(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】血栓除去システムおよび関連方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240614BHJP
A61B 17/3207 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61B17/22
A61B17/3207
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575779
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022033024
(87)【国際公開番号】W WO2022261448
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512052029
【氏名又は名称】シファメド・ホールディングス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】アル-ジャッダ,アーデル
(72)【発明者】
【氏名】ソール,トム
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】サラヒエ,アムル
(72)【発明者】
【氏名】ガニング,ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルジェント,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ライフォード,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM36
(57)【要約】
本技術は、患者の血管から血栓を除去するためのシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、本技術は、患者の血管内に位置付けられるように構成された遠位部分と、患者に対して外部であるように構成された近位部分と、それらの間に延びる管腔とを有する細長いカテーテルを含むシステムを対象とする。本システムはまた、流体管腔と結合され、かつ血栓を少なくとも部分的に断片化するために流体を適用するように構成された流体送達機構も含むことができる。
【選択図】
図1~
図1L
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用端を含む細長い軸と、
前記細長い軸内の少なくとも1つの流体管腔と、
前記作用端に、または前記作用端の近くに配設された2つ以上の開口と、を備え、前記2つ以上の開口は前記少なくとも1つの流体管腔と流体連通し、相互作用領域で少なくとも部分的に衝突する2つ以上の流体流を発生させるように構成され、前記2つ以上の流体流は、標的血栓を機械的に断片化するように構成された前記相互作用領域にキャビテーションを生じさせるのに十分な流量を有する、血栓除去装置。
【請求項2】
作用端を含む細長い軸と、
前記細長い軸内の少なくとも1つの流体管腔と、
前記作用端に、または前記作用端の近くに配設された2つ以上の開口と、を備え、前記2つ以上の開口は前記少なくとも1つの流体管腔と流体連通し、相互作用領域で前記作用端内または前記作用端の近くで相互作用する2つ以上の流体流を発生させるように構成され、前記2つ以上の流体流は、標的血栓を機械的に細断するように構成された前記相互作用領域にキャビテーションを誘起するのに十分な流量および近接性を有する、血栓除去装置。
【請求項3】
前記2つ以上の流体流は、各々、50m/s~90m/sの流量を有する、請求項1または2に記載の血栓除去装置。
【請求項4】
前記2つ以上の流体流は、各々、少なくとも50m/sの流量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項5】
3m/sの管腔流量で前記少なくとも1つの流体管腔内を流れる流体が、少なくとも50m/sの流量を有する前記2つ以上の流体流をもたらす、請求項1から4のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項6】
4m/sの管腔流量で前記少なくとも1つの流体管腔内を流れる流体が、少なくとも70m/sの流量を有する前記2つ以上の流体流をもたらす、請求項1から4のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項7】
5m/sの管腔流量で前記少なくとも1つの流体管腔内を流れる流体が、少なくとも90m/sの流量を有する前記2つ以上の流体流をもたらす、請求項1から4のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項8】
前記相互作用領域は、前記2つ以上の流体流の焦点を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項9】
前記2つ以上の流体流は、前記細長い軸の長手軸線に概ね直交している、請求項1から8のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項10】
前記2つ以上の流体流は、焦点が前記2つ以上の開口に対して遠位であるように、遠位に向けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項11】
遠位に向けられた前記2つ以上の流体流は、前記焦点から遠位に延びるキャビテーションカラムを発生させるようにさらに構成される、請求項10に記載の血栓除去装置。
【請求項12】
前記2つ以上の流体流は、焦点が前記2つ以上の開口に対して近位であるように、近位に向けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項13】
近位に向けられた前記2つ以上の流体流は、前記焦点から近位に延びるキャビテーションカラムを発生させるようにさらに構成される、請求項12に記載の血栓除去装置。
【請求項14】
前記血栓除去装置上または前記血栓除去装置内に配設されるキャビテーション検出センサをさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項15】
前記キャビテーション検出センサは、前記血栓除去装置の前記作用端で漏斗部上または漏斗部内に配設される、請求項14に記載の血栓除去装置。
【請求項16】
前記キャビテーション検出センサは、前記血栓除去装置の前記作用端で吸引管腔上または吸引管腔内に配設される、請求項14に記載の血栓除去装置。
【請求項17】
前記キャビテーション検出センサは、超音波トランスデューサ素子を含む、請求項14に記載の血栓除去装置。
【請求項18】
前記キャビテーション検出センサは、水中聴音器を含む、請求項14に記載の血栓除去装置。
【請求項19】
前記キャビテーション検出センサは、レーザを含む、請求項14に記載の血栓除去装置。
【請求項20】
前記キャビテーション検出センサは、マイクロフォンを含む、請求項14に記載の血栓除去装置。
【請求項21】
実時間で前記キャビテーションを撮像するように構成された実時間撮像装置をさらに備える、請求項1から20のいずれか一項に記載の血栓除去装置。
【請求項22】
前記実時間撮像装置は、超音波撮像装置を含む、請求項21に記載の血栓除去装置。
【請求項23】
前記超音波撮像装置は、外部超音波撮像プローブを含む、請求項21に記載の血栓除去装置。
【請求項24】
前記超音波撮像装置は、カテーテルベースの超音波撮像装置を含む、請求項21に記載の血栓除去装置。
【請求項25】
患者の血管から血栓を除去する方法であって、
細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、
前記血栓の少なくとも一部を前記遠位部分内へ引き込むステップと、
相互作用領域で相互作用して前記血栓内にキャビテーションを生じさせる少なくとも20m/sの流量を有する2つ以上の流体流を発生させるステップと、を含む方法。
【請求項28】
患者の血管から血栓を除去する方法であって、
細長いカテーテルの遠位部分を前記血管内の血栓場所へ導入するステップと、
前記血栓の少なくとも一部を前記遠位部分内へ引き込むステップと、
相互作用領域で相互作用して前記血栓内にキャビテーションを生じさせる少なくとも50m/sの流量を有する2つ以上の流体流を発生させるステップと、を含む方法。
【請求項29】
患者の血管から血栓を除去する方法であって、
細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、
前記血栓の少なくとも一部を前記遠位部分内へ引き込むステップと、
相互作用領域で前記遠位部分内または前記遠位部分の近くで相互作用する2つ以上の流体流を発生させるステップと、を含み、前記2つ以上の流体流は、
1)前記2つ以上の流体流が、前記相互作用領域で交わる前に、前記血栓を初めに切断するときの薄く切る力、
2)前記2つ以上の流体流が相互作用してキャビテーションを発生させるときの前記相互作用領域でのキャビテーション力、
3)互いに対して移動してせん断キャビテーションを発生させる前記2つ以上の流体流によって引き起こされるせん断力、および
4)前記せん断力と前記キャビテーション力とによって引き起こされる回転流体運動力を含む少なくとも4つの異なる破断力を前記血栓に加えるように構成される、方法。
【請求項30】
前記引き込むステップは、前記細長いカテーテルの吸引管腔を介して適用される吸着による、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記2つ以上の流体流を前記発生させるステップは、前記2つ以上の流体流を前記細長いカテーテルの流体流開口に対して近位に向けるステップをさらに含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記2つ以上の流体流を前記発生させるステップは、前記2つ以上の流体流を前記細長いカテーテルの流体流開口に対して遠位に向けるステップをさらに含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記2つ以上の流体流を前記発生させるステップは、前記2つ以上の流体流を前記細長いカテーテルの長手軸線に概ね直交して向けるステップをさらに含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記2つ以上の流体流の一部分のみが前記相互作用領域で相互作用する、請求項27から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記相互作用領域で相互作用しない前記2つ以上の流体流の第2の部分が、少なくとも1つのせん断キャビテーション流を前記血栓に発生させる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記相互作用領域で相互作用しない前記2つ以上の流体流の第2の部分が、少なくとも1つのハローキャビテーション流を前記血栓に発生させる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記流量は、20m/s~90m/sの範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記流量は50m/s~90m/sの範囲である、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
患者の血管から血栓を除去する方法であって、
細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、
前記血栓の少なくとも一部分を前記遠位部分内へ引き込むステップと、
2つ以上の流体流を前記血栓内へ向けて前記血栓を切断または部分的に切断するステップと、
前記血栓の少なくとも一部分を前記遠位部分から除去するステップと、
前記2つ以上の流体流を、前記2つ以上の流れが前記血栓内の相互作用領域において別の流れと交わりかつ相互作用するまで、前記血栓内へ向け続けるステップと、
キャビテーションを前記相互作用領域に発生させるのに十分な前記2つ以上の流体流の流量を維持するステップと、
前記血栓の少なくとも一部分を前記遠位部分から除去するステップと、を含む方法。
【請求項40】
前記流量は少なくとも20m/sである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記流量は少なくとも50m/sである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記流量は20m/s~90m/sである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記キャビテーションをキャビテーションセンサで検出するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記向けるステップの時に、キャビテーションがないことを判定するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
キャビテーションがないことをユーザに示すステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
血栓除去装置で患者の血管から血栓を除去する方法であって、
細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、
前記細長いカテーテルの漏斗部を前記血栓場所で広げるステップと、
前記細長いカテーテルの吸引源を第1の真空レベルで操作するステップと、
前記血栓の少なくとも一部を前記遠位部分の前記漏斗部内へ捕捉するステップと、
前記血栓の少なくとも前記一部が前記漏斗部内へ捕捉されたことを判定するステップと、
前記細長いカテーテルの少なくとも2つの異なる噴射ポートから前記血栓の方へ流体を向けるステップと、
前記吸引源を前記第1の真空レベルよりも高い第2の真空レベルで操作して前記血栓を前記患者から除去するステップと、を含む方法。
【請求項47】
前記引き込むステップは、前記細長いカテーテルの吸引管腔を介して適用される吸着による、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記流体は、少なくとも20メートル/秒(m/s)の平均速度を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記血栓の少なくとも前記一部が前記漏斗部内へ捕捉されたことを前記判定するステップは、前記血栓除去装置の少なくとも1つの噴射ポートでの血栓捕捉に関連する圧力変化を識別するステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記圧力変化は、圧力閾値を下回る圧力降下を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記圧力変化は、圧力閾値よりも大きい変化率を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記圧力変化は、閾値を下回る圧力変動を識別するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記圧力変化は、前記第2の真空レベルを上回る圧力増加を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記流体を向けるステップは、相互作用領域において別の流体流と相互作用する流体流を向けるステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記流体を向けるステップは、前記流体流を交差させるステップをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
流体流は、前記細長いカテーテルの長手軸線に直交している、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記流体流は近位に向けられる、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記血栓の少なくとも前記一部が前記漏斗部内へ捕捉されたことを前記判定するステップは、前記血栓除去装置の遠位部分に位置付けられるセンサでインピーダンスの変化を検出するステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
いつ前記血栓が除去されたかを判定するステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
血栓除去装置で患者の血管から血栓を除去する方法であって、
細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、
前記細長いカテーテルの漏斗部を前記血栓場所で広げるステップと、
血栓と係合する前に第1の吸着レベルで吸引管腔を操作するステップと、
前記血栓の少なくとも一部を前記遠位部分の前記漏斗部内へ捕捉するステップと、
前記血栓の少なくとも前記一部が前記漏斗部内へ捕捉されたことを判定するステップと、
前記細長いカテーテルの少なくとも2つの異なる噴射ポートから前記血栓の方へ流体を向けるステップと、
前記第1の吸着レベルよりも高い第2の吸着レベルで前記吸引管腔を操作して前記血栓を前記患者から除去するステップと、を含む方法。
【請求項61】
前記血栓が前記患者から完全に除去されたかどうかを判定するステップをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記吸引管腔を前記第1の吸着レベルで操作し、前記流体を向けることを停止するステップをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
血栓除去装置で患者の血管から血栓を除去する方法であって、
細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、
前記細長いカテーテルの漏斗部を前記血栓場所で広げるステップと、
前記細長いカテーテルの吸引源を操作するステップと、
前記吸引源の流量を測定するステップと、
前記血栓の少なくとも一部を前記遠位部分の前記漏斗部内へ捕捉するステップと、
前記血栓の少なくとも前記一部が前記漏斗部内へ捕捉されたことを前記流量に基づいて判定するステップと、
