(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】放熱のための粉末混合物及び粉末混合物を有する成分
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20240614BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240614BHJP
【FI】
C09K5/14 E
H01M10/613
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574697
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 IN2021050696
(87)【国際公開番号】W WO2022254450
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202121024470
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523453499
【氏名又は名称】ヴァジラーニ エナジー プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VAZIRANI ENERGY PRIVATE LIMITED
【住所又は居所原語表記】2602B, Oberoi Sky Heights, Lokhandwala, Back Road,Andheri West, Mumbai-400053, Maharashtra, India
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァジラーニ,チャンダン
(72)【発明者】
【氏名】シン,アプールブ
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ,アタルヴァ スヨグ
(72)【発明者】
【氏名】ミッタル,ヴァイハブ
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE00
(57)【要約】
放熱用の粉末混合物(16)および粉末混合物(16)を生成するための方法が開示されている。粉末混合物(16)は、C
15H
24、炭酸塩、酸化物、シュウ酸塩、並びに塩化物および1以上の遷移金属源からなる群から選択される2以上の材料を含む。粉末混合物(16)を有する部品およびその部品を形成するための方法も開示されている。部品を形成するための方法は、部品の複数のセル(12)を配列し、セル間の間隙に粉末混合物(16)を充填するステップを含む。開示された粉末混合物(16)は非常に効率的であり、受動的冷却を提供し、部品をコンパクトに構成できることが試験でわかった。粉末混合物(16)の簡単な処理により、様々なシステムに電池モジュールを簡単に実装することができる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱用の粉末混合物(16)であって、C
15H
24、炭酸塩、酸化物、シュウ酸塩、および、塩化物と1以上の遷移金属源とからなる群から選択される2以上の材料を含む、粉末混合物(16)。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末混合物(16)であって、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、シュウ酸ネオジムプラセオジム、並びに、塩化アンモニウム、二酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、炭化ジルコニウム、金属ジルコニウム、酸化鉄、およびカルボニル鉄からなる群から選択される2以上の材料を備える、粉末混合物(16)。
【請求項3】
請求項1に記載の粉末混合物(16)であって、
C
15H
24が粉末混合物の0.1wt%から30wt%の範囲であり、
炭酸カルシウムが粉末混合物の20wt%から60wt%の範囲であり、
二酸化ケイ素が粉末混合物の5wt%から45wt%の範囲であり、
シュウ酸ネオジムプラセオジムが粉末混合物の5wt%から25wt%の範囲であり、
2以上の材料が、粉末混合物の10wt%から65wt%の範囲で組み合わされている、粉末混合物(16)。
【請求項4】
請求項3に記載の粉末混合物(16)であって、2以上の材料が、
粉末混合物の0.1wt%から30wt%の範囲の塩化アンモニウムと、
粉末混合物の10wt%から55wt%の範囲の1以上の遷移金属源とを含む、粉末混合物(16)。
【請求項5】
請求項1に記載の粉末混合物(16)を含む部品。
【請求項6】
請求項5に記載の部品であって、データサーバー、配電ユニット、および計算装置を含む群から選択される部品。
【請求項7】
請求項5に記載の部品であって、電池モジュールの複数のセル(12)のセル壁面(14)を取り囲む粉末混合物(16)を含む電池モジュール(10)である部品。
【請求項8】
請求項7に記載の部品であって、セルの面積あたりの粉末量が1kg/m
2から12kg/m
2である部品。
【請求項9】
放熱用の粉末混合物(16)を調製するための方法であって、
C
15H
24、炭酸塩、酸化物、シュウ酸塩、並びに塩化物及び1以上の遷移金属源からなる群から選択される2以上の材料を乾式粉砕または乾式混合するステップを備える方法。
