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特表2024-522620アトピー性皮膚炎及び関連する障害の治療方法
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  • 特表-アトピー性皮膚炎及び関連する障害の治療方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】アトピー性皮膚炎及び関連する障害の治療方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20240614BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
A61K39/395 N
A61P17/04
A61P37/08
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/26
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575802
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2022065851
(87)【国際公開番号】W WO2022258814
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2108379.5
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】マーク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ソルドブロー,リーセ
(72)【発明者】
【氏名】ウーラン,クリスチャン ビェアアゴー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC18
4C076DD23
4C076DD46
4C076FF11
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZB07
4C084ZB13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
(57)【要約】
本発明は、インターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質、例えば、抗IL-13抗体またはそのIL-13結合断片を使用して、対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるアトピー性皮膚炎(AD)を治療する方法での使用のためのインターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質であって、前記ADが、抗IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)によって不十分に制御され、前記方法が、前記対象に前記IL-13結合タンパク質を投与することを含み、前記IL-13結合タンパク質が、重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)を含む、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片であり、
(i)前記重鎖可変領域が、
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び
配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含み、
(ii)前記軽鎖可変領域が、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び
配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、
前記インターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質。
【請求項2】
アトピー性皮膚炎(AD)の治療を必要とする対象においてアトピー性皮膚炎(AD)を治療するための方法であって、前記ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)によって不十分に制御され、前記方法が、前記対象に前記IL-13結合タンパク質を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項3】
前記方法が、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)によって不十分に制御される対象を選択するステップを含む、請求項1に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
IL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)で治療したときに結膜炎を経験した対象における、アトピー性皮膚炎を治療する方法での使用のためのIL-13結合タンパク質であって、前記方法が、前記IL-13結合タンパク質を前記対象に投与することを含む、前記IL-13結合タンパク質。
【請求項5】
IL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)で治療したときに結膜炎を経験した対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するための方法であって、前記方法が、前記対象に前記IL-13結合タンパク質を投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記方法が、IL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)で治療したときに結膜炎を経験した対象を選択するステップを含む、請求項4に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
IL-13及びIL-14シグナル伝達を阻害する前記薬剤(例えば、デュピルマブ)が、ベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)をもたらさない、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項8】
前記ADがまた、シクロスポリンAによっても不十分に制御される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項9】
前記方法が、(a)前記対象に、前記IL-13結合タンパク質の第一の用量を投与するステップと、(b)前記対象に、前記IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を投与するステップであって、各第二の用量が、直前の用量の12日~35日後に前記対象に対して投与される、前記ステップと、を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項10】
各第二の用量が、前記直前の用量の約2週間または約4週間後に前記対象に投与される、請求項9に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項11】
前記方法が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも12週間、少なくとも3か月、少なくとも16週間、少なくとも24週間、少なくとも26週間、少なくとも6か月、少なくとも32週間、少なくとも36週間、少なくとも1年、もしくは少なくとも52週間またはそれより長く行われる、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項12】
前記方法が、少なくとも26週間行われる、請求項11に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項13】
前記方法が、(a)約10~約600mgの前記IL-13結合タンパク質の第一の用量を前記対象に投与するステップと、(b)約10~約600mgの前記IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を前記対象に投与するステップであって、各第二の用量が、前記直前の用量の12日~35日後に前記対象に投与される、前記ステップと、を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項14】
前記方法が、(a)約600mgの前記IL-13結合タンパク質の第一の用量を前記対象に投与するステップと、(b)約300mgの前記IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を前記対象に投与するステップであって、各第二の用量が、前記直前の用量の12日~35日後に前記対象に投与される、前記ステップと、を含む、請求項13に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項15】
前記方法が、各第二の用量が、前記直前の用量の約2週間または約4週間後に前記対象に投与される、請求項14に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項16】
前記ADが、中等度から重度または重度のADである、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項17】
前記IL-13結合タンパク質が、皮下投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項18】
前記IL-13結合タンパク質が、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、85mMの塩化ナトリウム、0.01%(w/v)のポリソルベート80を含む医薬組成物として投与され、前記医薬組成物が、pH5.5を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項19】
前記IL-13結合タンパク質が、モノクローナル抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項20】
前記IL-13結合タンパク質が、ヒト抗IL-13抗体、またはそのIL-13-結合断片である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項21】
前記IL-13抗体が、IgG4抗体である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項22】
前記IL-13結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、またはジスルフィド結合Fv(sdFv)から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項23】
前記抗IL-13抗体、または前記そのIL13-結合断片が、さらに、
(i)配列番号8の重鎖可変領域配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、及び/または
(ii)配列番号10の軽鎖可変領域配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項24】
前記抗IL-13抗体、または前記そのIL-13結合断片が、配列番号8の重鎖可変領域配列及び配列番号10の軽鎖可変領域配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項25】
前記抗IL-13抗体、または前記そのIL-13-結合断片が、(i)配列番号11の重鎖配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、及び/または(ii)配列番号12の軽鎖配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項26】
前記抗IL-13抗体、または前記そのIL-13結合断片が、配列番号11の重鎖及び配列番号12の軽鎖配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項27】
前記抗IL-13抗体が、トラロキヌマブである、請求項26に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項28】
前記IL-13結合タンパク質が、単剤療法として投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項29】
前記IL-13結合タンパク質が、局所コルチコステロイド、局所カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン剤、皮膚軟化剤、もしくは抗細菌治療薬からなる群から選択される第二の治療薬と組み合わせて投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項30】
前記IL-13結合タンパク質が、局所コルチコステロイドと組み合わせて投与される、請求項29に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項31】
IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する前記薬剤が、抗体またはその抗原結合断片である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項32】
IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する前記薬剤が、抗原結合断片であり、前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、またはジスルフィド結合Fv(sdFv)から選択される、請求項31に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項33】
IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する前記薬剤が、IL-4Rαに結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項31または32に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項34】
IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する前記薬剤が、デュピルマブである、請求項31~33のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項35】
前記方法が、ベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の50%以上の改善(EASI-50)を達成する、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項36】
前記方法が、ベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項37】
前記方法が、16週目にベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する、請求項36に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項38】
前記方法が、26週目にベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する、請求項36に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項39】
前記方法が、(a)前記対象に、約600mgの前記IL-13結合タンパク質の第一の用量を投与することと、(b)前記対象に、約300mgの前記IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を投与することであって、各第二の用量が、直前の用量の2週間または4週間後に、前記対象に投与される、前記投与することと、を含み、前記IL-13結合タンパク質が、配列番号8に示される重鎖可変領域配列と、配列番号10に示される軽鎖可変領域配列と、を含む抗体であり、前記方法が、少なくとも26週間行われ、前記方法が、26週目にベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項40】
