(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】脈管の治療におけるパルス化電場の印加
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240614BHJP
A61N 1/32 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61B18/14
A61N1/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575833
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 US2022032981
(87)【国際公開番号】W WO2022261418
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244964
【氏名又は名称】ガルヴァナイズ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジルアード, スティーブン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ワルドストライカー, ジョナサン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ニール, ロバート イー. ザ セカンド
【テーマコード(参考)】
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ05
4C053JJ21
4C053JJ32
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK18
4C160KK23
4C160KK38
4C160KK39
4C160MM33
4C160MM34
(57)【要約】
特殊化パルス化電場(PEF)エネルギー、および随意に、療法剤を、特に、脈管内の標的組織エリアに送達することによって、損傷した、罹患した、異常な、閉塞性、所望されない、または潜在的に所望されない組織を治療するためのデバイス、システム、および方法が、提供される。療法は、様々な条件、特に、アテローム性動脈硬化および狭心症等の血管系の条件を治療するために使用され得る。いったん標的組織エリアが、血管攣縮と関連付けられるものとして識別されると、標的組織エリアは、PEFエネルギーで治療される。随意に、1つまたはそれを上回る作用物質が、治療と併せて、同様に送達されることができる。主要な焦点は、冠動脈を治療することであるが、そのような治療は、末梢脈管を含む、脈管の他の部分に適用可能であり得る。同様に、そのような治療は、他の身体管腔に適用可能であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を治療するためのシステムであって、
エネルギー送達カテーテルであって、前記エネルギー送達カテーテルは、前記血管内またはその近傍に位置付け可能なエネルギー送達本体を備える、エネルギー送達カテーテルと、
前記エネルギー送達本体と電気連通するジェネレータであって、前記ジェネレータは、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、エネルギーが、前記血管の血管収縮する能力を減少させる、または排除する様式において、前記血管の細胞外マトリクスを維持しながら、前記血管の細胞を治療するように、パルス化電場エネルギーを前記エネルギー送達本体に提供する、ジェネレータと
を備える、システム。
【請求項2】
治療することは、前記細胞を除去する、破壊する、または死滅させることを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記細胞は、前記血管の血管収縮に関与する血管平滑筋細胞を備える、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
治療することは、前記血管平滑筋細胞への局所神経支配を途絶させることを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
局所神経支配を途絶させることは、狭心痛症状に寄与する少なくとも1つの迷走神経求心性線維を通した攣縮の局所エリアからの神経経路を途絶させることを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記細胞は、内皮細胞を備え、細胞外層を維持することは、前記血管の内皮層の再生につながる、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記エネルギー送達カテーテルは、流体を送達するように構成される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記流体は、伝導性溶液を備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記エネルギー送達カテーテルは、前記流体が仮想電極として作用するような様式において前記エネルギーおよび前記流体を送達するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記アルゴリズムは、前記流体が仮想電極として作用するようなタイミングシーケンスにおいて前記エネルギーおよび前記流体の送達をトリガするように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記流体は、作用物質を備える、請求項7-10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記作用物質は、化学物質、薬物、薬品、化学療法剤、免疫療法剤、ミセル、リポソーム、塞栓剤、ナノ粒子、薬物溶出粒子、遺伝子、プラスミド、タンパク質、またはこれらの組み合わせを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
治療することは、前記細胞に前記作用物質を取り込ませることを含む、請求項11-12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記作用物質の取り込みは、前記細胞の過形成再成長を阻害する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記エネルギー送達本体は、少なくとも1つの電極を囲繞する拡張可能部材を備える、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記エネルギー送達本体は、シャフトを備え、前記少なくとも1つの電極は、前記シャフトに沿って配置される複数の電極を備え、前記拡張可能部材は、前記複数の電極を囲繞する伸長拡張可能部材を備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記拡張可能部材は、流体を浸出させるように構成される、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記エネルギー送達本体は、それを通して流体が前記拡張可能部材から浸出するように送達可能である前記拡張可能部材内の少なくとも1つのポートを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記エネルギー送達本体は、複数のリボンまたはワイヤによって形成される電極を備える、請求項1-14のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記エネルギー送達本体は、1つまたはそれを上回る突出部を備え、各突出部は、前記エネルギー送達カテーテルの縦方向軸から半径方向に外向きに屈曲する、請求項1-14のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記1つまたはそれを上回る突出部は、1つまたはそれを上回る突起を備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、
a)500~3,000Vの範囲内の電圧と、
b)100~800kHzの範囲内の周波数と、
c)25~250μ秒の範囲内の合計オン時間と、
d)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットと
のうちの1つまたはそれを上回るものを含む波形から発生される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項23】
前記電圧は、2,000~2,500Vの範囲内である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記周波数は、400~600kHzの範囲内である、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記合計オン時間は、50~150μ秒の範囲内である、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
電極活性化あたりのパケットは、1~10パケットの範囲内である、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前記パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、
a)1,000~6,000Vの範囲内の電圧と、
b)10~500kHzの範囲内の周波数と、
c)50~500μ秒の範囲内の合計オン時間と、
d)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットと
のうちの1つまたはそれを上回るものを含む波形から発生される、請求項1-21のいずれかに記載のシステム。
【請求項28】
前記パルス化電場エネルギーは、石灰化の途絶を引き起こす、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記電圧は、2,000~4,000Vの範囲内である、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記周波数は、50~250kHzの範囲内である、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記合計オン時間は、75~150μ秒の範囲内である、請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
血管攣縮を治療するためのシステムであって、
エネルギー送達カテーテルであって、前記エネルギー送達カテーテルは、筋組織上またはその近傍に位置付け可能なエネルギー送達本体を備える、エネルギー送達カテーテルと、
前記エネルギー送達本体と電気連通するジェネレータであって、前記ジェネレータは、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、エネルギーが、前記血管攣縮を引き起こす局部的な機械的力を置換または排除するように前記筋組織を修正するように、パルス化電場エネルギーを前記エネルギー送達本体に提供する、ジェネレータと
を備える、システム。
【請求項33】
