(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ポリカーボネートに基づく複合廃棄物のリサイクル及びアップサイクル方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20240614BHJP
B09B 3/80 20220101ALI20240614BHJP
【FI】
C08J11/08
B09B3/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575602
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 FR2022051080
(87)【国際公開番号】W WO2022263745
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522360035
【氏名又は名称】ポリロープ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・フェラーリ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・フェス
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・デュオー
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA10
4D004AA26
4D004BA07
4D004CA29
4D004CA34
4D004CB31
4D004CC04
4D004DA06
4D004DA07
4F401AA23
4F401AB06
4F401AC05
4F401AC06
4F401BA06
4F401CA32
4F401CA54
4F401CB09
4F401EA54
4F401EA57
4F401EA59
4F401FA01Z
4F401FA02Z
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネートに基づく複合廃棄物のリサイクルのための方法に関し、その方法は以下のステップを含む:(a)断片形状の複合廃棄物(C)を準備するステップ;(b)50℃~100℃の温度において、不活性雰囲気下で、20,000~300,000Paの圧力において、溶媒として1,3-ジオキソラン(P)の存在下で、廃棄物断片(C)を溶解させるステップ;(c)ステップ(b)から生じる混合物を分離して、不溶性断片(I)並びに溶媒及びポリカーボネートを含む液体の回収をもたらすステップ;(d)ステップ(c)で得られる液体中に存在するポリカーボネート(PC)を、50℃~100℃の温度において、不活性雰囲気下、20,000~100,000Paの圧力において、水(W)及び/又は水蒸気(V)並びに少なくとも1つの溶媒(P)の存在下で沈殿させて、気体状流出物(E)及びポリカーボネート(PC)の固体粒子を得ることを可能にするステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートに基づく複合廃棄物をリサイクルする方法であって、以下のステップ:
(a)塊の形態の複合廃棄物(C)を準備ステップ;
(b)溶媒として1,3-ジオキソラン(P)の存在下で、50℃~100℃の温度において、不活性雰囲気中、20,000~300,000Paの圧力において、廃棄物の塊(C)を溶解するステップ;
(c)ステップ(b)で生じた混合物の分離(3,5)により、不溶性断片(I)、並びに溶媒及びポリカーボネートを含む液体を回収するステップ;
(d)50℃~100℃の温度において、20,000~100,000Paの圧力において不活性雰囲気中で、液体(W)及び/又は蒸気(V)の形態の水及び少なくとも1つの溶媒(P)の存在下で、ステップ(c)からの液体中に存在するポリカーボネートを沈殿させて、ガス状の流出物(E)及びポリカーボネート(PC)の固体粒子を得るステップ、
を含む方法。
【請求項2】
分離ステップ(c)が濾過工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)がいくつかの濾過のサブステップを含んでいてもよい、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)において、複合廃棄物から少なくとも1つの成分(A)もまた回収する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)及び(c)を順次行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)からの不溶性フラグメント(I)を溶媒ですすぐことによって洗浄し、次に、蒸発及び/