(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】焙煎コーヒー
(51)【国際特許分類】
A23F 5/04 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A23F5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574649
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022064192
(87)【国際公開番号】W WO2022258378
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】エルズビー, ケバン, アーサー
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, ショーン, マッケイ
(72)【発明者】
【氏名】ノイラ ゲラ, ミカエル, ホセ
(72)【発明者】
【氏名】サラザン‐オリベルジェル, セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ポアソン, ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】ダビデック, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スプレン, ステファン
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB21
4B027FC01
4B027FE08
4B027FQ02
4B027FQ17
4B027FR03
4B027FR05
4B027FR08
(57)【要約】
本発明は、コーヒーを焙煎する方法に関し、特に、過熱水蒸気の存在下で未焙煎コーヒー豆を焙煎した後、水蒸気なしで焙煎する方法に関する。本発明の更なる態様は、焙煎コーヒー、及び飲料調製装置で使用するための焙煎コーヒーを収容している容器である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未焙煎コーヒー豆を、9.5バール超の圧力の過熱水蒸気の存在下で、20~900秒間焙煎した後、180℃~260℃の豆温度で、20~1200秒間水蒸気なしで焙煎する工程を含む、コーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項2】
前記未焙煎コーヒー豆が110℃を超える温度に加熱されたことがない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水蒸気なしで焙煎する工程が、流動床ロースター又はパドルロースターで行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
過熱水蒸気の存在下で焙煎された前記豆が容器に詰められ、水蒸気なしで焙煎される前に少なくとも1箇所の他の場所に輸送される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水蒸気なしで焙煎した後の前記豆が、異なる条件下で焙煎された更なるコーヒー豆とブレンドされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(E)-β-ダマセノンの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する重量比が0.7より大きい、焙煎コーヒー。
【請求項7】
ジメチルトリスルフィドの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する重量比が0.2より大きい、請求項6に記載の焙煎コーヒー。
【請求項8】
滴定酸度が、焙煎コーヒー1kg当たり、水酸化ナトリウム当量で12mmol未満である、請求項6又は7に記載の焙煎コーヒー。
【請求項9】
総マンノースの3-O-カフェオイルキニドに対する重量比が175未満である、請求項6~8のいずれか一項に記載の焙煎コーヒー。
【請求項10】
30~95CTNの焙煎色を有する、請求項6~9のいずれか一項に記載の焙煎コーヒー。
【請求項11】
500~600μmの粒子サイズD(4,3)に挽かれ、100mLの沸騰超純水中に懸濁され、密閉ジャー内で10分間撹拌された5gの焙煎コーヒーが少なくとも1.3%の総固形分を有する溶液をもたらすように、可溶性固形分を有する、請求項6~10のいずれか一項に記載の焙煎コーヒー。
【請求項12】
更なる焙煎のためにパッケージングされた焙煎コーヒーである、請求項6に記載の焙煎コーヒー。
【請求項13】
前記コーヒーが55~180CTNの焙煎色を有する、請求項12に記載の焙煎コーヒー。
【請求項14】
飲料調製装置で使用するための容器であって、請求項6~11のいずれか一項に記載の焙煎コーヒーを収容している、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーを焙煎する方法に関し、特に、過熱水蒸気の存在下でコーヒー豆を焙煎した後、水蒸気なしで(水蒸気を用いない)焙煎する方法に関する。本発明の更なる態様は、焙煎コーヒー、及び飲料調製装置で使用するための焙煎コーヒーを収容する容器である。
【0002】
