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特表2024-522566音声周波数で重い剛性板を振動させるためのハイブリッド音放射デバイス
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  • 特表-音声周波数で重い剛性板を振動させるためのハイブリッド音放射デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】音声周波数で重い剛性板を振動させるためのハイブリッド音放射デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/00 20060101AFI20240614BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H04R9/00 C
H04R7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574704
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022064705
(87)【国際公開番号】W WO2022253806
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21462001.5
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523453592
【氏名又は名称】センソニック デザイン ゼットアールティー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤボリ、ダーヴィド ヴィルモス
(72)【発明者】
【氏名】ザボ、シャーンドル
【テーマコード(参考)】
5D012
5D016
【Fターム(参考)】
5D012BA01
5D012BB01
5D012BB03
5D012CA02
5D012DA03
5D012DA04
5D012FA02
5D012GA01
5D016AA03
5D016AA04
5D016EC01
5D016EC21
(57)【要約】
本発明によるハイブリッド音放射デバイスが、音声周波数で重い剛性板を振動させるために使用される。デバイスは、同心円状に配置された2つの音声コイルを備え、外側の音声コイルは、周波数に応じて実質的に一定の粘性を有する3つの流体を含む媒体を収容する流体リザーバに結合される。流体リザーバの側壁の周りに第3のコイルが配置され、反対の極性を有する2つの電極が、流体リザーバ内に設けられ、流体リザーバ内に実質的に一定の電界を提供する。デバイスは、流体リザーバに堅く接続された重い剛性の平板の形の振動要素と、第1、第2、及び第3のコイル並びにこれらの電極に接続された制御回路とをさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声周波数で重い剛性板を振動させるためのハイブリッド音放射デバイス(100)であって、
- 固定された支持部材(120)と、
- 一端が前記支持部材(120)に固定された永久磁石(210)と、
- 前記永久磁石(210)の周りに配置され、中心軸が1次軸方向(110)を画定する、固定された第1のコイル(220)と、
- 前記第1のコイル(220)の周りに配置され、前記1次軸方向(110)に沿って可動である第2のコイル(240)と、
- 第1の側に前記第2のコイル(240)のうち前記支持部材(120)から離れた端部が取り付けられ、前記支持部材(120)に取り付けられた案内支持部材(130)に沿って案内され、前記1次軸方向(110)に延びる中間部材(140)と、
- 前記中間部材(140)のうち前記第1の側とは反対に位置する第2の側に取り付けられ、前記第1の軸方向(110)に沿って可変の長さの側壁を有する流体リザーバであって、
前記流体リザーバが、少なくとも1つのチキソトロピー流体並びにレオペクシー流体と磁気レオロジー流体の所定の混合物を含む媒体(310)を収容し、前記3つの流体を含む媒体(310)が、周波数に対して実質的に一定の粘性を有し、
前記流体リザーバの前記側壁(320)の周りに第3のコイル(330)が配置され、前記第3のコイル(330)の中心軸が前記1次軸方向(110)に平行であり、
反対の極性を有する第1の電極(340)及び第2の電極(350)が、前記流体リザーバ内の前記中間部材(140)に接続された側に設けられ、前記電極(340、350)が、前記流体リザーバ内に実質的に一定の電界を提供する、流体リザーバと、
- 前記流体リザーバのうち前記中間部材(140)とは反対に位置する側に堅く接続された重い剛性の平板の形の振動要素(160)と、
- 前記第1のコイル(220)、第2のコイル(240)、及び第3のコイル(330)、並びに前記電極(340、350)に接続された制御回路(270、370)とを備えるデバイス。
【請求項2】