それぞれの流体経路に沿って少なくとも2つの異なる点から前記血栓の方へ流体を向けるステップと、
前記吸引源で前記患者から前記血栓を除去するステップと、を含む方法。
【請求項64】
前記引き込むステップは、前記細長いカテーテルの吸引管腔を介して適用される吸着による、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記流量の変化率を判定するステップをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記変化率が所定閾値を上回るときに、前記血栓の少なくとも前記一部が前記漏斗部内へ捕捉されたことを判定するステップをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記流量がゼロに達したときに、前記血栓が前記漏斗部内へ完全に捕捉されることを判定するステップをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記血栓が完全に捕捉されたことをユーザに示すステップをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記流体を向けるステップは、前記血栓の少なくとも一部が前記漏斗部内へ捕捉されたことが判定された後でのみ行われる、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
第1の期間、より低い流量で前記血栓の方へ流体を向けるステップをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
細長いカテーテルと、
前記カテーテルの遠位端に配設された半球状漏斗部と、
吸引管腔で前記半球状漏斗部に結合された吸引源と、
前記半球状漏斗部内または前記半球状漏斗部の近くに配設された複数の噴出口と、
前記複数の噴出口に結合され、かつ流体を共通の交点の方へ向けるように構成された流体源と、を備える血栓除去装置。
【請求項72】
作用端を含む細長い軸と、
前記細長い軸に配設され、前記作用端まで延び、吸引源に結合される吸引管腔と、
前記細長い軸内の少なくとも1つの流体管腔と、
前記作用端に、または前記作用端の近くに配設された2つ以上の開口であって、前記少なくとも1つの流体管腔と流体連通し、かつ2つ以上の流体流を発生させるように構成された前記2つ以上の開口と、
前記吸引管腔に配設され、かつ、前記少なくとも1つの流体管腔と流体連通している少なくとも1つの開口であって、吸引流体流を発生させるように構成された前記少なくとも1つの開口と、
前記吸引源を制御し、流体の流れを前記少なくとも1つの流体管腔内へ向けるように構成された電子制御器と、を備える血栓除去装置。
【請求項73】
前記吸引流体流は、近位に前記吸引管腔内へ向けられるように構成される、請求項72に記載の装置。
【請求項74】
前記吸引管腔内に配設され、前記電子制御器に動作可能に結合されている弁をさらに備える、請求項72に記載の装置。
【請求項75】
通常動作モードでは、前記電子制御器は、前記弁を開き、流体の流れを前記2つ以上の開口内へ向けるが、前記吸引管腔内の前記少なくとも1つの開口には向けないように構成される、請求項74に記載の装置。
【請求項76】
詰まり除去モードでは、前記電子制御器は、前記弁を閉じ、流体の流れを前記吸引管腔内の前記少なくとも1つの開口内へ向けるように構成される、請求項74に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2021年6月10日出願の米国仮出願第63/209,257号、2021年9月29日出願の米国仮出願第63/250,089号、2021年12月1日出願の米国仮出願第63/285,054号、2022年4月27日出願の米国仮出願第63/335,656号の優先権の利益を主張しており、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
参照による組み込み
[0002]本明細書で言及されるすべての公報および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
分野
[0003]本技術は、一般に、医療装置に関し、特に、哺乳類の血管から血栓を除去する吸引および流体送達機構を含むシステム、ならびに関連する方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
[0004]血栓性物質は、哺乳類の血管系内の流体の流れの閉塞につながる可能性がある。このような閉塞は、肺系統、末梢血管系、深部血管系、または脳内など、身体内の様々な領域で生じることがある。肺塞栓症は、典型的には、身体の別の部分(例えば、骨盤または脚の静脈)から生ずる血栓が外れて肺に移動するときに起こる。抗凝固療法は、肺塞栓症を治療するための現在の標準治療法であるが、一部の患者では効果がないことがある。加えて、血栓性物質を除去するための従来の装置は、蛇行する血管の解剖学的構造を進行できないことがあり、血栓性物質を除去する際に有効でないことがあり、かつ/または血栓除去術手順中に、臨床医にセンサデータまたは他のフィードバックを提供する能力を欠くことがある。既存の血栓除去術装置は、特定の血塊に対しては十分に働くが、困難で組織化された血塊に対してはほとんど効果がない単純な吸引に基づいて動作する。深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombus)を呈する多くの患者は、四肢虚血の危険性が低い限り、未治療のままである。より緊急性の高い場合では、カテーテル血栓溶解療法または溶解療法で治療されて何時間もまたは何日もかけて血塊を細分化する。最近では、DVTおよび肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)を治療するために血栓回収器のような他の道具が開発されたが、これらの道具は、吸引または症例の標準に対して有効性が限られ、追加コストがかかるため、広く採用されていない。他の最近の開発は、血塊を薄切りすることまたは浸軟させることに焦点を当てているが、これらの機構はカテーテルの詰まりのおそれを低減するように設計され、硬く、大きく、組織化された血塊の問題には対処していない。種々の血塊形態を除去するための迅速で使いやすく、効果的な装置を含むが、これに限定されない、既存の静脈血栓除去術に関するこれらの問題および他の問題に対処する装置が必要とされたままである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
開示の概要
[0029]作用端を含む細長い軸と、細長い軸内の少なくとも1つの流体管腔と、作用端に、または作用端の近くに配設された2つ以上の開口とを備え、2つ以上の開口は少なくとも1つの流体管腔と流体連通し、相互作用領域で少なくとも部分的に衝突する2つ以上の流体流を発生させるように構成され、2つ以上の流体流は、標的血栓を機械的に断片化するように構成された相互作用領域にキャビテーションを生じさせるのに十分な流量を有する、血栓除去が提供される。
【0004】
[0030]作用端を含む細長い軸と、細長い軸内の少なくとも1つの流体管腔と、作用端に、または作用端の近くに配設された2つ以上の開口とを備え、2つ以上の開口は少なくとも1つの流体管腔と流体連通し、相互作用領域で作用端内または作用端の近くで相互作用する2つ以上の流体流を発生させるように構成され、2つ以上の流体流は、標的血栓を機械的に細断するように構成された相互作用領域にキャビテーションを誘起するのに十分な流量および近接性を有する、血栓除去装置も提供される。
【0005】
[0031]いくつかの実施形態では、2つ以上の流体流は、各々、50m/s~90m/sの流量を有する。
【0006】
[0032]他の実施形態では、2つ以上の流体流は、各々、少なくとも50m/sの流量を有する。
【0007】
[0033]いくつかの例では、3m/sの管腔流量で少なくとも1つの流体管腔内を流れる流体が、少なくとも50m/sの流量を有する2つ以上の流体流をもたらす。
【0008】
[0034]他の実施形態では、4m/sの管腔流量で少なくとも1つの流体管腔内を流れる流体は、少なくとも70m/sの流量を有する2つ以上の流体流をもたらす。
【0009】
[0035]いくつかの例では、5m/sの管腔流量で少なくとも1つの流体管腔内を流れる流体は、少なくとも90m/sの流量を有する2つ以上の流体流をもたらす。
【0010】
[0036]一実施形態では、相互作用領域は、2つ以上の流体流の焦点(換言すれば、集合点または集合位置)を含む。
【0011】
[0037]いくつかの実施形態では、2つ以上の流体流は、細長い軸の長手軸線に概ね直交している。
【0012】
[0038]いくつかの例では、2つ以上の流体流は、焦点が2つ以上の開口に対して遠位であるように、遠位に向けられる。
【0013】
[0039]一実施形態では、遠位に向けられた2つ以上の流体流は、焦点から遠位に延びるキャビテーションカラムを発生させるようにさらに構成される。
【0014】
[0040]いくつかの実施形態では、2つ以上の流体流は、焦点が2つ以上の開口に対して近位であるように、近位に向けられる。
【0015】
[0041]一実施形態では、近位に向けられた2つ以上の流体流は、焦点から近位に延びるキャビテーションカラムを発生させるようにさらに構成される。
【0016】
[0042]いくつかの例では、キャビテーション検出センサは、血栓除去装置上または血栓除去装置内に配設される。
【0017】
[0043]いくつかの実施形態では、キャビテーション検出センサは、血栓除去装置の作用端で漏斗部上または漏斗部内に配設される。
【0018】
[0044]別の実施形態では、キャビテーション検出センサは、血栓除去装置の作用端で吸引管腔上または吸引管腔内に配設される。
【0019】
[0045]いくつかの例では、キャビテーション検出センサは、超音波トランスデューサ素子を含む。
【0020】
[0046]他の実施形態では、キャビテーション検出センサは、水中聴音器を含む。
【0021】
[0047]いくつかの例では、キャビテーション検出センサは、レーザを含む。
【0022】
[0048]他の実施形態では、キャビテーション検出センサは、マイクロフォンを含む。
【0023】
[0049]別の実施形態は、実時間でキャビテーションを撮像するように構成された実時間撮像装置を含む。いくつかの実施形態では、実時間撮像装置は、超音波撮像装置を含む。いくつかの実施形態では、超音波撮像装置は、外部超音波撮像プローブを含む。他の実施形態では、超音波撮像装置は、カテーテルベースの超音波撮像装置を含む。
【0024】
[0050]患者の血管から血栓を除去する方法が提供され、本方法は、細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、血栓の少なくとも一部を遠位部分内へ引き込むステップと、相互作用領域で相互作用して血栓内にキャビテーションを生じさせる少なくとも20m/sの流量を有する2つ以上の流体流を発生させるステップとを含む。
【0025】
[0051]患者の血管から血栓を除去する方法がまた、提供され、本方法は、細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、血栓の少なくとも一部を遠位部分内へ引き込むステップと、相互作用領域で相互作用して血栓内にキャビテーションを生じさせる少なくとも50m/sの流量を有する2つ以上の流体流を発生させるステップとを含む。
【0026】
[0052]患者の血管から血栓を除去する方法が提供され、本方法は、細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、血栓の少なくとも一部を遠位部分内へ引き込むステップと、相互作用領域で遠位部分内または遠位部分の近くで相互作用する2つ以上の流体流を発生させるステップとを含み、2つ以上の流体流は、1)2つ以上の流体流が、相互作用領域で交わる前に、血栓を初めに切断するときの薄く切る力、2)2つ以上の流体流が相互作用してキャビテーションを発生させるときの相互作用領域でのキャビテーション力、3)互いに対して移動してせん断キャビテーションを発生させる2つ以上の流体流によって引き起こされるせん断力、および4)せん断力とキャビテーション力とによって引き起こされる回転流体運動力を含む少なくとも4つの異なる破断力を血栓に加えるように構成される。
【0027】
[0053]いくつかの実施形態では、引き込むステップは、細長いカテーテルの吸引管腔を介して適用される吸着による。
【0028】
[0054]一実施形態では、2つ以上の流体流を発生させるステップは、2つ以上の流体流を細長いカテーテルの流体流開口に対して近位に向けるステップをさらに含む。
【0029】
[0055]いくつかの実施形態では、2つ以上の流体流を発生させるステップは、2つ以上の流体流を細長いカテーテルの流体流開口に対して遠位に向けるステップをさらに含む。
【0030】
[0056]一実施形態では、2つ以上の流体流を発生させるステップは、2つ以上の流体流を細長いカテーテルの長手軸線に概ね直交して向けるステップをさらに含む。
【0031】
[0057]いくつかの例では、2つ以上の流体流の一部分のみが相互作用領域で相互作用する。
【0032】
[0058]他の実施形態では、相互作用領域で相互作用しない2つ以上の流体流の第2の部分が、少なくとも1つのせん断キャビテーション流を血栓に発生させる。
【0033】
[0059]いくつかの実施形態では、相互作用領域で相互作用しない2つ以上の流体流の第2の部分が、少なくとも1つのハローキャビテーション流を血栓に発生させる。
【0034】
[0060]一実施形態では、流量は、20m/s~90m/sである。
【0035】
[0061]いくつかの実施形態では、流量は50m/s~90m/sである。
【0036】
[0062]患者の血管から血栓を除去する方法であって、本方法は、細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、血栓の少なくとも一部分を遠位部分内へ引き込むステップと、2つ以上の流体流を血栓内へ向けて血栓を切断または部分的に切断するステップと、血栓の少なくとも一部分を遠位部分から除去するステップと、2つ以上の流体流を、2つ以上の流れが血栓内の相互作用領域において別の流れと交わりかつ相互作用するまで、血栓内へ向け続けるステップと、キャビテーションを相互作用領域に発生させるのに十分な2つ以上の流体流の流量を維持するステップと、血栓の少なくとも一部分を遠位部分から除去するステップと、を含む。
【0037】
[0063]いくつかの実施形態では、流量は少なくとも20m/sである。
【0038】
[0064]他の実施形態では、流量は少なくとも50m/sである。
【0039】
[0065]いくつかの実施形態では、流量は20m/s~90m/sである。
【0040】
[0066]いくつかの実施形態では、本方法は、キャビテーションをキャビテーションセンサで検出するステップをさらに含む。
【0041】
[0067]一例では、本方法は、向けるステップの時に、キャビテーションがないことを判定するステップを含む。
【0042】
[0068]いくつかの実施形態では、本方法は、キャビテーションがないことをユーザに示すステップをさらに含む。
【0043】
[0069]血栓除去装置で患者の血管から血栓を除去する方法が提供され、本方法は、細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、細長いカテーテルの漏斗部を血栓場所で広げるステップと、細長いカテーテルの吸引源を第1の真空レベルで操作するステップと、血栓の少なくとも一部を遠位部分の漏斗部内へ捕捉するステップと、血栓の少なくとも一部が漏斗部内へ捕捉されたことを判定するステップと、細長いカテーテルの少なくとも2つの異なる噴射ポートから血栓の方へ流体を向けるステップと、吸引源を第1の真空レベルよりも高い第2の真空レベルで操作して血栓を患者から除去するステップと、を含む。
【0044】
[0070]いくつかの実施形態では、引き込むステップは、細長いカテーテルの吸引管腔を介して適用される吸着による。
【0045】
[0071]一実施形態では、流体は、少なくとも20メートル/秒(m/s:meters/second)の平均速度を有する。
【0046】
[0072]いくつかの実施形態では、血栓の少なくとも一部が漏斗部内へ捕捉されたことを判定するステップは、血栓除去装置の少なくとも1つの噴射ポートでの血栓捕捉に関連する圧力変化を識別するステップをさらに含む。
【0047】
[0073]一例では、圧力変化は、圧力閾値を下回る圧力降下を含む。
【0048】
[0074]別の実施形態では、圧力変化は、圧力閾値よりも大きい変化率を含む。
【0049】
[0075]いくつかの実施形態では、圧力変化は、閾値を下回る圧力変動を識別することを含む。
【0050】
[0076]いくつかの例では、圧力変化は、第2の真空レベルを上回る圧力増加を含む。
【0051】
[0077]いくつかの実施形態では、流体を向けるステップは、相互作用領域において別の流体流と相互作用する流体流を向けるステップをさらに含む。
【0052】
[0078]他の実施形態では、流体を向けるステップは、流体流を交差させるステップをさらに含む。
【0053】
[0079]いくつかの例では、流体流は、細長いカテーテルの長手軸線に直交している。
【0054】
[0080]別の例では、流体流は近位に向けられる。
【0055】
[0081]いくつかの例では、血栓の少なくとも一部が漏斗部内へ捕捉されたことを判定するステップは、血栓除去装置の遠位部分に位置付けられるセンサでインピーダンスの変化を検出するステップをさらに含む。
【0056】
[0082]別の実施形態では、本方法は、いつ血栓が除去されたかを判定するステップを含む。
【0057】
[0083]血栓除去装置で患者の血管から血栓を除去する方法が提供され、本方法は、細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、細長いカテーテルの漏斗部を血栓場所で広げるステップと、血栓と係合する前に第1の吸着レベルで吸引管腔を操作するステップと、血栓の少なくとも一部を遠位部分の漏斗部内へ捕捉するステップと、血栓の少なくとも一部が漏斗部内へ捕捉されたことを判定するステップと、細長いカテーテルの少なくとも2つの異なる噴射ポートから血栓の方へ流体を向けるステップと、第1の吸着レベルよりも高い第2の吸着レベルで吸引管腔を操作して血栓を患者から除去するステップと、を含む。
