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特表2024-522623リンパ管マイクロニードル送達デバイスを介した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与によるがんの処置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】リンパ管マイクロニードル送達デバイスを介した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与によるがんの処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240614BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240614BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 49/00 20060101ALN20240614BHJP
   A61K 51/00 20060101ALN20240614BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/04
A61K9/00
A61P43/00 107
A61K47/34
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P37/04
A61M37/00 500
A61K49/00
A61K51/00 200
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575823
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022032747
(87)【国際公開番号】W WO2022261262
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/208,804
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロス, ラッセル フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】フランシス, デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C267
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA51
4C076AA95
4C076BB16
4C076CC27
4C076EE23N
4C076FF34
4C076FF67
4C076FF68
4C084AA17
4C084MA34
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA07
4C084NA10
4C084NA13
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB221
4C084ZB261
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG04
4C085HH03
4C085HH11
4C085KA27
4C085KA29
4C085KB07
4C085LL18
4C267AA72
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
患者におけるがんを処置するために、抗PD-1または抗PD-L1治療剤をリンパ系に送達するための方法、デバイスおよびシステムが記載される。チェックポイント阻害剤は、患者の免疫系の機能に直接影響を及ぼすがん療法の一形態である。免疫系チェックポイントは、刺激性または阻害性のいずれかであり得、いくつかのがんは、これらのチェックポイントに作用し、免疫系による攻撃を妨げることが知られている。そうであるから、チェックポイント阻害剤は、これらの阻害性チェックポイントをブロックし、それによって本来の免疫系機能を回復させ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるがんを処置する方法であって、
前記患者の皮膚下の第1の位置に近接して、前記患者の前記皮膚上に、複数のマイクロニードルを含むデバイスを配置することであって、前記第1の位置が、前記患者のリンパ系におけるリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、前記マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、複数のマイクロニードルを含むデバイスを配置することと、
少なくとも表皮を貫通し、前記マイクロニードルの少なくとも1つの末端が前記第1の位置に近接する深さまで前記複数のマイクロニードルを前記患者に挿入することと、
患者におけるがんを処置するために、前記複数のマイクロニードルを介して前記第1の位置に有効量の抗PD-1治療剤または有効量の抗PD-L1治療剤を投与することと
を含む、方法。
【請求項2】
患者におけるがん転移を予防または低減する方法であって、
固形がん腫瘍と排出管との間のリンパ系に介在する前記患者における少なくとも1つのリンパ節を位置づけることと、
介在するリンパ節と前記固形がん腫瘍との間に位置する前記患者の皮膚下の第1の位置に近接して、前記患者の皮膚上に、複数のマイクロニードルを含むデバイスを配置することであって、前記第1の位置が、前記患者のリンパ系におけるリンパ管および/またはリンパ毛細管に近接しており、前記マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、複数のマイクロニードルを含むデバイスを配置することと、
少なくとも表皮を貫通し、前記マイクロニードルの少なくとも1つの末端が前記第1の位置に近接する深さまで前記複数のマイクロニードルを前記患者に挿入することと、
前記複数のマイクロニードルを介して、前記患者におけるがん転移を予防または低減するのに有効な治療有効量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を前記第1の位置に投与することと
を含む、方法。
【請求項3】
患者におけるがん転移を予防または低減する方法であって、
前記患者における固形がん腫瘍を位置づけることと、
前記固形がん腫瘍と排出管との間のリンパ系に介在する前記患者における少なくとも1つのリンパ節を位置づけることと、
介在するリンパ節に流入するリンパ毛細管および/またはリンパ管に近接する前記患者の前記皮膚上の第1の位置において、前記患者の皮膚上に、複数のマイクロニードルを含むデバイスを配置することであって、前記マイクロニードルが、ナノトポグラフィーを含む表面を有する、複数のマイクロニードルを含むデバイスに配置することと、
少なくとも表皮を貫通する深さまで前記複数のマイクロニードルを前記患者に挿入することと、
前記複数のマイクロニードルを介して、前記介在するリンパ節に流入する前記リンパ毛細管および/または前記リンパ管に、前記患者におけるがん転移を予防または低減するのに有効な治療有効量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を投与することと
を含む、方法。
【請求項4】
前記がんが、腫瘍を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記リンパ節が、腫瘍流入領域リンパ節である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが、抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤による処置に感受性のがんである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤の血清バイオアベイラビリティーが、最大10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、または70%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤の血清Tmaxが、10~100時間である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤の血清Cmaxが、同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の血清Cmaxと比較して、最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍低下する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤の血清AUC0-tが、同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の血清AUC0-tと比較して、最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍低下する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1またはそれを超えるリンパ節への前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の送達が、静脈内送達経路によって投与された同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤の1またはそれを超えるリンパ節への送達と比較して、最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、または4倍増大する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ある期間にわたる、1またはそれを超える全身性器官における前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤のレベルが、同一期間にわたる、同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の1またはそれを超える全身性器官におけるレベルと比較して、10~75%低下する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記器官が、肝臓または腎臓である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記期間が、最大12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤が、投与後28日までに前記患者の血清から少なくとも90%、95%、99%、または99.9%排除される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が、原発腫瘍の検出不能および/または二次腫瘍の検出不能をもたらす、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
原発腫瘍の検出不能および/または二次腫瘍の検出不能の発生率または可能性が、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記患者のリンパ系におけるT細胞への前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤の曝露が、同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の前記患者のリンパ系におけるT細胞への曝露と比較して、最大1.5倍、2倍、または2.5倍増大する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者のリンパ系における1またはそれを超える固形がん腫瘍への前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤の曝露が、同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の前記患者のリンパ系における1またはそれを超える固形がん腫瘍への曝露と比較して、最大1.5倍、2倍、または2.5倍増大する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
腫瘍浸潤リンパ球が、同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の腫瘍浸潤リンパ球と比較して、最大1.5倍、2倍または2.5倍増大する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
1またはそれを超える免疫関連有害事象の発生率または重症度が、同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の1またはそれを超える免疫関連有害事象と比較して低下される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
腫瘍増殖阻害が、同等量の前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の腫瘍増殖阻害と比較して、最大10倍、20倍、30倍、40倍、または50倍増大する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
腫瘍増殖阻害が、静脈内送達経路によって投与された前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤の最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍量後の腫瘍増殖阻害と同等またはそれより良好である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月9日に出願された米国仮特許出願第63/208,804号の優先権を主張し、その内容および開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、患者におけるがんの処置のための免疫チェックポイント抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与のための方法、デバイス、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
チェックポイント阻害剤は、患者の免疫系の機能に直接影響を及ぼすがん療法の一形態である。免疫系チェックポイントは、刺激性または阻害性のいずれかであり得、いくつかのがんは、これらのチェックポイントに作用し、免疫系による攻撃を妨げることが知られている。そうであるから、チェックポイント阻害剤は、これらの阻害性チェックポイントをブロックし、それによって本来の免疫系機能を回復させ得る。チェックポイントとしては、それらに限定されないが、例えば、CTLA-4、PD-1、およびPD-L1があげられる。現在FDAによって承認されているいくつかのチェックポイント阻害剤としては、イピリムマブ(CTLA-4阻害剤;ヤーボイ(登録商標)という商品名で販売されている、Bristol-Myers Squibb Company、Delaware)、ニボルマブ(PD-1阻害剤;オプジーボ(登録商標)という商品名で販売されている、Bristol-Myers Squibb)、ペンブロリズマブ(PD-1阻害剤;キイトルーダ(登録商標)という商品名で販売されている、Merck Sharp&Dohme、New Jersey)、およびアテゾリズマブ(PD-L1阻害剤;テセントリク(登録商標)という商品名で販売されている、Genentech,Inc.、Delaware)があげられる。本明細書で使用される場合、用語チェックポイント阻害剤は、免疫系チェックポイントの活性を調節する治療剤を包含する。
【0004】
免疫系のターゲティング分子の副作用としては、免疫関連有害事象(irAE)があげられる。したがって、患者の治療剤に対する曝露全体を減らし、それによってそのような患者におけるirAEを低減または最小化すると同時に、患者における治療剤の治療有効用量を維持する投与レジメンまたは方法を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本開示は、患者におけるがんを処置する方法を提供する。この方法は、複数のマイクロニードルを含むデバイスを、患者の皮膚の下の第1のポジションに近接する患者の皮膚上に置くことであって、前記第1のポジションは、患者のリンパ系におけるリンパ管および/または毛細リンパ管に近接し、前記マイクロニードルは、ナノトポグラフィーを含む表面を有すること;前記複数のマイクロニードルをある深さまで前記患者に挿入し、それによって少なくとも表皮を貫通させ、前記マイクロニードルの少なくとも1つの末端を前記第1のポジションに近接させること;および有効量の抗PD-1治療剤または有効量の抗PD-L1治療剤を、前記複数のマイクロニードルによって、前記第1のポジションに投与して、患者におけるがんを処置することを含む。本開示は、また、抗PD-1または抗PD-L1治療剤を投与するために構成されたデバイスおよび/またはシステムも提供し、ここで、前記デバイスおよび/またはシステムは、患者におけるがんを処置するために有効な量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を含む。
【0006】
本開示は、また、患者におけるがん転移を阻害または低減する方法も提供する。この方法は、固形がん腫瘍と排出管の間のリンパ系に介在する、患者における少なくとも1つのリンパ節を位置づけること;複数のマイクロニードルを含むデバイスを、介在するリンパ節と前記固形がん腫瘍の間に位置する、患者の皮膚の下の第1のポジションに近接する患者の皮膚上に置くことであって、前記第1のポジションは、患者のリンパ系におけるリンパ管および/または毛細リンパ管に近接し、前記マイクロニードルは、ナノトポグラフィーを含む表面を有すること;前記複数のマイクロニードルをある深さまで前記患者に挿入し、それによって少なくとも表皮を貫通させ、前記マイクロニードルの少なくとも1つの末端を前記第1のポジションに近接させること;および治療有効量の、前記患者におけるがん転移を阻害または低減するために有効な抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を、前記複数のマイクロニードルによって、前記第1のポジションに投与することを含む。本開示は、また、抗PD-1または抗PD-L1治療剤を投与するために構成されたデバイスおよび/またはシステムも提供し、ここで、前記デバイスおよび/またはシステムは、患者におけるがん転移を阻害または低減するために有効な量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を含む。
【0007】
本開示は、また、患者におけるがん転移を阻害または低減する方法も提供し、前記方法は、前記患者における固形がん腫瘍を位置づけること;前記固形がん腫瘍と排出管の間のリンパ系に介在する、患者における少なくとも1つのリンパ節を位置づけること;複数のマイクロニードルを含むデバイスを、前記患者の皮膚上の、介在するリンパ節に流入する毛細リンパ管および/またはリンパ管に近接する前記患者の皮膚上の第1の位置に置くことであって、前記マイクロニードルは、ナノトポグラフィーを含む表面を有すること;前記複数のマイクロニードルをある深さまで前記患者に挿入し、それによって少なくとも表皮を貫通させること;および治療有効量の、前記患者におけるがん転移の阻害または低減において有効な抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を、前記複数のマイクロニードルによって、前記介在するリンパ節に流入する前記毛細リンパ管および/またはリンパ管に投与することを含む。本開示は、また、抗PD-1または抗PD-L1治療剤を投与するために構成されたデバイスおよび/またはシステムも提供し、ここで、前記デバイスおよび/またはシステムは、患者におけるがん転移を阻害または低減するために有効な量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を含む。
【0008】
方法、デバイス、および/またはシステムの様々なさらなる実施形態によれば、これらはすべて、明らかに相互排他的でない限り、互いに組み合わせてもよい:
i)がんは、腫瘍を含み得る。
ii)リンパ節は、腫瘍流入領域リンパ節であり得る。
iii)がんは、抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤による処置に感受性のがんであり得る。
iv)抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の血清バイオアベイラビリティーは、最大10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、または70%であり得る。
v)抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の血清Tmaxが、10~100時間であり得る。
vi)抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の血清Cmaxは、同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の血清Cmaxと比較して、最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍低下し得る。
vii)抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の血清AUC0-tは、同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の血清AUC0-tと比較して、最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍または4倍低下し得る。
viii)1またはそれを超えるリンパ節への抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の送達は、静脈内送達経路によって投与された同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の1またはそれを超えるリンパ節への送達と比較して、最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、または4倍増大し得る。
ix)ある期間にわたる、1またはそれを超える全身性器官における抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のレベルは、同一期間にわたる、同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の1またはそれを超える全身性器官におけるレベルと比較して、10~75%低下し得る。
x)器官は、肝臓または腎臓であり得る。
xi)期間は、最大12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間であり得る。
xii)抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤は、投与後28日までに患者の血清から少なくとも90%、95%、99%、または99.9%排除され得る。
xiii)投与は、原発腫瘍の検出不能および/または二次腫瘍の検出不能をもたらし得る。
xiv)原発腫瘍の検出不能および/または二次腫瘍の検出不能の発生率または可能性は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%であり得る。
xv)患者のリンパ系におけるT細胞への抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の曝露は、同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の患者のリンパ系におけるT細胞への曝露と比較して、最大1.5倍、2倍、または2.5倍増大し得る。
xvi)患者のリンパ系における1またはそれを超える固形がん腫瘍への抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の曝露は、同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の患者のリンパ系における1またはそれを超える固形がん腫瘍への曝露と比較して、最大1.5倍、2倍、または2.5倍増大し得る。
xvii)腫瘍浸潤リンパ球は、同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の腫瘍浸潤リンパ球と比較して、最大1.5倍、2倍または2.5倍増大し得る。
xviii)1またはそれを超える免疫関連有害事象の発生率または重症度は、同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の1またはそれを超える免疫関連有害事象と比較して低下し得る。
xix)腫瘍増殖阻害は、同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を静脈内送達経路によって投与した後の腫瘍増殖阻害と比較して、最大10倍、20倍、30倍、40倍、または50倍増大し得る。
xx)腫瘍増殖阻害は、静脈内送達経路によって投与された抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍量後の腫瘍増殖阻害と同等またはそれより良好であり得る。
【0009】
図面の簡単な説明
本開示ならびに関連する特徴および利点のより完全な理解のために、次に、添付の図面(それらは一定の縮尺ではない)と組み合わせて、以下の説明に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、(i)抗PD-1または抗PD-L1を表皮下スペース内にインフュージョンするためのSOFUSA(登録商標)(Sorrento Therapeutics,Inc.Corporation、Delaware)ナノトポグラフィーデバイスの例の概略図であり、これは、(ii)マイクロ流体ディストリビューター(緑色)とシリコンマイクロニードルアレイ(灰色)を有するマイクロ流体の流体ブロックを含む。例示的な実施形態として、各マイクロニードルは、長さが350μm、幅が110μmであり、中心を外れた位置に前記治療剤が流出する30μmの穴を有する。(iii)SOFUSA(登録商標)は、毛細リンパ管によって取り込みが行われる表皮下スペース内に治療剤をインフュージョンするのに対し、より深い皮下に注射すると、薬物は毛細リンパ管の下にたまり、取り込みが減少する。
図2図2は、SOFUSA(登録商標)ナノトポグラフィーデバイスの例の概略図であり、(i)穴の空いた付着性粘着剤(黄褐色)、マイクロ流体ディストリビューター(緑色)、穴の空いた付着性粘着剤(黄色)、およびシリコンマイクロニードルアレイ(灰色)を有するマイクロ流体の流体ブロックを示す。各マイクロニードルは、長さが350μm、幅が110μmであり、中心を外れた位置に、前記薬物が流出する30μmの穴を有する。また、(ii)前記シリコンマイクロニードルを覆うように熱で形成されたナノトポグラフィーフィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)イメージ(スケールバーは300μmを示す)、および(iii)個々のマイクロニードルのSEM、ならびに(iv)各マイクロニードルについてのナノ構造のSEMイメージ(スケールバー=3μm)も示されている。
図3図3は、(i)マウスの背側背面上へのSOFUSA(登録商標)の例示的配置を示す概略図、ならびに近赤外線蛍光(NIRF)による、上腕リンパ節(LN)へのインドシアニングリーン(ICG)のSOFUSA(登録商標)送達の(ii)背面および(iii)側面イメージである。
図4図4Aおよび図4Bは、図4Aの左側:ICGをインフュージョンする、適用したSOFUSA(登録商標)デバイス、および図4Aの右側:外側足関節および外側腓腹におけるICGのインフュージョン(右側)および皮内(i.d.)注射(左側)の間にICG含有リンパを進ませるリンパ管のNIRFイメージング(矢印は、i.d.注射およびSOFUSA(登録商標)インフュージョンの位置を示す)を示すイメージの例のセットを含む。図4Bは、健常被験者の腋窩および鼠径LNへの、ICGのSOFUSA(登録商標)送達の近赤外線蛍光イメージ例である。
図5図5Aは、インフュージョン部位からSOFUSA(登録商標)を排出するリンパ管におけるリンパ収縮ポンプ圧送と、反対側のi.d.注射部位から排出する管におけるリンパ収縮ポンプ圧送との比(平均±SE)を、腕、足首、および腓腹における投与部位について、インフュージョン流速の関数として示す例示的グラフである。図5Aに示す比は、各身体領域について、示されている各時点におけるSOFUSA(登録商標)インフュージョンデータを、皮内インフュージョンデータで割ることによって得た。図5Bは、1mL/h未満(左)および1mL/h(右)の流速でICGをインフュージョンしたSOFUSA(登録商標)デバイスを除去した後の組織部位の例示的写真であり、後者は、表皮におけるICGの「貯留」を示す。
図6図6は、局所的な進行転移性がんについての薬物ターゲットとしてのPD-1またはPD-L1の例示的部位の概略図である。腫瘍流入領域LNにおける挿入図(A)は、腫瘍抗原(Ag)を提示している抗原提示細胞(APC)に対するT細胞活性化がPD-L1によって阻害され得ること、および抗PD-L1または抗PD-1の投与によって阻害をブロックすることによって腫瘍Agに対するT細胞活性化がもたらされ得ることを示す。挿入図(B)は、腫瘍Agが提示されていないであろう所属LNまたは遠隔LNにおいて、自己Agを提示しているAPC細胞に対するT細胞活性化応答の阻害を抗PD-1または抗PD-L1でブロックすることによって、免疫関連有害事象(irAE)が生じ得ることを示す。挿入図(C)は、細胞表面にPD-L1を提示している腫瘍細胞、およびその腫瘍細胞に対するT細胞応答のPD-1:PD-L1阻害の抗PD-1または抗PD-L1によるブロックを示す。Sunkuk Kwon,Fred Christian Velasquez,John C.Rasmussen,Matthew R.Greives,Kelly D.Turner,John R.Morrow,Wen-Jen Hwu,Russell F.Ross,Songlin Zhang,and Eva M.Sevick-Muraca(2019),Nanotopography-based lymphatic delivery for improved anti-tumor responses to checkpoint blockade immunotherapy,Theranostics,9(26):8332-8343,doi:10.7150/thno.35280の図1から改変。
図7図7は、C57/BL6マウスにおける、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)および抗PD-L1 mAbの静脈内投与についての、PK曲線の例を示すグラフである。
図8図8は、C57/BL6マウスにおける、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)および89Zr放射性同位体で標識した抗PD-L1 mAbの静脈内投与についての、PK曲線の例を示すグラフである。
図9図9は、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)および静脈内送達についての、抗PD-L1 mAbのリンパ節濃度の例を示すグラフである。
図10A図10Aおよび図10Bは、健常C57/BL6マウスにおける、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)開始後1時間(図10A)および静脈内投与後1時間(図10B)における、89Zr-抗PD-L1 mAbの体内分布の例を示すグラフのペアである。
図10B図10Aおよび図10Bは、健常C57/BL6マウスにおける、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)開始後1時間(図10A)および静脈内投与後1時間(図10B)における、89Zr-抗PD-L1 mAbの体内分布の例を示すグラフのペアである。
図11A図11Aおよび図11Bは、健常C57/BL6マウスにおける、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)開始後24時間(図11A)および静脈内投与後24時間(図11B)における、89Zr-抗PD-L1 mAbの体内分布の例を示すグラフのペアである。
図11B図11Aおよび図11Bは、健常C57/BL6マウスにおける、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)開始後24時間(図11A)および静脈内投与後24時間(図11B)における、89Zr-抗PD-L1 mAbの体内分布の例を示すグラフのペアである。
図12A図12Aおよび図12Bは、健常C57/BL6マウスにおける、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)開始後72時間(図12A)および静脈内投与後72時間(図12B)における、89Zr-抗PD-L1 mAbの体内分布の例を示すグラフのペアである。
図12B図12Aおよび図12Bは、健常C57/BL6マウスにおける、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)開始後72時間(図12A)および静脈内投与後72時間(図12B)における、89Zr-抗PD-L1 mAbの体内分布の例を示すグラフのペアである。
