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特表2024-522582穿刺カテーテル装置を使用した心室中隔内への進入
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】穿刺カテーテル装置を使用した心室中隔内への進入
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575431
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 US2022033320
(87)【国際公開番号】W WO2022261566
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/209,962
(32)【優先日】2021-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/221,813
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522485051
【氏名又は名称】タウ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAU MEDICAL INC.
(71)【出願人】
【識別番号】522329744
【氏名又は名称】タウ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAU MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジュン‐ホン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF49
4C160MM33
4C160NN02
(57)【要約】
患者の心臓の心室中隔内に経静脈進入経路を作成するための方法。この進入経路は、心臓ペーシング、ラジオ波(RF)焼灼、又は僧帽弁サークラージ手術などの心臓手術に使用されてもよい。本方法は、その遠位端において操作可能なカテーテル装置を使用する。穿刺具が、冠静脈洞を通過し冠静脈(例えば大心臓静脈)内に入った後、カテーテル装置を通して進められ、静脈壁を通して穿刺される。この穿刺を容易にするため、カテーテル装置の遠位端が静脈壁に向かう角度に屈曲されてもよい。穿刺具は押されて、心室中隔に向かって心筋を穿孔する。この穿孔により、冠静脈から心筋を通り心室中隔に入る入口通路を作成する。この入口通路は、電極リード又は僧帽弁ループサークラージワイヤの挿入のために使用されてもよい。
【選択図】 図18A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓の心室中隔内に経静脈進入経路を作成するための方法であって、
主管を具備するカテーテル装置を得るステップであって、前記主管が遠位端セグメント、遠位先端、及び管腔を備え、前記カテーテル装置が前記管腔を通り抜ける穿刺具をさらに具備する、ステップと、
前記主管を入口静脈に挿入するステップと、
前記主管が冠静脈洞内に入り冠静脈内部の標的部位に配置されるように、前記カテーテル装置を進めるステップと、
前記遠位先端が前記冠静脈の壁に向かう角度に向くように、前記主管の前記遠位端セグメントを屈曲させるステップと、
前記穿刺具を前記主管外へ押し出して、前記冠静脈の前記壁を穿刺するステップと、
前記穿刺具を心筋を通して前記心室中隔に向かって進め、前記心室中隔への入口通路を作成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記カテーテル装置が、前記主管の前記遠位端セグメントに固定されている操作ワイヤをさらに備え、
前記主管の前記遠位端セグメントを屈曲させる前記ステップが、前記操作ワイヤを押す又は引くことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
操作ワイヤが、前記主管の前記遠位先端から1.0cm以内の地点に固定されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カテーテル装置が、操作アクチュエータを備えるハンドル組立体をさらに具備し、
前記操作ワイヤが、前記操作ワイヤを押す又は引くように働く前記操作アクチュエータと結合されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記管腔が前記穿刺具のための第1の管腔であり、前記主管が前記第1の管腔と別個の第2の管腔をさらに備え、前記操作ワイヤが主管の前記別個の第2の管腔を通り抜ける、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記主管が前記第2の管腔から出る出口孔を備え、前記操作ワイヤが前記出口孔から前記第2の管腔を抜け出る、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記操作アクチュエータがスライダを備え、前記操作ワイヤが前記スライダに固定されており、前記方法が、