【請求項10】
複数のセル(12)を含む部品を形成するための方法であって、
複数のセル(12)を配列するステップと、
セル(12)間の間隙に粉末混合物(16)を充填するステップとを備え、
粉末混合物(16)は、熱を放散するようになっており、C
15H
24、炭酸塩、酸化物、シュウ酸塩、並びに塩化物および1以上の遷移金属元素源からなる群から選択される2以上の材料を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して放熱用の粉末混合物およびその粉末混合物を有する部品に関する。より詳細には、本開示は、有機成分と無機成分の両方を有する特別に設計された粉末混合物、および放熱用の粉末混合物を有する部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や電気化学機器では、発生する熱の放散が必須である。自動車用バッテリーモジュールの空冷と液冷は、今日まで幅広く研究されてきた。冷却の主な目的は、バッテリーモジュールの温度をあらかじめ決めておいた操作範囲に維持することである。バッテリーモジュールなどの部品に熱が蓄積すると、通常、モジュールの熱暴走を引き起こすセル故障につながる。空冷や液冷では、ファンやマニホールドなどを含む、冷媒を流すのにかなりのエネルギーが必要である。
【0003】
もうひとつの重要な側面はバッテリーパックの大きさである。より洗練された冷却システムでは概して部品を大きくする。米国特許7560190B2号は、冷却用冷媒として空気と液体の両方を交互に使用できる電池用の冷却システムを開示している。同特許の全体的なアイデアは、冷却回路と結合したバッテリーシステムを、より使いやすくかつコンパクトにするものであった。しかしながら、冷媒として空気を使用すると、冷却方法が非効率になる。液冷の使用は比較的良かったが、ポンプやファンなどの補助装置を使用するため、目標としていたほどシステムをコンパクトにすることはできなかった。
【0004】
多くのバッテリーパックは液冷式であり、モジュールを通過するオイルやグリコールなどの液体を有し、対流を利用して熱を奪っている。しかし、米国特許第9774065B2号で言及されているように、冷却回路は漏れが発生しやすい。これと同時に、液体を冷却して再循環させる必要があるため、ポンプやラジエーターなどの周辺機器が使用され、US10686231B2で説明されているように、これらは多くのスペースと電力を消費して効率を悪くしている。場合によっては、US10686231Bで示されているように、液体冷媒も使用して熱伝達を促進するが、密封するために厳しい公差が要求されるため製造上の課題があり、コスト効率の良い構成ではない。
【0005】
もう一つの方法は、特許US9312580B2で説明されているように、相変化の潜熱に対応する熱を素早く除去できる熱伝達子として相変化材料(PCM)を使用することである。PCMは溶融して熱を吸収し、経路を移動して表面積を増大させ、より優れた熱除去を実現する。このような技術では、US8934235B2に示されているように、ファンを使った強制対流を利用することもできるが、これも余分なスペースを取り、騒音を発生させ、電力を消費する。また、PCM材料は膨張時にあらゆる方向に応力を与える。
【0006】
CN202010094027Aは、電池の熱暴走拡散を抑制するための絶縁材料を提供する。この材料には、熱伝導材料を充填したケイ酸塩凝集体、水ガラス、撥水剤、硬化剤、活性充填剤、シリカゾル、スチレン-アクリルエマルジョン界面活性剤、水ガラス補強剤、補強繊維、および難燃剤を含む。CN102040390Bは、SiO2ナノ/ミクロン粉末複合材料の低寸法断熱材と、均一に分散され、かつ、高温耐性で、低熱伝導性で、低コストの低寸法断熱材を形成する一次元(one-dimensional)ケイ酸アルミニウム繊維とを開示している。しかしながら、固体熱散逸材料に対するニーズは依然として残っている。
【発明の概要】
【0007】
この概要は、本開示の詳細な説明にさらに記載される主題の概念を簡単に紹介するために提供される。本概要は、主題の鍵となるまたは必須の発明概念を特定しようとするものではなく、本開示の範囲を決定しようとするものでもない。
【0008】
上述した問題の少なくとも1つを解決するために、本開示は、任意の部品の発熱部を効果的に冷却することのできる粉末混合物を開示し、それによって熱暴走、爆発および過負荷を防止する。
【0009】
簡単に述べると、一側面によれば、放熱用の粉末混合物が開示されている。粉末混合物はC15H24、炭酸塩、酸化物、シュウ酸塩、および、塩化物と1以上の遷移金属源とからなる群から選択される2以上の材料を含む。この粉末混合物を有する部品も開示されている。
【0010】
別の側面として、放熱用の粉末混合物の調製方法が開示されている。この方法は、C15H24、炭酸塩、酸化物、シュウ酸塩、および、塩化物と1以上の遷移金属源とからなる群から選択される2以上の材料を乾式粉砕または乾式混合することを含む。
【0011】
さらに別の態様として、複数のセルを有する部品を形成するための方法が開示されている。この方法は、複数のセルを装置に配列するステップと、セル間の間隙に粉末混合物を充填するステップとを含む。粉末混合物は熱を放散するようになっている。粉末混合物は、C15H24、炭酸塩、酸化物、シュウ酸塩、および、塩化物と1以上の遷移金属元素源とからなる群から選択される2以上の材料を含む。