【0058】
[0084]いくつかの実施形態では、本方法は、血栓が患者から完全に除去されたかどうかを判定するステップを含む。
【0059】
[0085]別の実施形態では、本方法は、吸引管腔を第1の吸着レベルで操作するステップと、流体を向けることを停止するステップとを含む。
【0060】
[0086]血栓除去装置で患者の血管から血栓を除去する方法が提供され、本方法は、細長いカテーテルの遠位部分を血管内の血栓場所へ導入するステップと、細長いカテーテルの漏斗部を血栓場所で広げるステップと、細長いカテーテルの吸引源を操作するステップと、吸引源の流量を測定するステップと、血栓の少なくとも一部を遠位部分の漏斗部内へ捕捉するステップと、血栓の少なくとも一部が漏斗部内へ捕捉されたことを流量に基づいて判定するステップと、それぞれの流体経路に沿って少なくとも2つの異なる点から血栓の方へ流体を向けるステップと、吸引源で患者から血栓を除去するステップと、を含む。
【0061】
[0087]いくつかの実施形態では、引き込むステップは、細長いカテーテルの吸引管腔を介して適用される吸着による。
【0062】
[0088]別の実施形態では、本方法は、流量の変化率を判定するステップを含む。
【0063】
[0089]いくつかの例では、本方法は、変化率が所定閾値を上回るときに、血栓の少なくとも一部が漏斗部内へ捕捉されたことを判定するステップを含む。
【0064】
[0090]いくつかの実施形態では、本方法は、流量がゼロに達したときに、血栓が漏斗部内へ完全に捕捉されることを判定するステップをさらに含む。
【0065】
[0091]一実施例では、本方法は、血栓が完全に捕捉されたことをユーザに示すステップを含む。
【0066】
[0092]いくつかの実施形態では、流体を向けるステップは、血栓の少なくとも一部が漏斗部内へ捕捉されたことが判定された後でのみ行われる。
【0067】
[0093]別の実施形態では、本方法は、第1の期間、より低い流量で血栓の方へ流体を向けるステップを含む。
【0068】
[0094]細長いカテーテルと、カテーテルの遠位端に配設された半球状漏斗部と、吸引管腔で半球状漏斗部に結合された吸引源と、半球状漏斗部内または半球状漏斗部の近くに配設された複数の噴出口と、複数の噴出口に結合され、かつ流体を共通の交点の方へ向けるように構成された流体源と、を備える血栓除去装置。
【0069】
[0095]作用端を含む細長い軸と、細長い軸に配設され、作用端まで延び、吸引源に結合される吸引管腔と、細長い軸内の少なくとも1つの流体管腔と、作用端に、または作用端の近くに配設された2つ以上の開口であって、少なくとも1つの流体管腔と流体連通し、かつ2つ以上の流体流を発生させるように構成された2つ以上の開口と、吸引管腔に配設され、かつ、少なくとも1つの流体管腔と流体連通している少なくとも1つの開口であって、吸引流体流を発生させるように構成された少なくとも1つの開口と、吸引源を制御し、流体の流れを少なくとも1つの流体管腔内へ向けるように構成された電子制御器と、を備える血栓除去装置が提供される。
【0070】
[0096]いくつかの実施形態では、吸引流体流は、近位に吸引管腔内へ向けられるように構成される。
【0071】
[0097]別の実施例では、本装置は、吸引管腔内に配設され、電子制御器に動作可能に結合されている弁を含む。
【0072】
[0098]いくつかの実施形態では、通常動作モードでは、電子制御器は、弁を開き、流体の流れを2つ以上の開口内へ向けるが、吸引管腔内の少なくとも1つの開口には向けないように構成される。
【0073】
[0099]別の実施例では、詰まり除去モードでは、電子制御器は、弁を閉じ、流体の流れを吸引管腔内の少なくとも1つの開口内へ向けるように構成される。
【0074】
[0005]本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に特に記載される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】[0006]本技術の実施形態により構成された細長いカテーテルの遠位部分を含む血栓除去システムの一部分を例示する図である。
【
図1A】上記血栓除去システムの上記部分のA-A断面を例示する図である。
【
図1B】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1C】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1D】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1E】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1F】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1G】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1H】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1I】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1J】上記血栓除去システムの上記部分のB-B断面を例示する図である。
【
図1K】上記血栓除去システムの上記部分のC-C断面を例示する図である。
【
図1L】血栓除去システムの部分を例示する図である。
【
図2A】[0007]
図2Aは、本技術の実施形態による血栓除去システムの灌注ポートおよび流体流の構成を例示する平面図である。
【
図3】[0008]
図3Aは、本技術の実施形態による血栓除去システムの灌注ポートの構成を例示する立面図である。
図3Bは上記構成を例示する立面図である。
図3Cは上記構成を例示する立面図である。
図3Dは上記構成を例示する立面図である。
図3Eは上記構成を例示する立面図である。
図3Fは上記構成を例示する立面図である。
図3Gは上記構成を例示する立面図である。
図3Hは上記構成を例示する立面図である。
【
図4A】[0009]本技術の実施形態による血栓除去システムの灌注ポートおよび流体流の構成を例示する立面図である。
【
図4G】上記構成のD-D断面を例示する図である。
【
図4H】上記構成のD-D断面を例示する図である。
【
図5A】[0010]
図5Aは、本技術の実施形態による血栓除去システムの灌注ポートの構成を例示する。
【
図6A】[0011]生理食塩水源と、吸引システムと、システムの灌注および/または吸引を制御するための1つまたは複数の制御器とを含む血栓除去システムの実施形態を例示する図である。
【
図6B】上記システムの実施形態を例示する図である。
【
図6C】上記システムの実施形態を例示する図である。
【
図7】[0012]
図7Aは、血栓除去システムの詰まり検出および/または詰まり除去特徴の構成を例示する図である。
図7Bは上記構成を例示する図である。
図7Cは上記構成を例示する図である。
図7Dは上記構成を例示する図である。
【
図8A】[0013]
図8Aは、血栓除去システムの様々な灌注ポートを制御する一実施形態を例示する図である。
【
図9A】[0014]血栓除去システムのシステム概略図である。
【
図9B】[0015]血塊を検出するように構成された1つまたは複数のセンサを含む血栓除去システムの一実施形態の図である。
【
図10】[0016]血栓除去システムの様々なシステム状態を示す表である。
【
図11】[0017]血栓除去システムの様々なシステム状態の手順フローチャートである。
【
図12A】[0018]
図12Aは、血塊係合状態時の圧力波形グラフを例示する図である。
【
図13】[0019]血栓除去システムの簡略化されたシステム概略図である。
【
図14】[0020]血栓除去システムの流れ波形の一実施形態の図である。
【
図15】[0021]血栓除去システムの吸引方式を例示する図である。
【
図16A】[0022]血栓除去システムの一実施形態を例示する図である。
【
図17】[0023]血栓除去システムの様々な灌注ポンプサイクルを例示する図である。
【
図18】[0024]吸引源の近くに弁を有する血栓除去システムを例示する図である。
【
図19】[0025]
図19Aは、漏斗部に複数の支柱を有する血栓除去システムを例示する図である。
図19Bは、漏斗部に複数の支柱を有する血栓除去システムを例示する図である。
【
図20A】[0026]
図20Aは、半球状漏斗部を有する血栓除去システムを例示する図である。
【
図20B】
図20Bは、半球状漏斗部を有する血栓除去システムを例示する図である。
【
図21】[0027]治療時に除去された血塊の体積を評価する方法を説明するフローチャートである。
【
図22】[0028]本明細書に開示される流体流の作用の様々な機構を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
詳細な説明
[0100]本出願は、2021年3月4日に出願された国際出願第PCT/US2021/020915(‘915出願)の開示に関連し、その開示はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。‘915出願は、血栓を捕捉して除去するための一般的な機構を説明する。例えば、カテーテルは、血塊物質を細分化して吸引管腔内へ引き込むためのオーガなどの捕捉素子を含んでよい。別の例では、複数の流体流が血塊の方へ向けられ、物質を断片化する。
【0077】
[0101]本技術は、一般に、血栓除去システムおよび関連方法を対象とする。本技術の実施形態によって構成されるシステムは、例えば、患者の血管内に位置付けられるように構成された遠位部分と、患者に対して外部になるように構成された近位部分と、加圧された流体で血栓を断片化するように構成された流体送達機構と、血栓の断片を吸引するように構成された吸引機構と、近位部分から遠位部分まで少なくとも部分的に延びる1つまたは複数の管腔と、を有する細長いカテーテルを含むことができる。
【0078】
[0102]以下に提示される説明で使用される用語は、本技術の特定の具体的な実施形態の詳細な説明と併せて使用される場合であっても、最も広い妥当な態様で解釈されることが意図される。以下では特定の用語が強調されることもあるが、何らかの限定的な態様で解釈されることが意図される任意の用語は、この発明を実施するための形態のセクションで明白に、かつ具体的に定義される。加えて、本技術は、実施例の範囲内にあるが図に関連して詳細には説明されない他の実施形態を含むことができる。
【0079】
[0103]本明細書の全体を通して「一実施形態」または「実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通して様々な箇所で「一実施形態では」または「実施形態では」というフレーズが現れることは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴または特性が、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な態様で組み合わされてよい。
【0080】
[0104]本明細書の全体を通して、例えば、「概ね」、「およそ」、および「約」などの相対的な用語の言及は、本明細書では、記載される値のプラスまたはマイナス10%を意味するように使用される。
【0081】
[0105]本明細書のいくつかの実施形態は血栓除去に関連して説明されるが、本技術が、脂肪、組織、または異物などの、血管を閉塞することがある他のタイプの塞栓を除去するのに使用できる、かつ/またはそのために修正できることが認識される。加えて、本明細書のいくつかの実施形態は肺動脈からの血栓除去の文脈で説明されるが(例えば、肺塞栓摘出術)、本技術は、血管系の他の部分(例えば、神経血管、冠状動脈、または、末梢部分の用途)からの血栓および/または塞栓の除去に適用されてよい。また、いくつかの実施形態が流体で血栓を浸軟させることに関連して考察されるが、本技術は、血栓を細分化して小さい断片または粒子にするための他の技法(例えば、超音波、機械、酵素など)と共に使用されるように適応できる。
【0082】
[0106]本明細書で提示される見出しは単に便宜のためであり、特許請求される本技術の範囲または意味を説明するものではない。
血栓除去のためのシステム
[0107]上で提示したように、本技術は、一般に、血栓除去システムを対象とする。このようなシステムは、患者の血管(例えば、動脈または静脈)内に位置付け可能な遠位部分と、患者の身体の外側に位置付け可能な近位部分と、加圧された流体で血栓を断片化するように構成された流体送達機構と、血栓の断片を吸引するように構成された吸引機構と、近位部分から遠位部分まで少なくとも部分的に延びる1つまたは複数の管腔とを有する細長いカテーテルを含む。いくつかの実施形態では、本明細書のシステムは、患者の血管内の血栓に係合し、血栓を小さな断片に細分化し、断片を患者の身体の外に吸引するように構成される。加圧された流体流(例えば、噴射)は、血栓の少なくとも一部分が吸引管腔またはシステムの漏斗部に入る前、間、および/または後に、血栓を切断または浸軟するように機能する。断片化は、吸引管腔の詰まりを防ぐのに役立ち、断片化により、血栓除去システムは、他の方法では吸引できなかった大きく、硬い血塊を浸軟することができる。本明細書で使用される場合、「血栓」および「塞栓症」は、様々な点で幾分、交換可能に使用される。説明は「血栓」の除去を指すことがあるが、これは、本明細書に提供されるような血栓断片および他の塞栓の除去を包含すると理解されるべきであることを認識されたい。
【0083】
[0108]本技術の実施形態によれば、流体送達機構は、血栓除去システムの近位部分から除去されるように血栓を浸軟、切断、断片化、粉砕しかつ/または促すために、複数の流体流(例えば、噴射)を血栓除去システムの流体開口へ供給できる。血栓除去システムは、吸引ポンプ(例えば、真空源)との流体連通に適応された血栓除去システムの近位部分から遠位部分まで少なくとも部分的に延びる吸引管腔を含むことができる。動作時、吸引ポンプは、血栓除去システムの近位部分の近くの吸引管腔内に、より低い圧力の体積を発生させ、遠位部分から血栓の吸引を促すことができる。
【0084】
[0109]
図1は、本技術の実施形態による血栓除去システムの遠位部分10を例示する。
図1Aの断面A-Aは、遠位部分の立面断面図を例示する。
図1Aの例示的断面A-Aは、遠位部分10の遠位端に位置付けられる漏斗部20を描き、漏斗部は、血栓および/または組織(例えば、血管)壁に係合するように適応され、血栓の断片化および/または除去を補助する。漏斗部は、本明細書の記載から当業者の1人であれば理解されるように、種々の形状および構築を有することができる。
図1Aの例示的断面A-Aは、外壁/管40および内壁/管50を有する二重壁血栓除去装置構築を描く。吸引管腔55は、内壁50によって形成され、中央に位置する。概ね環状の体積が、外壁40と内壁50との間に少なくとも1つの流体管腔45を形成する。流体管腔45は、流体送達機構との流体連通に適応される。1つまたは複数の開口(例えば、ノズル、オリフィス、またはポート)30は、流体管腔45および灌注マニホールド25と流体連通するように血栓除去システムに位置付けられる。動作時、ポート30は、血栓除去システムの遠位部分10と係合している血栓の方へ流体を向ける(例えば、加圧される)ように適応される。
【0085】
[0110]様々な実施形態では、システムは、血塊の一貫かつ成功した吸引を達成するために、最大20m/sの流体管腔内の平均流速を有することができる。いくつかの実施形態では、流体源自体は、流体を噴出口に送達するために、パルス状の順序、または拍動流と定流量との何らかの組合せを含む事前にプログラムされた順序で送達できる。これらの実施形態では、平均パルス状流体速度は最大20m/sであってよいが、流体源の脈動中に、管腔内のピーク流体速度は最大30m/s以上であってよい。いくつかの実施形態では、噴出口または開口は、流体の望ましくない噴霧を避けるために、0.0254cm(0.0100インチ)以上、またはわずか0.02032cm(0.008インチ)である。いくつかの実施形態では、システムは、標的血塊が上記の噴出口で浸軟または細分化された後に標的血塊を除去するために、50.796kPa(15inHg)の最小真空または吸引圧力を有することができる。
【0086】
[0111]血栓除去システムは、患者の身体内の様々な場所または血管内の血栓にアクセスし、かつ除去するような大きさおよび構成にすることができる。システムの寸法は、標的場所に応じて変化することがあるが、本明細書に記載の概して同様の特徴および構成要素は、用途にかかわらず、血栓除去システムに実装されてよいことが理解されるべきである。例えば、患者から肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)を除去するように構成された血栓除去システムは、およそ3.7~4.3mm(11~13Fr)、または好ましくは4.0mm(12Fr)の大きさの外壁/管と、2.3~3.0mm(7~9Fr)、または好ましくは2.7mm(8Fr)の大きさの内壁/管とを有してよい。一方、深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)装置は、およそ3.0~3.7mm(9~11Fr)、または好ましくは3.3mm(10Fr)の大きさの外壁/管と、2.0~3.0mm(6~9Fr)、または好ましくは2.5mm(7.5Fr)の大きさの内壁/管を有してよい。さらに、用途は、虚血性脳卒中および末梢塞栓症の用途に対して提供される。
【0087】
[0112]
図1Bの断面B-Bは、漏斗部および灌注マニホールドに対して近位である血栓除去システムの一部分を平面図で例示する。断面B-Bは、外壁140、内壁150、吸引管腔155および流体管腔145を描く。いくつかの実施形態では、横断面では、吸引管腔155は概ね円形であり、流体管腔145は概ね円環形状(例えば、横断面70)である。内壁150および外壁140の代替構築および/または配置は、吸引管腔155および流体管腔145の横断面形状の変動を生成することが理解される。例えば、内壁150は、横断面では、概ね楕円形、円形、直線状、方形、五角形、または六角形である吸引管腔155を形成するように成形できる。内壁150および外壁140は、横断面では、概して三日月形状、ひし形形状、または不規則形状である流体管腔145を形成するように成形かつ配置できる。例えば、