前記スライダを前後に移動させて前記操作ワイヤを押す又は引くステップ、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記屈曲の角度が、前記主管の長手方向軸線に対して少なくとも45°である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記主管の前記遠位端セグメントが、3つ以上の放射線不透過性マーカを備え、前記方法が、
前記放射線不透過性マーカの配列をX線透視下で観察して、前記主管の前記遠位端セグメントにおける屈曲量を求めるステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記穿刺具を前記静脈壁を通して進めるときに前記穿刺具に0.205~1.25N(ニュートン)の力を加えるステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記冠静脈が大心臓静脈である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記冠静脈が中隔貫通静脈であり、前記方法が、前記穿刺具を前記静脈壁を通して進めるときに0.20N(ニュートン)未満の力を加えるステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記冠静脈の加圧静脈造影を行うステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記主管が、予備形成されたC字形湾曲セグメントをさらに備え、前記C字形湾曲セグメントが前記冠静脈洞の自然の湾曲経路に従う、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記主管が前記遠位端セグメントにコイル要素を備え、前記屈曲が前記コイル要素で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記進入経路が、電極リードを前記心室中隔内部に配置するためのものであり、前記方法が、
前記穿刺具を前記カテーテル装置外へ引き抜くステップと、
前記電極リードが前記冠静脈洞内に入り前記冠静脈を通り抜けるように、前記電極リードを前記管腔を通して挿入するステップと、
前記電極リードを前記静脈壁の前記穿刺孔を通して前記心室中隔の前記入口通路内へ進めるステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記電極リードがペーシングリードであり、前記方法が、ペーシング刺激を作動させて前記心臓のペーシングを引き起こすステップ、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電極リードがラジオ波焼灼リードであり、前記方法がさらに前記電極を作動させて心臓組織を焼灼する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記進入経路が、僧帽弁サークラージ手術を行う際の僧帽弁ループサークラージワイヤのためのものであり、前記方法が、
前記穿刺具を前記カテーテル装置外へ引き抜くステップと、
前記サークラージワイヤが前記冠静脈洞内に入り前記冠静脈を通り抜けるように、前記サークラージワイヤを前記管腔を通して挿入するステップと、
前記サークラージワイヤを前記静脈壁の前記穿刺孔を通して前記心室中隔の前記入口通路内へ進めるステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記冠静脈の対向壁を前記穿刺具に押力を加えるための支え壁として使用するステップ、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
遠位端セグメント、遠位先端、管腔、及び前記管腔から出る出口孔を備える主管であって、前記主管が、前記主管の近位点Aから遠位点Bまで延在している予備形成されたC字形湾曲セグメントを備え、点Aが前記主管の前記遠位先端から6.0~15cmの間隔内に位置されており、点Bが前記主管の前記遠位先端から0.4~4.0cmの間隔内に位置されており、点Bが点Aより遠位に位置されており、点Aから点Bまでの前記C字形湾曲セグメントの距離の長さが5~20cmの長さの範囲内にある、主管と、
前記管腔を通り抜け、前記主管の前記遠位先端から1.0cm以内の地点において前記主管の前記遠位端セグメントに固定されている、操作ワイヤであって、前記操作ワイヤが、前記主管の前記出口孔から前記管腔を抜け出る、操作ワイヤと、
操作アクチュエータを備えるハンドル本体であって、前記操作ワイヤが、前記操作ワイヤを押す又は引くように働く前記操作アクチュエータと結合されている、ハンドル本体と、を具備する、カテーテル装置。
【請求項22】
前記操作アクチュエータがスライダを備え、前記操作ワイヤが前記スライダに固定されている、請求項21に記載のカテーテル装置。
【請求項23】
請求項21に記載のカテーテル装置を具備する中隔穿刺組立体であって、前記管腔が第1の管腔であり、前記主管が第2の管腔をさらに備え、前記中隔穿刺組立体が前記第2の管腔を通り抜ける穿刺具をさらに具備する、請求項21に記載のカテーテル装置を具備する中隔穿刺組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血管心臓手術を行うためのカテーテル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
