(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】誘導式エネルギー伝送方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20240614BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20240614BHJP
H02P 25/064 20160101ALI20240614BHJP
【FI】
H02J50/12
H01F38/14
H02P25/064
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023575550
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022065316
(87)【国際公開番号】W WO2022258566
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518184708
【氏名又は名称】ベーウントエル・インダストリアル・オートメイション・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】クラインドル・アンドレアス
【テーマコード(参考)】
5H540
【Fターム(参考)】
5H540AA01
5H540BA01
(57)【要約】
一次部分Iと二次部分IIの間の誘導式エネルギー伝送方法であって、二次部分IIに配置された受信コイルL2に交流電圧uiを誘導する第一の交番磁界を発生させる一次電流iSが、第一の部分Iに配置された送信コイルL1に投入され、この交流電圧が、二次部分IIに二次電流iVを生じさせ、それにより受信コイルL2と接続された少なくとも一つの消費体Vに対して非補償の有効電力PNを含む電力フローを生じさせる方法を改善するために、補償ユニットKによって、第一の交番磁界に重なり合うとともに、送信コイルL1に補償電圧uKを誘導する第二の交番磁界を発生させる補償電流iKが、二次側のコイルLKに投入されると規定される。この補償電圧uKによって、伝送される有効電力PRが向上するように、送信コイルL1を介して降下する一次電圧uL1と送信コイルL1を通って流れる一次電流iSの間の位相シフトが変更される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次部分(I)と二次部分(II)の間の誘導式エネルギー伝送方法であって、エネルギー伝送のための第一の交番磁界を発生させる一次電流(i
S)が、供給ユニット(S)から第一の部分(I)に配置された送信コイル(L
1)に投入され、それによって、二次部分(II)に配置された受信コイル(L
2)に交流電圧(u
i)が誘導され、この交流電圧が、二次部分(II)に二次電流(i
V)を生じさせる、そのため受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)に対して非補償の有効電力(P
N)を含む電力フローを生じさせる方法において、
二次部分(II)に配置された補償ユニット(K)によって、二次側の補償電流(i
K)を二次側のコイル(L
K)に投入することと、
二次側の補償電流(i
K)によって、この二次側のコイル(L
K)において、第二の交番磁界を発生させ、この交番磁界が、エネルギー伝送のための第一の交番磁界に重なり合って、送信コイル(L
1)に一次側の補償電圧(u
K)を誘導することと、
この送信コイル(L
1)に誘導された一次側の補償電圧(u
K)によって、送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトが変更されて、この位相シフトの変更後に、その結果得られる一次部分(I)から受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)に伝送される出力有効電力(P
R)が、位相シフトを変更しない場合の非補償の有効電力(P
N)と比べて向上されることと、
一次部分(I)に配置された送信コイル(L
1)には、送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトを変化させる一次側の補償電流が投入されず、この補償電流は、送信コイル(L
1)に対して直列に、送信コイル(L
1)と供給ユニット(S)の間に接続された電気貯蔵素子から供給されることと、を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記の送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトが、二次側の補償電流(i
K)により引き起こされる、送信コイル(L
1)に誘導される一次側の補償電圧(u
K)によってのみ変更されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記の第一の交番磁界を発生させる一次電流(i
S)に追加して、二次部分(l1)に作用する推進力(F
V)を発生させる駆動電流が送信コイル(L
1)に投入されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、
前記の駆動電流によって、直流が送信コイル(L
1)に投入されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
前記の送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)が計測されて、補償ユニット(K)に送られることと、
これらの送られて来た一次電圧(u
L1)と一次電流(i
S)のデータから、一次電圧(u
L1)と一次電流(i
S)の間の位相シフトが特定されることと、
この一次電圧(u
L1)と一次電流(i
S)の間の位相シフトに基づき、一次電圧(u
L1)と一次電流(i
S)の間の位相シフトをゼロに近付けるか、或いは180°に近付けるように、二次側の補償電流(i
K)が変更されることと、を特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、
前記の補償ユニット(K)から受信コイル(L
2)に投入される二次側の補償電流(i
K)が、送信コイル(L
1)と受信コイル(L
2)の間の伝達率の変化に適合され、この変化が、特に、送信コイル(L
1)、受信コイル(L
2)、供給ユニット(S)又は少なくとも一つの消費体(V)の劣化、温度の影響又は消耗及び/又は一次部分(I)と二次部分(II)の間の相対位置の変化によって引き起こされることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、
前記の供給ユニット(S)から一次部分(I)に配置された送信コイル(L
1)に投入される一次電流(i
S)の周波数が、送信コイル(L
1)、受信コイル(L
2)、補償ユニット(K)及び少なくとも一つの消費体(V)により形成される共振可能な電気回路に出現する共振周波数に追従されることを特徴とする方法。
【請求項8】
一次部分(I)と二次部分(II)を備えた誘導式エネルギー伝送装置であって、エネルギー伝送のための第一の交番磁界を発生させる一次電流(i
S)を第一の部分(I)に配置された送信コイル(L
1)に投入するための供給ユニット(S)が一次部分(I)に配備され、受信コイル(L
2)と、この受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)とが二次部分(II)に配置され、このエネルギー伝送のための第一の交番磁界によって、受信コイル(L
2)に交流電圧(u
i)が誘導され、この交流電圧が、二次部分(II)に交流(i
V)を生じさせる、そのため受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)に対して非補償の有効電力(P
N)を含む電力フローを生じさせる装置において、
二次部分(II)には、少なくとも一つの補償ユニット(K)が配置され、この補償ユニットは、二次側の補償電流(i
K)を二次側のコイル(L
K)に投入し、それにより第二の交番磁界を発生させるように構成され、この交番磁界が、エネルギー伝送のための第一の交番磁界に重なり合うとともに、送信コイル(L
1)に一次側の補償電圧(u