【0012】
上記概要は例示的なものに過ぎず、いかなる意味においても限定的であることを意図するものではない。上述した例示的な態様、例示的な実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、例示的な実施形態、および特徴は、図面および以下の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
例示的な実施形態のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むと、よりよく理解することができる。添付図面においては図面全体を通して同じ符号は同じ部分を示す。
【
図1A】
図1Aは、本開示の一実施形態による、円筒形のセル配置及び粉末充填を有する電池モジュールの概略図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本開示の一実施形態による、
図1Aに示す電池モジュール内のセルと粉末混合物配置の上面図を示す。
【
図1C】
図1Cは、本開示の一実施形態による、パウチセル配置及び粉末充填を有する電池モジュールの概略図を示す。
【
図1D】
図1Dは、本開示の一実施形態による、
図1Cに示す電池モジュール内の単一セルの斜視図を示す。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態による、電池モジュールの熱性能の比較グラフであり、許容ピーク放電が20Cである特定のタイプのセルを使用して測定した場合の、放熱設備なしの電池モジュール、粉末混合物の熱放散ありの電池モジュール、粉末混合物と空冷設備ありの電池モジュール、および液冷設備ありの電池モジュールの比較を示す。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による、電池モジュールの熱性能の比較グラフであり、許容ピーク放電が4Cである特定のタイプのセルを使用して測定した場合の、放熱設備なしの電池モジュール、粉末混合物の熱放散ありの電池モジュール、および粉末混合物と空冷設備ありの電池モジュールの比較を示す。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態による、許容ピーク放電が20Cの特定のタイプのセルを使用して測定した場合の、2つのタイプの粉末の熱管理性能を比較するグラフを示す。
【
図5A】
図5Aは、本開示の一実施形態による、特定の成分を特定のパーセント比率で有する粉末混合物を有する電池モジュールの熱管理性能を示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示す熱管理グラフを有する電池モジュールと同じ成分を有するが、本開示の一実施形態による成分のパーセント比率の異なる粉末混合物を有する電池モジュールの熱管理性能を示すグラフである。
【
図6】
図6は、同じ試験セットアップと条件下で試験した2つの電池モジュールの熱性能と比較試験のグラフであり、C
15H
24を有する粉末混合物を備える電池モジュールと、C
15H
24を含まない電池モジュールという1つの差別化要因のみを用いて試験したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
さらに、当業者であれば、図中の要素は単純化のために図示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らないことは理解されたい。さらに、装置の構成に関して、装置の1以上の部品は、従前の記号によって図に表されている場合があり、図は、本明細書の説明の利益を有する当業者にただちに明らかであろう細かい点で図を不明瞭にしないように、本発明の実施形態の理解に関連して特定の詳細のみを示している場合がある。
【0015】
以下、本発明の原理の理解を促す目的で、図に示された実施形態を参照し、それについて特定の用語を用いて説明する。とは言うものの、本発明の範囲は、それによって限定されることを意図するものではなく、図示されたシステムにおけるそのような変更およびさらなる修正、ならびに図示された本発明の原理のそのようなさらなる適用は、本発明が関連する技術分野の当業者に通常生じるであろうものとして企図されることは理解されたい。
【0016】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の例示および説明であり、その制限を意図するものではないことが当業者には理解されよう。
【0017】
「comprises」、「comprising」またはその他のバリエーションの用語は、非排他的な包含をカバーすることを意図するものであり、ステップの一覧を含む処理または方法が、それらのステップのみを備えるのではなく、明示的に列挙されていない、またはそのような処理または方法に固有の他のステップを含んでもよいことを意味する。同様に「comprises...a」で始まる1以上の装置またはサブシステム、要素、構造または部品は、さらなる制約がなければ、他の装置、他のサブシステム、他の要素、他の構造、他の部品、追加の装置、追加のサブシステム、追加の要素、追加の構造または追加の部品の存在を排除するものではない。本明細書全体を通して「一実施形態において」、「別の実施形態において」、および同様の文言が出現する場合、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0018】