前記エネルギー送達カテーテルは、流体を送達するように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記流体は、伝導性溶液を備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記エネルギー送達カテーテルは、前記流体が仮想電極として作用するような様式において前記エネルギーおよび前記流体を送達するように構成される、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記アルゴリズムは、前記流体が仮想電極として作用するようなタイミングシーケンスにおいて前記エネルギーおよび前記流体の送達をトリガするように構成される、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記流体は、作用物質を備える、請求項33-36のいずれかに記載のシステム。
【請求項38】
前記作用物質は、化学物質、薬物、薬品、化学療法剤、免疫療法剤、ミセル、リポソーム、塞栓剤、ナノ粒子、薬物溶出粒子、遺伝子、プラスミド、タンパク質、またはこれらの組み合わせを備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
治療することは、前記細胞に前記作用物質を取り込ませることを含む、請求項37-38のいずれかに記載のシステム。
【請求項40】
前記パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、
a)500~3,000Vの範囲内の電圧と、
b)100~800kHzの範囲内の周波数と、
c)25~250μ秒の範囲内の合計オン時間と、
d)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットと
のうちの1つまたはそれを上回るものを含む波形から発生される、請求項32-39のいずれかに記載のシステム。
【請求項41】
前記電圧は、2,000~2,500Vの範囲内である、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記周波数は、400~600kHzの範囲内である、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
前記合計オン時間は、50~150μ秒の範囲内である、請求項40に記載のシステム。
【請求項44】
前記電極活性化あたりのパケットは、1~10パケットの範囲内である、請求項40に記載のシステム。
【請求項45】
狭心痛症状を治療するためのシステムであって、
エネルギー送達カテーテルであって、前記エネルギー送達カテーテルは、血管内またはその近傍に位置付け可能なエネルギー送達本体を備える、エネルギー送達カテーテルと、
前記エネルギー送達本体と電気連通するジェネレータであって、前記ジェネレータは、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、パルス化電場エネルギーが、前記狭心痛症状に寄与する少なくとも1つの迷走神経求心性線維を通した神経経路を途絶させるように、前記パルス化電場エネルギーを前記エネルギー送達本体に提供する、ジェネレータと
を備える、システム。
【請求項46】
前記神経経路は、前記狭心痛症状と関連付けられる血管の血管平滑筋細胞を神経支配する、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
血管の一部を治療するためのシステムであって、
前記血管の一部の近傍に位置付け可能な電極と、
前記電極と電気連通するジェネレータであって、前記ジェネレータは、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、エネルギーが、前記血管の一部を治療するように、パルス化電場エネルギーを前記電極に提供する、ジェネレータと
を備える、システム。
【請求項48】
前記パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、
a)500~3,000Vの範囲内の電圧と、
b)100~800kHzの範囲内の周波数と、
c)25~250μ秒の範囲内の合計オン時間と、
d)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットと
のうちの1つまたはそれを上回るものを含む波形から発生される、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、
a)1,000~6,000Vの範囲内の電圧と、
b)10~500kHzの範囲内の周波数と、
c)50~500μ秒の範囲内の合計オン時間と、
d)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットと
のうちの1つまたはそれを上回るものを含む波形から発生される、請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
前記エネルギー送達本体は、少なくとも1つの電極を囲繞する拡張可能部材を備える、請求項47-49のいずれかに記載のシステム。
【請求項51】
前記エネルギー送達本体は、シャフトを備え、前記少なくとも1つの電極は、前記シャフトに沿って配置される複数の電極を備え、前記拡張可能部材は、前記複数の電極を囲繞する伸長拡張可能部材を備える、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
血管を治療する方法であって、
前記血管内またはその近傍にエネルギー送達カテーテルのエネルギー送達本体を位置付けることと、
エネルギーが、前記血管の血管収縮する能力を減少させる、または排除する様式において、前記血管の細胞外マトリクスを維持しながら、前記血管の細胞を治療するように、前記パルス化電場エネルギーを前記エネルギー送達本体に送達することと
を含む、方法。
【請求項53】
血管攣縮を治療するための方法であって、
心臓心筋上またはその近傍にエネルギー送達カテーテルのエネルギー送達本体を位置付けることと、
エネルギーが、前記血管攣縮を引き起こす局部的な機械的力を置換または排除するように、前記心臓心筋を修正するように、前記パルス化電場エネルギーを前記エネルギー送達本体に送達することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年6月10日に出願され、「APPLYING PULSED ELECTRIC FIELDS IN THE TREATMENT OF THE VASCULATURE」と題された、米国仮特許出願第63/209,319号の優先権および利益を主張するものであり、前述の出願の開示は、あらゆる目的のために、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
狭心症は、不快感、圧迫感、締め付け、灼熱感、または膨満感によって特徴付けられる、胸部痛のタイプである。加えて、疼痛は、腕、首、顎、肩、または背中に及び得る。同様に、眩暈、疲労、吐き気、息切れ、および発汗等の他の症状も、存在し得る。狭心症は、疾患ではないが、根底にある心臓の問題の兆候である。
【0003】
安定狭心症(胸部狭心症)、不安定狭心症、異型狭心症、および微小血管狭心症を含む、複数のタイプの狭心症が、存在する。安定狭心症は、最も一般的な形態の狭心症であり、冠動脈疾患に起因する。冠動脈疾患は、心臓に供給する主要な血管が損傷または罹患した状態になるときに発症する。これは、典型的には、経時的に蓄積し、動脈を狭化させる、プラークとして公知のコレステロール含有沈着物によって引き起こされる。これは、血流を減少させ、最終的に、低減された血流は、狭心症および他の症状を引き起こす。完全な遮断は、心臓発作を引き起こし得る。
【0004】
不安定狭心症は、動脈を部分的または完全に遮断する、凝血塊によって引き起こされる。凝血塊は、形成され、部分的に溶解し、後で再び形成され得、狭心症が、凝血塊が動脈内の血流を遮断する度に生じ得る。したがって、不安定狭心症は、典型的には、予期せぬ胸部痛を引き起こす。凝血塊は、典型的には、冠動脈血管への傷害を引き起こし、血液凝固をもたらす、狭化された冠動脈の破裂によって引き起こされる。
【0005】
異型狭心症はまた、プリンツメタル狭心症、プリンツメタル異型狭心症、および冠攣縮性狭心症として公知である。異型狭心症からの疼痛は、血液を心筋に供給する冠動脈における攣縮によって引き起こされる。冠動脈は、寒冷気候への暴露、ストレス、血管を締め付ける、または狭化させる薬品、喫煙、およびコカイン使用の結果として攣縮し得る。
【0006】
微小血管狭心症は、典型的には、冠動脈微小血管疾患(MVD)の症状である。冠動脈MVD(時として、小動脈疾患または小血管疾患と呼ばれる)は、より大きい冠動脈から分岐する微小冠動脈血管の壁および内側膜に影響を及ぼす、心疾患である。冠動脈MVDでは、冠動脈血管は、プラークを有していないが、血管の内壁に損傷を及ぼし、これは、攣縮および心筋への減少された血流につながり得る。加えて、主要な冠動脈から分岐するより小さい動脈における異常もまた、冠動脈MVDに寄与し得る。
【0007】
狭心症に関する種々の従来の治療選択肢が、存在する。安定狭心症では、不快な症状は、通常、予測可能かつ管理可能である。通常、本タイプの胸部不快感は、安静、ニトログリセリン、または両方で緩和される。ニトログリセリンは、冠動脈および他の血管を弛緩させ、心臓に戻る血液の量を低減させ、心臓の負荷を軽減する。冠動脈を弛緩させることによって、これは、心臓への血液供給を増加させる。
【0008】
安定狭心症は、不安定狭心症に発展し得、これは、典型的には、胸部痛をより容易かつより頻繁に感じることとして認識される。不安定狭心症のための治療は、緊急事態であり、凝血塊または閉鎖された動脈を位置特定し、それを通した血流を再確立することを伴う。いくつかの事例では、経皮的冠動脈介入(PCI)が、遮断された冠動脈を開放するために要求され得る。簡潔に言うと、本手技は、バルーン血管形成術のための心臓カテーテル留置を受けることを伴う。先端に小さい膨張可能バルーンを伴うカテーテルを使用して、バルーンは、冠動脈の内側膜上に位置する脂肪プラーク沈着物を圧縮するように膨張される。本手技は、多くの場合、ステントの挿入が続き、次いで、冠動脈血管が支えられて開放する状態を保ち、心筋への改善された血流を可能にする。しかしながら、直径の増加は、内皮の剥脱、内弾性膜および中膜の途絶、および中膜内の平滑筋細胞(SMC)の約20%の損傷をもたらし得る。ステントは、これを開放状態に保持するために、狭窄エリア内で拡張されるように設計される。しかしながら、ステントはまた、正常な脈管の途絶につながる。ステントを用いて血管壁を拡張させるための血管形成術の使用は、前述で説明されるものに類似する効果を有し、自己拡張ステントは、半径方向力に起因して拡張し続け、内皮機能に対する擾乱を長引かせ得る。さらに、ステントは、静電平衡を擾乱し、動脈の2つの重要な機械的性質である、血管攣縮および弾性反跳を妨げ得る。
【0009】
血管形成術およびステント術からの血管アーキテクチャおよび細胞の変化は、血管の医原性傷害応答に起因する介入の部位における血管の再狭化である、再狭窄の発症につながり得る。本問題はまた、末梢脈管において存在する。再狭窄は、2つの主要なプロセス、すなわち、動脈リモデリングおよび新生内膜過形成を伴う。動脈リモデリングは、自然な代償性応答であり、動脈は、プラーク形成に応答して拡大し、血管狭化を低減させる。しかしながら、血管形成術に応答して、負のリモデリングが、血管収縮につながり、血管管腔全体を低減させ得る。これは、血管形成術再狭窄に関する主要な機構であると考えられる一方、ステント内再狭窄は、主として、新生内膜過形成からもたらされると思われる。血管形成術およびステント挿入からの損傷した内皮細胞はさらに、平滑筋細胞成長を阻害することが公知である化学物質である、それらの一酸化窒素生産を減少させることによって、平滑筋細胞増殖および遊走に寄与し得る。
【0010】