介入性心臓病学の近年の発展により、患者の心臓の心室中隔内に経静脈進入経路を作成する必要性が生じている。例えば、この経路は、僧帽弁逆流に対する、僧帽弁ループサークラージ、生理的ペーシング、又は肥大型心筋症のための中隔内ラジオ波(RF:radiofrequency)焼灼による中隔縮小による、新規のカテーテルベースの治療に使用され得る。この手法は、患者が心室中隔内に中隔貫通静脈を有している場合、比較的より容易になる。しかし、患者が心室中隔内に好適な中隔貫通静脈を有していない場合、この手法はより難しくなる。したがって、好適な中隔貫通静脈の有無に関わらず患者に使用可能な経静脈進入経路を作成するためのより一般的な技法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、患者の心臓の心室中隔内に経静脈進入経路を作成するためのものである。心臓ペーシング、RF(ラジオ波)焼灼、又は僧帽弁サークラージ手術などの、このような進入経路が有益であり得る様々な異なる種類の心臓手術が存在する。これら手術は以下により詳細に記載される。本方法は、その遠位端において操作可能なカテーテル装置を使用する。使用され得るカテーテル装置の一例には、本明細書に参照として組み込まれる、「Septal Cross System」という名称の特許出願公開国際公開第2021/119636号(Tau Cardio, Inc.)に記載されているものが含まれる。使用され得るカテーテル装置の他の例が、本明細書にさらに記載される。
【0004】
本カテーテル装置は、遠位端セグメント、遠位先端、及び管腔を備える、主管を具備する。本明細書で用いられる「遠位端セグメント」は、主管の遠位先端から、遠位先端から内側(近位)に5cmの距離までを包含する主管の部分を意味する。主管の長さは、60~180cmの長さの範囲内であってもよい。本カテーテル装置は、管腔を通り抜ける穿刺具をさらに備える。穿刺具は、心臓手術の任意の好適な段階において、カテーテル装置の管腔に挿入されてもよい。
【0005】
主管は入口静脈(大腿静脈、鎖骨下静脈、又は頚静脈など)に挿入される。主管は大静脈(上大静脈又は下大静脈)にさらに進められる。主管は心臓の右心房に進められる。右心房から主管は冠静脈洞内に挿入され、冠静脈を通して進められる。通過され得る冠静脈の例には、大心臓静脈、左心室静脈、中心臓静脈、左辺縁静脈及び中隔貫通静脈などの、冠静脈洞に流入する側枝(tributaries)が含まれる。
【0006】
遠位先端は、心室中隔近傍(例えば距離4.0cm以内)の冠静脈内の標的部位に配置される。穿刺具が主管の管腔を経て主管を通り抜けるように、穿刺具がカテーテル装置内に導入される。穿刺具は、静脈壁を通り心筋内へ穿孔可能な、任意の種類のワイヤ状器具であってもよい。例えば、穿刺具はワイヤ、ドリル先端、鋭い針先などであってもよい。
【0007】
穿刺具は、主管の管腔を通り主管の経路に沿った遠位方向に(すなわち、大静脈、右心房、冠静脈洞、及び冠静脈を通って)進められる。穿刺具は、主管の遠位先端開口部から出て進められ、静脈壁を通して穿刺するように押される。穿刺具は、心室中隔に向かって心筋内へさらに進められる。これにより、冠静脈から心筋を通り心室中隔に入る入口通路を作成する。
【0008】
静脈壁を通して穿刺するために、任意の好適な量の力が使用されてもよい。患者が中隔貫通静脈を有し、主管の遠位先端が中隔貫通静脈の中に配置される状況では、比較的小さい力が必要になり得る。例えば、静脈壁を通して穿刺するために加えられる押力量は0.20N(ニュートン)未満になり得る。他の状況(例えば患者が中隔貫通静脈を有していない場合)では、比較的大きな押力が必要になり得る。例えば、静脈壁を通して穿刺するために加えられる押力量は0.20~1.25N(ニュートン)の範囲内になり得る。主管の遠位先端が大心臓静脈内にあり、大心臓静脈を通して壁の穿刺が求められる状況では、この量の力が好適であり得る。押力を加えるために、冠静脈の対向壁を主管の遠位端セグメントにおける支え壁支持体として使用することが利用されてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、静脈壁穿刺のための標的部位で、主管の遠位端セグメントが、主管の長手方向軸線に対して角度をつけて屈曲される。したがって、遠位先端開口部が静脈壁に向かう角度に向けられる。例えば、この角度は主管の長手方向軸線に対して少なくとも45°であってもよい。主管がこのように屈曲されている状態で、穿刺具は角度をつけて静脈壁に向けて進められ、静脈壁を通して穿刺される。
【0010】
いくつかの実施形態において、主管はその遠位端セグメントに屈曲可能セグメントを備える。屈曲可能セグメントは、操作者の制御によって屈曲するように(例えば操作可能先端のように)作製されていてもよい。いくつかの場合において、屈曲可能セグメントは、屈曲可能セグメントに近位の主管の他のセグメントよりも可撓性が高い(例えば屈曲可能セグメントは主管の他の部位よりも可撓性が高い)。いくつかの場合において、主管はその屈曲可能セグメントにコイル要素を備える。コイル要素を有することで、屈曲可能セグメントは、カテーテル装置の操作能力を向上するばね様の伸展性を有する。いくつかの場合において、屈曲可能セグメントの長さは、10~40mmの長さの範囲内にある。
【0011】