[背景技術]
コーヒーの特徴的なアロマ及びテイストは、コーヒー豆の焙煎中に発生する。浅煎りは、通常、より強く知覚される酸味(acidity)並びにより多くのフルーティでワインのようなアロマノートに関連し、一方、深煎りは、よりしっかりとしたボディ及びより強い焙煎ノートを生じる。
【0003】
コーヒー飲用者の全員がコーヒーのアロマ及びテイストに関して同じ嗜好を共有しているわけではない。実際、コーヒー飲用者の多くは、コーヒーが提供することができる多種多様な官能体験を堪能しており、豆の種類、原産地、ブレンド、及び焙煎方法の違いは全て役割を有している。
【0004】
コーヒーを商業的に焙煎する場合、コーヒーのテイスト及びアロマを調節可能であることが望ましい。調節可能であることで、新しい官能特性を作り出すこと、又は時間が経ってもコーヒー製品の官能特性を一定に維持することができ、様々なコーヒー豆の季節毎の入手性の変化を補うことができる。テイスト及びアロマを調節することができ、また、実施するのに経済的であり、良好な収率をもたらす焙煎方法を有することが商業的には重要である。
【0005】
したがって、コーヒーを焙煎するための改善された解決策を見出すことが、産業界において依然として必要とされている。
【0006】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを意図している。
【0007】
[発明の概要]
本発明の目的は、現在の技術水準を改善することである。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開させるものである。
【0008】
したがって、本発明は、第1の態様において、未焙煎コーヒー豆を、9.5バール超の圧力の過熱水蒸気の存在下で、20~900秒間焙煎した後、水蒸気なしで、180℃~260℃の豆温度で、20~900秒間焙煎する工程を含む、コーヒー豆を焙煎する方法を提供する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、(E)-β-ダマセノンの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する重量比が0.7より大きい、焙煎コーヒーを提供する。
【0010】
本発明の第3の態様は、飲料調製装置で使用するための容器であって、本発明の焙煎コーヒーを収容している、容器に関する。
【0011】
コーヒーを水蒸気で焙煎することにより、コーヒーのテイスト及びアロマを変えることができる。しかしながら、水蒸気で焙煎したコーヒーは、かなりすっぱさ(sour)が強い傾向がある。驚くべきことに、本発明者らは、高圧の過熱水蒸気を用いる第1の焙煎段階と、水蒸気なしで焙煎する第2の焙煎段階との、二段階でコーヒーを焙煎することが、コーヒーを異なるテイスト領域に調節する能力を高め、過度のすっぱさは生成せずにすっきりした酸味を生成することを見出した。特に、得られた焙煎コーヒーは、ダマセノンなどの望ましい調理されたフルーツノート又はジャムノートに関連するアロマ化合物を高レベルとし、深煎りしたロブスタコーヒーの特徴であるピラジンなどのアーシーノートに関連するアロマ化合物を低レベルとして組み合わせて有する。この効果は、ロブスタコーヒー豆及びアラビカコーヒー豆の両方で生じる。有利なことに、コーヒーは、本発明の方法で焙煎した後、不快なすっぱさを伴わずに、高ブリュー固形分で抽出することができる。
【0012】
[発明を実施するための形態]
その結果として、本発明は、一部には、未焙煎コーヒー豆を、9.5バール超の圧力の過熱水蒸気の存在下で、20~900秒間焙煎した後、水蒸気なしで、180℃~260℃の豆温度で、20~1200秒間焙煎する工程を含む、コーヒー豆を焙煎する方法に関する。
【0013】
未焙煎コーヒー豆は、コーヒー生豆と呼ばれる場合もある。本発明の文脈において、未焙煎コーヒー豆は、焙煎を開始するのに十分に高い温度に供されたことがないコーヒー豆である。一実施形態では、未焙煎コーヒー豆は、110℃を超える温度に加熱されたことがない。例えば、未焙煎豆は、90℃を超えて、例えば80℃を超えて、例えば70℃を超えて、例えば60℃を超えて、更に例えば50℃を超えて加熱されたことがなくてもよい。
【0014】
水蒸気なしの焙煎は、適切な焙煎装置、例えばドラムロースター、流動床ロースター又はパドルロースターで行うことができる。水蒸気なしの焙煎は、過熱水蒸気の存在下で焙煎するために使用される装置とは別の装置で行われてもよい。一実施形態では、水蒸気なしの焙煎は、流動床ロースター又はパドルロースターで行われる。水蒸気なしの焙煎は、不活性雰囲気下で行われてもよい。水蒸気なしの焙煎は、大気圧又はそれに近い圧力で行われてもよい。
【0015】
一実施形態では、過熱水蒸気の存在下でコーヒー豆を焙煎することは、加圧可能なチャンバ内の、回転可能な有孔ドラム(perforated rotatable drum)内で行われてもよい。
【0016】
多くの消費者は、自身が飲用するコーヒーがコーヒー豆以外の原材料を含まないことを期待する。一実施形態では、未焙煎コーヒー豆は、添加糖などの任意の非コーヒー原材料の非存在下で、過熱水蒸気の存在下で焙煎することができる。一実施形態では、水蒸気なしで豆を焙煎する工程は、添加糖などの任意の非コーヒー原材料の非存在下で行うことができる。更なる実施形態では、コーヒー豆を焙煎するための方法における全ての焙煎工程は、添加糖などの非コーヒー原材料の非存在下で行われる。
