(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】携帯電子デバイス構成部品用複合フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
C08J5/04 CEW
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575778
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2022065766
(87)【国際公開番号】W WO2022258785
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ナン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ルイス カール
(72)【発明者】
【氏名】アポストロ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター, ヴァル グレード
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD07
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH21
4F072AH49
4F072AL11
4F072AL13
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1種のフルオロポリマーと繊維生地とから製造される、0.10mm未満の厚さを示す複合フィルム、並びにそのような複合フィルムを含み、低い誘電率及び誘電正接を示し、携帯電子デバイス構成部品に適した物品、例えばフレキシブルプリント回路基板(FPC)に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.10mm未満の厚さを有する複合フィルムであって、
- テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(FP)]、及び
- 少なくとも1つの繊維生地[繊維生地(F)]
を含む、複合フィルム。
【請求項2】
ポリマー(FP)が、
- 式CF
2=CFOR
f(式中、R
fはC1~C6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF2=CFOX
0(式中、X
0は、1つ以上のエーテル基を含むC1~C12パーフルオロオキシアルキル基、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基である)のパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- ヘキサフルオロプロペン(HFP)などのC3~C8パーフルオロオレフィン;並びに
- 式(I)のパーフルオロジオキソール:
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、互いに同じであるか又は異なり、独立して、-F、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC1~C6フルオロアルキル基、及び任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC1~C6フルオロアルコキシ基からなる群から選択される);
からなる群から選択されるテトラフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー由来の繰り返し単位と、テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位と、ポリマー(FP)中の総モル数を基準として10モル%未満の、テトラフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー由来の繰り返し単位と、をさらに含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
ポリマー(FP)が、ポリマー(FP)中の総モル数を基準として、
- 3.0~6.0モル%の、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、及びパーフルオロプロイル(proyl)ビニルエーテルからなる群から選択されるパーフルオロアルキルビニルエーテル由来の繰り返し単位と、
- 94.0~97.0モル%の、テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位と、
を含むテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーである、請求項1又は2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
ポリマー(FP)が、ポリマー(FP)中の総モル数を基準として、テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位を少なくとも98モル%有するパー(ハロ)フルオロポリマーである、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項5】
繊維生地(F)がガラス繊維を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記ガラス繊維が、
i)前記繊維の総質量に対して、酸化ケイ素35.0質量部~48.0質量部;アルミナ1.0質量部~5.0質量部;酸化チタン5.5質量部~10.0質量部;酸化ジルコニウム0.5質量部~4.0質量部;酸化ホルミウム3.0質量部以下;アルカリ土類金属酸化物32.0質量部~47.5質量部;又は
ii)前記繊維の総質量に対して、酸化ケイ素33.0質量部~46.0質量部;アルミナ1.5質量部~5.0質量部;酸化チタン5.0質量部~10.0質量部;酸化ジルコニウム0.5質量部~4.0質量部;酸化ネオジム2.5質量部以下;酸化鉄1.2質量部以下;アルカリ土類金属酸化物31.0質量部~53.0質量部;
含む繊維から選択される、請求項5に記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記ガラス繊維が、伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定される1GHzにおける誘電率D
kが5.5未満であり、伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定される1GHzにおける誘電正接D
fが0.0030未満であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記繊維生地(F)が織布を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記繊維生地(F)が、10~100g/m