図1Cの断面B-Bを参照すると、内壁150と外壁140との間の領域は、それぞれの流体管腔145を形成する(例えば、横断面80におけるように)1つまたは複数の壁構造165を含むことができる。壁構造165は、外壁140と内壁150との間の積層、または複数の壁構造を形成する複数の管腔の押し出しによって形成できる。
【0088】
[0113]
図1D~
図1Hの断面B-Bは、漏斗部および灌注マニホールドに対して近位である血栓除去システムの一部分の追加の例を示す。上述した実施形態と同様に、これらの例における部分は、外壁140、内壁150、および吸引管腔155を含むことができる。加えて、血栓除去システムの図示の部分は、外壁140と内壁150との間に配設された中間壁170を含むことができる。中間壁170は、内壁と外壁との間の環状空間を複数の異なる流体管腔および/または補助管腔にさらに分割することを可能にする。例えば、
図1Dを参照すると、中間壁は概ね六角形状であることができ、環状空間は、複数の流体管腔145a~14lおよび複数の補助管腔175a~175fを含むことができる。
図1Dに示されるように、流体管腔は、外壁140と中間壁170との何らかの組合せによって、または中間壁170と内壁150と2つの補助管腔との間に形成できる。例えば、流体管腔145aが外壁140と中間壁170との間の空間に形成される。しかしながら、流体管腔145gが中間壁170と、内壁150と、補助管腔175aと、補助管腔175bとの間の空間に形成される。一般に、流体管腔は、システムの生理食塩水源からシステムの1つまたは複数のポート/開口/オリフィスに生理食塩水などの流体の流れを運ぶように構成される。補助管腔は、複数の機能に対して構成できる。いくつかの実施形態では、補助管腔は、流体/生理食塩水源および追加の流体管腔として使用される開口に結合できる。他の実施形態では、補助管腔は、操舵ポートとして構成でき、血栓除去システムの操舵のためのガイドワイヤまたは操舵ワイヤを管腔内に含むことができる。加えて、他の実施形態では、補助管腔は、電気的、機械的、または流体接続を1つまたは複数のセンサに運ぶように構成できる。例えば、システムは、システムの任意の長さに沿って配設された1つまたは複数の電気、光、または流体ベースのセンサを含んでよい。センサは、療法中にシステムにフィードバックするために使用できる(例えば、センサを使用して詰まりを検出し、詰まり除去プロトコルを開始し、または噴射パルスの順序、吸引の順序などのセンサフィードバックに基づいて適切な療法モードを判定できる)。したがって、補助ポートは、例えば、電気接続、光接続、機械/ワイヤ接続、および/または流体接続によってセンサに接続するために使用できる。また、流体管腔および補助管腔は、治療中に、標的組織部位へ、血栓溶解薬または放射線不透過性造影剤注射などの他の流体を運びかつ送達するように構成できることが想定される。
【0089】
[0114]いくつかの実施形態では、すべての流体管腔は、血栓除去装置の噴出口または開口のすべてに流体接続されていることが理解されるべきである。したがって、流体の流れが流体管腔(1つまたは複数)から噴出口に送達されると、すべての噴出口が流体噴射で一度に作動される。しかしながら、いくつかの実施形態では、流体管腔は別個であり、または異なり、これらの異なる流体管腔は、1つまたは複数の噴出口に流体結合されてよいが、装置のすべての噴出口に結合されるわけではないことも理解されるべきである。これらの実施形態では、噴出口のサブセットは、噴出口のサブセットに結合されている流体管腔にのみ流体を送達することによって制御できる。これにより、ユーザにより規定された順序で、または所定の順序で指定の噴出口が作動できる装置の追加機能を可能にする。
【0090】
[0115]様々な実施形態では、流体圧力は、ポンプで(コンソールまたはハンドルにおいて)発生する。流体は、遠位端でポートを出て、標的血塊へ向けられると、加速される。このようにして、より幅広い種類の費用対効果の高い構成要素を使用してカテーテルを形成できると同時に血塊除去のための非常に効果的な装置をなお維持することができる。さらに詳細に以下に述べる。
【0091】
[0116]
図1Eの断面B-Bは、漏斗部および灌注マニホールドに対して近位である血栓除去システムの部分の別の実施形態を例示する。
図1Dの実施形態と同様に、この実施形態は、中間壁170も含む。しかしながら、この例における中間壁は概ね方形であり、流体管腔145a~145kおよび補助管腔175a~175dの形成を容易にする。
図1Fの断面B-Bに示される例は、
図1Eの実施形態の例と同様であるが、この実施形態は、流体管腔145a~145dのみを含む。
図1Eの実施形態からの流体管腔145e~145kは、この実施形態では、流体管腔としては使用されない。それらは、例えば、空の、真空の、絶縁材料で充填された、かつ/または放射線不透過性材料または療法中の血栓除去システムを視覚化するのに役立つことがある任意の他の材料で充填された管腔であることができる。実施形態1Fは、
図1Eの実施形態で例示され、かつ説明されているのと同じ4つの補助ポートを含む。
【0092】
[0117]
図1Gの断面B-Bは、漏斗部および灌注マニホールドに対して近位である血栓除去システムの部分の別の例を示す。上述した実施形態と同様に、血栓除去システムの例示された部分は、外壁140と内壁150との間に配設された中間壁170を含むことができる。しかしながら、この実施形態は、壁構造165によって形成された4つの異なる流体管腔145a~145dを含む。
図1Cの実施形態と同様に、壁構造165は、外壁140と内壁150との間の積層によって、または複数の壁構造を形成する複数の管腔の押し出しによって形成できる。示されているように、この実施形態は、一対の補助管腔175aおよび175bを含むことができ、これらは、例えば、上述したような操舵またはセンサ接続のために使用できる。
【0093】
[0118]
図1Hの断面B-Bは、中間壁および外壁を使用して流体管腔145aおよび145bを形成できる別の同様の実施形態である。補助管腔175aおよび175bは、中間壁と内壁との間の空間に形成できる。中間壁は、独立した流体管腔145aおよび145bを作るために外壁に接触できることが理解されるべきである。しかしながら、他の実施形態では、中間壁は外壁に接触しなくてよく、これは、
図1Iの断面B-Bの流体管腔145によって示されるような単一の環状流体管腔を容易にするであろうことが理解されるべきである。別の実施形態では、
図1Jの断面B-Bに示されるように、内壁150および外壁140は同心円状でなくてもよく、これは、装置の一方の側で他方の側に対してより厚いまたはより広い環状空間および/または流体管腔145の形成を容易にする。
図1Jに示されるように、装置の上(例えば、12時)部分での例示的な外壁140と内壁との間の距離は、装置の下(例えば、6時)部分での外壁と内壁との間の距離よりも大きい。
【0094】
[0119]
図1Kの断面C-Cは、灌注マニホールド225を含む血栓除去システムの一部分を平面図で例示する。断面C-Cは、外壁240、内壁250、流体管腔245、吸引管腔255、およびそれぞれの流体流210を向けるためのポート230を描く。
【0095】
[0120]
図1Lの詳細
図101は、内壁250内に形成された複数のポート230を含む灌注マニホールド25の一部分の立面断面図を例示する。いくつかの実施形態では、血栓除去システムの1つまたは複数の壁の厚さは、その軸方向の長さおよび/またはその円周に沿って変化してよい。詳細
図101に示されるように、内壁250は、灌注マニホールド25に対して近位である領域250における第1の厚さ265と、ポート230を含む領域235における第2の厚さ270とを有する。いくつかの実施形態では、第2の厚さ270は、第1の厚さ265よりも大きい。第1の厚さ265は、内壁50および/または外壁40の全体的な壁厚に対応することができ、これは、約0.10mm~約0.60mm、または前述の範囲内の任意の値であることができる。第2の厚さ270は、約0.20mm~約0.70mm、約0.70mm~約0.90mm、または約0.90mm~約1.20mmであることができる。第2の厚さ270は、前述の範囲内の任意の値であることができる。第2の厚さ270の寸法は、流体送達機構が、典型的な動作圧力で、流体管腔245を介して流体を供給するときに、それを通して向けられる流体流に対して概ね層流を生成するポート230を通る流体経路を提供するように選択できる。このような動作圧力は、約68.95kPa~約413.7kPa(約10psi~約60psi)、約413.7kPa~約689.5kPa(約60psi~約100psi)、または約689.5kPa~約1034.25kPa(約100psi~約150psi)であることができる。流体送達機構の動作圧力は、前述の値の範囲内の任意の値であることができる。いくつかの実施形態では、流体送達機構は、約1034.25kPa~約1723.75kPa(約150psi~約250psi)、約1723.75kPa~約2413.25kPa(約250psi~約350psi)、約2413.25kPa~約2930.375kPa(約350psi~約425psi)、または約2930.375kPa~約3447.5kPa(約425psi~約500psi)の圧力を有する高圧モードで動作する。高圧モードにおける流体送達機構の動作圧力は、前述の値の範囲内の任意の値であることができる。
【0096】
[0121]マニホールドは、流体の流体圧力および/または流量を増すように構成される。流体が流体送達機構によって流体管腔(1つまたは複数)に第1の圧力および/または第1の流量で供給されると、マニホールドは、流体の圧力を第2の圧力まで増加するように構成され、かつ/または流体の流量を第2の流量まで増加するように構成される。第2の圧力および/または第2の流量は、第1の圧力および/または第1の流量よりも高くすることができる。結果として、マニホールドは、流体送達機構によって生成される相対的に低い動作圧力および/または流量を、ポート/流体流によって生成される相対的に高い圧力および/または高い流量に増加するように構成できる。
【0097】
[0122]いくつかの実施形態では、ポート230のプロファイル(横断面寸法)は、その長さに沿って変化する(例えば、非円筒状である)。ポートの横断面寸法の変動は、ポート230に沿った流体の流れの特性を変更かつ/または調節できる。例えば、横断面積寸法の低減により、ポート230を通る流体の流れを加速できる(所与の体積の流体に対して)。いくつかの実施形態では、ポート230は、その長さに沿って円錐状(例えば、先細状)であってよいので、その最小寸法がポート230の遠位端に位置付けられ、遠位は流体の流れの方向に対してである。
【0098】
[0123]いくつかの実施形態では、ポート230は、選択された経路に沿って流体の流れを向けるように形成される。
図2A~
図2Eは、それぞれの流体流210を向けるためのポート230の配置の様々な実施形態を例示する。
図2Aおよび
図2Bに示されるものなどの、いくつかの実施形態では、少なくとも2つのポート230は、血栓除去システムの交差領域237で交差する(例えば、それぞれの)流体流210を生成するように配置される。交差領域237は、流体運動量および/またはエネルギー伝達が増加した領域であることができ、これらは、交差点で組み合わされるように向けられていない個々の流体流に対して増える。交差点での流体の運動量および/またはエネルギー伝達の増加は、有利に、より効率的かつ/または迅速に血栓を断片化できる。上述したように、流体流は、加速し、キャビテーションおよび/または他の効果を引き起こして、標的血塊の細分化をさらに促進するように構成できる。いくつかの実施形態では、交差領域は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10の流体流210から形成できる。交差領域は、概ね、血栓除去システムの中心軸線290の近く(例えば、237)に、または中心軸線から離れる(例えば、
図2Dの実施形態における238および239)ことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの交差領域(例えば、238および239)が形成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポート230は、血栓除去システムの中心軸線に対して斜めの角度に沿って流体流210を向けるように配置される。流体送達機構の動作圧力は、ポート230から送達される流体流210に対する最小目標流体速度に近づくように選択されてよい。流体流210の目標流体速度は、約5メートル/秒(m/s)、約8m/s、約10m/s、約12m/s、または約15m/sであることができる。加えて、いくつかの実施形態における目標流体速度は、15m/sを上回り最大150m/sの範囲にあることができる。これらのより高い速度(例えば、約15m/sを上回る、あるいは20m/sを上回る)で、流体流は、標的の血栓または組織にキャビテーションを発生させるように構成されてよい。流体がポートからこれらの流量まで出ると、交差または衝突する流体流の焦点エリア、または加えて流体流のうちの1つまたは複数の境界で、キャビテーション効果を生み出すことができることが判明した。正確な仕様は、カテーテルの大きさに基づいて変化してよいが、一般に、以下に詳細に説明するように、キャビテーションを生じさせるためには、流体流のうちの少なくとも1つがそのような高速に加速されるべきである。流体流210の目標流体速度は、上述の値の範囲内の任意の値であることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのポート230が、流体送達機構の所与の圧力に対して、異なる流体速度(すなわち、速度および方向)でそれぞれの流体流を送達するように適応される。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのポート230は、流体送達機構の所与の圧力に対して、実質的に同じ流体速度でそれぞれの流体流を送達するように適応される。いくつかの実施形態では、1つのポートが、流体を高速で送達するように適応され、それぞれの1つまたは複数の他のポートは、流体を相対的に低い速度で送達するように適応される。有利なことに、流体管腔145の増加した断面積により、流体流の目標流体速度を達成するために流体送達機構の必要とされる動作圧力を低減する。
【0099】
[0124]いくつかの実施形態では、流体流は、血栓に与えられる角運動量を作り出すように構成される。いくつかの例では、角運動量は、a)ポート230から斜めの角度で向けられる少なくとも1つの流体流210、および/またはb)異なる流体速度を有する少なくとも2つの流体流210の適用によって血栓に与えられる。例えば、互いに近くを横切るが必ずしも交差しない流体流は、血塊物質に「旋回」または回転エネルギーを作ることがある。有利なことに、血栓に作り出された角運動量は、血栓の断片化および除去を助ける力(例えば、遠心力)を与えることができる。血塊を回転させると、血塊物質の噴出口への送達を促進することがある。例えば、大きい不定形の血塊で、柔らかい物資は流体流によって容易に吸引または細分化されてよいのに対し、硬い繊維素は流体流から離れて位置してよい。血塊を回転または旋回させると、物質が動き回り、より硬い血塊物質が噴出口に送られる。旋回させることにより、血塊が漏斗部の内側に強打されてさらに細分化されることもあり得る。
【0100】
[0125]
図3A~
図3Hを参照すると、ポート330は、血栓除去システムの様々な軸方向位置に沿って配置できる。血栓除去システムは、その内部で吸引される流体に対する流れの全体的な方向(例えば、遠位から近位)に位置合わせされる流れ軸線305を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポート330の位置は、血栓除去システムの漏斗部分320のa)基部の近く、b)中間部分、c)遠位部分、またはd)近位を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのポート330が、流れ軸線305に沿って位置合わせされる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのポート330は、流れ軸線305に沿って異なる軸方向および/または角度位置に配置される。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのポート330は、流れ軸線305の所与の軸方向位置に沿って(例えば、血栓除去システムの周囲に沿って)配置される。
【0101】
[0126]
図4A~
図4Hは、それぞれのポート430から向けられる流体流410の様々な構成を描く。流体流410は、(流れ軸線305に類似している)流れ軸線405に実質的に直交する、近位である、かつ/または遠位である経路に沿って向けられることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの流体流は、流れ軸線405に対して異なる方向に向けられる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの流体流は、流れ軸線405に対して同じ方向(例えば、近位)に向けられる。いくつかの実施形態では、流れ軸線405に対して、少なくとも第1の流体流は直交に向けられ、少なくとも第2の流体流は近位に向けられ、少なくとも第3の流体流は遠位に向けられる。角度αが、流体流410が流れ軸線405に直交する軸線に対して向けられる角度を(例えば、
図4Gおよび
図4Hの断面D-Dに示されるように)特徴付けてよい。流体流の交差領域は、血栓除去システムの内部分内、および/または血栓除去システムの外部(例えば、遠位)にあることができる。いくつかの実施形態では、ポート430によって公称方向(例えば、遠位)に向けられる流体流は、動作時に吸引機構によって生成される(例えば、吸着)圧力によって、変更された経路に沿って(例えば、近位に)偏向される。
【0102】
[0127]キャビテーション発生