他の事例では、冠動脈バイパスグラフト外科手術が、冠動脈遮断の範囲および病歴に応じて、利用され得る。本手技では、血管が、開胸外科手術技法における移植を使用して、動脈の遮断部分の周囲に血液を経路指定するために使用される。残念ながら、グラフト源は、ドナー部位の罹患を引き起こす、移植に関して不適正な血管アーキテクチャを有し得る、または複数の血管再建手技のために不十分であり得る。付加的開胸外科手術技法は、罹患した血管領域が暴露され、プラークが物理的に除去される、動脈内膜切除術である。しかしながら、本技法もまた、非常に侵襲性であり、発作、大量出血、および脳神経への損傷のリスクを伴う。
【0011】
異型狭心症および微小血管狭心症は、攣縮によって引き起こされるため、これらの条件は、典型的には、攣縮を制御するための薬品を用いて治療される。カルシウム拮抗剤および硝酸塩等の薬物が、治療の中心である。
【0012】
典型的な抗狭心症薬物療法は、βアドレナリン作動性受容体遮断薬(ベータ遮断薬)、カルシウムチャネル遮断薬、および短時間作用型ニトログリセリンを含む。ベータ遮断薬は、狭心症エピソードの発生を低減させ、虚血閾値を改善し、さらには可能性として考えられる抗酸化効果を通して一部の患者における内皮機能を改善することができるが、これは、臨床設定において広く証明されていないままである。薬物クラスの選定は、患者の耐用性および選好、禁忌、および併存症の存在に依存し、血管攣縮性狭心症を患う患者に関して推奨されない。また、突然の中止は、リバウンド心筋虚血をもたらし得る。
【0013】
カルシウムチャネル遮断薬は、後負荷を低減させ、心筋血流を増加させる一方、心拍数および収縮性を低減させる。全身的および冠動脈血管拡張が、L型Ca2+受容体との相互作用を通して達成される。長時間作用型調剤薬を使用することが、好ましく、非ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬に関する禁忌は、ベータ遮断薬に関するものに類似する。
【0014】
有機硝酸塩は、冠動脈流動を維持または増加させながら、心筋酸素需要を低減させることができ、胸部狭心症に関する長年の治療法である。それらの安全性プロファイルは、それらがベータアドレナリン作動性またはカルシウムチャネル遮断薬の両方と併用されることを可能にするが、いくつかの研究は、胸部痛を患い、閉塞性冠動脈疾患のない患者において利益がないことを報告している。経口硝酸塩を伴う治療は、個人化されたアプローチを必要とする。通常、狭心症の症状は、特に、舌下硝酸塩から利益を享受する患者において、経口硝酸塩療法で改善するであろう。一部の患者では、狭心症は、おそらく、側副血管の血管拡張による盗流現象に起因して、悪化し得る。一部の患者は、副作用のため、スタチンに耐性がない場合がある。スタチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)、および低用量アスピリンもまた、微小血管内皮機能障害を治療することを目標とする冠動脈微小血管機能障害に関する現在の薬理学である。運動誘発性虚血および血流依存性血管拡張を患う患者は、スタチン療法に応答し、観察される有益な効果は、改善された内皮機能に起因すると見なされる。ACE-I投薬は、MVAを患う患者において、本患者集団における冠血流予備比の改善を伴って効果的である。患者が、ACE-Iに耐えられない場合、アンジオテンシン受容体遮断薬が、代替となるが、冠動脈微小血管機能障害患者下位群に関して本療法が効果的であり得る程度に関するいかなるデータも、存在しない。加えて、インスリン抵抗性を伴う患者に関して、メトホルミン投与が、微小血管機能を増加させる際に効果的である。三環系薬品である、イミプラミンもまた、胸部痛を患い、閉塞性冠動脈疾患のない患者の症状を改善したが、これは、内臓鎮痛効果に起因すると考えられた。アスピリンは、冠動脈疾患を患う患者において有益であり得るが、冠動脈疾患が、除外されると、アスピリンを伴う治療を支援するためのいかなる証拠も、存在しない。この場合では、出血事象のリスクは、いかなる理論上の利益も上回る。MVAを患う個人に関して、おそらく、MVAの原因に関する知識のギャップおよび利用可能な薬物治療への患者応答の不一致のため、具体的クラスの薬物または併用療法、または療法および技術を支援する、いかなる確証も、存在しない。
【0015】
殆どのタイプの狭心症は、それら自体が、または根本的な慢性疾患に基づいてのいずれかで、慢性条件である。同様に、アテローム性動脈硬化は、典型的には、慢性および進行性である。種々の治療が、別個に、または組み合わせてのいずれかで、これらの条件毎に利用可能であるが、そのような治療は、リスク、有害効果を含み、典型的には、治癒的ではなく、継続的な治療を伴う。したがって、これらの条件および血管条件の治療における改善が、所望される。そのような治療は、安全であり、効果的であり、低減された合併症につながるべきである。これらの目的のうちの少なくともいくつかが、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法によって満たされるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書に説明されるものは、標的組織を治療するための装置、システム、および方法の実施形態である。同様に、本発明は、以下の付番された付記に関する。
【0017】
第1の側面では、血管内またはその近傍に位置付け可能なエネルギー送達本体を備える、エネルギー送達カテーテルと、エネルギー送達本体と電気連通する、ジェネレータであって、エネルギーが、血管の血管収縮する能力を減少させる、または排除する様式において、血管の細胞外マトリクスを維持しながら、血管の細胞を治療するように、パルス化電場エネルギーをエネルギー送達本体に提供する、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む、ジェネレータとを備える、血管を治療するためのシステムが、提供される。近傍が、血管または血管の標的化部分等の標的組織が、所望の転帰を達成するような様式において、エネルギー送達本体から送達されるエネルギーを受け取ることが可能である距離にあることと見なされることを理解されたい。
【0018】
いくつかの実施形態では、治療することは、細胞を除去する、破壊する、または死滅させることを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、血管の血管収縮に関与する血管平滑筋細胞を備える。いくつかの実施形態では、治療することは、血管平滑筋細胞への局所神経支配を途絶させることを含む。随意に、局所神経支配を途絶させることは、狭心痛症状に寄与する少なくとも1つの迷走神経求心性線維を通した攣縮の局所エリアからの神経経路を途絶させることを含む。他の実施形態では、細胞は、内皮細胞を備え、細胞外層を維持することは、血管の内皮層の再生につながる。
【0019】
いくつかの実施形態では、エネルギー送達カテーテルは、流体を送達するように構成される。随意に、流体は、伝導性溶液を備える。いくつかの事例では、エネルギー送達カテーテルは、流体が仮想電極として作用するような様式においてエネルギーおよび流体を送達するように構成される。いくつかの事例では、アルゴリズムは、流体が仮想電極として作用するようなタイミングシーケンスにおいてエネルギーおよび流体の送達をトリガするように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、流体は、作用物質を備える。いくつかの実施形態では、作用物質は、化学物質、薬物、薬品、化学療法剤、免疫療法剤、ミセル、リポソーム、塞栓剤、ナノ粒子、薬物溶出粒子、遺伝子、プラスミド、タンパク質、またはこれらの組み合わせを備える。いくつかの実施形態では、治療することは、細胞に作用物質を取り込ませることを含む。いくつかの実施形態では、作用物質の取り込みは、細胞の過形成再成長を阻害する。
【0021】
いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体は、少なくとも1つの電極を囲繞する、拡張可能部材を備える。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体は、シャフトを備え、少なくとも1つの電極は、シャフトに沿って配置される、複数の電極を備え、拡張可能部材は、複数の電極を囲繞する、伸長拡張可能部材を備える。
【0022】
いくつかの実施形態では、拡張可能部材は、流体を浸出させるように構成される。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体は、それを通して流体が拡張可能部材から浸出するように送達可能である、拡張可能部材内の少なくとも1つのポートを含む。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体は、複数のリボンまたはワイヤによって形成される、電極を備える。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体は、1つまたはそれを上回る突出部を備え、各突出部は、エネルギー送達カテーテルの縦方向軸から半径方向に外向きに屈曲する。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る突出部は、1つまたはそれを上回る突起を備える。
【0023】
いくつかの実施形態では、パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、a)500~3,000Vの範囲内の電圧、b)100~800kHzの範囲内の周波数、c)25~250μ秒の範囲内の合計オン時間、およびd)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットのうちの1つまたはそれを上回るものを含む、波形から発生される。
【0024】
いくつかの実施形態では、電圧は、2,000~2,500Vの範囲内である。いくつかの実施形態では、周波数は、400~600kHzの範囲内である。いくつかの実施形態では、合計オン時間は、50~150μ秒の範囲内である。いくつかの実施形態では、電極活性化あたりのパケットは、1~10パケットの範囲内である。いくつかの実施形態では、パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、a)1,000~6,000Vの範囲内の電圧、b)10~500kHzの範囲内の周波数、c)50~500μ秒の範囲内の合計オン時間、およびd)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットのうちの1つまたはそれを上回るものを含む、波形から発生される。いくつかの実施形態では、パルス化電場エネルギーは、石灰化の途絶を引き起こす。いくつかの実施形態では、電圧は、2,000~4,000Vの範囲内である。いくつかの実施形態では、周波数は、50~250kHzの範囲内である。いくつかの実施形態では、合計オン時間は、75~150μ秒の範囲内である。
【0025】
第2の側面では、心臓心筋等の筋組織上またはその近傍に位置付け可能なエネルギー送達本体を備える、エネルギー送達カテーテルと、エネルギー送達本体と電気連通する、ジェネレータであって、エネルギーが、血管攣縮を引き起こす局部的な機械的力を置換または排除するように、筋組織を修正するように、パルス化電場エネルギーをエネルギー送達本体に提供する、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む、ジェネレータとを備える、血管攣縮を治療するためのシステムが、提供される。再び、近傍が、心臓心筋または心臓心筋の標的化部分等の標的組織が、所望の転帰を達成するような様式において、エネルギー送達本体から送達されるエネルギーを受け取ることが可能である距離にあることと見なされることを理解されたい。