図13図13は、カニクイザルにおける、リンパ管送達(SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標))に続く、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110(Sorrento Pharmaceuticals)の多相探索的毒性および毒物動態研究における、処置群および投与スケジュールの例の情報の表である。
図14図14は、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110(Sorrento Pharmaceuticals)の多相探索的毒性および毒物動態研究における、臨床病理学アッセイ情報の例の情報の表である。
図15図15Aは、サル4501における静脈内投与、およびサル6501におけるSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用したリンパ管送達後の、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110(Sorrento Pharmaceuticals)の血清中濃度の薬物動態学的(PK)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の例を示すグラフである。図15Bは、サル4501および4001における静脈内投与、ならびにサル6501および6001におけるSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用したリンパ管送達後の、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110(Sorrento Pharmaceuticals)の血清中濃度の薬物動態学的(PK)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の例を示す別のグラフである。図15Cは、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110(Sorrento Pharmaceuticals)を静脈内またはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用して40mg/kg投与した後のサルにおける血小板レベルの例示的な比較を報告するグラフである。
図16図16は、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用したCTCL患者へのペンブロリズマブの投与例の表である。
図17A図17Aは、0日目のSTI-2949の単回静脈内注射後、またはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用した0日目のSTI-2949の単回投与後のSprague Dawleyラットにおける抗PD1モノクローナル抗体STI-2949(Sorrento Pharmaceuticals;本明細書ではSTI-A1110とも呼ばれる)の例示的な平均血清濃度を報告するグラフである。
図17B図17Bは、0日目のSTI-2949の単回静脈内注射後、またはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用した0日目のSTI-2949の単回投与後の個々のSprague Dawleyラットにおける抗PD1モノクローナル抗体STI-2949(Sorrento Pharmaceuticals)の例示的な血清濃度を報告するグラフである。
図18A図18Aは、蛍光標識抗PD1モノクローナル抗体STI-2949(Sorrento Pharmaceuticals)の腹腔内(i.p.)投与またはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用した投与後にマウスから採取した血液中の例示的な血清放射輝度画像および平均放射輝度シグナルを報告するグラフである。
図18B図18Bは、蛍光標識された抗PD1モノクローナル抗体STI-2949(Sorrento Pharmaceuticals)をi.p.投与またはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用した投与後のマウスから採取された、流入領域リンパ節または非流入領域リンパ節における放射輝度の例示的な画像、および流入領域リンパ節または非流入領域リンパ節における例示的な平均放射輝度シグナルを報告するグラフである。
図19A図19Aは、MC38結腸癌腫マウスモデルにおける腫瘍増殖に対して、i.p.投与されたまたはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用して投与された、抗PD1(BB9クローン、Sorrento Pharmaceuticals)を調査する研究の例示的なタイムラインの概略図である。
図19B図19Bは、10mg/kg、5mg/kgまたは1mg/kgの用量で、i.p.投与されたまたはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用して投与された抗PD1モノクローナル抗体(BB9クローン、Sorrento Pharmaceuticals)後のMC38結腸癌腫マウスモデルにおける腫瘍増殖阻害率の例を報告するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本開示は、一般に、抗PD-1または抗PD-L1治療剤を使用したチェックポイント遮断免疫療法の改善のための、例えばナノトポグラフィーベースのマイクロニードルアレイを使用した、リンパ系への送達方法に関する。本開示は、また、有効量の抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管送達のために構成された、本明細書に記載されているデバイスおよびシステムにも関する。本明細書に記載されているように、これらの免疫チェックポイント遮断阻害剤のリンパ管投与を使用した本明細書に開示されている方法の利点としては、とりわけ、治療剤に対する全身的曝露を低減すること、および腫瘍抗原(Ag)が存在する腫瘍流入領域リンパ節(TDLN)への治療剤の送達を最大化すること、ならびに腫瘍への治療剤の送達を最大化することがあげられる。
【0012】
チェックポイント阻害剤療法は、がん免疫療法の一形態である。この療法は、免疫チェックポイント(刺激を受けたときに、免疫原性刺激に対する免疫応答を減衰させ得る、免疫系の主要制御因子である)を標的にする。いくつかのがんは、刺激性免疫チェックポイントターゲットによる攻撃から、自分自身を守ることができる。チェックポイント阻害剤療法は、阻害性チェックポイントをブロックし、免疫系機能を回復させることができる。
【0013】
用語「抗PD-1治療剤」および「抗PD-L1治療剤」は、本明細書で使用される場合、それぞれ、PD-1および/またはPD-L1の免疫チェックポイント機能を阻害することができる任意の分子を指す。本開示の抗PD-1および抗PD-L1治療剤としては、限定されないが、それぞれ、PD-1および/またはPD-L1に結合し、その免疫チェックポイント機能を阻害することができる分子、例えば、抗体があげられ、それらに限定されないが、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、抗原結合性フラグメント(Fab)、および二重特異性抗体が含まれる。本開示の抗PD-1および抗PD-L1治療剤としては、また、限定されないが、それぞれ、PD-1および/またはPD-L1に結合し、その免疫チェックポイント機能を阻害することができる他の種類の分子、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質があげられ、限定されないが、ヒトポリペプチドもしくはタンパク質、ヒト化ポリペプチドもしくはタンパク質、またはヒト化ポリペプチドもしくはタンパク質、および融合タンパク質もしくは融合ポリペプチド、または小分子阻害剤が含まれる。
【0014】
免疫療法は、典型的には、静脈内(i.v.)投与される。例えば、抗PD-1および抗CTLA-4免疫療法は、両方とも、典型的には、i.v.投与され、がん(メラノーマ、非小細胞肺がん、および腎細胞癌腫が含まれる)に罹患した患者において抗腫瘍応答を誘導することが示されている。抗CTLA-4単独療法は、抗PD-1単独療法と比較して、低い奏効率、およびグレード3~4の重度な毒性の高い発生率を伴うため、抗PD-1単独療法が、進行したメラノーマに罹患した患者において好まれる免疫療法治療になっている。さらに、免疫原性メラノーマについてでさえ、抗PD-1単独療法に応答性の患者は、わずか50%である。これらの患者について、抗CTLA-4療法と抗PD-1療法の組み合わせは、進行したステージIIIまたはIVのメラノーマにおいて、最大50~60%奏効率の補完的な活性を有することが示されているが、残念なことに、これらは相乗的に働き、全患者の最大60%で、免疫関連有害事象(irAE)および重度な毒性を増加させる。CheckMate-067試験からのアウトカムデータの分析を使用して、Ohらは、抗PD-1抗体と組み合わせた抗CTLA-4に起因するirAEに関連するコストの増加によって、応答性がんにおける無病生存期間の改善という利益にもかかわらず、費用対効果が低くなっていると論じている。細胞障害性T細胞が腫瘍Agに対して活性化されているTDLNにおいて、抗PD-1および/または抗PD-L1治療剤の曝露を最大化することによって、抗腫瘍応答を改善し得、ならびに用量依存的irAEを最小化し得る。
【0015】
本明細書に記載されている実施形態において、抗PD-1および/または抗PD-L1治療剤を含むチェックポイント阻害剤のリンパ管送達は、現在のところ従来のi.v.インフュージョンによる処置を受けているがん患者よりも、がん患者における抗腫瘍応答を改善およびirAEを軽減し得る。
【0016】
PD-1は、TDLNにおけるT細胞によって発現され、さらに、PD-L1は、腫瘍によって発現され、腫瘍微小環境においてT細胞エフェクター機能を寛容化および制限する。したがって、いくつかの実施形態において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管送達は、TDLN内の腫瘍Agに対する寛容性を誘導するメカニズムまたは腫瘍によるT細胞の阻害のためのメカニズムを選択的に除去し得る。いくつかの実施形態において、リンパは最終的には血液循環に注ぐため、リンパ管送達は、また、末梢LNおよび他の腫瘍部位(例えば二次腫瘍部位など)における寛容性獲得を除去し得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、薬物ターゲットに対する曝露が増大するため、リンパ管送達は、用量の低減を可能にし得、また抗PD-1および/または抗PD-L1治療剤の臨床的使用を制限する用量依存的irAEを低減し得る。
【0018】
リンパ節(LN)は、開放性で一方向性のリンパ脈管構造の一部である。リンパ節は、免疫系に関連する他の細胞に加えて、TおよびBリンパ球の両方を含む。毛細血管濾過液、巨大分子、および免疫細胞の進入点は、(i)表皮のすぐ下に位置し、(ii)全ての器官の周辺を取り囲み、(iii)腫瘍リンパ脈管新生プロセスによって腫瘍周辺に形成され得る、「毛細」リンパ管である(図6参照)。これらの「毛細リンパ管」は、基底膜を有さず、開閉して老廃物および免疫細胞のユニークな進入を可能にする緩い内皮細胞タイトジャンクションを有する、未熟な毛管である。毛細リンパ管から、リンパは、弁が境界となり、収縮してリンパを能動的に(しばしば重力に逆らって)進ませる平滑筋細胞によって裏打ちされた一連の管セグメントからなる成熟した伝導性のリンパ管を通って、局所LN群に流出する。輸入および輸出リンパ管を通した下流LNの連鎖による輸送後、リンパは、鎖骨下静脈を通して血液脈管構造の中に排出される。モノクローナル抗体は、i.v.投与後、ナイーブTおよびB細胞の進入のための排他的な入口であるLNの高内皮細静脈(HEV)を通って、局所リンパ管に接近し得る。さらに、血液脈管構造から流出した抗体は、また、局所LNへの送達のために毛細リンパ管によっても取り込まれ得る。しかしながら、リンパは血液脈管構造の中に流出するため、腫瘍流入領域LN内の腫瘍Ag提示に関連する薬物ターゲットに到達するためには、かなり大量のi.v.投与量が必要とされる(図6、挿入図A参照)。抗PD-1または抗PD-L1治療剤などの免疫チェックポイント阻害剤の全身的なi.v.投与は、また、腫瘍Agではなくて非腫瘍自己Agが提示されている非腫瘍流入領域LN中のナイーブT細胞の活性化も引き起こし得(図6、挿入図B参照)、またirAEももたらし得る。
【0019】
生物製剤のリンパ管内への直接的投与は難易度が高く、皮内(i.d.)またはマントー投与が、表皮下の毛細リンパ管内への最も利用しやすい進入点を提供する(図1参照)。残念なことに、表皮下の小さな容積に収容できるのは、ヒトおよびげっ歯類モデルにおいて、それぞれ、注入された流体の約100μLおよび約50μLであり、このことによって、前臨床および臨床研究の両方において、リンパ的に送達される生物製剤の治療用量が制限される。より深い、表皮下スペースの下の皮下(s.c.)または筋肉内(i.m.)投与は、毛細リンパ管による取り込みが十分ではなく、また、オフターゲットの薬物取り込みおよび細胞によるプロセシングによって、バイオアベイラビリティーが低い。
【0020】
活性治療剤の定常状態濃度が長期間であることは、多くの医学的状態に利益をもたらす。リンパ管送達機器は、治療剤を、長期間にわたって、実質的に一定の速度で投与することができる。いくつかのデバイスは、治療剤を患者のリンパ系の中に直接的に送達することができる。そのようなデバイスの1つは、SOFUSA(登録商標)(Sorrento Therapeutics,Inc.Corporation、Delaware)薬物送達プラットフォームである。SOFUSA(登録商標)は、ナノトポグラフィーベースのリンパ管送達システムである。一つの実施形態において、SOFUSA(登録商標)リンパ管インフュージョンデバイスは、1回使用のための、直径が110μm、長さが350μmであり、中心を外れた位置に30μmの穴を有する、100本のマイクロニードルの66mmのアレイを含む(図2参照)。各マイクロニードルを覆うように熱で形成された6ミクロンのポリエーテルケトンナノトポグラフィーフィルムが、ナノトポグラフィー特性をもたらす。これらの特性は、インテグリンの結合によって惹起されたタイトジャンクションタンパク質を、毛細リンパ管内への取り込みを増大させる可能性があるナノトポグラフィー構造に可逆的に再構築することが示されている。動物とヒトの両方において、このデバイスは、まずインフュージョンの組織部位上への接着によって固定され、次いでキャリブレートされたアプリケーターによって、毛細リンパ管が位置する表皮下スペース内にマイクロニードルアレイが押し込まれる。次いで、薬物は、キャリブレートされたシリンジポンプによって(マイクロニードルアレイを通って)マイクロ流体チャンバー内に送達され、かつ、これによらなければi.d.注射によって達成できない量で表皮下スペース内に送達される(図1参照)。
【0021】
SOFUSA(登録商標)は、表皮下スペース内に薬物をインフュージョンし、その結果、血管系とリンパ管系の両方の毛管にアクセスする。サイズ、組成、用量、表面電荷、および分子量を含む多くの因子が、毛細リンパ管および/または毛細血管内への取り込みに影響を及ぼす。例えば、大きな粒子、免疫細胞、および巨大分子は、主に毛細リンパ管によって取り込まれる一方で、小さな粒子および20kDa未満の分子は、毛細血管網によって吸収され得る。血管および毛細血管の管腔側のグリコカリックスは、毛管圧に抵抗する力のために重要であり、また、静脈脈管構造内への流体の再吸収を抑制する。よって、毛細血管は、インタクトであり、かつ表皮下スペースにおいて比較的に不透過性である一方で、「毛細リンパ管」は、基底膜を欠く未熟な毛管を指す。毛細リンパ管は、フィブリルによって開閉して巨大分子、老廃物、および免疫細胞のユニークな進入を可能にする「緩い」リンパ管内皮細胞タイトジャンクションを有している。12リットルもの毛細血管濾過液(小さな溶質および巨大分子を運ぶ)が、毛細リンパ管によって末梢組織から集められ、血液脈管構造に戻されると推定されている。リンパは血液脈管構造に流出するため、血清中の薬物動態プロファイリングによって、リンパ管を通した血液脈管構造への送達の有効性の基準がもたらされる。
【0022】
転移は、全てのがん死の90%超について、直接的または間接的な原因であると考えられており、リンパ系は、がん転移において重要な役割を果たすと考えられている。悪性細胞は、リンパ系に進入し得、リンパ節によって捕捉され、そこで二次腫瘍が生成され得る。リンパ系は、また、身体の他の部分への腫瘍の拡散(すわわち、転移)に関与することも多い。したがって、リンパ系による悪性細胞の拡散を阻害または低減する方法の必要性が存在する。
【0023】
本明細書に開示されている方法において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤を患者に送達するための2つの異なる例示的なモードが想定されている。1つのモードにおいて、治療剤のターゲットは明確に同定されており、複数のマイクロニードルを含むデバイスは、リンパ管によって治療剤が前記ターゲットに直接運ばれるように、抗PD-1または抗PD-L1治療剤が患者のリンパ系に投与されるように配置される。このターゲットは、例えば、固形腫瘍であってもよい。このケースにおいて、全身的曝露がある程度起こるであろうが、投与は、大幅により局地化される。
【0024】
第2のモードにおいて、治療ターゲットまたはターゲットの正確な位置は、不明であっても、または明確に同定されていなくてもよい。このようなケースにおいて、治療剤は、患者のリンパ系内に送達され、抗PD-1または抗PD-L1治療剤は、右リンパ本幹または胸管のいずれかまでリンパ系を横断することが意図されている。次いで、治療剤は、患者の循環系に入り、治療剤に対する全身的曝露をもたらす。例えば、固形腫瘍が転移してしまった場合、これらのがん細胞の二次的部位の位置は不明であろう。治療剤は、前記排出管のいずれかに到達する前に、ある特定のリンパ節を横断するであろうが、この投与は,全身的曝露をもたらすと考えられる。そうであるから、当業者は、治療剤の標的化された局所投与、またはより広範な全身投与を実現するために、本明細書に開示されている方法を適用することができる。医療従事者は、どちらの投与モードが抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤で処置しようとする個々の患者に適切であるかを決定することができ、それに応じてデバイス(単数または複数)を配置することができる。
【0025】
いくつかの態様において、治療ターゲットは、リンパ節、リンパ管、リンパ系の一部である器官、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様において、治療ターゲットは、リンパ節である。いくつかの態様において、治療ターゲットは、本明細書の別の箇所に記載されている、特定のリンパ節である。ある特定の実施形態において、前記ターゲットは、腫瘍である。
【0026】
いくつかの実施形態において、治療剤のリンパ系への送達は、リンパ脈管構造の管内、本明細書の別の箇所に記載されているリンパ節内、またはそれらの両方への送達である。いくつかの態様において、送達は、浅リンパ管へのものである。さらに別の態様において、送達は、1つまたはそれを超えるリンパ節へのものである。送達の特定のターゲットは、患者の医学的必要性に基づくであろう。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている1つまたはそれを超えるデバイスは、抗PD-1または抗PD-L1治療剤を患者に投与するために使用され得る。患者の身体の複数の位置に治療剤を送達するために1つを超えるデバイスが使用される患者において、各位置における治療剤投与量の合計は、治療的に有効な合計用量を患者が受けるように、慎重に調節しなければならない。患者の身体における、または身体の特定の位置を、より選択的に、より正確に標的化できるということは、それぞれの特定の位置において必要とされるのが、より低用量であることを意味し得る。いくつかの実施形態において、患者の身体の1つまたはそれを超える位置を標的化するために投与される用量は、他の経路(静脈内および皮下投与を含む)によって投与される用量よりも低い。
【0028】
いくつかの実施形態において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤は、1つまたはそれを超えるリンパ節に投与され得る。いくつかの実施形態において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤は、1つまたはそれを超えるリンパ管に投与され得る。いくつかの実施形態において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤は、腫瘍に近いリンパ管に投与され得る。いくつかの実施形態において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤は、腫瘍から遠いリンパ管に投与され得る。
【0029】
リンパ液は、循環系における血液と類似の様式で患者の身体全体を循環するため、リンパ脈管構造における任意の1つのポジションは、別のポジションに対して、上流または下流であり得る。リンパ脈管構造に関連して本明細書で使用される場合、用語「下流」は、リンパ系において、基準ポジション(例えば、腫瘍もしくは内臓、または関節)に対して、右リンパ本幹または胸管により近い(患者においてリンパ液がリンパ管を移動する場合の)ポジションを指す。本明細書で使用される場合、用語「上流」は、リンパ系において、基準ポジションに対して、右リンパ本幹または胸管からより遠いポジションを指す。リンパ系における流体の流れの向きは、患者の医学的状態が原因で弱められ、または反転し得るので、用語「上流」および「下流」は、医学的処置を受けている患者における流体の流れの向きを具体的に指すものではない。「上流」および「下流」は、記載したような排出管に対する物理的な位置に基づく、位置的な用語である。
【0030】
いくつかの実施形態において、治療剤(例えば抗PD-1または抗PD-L1治療剤)は、患者の間質(例えば、皮膚と1つまたはそれを超える内部構造(例えば、器官、筋肉、または管(動脈、静脈、またはリンパ管)の間のスペース、または組織(複数)または器官の部分(複数)の中または間の任意の他のスペース)に送達される。さらにまた別の実施形態において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤は、間質およびリンパ系の両方に送達される。抗PD-1または抗PD-L1治療剤が患者の間質に送達される実施形態において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤を投与する前に、患者のリンパ節またはリンパ脈管構造を位置づけることは必要とされないことがあり得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、患者におけるがんを処置する方法が記載されている。この方法は、複数のマイクロニードルを含むデバイスを、患者の皮膚の下の第1のポジションに近接する患者の皮膚上に置くことであって、前記第1のポジションは、患者のリンパ系におけるリンパ管および/または毛細リンパ管に近接し、前記マイクロニードルは、ナノトポグラフィーを含む表面を有すること、を含む。この方法は、また、前記複数のマイクロニードルをある深さまで前記患者に挿入し、それによって少なくとも表皮を貫通させ、前記マイクロニードルの少なくとも1つの末端を前記第1のポジションに近接させること;および有効量の抗PD-1治療剤または有効量の抗PD-L1治療剤を、前記複数のマイクロニードルによって、前記第1のポジションに投与し、それによってがんを処置することも含む。いくつかの実施形態において、本開示は、また、抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管送達のために構成された本明細書に記載されているデバイスおよび/またはシステムにも関し、ここで、前記デバイスおよび/またはシステムは、患者におけるがんを処置するために有効な量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、患者におけるがん転移を阻害または低減する方法が記載されている。この方法は、固形がん腫瘍と排出管の間のリンパ系に介在する、患者における少なくとも1つのリンパ節を位置づけること、複数のマイクロニードルを含むデバイスを、介在するリンパ節と前記固形がん腫瘍の間に位置する、患者の皮膚の下の第1のポジションに近接する患者の皮膚上に置くことであって、前記第1のポジションは、患者のリンパ系におけるリンパ管および/または毛細リンパ管に近接し、前記マイクロニードルは、ナノトポグラフィーを含む表面を有すること、前記複数のマイクロニードルをある深さまで前記患者に挿入し、それによって少なくとも表皮を貫通させ、前記マイクロニードルの少なくとも1つの末端を前記第1のポジションに近接させること;および治療有効量の、前記固形がん腫瘍の転移を阻害または低減するために有効な抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を、前記複数のマイクロニードルによって、前記第1のポジションに投与することを含む。いくつかの実施形態において、本開示は、また、抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管送達のために構成された本明細書に記載されているデバイスおよび/またはシステムにも関し、ここで、前記デバイスおよび/またはシステムは、患者におけるがん転移を阻害または低減するために有効な量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を含む。
【0033】
したがって、いくつかの実施形態において、患者におけるがん転移を阻害または低減する方法が記載されている。前記方法は、前記患者における固形がん腫瘍を位置づけること、前記固形がん腫瘍と排出管の間のリンパ系に介在する、患者における少なくとも1つのリンパ節を位置づけること、複数のマイクロニードルを含むデバイスを、前記患者の皮膚上の、介在するリンパ節に流入する毛細リンパ管および/またはリンパ管に近接する前記患者の皮膚上の第1の位置に置くことであって、前記マイクロニードルは、ナノトポグラフィーを含む表面を有すること、前記複数のマイクロニードルをある深さまで前記患者に挿入し、それによって少なくとも表皮を貫通させること、および治療有効量の、がん転移の阻害または低減において有効な抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を、前記複数のマイクロニードルによって、前記介在するリンパ節に流入する前記毛細リンパ管および/またはリンパ管に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本開示は、また、抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管送達のために構成された本明細書に記載されているデバイスおよび/またはシステムにも関し、ここで、前記デバイスおよび/またはシステムは、患者におけるがん転移を阻害または低減するために有効な量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記がんは、腫瘍を含む。いくつかの実施形態において、前記リンパ節は、腫瘍流入領域リンパ節である。腫瘍流入領域リンパ節は、固形がん腫瘍の下流であり、腫瘍の転移によって侵される最初のリンパ節である。転移によって侵される最初のリンパ節は、しばしばセンチネルリンパ節と呼ばれる。
【0035】
転移は、単に局所的な問題ではなく、むしろ患者にとって全身的な問題であり得るため、いくつかの実施形態において、デバイスは、単に同定されたリンパ節への標的化送達ではなく、むしろ前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の全身的送達をもたらすために患者に配置される。いくつかの実施形態において、デバイスは、投与後1つまたはそれを超えるリンパ節を横断し得るにもかかわらず、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が特定のリンパ節を標的化しないように配置され;デバイスは、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が、リンパ脈管構造を横断した後、患者の循環系に入り、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤に対する全身的曝露をもたらすであろうことを見込んで配置される。この種類の投与は、原発性がん性腫瘍の局所環境を通り過ぎて移動した転移がん細胞を処置することが意図されている。このような転移がん細胞は、その新たな部位において未だ症状を示していなくてもよいが、未処置で放置した場合は症状を示し得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、デバイスは、腫瘍と比べて、排出管から遠い位置に配置される。いくつかの実施形態において、患者における少なくとも1つのリンパ節は、前記腫瘍と排出管の間のリンパ系に介在し、前記第1のポジションは、介在するリンパ節と前記腫瘍の間に位置する。いくつかの実施形態において、デバイスは、最初にその前のいかなるリンパ節も通過することなく、前記介在するリンパ節に直接流入する毛細リンパ管またはリンパ管を有する患者の皮膚上に配置される。
【0037】
いくつかの実施形態において、患者における固形がん腫瘍を処置するための方法が本明細書において開示されている。前記方法は、一般に、患者における固形がん腫瘍を位置づけること;前記固形がん腫瘍の上流の患者のリンパ系におけるポジションを位置づけること;複数のマイクロニードルを含むデバイスを、前記固形がん腫瘍の上流の前記患者のリンパ系における前記ポジションの近傍に位置する患者の皮膚の下の第1のポジションに近接する前記患者の皮膚上に置くことであって、前記第1のポジションは、前記固形がん腫瘍の上流のリンパ管および/または毛細リンパ管に近接し、前記マイクロニードルは、ナノトポグラフィーを含む表面を有すること;前記複数のマイクロニードルをある深さまで前記患者に挿入し、それによって少なくとも表皮を貫通させること;および治療有効量の(例えば、前記固形がん腫瘍の転移を阻害または低減するために有効な)抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を、前記複数のマイクロニードルによって、前記第1のポジションに投与することを含む。いくつかの態様において、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が送達される前記患者のリンパ系における前記ポジションは、前記固形がん腫瘍の下流である。いくつかの実施形態において、本開示は、また、抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管送達のために構成された本明細書に記載されているデバイスおよび/またはシステムにも関し、ここで、前記デバイスおよび/またはシステムは、患者における固形がん腫瘍を処置するために有効な量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、投与は、固形がん腫瘍の上流のリンパ管に対して行われる。他の実施形態において、投与は、固形がん腫瘍の上流のリンパ節とリンパ管の両方に対して行われる。いくつかの態様において、患者に対して前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を投与する前に、前記腫瘍の上流のリンパ節を位置づける必要がないことがあり得る。いくつかの実施形態において、前記デバイスは、前記固形がん腫瘍と比べて、排出管から遠い位置に配置される。さらに別の態様において、前記デバイスは、前記固形がん腫瘍と比べて、排出管に近い。
【0039】
がんおよび他の医学的状態は患者のリンパ系に損害を与え得るため、リンパ系における流体の流れは、弱められ、または反転(バックフローと呼ばれる)さえし得る。これは、患者の周辺組織または器官における腫脹をもたらし得る。いくつかの態様において、前記デバイスは、リンパ系におけるバックフローが、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を標的位置に運搬するように配置される。例えば、正常に機能しているリンパ系において、固形がん腫瘍と比べて下流の位置は、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を腫瘍内に直接は運搬しないであろう。しかしながら、障害のあるリンパ系において、固形がん腫瘍と比べて下流の位置からのバックフローは、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を腫瘍に直接運搬するであろう。当業者の医療従事者は、そのような知識に基づいて、リンパ系が機能する様式を理解し、患者のための処置的判断を行うであろう。
【0040】
いくつかの態様において、前記デバイスは、最初に前記固形がん腫瘍またはいかなる他のリンパ節も通過することなく、前記リンパ管および/または毛管が特異的に標的リンパ節に直接流れ込むように、患者の皮膚上のある位置に配置される。この例において、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤は、投与後、患者のリンパ管に入り、標的リンパ節に直接流れ込むであろう。さらに別の態様において、投与部位と標的リンパ節の間にリンパ節が存在し得る。これが起こる場合の1つの非限定的な例は、標的リンパ節が患者の身体内の深くにあり、かつ患者の皮膚の近くに前記標的リンパ節に直接流れ込むリンパ管が存在しない場合である。