2に含まれる平均目付を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、3.5以下、3.0未満、さらには2.8未満、好ましくは2.5未満の、5GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、0.0050未満、0.0040未満、0.0030未満、さらには0.0020未満の、5GHzにおける誘電正接Df、
を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項11】
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、3.0未満、さらには2.5未満の、20GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、0.0100未満、さらには0.0080未満の、20GHzにおける誘電正接Df、
を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項12】
- 水に24時間浸漬した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、3.0未満、さらには2.9未満の、20GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、0.0300未満、さらには0.0100未満の、20GHzにおける誘電正接Df、
を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項13】
- 3.0未満、さらには2.8未満の、50GHzにおけるDk;及び/又は
- 0.0030未満、さらには0.0025未満の、50GHzにおけるDf;
を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合フィルムであって、
前記Dkが、100℃で1時間乾燥した後に、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定され、前記Dfが、100℃で1時間乾燥した後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、複合フィルム。
【請求項14】
- 3.0未満、さらには2.8未満の、75GHzにおけるDk;及び/又は
- 0.0030未満、さらには0.0025未満の、75GHzにおけるDf;
を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合フィルムであって、
前記Dkが、100℃で1時間乾燥した後に、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定され、前記Dfが、100℃で1時間乾燥した後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、複合フィルム。
【請求項15】
- 3.0未満、さらには2.8未満の、100GHzにおけるDk;及び/又は
- 0.0030未満、さらには0.0025未満の、100GHzにおけるDf;
を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合フィルムであって、
前記Dkが、100℃で1時間乾燥した後に、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定され、前記Dfが、100℃で1時間乾燥した後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、複合フィルム。
【請求項16】
少なくとも1種のポリマー(FP)を含むポリマー粉末を繊維生地(F)の少なくとも1つの表面に塗布する工程を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合フィルムを製造するための方法。
【請求項17】
a)少なくとも1種のポリマー(FP)を含むポリマー粉末を繊維生地の少なくとも1つの表面に塗布する工程であって、少なくとも1種のポリマー(FP)を含む前記粉末が0.1~100μmに含まれるd
50を有する工程、
b)少なくとも1種のポリマー(FP)の粉末を、少なくとも0.3MPaの圧力P及び/又はT≧Tmとなるような温度Tを加えることによって繊維生地に結合させる工程(Tmはポリマー粉末の溶融温度(℃)である)、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程b)が、少なくとも0.5MPaの圧力P及び/又はT≧Tm+5℃になるような温度Tで行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維生地(F)が、
i)前記繊維の総質量に対して、酸化ケイ素35.0質量部~48.0質量部;アルミナ1.0質量部~5.0質量部;酸化チタン5.5質量部~10.0質量部;酸化ジルコニウム0.5質量部~4.0質量部;酸化ホルミウム3.0質量部以下;アルカリ土類金属酸化物32.0質量部~47.5質量部;又は
ii)前記繊維の総質量に対して、酸化ケイ素33.0質量部~46.0質量部;アルミナ1.5質量部~5.0質量部;酸化チタン5.0質量部~10.0質量部;酸化ジルコニウム0.5質量部~4.0質量部;酸化ネオジム2.5質量部以下;酸化鉄1.2質量部以下;アルカリ土類金属酸化物31.0質量部~53.0質量部;
含む繊維を含むガラス繊維生地である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記繊維生地(F)が、伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定される1GHzにおける誘電率D
kが5.5未満であり、伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定される1GHzにおける誘電正接D
fが0.0030未満であることを特徴とする、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの複合フィルムと、任意選択的に前記複合フィルムの少なくとも1つの表面上に接着された金属層、好ましくは銅層とを含む、物品又は物品の構成部品。
【請求項22】
携帯電子デバイス物品又はその構成部品、好ましくはフレキシブルプリント回路基板(FPC)を製造するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの複合フィルムの使用。
【請求項23】
0.10mm未満の厚さを有する複合フィルムを製造するための、少なくとも1種のポリマー(FP)を含む粉末、好ましくは0.1~100μmに含まれるd