K)を誘導し、この送信コイル(L
1)に誘導された一次側の補償電圧(u
K)によって、送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトが変更されて、この送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトの変更後に、その結果得られる一次部分(I)から受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)に伝送される出力有効電力(P
R)が、位相シフトを変更しない場合の非補償の有効電力(P
N)と比べて向上されることと、
一次部分(I)では、送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトを変化させる一次側の補償電流を送信コイル(L
1)に投入するために、送信コイル(L
1)に対して直列に接続された電気貯蔵素子が、送信コイル(L
1)と供給ユニット(S)の間に配備されていないことと、を特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、
前記の一次部分(I)と二次部分(II)が、運搬システム(2)、有利には、リニアモーターシステム、平面モーターシステム又は磁石浮遊式軌道の一部であることと、
前記の一次部分(I)が、運搬システム(2)の固定部分に相当し、前記の二次部分(II)が、運搬システム(2)の固定部分に対して相対的に動く部分に相当することと、を特徴とする装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の装置において、
前記の少なくとも一つの補償ユニット(K)が、少なくとも一つの電気的に変更可能なコンデンサー、少なくとも一つの電気的に変更可能なコイル及び少なくとも一つの電気的に変更可能なコンデンサーと少なくとも一つの電気的に変更可能なコイルの接続回路の中の一つ以上であることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次部分と二次部分の間において誘導方式によりエネルギーを伝送する方法であって、エネルギー伝送のための第一の交番磁界を発生させる一次電流が、供給ユニットから一次部分に配置された送信コイルに投入され、それによって、二次部分に配置された受信コイルに交流電圧が誘導されて、この交流電圧が、二次部分に二次電流を生じさせ、それにより受信コイルと接続された少なくとも一つの消費体に対して非補償の有効電力を含む電力フローを生じさせる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式エネルギー伝送方法は、多数の技術用途において重要な役割を果たしている。電気自動車用の充電システム及び可動コンポーネントに電気エネルギーを供給しなければならないリニアモーターシステム又は平面モーターシステムの形の運搬システムは、それに関する例の一部に過ぎない。導電式エネルギー伝送システムと比べた、その利点としては、特に、多くの場合にケーブルとプラグを省くことにより可能となる実現形態が時によりコンパクトになること、それに伴って堅牢性が向上すること、並びに消耗部分の削減により寿命がしばしば延びることが挙げられる。非接触式エネルギー伝送システムは大分前から知られているにも関わらず、特に、より高い効率とより低い損失に対する恒常的な要求が新しい技術的な問題を提起し続けている。
【0003】
特に、運搬システムの場合に大きな意味を持つ、それに関連した重要な設定課題は、供給の限界と伝送の限界を考慮して効率的で損失の少ない非接触式エネルギー伝送を実現することである。その場合、供給の限界と伝送の限界は、多くの場合に、特に、それらがエネルギー伝送システムに電力を供給する供給ユニットに在る場合に、パワーエレクトロニクス機器の物理的な限界によって起こる。それに関して、物理的な限界の例としては、特に、中間回路電圧の限界とそれによる供給電圧の限界、多くの場合に熱負荷能力及び表皮効果や近接効果などの電磁気的な効果の限界による電流の限界が挙げられる。供給電圧の限界を許容電流の限界だけと組み合わせた直接的な帰結は、利用可能な(供給)電力の限界であり、それは、供給ユニットからエネルギー供給システムへの電気エネルギーの出力を過敏に悪化させる可能性がある。
【0004】
従来技術では、前記の設定課題を解決するために、多くの場合に「共振結合」方式に頼っている。その場合、誘導式エネルギー伝送のケースでは、一般的に配備されている送信コイルと受信コイルに、コンデンサーの形の容量式エネルギー貯蔵器が繋がれている。一方で、そのように送信コイル及び受信コイルをコンデンサーと接続することから共振回路が生じ、他方で、共振回路の結合から、全体として共振可能な電気回路が生じる。ここで、共振結合の一般的な目的は、共振可能な電気回路の共振周波数に出来る限り等しくなるように、送信コイルに加える供給電圧のしばしば励起周波数と呼ばれる周波数を選定することである。それによって、特に、送信コイルと受信コイルの間の磁気的な結合が向上され、それにより、多くの場合に効率的で損失の少ないエネルギー伝送を実現することができる。
【0005】
しかし、例えば、リニアモーターシステム、平面モーターシステム又は磁石浮遊式軌道の形の前述した運搬システムのケースでは、特に、エネルギー伝送に関与するコンポーネントの間の相対的な動きが、動作中に起こり得るだけでなく、それどころか大抵は一般的であるとの状況によって、共振結合の実現がしばしば著しく難しくなる。その場合、そのような相対的な動きが多くの場合にエネルギー伝送システムの共振周波数に大きく影響する。共振結合が典型的には励起周波数と共振周波数の間の精密で高精度の同調を要求するとの事実のために、多くの場合に共振周波数のシフトが最終的に伝送されるエネルギーの量に極めて不利に作用する可能性がある。
【0006】
それに関連して、運搬システムの固定的なコンポーネントが、しばしば「一次部分」と呼ばれ、それに対して、一次部分に対して相対的に動く運搬システムのコンポーネントに関しては「二次部分」との用語が一般的である。その場合、特に、リニアモーター技術において、動く二次部分には、電気コンポーネント及び/又は電子コンポーネントが益々配置されて来ており、それらのコンポーネントに対して、相応の電気エネルギー供給部を配備しなければならない。一方で、二次部分の所及び中のバッテリーが多くの場合に望ましくなく、他方で、電力供給のための導電式エネルギー伝送がしばしば実現可能でないので、正にリニアモーターシステムと平面モーターシステムでは、一次部分と二次部分の間の起こり得る相対的な動きによって条件が難しくなるにも関わらず、特に、損失が少なく効率的に行われる非接触式エネルギー伝送に関するテーマが重要になっている。周知の従来技術も、そのような状況を反映している。
【0007】
そのように、特許文献1は、リニアモーターに関して、固定的な一次部分からそれに対して相対的に動く二次部分への誘導式エネルギー伝送を記載している。二次部分でエネルギーを受信する回路が、最大限のエネルギーを結合するように設定されることに言及しており、そこでは、その設定が、具体的に、例えば、励起周波数と共振周波数を場合によっては同調させることに関して、何を意味するのかが明らかにされていない。
【0008】
それに対して、特許文献2と3は、同じくリニアモーターに関して、静止している一次部分からそれに対して相対的に動く二次部分への容量式エネルギー伝送を開示しており、そのために、一次部分も二次部分も電極プレートを備えている。両方の文献では、それらの電極プレートは、一次部分と二次部分の間で電界を発生させる役割を果たし、それによって所望のエネルギー伝送を行っている。特許文献2は、特許文献1と同様に、エネルギー伝送に関与する電気コンポーネントを同調させて、関与する電気部品により形成される電気回路の最小限のインピーダンスを実現することを記載しているが、そこでも、その設定を実現するための詳細を提示していない。
【0009】
これらの引用文献に開示された方式は、実際に実現する際に複数の欠点を有する。それに関連して、容量式エネルギー伝送のケースでは、特に、追加の電極プレートを組み込む必要があることが問題であると思われる。その場合、多くのケースにおいて、それに伴う追加のハードウェアの負担は、正当化できる形では実現できない。それ以外に、特に、しばしば電磁気的な擾乱が、容量式エネルギー伝送システムに伴う望ましくない現象であり、その現象は、多くの場合にそのシステムの採用を難しくし、それどころか部分的に妨げる。