前記第2のコイル(240)が、円筒形の環状支持部材(230)を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記支持部材(120)のうち前記中間部材(140)に面している側、及び前記中間部材(140)のうち前記支持部材(120)に面している側が、磁気遮蔽要素(250、260)を有する、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記振動要素(160)の材料が、砂岩、石、ガラス、又は木材である、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記流体リザーバと前記振動要素(160)との間に振動伝送要素(150)が配置される、請求項1から4までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
第1の非ニュートン流体が、複合エラストマ、特にポリジメチルシロキサンである、請求項1から5までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
第2の非ニュートン流体が、ヒドロキシステアリン酸リチウム及びシリコーン油の混合物である、請求項1から6までのいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声周波数で重い剛性板を振動させるために電気機械トランスデューサ及び液体を含む振動トランスデューサが一体化された音放射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の技術状況によれば、多種多様な設計のラウドスピーカが知られている。広く使用されているスピーカ及び他のスピーカ・デバイスは、入力された電圧信号を音声周波数の振動に変換する本質的に物理的なシステムである。ラウドスピーカでは、使用要求に応じて、異なる設計のダイアフラム及び振動トランスデューサが知られている。
【0003】
特許文献1は、複数の一体化された機構がパネルを振動させて音響出力を生じさせるモジュール式スピーカを開示している。これらの機構は、たとえば、可動コイル・ユニット、可動磁気ユニット、又は圧電ユニットとすることができる。個々の機構は、スイッチング要素を介して互いに接続され、これらのスイッチング要素が、パネルへのエネルギーの伝送を確実にする。異なる機構を組み合わせることによって、モジュール式スピーカの出力を調整及び最適化することができる。
【0004】
特許文献2は、レオロジー媒体を備えるスイッチング・ユニットを有するラウドスピーカを開示している。レオロジー媒体は、磁気レオロジー流体又は電気レオロジー流体であってよい。レオロジー媒体の粘性を制御することによって、振動トランスデューサを音響振動要素に堅く又は弾性的に接続することができ、その結果、デバイスによって屈曲波が励起されると、振動要素上に音響出力をもたらすことができる。
【0005】
上記の解決策の欠点は、振動トランスデューサが、振動によって弾性変形可能な軽量の振動要素を振動させることにのみ好適であり、ガラス・シート又はストーン・シートなどの大質量の剛性シートを適切な音周波数で振動させるには好適でないことである。
【0006】
低い周波数におけるガラス板又は石板などの重くて大きい剛性振動要素の振動は、十分な大きさの力を生じさせることができる1つ又は複数の大型の振動トランスデューサによって実現することができる。典型的には1000Hzを上回るより高い周波数におけるそのような重い剛性板の振動は、従来の電気音響トランスデューサでは著しい音質劣化なしに実行することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願第1250827号
【特許文献2】米国特許出願第2005226445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、実質的に線形伝送特性を有する低範囲及び高範囲の音声周波数スペクトルで大きくて重い剛性板を振動させることが可能な音放射デバイスを提供することによって、上述した問題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、添付の特許請求の範囲に定義されるハイブリッド音放射デバイスによって実現される。
【0010】
本発明について、次に図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるハイブリッド音振動システムの構造の概略断面図である。
図2】本発明によるハイブリッド音振動システムの電子制御ユニットのデバイス設計を概略的に示す図である。
図3】本発明によるハイブリッド音振動デバイスの構造設計を、部分的な縦断面図、部分的な斜視図で示す図である。
図4】本発明によるハイブリッド音振動デバイスの構造の斜視図である。
図5】すぐに取付可能な組み立てられた状態の本発明によるハイブリッド音振動デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図3図5に示すように、本発明のハイブリッド音振動デバイス100は、大きくて重い剛性の平板として形成された振動要素160を含む。振動要素160の材料は、好ましくは、砂岩、石、ガラス、木材などである。振動要素160は、特に好ましくは、屋内壁装要素である。本発明による振動要素160の外面、すなわち音響空間の方を向いている表面は平坦であってよいが、音響波を生成するのに好適な空間(3D)パターンを有する表面とすることもできる。