いくつかの実施形態において、主管は近位点Aから遠位点Bに延在する予備形成されたC字形湾曲セグメントを備える。点Aは、主管の遠位先端から6.0~15cmの間隔内に位置されている。点Bは主管の遠位先端から0.4~4.0cmの間隔内に位置されている。点Bは点Aより遠位に位置されている。C字形湾曲セグメントの長さ(点Aから点Bまでの距離)は、5~20cmの長さの範囲内にあってもよい。いくつかの場合において、操作ワイヤがC字形湾曲の内部湾曲に位置されている。使用時、主管は、主管のC字形湾曲が冠静脈洞の湾曲に従うように冠静脈洞内に挿入される。この予備形成されたC字形湾曲は、主管を冠静脈洞に向かって良好な角度に設定すること、及び冠静脈を通してトルク能力を与えることを補助できる。
【0012】
いくつかの実施形態において、カテーテル装置は、主管の屈曲を引き起こすように動作する操作ワイヤをさらに備える。操作ワイヤは主管の遠位端セグメントにおいて主管に固定される。操作ワイヤを押す又は引くことにより屈曲が作用される。カテーテル装置の詳細な構成に応じて、押すこと又は引くことにより直線化又は屈曲化がなされてもよい。操作ワイヤの遠位端は、主管の遠位先端近傍で主管に付けられる。いくつかの場合において、操作ワイヤの遠位端は、主管の遠位先端から1.5cm以内の主管の位置で主管に付けられる。操作ワイヤの長さは、80~200cmの長さの範囲内であってもよい。操作ワイヤの長さは、穿刺具の長さより短くてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、カテーテル装置は、操作アクチュエータを備えるハンドル組立体をさらに具備する。操作ワイヤは、操作ワイヤを押す又は引くように働く操作アクチュエータと結合される。操作アクチュエータは、この作動を行うために、つまみ、ダイヤル、スライダ、レバーなどの任意の好適な構成要素を有していてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、主管は、(第1の)管腔とは別個の第2の管腔をさらに備える。操作ワイヤは、主管の別個の第2の管腔を通り抜ける。いくつかの場合において、主管は、第2の管腔から出る出口孔を備える。操作ワイヤは、出口孔から第2の管腔を抜け出る。この出口孔は、主管の遠位先端から4~40mm以内の地点に位置されていてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、主管の遠位端セグメントは、2つ以上の放射線不透過性マーカを備える。マーカ間の距離は2~8mmの範囲内にあってもよい。いくつかの場合において、主管は少なくとも3つの放射線不透過性マーカを備える。この放射線不透過性マーカは、X線透視下での撮像により操作者が屈曲量を評価することが可能になる上で、有益であり得る。放射線不透過性マーカの直線的な配列からの逸脱量は、屈曲の度合を示すことになる。
【0016】
いくつかの実施形態において、カテーテル装置は心臓の静脈造影を行うために使用される。主管の遠位先端が冠静脈洞内部又はさらに先の冠静脈内にある状態で、造影剤がカテーテル装置を通り冠静脈内に注入される。いくつかの場合において、冠静脈洞入口又は冠静脈洞入口近傍(1.5cm以内)に妨害物を置くことで、加圧静脈造影が行われる。これにより、冠静脈洞のより小さい遠位側枝静脈のより優れた可視化を可能にするために、加圧静脈造影を行うことが可能になる。
【0017】
いくつかの実施形態において、患者の心臓に電極リードを挿入するために本方法が使用される。電極リードの例には、心臓ペーシング又はRF(ラジオ波)焼灼のために使用されるものが含まれる。本方法は、電極リードが主管に沿って同一の経路を通り、その後心筋内の入口通路を通り抜け、心室中隔内に入るように、電極リードをカテーテル装置内に導入することを含む。電極リードの電極は心室中隔内部に配置される。電極リードを進めるために同一の管腔が使用される状況では、穿刺具はカテーテル装置外へ引き抜かれ、電極リードは主管のこの同一の管腔を通して進められる。
【0018】
心室中隔内での心臓ペーシングは調律異常の治療に有益であり得る。例えば、上記治療は、ヒス束又は近位の右脚(RBB:right bundle branch)に近接した右心室の傍ヒス束ペーシング(para-Hisian pacing)であってもよい。この傍ヒス束ペーシングは、調律異常の原因として房室(AV:atrioventricular)ブロックを持つ患者に有益であり得る。心室中隔でのRF(ラジオ波)焼灼は、肥大型心筋症など様々な心臓病の病状を治療するために有益であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、僧帽弁サークラージ手術のために本方法が使用される。このような手術の例は、Kimらによる「Mitral cerclage annuloplasty, a novel transcatheter treatment forsecondary mitral valve regurgitation: Initial results in swine」 (2009) J Am Coll Cardiol.54(7):638-651、及びParkらによる「Mitral Loop Cerclage Annuloplasty for Secondary MitralRegurgitation: First Human Results」 (2017) JACCCardiovasc Interv.10(6):597-610において説明されている。これら文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