そのような理由から、本発明は、結局のところ、誘導式エネルギー伝送システムを目指している。
【0010】
周知の容量式エネルギー伝送と誘導式エネルギー伝送の両方の方法の別の欠点は、運搬システムの場合に前述した通り、供給する側の一次部分と供給される側の二次部分の間で一般的に相対的な動きが起こるとの状況から生じる。それによって、エネルギー伝送システムの構成部分の間の伝達率と結合率が変化し、そのことが、特に、エネルギー伝送システムの電気的な共振周波数のシフトを引き起こす可能性がある。それに関連して、非接触式エネルギー伝送が共振結合に基づく場合、明白な理由から、励起周波数を場合によっては変化する共振周波数に適合させなければならない。そのような適合は、従来技術では開示されていない。一次部分と二次部分の間の相対的な動き以外に、電気部品の発熱、劣化、消耗及び非直線的な特性も伝達率の変化を引き起こす可能性があり、そのことが、好適な適合メカニズムの必要性を一層高めている。
【0011】
それに関連して従来技術において考慮されていない別の重要な問題は、伝送されるエネルギー又は電力の種類に関する。明白な理由から、伝送される有効電力だけが、運搬システムの二次部分に配置された消費体への電力供給に持続的に寄与する。それに対して、誘導式エネルギー伝送の間に常に一緒に伝送される無効電力は、周知の通り、専らエネルギー伝送システム内に配備されたエネルギー貯蔵器の間で受け渡しされ、それ故消費体への利用可能な電力供給に寄与しない。従って、効率的な誘導式エネルギー伝送の主眼は、主に伝送される有効電力に置かれており、それは、従来技術では、多くの場合に十分な程度では行われていない。
【0012】
リニアモーター及び平面モーターでは、前記の問題は、実際にしばしば誘導式エネルギー伝送のために別個の送信コイルを組み込むことに伴う部品とコストの追加負担を出来る限り回避するとの要求によって増幅される。そのため、しばしば一次部分と二次部分の間で推進力を作り出すために既に存在する駆動コイルが、誘導式エネルギー伝送のための送信コイルとしても更に用いられている。しかし、それらのコイルは、典型的には、特に、誘導式エネルギー伝送の別の用途と比べて大きな空隙によって引き起こされる大きな漏れインダクタンスを有する。それに関連して、それぞれ別のコイルに貫流しない、それ故、送信コイルと受信コイルの自己誘導作用だけを有する磁束を発生させる成分が漏れインダクタンスと呼ばれる。それに対して、十分に知られている通り、所謂主インダクタンスは、両方のコイルを貫流する磁束を発生させ、それにより自己誘導作用と相互誘導作用の両方を有し、そのように誘導式エネルギー伝送に必要な一次部分と二次部分の結合を実現する両方のコイルの成分である。本エネルギー伝送に関して、複数の理由から、大きな漏れインダクタンスは不利である。特に、それは、発生する無効電力を大きくし、そのことは、正に限定された供給電圧又は供給電力しか使用できない場合に、伝送可能な有効電力を直接的に減少させる。
【0013】
送信コイルにより、エネルギーを伝送すると同時に、推進力を発生させる場合、それは、一般的に推進力を作り出すために駆動コイルに投入される、そのため駆動電流とも呼ばれる低い周波数の電流をそれと比べて高い周波数の、所望のエネルギー伝送を実現する電流に重ね合わせることによって行われる。そのような場合に利用可能な供給電圧が限定されており、そのような限定された供給電圧の大部分が、力を発生させる電流を作り出すために既に使用されている場合、残った貯蔵電圧を有効電力を伝送するために最適に利用しなければならないことは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7958830号明細書
【特許文献2】欧州特許登録第2793356号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第2903407号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のことから、本発明の課題は、運搬システムの一次部分とそれに対して相対的に動く二次部分の間の非接触式エネルギー伝送、この場合、特に、誘導式エネルギー伝送を改善することである。この場合、追加の小さなハードウェア負担だけを生じさせるとともに、動作時に変化する伝達率への頑強で確実な適合を可能にすべきあり、特に、伝送される有効電力を最適化すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、本発明に基づく独立請求項の特徴によって解決される。この場合、一次部分と二次部分の間の誘導式エネルギー伝送システムであって、供給ユニットを用いて、一次部分に配置された送信コイルに一次電流を投入し、この一次電流が、エネルギー伝送のための第一の交番磁界を生じさせ、この交番磁界が、二次部分に配置された受信コイルに交流電圧を誘導し、それによって、受信コイルと接続された少なくとも一つの消費体への電流フローを生じさせ、それにより第一の電力フローを生じさせるシステムを出発点とする。この第一の電力フローに関して、このフローは、以下で説明する本発明による方法を適用しなくとも発生させられるが、この場合には、所謂公称有効電力だけを伝送すると認められる。以下において、そのような公称有効電力を「非補償の」有効電力とも称する。
【0017】
本発明は、主として、二次部分に配置された補償ユニットによって、二次側の受信コイルに、或いは場合によっては二次部分に配置された別のコイルに二次側の補償電流を投入するシステムを規定する。二次側で補償電流を投入する目的は、一次部分の送信コイルに補償電圧を誘導する第二の交番磁界を発生させて、この補償電圧が、送信コイルを介して降下する電圧全体と送信コイルを通って流れる電流の間の位相シフトを変化させることである。この場合、このような位相シフトの変更は、本発明に基づき、一次部分から二次部分へのエネルギー伝送の間に伝送される有効電力が向上されるように行われる。このアプローチは、二次側に在る消費体への電力供給のためには、特に、それに伝送される有効電力が重要であるとの状況を考慮している。
【0018】
本発明では、送信コイルを介して降下する一次電圧と送信コイルを通って流れる一次電流の間の位相シフトを変化させる一次側の補償電流が、一次部分に配置された送信コイルに投入されるのではなく、この補償電流が、送信コイルに対して直列に供給ユニットと送信コイルの間に接続された電気貯蔵素子から提供されると規定される。有利には、コンデンサーが、補償電流を提供する電気貯蔵素子として用いられる。しかし、送信コイルに対して直列に接続されたコンデンサーは、送信コイルへの直流の投入を阻止する。この理由から、送信コイルに対して直列に接続された貯蔵素子を省くことは、送信コイルにおいて、直流電流などの直流の電気変量を設定することをも可能にする。
【0019】
特に有利には、送信コイルを介して降下する一次電圧と送信コイルを通って流れる一次電流の間の位相シフトが、二次側の補償電流によって引き起こされる、送信コイルに誘導される一次側の補償電圧によってのみ、即ち、専らその電圧によって変更される。この場合、一次側では、補償電流を提供する電気貯蔵素子が完全に省かれ、このことは、送信コイルに対して直列に接続された貯蔵素子を省くことと、それに対して並列に接続された貯蔵素子を省くこととの両方を共に包含する。
【0020】
供給ユニットから送信コイルに直流を供給する手段は、特に、本エネルギー伝送システムをリニアモーターシステム、平面モーターシステム又は磁石浮遊軌道などの運搬システムにおいて使用する際に決定的に重要である。その場合、送信コイルは、多くの場合に駆動力を発生させるためにも使用され、多くのケースでは、そのために、送信コイルに直流も投入される。
【0021】
有利には、一次側の補償電流を提供するために一次部分に配備される更なる貯蔵素子が完全に省かれる。この場合、例えば、コンデンサー又はそれ以外の貯蔵素子などの送信コイルに対して直列に接続された貯蔵素子も、それに対して並列に接続された貯蔵素子も配備されない。詳しくは、送信コイルに対して並列に接続された貯蔵素子は、本エネルギー伝送システムを上記の運搬システムの中の一つにおいて使用することを原則的には排除しない。しかし、特に、リニアモーターシステムでは、多数の送信コイルが配備されており、その結果、そのようなケースでは、全体として多数の貯蔵素子を配備しなければならないので、多くのケースにおいて、送信コイルに対して並列に接続された貯蔵素子を使用することは大きな負担を伴う。