【0041】
ある特定の種類のがんは、しばしば特定のリンパ節に転移することが知られており、これに基づいてデバイスの配置を行い得る。例えば、口腔および咽頭がんは、頭頸部のリンパ節に加えて、頸静脈リンパ節鎖、頸部リンパ節、および鎖骨上リンパ節に転移し;多くの皮膚がん(例えば、メラノーマ)は、そのがんの位置に応じて、流入領域腋窩および/または鼠径リンパ節群に転移し;乳がんは、腋窩、内乳房、および鎖骨上リンパ節に転移し;前立腺がんは、腰、鼠径、および腹膜リンパ節に転移し;脳および中枢神経系がんは、頸静脈、頸部、および腰部リンパ節内に転移し;卵巣がんは、後腹膜(骨盤および/または傍大動脈)リンパ節に転移し;患者の生殖器のがんは、腰部部リンパ節、鼠径リンパ節、および腹膜リンパ節に転移する。
【0042】
治療剤の送達のために標的化される特定のリンパ節は、医学的な必要性および患者の状態に基づく任意の合理的な基準に基づいている。例えば、特定のリンパ節に転移がん細胞が存在するかどうかを判定するために、リンパ節バイオプシーが実施され得る。あるいは、リンパ節は、患者の身体においてその前に位置が特定されている腫瘍に対する位置に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態において、リンパ節は、固形がん腫瘍の下流であることを理由として選択される。下流のリンパ節を標的化するためのポジションにデバイスを置くことは、それらのリンパ節にある転移がん細胞に影響を及ぼし、身体の他の部分にその転移がん細胞が拡散する可能性を低下させるであろう。あるいは、デバイスは、固形がん腫瘍でしばしば起こる腫瘍性リンパ脈管新生を利用するために、腫瘍の上流に配置してもよい。この配置において、治療剤は、腫瘍内に直接流れ込み、それによって腫瘍をより効果的に標的化するであろう。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記がんは、頭頸部のがんであり、前記リンパ節は、頸静脈リンパ節、頸部リンパ節、鎖骨上リンパ節、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記がんは、口腔がんであり、前記リンパ節は、頸静脈リンパ節鎖、頸部リンパ節、鎖骨上リンパ節、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記がんは、咽頭のがんであり、前記リンパ節は、頸静脈リンパ節鎖、頸部リンパ節、鎖骨上リンパ節、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記がんは、メラノーマであり、前記リンパ節は、腋窩リンパ節、鼠径リンパ節、頸静脈リンパ節、頸部リンパ節、鎖骨上リンパ節、およびそれらの組み合わせなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記がんは乳がんであり、リンパ節は、腋窩リンパ節、内胸リンパ節、鎖骨上リンパ節、およびそれらの組み合わせなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記がんは、前立腺がんであり、前記リンパ節は、腰部部リンパ節、鼠径リンパ節、腹膜リンパ節、およびそれらの組み合わせなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記がんは、前記患者の生殖器系におけるものであり、前記リンパ節は、腰部部リンパ節、鼠径リンパ節、腹膜リンパ節、およびそれらの組み合わせなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記転移がん細胞または前記腫瘍を標的化するために必要とされる前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の量は、他の経路の投与によって与えられる量よりも少ない。それでもなお治療的に有効な低用量は、副作用を低減またはなくし、それがより良好な患者の転帰をもたらし得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、抗PD-1治療剤は、ニボルマブ(PD-1阻害剤;オプジーボ(登録商標)の商品名で販売されている、Bristol-Myers Squibb)、ペンブロリズマブ(PD-1阻害剤;キイトルーダ(登録商標)の商品名で販売されている、Merck Sharp&Dohme、ニュージャージー州)、セミプリマブ(リブタヨ(登録商標)の商品名で販売されている、Regeneron Pharmaceuticals、ニューヨーク州)、スパルタリズマブ(PDR001;Novartis)、カンレリズマブ(SHR1210;Jiangsu HengRui Medicine Co.,Ltd.)、シンチリマブ(IBI308;InnoventおよびEli Lilly)、チスレリズマブ(BGB-A317;BeiGeneおよびCelgene Corp.)、トリパリマブ(JS 001;Beijing Cancer Hospital)、AMP-224(GlaxoSmithKline)、AMP-514(GlaxoSmithKline)、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110(Sorrento Pharmaceuticals;本明細書ではSTI-2949とも呼ばれ、2014年5月31日に出願され、WO2014/194302 A2(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)として公開された国際出願PCT/US2014/040420においてRG1H10とも呼ばれる)、AUNP12(AurigeneおよびLaboratoires Pierre Fabreによって開発された29-merペプチドPD-1/PD-L1阻害剤)、またはそのバイオシミラー、もしくはその生物学的同等物であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、抗PD-1治療剤は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85、86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン、またはそのような重鎖可変ドメインに含まれる1またはそれを超える重鎖相補性決定領域(「CDR」)1、2、および3(「CDR-H1」、「CDR-H2」および「CDR-H3」)を含む。いくつかの実施形態において、抗PD-1治療剤は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85、86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン、またはそのような軽鎖可変ドメインに含まれる1またはそれを超える軽鎖相補性決定領域(「CDR」)1、2、および3(「CDR-L1」、「CDR-L2」、「CDR-L3」)を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗PD-1治療剤は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85、86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン、またはそのような重鎖可変ドメインに含まれる1またはそれを超える重鎖相補性決定領域(「CDR」)1、2、および3(「CDR-H1」、「CDR-H2」および「CDR-H3」)と、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85、86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン、またはそのような軽鎖可変ドメインに含まれる1またはそれを超える軽鎖相補性決定領域(「CDR」)1、2、および3の(「CDR-L1」、「CDR-L2」、「CDR-L3」)とを含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、抗PD-1治療剤は、配列番号1/配列番号2(本明細書ではGA1と呼ぶ)、配列番号3/配列番号4(本明細書ではGA2と呼ぶ)、配列番号5/配列番号6(本明細書ではGB1と呼ぶ)、配列番号7/配列番号8(本明細書ではGB6と呼ぶ)、配列番号9/配列番号10(本明細書ではGH1と呼ぶ)、配列番号11/配列番号12(本明細書ではA2と呼ぶ)、配列番号13/配列番号14(本明細書ではC7と呼ぶ)、配列番号15/配列番号16(本明細書ではH7と呼ぶ)、配列番号17/配列番号18(本明細書ではSH-A4と呼ぶ)、配列番号19/配列番号20(本明細書ではSH-A9と呼ぶ)、配列番号21/配列番号22(本明細書ではRG1B3と呼ぶ)、配列番号23/配列番号24(本明細書を通して、互換手的に、STI-2949、STI-A1110、またはRG1H10と呼ぶ、)、配列番号25/配列番号26(本明細書ではRG1H11と呼ぶ)、配列番号27/配列番号28(本明細書ではRG2H7と呼ぶ)、配列番号29/配列番号30(本明細書ではRG2H10と呼ぶ)、配列番号31/配列番号32(本明細書ではRG3E12と呼ぶ)、配列番号33/配列番号34(本明細書ではRG4A6と呼ぶ)、配列番号35/配列番号36(本明細書ではRG5D9と呼ぶ)、配列番号37/配列番号24(本明細書ではRG1H10-H2A-22-15と呼ぶ)、配列番号38/配列番号24(本明細書ではRG1H10-H2A-27-25と呼ぶ)、配列番号39/配列番号24(本明細書ではRG1H10-3Cと呼ぶ)、配列番号40/配列番号24(本明細書ではRG1H10-16Cと呼ぶ)、配列番号41/配列番号24(本明細書ではRG1H10-17Cと呼ぶ)、配列番号42/配列番号24(本明細書ではRG1H10-19Cと呼ぶ)、配列番号43/配列番号24(本明細書ではRG1H10-21Cと呼ぶ)、配列番号44/配列番号24(本明細書ではRG1H10-23C2と呼ぶ)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列(重鎖可変ドメイン配列/軽鎖可変ドメイン配列)を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1治療剤は、アテゾリズマブ(PD-L1阻害剤;テセントリク(登録商標)という商品名で市販されている、Genentech,Inc.、Delaware)、アベルマブ(バベンチオ(登録商標)という商品名で市販されている、Merck、Germany)、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標)という商品名で市販されている、AstraZeneca,Sweden)、KN035(Alphamab and 3D Medicines)、AUNP12(Aurigene and Laboratoires Pierre Fabreによって開発された29-merペプチドPD-1/PD-L1阻害剤)、CA-170(Aurigene/Curis;小分子PD-L1阻害剤)、BMS-986189(Bristol-Myers Squibb;大環状ペプチド)、もしくはそれらの組み合わせ、またはそれらの生物学的同等物であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1治療剤は、WO2013/181634(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85、86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン、またはそのような重鎖可変ドメインに含まれる1またはそれを超える重鎖相補性決定領域(「CDR」)1、2、および3(「CDR-H1」、「CDR-H2」および「CDR-H3」)を含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1治療剤は、WO2013/181634またはUS2017/0218066(それらの内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85、86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン、またはそのような軽鎖可変ドメインに含まれる1またはそれを超える軽鎖相補性決定領域(「CDR」)1、2、および3(「CDR-L1」、「CDR-L2」および「CDR-L3」)を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1治療剤は、WO2013/181634(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85、86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する重鎖可変ドメイン、またはそのような重鎖可変ドメインに含まれる1またはそれを超える重鎖相補性決定領域(「CDR」)1、2、および3(「CDR-H1」、「CDR-H2」および「CDR-H3」)と、WO2013/181634またはUS2017/0218066(それらの内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85、86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン、またはそのような軽鎖可変ドメインに含まれる1またはそれを超える軽鎖相補性決定領域(「CDR」)1、2、および3の(「CDR-L1」、「CDR-L2」、「CDR-L3」)とを含む。
【0052】
ある特定の実施形態において、抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤などの「治療剤」は、「抗原結合タンパク質」を含み得る。ある特定の実施形態において、「抗原結合タンパク質」を含み得る「治療剤」は、抗原結合部分が抗原への抗原結合タンパク質の結合を促進する立体配座をとることを可能にするタンパク質もしくは抗原結合部分もしくはそのフラグメントおよび/または必要に応じて足場もしくはフレームワーク部分を含む。抗原結合タンパク質の例としては、抗体、抗体フラグメント(例えば、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体および抗体アナログが挙げられる。抗原結合タンパク質は、例えば、代替的なタンパク質骨格または移植されたCDRもしくはCDR誘導体を有する人工骨格を含み得る。そのような足場としては、限定されないが、例えば抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するように導入された突然変異を含む抗体由来足場、ならびに例えば生体適合性ポリマーを含む完全合成足場が挙げられる。例えば、Korndorfer et al.,2003,Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics,Volume 53,Issue 1:121-129;Roque et al.,2004,Biotechnol.Prog.20:639-654を参照されたい。さらに、ペプチド抗体模倣物(「PAM」、ならびに足場としてフィブロネクチン成分を利用する抗体模倣物に基づく足場を使用することができる。
【0053】
抗原結合タンパク質は、例えば、天然に存在する免疫グロブリンの構造を有することができる。「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100~110個またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を画定する。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEと定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12個またはそれを超えるアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、約10個またはそれを超えるアミノ酸の「D」領域を含む。一般に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))(参照によりその全体があらゆる目的のために組み込まれる)を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、インタクトな免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。
【0054】
天然に存在する免疫グロブリン鎖の可変領域は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。N末端からC末端に向かって、軽鎖および重鎖の両方が、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,US Dept.of Health and Human Services,PHS,NIH,NIH Publication no.91-3242,1991におけるKabatらの定義に従う。免疫グロブリン鎖中のアミノ酸の他のナンバリングシステムとしては、IMGT.RTM.(international ImMunoGeneTics information system;Lefranc et al,Dev.Comp.Immunol.29:185-203;2005)およびAHo(Honegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.309(3):657-670;2001)が挙げられる。
【0055】
抗体は、様々な抗原特異性を有する免疫グロブリンを含有する血清または血漿などの供給源から得ることができる。そのような抗体を親和性精製に供する場合、それらを特定の抗原特異性について濃縮することができる。そのような濃縮された抗体の調製物は、通常、特定の抗原に対する特異的結合活性を有する約10%未満の抗体から作製される。これらの調製物を数回の親和性精製に供することにより、抗原に対する特異的結合活性を有する抗体の割合を増加させることができる。このようにして調製された抗体は、「単一特異性」と呼ばれることが多い。単一特異性抗体調製物は、特定の抗原に対する特異的結合活性を有する約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または99.9%の抗体で構成することができる。
【0056】
「抗体」は、特に明記しない限り、特異的結合についてインタクトな抗体と競合するインタクトな免疫グロブリンまたはその抗原結合部分を指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、またはインタクト抗体の酵素的もしくは化学的切断によって産生され得る。抗原結合部分としては、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体(dAb)、および相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびポリペプチドに結合する特異的抗原を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられる。
【0057】
Fabフラグメントは、V、V、CおよびCH1ドメインを有する一価フラグメントである;F(ab’)フラグメントは、ヒンジ領域にジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを有する二価のフラグメントである;Fdフラグメントは、VドメインおよびCH1ドメインを有する;Fvフラグメントは、抗体の単一アームのVドメインおよびVドメインを有する;ならびにdAbフラグメントは、Vドメイン、Vドメイン、またはVドメインもしくはVLドメインの抗原結合フラグメントを有する(米国特許第6,846,634号;第6,696,245号、米国特許出願公開第20/0202512号;第2004/0202995号;第2004/0038291号;第2004/0009507号;第2003/0039958号、およびWard et al.,Nature 341:544-546,1989)。
【0058】
一本鎖抗体(scFv)は、V領域とV領域とがリンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介して結合して連続タンパク質鎖を形成する抗体であり、リンカーは、タンパク質鎖がそれ自体の上に折り返され、一価抗原結合部位を形成するのに十分な長さである(例えば、Bird et al.,1988,Science 242:423-26 and Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-83参照)。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体であり、各ポリペプチド鎖は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーによって連結されたVおよびVドメインを含み、したがって各ドメインは別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対形成することができる(例えば、Holliger et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-48,and Poljak et al.,1994,Structure 2:1121-23参照)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合、それらの対合から生じるダイアボディは、2つの同一の抗原結合部位を有する。異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用して、2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製することができる。同様に、トリボディおよびテトラボディは、それぞれ3つおよび4つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ3つおよび4つの抗原結合部位を形成する抗体であり、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
所与の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)は、Kabat et al.(前出)、Lefranc et al.(前出)および/またはHonegger and Pluckthun(前出)によって記載されたシステムを使用して同定され得る。1またはそれを超えるCDRを共有結合的または非共有結合的に分子に組み込んで、それを抗原結合タンパク質にしてもよい。抗原結合タンパク質は、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDR(単数または複数)を組み込んでもよく、CDR(単数または複数)を別のポリペプチド鎖に共有結合的に連結してもよく、またはCDR(単数または複数)を非共有結合的に組み込んでもよい。CDRは、抗原結合タンパク質が目的の特定の抗原に特異的に結合することを可能にする。
【0060】
抗原結合タンパク質は、1またはそれを超える結合部位を有し得る。複数の結合部位が存在する場合、それらの結合部位は、互いに同一であってもよく、または異なっていてもよい。例えば、天然に存在するヒト免疫グロブリンは、典型的には、2つの同一の結合部位を有するが、「二重特異性」または「二官能」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0061】
用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1またはそれを超える可変領域および定常領域を有するすべての抗体を含む。一実施形態において、可変ドメインおよび定常ドメインのすべてがヒト免疫グロブリン配列(完全ヒト抗体)に由来する。これらの抗体は、様々な方法で調製され得、その例は、ヒト重鎖および/または軽鎖コード遺伝子に由来する抗体を発現するように遺伝子改変されたマウスの目的の抗原による免疫化を含む、以下に記載される。
【0062】
ヒト化抗体は、1またはそれを超えるアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって非ヒト種に由来する抗体の配列とは異なる配列を有し、その結果、ヒト化抗体は、ヒト対象に投与された場合、非ヒト種抗体と比較して、免疫応答を誘導する可能性が低く、および/またはあまり重症でない免疫応答を誘導する。一実施形態において、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメイン中の特定のアミノ酸を変異させて、ヒト化抗体を産生する。別の実施形態において、ヒト抗体由来の定常ドメイン(単数または複数)は、非ヒト種の可変ドメイン(単数または複数)に融合される。別の実施形態において、非ヒト抗体の1またはそれを超えるCDR配列中の1またはそれを超えるアミノ酸残基は、ヒト対象に投与された場合に非ヒト抗体の可能性のある免疫原性を低下させるように変更され、変化したアミノ酸残基は、抗体のその抗原への免疫特異的結合にとって重要ではないか、または行われるアミノ酸配列への変化は保存的変化であり、その結果、抗原へのヒト化抗体の結合は、抗原への非ヒト抗体の結合よりも有意に悪くはない。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号に見出され得る。
【0063】
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体由来の1またはそれを超える領域および1またはそれを超える他の抗体由来の1またはそれを超える領域を含む抗体を指す。一実施形態において、1またはそれを超えるCDRがヒト抗体に由来する。別の実施形態において、CDRのすべてがヒト抗体に由来する。別の実施形態において、1つより多いヒト抗PD-1抗体からのCDRは、キメラ抗体において混合され、適合される。例えば、キメラ抗体は、第1のヒト抗PD-1抗体の軽鎖由来のCDR1、第2のヒト抗PD-1抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3、ならびに第3の抗PD-1抗体由来の重鎖由来のCDRを含み得る。他の組み合わせも可能である。別の実施形態において、1つより多いヒト抗PD-L1抗体からのCDRは、キメラ抗体において混合され、適合される。例えば、キメラ抗体は、第1のヒト抗PD-L1抗体の軽鎖由来のCDR1、第2のヒト抗PD-L1抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3、ならびに第3の抗PD-L1抗体由来の重鎖由来のCDRを含み得る。他の組み合わせも可能である。
【0064】
さらに、フレームワーク領域は、それぞれ同じ抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体のうちの1つ、ヒト抗体などの1またはそれを超える異なる抗体、またはヒト化抗体に由来し得る。キメラ抗体の一例では、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体と同一、相同、またはそれに由来するが、鎖(単数または複数)の残りは、別の種に由来する、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体と同一、相同、またはそれに由来する。所望の生物学的活性(すなわち、PD-1またはPD-L1に特異的に結合する能力)を示すそのような抗体のフラグメントも含まれる。
【0065】
「中和抗体」または「阻害性抗体」は、過剰量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体が、実施例において本明細書に記載されるアッセイなどのアッセイを使用して、活性化の量を少なくとも約20%低下させる場合、PD-1またはPD-L1のタンパク質分解性活性化を阻害する抗体である。様々な実施形態において、抗原結合タンパク質は、PD-1またはPD-L1のタンパク質分解活性化の量を少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%および99.9%低下させる。
【0066】
抗体のフラグメントまたはアナログは、本明細書の教示に従って、当技術分野で公知の技術を使用して当業者によって容易に調製することができる。フラグメントまたはアナログの好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に存在する。構造ドメインおよび機能ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを公開または独自の配列データベースと比較することによって同定することができる。コンピュータ比較法を使用して、既知の構造および/または機能の他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予測タンパク質コンフォメーションドメインを同定することができる。既知の三次元構造に折り畳まれたタンパク質配列を同定する方法は公知である。Bowie et al.,1991,Science 253:164参照されたい。
【0067】
「CDRグラフト化抗体」は、特定の種またはアイソタイプの抗体および同じまたは異なる種またはアイソタイプの別の抗体のフレームワークに由来する1またはそれを超えるCDRを含む抗体である。
【0068】
「多重特異性抗体」は、1またはそれを超える抗原上の2またはそれを超えるエピトープを認識する抗体である。このタイプの抗体のサブクラスは、同じまたは異なる抗原上の2つの異なるエピトープを認識する「二重特異性抗体」である。
【0069】
抗原結合タンパク質「特異的に結合する」は、1ナノモルまたはそれ未満の解離定数で抗原に結合する場合、抗原(例えば、ヒトPD-1またはPD-L1)に結合する。
【0070】
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域、」または「抗原結合部位」は、抗原と相互作用し、抗原に対する抗原結合タンパク質の特異性および親和性に寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を含む抗原結合タンパク質の一部である。その抗原に特異的に結合する抗体の場合、これは、そのCDRドメインの少なくとも1つの少なくとも一部を含む。
【0071】
「エピトープ」は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体によって)によって結合される分子の部分である。エピトープは、分子の不連続部分(例えば、ポリペプチドにおいて、ポリペプチドの一次配列において連続していないが、ポリペプチドの三次および四次構造の状況では、抗原結合タンパク質によって結合されるのに十分に互いに近いアミノ酸残基)を含むことができる。
【0072】
2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の「パーセント同一性」は、そのデフォルトパラメーターを使用してGAPコンピュータプログラム(GCG Wisconsin Package、バージョン10.3の一部(Accelrys、カリフォルニア州サンディエゴ))を使用して配列を比較することによって決定される。
【0073】
2またはそれを超えるデバイスが使用される場合、2またはそれを超えるデバイスを使用して患者に投与される抗PD-1治療剤は、同じであっても異なっていてもよい。2またはそれを超えるデバイスが使用される場合、2またはそれを超えるデバイスを使用して患者に投与される抗PD-L1治療剤は、同じであっても異なっていてもよい。2またはそれを超えるデバイスが使用される場合、2またはそれを超えるデバイスを使用して患者に投与される抗PD-1治療剤および/または抗PD-L1治療剤は、それぞれ独立して、同じであっても異なっていてもよい。
【0074】
さらに別の態様では、複数のマイクロニードルを含む2またはそれを超えるデバイスを使用して、単一の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を投与する。この場合、各デバイスによって投与される各個々の用量は治療有効用量よりも小さくてもよいが、2またはそれを超えるデバイスによって投与される組み合わせ用量は治療有効である。
【0075】