【0017】
一実施形態では、未焙煎コーヒー豆は、コーヒーチェリーの他の成分などの任意の非コーヒー豆成分の非存在下で、過熱水蒸気の存在下で焙煎することができる。一実施形態では、水蒸気なしで豆を焙煎する工程は、コーヒーチェリーのその他の成分などの任意の非コーヒー豆成分の非存在下で行うことができる。更なる実施形態では、コーヒー豆を焙煎するための方法における全ての焙煎工程は、コーヒーチェリーのその他の成分などの任意の非コーヒー豆成分の非存在下で行われる。
【0018】
一実施形態では、過熱水蒸気は、9.5バールを超える圧力、例えば10バールを超える圧力、例えば11バールを超える圧力、例えば12バールを超える圧力、例えば13バールを超える圧力、例えば14バールを超える圧力、更には例えば15バールを超える圧力を有する。過熱水蒸気は、9.5バール~20バール、例えば10バール~18バール、例えば12バール~17バール、更に例えば13バール~16バールの圧力を有してもよい。
【0019】
本明細書において単位「bar」で与えられる圧力は、絶対圧力を指し、bara又はbar(a)と表記される場合もある。1バールは100kPaに等しい。
【0020】
水蒸気の温度は、水蒸気の圧力下で水蒸気を過熱状態とし、水蒸気供給を、過熱水蒸気雰囲気を維持するのに十分なものにするようなものとすべきである。水蒸気の圧力-エンタルピー状態図は広く利用可能である。過熱状態にあることを条件として、水蒸気温度は、180℃~330℃、例えば220℃~320℃、更に例えば250℃~310℃であってもよい。例えば、過熱水蒸気は、15バールの圧力及び300℃の温度であってもよい。
【0021】
一実施形態では、未焙煎コーヒー豆は、過熱水蒸気の存在下で、180℃~320℃、例えば190℃~300℃、更に例えば200℃~280℃の最終豆温度まで焙煎されてもよい。
【0022】
一実施形態では、過熱水蒸気の存在下で焙煎された後のコーヒー豆の含水率は、未焙煎豆の含水率よりも低い。過熱水蒸気は、液相中に水を含まないという意味で「乾燥」している。焙煎前に、例えば飽和水蒸気を用いて豆を単に蒸すだけでは、所望のテイストの調節を提供できず、実際、豆が焙煎温度にさらされたときに、ウェットな水蒸気で蒸すことで生じ得るものなどの高レベルの豆水分(例えば、豆中20重量%以上の水分)は、望まれないすっぱさなどの不要な官能特性及び官能的に望ましくない化合物の生成を引き起こす。
【0023】
一実施形態では、未焙煎コーヒー豆は、過熱水蒸気の存在下で、20~900秒間、例えば30~300秒間、例えば50~250秒間、例えば60~200秒間、例えば80~150秒間、更に例えば90~130秒間焙煎される。
【0024】
一実施形態では、水蒸気なしでの焙煎は、185℃~230℃、例えば190℃~210℃の豆温度であってもよい。一実施形態では、水蒸気なしでの焙煎は、40~300秒間、例えば40~900秒間、例えば50~150秒間、例えば60~120秒間、例えば80~110秒間、更に例えば180~240秒間であってもよい。
【0025】
一実施形態では、コーヒー豆を焙煎する方法は、未焙煎コーヒー豆を、12バール超の圧力の過熱水蒸気の存在下で、80~150秒間焙煎した後、水蒸気なしで、180℃~220℃の豆温度で200~220秒間焙煎する工程を含む。
【0026】
有利なことに、本発明の方法は、ロブスタ豆から浅煎りされたアラビカ豆に通常付随するテイスト及びアロマを生成することができる。しかしながら、本発明によるコーヒー豆は、アラビカコーヒー豆、ロブスタコーヒー豆、又はこれらの組み合わせであってもよい。コーヒー豆は、コーヒーノキ(Coffea)の種子である。アラビカコーヒー豆とは、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)由来のコーヒー豆を意味し、ロブスタコーヒー豆とは、ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)由来のコーヒー豆を意味する。
【0027】
一実施形態では、焙煎したコーヒー豆を挽いてもよく、例えば、コーヒー豆を、水蒸気なしで焙煎した後に挽いてもよい。
【0028】
抽出可能な小分けされた原材料を収容する飲料調製装置(例えば、飲料調製マシン)は、飲料を調製する便利な方法を提供する。このような小分けされた原材料は、概して、例えばポッド、パッド、小袋、パウチ、又はカプセルなどとして構成された容器に詰められる。一実施形態では、焙煎したコーヒー豆(例えば、焙煎し挽いたコーヒー豆)は、容器に充填され、この容器は、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである。容器は、他の構成の中でも特に、例えば飲料カプセルであってもよい。
コーヒー豆の官能特性を最良に最適化するために、最終ブレンド中のある割合の豆に適用される焙煎が、ブレンド中の他の豆に適用される焙煎と異なっていてもよい。例えば、異なる原産地及び/又は異なる種類に由来するコーヒー豆のブレンドにおいて、異なる原産地/種類のコーヒー豆は、最終的な風味及びアロマを最適化する条件下で別々に焙煎されてもよい。一実施形態では、水蒸気なしで焙煎した後のコーヒー豆は、異なる条件下で焙煎された更なるコーヒー豆とブレンドされる。一実施形態では、コーヒー豆を焙煎する方法は、