前記IL-13結合タンパク質が、局所コルチコステロイドと組み合わせて投与される、請求項39に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【請求項41】
前記対象における前記ADが、シクロスポリンAによって不十分に制御される、請求項39または40に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質、例えば、抗IL-13抗体またはそのIL-13結合断片を使用して、対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚のバリア機能及び免疫応答を混乱させる遺伝的及び環境的要因から生じる不均一な炎症性皮膚疾患である(Leung,D.Y.and Guttman-Yassky,E.Deciphering the complexities of atopic dermatitis:shifting paradigms in treatment approaches.J Allergy Clin Immunol.2014;134:769-779)。現在の管理は、概して、炎症を抑制し、皮膚バリア機能を回復させ、重複感染を防ぐための治療の組み合わせを含む(Wollenberg,A.,Oranje,A.,Deleuran,M.,Simon,D.,Szalai,Z.,Kunz,B.et al.ETFAD/EADV Eczema task force 2015 position paper on diagnosis and treatment of atopic dermatitis in adult and paediatric patients.J Eur Acad Dermatol Venereol.2016;30:729-747)。
【0003】
局所コルチコステロイド(TCS)は、AD患者に対して圧倒的に最も頻繁に処方される薬物のクラスであるが、TCSの長期適用は推奨されない。局所カルシニューリン阻害剤(TCI)は、一般に短期治療として効果的で安全である。皮膚の悪性腫瘍及びリンパ腫のリスクの増加により、規制当局は、例えば、処方情報で局所タクロリムス及びピメクロリムスの長期的な安全性に関する警告を義務付けるように指示した。第一世代の抗ヒスタミン剤は、掻痒(かゆみ)の急性対症療法のために広く処方されているが、その有効性は限られており、主にその鎮静効果に帰する。経口免疫抑制剤及びグルココルチコイドは効果的であるが、重度の毒性と副作用を伴うことがあるため、それらの使用は短期間の、及び/または間欠的な療法に限定される。
【0004】
シクロスポリンA(CSA)は、一部の地域における重度のADの療法であり、液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方に影響を与える免疫抑制剤であるが、これは、感染に対する感受性を高め、がんの免疫監視を減少させる。その他の一般的に認識されている毒性としては、高血圧ならびに腎機能及び肝機能の障害が挙げられる。さらに、CSAは他の一般に使用される薬物と相互作用し、それらの代謝と効果に影響を与える可能性がある。全身性免疫抑制剤は、これらが有害事象を伴い、長期使用に適さないため、通常は中等度から重度のADの治療に使用が限られる(Wollenberg,A.,Oranje,A.,Deleuran,M.,Simon,D.,Szalai,Z.,Kunz,B.et al.ETFAD/EADV Eczema task force 2015 position paper on diagnosis and treatment of atopic dermatitis in adult and paediatric patients.J Eur Acad Dermatol Venereol.2016;30:729-747)。したがって、単に症状を緩和するのではなく、ADの病態生理学のメカニズムを標的とする、より効果的で忍容性の高い療法が必要である。
【0005】
ADの1つの重要な特徴は、病変皮膚及び非病変皮膚におけるIL-13及びインターロイキン-4(IL-4)の上方制御であり、両方のサイトカインがADの病因に寄与する可能性があることを示唆している(Nomura,I.,Goleva,E.,Howell,M.D.,Hamid,Q.A.,Ong,P.Y.,Hall,C.F.et al.Cytokine milieu of atopic dermatitis,as compared to psoriasis,skin prevents induction of innate immune response genes.J Immunol.2003;171:3262-3269、Tazawa,T.,Sugiura,H.,Sugiura,Y.,and Uehara,M.Relative importance of IL-4 and IL-13 in lesional skin of atopic dermatitis.Arch Dermatol Res.2004;295:459-464参照)。さらに、ADの重症度は、IL-13及び関連するケモカインmRNA及び血清レベルの増加と関連しているが、一方IL-13濃度の低下は、治療反応及び臨床アウトカムの改善と相関している。IL-4及びIL-13の両シグナル伝達を阻害するヒトmAbであるデュピルマブによる治療によって、AD症状の改善が示されたが、これらのサイトカインの各々のAD病因への相対的な寄与は不明である。
【0006】
実際の臨床診療では、デュピルマブを投与された患者における結膜炎の有病率は、文献の系統的レビューに基づいて26%と推定されており(Halling AS et al.Real-world evidence of dupilumab efficacy and risk of adverse events:A systematic review and meta-analysis.J Am Acad Dermatol 2020)、適切な眼科的治療にもかかわらず持続する可能性がある(Achten R et al.Long-term follow-up and treatment outcomes of conjunctivitis during dupilumab treatment in patients with moderate-to-severe atopic dermatitis.J Allergy Clin Immunol Pract 2020)。さらに、結膜炎などのデュピルマブによる眼の合併症の発生率は、ADの重症度とともに増加することが示されている(Simpson EL et al.Two Phase 3 Trials of Dupilumab versus Placebo in Atopic Dermatitis.N Engl J Med 2017;376:1090-1091、Thyssen JP et al.Incidence,prevalence,and risk of selected ocular disease in adults with atopic dermatitis.J Am Acad Dermatol 2017;77:280-286 e281)。デュピルマブ治療中の眼科的副作用は、AD患者でのみ観察されており、鼻ポリープ、喘息または好酸球性食道炎を伴う慢性副鼻腔炎の研究では観察されておらず(Bachert C et al.Effect of subcutaneous dupilumab on nasal polyp burden in patients with chronic sinusitis and nasal polyposis:a randomized clinical trial.JAMA 2016;315:469-479、Castro M et al.Dupilumab Efficacy and Safety in Moderate-to-Severe Uncontrolled Asthma.N Engl J Med 2018;378:2486-2496、Hirano I et al.Efficacy of dupilumab in a phase 2 randomized trial of adults with active eosinophilic esophagitis.Gastroenterology 2020;158:111-122.e110)、AD特異的素因があることを示唆している。ADの治療としてデュピルマブが導入されて以来、結膜炎は重要な有害事象として同定されており、その結果、眼科医との共同研究が増加している(Agnihotri G et al.A Clinician’s Guide to the Recognition and Management of Dupilumab-Associated Conjunctivitis.Drugs in R&D 2019;19:311-318、Wollenberg et al.2018;Wollenberg A et al.Conjunctivitis occurring in atopic dermatitis patients treated with dupilumab-clinical characteristics and treatment.J Allergy Clin Immunol Pract 2018)。
【0007】
IL-13は、114個のアミノ酸のサイトカインであり、未修飾の分子量は約12kDaである。IL-13は、IL-4と最も密接に関連しており、アミノ酸レベルで30%の配列相同性を共有している。ヒトIL-13遺伝子は、IL-4遺伝子に隣接する染色体5q31に位置する。最初は、Th2 CD4+リンパ球由来のサイトカインとして同定されたが、IL-13はまた、Th1 CD4+T細胞、CD8+Tリンパ球NK細胞、及び非T細胞集団、例えば、マスト細胞、好塩基球、好酸球、マクロファージ、単球及び気道平滑筋細胞によっても産生される。IL-13は、複数の疾患、特に、炎症反応によって引き起こされる疾患と関連している。例えば、ナイーブ非感作げっ歯類の気道への組み換えIL-13の投与により、気道炎症、粘液産生及び気道過敏性を含めた喘息表現型の多くの側面が引き起こされることが分かった。同様の表現型が、IL-13を肺で特異的に過剰発現させたトランスジェニックマウスで観察された。このモデルでは、IL-13へのより慢性的な曝露により、線維化も生じた。
【0008】
IL-13遺伝子の複数の遺伝的多型もまた、アレルギー疾患に関連づけられている。特に、アミノ酸130のアルギニン残基がグルタミンで置換された(Q130R)IL-13遺伝子のバリアントは、気管支喘息、アトピー性皮膚炎及び血清IgEレベルの上昇と関連づけられている。この特定のIL-13バリアントは、そのアミノ酸数から20アミノ酸のシグナル配列を除外するいくつかのグループによって、Q110Rバリアント(アミノ酸110のアルギニン残基がグルタミンで置換されている)とも呼ばれる。
【0009】
トラロキヌマブ(別名、CAT-354及びBAK502G9)は、Q130Rバリアントを含む、IL-13に結合し、中和する完全ヒト治療抗体である(Popovic et al.J.Mol.Biol.(2017) 429(2):208-219、May,R.D.,Monk,P.D.,Cohen,E.S.,Manuel,D.,Dempsey,F.,Davis,N.H. et al.Preclinical development of CAT-354,an IL-13 neutralizing antibody,for the treatment of severe uncontrolled asthma.Br J Pharmacol.2012;166:177-193参照)。
【0010】
トラロキヌマブは、成人204人を対象としたADの治療に対する第二b相試験で以前に試験された。この試験では、患者に、45mg、150mg、または300mgの皮下トラロキヌマブまたはプラセボを2週おきに局所グルココルチコイドとともに12週間投与したところ、プラセボと比較して、湿疹面積重症度指数(EASI)スコアのベースラインからの変化が改善されることとともに、アトピー性皮膚炎のスコアリング(SCORAD)、皮膚の状態に関するアンケート(DLQI)、及び掻痒の数値評価尺度スコアの改善が見られた(Wollenberg J.Allergy Clin.Immunol.(2019)143(1):135-141)。
【0011】
例えば、上で言及した問題の少なくともいくつかに対処する、ADのさらなる改善された治療が当技術分野で依然として望まれている。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達の両方を標的とする治療薬(例えば、デュピルマブのような抗体)によって不十分に制御される患者が、IL-13結合タンパク質(例えば、トラロキヌマブのような抗IL13抗体)で有効に治療され得ることを見出した。
【0013】
したがって、一態様では、本発明は、対象におけるアトピー性皮膚炎(AD)を治療する方法での使用のためのインターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質であって、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤によって不十分に制御され、方法が、対象にIL-13結合タンパク質を投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法は、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤によって不十分に制御される対象を選択することを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、アトピー性皮膚炎(AD)の治療を必要とする対象においてアトピー性皮膚炎(AD)を治療する方法であって、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤によって不十分に制御され、方法が、対象にIL-13結合タンパク質を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤によって不十分に制御される対象を選択することを含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、対象におけるADを治療するための医薬品の製造における、IL-13結合タンパク質の使用であって、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤によって不十分に制御される、使用を提供する。
【0018】
本明細書に記載される態様または実施形態のいずれかでは、ADは、中等度から重度のADまたは重度のADであり得る。
【0019】
いくつかの態様では、本発明は、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤で治療したときに結膜炎を経験した対象における、アトピー性皮膚炎を治療する方法での使用のためのIL-13結合タンパク質であって、方法が、対象にIL-13結合タンパク質を投与することを含む、方法を提供する。
【0020】
いくつかの態様では、本発明は、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤で治療したときに結膜炎を経験した対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するための方法であって、方法が、対象にIL-13結合タンパク質を投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
いくつかの態様では、本発明は、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤で治療したときに結膜炎を経験した対象における、アトピー性皮膚炎を治療するための医薬品の製造におけるIL-13結合タンパク質の使用を提供し、方法は、対象にIL-13結合タンパク質を投与することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤で治療したときに結膜炎を経験した対象を選択することを含む。
【0023】
本明細書に記載される態様または実施形態のうちのいずれかでは、ADはシクロスポリンAによって不十分に制御され得るか、または対象はシクロスポリンAに対する禁忌を有し得る。
【0024】