本明細書で開示されている方法、デバイス、および/またはシステムは、固形がん腫瘍を処置するために、または、がん転移を処置、低減、またはなくすために使用され、前記がんは、抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤による処置に感受性の任意の種類であり得る。この種類のがんとしては、それらに限定されないが、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、腺様嚢胞癌腫、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門がん、毛細血管拡張性運動失調症、異型母斑症候群、ベックウィズ・ウィーデマン症候群、胆管がん、バート・ホッグ・デューベ症候群、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、カルチノイド腫瘍、カーニー複合疾患、頸部がん、結腸直腸がん、腺管癌腫、子宮内膜がん、食道がん、家族性腺腫性ポリポーシス、胃がん、消化管間質腫瘍(gastrontestinal stromal tumor)、膵島腫瘍、若年性ポリポーシス症候群、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、小葉癌腫、肺がん、小細胞肺がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンチ症候群、悪性グリオーマ、肥満細胞症、メラノーマ、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍1型、多発性内分泌腫瘍2型、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻咽頭がん、神経内分泌腫瘍、母斑性基底細胞癌腫症候群、口腔がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵神経内分泌腫瘍、副甲状腺がん、陰茎がん、腹膜がん、ポイツ・ジェガース症候群、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、真性赤血球増加症、前立腺がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、唾液腺がん、肉腫、胞巣状軟部および噴門肉腫、カポジ肉腫、皮膚がん、小腸がん、小腸がん、胃がん、精巣がん、胸腺腫、甲状腺がん、ターコット症候群、子宮(子宮内膜)がん、腟がん、フォンヒッペル・リンダウ症候群、ウィルムス腫瘍(小児)、色素性乾皮症、およびそれらの組み合わせがあげられる。いくつかの態様において、前記がんは、膀胱がん、乳がん、頸部がん、結腸直腸がん、食道がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、腎臓がん、肺がん、小細胞肺がん、メラノーマ、口腔がん、膵臓がん、膵神経内分泌腫瘍、陰茎がん、前立腺がん、腎細胞がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮(子宮内膜)がん、および腟がんなる群から選択される。
【0076】
いくつかの態様において、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の投与は、リンパ節、リンパ管、前記リンパ系の一部である器官、またはそれらの組み合わせに対して直接的なものである。いくつかの態様において、投与は、リンパ節に対するものである。いくつかの態様において、投与は、本明細書の別の箇所に記載されている特定のリンパ節に対するものである。さらに別の態様において、投与は、特定のリンパ節の上流にあり、そこに流入することが知られているリンパ管に対するものである。さらに別の態様において、投与は、固形がん腫瘍の上流にあり、そこに流入することが知られているリンパ管に対するものである。
【0077】
複数用量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が患者に投与される場合、個々の用量は、それぞれ、治療的に有効でなくてもよいが、その用量を組み合わせると治療的に有効である。前記の治療的に有効な組み合わせ用量は、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が異なる経路(例えば、皮下、静脈内など)によって投与される場合の治療有効用量よりも少ないことがあり得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のリンパ系への送達は、リンパ脈管構造内、本明細書の別の箇所に記載されているリンパ節内、またはそれら両方への送達である。いくつかの態様において、送達は、浅リンパ管へのものである。さらに別の態様において、送達は、1つまたはそれを超えるリンパ節へのものである。送達の特定のターゲットは、患者の医学的必要性に基づくであろう。1つの非限定的な例において、リンパ節バイオプシーまたは他の医学的評価(例えば、リンパ節腫脹)が、可能性がある転移がん細胞について陽性であることが判明した場合、次いで、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が前記リンパ節に直接送達されるように、複数のマイクロニードルを含むデバイスは、患者に配置され得る。別の非限定的な例において、センチネルリンパ節ががんの種類および医療従事者のアセスメントに基づいて選択された場所でセンチネルリンパ節バイオプシーが行われる。あるいは、前記デバイスは、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が、標的リンパ節に流れ込むリンパ管に送達されるように、前記リンパ節の上流に配置され得る。いくつかの実施形態において、2つまたはそれを超えるデバイスが、患者のリンパ系における2つまたはそれを超える異なる位置を標的化するために使用される。別の非限定的な例において、前記デバイスは、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が、腫瘍内に直接流れ込むように、固形がん腫瘍の上流に配置される。別の例において、前記デバイスは、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が、転移した細胞と同じリンパ管を横断するであろうように、固形がん腫瘍のすぐ下流に配置される。さらに別の態様において、1つのデバイスが固形がん腫瘍の上流に配置され、第2のデバイスが、前記固形がん腫瘍の下流に配置される。これによって、固形がん腫瘍と、患者において拡散し始めている任意の考えられる転移細胞の両方が、効果的に処置されるであろう。
【0079】
いくつかの実施形態において、患者は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、患者は、ヒトである。
【0080】
いくつかの実施形態において、患者におけるがんを処置するための本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステム、または患者におけるがん転移を阻害または低減するための本明細書に記載されている方法 デバイスおよび/またはシステム、または患者における固形がん腫瘍を処置するための方法、デバイス、および/またはシステムは、以下の細目(これらは、明らかに相互に排他的でない限り、互いに組み合わせ得る)を含み得る。
【0081】
本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与後、前記抗PD-1または抗PD-L1は、毛細リンパ管によって取り込まれ、1つまたはそれを超えるリンパ節に送達され得る。例えば、実施例1および2は、SOFUSA(登録商標)が、ICG(インドシアニングリーン、蛍光色素)の近赤外線イメージング(NIRF)リンパイメージングによって示されるように、薬物をLNに送達することができることを示す。リンパ管を通して抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を送達することによって、より効率的な抗腫瘍応答のために、リンパ管内に存在するターゲットに対する抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の曝露が最大化される。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記デバイスは、患者の身体の1つまたはそれを超える位置(例えば、身体の部位のなかでも、手首、足首、腓腹、または足など)に配置し得る。身体の特定の位置は、処置の必要性に応じて選択し得る。いくつかの実施形態において、デバイスの配置およびマイクロニードルの貫通は、選択された身体部位における注入のために最適化され得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与(例えば、実施例2参照)と比較して、患者が経験する疼痛の軽減に関連し得る。いくつかの実施形態において、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、疼痛を軽減し得る。
【0084】
いくつかの実施形態においてリンパポンプ圧送速度は、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用して抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を投与した後では、皮内投与(例えば、実施例2参照)と比較して、増大し得る。いくつかの実施形態において、リンパポンプ圧送速度は、毎分0.1~5.0パルスであり得る。いくつかの実施形態において、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、リンパポンプ圧送速度を増加させ得る。いくつかの実施形態において、リンパポンプ圧送速度は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、最大1.2倍、最大1.6倍、最大1.8倍、最大2倍、または最大2.2倍増大し得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、血清濃度上昇の速度は、静脈内注射後の血清濃度上昇の速度(例えば、実施例3および実施例5参照)と比較して、より緩やかであり得、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与後に減少し得る。したがって、いくつかの実施形態において、ある期間にわたって、血清濃度の勾配(例えば、ng/mL/時など)は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口によって投与される抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の同等量と比較して、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した投与の後に減少し得る。いくつかの実施形態において、期間は、例えば、最大5分、30分、1時間、2時間、5時間、12時間、24時間、48時間または72時間であり得る。いくつかの実施形態において、血清濃度は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、よりゆるやかに増加し得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与後、抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のバイオアベイラビリティーは、最大、または最大約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、または70%、例えば20%(例えば、実施例3参照)または35%(例えば、実施例5参照)、または69%(例えば、実施例7参照)などであり得る。
【0087】
「バイオアベイラビリティー」は、本明細書において、ある期間にわたる、用量で除算した、前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の静脈内投与後の血清中濃度-時間曲線下面積(AUC)(体循環中に100%の前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤を送達するものとみなす)と比較した、前記期間にわたる、用量で除算した、リンパ管送達後の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の(AUC)として測定される。いくつかの実施形態において、前記期間は、例えば、最大5分間、30分間、1時間、2時間、5時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間、または72時間超であり得る。例えば、前記期間は、672時間(例えば、図7参照)または72時間(例えば、図8)であり得る。
【0088】
理論に限定されないが、バイオアベイラビリティー(bioavilibility)は、インフュージョン時間と相関し得る。したがって、いくつかの実施形態において、より長いインフュージョンの持続は、腫瘍阻害を実現する必要がある場合、バイオアベイラビリティーを向上させるために使用され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与後、血清Tmaxは、静脈内投与と比較して増加し得る。例えば、いくつかの実施形態において、Tmaxは、静脈内投与後、約5分間から、10~100時間まで、または約10~100時間まで、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100時間まで、または例えば約10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100時間まで、例えば、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与後、例えば24時間もしくは例えば約24時間(例えば、実施例3参照)、または例えば48時間もしくは例えば約48時間(例えば、実施例3および5参照)増加し得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与の後では、血清Cmaxは、静脈内投与と比較して低下し得る。例えば、いくつかの実施形態において、Cmaxは、静脈内投与と比較して、リンパ管投与後に約2倍減少し得る(例えば、実施例3および5参照)。実施例3では、Cmaxは、リンパ送達後の31,000ng/mlと比較して静脈内について85,000ng/mlであった。いくつかの実施形態において、血清Cmaxは、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与された同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、最大、または最大約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍またはそれを超えて低下し得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与の後では、ある期間にわたって、例えば、時間0~時間t(0-t)として示される期間にわたっての血清曲線下面積AUC0-t(例えば、ng-hr/ml単位)が静脈内投与と比較して低下し得る。例えば、いくつかの実施形態において、血清AUC0-tは、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用して抗PD-1または抗PD-L1治療剤を投与した後では、静脈内投与と比較して、約4倍低下し得る(実施例3および実施例5参照)。実施例3では、AUC0-672時間は、リンパ送達の3,414,000ng-hr/mlと比較して、静脈内投与では14,680,000ng-hr/mlであった。実施例5では、AUC0-500時間は、リンパ送達の14,550ug/hr/mlと比較して、静脈内投与では41,300ug/hr/mlであった。いくつかの実施形態において、血清AUC0-tは、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与された同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、最大、または最大約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍またはそれを超えて低下し得る。
【0092】
PKは、当該技術分野において知られている技術(例えばELISAなど)を使用して、または放射標識抗体を使用して測定され得る(例えば、実施例3参照)。当該技術分野においてよく知られている、所望の時点における血清中濃度の測定および治療的モニタリングのための非常に正確かつ精密な方法論、例えば、ラジオイムノアッセイ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、エンザイムイムノアッセイ(EMIT)、または酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbant assays)(ELISA)などが使用され得る。上記の方法を使用した吸収速度の算出のために、いくつかの時点における薬物濃度を、投与後すぐに測定を開始して、その後Cmax値が確定するまで測定してもよく、そして、関連する吸収速度が算出される。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与と比較してLNへの送達増加をもたらし得る。例えば、本明細書に記載される方法、デバイスおよび/またはシステムを使用することにより、静脈内投与と比較して、腋窩、鼠径および上腕のリンパ節などのLNへの送達が約2倍多くなり得る。(例えば、実施例3参照)。いくつかの実施形態において、LNへの送達、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与された同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、最大、または最大約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍またはそれを超えて増大し得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、例えば、本明細書に記載されるリンパ管投与の方法、デバイスおよび/またはシステムは、IVと比較して、投与後初期の時点、例えば1時間の時点で、腋窩、鼠径および上腕のリンパ節などのLN中の抗PD-1または抗PD-L1のレベル上昇をもたらし得る。(例えば、実施例3および実施例5参照)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法、デバイスおよび/またはシステムは、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、投与後の初期の時点において、例えば、1時間、24時間もしくは72時間の時点において、または任意の介在する時点において、LNにおける抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体のレベルの最大、または最大約120%、140%、160%、180%、200%、またはそれを超える増大をもたらし得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、例えば、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与後、リンパ節レベルは、ある期間にわたって(例えば、最大12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、または72時間超の期間にわたって)、実質的または統計学的に一定であり得る一方で、静脈内レベルは、前記期間(例えば、最大12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、または72時間超)にわたって、増大し得る(例えば、実施例3および5を参照のこと)。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用したリンパ管投与後の全身性器官(例えば、肝臓および腎臓)における治療剤、例えば抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のレベルは、一定期間、例えば最大12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、またはそれを超える期間、静脈内投与と比較して低下し得る。(例えば、実施例3参照)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用したリンパ管投与後の全身性器官(例えば、肝臓および腎臓)における治療剤、例えば抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のレベルは、静脈内投与と比較して最大10%~75%低下し得る。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用したリンパ管投与後の1またはそれを超える複数の全身性器官(例えば、肝臓および腎臓)における治療剤、例えば抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のレベルは、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与された同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、全身性器官(例えば、肝臓および腎臓)における治療剤、例えば抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のレベルと比較して、最大10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%まで低下し得る。1またはそれを超える全身性器官における抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のレベルは、本開示を読むことで、当業者によって特定可能な当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定され得る。いくつかの実施形態において、全身性器官(例えば、肝臓および腎臓)における治療剤、例えば抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のレベルは、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、ある期間にわたって、例えば最大12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間またはそれを超えて低下得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した治療剤(例えば、抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤)のリンパ管投与後、投与後28日までに90%、95%、99%、または99.9%超が排除され得る。これに対して、例えば、静脈内投与後、28日でおよそ83%が排除されたが、レベルは高いままであり、14μg/mL超であった(例えば、実施例3参照)。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、他の投与経路と比較して、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、患者の処置の改善された効力を提供する。抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の投与を用いた処置の有効性の改善は、例えば、それらの開示は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sunkuk Kwon,Fred Christian Velasquez,John C.Rasmussen,Matthew R.Greives,Kelly D.Turner,John R.Morrow,Wen-Jen Hwu,Russell F.Ross,Songlin Zhang,and Eva M.Sevick-Muraca(2019),Nanotopography-based lymphatic delivery for improved anti-tumor responses to checkpoint blockade immunotherapy,Theranostics 9(26):8332-8343,9(26):8332-8343,2019,doi:10.7150/thno.35280に記載されているような、SOFUSA(登録商標)投与を用いたがんのマウスモデルにおける治療用抗CTLA-4抗体の前臨床試験における有効性の改善に基づいて予想される。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与(例えば、予言的な実施例4参照)と比較して改善された抗腫瘍応答の効力をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、抗腫瘍応答の改善された効力を提供する。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与の後では、腫瘍増殖速度は、静脈内投与と比較して低下し得る。(例えば、予言的な実施例4参照)。いくつかの実施形態において、腫瘍増殖速度は、IVと比較してより早い時点から低下し得る。いくつかの実施形態において、腫瘍増殖速度は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、必要に応じて投与後のより早い時点から、低下し得る
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、処置に対する完全奏効をもたらし得る。いくつかの実施形態において、処置に対する完全奏効の確率は、静脈内投与(例えば、予言的な実施例4参照)と比較して、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用して抗PD-1または抗PD-L1治療剤を投与した後に増大し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1のリンパ管投与後の完全奏効の頻度または確率は、少なくとも、または少なくとも約、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは99%であり得る。いくつかの実施形態において、用語「完全奏効」は、原発腫瘍および/または二次腫瘍などの腫瘍の完全な根絶を指し得るか、または検出不能な原発腫瘍または検出不能な二次腫瘍などの検出不能な腫瘍を指し得る。本明細書で使用される場合、用語「二次腫瘍」は、原発腫瘍の転移の結果として、原発腫瘍とは異なる位置にある腫瘍を指す。いくつかの実施形態において、処置に対する完全奏効の確率は、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用して抗PD-1または抗PD-L1治療剤を投与した後では、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して増大し得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される抗PD-1または抗PD-L1治療剤の治療有効用量と比較して、より低い治療有効用量の抗PD-1または抗PD-L1治療剤の使用を可能にし得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路(例えば、実施例8参照)によって投与された同等量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤後の腫瘍増殖阻害と比較して、最大10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%、または最大2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍または50倍増大する腫瘍増殖阻害をもたらし得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、最大1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍または5倍の量の抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤が静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路(例えば、実施例8参照)によって投与された後での腫瘍増殖阻害と同等またはそれより良好な腫瘍増殖阻害をもたらし得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与と比較して転移の減少をもたらし得る。(例えば、予言的な実施例4参照)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与された同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、最大20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%の転移の減少、例えば二次腫瘍の数、サイズ、または形成の確率の低下をもたらし得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与後と比較して、TDLN中のT細胞への抗PD-1または抗PD-L1のより大きな曝露をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、抗PD-1または抗PD-L1のTDLN中のT細胞へのより大きな暴露、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、最大で1.5倍、2倍、2.5倍またはそれを超える増大をもたらし得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与後と比較して、リンパ系における腫瘍細胞への抗PD-1または抗PD-L1のより大きな曝露をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、抗PD-1または抗PD-L1のリンパ系における腫瘍細胞へのより大きな暴露、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1または抗PD-L1抗体と比較して、最大で1.5倍、2倍、2.5倍またはそれを超える増大をもたらし得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与(例えば、予言的な実施例4参照)と比較して、より多数の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、より多数のTIL、例えば、最大1.5倍、2倍、2.5倍またはそれを超える増大をもたらし得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与(例えば、実施例5参照)と比較して毒性の低下をもたらし得る。いくつかの実施形態において、毒性は、血小板減少などの血液学的毒性を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、毒性(例えば、血液学的毒性の1またはそれを超えるパラメーター)の低下をもたらし得る。例えば、いくつかの実施形態において、抗PD-1または抗PD-L1治療剤の静脈内投与は、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与後の血小板レベルと比較して、血小板レベルにおける最大90%の低下をもたらし得る(実施例5参照)。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与は、静脈内投与(例えば、実施例5参照)と比較して、抗PD-1または抗PD-L1のより一貫した、変動の少ない血清レベルをもたらし得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の変動の少ない血清レベルをもたらし得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与によって、全身的曝露が低減され得、ならびに腫瘍に対する、および腫瘍抗原が存在する腫瘍流入領域LNに対する送達が最大化され得る(例えば、予言的な実施例6参照)。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤のリンパ管投与は、静脈内投与(例えば、予言的な実施例6参照)と比較して、または静脈内、皮下、筋肉内、皮内もしくは非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体と比較して、1またはそれを超える有害事象(AE)の発生率または重症度の低下をもたらし得る。
【0113】
用語有害事象またはAEは、本明細書で使用される場合、投与後患者において出現または悪化し得る、あらゆる有害な、意図されない、または好ましくない医療上の出来事を指す。AEは、新たな介入性の疾病、悪化する付随性の疾病、損傷、または参加者の健康上のあらゆる付随性の障害(臨床検査値を含む)であり得、因果関係を問わない。あらゆる悪化(例えば、既存の状態の頻度または強度における、あらゆる臨床的に重要な有害な変化)は、AEとみなされ得る。
【0114】
一般に、免疫療法は、グループとして、それらに一般的なオフターゲット効果および毒性を有する。それらの一部としては、なかでも、間質性肺炎、大腸炎、皮膚反応、血小板および白血球細胞の低下、脳または脊髄の炎症、筋炎、ギランバレー症候群、重症筋無力症を含む神経筋有害事象;心筋炎および心不全、急性副腎機能不全、ならびに腎炎があげられる。
【0115】
例えば、いくつかの実施形態において、AEは、疲労、筋骨格痛、食欲減退、そう痒、下痢、嘔気、発疹、発熱、咳、呼吸困難、便秘、疼痛、および腹痛(例えば、キイトルーダ(登録商標)(ペンブロリズマブ)の添付文書参照)。Merck&Co.,Inc.、Whitehouse Station、NJ;2019)。
【0116】