【0026】
いくつかの実施形態では、エネルギー送達カテーテルは、流体を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、流体は、伝導性溶液を備える。いくつかの実施形態では、エネルギー送達カテーテルは、流体が仮想電極として作用するような様式においてエネルギーおよび流体を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、流体が仮想電極として作用するようなタイミングシーケンスにおいてエネルギーおよび流体の送達をトリガするように構成される。
【0027】
いくつかの実施形態では、流体は、作用物質を備える。いくつかの実施形態では、作用物質は、化学物質、薬物、薬品、化学療法剤、免疫療法剤、ミセル、リポソーム、塞栓剤、ナノ粒子、薬物溶出粒子、遺伝子、プラスミド、タンパク質、またはこれらの組み合わせを備える。いくつかの実施形態では、治療することは、細胞に作用物質を取り込ませることを含む。いくつかの実施形態では、パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、a)500~3,000Vの範囲内の電圧、b)100~800kHzの範囲内の周波数、c)25~250μ秒の範囲内の合計オン時間、およびd)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットのうちの1つまたはそれを上回るものを含む、波形から発生される。
【0028】
いくつかの実施形態では、電圧は、2,000~2,500Vの範囲内である。いくつかの実施形態では、周波数は、400~600kHzの範囲内である。いくつかの実施形態では、合計オン時間は、50~150μ秒の範囲内である。いくつかの実施形態では、電極活性化あたりのパケットは、1~10パケットの範囲内である。
【0029】
本発明の第3の側面では、血管内またはその近傍に位置付け可能なエネルギー送達本体を備える、エネルギー送達カテーテルと、エネルギー送達本体と電気連通する、ジェネレータであって、パルス化電場エネルギーが、狭心痛症状に寄与する少なくとも1つの迷走神経求心性線維を通した神経経路を途絶させるように、パルス化電場エネルギーをエネルギー送達本体に提供する、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む、ジェネレータとを備える、狭心痛症状を治療するためのシステムが、提供される。いくつかの実施形態では、神経経路は、狭心痛症状と関連付けられる血管の血管平滑筋細胞を神経支配する。
【0030】
本発明の第4の側面では、血管の一部の近傍に位置付け可能な電極と、電極と電気連通する、ジェネレータであって、エネルギーが、血管の一部を治療するように、パルス化電場エネルギーを電極に提供する、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む、ジェネレータとを備える、血管の一部を治療するためのシステムが、提供される。いくつかの実施形態では、パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、a)500~3,000Vの範囲内の電圧、b)100~800kHzの範囲内の周波数、c)25~250μ秒の範囲内の合計オン時間、およびd)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットのうちの1つまたはそれを上回るものを含む、波形から発生される。
【0031】
いくつかの実施形態では、パルス化電場エネルギーは、以下のパラメータ、すなわち、a)1,000~6,000Vの範囲内の電圧、b)10~500kHzの範囲内の周波数、c)50~500μ秒の範囲内の合計オン時間、およびd)1~30パケットの範囲内である電極活性化あたりのパケットのうちの1つまたはそれを上回るものを含む、波形から発生される。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体は、少なくとも1つの電極を囲繞する、拡張可能部材を備える。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体は、シャフトを備え、少なくとも1つの電極は、シャフトに沿って配置される、複数の電極を備え、拡張可能部材は、複数の電極を囲繞する、伸長拡張可能部材を備える。
【0032】
本発明の第6の側面では、血管内またはその近傍にエネルギー送達カテーテルのエネルギー送達本体を位置付けることと、エネルギーが、血管の血管収縮する能力を減少させる、または排除する様式において、血管の細胞外マトリクスを維持しながら、血管の細胞を治療するように、パルス化電場エネルギーをエネルギー送達本体に送達することとを含む、血管を治療するための方法が、提供される。
【0033】
本発明の第7の側面では、心臓心筋上またはその近傍にエネルギー送達カテーテルのエネルギー送達本体を位置付けることと、エネルギーが、血管攣縮を引き起こす局部的な機械的力を置換または排除するように、心臓心筋を修正するように、パルス化電場エネルギーをエネルギー送達本体に送達することとを含む、血管攣縮を治療するための方法が、提供される。
【0034】
これらおよび他の実施形態は、添付される図面の図に関連する以下の説明においてさらに詳細に説明される。
【0035】
(参照による組み込み)
本明細書に言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に参照することによって組み込まれることが示される場合と同程度に、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない図面では、同様の番号が、異なる図内の類似する構成要素を説明し得る。異なる文字添字を有する同様の番号が、類似する構成要素の異なる事例を表し得る。図面は、概して、限定としてではなく、実施例として、本書に議論される種々の実施形態を図示する。
【0037】
【
図1】
図1は、特殊化PEFエネルギーを脈管に送達する際の使用のための例示的療法システムの概観図示を提供する。
【0038】
【
図2】
図2は、複数の電極を囲繞する、伸長拡張可能部材から成る、エネルギー送達本体を有する、エネルギー送達カテーテルの実施形態を図示する。
【0039】
【
図3】
図3は、複数のリボンまたはワイヤによって形成される電極を備える、エネルギー送達本体を有する、エネルギー送達カテーテルの実施形態を図示する。
【0040】
【
図4】
図4-5は、各突出部が、カテーテルの縦方向軸またはシャフトから半径方向に外向きに屈曲する、1つまたはそれを上回る突出部を備える、エネルギー送達本体の実施形態を図示する。
【
図5】
図4-5は、各突出部が、カテーテルの縦方向軸またはシャフトから半径方向に外向きに屈曲する、1つまたはそれを上回る突出部を備える、エネルギー送達本体の実施形態を図示する。
【0041】
【
図6A】
図6A-6Bは、突出部として作用する、1つまたはそれを上回る突起を備える、エネルギー送達本体の実施形態を図示する。
【
図6B】
図6A-6Bは、突出部として作用する、1つまたはそれを上回る突起を備える、エネルギー送達本体の実施形態を図示する。
【0042】
【
図7】
図7は、血管内治療のために構成される形状を有する、エネルギー送達本体を備える、カテーテルの別の実施形態を図示する。
【0043】
【
図8】
図8-12は、エネルギー送達本体を通して、またはその近傍に作用物質を送達する、カテーテルの例示的実施形態を図示する。
【
図9】
図8-12は、エネルギー送達本体を通して、またはその近傍に作用物質を送達する、カテーテルの例示的実施形態を図示する。
【
図10】
図8-12は、エネルギー送達本体を通して、またはその近傍に作用物質を送達する、カテーテルの例示的実施形態を図示する。
【
図11】
図8-12は、エネルギー送達本体を通して、またはその近傍に作用物質を送達する、カテーテルの例示的実施形態を図示する。
【
図12】
図8-12は、エネルギー送達本体を通して、またはその近傍に作用物質を送達する、カテーテルの例示的実施形態を図示する。
【0044】
【
図13】
図13は、冠動脈の壁および壁に隣接して位置付けられるエネルギー送達本体の実施形態の概略図示を含む。
【0045】
【
図14】
図14は、エネルギー送達アルゴリズムによって処方される、信号の波形の実施形態を図示する。
【0046】
【
図15】
図15は、その間に切替時間を有する、二相性パルス(正のピークと、負のピークとを備える)の種々の実施例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
特殊化パルス化電場(PEF)エネルギー、および随意に、療法剤を、特に、脈管内の標的組織エリアに送達することによって、損傷した、罹患した、異常な、閉塞性、所望されない、または潜在的に所望されない組織を治療するためのデバイス、システム、および方法が、提供される。そのようなデバイス、システム、および方法は、主として、冠動脈を治療することに焦点を当てられるであろうが、そのような治療は、末梢脈管を含む、脈管の他の部分に適用可能であり得る。同様に、そのような治療は、他の身体管腔に適用可能であり得る。
【0048】
PEFエネルギーは、非熱的治療を生じさせるような様式において標的組織エリアに送達される(すなわち、エネルギーは、熱的アブレーションを引き起こすための閾値を下回る、または熱的療法転帰の臨床罹患に関与する細胞外タンパク質変性を引き起こすための閾値を下回る)。その結果、細胞外マトリクスが存在するとき、細胞外マトリクスは、保全され、標的化組織は、その構造的アーキテクチャを維持する。したがって、血管壁の一部は、保全されることが可能であり、これは、組織の完全性および機能性を維持することに対して重要である。これは、いくつかの利益を提供する。始めに、これは、多くの場合、従来の方法によって治療不可能と見なされる組織の治療を可能にする。敏感な構造の近傍にある標的組織は、典型的には、敏感な構造への近接に起因して、治療不可能と見なされる。同様に、多くの従来の療法は、療法による敏感な構造への損傷の潜在性に起因して、または療法が敏感な構造の近接に起因して効果的ではないと見なされるため、禁忌である。いったん組織が治療されると、構造的アーキテクチャの残存はまた、免疫系の成分等の生物学的要素の自然な流入または療法的治療を進めるための種々の作用物質の導入を可能にする。これは、後節においてより詳細に説明されるであろうようないくつかの治療利益を提供する。
【0049】
療法システムおよびデバイス