又は蒸留を行って、痕跡量の1,3-ジオキソランの全てを除去する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(d)の溶媒(P)が、イソヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びペンタンからなる群から選択されるアルカンであり、好ましくは溶媒(P)がイソヘキサンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)の溶媒(P)が、イソプロパノール、酢酸プロピル、2-メチル-1,3-ジオキソラン、及びジメトキシエタンによって形成される群から選択される追加の溶媒をさらに含み、好ましくは追加の溶媒がイソプロパノールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)の後に、工程(d)から得られるポリカーボネート粒子を蒸気洗浄する追加のステップ(e)が続く、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(e)で製造されたポリカーボネート粒子を乾燥するための補助ステップ(f)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(d)の後に、ステップ(d)からのガス状流出物を凝縮させるステップ(g)を行い、それにより、水性液体流出物(W)及び有機液体流出物(P)が得られる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(g)からの水性液体流出物を、液体(W)及び/又は蒸気(V)の形態、好ましくは液体(W)の形態の水とともにステップ(d)に供給する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(g)からの有機液体流出物(P)を、1,3-ジオキソランとともにステップ(b)に供給し、かつ、必要に応じて、1,3-ジオキソランとともにステップ(d)に供給する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)の不溶性断片のストリッピング工程Iからのガス状流出物を、ステップ(g)に供給する、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)からのポリカーボネート粒子をストリッピングする工程であるステップ(e)からの流出ガスをステップ(g)に供給する、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートに基づく複合廃棄物をリサイクルするための物理化学的方法の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、一方では不溶性の断片(フラグメント)をアップサイクルすることを可能にするために、また、とりわけ、他方で、溶媒中に溶解したポリカーボネートを再処理した後、その後の再利用のためポリカーボネート配合物をアップサイクルすることを可能にするために、溶媒を使用して、ポリカーボネートに基づく(ポリカーボネートをベースとする)複合廃棄物からポリマーを溶解させる方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に式-[CO-O-pPh-C(CH3)2-pPh-O]n(nは単位数、Phは二価のフェニル部分である)で表されるポリカーボネートは、1953年以来公知であり、かつ1958年から市販されている、プラスチックを形成するポリマーである。このポリマーは、一般に、ビスフェノールAとカーボネート又はホスゲンとの重縮合によって得られる。
【0004】
ポリカーボネートは、優れた特性、特に優れた機械的特性(耐衝撃性及び耐破壊性)を備えたポリマーであり、良好な透明性、低可燃性、及び高い耐熱性を備えることができ、それにより、-100℃~+120℃のあいだで使用されることを可能にしている。また、良好な電気絶縁体であり、かつ、生体適合性でもある。
【0005】
ポリカーボネートポリマーは、自動車製品(バックミラーボディ、ライト及びヘッドランプ)、電気及び電子機器(電話及びコンピュータの筐体)、包装、及び家庭用電化製品を含めた様々な日用品の製造に広く使用されている。
【0006】
これらの理由により、多量のこの材料が毎年廃棄されている。したがって、リサイクルプロセスは、環境面及び経済面での大きな課題である。ポリカーボネート単独の機械的リサイクルは一般に簡単である。しかし、ポリカーボネートに基づく複合廃棄物中の金属インサートの存在が、リサイクルを不可能にしている。実際に、リサイクルされる対象物が、磁気ストリップ又はチップ(例えば、フランスの身分証明カード又はフランスの銀行カードなどのように)又は繊維などのインサート(挿入物)を含んでいる場合、このことが、再利用のためにアップサイクルしうる(廃棄物に新しい価値を付与しうる)高純度な要素(金属、繊維、ポリカーボネート)の回収を妨げる。