50を有する粉末の使用であって、前記ポリマー(FP)がテトラフルオロエチレン(TFE)由来の繰り返し単位を含み、前記複合フィルムが少なくとも1つの繊維生地(F)をさらに含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月11日に出願された米国仮特許出願第63/209427号及び2021年9月7日に出願された欧州特許出願公開第21195291.6号に基づく優先権を主張し、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、少なくとも1種のフルオロポリマーと、少なくとも1つの繊維生地とを含む、0.10mm未満の厚さを示す複合フィルムに関する。このような複合フィルムは、その厚さのためフレキシブルであり、低い誘電率及び誘電正接を示す。そのため、例えば銅張積層板(CCL)やフレキシブルプリント回路基板(FPC)などの携帯電子デバイス構成部品に適している。
【背景技術】
【0003】
それらの重量の低下及び高い機械的性能のために、ポリマー組成物は、携帯電子デバイス構成部品を製造するために幅広く使用されている。現在、改良された誘電性能(すなわち低い誘電率及び誘電正接)を有する携帯電子デバイス構成部品を製造するために使用されるポリマー組成物に対して市場からの高い需要がある。
【0004】
携帯電子デバイスにおいて、様々な構成部品及びハウジングを形成する材料は、1つ以上のアンテナを通して携帯電子デバイスにより送受信されるワイヤレス無線信号(例えば、1MHz、2.4GHz、及び5.0GHzの周波数)を著しく損なう可能性がある。携帯電子デバイスに使用される材料の誘電性能は、誘電率と誘電正接を測定することによって決定することができる。これらは、材料が電磁放射と相互作用し、材料中を伝わる電磁信号(例えば無線信号)を妨害する能力を表す。したがって、所与の周波数での材料の誘電率が低ければ低いほど、その周波数での材料による電磁信号の破壊は少なくなる。
【0005】
ポリマーフィルムは、携帯電子デバイスの分野で使用されている。例えば、連続芳香族ポリイミドフィルム/銅箔ラミネート構造の形態の芳香族ポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント回路基板(FPC)、テープ自動ボンディング(TAB)用のキャリアテープ、及びリードオンチップ(LOC)構造のテープの製造について記述されている。そのようなフィルムは、優れた高温耐性、優れた化学的特性、高い電気絶縁性、及び高い機械的強度を示すことが示されている。しかしながら、ポリイミドフィルムは期待される誘電性能を示さず、特にポリイミドフィルムの誘電正接は高すぎて高周波(≧20GHz)における用途には使用できない。加えて、ポリイミドフィルムの高周波における誘電正接は、湿気の多い環境下では吸湿のためさらに悪化する。
【0006】
本発明の目的は、改善された誘電性能を有する複合フィルムを提供することである。そのような複合フィルムは、フルオロポリマーと繊維生地とから製造される。
【0007】
米国特許第8741790号明細書は、コンベアベルトとして有用なPTFE/ガラス繊維複合材料に関する。PTFE樹脂製のコンベアベルトは多くの様々な用途で使用されている。その用途の多くはベルトを介して伝達される熱に依存しているため、ベルトの厚さは最小限に保つことが好ましい。この文献に記載されているように、厚さは典型的には最小5ミル(すなわち0.127mm)から、場合によっては最大20ミル(すなわち0.508mm)の範囲である。
【0008】
しかしながら、この文献に記載されているフィルムは、銅張積層板(CCL)やフレキシブルプリント回路基板(FPC)などの携帯電子デバイス構成部品には適していない。
【0009】
国際公開第2007/024837A2号パンフレットには、ガラスクロスと溶融加工可能なフルオロポリマーとを含む複合構造が開示されており、ガラスクロスの厚さ全体がフルオロポリマーに埋め込まれており、前記フルオロポリマーは、複合構造の銅層への接着性を改善するために有効量の接着剤を含んでいる。国際公開第2007/024837A2号パンフレットでは、複合構造に使用されるガラスクロスの誘電特性については示されていない。
【0010】
欧州特許第3489299A1号明細書には、液体媒体と、液体媒体中に分散された樹脂粉末とを含む液体組成物を使用してフィルム又は積層体を製造する方法が開示されており、これは、樹脂粉末の平均粒径が0.3~6μmであり、樹脂粉末の体積基準の累積90%径が最大8μmであり、樹脂粉末が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選択される官能基を含む単位を含むフッ素化コポリマーを含有する樹脂であることを特徴とする。欧州特許第3489299A1号明細書には、フッ素化ポリマーの乾燥粉末を使用してフィルム又は積層体を得る方法は開示されていない。
【0011】
特開2020083990号公報には、酸素原子含有テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粉末を溶媒に分散させることによって得られる分散液を、アミノ基が導入された開繊ガラスクロスに含浸させること;分散液を加熱すること;及びテトラフルオロエチレン系ポリマーをガラスクロスに固定すること;を含む複合材料の製造方法が開示されている。アミノ基が導入された開繊ガラスクロスは、好ましくは、アミノ基を有するシランカップリング剤で開繊ガラスクロスを接触処理するか、又は開繊ガラスクロスを窒素含有雰囲気中でプラズマ処理することによって得られる。特開2020083990号公報には、テトラフルオロエチレン系ポリマーであるポリマーの乾燥粉末を使用して複合材料を得る方法は開示されていない。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、0.10mm未満の厚さを示す複合フィルムであって、
- テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(FP)]、及び
- 少なくとも1つの繊維生地[繊維生地(F)]
を含む、複合フィルムに関する。
【0013】
好ましい実施形態では、複合フィルムは、低誘電率、低誘電正接のガラス繊維生地であるガラス繊維生地を含む。
【0014】
本発明は、そのような複合フィルムを製造するための方法にも関する。
【0015】
本発明の他の目的は以下の通りである:本発明の少なくとも1つの複合フィルムを含む物品又は構成物品、携帯電子デバイス物品又は構成部品、例えばフレキシブルプリント回路基板(FPC)を製造するための少なくとも1つのそのような複合フィルムの使用、及び0.10mm未満の厚さを有する複合フィルムを製造するための、上で定義したポリマー(FP)の粉末の使用であって、前記ポリマー(FP)がテトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位を含み、前記複合フィルムが少なくとも1つの繊維生地(F)をさらに含む、使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願では、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に想定される関連する実施形態では、要素又は成分は、個々の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分もこのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 本明細書での端点による数値範囲のいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含み、及び