図1は、特殊化PEFエネルギーを脈管に送達する際の使用のための例示的療法システム100の概観図示を提供する。本実施形態では、システム100は、遠位端103と、近位端107とを有する、シャフト106を備える、エネルギー送達カテーテル102を備える。カテーテル102は、一般的に、シャフト106の遠位端103の近傍に破線の円として図示される、エネルギー送達本体108を含む。エネルギー送達本体108が、単一の表現の図面を妨げる構造的差異を有する、様々な形態をとり得るが、しかしながら、個々の例示的実施形態が、本明細書に説明および図示されるであろうことを理解されたい。エネルギー送達本体108は、外部から可視であるように、シャフト106の外部上に搭載される、またはそれと一体的であってもよい。または、エネルギー送達本体108は、シャフト106内に内部的に格納され、シャフト106から前進する、またはシャフト106自体を後退させることによって暴露されてもよい。同様に、1つを上回るエネルギー送達本体108が、存在してもよく、外部にある、内部にある、または両方であってもよい。いくつかの実施形態では、シャフト106は、押出ポリマー等のポリマーから成る。いくつかの実施形態では、シャフト106が、可撓性および/または剛性を制御するために、異なるデュロメータ硬さを伴う材料の複数の層から成ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、シャフト106は、個々のワイヤまたはワイヤ編組等の種々の要素を用いて補強される。いずれの場合も、そのようなワイヤは、平坦ワイヤまたは丸形ワイヤであってもよい。ワイヤ編組は、編組パターンを有し、いくつかの実施形態では、編組パターンは、所望の可撓性および/または剛性のために調整される。他の実施形態では、シャフト106を補強するワイヤ編組は、有利なこととして、シャフトの長さに沿った可撓性および/または剛性の付加的制御を提供するために、異なるデュロメータ硬さを伴う材料の複数の層と組み合わせられてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、カテーテル102は、好適なアクセス手技の間に送達デバイスを通して送達される。冠動脈にアクセスするとき、心臓は、典型的には、セルディンガー法等のアクセス手技によって、大腿動脈または橈骨動脈を介してアクセスされる。それを通して、治療カテーテル102および随意に、作用物質を送達するためのデバイスを含む、種々のカテーテルおよび/またはツールが前進され得る、導管として作用する、シースが、動脈の中に挿入される。いくつかの実施形態では、治療カテーテル102および作用物質送達が、単一のデバイスに組み合わせられることを理解されたい。典型的には、冠動脈脈管は、X線撮像の使用によってアプローチされる。いったん所望の治療場所が、識別されると、治療カテーテル102は、治療エネルギーを送達するために利用される。
【0051】
各エネルギー送達本体108は、PEFエネルギーの送達のための少なくとも1つの電極を備える。典型的には、エネルギー送達本体108は、単一の送達電極を備え、カテーテル102の遠位端103の近傍に配置される、エネルギー送達本体108と、患者の皮膚上に位置付けられる、帰還電極140との間にエネルギーを供給することによって達成される、単極配列において動作する。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体108は、エネルギー送達のための32mm2の暴露表面積を提供する。しかしながら、双極エネルギー送達および他の配列が、代替として、使用され得ることを理解されたい。双極エネルギー送達を使用するとき、カテーテル102は、双極様式において機能するように構成される、複数のエネルギー送達本体108を含んでもよい、または双極様式において機能するように構成される、複数の電極を有する、単一のエネルギー送達本体108を含んでもよい。同様に、複数のエネルギー送達本体108は、別個の器具上にあってもよい。カテーテル102は、典型的には、近位端107の近傍に配置される、取っ手110を含む。取っ手110は、カテーテル102を操縦するために使用され、エネルギー送達本体108を操作するためのアクチュエータ132を含んでもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体108は、閉鎖または後退位置(アクセスの間)から開放または暴露位置(エネルギー送達のため)に遷移し、これは、アクチュエータ132によって制御される。したがって、アクチュエータ132は、典型的には、ノブ、ボタン、レバー、スライド、または他の機構の形態を有する。いくつかの実施形態では、取っ手110が、流体、作用物質、物質、ツール、またはカテーテル102を通した送達のための他のデバイスの導入のためのポート111を含むことを理解されたい。例示的流体は、いくつか例を挙げると、懸濁液、混合物、化学物質、液体、作用物質、化学療法剤、免疫療法剤、ミセル、リポソーム、塞栓剤、ナノ粒子、薬物溶出粒子、遺伝子、プラスミド、およびタンパク質を含む。
【0052】
追加される手段として、治療送達の間の温度上昇の任意の潜在的程度を制御することが、望ましくあり得る。いくつかの実施形態では、これは、内部冷却または灌流される(開放系)電極の使用によって達成される。さらに、冷却灌流は、随意に、遺伝子材料、化学療法、または免疫賦活薬等のPEF療法によって利用される二次的な生物学的化合物を含有してもよい。電極は、事前冷却される、送達の間に冷却される、またはその後で冷却されてもよい。冷却剤は、冷蔵される、室温である、正常温度である、または意図的に上昇された温度であってもよい。いくつかの実施形態では、灌流材料はまた、治療効能を増加させるために、カルシウムまたは他の材料を含む。いくつかの実施形態では、灌流材料は、導電率を局部的に増加させるために、高張溶液を使用し、適用可能な治療区域を拡大するための仮想電極としての役割を果たす。
【0053】
カテーテル102は、PEFエネルギーを発生させるように構成される、ジェネレータ104と電気連通する。本実施形態では、ジェネレータ104は、ユーザインターフェース150と、1つまたはそれを上回るエネルギー送達アルゴリズム152と、プロセッサ154と、データ記憶/読出ユニット156(メモリおよび/またはデータベース等)と、送達されるべきエネルギーを発生させ、貯蔵する、エネルギー貯蔵サブシステム158とを含む。いくつかの実施形態では、ジェネレータ104上のユーザインターフェース150は、所望の治療アルゴリズム152を選択するために使用される。他の実施形態では、アルゴリズム152は、後節においてより詳細に説明されるであろう、1つまたはそれを上回るセンサによって取得された情報に基づいて、ジェネレータ104によって自動的に選択される。様々なエネルギー送達アルゴリズムが、使用されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るコンデンサが、エネルギー貯蔵/送達のために使用されるが、しかしながら、任意の他の好適なエネルギー貯蔵要素が、使用されてもよい。加えて、1つまたはそれを上回る通信ポートが、典型的には、含まれる。
【0054】
本実施形態では、ジェネレータ104は、ユーザインターフェース150と、1つまたはそれを上回るエネルギー送達アルゴリズム152と、プロセッサ154と、データ記憶/読出ユニット156(メモリおよび/またはデータベース等)と、送達されるべきエネルギーを発生させ、貯蔵する、エネルギー貯蔵サブシステム158とを含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るコンデンサが、エネルギー貯蔵/送達のために使用されるが、しかしながら、任意の他の好適なエネルギー貯蔵要素が、使用されてもよい。加えて、1つまたはそれを上回る通信ポートが、含まれる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ジェネレータ104は、3つのサブシステム、すなわち、1)高エネルギー貯蔵システムと、2)高電圧中周波数切替増幅器と、3)システムコントローラ、ファームウェア、およびユーザインターフェースとを含む。いくつかの実施形態では、システムコントローラは、パルス化エネルギー出力を患者の心臓リズムに同期させることを可能にする、心臓同期トリガモニタを含む。他の実施形態では、エネルギー送達は、他の監視機構によって、または単純にオペレータからの直接入力によってトリガされる。ジェネレータは、複数の直流(DC)電力供給源を給電するために、交流(AC)主電源を取り込む。代替として、ジェネレータは、バッテリまたは他の電気送達システムからDC電力を取り込んでもよい。ジェネレータのコントローラは、エネルギー送達が開始される前に、DC電力供給源またはバッテリに高エネルギーコンデンサ貯蔵バンクを充電させることができる。療法エネルギー送達の開始時、ジェネレータのコントローラ、高エネルギー貯蔵バンク、および二相性パルス増幅器は、高電圧中周波数出力を生成するように同時に動作することができる。
【0056】
多数のジェネレータ電気アーキテクチャが、エネルギー送達アルゴリズムを実行するために採用され得ることを理解されたい。特に、いくつかの実施形態では、同一のエネルギー貯蔵および高電圧送達システムとは別個に、パルス化電場回路をエネルギー送達電極に指向することが可能である、高度な切替システムが、使用される。さらに、急速に変動するパルスパラメータ(例えば、電圧、周波数等)または複数のエネルギー送達電極を採用する、高度なエネルギー送達アルゴリズムにおいて採用されるジェネレータは、モジュール式エネルギー貯蔵および/または高電圧システムを利用し、広くカスタマイズ可能な波形および地理的パルス送達パラダイムを促進し得る。上記の本明細書に説明される電気アーキテクチャが、実施例にすぎず、パルス化電場を送達するシステムが、付加的切替増幅器構成要素を含む場合とそうではない場合があることをさらに理解されたい。
【0057】
ユーザインターフェース150は、オペレータが、患者データを打ち込み、治療アルゴリズム(例えば、エネルギー送達アルゴリズム152)を選択し、エネルギー送達を開始し、記憶/読出ユニット156上に記憶された記録を閲覧し、および/または別様にジェネレータ104と通信することを可能にするために、タッチスクリーンおよび/またはより従来的なボタンまたはマウスを含むことができる。ユーザインターフェース150は、患者データを打ち込むための音声アクティブ化機構を含むことができる、またはジェネレータ104の制御が、二次的な別個のユーザインターフェースを通したものであるように、一式における付加的機器と通信することが可能であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース150は、オペレータ定義入力を受信するように構成される。オペレータ定義入力は、エネルギー送達の持続時間、エネルギー送達パルスの1つまたはそれを上回る他のタイミング側面、電力、および/または動作モード、またはそれらの組み合わせを含むことができる。例示的動作モードは、(限定ではないが)システム開始および自己試験、オペレータ入力、アルゴリズム選択、治療前システムステータスおよびフィードバック、エネルギー送達、エネルギー送達後表示またはフィードバック、治療データ精査および/またはダウンロード、ソフトウェア更新、またはそれらの任意の組み合わせまたは副次的組み合わせまたは一連の副次的組み合わせを含むことができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、システム100はまた、外部心臓モニタ170等の心電図(ECG)を入手するための機構を含む。例示的心臓モニタは、AccuSync Medical Research Corporationから入手可能である。いくつかの実施形態では、外部心臓モニタ170は、ジェネレータ104に動作的に接続される。心臓モニタ170は、ECG信号を連続的に入手するために使用されることができる。外部電極172が、ECGを入手するために、患者Pに適用されてもよい。ジェネレータ104は、1つまたはそれを上回る心臓サイクルを分析し、その間に患者Pにエネルギーを印加することが安全である、時間周期の始まりを識別し、したがって、エネルギー送達を心臓サイクルと同期させるための能力を提供する。いくつかの実施形態では、本時間周期は、エネルギーパルスがT波上で送達される場合に生じ得る、不整脈の誘発を回避するために、(ECG QRS群の)R波の数ミリ秒以内である。そのような心臓同期が、典型的には、単極エネルギー送達を使用するときに利用されるが、しかしながら、これが、他のエネルギー送達方法の一部として利用され得ることを理解されたい。
【0060】