【0007】
実際、これらの物品を注意深く粉砕することは、通常は、不均一な組成の微粒子の混合物をもたらす。この混合物は、精製し及び再利用するのが困難である。
【0008】
特開2019-104861号公報は、炭素繊維で強化された熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネートを含む複合廃棄物をリサイクルするための化学的処理方法を記載している。この溶媒は、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の混合物、又は、1,3-ジオキソラン及びテトラヒドロフラン(THF)の混合物のいずれかである。プロセスの最後に蒸留が行われ、蒸留濃縮物がエタノールと混合されてポリカーボネートが沈殿される。エタノールを含む最終溶媒は、この方法において再利用することはできない。
【0009】
国際公開第2012/158775号、中国特許出願公開第105778459号明細書、及び特開2001-270961号公報のそれぞれは、ポリカーボネートに基づく材料のリサイクルに関する。しかし、それらのどれも1,3-ジオキソランの使用については言及していない。
【0010】
現在まで、ポリカーボネートは、ジクロロメタン、クロロホルム、THF(テトラヒドロフラン)、又はN-メチル-3-ピロリドン(NMP)などの少なくとも1つの溶媒に溶解することが知られている。しかし、これらの溶媒は有毒であり、かつCMR(Carcinogenic Mutagenic Reprotoxic)発がん性変異原性生殖毒性)ですらある。さらに、ポリカーボネートに基づく複合廃棄物の物理化学的(すなわち、溶媒に基づく)リサイクルのための工業的な解決策はない。
【0011】
したがって、現時点では、従来技術の課題を克服する、ポリカーボネートに基づく複合廃棄物を効果的にリサイクルするための満足できる解決策は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2012/158775号
【特許文献2】中国特許出願公開第105778459号明細書
【特許文献3】特開2001-270961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ポリカーボネートに基づく複合廃棄物をリサイクルし、その高純度成分の分離回収を可能にし、それにより、これらの成分の再利用を可能にするための方法を提案することによって、従来技術の課題を克服することから構成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[本発明の開示]
本発明は、以下のステップ:
(a)塊の形態(lump form)の複合廃棄物を準備するステップ;
(b)溶媒として1,3-ジオキソランの存在下で、50℃~100℃の温度において、不活性雰囲気中、20,000~300,000Paの圧力において、廃棄物の塊(waste lumps)を溶解するステップ;
(c)ステップ(b)で生じた混合物の分離により、1,3-ジオキソラン溶媒及びポリカーボネート配合物を含む液体とともに不溶性断片(不溶性フラグメント)を回収するステップ;
(d)50℃~100℃の温度において、20,000~100,000Paの圧力において不活性雰囲気中で、液体及び/又は蒸気の形態の水及び少なくとも1つの溶媒の存在下で、ステップ(c)からの液体中に存在するポリカーボネートを沈殿させて、ガス状の流出物及び固体のポリカーボネート粒子を得るステップ、
を含む、ポリカーボネートに基づく複合廃棄物をリサイクルする方法に関する。
【0015】
本発明のリサイクル方法は、ポリマーの化学的分解を伴わずに、溶媒/貧溶媒のペアを使用する、ポリカーボネートに基づく廃棄複合材料の物理的溶媒リサイクルに関連する。使用される溶媒である1,3-ジオキソランは、特開2019-104861号公報とは異なり、CMR(発がん性突然変異原性生殖毒性) 発がん性物質を含んでいない。水及び/又は水蒸気は貧溶媒として作用する。少なくとも1つの他の溶媒が、沈殿ステップ(d)において使用される。
【0016】