- 「A及び/又はB」の形態の句で使用される用語「及び/又は」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBを一緒に、を意味する。
【0017】
複合フィルム
本発明は、0.10mm未満の厚さを示す複合フィルムであって、
- テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロポリマー(以降ポリマー(FP))、及び
- 少なくとも1つの繊維生地(以降繊維生地(F))
を含む、複合フィルムに関する。
【0018】
本発明の複合フィルムは、市場で入手可能なフィルムと比較してフレキシブルであることを特徴とする。本発明のフィルムは、繊維生地との組み合わせられた、その薄さやフィルムの製造に使用される樹脂の化学的性質のため、携帯電子デバイス構成部品に適切な柔軟性を示すのみならず、引張強さや熱膨張係数などの適切な一連の機械的特性も示す。本発明の複合フィルムは、携帯電子デバイス構成部品に使用するための優れた誘電特性によっても有利に特徴付けられる。特に、これらは誘電率が低く、高周波でも誘電正接が低いことによって特徴付けられる。
【0019】
複合フィルムは、0.10mm~0.005mm、好ましくは0.09~0.01mm、例えば0.08~0.02又は0.07~0.03mmに含まれる厚さを有する。複合フィルムの厚さは、任意の手段によって測定することができる。例えば、厚さ計を使用して測定することができる。本発明者らは、そのような厚さが技術的に関連していることを認識した。特許請求の範囲に記載の厚さを有する複合フィルムは、用途に必要とされる曲げ性を維持すると同時に、繊維生地のおかげでその形状を維持する。この特性の組み合わせのため、本発明のフィルムは、銅張積層板(CCL)やフレキシブルプリント回路基板(FPC)などの携帯電子デバイス構成部品としての使用によく適している。
【0020】
本発明の複合フィルムにおいて使用されるポリマー(FP)は、テトラフルオロエチレン(TFE)由来の繰り返し単位を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の複合フィルムにおいて使用されるポリマー(FP)はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。PTFEは、優れた耐薬品性、高温能力、及び優れた剥離特性を提供する。
【0022】
本発明の目的のためには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、少なくとも98モル%のテトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位、少なくとも98.5モル%、少なくとも99モル%、少なくとも99.5モル%、又は少なくとも99.9モル%のテトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位を有するパー(ハロ)フルオロモノマーであり、モル%はポリマー(FP)の総モル数基準である。好ましくは、ポリマー(FP)は、ポリマー中の総モル数を基準として、テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位を100モル%含む。
【0023】
PTFEの全ての繰り返し単位がテトラフルオロエチレン由来である場合、PTFEは「ホモポリマー」とされる。
【0024】
別の実施形態によれば、PTFEは、ポリマーの総モル数を基準として最大2モル%の、テトラフルオロエチレンとは異なるエチレン性不飽和フッ素化モノマー由来の繰り返し単位、典型的には最大1モル%、最大0.5モル%、又は最大0.1モル%の、テトラフルオロエチレンとは異なるエチレン性不飽和モノマー由来の繰り返し単位を含む。
【0025】
本発明によく適したPTFEポリマーは、通常微粉末として提供され、これは、標準的な高分子量PTFE又は変性PTFEの照射によって得ることができ、標準的な高分子量/高溶融粘度PTFE/変性PTFEの典型的な分子量よりもかなり低い分子量を有することが一般的に知られている。このため、PTFE及び/又は変性PTFEの微粉末はそれ自体で溶融流動性を有することができる。
【0026】
好ましくは、ポリマー(FP)は、ASTM D3835に従って1mm×10mmのハステロイダイを使用して372℃及び1000s-1で測定される最大1.5×103Pa.sの溶融粘度を有する変性PTFE微粉末からなる群から選択される。溶融粘度は、最大1.4×103Pa.s、最大1.3×103Pa.s、最大1.0×103Pa.s、又は最大0.8×103Pa.sであってよい。
【0027】
例えば本発明によく適したPTFE又は変性PTFEなどのポリマー(FP)の微粉末は、ISO 13320に従ってレーザー光回折により決定されるそれらの平均粒子サイズd50によって特徴付けることができる。一実施形態によれば、ポリマー(FP)微粉末のd50は、最大25.0μm、例えば最大22.0μm、又は最大20.0μmである。d50の下限は特に限定されない。そうではあるものの、取り扱いの都合上、ポリマー(FP)微粉末のd50は通常少なくとも0.5μm、好ましくは少なくとも1.0μmであることが理解される。
【0028】
2.0μm~15.0μmの間、好ましくは2.5μm~12.0μmの間の平均サイズd50を有するPTFE又は変性PTFEの微粉末によって特に良い結果が得られた。
【0029】
PTFE又は変性PTFEの微粉末の平均サイズd50は、例えばレーザー回折粒子サイズLS(商標)13 320MW-Beckman Coulter計測器を使用して、レーザー光回折によってISO13320に従って決定される。
【0030】
本発明のフィルムにおいて使用可能なPTFE微粉末は、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.から市販されているPOLYMIST(登録商標)PTFE微粉化粉末である。
【0031】
いくつかの別の実施形態では、本発明の複合フィルムにおいて使用されるポリマー(FP)は、テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位に加えて、テトラフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー由来の繰り返し単位を含む。この少なくとも1種の追加のモノマーは、以下からなる群から選択することができる:
- 式CF
2=CFOR
f(式中、R
fはC1~C6パーフルオロアルキル基、好ましくはC1~C3パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF2=CFOX