図2は、1つまたはそれを上回る電極200を囲繞する、伸長拡張可能部材202から成る、エネルギー送達本体108を有する、エネルギー送達カテーテル102の実施形態を図示する。本実施形態では、複数の電極200は、その遠位端の近傍のシャフト106に沿って配置される。本実施形態では、複数の電極200は、等しく離間されるが、しかしながら、電極200が、その間の間隔の任意の所望のパターンに関して配置され得ることを理解されたい。電極200は、バルーン等の拡張可能部材202によって囲繞され、拡張可能部材202は、その中に挿入されるときに血管の壁に接触するために等、拡張可能である。本実施形態では、拡張可能部材202は、伝導性溶液を用いて膨張可能である。したがって、拡張可能部材202が、血管の壁に接触するように拡張するとき、1つまたはそれを上回る電極200を通して送達されるエネルギーは、伝導溶液を通して血管の壁に伝送可能である。血管の壁への伝導がまた、血管内の血液が血管の壁への伝導性経路として作用するとき等、接触を伴わずに、または最小接触を伴って達成され得ることを理解されたい。
【0061】
図3は、エネルギー送達本体108が、エネルギー送達本体108を通して延在するシャフト106上に搭載される、複数のリボンまたはワイヤ120によって形成される電極200を備える、エネルギー送達本体108を有する、エネルギー送達カテーテル102の実施形態を図示する。本実施形態では、エネルギー送達本体108は、近位端拘束部122および遠位端拘束部124によって拘束される、バスケット形状を有する。本構成では、エネルギー送達本体108が圧潰するために、近位端拘束部122または遠位端拘束部124のいずれかは、シャフト106上で自由に摺動する一方、他方の端部は、シャフト106に固定して取り付けられる。標的治療エリアにおけるエネルギー送達本体108の位置付けに応じて、シース126が、オペレータによって、例えば、シース126に動作的に接続される、カテーテルの取っ手110のレバーまたはスライダまたはプランジャを介して抜去される。シース126の抜去は、エネルギー送達本体108を圧潰状態に保つ制約を除去し、したがって、その拡張を可能にし、エネルギー送達本体108のワイヤ120が血管壁に接触することにつながる。
【0062】
いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体108の圧潰構成は、シース126の使用を伴わずにその拡張を制限する機構によって達成されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、引動ワイヤが、エネルギー送達本体108の近位端拘束部122に取り付けられ、シャフト126に沿って管腔を辿って延在し、そこで、これは、カテーテルの取っ手110のレバー、スライダ、またはプランジャに動作的に接続される。本実施形態では、遠位端拘束部124は、シャフト106に固定して取り付けられ、近位端拘束部122は、シャフト106上で自由に摺動するように構成される。引動ワイヤが、引動力下にある間、近位端拘束部122は、エネルギー送達本体108が圧潰されるように位置付けられる。引動ワイヤは、取っ手110内の制約によって本位置に維持されることができる。取っ手110内の制約の低減または除去等による引動力の解放は、引動ワイヤが移動することを可能にし、したがって、近位端拘束部122を自由にし、エネルギー送達本体108の自己拡張性質が拡張を引き起こすため、これがその遠位端拘束部124により近接して進行することを可能にする。
【0063】
他の実施形態では、近位端拘束部122は、シャフト106に添着され、遠位端拘束部124は、シャフト106上で自由に摺動する。さらに、プッシュロッド(またはより高い柱強度を達成するための管類)が、遠位端拘束部124に取り付けられ、内側シャフト106に沿って管腔を辿って延在し、そこで、これは、カテーテルの取っ手110のレバー、スライダ、またはプランジャ等の機構に動作的に接続される。プッシュロッドが、押動され、続けて、カテーテル102の取っ手110内で制約されると、遠位拘束部124は、近位端拘束部122から離れるように移動され、これは、エネルギー送達本体108を圧潰させる。エネルギー送達本体108が、自己拡張するとき、プッシュロッドの解放は、エネルギー送達本体108が拡張することを可能にする。代替として、プッシュロッドは、後退され、近位端拘束部122に向かって遠位端拘束部124を引動してもよく、これは、エネルギー送達本体108を拡張させる。
【0064】
いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体108は、近位端拘束部122および遠位端拘束部124の両方において拘束され、バスケットを形成するように構成される、編組金属管から形成される。エネルギー送達本体108は、上記に説明されるように、制御(すなわち、圧潰、展開)されることができる。エネルギー送達本体108が、編組金属管を備えるとき、編組管内の各ワイヤは、これに隣り合う複数のワイヤによって、ならびに編組自体の織り合わせ性質によって支持される。本支持および織り合わせ構成は、別様に編組の細孔または開口サイズとして公知である、ワイヤの間の空間における最小変動を保証することができる。加えて、本支持および織り合わせ構成は、非常に小さいワイヤから編組管を構築することを可能にし、また、バスケットの有意な半径方向安定性を有することができる。これは、圧潰/拘束状態におけるエネルギー送達本体108の比較的に小さい外形を維持し、電極が展開/拡張されるときの編組管の開口サイズを最適化しながら、多くのワイヤ(例えば、12本、16本、18本、20本、22本、24本等)の使用を可能にする。本実施形態では、ワイヤの間の空間は、かなり小さく、血管の内側管腔の360度にわたって本質的に連続的である治療につながる。
【0065】
図4は、エネルギー送達本体108の別の実施形態を図示する。本実施形態では、エネルギー送達本体108は、バスケット織りではなく、1つまたはそれを上回る突出部850を備える。各突出部850は、電極として作用し、カテーテル102の縦方向軸またはシャフト106から半径方向に外向きに屈曲する、ワイヤまたはリボン120によって形成される。本実施形態では、各突出部850は、他の突出部のそれぞれから電気的に分離される。突出部850は、ステンレス鋼、ばね鋼、または他の合金等の電極として作用するような様々な好適な材料から成ってもよく、例えば、丸形ワイヤまたはリボンであってもよい。各突出部850は、エネルギー送達本体108の近位および遠位端の少なくとも一部にわたって、ポリマー(例えば、PET、ポリエーテルブロックアミド、ポリイミド)等の絶縁体852の区画を用いて絶縁される。ワイヤまたはリボンの暴露部分854は、次いで、各突出部850上の電極として作用することができる。一実施形態では、突出部850の暴露部分854は、絶縁体852が完全にない。別の実施形態では、絶縁体852は、突出部850の外面からのみ除去され、組織と接触しない突出部850の側(例えば、カテーテル102のシャフト106に面する内面)を完全に絶縁されたままにする。一実施形態では、各突出部850は、独立して通電され、2つの突出部850は、中性電極(帰還)として作用し、2つの突出部850は、活性電極として作用する。中性および活性電極は、相互に直に隣り合って位置付けられることができる。相互から180度に位置する中性電極(対向電極)は、相互に電気的に接続されることができ、したがって、活性電極であり得る。本実施形態では、2つのみの伝導性ワイヤ(電力線)が、突出部850の2つの対をジェネレータ104に接続するために必要とされる。さらに、双極方式において利用される突出部850の対は、活性対中性電極の任意の組み合わせまたは回転を可能にするために、さらに多重化されることができる。ジェネレータ104は、これらのアプローチのうちのいずれかを支持するために十分なチャネル(すなわち、1~4つのチャネル)を有するように構成されることができる。エネルギー送達本体108の本実施形態は、随意に、圧潰構成において送達され、取っ手内の引き戻しワイヤおよび機構を介して組織接触するように拡張されることができる。
【0066】
図5は、各突出部850が、カテーテル102の縦方向軸またはシャフト106から半径方向に外向きに屈曲する、1つまたはそれを上回る突出部850を備える、エネルギー送達本体108の別の実施形態を図示する。しかしながら、本実施形態では、各突出部850は、非伝導性金属から形成され、別個の電極200を担持し、支持し、および/または別様にそれに結合される。各電極200は、電極200をジェネレータ104に接続する、伝導性ワイヤ860を有する。突出部850は、取っ手内の引動ワイヤおよび機構等を介して、拡張に応じて、組織に対して該電極200を位置付ける。本実施形態では、各電極200は、各突出部850にわたって、またはそれに隣接して設置される。突出部850が、金属から成る場合、絶縁体が、突出部850自体から電極200を電気的に分離するために提供される。突出部850が、ポリマーまたは他の非伝導性材料から成る場合、付加的絶縁体は、要求されないであろう。いくつかの実施形態では、突出部850は、丸形ワイヤまたはリボンから成り、示されるように、直線状のバスケットを形成するように構成される。他の実施形態(図示せず)では、突出部850は、螺旋形状において構成される。
図5に描写されるような別個の電極200が、バスケットが編組材料から成る等の他の実施形態に同様に適用され得ることを理解されたい。
図4の実施形態と同様に、各電極200は、様々な組み合わせにおいて通電されてもよい。さらに、各突出部850は、相互に電気的に接続される、または相互から電気的に分離され得る、電極200を担持することができる。電極200の表面積を増加させるために、それぞれは、例えば、金属コイルから、またはスロット付き(例えば、レーザ切断)管の形態において構築されることができる。これらの構成は、より大きい空間的被覆を可能にし、また、電極200の可撓性を維持し、バスケットの突出部850が自由に屈曲および直線化することを可能にするであろう。
図4におけるように、突出部850の表面は、組織と接触しないエリアにわたって完全に暴露または絶縁されることができる。
【0067】
エネルギー送達本体108が、血管壁上に付与される力が、より高度に制御されることが所望される状況に関して最適化され得ることを理解されたい。本実施形態では、エネルギー送達本体108は、3ステッププロセスを介して血管管腔の中に送達される。第1に、
図6A-6Bを参照すると、シース126が、近位に抜去され、したがって、突出部として作用する1つまたはそれを上回る突起900を暴露する。本実施形態は、中心管腔902の周囲に対称的に配列される、4つの突起900を含む。1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれを上回るものを含む、任意の数の突起900が、存在し得ることを理解されたい。各突起900は、少なくとも1つの電極200を含む。
図6Aは、電極200の間の距離を維持するための手段として、その間のポリマー基質(例えば、リボン、ストリップ)等の絶縁基質904に取り付けられる、伸長形状(ワイヤ等)を有する、2つの電極200を有する、突起900の実施形態を図示する。電極200が、丸形または正方形/長方形断面を有し得、典型的には、電極200が相互に略平行であるように、絶縁基質904に添着されることを理解されたい。電極200を絶縁基質904に取り付ける製造方法は、(限定ではないが)共押出、堆積、接着剤ベースの接合、および熱接合を採用することができる。絶縁基質904の幅は、変動することができる。電極200は、ジェネレータによって制御されるエネルギー印加アルゴリズムに応じて、相互に電気的に接続されることができる、相互から絶縁されることができる、または電極の間の電気相互接続の異なるパターンであり得る。