本方法は、僧帽弁ループサークラージワイヤが主管に沿って同一の経路を通り、その後心筋内の入口通路を通り抜け、心室中隔内に入るように、僧帽弁ループサークラージワイヤをカテーテル装置内に導入することを含む。僧帽弁ループサークラージワイヤは、その後心室中隔外へ抜け出て所望のループを形成してもよい。サークラージワイヤを進めるために同一の管腔が使用される状況では、穿刺具はカテーテル装置外へ引き抜かれ、サークラージワイヤは主管のこの同一の管腔を通して進められる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】カテーテル装置の全体図である。
図2】カテーテル装置の遠位部の詳細側面図である。
図3】カテーテル装置の遠位部の詳細断面図である。
図4】カテーテル装置の屈曲動作を示す図である。図5は、後方に移動しているスライダを示す図である。
図5】カテーテル装置の屈曲動作を示す図である。図6は、角度をつけて偏向されている主管の遠位先端を示す図である。
図6】屈曲可能セグメントの詳細図である。図7は、90°の角度に屈曲された屈曲可能セグメントを示す図である。
図7】屈曲可能セグメントの詳細図である。図8は、135°の角度に屈曲するようにさらに撓ませられた屈曲可能セグメントを示す図である。
図8】操作機構がどのように働き得るかについて例を示す図である。図9は、冠静脈内部の主管を示す図である。
図9】操作機構がどのように働き得るかについて例を示す図である。図10は、屈曲様態の主管内部の穿刺具を示す図である。
図10】操作機構がどのように働き得るかについて例を示す図である。図11は、心筋に向かってより急な角度に向くための主管のさらなる屈曲を示す図である。
図11】心臓の横断面を示し、カテーテル装置の全体的な挿入処置の例を明示する図である。
図12】穿刺処置の誘導を補助するために外部超音波探触子が操作者によりどのように使用され得るかを示す図である。
図13】主管の屈曲可能セグメントが操作ワイヤの引き戻しによりどのように屈曲するように作製されているかを示す図である。図14は、弛緩姿勢の(張力が加えられていない)主管を示す図である。
図14図15は、操作ワイヤの引き戻しに起因する主管の屈曲を示す図である。
図15図16は、操作ワイヤのさらなる引き戻しに伴う主管のさらなる屈曲を示す図である。
図16】カテーテル装置を使用して植設され得る従来の心臓ペースメーカ装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[例示的実施形態の詳細な説明]
本発明の理解を支援するために、本発明が実施され得る具体的な実施形態を例示により示すべく添付図面に対して参照がなされる。本明細書における図面は、必ずしも縮尺又は実際の比率通りに作製されていない。例えば、構成要素の長さ及び幅は、ページ寸法に対応するように調節されている場合がある。
【0023】
図1は、患者の心臓の心室中隔内に経静脈進入経路を作成するためのカテーテル装置10の例を示す。カテーテル装置10に対する近位端13及び遠位端11の方向が示されている。遠位端11に向かって、カテーテル装置10は、複数(2つ以上)の管腔を内部に有する可撓性の主管20を備える。この構成は、主管20の長手方向軸線21(この図面においては直線状鉛直)を画定する。主管20は屈曲可能セグメント34を備える。カテーテル装置10は、主管20の屈曲可能セグメント34を操るための操作ワイヤ40も備える。
【0024】
近位端13に向かって、カテーテル装置10は、主管20が取り付けられる円錐形フード88を備えるハンドル組立体50を具備する。ハンドル組立体50はハンドル把手86をさらに備える。ハンドル組立体50の裏側には、主ポート84及び副ポート82を有するハブ56がある。ガイドワイヤ及び穿刺具(ここでは図示せず)が、主管20の第1の管腔26(ここでは図示せず)のための開口部である、主ポート84に挿入される。ハンドル組立体50は捻りつまみ52及びスライダ54を備える。捻りつまみ52の内部には螺旋レール80がある。捻りつまみ52は螺旋レール80でスライダ54と係合している。この構成により、捻りつまみ52を回す(右回り又は左回り)ことで、スライダ54が螺旋レール80により駆動されて前方又は後方に移動する。以下により詳細に説明されるように、この移動に起因して主管20の屈曲可能セグメント34での屈曲が生じる。
【0025】
図2A及び図2Bは、カテーテル装置10の遠位部の詳細図を示す。ここに示されるように、主管20は、開口部25を有する遠位先端20aを有する。開口部25は、穿刺具44(ここでは図示せず)が通り抜ける第1の管腔26の一部である。電極リード又はサークラージワイヤが、穿刺具44により使用されるこの同一の第1の管腔26に(穿刺具44が引き抜かれた後)挿入されてもよい。穿刺具44(図示せず)のための第1の管腔26に加え、主管20は操作ワイヤ40のための第2の管腔28を有する。第2の管腔28には、第2の管腔28からの出口孔として機能する近位側孔24が位置している。
【0026】