0(式中、X
0は、1つ以上のエーテル基を含むC1~C12パーフルオロオキシアルキル基、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基である)のパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- ヘキサフルオロプロペン(HFP)などのC3~C8パーフルオロオレフィン;並びに
- 式(I)のパーフルオロジオキソール:
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、互いに同じであるか又は異なり、独立して、-F、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC1~C6フルオロアルキル基、及び任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC1~C6フルオロアルコキシ基からなる群から選択される)。
【0032】
これらの実施形態によれば、ポリマー(FP)は、好ましくは、テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位と、ポリマー(FP)中の総モル数を基準として、テトラフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー由来の繰り返し単位を少なくとも1.5モル%、例えば少なくとも5.0モル%、又は少なくとも7.0モル%含む。
【0033】
これらの実施形態によれば、ポリマー(FP)は、好ましくは、テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位と、ポリマー(FP)中の総モル数を基準として、テトラフルオロエチレンとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー由来の繰り返し単位を最大30.0モル%、例えば最大25.0モル%、又は最大20.0モル%含む。
【0034】
いくつかの有利な実施形態では、ポリマー(FP)は、テトラフルオロエチレンと、式CF2=CFORfのパーフルオロアルキルビニルエーテル(式中、RfはC1~C6パーフルオロアルキル基、好ましくはC1~C3パーフルオロアルキル基である)とのコポリマーからなる群から選択される。
【0035】
ポリマー(FP)は、有利には、ポリマー(FP)中の総モル数を基準として、
- 3.0~6.0モル%の、パーフルオロメチルビニルエーテル、プレフルオロエチルビニルエーテル、及びパーフルオロプロイルビニルエーテルから選択されるパーフルオロアルキルビニルエーテル由来の繰り返し単位と、
- 94.0~97.0モル%の、テトラフルオロエチレン由来の繰り返しと、
を含むテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーの群から選択することができる。
【0036】
ポリマー(FP)は、好ましくは、ポリマー(FP)中の総モル数を基準として、
- 3.0~6.0モル%の、パーフルオロメチルビニルエーテル又はパーフルオロプロピルビニルエーテル由来の繰り返し単位と、
- 94.0~97.0モル%の、テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位と、
を含むコポリマーから選択される。
【0037】
好ましくは、ポリマー(FP)は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、好ましくはテトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル、又はテトラフルオロエチレン/パーフルオロプロピルビニルエーテルコポリマーからなる群から選択される。より好ましくは、これは、ASTM D3835に従って1mm×10mmのハステロイダイを使用して372℃及び100s-1で測定される最大1.8×103Pa.s、例えば最大1.7×103Pa.s、最大1.6×103Pa.s、最大1.5×103Pa.s、又は最大1.4×103Pa.sの溶融粘度を有するテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、好ましくはテトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル又はテトラフルオロエチレン/パーフルオロプロピルビニルエーテルコポリマーから選択される。
【0038】
適切なポリマー(FP)の非限定的な例としては、特に、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.Aから、商標名HYFLON(登録商標)PFA Pシリーズ及びMシリーズ、並びにHYFLON(登録商標)MFAとして市販されているものが挙げられる。
【0039】
本発明によれば、複合フィルムに使用される繊維生地(F)は、アラミド生地、ガラス繊維生地、又は石英生地であってよい。
【0040】
好ましくは、繊維生地(F)はガラス繊維を含む。より好ましくは、ガラス繊維、ひいてはガラス繊維生地は、低い誘電率及び低い誘電正接によって特徴付けられる。
【0041】
有利な実施形態では、ガラス繊維生地は、少なくとも33.0質量部~48.0質量部の酸化ケイ素;1.0質量部~5.0質量部のアルミナ;5.0質量部~10.0質量部の酸化チタン;0.5質量部~4.0質量部の酸化ジルコニウム;並びに酸化物である酸化ホルミウム、アルカリ土類金属酸化物、酸化ネオジム、及び酸化鉄のうちの少なくとも1つ;を含む繊維から製造される。
【0042】
特定の実施形態では、ガラス繊維生地は、以下の組成を有する繊維から製造される:繊維の総質量に対して、酸化ケイ素35.0質量部~48.0質量部;アルミナ1.0質量部~5.0質量部;酸化チタン5.5質量部~10.0質量部;酸化ジルコニウム0.5質量部~4.0質量部;酸化ホルミウム3.0質量部以下;アルカリ土類金属酸化物32.0質量部~47.5質量部。或いは、ガラス繊維生地は、以下の組成を有する繊維から製造される:繊維の総質量に対して、酸化ケイ素33.0質量部~46.0質量部;アルミナ1.5質量部~5.0質量部;酸化チタン5.0質量部~10.0質量部;酸化ジルコニウム0.5質量部~4.0質量部;酸化ネオジム2.5質量部以下;酸化鉄1.2質量部以下;アルカリ土類金属酸化物31.0質量部~53.0質量部。
【0043】
ガラス繊維生地は、追加的又は代わりに、伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定される1GHzにおける誘電率Dkが5.5未満であり、伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定される1GHzにおける誘電正接Dfが0.0030未満であることによって特徴付けることができる。
【0044】