有利なことに、本発明のリサイクル方法は、処理された複合廃棄物中のポリカーボネートの配合と実質的に同一の配合を有する再生ポリカーボネート(リサイクルされたカーボネート)を生成する。結果として、ポリカーボネート中に含まれている添加剤は、一般に、再生ポリカーボネート(リサイクルされたカーボネート)中に残留する。そうして得られた再生ポリカーボネート(リサイクルされたカーボネート)は、一定の経済的価値を有する。最後に、本発明による方法の別の利点は、実質的にゼロのポリカーボネート含有量を有する不溶物を再生できる可能性である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の方法の動作原理の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、「複合廃棄物」とは、そのままでは使用できず、かつ、会合しており、分離することが困難である少なくとも2つの異なる成分を含む残留物(材料、物質、又は製品)をいう。
【0019】
「ポリカーボネートに基づく」(polycarbonate-based)という用語は、その廃棄物が少なくとも50質量%のポリカーボネートを含むことを意味する。「ポリカーボネート」とは、1,3-ジオキソランに可溶性の-[CO-O-pPh-C(CH3)2-pPh-O]単位を含む任意のホモポリマー又はコポリマーをいう。「ポリカーボネート配合物」という用語は、当業者に知られているポリカーボネート及びその可能な添加剤(着色剤(1又は複数)、可塑剤(1又は複数)など)をいう。そのポリカーボネート配合物は、1,3-ジオキソランに可溶性である。
【0020】
したがって、本発明による「ポリカーボネートに基づく廃棄複合材料」は、ポリカーボネートと、繊維又は金属など、典型的にはインサート(電子チップなど)の形態の繊維又は金属などの少なくとも1つの不溶物とを含む。これらには、フランスの銀行カード、及びプラスチック製のIDカードが含まれる。
【0021】
ステップ(a)は、任意の適切な装置を使用して、特定の操作、典型的には破砕及び/又は細断によって実施することができる。それはまた、単に、適切なサイズにした原料を供給することからなっていることができる。
【0022】
「塊」(lump)とは、平均寸法が1cm~20cmの物体をいう。本発明においては、「断片」(フラグメント)という用語は、実質的に小さい平均サイズを有する、これらの塊から誘導される部分品を指すために用いられる。
【0023】
本発明によれば、「A及び/又はB」は、A、又はB、あるいは、A及びBを指す。
【0024】
ステップ(b)は、溶媒としての1,3-ジオキソラン(式C3H6O2、かつCAS番号646-06-0を有する有機溶媒)の存在下で、通常は反応器中で行われる。有利には、1,3-ジオキソランは水と共沸混合物を形成する一方で、ポリカーボネートを溶解することができるが、複合廃棄物の他の成分(繊維、金属など)を溶解することはできない。
【0025】
本発明に従って使用される1,3-ジオキソランは、好ましくは90質量%より高い純度であり(「工業用1,3-ジオキソラン」)、水及び少なくとも1つの安定剤、例えば、メタノール及び/又はメチラールを含有してもよい。例えば、1,3-ジオキソランは、最大で7質量%の水、3質量%のメタノール、及び1質量%のメチラールを含む。ステップ(b)において使用される溶媒は、このような1,3-ジオキソランを含み、好ましくは本質的にそれのみからなり、より好ましくは本質的にそれのみからなる。
【0026】
ステップ(b)は、混合条件、典型的には撹拌機の種類及び撹拌機の速度を決定できる当業者に知られているように、撹拌しながら行うのが好ましい。この撹拌がまた、1,3-ジオキソラン溶媒と廃棄複合材料とのあいだの接触を向上させる。
【0027】
当業者は、ステップ(b)の条件、例えば、継続時間及び廃棄物対1,3-ジオキソラン溶媒の比率を決定することができる。典型的には、継続時間は30~180分、好ましくは60~120分であり、1,3-ジオキソラン溶媒に対する廃棄物の割合は1~20質量%(又は1,3-ジオキソラン溶媒1リットル当たりの質量で)、好ましくは5~15質量%である。一般に、1,3-ジオキソラン溶媒の量は、ポリカーボネートの溶解によって引き起こされる粘度の増加が、本プロセス、特にステップ(c)における分離のあいだのプロセスの円滑な進行と整合するように選択される。
【0028】
「XとYのあいだ」又は「XからYまで」という用語は、ここでは包括的な限界を指すために使用される。
【0029】
「不活性雰囲気」という用語は、本プロセスのあいだに反応しない雰囲気をいう。不活性雰囲気は、当業者に知られているように、一般に、酸素を含まない空気の雰囲気であり、より好ましくは、ニュートラルなガス、例えば、典型的には窒素の雰囲気である。
【0030】
ステップ(b)の終わりに、その中にポリカーボネート(ポリカーボネート配合物の形態のポリカーボネート)が溶けている溶媒である1,3-ジオキソラン、及びこの液相中の不溶性の断片から本質的に構成される液体からなる混合物が得られる。
【0031】