【0022】
誘導式エネルギー伝送の間に同じく伝送される無効電力は、周知の通り、電気貯蔵素子の間で受け渡しされ、それ故二次側の消費体への電力供給に定常的に寄与しない。本発明は、この状況を考慮しており、そのため前述した通り伝送される有効電力に主眼を置いている。ここでは、伝送される有効電力を向上させるためには、特に、送信コイルを介して降下する電圧と送信コイルを通って流れる電流の間の位相状態が重要であることが分かっている。前記の位相状態がゼロ又は±180°となった場合に、伝送される有効電力の最大が達成される。二次側の補償電流を投入することによって、正しくこの位相状態を、補償電流を投入しない場合の動作と比べて、伝送される有効電力を向上させるように変更する。この場合、それどころか全体として伝送される皮相電力が、本発明による補償電流の投入を行わない場合の誘導式エネルギー伝送の動作と比べて低下するとの(逆説的な)ケースが起こる可能性がある。この場合、共振結合は、明示的には追求されず、特に、本発明による方法を用いるために必要な前提条件ではない。
【0023】
言い換えると、二次側が、主インダクタンスをリロードする際に、エネルギー伝送システムの主インダクタンスに追加的に誘導される電圧によって一次側を支援する。それによって、供給ユニットにおいて、伝送される有効電力を向上させるために使用される貯蔵電圧が自由になる。この自由になった、伝送される有効電力を向上させるために使用される貯蔵電圧が、更なる結果として既に流れている電流と同相になるので、送信コイルを介して降下する電圧全体と送信コイルを通って流れる電流の間の位相差が上述した手法により変化する。
【0024】
これに関連して、二次側の補償電流により投入される電力自体は大抵は容量性の無効電力であることを補足しておきたい。この場合、本発明に関して、この大抵は容量性の無効電力を意図的に二次側から一次側に伝送することが決定的に重要である。それによって、多くのケースでは、本発明による前記の位相関係の変化以外に、主インダクタンスに生じる無効電力と、多くの場合に一次側の漏れインダクタンスにも生じる無効電力とが最早専ら供給ユニットによって提供する必要がなくなることが達成される。この場合、一次側の無効電力を少なくとも部分的に二次側で補償する有利な副次効果が、多くの場合にエネルギー伝送の更なる改善に寄与することができる。
【0025】
この場合、有利には、主インダクタンスの無効電力の少なくとも50%が二次側で、即ち、二次部分から提供される。しかし、有利には、主インダクタンスの無効電力の少なくとも75%を二次部分から提供するか、或いは主インダクタンスの無効電力の少なくとも90%を二次部分から提供することもできる。極めて有利には、主インダクタンスの無効電力全体が二次部分から提供される。
【0026】
この場合、有利には、一次側の漏れインダクタンスの無効電力の20%以内が常に二次側で、即ち、二次部分から提供される。しかし、一次側の漏れインダクタンスの無効電力の15%以内を二次部分から提供することもできる、或いは一次側の漏れインダクタンスの無効電力の10%以内を二次部分から提供することもできる。それにより、本発明の範囲内において、典型的には、主インダクタンスの無効電力の補償される部分が、一次側の漏れインダクタンスの無効電力の補償される部分よりも常に著しく大きくなる。
【0027】
それにより、本発明の範囲内において、一次側の無効電力補償を省くことが可能となる。当然のことながら、例えば、主インダクタンスの無効電力を完全に補償することを追求しない場合には、二次部分により主インダクタンスの無効電力が完全に補償されなくとも、一次側の無効電力補償を省くことができる。それにより、有利には、一次部分において、一次側の送信コイルに対して並列又は直列に接続されたコンデンサーなどの無効電力を補償するための部品を省くことができる。
【0028】
上述した工程を実現するために、前述した通り、二次側の補償ユニットが用いられ、このユニットは、二次側の補償電流を二次側に配備された受信コイルに引き渡すか、或いはその受信コイルから受け取る。この場合、そのような補償ユニットは、様々な形式で、例えば、それ自体がこれまた事前に誘導方式で伝送されるエネルギーを供給される調節可能な交流電源の形で、或いは少なくとも部分的に容量を変更可能なコンデンサーによって実現することができる。これに関連して、特に、複数の異なる技術の利点を統合するために、二次側の補償電流を投入する異なるアプローチを組み合せることも考えられる。ここで、本発明において、補償ユニットが二次部分だけに配備されるにも関わらず、それでも、特に、一次側の変量の間の位相関係の精密な修正が可能であることは注目に値する。
【0029】
専ら二次部分に配備される補償ユニットを使用することは、特に、長固定子リニアモーターにおいて効率的なエネルギー伝送を実現する際に著しい利点を示す。そのような駆動システムは、典型的には、一次部分に配備された多数の駆動コイルを特徴とする。実際には、これらの駆動コイルは、推進力を発生させるために、しばしば同時に誘導式エネルギー伝送用の送信コイルとして用いられる。一般的に、これは、推進力を発生させるための電流をその電流と比べて高い周波数のエネルギー伝送用の電流に重ね合わせることによって行われる。そのようなシステムでは、単一の補償ユニットだけが二次側に必要であり、前述したコンデンサーの形での誘導式共振結合の枠組みにおいて必要であるように、一次側に配備された多くの駆動コイルの各々に補償ユニットを繋ぐことが必要がない時に、多くの場合にハードウェア、コストおよび構造の大きな負担を回避することができる。
【0030】
本発明による方式の別の利点は、この方式が、例えば、一次部分と二次部分の間の相対的な動きのために変化する伝達率に対する適合能力を多くの従来方式と比べて改善されていることである。この利点は、一方で、例えば、補償ユニットから引き渡される補償電流の周波数、位相状態及び振幅の中の一つ以上を変化させることによって、二次側の補償電流だけを適合させれば良いとの状況から得られる。特に、リニアモーターシステムでは、大きく拡大された一次部分における部品を最適化する必要性が、実際に実現する際に困難を生じさせる。他方で、実際に採用する際に、場合によっては、速く変化する共振周波数に励起周波数を高感度で同調させることよりも著しく確実に、一次部分の二つの電気変量の間の位相シフトの修正を実行できることが分かった。
【0031】
ここで、本発明により解決される課題は、確かにその起源が運搬システムの領域に、この場合、特に、リニアモーターシステム及び平面モーターシステムの領域に存在するが、本発明による方法は、誘導式エネルギー伝送システムにおいて一般的に適用できることを補足しておきたい。
【0032】
以下において、本発明の有利な実施例を模式的に図示した、本発明を限定するものではない
図1~6を参照して、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図4】考察する誘導式エネルギー伝送システムを簡略化して抽象化した模式図
【
図6】長固定子リニアモーターシステムにおいて本発明による誘導式エネルギー伝送システムを実現した模式図
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、誘導式エネルギー伝送システム1の基本的な枠組みを図示している。この場合、交流電圧u
Sが、供給ユニットSから一次部分Iに在るエネルギー伝送システム1の部分に引き渡される。この場合、特に、この交流電圧u
Sは、典型的には、特に、電力供給に用いられているパワーエレクトロニクス機器の物理的な限界に関して冒頭で述べた解説に対応して、大きさを制限されており、それ故エネルギー伝送の間に任意に向上することができないとの状況が重要である。以下において、この交流電圧u
Sの周波数を「励起周波数」とも称する。
【0035】
次に、この供給電圧u
Sは、一次部分Iに配備されたオーム抵抗全体を総合して表す一次側のオーム抵抗R
1と、一次側の送信コイルL
1とを介して、交流電流の形の一次電流i
Sを生じさせる。このオーム抵抗R
1は、
図1に図示された実施構成では、送信コイルL
1と供給ユニットSの間に接続されており、その結果、これらのオーム抵抗R