[0128]例示的なシステムは、血塊の除去を強化するために特定のやり方で構成された流体噴射を含む。例示的な流体流または噴射は、キャビテーションおよび水切断を含むがこれらに限定されない様々な作用機構を通して血塊の除去を劇的に改良することが基準研究に示された。血栓除去術のための従来の流体機構とは対照的に、本明細書のいくつかの実施形態では、それぞれのポート430からの流体流410は、血塊の除去を改良するためにキャビテーションおよび/または他の優先的効果を生み出すのに十分な流量(およびパターン)で送達される。いくつかの例では、キャビテーション効果は、少なくとも2つの流体流の焦点および/または交点で大きい圧力降下および減速によって生み出される。キャビテーションは、血栓または他の標的組織構造を機械的に断片化かつ/または液化するために使用できる乱流運動エネルギーの源を提供できる。流体速度が十分に高いと、物質は衝撃エネルギーを蓄積し、変形および断片化を引き起こすことができる。これにより、血塊の表面性状を修正して、物質が浸透されて血塊内のキャビテーションを可能にすることもある。高速噴射の衝突または相互作用は、流体力学的キャビテーションを生じさせ、それにより液体の蒸気圧を下回る圧力降下が気泡を生じさせ、最終的にキャビテーション場で大きい機械的エネルギーで崩壊し、血塊物質に一種の内部破裂を引き起こす。さらに、焦点の方へ、またはそれぞれの流れに十分近くに向けられた複数の噴出口で、流体粒子の閉鎖速度は、単一の噴射流のそれよりも有意に高い(最大2倍)。また、これにより、流体および/または粒子を流体噴出口間の空間から高速で押し出す。流体噴射の速度は、流体が気化するような蒸気圧を下回る圧力降下を生じさせるのに十分な高さである。圧力が再び上昇すると、気泡が崩壊し、キャビテーションを引き起こす。例示的なシステムおよびキャビテーション効果の力は、従来の流体噴出(1つまたは複数)および回転スクリューのような機械工具を著しく超えることが判明した。いくつかの例では、気泡の崩壊は、標的組織の内部または周囲に熱を発生させ得、血塊の細分化をさらに促進し得る。基準研究では、様々な実施形態によるシステムは、単純な吸引または水噴射では除去できなかった特定の血塊物質を除去することができた。他の研究では、例示的なシステムは、従来のシステムの数分の一の時間で血塊物質を除去することができた。
【0103】
[0129]
図4I~
図4Kは、2つ以上の流体流410の交差、衝突、または相互作用でキャビテーション420の発生の例を示す。
図4Iを参照すると、少なくとも2つのポート430からの流体流410は、別の流体流に概ね平行に、かつ血栓除去装置の流れ軸線405に直交して向けられる。
図4Iの実施形態に示されるように、キャビテーション420は、概して、流体流410間の相互作用の領域(例えば、焦点)に限定される。例示されるように、キャビテーション420は、複数の微小気泡を備えることができる。血栓が血栓除去装置の漏斗部に係合されると、流体流410および/またはキャビテーション420を使用して、血栓を細分化、断片化、液化、および/または溶解して、装置での血栓の吸引および除去を容易にすることができる。
【0104】
[0130]
図4Jの実施形態では、少なくとも2つのポート430からの流体流410は、流れ軸線405に直交して向けられるのではなく、代わりに、ポート430に対して遠位である相互作用領域にキャビテーション420を生じさせるように、ポートからわずかに遠位に向けられる。いくつかの実施形態では、流体流の速度/流量に応じて、遠位に向けられた流体流の結果として生じる衝突は、交差領域内のキャビテーション420に対して伝搬および/または遠位に位置するキャビテーションカラム(換言すれば、キャビテーションの柱)422を追加で生じさせることができる。血栓が、この実施形態における血栓除去装置の漏斗部に係合されると、流体流410および/またはキャビテーションを使用して、血栓を細分化、断片化、液化、および/または溶解して、装置での血栓の吸引および除去を容易にすることができる。加えて、キャビテーションカラム422は、キャビテーション420に対して遠位である血栓の部分を細分化、断片化、液化、および/または溶解するための追加の運動エネルギーを供給できる。
図4Jの実施形態は、血栓の係合および吸引を助ける漏斗部を含むものとして示されているが、他の実施形態では、装置は漏斗部を含まなくてもよいことが理解されるべきである。これらの実施形態では、キャビテーション420およびキャビテーションカラム422を使用して、装置およびポート430に対して遠位に位置する血栓を細分化、断片化、液化、および/または溶解することができる。
【0105】
[0131]
図4Kの実施形態では、少なくとも2つのポート430からの流体流410は、流れ軸線405に直交して向けられるのではなく、代わりに、ポート430に対して近位である相互作用領域にキャビテーション420を生じさせるために、ポートからわずかに近位に向けられる。いくつかの実施形態では、流体流の速度/流量に応じて、近位に向けられた流体流の結果として生じる衝突は、相互作用領域においてキャビテーション420に対して伝搬および/または近位に、かつ血栓除去装置の吸引と同じ方向に位置するキャビテーションカラム422を追加で生じさせることができる。血栓が、この実施形態における血栓除去装置の漏斗部に係合されると、流体流410および/またはキャビテーションは使用され、血栓を細分化、断片化、液化、および/または溶解して、装置での血栓の吸引および除去を容易にすることができる。加えて、キャビテーションカラム422は、キャビテーション420に近位である血栓の部分を細分化、断片化、液化、および/または溶解するための追加の運動エネルギーを供給でき、装置内への血栓の吸引をさらに助けることができる。
【0106】
[0132]
図4Lは、血栓除去装置を上から下に見た図を例示する。この実施形態では、装置は、合計4つの交差または相互作用する流体流410を含む。上述したように、流体流間の相互作用および/または流体流の流量は、流体流の相互作用領域でキャビテーション420を発生させるのに十分な条件を作ることができる。この実施形態は4つの流体流を示すが、2つの流体流、3つの流体流、または4つ以上の流体流を含む任意の数の流体流を実装してキャビテーションを達成できることが理解されるべきである。
【0107】
[0133]上述したように、血栓除去装置は、1つまたは複数の開口(例えば、
図1Aの開口30または
図4A~
図4Kのポート430)に流体を供給するように構成された1つまたは複数の流体管腔(例えば、
図1Aの流体管腔45)を含むことができる。本開示の1つの態様によれば、流体流の流量が、流れの焦点および/または交点で、かつその周りで適切な圧力降下および減速を生じさせるのに十分高いときに、少なくとも2つの流体流の間の相互作用領域でキャビテーションが形成できる。一実施形態では、血栓除去装置の流体管腔(1つまたは複数)内のおよそ3m/sの流量は、少なくとも50m/sの流量でポートを出る流体流をもたらす。この実施形態では、各々が少なくとも50m/sの流量を有する2つ以上の流体流が、流体流の相互作用領域でキャビテーションを発生させるように構成できる。別の実施形態では、血栓除去装置の流体管腔(1つまたは複数)内のおよそ4m/sの流量は、少なくとも70m/sの流量でポートを出る流体流をもたらす。この実施形態では、各々が少なくとも70m/sの流量を有する2つ以上の流体流が、流体流の相互作用領域でキャビテーションを発生させるように構成できる。さらに別の実施形態では、血栓除去装置の流体管腔(1つまたは複数)内のおよそ5m/sの流量は、少なくとも90m/sの流量でポートを出る流体流をもたらす。この実施形態では、各々が少なくとも90m/sの流量を有する2つ以上の流体流が、流体流の相互作用領域でキャビテーションを発生させるように構成できる。一般に、本開示の血栓除去装置は、50~90m/sの流量で噴出口、ポート、または開口を出る流体流と相関する3~5m/sの流量で、1つまたは複数の流体管腔に流体を供給するように構成される。これらの流量での流体流は、キャビテーションを発生させるために、流体流の焦点または相互作用領域で適切な圧力降下および減速を生じさせるように構成される。
【0108】
[0134]別の実施形態では、流体流の焦点または相互作用領域でのキャビテーションは、流体流の流量によってではなく、代わりに、流体流の交差または通過/せん断での圧力降下によって特徴付けできる。圧力降下がキャビテーション閾値を超えると、キャビテーションが、その場所に形成される。一実施形態では、この圧力降下は少なくとも20MPaであることができる。他の実施形態では、圧力降下は、25MPaより大きい任意の圧力降下であることができる。圧力降下は流体せん断によるので、単一の噴出口の境界でキャビテーションを生じさせることが可能である(例えば、ハロー(換言すれば、環状の)キャビテーション)。したがって、いくつかの実施形態では、何らかの共通の境界に沿って通過する2つの流体流は、
図4Nおよび
図4Oに示され、かつ以下でより詳細に説明されるように、キャビテーションを生じさせるせん断が、より低い速度の両方向に移動する2つの流体流によって作られることができる変形例となる。
【0109】
[0135]別の実施形態では、ポートは、横切る、または交差する流体流が相互作用領域で部分的にのみ衝突するように、わずかにオフセットされた構成に配置できる。この実施形態では、少なくとも4つの異なる破断力が標的血栓に加えられることができ、これらは、1)個々の流体流が焦点または相互作用領域で交わる前に初めに血栓を切断する「切断」または薄切り(換言すれば、スライス)力、2)流体流が交差する、部分的に交差する、衝突する、かつ/または部分的に衝突するときの焦点または相互作用領域でのキャビテーション、3)噴射流、焦点、および/または相互作用領域の各側で互いに対して移動する噴射流からのせん断、および4)せん断力およびキャビテーション力によって引き起こされる旋回またはハロー回転流体運動を含む。
【0110】
[0136]
図4Mは、このような構成の横断面図を示し、ポート430aおよび430bは、血栓除去装置の軸、漏斗部、または管腔を横切って互いに概ね対向して配設されているが、流体流の全体が別の流体流と衝突するのを防ぐようなやり方でオフセットされている。この実施形態は、概ね、装置の管腔、漏斗部、または軸の両側のポートを示すが、本明細書に例示されるポートの任意の構成は、ポートが、横切るまたは交差する流体流の部分的な衝突のみを可能にするように、わずかにオフセットされている限り、使用できることが理解されるべきである。
【0111】
[0137]なお、
図4Mを参照すると、この構成によって可能とされる少なくとも4つの異なる破断力が、ここで説明される。ポート430aおよび430bからの流体流の初期作動または「オン」の間、流体流は、概ね、血栓除去装置から血栓を通って交点の方へ移動する。流体流がこの方向に移動しているが、衝突する前に、流体流は、装置と係合している血栓に「切断」または薄切り力を提供する。図示されるように、流体流が最終的に衝突または交差すると、ポート430aおよび430bは部分的にオフセットしているので、ポート430aからの流体流の第1の部分431aのみが、ポート431bからの流体流の第1の部分431bと直接交差または衝突する。流体流部分のこのような衝突または交差は、上述したように、流体流の流量がキャビテーションを引き起こすのに十分であると、交点でキャビテーション420を引き起こす。
図4Lにも示されるように、ポート430aからの流体流の第2の部分(1つまたは複数)432aは、ポート430bからの流体流の第2の部分(1つまたは複数)432bと衝突または交差しない。そのようにして、流体流のこれらの第2の部分(1つまたは複数)は、交点を過ぎて、かつキャビテーション420を過ぎて続く。しかしながら、両方向、対向する方向、または異なる方向に互いにすれ違う流体流により、せん断流またはせん断キャビテーション433aおよび433bが血栓内かつ/または血栓の周りに形成され、別のタイプの破断力を血栓に加える。加えて、キャビテーション、せん断流、および/または部分的にオフセットされたポート間の相互作用は、さらに旋回流またはハローキャビテーション434aおよび434bをもたらし、第4の異なる破断力を装置と係合した血栓へ加える。
【0112】
[0138]
図4Nおよび
図4Oは、上述した破断力の一部またはすべてを含むことができる血栓除去装置の追加の図を示す。
図4Nは、血栓除去装置の横断面図であり、
図4Oは、
図4Nの平面440で表されるように、流体流を横切る長手方向の薄切り切断である。
図4Nでは、血栓除去装置は、複数のポート430を含むことができる。この実施形態では、ポートは、それぞれのポートからの流体流のいずれも、他の流体流のいずれとも交差しないまたは横切らないようにオフセットされる。しかしながら、ポートは、流体流が隣接する流体流のすぐ隣を通過することができるように配置される。この例では、第1の流体流441は、隣接する第2の流体流442のすぐ隣を通過し、第2の流体流は隣接する第3の流体流443のすぐ隣を通過し、第3の流体流は、隣接する第4の流体流444のすぐ隣を通過する。近いまたは隣接する流体流の通過により、図示されるように、隣接する流体流間にせん断流またはせん断キャビテーション433を生じさせる。加えて、上述したように、近いまたは隣接する流体流の通過により、さらに、旋回流またはハローキャビテーション434を生じさせる。本明細書に記載の定常状態シナリオは、相互作用からもたらされる流体の流れが流体流の速度/方向に影響を与えるため、経時的に変化しそうであることが理解されるべきである。
【0113】
[0139]
図4Oは、
図4Nの平面440に沿って流体流を横切る薄切り切断の図であり、流体流441および442、せん断流またはせん断キャビテーション433、および旋回流またはハローキャビテーション434を示す。通過流によって引き起こされるハローキャビテーション434は、それぞれの流体流の周りを円状に旋回する、または流れることができ、対向流の中心にあるせん断流またはせん断キャビテーション433内へ通過または合流することさえあることがわかる。組み合わせることで、これらの破断力のすべては、装置に係合された血栓に作用し、細分化し、切断し、機械的に断片化するための追加の破断エネルギーを供給できる。
【0114】
[0140]キャビテーション検出
[0141]血栓除去装置が2つ以上の流体流の交差領域でキャビテーションを発生させることができるので、血栓除去装置は、キャビテーションが標的血栓内または標的血栓の近くで発生するかどうか、かつ、いつ発生するかを検出するキャビテーション検出能力をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、キャビテーション検出能力は、キャビテーションの場所および/または強度を検出できる。キャビテーション検出は、装置の動作において追加機能をさらに提供し、いつ装置が血栓と係合されるかを検出するために追加の機構を提供する。
【0115】
[0142]いくつかの実施形態では、キャビテーション検出が、噴射または流体流と標的血栓との間の相互作用を判定するために使用できる。例えば、血栓が最初に(例えば、吸引で)装置の漏斗部に係合されると、噴射または流体流は作動されて、2つ以上の流体流の焦点または交点の方へ内方に2つ以上の流体流を供給できる。しかしながら、噴射または流体流のこの初期作動時に、血栓は、2つ以上の流体流の間に位置付けられ、または位置してよく、それによって、流体流の衝突または交差を防ぐ。療法における、この時点では、流体流はまだ交差していないことがあるため、最初に血栓を「切断」または突き破らなければならない。血栓を初めに「切断」する流体流の流量によっては、キャビテーションが存在しないことがある。
【0116】
[0143]キャビテーション検出は、1)血塊が漏斗部に係合している、2)吸引が作動されている、3)噴射または流体流が作動されているがキャビテーションは存在しない、および/または4)噴射または流体流が作動され、かつキャビテーションが存在するなどのシナリオを識別するために使用できる。例えば、吸引が作動されている間の吸引管腔内の圧力または流量測定を使用して、血塊が漏斗部に係合しているかどうかを判定できる。次に、キャビテーションが同時に検出された場合、システムは、血塊が係合し、噴射または流体流がキャビテーションを血塊に作り出していることをユーザに示すことができる。キャビテーションが検出されない場合は、システムは、血塊が係合され、噴射または流体流が血塊を切断していることをユーザに示すことができる。いくつかの実施形態では、キャビテーションが検出されるか否かをユーザに表示または示すことができる。したがって、キャビテーションが存在するか、または存在しないかに関してユーザに示すことにより、療法の状態または様子(例えば、血栓が係合されているかどうか、切断が生じているかどうか、またはキャビテーションが生じているかどうか)に関してユーザに有用な情報を提供できる。
【0117】
[0144]治療が進行するにつれて、噴射または流体流は最終的に漏斗部内の血栓を切断し、2つ以上の噴射を焦点で交差させる。この事象が生じると、流体流が十分な流量(例えば、上述したように、20~90m/s以上)を有する場合、2つ以上の交差する流体流は、焦点でキャビテーションを発生させるように構成できる。多くの状況では、血栓が依然として血栓除去装置の漏斗部に係合している状態で、このキャビテーションは、焦点で、血栓の機械的断片化および/または液化をさらに提供できることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、療法は、「切断」およびキャビテーションを交互にするサイクルを含む。血栓が漏斗部内を動き回り、より小さな片または部に細分化され、血栓除去装置内へ吸引されると、流体流が交差するのでキャビテーションを生じさせる場合があり、また、流体流が交差せずに(例えば、おそらく、血栓が交差を妨げているため)、代わりに噴射の「切断」性に依存して血塊を細分化する場合もある。
【0118】
[0145]いくつかの実施形態では、キャビテーションを検出できることを使用して、血栓除去装置の噴射および/または吸引制御方式を指示できる。例えば、血栓除去装置の「切断」モードと「キャビテーション」モードとを交互に行うことが有益であり得る。一例では、噴射は、キャビテーションが検出されるまで、係合した血栓を「切断」するために作動される。一旦キャビテーションが検出されると、噴出口は予め設定された期間、作動したままであることができる。次に、噴射は、吸引をオンにしたまま、一時的に脈動され、またはオフにでき、血栓は、漏斗部内へより深く、移行または移動することができる。次に、噴射は、再び作動され、「切断」モードの次に「キャビテーション」モードがくるサイクルを再開できる。いくつかの実施形態では、キャビテーションを避け、代わりに作動している切断機構のみに依存することが望ましい場合がある。この場合、キャビテーション検出は、キャビテーションが形成されたことをユーザに警告または示すために使用できる。いくつかの実施形態では、装置は、キャビテーションが検出されると、自動的に噴出を一時停止または脈動して、血塊で漏斗部を満たし、噴射で切断工程を再開できるようにする。