ステップ(c)は、ステップ(b)からの混合物をその2つの構成成分、すなわち、一方で不溶性断片(フラグメント)、他方で1,3-ジオキソラン溶媒及びポリカーボネートを含む液体に分離することからなる。好ましくは、ステップ(c)は濾過工程、例えば0.01~10mmの範囲の開口部を有する少なくとも1つの篩又は布を使用する濾過工程である。それは、一般に1つ以上の反応器内で、典型的には次第に精密さを増大させていく精密濾過を伴ういくつかの濾過サブステップを含んでいてもよい。
【0032】
ステップ(c)はまた、複合廃棄物(例えば、アンテナ又はラベル)から少なくとも1つの構成成分を回収することもできる。典型的には、このコンポーネントはもともとステップ (a) からの塊の中に存在しており、そのままでは一般にアップサイクル可能ではない。
【0033】
一実施形態によれば、ステップ(b)及び(c)は同時に行われ、すなわち、その間にそれらの両方が実施される共通のタイムスロット(時間帯)が存在する。好ましくは、それらはおおよそ同時に実施される。これは典型的には、それらが同じ反応器内で行われ、次に溶解及び分離、そして好ましくは濾過が、同時に行われる場合に相当する。
【0034】
別の好ましい実施形態によれば、ステップ(b)及び(c)は逐次行われ、すなわち、その間にそれらの両方が実施される共通のタイムスロット(時間帯)はなく、それらは交互に実施される。この場合、それらは、通常は少なくとも2つの異なる空間内で実施される。
【0035】
好ましくは、ステップ(c)からの不溶性断片(フラグメント)は、1,3-ジオキソランで濯ぐことによって洗浄され、次に、蒸発及び/又は蒸留によって、痕跡量の1,3-ジオキソランがすべて除去される。これは通常、ステップ(c)のために使用したものと同じ反応器内で行われる。好ましくは、このステップは蒸気洗浄ステップ(当業者によって一般に「ストリッピング」といわれる)である。当業者に知られているように、このステップは通常、蒸気(スチーム)を使用して90~110℃の温度で行われる。これが、1,3-ジオキソランのより良好な回収、したがって特に内部でのより良好なリサイクルを可能にする(例えば、流出ガスを、可能な凝縮ステップ(g)へ供給し、それに、ステップ(b)及び/又はステップ(d)のための1,3-ジオキソラン回収が続く)。とりわけ、これが、後で再利用するための、より純粋な不溶性断片(不溶性フラグメント)を得ることを可能にする。
【0036】
ステップ(d)において、蒸気及び/又は水を注入して、ポリカーボネートを固体粒子の形態で沈殿させ、同時にガス状流出物が、典型的には反応器中へ排出される。
【0037】
ステップ(d)は、ガスの形態の水-1,3-ジオキソラン共沸混合物の蒸発及び同伴を引き起こすために有利に使用することもできる。次にこの共沸混合物を収集し、かつ凝縮することができる。蒸発されていない液体は本質的に水及び固体ポリカーボネート粒子であり、好ましくは水及び固体ポリカーボネート粒子である。ほぼ全ての1,3-ジオキソランが除去されたときに、ポリカーボネート粒子を回収することができる。
【0038】
ステップ(d)の溶媒は、有利には、イソヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びペンタンによって形成される群から選択されるアルカンである。好ましくは、ステップ(d)のための溶媒はイソヘキサンである。
【0039】
ステップ(d)における上記溶媒は、溶媒(1,3-ジオキソラン、水、及び溶媒)の総質量に基づいて5~25質量%の割合であることが好ましい。
【0040】
ステップ(d)はまた、ステップ(d)の溶媒中に含まれる補助溶媒の使用を含んでもよい。このような場合、ステップ(d)からの前述の溶媒を「主」溶媒とよぶことができる。補助溶媒は分散剤として有利に作用する。「分散剤」という用語は、沈殿中に粒子の合体を制限する任意の分子を指す。補助溶媒は、通常、1,3-ジオキソランの沸点と水の沸点のあいだの沸点をもつアルコール、エステル、オキソラン類、エーテル類、及びケトンから選択される。補助溶媒は、好ましくは、イソプロパノール、酢酸プロピル、2-メチル-1,3-ジオキソラン、及びジメトキシエタンからなる群から選択される。好ましく、補助溶媒は、イソプロパノールである。
【0041】
補助溶媒は、溶媒(1,3-ジオキソラン、水及び/又は蒸気、並びに、溶媒及び補助溶媒を含めた他の溶媒)の総質量に対して1~10質量%の割合であることが好ましい。
【0042】
工程(d)は、当業者に知られているように、撹拌下で行うことが好ましく、当業者は、混合条件、典型的には撹拌機の種類及び撹拌機の速度(撹拌速度)を決定することができる。有利には、この撹拌が、その体積内の蒸気の分布を改善し、ポリカーボネートの造粒を可能にする。以下では「ポリカーボネート粒子」のみについて言及するが、ポリカーボネート粒子の組成は、元のポリカーボネート配合物に実質的に対応する。
【0043】