いくつかの実施形態において、AEは、免疫関連有害事象またはirAEであり得る。用語免疫関連有害事象またはirAEは、本明細書で使用される場合、もともと自己免疫性または自己炎症性であるチェックポイント阻害剤に関連する毒性を指す。前記毒性は、重症度、グレード、および忍容性が異なり得る。免疫関連有害事象は、身体のいかなる部分にも起こり得、免疫関連有害事象としては、なかでも、例えば、間質性肺炎、大腸炎、甲状腺機能低下症、肝機能障害、皮疹、白斑、下垂体炎、1型糖尿病、腎機能障害、重症筋無力症、ニューロパシー、筋炎があげられ得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、irAEは、サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストーム(CS)を含み得る。用語サイトカインストームは、本明細書で使用される場合、いくつかのモノクローナル抗体医薬の合併症として生じ得る全身的炎症反応症候群の形態を指す。CRSまたはCSの症状としては、発熱、疲労、食欲不振、筋肉および関節痛、嘔気、嘔吐、下痢、発疹、呼吸促迫、頻拍、低血圧、発作、頭痛、錯乱、せん妄、幻覚、振戦、および協調運動障害があげられ得る。さらに、インフュージョン関連反応としては、過敏症およびアナフィラキシー、ならびに硬直、悪寒、喘鳴、そう痒、潮紅、発疹、低血圧、低酸素血症、および発熱を含む他のインフュージョン関連反応があげられ得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、薬力学的効果の改善、例えば、T細胞疲弊マーカーレベルの改善(例えば、腫瘍組織における悪性CD4+および腫瘍浸潤CD8T細胞中のPD-1、Lag-3、Tim-3、およびICOS);腫瘍組織におけるペンブロリズマブの検出;および腫瘍組織におけるKi67発現がもたらされ得る(例えば、予言的な実施例6参照)。
【0119】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与された同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、血液におけるKi67発現;血液における抗PD-1または抗PD-L1の受容体占有率の改善をもたらし得る(例えば、予言的な実施例6参照)。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法、デバイス、および/またはシステムを使用した抗PD-1または抗PD-L1治療剤の投与は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内または非経口送達経路によって投与される同等量の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と比較して、処置の改善された効力をもたらし得る。例えば、予言的な実施例6に記載されるように、CTCLを処置する有効性を評価するために、(1)皮膚における応答のための修正重症度重み付け評価ツール(mSWAT)、(2)皮膚における応答のための指標病変重症度の複合評価、(3)血液における応答のためのセザリー細胞数のフローサイトメトリー、(4)30%超の皮膚病変を有するステージIB疾患、ステージIIB~IVB疾患、セザリー症候群(SS)、または形質転換真菌症(MF)を有する参加者に対するPET/CTスキャンなどの当技術分野で公知の方法を使用して有効性を評価してもよい。スキャンは、ステージIBの参加者または皮膚の改善が<30%の参加者については必要ではなく、なかでも(5)応答の評価のためのGlobal Response Score。
【0121】
本明細書に記載されているデバイス(例えば、SOFUSA(登録商標)プラットフォーム)を使用した薬物動態学および体内分布研究によって、他の投与経路と比較して、効果の改善が示される(以下を含む)。SOFUSA(登録商標)は、最初の30時間の間、より高いLN/血中濃度(例えば、1時間のwear/投与時間を有する)を有する。体内分布結果は、より高いリンパ中濃度が持続し、他の器官系において全身的曝露がより低いことを示す。リンパ系およびリンパ節へのSOFUSA(登録商標)送達は、SOFUSA(登録商標)インフュージョンが開始されると直ちに始まる直接的送達である。これらの結果は、IV投薬の50%で得られ得る。SOFUSA(登録商標)の体内分布プロファイルは、静脈内投与に対する、差別化された安全性および有効性プロファイルと整合性がある(例えば、より低い全身濃度およびより高いリンパ中濃度、および処置が到達する腫瘍流入領域リンパ節の位置に起因する、より低い全身濃度での、より高い免疫系濃度および標的曝露、用量の低減、有害事象(AE)の低減(例えば、免疫関連AE)。
【0122】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤のリンパ系への送達は、1つまたはそれを超える追加の投与経路(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、または非経口送達の1つまたはそれを超える経路)による前記抗PD-1治療剤または抗PD-L1治療剤の投与と組み合わされ得る。
【0123】
前臨床および臨床研究によって、SOFUSA(登録商標)ナノトポグラフィードレープマイクロニードルが、ドレープされていないマイクロニードルと比較して、小分子と大分子の両方について、著しく高い吸収速度をもたらすことが示された。前臨床データは、SOFUSA(登録商標)デバイスによる、皮下注射と比較して向上した吸収が、皮下注射と比較して、より高いバイオアベイラビリティーをもたらすことを示唆する。IV、皮下、または皮内注射と比較した体内分布結果は、より高いリンパ中濃度が持続し、他の器官系において全身的曝露がより低いことを示す。放射標識データは、リンパ節への直接的送達が、開始されると直ちに始まり、前記デバイスが取り除かれた後最大36時間持続したことを示す。SOFUSA(登録商標)投与の改善された効果は、有効性および安全性(ボーラスがないことを含む)、全身的濃度がより低いこと、ならびに用量がより低いことを含む。SOFUSA(登録商標)体内分布プロファイルは、より高いリンパ系濃度およびより低い全身的濃度に起因する、他の投与経路(例えば、静脈内および皮下投与)と比較して、差別化された安全性および有効性プロファイルの可能性を示す。
【0124】
本明細書における使用に適したマイクロニードルのアレイを含むデバイスは、当該技術分野において知られている。1つまたはそれを超える薬剤を患者に制御可能に送達する手段を含む特定の例示的な構造およびデバイスは、国際特許出願公開WO2014/188343号、WO2014/132239号、WO2014/132240号、WO2013/061208号、WO2012/046149号、WO2011/135531号、WO2011/135530号、WO2011/135533号、WO2014/132240号、WO2015/16821号、ならびに国際特許出願PCT/US2015/028154号(WO2015/168214A1として公開された)、PCT/US2015/028150号(WO2015/168210A1として公開された)、PCT/US2015/028158号(WO2015/168215A1として公開された)、PCT/US2015/028162号(WO2015/168217A1として公開された)、PCT/US2015/028164号(WO2015/168219A1として公開された)、PCT/US2015/038231号(WO2016/003856A1として公開された)、PCT/US2015/038232号(WO2016/003857A1として公開された)、PCT/US2016/043623号(WO2017/019526A1として公開された)、PCT/US2016/043656号(WO2017/019535A1として公開された)、PCT/US2017/027879号(WO2017/189258A1として公開された)、PCT/US2017/027891号(WO2017/189259A1として公開された)、PCT/US2017/064604号(WO2018/111607A1として公開された)、PCT/US2017/064609号(WO2018/111609A1として公開された)、PCT/US2017/064614号(WO2018/111611A1として公開された)、PCT/US2017/064642号(WO2018/111616A1として公開された)、PCT/US2017/064657号(WO2018/111620A1として公開された)、およびPCT/US2017/064668号(WO2018/111621A1として公開された)(これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されている。
【0125】
本明細書に記載されている実施形態のいくつかの態様において、1つまたはそれを超える治療剤は、1つまたはそれを超えるデバイスを、患者の皮膚の1つまたはそれを超える部位に適用することによって投与される。本明細書に開示されている方法の全てと共に使用するために適した複数のマイクロニードルを含むデバイスの1つの非限定的な例は、SOFUSA(登録商標)薬物送達プラットフォーム(Sorrento Therapeutics,Inc.)である。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記デバイスは、患者の皮膚に直接接触させて配置される。いくつかの実施形態において、介在層または構造は、患者の皮膚と前記デバイスの間であろう。例えば、サージカルテープまたはガーゼは、前記デバイスと患者の皮膚と間の起こり得る皮膚刺激を低下させるために使用し得る。マイクロニードルが前記機器から伸びる場合、患者に治療剤に送達するために、患者の表皮または真皮に接触し、かつ、いくつかの例において、貫通するであろう。この治療剤の送達は、循環系、リンパ系、間質、皮下、筋肉内、皮内、またはそれらの組み合わせに対するものであり得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、患者のリンパ系に直接送達される。いくつかの態様において、治療剤は、リンパ系の浅リンパ管に送達される。
【0127】
用語「近接」は、本明細書で使用される場合、所望の治療ターゲット上および/または近くへの配置を包含することが意図されている。前記デバイスの治療ターゲットに近接した配置によって、投与した治療剤がリンパ系に入り、所望の治療ターゲットまで横断する。さらに、前記デバイスは、投与される治療剤が、治療ターゲットに直接投与されるように配置され得る。
【0128】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、複数のマイクロニードルを含むデバイスを含む方法は、患者の皮膚の角質層を貫通し、皮膚における送達深さおよびボリュームを実現し、本明細書に記載されている投与速度で1つまたはそれを超える薬剤を制御可能に送達することが可能な2つまたはそれを超える送達構造を含むデバイスによって、1つまたはそれを超える薬剤を送達することを含み得る。前記送達構造は、前記デバイスの裏打ち基材に付着し、かつ角質層を貫通して1つまたはそれを超える薬剤を送達するための1つまたは複数の角度で配列されていてもよい。本明細書に記載されているいくつかの態様において、前記送達構造を含む裏打ち基材は、患者の皮膚に接触していてもよく、また、円柱状、矩形、または幾何学的に不規則な形状を有していてもよい。前記裏打ち基材は、いくつかの態様において約1mm~約10,000mmの2次元表面領域をさらに含む。いくつかの態様において、前記送達構造は、任意の幾何学的形状(例えば、円柱状、矩形、または幾何学的に不規則な形状)を含み得る。さらに、前記送達構造は、ある縦断面表面積を含み得る。いくつかの態様において、前記送達構造は、断面径または幅よりも大きい全長を有し得る。いくつかの他の態様において、前記送達構造は、全長よりも大きい断面径または幅を有し得る。いくつかの態様において、前記送達構造のそれぞれの断面幅は、約5μm~約140μmであり得、断面積は、約25μm~約65,000μm(特定された範囲内の各整数を含む)。いくつかの実施形態において、前記送達構造のそれぞれの長さは、約10μm~約5,000μm、約50~約3,000μm、約100~約1,500μm、約150~約1,000μm、約200~約800μm、約250~約750μm、または約300~約600μmであり得る。いくつかの態様において、前記送達構造のそれぞれ長さは、約10μm~約1,000μmであり得る(特定された範囲内の各整数を含む)。本明細書に記載されている前記表面積および断面表面積は、当該技術分野で知られている標準的な幾何学的計算を使用して決定され得る。
【0129】
本明細書に記載されている送達構造は、互いに同一である必要はない。複数の送達構造を有するデバイスは、それぞれ、異なる長さ、外径、ないけい、断面形状、ナノトポグラフィー表面、およびまたは前記各送達構造の間の間隔を有し得る。例えば、前記送達構造は、均一な様式で(例えば、矩形もしくは正方形グリッドで、または同心円で、など)間隔があけられていてもよい。前記間隔は、多数の因子(送達構造の高さおよび幅を含む)、ならびに送達構造によって送達することが意図されている薬剤の量および種類に依存し得る。いくつかの態様において、各送達構造の間の間隔は、約1μm~約1500μm(特定された範囲内の各整数を含む)であり得る。いくつかの態様において、各送達構造の間の間隔は、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1000μm、約1100μm、約1200μm、約1300μm、約1400μm、または約1500μmであり得る。この文脈で使用されている約は、「約」は、±50μmを意味する。
【0130】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、前記デバイスは、パッチの形状のニードルアレイを含み得る。いくつかの態様において、前記ニードルのアレイは、角質層の最も浅い層を貫通し、対象の生きていない表皮の少なくとも一部または全体、生きている表皮の少なくとも一部または全体、および/または生きている真皮の少なくとも一部に最初に、次いで、患者のリンパ系に、本明細書に記載されている1つまたはそれを超える薬剤を送達することができる。これらのニードルは、ニードルの表面に、不規則または組織化されたパターンのナノトポグラフィーをさらに含み得る。いくつかの態様において、前記ナノトポグラフィーパターンは、フラクタル形状を示し得る。
【0131】
いくつかの実施形態において、前記送達構造は、1つまたはそれを超える薬剤(例えば、本明細書に記載されている抗PD-1または抗PD-L1治療剤)を含む液体キャリアービヒクルと流体連通しているニードルのアレイを含み得る。いくつかの態様において、前記ニードルは、マイクロニードルである。いくつかの態様において、前記ニードルのアレイは、皮膚貫通および皮膚への流体送達を制御するための(例えば、貫通して皮膚に送達する)構造的手段を有する2~50,000のニードルを含み得る(例えば、国際特許出願PCT/US2017/064668号(WO2018/111621A1として公開された)(これは、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。いくつかの他の態様において、前記ニードルのアレイは、各ニードルに、製造された不規則または構造化されたナノトポグラフィーをさらに含み得る。前記ニードルまたはニードルアレイは、システム(例えば、前記デバイスが、流体送達速度制御装置、皮膚に付着させるための粘着剤、流体ポンプなどのコンポーネントを含む治療剤送達機器の追加的なコンポーネントに取り付けられているシステム)に含まれ得る。所望により、前記薬剤の送達速度は、圧力発生手段によって可変的に制御され得る。表皮への本明細書に記載されている所望の送達速度は、圧力の適用または他の駆動手段(ポンプ、シリンジ、ペン、エラストマー膜、気体の圧力、ピエゾ電気、起電、電磁もしくは浸透圧ポンプ圧送、もしくは速度制御膜の使用、またはそれらの組み合わせを含む)によって本明細書に記載されている1つまたはそれを超える薬剤を駆動することによって開始され得る。
【0132】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、本明細書に記載されている複数のマイクロニードルを含むデバイスは、浸透性促進装置として機能し、表皮を通した1つまたはそれを超える薬剤の送達を増加させ得る。この送達は、経細胞輸送メカニズム(例えば、能動または受動メカニズム)を調節すること、または傍細胞透過によって起こり得る。いかなる理論にも束縛されないが、前記ナノ構造またはナノトポグラフィー表面は、生きている表皮の1つまたはそれを超える層(上皮基底膜を含む)の浸透性を、細胞/細胞タイトジャンクションを調節することによって増加させ得、それが傍細胞輸送経路を可能にするか、または細胞能動輸送経路(例えば、経細胞輸送)を調節し、それが前記生きている表皮を通した、およびその下の前記生きている真皮の中への、投与された薬剤の拡散、移動、および/または能動輸送を可能にする。この効果は、細胞/細胞タイトジャンクションタンパク質の遺伝子発現の調節が原因であり得る。先に述べたように、タイトジャンクションは、生きている皮膚の中、特に前記生きている表皮で見られる。タイトジャンクション(例えば、皮膚を通した送達を先にブロックされたもの)の開口は、任意の薬剤の送達を改善するための傍細胞経路をもたらし得る。
【0133】
個々の細胞と、ナノトポグラフィー構造の間の相互作用は、上皮組織(例えば、表皮)の透過性を増大させ、バリアー細胞を通した薬剤の通過を促進し、および経細胞輸送を助長し得る。例えば、生きている表皮のケラチノサイトとの相互作用は、ケラチノサイトの中への薬剤の分配(例えば、経細胞輸送)を助長し得、その後、細胞を通り、再び脂質二重層を横切って拡散する。さらに、前記ナノトポグラフィー構造と、角質層の角質細胞の相互作用は、バリアー脂質または角質デスモソームの中の変化を誘発し得、その結果、前記薬剤が、角質層を通って、その下の生きている表皮層の中に拡散する。薬剤は、傍細胞経路および経細胞経路によってバリアーを通過し得るが、優勢な輸送路は、薬剤の性質に応じて変わり得る。
【0134】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、前記デバイスは、上皮組織の1つまたはそれを超えるコンポーネントと相互作用して、その組織の多孔性を増加させ、それによって組織は傍細胞および/または経細胞輸送メカニズムに感受性になり得る。上皮組織は、身体の主要な組織タイプの1つである。より多孔性にされ得る上皮組織は、単層上皮と重層上皮(角化上皮と移行上皮の両方を含む)の両方を含み得る。さらに、本明細書に包含される上皮組織は、限定されないが、ケラチノサイト、内皮細胞、リンパ管内皮細胞、扁平細胞、円柱細胞、立方細胞、および偽重層上皮を含む、上皮層の任意の細胞タイプを含み得る。それらに限定されないが、任意の上皮透過性アッセイを含む、多孔度を測定するための任意の方法が使用され得る。例えば、上皮(例えば、皮膚)多孔性、またはin vivoバリアー機能を測定するために、全量透過性アッセイが使用され得る(例えば、Indra and Leid.,Methods Mol Biol.(763)73-81(これは、参照によりその教示について本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0135】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、バリアー細胞上のナノトポグラフィー表面の存在によって誘発される構造変化は、一時的かつ可逆的である。驚くべきことに、ナノ構造のナノトポグラフィー表面を使用することによって、接合部の安定性およびダイナミクスの変化による上皮組織の多孔性の一時的かつ完全に可逆的な増大が引き起こされ、それが、いかなる理論にも束縛されないが、表皮を通した、生きている真皮の中への、投与された薬剤の傍細胞および経細胞輸送の一時的な増大を引き起こし得ることが見いだされた。よって、いくつかの態様において、ナノトポグラフィーによって誘発された表皮または上皮組織の透過性の増大(例えば、1つまたはそれを超える薬剤の傍細胞もしくは経細胞拡散または移動の促進)は、ナノトポグラフィーを除去した後、上皮組織とナノトポグラフィーの接触前に存在した通常の生理学的状態に戻る。このようにして、バリアー細胞(単数または複数)(例えば、表皮細胞(単数または複数))の通常のバリアー機能が回復し、対象の組織内の通常の生理学的拡散または移動を超えた分子のさらなる拡散または移動は起こらない。
【0136】
これらのナノトポグラフィーによって誘発される可逆的な構造変化は、二次的な皮膚感染、有害な毒素の吸収を制限、および真皮の刺激を制限し得る。さらに、表皮の最上層から基底層までの表皮透過性の進行的な逆戻りによって、表皮を通した、真皮の中への1つまたはそれを超える薬剤の下向きの移動を促進し、表皮の中に戻る前記1つまたはそれを超える薬剤の逆流または逆拡散を阻害し得る。
【0137】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、本明細書に記載されている疾患または障害の処置のための、複数のマイクロニードルを有するデバイスを対象の皮膚の表面に適用するための方法である。いくつかの態様において、前記デバイスは、対象の皮膚のある範囲に適用され、ここで、身体上の前記皮膚の位置は、毛細リンパ管および/または毛細血管が密集している。多数のデバイスが、毛細リンパ管の密なネットワークを有する皮膚の1つまたはそれを超える位置に適用され得る。いくつかの態様において、1、2、3、4、5、またはそれを超えるデバイスが適用され得る。これらのデバイスは、空間的に離して、極めて近接して、または互いに並置して適用され得る。例示的なリンパ管が密集した位置は、限定するものではないが、手の指掌面、陰嚢、足底面、および下腹部を含む。前記デバイスの位置は、患者の医学的状態、および医療従事者のアセスメントに基づいて選択されるであろう。
【0138】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、治療剤の少なくとも一部または全部は、生きていない表皮および/または生きている表皮を含む皮膚における最初の深さに直接送達または投与され得る。いくつかの態様において、治療剤の一部は、また、表皮に加えて、生きている真皮にも直接送達され得る。送達深さの範囲は、処置される医学的状態および所与の患者の皮膚の生理機能に依存するであろう。この送達の初期深さは、皮膚の中の位置として規定され得、ここで、治療剤は、まず、本明細書に記載されているように接触する。いかなる理論にも束縛されないが、投与された薬剤は、送達の最初の部位(例えば、生きていない表皮、生きている表皮、生きている真皮、または間質)から、生きている皮膚の中のより深いポジションに移動(例えば、拡散)し得る。例えば、投与された薬剤の一部または全部は、生きていない表皮に送達され、次いで、生きている表皮の中に、および生きている表皮の基底層を通り過ぎて移動(例えば、拡散)を続け、生きている真皮の中に入り得る。あるいは、投与された薬剤の一部または全部は、生きている表皮(例えば、角質層のすぐ下)に送達され、次いで、生きている表皮の基底膜を通り過ぎて移動(例えば、拡散)を続け、生きている真皮の中に入り得る。最後に、投与された薬剤の一部または全部は、生きている真皮に送達され得る。皮膚全体にわたる1つまたはそれを超える活性薬剤の移動は、多因子性であり、また、例えば、液体キャリアー組成(例えば、その粘度)、投与速度、送達構造などに依存する。表皮を通した、真皮の中へのこの移動は、輸送現象としてさらに規定され、物質移動速度(単数または複数)および/または流体力学(例えば、物質流速(単数または複数))によって定量され得る。
【0139】
よって、本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、前記治療剤は、表皮におけるある深さに送達され得、そこで前記治療剤は、生きている表皮の基底層を通り過ぎて、生きている真皮の中に移動し得る。本明細書に記載されているいくつかの態様において、前記治療剤は、次いで、1つまたはそれを超える感受性の毛細リンパ管網によって吸収され、次いで、1つまたはそれを超えるリンパ節および/またはリンパ管に送達される。
【0140】
いくつかの実施形態において、前記デバイスは、流体送達機器を含み、ここで、前記流体送達機器は、流体分配アセンブリー、ここで、キャップアセンブリーが、カートリッジアセンブリーに接続され、前記カートリッジアセンブリーは、プレナムアセンブリーに摺動可能に接続され、機械的コントローラーアセンブリーが、前記カートリッジアセンブリーに摺動可能に接続されている;前記流体送達機器のハウジングを構成し、前記流体分配アセンブリーに摺動可能に接続されているコレットアセンブリー;およびナノトポグラフィーを含む表面を有する流体分配アセンブリーと流体的に接続されている複数のマイクロニードルを含み、前記複数のマイクロニードルは、患者の皮膚の角質層を貫通し、前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を皮膚表面の下のある深さに制御可能に送達することが可能である。
【0141】
いくつかの実施形態において、前記デバイスは、前記抗PD-1治療剤または前記抗PD-L1治療剤を、皮膚表面の下の、約50μm~約4000μm、約250μm~約2000μm、または約350μm~約1000μmの深さに送達する。いくつかの実施形態において、前記デバイスにおけるマイクロニードルは、それぞれ、約200~約800μm、約250~約750μm、または約300~約600μmの長さを有する。
【0142】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、前記皮膚(ここで、前記1つまたはそれを超える薬剤の一部がまず送達され、その結果、1つまたはそれを超える感受性の腫瘍または炎症部位によって、または前記腫瘍または炎症部位に流れ込むリンパ管によって、前記1つまたはそれを超える治療剤が取り込まれる)における深さの分布は、約5μm~約4,500μmの範囲である。皮膚の厚さは、多数の因子(それらに限定されないが、医学的状態、食事、性別、年齢、ボディーマスインデックス、および身体部位を含む)に応じて患者ごとに変わり得るため、治療剤を送達するために要求される深さは異なるであろう。いくつかの態様において、前記送達深さは、約50μm~約4000μm、約100~約3500μm、約150μm~約3000μm、約200μm~約3000μm、約250μm~約2000μm、約300μm~約1500μm、または約350μm~約1000μmである。いくつかの態様において、前記送達深さは、約50μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、または約1000μmである。この文脈で使用される場合、「約」は、±50μmを意味する。
【0143】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、前記治療剤は、液体キャリアー溶液中で送達され得る。1つの態様において、液体キャリアーの浸透圧は、毛細血管または毛細リンパ管の中の流体に対して高張性であり得る。別の態様において、液体キャリアー溶液の浸透圧は、毛細血管または毛細リンパ管の中の流体に対して低張性であり得る。別の態様において、液体キャリアー溶液の浸透圧は、毛細血管または毛細リンパ管の中の流体に対して等張性であり得る。液体キャリアー溶液は、少なくとも1つまたはそれを超える医薬的に許容され得る賦形剤、希釈剤、共溶媒、微粒子、またはコロイドをさらに含み得る。液体キャリアー溶液において使用するための医薬的に許容され得る賦形剤は知られており、例えば、Pharmaceutics:Basic Principles and Application to Pharmacy Practice(Alekha Dash et al.eds.,1st ed.2013)(これは、参照によりその教示について本明細書に援用される)を参照のこと。
【0144】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、前記治療剤は、実質的に溶解した溶液、懸濁液、コロイド懸濁液として、液体キャリアー中に存在する。少なくとも米国薬局方(USP)規格に合致する任意の適切な液体キャリアー溶液を利用することができ、そのような溶液の浸透圧は、知られているようにして調節することができ、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Lloyd V.Allen Jr.ed.,22nd ed.2012を参照のこと。例示的であり非限定的な液体キャリアー溶液は、投与される生物活性薬剤(単数または複数)に応じて、水性、半水性、または非水性であり得る。例えば、水性液体キャリアーは、水と、水混和性ビヒクル、エチルアルコール、液体(低分子量)ポリエチレングリコールなどのいずれか1つまたは組み合わせを含み得る。非水性キャリアーは、不揮発性油、例えばコーン油、綿実油、ピーナッツ油、またはゴマ油などを含み得る。適切な液体キャリアー溶液は、保存剤、抗酸化剤、錯体生成促進剤、緩衝剤、酸性化剤、生理食塩水、電解質、粘度増強剤、粘度低下剤、アルカリ化剤、抗微生物剤、抗真菌剤、溶解性増強剤、またはそれらの組み合わせのいずれか1つをさらに含み得る。
【0145】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、前記治療剤は、生きている皮膚に送達され、ここで、前記薬剤を送達するための、前記生きている皮膚における深さの分布は、表皮の角質層を過ぎてすぐであるが、皮下組織より上であり、これによって、患者のリンパ脈管構造によって薬剤が取り込まれる。いくつかの態様において、1つまたはそれを超える薬剤を送達するための生きている皮膚における深さは、角質層を超えて約1μm~約4,500μmの範囲であるが、なおも皮下組織よりも上の生きている皮膚の中である。
【0146】
皮膚における最初の送達深さを評価するための試験は、限定するものではないが、侵襲的(例えば、バイオプシー)であるか、または非侵襲的(例えば、イメージング)であり得る。皮膚の中への薬剤の送達深さを評価するために、リミッタンス(remittance)分光法、蛍光分光法、光熱分光法、または光干渉断層法(OCT(optical coherence tomography))を含む通常の非侵襲的な光学的方法論が使用され得る。
【0147】
イメージングを使用する方法は、最初の送達深さを評価するために、リアルタイムで実施され得る。あるいは、侵襲的な皮膚バイオプシーを薬剤投与の直後に行い、次いで、薬剤の送達深さを決定するために標準的な組織学的な染色方法論を行ってもよい。投与された薬剤の皮膚貫通深さを決定するために有用な光学的イメージング方法の例については、Sennhennら、Skin Pharmacol.6(2)152-160(1993)、Gotterら、Skin Pharmacol.Physiol.21 156-165(2008)、またはMogensenら、Semin.Cutan.Med.Surg 28 196-202(2009)(これらは、それぞれ、参照によりそれらの教示について本明細書に援用される)を参照のこと。
【0148】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、本明細書に記載されている治療剤の長期にわたる送達(または投与)のための方法である。複数のマイクロニードルを含むデバイスは、前記デバイスから患者への治療剤の流速が調節できるように構成される。そうであるから、必要とされる時間は、それに応じて変わるであろう。いくつかの態様において、前記デバイスの流速は、前記治療剤が、約0.5時間~約72時間にわたって投与されるように調節される。いくつかの態様において、投与のための時間は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、15時間 18時間、21時間、24時間、27時間、30時間、33時間、36時間、39時間、42時間、45時間、48時間、51時間、54時間、57時間、60時間、63時間、66時間、69時間、または72時間である。他の態様において、投与のための時間は、患者の医学的状態、および患者を処置する医療従事者によるアセスメントに基づいて選択される。
【0149】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、液体キャリアー溶液中の1つまたはそれを超える薬剤は、皮膚の外表面の下にある空間の最初のおおよその容積に投与される。皮膚に最初に(例えば、その後のあらゆる移動または拡散の前に)送達される液体キャリアー溶液中の1つまたはそれを超える治療剤は、皮膚のおよその三次元体積の中に分配されるか、または皮膚のおよその三次元体積に包含され得る。1つまたはそれを超える最初に送達される薬剤は、送達深さのガウス分布を示し、また、皮膚組織の三次元体積の中でもガウス分布を有するであろう。
【0150】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、本明細書に記載されている、1本のマイクロニードルあたりの皮膚に対する前記治療剤の流速は、約0.01μl/時間~約500μl/時間であり得る。いくつかの態様において、個々のマイクロニードルについての流速は、約0.1μl/時間~約450μl/時間、約0.5μl/時間~約400μl/時間、約1.0μl/時間~約350μl/時間、約5.0μl/時間~約300μl/時間、約5.0μl/時間~約250μl/時間、約10μl/時間~約200μl/時間、約15μl/時間~約100μl/時間、または約20μl/時間~約50μl/時間である。いくつかの態様において、個々のマイクロニードルについての流速は、約1μl/時間、2μl/時間、5μl/時間、10μl/時間、15μl/時間、20μl/時間、25μl/時間、30μl/時間、40μl/時間、50μl/時間、75μl/時間、または100μl/時間である。個々のマイクロニードルは、全デバイス流速に寄与する流速を有するであろう。最大の全流速は、個別のマイクロニードルに、マイクロニードルの総数を乗じた流速であろう。組み合わされた全マイクロニードルの制御された流速全体は、約0.2μl/時間~約50,000μl/時間であり得る。前記デバイスは、流速が適切に制御されるように構成されている。前記流速は、患者の医学的状態、および患者を処置する医療従事者によるアセスメントに基づくであろう。
【0151】