ガラス繊維生地は、好ましくは、伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定される、5.0未満の1GHzにおける誘電率Dkを有する。1GHzにおける誘電率Dkは、通常3.0以上である。ガラス繊維生地は、好ましくは、伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定される、0.0025未満、さらには0.0020未満の、1GHzにおける誘電正接Dfを有する。1GHzにおける誘電正接Dfは、通常0.0001以上である。
【0045】
上で詳述した特性を有するガラス繊維生地は、Nittobo及びCTG Taishan Fiberglassから入手可能である。
【0046】
繊維生地(F)は、織布であっても又は不織布であってもよい。繊維生地(F)は、例えば、約200μm以下、例えば180μm以下又は160μm以下の平均厚さを示し得る。繊維生地(F)中の繊維は、約25μm以下、例えば約23μm以下又は21μm以下の平均径を示し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、繊維生地(F)は、10g/m2~100g/m2、例えば12g/m2~90g/m2、又は15g/m2~80g/m2に含まれる平均目付(グラム/平方メートル又はg/m2)を有する生地である。
【0048】
いくつかの実施形態では、繊維生地(F)は、0.01mm~0.09mmの厚さ、さらには0.02mm~0.07mmの厚さを有する生地である。
【0049】
本発明のフィルムにおいてそのような繊維生地を使用することは、必要に応じて追加の剛性又は寸法安定性がもたらされるため有利である。これらの特徴は、有利なことには、特定の最終用途の要求に合わせるために、特定の生地の選択に基づいて最適化することができる。
【0050】
0.10mm未満の厚さを示す複合フィルムは、多層複合フィルムであってもよく、それぞれが同じであるか又は異なる複数の繊維生地(F)を含み得る。生地は、異なる厚さ及び/又は異なる組成のものであってもよい。これらは、異なる方向に配向していてもよい。例えば、複合フィルムは、2枚、3枚、4枚、5枚、及び最大10枚の繊維生地を重ね合わせたものから構成されていてもよい。
【0051】
本発明の多層フィルムでは、本明細書に記載のテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含む同じポリマー(FP)が各繊維生地間に存在してもよく、或いは各繊維生地間に異なるポリマー(FP)が使用されてもよい。或いは、層を一体に結合させるために化学的に異なるポリマーが使用されてもよい。そのような化学的に異なるポリマーの例としては、ポリイミド及び液晶ポリマーが挙げられる。
【0052】
本発明によれば、複合フィルムは、好ましくは複合フィルムの単位面積当たり約75重量%未満の繊維生地(F)、好ましくは5~70重量%又は10~60重量%の繊維生地(F)を含む。そのような重量パーセントでは、複合フィルムは、複合フィルムが高温から冷却される際にフルオロポリマー(例えばPTFE、PFAフィルム)の収縮に容易に追従する。
【0053】
本発明によれば、複合フィルムは、その繊維体積(V
f)が20~60体積%、例えば25~55体積%、又は30~50体積%であることが好ましく、Vfは以下の式に従って計算される:
【数1】
【0054】
本発明の複合フィルムは、複数の有利な誘電特性を示す。いくつかの実施形態では、複合フィルムは以下の誘電特性を有する:
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、3.5以下、3.0未満、さらには2.8未満、好ましくは2.5未満の、5GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、0.0050未満、0.0040未満、0.0030未満、さらには0.0020未満の、5GHzにおける誘電正接Df、及び/又は
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、3.0未満、さらには2.5未満の、20GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、0.0100未満、さらには0.0080未満の、20GHzにおける誘電正接Df、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、3.5未満、さらには3.0未満の、5GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、0.005未満、さらには0.004未満の、5GHzにおける誘電正接Df、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、3.0未満、さらには2.9未満の、20GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、0.0300未満、さらには0.0100未満の、20GHzにおける誘電正接Df。
【0055】
いくつかの実施形態では、複合フィルムは以下の誘電特性の組み合わせを有し得る:
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、3.0未満、さらには2.8未満の、5GHzにおける誘電率Dk、及び
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、0.0030未満、さらには0.0020未満の、5GHzにおける誘電正接Df、及び
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、2.8未満の20GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 100℃で1時間乾燥した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、0.0080未満の20GHzにおける誘電正接Df、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、3.5未満、さらには3.0未満の、5GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される、0.0050未満、さらには0.0040未満の、5GHzにおける誘電正接Df、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、3.0未満、さらには2.9未満の、20GHzにおける誘電率Dk、及び/又は
- 水に24時間浸漬した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定される、0.0300未満、さらには0.0100未満の、20GHzにおける誘電正接Df。
【0056】
いくつかの実施形態では、複合フィルムは、以下の誘電特性の組み合わせ:
- 2.5未満の5GHzにおけるDk、及び/又は
- 0.0015未満の5GHzにおけるDf;及び/又は
- 2.5未満の20GHzにおけるDk;及び/又は
- 0.0050未満の20GHzにおけるDf;及び/又は