以下で用いられるDICOという用語は、様々な無機成分と少なくとも1つの有機成分、すなわちC15H24とを含む本発明の粉末混合物を指す。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で提供されるシステム、方法、および実施例はあくまで例示に過ぎず、限定しようとするものではない。
【0020】
上述した例示的な態様、実施形態および特徴に加えて、本開示のさらなる態様、例示的な実施形態は、図面および以下の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。
【0021】
本開示は、電子および電気化学デバイスを含む、任意の熱生成デバイスに使用される場合に、効果的な放熱材料として使用できる粉末混合物に関する。具体的には、開示された粉末混合物は、電気自動車用のモジュール式電池システムにおける放熱材料として有効であり、冷却目的、および熱暴走、爆発、熱過負荷の防止に役立つ。
【0022】
対流と伝導は、室温および室温付近での熱伝達の支配的なモードと考えられている。伝導による熱伝達は、電子移動と分子格子の振動によるものである。電池モジュールのセルは、高負荷・高速サイクル中に大量の熱を粉末に放散する。開示する粉末は、セルの最適な温度範囲を維持するために、放散された熱を吸収する高い吸収能力を有する。開示する粉末は、その成分内に熱を蓄え、外部のヒートシンクに放出する。
【0023】
本開示では、有機化合物と無機化合物の両方を構成成分とする相乗効果のある粉末混合物を開示する。構成成分には、これらに限定されないが、無機シュウ酸塩、塩化物、酸化物、炭酸塩のファミリー(族)が含まれる。粉末混合物は、乾式混合し、加熱して水分を飛ばし、熱伝導の媒体として使用することができる。開示された粉末混合物は、静的用途と、サーバーグリッドや自動車冷却を含む動的用途の両方に適合する。
【0024】
具体的には、本開示は、放熱用の粉末混合物を開示する。粉末混合物は様々な成分を含む。有機材料であるC15H24が粉末混合物に含まれる。C15H24はセスキテルペノイド族に属し、概してイソカリオフィレンという名称で知られているが、他の命名法を用いてもよい。C15H24は、100℃をわずかに超える引火点を有する淡黄色の油状液体である。概してC15H24は、その臭いと抗炎症特性を考慮し、食品や製薬産業で使用されている。
【0025】
本明細書で使用するC15H24は、低曇点、高沸点、高引火点、水への不溶性、芳香特性について特に有利であり、精油生産植物から自然から調達できる。粉末状無機化合物と混合すると、得られる混合物の熱伝達率を高める傾向があり、迅速な熱放散が可能になる。
【0026】
粉末混合物の無機成分は、少なくとも1つの炭酸塩、少なくとも1つの酸化物、および少なくとも1つのシュウ酸塩を含む。無機成分はまた、塩化物と1以上の遷移金属元素源とからなる群から選択される2以上の材料を含む。
【0027】
実施形態によっては、粉末混合物は、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、シュウ酸ネオジムプラセオジム、並びに、塩化アンモニウム、二酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、炭化ジルコニウム、金属ジルコニウム、酸化鉄、及びカルボニル鉄からなる群から選択される2以上の材料を含む。ここで、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、シュウ酸ネオジムプラセオジムを特に挙げているが、他の炭酸塩、酸化物、シュウ酸塩もこれらの材料と併用できることに留意されたい。さらに、選択された2以上の材料とともに、用途に応じた特性を粉末混合物に付与するために、他の類似または非類似の材料を含めることもできる。
【0028】
実施形態によっては、2以上の選択された材料には、二酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、炭化ジルコニウム、金属ジルコニウム、酸化鉄、およびカルボニル鉄のうちの1つ以上と共に塩化アンモニウムが含まれる。特定の実施形態において、2以上の選択された材料は、2以上の遷移金属源を含む。特定の実施形態において、選択された材料は、2以上の遷移金属源と共に塩化アンモニウムを含む。種々の実施形態において、遷移金属源は、2つのジルコニウム源、2つの鉄源、または少なくとも1つのジルコニウム源および少なくとも1つの鉄源を含み得る。実施形態によっては、元素形態のジルコニウムおよびカルボニル鉄を使用してもよい。
【0029】
粉末混合物の構成成分は、混合物中で様々な重量比を有することができる。概して、その成分は、C15H24が粉末混合物の0.1wt%から30wt%の範囲となり、炭酸カルシウムが20wt%から60wt%の範囲となり、二酸化ケイ素が5wt%から45wt%の範囲となり、シュウ酸ネオジムプラセオジムが5wt%から25wt%の範囲となり、さらに2つの材料を合わせて10wt%から65wt%の範囲となるように混合される。
【0030】