リンパ送達デバイス、それを提供する方法、およびリンパ管投与のためにそれを使用する方法を含む、本開示の他の場所で参照される他の特許出願および特許に加えて、デバイスに関連する以下の非限定的かつ非網羅的なリストの特許出願および特許の明細書、特許請求の範囲および図面の開示は、その全体が参照により組み込まれる:米国特許第9,962,536号および同第9,550,053号、米国特許出願第15/305,193号、同第15/305,206号、同第15/305,201号、同第15/744,346号、同第14/354,223号、ならびに国際出願PCT/US2017/027879号、PCT/US2017/027891号、PCT/US2016/043656号、PCT/US2017/064604、PCT/US2017/064609、PCT/US2017/064642、PCT/US2017/064614、PCT/US2017/064657、PCT/US2017/064668、2018年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/678,601号、2018年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/678,592,号、および2018年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/678,584号、ならびに国際出願第PCT/US2019/034736号。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【実施例
【0152】
実施例
以下の実施例は、単に例示を目的として提供されている。それらの実施例は、本開示の発明の広さ全体を開示することを意図するものではなく、またそのように解釈すべきではない。さらに、実施例には具体的な詳細が含まれるが、実施例の教示は、本明細書の他の実施例または他の部分からの開示の他の詳細に適用することができ、また、組み合わせが明らかに相互排他的でない限り、前記開示の他の詳細と組み合わせることができる。
【0153】
実施例1.前臨床研究における、マウスのLNに対するICG色素のSOFUSA(登録商標)リンパ管インフュージョンデバイス投与
SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)は、アレイ上の各マイクロニードルを覆うように熱で形成されたナノトポグラフィーインプリントポリエーテル、エーテル、ケトンフィルムを有するマイクロニードル薬物送達デバイスである(図1図2)。ナノトポグラフィーフィルム-マイクロニードルの組み合わせは、インテグリンのナノトポグラフィーへの結合によって引き起こされるタイトジャンクションタンパク質の再構成によって、皮膚表皮層を通した透過性を増大させることが見いだされている。
【0154】
SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投与の24時間前、マウスをイソフルラン(isofluorane)で麻酔し、足背部を剃毛し、脱毛クリーム(Nair Sensitive)で8分間覆う。次いで、そのクリームを、暖かく湿ったペーパータオルで、その後アルコールワイプで拭き取った。次いで、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を皮膚粘着剤が付いたプラスチックシェルを使用して、足背部に適用した。次いで、ハンドヘルドアプリケーターをプラスチックシェルの上に配置し、皮膚にマイクロニードルを挿入した。前記デバイスの操作は、以下の通りであった。前記アプリケーターは、前記マイクロニードルを打ち、その後6m/sの速度で動かされる。66mmの範囲にわたり、合計で100本のマイクロニードルが存在する。マイクロニードルが皮膚に挿入された状態で、シリンジポンプによってインドシアニングリーン(ICG)の送達が開始された。
【0155】
50μLの0.5mg/mLICGをイソフルラン麻酔下健常マウスの右背外側上に、1時間にわたってインフュージョンした。非侵襲的近赤外線蛍光(NIRF)イメージングを使用し、Sevick-Muraca EM,Kwon S,Rasmussen JC.Emerging lymphatic imaging technologies for mouse and man.J Clin Invest.2014;124:905-14に記載されているようにして、リンパイメージングを実施した。
【0156】
NIRFイメージングによって、SOFUSA(登録商標)が、ICGの100μL/hを表皮スペース内に効果的にインフュージョンすることができ、そこで、その薬剤を毛細リンパ管が取り込み、それによって上腕LNへのICG含有リンパの推進を視覚化することが可能になることが示された(図3)。
【0157】
実施例2.臨床試験におけるICG色素のSOFUSA(登録商標)リンパ管インフュージョンデバイス投与:ICGの近赤外線蛍光イメージングは、流入領域LNへのリンパ的に方向付けられた送達を示す
がん患者におけるチェックポイント遮断免疫療法剤のインフュージョンのためにSOFUSA(登録商標)技術を考慮することが可能になる前に、リンパ管送達のための実現可能性を、ヒト対象において確認することが必要である。12人のボランティアにおけるパイロット試験において、本実施例は、SOFUSA(登録商標)が、ICGのNIRFリンパイメージングによって示されるように、薬物をLNに送達することが可能であることを示す。
【0158】
12人の健常者のパイロット試験において、キャリブレートされたインフュージョンポンプ(モデル4100、Atlanta BioMedical Corporation)、および足の背側面、足首の外側面、腓腹の内側面、および/または手首に配置されたナノトポグラフィーデバイスを使用して、0.25mg/mLインドシアニングリーン(ICG)溶液を、60分間にわたり、リンパ的にインフュージョンした。ICGの取り込みは、皮内注射後の反対側の部位における鼠径および腋窩LNに対する送達を可視化し、ICG含有リンパのリンパ推進および輸送を定量するために、sCMOSに接続された第三世代GaAs増幅素子を利用した注文生産の近赤外線蛍光イメージングシステムを使用してモニターした(Zhu B,Rasmussen JC,Litorja M,Sevick-Muraca EM.Determining the Performance of Fluorescence Molecular Imaging Devices Using Traceable Working Standards With SI Units of Radiance.IEEE Trans Med Imaging.2016;35:802-11)。デバイスの配置およびマイクロニードルの組織貫通の最適化は、最初の8人の対象において実施した。最後の4人の対象において、インフュージョン速度は、0.2~1mL/hで変化させ、その後、取得したイメージから、選択した解剖学的標識を横断するICG含有リンパ「パケット」の数を数えることによって、リンパ推進を分析した。インフュージョンの結果生じるリンパポンプ圧送速度は、ICGが皮内投与された場所である反対側の位置からのリンパポンプ圧送速度と比較した。反対側の皮内(i.d.)注射は、通常のインスリン用シリンジおよび31ゲージの針を使用して行い、0.1mLの0.25mg/mLのICG溶液を送達し、しばしば、針による穿刺に敏感な被験者については、コールドスプレーによる知覚鈍麻後に行った。SOFUSA(登録商標)インフュージョンデバイスの適用のためにコールドスプレーは使用されず、疼痛は、適用した各インフュージョンデバイスについて、視覚的アナログスケール(VAS(visual analog scale))質問票によって評価した。最大5つの異なるデバイスを、同時的インフュージョンのために、被験者に配置した。
【0159】
最初の8人の対象において、デバイスの配置およびマイクロニードルの貫通は、手首の背側面、足首の外側面、および腓腹の内側面におけるインフュージョンのために最適化されたが、足背については、思わしい結果を得ることができなかった。低BMIの対象において、足および手首への配置においては、しばしば、ICG漏出および取り込み不良によって可視化されるように、マイクロニードルの真皮中への貫通が不完全であるということが起こる。図4Aは、腓腹の内側面におけるSOFUSA(登録商標)インフュージョンおよび反対側のi.d.注射の後にイメージングされたリンパ管、およびICG含有リンパを領域腋窩および鼠径LN(図4B)に送り出す機能的リンパ管の予期される対称性を示す。対象を直立に座らせた場合、リンパポンプ圧送速度は、予期された通りに0.4~3.3拍/分の範囲であり、以前の研究と一致していた(Tan IC,Maus EA,Rasmussen JC,Marshall MV,Adams KE,Fife CE,et al.Assessment of lymphatic contractile function after manual lymphatic drainage using near-infrared fluorescence imaging.Arch Phys Med Rehabil.2011;92:756-64 e1)。
【0160】
SOFUSA(登録商標)インフュージョンの結果生じるICG含有リンパのリンパポンプ圧送速度は、SOFUSA(登録商標)によってICGが>0.2mL/hの速度でインフュージョンされた場合の方が、反対側の部位にi.d.注射によって送達された場合よりも、一貫して速かった。さらに、図5Aに示すように、SOFUSA(登録商標)インフュージョンの結果生じるリンパポンプ圧送速度と、i.d.投与の結果生じる速度の比もまた、SOFUSA(登録商標)インフュージョン速度と共に増加する傾向があったが、サンプルサイズが小さかったため、さらなる解析または統計的有意性を判定することはできなかった。マイクロニードルアレイ上のナノトポグラフィー特性が、充填の増強および能動輸送の増大に重要であるかどうかについてのさらなる実験は、未実施である。興味深いことに、動物における以前のデータによって、ラットおよびウサギの血清における薬物の出現を測定することによって、ナノ構造コーティングされていないマイクロニードルアレイデバイスと比較して、ナノ構造マイクロニードルアレイデバイスは、著しく多くのエタネルセプトを送達することが示された(Walsh L、Ryu J、Bock S、Koval M、Mauro T、Ross Rら、Nanotopography facilitates in vivo lymphatic delivery of high molecular weight therapeutics through an integrin-dependent mechanism.Nano lett.2015;15:2434-41)。1mL/hrのSOFUSA(登録商標)インフュージョン速度において、前記デバイスを除去した後にインフュージョン部位におけるICG「貯留」を可視化し、それによって、表皮下スペース中の毛細リンパ管におけるリンパ取り込みは、インフュージョン速度よりも遅いことが示された。図5Bは、マイクロニードルアレイによって残された、除去直後のICGの一過性の分界を示す。24時間後、これらの分界は消失する。
【0161】
SOFUSA(登録商標)の適用、インフュージョン、およびSOFUSA(登録商標)デバイスの除去に起因する疼痛の主観的評価を、デバイスの適用ごとに、範囲が0~100(値0は、不快な感覚がないことに対応し、値100は、極度の疼痛に対応する)の視覚的アナログスケール(VAS(visual analog scale))質問票を使用して行った。SOFUSA(登録商標)の適用、インフュージョン、除去についての平均VAS疼痛スコア±SDは、それぞれ8±9、5±8、および1±4であり、これは、前記デバイスが、疼痛なし~中程度の疼痛を引き起こしたことを示す(Jensen MP,Chen C,Brugger AM.Interpretation of visual analog scale ratings and change scores:a reanalysis of two clinical trials of postoperative pain.J Pain.2003;4:407-14)。この試験の期間中、および試験のフォローアップ(試験後24時間に行われた)において、ICGまたはSOFUSA(登録商標)デバイスに関連する有害事象は起こらなかった。
【0162】
実施例3.健常マウスにおける抗PD-L1 mAbの薬物動態および体内分布
本実施例は、健常マウスにおける抗PD-L1 mAbのSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)リンパ管内送達の、静脈内送達と比較した、薬物動態および体内分布を記述する。
【0163】
この実施例において抗PD-L1抗体に関連して記述された結果は、抗PD-1抗体にも同様に適用できるであろうことが期待される。
【0164】
T細胞上のPD-1と、腫瘍細胞上のPD-L1の間の相互作用を遮断する抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体(mAb)は、T細胞の活性および増殖を促進することができ、それによって、患者の一部において、抗腫瘍免疫の増強および永続的な寛解がもたらされることが、現在十分に確立している。しかしながら、最大70%またはそれを超える患者は、これらの治療剤に応答しない(www.immuneoncia.com)。抗PD-L1 mAbまたは抗PD-1 mAbが、より直接的に免疫系に接近し、抗腫瘍免疫を増大させることを可能にするであろう改良されたリンパ管内薬物送達経路を使用することによって、応答性が向上し得ることが期待される。
【0165】
この試験の目的は、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)中空マイクロニードルデバイスからの向上したリンパ管内送達によって、全身投与と比較して、リンパ系における抗PD-L1 mAbの体内分布が改善され得るかどうかを評価することであった。さらに、本実施例において、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)リンパ管内送達と全身投与の抗PD-L1 mAbの薬物動態が比較される。動物モデルは、ELISA技術と89Zr標識抗PD-L1 mAbの両方を使用した、健常C57/BL6インタクト雄性マウスであった。
【0166】
使用した試験デザインを下記表1に示す。
【表1-1】
【0167】
以下の実験手順を試験1において使用した:C57/BL6健常マウスにおける抗PD-L1の薬物動態
群1:SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投与。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投与の24時間前、マウスをイソフルラン(isofluorane)で麻酔し、足背部を剃毛し、脱毛クリーム(Nair Sensitive)で8分間覆う。次いで、そのクリームを、暖かく湿ったペーパータオルで、その後アルコールワイプで拭き取った。次いで、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を皮膚粘着剤が付いたプラスチックシェルを使用して、足背部に適用した。次いで、ハンドヘルドアプリケーターをプラスチックシェルの上に配置し、皮膚にマイクロニードルを挿入した。前記デバイスの操作は、以下の通りであった。前記アプリケーターは、前記マイクロニードルを打ち、その後6m/sの速度で動かされる。66mmの範囲にわたり、合計で100本のマイクロニードルが存在する。マイクロニードルが皮膚に挿入された状態で、シリンジポンプによって薬物の送達が開始される。この試験において、シリンジポンプは、150μL/hに設定され、10mg/kgの抗PD-L1 mAbを送達するために、平均11分間にわたって運転された。抗PD-L1 mAb濃度は、10mg/mLであった。血液中濃度用の動物は、11群であり、各群は3個体であった。タイムポイントは、投薬後15分間、1、8、24(1日)、48(2日)、96(4日)、168(7日)、336(14日)、504(21日)、または672(28日)時間であった。全ての動物は、それぞれのタイムポイントにおいて安楽死させ、心臓採血によって血液を採取した。血液サンプルは、EDTAチューブに入れ、2,500rpmで遠心して血清を収集した。血清は、ELISA技術を使用して抗PD-L1 mAbレベルについて評価し、各タイムポイントにおける濃度を、3個体の動物の平均として算出した。
【0168】
群2:静脈内投与。全ての動物において、25μLの10mg/mL抗PD-L1溶液を尾静脈に注射した。血液中濃度用の動物は、11群であり、各群は3個体であった。タイムポイントは、投薬後15分間、1、8、24(1日)、48(2日)、96(4日)、168(7日)、336(14日)、504(21日)、または672(28日)時間であった。全ての動物は、それぞれのタイムポイントにおいて安楽死させ、心臓採血によって血液を採取した。血液サンプルは、EDTAチューブに入れ、2,500rpmで遠心して血清を収集した。血清は、ELISA技術を使用して抗PD-L1 mAbレベルについて評価し、各タイムポイントにおける濃度を、3個体の動物の平均として算出した。
【0169】
以下の実験手順を試験2において使用した:C57/BL6健常マウスにおける89Zr標識抗PD-L1 mAbの薬物動態および体内分布。
抗PD-L1 mAbのコンジュゲーションおよび89Zr標識。抗PD-L1 mAbは、Sorrento Therapeutics,Inc.から入手し、以前方法報告された方法を使用してp-SCN-デフェロキサミンとコンジュゲートした(Kam,K.、Walsh,L.A.、Bock,S.M.、Fischer,K.E.、Koval,M.、Ross,R.F.およびDesai,T.A.、’’Nanostructure-Mediated Transport of Biologics across Epithelial Tissue:Enhancing Permeability via Nanotopography’’,Nano Lett.2013,13,164-171;Vosjan MJ、Perk LR、Visser GWら、’’Conjugation and radiolabeling of monoclonal antibodies with zirconium-89 for PET imaging using the bifunctional chelate p-isothiocyanatobenzyl-desferrioxamine’’,Nat Protoc.2010;5:739-743)。89ZrによるDf-抗PD-L1 mAbの放射標識は、以前に記述された伝統的な方法を使用して行い、Kam,K.、Walsh,L.A.、Bock,S.M.、Fischer,K.E.、Koval,M.、Ross,R.F.、およびDesai,T.A.、’’Nanostructure-Mediated Transport of Biologics across Epithelial Tissue:Enhancing Permeability via Nanotopography’’,Nano Lett.2013,13,164-171に記載されているように、PD-10カラムで精製した。
【0170】
詳細な89Zr標識手順。二官能性キレート剤のカップリングは、以下のようにして行った:(1)必要量のmAb溶液(最大1ml;できれば2~10mg/mlのmAb)を、エッペンドルフチューブ内にピペットで計り取る。反応混合物を、前記チューブ内に十分量の生理食塩水を加えることによって、総容量を1mlに合わせる。濃度が2mg/ml未満であると、コンジュゲーション反応の効率が低下し、その結果、Df-mAbのモル比が低下するであろう。(2)mAb溶液のpHを、0.1M NaCO(最大0.1ml)でpH8.9~9.1に調節する。あるいは、反応のために望ましいpHは、mAbストック溶液を、0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.0)に対してバッファー交換を行うことによって実現され得る。(3)Df-Bz-NCSを、使用されるmAbの量に応じて、2~5mM(1.5~3.8mg/ml)の濃度でDMSOに溶解する。これを、mAbのモル量に対して、キレート剤が3倍モル過剰になるようにタンパク質溶液に加え、直ちに混合する。反応混合物におけるDMSO濃度を2%未満に保つ。典型的には、20μL(5μL刻みで)の2~10mM Df-Bz-NCS(40~200nmol)DMSO溶液を、2~10mgのインタクトな抗体(13.2~66nmol)に加える。そのようなケースにおいて、抗体1分子あたり、0.3~0.9のDf部分がカップリングされるであろう。(4)得られる反応物を、サーモキサマーを使用して、550rpmで、37℃で30分間インキュベートする。(5)その間に、PD-10カラムを20mlの5mg/mlゲンチシン酸の0.25M酢酸ナトリウム(pH5.4~5.6)溶液でリンスする。(6)コンジュゲーション反応混合物をPD-10カラム上にピペットで乗せ、素通り画分を捨てる。(7)1.5mlの5mg/mlゲンチシン酸の0.25M酢酸ナトリウム(pH5.4~5.6)溶液を、PD-10カラム上にピペットで乗せ、素通り画分を捨てる。(8)2mlの5mg/mlゲンチシン酸の0.25M酢酸ナトリウム(pH5.4~5.6)溶液をPD-10カラム上に乗せ、Dfタンパク質を集める。Df-Bz-NCS-mAbは,-20℃で、放射標識が少なくとも2週間になるまで保存することができる。放射標識は、以下のようにして行った:(9)必要な体積(=a)の[89Zr]Zr-シュウ酸溶液(最大で200μL、典型的には37~185MBq)を、ガラス「反応バイアル」中にピペットで移す。(10)穏やかに撹拌しながら、200μL~a μL(ステップ9参照)の1Mシュウ酸を、反応バイアル中に加える。次いで、90μLの2M NaCOを、反応バイアル中にピペットで移し、室温で3分間インキュベートする。(11)穏やかに撹拌しながら、0.30mlの0.5M HEPES(pH7.1~7.3)、0.71mlの事前に修飾したmAb(典型的には0.7~3.0mg)、および0.70mlの0.5M HEPES(pH7.1~7.3)を、連続的に、反応バイアルにピペットで入れた。標識反応のpHは、最適な標識効率のために、6.8~7.2の範囲内であるべきである。(12)反応バイアルを穏やかに撹拌しながら、室温で1時間インキュベートする。放射標識効率(典型的には>85%)は、クロマトグラフィーストリップおよび溶媒として20mMクエン酸(pH4.9~5.1)(ITLC溶離液)を使用して、ITLCによって決定することができる。反応溶液のアリコート0.5~2.0μLを、直接ITLCストリップにアプライすることができる。放射標識mAb(Rf=0.0~0.1)。Rf>0.1の放射活性は、いずれも、mAbに結合していない放射活性を表す。放射標識効率=CPM Rf0.0~0.1(CPM放射標識mAb)/CPM Rf0.0~1.0(CPM合計)×100%。(13)その間に、PD-10カラムを20mlの5mg/mlゲンチシン酸の0.25M酢酸ナトリウム(pH5.4~5.6)溶液でリンスする。(14)1時間インキュベーションし、その後反応混合物をPD-10カラム上にピペットで乗せ、素通り画分を捨てる。(15)1.5mlの5mg/mlゲンチシン酸の0.25M酢酸ナトリウム(pH5.4~5.6)溶液を、PD-10カラム上にピペットで乗せ、素通り画分を捨てる。(16)2mlの5mg/mlゲンチシン酸の0.25M酢酸ナトリウム(pH5.4~5.6)溶液をPD-10カラム上にピペットで乗せ、精製された放射標識mAbを集める。(17)全標識収率を算出し:MBq 89Zr生成物バイアル(ステップ16参照)/MBq 89Zr開始活性(ステップ9参照)×100%、また、精製された放射標識mAbを、ITLC、HPLC、およびSDS-PAGEによって分析する。放射化学純度が95%を超える場合、4℃での保存、またはin vitroまたはin vivo試験のための5mg/mlゲンチシン酸の0.25M酢酸ナトリウム(pH5.4~5.6)溶液での希釈の準備ができている。純度が<95%である場合、PD-10カラム精製を繰り返すべきである。放射標識mAbは、48時間にわたる保存において安定である(37MBq/mlの89Zr-mAb溶液中で、t=48時間において、最初に結合した89Zrの0.9%±0.4%が解離する(しかしながら、Clイオンの存在は避けるべきである))。放射線によるmAbの完全性の悪化を最小限にするために、標識および保存の間、ゲンチシン酸が加えられる。放射と、それに続く水分子の放射線分解によってOClイオン(これは、エノール化したチオウレア単位のSH基と、非常に特異的に反応する)が形成されるため、Clイオンの使用は避けるべきである。よって、形成された中間体の塩化スルフェニル結合、およびさらなる酸化の際に生じる塩化スルホニル結合が、一連の反応(カップリング反応およびメチオニルペプチド結合の切断が含まれる)を引き起こすことが知られている。したがって、0.25M酢酸ナトリウム緩衝液の使用が強く推奨される。
【0171】
群1:89Zr標識抗PD-L1 mAbのSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投与。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投与の24時間前、マウスをイソフルラン(isofluorane)で麻酔し、足背部を剃毛し、脱毛クリーム(Nair Sensitive)で8分間覆う。次いで、そのクリームを、暖かく湿ったペーパータオルで、その後アルコールワイプで拭き取った。次いで、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を皮膚粘着剤が付いたプラスチックシェルを使用して、足背部に適用した。次いで、ハンドヘルドアプリケーターをプラスチックシェルの上に配置し、皮膚にマイクロニードルを挿入した。前記デバイスの操作は、以下の通りであった。前記アプリケーターは、前記マイクロニードルを打ち、その後6m/sの速度で動かされる。66mmの範囲にわたり、合計で100本のマイクロニードルが存在する。マイクロニードルが皮膚に挿入された状態で、シリンジポンプによって薬物の送達が開始される。シリンジポンプは、125μL/hに設定され、2mg/kgの抗PD-L1 mAbを送達するために、平均25分間にわたって運転された。抗PD-L1 mAb濃度は、1mg/mLであった。薬物溶液は、40%の89Zr標識抗PD-L1 mAbおよび60%の抗PD-L1 mAbであった。血液採取および剖検用の動物は、3群であり、各群は6個体であった。タイムポイントは、投薬後1、24、および72時間であり全ての動物は、それぞれのタイムポイントにおいて安楽死させ、心臓採血によって血液を採取し、剖検を実施した。血液サンプル、器官、およびリンパ節を採取し、γカウンターを使用して放射活性を測定し、抗PD-L1 mAbの濃度を、最初の放射活性線量と比較して算出した。各タイムポイントにおける濃度を、動物6個体の平均として算出した。
【0172】
群2:89Zr標識抗PD-L1 mAbの静脈内投与。全ての動物において、100μLの1mg/mL抗PD-L1溶液を尾静脈に注射した(4mg/kg)。薬物溶液は、40%の89Zr標識抗PD-L1 mAbおよび60%の抗PD-L1 mAbであった。血液採取および剖検用の動物は、3群であり、各群は6個体であった。タイムポイントは、投薬後1、24、および72時間であり全ての動物は、それぞれのタイムポイントにおいて安楽死させ、心臓採血によって血液を採取し、剖検を実施した。血液サンプル、器官、およびリンパ節を採取し、γカウンターを使用して放射活性を測定し、抗PD-L1 mAbの濃度を、最初の放射活性線量と比較して算出した。各タイムポイントにおける濃度を、動物6個体の平均として算出した。
【0173】
試験1(C57/BL6健常マウスにおける抗PD-L1の薬物動態)について、以下のようにしてデータ解析を行った。試験1において、血液採取用の動物は、11群であり、各群は3個体であった。タイムポイントは、投薬後15分間、1、8、24(1日)、48(2日)、96(4日)、168(7日)、336(14日)、504(21日)、または672(28日)時間であった。血清抗PD-L1 mAbレベルを、ELISA技術を使用して決定した。各血液サンプルについて、各動物につき3回繰り返して行い、平均した。次いで、各タイムポイントにおける濃度を、動物3個体の平均を使用して算出した。
【0174】
試験2(C57/BL6健常マウスにおける89Zr標識抗PD-L1 mAbの薬物動態および体内分布)について、以下のようにしてデータ解析を行った。試験2において、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)リンパ管送達と静脈内送達の両方について、動物は、3タイムポイント群であり、各群は6個体であった。タイムポイントは、投薬後1、24、および72時間であった。各タイムポイントにおいて、群の全ての動物を安楽死させ、血清 器官、およびリンパ節について放射活性を計測した。血清、器官、およびリンパ節における抗PD-L1の濃度は、血清、採取した器官組織、または採取したリンパ節組織の単位質量あたりの初期量のパーセント(%ID)として記録した。次いで、各タイムポイントにおける値は、動物6個体全てにわたる平均値として算出した。各タイムポイントにおける総リンパ管送達は、および腋窩、鼠径、および上腕リンパ節にわたる平均であった。
【0175】
試験1(C57/BL6健常マウスにおける抗PD-L1の薬物動態)について、以下の結果が観察された。
図7は、C57/BL6マウスにおける抗PD-L1 mAbのSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投与および静脈内投与についての例示的なPK曲線を報告するグラフである。定められた投薬量は、10mg/kgであり、マウスの平均体重は、25gであった。抗PD-L1 mAbの製剤濃度は、10mg/mLであった。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(登録商標)リンパ管内インフュージョンは、平均で11分間にわたり、150μL/hrでポンプ注入された。静脈内用量は、尾静脈を通して注入された。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)送達から24および48時間における血清中濃度は、静脈内送達と統計的に違いがなかった。
【0176】
図7における曲線についてのPKパラメーターを、表1に示す。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)リンパ管内送達のバイオアベイラビリティーは、20%と算出された。バイオアベイラビリティー(bioavilibility)は、インフュージョン時間と相関し、腫瘍阻害を実現するために必要であれば、より長い時間を用いることができる。
【表1-2】
【0177】
試験2(C57/BL6健常マウスにおける89Zr標識抗PD-L1 mAbの薬物動態および体内分布)について、以下の結果が観察された。
図8は、C57/BL6マウスにおける89Zr放射性同位体で標識された抗PD-L1 mAbのSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)および静脈内投与についての例示的なPK曲線を報告するグラフである。投与された用量は、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)については2mg/kg、および静脈内投与については4mg/kgであり、マウスの平均体重は、25gであった。抗PD-L1 mAbの製剤濃度は、1mg/mLであり、40%の89Zr-抗PD-L1および60%の抗PD-L1 mAbを含んでいた。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(登録商標)リンパ管内インフュージョンは、平均で25分間にわたり、125μL/hrでポンプ注入された。100μLの静脈内用量は、尾静脈を通して注入された。
【0178】
血清中濃度は、1、24、および72時間に測定された。72時間において、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)と静脈内送達からのPK曲線は、統計的に違いがない。これらの結果は、ELISA測定から得られるPK曲線とはわずかに異なっていた。具体的には、放射標識結果において、ほぼさらなる24時間で交点が移動した。他のPKパラメーターは、タイムポイントがわずか72時間までであるため、計算しなかった。
【0179】
体内分布には、全身性器官(肝臓および腎臓)およびリンパ節(腋窩(axial)、鼠径、および上腕)が含まれる。組織は、1、24、および72時間に採取された。図9において、平均リンパ節濃度は、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)および静脈内送達について、6つの腋窩(axial)、鼠径(iguinal)、および上腕リンパ節全体にわたるものである。リンパ節体内分布によって、静脈内投与と比較して、腋窩、鼠径、および上腕リンパ節全体にわたって、平均で184%多くの抗PD-L1が送達されたことが示された。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)で処置したリンパ節は、また、1時間のタイムポイント(このとき、IVについて最も低い濃度であることが判明した)において最大の濃度を有していた。静脈内濃度は、72時間にわたりわずかに増加した一方で、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)リンパ節濃度は、統計的に一定のままであった。
【0180】