1と送信コイルL
1が直列回路を形成している。
【0036】
この場合、供給電圧uSの励起周波数は、一次電流iSの周波数を定める。そのため、一次電流iSの周波数は、励起周波数と一致する供給電圧uSの周波数に等しい。
【0037】
図1に図示された本発明の実施形態では、一次側のオーム抵抗R
1が供給ユニットSと送信コイルL
1の間に配備されている。この場合、一次側のオーム抵抗R
1が送信コイルL
1に対して直列に配置されている。その他の点に関して、一次側Iでは、送信コイルL
1と供給ユニットSの間に、コンデンサーなどの別の電気貯蔵素子が配備されておらず、そのため、特に、オーム抵抗R
1と同様に、送信コイルL
1に対して直列に接続された別の電気貯蔵素子が配備されていない。それにより、オーム抵抗R
1だけが、供給ユニットSと送信コイルL
1の間に接続されているので、送信コイルL
1に直流を投入することも可能であり、このことは、特に、運搬システムに適用する際に決定的に重要である。
【0038】
更に次に、一次電圧uL1が一次コイルを介して降下する。一次部分Iと二次部分IIの間の磁気結合の改善及び/又はそれらの間の空隙の低減のために、任意選択として、鉄心E1を送信コイルL1に嵌め込むことができる。鉄心E1の考え得る実施構成は、特に、フェライト、粉末状のコアによって実現するか、或いは金属板構造によって実現することもでき、「鉄心」との用語の代わりに、「磁石コア」との用語も一般的である。二次部分IIにおける受信コイルL2の鉄心E2に関して、同じことを規定することができる。
【0039】
次の工程では、一次電流iSがエネルギー伝送のための第一の交番磁界を発生させることとなる。この第一の交番磁界は、送信コイルL1と受信コイルL2を通り抜ける時間的に変化する磁束Φの発生に寄与する。この場合、二つのコイルL1とL2は、空隙ΔLによって分離されている。そのように、誘導法則に基づき、受信コイルL2には、電圧ui=-N2・dΦ/dtが誘導され、この電圧が、これまたエネルギー伝送システム1の二次部分IIに存在する部分に二次電流iVを生じさせる。ここで、N2は、受信コイルL2の巻線数を表す。更に、二次電流iVは、R1と同様に二次部分のオーム抵抗を纏めて表す抵抗R2を通って少なくとも一つの消費体Vに流れて、電圧uVが、それを介して降下する。この場合、少なくとも一つの消費体Vは、多数の電子機器を代表する、例えば、通信ユニット、測定ユニット又は調節ユニットを代表するか、さもなければ伝送されたエネルギーを充填される蓄電器又はエネルギー貯蔵器を代表することができる。
【0040】
図示されたケースでは、本発明に基づく二次側の補償電流iKの投入は、補償ユニットKによって行われる。次に、二次側の補償電流iKは、有効電力を最適化するための第二の交番磁界を生じさせ、この交番磁界は、エネルギーを伝送するための第一の交番磁界に重なり合って、そのようにして交番磁界全体を得ることが実現される。この有効電力を最適化するための第二の交番磁界によって、以下で「一次側の補償電圧」uKと称する追加の交流電圧が送信コイルL1に誘導される。従って、送信コイルL1に誘導される一次側の補償電圧uKは、送信コイルL1を介して降下する一次電圧uL1全体の別の構成成分を表し、それにより、送信コイルL1を介して降下する一次電圧uL1と送信コイルL1を通って流れる一次電流iSの間の位相シフトに影響を及ぼす。この位相シフトが、本発明に基づき、結果として伝送される有効電力を向上させるように修正される。
【0041】
「伝送される有効電力の向上」との用語をより具体的に理解するために、先ずは「公称有効電力」又は「非補償の有効電力」PNとの用語を取り上げる。この場合、「非補償の有効電力PN」とは、本発明による補償電流iKを投入しない、誘導式エネルギー伝送システムの従来技術で周知の従来通りの動作の際に達成される有効電力を表現している。「公称有効電力」又は「非補償の有効電力」PNは、この理由から、補償を伴わない有効電力又は位相シフトが変更されない有効電力とも呼ばれる。本発明による方法が適用されて、本発明に基づき二次側の補償電流iKが受信コイルL2に投入されると、伝送される有効電力が、以下で「結果として得られる出力有効電力」PRと呼ばれる新たな有効電力として向上される。この場合、本発明では、結果として得られる出力有効電力PRは、本来伝送される非補償の有効電力PNを少なくとも10%~100%、有利には、100%~500%、特に有利には、500%~5,000%又はそれ以上向上させたものを表す。
【0042】
有利な実施構成において、補償ユニットKが、それ自体にエネルギーを供給しなければならない能動部品であるので、
図1には、消費体Vから補償ユニットKへの接続配線Yが破線を付けた形で図示されており、この配線は、場合によっては、補償ユニットKに電気を供給することを可能にする。しかし、補償ユニットKが、伝送されるエネルギーの分離と整流器Gの機能を同時に引き受けることも可能である。そのようなケースでは、消費体Vを補償ユニットKに直に繋ぐこともできる。このケースは、例えば、補償ユニットKが、整流器Gの機能を引き受けることもできる制御可能な交流電源を含む場合に起こり得る。
【0043】
補償ユニットKを具体的に実現するために、電子工学で周知の複数の方式に頼ることができる。補償ユニットKを実現する際に決定的に重要な判断基準は、位相、振幅及び周波数に関して適切な補償電流iKをエネルギー伝送システム1の回路の二次側の部分に引き渡すことができることである。この場合、より複雑に実現する変化形態は、制御可能な交流電源によって与えることができる。それに対して、負担がより軽い実現形態は、例えば、受信コイルL2に対して並列に接続された容量式貯蔵素子によって可能であり、その容量は、常に所望の二次側の補償電流iKを受け渡しするために動作中に適合される。
【0044】
図2には、これに関して実現するための二つの変化形態が図示されており、
図2aが、二つのスイッチT
1とT
2を用いて三つのコンデンサーCを接続する形態を図示している。そのように、スイッチの位置に応じて、異なる容量性抵抗が得られる。何れにせよ、可変容量を実現するために、一連の別の考え得るアプローチが存在する。それぞれ誘電体及び電極板に関して様々な材料に基づくことができるトリマーコンデンサー又は回転コンデンサーなどの機械氏可変コンデンサーと、容量ダイオードなどの電気式可変コンデンサーは、ここでは、単なる有利な例である。この場合、容量を変えられる有利な実施構成は、追加の容量性電流を供給され、そのようにして容量を変える、静電式固定コンデンサーなどの従来のコンデンサーによって実現される。
図2bには、コンデンサーに対して並列に接続された可変電源に基づき、これを実現する変化形態が図示されている。容量性貯蔵素子以外に、補償ユニットKを実現するための可変誘導式貯蔵素子も考えられる。その例は、特に、鉄心の位置決めが変更されるコイルであるか、或いはコンデンサーへの追加の容量性電流の投入と同様に、インダクタンスを変えるための追加の電圧が加えられるコイルである。
【0045】
或るケースでは、補償ユニットKにおいて、コンデンサーとコイルを互いに並列又は直列に接続するのが特に有利であることを証明できる。更に、補償ユニットKの考え得る実現形態には、特に、例えば、制御可能な交流電源の制御によって、特に、好適な補償電流iKの特定及び最終的に正しい投入を可能にするマイクロプロセッサベースのハードウェア、マイクロコントローラ及び集積回路(ASIC,FPGAなど)が含まれる。本ケースでは、この目的のために、例えば、アナログ演算増幅器回路に基づく、アナログ回路も補償ユニットKの構成要素として挙げられる。ここで、補償電流iKを受信コイルL2に直に投入する形態は確かに本発明の有利な実施構成であるが、この目的のためだけに二次部分IIに配備された別のコイルに補償電流iKを投入して、この別のコイルに基づき、本発明による第二の交番磁界を発生させることが同じく十分に可能である。
【0046】
図3には、消費体Vの考え得る具体的な実現形態が図示されている。この消費体では、整流器Gが、伝送されて来た交流変量u
V及びi
Vを直流変量u
G及びi
Gに整流して、これらの直流変量を最終的に二次部分IIに配備された一つ又は複数の電気負荷R
Lに供給することができる。多くのケースでは、消費体Vの前に、事前に電圧コントローラも更に接続されている。
【0047】
本発明の基本原理を詳しく説明するために、