実施形態によっては、粉末混合物の2以上の材料の量は、塩化アンモニウムが粉末混合物の0.1wt%~30wt%の範囲で存在し、1以上の遷移金属源が粉末混合物の10wt%~55wt%の範囲で存在するようなものであってよい。遷移金属源の重量比は、遷移金属源として使用される化合物に応じて変化し得るが、上記の範囲は、使用される化合物中に存在する金属の量に基づいて選択されるとおおよそ考えることができる。したがって、実施形態によっては、1以上の遷移金属源に存在する遷移金属の量は、粉末混合物の10wt%~55wt%の範囲で存在すると考えることができる。用途に応じて、粉末の重量比は、上記した特定の重量範囲内で変化させることができる。
【0031】
開示された粉末混合物の熱特性を評価するために、粉末混合物について過渡平面(transient plane)熱源(ホットディスク)法を用いた伝導率試験を実施した。この方法では、無視できる熱容量のホットディスクプローブを用いて、段階的に熱パルスを放ち、試験片内に動的な温度場を発生させる。このプローブは、熱源と一体化した温度センサー、すなわち自己加熱センサーとしても機能する。プローブへの動力出力、プローブの半径、スキャン速度、測定時間などの試験パラメータは、材料組成に依存する。その後、特定の試験片、プローブ、及び境界条件に対して開発されたモデルを用いて、抵抗値の変化という形で応答が分析される。試験中は恒温環境(45℃)を維持した。45℃が選ばれたのは、セルの最適温度が45℃だからである。開示された粉末混合物の45℃における熱伝導率は0.284W/mKであり、比熱容量は1.096MJ/m3Kであることがわかった。
【0032】
本開示は、開示された粉末混合物を有する部品も開示する。開示された粉末混合物は、放熱の必要性がある任意の部品の熱管理に使用することができる。具体的には、粉末混合物は、放熱の必要性と空間の制約の両方を有する部品に特に好適である。粉末混合物は、マイクロコントローラー、データサーバー、パワーエレクトロニクスの部品や、携帯電話、ラップトップ、HTPCなどの計算装置のマザーボードケース内部などの電子部品に使用することができる。粉末混合物は、電池パック、電池モジュール、燃料電池、電解装置などの電気化学システムにも使用できる。例えば、開示された粉末混合物は、バイク、スクーター、ホバーボード、ゴルフカートなどの移動用途で使用される低出力レンジのバッテリーパックや、インバータバッテリーパック、携帯電話やノートパソコン用の携帯型電源モジュールなどのバックアップ電源用途で使用することができる。本開示の様々な実施形態は、それゆえ、電池モジュールの例で説明される。とはいえ、開示された粉末混合物は、上述の任意の部品および他の部品のいずれにおいても、熱吸収および外部ヒートシンクへの流路放熱(channeled heatdissipation)のために使用できることに留意すべきである。さらに、部品の環境および用途ならびにそれらの作動状態に応じて、粉末混合物の成分および重量比を上記に開示したように変化させることができる。
【0033】
実施形態によっては、本明細書に開示される部品は電池モジュールである。電池モジュールは、自動車用途を含むがこれに限定されない任意の用途において、個別に、または他のモジュールと組み合わせて使用することができる。電池モジュールは複数のセルを含む。電池モジュールのセルは、異なるサイズ、構造及びデザインを有することができる。例えば、
図1Aは、円筒形状のセル(12)を有する電池モジュール(10)を示し、
図1Cは、袋形状のセル(12)を有する別の電池モジュール(10)を示す。
図1Bは、
図1Aの電池モジュール(10)におけるセル配置の上面図を示し、
図1Dは、
図1Cに示す電池モジュールの単一セル(12)を示す。セル(12)はセル壁面(14)を有し、本開示の電池モジュール(10)では、セル壁(14)は粉末混合物(16)によって取り囲まれている。セル壁面(14)を取り囲む粉末混合物(16)は、各セル(12)の表面を冷却する。粉末混合物(16)の固有の熱吸収および熱放散特性は、セル壁面(14)と共にセル(12)からの熱吸収を促進する。電池モジュール(10)は、複数のセルを覆うケーシング(18)をさらに含むことができる。
【0034】
粉末の熱管理能力は、粉末が熱管理に使用されるシステムにおいて、粉末によって得られる熱放散で評価される。本実施例では、粉体混合物(16)はセル壁に接触してセルの周囲に配置される。セルによって生成される熱は、用途や作動条件によって異なる可能性がある。そのため、熱管理システムを理解し、性能を比較し、電池モジュールの設計方法を支援するための基準が考案されている。kg/m
2の単位で測定されるセル面積あたりの粉末量(MPCA)という基準は、粉末混合物(16)の熱管理能力を評価するために使用される。この基準は、セル(12)からセル壁を通しての熱伝達がセル(12)の表面積に依存するため、粉末混合物と接触しているセルの表面積と密接に関連している。従って、電池モジュール(10)のMPCAは以下のように決めることができる。
【0035】
ここで、粉体混合物(16)は、MPCA値がより高ければ、所定の部品(10)においてより優れた性能を有するものとみなせることが観察され得る。実施形態によっては、電池モジュールのMPCA値は、1kg/m2~12kg/m2の範囲内である。本開示の例示的な電池モジュールでは、粉末混合物(16)の成分に応じて、得られるMPCA値は約3.52kg/m2である。別の例として、MPCA値は6.589kg/m2である。さらに別の例として、得られたMPCA値は2.592kg/m2である。これらのMPCA値は、それぞれの電池モジュールに満足のいく性能を提供していると見られる。実施形態によっては、1kg/m2~12kg/m2の範囲が望ましい。12kg/m2を超えると、その性能は漸近的になる可能性があり、重量を増やしても付加価値はあまりない。