- 3.0未満、さらには2.8未満の、50GHzにおけるDk;及び/又は
- 0.0030未満、さらには0.0025未満の、50GHzにおけるDf;及び/又は
- 3.0未満、さらには2.8未満の、75GHzにおけるDk;及び/又は
- 0.0030未満、さらには0.0025未満の、75GHzにおけるDf;及び/又は
- 3.0未満、さらには2.8未満の、100GHzにおけるDk;及び/又は
- 0.0030未満、さらには0.0025未満の、100GHzにおけるDf;
を有することができ、ここでのDkは、100℃で1時間乾燥した後に、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって測定され、Dfは、100℃で1時間乾燥した後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって測定される。
【0057】
いくつかの実施形態では、フィルムは、0℃~300℃の温度範囲で約50×10-6/℃未満、例えば40×10-6/℃未満、又は30×10-6/℃未満の熱膨張係数(CTE)を有するものである。この実施形態によれば、フィルムは、少なくとも1×10-6/℃又は少なくとも4×10-6/℃のCTEを有するものである。
【0058】
複合フィルムの製造方法
本発明の複合フィルムは、複数の異なる実施形態によって製造することができる。
【0059】
これらの方法のいくつかは、繊維生地(F)の少なくとも1つの表面に塗布される少なくとも1つのポリマー(FP)を含むポリマー粉末から開始することができる。これらの方法によれば、繊維生地の少なくとも1つの表面に塗布される少なくとも1種のポリマー(FP)の粉末は、そのd50が0.1~100μm、好ましくは1~90μm、又は5~80μmに含まれるものである。ポリマー(FP)の粉末のd50は、イソプロパノール中でのレーザー散乱によって測定することができる。ポリマー粉末は、当該技術分野で周知の充填剤及び他の添加剤を含む。そのような充填剤及び添加剤としては、例えば有機又は無機粒子、可塑剤、耐光及び耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、粘度剤、並びに潤滑剤を挙げることができる。
【0060】
0.1mm未満の厚さを示す複合フィルムを製造するための本発明の方法の1つは、以下の工程を含む:
a)少なくとも1種のポリマー(FP)を含む粉末を繊維生地の少なくとも1つの表面に塗布する工程であって、少なくとも1種のポリマー(FP)を含む粉末が0.1~100μmに含まれるd50を有する工程、
b)少なくとも1種のポリマー(FP)の粉末を、少なくとも0.3MPaの圧力P及び/又はT≧Tmとなるような温度Tで繊維生地に結合させる工程(Tmはポリマー粉末の溶融温度(℃)である)。
【0061】
上で言及した温度及び圧力において、ポリマー粉末は相転移し(典型的には溶融)、繊維生地にしっかりと結合させることができる。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態では、ポリマー(FP)の粉末は繊維生地の両面に塗布される。ポリマー(FP)の粉末を繊維生地の両面に塗布するために保護フィルムが使用されてもよい。
【0063】
好ましくは、工程b)は、少なくとも0.4MPa、少なくとも0.5MPa、又は少なくとも0.5MPaの圧力Pで、及び/又はT≧Tmとなるような温度Tで行われ、Tmはポリマー粉末の溶融温度(℃)である。いくつかの実施形態では、Tは、T≧Tm+5℃となるような温度である。いくつかの実施形態では、Tは、310℃≦T≦T400℃、例えば320℃≦T≦T390℃、又は325℃≦T≦T380℃、又は330℃≦T≦T360℃となるような温度である。
【0064】
工程b)は、例えば、ポリマー粉末が塗布された繊維生地を、ホットプレスを使用して圧縮成形することからなる。
【0065】
本発明の方法において成形プレスが使用される場合、プラテンへのフィルムの貼り付きが起こらないように、フィルムとプレスのプラテンとの間に剥離フィルムを使用することができる。複合フィルムの特性を妨げたり変化させたりしないいずれの剥離フィルムも適している。剥離フィルムは、例えば、ポリイミド、又は剥離コーティングされたアルミニウムなどの金属箔であってよい。
【0066】
このプロセスは、個々のフィルムが、例えばオートクレーブ又は真空/オーブンにおいて、スタックプレスを用いて一度に1つずつ形成され得ることを意味するバッチプロセスであってもよく、或いは例えば繊維生地の1つ以上のロールの有無にかかわらず、ポリマー粉末を少なくとも1つの繊維生地の上に連続的に広げ、ダブルベルトプレスを用いて高圧及び高温によってそれに結合させる連続プロセスであってもよい。ポリマー粉末がその融点を超えるときのプレス内の滞留時間は0.5~1,000秒である。典型的なダブルベルトプレスは、加熱ゾーンと冷却ゾーンを有し得る。
【0067】
フィルムに加えられる圧力及び温度の量は、使用されるポリマーの種類、使用される繊維生地、並びにそれぞれの物理的及び寸法的特性、並びにプレスの運転特性、物理的特性、及び寸法特性に依存する。ポリマー粉末の融点は、ポリマー粉末のサイズ、繊維生地の厚さ、熱伝達能力、そして当然複合フィルムの厚さ(多層構造を含む)と共に、重要な特徴である。また、(プレス機の)プラテンの熱伝達特性、そのサイズ及び厚さ、プレス機内でのフィルムの滞留時間なども非常に重要である。例えば、上述したテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーを含むポリマー粉末では、温度は約305℃より上にすべきである。特に好ましい温度範囲は約330℃~360℃である。この特定のポリマーを、約0.06mmの平均厚さを有する繊維生地と共に使用する場合、そのような複合フィルムに加えられる圧力は、0.3MPa~1.0MPaの範囲にすべきである。
【0068】
0.1mm未満の厚さを示す複合フィルムを製造するための本発明の方法の1つは、以下の工程を含む:
a)少なくとも1種のポリマー(FP)を含むポリマー粉末を繊維生地の少なくとも1つの表面に塗布する工程であって、少なくとも1種のポリマー(FP)を含むポリマー粉末が0.1~100μmのd50を示す工程、
b)電磁放射、赤外線、又は近赤外線によってポリマー粉末を繊維生地上で焼結する工程。
【0069】
ポリマー粉末は、静電塗装によって塗布されてもよい。
【0070】
この方法によれば、ポリマー粉末は、電磁放射、赤外線、又は近赤外線、例えば電磁ビーム源などの高出力レーザー源を使用して、繊維生地の表面で焼結される。
【0071】
0.1mm未満の厚さを示す複合フィルムを製造するための本発明の別の方法は、スラリー又は分散液の形態であるポリマー材料から開始することができる。
【0072】
0.1mm未満の厚さを示す複合フィルムを製造するための本発明の別の方法は、薄いフィルムの形態のポリマーから出発し、このポリマーは、本明細書に記載のポリマー(FP)からなることができ、或いは追加の成分若しくは添加剤を含み得る。