図4では、この説明のために別の抽象化工程を採用して、
図1に図示された構造を大幅に簡略化して図示している。この場合、供給ユニットSと補償ユニットKが、電流源として図示されており、両方の構成要素に関して、電圧源を使用することもできる。以下の工程に関して、特に、供給ユニットから加えられる電流i
Sが変化しないか、或いは殆ど変化しないことが重要である。出来る限り単純に説明することを目的として、寄生素子、漏れ電流、正弦波状でない入力電圧などの実際に通常生じる影響を考慮することを省いている。しかし、以下の解説は、そのような影響の分だけ簡単に拡張することができ、従って、本発明を限定するものではないと理解すべきである。更に、送信コイルL
1と受信コイルL
2が同じ数の巻き数を有し、それにより伝達率を考慮する必要が無いと仮定する。以下の解説を伝達率にまで普遍化することは、当業者にとって些細なことである。二次側で投入される補償電流i
Kの影響を明らかにするために、それによって二次側Iに誘導される電圧u
Kが、独自の電圧源と共に送信コイルL
1に対して直列に図示されている。送信コイルL
1を介して降下する一次電圧が、新たにu
L1の符号を付与され、本発明による方法を適用しない場合に設定される一次電圧が、
【0048】
【0049】
の符号で表示されている。先ずは、二次側の補償電流iKが無く、周波数がfヘルツの変量が純粋な正弦形状である動作を出発点とすると、一次電流iSと一次電圧uL1に関して、普遍性を制限すること無く、次の式で記述することができ、
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
は、両方の変量の振幅を表し、角度φiとφuは、それらの位相状態を単位°で記述し、式Δφ=φu-φiは、互いの位相シフトを記述している。周知のとおり、Δφ=±90°が成り立つ時に、完全な無効電力が送信コイルL1から受信コイルL2に伝送される。それに対して、Δφ=0°又はΔφ=180°(後者は、Δφ=-180°と同じである)が成り立つ時に、伝送される電力が完全な有効電力となる。更に、二次側の補償電流iKによって誘導される一次側の補償電圧uKに関して、次の式
【0055】
【0056】
が成り立つことが考慮され、ここで、L12が、送信コイルL1と受信コイルL2の結合された相互インダクタンスを表し、補償電流iKの場合には、次の式で表され、
【0057】
【数7】
同じ周波数fの場合に、補償電圧u
Kに関しても、正弦形式の記述式が与えられ、特に、次の式として表される。
【0058】
【0059】
【数9】
と位相シフトφ
uKは、上記のu
Kとi
Kの間の関係式に応じて、振幅
【0060】
【数10】
と位相シフトφ
Kに依存する。この結果、ここで、送信コイルを介して降下する電圧全体に関して、
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【数14】
として記述することもできる。この場合、振幅
【0065】
【0066】
【0067】
と位相シフトφ
uKに直に依存し、そのため補償電流i
Kにも依存する。これに関して、補償電流i
Kによって、一方で結果として得られる一次電圧u
L1の位相状態φ
uLKを修正でき、他方でi
Sと一次電圧u
L1の間の位相関係Δφも修正できることが分かる。これによって、最終的に、如何なる程度の有効電力と如何なる程度の無効電力を伝送するのかに直に影響を及ぼすことができる。ここで、
図4に図示された状況が、本発明による方法の基本原理を示すために大幅に簡略化された図であることを改めて補足しておきたい。
【0068】
従って、補償ユニットKによって解決すべき制御課題の核心は、その投入によって、伝送される有効電力を最大化する二次側の補償電流iKを特定することとして公式化することができる。一般的に周波数が一次側の電圧uS又は一次側の電流iSによって既に与えられているので、この核心の課題を解決するために、有利には、二次側の補償電流iKの振幅と位相状態が適合される。
【0069】
二次側の補償電流iKの振幅と位相状態に関する好適な選定を行うために、様々な適合アルゴリズムに頼ることができ、例えば、所謂「最大電力点追従」に頼るか、或いはこの目的のためだけに構想されたコントローラ及び/又は(自律)学習メカニズムに頼ることもできる。二次側の補償電流iKの振幅又は位相状態の所定の選定又は変更によって、一次電流iSと一次電圧uL1の間の位相シフトの所望の変更が実際にも達成されているのかを管理するために、例えば、一次電流iSと一次電圧uL1の測定データから、それらの位相関係を計算することができる。
【0070】
補償ユニットKにおいて所要の二次側の補償電流iKを特定できるようにするために、関連する電気変量、特に、一次側の変量uL1及び/又はiS、さもなければui,uV又はiVなどの二次側の変量の測定データを補償ユニットKに供給することができる。この目的のために、有利には、二次側IIに、さもなければ一次側Iに、好適な測定センサーを配備して、その測定値を補償ユニットKに送ることができる。本発明による方法の有利な実施構成では、一次側の電圧uSと一次側の電流iSは、測定技術により検出されて、特に、本発明による方法を運搬システム2において実現する際に一次部分Iと二次部分IIの間の配線を回避するために、無線により、例えば、無線接続に基づき補償ユニットKに送られる。
【0071】
本発明による方法の特に有利な実現形態は、更に、一次側の電圧uSと一次側の電流iSを間接的に特定することによって得られ、この場合、例えば、二次側IIで検出された誘導電圧uiと二次側の電流iVの測定データから、オブザーバー又はフィルターを介入させて、一次側の電圧uSと一次側の電流iSを計算し、それにより、本発明による方法を実現するために、一次部分Iと二次部分IIの間の無線接続も、ケーブル配線も不要になる。
【0072】
別の有利な実施構成では、電圧u
S及び電流i
Sなどの一次側の電気変量を用いなくとも済ますことができる。それに代わって、
図3に図示されている通り、有利には、二次側IIに配置された整流器Gが発生する直流電圧u
Gを一次側の位相シフトの品質に関する尺度として用いることができる。このアプローチは、消費体Vに、そのため整流器Gに伝送される出力有効電力P
Rを向上するケースでは、多くの場合、整流器Gによって、より高い直流電圧u
gが整流されるとの知見に基づいている。その結果、より高い直流電圧u
gを有効電力の向上された伝送に関する尺度とすることができる、この場合でも、電圧u
gは、必ず直に測定しなければならないのではなく、場合によっては、同じくフィルター又はオブザーバーを用いて間接的に特定することができると言える。
【0073】
それに加えて、当然のことながら、二次部分IIで行われる二次側の補償電流iK又は補償ユニットKの適合に関わらず、入力電圧uSの励起周波数を更に適合させることも排除されない。これにより、更に、エネルギー伝送システム1で出現する電気共振周波数に励起周波数を適合させることができる。しかし、このアプローチでは、それに伴って生じる一次側の電気変量の変化によって、本発明の本来の目的に、即ち、一次側の変量である一次電圧uL1と一次電流iSの間の位相シフトの適合に悪い影響を及ぼさないことに配慮すべきである。
【0074】
しかし、本発明の範囲内において、エネルギー伝送システム1の電気共振周波数と異なる励起周波数、即ち、一次電流iSの周波数及び/又は供給電圧uSの周波数を選定することも有利であるとすることできる。この場合、一次電流iSの周波数は、一次電流iSの周波数の周波数値の少なくとも1%だけか、一次電流iSの周波数の周波数値の少なくとも5%だけか、一次電流iSの周波数の周波数値の少なくとも10%だけか、或いは一次電流iSの周波数の周波数値の少なくとも50%だけ、エネルギー伝送システム1の電気共振周波数と異なることができる。
【0075】
一般化して言うと、本発明の範囲内において、エネルギー伝送システム1の電気共振周波数と異なる周波数でエネルギー伝送システム1を動作させることが有利であるとすることができる。
【0076】
これに関して、本発明の複数の用途において、励起周波数が、そのため一次電流iSの周波数が、一次電流iSの周波数の値の1%以上か、3%以上か、或いは5%以上、エネルギー伝送システム1のゼロと異なる最低共振周波数と異なる場合に、一次側Iから二次側IIに伝送される最大有効電力が達成されることが確認された。これらのケースでは、エネルギー伝送システム1は、その共振周波数以外で、そのためその共振点以外で意識的に動かされる。