操作ワイヤ40は、近位側孔24から第2の管腔28を抜け出て、主管20の本体に並んで主管20の本体の外を通る。操作ワイヤ40は遠位側孔22を通り本体20に再び入る。主管20内には操作ワイヤ40の遠位端が埋設されている。これにより、操作ワイヤ40の遠位端が主管20の遠位先端20a近傍に取り付けられる。遠位孔22は、操作ワイヤ40の主管20への取り付けには不必要である。例えば、他の実施形態において、操作ワイヤ40の遠位端は、主管20の外表面に、その遠位先端20a又は遠位先端20a近傍において取り付けられてもよい。
【0027】
図2及び図3は、カテーテル装置10のいくつかの関連寸法も示す。主管20の全長L2は長さ約120cmである。屈曲可能セグメント34の長さL3は約18mmの長さである。操作ワイヤ40の長さL1は、主管20の長さL2より長い。ここでは、操作ワイヤ40の長さL1は約150cmの長さである。主管20の本体外を通る操作ワイヤ40の一部(側孔22及び24の間)は、(主管20が直線様態であるとき)長さ約12mmである。近位側孔24から主管20の遠位先端20aまでの距離は約15mmである。(操作ワイヤ40のための)第2の管腔28の長さは、穿刺具44のための第1の管腔26の長さより短い。これらの図は主管20の屈曲可能セグメント34内の金属コイル30も示す。金属コイル30は屈曲可能セグメントに弾性可撓性をもたらし、すなわち、屈曲可能セグメント34を弾性変形可能にする。これらの図は3つの放射線不透過性マーカ32も示す。
【0028】
主管20は予備形成されたC字形湾曲セグメント88も有する。すなわち、この湾曲セグメント88における主管20はC字形を形成する傾向がある。この湾曲セグメント88は、屈曲可能セグメント34の近位端からそのさらに近位の地点までの主管20の一部を包含する。この例において、C字形湾曲セグメント88は約10cmの長さL4を有する。このC字形湾曲は、冠静脈洞の自然の湾曲通路に適合している。静脈穿刺が行われるときに屈曲可能セグメント34での屈曲が遠位先端を心室中隔の方へ正確に内側に向けるように主軸20が方向付けられることを確実にする上で、このC字形湾曲を有することは有益であり得る。
【0029】
主管20は、X線透視下での撮像のための3つの1.0mm幅の放射線不透過性マーカバンド32を有する。この放射線不透過性マーカバンド32は、操作者が主管20の遠位端部の位置を評価することを可能にする。ここでは、マーカバンド32は約5mmの距離で離隔されている。間隔を空けた複数のマーカバンド32を有することで、操作者が主管20の遠位端部の形状、すなわちその屈曲量を評価することも可能となる。例えば、3つのマーカバンド32の直線状の配列は、主管20の遠位端部が屈曲していないことを示すことになる。しかし、直線状の配列から外れている3つのマーカバンド32は、操作者に屈曲量の推定値を与えることになる。
【0030】
図4図6はカテーテル装置10の屈曲動作を示す。主管20及びその中に含まれる第1の管腔26がここで示されている。また、主管の別個の第2の管腔28を通り抜ける操作ワイヤ40も示されている。操作ワイヤ40は、近位側孔24を通り第2の管腔28を抜け出て、遠位側孔22において主管20と固定されている。捻りつまみ52は、捻りつまみ52の内部で螺旋レール80と係合しているスライダ54を保持している。捻りつまみ52を回転させることでスライダ54は前後に移動する。操作ワイヤ40の近位端はスライダ54に取り付けられている。この作動機構に起因して、捻りつまみ52を回すことで操作ワイヤ40が押され又は引かれる。これがカテーテル装置10のための操作制御機構である。
【0031】
図4において、捻りつまみ52は操作ワイヤ40に張力が加えられていない状態で待機位置にある。主管20は、遠位端部に強制的屈曲のない弛緩様態にある。図5において、捻りつまみ52が操作者により捻られることで、スライダ54はレール80に沿って後方に摺動する。この摺動に起因して、スライダ54は操作ワイヤ40を後方に引く。操作ワイヤ40に加えられる引き張力によって、操作ワイヤ40の遠位端が主管20の遠位先端20aを引き戻す。この屈曲に起因して、主管20の屈曲可能セグメント34はC字形湾曲を形成し、主管20の長手方向軸線から離れる方向に遠位先端20aを向ける。
【0032】
図6において、遠位先端20aが角度をつけて偏向されている状態で、穿刺具44は主管20の遠位先端20aの開口部から抜け出るように前進させられる。主管20の屈曲可能セグメント34でのC字形屈曲によって、穿刺具44は主管20の長手方向軸線に対して角度をつけて向けられる。ここで見られるように、操作ワイヤ40の長さは穿刺具44の長さより短い。
【0033】
図7及び図8は、屈曲可能セグメント34の詳細図である。主管20は屈曲可能セグメント34にコイル要素30を備える。このコイル要素30は、ばね様の反作用として機能することで操作を容易にする。このコイル要素30は、主管20の壁内に埋設されてもよく、又は第1の管腔26(ここでは図示せず)周りの鞘であってもよい。コイル要素30は、螺旋様態で第1の管腔26周りを包み込み、第1の管腔26と同軸線(共通軸線)にあり、第1の管腔26を補強するように機能し得る。操作ワイヤ40は、側孔24にて主管20外へ抜け出て、主管20の本体外部を進む。その後、操作ワイヤ40は、さらに遠位の地点で主管20に取り付けられる。
【0034】