本明細書に記載される態様または実施形態のいずれかでは、方法は、(a)対象に、IL-13結合タンパク質の第一の用量を投与するステップと、(b)対象に、IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を投与するステップであって、各第二の用量が、直前の用量の12日~35日後に対象に対して投与される、ステップと、を含み得る。好ましい実施形態では、各第二の用量は、直前の用量の約12~16日後、または直前の用量の25日~31日後に対象に投与される。特に好ましい実施形態では、各第二の用量は、直前の用量の約2週間後、または直前の用量の約4週間後に対象に投与される。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも12週間、少なくとも3か月、少なくとも16週間、少なくとも24週間、少なくとも26週間、少なくとも6か月、少なくとも32週間、少なくとも36週間、少なくとも1年、もしくは少なくとも52週間またはそれより長く行われる。好ましい実施形態では、方法は、少なくとも26週間行われる。
【0026】
本明細書に記載される態様または実施形態のいずれかでは、方法は、(a)約10~約600mgのIL13結合タンパク質の第一の用量を対象に投与するステップと、(b)約10~約600mgのIL13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を対象に投与するステップであって、各第二の用量が、直前の用量の12日~35日後に対象に投与される、ステップと、を含み得る。
【0027】
本明細書に記載される態様または実施形態のいずれかでは、方法は、(a)約600mgのIL13結合タンパク質の第一の用量を対象に投与するステップと、(b)約300mgのIL13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を対象に投与するステップであって、各第二の用量が、直前の用量の12日~35日後に対象に投与される、ステップと、を含み得る。
【0028】
好ましい実施形態では、各第二の用量は、直前の用量の約12~16日後、または直前の用量の25日~31日後に対象に投与される。さらに好ましい実施形態では、各第二の用量は、直前の用量の約2週間後、または直前の用量の約4週間後に対象に投与される。
【0029】
好ましい実施形態では、IL-13結合タンパク質は、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片である。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかに従った使用のためのIL-13結合タンパク質は、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片であり、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び
配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む。
【0031】
さらなる実施形態では、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)を含み、
(i)重鎖可変領域が、
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び
配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含み、
(ii)軽鎖可変領域が、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び
配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、配列番号8の重鎖可変領域配列及び配列番号10の軽鎖可変領域配列を含む。
【0033】
場合によっては、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、配列番号11の重鎖及び配列番号12の軽鎖配列を含む。
【0034】
好ましい実施形態では、抗IL-13抗体は、トラロキヌマブである。
【0035】
IL-13結合タンパク質は、単剤療法として、または第二の治療薬との併用療法として投与され得る。好ましい実施形態では、IL-13結合タンパク質は、局所コルチコステロイドと組み合わせて投与される。
【0036】
本明細書に記載の方法においてIL-13結合タンパク質によって治療される対象は、ADを有し、ADは、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤によって不十分に制御される。好ましい実施形態では、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤は、抗体またはその抗原結合断片であり得る。より好ましい実施形態では、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤は、IL-4Rαに結合する抗体またはその抗原結合断片である。さらにより好ましい実施形態では、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤は、デュピルマブである。
【0037】
ベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の50%以上の改善(EASI-50)を達成することが、本明細書に記載の方法の目標である。好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法は、ベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する。いくつかの実施形態では、EASI-50またはEASI-75は、16週目に達成される。いくつかの実施形態では、EASI-50またはEASI-75は、26週目に達成される。
【0038】
例えば、一実施形態では、方法は、(a)対象に、約600mgのIL-13結合タンパク質の第一の用量を投与することと、(b)対象に、約300mgのIL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を投与することであって、各第二の用量が、直前の用量の2週間後に、対象に投与される、投与することと、を含み、IL-13結合タンパク質は、配列番号8の重鎖可変領域配列と、配列番号10の軽鎖可変領域配列と、を含む抗体(例えば、トラロキヌマブ)であり、方法は、少なくとも26週間行われ、方法は、26週目にベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する。いくつかの実施形態では、(i)IL-13結合タンパク質は、局所コルチコステロイドと組み合わせて投与され、及び/または(ii)ADは、シクロスポリンAによって不十分に制御されるか、または対象は、シクロスポリンAに対する禁忌を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ECZTRA7試験の試験デザインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、インターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質(例えば、トラロキヌマブなどの抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片)を使用して、対象におけるアトピー性皮膚炎(AD)を治療するための方法であって、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤(デュピルマブなど)によって不十分に制御される、方法に関する。いかなる特定の理論に拘束されることなく、本発明者らは、ADがIL-13及びIL-4シグナル伝達の両方を阻害する薬剤によって十分に制御されない場合でも、IL-13結合タンパク質の投与によって対象においてADが効果的に治療され得ることを見出した。
【0041】
アトピー性皮膚炎
本明細書で使用される、「アトピー性皮膚炎」(AD)は、激しい掻痒(例えば、重度のかゆみ)ならびに鱗状及び乾性湿疹性病変を特徴とする炎症性皮膚疾患を意味する。
【0042】
「アトピー性皮膚炎」という用語には、表皮バリア機能不全、アレルギー(例えば、ある特定の食物、花粉、メイド(maid)、イエダニ、動物等に対するアレルギー)、放射線曝露、及び/または喘息によって引き起こされるまたはそれらと関連するADが含まれる。いくつかの実施形態では、本発明は、中等度から重度または重度のADに関する。
【0043】
本明細書で使用される、「中等度から重度のAD」は、多くの場合、持続的な細菌、ウイルスまたは真菌感染を合併する、激しい掻痒性の広範な皮膚病変を特徴とする。中等度から重度のADはまた、慢性ADも含む。多くの場合、慢性病変には、皮膚の肥厚したプラーク、苔癬化及び線維性丘疹が含まれる。一般に、中等度から重度のADに罹患する患者はまた、目、手及び体のしわの関与に加えて、体の皮膚の20%超、または皮膚面積の10%超が罹患している。中等度から重度のADは、局所コルチコステロイドによる治療を頻繁に必要とする患者にも存在すると考えられている。本明細書で報告する臨床試験において、「中等度から重度のAD」の対象は、IGAスコア3~4を有する対象であった。
【0044】
本明細書で使用される、「重度のAD」とは、中効力及び高効力のTCS及び/または免疫抑制療法による治療に対して抵抗性の慢性再発性ADを指す。重度のADはまた、体表面積の20%超が罹患している慢性的な激しい掻痒性病変も特徴とする。Eichenfield基準(Eichenfield et al 2014,J.Am.Acad.Dermatol.70:338-351)によれば、慢性AD患者には重度のADが存在すると考えることができ、それに対して強力な局所コルチコステロイド(TCS)による治療が適応となる、及び/または対象は全身性コルチコステロイド及び/または非ステロイド性免疫抑制剤での治療に対して抵抗性がある。本明細書で報告する臨床試験において、「重度のAD」の対象は、IGAスコア4を有する対象であった。したがって、ある特定の実施形態では、方法は、対象における重度のADを治療し、対象は、ベースライン時にIGAスコア4を有する。「重度のAD」の対象は、スクリーニング時及びベースライン時に体表面積の少なくとも10%にADを有し、スクリーニング時及びベースライン時に20以上のEASIスコアを有し、スクリーニング時及びベースライン時に3以上のIGAスコアを有し得る。
【0045】
対象
本明細書で使用される、「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物、特に哺乳類を含む。通常、対象は、以下の実施例に示す通り、ヒトである。
【0046】
本発明の方法によって治療された対象は、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)などのIL-13及びIL-4シグナル伝達の両方を阻害する治療薬で以前に治療されたAD(特に中等度から重度のADまたは重度のAD)を有する対象であるが、それらの対象のADは、この薬剤では不十分に制御される。
【0047】
いくつかの実施形態では、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤によって「不十分に制御される」とは、ADが、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)のなどの、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤に対して非反応性、抵抗性、または難治性であることを意味する。このような実施形態では、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)などの、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤での、ADを有する対象の治療は、治療効果を有しなかった。例えば、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤(例えば、デュピルマブ)で治療した中等度から重度のADまたは重度のADを有する対象(例えば、慢性的な再発性ADを有する対象)は、以下でより詳細に記載されるように、1つ以上のAD関連パラメータスコア(複数可)の低下を示さなかった。治療効果の評価のための時間は、IL-13及びIL-4を阻害する薬剤の作用の発現の典型的な時間枠に応じて異なる。
【0048】
いくつかの実施形態では、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤(例えば、デュピルマブ)に対する、「不十分に制御された」、「非反応性」、「抵抗性」、または「難治性」という用語は、ADを有する対象であって、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤(例えば、デュピルマブ)で治療されたが、薬剤が治療効果を有しなかった、例えば、方法が、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51もしくは52週目に、ベースラインと比較して湿疹面積重症度指数の50%以上の改善(EASI-50)を達成しなかったか、またはベースラインと比較して湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成しなかった、対象を指す。
【0049】
いくつかの実施形態では、IL-13及びIL-14シグナル伝達を阻害する薬剤は、抗体である。好ましい実施形態では、IL-13及びIL-14シグナル伝達を阻害する薬剤は、デュピルマブである。
【0050】
いくつかの実施形態では、デュピルマブ治療は、医師によって、対象に対して医学的に望ましくないと考えられている。そのような対象は、以下の基準によって識別され得る:(1)現在、医学的禁忌(複数可)、デュピルマブもしくは賦形剤(複数可)に対する過敏症、デュピルマブとの併用が禁止されている薬剤の使用に起因して、デュピルマブ治療の候補者ではない、(2)以前のデュピルマブへの曝露における以前の不寛容、副作用、及び/または許容できない毒性、及び/または(3)処方情報で指定された用量または期間を超えるデュピルマブの要求。
【0051】
デュピルマブに関連する一般的な副作用としては、結膜炎、好酸球増加症、眼の炎症、眼の掻痒症、頭痛、口腔ヘルペスが挙げられる。いくつかの実施形態では、デュピルマブの使用は、例えば、結膜炎に起因する有害な副作用に起因して、対象において中止されている。
【0052】
いくつかの態様では、本発明は、抗IL4Rα抗体、またはIL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、デュピルマブで治療したときに結膜炎を経験した対象における、アトピー性皮膚炎を治療する方法での使用のためのIL-13結合タンパク質を提供し、方法は、対象にIL-13結合タンパク質を投与することを含む。
【0053】
いくつかの態様では、本発明は、対象におけるアトピー性皮膚炎を治療する方法での使用のためのIL-13結合タンパク質を提供し、方法は、(a)抗IL4Rα抗体、またはIL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、デュピルマブで治療したときに結膜炎を経験した対象を選択するステップと、(b)対象にIL-13結合タンパク質を投与するステップと、を含む。
【0054】
いくつかの態様では、本発明は、抗IL4Rα抗体、またはIL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、デュピルマブで治療したときに結膜炎を経験した対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するための方法であって、対象にIL-13結合タンパク質を投与することを含む、方法を提供する。
【0055】
いくつかの態様では、本発明は、対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するための方法であって、(a)抗IL4Rα抗体、またはIL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、デュピルマブで治療したときに結膜炎を経験した対象を選択するステップと、(b)対象にIL-13結合タンパク質を投与するステップと、を含む、方法を提供する。
【0056】
いくつかの態様では、本発明は、抗IL4Rα抗体、またはIL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、デュピルマブで治療したときに結膜炎を経験した対象における、アトピー性皮膚炎を治療するための医薬品の製造におけるIL-13結合タンパク質の使用を提供し、方法は、対象に、IL-13結合タンパク質を投与することを含む。
【0057】