ステップ(d)において、溶媒混合物の成分(すなわち、1,3-ジオキソラン、水、及びステップ(d)からの溶媒)が、凝縮した流出ガスの水相と有機相とのあいだの分離を促進する。
【0044】
当業者は、工程(d)の条件、例えば、継続時間、溶媒混合物中の1,3-ジオキソランの割合、及び溶媒混合物中の水及び/又は水蒸気の割合を決定することができる。典型的には、継続時間は30~240分、好ましくは60~180分である。一般に、溶媒混合物中の1,3-ジオキソランの割合は60~100%m、好ましくは70~90%mであり、かつ、溶媒混合物中の水及び/又は水蒸気の割合は50%m~150%m、好ましくは80~120%mであり、共沸蒸発を促進するように選択される。
【0045】
必要な場合には、1,3-ジオキソランをステップ(d)に添加することもできる。
【0046】
好ましい実施形態によれば、ステップ(d)の後に、主に水からなる混合物中に一般に存在する、ステップ(d)からもたらされるポリカーボネート粒子を、蒸気洗浄(「ストリッピング」)する補助ステップ(e)が続く。これは、通常、ステップ(d)のために使用したものと同じ反応器内で行われる。典型的には、ポリカーボネート粒子上に吸着されている残留溶媒混合物を同伴させるこの工程(e)は、当業者に知られているように、蒸気を使用して90~110℃の温度において一般に実施される。これが、1,3-ジオキソランの、特に内部での、より良好な回収、したがって、より良好なリサイクルを可能にする(例えば、流出ガスを、可能な凝縮ステップ(g)へ供給するためであり、ステップ(g)の次にステップ(b)のための1,3-ジオキソラン回収が続き、ステップ(b)の次にステップ(d)が続く)。何よりも、これが、後で再利用するための、より純粋なポリカーボネート粒子を得ることを可能にする。
【0047】
任意選択により場合によっては、この方法は、ステップ(e)から生じるポリカーボネート粒子を乾燥するための補助ステップ(f)も含む。この乾燥は、当業者に知られている従来のやり方、例えば流動床乾燥機中で行うことができる。
【0048】
一実施形態によれば、ステップ(d)の後に、ステップ(d)からのガス状流出物のための凝縮ステップ(g)が続き、水性液体流出物及び有機液体流出物をもたらす。ステップ(g)は、ステップ(d)の後に、かつ、ステップ(e)及び/又は(f)とは独立して実施される。
【0049】
好ましくは、ステップ(g)からの水性液体流出物は、液体及び/又は蒸気の形態、好ましくは液体の水と共に工程(d)へ供給される。
【0050】
好ましくは、ステップ(g)からの有機液体流出物は、1,3-ジオキソランとともに工程(b)に供給され、かつ、任意選択により場合によって、必要な場合には、1,3-ジオキソランとともに工程(d)に供給される。
【0051】
一実施形態によれば、ステップ(g)は、より一般的には、あらゆるガス状ストリッピング流出物を処理する。
【0052】
したがって、ステップ(c)における不溶性フラグメントのストリッピング工程からの流出ガスを工程(g)に供給することが好ましい。同様に、工程(c)からのポリカーボネート粒子をストリッピングする工程(e)からの流出ガスは、好ましくはステップ(g)へ供給される。
【0053】
これらすべての内部リサイクルステップは、有利には、本プロセスをより一層自給自足となることを可能にし、したがって、本プロセスのより環境に責任のある使用を可能にする。
【0054】
[図面の簡単な説明]
本発明が実施される方法、並びにそれから生じる利点は、添付した図を裏付ける以下の実施形態の説明から明らかになるであろう。
【0055】
[図面の簡単な説明]
図1は、本発明の方法の動作原理の概略図である。
【0056】
実際のところ、
図1に示される要素の寸法及び比率は、現実に比べて誇張されている可能性があり、かつ本発明の理解を容易にするためだけに与えられている。
【0057】
[図面の詳細な説明]
装置1は、
図1に概略的に示されているように、本発明による方法を実施するために使用される。
【0058】
装置1は、反応器2を備えており、反応器2の中に、本方法によって処理される複合廃棄物の塊Cが置かれる。塊Cは、そのまま供給されてもよいし、あるいは粉砕(図示せず)されていてもよい。後者の場合、それらはパイプ10を通って反応器2のなかへ供給される(ステップ(a))。反応器2中で、塊Cは、主に1,3-ジオキソランを含み、かつライン20を介して供給される溶媒混合物Pの存在下で溶解される。
【0059】
図1において、ステップ(b)及び(c)は、同じ反応器2及び空間4内で同時に実施される。パート3は、反応器2中で起こる分離を象徴的に表しており、それは主に濾過からなる。反応器2から、ライン12は、液体流出物をスペース4へと運び、スペース4はスペース4内で起こる分離を象徴的に表しているパート5を備えている。スペース4は、補助の濾過システムに対応する。スペース4から、ライン16は、濾過された液体流出物を反応器6へと運ぶ。複合廃棄物の成分、例えばインサート又は金属パーツAは、スペース4からライン23を介して排出することもできる。