【0013】
ハイブリッド音振動デバイス100の作動ユニットは、振動要素160の前面、すなわち概して使用者から隠れた裏面に位置することができる。デバイス100は、デバイス100を地面又は他の剛性支持構造に固定する固定位置支持部材120を有する。支持部材120は、振動要素160を実質的に保持し、それによってハイブリッド音振動デバイス100の他の構成要素を解放する1つ又は複数の無負荷化支持部材を備えてもよい。
【0014】
固定された支持部材120に、1次共振器200が直接接続される。1次共振器200は、従来の電気力学ラウドスピーカとして知られているように、印加される電圧に応じて磁界内で所与の軸方向に自由に動き、それによって音響振動を生じさせることが可能な可動コイル・ユニットとして設計される。
【0015】
1次共振器200は、少なくとも1つの永久磁石210を固定位置に含み、永久磁石210の磁気軸は、振動要素160の平面に直交する。以下、永久磁石210の磁気軸の方向を1次軸方向110と呼ぶ。支持部材120に取り付けられた永久磁石210は、1次共振器200に対して極めて強い均質な磁界を提供する。永久磁石210の材料は、好ましくは、ネオジミウム又はネオジミウム含有材料若しくは合金である。
【0016】
好ましくは、永久磁石210の周りに第1のコイル220が固定して配置される。第1のコイル220の中心軸は、1次軸方向110に平行である。永久磁石210に配置された第1のコイル220の磁界の均質性及び磁界の強度が永久磁石210によって強化され、したがって永久磁石210及び第1のコイル220をともに使用することによって、1次共振器200の伝送特性の線形性を改善することができる。
【0017】
第1のコイル220の周りには可動コイル・ユニットが配置され、可動コイル・ユニットは、支持部材230と、支持部材230に配置された第2のコイル240とを備える。支持部材230は実質的に円筒形の環状であり、第2のコイル240は、好ましくは、その円筒形シェルの外面に巻かれている。可動コイル・ユニットの内面と第1のコイル220との間には空隙が形成され、したがって第2のコイル240を有する支持部材230を、第1のコイル220に対して1次軸方向110に沿って動かすことができる。
【0018】
好ましくは、1次共振器200は、支持部材120のうち中間部材140に面している側にある第1の磁気遮蔽250と、中間部材140のうち支持部材120に面している側にある第2の磁気遮蔽260とを有することができる。
【0019】
遮蔽要素250、260は、1次共振器200内の永久磁界をハイブリッド音振動デバイス100の他の部分から磁気的に分離する。磁気遮蔽要素250、260は、好ましくは、高い透磁率を有する材料から作られる。
【0020】
1次共振器200を動作させるために、ハイブリッド音放射デバイス100は、図2に示すように制御回路270を含み、制御回路270は、第1のコイル220に対応する印加電圧を提供し、第2のコイル240に音声周波数の電圧信号を提供し、したがって1次共振器200(又はより厳密にはその可動コイル)は、20Hz~20,000Hzの周波数範囲内の機械的振動を生成する。制御回路270は、上述した目的で、当業者にはよく知られている従来の電子回路ユニットを含む。
【0021】
支持部材230のうち支持部材120から離れた端部は、可動中間部材140の第1の側に固定される。支持部材120は、少なくとも1つ、好ましくは4つの案内支持部材130をさらに有し、案内支持部材130は、往復する中間部材140を、一方では保持し、他方では可動コイルの振動に追従しながら、1次軸方向110に沿って案内する。したがって、第2のコイル240の振動は、実質的に歪みなく中間要素140へ伝送される。
【0022】
中間部材140は、好ましくは複合材料から形成され、それによって機械的効率を維持しながら、中間部材140の重量及び望ましくない固有の振動を最小にする。デバイス100の好ましい実施例では、案内支持部材130は、ゴムから作られた減衰部材134によって、中間部材140に接続される。方向性減衰の目的は、振動要素160以外の構造要素内のあらゆる振動及び共鳴を吸収及び減衰して、そのような振動が後方支持要素120へ可能な限り(又は好ましくは一切)移らないようにすることであり、多くの場合、前記後方支持要素は、建物の静止構造と直接接続する。
【0023】
案内支持部材130は、コイル240及び永久磁石210から形成されたユニット240に作用する剪断力を中和する。音に対して起こりうる負の影響を最小にするために、案内支持要素130は、好ましくは、前記減衰部材を介して中間要素140に接続されるべきである。
【0024】
中間要素140のうち第1の側とは反対に位置する第2の側には、2次共振器300が接続される。2次共振器300の機能は、1次共振器200によって生成される機械的振動を重い振動要素160へ伝送することである。
【0025】