【0119】
[0146]
図4Iに戻ると、いくつかの実施形態では、血栓除去装置は、キャビテーション検出センサ424を含むことができる。キャビテーション検出センサは、例えば、超音波トランスデューサ素子または水中聴音器を含むことができる。センサは、キャビテーションを直接的かつ/または間接的に監視することによって、キャビテーションを検出してよい。間接監視の場合、センサは流体流の特性を監視し、既知の相関関係に基づいて所望のキャビテーションを識別する。相関関係は、カテーテル端(または漏斗部)の大きさおよび形状、噴出口および焦点の配向などに基づいて変化することがある。
図4Iの実施形態では、装置は、漏斗部内のキャビテーション検出センサ424と、装置の軸/吸引管腔内の第2のキャビテーション検出センサ424とを有することが示されている。
図4Iの実施形態のみがキャビテーションセンサ(1つまたは複数)を含むように例示されているが、本明細書に記載の任意の実施形態または噴射構成は、1つまたは複数のキャビテーションセンサをさらに含むことができることが理解されるべきである。一般に、これらのキャビテーション検出センサは、2つ以上の流体流の交点の方へ向けられ、または指すことができる。他の実施形態では、これらの装置は、1つまたは2つ以上のキャビテーション検出センサを含むことができることが理解されるべきである。センサは、図示されるように、漏斗部のみ、軸/吸引管腔のみ、または両方の組合せに位置してよい。一般に、キャビテーション検出センサは、センサと標的キャビテーション領域との間に音響経路を設ける装置内または装置上の任意の場所に位置付けできる。
図4Iの実施形態のみがキャビテーション検出センサを有する装置を示しているが、本明細書に記載のいかなる血栓除去装置も、
図4Jおよび
図4Kの実施形態を含む、そのような機能性を含むことができることが理解されるべきである。それらの実施形態は、遠位かつ近位に向けられた流体流をそれぞれ含み、それによってキャビテーションカラムの形成を可能にするので、これらの実施形態では、キャビテーション検出センサは、キャビテーション420とキャビテーションカラム422との両方を感知かつ/または検出するように構成できることが理解されるべきである。
【0120】
[0147]キャビテーションを検出するように構成されたマイクロフォン、またはキャビテーションが生じると交点で温度変化を検出するように構成されたレーザを含む他のタイプのセンサが提案される。
【0121】
[0148]装置上または装置内に配設されたセンサでのキャビテーション検出に加えて、他の実施形態では、血栓除去装置は、実時間撮像装置などの別個のキャビテーション検出装置と組み合わせて使用できる。例えば、キャビテーションは、実時間Bモード超音波撮像において高エコーの領域として識別できる。したがって、一実施形態では、超音波撮像装置は標的血栓の方へ向けられることができ、いつキャビテーションが生じるかを実時間に識別するために使用でき、血栓除去手順中に医師または外科医に実時間フィードバックを提供することができる。超音波撮像装置は、例えば、(例えば、患者の皮膚に接触して置かれる)外部超音波撮像プローブを備えることができる。あるいは、超音波撮像装置は、血栓除去装置と共に、または血栓除去装置内を標的血栓場所まで前進させるように構成された内部またはカテーテルベースの(換言すれば、カテーテルに取り付けられた)超音波撮像プローブを備えることができる。
【0122】
[0149]
図4Pは、4つの相互作用または交差する噴射または流体流の相互作用領域でのキャビテーションの形成を示す卓上実験の写真である。この実験では、流体源(例えば、水ポンプなど)は脈動されて、ピーク1379kPa(200psi)~5171kPa(750psi)の動作圧力を有する。流体源は、次に、2m/s~10m/sの平均速度を有する装置の流体管腔に流量を作ることができた。流体管腔内の流量は、50m/s~200m/sの噴射開口からの平均速度をもたらした。同じ設定で、流体源は脈動圧力で操作されて、10m/sを下回る噴射開口からの平均速度を作り、キャビテーションは観察されなかった。
【0123】
[0150]
図5A~
図5Gは、ポート530が本技術の実施形態によって構成できる種々の出口開口の幾何学的形状を示す。開口の幾何学的形状は、長円形、円形、十字形(「x」字形)、「t」字形、長方形、または正方形を含むことができる。ポート530から送達される流体流は、実質的に(例えば、開口での)層流、または(例えば、扇状に広がる)乱流を含むことができる。ポート530の大きさは、流体流の適切な出口速度および加速度を達成するように調節できる。いくつかの実施形態では、これらのポートの大きさは、2つ以上の流体流の交点でキャビテーションを生じさせるように、50~90m/sの流量を達成するために最適化できる。一般に、ポートが小さいほど、より高速な流体流が作られるが、犠牲として、ポートを出る流体の体積が小さくなるため、伝達される運動エネルギーは小さくなる。
【0124】
[0151]
図6A~
図6Cは、血栓除去装置602と、真空源およびキャニスター604と、流体源606とを含む血栓除去システム600の様々な構成を例示する。いくつかの実施形態では、真空源およびキャニスターと、流体源とは、血栓除去装置に着脱可能に接続されたコンソールユニットに収容される。流体ポンプが、コンソールに収納可能、あるいは、装置のハンドルに収納可能である。コンソールには、システムのすべての機能を制御するように構成された1つまたは複数のCPUs、電子制御器、またはマイクロ制御器を含むことができる。血栓除去装置602は、漏斗部608、可撓性軸610、ハンドル612、1つまたは複数の制御器614および616を含むことができる。例えば、
図6Aに示される実施形態では、本装置は、指スイッチもしくはトリガー614、および足ペダルもしくはスイッチ616を含むことができる。これらは、吸引および灌注を、それぞれ、制御するために使用できる。あるいは、
図6Bの実施形態に示されるように、本装置は、両方の機能を制御するために使用できる足スイッチ616のみを含むことができ、または、
図6Cでは、本装置は、両方の機能を制御するためにも使用される踏み台616のみを含むことができる。実施形態は、吸引機能および灌注機能の両方を制御するための指スイッチのみを含むことができることも想定される。
図6Aに示されるように、真空源は、真空線618で装置の吸引管腔に結合できる。療法中に患者から除去された血塊または他の破片はいずれも、真空キャニスター604に貯蔵できる。同様に、流体源(例えば、生理食塩水袋)は、流体線620で装置の流体管腔に結合できる。
【0125】
[0152]なお、
図6Aを参照すると、電子機器線622は、どの電子機器/センサなども、装置からシステムのコンソール/制御器に結合できる。CPUs/電子制御器を含むシステムコンソールは、流体および圧力のレベルを監視し、必要に応じて自動的にまたは実時間で調節するように構成できる。いくつかの実施形態では、CPUs/電子制御器は、真空および灌注を制御するように、ならびに、圧力データ、流量データなどのセンサデータに応じて、両方のシステムを電気機械的に停止および開始するように構成される。
【0126】
[0153]上述したように、吸引は装置の中央管腔を下って生じ、コンソール内の真空ポンプによって行われる。真空ポンプは、患者から除去されたいかなる血栓または破片も収集する容器を含むことができる。
詰まり検出と詰まり除去
[0154]いくつかの状況では、装置が、療法中に、血栓または他の破片で詰まることがある。多くの詰まり検出および詰まり除去方式が、血栓除去システムで実施できる。一般に、システムまたは装置の詰まりは、装置内または装置の周りに配設された任意の数のセンサで検出できる。例えば、圧力センサは、任意の数の場所で、漏斗部上もしくは漏斗部内、流体管腔上もしくは流体管腔内、または装置もしくはシステムの吸引管腔上もしくは吸引管腔内に配設できる。センサデータは次に使用されて、装置の動作を監視できる。例えば、吸引管腔内の圧力センサは、装置が血塊または他の破片で詰まっているかどうかを示すことができる。本システムは吸引管腔内の圧力を監視でき、通常の動作圧力からの圧力のかなりの変化は、装置または療法に問題があることを示すことができる。例えば、通常の動作圧力範囲から大幅に低下した圧力センサの読取値が、血塊または他の破片が圧力センサに対して近位である装置またはシステムを詰まらせていることを示す可能性がある。同様に、通常の動作圧力範囲から大幅に増加した圧力センサの読取値は、血塊または他の破片が圧力センサに対して遠位である装置またはシステムを詰まらせていることを示す可能性がある。したがって、装置の長さに沿って配設された圧力センサは、このように使用されて、装置が詰まっているかどうかを判定し、装置の長さに沿って、詰まりが、どの圧力センサが通常よりも高い圧力読取値を有し、どの圧力センサが通常よりも低い圧力読取値を有するかに基づいて、どこに位置しているかをさらに識別することができる。同様に、流量計または流量センサは、流体管腔内の流体の流れおよび/または吸引管腔内の破片、血液、および血塊の流れを監視するために使用できる。これらの流量センサの読取値は、吸引管腔または流れ管腔(および潜在的に噴出口または開口)が詰まっているか、または塞がれているかを判定するために使用できる。
【0127】
[0155]一実施形態では、本システムは、選択的に制御できる大容量のピストンポンプで真空吸着を生成するように構成できる。これにより、血栓除去装置内の圧力センサおよび/または他のセンサが詰まりの結果として、真空圧力の急激な変化を検出すると、自動的に真空を停止できる。一旦検出されると、システムは、灌注噴出、および真空をもたらす真空ピストンを自動的に停止し、真空圧力を瞬時に除去して失血を低減し、患者の過灌注を防ぐように構成できる。
【0128】
[0156]別の実施形態では、システムが詰まった装置を検出すると、システムは、灌注および吸引を自動的に停止し、次いで、血塊または詰まりを除去するための「流体ハンマー」効果を誘起するために真空圧力を急速に循環させる詰まり除去ルーチンを実行するように構成できる。
【0129】
[0157]装置から詰まりまたは血塊を除去するための追加の実施形態が提供される。
図7Aを参照すると、血栓除去装置は、装置の軸に沿うことを含む、装置の長さに沿って配設された複数の噴出口730を含むことができる。いくつかの実施形態では、噴出口は、血塊または破片を装置に沿って近位に移動させるのを助けるために、異なる角度を指すことができる。例えば、噴出口は、その方向に血塊を押すか、または押し進めるために、装置の軸に沿って概ね近位を狙うことができる。
【0130】
[0158]別の実施形態では、
図7Bおよび
図7Cを参照すると、血栓除去装置は、吸引管腔上または吸引管腔内に配設された弁732を含むことができる。弁は、フラッパ弁、分路弁、カモノハシ弁などを含むことができる。
図7Bは開位置の弁を示し、
図7Cは閉位置の弁を示す。システムの通常の動作時、弁は開位置に留まり、血塊および他の破片は患者から取り除くことができる。詰まりがシステムによって検出された場合には、
図7Cに示されるように、弁は閉じられて、装置の吸引管腔を封止できる。弁が閉じられた状態で、吸引管腔内の弁に対して近位に位置付けられる灌注噴射734を作動して、血塊の後ろ(例えば、遠位)に圧力を発生させ、それによって、血塊を装置から真空キャニスター内へ押し出すことができる。
【0131】
[0159]同様に、
図7Dを参照すると、装置の別の実施形態は、血塊が検出されたときに膨張させて装置の内管腔を封止できる遠位バルーン736を含む。次いで、システムは、詰まって封止された管腔を噴射734で灌注し、上述したように血塊の後ろに圧力を発生させるように構成できる。
【0132】
[0160]いくつかの実施形態では、蠕動ポンプまたはダイアフラムポンプを介した従来の真空ポンプが使用され、真空圧力を低減することによって失血を防ぐ別の方法は、血塊または詰まりが除去されたときに、真空室を一掃する、または真空室に分路を作ることができる。
噴射制御方式
[0161]上述したように、いくつかの実施形態では、流体管腔は、異なりかつ別個であることができ、それによって、個々の噴出口は流体流を送達するように制御できるが、他の噴出口は作動していないか、または流体を送達していない。本システムは、圧力感知、および注入かつ除去される流体の体積に応じるように構成できる。これらの制御方式は、灌注および吸引の量を変化させ、ならびに個々の管腔を順番に配列し、または脈動させて、異なる切断または詰まり除去の結果を提供することができる。これにより、血塊を細分化/浸軟し、かつ/または血塊を患者から除去する際、助けるために血栓除去装置によって使用される多くの新規噴射制御方式を容易にする。例えば、
図8A~
図8Cを参照すると、血栓除去装置の横断面が、噴射制御方式の一例と共に示されている。この実施形態では、噴出口830a~830dは、それぞれ、独立したまたは異なる流体管腔で流体源に流体結合できる。したがって、
図8Aでは、噴出口830dのみが作動され、流体流または流体噴射が噴出口830dによって装置の吸引管腔内へ送達できる。同様に、
図8Bでは、噴出口830cのみが作動され、
図8Cでは、噴出口830bのみが作動される。
【0133】
[0162]次に、噴射が独立した流体管腔によって供給されるとき、任意の数の噴射制御方式が血栓除去装置による治療に組み込まれることができることが理解されるべきである。例えば、
図8Aを参照すると、一実施形態では、装置は、噴出口の各々から流体の噴射を送達することから、順次迅速に循環することができる(例えば、最初に噴出口830aから予め設定された時間、次に噴出口830b、次に噴出口830c、次に噴出口830dなど)。同様に、噴出口の対またはグループ分けが作動できる一方で、他の噴出口は作動していない。例えば、噴射の順序は、噴出口830aおよび830cの対向する対のみを作動することから次に噴出口830bおよび830dの対向する対のみを作動させることの間で循環することができる。
【0134】
[0163]上記の実施形態は、装置の円周の周りの放射状パターンにおいて1つまたは複数の噴出口を作動させることを説明するが、噴射制御方式は、装置に沿って長手方向に使用することもできることが理解されるべきである。例えば、
図7Aの実施形態は、装置の長さに沿って配設された複数の噴出口を含んでいたことを想起する。一実施形態では、噴射制御方式がシステムにおいて実施されて、遠位から近位への方向における噴射の間を急速に循環することができる(例えば、最初に噴出口の最も遠位のセット、次に最も遠位の噴出口などを、最も近位の噴出口が作動されるまで、作動させる)。このような制御方式は、困難で、大きい、または頑固な血塊に沿って移動または促して、それらを装置から除去することが想定される。
【0135】
[0164]システムの吸引は、効果を最大化し、失血を低減するために、灌注の噴流で脈動させまたはタイミングを合わせることもできる。例えば、いくつかの実施形態では、吸引は、噴射灌注と一致するように脈動される。他の実施形態では、吸引は、噴出口の噴流間に脈動または作動される。
【0136】
[0165]
図9Aおよび
図9Bは、それぞれ、血栓除去システムおよび血栓除去装置の概略図である。
図9Aを参照すると、システムは、肺動脈圧(Ppa)、圧力真空源(Pvs)、圧力噴射源(Pjs)、真空システムの流体抵抗(Rvs)および装置の吸引/真空部分の流体静電容量(Cvs)、装置の噴射部分の流体抵抗(Rjs)および静電容量(Cjs)、およびシステムの圧力または流れを試験するための複数の試験点T1~T7を含むことができる。任意の数またはタイプの圧力センサおよび/または流量センサがシステムに実装できる。加えて、他のタイプのセンサが使用できる。例えば、電極またはインピーダンスセンサは、システムの遠位端でインピーダンスを測定する(例えば、血塊対血液に関連する電気インピーダンスの変化を特徴付ける)ために使用できる。他の実施形態では、温度センサ(例えば、1つまたは複数のサーミスタ)は、装置または標的組織の温度を感知するために使用してよい。追加の実施形態では、真空源または噴射源は、吸引管腔または噴射管腔に接続された逆起電力または流体柱センサを使用するなど、センサとして構成できる。
【0137】
[0166]圧力真空源(Pvs)は、真空源(低圧ガスが吸引物の上に維持されるトラップ)または容積式源であることができ、両方とも(容積式ポンプでは必要とされない場合があるため、存在する場合)CNTsに対して遠位に負圧を誘起する。血塊などとの係合は、予想される流量もしくは流量の変化率と、測定された流量との間の差が十分に大きい場合、いずれかの差によって特徴付けできる。
【0138】
[0167]
図9Bを参照すると、CNTsは、圧力真空源と血栓除去装置との間の接合部または接続部を表し、CNTjは、圧力噴射源と血栓除去装置との間の接合部または接続部を表す。CNTsおよびCNTjの弁は、真空/噴射源の静電容量をシステムの残りの部分から隔離できるので、真空システムが停止または終了されたときにシステム内へ引き込まれる血液の量が最小に抑えられる。
図9Aを参照すると、試験点T1およびT2は、圧力真空源と装置との間の場所、および圧力噴射源と装置との間の場所で、圧力/流量の読取値を提供するように構成された圧力または流量センサの場所をそれぞれ表すことができる。試験点T4およびT3は、同様に、装置と圧力真空源および圧力噴射源との間の接合部または接続部に近い場所で、圧力/流量の読取値を提供するように構成された圧力または流量センサの場所をそれぞれ表すことができる。加えて、試験点T5、T6、およびT7は、装置の遠位端近くの場所で、圧力/流量の読取値を提供するように構成された圧力または流量センサの場所を表すことができる。例えば、試験点T5は、噴射流体が装置の遠位端で噴射ポートまたはノズルを出る場所またはその近くで流量/圧力の読取値を提供できる。同様に、試験点T6およびT7は、漏斗部内(
図9BのT6)または漏斗部に対してすぐ近位である血栓除去装置内(