【0060】
新規な溶媒混合物Pを、その不溶性断片(不溶性フラグメント)を濯ぐための任意選択によるステップのために反応器2へ添加することができる。
【0061】
さらに、この任意選択によるステップの後、又はこの任意選択によるステップなしで、ライン14からの蒸気Vを使用して、不溶性断片Iが優先的にストリッピングされる。反応器2から、ガス状流出物Eは、次いで、好ましくは、専用のスペース7内で凝縮され、ガス状流出物Eはパイプ15を介してスペース7へと供給される。不溶性断片Iは、それから溶媒の全ての痕跡が除去されたら、パイプ13を介して排出される。このストリッピングは、
図1に示すように反応器2内で行うことができるが、スペース4内でも行うことができる(図示せず)。
【0062】
反応器6中で、液体流出物中に存在するポリカーボネートPCが沈殿させられる。この目的を達成するために、スペース7から、ライン21は必要に応じて追加の溶媒混合物Pを供給し、かつ、ライン22は主に水Wを含む水相を供給する。蒸気Vがまた、ライン17を介して供給され、ステップ(d)のあいだに、粒状でのポリカーボネートの沈殿が開始され、好ましくはステップ(d)の後にストリッピングステップ(e)が続く。反応器6から、ガス状流出物Eは、スペース7中で凝縮され、スペース7へガス状流出物Eはライン19を介して供給され、液体有機相P及び液体水相Wを生じる。ポリカーボネート粒子PCから溶媒の全ての痕跡が除去されたら、ポリカーボネート粒子PCはライン18から排出される。流出ガスEは、スペース7内で凝縮されたら、有機相Pについてはパイプ20及び21によって閉じられたループ内で使用でき、また、水相Wについてはパイプ22によって閉じられたループ内で使用することができる。
【0063】
ポリカーボネート粒子PC及び不溶性断片I(これは例えば金属であり得る)は、それらが高純度であるから、有利にアップサイクル(新たな価値を付与して再生)することができる。
【実施例】
【0064】
[実施例1]
1,3-ジオキソランの存在下でのポリカーボネートIDカードの選択的な溶解-沈殿。数センチメートル四方の中程度の大きさの塊に砕かれ且つ薄いIDカードを10g供給し且つ混合し、200gの1,3-ジオキソランの存在下に置いた。その混合物を60℃で2時間撹拌した。これに続いて熱濾過プロセスを行い、それが、金属相(銅繊維及び電子チップ)、ポリカーボネート溶液相、及びコーティング相 (ワニス) の3つの異なる相をもたらした。
【0065】
この小規模な試験は、本発明において記述される方法の実現可能性と有効性を証明した。
【0066】
[実施例2]
実施例1と同様に、1,3-ジオキソランの存在下でのポリカーボネート身分証明カードの選択的な溶解-沈殿を大きなスケールで実施した。
【0067】
これを達成するために、500gの粉砕したIDカード断片(ビット)を3kgの1,3-ジオキソランと60℃において45分間、撹拌しながら混合した。濾過後、ポリカーボネート溶液、コーティング(ワニス)、及び金属(銅繊維及び電子チップ)の3つの相が生成した。
【0068】
金属を1,3-ジオキソランで濯ぎ、次に蒸気でストリッピングし、乾燥させた。
【0069】
得られたポリカーボネート溶液(3.4kg)を700rpm(1分あたりの回転数)の速度で撹拌されている反応器に注入し、温度を開始直後の20℃から2時間15分後の100℃まで、60℃における調節と、100℃における調節を伴う2段階で上昇させた。45分後、蒸気を1.5kg/時間の速度で添加した。
【0070】
40分から2時間にかけて、沈殿物が沈降し始めた。イソヘキサン(主溶媒; 疎水剤)及びイソプロパノール(追加溶媒; 分散剤)を、溶媒(1,3-ジオキソラン、水、イソヘキサン、及びイソプロパノール) の総質量に基づいて、それぞれ15質量%及び4質量%の割合で最初から添加した。これが、粉末形態のポリカーボネートを沈殿させた。
【0071】
次に、その固液混合物を濾過し、乾燥させた。回収された最終的なポリカーボネート粉末は最高純度であった。
【0072】
この大スケールの試験が、本発明において記述される方法の有効性を証明することを可能にした。
【符号の説明】
【0073】
1・・・装置
2・・・反応器
3・・・分離
4・・・スペース
5・・・分離
6・・・反応器
7・・・スペース
10・・・パイプ
12・・・ライン
13・・・パイプ
14・・・ライン
15・・・パイプ
16・・・ライン
17・・・ライン
18・・・ライン
19・・・ライン
20・・・ライン(パイプ)
21・・・パイプ
22・・・パイプ
23・・・ライン
【国際調査報告】