図7において、屈曲可能セグメント34は、主管20が直線様態であるときの最初の0°の起点に対して(すなわち、長手方向軸線に対して)、90°の角度で屈曲される。図8において、屈曲可能セグメント34はさらに撓ませられ、最初の0°の起点から135°の角度で屈曲する。本明細書で見られるように、穿刺具44は、屈曲可能セグメント34の屈曲に起因して異なる角度に向けられる。また、3つの放射線不透過性マーカ32のうち最も遠位のものがここで示されている。ここで見られるように、コイル要素30は、操作ワイヤ40が主管20を抜け出る側孔24より遠位に位置されている。カテーテル装置10と組み立て式に組み合わされた穿刺具44は、本発明の他の態様として、中隔穿刺組立体と考えられてもよい。
【0035】
図9図11は、操作機構がどのように穿刺具44を角度のついた方向に向けることができるかを示す。図9は、静脈壁70により囲まれる冠静脈72内部の主管20を示す。主管20は、その遠位先端が静脈壁70が穿刺される箇所近傍に配置されるように、配置される。また、主管20を冠静脈72内のこの標的位置に運ぶために使用されるガイドワイヤ42も示されている。操作ワイヤ40は弛緩状態にあり、主管20の遠位端部は直線様態を有する。
【0036】
図10において、ガイドワイヤ42(図示せず)は第1の管腔26(図示せず)から引き抜かれており、同一の第1の管腔26を経た穿刺具44の主管20への挿入に替えられている。穿刺処置を行うために、操作ワイヤ40は引張状態で後方に(近位に)引き戻される。操作ワイヤ40の遠位先端は側孔22において主管20に付けられているため、操作ワイヤ40をこのように後方に引くことで主管20は屈曲可能セグメント34において屈曲する。この屈曲に起因して、主管20のこの遠位先端は、より静脈壁70の方向に向かう角度を向く。主管20のこの屈曲様態に伴い、穿刺具44は、静脈壁70を通り心筋74内に穿刺するために必要な力を伴って前進させられる。この前進に起因して、屈曲可能セグメント34が対向壁70を押し付け、冠静脈72の対向壁70の膨出が起きることに留意されたい。
【0037】
図11において、操作ワイヤ40はさらに引き戻され張力をより強める。この引き戻しに起因して、屈曲可能部34は、主管20及び穿刺具44が心筋74に向かってより急な角度に向けられるように、さらに屈曲する。穿刺具44は、心筋74内に前進させられ、心室中隔に向かって心筋74内に入口通路を作成する。この入口通路は、後に挿入される電極リードにより使用される。
【0038】
図12は心臓の横断面における図11の状況を示し、カテーテル装置10の全体的な挿入処置を明示する。この図では、横断面図において右心室62及び左心室60が見える。挿入経路を確立するため、ガイドワイヤ(ここでは図示せず)が、心臓の右心房内に位置する冠静脈洞68内に挿入される。冠静脈洞68から、ガイドワイヤは大心臓静脈を通して進められる。カテーテル装置10は、ガイドワイヤの近位端を主管20の第1の管腔内に挿入することで、この経路に沿って従うように作製されている。その後カテーテル装置10は、主管20が大心臓静脈66内部に存在するように、ガイドワイヤに沿って前進させられる。したがって、カテーテル装置10は、冠静脈洞68内に挿入され大心臓静脈66を通る。カテーテル装置10は、主管20の遠位先端が心室中隔(IVS:interventricular septum)64に近接して配置されるように進められる。
【0039】
心室中隔64に対するこの手法において、主管20は中隔貫通静脈などの他の冠静脈を通り抜けてもよい。しかし、全ての人間が中隔貫通静脈を有しているわけではなく、本発明はこのような中隔貫通静脈の存在を必要としない。カテーテル装置10が標的部位に配置された状態で、次いでガイドワイヤは穿刺具44と交換される。主管20の屈曲可能部34は屈曲するように作製されている。穿刺具44は、角度をつけて心臓静脈66を穿刺し心室中隔64に向かって心筋内に貫通するように、前進させられる。
【0040】
穿刺具44は、心室中隔64への入口通路を心筋内に作成する。この入口通路が確立された状態で、穿刺具44は電極リード又はサークラージワイヤ(ここでは図示せず)と交換される。電極リードの場合、電極リードはその電極が心室中隔64内部に配置されるように進められる。したがって電極リードは心室中隔64に植設され、(例えば心臓ペーシング又は焼灼治療のために)作動されてもよい。
【0041】
図13は、穿刺処置の誘導を補助するために外部超音波探触子90が操作者によりどのように使用され得るかを示す。超音波探触子90は、主管20の遠位端部の撮像を実現する音波92を発する。超音波画像においては穿刺具44も視認可能であってもよい。主管20のC字形湾曲セグメント88もここで示されている。この湾曲セグメント88は、冠静脈洞68の自然の湾曲通路に順応している。これにより、偏向角度を心室中隔64の方に向けるべく屈曲セグメント34が外方向に湾曲するように主管20が正確に方向付けられることが確実になる。
【0042】
図14図16は、主管20の屈曲可能セグメント34が操作ワイヤ40の引き戻しによりどのように屈曲するように作製されているかを示す。図14において、操作ワイヤ40は、近位側孔24を経て主管20外に抜け出て、(張力が加えられていない)弛緩姿勢になっている。図15において、操作ワイヤ40は矢印96の方向に、後方に(近位に)引き戻されている。操作ワイヤ40の遠位先端は遠位側孔22で主管20に付けられているため、操作ワイヤ40をこのように後方に引くことで主管20は屈曲可能部34において屈曲する。図16において、操作ワイヤ40はさらに引き戻され張力をより強める。この引き戻しに起因して、屈曲可能部34はさらに屈曲し、主管20及び穿刺具44をより急な角度に向ける。