【0068】
いったん1つまたはそれを上回る突起900が暴露されると、3ステッププロセスの第2のステップは、非拡張状態にある間に管腔902から拡張可能部材910を前進させることによって、バルーン等の別個の拡張可能部材910を導入することを伴う。第3のステップは、突起900(したがって、電極200)と血管壁との間の所望の界面が達成されるまで、
図6A-6Bに図示されるように、バルーンを膨張させること等の拡張可能部材910を拡張させることを伴う。別の実施形態では、突起900は、拡張可能部材910がすでに突起900の下に配置されている間に位置付けられ、したがって、それらの相対的縦方向位置は、変化しない。本構成では、シース126の抜去は、拡張可能部材910および突起900の両方を同時に暴露し、したがって、管腔902から外に拡張可能部材910を前進させるステップを排除する。上記に説明されるように、拡張可能部材910は、続けて、突起900と血管壁との間の所望の界面が達成されるまで、拡張される(例えば、膨張される)。突起900のサイズ(例えば、長さ、幅)は、同一である、または異なり得る。突起900の数は、1(単極構成)~100(単極および/または双極)構成に変動することができる。電極200へのエネルギー印加は、エネルギー送達装置(例えば、ジェネレータ)のアルゴリズムに応じて、広く変動することができる。
【0069】
図7は、血管内治療のために構成される形状を有する、エネルギー送達本体108を備える、カテーテル102の別の実施形態を図示する。本実施形態では、エネルギー送達本体108は、その上に搭載される、またはその中に組み込まれる、少なくとも1つの電極200を有する、膨張可能バルーン等の拡張可能部材202を備える。エネルギー送達本体108は、圧潰構成において標的化エリアに送達される。本実施形態では、電極200は、比較的に幅広い表面積および薄い断面を有する、パッドの形態を有する。パッド形状は、ワイヤ形状等の他の形状よりも幅広い表面積を提供する。各電極200は、伝導ワイヤ201と接続され、これは、電極200をジェネレータと電気的に接続する。本実施形態では、3つの電極200が、可視であるが、しかしながら、付加的電極が、拡張可能部材202の周囲に存在し得ることを理解されたい。任意の数の電極200が、存在し、単一の電極として作用する、または独立して、もしくは組み合わせて作用し得ることを理解されたい。電極200の設置および/または電極200の選択的通電は、特定の標的場所に向かってエネルギーを指向し得る。いくつかの実施形態では、電極200は、拡張可能部材202に取り付けられる、または拡張可能部材202に形成される、可撓性回路パッドまたは他の材料から成る。いくつかの実施形態では、電極200は、拡張可能部材202の円周の周囲に半径方向に分配され、および/または拡張可能部材202の長さに沿って縦方向に分配される。そのような設計は、改善された展開および後退品質を促進し、ユーザ動作および導入器管腔との適合性を容易にし得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、流体が、エネルギー送達の前、その間、またはその後のいずれかで、標的血管に送達される。いくつかの実施形態では、流体は、1つまたはそれを上回る作用物質を含む。例示的作用物質は、いくつか例を挙げると、薬物、薬品、化学療法剤、免疫療法剤、ミセル、リポソーム、塞栓剤、ナノ粒子、薬物溶出粒子、遺伝子、プラスミド、およびタンパク質を含む。流体は、別個のデバイスを通した、またはカテーテル102を通した注入等によって、全身的に、局部的に、または局所的に等、任意の好適な方法によって送達されてもよい。典型的には、作用物質は、標的組織を浸し、随意に、体内分布のために滞留することが可能である。いくつかの実施形態では、標的血管に送達されるエネルギーの効果は、エネルギー送達の前、その間、またはその後のいずれかの流体の存在によって増強される。他の実施形態では、標的血管に送達される流体の効果は、作用物質送達の前、その間、またはその後のいずれかのエネルギーの送達によって増強される。
【0071】
図8-12は、エネルギー送達本体108を通して、またはその近傍に流体、および随意に、1つまたはそれを上回る作用物質を送達する、カテーテル102の例示的実施形態を図示する。特に、
図8は、1つまたはそれを上回るタイプの作用物質を有する流体を送達するように構成される、
図2のカテーテル102の実施形態を図示する。ここでは、拡張可能部材202は、シャフト106内のポート等を通して、1つまたはそれを上回る作用物質を担持する流体で充填可能である。同様に、拡張可能部材202は、拡張可能部材202内の細孔等を通して、1つまたはそれを上回る作用物質110を周辺環境に(矢印によって示されるように)浸出または通過させることが可能である。いくつかの実施形態では、伝導溶液または生理食塩水溶液等の流体が、仮想電極として作用するように、拡張可能部材202を通して通過されることを理解されたい。したがって、電極200パッドに送達されたエネルギーは、流体に伝達され、流体が拡散した場所に伝導される。これは、送達電極のサイズ、形状、および特性を増加させる。伝導性溶液が、単独で、または1つまたはそれを上回る作用物質110と組み合わせて使用され得ることを理解されたい。
【0072】
図9は、1つまたはそれを上回るタイプの作用物質110等を有する、流体を送達するように構成される、
図3のカテーテル102の実施形態を図示する。本実施形態では、シャフト106は、複数のポート131と、随意に、それを通して作用物質110が流動する、カテーテル102の遠位先端におけるポート133とを含む。エネルギー送達本体108は、ワイヤバスケットを備えるため、作用物質110は、バスケットのメッシュを通して周囲環境に進むことが可能である。
図10は、1つまたはそれを上回るタイプの作用物質を送達するように構成される、
図4のカテーテル102の実施形態を図示する。本実施形態では、作用物質110は、矢印によって示されるように、突出部850のエリアの中に流出するように、シャフト106内の管腔を通して送達可能である。したがって、作用物質110は、エネルギー送達本体108の周辺環境の中に自由に通過することが可能である。
図11は、1つまたはそれを上回るタイプの作用物質を送達するように構成される、
図6A-6Bのカテーテル102の実施形態を図示する。ここでは、拡張可能部材910は、矢印によって示されるようなそれを通した周辺環境への作用物質110の通過のための複数の細孔またはポート131を含む。本実施形態では、拡張可能部材910は、突起900と血管壁との間の所望の界面が、ポート131を通した作用物質110の所望の流量と協調して達成されるまで、拡張される(例えば、膨張される)。
図12は、1つまたはそれを上回るタイプの作用物質を送達するように構成される、
図7のカテーテル102の実施形態を図示する。ここでは、拡張可能部材202は、矢印によって示されるようなそれを通した周辺環境への作用物質110の通過のための複数の細孔またはポート131を含む。ポート131は、電極200パッドの間に位置する。随意に、カテーテル102は、それを通して作用物質110が流動する、カテーテル102の遠位先端におけるポート133を含む。上記の実施形態のそれぞれにおいて、伝導溶液等の流体が、単独で、または1つまたはそれを上回る作用物質110と組み合わせて使用され得ることを理解されたい。
【0073】
臨床方法
療法システムおよびデバイスは、様々な条件、特に、アテローム性動脈硬化および狭心症等の血管系の条件を治療するために使用されてもよい。前述で言及されるように、安定狭心症(胸部狭心症)、不安定狭心症、異型狭心症、および微小血管狭心症を含む、複数のタイプの狭心症が、存在する。異型狭心症および微小血管狭心症は両方とも、血液を心筋に供給する冠動脈における攣縮を伴う。冠動脈攣縮の間、冠動脈は、収縮または攣縮を繰り返し、心筋への血液供給の一時的欠如(虚血)を引き起こす。冠動脈攣縮を診断するために、患者は、最大48時間等にわたって携帯型モニタを装着し得る。モニタは、睡眠の間であっても、心臓の電気インパルスを記録する。心電図(EKG)上の変化は、冠動脈攣縮を示し得る。しかしながら、全ての患者が、全てのエピソードの間にEKG変化を示すわけではない。冠動脈攣縮を診断するために、エルゴノビン負荷試験が、使用され得る。エルゴノビンは、通常、心臓カテーテル留置の間にIVを通して注入される薬物である。これは、通常、数分以内に冠動脈攣縮をトリガすることができ、その時点で、冠動脈は、可視化される。別の薬品が、次いで、攣縮を緩和するために、冠動脈の中に注入される。患者のEKGは、試験の前、その間、およびその後に記録される。冠動脈攣縮が、存在する場合、これは、EKGならびに血管造影図上で見られることができる。他の類似する試験もまた、使用され得ることを理解されたい。いくつかの事例では、アセチルコリンが、冠動脈攣縮をトリガするために使用される。エルゴノビンは、セロトニン作動性受容体を通して作用する一方、アセチルコリンは、ムスカリン性コリン作動性受容体を通して作用する。異なる伝達物質は、異なる冠動脈応答を引き起こす潜在性を有し得る。アセチルコリンは、女性にとって過敏であり、エルゴノビンによって誘起される攣縮は、限局性かつ近位である一方、アセチルコリンによって誘起される攣縮は、広範性かつ遠位である。したがって、両方の試験が、診療所において補足として使用され得る。
【0074】
いったん標的組織エリアが、冠動脈攣縮と関連付けられるものとして識別されると、標的組織エリアは、PEFエネルギーで治療される。随意に、1つまたはそれを上回る作用物質が、治療と併せて、同様に送達されることができる。典型的には、カテーテル102は、脈管を通して冠動脈まで前進され、エネルギー送達本体108は、所望の場所に位置付けられる。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体108は、血管内で拡張し、血管壁の少なくとも一部に接触するように作動される。PEFエネルギーが、後節において説明されるであろうようなアルゴリズムに従って、エネルギー送達本体を通して送達される。典型的には、PEFエネルギーは、単極方式において送達される。単極送達は、エネルギー送達本体108から標的組織への、かつ患者を通した患者の皮膚に対して位置付けられる帰還パッド140への電流の通過を伴い、電流回路を完成させる。したがって、いくつかの実施形態では、カテーテル102は、1つのみのエネルギー送達本体108または電極を含む。これは、カテーテル102が、より小さい身体管腔内に位置付け可能であるように、薄型外形を有することを可能にする。これはまた、エネルギー送達本体108を囲繞する組織の深い貫通を可能にする。いくつかの実施形態では、エネルギーが、随意に、1つを上回るエネルギー送達本体108の使用を伴って、双極方式において送達されるが、しかしながら、いくつかの事例では、単極送達設計が、デバイスおよび治療設計を簡略化し、標的組織における優れた治療区域を提供することを理解されたい。
【0075】
図13は、冠動脈CAの壁Wおよび壁Wに隣接して位置付けられる(
