は、複数の細胞(それらの混合物を含む)を含む。
【0065】
本明細書で使用される場合常に、用語「および/または」は、「および」、「または」、および「この用語により接続される要素のすべてのまたは他の組み合わせ」の意味を含む。
【0066】
本明細書で使用される用語「約」または「およそ」は、所与の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0067】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体例で記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、あらゆる数値は、それらのそれぞれの試験測定値で求められる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。さらに、様々な範囲の数値範囲が本明細書に記載される場合、引用された値を含むこれらの値の任意の組み合わせが使用され得ることが企図される。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、生成物、組成物および方法が言及された構成要素またはステップを含むが、他のものを排除しないことを意味すると意図される。生成物、組成物および方法を定義するために使用される場合「本質的にからなる」は、任意の本質的に重要な他の構成要素またはステップを除外すると意味してよい。したがって、列挙される成分から本質的になる組成物は、微量の混入物質および薬学的に許容される担体を排除しない。「からなる」は、他の成分またはステップの微量より多い要素を除外することを意味する。
【0069】
本発明の化合物に関して用語「投与」およびその変形(例えば、化合物を「投与すること」)は、治療を必要とする対象のシステム中に化合物を導入することを意味する。本発明の化合物が1つ以上の他の活性剤と組み合わせて提供される場合、「投与」およびその変形はそれぞれ、化合物および他の剤の同時のおよび逐次の導入を含むと理解される。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、特定の量で特定の成分を含む生成物、ならびに特定の量での特定の成分の組み合わせから、直接的にまたは間接的に、得られる任意の生成物を包含すると意図する。
【0071】
本明細書で使用される用語「治療的に有効な量」は、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医により求められる、組織、システム、動物またはヒトにおいて生物学的または医学的応答を誘発する活性化合物または医薬剤の量を意味する。がんの治療に関して、有効量は、臨床疾患を予防するために、または臨床疾患、臨床症状によって明らかにされる疾患の重症度を軽減するために十分な量を含む。いくつかの実施形態では、有効量は、臨床疾病および/または症状の発症を遅らせるために、または疾患を予防するために十分な量である。有効量は、1回以上の用量で投与され得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、「治療」は、有益なまたは所望の臨床結果を得ることを指す。有益なまたは所望の臨床結果は、これらに限定されないが、以下のいずれか1つ以上を含む:1つ以上の症状の緩和、疾患の範囲の縮小、疾患状態または疾患の安定化された(すなわち、悪化していない)症状、疾患の広がりの予防または遅延、疾患の進行の予防、遅延、減速、および/または体重/体重増加の維持。本発明の方法は、治療のこれらの態様のいずれか1つ以上を企図する。
【0073】
「薬学的に許容される」成分は、合理的な利益/リスク率に釣り合う過度の有害な副作用(毒性、刺激、およびアレルギー応答など)なしに、ヒトおよび/または動物での使用に好適な成分を指す。
【0074】
「安全かつ有効な量」は、本発明の方法において使用される場合に妥当な利益/リスク比に見合う、過度の有害な副作用(毒性、刺激、またはアレルギー応答など)なしに、所望の治療応答をもたらすのに十分な成分の量を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」または「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼを結合し下流(3’方向)のコード配列またはノンコーディング配列の転写を開始できるDNA調節領域である。本発明を定義する目的で、プロモーター配列は、転写開始部位によりその3’末端で結合され、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に延長する。プロモーター配列内に、転写開始部位、ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見られる。誘導性プロモーターを含む、様々なプロモーターを使用して、本発明に記載されるようにベクターを駆動してよい。
【0076】
プロモーターは、構成的に活性なプロモーター(すなわち、構成的に活性(「ON」)状態にあるプロモーター)であってよく、または外部刺激(例えば、特定の温度、化合物、またはタンパク質の存在)により制御される、誘導性プロモーター(すなわち、その状態が活性(「ON」)または不活性(「OFF」)であるプロモーター)であってよい。
【0077】
本明細書で使用される場合、合成の原核生物プロモーターは、細菌細胞において転写促進活性を有する(すなわち、RNAポリメラーゼを動員する-35、-10、およびUP配列を含む)ように合理的に設計される非天然のDNA配列である。本明細書で使用される場合、合成の原核生物ターミネーターは、細菌細胞において転写終結活性を有する(すなわち、固有のまたはRho依存性の機構を介して転写を終結させる配列を含む)ように合理的に設計される非天然DNA配列である。さらに、「合成の」DNA配列は、自然界には存在せず、かつ特定の目的のためにむしろ人工的に作製された(例えば、バイオインフォマティクスまたはin silico技術により)DNA配列である。
【0078】