【0036】
冷却を目的とした粉末混合物の使用は、セルの表面から熱を吸収し、セル温度を上昇させないことを目的としている。バッテリーモジュールのケーシングは、セル間に間隙を持つことができ、この間隙がセル表面に沿って粉末を充填するポケットとして機能し、パック全体に均一な熱分布をもたらす。高い熱吸収性を持つ粉末は、セルの温度を最適に保つことができる。粉末混合物のポケットは、熱暴走の際にも役立ち、万が一、いずれかのセルが温度超過に陥った場合、火災抑制剤として機能することにより、他のセルを安全に保つことができる。また表面冷却用の粉末混合物は、軸方向冷却用の他の放熱システムと共に使用することもできる。さらに、自然対流または強制対流による空冷方法も、本明細書で開示する粉末混合物と併用することができる。本開示の実施形態によっては、バッテリーセルの温度を動作範囲内に保つために、伝導および対流の両方の冷却方法が使用される。
【0037】
さまざまな冷却設備を有する異なる電池モジュールについてパルス放電試験を実施し、電池モジュールにおける放熱媒体として開示された粉末混合物の熱管理性能を評価した。このパルス放電試験は、様々な電池モジュールが使用される自動車の走行条件の試験サイクルシミュレーションを用いて実施した。上記の電池モジュールは、同様の走行条件で使用される。ここでシミュレートした試験条件は、自動車を運転するドライバーがアクセルを4.5秒間踏み込み、3.5秒間アクセルから離し、加速とアクセルから足を離すのとを約50回繰り返す極端な条件である。したがって、ここで行われた試験は、T(on)の時間が4.5秒、T(off)の時間が3.5秒で、デューティサイクルが55%であると考えることができる。
【0038】
ここで使用される試験サイクルは、セルに対して行われる最も厳しい試験の一つである。この試験では、セルを100%充電状態(SoC)からSoC10%まで約6分間で放電させる。試験中の周囲温度は25℃に維持された。この試験では、適切な熱管理のために、セルの温度が60℃以上にならないようにする必要がある。これは、適切に冷却されない場合、セルの寿命を縮め、熱暴走につながる可能性があるからである。
【0039】
図2は、4つの異なるバッテリーモジュールの熱性能の比較グラフを示す。この比較のために電池モジュールに使用されたセルは、26650LiFePo4タイプの円筒形セルで、電力密度が高く、セルに許容されるピーク放電は20Cである。
【0040】
比較した電池モジュールにおいて、1つの電池モジュールは、関連する放熱/冷却機構を有していない。
図2の曲線(22)は、放熱機構を持たない電池モジュールの熱性能を表している。別の電池モジュールは液冷機構を有し、その熱性能は曲線(24)で表されている。さらに別の電池モジュールは、本開示の粉末混合物を用いた冷却機構を有し、その熱性能は曲線(26)で表されている。さらにもう1つの電池モジュールは、曲線(28)で表されるように、空冷とともに本開示の粉末混合物を用いた放熱機構を有する。この結果は、この非常に極端な高出力条件であっても、放熱媒体として粉末混合物のみを有する電池モジュールのセル温度と、空気冷却とともに粉末混合物を放熱媒体として有する電池モジュールのセル温度とは、作動限界である60℃を超えないことを明確に示している。
【0041】
図3は、3つの異なる電池モジュールの熱性能の比較グラフを示す。この比較のために電池モジュールに使用されたセルは、21700リチウムイオンタイプの円筒形セルであり、これは
図2に示されたものとは異なる電力密度を有し、現在のセルに許容されるピーク放電は4Cである。
【0042】
3つのバッテリーモジュールのうち、1つのバッテリーモジュールは放熱/冷却機構を有していない。曲線(32)は、粉末なしの、この電池モジュールの熱性能を表している。別の電池モジュールは、曲線(34)で表される本開示の粉末混合物を用いた冷却機構を有する。さらに別の電池モジュールは、曲線(36)で表されるように、空冷とともに本開示の粉末混合物を用いた放熱機構を有する。グラフの曲線が階段状に見えるのは、SoCの最小カウントが100から0まで1であるためであり、これはSoC値1につき1つの温度データしか示せないことを意味する。
【0043】
グラフの曲線は、上記の電池モジュールを同様の走行条件で使用した自動車の走行条件を試験サイクルでシミュレートしたものである。ここでシミュレートした試験条件は、上で開示したものと同様である。ここで使用される試験サイクルは、完全なセルを100%SoCから10%SoCまで約13分で放電させる。試験中の周囲温度は25℃に維持された。この試験では適切な熱管理のために、セルの温度が60℃以上にならないようにした。これは、適切に冷却されない場合、セルの寿命を縮め、熱暴走につながる可能性があるからである。
【0044】
図3でグラフに示す結果は、いかなる種類の冷却も行わない電池モジュールがフルサイクルにさえ到達せず、55℃を超える温度に達することを明確に示している。しかし、この非常に極端な高出力条件においてさえも、本開示の粉末混合物を備えた電池モジュールのセル温度は約50℃の最適温度に保持され、粉末混合物を用いた放熱とともに追加の空冷によって電池モジュールの熱管理は向上する。