a)9.5バール超の圧力の過熱水蒸気の存在下で、第1の種類の未焙煎コーヒー豆を20~900秒間焙煎した後、180℃~260℃の豆温度で、水蒸気なしで20~1200秒間焙煎する工程と、
b)第2の種類の未焙煎コーヒー豆を焙煎する工程と、
c)焙煎された第1及び第2の種類のコーヒー豆をブレンドする工程と、を含む。
【0029】
第2の種類の未焙煎コーヒー豆の焙煎は、例えば、水蒸気なしで、例えば180℃~260℃の豆温度で20~1200秒間実施されてもよい。第2の種類のコーヒーの焙煎は、例えば、9.5バール超の過熱水蒸気が存在する状態で未焙煎コーヒー豆を20~900秒間焙煎した後、180℃~260℃の豆温度で、水蒸気なしで20~900秒間焙煎することによるものであってもよい。
【0030】
一実施形態では、工程a)で得られた焙煎豆の焙煎色は、工程b)で得られた焙煎豆の焙煎色よりも少なくとも20CTN高い。更なる実施形態では、第1の種類の未焙煎コーヒー豆は、第2の種類の未焙煎コーヒー豆とは異なる原産地及び/又は異なるコーヒー種に由来する。
【0031】
焙煎豆の色はCTN単位で表すことができる。CTNの焙煎色は0~200の間の値をとり、Neuhaus NeotecのColorTest II(登録商標)などの分光光度計で測定したときにサンプルによって後方散乱される赤外(IR)光(904nm)の強度を測定することによって求められる。分光光度計は、挽いたサンプルの表面に、半導体光源からの904nmの波長の単色IR光を照射する。予め較正しておいた受光器により、サンプルによって反射された光の量を測定する。一連の測定について平均値が計算され、電子回路によって表示される。コーヒー豆の色は、その焙煎レベルによって変わる。例えば、コーヒー生豆は、典型的には、200を超えるCTNを有し、極浅く焙煎した(extremely lightly roasted)コーヒー豆のCTNは、典型的には約150であり、浅く焙煎した(lightly roasted)コーヒー豆のCTNは、典型的には、約100であり、中暗色の(medium-dark)コーヒー豆のCTNは、典型的には約70である。極暗色まで焙煎した(very dark roasted)コーヒー豆は、典型的には約45のCTNを有する。
【0032】
第1の種類のコーヒー豆は、固有のフルーティ/フローラルなアロマ及びすっきりした酸味を有する高品質の豆であってもよい。第2の種類のコーヒー豆は、第1の種類のコーヒー豆とは異なる原産地及び/又は異なるコーヒー種に由来し、第1の種類のコーヒー豆よりも低い品質等級のものであってもよい。第2の種類のコーヒー豆は、例えば、乾式処理された(dry processed)ロブスタ豆又は乾式処理されたブラジル産アラビカ豆であってもよい。「異なる原産地」とは、豆が異なる地理的地域又は国で栽培されたことを意味する。コロンビア産、ケニア産、コスタリカ産、ニカラグア産、及びブラジル産は、原産地の例である。第1の種類のコーヒー豆は、コロンビア産アラビカ、ケニア産アラビカ、中米産アラビカ(例えば、コスタリカ産又はニカラグア産)、高品質ブラジル産アラビカ、最高品質のロブスタ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、第1の種類のコーヒー豆は、コロンビア産アラビカ、ケニア産アラビカ、中米産アラビカ(例えば、コスタリカ産又はニカラグア産)、高品質のブラジル産アラビカ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。更なる例では、第1の種類のコーヒー豆は、コロンビア産アラビカ又はケニア産アラビカであってもよい。一実施形態では、第1の種類のコーヒー豆は、コロンビア産アラビカ、ケニア産アラビカ、コスタリカ産アラビカ、ニカラグア産アラビカのコーヒー豆、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される豆である。
【0033】
本発明の方法の焙煎の2つの段階は、物理的に同じ場所で行われる必要はない。過熱水蒸気で焙煎することができる焙煎器(ロースター)は、概して、水蒸気なしで焙煎するロースターよりも高価である。過熱水蒸気の存在下で豆を焙煎する中央施設を有すること、次いで、これらの水蒸気焙煎された豆を一連の他の場所、例えば販売場所に近い場所に輸送して、水蒸気なしで焙煎を行うことには経済的意味がある場合がある。水蒸気なしの焙煎は、例えば、家庭又は小売店で行うことができる。家庭又は小売店に、水蒸気で焙煎されたある程度焙煎された豆を提供することは、提供され得る魅力的なアロマを有するコーヒーの範囲を広げる。豆は、典型的には輸送のために容器に詰められる。一実施形態では、過熱水蒸気の存在下で焙煎された豆は容器に詰められ、水蒸気なしで焙煎される前に少なくとも1箇所の他の場所に輸送される。
【0034】
本発明の一態様は、未焙煎コーヒー豆を、9.5バール超の圧力の過熱水蒸気の存在下で、20~900秒間焙煎した後、容器に詰める工程を含む、コーヒー豆を焙煎する方法を提供する。例えば、未焙煎コーヒー豆は、100超のCTNを有する色に焙煎されてもよい。
【0035】
本発明の更なる態様は、過熱水蒸気の存在下での焙煎に供されることによってある程度焙煎されたコーヒー豆の、家庭又は小売店でのその後の焙煎のための使用である。
【0036】