図10A図12Bにおいて、体内分布結果は、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)および静脈内投与についての、健常C57/BL6マウスにおける89Zr-抗PD-L1 mAb送達についてのものである。体内分布試験(肝臓および腎臓)における全身性器官は、72時間にわたって上昇して静脈内濃度と釣り合うSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)送達から1時間において、低濃度を有する。静脈内器官濃度は、逆に、1時間において高値を示す。
【0181】
本実施例の結果によって、抗PD-L1 mAbは、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)マイクロニードルデバイスを使用した局所的リンパ管内送達によって、効果的に送達され得ることが示された。バイオアベイラビリティーは、20%よりも高く、必要であれば、より長いインフュージョン時間で向上させることが可能であった。局所的リンパ管内送達によって、腎臓および肝臓濃度に基づく潜在的により低い全身毒性で、静脈内投与より大幅に高い濃度で、全ての主要リンパ節にリアルタイムで抗PD-L1 mAbが送達された。
【0182】
SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)による最適化されたPKおよびリンパ管内送達は、マウスモデルおよびヒト患者において、より高い腫瘍阻害に言い換えられるであろうことが期待される。
【0183】
薬物動態に関連する結果のまとめ
SOFUSA(登録商標)によって、薬物濃度は、およそ24時間以内にCmaxに上昇し、28日で99%超が排除される。静脈内によって、28日でほぼ83%が排除されるが、濃度は高く14μg/mL超のままである。
【0184】
SOFUSA(登録商標)または静脈内送達による試験の間に、マウスは失われなかった。
【0185】
マウスの皮膚は、いかなる紅斑(erthyma)または浮腫(edma)もなく、SOFUSA(登録商標)からの抗PD-L1 mAb送達に耐容性を示した。
【0186】
SOFUSA(登録商標)について、Tmax=24時間、Cmax=31,000ng/mL、およびBA=20%。
【0187】
静脈内について、Cmax=85,000ng/mL。
【0188】
体内分布に関連する結果のまとめ
リンパ系およびリンパ節への抗PD-L1 mAbのSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)は、SOFUSA(登録商標)インフュージョン開始の際、直ちに始まることが見いだされた。
【0189】
SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)送達は、投与後時間1時間の後、30時間にわたって、より高いリンパ節~血液濃度を示した。
【0190】
72時間にわたる曲線下面積測定によって、静脈内投与と比較して、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)は、184%多くの薬物をリンパ系に送達したことが示された。
【0191】
体内分布結果によって、より高いリンパ中濃度が維持され、他の器官系における全身的曝露がより低いことが示された。
【0192】
SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)または静脈内送達による試験の間に、マウスは失われなかった。
【0193】
マウスの皮膚は、いかなる紅斑または浮腫もなく、SOFUSA(登録商標)からの抗PD-L1 mAb送達に耐容性を示した。
【0194】
予言的な実施例4.抗PD-1または抗PD-L1のSOFUSA(登録商標)送達の有効性についての予言的な前臨床試験
以下の方法が使用され得る:
【0195】
同所性の4T1動物モデルおよび免疫療法処置。0.1mLのPBS中の5×10個のルシフェラーゼ導入4T1(4T1-luc)マウス乳房腫瘍細胞(Li CW、Lim SO、Xia W、Lee HH、Chan LC、Kuo CWら、Glycosylation and stabilization of programmed death ligand-1 suppresses T-cell 活性.Nat Commun.2016;7:12632)およびマトリゲルが、BALB/Cマウスの右の尾側乳房脂肪パッドに注射されるであろう。第11日に、動物は、(1)0.05mL PBS中の10mg/kg抗PD-1 mAbの腹腔内注射(i.p.);(2)SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)によってインフュージョンされた0.05mL PBS中の10mg/kg抗PD-1 mAb;および(3)0.05mL PBS中の10mg/kg抗PD-L1 mAbの腹腔内注射(i.p.);(2)SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)によってインフュージョンされた0.05mL PBS中の10mg/kg抗PD-L1 mAb;および(5)インプラント後第11、15、19、および23日に10mg/kgアイソタイプ対照抗体、を受けた5つの処置群の1つに分けられるであろう。全てのコホートは、第11日における投薬開始時において、同様な腫瘍体積を有するであろう。第11日において前記群とは統計的に異なる腫瘍体積を有する動物は、解析に含められないであろう。試験エンドポイントは、インプラント後30日、または腫瘍がいずれかの次元において20mmを超える、のいずれか早い方である。
【0196】
SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)リンパ管インフュージョンデバイス。動物において、50μLの抗PD-1 mAbまたは抗PD-L1 mAbの4.5mg/mL溶液は、イソフルラン麻酔下動物の右背外側に、1時間にわたって注入されるであろう。リンパイメージングは、以前に記述されたように、非侵襲的近赤外線蛍光イメージングで行われるであろう(Sevick-Muraca EM,Kwon S,Rasmussen JC.Emerging lymphatic imaging technologies for mouse and man.J Clin Invest.2014;124:905-14)。
【0197】
腫瘍負荷の評価。インプラント後(p.i.(post-implant))第4、8、11、15、19、23、26、および30日に、測定されたキャリパーから腫瘍寸法の短い方(D1)および長い方(D2)が評価され、体積(V)が0.5×D1×D2から算出されるであろう(Faustino-Rocha A、Oliveira PA、Pinho-Oliveira J、Teixeira-Guedes C、Soares-Maia R、da Costa RGら、Estimation of rat mammary tumor volume using caliper and ultrasonography measurements.Lab Anim(NY).2013;42:217-24)。インプラント後第16、23、および30日において、腫瘍負荷は、注文生産のバイオルミネセンスデバイスで、バイオルミネセンスを使用して、動物のサブセットにおいて評価されるであろう。in vivoバイオルミネセンスイメージは、D-ルシフェリンのi.p.投与(200μLのPBS中で150mg/kg;Goldbio)の10分後に取得されるであろう。インプラント後第30日におけるex vivoバイオルミネセンスイメージングのために、器官は、第2のD-ルシフェリン投与(第1のD-ルシフェリン注射のおよそ20分後)後、直ちに除去され、D-ルシフェリン中でインキュベートされ、イメージングされるであろう。組織は、次いで、目視検査および組織学的検査によって評価されるであろう。
【0198】
免疫組織化学染色。組織サンプルは、パラフィンに包埋され、4μm切片が全ての染色手順において使用されるであろう。パラフィン除去およびクエン酸緩衝液を使用した抗原賦活化に続いて、組織は、Hでインキュベートされ、5%正常ヤギ血清アルブミンでブロッキングし、ラット抗マウスCD8抗体(eBioscience(商標))およびビオチン-抗ラット二次抗体(Vector Labs)で染色されるであろう。色素としてペルオキシダーゼおよびDABのためのVectastain Elite ABCシステムは、組織がヘマトキシリン(Vector Labs)で対比染色される前に使用されるであろう。CD8発現は、×63の倍率(Zeiss Axio)で検査されるであろう。
【0199】
データ解析および統計。腫瘍増殖データは、平均体積±標準誤差(SE)として示され得る。統計解析は、Microsoft Excelによって行うことができ、個別のタイムポイントからの体積データは、独立片側スチューデントt検定によって、有意水準をp<0.05に設定して解析することができる。安楽死させたら、組織は、収集され、肺、肝臓、およびLN転移について検査され、また、各動物は、肺病変の数について評価されるであろう。転移がある動物数と、転移がない動物数の差異は、z検定によって、有意水準をp<0.05に設定して、統計的に評価されるであろう。
【0200】
以下の結果が予期される:
【0201】
抗PD-1または抗PD-L1のリンパ管送達は、同所性の乳癌腫マウスモデルにおいて抗腫瘍応答を改善することが予期される。
右の尾側乳房脂肪パッドにおける4T1-lucマウス乳癌腫の同所性インプラントを有するBALB/Cマウスにおいて、インプラント後(p.i.(post implant))第11、15、19、および23日に、100μL/hのインフュージョン速度で、右外側に0.05mL PBS中の10mg/kgの抗PD-1または抗PD-L1をインフュージョンするために、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)が使用されるであろう。腫瘍増殖速度、および(動物のサブセットにおいて)腫瘍負荷のバイオルミネセンスイメージングは、インプラント後第11、15、19、および23日に、腹腔内(i.p.)注射によって、10mg/kgの抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体またはアイソタイプ対照抗体のいずれかを受けた腫瘍担持動物の追加の群と比較されるであろう。
【0202】
動物のサブセットにおけるバイオルミネセンスイメージングによって、抗PD-1または抗PD-L1は、例えばインプラント後第23および30日において、腫瘍増殖ならびにLN、骨、および肺転移を抑制、減速、または停止させるであろうことが示されること、ならびに試験エンドポイントの第30日におけるex-vivoイメージングから、遠隔転移の量が示されることが予期される。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)インフュージョンが投与された動物において、動物の一部、例えば、少なくとももしくは少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%は、完全奏効(例えば、キャリパー測定によって原発腫瘍体積が検出不能であることによって、または当該技術分野において同定可能な任意の他の方法によって決定される)を示すであろうことが予期される。抗PD-1のi.p.投与もしくは抗PD-L1のi.p.投与、またはアイソタイプ対照を受けた動物は、完全奏効を示すことが予期されず、これは、抗PD-1または抗PD-L1のTDLNへのリンパ管送達は早期かつ頑強な抗腫瘍活性を可能にすることと整合性がある。さらに、統計的に有意に少ない動物、例えば最大20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%少ない動物が、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)をインフュージョンされた動物において、全身的に投与された群およびアイソタイプ対照群と比較して、遠隔転移(例えば、肺、骨、またはLN転移)を示すことが予期される。これらの予期される結果は、薬物は局所的に送達されるにもかかわらず、全身的投薬と比較して、局所的なSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投薬からの有効なアブスコパル抗腫瘍応答があることを示唆している。この予期される結果は、(i)リンパ管送達によるTDLNにおけるナイーブT細胞に対するより多くの薬物曝露、および(ii)一度教育された腫瘍Agに対するT細胞のより効果的な活性化が、TDLNに頑健な全身抗腫瘍応答を開始させることと整合性がある。
【0203】
抗PD-1または抗PD-L1のSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)インフュージョンを受けた腫瘍担持動物は、抗PD-1または抗PD-L1のi.p.注射を受けた動物において観察されるものと比較した場合、より早いタイムポイントから起こる、有意に減少した腫瘍増殖を示すことが予期される。例えば、抗PD-1または抗PD-L1のSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)インフュージョンは、アイソタイプ対照抗体を投与された動物と比較した場合、ある期間にわたり(例えば、インプラント後15日およびそれ以降)有意に減少した腫瘍増殖を示すことが予期される。これに比べて、抗PD-1または抗PD-L1のi.p.注射を受けた腫瘍担持動物は、アイソタイプ対照抗体を投与された動物と比較した場合、より遅いタイムポイントから(例えば、インプラント後19日およびそれ以降)統計的に有意に減少した腫瘍増殖を示すことが予期される。このタイムポイント(例えば、インプラント後15日)以降、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)インフュージョンによる第1ラウンドの抗PD-1または抗PD-L1を受けた動物の腫瘍体積は、抗PD-1または抗PD-L1を全身的に受けた動物における腫瘍体積よりも、有意に小さいことが予期される。この予期される結果は、薬物を全身的に投与された動物と比較して、リンパ管内へのSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)インフュージョンによって局所的に投与された動物におけるより早い抗腫瘍応答と整合性がある。
【0204】
試験エンドポイントにおいて残存原発腫瘍を有するSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)抗PD-1投与または抗PD-L1投与動物のサブセットのIHC染色は、対照または全身的に投与された動物と比較して、原発腫瘍において統計的により多数の(例えば、最大1.5倍、2倍、2.5倍、または2.5倍超の増加)腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を示すことが予期される。例えば、リンパ管投与後の原発腫瘍における100%のTIL増加と比較して、抗PD-1または抗PD-L1治療剤の静脈内投与後に原発腫瘍において50%のTIL増加が観察されることが予期され得る。
【0205】
この前臨床試験において予期される腫瘍応答に対するリンパ管送達の影響は、二足歩行の非ヒト霊長類または患者と比較して、小さな四足動物前臨床腫瘍モデルにおいて、減弱されていることがあり得る。げっ歯類試験におけるモノクローナル抗体の全身投与は、すぐに静脈系に注ぐ腹腔内の豊富なリンパ管による効果的な取り込みのために、一般にi.p.注射によって行われる。その結果、i.p.投与は、i.v.注射で見られる同じ薬物動態および薬力学プロファイルに大部分は近似する。i.p.投与は、このリンパ管送達試験において見られる腫瘍流入領域LNに対する曝露を回避し得るが、投与のi.p.経路は、それでもなお、薬物を血液循環に送達するためにリンパ本幹を利用する。リンパ区画における曝露の結果として、げっ歯類におけるi.p.投与からの抗腫瘍応答は、ヒトにおけるi.v.投与からの抗腫瘍応答を過大に予測することが予期され得る。げっ歯類モデルにおいては応答が減弱されていることに加えて、免疫療法に対する有害な免疫応答は、一般にげっ歯類においては存在しないことから、リンパ管送達がirAEを改善し得るかどうかを理解するために、本開示に記載されている他の前臨床および臨床研究がさらに必要である。
【0206】
実施例5.カニクイザルにおけるリンパ管投与に続く抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110の多相探索的毒性および毒物動態研究(非GLP)
この2フェーズの研究の目的は、1)種々の位置における、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110のリンパ管薬物送達に対するカニクイザルにおける応答、および投与後1時間における曝露レベルを評価すること(フェーズI)、および2)潜在的な毒性を決定し、静脈内(IV)とリンパ管内薬物送達の後の種々のタイムポイントにおいて、ナイーブカニクイザルにおける毒物動態プロファイルを比較すること(フェーズII)である。SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)がリンパ管送達のために使用された。
【0207】
この実施例において抗PD-1抗体に関連して記述された結果は、抗PD-L1抗体にも同様に適用され得ることが期待される。
【0208】
以下の実験手順が使用された。
【0209】
試験施設:試験は、Altasciences Preclinical Seattle LLC,Everett,WAで行われた。
【0210】
動物。1個体の雄性カニクイザルと1個体の雌性カニクイザル(Macaca fascicularis)、および5個体の雄性カニクイザルと5個体の雌性カニクイザル(Macaca fascicularis)(これらは、ナイーブであり、かつモノクローナル抗体に対する知られている曝露がないこと、および獣医学的健康診断において許容できる結果であることが確認されている)が、それぞれ、フェーズIおよびフェーズIIに割り当てられた。動物は、試験施設のストック群体から選択され、図13に示すように、6つの処置群に無作為に割り当てられた。残りの雄性個体および雌性個体は、予備の役割を果たした。
【0211】
動物は、フェーズIにおける第1日のリンパ管薬物送達に先立ち、14日間、試験室に馴化させた。動物は、また、フェーズIIにおける静脈内(IV)インフュージョン、ならびに第1日および第8日のリンパ管薬物投与に先立ち、14日間、試験室に馴化させた。試験のインライフフェーズは、フェーズIにおける第2日、およびフェーズIIにおける第22日に完了した。予備の動物は、第1日の投薬後、ストック群体に戻され、次いで残りの試験動物は、試験のインライフ部分の完了後に戻された。
【0212】
投薬準備。試験物質は、抗PD-1モノクローナル抗体STI-A1110(Sorrento Pharmaceuticals)であった。対照物質/ビヒクルは、20mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、200mMスクロース、0.05%PS80、pH7.2[±0.2]であった。
【0213】
フェーズIについて、第1日に、2mLの試験物質を2~8℃から取り出し、使用前に、少なくとも30分間、環境温度に維持した。
【0214】
フェーズIIについて、第1日に、16mLの試験物質および19.8mLの対照物質/ビヒクルを2~8℃から取り出し、使用前に、少なくとも30分間、環境温度に維持した。第8日に、20mLの試験物質および21.5mLの対照物質/ビヒクルを2~8℃から取り出し、使用前に、少なくとも30分間、環境温度に維持した。
【0215】
目標の投薬体積は、投与前日に測定した体重に基づいて算出された。
【0216】
薬物投与。フェーズIについて:第1日に、試験物質を、図13に示すように、動物1001(群1、雄性)の4つの異なるリンパ管位置に投与した。動物は、薬物投与のために麻酔した。4つの投薬は、それぞれ、右前肢の上部(投薬1、0.15mL/hr)、右大腿(外側、投薬2、0.25mL/hr)、左大腿内側(投薬3、0.25mL/hr)、および左大腿内側(投薬4、投薬3よりも膝に近い、0.25mL/hr)に対して、1回に1つのデバイスを使用して、1時間(±5分間)あけて投与した。薬物送達デバイスの適用のために選択した部位は、投薬前にクリップした。動物2501(群2、雌性)には投薬しなかった。
【0217】
フェーズIIについて:群3および4の動物は、図13に示すように、第1および8日に、1日1回、0または40mg/kgの投薬レベルで、ポンプを使用して、8分間(±30秒)の静脈内(IV)インフュージョンによって、末梢静脈内に投薬された。インフュージョンラインは、意図した投薬体積の完全な送達を確実にするために、1mLの対照物質/ビヒクル(20mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、200mMスクロース、0.05%PS80、pH7.2[±0.2])でフラッシュした。投薬体積は、群間で一定であり、0.77mL/kgであった。
【0218】
対照または試験物質は、図13に示すように、群5または6において、4台のリンパ管薬物送達デバイスを同時に使用して、第1および8日に、麻酔下動物に投与した。群5または6の動物のための投薬持続時間は、2.5時間にわたった。第1日に、左肩、左背中上部、および左後肢上部2か所が、動物5001(群5、雄性)および6001(群6、雄性)における4つの投薬部位として使用され;左臀部、左臀部部位のすぐ上の左背中下部、背中沿いの左肩、および左背中上部が、動物5501(群5、雌性)において使用され;左臀部、左後肢上部、左前肢上部、および左背中上部が、動物6501(群6、雌性)において投薬された。第8日に、4つのデバイスを同時に使用して、異なる肢および/または背部に薬物が投与された。
【0219】
サンプルの採取、処理、保存、および移動。動物は、血清化学用の試料を含む各一連の採取の前、少なくとも4時間絶食させた。これらの例において、関連する臨床病理学的評価は、絶食動物からのものである。全ての血液は、翼状インフュージョンセットおよびディスポーザブルシリンジを使用して、麻酔下または拘束下の、意識のある動物の末梢静脈から1回の採血によって採取された。
【0220】
血液学用におよそ0.5mLをK2EDTA BD MAP管に入れ、血清化学用に0.9mLを血清分離管(SST(serum separator tube))に入れ、血液凝固分析用に1mLを3.2%クエン酸ナトリウムに入れ、血清毒物動態(TK)分析用に1mLを血清分離管に入れた。
【0221】
臨床病理学。血液学分析、血液凝固分析、および血清化学分析を行った。各アッセイについて、分析したサンプルの採取日、測定したパラメーター、およびサンプルの処分を図14に示す。
【0222】
毒物動態(TK)サンプル。フェーズIについて:血液サンプルは、第-8日に1回、および各薬物投与開始1時間後にデバイスを除去する直前に採取した。
【0223】
フェーズIIについて:血液サンプルは、群3および4において、第-8日に1回、および第1日の静脈内インフュージョン終了後0.5、1、2、4、8、24、48、72、144、216、336、および504時間に採取した。血液サンプルは、動物5001および6001について、第-8日に1回、および第1日の投薬開始後2、4、8、24、48、72、144、216、336、および504時間に採取した。血液サンプルは、動物5501および6501について、第-8日に1回、および第1日の投薬開始後0.5、1、2、4、8、24、48、72、144、216、336、および504時間に採取した。
【0224】
TK分析用のおよそ1mLの血液を血清分離管(SST(serum separator tube))に投入し、室温で少なくとも30分間安定化させた後、冷却遠心機(2~8℃)の中で、2000×gで15分間遠心し、血清を得た。およそ250μLの血清をポリプロピレン管に移し(アリコート1)、残りの血清を異なる管に移し(アリコート2)、直ちにドライアイス上に置いた後、-86~-60℃で保管した。
【0225】
フェーズIおよびフェーズIIにおいて採取したTK分析用の血清(アリコート1)サンプルは、Sorrento Therapeutics Inc.に発送した。血清サンプルの第2のセットは、-86~-60℃で保管し、Sorrento Therapeutics Inc.に発送した。
【0226】
以下の結果が観察された。
【0227】
臨床所見および獣医学的介入。この試験において、試験物質関連所見はなかった。
【0228】
体重。試験物質関連の体重変化はなかった。
【0229】
血液学、血液凝固、および血清化学。全ての動物から血液学、血液凝固、血清化学サンプルを採取し、試験施設のSOP(標準作業手順書)に従って処理した。
【0230】
フェーズIについて、試験物質投与に起因する臨床病理学的変化はなかった。
【0231】
フェーズII静脈内インフュージョン投薬について、試験物質に関連する臨床病理学的変化は、40mg/kgで投薬を受けた動物において、中程度~著しく減少した血小板数、穏やかに増加したフィブリノゲン、および最小限に増加したグロブリンからなるものであった。血小板数減少は、投薬第1日および第8日の後に起こり、最下点は、投薬後2~3日(第3、4、および/または10日)であった。平均血小板体積と大血小板の増加の同時発生(雌性のみ)は、成熟度が低い血小板の放出(早期の再生的応答)と整合性があり、血小板喪失の増大を示唆するものであった。血小板数減少の規模は有害と考えられたが、一過性であり、出血傾向の増大は起こさず(点状出血、紫斑、またはどの開口部からの出血もない)、かつ第22日までに逆戻り可能である根拠があった。フィブリノゲンおよびグロブリンの増加は、炎症反応と整合性があり、かつ第22日までに部分的または完全に逆戻り可能である根拠があった。
【0232】
フェーズIIリンパ管投薬について、試験物質に関連する臨床病理学的変化は、40mg/kgの投薬を受けた雄性動物において、穏やかに増加したフィブリノゲンからなるものであり、炎症反応と整合性があり、かつ第22日までに逆戻り可能である根拠があった。リンパ管送達によって40mg/kg/投薬で投与を受けた動物において、試験物質に起因する血液学的変化または臨床化学的変化はなかった。
【0233】
試験物質抗PD-1 mAb STI-A1110投与に起因する変化には、静脈内(IV)インフュージョン雄性および雌性動物(群4)における、一過性の、中程度~著しい血小板数減少が含まれ、これは、出血の増加(点状出血、紫斑、またはいずれかの開口部からの顕性出血)とは関連がなかった。さらに、静脈内経路によって40mg/kgで投与を受けた動物における一過性の、穏やかに増加したフィブリノゲン、および最小限に増加したグロブリン、ならびにリンパ管投与(群6)雄性動物における穏やかに増加したフィブリノゲンは、炎症反応と整合性があった。
【0234】
SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投薬によって、静脈内投与で見られる血小板減少を伴わない、一貫性のある投薬/PKプロファイルが観察された(図15C)。
【0235】
抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110の血清中濃度の薬物動態学的(PK)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)結果。図15Aは、サル4501における静脈内投薬、およびサル6501におけるSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用したリンパ管送達後の、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110(Sorrento Pharmaceuticals)の血清中濃度の薬物動態学的(PK)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を示す。
【0236】
図15Aおよび図15Bに示すように、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110の静脈内送達によって、血清抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110濃度の即時的な増加と、それに続く急速な減少(特に、第1日の投与後)が起こった。これに対して、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用した抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110のリンパ管送達によって、抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110の血清中濃度における変動がより少なく、血清サンプリング期間全体にわたってより一貫性のある血清レベルがもたらされた。
【0237】
AUC0-500時間は、静脈内投与については41,300ug/hr/mlであるのに対し、リンパ管送達については14,550ug/hr/mlであった。リンパ的に投与された抗PD1モノクローナル抗体STI-A1110のバイオアベイラビリティーは、35%であった。第1日の投与後、Tmaxは、第1日の静脈内投与後5分から、第1日のリンパ管投与後48時間まで増加した。
【0238】
予言的な実施例6。フェーズ1B(再発性または難治性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を有する患者において、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用してリンパ管内投与されたキイトルーダ(登録商標)(ペンブロリズマブ)(Merck Sharp&Dohme Corp.、New Jersey)の薬力学、薬物動態、安全性、および活性を評価するためのパイロット試験)
この予言的な実施例は、計画したフェーズ1B(再発性または難治性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を有する患者におけるSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)デバイスを使用してリンパ管内投与された抗PD-1抗体(例えば、ペンブロリズマブ)の薬力学、薬物動態、安全性、および活性を評価するためのパイロット試験)の例を記述する。
【0239】
この実施例において抗PD-L1抗体に関連して記述された結果は、抗PD-1抗体にも同様に適用でき得ることが期待される。
【0240】
皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)は、主に皮膚に存在する成熟T細胞の非ホジキンリンパ腫のグループであり、時として、進行してリンパ節、血液、および内臓に浸潤する(Swerdlow SH、Campo E、Pileri SAら、The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms.Blood 2016;127:2375-2390)。CTCLの2つの最も一般的なサブタイプは、菌状息肉症(MF)とセザリー症候群(SS)であり、これらが診断の大半を占める。菌状息肉症は、原発性皮膚浸潤を伴う、CTCLの最も一般的なサブタイプであり、CTCLの50%~70%を占める(Paulli M,Berti E,Rosso Rら、CD30/Ki-1-positve lymphoproliferative disorders of the skin-clinicopathologic correlation and statistical analysis of 86 cases:a multicentric study from the European Organization for Research and Treatment of Cancer Cutaneious Lymphoma Project Group.J Clin Oncol 1995;13:1343-1354;Vergier B、Beylot-Barry M、Pulford Kら、Statistical evaluation of diagnostic and prognostic features of CD30+cutaneous lymphoproliferative disorders:a clinicopathologic study of 65 cases.Am J Surg Pathol 1998;22:1192-1202.)。セザリー症候群は、著しい血液浸潤とリンパ節腫大を特徴とする、CTCLの紅皮症、白血病性の病型であり、CTCLのわずかに約1%~3%を占める(同上)。全体として、CTCLは極めてまれであり、NHL(非ホジキンリンパ腫)の約4%を占めている(Korgavkar,K.、M.Xiong、およびM.Weinstock(2013).’’Changing incidence trends of cutaneous T-cell lymphoma.’’JAMA Dermatol 149(11):1295-1299.)。
【0241】
試験の理論的根拠。パッチ/プラークCTCL疾患を有する患者における初期処置は、(PUVAを含む、局所化された、または全般的な)皮膚に向けられた療法と、難治性、遷延性、または進行性疾患のためのより穏やかな全身療法からなる。生物学的療法に応答しない患者、または非常に侵襲性または真皮外の疾患を有する患者は、多剤併用化学療法で処置され得る。アロジェネイックな幹細胞移植は例外となる可能性があるが、CTCLには治癒的な療法は存在しない。長期的な治癒的処置の選択肢は、CTCLにおいて、長らく困難なものであった。再発性または難治性疾患について、臨床試験への参加が推奨される(National Comprehensive Cancer Network.Primary Cutaneous Lymphomas(Version 2.2019)。https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/primary_cutaneous.pdf.