抗体、または免疫グロブリン(Ig)は、約150~160kDaのサイズを有する大きなY字型タンパク質であり、それらは、2つの重タンパク鎖および2つの軽タンパク鎖からなり、かつFab断片(約50kDa、1つの軽鎖と半分の重鎖)および単鎖可変断片(約25kDa、2つの可変ドメイン、1つは軽鎖から、もう1つは重鎖から)よりもさらに小さい。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「抗体誘導体」は、そのアミノ酸鎖(すなわち、一次配列)が、抗体中に見られる任意のドメインまたはサブドメインと構造的相同性を共有する三次折り畳み構造をとり、かつ/またはその構造が、ポリペプチドが別の細胞コンポーネントと相互作用することを可能にする、ポリペプチドである。
【0080】
「アフィボディ」またはアフィボディ分子は、高い親和性で標的タンパク質(例えば、抗原)またはペプチドに結合するように操作された小さくて堅牢なタンパク質である。アフィボディの結合は、モノクローナル抗体の結合に類似しており、したがってアフィボディを抗体模倣体にする。アフィボディは、診断用途および治療用途において分子認識のために使用され得る。
【0081】
「ナノボディ」、またはシングルドメイン抗体(sdAb)は、1つの単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である。完全な抗体と同様に、ナノボディは、特定の抗原に選択的に結合できる。ナノボディは、わずか約12~15kDaの分子量を有し、ナノボディ/シングルドメイン抗体を2つの重タンパク質鎖および2つの軽鎖で構成される一般的な抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さくし、Fab断片(約50kDa、1つの軽鎖と半分の重鎖)および単鎖可変断片(約25kDa、2つの可変ドメイン、1つは軽鎖から、もう1つは重鎖から)よりもさらに小さくする。
【0082】
VHH抗体、またはナノボディは、重鎖のみの抗体の抗原結合断片である。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「侵入性」は、微生物、例えば細菌または細菌性治療用粒子(BTP)に言及する場合、標的細胞に少なくとも1つの分子、例えば抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを送達できる微生物を指す。侵入性微生物は、細胞膜を通り、それにより細胞の細胞質に入り、標的細胞中にその内容物の少なくともいくらか、例えば、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを送達できる、微生物であり得る。標的細胞中への少なくとも1つの分子の送達のプロセスは好ましくは、侵入装置を著しく改変しない。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「細胞標的化因子」は、細菌細胞が特定のタイプまたはクラスの真核細胞(すなわち、標的細胞)と特異的に相互作用することを可能にする、細菌細胞の表面上で発現される部分である。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「ドメイン」または「タンパク質ドメイン」は、タンパク質の残りの部分とは独立して折り畳み、かつ自己安定化する、タンパク質のポリペプチド鎖内のアミノ酸の配列を指す。あるドメインは、コンパクトな三次元構造へと折り畳む。
【0086】
本明細書で使用される場合、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドに言及する場合の用語「内因性」または「内因的に発現される」は、抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドが、生物体により天然に産生されることを意味する。
【0087】
本明細書で使用される用語「生物界間」は、細菌(または別の侵入性微生物)を使用して抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを生成し、かつ宿主ゲノムを組み込むことなく真核細胞中の標的分子の活性を調節するために標的組織内で細胞内に(すなわち、生物界間:原核生物から真核生物、または門全体:無脊椎動物から脊椎動物に)抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを送達する、送達システムを指す。細菌は、コードされた抗体、1つのVHH抗体ドメイン、ナノボディ、および/または他の抗体誘導体(または他の治療用核酸)を担持する特定の発現カセットの有無にかかわらず、「非病原性」である。しかし、場合によっては、細菌により担持され送達されるカーゴは、レシピエントの真核細胞に対し細胞調節効果または細胞傷害性効果を有する可能性がある。「非病原性細菌」、細菌は、疾患を引き起こすことができず、非病原性であるように操作され得るか、または標的細胞に送達するために送達システムが操作された特定の因子(例えば、ポリペプチド、抗体誘導体)の非存在下で自然に非病原性である。
【0088】
侵入性微生物は、細胞膜、例えば真核細胞細胞膜を通ること、および細胞質に入ることによるなど、標的細胞に少なくとも1つの分子を天然に送達できる微生物、ならびに天然に侵入性でない、および侵入性であるように修飾されている、例えば遺伝子修飾された、微生物を含む。別の好ましい実施形態では、本来は侵入性でない微生物が、「侵入因子」(「進入因子」もしくは「細胞質標的化因子」とも呼ばれる)に細菌またはBTPを連結することにより、侵入性になるように修飾され得る。本明細書で使用される場合、「侵入因子」は、非侵入細菌またはBTPにより発現されると、その細菌またはBTPを侵入性にする因子、例えばタンパク質またはタンパク質群である。本明細書で使用される場合、「侵入因子」は、標的化、取り込み、および/または輸出の機能を提供し、かつキメラ因子(すなわち、別の侵入因子またはそのサブユニットの断片にインフレームで融合された異種遺伝子配列によりコードされる組換えタンパク質)として操作できる。本明細書で使用される場合、「侵入因子」は、「細胞標的化遺伝子」によりコードされる。侵入性微生物は、当該技術分野において、例えば、米国特許第US20100189691(A1)号およびUS20100092438(A1)号およびXiang,S.et al.,NatureBiotechnology24,697-702(2006)に、一般的に記載されている。それぞれの内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0089】