【0045】
粉末混合物(16)は、電池モジュール(10)の各セルの周囲に均等に置かれるため、それが電池モジュール(10)のセル(12)の直列接続および並列接続全体にわたって温度勾配を最小限にし易くしている。粉末混合物(16)は、伝導とその高い熱吸収能力により、電池モジュール(10)のセル(12)の大量放電中における急激な熱上昇を防止する。また、電池モジュール(10)は、粉末混合物(16)が漏れないようにするための様々な設計上の特徴を含んでもよい。
【0046】
図4は、異なる粉末を有する2つの異なる電池モジュールの熱性能の比較グラフを示す。グラフの曲線は、自動車の走行条件を試験サイクルでシミュレートしたものである。ここでシミュレートした試験条件は、上記で開示したものと同様である。この試験サイクルでは、完全なセルを約6分間で100%SoCから10%SoCまで放電させる。この試験では適切な熱管理のために、セルの温度が60℃以上にならないようにした。これは適切に冷却されない場合、セルの寿命を縮め、熱暴走につながる可能性があるからである。
【0047】
2つの異なる粉末混合物の性能を試験するために、粉末密集セルを使用する。このセルに許容されるピーク放電は20Cである。2つの異なる粉末混合物は、異なる粉末成分と比率を有する。セルは、ベースライン粉末混合物と本開示による粉末混合物とを個別に使用して作動させた。ベースライン混合物は、40wt%から60wt%の範囲の炭酸カルシウム、10wt%から40wt%の範囲の二酸化ケイ素、および0.1wt%から10wt%の範囲の塩化アンモニウムの組成を有する。本開示で開示する粉末混合物の組成は、20wt%から60wt%の範囲の炭酸カルシウム、5wt%から45wt%の範囲の二酸化ケイ素、0.1wt%から30wt%の範囲の塩化アンモニウム、0.1wt%から30wt%の範囲のC15H24、10wt%から30wt%の範囲のカルボニル鉄粉、5wt%から25wt%の範囲のシュウ酸ネオジムプラセオジム、及び10wt%から35wt%の範囲のジルコニウム金属粉を含む。
【0048】
図4のグラフは、ベースライン粉末を有するセルと本開示の粉末混合物を有するセルとを同じ試験条件下で作動させた場合の比較試験結果を示す。具体的には、
図4において、曲線(42)は、ベースラインが使用される場合のセルの熱性能を示し、曲線(44)は、本開示に開示されるような粉末組成物が使用される場合のセルの熱性能を表す。
【0049】
グラフからは、特定の範囲の様々な開示された成分を含む本開示の粉末混合物は、3つの成分のみを含むベースライン粉末よりも実質的に優れた性能を発揮することが明確に見て取れる。具体的には、グラフから、ベースライン粉末はセルが試験を完了するのを補助することができず、37%SoCに達した後に60℃に達し、それによってセルの全容量を使用していないことが分かる。しかし、本開示の粉末混合物は試験を完全に完了し、セルを52℃以上に到達させないことにより、セルを最適範囲に保つことができる。このように、粉末試料の厳密な試験の後、開示された粉末混合物がより高い性能を有することがわかる。
【0050】
図5Aおよび
図5Bは、同じ成分を有するが成分の割合が異なる粉末混合物を有する電池モジュールの熱性能のグラフを示す。ここでシミュレートした試験条件は、上記で開示したものと同様である。この試験サイクルでは、完全なセルを約6分間で100%SoCから10%SoCまで放電させる。この試験では、適切な熱管理のため、セルの温度が60℃を超えないようにした。これは適切に冷却されない場合、セルの寿命を縮め、熱暴走につながる可能性があるからである。2つの異なる粉末混合物の性能を試験するために、粉末密度の高いセルを使用する。このセルに許容されるピーク放電は20Cである。
【0051】
2つの異なる粉末混合物は、同じ粉末成分を有し、異なる成分比率を有する。第一の電池モジュールに使用される粉末混合物は、炭酸カルシウム25wt%、二酸化ケイ素50wt%、塩化アンモニウム1wt%、C
15H
24を1wt%、カルボニル鉄粉2wt%、シュウ酸ネオジムプラセオジム3wt%、及び金属ジルコニウム粉末18wt%の組成を有する。
図5Aは、この組成を有する電池モジュールの熱管理グラフを示す。
【0052】
第二の電池モジュールに使用される粉末混合物は、炭酸カルシウム50wt%、二酸化ケイ素10wt%、塩化アンモニウム1wt%、C
15H
24を20wt%、カルボニル鉄粉2wt%、シュウ酸ネオジムプラセオジム5wt%、及び金属ジルコニウム粉末12wt%の組成を有する。
図5Bは、この組成を有する電池モジュールの熱管理グラフを示す。
【0053】
図5Aと
図5Bのグラフを比較すると、同じ成分を有し、成分の割合の異なる粉末混合物が異なる熱性能を有することが明確に見て取れる。具体的には、
図5Aのグラフでは完全に試験を終えておらず、60℃に達したため17%SoCで試験を停止した。一方、
図5Bのグラフでは、60℃に達したものの、10%SoCで試験を終了している。したがって、粉末混合物中の様々な成分の適切な比率を選択することが望ましい。
【0054】