本発明の更に別の態様は、未焙煎コーヒー豆を、過熱水蒸気の存在下で、20~900秒間(例えば、30~250秒間、例えば50~250秒間、例えば60~200秒間、例えば80~150秒間、更に例えば90~130秒間)焙煎した後、水蒸気なしで、180℃~260℃の豆温度で20~1200秒間(例えば120~500秒間)焙煎する工程と、豆を挽く工程と、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するための容器に、挽いた豆を充填する工程と、を含む、コーヒー豆を焙煎する方法である。
【0037】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明による焙煎コーヒーが、従来の熱焙煎のみによって焙煎された種類の豆には非標準的なアロマ化学によって確認される、改善された官能属性を有することを見出した。この焙煎コーヒーは、深煎りしたロブスタコーヒーの特徴であるアルキルピラジンなどのアーシーノートに関連するアロマ化合物のレベルが低く、(E)-β-ダマセノンなどのジャム-フルーティノートに関連するアロマ化合物のレベルが高い。この効果は、ロブスタコーヒー豆及びアラビカコーヒー豆の両方で生じる。本発明の一態様は、(E)-β-ダマセノンの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する重量比が、0.7より大きい、例えば0.8より大きい、例えば0.85より大きい、例えば0.9より大きい、例えば1.0より大きい、例えば0.7~5.0、更に例えば0.8~4.0、例えば0.9~3.5である、焙煎コーヒー(例えば焙煎し挽いたコーヒー)を提供する。(E)-β-ダマセノンは、ジャム-フルーティノートを提供するアロマ分子である。2,3-ジエチル-5-メチルピラジンは、アーシーノートを提供するアロマ分子である。
【0038】
一実施形態では、本発明の焙煎コーヒーは、0.2より大きい、例えば、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.32、0.34、0.36、0.38、0.40又は0.42より大きい、ジメチルトリスルフィドの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する重量比を有する。一実施形態では、本発明の焙煎コーヒーは、0.2~0.6の、ジメチルトリスルフィドの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する重量比を有する。ジメチルトリスルフィドの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する比の増加は、特に(E)-β-ダマセノンの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する比の増加と組み合わせた場合に、増強されたフルーティな甘いノート及び低減されたアーシーノートと関連する。
【0039】
水蒸気中でのコーヒーの焙煎は、得られるコーヒーがすっぱくなる傾向があるので、概して行われない。しかしながら、本発明の方法において使用される焙煎条件は、驚くべきことに、このようなすっぱさを回避し、望ましいすっきりした酸味を残すが、不快なすっぱさを残さない。一実施形態では、焙煎コーヒーは、焙煎コーヒー1kg当たり、水酸化ナトリウム当量で12mmol未満、例えば焙煎コーヒー1kg当たり、水酸化ナトリウム当量で11mmol未満、10mmol未満、9mmol未満、8mmol未満、7mmol未満、6mmol未満、5mmol未満、4mmol未満、又は3mmol未満の滴定酸度を有する。
【0040】
一実施形態では、本発明の焙煎コーヒーは、総マンノースの3-O-カフェオイルキニドに対する重量比が、175未満、例えば155未満、例えば135未満、例えば115未満、例えば100未満、例えば80未満、例えば70未満、例えば60未満である。両方の比率値は、g/kg焙煎コーヒーとして表される。3-O-カフェオイルキニドは、コーヒーにおける望ましい苦味ノートと関連している。3-O-カフェオイルキニド(したがって、総マンノースの3-O-カフェオイルキニドに対するより高重量比)のレベルが低くなるほど、望ましい苦味特徴がより少ないことを示す。本発明の文脈において、「総マンノース」という用語は、例えばマンナンの形態で重合したマンノースを含む。焙煎コーヒーの総マンノースは、比較的一定であるので、総マンノースの3-O-カフェオイルキニドに対する重量比の変動は、主に3-O-カフェオイルキニドによるものである。
【0041】
本発明の方法は、浅煎り、例えば浅煎りされたアラビカと通常関連する魅力的なアロマを有するコーヒーの調製を可能にする。驚くべきことに、これらのアロマは、比較的高い焙煎度で維持される。一実施形態では、焙煎コーヒーは、30~95CTN、例えば40~80CTN、更に例えば45~75CTNの焙煎色を有する。
【0042】