2次共振器300は、1次軸方向110に沿って可変の長さの側壁320を有する流体リザーバ320を含む。可変の長さの側壁320は、好ましくは、互いに封止された壁部分から構成されるが、任意選択で側壁は、1次軸方向110に沿って流体リザーバの長さを屈曲させることによって、可撓性の弾性シートの壁とすることができる。
【0026】
流体リザーバの周りには第3のコイル330が配置され、第3のコイル330の中心軸は、1次軸方向110に平行であり、流体リザーバ内に磁界を生成する。
【0027】
流体リザーバのうち中間部材140に接続された側に、好ましくは流体リザーバ内に、第1の電極340が配置され、第1の電極に向かい合って、好ましくは流体リザーバ内に、反対の極性を有する第2の電極350が配置されて、流体リザーバ内に実質的に一定の電界を生じさせる。
【0028】
流体リザーバには、少なくとも2つの非ニュートン流体及び磁性流体の混合物からなる媒体310が充填される。1つの非ニュートン流体は、ポリジメチルシロキサン(PDMS、COSi)などのチキソトロピー複合エラストマである。他の非ニュートン流体は、ヒドロキシステアリン酸リチウム(C1835LiO)をシリコーン油と混合したものなど、レオペクシー特性を有する。混合物中のレオペクシー材料の割合は約20体積%であり、すなわち混合物は、約80体積%のシリコーン油を含有する。媒体310中の2つの非ニュートン流体の比は、好ましくは約30体積%のチキソトロピー流体及び70体積%のレオペクシー流体である。
【0029】
媒体310はまた磁気レオロジー流体を含み、したがって媒体310全体が電極340、350によって連続して電界内に位置し、音声周波数で媒体を振動させる。媒体310中の磁気レオロジー流体の体積比は、好ましくは40%に近い。
【0030】
磁気レオロジー材料として、たとえばより粗い粒子(直径約0.1~50マイクロメートル)の磁鉄鉱又は鉄粒子が分散した磁鉄鉱系磁性流体が使用される。そのように得られた磁気レオロジー流体は、外部磁界内で外部電界内の電気レオロジー流体と同様に挙動する。すなわちその粒子は、磁界によって力線に平行な鎖及び列に編成され、その結果、流体粘性が数桁増大する。磁界の終了後、数ミリ秒以内に連鎖も停止し、流体の粘性は元の値に戻る。
【0031】
最適の動作のために、媒体310の温度は、好ましくは1℃~70℃であるべきである。液体容器の容量は、好ましくは約50cm程度である。
【0032】
媒体310を形成する磁気レオロジー流体は、好ましくは、数十ナノメートルから数マイクロメートルの粒径を有する酸化鉄(FeO)粒子を含有する。第3のコイル330によって提供される経時変化する磁界の影響下で、媒体310は、液体容器内で1次軸方向110にそのサイズを連続して変化させる。このサイズ変更は、1秒当たり最大約5,000回発生することができる。
【0033】
流体リザーバ内の媒体310は、電極340、350によって、実質的に一定の電界内で維持される。この電気バイアスは、2つの非ニュートン流体及び磁気レオロジー流体を含有する媒体310の最適の粘性を調整するために必要とされる。音響場測定を使用してハイブリッド音放射デバイス100によって生成される音響波の音響場特性及び物理特性に基づいて、制御回路370を使用して一定の電界強度を微調整することができるが、これは電界の不変性に著しく影響しない。
【0034】
2つの非ニュートン流体及び磁気レオロジー流体の適当な混合の結果、周波数に対して実質的に一定の粘性の媒体が得られ、前記媒体は、比較的広い周波数範囲(約200Hz~5kHz)内で、十分に大質量の高慣性振動媒体として挙動し、それによって1次共振器200によって生成される機械的振動を重い振動要素160へ最小の歪みで伝送することが可能になる。
【0035】
2次共振器300を動作させるために、すなわち媒体310の磁界及び電界を制御するために、本発明によるデバイス100は、図2に示す制御回路370を備え、制御回路370は、電極340、350に好適な電圧を提供し、コイル330に音声周波数信号を提供する。制御回路370は、ハイブリッド音放射デバイス100の動作が全体として実質的に線形になるように、2次共振器300を動作させる。
【0036】
本発明のハイブリッド音放射デバイス100は、図2に示す特別な周波数伝送及びパルス応答補償デジタル信号処理ユニット(DSP)400と、照射空間内で観察される起こりうる音響歪みを制御回路270及び370によって補償するための様々な音響センサ402とをさらに加えることができる。
【0037】
2次共振器300のうち中間要素140とは反対側では、好ましくは振動伝送要素150が、一方では液体容器の対応する壁に、他方では重い振動要素160に、堅く、好ましくは接着により配置される。図5に示すように、1つだけでなくいくつか、たとえば4つの2次共振器300を振動伝送要素150に接続することができ、それによって相当量の振動エネルギーをより重い振動要素160へも同様に伝達することができる。
【0038】