いくつかの態様では、本発明は、対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するための医薬品の製造におけるIL-13結合タンパク質の使用を提供し、方法は、(a)抗IL4Rα抗体、またはIL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、デュピルマブで治療したときに結膜炎を経験した対象を選択するステップと、(b)対象にIL-13結合タンパク質を投与するステップと、を含む。
【0058】
また、AD(特に中等度から重度のADまたは重度のAD)の対象は、非ステロイド性全身性免疫抑制剤による治療に対して抵抗性、非反応性または不十分に反応性である可能性がある。「非ステロイド性全身性免疫抑制剤」という用語には、シクロスポリンA(CSA)、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、及びインターフェロン-ガンマが含まれる。ある特定の実施形態では、用語にはまた、免疫生物製剤、例えば、腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)阻害剤(例えば、インフリキシマブ等の抗TNFa抗体)、CD11a阻害剤(例えば、エファリズマブ等の抗CD11a抗体)、IgE阻害剤(例えば、オマリズマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブ)も含まれる。したがって、場合によっては、本明細書に記載の方法は、全身性免疫抑制剤による治療に対して抵抗性、非反応性(難治性)または不十分に反応性の対象におけるADを治療し得る。「全身性免疫抑制剤に対して抵抗性、非反応性または不十分に反応性」という用語は、全身性免疫抑制剤で治療され、免疫抑制剤が治療効果を示さなかったADの対象、例えば、非ステロイド性全身性免疫抑制剤で1~3か月間治療され、1つ以上のAD関連のパラメータスコア(複数可)の減少が見られない中等度から重度のADまたは重度のADの対象(例えば、慢性再発性ADの対象)を指す。治療効果の評価のための時間は、非ステロイド性全身性免疫抑制剤の作用の発現の典型的な時間枠に応じて異なる。かかる時間枠は周知である。例えば、シクロスポリンの場合、作用の発現は、通常2~6週であるが、他の非ステロイド性全身性免疫抑制剤の場合、それは通常、約8~12週である。
【0059】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤治療は、医師によって、対象に対して医学的に望ましくないと考えられている。そのような対象は、以下の基準によって識別され得る:(1)現在、医学的禁忌(複数可)、または当免疫抑制剤もしくは賦形剤(複数可)に対する過敏性、免疫抑制剤との併用が禁止されている薬剤の使用、あるいは免疫抑制剤による腎障害に対する感受性の増加または重篤な感染症のリスクの増加に起因して、免疫抑制剤治療の候補者ではない、(2)以前の免疫抑制剤への曝露における以前の不寛容及び/または許容できない毒性、及び/または(3)処方情報で指定された用量または期間を超える免疫抑制剤の要求。
【0060】
アトピー性皮膚炎、例えば、重度のアトピー性皮膚炎を治療するための本明細書に記載の方法のいずれにおいても、当対象は、アトピー性皮膚炎がシクロスポリンA(CSA)、例えば、経口シクロスポリンAによって適切に制御されない対象の場合もあれば、対象は、シクロスポリンA(CSA)、例えば経口シクロスポリンAの禁忌を有する対象の場合もある。
【0061】
CSAに対する不十分な反応は、最大6週間の高用量(5mg/kg/日)後維持量(2~3mg/kg/日)までのCSAの漸減でのADの再燃または維持量で最低3か月後の再燃として定義される。再燃は、用量の増加、higher potencyクラスのTCSへの切り替え、または別の全身性非ステロイド性免疫抑制薬の開始であり得る治療の拡大につながる徴候または症状の増加として定義される。
【0062】
CSAの禁忌としては、以下が挙げられる:
i.医学的禁忌(例えば、投薬による管理不良高血圧)またはCSAの活性物質または賦形剤に対する過敏性、
ii.禁止併用薬(例えば、スタチン、ジゴキシン、マクロライド、抗生物質、バルビツール酸、抗痙攣薬、非ステロイド性抗炎症薬、利尿薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、セイヨウオトギリソウ)の使用;
iii.CSAによる腎障害(クレアチニンの上昇)及び肝障害(機能検査の上昇)に対する感受性の増加もしくは重篤な感染症のリスクの増加、
iv.不寛容もしくは許容できない毒性(例えば、クレアチニンの上昇、肝機能検査の上昇、管理不良高血圧、錯感覚、頭痛、吐き気、多毛症)、または
v.用量5mg/kg/日を超えるCSAの必要量、もしくは処方情報で指定されるものを超える継続期間(1年超)の必要性。
【0063】
IL-13及びIL-4シグナル伝達阻害剤
本発明は、対象におけるADを治療するためのIL-13結合タンパク質であって、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤によって十分に制御されない、IL-13結合タンパク質に関する。
【0064】
IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤としては、例えば、抗体またはその抗原結合断片、ならびに小分子阻害剤及びIL-4ムテインが挙げられる。
【0065】
好ましくは、一実施形態では、IL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する薬剤は、抗体またはその抗原結合断片である。抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、またはジスルフィド結合Fv(sdFv)から選択することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤は、IL-4Rαに結合する抗体またはその抗原結合断片である。IL-4Rαに結合する抗体の例としては、デュピルマブが挙げられる。好ましい実施形態では、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する抗体は、デュピルマブである。
【0067】
ADの治療
本明細書に記載の方法は、ADを治療する。一般に、「治療する」、「治療すること」、「治療」等の用語は、一時的にまたは永続的に症状を緩和する(軽減する、最小化する、もしくは排除する)こと、または症状の原因を軽減、最小化、もしくは排除することを意味する。
【0068】
AD関連パラメータ
ADの重症度及びADに対する薬物の影響を測定するために、様々なAD関連パラメータが利用可能である。これらには、治験責任医師による全般的評価(IGA)、湿疹面積重症度指数(EASI)、アトピー性皮膚炎のスコアリング(SCORAD)、及び/または掻痒数値化スケール(NRS)が挙げられる。本明細書に記載の方法は、対象のAD関連パラメータを改善し得る。代替的に、方法は、対象のAD関連パラメータの改善を維持し得る。AD関連パラメータは、治験責任医師による全般的評価(IGA)、湿疹面積重症度指数(EASI)、アトピー性皮膚炎のスコアリング(SCORAD)、及び/または掻痒数値化スケール(NRS)から選択され得る。
【0069】
IGAは、臨床試験で対象の全般的なADの重症度を評価するために使用される手段であり、評価時の疾患の状態に基づいて0(消失)から4(重度)までの5段階のスケールに基づいている。
【表1】
【0070】
EASIは、ADの重症度及び程度を評価するために臨床診療及び臨床試験で使用される検証済の尺度である(Hanifin et al.“The eczema area and severity index(EASI):assessment of reliability in atopic dermatitis.EASI Evaluator Group.Experimental dermatology”(2001)10(1):11-18)。SCORADは、ADの臨床試験及び臨床診療において最も一般的に使用される疾患重症度スコアのうちの1つである(“European Task Force on Atopic Dermatitis.Severity scoring of atopic dermatitis: the SCORAD index.Consensus report of the European task force on atopic dermatitis” Dermatology(1993)186(1):23-31参照)。
【0071】
掻痒NRSの日内最高値(Worst Daily Pruritus NRS)は、FDA及びEMAの推奨に従って確立されている(例えば、FDAの「The Food and Drug Administration.Guidance for Industry.Patient-Reported Outcome Measures:Use in Medical Product Development to Support Labeling Claims.2009」及びEMAの「Reflection paper on the regulatory guidance for the use of health-related quality of life (HRQoL) measures in the evaluation of medicinal products.EMEA/CHMP/EWP/139391/2004.2005」参照)。掻痒NRSについては、対象は、0(かゆみなし)~10(想像できる最悪のかゆみ)の11点のNRS(「掻痒NRSの日内最高値」)を使用して過去24時間にわたる最悪のかゆみの重症度を評価する。
【0072】
各AD関連パラメータについて、改善または改善の維持は、ベースラインに対して測定される。これに関連した改善は、IGAスコアの低下、EASIスコアの低下、SCORADスコアの低下(50超が重度、25~50が中等度、25未満が軽度)、掻痒NRSスコアの低下であり得る。各スコアは、ベースラインと比較される。
【0073】
ベースラインは、AD関連のパラメータまたは患者関連アウトカム(または任意の他のパラメータ)の初期測定値であり、本明細書に記載の方法による投与の開始前に取られる、すなわち、「ベースライン用量」(他の場所で定義)前に取られる測定値である。
【0074】
治験責任医師による全般的評価0または1(IGA0/1、炎症徴候消失または炎症徴候ほぼ消失の皮膚)、及び/または湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)は、ADの第3相臨床試験における規制当局による有効性主要評価項目である。したがって、本明細書に記載の方法は、好ましくは、治験責任医師による全般的評価(IGA)スコア0もしくは1及び/またはベースラインに対して湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)(例えば、本明細書における実施例1及び2に示す通り)を達成または維持し得る。いくつかの実施形態では、方法は、ベースラインに対して湿疹面積重症度指数の50%以上の改善(EASI-50)を達成または維持し得る。
【0075】
さらに、または代替的に、本明細書に記載の方法は、掻痒数値化スケール(NRS)の日内最高値(上記の掻痒NRS参照)、湿疹関連睡眠妨害、患者自身による湿疹評価(POEM)、皮膚の状態に関するアンケート(DLQI)、患者の全般的なトラブルの印象(PGI-B)、病院における不安と抑うつに関する質問票(HADS)、短文式(36項目)健康状態調査票(SF-36)及びユーロコル5項目健康調査5レベル(EQ-5D-5L)からなる群から選択される少なくとも1つの患者関連アウトカム(PRO)を改善し得る。
【0076】
湿疹関連睡眠妨害NRSの場合、対象は、湿疹が前夜の睡眠をどれだけ妨げたかを、0(妨害なし)から10(完全な妨害)までの11点のNRSを使用して評価する。POEMは、AD患者の臨床診療及び臨床試験の両方における疾患の症状を評価するために使用される検証済の質問票である(Charman et al.“The patient-oriented eczema measure:development and initial validation of a new tool for measuring atopic eczema severity from the patients perspective”Arch Dermatol.(2004)140(12):1513-1519参照)。DLQIは、皮膚疾患のある対象に固有の内容を含む、患者が報告する検証済の質問票である(Finlay et al.“Dermatology Life Quality Index(DLQI)-a simple practical measure for routine clinical use”Clin Exp Dermatol.(1994)19(3):210-216参照)。患者の全般的なトラブルの印象(PGI-B)は、完了時に過去24時間にわたって、ADにどれほど悩まされていたかの対象の認識をとらえるように設計されている。5段階のカテゴリーの反応スケールが使用される(「まったくない」、「わずか」、「ある程度」、「かなり」、「非常に」)。病院における不安と抑うつに関する質問票(HADS)は、一般的な病院環境での不安及び抑うつの状態を検出するために広く使用されているリッカート尺度のツールである(Zigmond AS,Snaith RP.”The hospital anxiety and depression scale”.Acta Psychiatr Scand.1983;67(6):361-70参照)。このツールは、過去1週間の対象の不安(7項目)及び抑うつ(7項目)を評価する14項目からなる。各項目は、0~3で採点され、スコアが高いほど不安や抑うつが深刻であることを示す。短文式(36項目)健康状態調査票(SF-36)は、8つの健康ドメイン(身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常生活機能(精神)、及び心の健康)のスコア、ならびに精神測定によって得られる2つのサマリースコア(身体的健康度及び精神的健康度)を生成することによって健康状態を評価するように設計された、患者報告による調査である(Ware JEJ,Sherbourne CD.”The MOS 36-item short-form health survey(SF-36).I.Conceptual framework and item selection”Med Care.1992;30(6):473-83参照)。ユーロコル5項目健康調査5レベル(EQ-5D-5L)は、ユーロコルグループによって開発された標準化された健康状態の尺度であり、臨床的及び経済的評価のための単純で一般的な健康尺度を提供する(Greiner W et al.”A single European currency for EQ-5D health states.Results from a six-country study”The European journal of health economics:HEPAC:health economics in prevention and care.2003;4(3):222-31参照)。EQ-5D-5Lは、「今日」の健康状態を評価するために使用される自己記入質問書であり、2つのセクションに分かれている。第一のセクションは、5項目(移動の程度、身の回りの管理、普段の生活、痛み/不快感、及び不安/抑うつ)を含み、各項目は、対象によって、5段階のスケール(「問題がない」、「わずかに問題がある」、「中程度の問題がある」、「深刻な問題がある」、及び「極度の問題がある」)を使用して評価される。第二のセクションは、0(「想像できる最悪の健康状態」)と100(「想像できる最高の健康状態」)に固定された垂直視覚的アナログスケールからなる。
【0077】
方法は、掻痒数値化スケール(NRS)の日内最高値、湿疹関連睡眠妨害、患者自身による湿疹評価(POEM)、皮膚の状態に関するアンケート(DLQI)、患者の全般的なトラブルの印象(PGI-B)、病院における不安と抑うつに関する質問票(HADS)、短文式(36項目)健康状態調査票(SF-36)及びユーロコル5項目健康調査5レベル(EQ-5D-5L)からなる群から選択される少なくとも1つの患者関連アウトカム(PRO)の改善を維持し得る。各PROについて、改善または改善の維持は、ベースラインに対する。これに関連した改善は、PROスコアの低下(例えば、3点以上の低下)(または、例えば、DLQIに関する4点以上の低下)の場合があり、スコアは、ベースラインと比較される。
【0078】