本発明の方法は、高レベルの可溶性固形分又は「ブリュー固形分」を有するコーヒーを有利に製造する。即ち、コーヒーを挽いて水で抽出すると、コーヒーの重量の高い割合が水に抽出される。この抽出は、コーヒー原材料のより効率的な使用を可能にし、また、飲料調製装置で使用するためにコーヒーが飲料カプセルに充填されるときにも有利である。より多くの可溶性固形分を有するコーヒーは、風味強度を損なわせずに、より大きな「ロングカップ」コーヒー飲料を製造するために使用することができる。水蒸気焙煎は、コーヒー焙煎方法の一部の間にコーヒー生豆中の水分レベルを維持し、炭水化物の加水分解を増加させるので、より高レベルのブリュー固形分をもたらす。過剰なすっぱさを生成することなく、このレベルを達成できることは有利である。コーヒーのブリュー固形分は、焙煎し挽いたコーヒーを沸騰水に懸濁し、溶解した固形分の含量を測定することによって測定することができる。例えば、中挽きの焙煎し挽いたコーヒー5gを沸騰超純水100mLに懸濁させ、密閉容器内で10分間撹拌することができる。溶解した総固形分の含量は、膜濾過後に屈折率測定により測定される。一実施形態では、焙煎コーヒーは可溶性固形分を有し、該可溶性固形分は、500~600μm(例えば540~580μm)の粒子サイズD(4,3)に挽かれ、100mLの沸騰超純水に懸濁され、密閉ジャー内で10分間撹拌された5gの焙煎コーヒーが、例えば膜濾過後に屈折率測定により測定されたときに、少なくとも1.3%の総固形分(例えば少なくとも1.4%の総固形分、少なくとも1.5%の総固形分、少なくとも1.6%の総固形分、又は少なくとも1.7%の総固形分)を有する溶液をもたらすようなものである。粒子サイズD(4,3)(体積平均径と呼ばれる場合もある)は、レーザー回折によって測定することができる。
【0043】
一実施形態では、焙煎コーヒーは、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するための容器に収容される。容器は、他の構成の中でも特に、例えば飲料カプセルであってもよい。高レベルの可溶性固形分を有する焙煎コーヒーは、風味強度を損なわせずにカプセル内の同じ重量のコーヒーからより大きな「ロングカップ」コーヒー飲料を調製することを可能にするので、飲料カプセルでの使用に有利である。飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのカプセルは、飲料調製装置の設計によって固定された寸法を有する。したがって、より多くのコーヒーを収容し、ロングカップを提供するために、カプセルのサイズを単純に増大させることは不可能である。
【0044】
一実施形態では、焙煎コーヒーは、更なる焙煎のためにパッケージングされた焙煎(例えば、ある程度焙煎された)コーヒーである。パッケージングされた焙煎コーヒーは、例えば工場間移送のために、バルク容器に詰められてもよい。パッケージングされた焙煎コーヒーは、家庭又はカフェなどの小売販路で更に焙煎するためにセミバルク(semi-bulk)パックに詰められてもよい。
【0045】
本発明の一実施形態は、(E)-β-ダマセノンの2,3-ジエチル-5-メチルピラジンに対する重量比が0.7より大きい、例えば1.0より大きい、例えば1.5より大きい、例えば2.0より大きい、例えば2.5より大きい、例えば0.7~5.0、更に例えば2.0~4.0である、更なる焙煎のためのパッケージングされた焙煎コーヒーである。
【0046】
一実施形態では、更なる焙煎のためのパッケージングされた焙煎コーヒー(例えば、ある程度焙煎されたコーヒー)は、55~180CTN、例えば75~160CTN、例えば100~150CTNの焙煎色を有する。
【0047】
本発明の一態様は、飲料調製装置で使用するための容器であって、本発明の焙煎コーヒーを収容している、容器である。
【0048】
当業者は、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の方法のために記載された特徴を本発明の製品と組み合わせてよく、逆もまた同様であってよい。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。周知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのごとく組み込まれる。
【0049】
本発明の更なる利点及び特徴は、非限定例から明らかである。
【0050】
[実施例]
実施例1:コーヒーを焙煎する方法
水蒸気による焙煎:500gのコーヒーを秤量し、加圧可能なチャンバ内の回転可能な有孔ドラムに手動で供給した。加圧可能なチャンバは、ボールバルブによって環境から隔離される。コーヒーは、ドラムを回転させることによって動き出す。所望の温度及び圧力を有する水蒸気が、加圧可能なチャンバ内に計量される。所望の処理時間の終了時に、加圧可能チャンバへの水蒸気の流れが停止され、圧力が大気圧まで急速に低減される。回転ドラムは方向を逆転し、コーヒーは加圧可能なチャンバの出口へと計量される。その後、処理されたコーヒーは、加圧可能なチャンバの底部にある一体バルブ(valve assembly)を通して回収される。
【0051】
水蒸気なしでの焙煎:350gのコーヒーを、所望の温度の熱風の流れに曝すことができる有孔ドロワー(perforated drawer)に入れる。コーヒー豆の温度は、正確なコーヒー豆温度で焙煎プロセスが停止され得るように、温度プローブによって測定される。所望のコーヒー豆最終温度で、焙煎コーヒーを冷却チャンバに移し、そこで焙煎コーヒーを周囲温度の空気流と接触させ、焙煎プロセスを停止する。次いで、サンプルを冷却チャンバから回収する。
【0052】