【0077】
この場合、有利には、エネルギー伝送システム1は、エネルギー伝送システム1の最低の電気共振周波数よりも、例えば、1%か、3%か、或いは5%だけ高い周波数で動かされる。
【0078】
冒頭で述べた通り、リニアモーターシステム又は平面モーターシステムなどの電磁式運搬システム2が、本発明による誘導式エネルギー伝送方法の有利な用途分野である。本発明を実現することにより、この用途で得られる特色を詳しく取り上げるために、先ずは、
図5が、一般的に運搬システム2の考え得る実現形態を図示している。この運搬システム2は、一定数の運搬セグメントTSk(この場合、kは、存在する全ての運搬セグメントTS1,TS2,TS3,...を代表する指数である)から構成され、見易くするとの理由から、例えば、その中の運搬セグメントTS1...TS7だけが表示されている。これらの運搬セグメントTSkは、異なる区間部分、例えば、直線、角度と半径が異なるカーブ、転轍機などを構成し、非常に柔軟に組み合わせて、運搬システム2の運搬区間を形成することができる。これにより、運搬セグメントTSkが一緒になって一つの運搬区間を構成し、この区間に沿って、運搬ユニットTn(この場合、nは、存在する全ての運搬ユニットT1,T2,T3,T4,...を代表する指数である)を動かすことができる。このモジュール式構造は、運搬システム2を非常に柔軟に構成することを可能にする。この場合、運搬セグメントTSkは、通常(
図5には図示されていない)固定位置の支持構造6に配置されている。
【0079】
本ケースでは、運搬システム2が長固定子リニアモーターとして実現されており、固定子セグメントTSkが、周知の手法で、それぞれ長固定子リニアモーターの長固定子の一部を構成している。従って、固定子を構成する(
図5には、見易くするとの理由から、運搬セグメントTS1,TS2,TS3,TS4,TS5,TS6,TS7に対してのみ表示されている)多数の固定位置の電気駆動コイル7,8が、周知の手法で長手方向に運搬セグメントTSkの長固定子に沿って配置されており、これらのコイルに駆動電流が流れて、これらのコイルが、運搬ユニットT1...Tnにおける(
図5には、見易くするとの理由から、運搬ユニットT6に対してのみ表示されている)駆動磁石4,5と協力して動作して、周知の手法により運搬ユニットTnを動かすための推進力Fvを発生させることができる。典型的には、この電気駆動電流には、直流成分も、即ち、直流も含まれる。
【0080】
長固定子リニアモーターとして実現された運搬システム2以外に、平面モーターとして実現された運搬システムが、本発明による方法の別の重要な用途である。平面モーターは、基本的に一つの固定子を有し、この固定子は、一つ又は複数の運搬ユニットを少なくとも二次元形態で動かすことができる運搬面を形成する。本発明による方法に関して、これらの運搬ユニットは、二次部分IIとして機能する。この固定子は、通常一次部分Iの役割を引き受ける一つ又は複数の運搬セグメントから構成される。運搬面内に運搬ユニットを動かすために、固定子(この/これらの運搬セグメント)の磁界と運搬ユニットの磁界が協力して作用することによって、運搬ユニットに作用する駆動力が発生される。所定の移動方向への運搬ユニットの動きを実現するためには、これらの磁界の中の少なくとも一方を、即ち、固定子の磁界及び/又は運搬ユニットの磁界を時間的に変化させて、運搬ユニットの動きを実現しなければならない。しかし、大抵は、一方の磁界だけが、通常は固定子の磁界が時間的に変化し、それぞれ他方(運搬ユニット)の磁界は通常一定である、即ち、時間的に変化しない。
【0081】
本発明による誘導式エネルギー伝送方法が運搬システム2において如何にして実現できるのかが、
図6に詳しく図示されている。
図6は、二つの隣り合う直線的な運搬セグメントTSk,TSk+1の詳細図を図示している。この場合、運搬セグメントTSk,TSk+1は、一つの運搬区間を構成するために固定的な支持構造6に配置されるか、或いはそれ自体で固定的な支持構造6の一部を形成する。有利には、弾力的な磁気伝導材料3を運搬セグメントTSk,TSk+1の間に取り付けることができる。長固定子リニアモーターの駆動コイル7が、運搬セグメントTSk又はTSk+1に配置されている。駆動磁石4が運搬ユニットTnに配置されている。駆動磁石4は、電磁石(励起コイル)及び/又は永久磁石として実現することができる。駆動コイル7は、有利には、強磁性のコア(例えば、鉄の積層板)13の歯12に配置される。しかし、当然のことながら、駆動コイル7は、コアの無い形で実現することもできる。当然のことながら、運搬区間20に沿って運搬ユニットTnを案内して保持するために、特に、静止状態に保持するためにも、ローラー、車輪、滑走面、ガイド磁石などの(ここでは、見易くするとの理由から図示されていない)ガイド部品を運搬ユニットTnに更に配備することもできる。運搬区間20の長手方向xに、即ち、運搬ユニットTnの移動方向に出来る限り均一な磁束を、従って、均一な推進力Fvを発生させるために、駆動コイル7は、通常は長手方向(又は移動方向)xに見て、互いに一般的にスロットピッチτnと呼ばれる規則的な間隔を開けて運搬セグメントTSk,TSk+1に配置されている。
【0082】
図6が図示する通り、本発明による誘導式エネルギー伝送方法に関して、運搬ユニットTnは、二次部分IIの役割を引き受けて、この部分は、
図1に図示された構造と同様に構成することができる。一次部分Iの機能は、広い範囲の長固定子によって引き受けられ、そこでは、前述した通り、エネルギーを伝送する高周波の電流を推進力Fvを発生させる低周波の駆動電流に重ね合わせることによって、更にエネルギー伝送のために、駆動コイル7を使用することができる。運搬ユニットTnから遠く離れている、そのためエネルギー伝送に寄与できない駆動コイル7に不必要に電流を流さないために、通常は運搬ユニットTnの直ぐ近くの駆動コイルだけに電流が流される。この場合、エネルギー伝送のために、複数の隣り合う駆動コイル7が送信コイルL
1としても協力して動作できることを補足しておきたい。
【0083】
この場合、運搬システム2に伴って生じる複数の特色は、本発明による方法の既に前述した利点の中の幾つかを更に際立たせる。そのように、運搬システム2の構想及び設計時において、運搬ユニットTnの出来る限り精密な位置決めを実現可能とするためには、しばしばスロットピッチτnを出来る限り短く選定することが望ましい。スロットピッチτnを低減することにより、駆動コイル7が、より接近した形で詰めて置かれ、このことは、特に、誘導式エネルギー伝送に関して既に述べた全ての不利な結果となる、無効電力需要の向上と関連する一次側の漏れインダクタンスを向上させることとなる。運搬システム2では、供給電圧uSが制限されており、漏れインダクタンスが比較的大きいので、このようなケースでは、利用可能な電圧uSのほぼ全てが、しばしば漏れ磁束を発生させるために必要となる。しかし、本発明による方法によって、そのようなケースでも、部分的に大きな一次側の無効電力と限られた供給電圧uS又は限られた一次電流iSなどのそれ以外の制限にも関わらず、一定の規模で有効電力を伝送することも可能になり、それ故、これによって、一つの二次側の消費体に、或いは複数の二次側の消費体にも、電気エネルギーを十分に供給することが可能である。
【0084】
運搬システム2の場合に特別な範囲内で明らかとなった別の点は、多くの場合に、これと関連して一次部分Iと二次部分IIの間で原理的に存在する相対的な動きから生じる伝達率の変化に適合させる必要があることである。既に述べた通り、効率的なエネルギー伝送を実現するためには、単一の二次側の補償ユニットKで十分である場合、具体的には、この補償ユニットK又はそれから提供される補償電流iKだけを、変化する伝達率に適合させればよいので、比較的簡単に適合を実行できる。何れにせよ、各駆動コイル7への補償ユニットKの一次側の組込みに伴う大きなハードウェア負担が回避される。
【0085】
本発明による方法を前述した通り拡張すると同時に、エネルギー伝送システム1で出現する電気共振周波数に励起周波数を適合させることは、長固定子リニアモーター及び平面モーターの場合に、価値の高い拡張手法であるとすることができる。一次部分Iと二次部分IIの間の動きのために伝達率が絶えず変化する可能性があるので、エネルギー伝送システム1の励起周波数と共振周波数の間の追加的な整合によって、エネルギー伝送の更なる改善を達成することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次部分(I)と二次部分(II)の間の誘導式エネルギー伝送方法であって、