好ましい実施形態では、侵入性微生物は、本出願の実施例で教示されるとおり、大腸菌である。しかし、追加の微生物が、遺伝子編集カーゴを送達するための生物界間送達ビヒクルとして機能するように、潜在的に適応できると企図される。これらの非毒性で侵入性の細菌およびBTPは、侵入特性を呈するか、または侵入特性を呈するように修飾され、様々な機構を介して宿主細胞に入る可能性がある。特殊なリソソーム内で細菌またはBTPの破壊を通常もたらす、専門的な食細胞による細菌またはBTPの取り込みとは対照的に、侵入性細菌またはBTP株は、非食細胞性宿主細胞に侵入する能力を有する。このような細胞内細菌の天然に存在する例は、エルシニア属、リケッチア属、レジオネラ属、ブルセラ属、マイコバクテリウム属、ヘリコバクター属、コクシエラ属、クラミジア属、ナイセリア属、バークホルデリア属、ボルデテラ属、ボレリア属、リステリア属、シゲラ属、サルモネラ属、ブドウ球菌、レンサ球菌、ポルフィロモナス属、トレポネーマ属、およびビブリオ属であるが、この特性は、侵入関連遺伝子の伝達を介するプロバイオティクスを含む、大腸菌、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ビフィドバクテリウム属などの他の細菌またはBTPにも伝達できる(P.Courvalin,S.Goussard,C.Grillot-Courvalin,C.R.Acad.Sci.Paris 318,1207(1995))。生物界間送達ビヒクルとして使用するための候補として追加の細菌種を評価するときに考慮または対処すべき因子としては、候補の病原性またはその欠如、標的細胞に対する候補細菌の指向性、または代わりに、細菌が標的細胞の内部に遺伝子編集カーゴを送達するために操作され得る程度、および候補細菌が宿主の自然免疫を引き起こすことにより提供する可能性のある任意の相乗的価値、が挙げられる。
【0090】
これらの改良された細菌送達ビヒクルの投与方法としては、全身送達のための腹腔内および静脈内投与、CNS送達のための髄腔内投与、骨格筋への投与のための筋肉内注射、局所作用のための鼻腔への鼻腔内投与、上気道および下気道を標的とするエアロゾル化、頬側送達のための口腔内での吸収消化管への吸着のための摂取、デリケートな生殖器粘膜上皮への適用、および眼内送達のための局所投与が挙げられる。これらの改善された送達ビヒクルは、広範囲の種(ヒト、トリ類、ブタ、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ科)における広範囲の疾患(感染症、アレルギー性、がん性、遺伝性、および免疫学的)を予防するおよび/または治療するために使用され得る。
【0091】
本発明の化合物に関する用語「投与」およびその変形(例えば、化合物を「投与すること」)は、治療を必要とする対象のシステム中に化合物を導入することを意味する。本発明の化合物が1つ以上の他の活性剤(例えば、細胞傷害性剤)と組み合わせて提供される場合、「投与」およびその変形はそれぞれ、化合物および他の剤の同時のおよび逐次の導入を含むと理解される。
【0092】
「対象」は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物(例えば、獣医学対象)などの、任意の多細胞脊椎動物門に属する生物体である。一例において、対象は、生命を脅かすかまたは生活の質を損なう感染症または他の状態を有することが知られているか、または有する疑いがある。
【0093】
本明細書で使用される用語「治療する」および「治療」は、有害な状態、障害、または疾患を有する臨床症状のある対象への本発明の剤または製剤(例えば細菌)の投与を指し、これにより症状の重症度および/または頻度の低下に影響を与える、症状および/またはその根本的な原因を除去する、および/または損傷の改善または修復を促す。
【0094】
用語「予防する」および「予防」は、特定の有害な状態、障害、または疾患にかかりやすい臨床的に無症候性の個体への剤または組成物の投与を指し、従って症状および/またはそれらの根本的な原因の発生の予防に関する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「生物学的に活性なペプチド」は、生きている生物体、組織、細胞、または生化学プロセスに対し影響を有するペプチドである。生物学的に活性なペプチドは、抗体または抗体誘導体のFcドメインまたは他の抗体ドメイン(例えば、ペプチボディ)上にグラフトされて、標的細胞に、それがグラフトされる抗体または抗体誘導体と共に、生物学的に活性なペプチドの機能を送達できる。生物学的に活性なペプチドの効果は、抗酸化特性、抗微生物特性、免疫調節特性、細胞調節特性、および/または代謝変化特性の効果であり得る。
【0096】
抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを含む侵入性細菌は、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、経口、鼻腔内、眼内、直腸内、膣内、骨内、経口、浸漬および尿道内接種経路により対象に導入できる。対象に投与される本発明の侵入性細菌の量は、対象の種、ならびに治療される疾患または状態に応じて変化するであろう。例えば、投与量は、対象あたり約103~1011の生存生物体、好ましくは約105~109の生存生物であり得る。本発明の侵入性細菌またはBTPは一般に、薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に投与される。場合によっては、本発明の侵入性細菌またはBTPは、乾燥粉末、凍結乾燥、またはフリーズドライとして製剤化される。