好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法は、以下を達成し得る:(a)湿疹面積重症度指数の50%以上の改善(EASI-50)、及び/または(b)湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)(例えば、実施例1及び2に示される通り、16週間後もしくは26週後後)。
【0079】
TCS依存性
TCSの長期使用は、皮膚萎縮、色素沈着異常、ざ瘡様発疹のリスク、及び全身吸収に関連するリスク(例えば、視床下部下垂体軸への影響、クッシング病等)のため、推奨されない。任意の局所療法の長期間にわたる、または広い表面積への繰り返しの適用は、患者コンプライアンスの低下にもつながり得る。
【0080】
本明細書に記載の方法は、AD(特に中等度から重度または重度のAD)の対象の局所コルチコステロイド(TCS)依存性を軽減し得る。
【0081】
依存性の低下は、本明細書に記載の方法の開始後、特定の時間間隔(例えば、16週間または26週間)にわたって対象によって適用されたTCSを含む製剤の累積量(グラム)を、プラセボ投与された対象と比較することによって評価され得る。例えば、対象は、プラセボ投与対象と比較して、1日当たりのTCSの使用が、少なくとも0.2g少ないか、少なくとも0.3g少ないか、少なくとも0.4g少ないか、または少なくとも0.5g少ない可能性がある。典型的には、対象は、プラセボ投与対象と比較して、1日当たりのTCSの使用が、少なくとも0.5g少ない可能性がある。
【0082】
依存性の低下はまた、方法の開始後、ベースラインで行われた同じ測定と比較して、TCSを使用しない日数(低効力のTCS及びTCIが含まれる場合もある)によっても評価され得る。
【0083】
TCSは、I群、II群、III群及びIV群の局所コルチコステロイドとして分類され得る。世界保健機関の解剖治療化学分類法によると、コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾンと比較した活性に基づいて、弱/低(I群)効力、中効力(II群)及び高効力(III群)及び非常に高効力(IV群)に分類される。IV群のTCS(非常に高効力)は、ヒドロコルチゾンの最大600倍強力であり、クロベタゾールプロピオン酸エステル及びハルシノニドを含む。III群のTCS(高効力)は、ヒドロコルチゾンの50~100倍強力であり、ベタメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルコルトロン吉草酸エステル、ヒドロコルチゾン-17-酪酸、モメタゾンフランカルボン酸エステル、及びアセポン酸メチルプレドニゾロンを含む。II群のTCS(中高力)は、ヒドロコルチゾンの2~25倍強力であり、クロベタゾン酪酸エステル及びトリアムシノロンアセトニドを含む。I群のTCS(低効力)は、ヒドロコルチゾンを含む。
【0084】
「TCSを使用しない日」という用語は、対象が、II群、III群またはIV群のTCSを使用しない日を意味する。
【0085】
例えば、対象のTCSを使用しない日数は、プラセボ投与対象と比較して、1週間で平均約0.5日、約0.75日、約1日、約1.5日、約2日、約3日またはそれ以上増加し得る。典型的には、TCSを使用しない日数は、プラセボ投与対象と比較して、約0.5日増加し得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、IL-13結合タンパク質は、例えば、TCSを使用せずに、単剤療法として投与することができる。他の実施形態では、IL-13結合タンパク質は、TCS、局所カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン剤、皮膚軟化剤、または抗細菌治療薬からなる群から選択される第二の治療薬と組み合わせて投与される。好ましい実施形態では、IL-13結合タンパク質は、TCSと組み合わせて投与される。
【0087】
IL-13結合タンパク質をTCSと組み合わせて、対象をTCS使用から離脱させることができる。したがって、本明細書に記載の方法では、中高力または高効力のTCSが、IL-13結合タンパク質と並行して投与される場合もある。次いで、方法の開始後、(例えば、3~4か月間にわたって)TCSの量を、ベースラインでのTCSの量と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%減らすことができる。
【0088】
IL-13結合タンパク質
IL-13結合タンパク質は、ヒトIL-13に特異的に結合し、これを中和するタンパク質である。
【0089】
本明細書において、「特異的に結合する」という用語は、タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)が、抗原と生理学的条件下で比較的安定な複合体を形成することを意味する。タンパク質が抗原に特異的に結合するかどうかを判断する方法は、当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore 200バイオセンサー(BIAcore AB)を使用)等を含む。例えば、IL-13と「特異的に結合する」IL-13結合タンパク質(例えば、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片)は、表面プラズモン共鳴によって25℃で測定して、K約1000nM未満、約500nM未満、約100nM未満、約50nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM未満または約0.05nM未満でIL-13と結合し得る。例示的な抗体であるトラロキヌマブは、表面プラズモン共鳴によって測定して(詳細な方法についてはWO2005/007699を参照されたい)、K178pMでヒト結合ヒトIL-13と結合する。したがって、好ましい実施形態では、抗IL-13抗体は、37℃または25℃で表面プラズモン共鳴によって測定して、K約200pM未満を有する。IL-13結合タンパク質は、ヒトIL-13と特異的に結合するが、他の抗原、例えば、他の(非ヒト)種由来のIL-13に対して交差反応性を有する場合もある。
【0090】
中和活性を測定する方法は、当技術分野で周知である。中和活性は、WO2005/007699に記載の通り、IL-13に向けられていない対照抗体と比較した、IL-13依存性TF-1細胞増殖アッセイで測定され得る。このアッセイでは、IL-13依存性増殖の阻害は、分裂細胞の新たに合成されたDNAへのトリチウム化チミジンの取り込みの減少を測定して判断される。簡潔には、市販のTF-1細胞を付属のプロトコルに従って維持する。アッセイ培地は、5%FBS及び1%ピルビン酸ナトリウムを含むGLUTAMAX I(Invitrogen)添加RPMI-1640を含む。各アッセイの前に、TF-1細胞を300xgで5分間遠心分離してペレット化し、培地を吸引除去し、細胞をアッセイ培地に再懸濁する。このプロセスを、10細胞/mLの最終濃度でアッセイ培地に再懸濁した細胞で2回繰り返す。抗体の試験溶液(三連)をアッセイ培地で所望の濃度に希釈する。IL-13に向けられていない抗体を陰性対照として使用する。組み換え細菌由来のヒトまたはマウスIL-13を、96ウェルのアッセイプレートにて、総量100μL/ウェルで適切な試験抗体と混合した場合の最終濃度50ng/mLまで加えた。アッセイで使用されるIL-13の濃度は、最終アッセイ濃度が最大増殖応答の約80%を与える用量として選択される。すべてのサンプルを室温で30分間インキュベートする。次に、100μLの再懸濁細胞を各アッセイポイントに加えて、総アッセイ量を200μL/ウェルにする。アッセイプレートを37℃にて、5%COで72時間インキュベートする。25μLのトリチウム化チミジン(10μCi/mL)を次いで各アッセイポイントに加え、アッセイプレートをさらに4時間、インキュベーターに戻す。セルハーベスターを使用して、ガラス繊維フィルタープレート(Perkin Elmer)上に細胞を回収する。チミジンの取り込みを、Packard TopCountマイクロプレート液体シンチレーションカウンターを使用して測定する。
【0091】
抗IL-13抗体及びそのIL-13結合
典型的には、IL-13結合タンパク質は、抗IL-13抗体またはそのIL-13結合断片である。
【0092】
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、すなわち、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。通常の抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわち、C1、C2及びC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。V及びVは、さらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域に組み入れられた相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に分割される。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。場合によっては、抗IL-13抗体(またはそのIL-13結合断片もしくは誘導体)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一の場合もあれば、天然または人工的に修飾される場合もある。
【0093】
抗体の重鎖定常領域は、IgG、IgM、IgD、IgA、及びIgE等の任意の型の定常領域に由来し得る。一般に、抗体は、IgG(例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)である。好ましくは、抗体は、本明細書で例示するように、IgG4である。
【0094】
抗体は、マウス、ヒト、霊長類、ヒト化またはキメラ抗体であり得る。抗体は、ポリクローナルでもモノクローナルでもよい。治療用途には、モノクローナル及びヒト(またはヒト化)抗体が好ましい。特に好ましい実施形態では、抗体は、ヒトまたはヒト化、及びモノクローナルである。
【0095】
抗体は、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体であり得る。多重特異性抗体または抗体の抗原結合断片は、通常、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別個の抗原または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合することができる。任意の多重特異性抗体フォーマットは、当技術分野で利用可能な通常の技術を使用して、本明細書に記載の抗体または抗体の抗原結合断片との関連での使用に適応し得る。例えば、免疫グロブリンの1つのアームがIL-13に特異的であり、免疫グロブリンの他方のアームが第二の治療標的に特異的であるか、または治療部分に結合している、二重特異性抗体を使用する方法。
【0096】
抗IL-13抗体のIL-13結合断片は、任意の天然に存在する、酵素的に得られる、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドであり得る。かかる断片は、例えば、タンパク質分解消化または抗体可変ドメイン及び任意に定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組み換え遺伝子工学技術等の任意の適切な標準的技術を使用して、完全抗体分子から得てもよい。かかるDNAは既知であり、及び/または、例えば、商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、または合成され得る。DNAは、化学的に、または分子生物学技術を使用して配列決定及び操作される場合があり、例えば、1つ以上の可変及び/または定常ドメインが適切なコンフィギュレーションに配置されるか、またはコドンが導入され、システイン残基が創出され、アミノ酸の修飾、追加、もしくは削除等がなされる。
【0097】
IL-13結合断片の非限定的な例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv、dAb断片、及び他の操作された分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディ等)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインが挙げられる。
【0098】
抗IL-13結合抗体のIL-13結合断片は、通常、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のものであってよく、通常は、少なくとも1つのCDRを含み、これは、1つ以上のフレームワーク配列に隣接するか、または1つ以上のフレームワーク配列とインフレームである。Vドメインと会合したVドメインを有する抗原結合断片では、Vドメイン及びVドメインは、任意の適切な配置で、互いに対して位置し得る。例えば、可変領域は二量体であり得るとともに、V-V、V-VまたはV-V二量体を含み得る。代替的に、抗体の抗原結合断片は、単量体のVまたはVドメインを含み得る。
【0099】
抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み得る。抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)を含み、(i)重鎖可変領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含み、(ii)軽鎖可変領域は、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む。加えて、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、さらに、(i)配列番号8の重鎖可変領域配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、及び/または(ii)配列番号10の軽鎖可変領域配列と、80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、配列番号8の重鎖可変領域配列及び配列番号10の軽鎖可変領域配列を含み得る。
【0100】
抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片は、(i)配列番号11の重鎖配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、及び/または(ii)配列番号12の軽鎖配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。場合によっては、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片もしくはIL-13結合誘導体は、配列番号11の重鎖及び配列番号12の軽鎖配列を含む。
【0101】
本明細書に記載の方法で使用され得る1つのかかる抗体は、抗IL-13抗体であるトラロキヌマブである(“International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances(INN)”list 102(WHO Drug Information(2009)23(4):pp 348)に記載の通り)。トラロキヌマブは、ヒトIL-13に特異的に結合し、これを中和する完全ヒトIgG4-ラムダ抗体である。
【表2-1】
【表2-2】
【0102】
抗体及びその断片を同定、単離及び試験(例えば、結合及び中和)する方法は、当技術分野で周知である。様々な抗IL13抗体及び断片の同定及び特性評価を開示し、それを行うための適切な方法を提供するWO2005/007699を参照されたい。
【0103】
用量及び投与計画
本発明は、本明細書に記載の任意の治療方法での使用のための、上述のインターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質(例えば、抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片)を提供し、方法は、(a)対象に、IL-13結合タンパク質の第一の用量を投与するステップと、(b)対象に、IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を投与するステップであって、各第二の用量が、直前の用量の12日~35日後に対象に対して投与される、ステップと、を含む。好ましくは、各第二の用量は、直前の用量の12日~16日後に対象に対して投与され、例えば、直前の用量の14日後、または直前の用量の25日~31日後、例えば、直前の用量の約4週後に投与される。