下記のコーヒー生豆サンプルを、まず過熱水蒸気下で、次いで水蒸気なしで焙煎した。条件及び最終色(CTNとして)を下記の表に示す。ロブスタコーヒーはベトナムから供給され、アラビカコーヒーはブラジルから供給された。
【0053】
【0054】
【0055】
比較のために、3段階のプロセスを用いてコーヒーのサンプルを調製した。最初に生豆を予備焙煎し、次に水蒸気焙煎した後、水蒸気なしで最終焙煎した。
【0056】
【0057】
比較のために、コーヒー生豆のサンプルをサンプルA1~A11と同様に2段階で、但し、より低温(198℃)の飽和水蒸気を水蒸気焙煎段階に使用し、焙煎した。
【0058】
【0059】
比較のために、コーヒー生豆のサンプルをサンプルA1~A11と同様に2段階で、但し、水蒸気焙煎段階には過熱水蒸気を使用し、減圧下(8バール)で焙煎した。
【0060】
【0061】
コーヒー生豆のサンプルを、単一の水蒸気焙煎段階で焙煎した。
【0062】
【0063】
比較のために、コーヒー生豆のサンプルをサンプルA1~A11と同様に2段階で焙煎し、但し、加圧下での水蒸気焙煎段階の後に、同じ装置内で本質的に大気圧での水蒸気焙煎を行った。
【0064】
【0065】
比較のために、コーヒー生豆のサンプルを、75の色CTN値をもたらす期間にわたって水蒸気なしで、単一段階で焙煎した。
【0066】
【0067】
技術的試飲:フィルターコーヒー機を用い試飲するために焙煎コーヒーを調製した。50gのコーヒーを100℃の温度の1000mLの水で抽出した。技術的試飲を6名で行った。各人は、各サンプルのテイスト及びアロマについてのコメントを記述した。
【0068】
実施例2:アロマ分析
固相マイクロ抽出及びガスクロマトグラフィー質量分析法(SPME-GC-MS/MS)による分析に同位体標識標準物質を併用して、水中に懸濁させた後の焙煎し挽いたコーヒー(R&G)中の対象となるアロマ化合物の絶対含量(焙煎コーヒーのmg/kg)を定量した。
【0069】
サンプル調製
5gの焙煎し挽いたコーヒーサンプルをスクリューキャップフラスコに入れ、100mLの沸騰水に懸濁し、密閉した後、10分間撹拌した。氷上で冷却した後、得られたスラリーを、分析物の標識同位体の規定量でスパイクし、サンプルのアリコート(7mL)を、密封されたシラン化ガラスバイアル(ヘッドスペース/SPME分析に使用される標準20mLバイアル)に移した。
【0070】
アロマの抽出
サンプルを室温で60分間平衡化した。次いで、アロマ化合物を、40℃で10分間、固相マイクロ抽出(SPME)によってヘッドスペースから抽出し(2cm繊維、50/30μm StableFlex、PDMS/DVB/Carboxenでコーティング;Supelco、Buchs,Switzerland)、スプリット-スプリットレス注入器(スプリットモードで;2のスプリット)に熱脱着し、240℃で10分間加熱した。
【0071】
対象となる化合物のGC-MS/MS分析
分離は、Agilent 7890Bガスクロマトグラフ(Agilent(Basel,Switzerland))を使用して、60m×0.25mm×0.25μm極性DB-624UIカラム(Agilent(Basel,Switzerland))で実施した。キャリアガスとしてヘリウムを1.2mL/分の一定流量で使用した。次のオーブンプログラムを適用した:40℃の初期温度を6分間保持、次いで6℃/分で240℃まで上昇、最終温度を10分間保持。質量分析は、Agilent 7010 Triple Quad質量分析計(Agilent(Basel,Switzerland))で実施した。Agilent MassHunterソフトウェアを用いてクロマトグラムを処理した。
【0072】
アロマ結果
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
実施例3:可溶性固形分及び酸味分析
可溶性固形分:各コーヒーのサンプルを、Dittingコーヒーグラインダーで、レベル5.5で挽いた(粒子サイズD(4,3)500~600μm)。5gの各々の挽いたコーヒーを100mLの沸騰超純水に懸濁し、密閉容器中で10分間撹拌した。溶解した総固形分の含量を、シリンジフィルター(ポリエーテルスルホン、0.2μm)による膜濾過後に、VST LABコーヒーIII屈折計を使用して屈折率測定により測定した。
【0078】
酸味:焙煎して挽いたコーヒー10gを200mLの超純水に懸濁し、2滴の消泡シリコーン油を添加した後、沸騰するまで加熱した。撹拌及び冷却下で5分間沸騰させた後、蒸発による減少分を超純水の添加によって補った。懸濁液を、プリーツフィルター(SS 5971/2)を通して濾過し、50mLの濾液を814サンプルプロセッサ(Metrohm)に移した。905Titrandoシステム(Metrohm)を使用して、水酸化ナトリウム水溶液(0.1M)を用いてpH6.60まで滴定を行い、結果を焙煎コーヒー1kg当たりのmmol水酸化ナトリウム当量として表した。
【0079】
【0080】
同様の焙煎レベルに対して、本発明(ここではA2によって例示される)は、単一段階水蒸気焙煎(E3)、又は圧力下での水蒸気焙煎と、その後の本質的に大気圧での水蒸気焙煎(F3)によって得られるものに相当する高レベルの可溶性固形分を提供するが、酸味は低いことが分かる。
【0081】