【0242】
CTCL患者から採取されたバイオプシーの試験において、CD4+CTCL集団は、正常な皮膚と比較して、PD-1、CTLA-4、およびLAG-3を発現しているT細胞をより多く含んでいた。CTCLは、また、T細胞活性化のマーカーである誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)を発現しているT細胞もより多く含んでいた。進行したT3/T4ステージのサンプルは、T1/T2ステージの患者または健常対照と比較して、チェックポイント阻害遺伝子由来のmRNAをより高レベルで発現していた。したがって、活性化T細胞の枯渇は、CTCLを有する患者の病変のある皮膚から単離されたCD4+T細胞とCD8+T細胞の両方の特徴である(Querfeld C、Zain JM、Wakefield DLら、Phase 1/2 Trial of Durvalumab and Lenalidomide in Patients with Cutaneous T Cell Lymphoma(CTCL):Preliminary Results of Phase I Results and Correlative Studies,Blood 2018a 132:2931;Querfeld C(2018b,December).Phase 1/2 Trial of Durvalumab and Lenalidomide in Patients with Cutaneous T Cell Lymphoma(CTCL):Preliminary Results of Phase I Results and Correlative Studies.Oral presentation at the annual meeting of the American Society of Hematology.San Diego,CA)。CITN(the Cancer Immunotherapy Trials Network)が主導したPD-1に対する抗体であるペンブロリズマブを評価するフェーズ2単群試験によって、より高いステージの再発性または難治性MFおよびSSを有する人々における有望な結果が示された(Khodadoust M、Rook AH、Porcu Pら、Pembrolizumab for treatment of relapsed/refractory mycosis fungoides and Sezary syndrome:clinical efficacy in a CITN multicenter phase 2 study.Blood.2016;128(22):181)。この試験において、少なくとも1つの先行する全身療法によるIV処置を受けたMF/SSステージIBの24人の患者が、3週間ごとに、最大2年間、静脈内ペンブロリズマブ2mg/kgで処置された。ORRは、38%(N=24)であり、処置奏効の中位時間は11週間であった。1人の患者は完全奏効であり、8人の患者は部分奏効であり、9人は安定(stable disease)であり、6人の患者はPD(進行)であった。32週において、9人の応答のうち8人は進行中であった。これらの結果に基づき、承認されてはいないが、ペンブロリズマブは、現在、CTCL処置の処置オプションとしてナショナルガイドラインに収載されている。CTCLに罹患した患者におけるデュルバルマブ(抗PD-L1)+レナリドミドの独立した小規模な臨床試験において、この組み合わせは、また、皮膚疾患の改善においても有効であり、部分奏効をもたらすことが報告されている。非応答者からは、強いPD-L1およびICOS発現が観察される。応答患者において、検出可能なレベルのPD-L1と、低レベルのICOSが観察された。定量的超分解能顕微鏡法によって、応答者由来のT細胞においてPD-1のナノスケールのクラスターが検出されたが、非応答者由来のT細胞においてPD-1は観察されなかった(Querfeld C、Zain JM、Wakefield DLら、Phase 1/2 Trial of Durvalumab and Lenalidomide in Patients with Cutaneous T Cell Lymphoma(CTCL):Preliminary Results of Phase I Results and Correlative Studies,Blood 2018a 132:2931)。この組み合わせは、おそらくSTAT1およびSTAT3のダウンレギュレーションによって、PD-L1およびICOSの発現を抑制するように思われる(Querfeld C(2018b,December).Phase 1/2 Trial of Durvalumab and Lenalidomide in Patients with Cutaneous T Cell Lymphoma(CTCL):Preliminary Results of Phase I Results and Correlative Studies.Oral presentation at the annual meeting of the American Society of Hematology.San Diego,CA)。
【0243】
ナノトポグラフィーベースのマイクロニードルアレイを使用した局所的な送達は、全身的な薬物曝露を低減させ、かつ皮膚における腫瘍母地および腫瘍抗原が存在する腫瘍流入領域LNへの薬物送達を最小化することによって、チェックポイント遮断免疫療法を改善することが期待される。このパイロット試験において、もしSOFUSA(登録商標)を使用したペンブロリズマブのリンパ管送達が実行可能であれば、ペンブロリズマブは、腫瘍組織における薬力学的評価によって評価するために、CTCLを有する患者においてDoseConnectによって投与されるであろう。CTCLの選択は、薬力学的測定のための腫瘍細胞の到達性に基づく。
【0244】
単独の薬剤ペンブロリズマブの臨床試験において、最も一般的なAE(患者の≧20%において報告される)は、疲労、筋骨格痛、食欲減退、そう痒、下痢、嘔気、発疹、発熱、咳、呼吸困難、便秘、疼痛、および腹痛(キイトルーダ(登録商標)(ペンブロリズマブ)[添付文書].Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ;2019)であった。これらの一般的なAEは,一般にグレード1~2であった。
【0245】
ペンブロリズマブは、免疫関連AEを引き起こし得る。幅広い範囲の免疫関連AE(しばしば、自己免疫疾患の形態で)は、低発生率で起こると予期される(同上)。CTCLにおけるペンブロリズマブのCITN経験において、AEは、6人の患者(2人はグレード2の患者であり、4人はグレード3の患者であった)において見られた免疫関連皮膚再燃反応(SSを有する患者(6/15;40%)において排他的に生じた)を除き、ペンブロリズマブの先行研究に見られたものと整合性がある(Khodadoust M、Rook AH、Porcu Pら、Pembrolizumab for treatment of relapsed/refractory mycosis fungoides and Sezary syndrome:clinical efficacy in a CITN multicenter phase 2 study.Blood.2016;128(22):181)。この試験に登録された参加者は、免疫関連AEの徴候と症状についてモニタリングされ、必要に応じて、出版されているガイドラインに従ってステロイドおよび他の支持的手段によって処置され得る(Brahmer JR、Lacchetti C、Schneider BJら、Management of Immune-Related Adverse Events in Patients Treated with Immune Checkpoint Inhibitor Therapy:American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline.Journal of Clinical Oncology 2018 36:17,1714-1768.)。ペンブロリズマブは、重篤な、または生命を脅かすインフュージョン関連反応(過敏症およびアナフィラキシーを含む)を引き起こし得、それらはペンブロリズマブを受けた2799人の患者のうち6人(0.2%)で報告されている(キイトルーダ(登録商標)(ペンブロリズマブ)[添付文書].Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ;2019)。この試験に登録された参加者は、硬直、悪寒、喘鳴、そう痒、潮紅、発疹、低血圧、低酸素血症、および発熱を含む、インフュージョン関連反応の徴候と症状についてモニタリングされるであろう。
【0246】
この試験における主要な目的は、再発性または難治性皮膚T細胞リンパ腫(R/R CTCL(relapsed or refractory cutaneous T-cell lymphoma))を有する参加者において、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)デバイス(DoseConnect)によって投与されたペンブロリズマブの薬力学的効果を評価することである。エンドポイントは、T細胞疲弊マーカー(例えば、腫瘍組織における悪性CD4+および腫瘍浸潤CD8T細胞中のPD-1、Lag-3、Tim-3、およびICOS);腫瘍組織におけるペンブロリズマブの検出;および腫瘍組織におけるKi67発現を含む。
【0247】
二次的な目的には、(1)R/R CTCLを有する参加者において、DoseConnectによって投与されたペンブロリズマブの安全性を評価すること(エンドポイントには、有害事象(AE)の種類、頻度、および重症度、ならびにAEと試験介入の関係が含まれ;深刻な有害事象(SAE)を含む;および(2)R/R CTCLを有する参加者において、DoseConnectによって投与されたペンブロリズマブのPKを評価すること(エンドポイントには、ペンブロリズマブのPKパラメーターであるCmax、Tmax、AUC、およびt1/2が含まれる)。
【0248】
探索的な目的には、(1)R/R CTCLを有する参加者において、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)によって投与されたペンブロリズマブの活性を評価すること(エンドポイントは、GRS(Global Response Score)に従って研究者によって評価された奏効率(ORR(Objective Response Rate))(Olsen EA、Whittaker S、Kim YHら、Clinical end points and response criteria in mycosis fungoides and Sezary syndrome:a consensus statement of the International Society for Cutaneous Lymphomas,the United States Cutaneous Lymphoma Consortium,and the Cutaneous Lymphoma Task Force of the European Organisation for Research and Treatment of Cancer.J Clin Oncol.2011;29(18):2598-2607(参照によって本明細書に援用される));GRSに従って研究者によって評価された奏効期間(DOR(Duration of Response));mSWAT(Modified Severity Weighted Assessment Tool)に基づく皮膚におけるORR;CAILS(Composite Assessment of Index Lesion Severity)スコアに基づく皮膚におけるORR;およびベースラインにおいて検出可能なセザリーカウントを有する参加者における末梢セザリーカウントの減少を含む);(2)CTCLを有する参加者における、DoseConnectによって投与されたペンブロリズマブの追加の薬力学的効果を評価すること(エンドポイントは、血液におけるKi67発現;血液におけるペンブロリズマブの受容体占有率;および応答、安全性、PKに関連するリンパ流の分析を含む);(3)DoseConnectの使用に関連する任意の疼痛を評価すること(エンドポイントは、視覚的アナログスケール(VAS(Visual Analog Scale))を使用した、DoseConnectの使用に伴う疼痛の評価を含む);(4)DoseConnectの使用に関連する皮膚刺激を評価すること(エンドポイントは、修正ドレイズスケールを使用した、DoseConnect適用部位における皮膚刺激の評価を含む)が含まれる。
【0249】
全体的なデザインは、再発性または難治性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を有する参加者において、DoseConnectを使用してリンパ管内投与されたペンブロリズマブの薬力学、薬物動態(PK)、安全性、および活性を研究するための、非盲検単一施設パイロット試験であろう。全ての参加者は、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)リンパ管内投与されたペンブロリズマブの試験介入を受けるであろう。本試験は、スクリーニング期間、処置期間、および延長処置期間からなるであろう。適格性判定のためのスクリーニング期間は、参加者の書面によるインフォームドコンセントと同時に始まる。全てのスクリーニング評価は、サイクル1の開始前28日以内に完了しなければならない。処置期間は、試験介入の最初の投薬で始まる。各サイクルは、21日/3週間であろう。適格な参加者は、最初の2サイクルとして、毎週(Q1W)、DoseConnectを使用してリンパ管内投与されたペンブロリズマブを受け、次いで、研究者の決定によって、ペンブロリズマブのQ1W投薬を継続するか、またはサイクル3から始まる3週間ごと(Q3W)のペンブロリズマブ投薬に切り替えるかのいずれかであろう。8サイクルの処置を完了した参加者は、以下のいずれかを選択し得る:a.試験を打ち切り、静脈内投与される抗PD-1抗体剤を含み得る標準療法処置を受ける、またはb.スポンサーの合意を得て、延長処置期間に入り、PD(進行)、許容できない毒性、死亡、追跡不能、同意の撤回、またはスポンサーによる試験の終了まで、試験介入(DoseConnectによって投与されるペンブロリズマブQ1WまたはペンブロリズマブQ3W)を継続して受ける。
【0250】
全ての参加者は、試験介入の最後の投薬後28日(+3日)における試験終了時(EOS(End of Study))来院のための場所に戻るであろう。
【0251】
投薬前第1日サイクル1、ならびに1)意図されるDoseConnect配置に近いCTCL病変(皮膚またはリンパ節[LN])および2)もしあれば、意図されるデバイス配置から遠いか、またはデバイス配置が意図されるそれぞれの腕/脚の反対側の体肢に位置する病変の投薬後第1日サイクル2において、皮膚穿孔/コア針バイオプシーが行われるであろう。好ましいDoseConnect配置は、大腿を除く、上部または下部末端に対するものである。これらのバイオプシーのタイムポイントにおいて、DoseConnectが同じ位置に置かれ、かつ同じ2つの病変がバイオプシーされることが好ましい。しかしながら、もしDoseConnectがベースラインタイムポイント後において異なる位置に配置しなければならない場合、バイオプシーは、そのタイムポイントにおけるデバイスの位置に基づいて行うべきである(DoseConnect配置からリンパ流の下流の1つの病変、および、もしあれば、下流ではない1つの病変)。
【0252】
試験介入投薬に先立ち、DoseConnectによって投与されたインドシアニングリーン(ICG)溶液を使用したリンパイメージングが行われ、記録されるであろう。リンパイメージングは、バイオプシーされるであろう標的腫瘍病変に向けた、またはからのリンパポンプ圧送速度を決定するために行われている。
【0253】
この試験は、市販のペンブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))(Merck)を使用するであろう。
【0254】
DoseConnectを使用したペンブロリズマブの投薬は、図16に示すようなものであろう。
【0255】
主要な有効性評価は、(1)皮膚における応答について、mSWAT(Modified Severity Weighted Assessment Tool)、(2)皮膚における応答について、Composite Assessment of Index Lesion Severity、(3)血液における応答について、セザリー細胞数についてのフローサイトメトリー、(4)皮膚の改善が>30%であるステージIBの疾患、ステージIIB~IVBの疾患、セザリー症候群(SS)、またはがん化菌状息肉症(MF)の参加者に対するPET/CTを含むであろう。スキャンは、ステージIBの参加者または皮膚の改善が<30%の参加者については必要ではなく、(5)応答の評価のためのGlobal Response Score。
【0256】
主要な安全性評価は、(1)薬物、デバイス、またはそれら両方に起因し得る有害事象、(2)臨床的実験室評価、(3)健康診断、(4)バイタルサイン、(5)心電図(ECG)、(6)眼科的検査(ぶどう膜炎の徴候または症候により臨床的に必要性が示される場合)、(7)インフュージョン関連反応についてのモニタリング、および(8)DoseConnectによる疼痛/皮膚刺激の評価、を含むであろう。
【0257】
主要な薬物動態学評価は、PKパラメーターのための血液サンプリングを含むであろう。
【0258】
主要な薬力学的評価は、(1)薬物動態パラメーターのための血液および腫瘍組織サンプリング、および(2)リンパ流を評価するための、DoseConnectを使用したICGによるリンパイメージング、を含むであろう。
【0259】
この試験において、ペンブロリズマブは、もしペンブロリズマブのリンパ管送達が実行可能であれば、ペンブロリズマブは、腫瘍組織における薬力学的評価によって評価するために、CTCLを有する患者においてDoseConnectによって投与されるであろう。CTCLの選択は、薬力学的測定のための腫瘍細胞の到達性に基づく。
【0260】
計画されたサンプルサイズは、参加者10人である。安全性のために、最初の5人の参加者について、登録のペースは、3週間ごと、または3週間超ごとに1人の参加者であろう。さらなる5人の参加者は、最初の5人の参加者からのデータの審査に基づいて、DRCが許容可能と判断した場合にのみ登録されるであろう。もし試験実施中のいずれかの時点において、薬物もしくはデバイスのいずれかに起因し得る≧グレード3のAE、または≧1週間続き、かつデバイスに起因し得る≧グレード2のAEが報告された場合、登録は停止され、データを審査し、試験実施の方針を決定するために、DRCが招集されるであろう。
【0261】
この臨床試験は、SOFUSA(登録商標)による薬物投与の実施可能性を評価し、抗PD-1剤のリンパ管投与の生物学的効果に関する予備的なデータを取得することを意図したパイロット試験である。バイオマーカー評価のプライマリーエンドポイントは、抗PD-1剤がDoseConnectによって投与された場合の生物学的活性の予備的なエビデンスを提供するために選択される。腫瘍組織における悪性CD4+および腫瘍浸潤CD8T細胞中の選択されたバイオマーカーであるT細胞疲弊マーカーPD-1、Lag-3、Tim-3、およびICOSは、CTCLを含む多くの悪性腫瘍において、以前に研究されている(Querfeld C、Zain JM、Wakefield DLら、Phase 1/2 Trial of Durvalumab and Lenalidomide in Patients with Cutaneous T Cell Lymphoma(CTCL):Preliminary Results of Phase I Results and Correlative Studies,Blood 2018a 132:2931;Querfeld C(2018b,December).Phase 1/2 Trial of Durvalumab and Lenalidomide in Patients with Cutaneous T Cell Lymphoma(CTCL):Preliminary Results of Phase I Results and Correlative Studies.Oral presentation at the annual meeting of the American Society of Hematology.San Diego,CA)。さらに、腫瘍組織におけるペンブロリズマブの検出は、SOFUSA(登録商標)投与が、静脈内または他の全身投与方法と比較して、リンパ節および腫瘍組織においてより高い薬物レベルをもたらし得る前臨床モデルにおける以前の観察に基づくものである。腫瘍母地および末梢血におけるKi67は、抗PD-1療法後に検出され得(Kamphorst AO、Pillai RN、Yang S、Nasti TH、Akondy RS、Wieland A、Sica GL、Yu K、Koenig L、Patel NT、Behera M、Wu H、McCausland M、Chen Z、Zhang C、Khuri FR、Owonikoko TK、Ahmed R、Ramalingam SS.Proliferation of PD-1+CD8 T cells in peripheral blood after PD-1-targeted therapy in lung cancer patients.Proc Natl Acad Sci U S A.2017 May 9;114(19):4993-4998)、DoseConnectを使用したペンブロリズマブ処置の全身性の、おそらくはアブスコパル効果の1つの基準として選択された。ペンブロリズマブの送達は、DoseConnectを使用したリンパ管によるものであろうが、リンパ系は静脈系に接続されているため、リンパ管内投与された薬物は、最終的には血液内に現れ、したがって、血液における薬物動態学的および薬力学的測定が可能になることが期待される。
【0262】
実施例7.抗PD-1(STI-2949)抗体のSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)送達は、Sprague DawleyラットにおけるI.V.投与と比較して69%のバイオアベイラビリティーをもたらす。
体重約165グラムのSprague Dawleyラットに、単回用量の1mgの抗PD1モノクローナル抗体STI-2949(Sorrento Pharmaceuticals;本明細書ではSTI-A1110とも呼ばれる)を静脈内(i.v.)またはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を使用して投与した。
【0263】
投与後、図17Aに示す時点で7日間血清を採取した。
【0264】
血清中の抗PD1濃度を、すべて同じ血清希釈でPD1被覆プレートを用いたELISAを用いて決定した。
【0265】
図17Aに示すように、SOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投与後、平均抗PD1血清バイオアベイラビリティーは、評価した期間にわたって69.09%であった。図17Bは、すべての個々の動物(aniumals)に対するデータを示す。
【0266】
実施例8.蛍光タグ化抗PD-1(STI-2949)抗体のSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)送達は、注射24時間後に流入領域リンパ節濃度を増加させながら血中濃度を低下させる。
抗PD1抗体STI-2949をAlexaFluor 647で蛍光標識し、腹腔内(i.p.)およびSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を介してマウスに投与した。24時間後、血液、流入領域リンパ節および非流入領域リンパ節をマウスから採取した。蛍光標識された抗PD1抗体の放射輝度レベルを、血液、流入領域リンパ節および非流入領域リンパ節において評価した。
【0267】
図18Aに示されるように、蛍光タグ化抗PD1(STI-2949)抗体のSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)送達は、i.p.投与と比較して、およそ2倍低い血液濃度をもたらす。さらに、図18Aに示されるように、蛍光タグ化抗PD1(STI-2949)抗体のSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)送達は、i.p.投与と比較して、およそ3倍増大した流入領域リンパ節をもたらす。
【0268】
実施例9.腫瘍流入領域リンパ節への抗PD-1抗体のSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)媒介送達は、MC38結腸癌腫モデルにおける用量減少を可能にする。
図19Aに概略的に示すように、マウスにMC38腫瘍細胞を接種し、その後、移植の4、7、および10日後に、10mg/kg、5mg/kg、または1mg/kgのモノクローナル抗PD1(BB9クローン、Sorrento Pharmaceuticals)を腹腔内またはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を介して投与した。抗PD1 BB9クローンは、2020年6月26日に出願された米国仮特許出願第63/044,808号に記載されており、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0269】
マウスを安楽死させ、移植の13日後に腫瘍組織を採取した。
【0270】
図19Bに示すように、マウスに10mg/kgまたは5mg/kgの抗PD1 BB9を腹腔内またはSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)を介して投与した場合、腫瘍増殖阻害の有効性は類似していた。しかし、試験した最低用量の1mg/kgでの抗PD1のSOFUSA(登録商標)DoseConnect(商標)投与は、腹腔内投与した同じ用量と比較して、腫瘍増殖阻害を約50倍増加させた。図19Bに示すグラフでは、腫瘍増殖阻害率が高いほど腫瘍が小さくなる。
【0271】
これらの種々の実施例の態様は、それらが明らかに相互排他的である場合を除き、本開示において明確に組み合わされていない場合であっても、全て互いに組み合わされ得る。例えば、特定の医薬製剤は、より一般的に特定されている量の成分を含んでいてもよく、または本明細書に記載されているいかなる方法で投与してもよい。
【0272】
さらに、種々の例示的な材料が、本明細書で議論され、かつ例として、適した材料として、および、例えば、用語「含む(including)」または「など(such as)」の使用によって、材料のより一般的に記載されている種類の中に含まれる材料として特定されている。全てのこのような用語は、例示されているが、明示的には特定されていない、同じ一般的種類の範囲内に入る他の材料もまた、同様に本開示において使用し得るように、非限定的に使用される。
【0273】
上記で開示されている主題は、例示的かつ非限定的であるとみなされるべきであり、また、添付の特許請求の範囲は、全てのそのような改変、増強、および本開示の真の趣旨および範囲内に入る他の実施形態を包含することが意図されている。よって、法律によって許容される最大限まで、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその等価物の最も広い許容し得る解釈によって決定されるべきであり、上記の詳細な説明によって制限または限定されるべきではない。
【0274】
本明細書において種々の特許、特許出願および公開が引用されており、それらの内容は、その全体が、本明細書に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
【国際調査報告】