【0104】
「用量」という用語は、特定の治療日に対象に対して投与されるIL-13結合タンパク質の量(質量)を指す。例えば、用量300mgのIL-13結合タンパク質とは、治療日に合計300mgのIL-13結合タンパク質が対象に与えられることを意味する。いくつかの実施形態では、用量は、単一の投与ステップ(例えば、1回の注射)で投与される。しかしながら、いくつかの実施形態では、対象に所望の用量を提供するために、1回、2回、3回、4回またはそれ以上の投与ステップ(例えば、1回、2回、3回、4回またはそれ以上の注射)が使用され得る。
【0105】
「事前の用量」、「第一の用量」、「第二の用量」、及び「第三の用量」という用語は、IL-13結合タンパク質の投与の時系列を指す。「第一の用量」という用語は、IL-13結合タンパク質の単回投与であり、1つ以上の第二の用量(複数可)がこれに続く。第一の用量に、1つ以上の事前の用量(複数可)が先行する場合もあれば、「第一の用量」が、本明細書に記載の方法による治療の開始の場合もある(後者の場合、この用量が従って、「ベースライン用量」と呼ばれ得る)。第一の用量に続くのは、1つ以上の第二の用量(複数可)であり、1つ以上の第二の用量(複数可)の後に、1つ以上の第三の用量(複数可)が続き得る。
【0106】
「直前の用量」という表現は、一連の複数回投与において、一連の次の用量の投与の前にIL-13結合タンパク質の用量を介在させずに、患者に投与されるIL-13結合タンパク質の用量を意味する。
【0107】
「投与頻度」は、IL-13結合タンパク質の用量を投与する頻度である。したがって、投与頻度の減少は、用量間の時間間隔の増加を意味する。投与頻度に関連して使用される共通用語は、QW(週1回)、Q2W(2週間に1回)、Q3W(3週おき)、またはQ4W(4週おき)である。
【0108】
第一の用量は、IL-13結合タンパク質の約10mg~約600mg、IL-13結合タンパク質の約50mg~500mg、約100mg~約400mg、約250mg~約350mgまたは約280mg~約320mgであり得る。例えば、第一の用量は、約10mg、約25mg、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、約500mgまたは約600mgである。場合によっては、第一の用量は、600mg以下、500mg以下、400mg以下、300mg以下、200mg以下、または200mg以下である。好ましい実施形態では、第一の用量は、IL-13結合タンパク質の約600mgである(例えば、実施例に示す通り)。
【0109】
各第二の用量は、直前の用量の12日~35日後、12日~30日後、12日~25日後、12日~20日後、12日~16日後、12日~15日後、12日~14日後、18日~35日後、21日~35日後、22日~34日後、24日~32日後、25日~31日後、26日~30日後、または27日~29日後に、対象に投与され得る。ある特定の場合では、各第二の用量は、直前の用量の約14日(すなわち、2週間)後に当対象に対して投与され得る(本明細書に例示する通り)。
【0110】
本明細書に記載の方法では、方法は、本明細書に記載のAD関連パラメータ及び/または患者関連アウトカムの改善が得られるまで行われ得る。場合によっては、方法は、AD関連パラメータ及び/または患者関連アウトカムの改善を、約2週間、約3週間、約12週間、約3か月、約16週間、約24週間、26週間、約6か月、約32週間、約36週間、約1年、約52週間、または52週間より長くもたらし得る。いくつかの好ましい実施形態では、AD関連パラメータ及び/または患者関連アウトカムの改善は、約16週間または26週間で提供される。
【0111】
場合によっては、方法は、当対象が低疾患状態に達するまで継続され得る。例えば、対象は、約4週間、約8週間、約12週間、約3か月、約16週間、約24週間、約26週間、約6か月、約32週間、約36週間、約1年、約52週間、または52週間より長く低疾患状態に達し得る。いくつかの好ましい実施形態では、対象は、約16週間または26週間で低疾患状態に達し得る。
【0112】
場合によっては、方法は、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも3か月、少なくとも16週間、少なくとも24週間、少なくとも26週間、少なくとも6か月、少なくとも32週間、少なくとも36週間、少なくとも1年、もしくは少なくとも52週間またはそれより長く行われ得る。場合によっては、方法は、約2週間、約3週間、約12週間、約3か月、約16週間、約24週間、約6か月、約32週間、約36週間、約1年、約52週間行われ得る。好ましい実施形態では、方法は、少なくとも26週間行われる。
【0113】
本明細書において、「低疾患状態」という表現は、治験責任医師による全般的評価(IGA)スコア0もしくは1及び/またはベースラインに対して湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)である。
【0114】
方法のステップ(b)(すなわち、対象に対して、IL-13結合タンパク質の1つ以上の第二の用量(複数可)を投与すること)は、8週間~52週間、12~40週間または16~36週間継続され得る(すなわち、複数の第二の用量を投与することによって)。1つ以上の第二の用量(複数可)は、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも3か月、少なくとも16週間、少なくとも20週間、少なくとも24週間、少なくとも6か月、少なくとも28週間、少なくとも32週間、少なくとも36週間、少なくとも1年、少なくとも52週間またはそれより長く投与され得る。方法のステップ(b)は、約8週間、約12週間、約3か月、約16週間、約20週間、約24週間、約6か月、約28週間、約32週間、約36週間、約1年、約52週間またはそれより長く継続され得る(すなわち、複数の第二の用量を投与することによって)。いくつかの実施形態では、1回以上の第二の用量(複数可)は、少なくとも16週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間投与される。さらに、または代替的に、ステップ(b)は、方法が、本明細書に記載のAD関連パラメータ及び/または患者関連アウトカムの改善をもたらすまで継続され得る。ステップ(b)は、本明細書に記載のAD関連パラメータ及び/または患者関連アウトカムの改善を維持するように継続され得る。特定の場合には、ステップ(b)は、対象が低疾患状態に達するまで継続され得る。
【0115】
各第二の用量は、IL-13結合タンパク質の約10mg~約600mg、IL-13結合タンパク質の約50mg~500mg、約100mg~約400mg、約250mg~約350mgまたは約280mg~約320mgであり得る。例えば、各第二の用量は、約10mg、約25mg、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、または約500mgである。場合によっては、各第二の用量は、600mg以下、500mg以下、400mg以下、300mg以下、200mg以下、または200mg以下である。好ましい実施形態では、各第二の用量はIL-13結合タンパク質の約300mgである(例えば、実施例等の場合)。いくつかの実施形態では、第一の用量及び1回以上の第二の用量(複数可)は、IL-13結合タンパク質の同量(すなわち、ミリグラム)である。他の実施形態では、第一の用量は、1回以上の第二の用量よりも大きい。例えば、いくつかの実施形態では、第一の用量は600mgであり、1回以上の第二の用量は300mgである。
【0116】
好ましい実施形態では、方法は、(a)約600mgのIL-13結合タンパク質(例えば、トラロキヌマブ)の第一の用量を対象に投与するステップと、(b)約300mgのIL-13結合タンパク質(例えば、トラロキヌマブ)の1回以上の第二の用量(複数可)を対象に投与するステップであって、各第二の用量が、直前の用量の約2週間後に対象に投与される、ステップと、を含み、任意に、方法は、約26週間行われる。好ましくは、各投与は皮下注射による。
【0117】
いくつかの実施形態では、第一の用量は、ボーラス用量であり、これは、ボーラス用量に続く用量の2倍量である。いくつかの実施形態では、第一の用量は、600mgの用量であり、600mgの用量に続く用量(複数可)は、300mgの用量(複数可)である。ボーラス用量は、通常、次の投与で投与される用量の2倍量である。例えば、投与される次の用量が300mgであるとき、600mgの用量がボーラス用量として使用される。
【0118】
投与
本明細書に記載の方法では、IL-13結合タンパク質(例えば、抗IL-13抗体またはそのIL-13結合断片)は、任意の適切な方法によって投与され得る。通常、投与は、非経口、例えば皮内、筋肉内、静脈内及び皮下である。皮下投与が特に好ましい(例えば、実施例に示す通り)。したがって、IL-13結合タンパク質の各用量は、皮下投与され得る。
【0119】
投与は、好ましくは、「治療有効量」でなされ、これは、本明細書に記載の1つ以上のAD関連パラメータまたは患者関連アウトカムの改善もしくは改善の維持、または低疾患状態の達成を示すのに十分なものである。
【0120】
投与は、任意の便宜的な経路による、例えば、注入またはボーラス注射による、上皮層または皮膚粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を介した吸収によるものでよい。
【0121】
皮下または静脈内送達は、標準的な針及びシリンジ(例えば、プレフィルドシリンジを含む)によるものでよい。本明細書に記載の方法は、診療所での使用に限定されないことが想定される。したがって、無針装置を使用した皮下注射もまた望ましい。かかる送達装置は、再利用可能な場合もあれば、使い捨ての場合もある。多数の再利用可能なペン及び自動注射器送達装置が当技術分野で既知であり、本発明での用途が見出される可能性がある。例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)1、11及び111(Nova Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Nova Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis,Frankfurt,Germany)が挙げられる。本発明の用途で使用され得る皮下送達用の例示的な使い捨てペン送達装置としては、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Nova Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、及びHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs,Abbott Park IL)が挙げられる。
【0122】
IL-13結合タンパク質の各用量は、必ずしも1回の投与ステップ(例えば、1回の注射または1つの錠剤等)で投与されるとは限らない。実際、IL-13結合タンパク質の(例えば、医薬組成物に含まれる)濃度に応じて、対象に対して必要な量のIL-13結合タンパク質(例えば、300mg用量)を提供するために、1回、2回、3回、4回またはそれより多くの投与ステップ(例えば、1回、2回、3回、4回またはそれより多くの注射)が必要な場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、IL-13結合タンパク質の各用量は、2回または4回の(例えば、皮下への)注射で投与される。いくつかの実施形態では、各注射は、150mgのIL-13結合タンパク質を提供し、300mgの用量には2回の注射が必要であり、600mgの用量には4回の注射が必要である。通常、皮下注射は、体積約1.5mL以下、例えば、体積0.2~1.5mL、例えば、約1mLを有する。
【0123】
単剤療法及び併用療法
本明細書に記載の方法は、単剤療法であってもよい。本明細書で使用される、「単剤療法」という用語は、単一の薬物を使用して疾患または状態を治療する療法である。したがって、単剤療法で治療される対象は、関連する障害、すなわち、ADを治療するために単一の薬物のみを投与される。例えば、抗IL-13抗体単剤療法は、ADの治療のための唯一の薬物として、対象に対して抗IL-13抗体を投与することを含む単剤療法を指す。
【0124】
本明細書に記載の方法は、併用療法であってもよい。本明細書で使用される、「併用療法」という用語は、2つ以上薬物を使用して疾患または状態を治療する療法である。例えば、併用療法で治療される対象は、ADを治療するために2つ以上(例えば、2つ、3つ、またはそれより多く)の薬物を投与される。
【0125】
いくつかの実施形態では、IL-13結合タンパク質は、局所療法(例えば、局所コルチコステロイドまたは局所カルシニューリン阻害剤)と組み合わせて投与される。場合によっては、追加治療(例えば、TCSまたはTCI)は、対象の必要に応じて投与される。
【0126】
場合によっては、IL-13結合タンパク質は、局所コルチコステロイド、局所カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン剤、皮膚軟化剤、または抗細菌治療薬からなる群から選択される第二の治療薬と組み合わせて投与される。場合によっては、IL-13結合タンパク質は、I群、II群、III群またはIV群のコルチコステロイドと組み合わせて投与される。好ましくは、IL-13結合タンパク質は、フロ酸モメタゾン(例えば、0.1%クリーム)と組み合わせて投与され得る。
【0127】
医薬組成物及び製剤
本発明は、IL-13結合タンパク質(例えば、抗IL-13抗体またはそのIL-13結合断片)の各用量が医薬組成物として投与される方法を想定している。
【0128】
医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、及び適切な移動、送達、寛容等を提供する他の薬剤を用いて製剤化され得る。すべての薬剤師に知られている処方集であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAに、多数の製剤を見出すことができる。
【0129】
本明細書に記載の方法に従って患者に投与される用量は、患者の年齢及び体格、症状、状態、投与経路等に応じて変動し得る。用量は、体重または対表面積に応じて計算され得る。
【0130】
したがって、医薬組成物は、活性成分(すなわち、IL-13結合タンパク質)に加えて、医薬的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の材料を含み得る。かかる材料は、無毒であるべきであり、活性成分の有効性を妨害するべきではない。担体または他の材料の詳細な特性は、経口の場合もあれば、注射、例えば、静脈内または皮下による場合もある投与経路に依存する。経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の形態であり得る。錠剤は、固体担体、例えば、ゼラチンまたはアジュバントを含んでもよい。液体医薬組成物は、一般に、液体担体、例えば、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水、デキストロースもしくは他の糖類溶液またはグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが含まれる場合もある。
【0131】
静脈内注射または皮下注射の場合、医薬組成物は、パイロジェンフリーでありかつ適切なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液であり得る。当業者には、例えば、等張媒体、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、乳酸リンゲル液を使用して、適切な溶液をよく調製することが可能である。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/または他の添加剤が含まれ得る。
【0132】
医薬組成物は、液体製剤の場合もあれば、使用前に再構成される凍結乾燥製剤の場合もある。凍結乾燥製剤用の賦形剤として、例えば、糖アルコール、または糖類(例えば、マンニトールもしくはグルコース)が使用され得る。液体製剤の場合、医薬組成物は、通常、密閉及び滅菌されたプラスチックまたはガラス製バイアル、アンプル及びシリンジを含めた規定の容積を有する容器の形態、ならびにボトルのような大容量容器の形態で提供される。好ましくは、本明細書に記載の方法では、医薬組成物は、液体製剤である。