本発明のハイブリッド音放射デバイス100の好ましい実施例では、振動要素160の表面は約1m~20mであり、振動伝送要素150は接着によって振動要素160に固定される。使用される接着剤は、可能な限り少ない歪み及び減衰で振動伝送要素150の振動を振動要素160へ伝送するために、最小の可撓性を有する高強度層を形成する。図3及び図4に示すように、振動伝送要素150の他方の側では、案内支持部材130内に可動に配置されたピストン132の外端に振動伝送要素150を接続することができ、したがって振動伝送要素150は、振動器160を保持し、それによって流体リザーバを解放することを支援する。
【0039】
図面には示されていないが、ハイブリッド音放射デバイス100は、必要な場合、追加の従来の電子ユニット、たとえば電源、配線、回路遮断器などをさらに備える。これらのユニットの設計及び動作は当業者によく知られており、本明細書では詳細に説明しない。
【0040】
実際の条件下では、ハイブリッド音放射デバイス100は、より高い使用者要件を満たすために、追加のスピーカ、好ましくはツイータ及びサブウーファを備えることができる。これらの補助スピーカは、好ましくは、本発明のハイブリッド音放射デバイス100の近傍に隠される。
【0041】
本発明によるハイブリッド音放射デバイスの利点は、壁被覆パネルなどの重い剛性パネルをスピーカの振動要素としても使用することができ、したがって部屋の装飾的外観に悪影響を与える従来のスピーカの必要がなくなり、又はそのユニットを振動要素として使用される壁被覆要素若しくは家具パネルの後ろに完全に隠して設置することができるという点である。
【0042】
従来の壁掛け式のラウドスピーカに勝る本発明によるデバイスのさらなる利点は、例えば、軽微な損傷又は欠陥ではその動作に干渉しないという点である。その大きい振動要素及び特別な設計により、ハイブリッド音放射デバイスは広い指向性を有し、空間的に広がりのある音の分布及び良好な発話特性が得られる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声周波数で重い剛性板を振動させるためのハイブリッド音放射デバイス(100)であって、
- 固定された支持部材(120)と、
- 一端が前記支持部材(120)に固定された永久磁石(210)と、
- 前記永久磁石(210)の周りに配置され、中心軸が1次軸方向(110)を画定する、固定された第1のコイル(220)と、
- 前記第1のコイル(220)の周りに配置され、前記1次軸方向(110)に沿って可動である第2のコイル(240)と、
- 第1の側に前記第2のコイル(240)のうち前記支持部材(120)から離れた端部が取り付けられ、前記支持部材(120)に取り付けられた案内支持部材(130)に沿って案内され、前記1次軸方向(110)に延びる中間部材(140)と、
- 前記中間部材(140)のうち前記第1の側とは反対に位置する第2の側に取り付けられ、前記第1の軸方向(110)に沿って可変の長さの側壁を有する流体リザーバであって、
前記流体リザーバが、少なくとも1つのチキソトロピー流体並びにレオペクシー流体と磁気レオロジー流体の所定の混合物を含む媒体(310)を収容し、前記3つの流体を含む媒体(310)が、周波数に対して実質的に一定の粘性を有し、
前記流体リザーバの前記側壁(320)の周りに第3のコイル(330)が配置され、前記第3のコイル(330)の中心軸が前記1次軸方向(110)に平行であり、
反対の極性を有する第1の電極(340)及び第2の電極(350)が、前記流体リザーバ内の前記中間部材(140)に接続された側に設けられ、前記電極(340、350)が、前記流体リザーバ内に実質的に一定の電界を提供する、流体リザーバと、
- 前記流体リザーバのうち前記中間部材(140)とは反対に位置する側に堅く接続された重い剛性の平板の形の振動要素(160)と、
- 前記第1のコイル(220)、第2のコイル(240)、及び第3のコイル(330)、並びに前記電極(340、350)に接続された制御回路(270、370)とを備えるデバイス。
【請求項2】
前記第2のコイル(240)が、円筒形の環状支持部材(230)を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記支持部材(120)のうち前記中間部材(140)に面している側、及び前記中間部材(140)のうち前記支持部材(120)に面している側が、磁気遮蔽要素(250、260)を有する、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記振動要素(160)の材料が、砂岩、石、ガラス、又は木材である、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記流体リザーバと前記振動要素(160)との間に振動伝送要素(150)が配置される、請求項1から4までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記チキソトロピー流体が、複合エラストマ、特にポリジメチルシロキサンである、請求項1から5までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記レオペクシー流体が、ヒドロキシステアリン酸リチウム及びシリコーン油の混合物である、請求項1から6までのいずれか一項に記載のデバイス。
【国際調査報告】