【0073】
0.1mm未満の厚さを示す複合フィルムを製造するためのこれらの方法の1つは、以下の工程を含む:
a)少なくとも1種のポリマー(FP)を含むポリマーフィルムを繊維生地の少なくとも1つの表面に貼る工程であって、ポリマーフィルムが0.09mm未満の厚さを示す工程、
b)少なくとも0.3MPaの圧力P及び/又はT≧Tmとなるような温度Tでポリマーフィルムを繊維生地に結合させる工程(Tmはポリマー(FP)の溶融温度(℃)である)。
【0074】
0.1mm未満の厚さを示す複合フィルムを製造するための別の方法は、以下の工程を含む:
a)少なくとも1種のポリマー(FP)を含むポリマーフィルムを繊維生地の少なくとも1つの表面に貼る工程であって、ポリマーフィルムが0.09mm未満の厚さを示す工程、
b)例えば電磁放射、赤外線、又は近赤外線によって、ポリマーフィルムを繊維生地に焼結する工程。
【0075】
多層複合フィルムの製造方法
本発明によれば、複数の別個の複合フィルムを互いに積層して、多層複合フィルムを製造することができる。複合フィルムは、例えば同じ方向に配置されてもよく、及び/又はこれらは異なる方向に配置することができる。必要に応じて、ホットプレスを使用して、積み重ねられた多層構造に対して新たなサイクル(又は複数回のサイクル)の圧縮成形が行われてもよい。
【0076】
或いは、多層複合フィルムは、
a)少なくとも1種のポリマー(FP)を含むポリマー粉末を、少なくとも2つの繊維生地の少なくとも1つの表面に塗布すること、
b)少なくとも2つの繊維生地を互いに積み重ねること、並びに
c)少なくとも0.3MPaの圧力P及び/又はT≧Tm(Tmはポリマー粉末の溶融温度(℃)である)の温度Tでポリマー粉末を繊維生地に結合させること、
によって製造することができる。
【0077】
或いは、工程c)は、上述したように、ポリマー粉末の焼結から構成されていてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、ポリマー粉末は、スラリー、例えば湿ったスラリーの形状である。
【0079】
いくつかの別の実施形態では、ポリマーは、繊維生地と結合させるために溶融される薄いフィルム(好ましくは0.09mm未満)の形状であってもよい。
【0080】
これらの選択肢のうちのいくつかを使用して、本発明による1つの多層複合フィルムを製造することができる。
【0081】
最終用途
本発明の複合フィルムは、0.10mm未満の厚さを特徴とするが、本発明は、本発明による複合フィルムのアセンブリにも関し、これは0.10mmを超える厚さを有する最終アセンブリになり得る。
【0082】
本発明は、上述した少なくとも1つの複合フィルムと、任意選択的な金属層、好ましくは銅層とを含む物品又は構成物品にも関する。金属層は、複合層の表面の少なくとも1つに接着される。
【0083】
本発明は、携帯電子デバイスの物品又は構成部品、例えばフレキシブルプリント回路基板(FPC)を製造するための少なくとも1つの複合フィルムの使用にも関する。
【0084】
本発明の複合フィルムは、特に、フレキシブルプリント回路基板(FPC)、テープ自動ボンディング(TAB)用のキャリアテープ、及びリードオンチップ(LOC)構造のテープを製造するために使用することができる。
【0085】
本発明は、0.10mm未満の厚さを有する複合フィルムを製造するためのポリマー(FP)の粉末の使用にも関し、前記複合フィルムは、少なくとも1つの繊維生地(F)をさらに含む。
【実施例】
【0086】
ここで、本開示を以下の実施例を参照してより詳細に記載するが、それらの目的は、例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0087】
出発物質
ガラス生地GF-1:Fiberglass(登録商標)生地108、BGF Industriesから市販、48gsm、厚さ0.06mm/2.4ミル、繊維径5μm
【0088】
ガラス生地GF-2:生地LD1035-127、CTG Taishan Fiberglassから市販;4.3~4.5の誘電率Dk@1GHz、0.0016の誘電正接Df@1GHz、DkとDfは、共に伝送線路法及びベクトルネットワークアナライザーを使用して測定。
【0089】
PFA-1:Hyflon(登録商標)PFA P7010、Solvay Specialty Polymersから市販されているテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、Tm=305℃、30μmのd50
【0090】
PFA-2:Hyflon(登録商標)PFA P7010、Solvay Specialty Polymersから市販されている、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、Tm=305℃、150μmのd50。
【0091】
フィルム製造方法
PFAポリマー粉末を、ポリマー/生地/ポリマーの構成でガラス生地(GF-1又はGF-2)上に分散させた。次いで、得られた成分の組み合わせを、温度330℃、圧力1MPaに設定したホットプレスを使用して、薄い複合フィルムへと圧縮成形した。フィルムを約10分間加熱した。ポリマー粉末が溶融し、生地の繊維に浸み込んだ。フィルムを直ちにプレスから取り出し、冷えたベンチトップ上に置き、周囲温度に戻した。複合フィルムの組成及び特性は、以下の結果のセクションで報告されている。
【0092】
試験方法
誘電性能(Dk、Df)
誘電率Dk及び誘電正接Dfは、100℃で1時間乾燥した後、及び水に24時間浸漬した後、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)、IEC61189-2-721:2015によって5GHzで測定した。
誘電率Dk及び誘電正接Dfは、100℃で1時間乾燥した後、及び水に24時間浸漬した後、スプリットシリンダ共振器、IPC TM-650 2.5.5.13によって20GHzで測定した。
【0093】
熱膨張係数(CTE)
CTEは、TMA装置を使用して、引張モードのASTM D696で測定した。
【0094】
引張り強さ
引張試験は、ASTM D882に従って、Instron(登録商標)機械試験機を使用して測定した。
【0095】
繊維の体積
繊維の体積(Vf)は、以下の式に従って計算される:
【数2】
【0096】
結果
【0097】
【0098】
【0099】
表2のデータは、周波数が10GHzより高い場合の本発明の複合フィルムの優れた誘電特性を示している。誘電特性は、100GHz)まで一貫して良好なままである。
【0100】
【0101】
表2に報告されているフィルム♯2のDk値とDf値を表3のフィルム♯3のDk値とDf値と比較すると、複合フィルムの製造プロセスにおいて、0.1~100μmの範囲のd50を有するフルオロポリマー粒子を使用した場合に、複合フィルムの優れた誘電特性をさらに向上させることができることが示される。
【0102】
GF-2のようなDk及びDfの値が低いガラス繊維生地を使用する場合にも、より優れた誘電特性を得ることができる。
【国際調査報告】