【0133】
本発明に照らして使用され得る例示的な医薬組成物は、例えば、WO2007/036745及びWO2018/158332に開示されている。
【0134】
好ましくは、IL-13結合タンパク質は、濃度1mg/mL~200mg/mL、より好ましくは、150mg/mLで医薬組成物に含まれ得る。
【0135】
好ましくは、医薬組成物は、pH5.2~5.7、最も好ましくは5.5(例えば、±0.1)に緩衝化され得る。かかるpHの選択は、医薬組成物に大きな安定性を与える。この範囲にpHを制御する代替的な緩衝剤の例としては、コハク酸、グルコン酸、ヒスチジン、クエン酸、リン酸、グルタル酸、カコジル酸、マレイン酸水素ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、イミダゾールが挙げられる。好ましくは、緩衝剤は、酢酸緩衝液であり、より好ましくは、酢酸ナトリウム緩衝液である。
【0136】
好ましくは、酢酸緩衝液は、1mM~100mM、より好ましくは、30mM~70mM、特に50mMの量で医薬組成物に含まれる。
【0137】
「医薬的に許容される賦形剤」への言及は、医薬組成物において従来から使用されている任意の賦形剤への言及を含むことを理解されたい。かかる賦形剤は、典型的には、1つ以上の界面活性剤、無機塩または有機塩、安定剤、希釈剤、可溶化剤、還元剤、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤等を含み得る。
【0138】
代表的な界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤(HLB6~18)、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート)、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノステアレート)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレエート)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールジステアレート)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールミツロウ)、ポリオキシエチレンラノリン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンラノリン)、及びポリオキシエチレン脂肪酸アミド(例えば、ポリオキシエチレンステアリルアミド)、陰イオン性界面活性剤、例えば、C10-C18アルキル硫酸塩(例えば、セチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム)、平均2~4モルのエチレンオキシドを含むポリオキシエチレンC10-C18アルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム)、及びC8-C18アルキルスルホコハク酸エステル塩(例えば、ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム)、ならびに天然界面活性剤、例えば、レシチン、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン)、及びスクロースC12-C18脂肪酸エステルが挙げられる。界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択され得る。好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20、21、40、60、65、80、81及び85であり、最も好ましくは、ポリソルベート20及び80、特にポリソルベート80である。
【0139】
好ましくは、界面活性剤は、0.001%~0.1%(w/w)、より好ましくは、0.005%及び0.05%(w/w)、特に0.01%(w/w)の量で医薬組成物に含まれる。
【0140】
代表的な無機塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム及び重炭酸ナトリウムまたは任意の他のナトリウム、カリウムもしくはカルシウム塩が挙げられる。好ましくは、無機塩は、塩化ナトリウムである。
【0141】
好ましくは、無機塩は、10mM~200mM、より好ましくは、60mM~130mM、特に85mMの量で医薬組成物に含まれる。
【0142】
還元剤の例としては、N-アセチルシステイン、Nアセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、C1-C7チオアルカン酸が挙げられる。
【0143】
酸化防止剤の例としては、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アルファ-トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸及びその塩、L-アスコルビン酸パルミテート、L-アスコルビン酸ステアレート、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル及び没食子酸プロピルが挙げられる。
【0144】
キレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム及びメタリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0145】
安定剤の例としては、クレアチニン、ヒスチジン、アラニン、グルタミン酸、グリシン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、イソロイシン、プロリン、アスパラギン酸、アルギニン、リジン及びスレオニンから選択されるアミノ酸、スクロース、トレハロース、ソルビトール、キシリトール及びマンノースから選択される炭水化物、ポリエチレングリコール(PEG、例えば、PEG3350もしくはPEG4000)もしくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート20もしくはポリソルベート80)から選択される界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0146】
1つの好ましい実施形態では、安定剤は、単一の炭水化物(例えば、トレハロース)を含む。
【0147】
代替的な好ましい実施形態では、安定剤は、アミノ酸を炭水化物と組み合わせて含む(例えば、トレハロース及びアラニン、またはトレハロース、アラニン及びグリシン)。
【0148】
さらなる代替的な好ましい実施形態では、安定剤は、アミノ酸を炭水化物及び界面活性剤と組み合わせて含む(例えば、トレハロース、アラニン及びPEG3350、トレハロース、プロリン及びPEG3350、トレハロース、アラニン及びポリソルベート80、トレハロース、プロリン及びポリソルベート80、トレハロース、アラニン、グリシン及びPEG3350、トレハロース、アラニン、グリシン及びポリソルベート80)。
【0149】
その上さらなる代替的な好ましい実施形態では、安定剤は、アミノ酸を界面活性剤と組み合わせて含む(例えば、アラニン及びPEG3350またはアラニン、グリシン及びPEG3350)。
【0150】
その上さらなる代替的な好ましい実施形態では、安定剤は、炭水化物を界面活性剤と組み合わせて含む(例えば、トレハロース及びPEG3350またはトレハロース及びポリソルベート80)。
【0151】
防腐剤の例としては、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、塩化ベンゼトニウム、芳香族アルコール、例えば、フェノール、ブチルアルコール及びベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが挙げられる。好ましい実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のIL-13結合タンパク質、界面活性剤、及び無機塩を含み、酢酸緩衝液でpH5.5±0.1に緩衝化されている。
【0152】
さらに好ましい実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のIL-13結合タンパク質、塩化ナトリウム及びポリソルベート80を含み、酢酸ナトリウム緩衝液でpH5.5±0.1に緩衝化されている。
【0153】
その上さらに好ましい実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のIL-13結合タンパク質(例えば、トラロキヌマブ)、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、85mMの塩化ナトリウム、0.01%(w/v)のポリソルベート80を含み、医薬組成物は、pH5.5を有する。
【0154】
その上さらに好ましい実施形態では、医薬組成物は、150mg/mLのIL-13抗体(例えば、トラロキヌマブ)、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、85mMの塩化ナトリウム、0.01%(w/v)のポリソルベート80を含み、医薬組成物は、pH5.5を有する。
【0155】
その他の定義
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0156】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上の目的語のうちの1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0157】
「含む(comprise)」及び「含むこと(comprising)」という用語は、包括的でオープンな意味で使用され、さらなる要素を含み得ることを意味する。
【0158】
一般に、いくつかのステップを「含む」方法は、ステップを特定の順序で実行することを必要としない。方法がいくつかの連続番号またはアルファベット順のステップを含む場合(例えば、(1)、(2)、(3)、(i)、(ii)、(iii)、または(a)、(b)、(c)等)、これは、特に明記されていない限り、ステップが所定の順序で行われる必要があることを意味する。
【0159】
「含む(including)」という用語は、本明細書では、「~を含むがこれに限定されない」を意味するために使用される。
【0160】
数値xに関連する「約」という用語は、任意であり、例えば、x±10%を意味する。
【0161】
一般に、「治療する」、「治療すること」、「治療」等の用語は、一時的にまたは永続的に症状を緩和する(軽減する、最小化する、もしくは排除する)こと、または症状の原因を軽減、最小化、もしくは排除することを意味する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、参照により全体として組み込まれる。
【実施例
【0162】
本発明を、以下の実施例によりさらに説明する。これらの実施例は、例示のみを目的としており、上記の本発明を限定することを意図しないことを理解されたい。詳細の修正は、本発明の要旨を逸脱しない範囲でなされ得る。
【0163】
実施例1:重度のアトピー性皮膚炎及びデュピルマブ治療歴のある患者におけるトラロキヌマブ+局所コルチコステロイドの有効性及び安全性:ECZTRA7試験からの事後サブグループ分析
方法
ECZTRA7は、ランダム化二重盲検多施設プラセボ対照第3相試験であった。
【0164】
ECZTRA7の主要な選択基準:
●過去1年間に局所投薬または文書記録がある全身投薬に対する反応が不十分な成人AD患者、
●経口シクロスポリンAの使用により十分に制御されていない疾患、または経口シクロスポリンAの使用に禁忌を有する患者、
●体表面積(BSA)のADの病変部が10%以上、
●ならびに、スクリーニング時及びベースライン時のEASIが20以上かつIGAが3以上、
●ベースラインの前週の掻痒数値化スケール(NRS)の日内最高値の平均スコアが4以上。
【0165】
適格な患者を、26週間の治療期間でTCS(必要に応じて)と2週間ごとの300mgの皮下トラロキヌマブ、またはTCS(必要に応じて)とプラセボに、1:1でランダム化し、次いで、0日目に600mgの負荷用量を投与した。
【0166】
この分析のために、デュピルマブ治療の過去の履歴を確認し、試験の盲検解除の前にクエリを介してさらなる詳細を収集した。デュピルマブ経験患者は、試験前のデュピルマブ使用歴が確認された患者と定義され、デュピルマブ難治性患者は、盲検解除前のクエリごとに有効性の欠如または有害事象のためにデュピルマブを中止した患者と定義される。解析のために、治療を唯一の層としたコクラン・マンテル・ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel)を使用した。
【0167】
結果
デュピルマブ経験者(n=14)及びデュピルマブ未経験者(n=263)のコホートは、年齢中央値(IQR)が、デュピルマブ経験患者では51.5(43.0、57.0)歳、デュピルマブ未経験患者では33.0(25.0、45.0)歳であったことを除いて、同等のベースライン特性を有した。IGAが4の患者のEASI中央値(四分位範囲、IQR)及びパーセントは、それぞれ、デュピルマブ経験患者では35.5(24.8、39.6)及び57.1%、及びデュピルマブ未経験患者では28.7(22.4、39.5)及び49.0%であった。デュピルマブ経験患者の間で、ベースライン及び臨床特性は、トラロキヌマブ+TCS(必要に応じて)(n=6)と、プラセボ+TCS(必要に応じて)(n=8)との間で類似していた。これらの2つの群の各々における患者の50%は、有効性の欠如または安全性の懸念のいずれかのためにデュピルマブを中止した。したがって、デュピルマブで治療され、トラロキヌマブを投与されるようにランダム化された6人の患者のうち、2人の患者が結膜炎のためにデュピルマブ治療を中止し、1人の患者で有効性の欠如のためにデュピルマブ治療が失敗した。
【表3】
【0168】
16週目のデュピルマブ経験患者では、トラロキヌマブ+TCSを投与された患者の100%(n/N、6/6)が、救済療法を使用せずにEASI-75を達成したのに対し、プラセボ+TCSを投与された患者では50%(4/8)(差[95%CI]:50.0[15.4、84.6])であった。したがって、デュピルマブに反応しなかった患者は、トラロキヌマブに反応した。数値的により高い割合の、トラロキヌマブ+TCSを投与されたデュピルマブ経験患者が、16週目に、IGA0/1(4/6、66.7%;プラセボ+TCS:3/8、37.5%;差異:29.2[-21.3、79.6])及び4ポイント以上の掻痒NRSの日内最高値の改善(週平均)(3/6、50%;プラセボ+TCS:3/8、37.5%;差異:12.5[-39.7、64.7])を達成した。同様に、26週目に、プラセボ+TCSと比較して数値的により高い割合の、トラロキヌマブ+TCSを投与されたデュピルマブ経験患者が、EASI-75(6/6、100%;プラセボ+TCS:3/8、37.5%;差異:62.5[29.0、96.0])、IGA0/1(4/6、66.7%;プラセボ+TCS:2/8、25%;差異:41.7[-6.5、89.9])及び4ポイント以上の掻痒NRSの日内最高値の改善(週平均)(3/6、50%;プラセボ+TCS:3/8、37.5%;差異:12.5[-39.7、64.7])を達成した。
【表4】
【0169】
26週間を通して、トラロキヌマブ+TCSを投与されたデュピルマブ経験患者の66.7%(4/6)が有害事象を報告したのに対し、プラセボ+TCSを投与された患者では87.5%(7/8)であった。1人のプラセボ患者は、2つの結膜炎事象(1つは軽度で1つは中等度)を報告した。1人のトラロキヌマブ患者は、1つの軽度の結膜炎事象を報告した。いずれの治療群でも重篤な有害事象は発生しなかった。
【0170】
安全性の観点から、結膜炎のために以前にデュピルマブを中止した患者が2人いた。26週間のトラロキヌマブ+TCS治療の間、いずれの患者についても結膜炎の有害事象は報告されなかった。
【表5】
【0171】
結論
この事後サブグループ分析は、デュピルマブ経験患者が、トラロキヌマブ+TCS(必要に応じて)から利益を得ることができることを示す。トラロキヌマブ+TCS(必要に応じて)で治療したデュピルマブ経験患者における有害事象の全体的な頻度は、トラロキヌマブ第2及び第3相試験のプール分析と一致した。
略語のリスト
AD、アトピー性皮膚炎
AE、有害事象
AESI、特に重要な有害事象
BSA、体表の病変部
CI、信頼区間
DLQI、皮膚の状態に関するアンケート
EASI、湿疹面積重症度指数