図9BのT7)など、装置の遠位端またはその近くで吸引システムの圧力/流量の読取値を提供できる。システム概略図内の試験点の場所は、圧力センサ、流量センサ、または装置の動作を制御する、システム動作パラメータを検出する、詰まりを検出するなどのために実時間で使用できる他のセンサの潜在的な試験/センサの場所を例示する。
【0139】
[0168]
図9Bを参照すると、漏斗部および装置の吸引管腔における流れおよび/または圧力を感知するための試験点T6およびT7、ならびに患者における血塊または他の破片との接触を検出するための触覚センサH1および/またはH2を含む血栓除去装置の実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、触覚センサは、圧力センサ(正または負)、光センサ、電気インピーダンスセンサ(直流、単一周波数、もしくは分光)、またはシステムの動作に有用な他のセンサを備えることができる。
【0140】
[0169]
手順およびシステム制御
[0170]
図10~
図12は、血塊検出、血塊係合、および血塊除去を含む、様々な実施形態による血栓除去システムのための手順の流れおよびシステム制御の概略図を例示する。
【0141】
[0171]
図10は、血栓除去システムの様々な状態の全体を、各状態にみられる関連するセンサ読取値(1つまたは複数)を含め、説明する表である。一般に、血栓除去システムは、血塊/血塊なし係合状態、係合血塊状態、血塊係合状態、詰まり噴射管腔状態、詰まり吸引管腔状態、および血塊初期係合/漏れ状態の検索を含むことができる。上述したように、センサは、装置の遠位端またはその近く(例えば、漏斗部でもしくは漏斗部内かつ/または吸引管腔内)、装置の近位端またはその近く、ならびに/あるいは装置の外側の、圧力および/または噴射/流体源で、または圧力内および/または噴射/流体源内を含む、システム全体に配設できる。センサのこれらのグループ分けの読取値は、一般に、どの状態に血栓除去システムがあるかを判定するために使用でき、さらに、療法全体を通して次の状態内への装置を通知かつ制御するために使用できる。
図10の表を参照すると、センサが公称状態または(+)状態にあると、血塊との係合を示す信号を反映し、センサが非公称または(-)状態にあるときは、装置が血塊と係合していないことを示す信号を反映する。いくつかの実施形態では、公称状態は、所与の範囲(例えば、指定の圧力または流量範囲)内の感知パラメータに対応することができ、非公称状態は、閾圧力を超える感知パラメータ(例えば、圧力または流量)に対応することができる。一実施形態では、圧力の公称範囲は、およそ+13.546~-84.660kPa(+4~-25inHg)であることができる。
【0142】
[0172]例えば、
図10の表を参照すると、血栓除去システムが血塊係合状態/非血塊係合状態を検索しているとき、遠位センサ、近位センサ、および源センサを含むセンサのすべては、非公称状態にあることができる。しかしながら、システムが血塊に係合しているとき、源センサと遠位センサ(1つまたは複数)との両方が公称状態にあることができ、近位センサ(1つまたは複数)は非公称状態のままである。血栓除去システムが血栓係合状態にあるとき、
図10に示されるように、センサのすべては公称状態にある。
【0143】
[0173]センサは、管腔(吸引もしくは噴射の管腔)の詰まり、およびシステムの漏れを含む、システム内のエラーを通知することもできる。例えば、なお
図10を参照すると、公称状態の源センサおよび近位センサ、ならびに非公称状態の遠位センサは、噴射管腔のうちの1つまたは複数が詰まっていることを示すことができる。同様に、公称状態の源センサおよび非公称状態の近位/遠位センサは、1つまたは複数の吸引管腔の詰まりを示すことができる。最後に、公称状態の近位センサおよび遠位センサと非公称状態の源センサ(1つまたは複数)は、システム内の漏れ、または血塊が初めに係合したことを示すことができる。センサ、それらの測定値、およびどのようにシステムがシステム状態を測定値に基づいて判定するかのさらなる詳細は、以下で考察する。
【0144】
[0174]
図11は、血栓除去システムが血栓除去手順中に循環し得る様々なシステム状態を説明するフローチャートである。フローチャートのステップ1102を参照すると、血栓除去システムまたは装置は患者の血管系に挿入することができ、装置の遠位端は、前進させ、1つまたは複数の血栓を含む標的組織部位に送達できる。この時点で、装置のユーザは、ステップ1104で、血栓除去システムにおいて血塊検索ルーチンを始動する、押す、または開始することができる(例えば、システムのハンドル上のボタンまたは発生器上のボタンを押すなどによって)。いくつかの実施形態では、システムは、血塊検索ルーチンを自動的に開始することができる。
【0145】
[0175]血栓除去システムがステップ1104の血塊検索ルーチンに積極的に入るとき、システムは、様々なセンサ(流量センサまたは圧力センサなど)を監視して、血栓除去システムが標的組織場所で1つまたは複数の血栓と係合したかどうか/いつ係合したかを判定する。この血栓検索状態にある間、システムは吸引源を操作して真空引きして、血塊を装置の漏斗部内へ捕捉するのを助けることができる。いくつかの実施形態では、吸引は、通常レベル(例えば、血塊が除去されるときに行うものと同じレベルの吸引)で行うことができ、他の実施形態では、吸引は、より低いレベルまたはある最低レベルで行うことができる。この状態では、噴射は完全にオフにすることもでき、血塊の捕捉を助けるために、より低いレベルまたは最低レベルで行うことができる。上述したように、本システムは、システム上またはシステム内のいくつかの場所に位置する任意の数の圧力センサおよび/または流量センサを含むことができる。本システムは、また、噴射ポート/噴射管腔をセンサとして使用することで、システムに特定の状態について通知し、療法工程を導くことができる。
【0146】
[0176]
図12Aは、装置の漏斗部もしくは遠位管腔上または漏斗部もしくは遠位管腔内に位置する遠位センサなどの、あるいは、噴射ポートまたは管腔を遠位圧力センサとして使用して(噴射開口で局所圧力に対して負圧下/吸引なし)、血栓除去システムの遠位センサの圧力波形Pwを例示する。これにより、吸引管腔に必要とされるよりも低い流量での測定が可能になる。
図12Aの図表を参照すると、Ppaは肺動脈の圧力であり、Pabは周囲または大気圧での圧力であり、Ptは予め規定された圧力閾値である。圧力波Pwの様々な領域が、装置が血塊と係合しておらず、心臓誘発性肺動脈の変動を測定していることを示すa.領域、感知された圧力が血塊との係合の関数として降下していることを示すb.領域、圧力が、変動が隠される(masked)予め規定された閾値Ptを下回っていることを示すc.領域、及び圧力源が作動される時間および/または装置が血塊と接触し始める時間のいずれかを示すd.領域を含め、示される。
【0147】
[0177]
図12Aの圧力波Pwの多くの特徴は、装置が血塊と係合したことを示すために使用または識別することができる。典型的には、Ppaは血塊と係合する前に測定されて、標的組織場所での圧力の基線を提供する。一実施形態では、圧力波Pwが降下して予め規定された圧力閾値Ptを下回ると、血塊が係合されたことをシステムに示すことができる。これにより、システム状態は
図11の係合状態1108に移動することができる。加えて、システム状態は、圧力変動が圧力波形の領域aの或る割合におけるように消失するか、または閾値を下回った場合に、血塊係合へと移動できる。別の実施形態では、圧力波形の領域bにおける変化率が閾値レベルよりも大きい場合、システム状態は係合状態に移動できる。領域bの変化率は、係合の質に関する情報、例えば、ポートのレベルで係合したポートの数の減少または増加の情報を提供できるが、基本的に、すべてのポートが血塊係合された場合、システムの静電容量としての|DP/dt|が小さくなる。上記の条件をどのように組み合わせても、システムは、血塊が、装置の遠位端で、漏斗部に係合していることを識別または判定できる。
【0148】
[0178]
図12Bは、装置の漏斗部もしくは遠位管腔上または漏斗部もしくは遠位管腔内に位置する遠位センサなどの、あるいは、噴射ポートまたは管腔を遠位圧力センサとして使用して(低正圧下/吸引オン)、血栓除去システムの遠位センサの圧力波形Pwを例示する。ここでも、図は、圧力波Pwの様々な領域を含み、例えば、装置が血塊と係合しておらず、心臓誘発性肺動脈の変動を測定していることを示すa.領域、感知された圧力が血塊との係合の関数として上昇していることを示すb.領域、圧力が、変動が隠される予め規定された閾値Ptを上回っていることを示すc.領域、及び圧力源が作動される時間および/または装置が血塊と接触し始める時間のいずれかを示すd.領域を含む。
図12Bでは、係合は、血塊が遠位圧力センサ(例えば、噴射に使用されない噴射ポートまたは専用ポートまたはセンサ)に押し付けられると、圧力波形Pwの圧力が吸引圧力を上回って増加したときに判定される。
【0149】
[0179]センサによって測定され、
図12Aおよび
図12Bで上述した圧力変化に加えて、血塊の係合は、圧力変化が以下のシナリオの1つまたは任意の組合せの介在によって調節されるときに識別できる。
【0150】
[0180]1)圧力真空源(Pvs)の方へ、または圧力真空源から離れてのいずれかで吸引線に誘導される流れ。上述したように、Pvsは、真空トラップなどの圧力源として、または容積式ポンプとして、またはこれらの組合せとして構成されてよい。
【0151】
[0181]2)圧力噴射源(Pjs)の方へ、または圧力噴射源から離れるのいずれかで、噴射線のうちの1つまたは複数に誘導される流れ。Pjsは、圧力下で維持される、または定期的に加圧される流体の体積などの圧力源として、または容積式ポンプとして、またはそれらの組合せとして構成されてよい。
【0152】
[0182]3)遠位電極またはインピーダンスセンサによって測定された電気インピーダンスの変化。
【0153】
[0183]4)上記の任意の組合せの変更。
【0154】
[0184]上記の1)および2)で説明した流れは、線を横切る相対的に一定のデルタPまたは線を横切る脈動圧力を含む、複数の条件によって誘導されてよい。いくつかの実施形態では、脈動は、システムの内へまたはシステムから外に変位する流体の総量を最小に抑えるように構成される。例えば、少量の流体(例えば、1~10mL)は脈動と共に吸引線の内外へ引き出すことができる。この例では、dQ/dtは流出よりも流入に対して大きいため、流体抵抗を高めて血塊を漏斗部内へ誘導する。係合は、圧力および/または流量の急激な増加によって示される。別の例では、より少量の流体(例えば、0.1~1mL)が噴射線または噴射ポート内へ引き込むことができる。この例では、係合は圧力および/または流量の減少によって示される。さらに別の実施形態では、血塊の係合は、吸引により流体をシステム内に引き込む間、噴射によって一定の流量で、ある量の流体を排出し、圧力線上の圧力増加に注意することによって判定でき、ここで、係合は、圧力および/または流量の増加によって示される。
【0155】
[0185]血塊との係合が上述したように感知されると、システムは、
図11に示されるように、係合ルーチン/血塊除去状態に移動できる。まず、係合を確認するために、システムは(作動している場合)噴射の流れをオフにし、吸引圧力をPa_on未満(例えば、33.864kPa(10inHgの絶対値)に減少させて、|dPa/dt|の率を試験できる。この試験された率が|dPa/dt|>/=Pa_on/秒の場合、本システムは吸引および噴射を開始して血塊を除去できる。しかしながら、その条件が満たされない場合は、試験は続行できる。試験を繰り返しても係合が確認されない場合は、本システムは除去できる。
【0156】
[0186]血塊除去/係合状態の間、本システムは、Pa<Pa_onの維持によって示されるように、血塊との係合が維持されていることを感知し続けることができる。血塊の係合が維持されると、血栓除去システムの噴出口が作動されて、10m/sより大きい(また、任意選択で20m/sより大きく、または40m/sより大きい)平均流体速度Vjetを提供することができる。噴出口からの噴射の流れは、最小値がゼロでない脈動性、最小値がゼロの脈動性、定数、または負の最小値の任意の組合せであることができる。
【0157】
[0187]Paは、血塊除去中に監視し続けることができる。Pa>Pa_onの場合、システム変更は、噴出口をオフにして(上述したように)血塊係合機能に戻るか、あるいは、噴射平均速度Vjetを漸進的に減少させるかのいずれかを含むことができる。Vjet<Vjet最小値の場合、本システムは血塊係合に戻ることができる。継続的な監視中にPa<Pa_onの場合は、血塊除去工程は続行できる。
【0158】
[0188]いくつかの実施形態では、システムは、Qasp(吸引線内の流れ)およびQjet(噴射線内の流れ)を監視し、かつ/またはシステムの抵抗および静電容量からQ’sを計算できる。この実施形態では、Qjet>/=Qaspの場合、システムは係合に戻ることができ、さもなければ血塊除去を継続できる。
【0159】
[0189]係合ルーチンが進行した後、
図11を参照すると、ステップ1110で、本システムは、移動して、血塊が取り除かれたかどうかを判定できる。システムが、ステップ1112で血塊が取り除かれたと判定した場合は、工程フローチャートは、システムが積極的に血塊を探すことも、積極的に血塊を係合/除去しようと試みることもない、検索前のルーチン状態に戻ることができる。しかしながら、一般に、取り除かれた状態または閉塞試験手順は、血栓除去システムの遠位端を通過する血流を評価または監視して(血塊除去の結果として)血流の改善を評価することを含む。流量センサまたは圧力センサを使用して流量の増加を識別することに加えて、他の技法がシステムによって使用できる。例えば、いくつかの実施形態では、流量監視は、熱希釈および/または飛行時間を使用して達成できる。例えば、ある量の(例えば、体温よりも冷たい)冷流体が標的組織場所内へ送達され、その温度は、別のセンサ場所で監視できる。例えば、冷流体は試験場所T7(
図9B)で送達でき、温度は試験場所T6で測定することもできる。あるいは、加熱された流体がT7で送達され、温度はT6で監視できる。別の実施形態では、システムは、造影剤を、噴射システムによって、または専用管腔によって、標的場所内へ注入することができ、造影剤は、血塊が除去されたか否かを判定するために視覚化できる。
【0160】
[0190]しかしながら、本システムが、装置が詰まっているか、または血塊が取り除かれていないと判定した場合、ステップ1114で、システムは、詰まりまたは取り除きルーチンに携わり、装置の詰まりを除去するか、または血塊を除去しようと試みることができる。取り除き/詰まりプロトコルは、本開示において前に説明されたが、一般に、システムは、吸引/噴射を行うことを続けること、吸引および/または噴射の圧力を逆転させること、噴射を伴わない吸引または吸引を伴わない噴射を行うこと、または他の任意の数の取り除きまたは詰まりのルーチンを含む、任意の数の手順を使用できる。システムが、ステップ1116で血塊が除去されたと判定した場合は、工程フローチャートは、システムが血塊を積極的に探し、または血塊を積極的に係合/除去しようと試みたりしていない、検索前のルーチン状態に戻ることができる。
【0161】
[0191]
図13は、上述した手順および方法を実施するために必要とされる血栓除去システムのシステム要素を説明する簡略化されたシステム概略図である。一般に、本システムは、システムの真空/吸引源および流体(噴射)源の両方の動作を制御するように構成された電子制御器を含むことができる。センサは、真空/流体源内および装置内(近位および遠位の両方)を含むシステム全体に位置できる。上述したように、センサは、圧力、流量、インピーダンス等のセンサを含むことができる。センサの測定値は、エラー信号と共に制御器内へ入力されて、装置の動作を制御できる。血管の血流も監視されて、いつ血塊が取り除かれたか、または係合したかを判定するのを助けることができる。
【0162】
[0192]装置の制御方式を助けるために圧力感知または圧力波形を使用する上述した実施形態とは対照的に、他の実施形態では、装置は、吸引流量または灌注流量などの、システム内の流量測定値に基づいてシステム状態を制御できる。加えて、本明細書に記載の制御方式のいずれでも、別のものと組み合わせることができる。例えば、圧力制御方式は、流量制御方式と組み合わせることができる。
図9A~
図9Bおよび上記で説明したように、複数の試験点T1~T7は、システム内の流量を試験するためにシステムに設けることができる。任意の数またはタイプの流量センサが、システム内の試験点で、またはシステム内の他の点で、特に装置の漏斗部および吸引管腔(1つまたは複数)に実装できる。
【0163】
[0193]
図14は、システム内、例えば試験点T1~T7に位置する1つまたは複数の流量センサであるが、特に吸引の流れに関連するセンサ(例えば、試験点T1、T4、T6、およびT7)によって感知できる吸引流量(Q)波形を例示する。
図14の波形は、システムが新しい血塊を追い、または探し、血塊に係合し、血塊の治療/除去を開始するときの経時的な吸引の流れを示す。
図14内の流量波Qの多くの特徴は、装置が血塊と係合したことを示し、漏斗部内を含む装置内の血塊挙動に関する洞察を行うために、使用または識別できる。測定された流量波Qの結果としてシステムが行ういかなる判定も、ユーザに示すことができる。例えば、システムは、システムが血塊に部分的に係合しているか、完全に係合しているか、または係合していないかを(例えば、ディスプレイ、インジケータ、または音声信号で)ユーザに示すことができる。典型的には、Qは、血塊との係合に先立って、吸引が血塊係合レベルまたは血塊係合レベルよりも低いある吸引流量レベル(例えば、血塊探索レベル)のいずれかで作動されるときに測定されて、標的組織場所での流量の基線を提供する。なお、
図14の実施形態に示されるように、吸引は作動されるが、水噴射はまだ作動されていない。しかしながら、他の実施形態では、水噴射は、
図14に例示された曲線の位相のいずれにおいても作動されてよい。システムが血塊を探している間の流量Qは、
図14内の波形の領域aに示されている。
【0164】
[0194]