【0097】
当業者は、過度の実験をすることなく、対象に投与するための本発明の組成物の1つの適切な用量を容易に決定できる。典型的には、医師は、個々の患者に最も好適である実際の投与量を決定し、これは、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用時間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与形式および投与時間、排泄の速度、薬物の組み合わせ、特定の状態の重症度、ならびに個々の受けている治療法を含む、様々な因子に依存する。本明細書で開示される投与量は、平均的な場合の例である。当然ながら、より多いまたはより少ない投与量範囲が有利である、個々の例があり得るが、そのようなものは、本発明の範囲内である。
【0098】
吸入による投与のために、本発明に従う使用のための医薬組成物は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスを使用して、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で簡便に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することにより決定され得る。吸入器または粉吹き器での使用のための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、組成物の粉末混合物、例えば細菌、およびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤、を含有して製剤化され得る。
【0099】
医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または持続注入による、注射による非経口投与用に製剤化され得る。注射用の製剤は、単位剤形で、例えばアンプル中で提供されてよく、または多用量容器で、保存剤を加えて提供されてもよい。本願の組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液のような形態を取ってよく、および懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤を含んでよい。あるいは、有効成分は、好適なビヒクル、例えば熱物質非含有滅菌水、で構成するための粉末形態であってもよい。
【0100】
導入される抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを含む侵入性細菌を使用して、対象から得られる細胞などの、in vitroで培養される動物細胞を感染させることができる。これらのin vitroで感染された細胞は次いで、動物、例えば、そこから最初に細胞が得られた対象に、静脈内、筋肉内、皮内、もしくは腹腔内に、または細胞が宿主組織に入ることを可能にする任意の接種経路により、導入され得る。個々の細胞に抗体、抗体誘導体、およびタンパク質/ポリペプチドを送達する場合、投与される生存生物体の投与量は、細胞あたり約0.1~106、好ましくは約102~104の細菌の範囲の感染多重度である。
【0101】
本発明の方法を実施するためのキットが、さらに提供される。「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば、本発明のpH緩衝剤を含む任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)を意図する。キットは、本発明の方法を実施するためのユニットとして宣伝され、配布され、または販売され得る。さらに、キットは、キットおよびその使用のための方法を説明する添付文書を含んでよい。キット試薬のいずれかまたはすべては、密封された容器またはパウチなどの、外部環境からこれらを保護する容器内で提供されてよい。
【0102】
有利な実施形態では、キット容器は、薬学的に許容される担体をさらに含んでよい。キットは、さらに滅菌希釈剤を含んでもよく、これは好ましくは、別個の追加の容器中に保管される。別の実施形態では、キットは、対象において疾患を治療するおよび/または予防するための方法として、pH緩衝剤と抗病原体剤の組み合わされた治療の使用を指示する印刷された説明書を含む添付文書をさらに含む。キットはまた、追加の抗病原体剤(例えば、アマンタジン、リマンタジン、およびオセルタミビル)、そのような剤の効果を増強する剤、または治療の有効性もしくは忍容性を改善する他の化合物を含む追加の容器を含んでもよい。
【0103】
上述の利点、および前述の説明から明らかにされる利点は、効率的に達成される。特定の変更が本発明の範囲から逸脱することなく上記の構成において行われてよいので、上記の説明に含まれる、または添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されると意図される。
【0104】
本出願で引用されるすべての参考文献は、本明細書と矛盾しない範囲で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
上述の利点、および前述の説明から明らかにされる利点が効率よく達成されることは明らかであり、特定の変更が本発明の範囲から逸脱することなく上記の構成において行われてよいので、前述の説明に含まれる、または添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されることが意図される。
【0106】
また、以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載の本発明の一般的および特定の特徴のすべて、言語については、これらの間にあると言える可能性がある本発明の範囲のすべての記述を網羅すると意図されることも理解されるべきである。ここで本発明を記載する。
【0107】
【0108】
【0109】
【国際調査報告】