EASI-50、湿疹面積重症度指数スコアが少なくとも50%低下
EASI-75、湿疹面積重症度指数スコアが少なくとも75%低下
EQ-5D-5L、ユーロコル5項目健康調査5レベル
HADS、病院における不安と抑うつに関する質問票
HRQoL、健康に関連した生活の質
IGA、治験責任医師による全般的評価
IGA-0/1、治験責任医師による全般的評価スコア0(消失)または1(ほぼ消失)
IMP、治験薬
IQR、四分位範囲
NRS、数値評価スケール
PT、基本語
PYE、患者年
Q2W、隔週、すなわち、2週おき
Q4W、4週おき
R、率(AE数をPYEで除し、100を掛けたもの)
SAE、重篤な有害事象
SCORAD、アトピー性皮膚炎のスコアリング
SE、標準誤差
SF-36、短文式(36項目)健康状態調査票
TCS、局所コルチコステロイド。
【0172】
本発明の態様を説明する以下の番号付きの条項は、本明細書の一部である。
1.対象におけるアトピー性皮膚炎(AD)を治療する方法での使用のためのインターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質であって、前記ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)によって不十分に制御され、前記方法が、前記対象に前記IL-13結合タンパク質を投与することを含む、インターロイキン-13(IL-13)結合タンパク質。
【0173】
2.アトピー性皮膚炎(AD)の治療を必要とする対象においてアトピー性皮膚炎(AD)を治療するための方法であって、前記ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)によって不十分に制御され、前記方法が、前記対象に前記IL-13結合タンパク質を投与するステップを含む、前記方法。
【0174】
3.前記方法が、ADが、IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する薬剤、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)によって不十分に制御される対象を選択するステップを含む、条項1に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または条項2に記載の方法。
【0175】
4.IL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)で治療したときに結膜炎を経験した対象における、アトピー性皮膚炎を治療する方法での使用のためのIL-13結合タンパク質であって、前記方法が、前記IL-13結合タンパク質を前記対象に投与することを含む、前記使用のためのIL-13結合タンパク質。
【0176】
5.IL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)で治療したときに結膜炎を経験した対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するための方法であって、前記方法が、前記対象に前記IL-13結合タンパク質を投与することを含む、前記方法。
【0177】
6.前記方法が、IL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する抗体、例えば、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)で治療したときに結膜炎を経験した対象を選択するステップを含む、条項4に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または条項5に記載の方法。
【0178】
7.IL-13及びIL-14シグナル伝達を阻害する前記薬剤(例えば、デュピルマブ)が、ベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)をもたらさない、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0179】
8.前記ADがまた、シクロスポリンAによっても不十分に制御される、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0180】
9.前記方法が、(a)前記対象に、前記IL-13結合タンパク質の第一の用量を投与するステップと、(b)前記対象に、前記IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を投与するステップであって、各第二の用量が、直前の用量投与の12日~35日後に前記対象に対して投与される、前記ステップと、を含む、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0181】
10.各第二の用量が、前記直前の用量の約2週間または約4週間後に前記対象に投与される、条項9に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0182】
11.前記方法が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも12週間、少なくとも3か月、少なくとも16週間、少なくとも24週間、少なくとも26週間、少なくとも6か月、少なくとも32週間、少なくとも36週間、少なくとも1年、もしくは少なくとも52週間またはそれより長く行われる、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0183】
12.前記方法が、少なくとも26週間行われる、条項11に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0184】
13.前記方法が、(a)約10~約600mgの前記IL-13結合タンパク質の第一の用量を前記対象に投与するステップと、(b)約10~約600mgの前記IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を前記対象に投与するステップであって、各第二の用量が、前記直前の用量の12日~35日後に前記対象に投与される、前記ステップと、を含む、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0185】
14.前記方法が、(a)約600mgの前記IL-13結合タンパク質の第一の用量を前記対象に投与するステップと、(b)約300mgの前記IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を前記対象に投与するステップであって、各第二の用量が、前記直前の用量の12日~35日後に前記対象に投与される、前記ステップと、を含む、条項13に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0186】
15.前記方法が、各第二の用量が、前記直前の用量の約2週間または約4週間後に前記対象に投与される、条項14に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0187】
16.前記ADが、中等度から重度または重度のADである、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0188】
17.前記IL-13結合タンパク質が、皮下投与される、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0189】
18.前記IL-13結合タンパク質が、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、85mMの塩化ナトリウム、0.01%(w/v)のポリソルベート80を含む医薬組成物として投与され、前記医薬組成物が、pH5.5を有する、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0190】
19.前記IL-13結合タンパク質が、抗IL-13抗体、またはそのIL-13-結合断片である、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0191】
20.前記IL-13結合タンパク質が、モノクローナル抗IL-13抗体、またはそのIL-13結合断片である、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0192】
21.前記IL-13結合タンパク質が、ヒト抗IL-13抗体、またはそのIL-13-結合断片である、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0193】
22.前記IL-13抗体が、IgG4抗体である、条項19~21のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0194】
23.前記IL-13結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、またはジスルフィド結合Fv(sdFv)から選択される、条項19~22のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0195】
24.前記抗IL-13抗体、または前記そのIL-13-結合断片が、
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び
配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、条項19~23のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0196】
25.前記抗IL-13抗体、または前記そのIL-13結合断片が、重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)を含み、
(i)前記重鎖可変領域が、
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び
配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含み、
(ii)前記軽鎖可変領域が、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び
配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、条項19~24のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0197】
26.前記抗IL-13抗体、または前記そのIL13-結合断片が、さらに、
(i)配列番号8の重鎖可変領域配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、及び/または
(ii)配列番号10の軽鎖可変領域配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、条項19~25のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0198】
27.前記抗IL-13抗体、または前記そのIL-13結合断片が、配列番号8の重鎖可変領域配列及び配列番号10の軽鎖可変領域配列を含む、条項19~26のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0199】
28.前記抗IL-13抗体、または前記そのIL-13-結合断片が、(i)配列番号11の重鎖配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列、及び/または(ii)配列番号12の軽鎖配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、条項19~27のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0200】
29.前記抗IL-13抗体、または前記そのIL-13結合断片が、配列番号11の重鎖及び配列番号12の軽鎖を含む、条項19~28のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0201】
30.前記抗IL-13抗体が、トラロキヌマブである、条項29に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0202】
31.前記IL-13結合タンパク質が、単剤療法として投与される、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0203】
32.前記IL-13結合タンパク質が、局所コルチコステロイド、局所カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン剤、皮膚軟化剤、もしくは抗細菌治療薬からなる群から選択される第二の治療薬と組み合わせて投与される、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0204】
33.前記IL-13結合タンパク質が、局所コルチコステロイドと組み合わせて投与される、条項32に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0205】
34.IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する前記薬剤が、抗体もしくはその抗原結合断片である、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0206】
35.IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する前記薬剤が、抗原結合断片であり、前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、またはジスルフィド結合Fv(sdFv)から選択される、条項34に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法
【0207】
36.IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する前記薬剤が、IL-4Rαに結合する抗体またはその抗原結合断片である、条項34または35に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0208】
37.IL-13及びIL-4シグナル伝達を阻害する前記薬剤が、デュピルマブである、条項34~36のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0209】
38.前記方法が、ベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の50%以上の改善(EASI-50)を達成する、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0210】
39.前記方法が、ベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0211】
40.前記方法が、16週目にベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する、条項39に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0212】
41.前記方法が、26週目にベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する、条項39に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
【0213】
42.前記方法が、(a)前記対象に、約600mgの前記IL-13結合タンパク質の第一の用量を投与することと、(b)前記対象に、約300mgの前記IL-13結合タンパク質の1回以上の第二の用量(複数可)を投与することであって、各第二の用量が、直前の用量の2週間または4週間後に、前記対象に投与される、前記投与することと、を含み、前記IL-13結合タンパク質が、配列番号8に示される重鎖可変領域配列と、配列番号10に示される軽鎖可変領域配列と、を含む抗体であり、前記方法が、少なくとも26週間行われ、前記方法が、26週目にベースラインと比較して、湿疹面積重症度指数の75%以上の改善(EASI-75)を達成する、先行条項のいずれか1項に記載の使用のためのIL-13結合タンパク質または方法。
図1
【配列表】
2024522620000001.app
【国際調査報告】