図14では、流量波Qが降下し始めると、領域bに示されるように、測定された流量は、血塊が係合されたことをシステムに示すことができる。いくつかの実施形態では、流量波形の傾きdQ/dtは、血塊の係合があるかどうかを判定するためにシステムによって使用できる。いくつかの実施形態では、流量波形の率または傾きは、血塊との係合の「質」を示すことができる。例えば、下落率が大きいほど、血塊と漏斗部との間の界面によって誘起される抵抗(血塊の周りの流路の減少)が大きくなる。実際の率は、構成要素の体積、寸法、源流量、構成要素の静電容量、および/または圧力などのシステムパラメータによる。最終的に、流量波Qは、
図14の領域cに示されるように、およそゼロ(または何らかの非ゼロ最小値)になり、血塊が装置の漏斗部内で完全に係合しているか、または据えられていることを示す。これにより、結果として、システム状態は、
図11内の係合状態1108に移動できる。加えて、システム状態は、圧力変動が消えるか、流量波形のある割合におけるように閾値を下回った場合に、血塊が係合した状態に移動できる。例えば、
図14内の波のセクションdは、ゼロをわずかに上回っているが、血塊が係合しているか、または部分的に係合していることをシステムに示す閾値を下回っている。このゼロを上回る流量は、噴出口をオンにした結果であり得る、または血塊が動き回り装置の漏斗部内で完全に係合していないことによって引き起こされる可能性もある。
【0165】
[0195]領域bの変化率は、係合の質に関する情報を提供できる。上記の条件をどのように組み合わせても、結果として、システムは、血塊が装置の遠位端で漏斗部に係合していることを識別または判定できる。
【0166】
[0196]ここで
図15を参照すると、いくつかの実施形態では、吸引は、血塊を探している間(または血塊係合前)に脈動されて、システム内へ引き込まれる血液の量を低減できる。また、吸引源での吸引波形は、いつシステムが血塊と係合したかを判定するために監視かつ使用できる。
図15は、血栓除去システムと共に使用できる2つの吸引脈動方式を例示する。この図内の正の流れ(+)は、吸引源の方向における正の流れを示す。
図15の左側に示される吸引方式1では、吸引は、0流量Qと正の流量Qとの間で脈動または循環でき、図示されるように、例示された方形波をもたらすことができる。この例では、方形波は第3のパルスで劣化し、またはゼロの方へ傾斜し始め、血塊が係合されたことをシステムに示す。したがって、この実施形態では、吸引を脈動させ、結果として生じる吸引流量波形を監視することで、システムは、いつ血塊が血栓除去装置に係合されるかを判定できる。
図15の右側に示されている吸引方式2では、吸引は依然として脈動され、吸引方式1におけるように0流量と正の流量との間で脈動する代わりに、吸引方式2では、図示されるように、脈動順序が正の流量から0流量、負の流量へと遷移し、0流量へ戻る。この実施形態では、血塊は、吸引方式1で上述したのと同様に係合しているものとして検出できる。負の流量波形の機能は、流体を装置から押し戻すことである。装置が血塊を追い、または探してしているとき、この負の脈動波形により、結果として、より少ない、または制限された血液がシステム内へ吸引され、患者から除去されることが可能である。例示された波形は一例であるが、三角波形、正弦波形、または「専用」波形などの他の波形が使用できることが理解されるべきである。
【0167】
[0197]血塊が血栓除去装置の漏斗部に係合されたときの噴出口からシステム内への流体の注入は、漏斗部に血塊の係合を維持するためのさらなる課題を作る。例えば、血塊が漏斗部に完全に係合され、流体または水の注入が噴出口30(
図16B)でシステムに追加される場合、血塊は、吸引システムが血塊を横切る負圧を維持できないと、または血塊に突き当たる噴射流体の運動量が血塊を保持する圧力勾配を克服するのに十分大きいと、漏斗部から恒久的または一時的に外すことができる。
図16Bは、噴出口30が、主血塊が漏斗部にある状態で、作動されると、主血塊の小片が細分化、浸軟、または主血塊から切断され、装置の吸引管腔内へ吸引できることを示す。
図16Cは、部分的に係合した血塊を示す。
【0168】
[0198]
図16A~
図16Cをさらに参照すると、血塊と係合したときの装置は、噴出口に対して遠位である漏斗部内の抵抗R
clotと、噴出口に対して近位であるカテーテル内の抵抗R
cathとを有するものとして概略的に例示できる。抵抗R
clotは係合の関数として変化するので、この抵抗は、血塊が完全に係合しているときに高くなり、血塊が漏斗部に部分的に係合しているか、または係合していないときに低くなる。この抵抗、したがって血塊係合は、上述の吸引/流量制御を使用してシステムによって検出できる。
【0169】
[0199]いくつかの実施形態では、
図16Dを参照すると、1つまたは複数の適合断面または容易に変形した断面1701が、噴出口が流体を装置内へ注入する場所に、またはその近くで、漏斗部またはカテーテルに追加できる。これらの適合断面(1つまたは複数)1701は、漏斗部を含む装置の周囲部分よりも適合する材料からなることができる。適合断面(1つまたは複数)1701は、流体の急速静注が噴出口によって完全に封じ込められた、または係合した血塊内へ注入されるときに広がるように特に設計かつ構成できる。適合断面により、噴出口は、漏斗部から血塊を外すことなく、完全に係合した血塊でオンにすることができ、それによって血塊が部分的または完全に離脱する可能性を最小限にする。
【0170】
[0200]流体を装置で血塊内へ注入するための制御方式も提供され、血塊の係合を有利に助ける。
図17を参照すると、灌注/噴射ポンプサイクルは、複数の異なるポンプ作動順序を含むことができる。例えば、所与のポンプサイクルPcまたは灌注サイクルは、ポンプサイクルa、ポンプサイクルb、およびポンプサイクルcを含んでよく、Pc=a+b+cである。灌注がオンにされると、水または流体が噴出口から係合した血塊の方へ10m/sより大きく最大40~75m/s以上の速度で注入されるポンプサイクルbを実施できる。高速(例えば、10m/s~40m/s)での噴出口からの流体のこの初めの急速静注は、吸引システムを有する装置内へより容易に吸引できるように、主血塊の小さい部分に浸透して切り離すことが意図される。なお
図17を参照すると、一旦、血塊の小さい部分が、流体の初めの急速静注で、主血塊から切り離されると、ポンプサイクルcを実施でき、ここで、噴出口は、ポンプサイクルbにおけるよりも低い流量で流体を注入して、吸引システム内への血塊の切り離された部分の吸引/輸送を助ける。一実施形態では、ポンプサイクルcにおける噴出口からの灌注の流量は、10m/s未満であることができる。様々なポンプサイクルの持続時間は、血塊の大きさ、血塊のタイプ、血塊の硬さ等を含む、特定の治療に基づいて微調整かつ調節できる。いくつかの態様では、大きいまたは頑固な/硬い血塊を切り離すために、ポンプサイクルbのより高い流量でより長い期間、灌注することが望ましいことがある。しかしながら、これにより、結果として、システム内へより多くの量の流体が追加されるため、システムは、漏斗部から血栓が外れることを避けるために、十分な適合性が組み込まれていなければならない。他の実施形態では、ポンプサイクルbは、血塊の一部分を切り離すために短期間だけ行われ、次いで、システムは、血塊の断片または部分の吸引を助けるためにポンプサイクルcへ循環できる。
【0171】
[0201]いくつかの実施形態では、
図18を参照すると、弁が吸引システムに追加され、真空/吸引源での大きい静電容量、および漏斗部における吸引の適用で全圧をかけることを可能にすることができる。
図18は、このように弁が吸引源の近くに追加される構成を概略的に例示する。
【0172】
[0202]追加の漏斗部設計も提供される。一実施形態では、
図19Aおよび
図19Bを参照すると、漏斗部20は、漏斗部内へ追加の適合性を追加するように構成された適合漏斗部85を囲む拡張可能な支柱2001を含むことができる。適合漏斗部は、
図16Dに説明される1701と機能が類似することができ、噴出口からの流体の急速静注が漏斗部内へ追加されるときに、血栓の離脱を防ぐことができる。
図19Bは、支柱を有する漏斗部20の上から下に見た図である。いくつかの実施形態では、支柱および/または漏斗部は、血塊との係合を感知するように構成されたひずみセンサを含むことができる。あるいは、ひずみセンサは、例えば、いつ血塊が完全に係合している状況から部分的に係合している状況へ移動するかを検出することによって、いつ血塊が部分的に係合するか、または漏斗部から外れつつあるかを判定できる。加えて、ひずみゲージは、血塊界面の抵抗変化を示す漏斗部または支柱内の変形を感知するように構成できる。
【0173】
[0203]
図20Aおよび
図20Bでは、代替の漏斗部設計が提供される。上述した円錐形状の漏斗部とは対照的に、
図20Aおよび
図20Bの漏斗部は、半球形状を形成する。いくつかの例では、この構成は、噴射/吸引中の血塊係合を高め、かつ/または円錐形状の漏斗部で遭遇し得る遠位係合または捕捉部分の崩壊を最小に抑えるように構成される。
【0174】
[0204]治療の有効性/完了の評価
[0205]血栓除去術治療の有効性および/または完了進行を評価するためのシステムおよび方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、血栓除去術装置自体に位置する、または装置と通信しているソフトウェアで全体的に実施できる。他の実施形態では、本方法は、治療の進行に関する追加情報をシステム/装置に提供する装置上または装置内に配設されるハードウェアと組み合わせて実施できる。
【0175】
[0206]一実施形態では、有効性を評価する、または治療の進行を監視する方法は、治療前の撮像(例えば、CT)に基づいて血塊除去の量を評価または判定することを含むことができる。
図21のフローチャートを参照すると、本方法は、ステップ2102で、除去または治療される血塊の治療前画像を得ることを含むことができる。いくつかの実施形態では、これは、標的血塊のCT
images、超音波画像、MRI画像、または他の高解像度または高質の画像を得ることを含むことができる。
【0176】
[0207]ステップ2104で、本方法は、次いで、本明細書に記載の装置および方法のいずれかを使用して、1つまたは複数の標的血塊に対して血栓除去術手順を行うことを含むことができる。
【0177】
[0208]次に、ステップ2106で、本方法は、血栓除去術手順中に患者から除去された血塊の量を判定するか、または計算することを含むことができる。いくつかの実施形態では、この判定は、治療前の撮像を治療後の撮像と比較し、治療前の血塊の治療後の血塊に対する量を判定し、除去された血塊の量または割合を識別するアルゴリズムなど、全体的にソフトウェアでなされる。
【0178】
[0209]他の実施形態では、判定は、血栓除去術装置からのセンサフィードバックに基づくことができる。例えば、血栓除去術装置の外側、あるいは装置の吸引管腔の内側の流量センサおよび/または圧力センサが、除去された血塊の量を実時間で測定または推定するために使用できる。あるいは、造影剤は、血塊除去の実時間撮像を可能にするために、噴出口あるいは別の造影剤管腔などで、治療中に標的領域内へ送達できる。いくつかの実施形態では、造影剤は、装置の漏斗部から、またはその近くに送達できる。いくつかの実施形態では、添加剤が、血塊(1つまたは複数)に付着し、いつ血塊が実時間撮像下で除去されるかを示すことができる造影剤に追加できる。これにより、ソフトウェアまたは画像処理解決策が、治療中に除去された血塊の量を推定または判定できる。
【0179】
[0210]いくつかの実施形態では、治療の完了は、性能パラメータ(例えば、上記のステップ2106により除去された体積)および/または生理学的パラメータ(Sp02増加/減少、HR、呼吸数等、正常範囲への回復)の複合である採点システムに基づいて判定または評価できる。
【0180】
[0211]
図22を参照すると、噴出口(1つまたは複数)の出口速度または流量(平均)と、血栓除去装置に係合した(すなわち、漏斗部または吸引管腔に係合した)1つまたは複数の血栓に対する作用の機構との関係を例示するチャートが示される。一般に、噴射流量が低い場合(例えば、血塊の定式化および噴出口構成などの異なるパラメータに応じて10m/sを下回る)、噴射は1つまたは複数の血栓を吸引管腔内へ一掃するのを助ける役割を果たす(特に漏斗部が血塊によって閉塞または部分的に閉塞される場合)。このように一掃することには、血栓を吸引管腔内へ、かつ/または吸引管腔を通して押し、また、流体を漏斗部内へ、かつ吸引管腔内へ供給して血塊除去を助ける機能を含むことができる。一掃することは、血塊の表面にある柔らかくて緩い物質を細分化するのも助けるが、より硬い物質を突き破ることはできない。しかしながら、一旦、噴射流量が切断閾値2202を超え始めると、一掃することに加えて、噴射は、1つまたは複数の血栓の表面を切断し始め、血栓を小さな断片に細分化し、次いで、血栓除去装置の吸引管腔内へ、より容易に吸引できる。また、十分に高い速度で噴射(1つまたは複数)が血塊表面を貫通し、血塊の内部に浸透することも判明した。いくつかの実施形態では、閾値は、10~12m/sの範囲の噴射流量を含む。他の実施形態では、噴射の理想的な切断または貫通流量は、10~15m/s、あるいは、12~15m/sの範囲である。噴射流量がキャビテーション閾値2204を超え始めると、一掃および切断に加えて、噴射は、個々に、または1つまたは複数の他の噴射との相互作用に起因してのいずれかで、上述したように、血塊内または装置の漏斗部内にキャビテーションを生じさせるように構成できる。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、キャビテーションは、15m/sを超えて、20m/2を超えて、15~90m/sから、20~90m/sから、または50~90m/sからの噴射流量で形成される。90m/sより高い流量は、キャビテーションを発生させるためにも使用できる。
【0181】
[0212]本明細書の実施形態は、患者の血管系から血栓を除去することを意図したものとして説明されたが、この技術の他の用途が提供される。例えば、本明細書に記載の装置は、患者の腸または結腸など、患者の消化管から硬化した便を細分化かつ除去するために使用できる。一実施形態では、装置は患者の結腸または腸内に(肛門を通してなどに)挿入され、硬化した便の部位まで前進させることができる。次に、吸引システムは作動されて、硬化した便を装置の係合部材(例えば、漏斗部)と係合させることができる。最後に、噴射または灌注を作動させて、硬化した便の断片を切り離し、それらをシステム内へ吸引できる。システムを制御すること、または血塊を除去することに関して上述した技法のいずれかが、硬化した便の除去に適用できる。
【0182】
[0213]当業者であれば本明細書の開示から理解するように、上述した血栓除去システムの様々な構成要素は、本技術の範囲から逸脱することなく省略できる。前に考察したように、例えば、本技術は、脂肪、組織、または異物など、血管を閉塞することがある他のタイプの塞栓を除去するために使用および/または修正できる。さらに、本明細書のいくつかの実施形態は、肺動脈からの血栓除去の文脈で説明されるが、開示された技術は、血管系の他の部分からの血栓および/または塞栓の除去に適用されてよい(例えば、神経血管、冠状動脈、または末梢部分の用途における)。同様に、上記に明示的に記載されていない追加の構成要素が、本技術の範囲から逸脱することなく、血栓除去システムに追加されてよい。したがって、本明細書に記載のシステムは、明示的に識別されたそれらの構成に限定されるものではなく、むしろ、記載されたシステムの変形および変更を包含する。
結論
[0214]本技術の実施形態の上記の詳細な説明は、網羅的であること、または本技術を上記に開示された正確な形態に限定することを意図していない。本技術の特定の実施形態、およびその実施例は、例示目的のために上記で記載されているが、当業者が認識するように、本技術の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、ステップは所与の順序で提示されるが、代替の実施形態は異なる順序でステップを行ってよい。本明細書に記載の様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされてもよい。
【0183】
[0215]上記から、本技術の特定の実施形態が例示の目的で本明細書に記載されたが、本技術の実施形態の記載を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造および機能は詳細に図示または記載されていないことが理解されよう。文脈が許容する場合、単数または複数の用語はまた、それぞれ、複数または単数の用語を含んでもよい。
【0184】
[0216]文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、説明および例全体を通して、「備える」、「備えている」などの語は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味で解釈されるべきであり、すなわち、「含むが、それに限られない」という意味である。本明細書で使用される際、用語「接続された」、「結合された」、またはそれらのいかなる変形も、2つ以上の要素間の直接的または間接的ないかなる接続または結合も意味し、要素間の接続の結合は、物理的、論理的、またはそれらの組合せであってよい。加えて、「本明細書」、「上記」、「下記」という語、また同様の意味の語は、本出願に使用される際、本出願を全体を指すものとし、本出願のいかなる特定の部分のことを指すものではない。文脈が許容する場合、単数または複数を使用する上記の発明を実施するための形態における語は、それぞれ、複数であることも単数であることもある。本明細書に使用される際、「Aおよび/またはB」のような「および/または」という語句は、Aのみ、Bのみ、ならびにAおよびBを指す。加えて、「備えている」という用語は、いかなるより多くの同じ特徴および/または追加のタイプの他の特徴も除外されないように、少なくとも挙げた特徴(1つまたは複数)を含むことを意味するために全体を通して使用される。本明細書では、例示の目的で具体的な実施形態が説明されたが、本技術から逸脱せずに、様々な修正がなされてよいことも理解されるであろう。さらに、本技術のいくつかの実施形態に関連する利点をこれらの実施形態の文脈で説明してきたが、他の実施形態もこのような利点を呈することがあるが、すべての実施形態が本技術の範囲内に入るために必ずしもそのような利点を呈する必要はない。したがって、本開示および関連する技術は、本明細書で明示的に示されていない、または説明されていない他の実施形態を含むことができる。
【国際調査報告】