一次部分(I)と二次部分(II)が、運搬システム(2)、有利には、リニアモーターシステム、平面モーターシステム又は磁石浮遊式軌道の一部であり、一次部分(I)が、運搬システム(2)の固定部分に相当し、二次部分(II)が、運搬システム(2)の固定部分に対して相対的に動く部分に相当し、二次部分が、一次部分に対して相対的に動かされ、エネルギー伝送のための第一の交番磁界を発生させる一次電流(i
S)が、供給ユニット(S)から第一の部分(I)に配置された送信コイル(L
1)に投入され、それによって、二次部分(II)に配置された受信コイル(L
2)に交流電圧(u
i)が誘導され、この交流電圧が、二次部分(II)に二次電流(i
V)を生じさせる、そのため受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)に対して非補償の有効電力(P
N)を含む電力フローを生じさせる方法において、
一次部分に対して相対的に動かされる二次部分(II)に配置された補償ユニット(K)によって、二次側の補償電流(i
K)を二次側のコイル(L
K)に投入することと、
二次側の補償電流(i
K)によって、この二次側のコイル(L
K)において、第二の交番磁界を発生させ、この交番磁界が、エネルギー伝送のための第一の交番磁界に重なり合って、送信コイル(L
1)に一次側の補償電圧(u
K)を誘導することと、
この送信コイル(L
1)に誘導された一次側の補償電圧(u
K)によって、送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトが変更されて、この位相シフトの変更後に、その結果得られる一次部分(I)から受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)に伝送される出力有効電力(P
R)が、位相シフトを変更しない場合の非補償の有効電力(P
N)と比べて向上されることと、
一次部分(I)に配置された送信コイル(L
1)には、送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトを変化させる一次側の補償電流が投入されず、この補償電流は、送信コイル(L
1)に対して直列に、送信コイル(L
1)と供給ユニット(S)の間に接続された電気貯蔵素子から供給されることと、を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記の送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトが、二次側の補償電流(i
K)により引き起こされる、送信コイル(L
1)に誘導される一次側の補償電圧(u
K)によってのみ変更されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記の第一の交番磁界を発生させる一次電流(i
S)に追加して、二次部分(l1)に作用する推進力(F
V)を発生させる駆動電流が送信コイル(L
1)に投入されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の方法において、
前記の駆動電流によって、直流が送信コイル(L
1)に投入されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
前記の送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)が計測されて、補償ユニット(K)に送られることと、
これらの送られて来た一次電圧(u
L1)と一次電流(i
S)のデータから、一次電圧(u
L1)と一次電流(i
S)の間の位相シフトが特定されることと、
この一次電圧(u
L1)と一次電流(i
S)の間の位相シフトに基づき、一次電圧(u
L1)と一次電流(i
S)の間の位相シフトをゼロに近付けるか、或いは180°に近付けるように、二次側の補償電流(i
K)が変更されることと、を特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、
前記の補償ユニット(K)から受信コイル(L
2)に投入される二次側の補償電流(i
K)が、送信コイル(L
1)と受信コイル(L
2)の間の伝達率の変化に適合され、この変化が、特に、送信コイル(L
1)、受信コイル(L
2)、供給ユニット(S)又は少なくとも一つの消費体(V)の劣化、温度の影響又は消耗及び/又は一次部分(I)と二次部分(II)の間の相対位置の変化によって引き起こされることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、
前記の供給ユニット(S)から一次部分(I)に配置された送信コイル(L
1)に投入される一次電流(i
S)の周波数が、送信コイル(L
1)、受信コイル(L
2)、補償ユニット(K)及び少なくとも一つの消費体(V)により形成される共振可能な電気回路に出現する共振周波数に追従されることを特徴とする方法。
【請求項8】
一次部分(I)と二次部分(II)を備えた誘導式エネルギー伝送装置であって、
一次部分(I)と二次部分(II)が、運搬システム(2)、有利には、リニアモーターシステム、平面モーターシステム又は磁石浮遊式軌道の一部であり、一次部分(I)が、運搬システム(2)の固定部分に相当し、二次部分(II)が、運搬システム(2)の固定部分に対して相対的に動く部分に相当し、エネルギー伝送のための第一の交番磁界を発生させる一次電流(i
S)を第一の部分(I)に配置された送信コイル(L
1)に投入するための供給ユニット(S)が一次部分(I)に配備され、受信コイル(L
2)と、この受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)とが二次部分(II)に配置され、このエネルギー伝送のための第一の交番磁界によって、受信コイル(L
2)に交流電圧(u
i)が誘導され、この交流電圧が、二次部分(II)に交流(i
V)を生じさせる、そのため受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)に対して非補償の有効電力(P
N)を含む電力フローを生じさせる装置において、
二次部分(II)には、少なくとも一つの補償ユニット(K)が配置され、この補償ユニットは、二次側の補償電流(i
K)を二次側のコイル(L
K)に投入し、それにより第二の交番磁界を発生させるように構成され、この交番磁界が、エネルギー伝送のための第一の交番磁界に重なり合うとともに、送信コイル(L
1)に一次側の補償電圧(u
K)を誘導し、この送信コイル(L
1)に誘導された一次側の補償電圧(u
K)によって、送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトが変更されて、この送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトの変更後に、その結果得られる一次部分(I)から受信コイル(L
2)と接続された少なくとも一つの消費体(V)に伝送される出力有効電力(P
R)が、位相シフトを変更しない場合の非補償の有効電力(P
N)と比べて向上されることと、
一次部分(I)では、送信コイル(L
1)を介して降下する一次電圧(u
L1)と送信コイル(L
1)を通って流れる一次電流(i
S)の間の位相シフトを変化させる一次側の補償電流を送信コイル(L
1)に投入するために、送信コイル(L
1)に対して直列に接続された電気貯蔵素子が、送信コイル(L
1)と供給ユニット(S)の間に配備されていないことと、を特徴とする装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の装置において、
前記の少なくとも一つの補償ユニット(K)が、少なくとも一つの電気的に変更可能なコンデンサー、少なくとも一つの電気的に変更可能なコイル及び少なくとも一つの電気的に変更可能なコンデンサーと少なくとも一つの電気的に変更可能なコイルの接続回路の中の一つ以上であることを特徴とする装置。
【国際調査報告】