この違いは技術的試飲によって確認された。サンプルA2についてのコメントは、「ロースティ」、「調理されたフルーツ」、及び「すっきりした酸味」を含んでいた。サンプルE3及びサンプルF3は、「調理されたフルーツ」ノートを有するが、また「高い酸味」も有すると記載された。
【0082】
サンプルG1は、「アーシー」であり、「バーント(burnt)」、及び「ゴム」ノートを伴うと記載された。深煎りしたロブスタコーヒーのこれらの特徴は、本発明の方法によって同様のCTN数まで焙煎されたロブスタサンプルについてはコメントされなかった。
【0083】
本発明によるサンプルA4、サンプルA5、サンプルA6、サンプルA7及びサンプルA8は、従来通りに焙煎されたサンプルG1よりも高いレベルの可溶性固形分を提供したが、低い酸味を有していた。
【0084】
【0085】
実施例4:不揮発性成分の分析
クロロゲン酸ラクトンの分析を、多重反応モニタリング(MRM)モードで動作するQTRAP 6500 LC-MS/MSシステム(AbSciex)で行った。
【0086】
機器分析の前に、実施例2のように調製したサンプルを超純水で1:10に希釈した。
【0087】
クロマトグラフィーを実施するために、バイナリG7104Aポンプ、4℃に冷却したG7167Bオートサンプラー、及び30℃に加熱したG7116Bカラムオーブンを備えた、Agilent 1290 Infinity IIシステム(Agilent)を使用した。移動相として0.1%ギ酸水溶液(A)及びアセトニトリル中の0.1%ギ酸(B)を使用して、Kinetexフェニル-ヘキシル100mm×2.1mm×1.7μmカラム(Phenomenex)上に、三重測定で、サンプル(5μL)を注入した。0.4mL/分の流速で、次の勾配:0%Bを1分間、10分間で35%Bまで、次いで2分間で100%Bまで、及び3.5分間維持した後、0.5分間で開始条件に進み、3分間維持、を適用した。
【0088】
LCシステムを、ソフトウェアとしてAnalyst(バージョン1.7.1)を使用して、QTRAP 6500質量分析計(AbSciex)と連結した。それによって、正のESIモードの適用のためのソース条件は次の通りとなった。ガス1:55psi、ガス2:65psi、カーテンガス:35psi、ソース温度:550℃、イオンスプレー電圧フローティング:5500V。多重反応モニタリング(MRM)モードでのMS/MS検出の場合、以下の質量遷移を適用し、化合物あたり、各々1つの定量イオン(Q)及び1つの定性イオン(qualifier)で質量遷移を適用した。
【0089】
多重反応モニタリング(MRM)モードにおいて適用したMS/MS検出パラメータ。表中、Q1=前駆イオンm/z、Q3=フラグメンテーションイオンm/z、DP=デクラスタリング電位、EP=入口電位、CE=衝突エネルギー、CXP=衝突セル出口電位。
【0090】
【0091】
MultiQuantソフトウェア(AbSciex、バージョン3.0.2)を用いてデータ処理を行い、5-クロロゲン酸を用いた外部較正に基づいて濃度を測定し、ストック溶液(103mg/L)を段階的に希釈し、クロロゲン酸当量として表した。較正範囲0~15mg/Lにわたって較正を実施した。
【0092】
総マンノースの分析。
総マンノースレベルの分析を、パルス電流測定検出(PAD)を適用して、ICS-5000イオンクロマトグラフィー(Thermo Fisher Scientific)で行った。
【0093】
焙煎コーヒーを100μmの粒子サイズに低温挽きし、50mgを加水分解管に移した。200μLの硫酸(72%)を添加した後、ボルテックスした。第1の加水分解を周囲温度で2時間行い、2.3mLの超純水を添加してボルテックスした後、第2の加水分解を100℃で3時間行った。周囲温度に冷却した後、溶液のpHを水酸化ナトリウム水溶液(1M)でpH 7に調整した。容量を超純水で250mLまで満たし、この溶液を1:4に希釈した。膜濾過後、サンプルをSep-Pak C18カートリッジ(Waters)に移した。2mLのメタノール、その後3mLの超純水でフラッシュすることによってコンディショニングを行った。
【0094】
1mLのアリコートをサンプルバイアルに移した後、移動相として超純水(A)及び1M水酸化ナトリウム水溶液(B)を使用する、ICS-5000装置(Thermo Fisher Scientific)内のPA100カラム(Thermo Fisher Scientific)上に注入(10μL)した。1mL/分の流速で、次の勾配を適用した:0%Bで32分間、5分間で25%Bまで、5分間維持した後5分間で開始条件に移行し、10分間維持した。0.5mL/分の0.3M水酸化ナトリウム水溶液の追加のポストカラム流によって支持されるパルス電流測定検出を用いて、検出を行った。
【0095】
データ処理のために、Chromeleonソフトウェアを適用した。マンノースを用いた外部較正に基づいて濃度を求め、96mg/Lのストック水溶液を段階的に希釈した。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
サンプルA2(最初に過熱水蒸気下で、次いで水蒸気なしで焙煎したロブスタコーヒー)は、サンプルG2(水蒸気なしで単に焙煎したロブスタコーヒー)よりも低い、総マンノースの3-O-カフェオイルキニドに対する重量比を有するので、両方が75の同じCTNに焙煎された場合であっても、より高いレベルの好ましいコーヒー苦味を有することが分かる。
【国際調査報告】