実施形態によっては、C15H24は粉末混合物の0.1wt%から14wt%の範囲で存在し、炭酸カルシウムは30wt%から55wt%の範囲で存在し、二酸化ケイ素は10wt%から40wt%の範囲で存在し、シュウ酸ネオジムプラセオジムは4wt%から12wt%の範囲で存在し、2以上の材料を合わせたものは20wt%から55wt%の範囲で存在する。塩化アンモニウムおよび両方の遷移金属源を有する実施形態の中には、特定の用途において使用される塩化アンモニウムおよび遷移金属源の重量比は、塩化アンモニウムが粉末混合物の0.1wt%から11wt%の範囲で存在し、鉄源中の元素鉄含有量は粉末混合物の1wt%から10wt%の範囲で存在し、ジルコニウム源中のジルコニウム金属含有量は粉末混合物の20wt%から35wt%の範囲で存在する。
【0055】
図6は電池モジュール、すなわちC
15H
24を有する粉末混合物を備えた電池モジュールと、C
15H
24を有さない電池モジュールの熱性能のグラフを示している。これら両方の電池モジュールは、同じ試験セットアップと条件で試験されている。さらに、セルあたりの粉末量は、試験時にどちらの電池モジュールでも同じままである。実験の目標は、バッテリーパックを6分以内に100%から10%まで放電させることである。試験では、26650セルについて20Cの厳しい高放電が行われた。
【0056】
実験の構成において、
図6のグラフに示すように、DICO(60)はC
15H
24を含む7成分すべてを含む粉末混合物を表し、Powder11(粉末11)(61)はC
15H
24なしのものである。さらに、試験サイクルには、ドライバーがアクセルを4.5秒間踏み込んだ後、3.5秒間放すような極端な運転状態のシミュレーションが含まれ、これを約50回繰り返す。試験のデューティサイクルはT
(on)4.5秒で、T
(off)3.5秒で55%である。上記の試験サイクルは、6分間で100%SoCから10%SoCまで放電させる電池セルについて行われる最も厳しい試験である。試験中の周囲温度は25℃に維持される。
【0057】
図6のグラフと実験結果とは、C
15H
24を含む7つの成分をすべて含むDICO(60)を有する電池モジュールが良好な性能を示し、50℃の温度に達したことを示している。しかしながら、C
15H
24なしのPowder11(61)を使用した電池モジュールは、14%SoCで60℃の温度閾値に達したため、当該試験に不合格となった。
【0058】
従って、C15H24は放熱に重要な役割を果たし、最良の結果を得るために本発明の粉末混合物(16)の重要な部分であると結論づけられる。
【0059】
一実施形態として、粉末混合物(12)の調製方法が提供される。この方法は、粉末混合物の構成成分を乾式粉砕または乾式混合することを含む。実施形態によっては、その成分は、混合/粉砕の前または混合/粉砕ステップの後に加熱されてもよい。構成成分を加熱することにより、粉末混合物から水分を除去することができる。実施形態によっては、加熱は100℃に制限される。
【0060】
別の実施形態として、例えば電池モジュール(10)のような複数のセルを有する部品を形成するための方法が開示される。この方法は、複数のセル(12)を配列し、セル間の間隙に粉末混合物(16)を充填することを含む。大部分または全てのセル壁が粉末混合物(16)で覆われ、それが表面冷却に役立ち、高放電サイクル中に温度を低く保つ。
【0061】
このように、本発明の実施形態は、熱吸収の目的に利用できる新規な粉末混合物を提供する。この粉末混合物は、部品から熱を吸収して外部のヒートシンクに放熱するために放熱部品を取り囲む任意の部品に使用することができる。開示された粉末混合物を試験した結果、非常に効率的で、MPCAの値が低いため、部品をコンパクトに構成することができる。開示された粉末混合物は電気的に非導電性であるため、部品のセル間の高い電気絶縁性を提供する。開示された粉末混合物を使用する冷却方法は受動的な冷却方法であり、冷却するために必要な可動部品や大型装置は存在しない。可動部品がないため、部品にミスがなくなる。開示された粉末混合物は、熱暴走の防止とともに、粉末混合物の周囲から発生する可能性のある火災の消火にも役立つ。
【0062】
粉末混合物により、モジュール設計が容易になり、自動車などのシステムに電池モジュールを配置する際の柔軟性が大きくなるため、自動車内で利用可能な空間をより創造的に利用することができる。さらに、粉末混合物の加工がシンプルであるため、さまざまなシステムに電池モジュールを簡単に導入することができる。
【0063】
本開示を説明するために特定の文言が使用されているが、そのために生じる制限は意図していない。当業者には明らかなように、本明細書で教示する発明概念を実施するために、本方法に様々な実用的な変更を加えることができる。
【0064】
図および前述の説明は、実施形態の例を示すものである。当業者であれば、説明した1以上の要素を組み合わせて1つの機能要素とすることも十分に可能であることは理解されたい。あるいは、特定の要素を複数の機能要素に分割してもよい。一つの実施形態に由来する要素を別の実施形態に追加してもよい。例えば、本明細書に記載される工程の順序は変更されてもよく、本明細書に記載される態様に限定されない。さらに、任意の流れ図の行為は、示された順序で実施される必要はなく、また、全ての行為が必ずしも実施される必要はない。また、他の行為に依存しない行為は、他の行為と並行して実行されてもよい。実施形態の範囲は、これらの具体例によって決して限定されるものではない。本明細書において明示的に示されているか否かにかかわらず、構造、寸法、材料の使用の違いなど、多数の変形例が可能である。
【国際調査報告】