【0043】
図17は、カテーテル装置10を使用して植設され得る心臓ペースメーカ装置100の例を示す。ペースメーカ装置100は、電気パルス発生装置104及び電極リードを備える。電極リードは、リードワイヤ102及び遠位端に電極110を備える。また、上記遠位端には心筋内で固定を行うためのリングキャップ106及び爪108もある。
【0044】
図18A及び図18Bは、本発明のカテーテル装置120の他の例を示す。図18Aは、ハンドル組立体130、円錐形フード132、及び裏側にある穿刺具を挿入するためのポート134を備えるカテーテル装置120を示す。また、予備形成されたC字形湾曲セグメント124及び屈曲可能セグメント126を有する可撓性の主管122も示されている。図18Bは、主管122の遠位部の詳細図を示す。上述のように点A及び点Bにより画定される、予備形成されたC字形湾曲セグメント124が示されている。破線138は、C字形湾曲セグメント124の長さ(すなわち、C字形湾曲セグメント124と重ねたときの点Aから点Bまでの距離)を表す。主管122の遠位先端128には、穿刺具(図示せず)が抜け出る出口孔136がある。
【0045】
図19は、可撓性の主管140の遠位部がどのように成形され得るかについて他の例を示す。ここで、主管140は、C字形湾曲の代わりにV字形湾曲142を有している。このV字形湾曲は頂点144を有している。このV字形湾曲142は、C字形湾曲に関して上述されたものと同一の寸法測定値により画定されてもよい。また、主管140の遠位先端148、及び穿刺具(図示せず)が抜け出る出口孔146も示されている。
【0046】
[実験]
実験用カテーテル装置の試作品を10頭のブタ動物で試験した。鞘を入口静脈(頚静脈、鎖骨下静脈、又は大腿静脈)に挿入し、処置を行った。この鞘を通して第1のガイドワイヤを挿入し、冠静脈洞内に移動させた。このガイドワイヤ経路に沿って、バルーン先端誘導カテーテルを心臓内及び冠静脈洞内に導入した。バルーンを冠静脈洞と係合して封止を形成し、圧力下で放射線不透過性造影剤を注入してX線透視画像(すなわち、加圧静脈造影図)を得た。この加圧静脈造影図により、被験振動動物に中隔貫通静脈が存在するか否かを確認した。
【0047】
第1のガイドワイヤを、実験用カテーテル装置を導入するためのより細い第2のガイドワイヤに交換した。このより細いガイドワイヤを大心臓静脈内に進めた。カテーテル装置をこのガイドワイヤに沿って大心臓静脈内に導入し、中隔心筋と係合させるために好適な場所及びベクトル方向に配置した。このとき、カテーテル装置の遠位端を中隔心筋に向かう角度に屈曲した。
【0048】
第2のガイドワイヤを、穿刺ワイヤとして機能するためのより剛性のある第3のガイドワイヤに交換した。穿刺ワイヤを前方に押して、大心臓静脈の壁を直接穿刺し、中隔に向かって心筋に入れた。静脈壁を通し心筋内に穿刺ワイヤを押し入れるために必要な力の量を、プッシュプルゲージを使用して計測した。静脈壁を貫通させるために0.45N(ニュートン)の力が必要だった。心筋内部では、心筋組織を押し進むためにより小さな0.04Nの力が必要だった。
【0049】
X線透視による誘導によって、穿刺ワイヤを心室中隔内の標的部位にさらに進めた。超音波心エコー法及びX線透視により、穿刺ワイヤが所望の位置にあることを確認した。この穿刺処置を10頭全てのブタ動物へ行うことに成功した。
【0050】
処置実験が完了した後、目視による病理及び病理組織検査のために心臓を摘出した。目視検査において、血管及び心筋壁に重大な組織的損傷はなかった。穿刺部位周辺に血腫はあったが、他の領域への血腫の拡散又は深刻な損傷はなかった。ガイドワイヤが心筋に入った心外膜においては出血はなかった。顕微鏡病理組織検査では、心筋の損傷は認められなかった。心筋及び心外膜においてはいくつかの出血巣があった。しかし、虚血性の損傷又は壊死はなかった。
【0051】
本明細書で述べられる説明及び例は、単に本発明を例示することが意図され、限定することは意図されていない。本発明の開示される態様及び実施形態の各々は、個別に、又は本発明の他の態様、実施形態及び変形形態と組み合わせて、検討されてもよい。加えて、別段に明記されない限り、本発明の方法のステップは、任意の特定の実行順序に限られない。本発明の精神及び要旨を組み込んだ開示されている実施形態の修正形態が当業者に想到されてもよく、そのような修正形態は本発明の範囲内にある。
【0052】
本明細書における単語「又は(or)」のいかなる使用も、文脈が明らかに別段の指示をしていない限り、包括的であることが意図され、「及び/又は(and/or)」という表現と等価である。したがって、例えば、「A又はB(A or B)」という表現は、A、又はB、又はA及びBの両方であることを意味する。同様に、例えば、「A、B、又はC(A, B, or C)」という表現は、A、又はB、又はC、又はそれらの任意の組み合わせであることを意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
【国際調査報告】