図2の)エネルギー送達本体108の実施形態の概略図示を含む。本実施形態では、拡張可能部材202は、内皮Eに対して位置付けられ、PEFエネルギーは、電極200(波線によって示されるような)から拡張可能部材202を通して壁Wに送達される。いくつかの実施形態では、PEFエネルギーは、内膜TI(例えば、内皮、結合組織、内弾性膜等)および/または中膜TM(例えば、弾性線維、平滑筋細胞、線維芽細胞、細胞外マトリクス等)内の細胞を治療し、外膜TA(例えば、外弾性膜、結合組織等)を保全する。冠動脈攣縮への感受性に関する基礎を成すことが提案されている機構は、内皮機能障害、血管平滑筋細胞(VSMC)の原発性過反応、および他の因子を含む。動脈攣縮は、典型的には、少なくとも2つの構成要素、すなわち、(1)血管収縮刺激に対する過反応を引き起こす、動脈の限局性であるが、時として、広範性の異常、および(2)過反応血管区画のレベルにおいて攣縮を誘発することが可能な血管収縮刺激の相互作用からもたらされる。いくつかの実施形態では、PEFエネルギーの送達は、これらの構成要素のうちの1つまたはそれを上回るものに干渉する。例えば、いくつかの事例では、PEFエネルギーは、血管平滑筋細胞を治療し、これは、血管の刺激に応答して血管収縮する能力を減少させる、または排除する。細胞外マトリクス足場は、影響を受けないままであり、血管開存性を保全し、かつ血管壁の再生のための適切な環境を提供する。いくつかの事例では、PEFエネルギーは、血管平滑筋細胞への局所神経支配を途絶させ、これは、血管攣縮に関する局所トリガ刺激を減少させる、または排除する。いくつかの実施形態では、局所脱神経は、胸部、首、および顎において感じられる狭心痛症状に寄与する迷走神経求心性線維を通した攣縮の局所エリアからの神経経路を排除する。他の実施形態では、PEFエネルギーは、内皮を治療し、内皮層の細胞再生および健康的な修正につながる。また他の実施形態では、PEFエネルギーは、局所心臓心筋を修正するために利用され、攣縮を強める、または早め得る局部的な機械的力の置換または排除をもたらす。PEFエネルギーが、これらの効果の任意の組み合わせまたは副次的組み合わせを提供し得ることを理解されたい。
【0076】
治療が、いくつか例を挙げると、細胞死、細胞除去、および細胞修正を含み得ることを理解されたい。外膜は、冠動脈CAの最外側層であり、3つの層の中で最も強い。これは、コラーゲン性および弾性線維から成る。外膜は、限定障壁を提供し、過度の拡張から血管を保護する。本層は、血管の完全性を保全するために保全される。
【0077】
中膜TMは、治療されている血管のタイプに基づいて変動する。より小さい動脈では、これは、主として、薄層において配列され、血管の周囲に円形に配置される、細かい束における平滑筋線維から成る。これらの薄層は、血管のサイズに従って数において変動し、最も小さい動脈は、単一の層のみを有し、わずかにより大きいものは、3つまたは4つの層、最大で6つの層までを有する。動脈の壁の厚さの大部分を決定するものは、本被膜である。腸骨動脈、大腿動脈、および頸動脈のようなより大きい動脈では、弾性線維およびコラーゲンが、結合し、薄層を形成し、これは、平滑筋線維の層と交互になり、これらの薄層は、平滑筋束の間を通過する弾性線維によって相互に結合され、内側被膜の有窓膜と接続される。大動脈および腕頭動脈のような最も大きい動脈では、弾性組織の量は、相当なものであり、これらの血管では、白色結合組織のいくつかの束もまた、中間被膜において見出されている。筋線維細胞は、円形および縦方向平滑筋の5~7つの層において配列され、多くの場合、わずかに湾曲する、明確なロッド形状の核を含有する。本明細書に説明されるデバイス、システム、および方法が、冠動脈の治療に限定されず、いくつか例を挙げると、頭蓋内動脈(例えば、脳動脈攣縮)、末梢動脈(例えば、浅大腿、膝窩、脛骨動脈)、および他の末梢標的の治療を含むことを理解されたい。同様に、解剖学的標的は、いくつか例を挙げると、患部血管区画および/または隣接する区画、患部血管区画および/または隣接する区画に隣接する静脈構造、患部血管区画および/または隣接する区画に隣接する、またはそれを制御する神経組織、および患部血管区画および/または隣接する区画に隣接する、またはそれを制御する筋組織(例えば、心筋)を含む。エネルギーを心筋に送達するための例示的デバイスおよびシステムが、2020年12月18日に出願され、「TREATMENT OF CARDIAC TISSUE WITH PULSED ELECTRIC FIELDS」と題された、国際特許出願第PCT/US2020/066205号(あらゆる目的のために、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0078】
療法システムおよびデバイスはまた、アテローム性動脈硬化または冠動脈疾患、特に、経皮経管血管形成術(PTA)および/またはステント留置後の再狭窄を治療するために使用されてもよい。PTAは、血管の管腔を増加させるために、狭窄においてカテーテルの端部におけるバルーンの拡張を使用する。しかしながら、直径の増加は、内皮の剥脱、内弾性膜および中膜の途絶、および中膜内の平滑筋細胞の約20%の損傷をもたらし得る。ステントは、ステントを用いて血管を拡張させるために、適用の間に、またはそれに先立ってのいずれかで、PTAを使用して、これを開放状態に保持するために、狭窄エリア内で拡張されるように設計される。しかしながら、ステントはまた、正常な脈管の途絶につながる。ステントを用いて血管壁を拡張させるためのPTAの使用は、前述で説明されるものに類似する効果を有し、自己拡張ステントは、半径方向力に起因して拡張し続け、内皮機能に対する擾乱を長引かせ得る。
【0079】
PTAおよびステント術からの血管アーキテクチャおよび細胞の変化は、血管の医原性傷害応答に起因する介入の部位における血管の再狭化である、再狭窄の発症につながり得る。本問題はまた、末梢脈管において存在する。再狭窄は、2つの主要なプロセス、すなわち、動脈リモデリングおよび新生内膜過形成を伴う。動脈リモデリングは、自然な代償性応答であり、動脈は、プラーク形成に応答して拡大し、血管狭化を低減させる。しかしながら、血管形成術に応答して、負のリモデリングが、血管収縮につながり、血管管腔全体を低減させ得る。これは、血管形成術再狭窄に関する主要な機構であると考えられる一方、ステント内再狭窄は、主として、新生内膜過形成からもたらされると思われ、血管傷害は、分裂促進因子を放出し、平滑筋細胞内の分裂促進プロトオンコジーンのレベルは、増加し、平滑筋細胞の表現型を収縮性から合成性に改変し、内側平滑筋細胞の20~40%は、3日以内に細胞周期に入る。遊走促進性タンパク質もまた、発現され、内側平滑筋細胞が内膜の中に遊走することを助長する。PTAおよびステント挿入からの損傷した内皮細胞はさらに、平滑筋細胞成長を阻害することが公知である化学物質である、それらの一酸化窒素生産を減少させることによって、平滑筋細胞増殖および遊走に寄与し得る。
【0080】
標的領域は、コンピュータトモグラフィ、血管造影検査、血管内超音波検査(IVUS)、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、または任意の好適な撮像モダリティ等によって、任意の好適な方法によって識別されることができる。いったん標的組織エリアが、識別されると、標的組織エリアは、PEFエネルギーで治療される。いくつかの事例では、PEFエネルギーは、石灰化沈着物等のプラーク層を途絶させる。いくつかの実施形態では、プラークは、他の方法によって治療され、PEFエネルギーは、再狭窄を低減させる、または防止する等のために利用される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る作用物質が、PEF治療と併せて送達される。典型的には、カテーテル102は、脈管を通して冠動脈まで前進され(しかしながら、他の血管も、標的化され得る)、エネルギー送達本体108は、所望の場所に位置付けられる。いくつかの実施形態では、エネルギー送達本体108は、血管内で拡張し、血管壁の少なくとも一部に接触するように作動される。PEFエネルギーが、後節において説明されるであろうようなアルゴリズムに従って、エネルギー送達本体を通して送達される。典型的には、PEFエネルギーは、単極方式において送達される。単極送達は、エネルギー送達本体108から標的組織への、かつ患者を通した患者の皮膚に対して位置付けられる帰還パッド140への電流の通過を伴い、電流回路を完成させる。したがって、いくつかの実施形態では、カテーテル102は、1つのみのエネルギー送達本体108または電極を含む。いくつかの実施形態では、エネルギーが、随意に、1つを上回るエネルギー送達本体108の使用を伴って、双極方式において送達されることを理解されたい。
【0081】
いくつかの実施形態では、作用物質110もまた、標的組織エリアに送達される。例示的作用物質は、血管平滑筋細胞増殖、したがって、新生内膜過形成を中止させる、抗増殖薬を含む。シロリムスおよびパクリタキセルが、そのような薬物の2つの実施例である。パクリタキセルは、微小管分解を阻害し、したがって、細胞周期に干渉し、G0~G1およびG2~M期における細胞周期停止につながる。シロリムスは、FKBP12に結合し、続けて、mTORおよびPI3経路を阻害し、G1期において細胞周期を停止させる。類似する薬物が、シロリムスから発展しており、抗動脈硬化特徴を示しているエベロリムス(SDZ RAD)、リダフォロリムス、ゾタロリムス、ラパマイシン剤、バイオリムス、およびノボリムス等を含む。他の療法剤110は、いくつか例を挙げると、抗増殖薬、抗血栓薬、生体外でシロリムスと同一の抗炎症および抗増殖効果を示し、したがって、シロリムスの代替としての役割を果たし得る、フィトンチッド(PTC)、再狭窄につながる炎症性変化を抑制するために有用である、グルココルチコイド、細胞の内側に高く評価されるタンパク質を発現させるためのプラスミドDNA、G0~G1期において細胞周期を停止させ、血管平滑筋細胞の増殖を阻害するp27KIP1を上方制御する、ガランギン、カルシニュリン/NFAT/IL-2経路を介して再狭窄を低減させる、タクロリムス、健康的な再内皮化を支援するための幹細胞、放射性作用物質、アクチノマイシン、プロブコール、および7-ヘキサノイルタキソールを含む。
【0082】
言及されるように、作用物質110は、別個のデバイスを通した、またはカテーテル102を通した注入等によって、全身的に、局部的に、または局所的に等、任意の好適な方法によって送達されてもよい。作用物質110は、標的組織を浸し、随意に、体内分布のために滞留することが可能である。いくつかの実施形態では、PEFエネルギーは、PEF治療によって標的化される血管の壁Wによる作用物質110の取り込みを増加させる。したがって、標的血管に送達される作用物質110の効果は、作用物質送達の前、その間、またはその後のいずれかのエネルギーの送達によって増強される。
【0083】
いくつかの実施形態では、PEFエネルギーが、随意に、血管の壁内の細胞を除去する、破壊する、または死滅させることを理解されたい。同様に、いくつかの実施形態では、PEFエネルギーは、随意に、血管内の石灰化領域を途絶させ、より良好な拡張を可能にする。カルシウム途絶が、療法プロトコルの一部である場合、カテーテル102または別個のデバイスが、血管直径を通常の範囲を越えて延在させるために、PEF送達後に使用されることができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る作用物質110の局所取り込みは、組織の標的領域において細胞を死滅させる、または細胞の過形成再成長を阻害する。いくつかの実施形態では、吸収された作用物質110の局所的に増加された濃度は、患部領域(電場分布に暴露される領域)における細胞死を誘発し、標的化領域における細胞を死滅させるであろう。最終的に、組織分解および増加された血管流動が、標的化領域における増加された直径の管腔を通して生じる。組織の死滅領域は、分解し、管腔直径および血流に対するより少ない物理的制限を生産する。また、作用物質110は、長い時間周期(例えば、数週間から数年)にわたって再生的過形成再成長を緩慢にする、または防止する。
【0084】
エネルギーアルゴリズム
PEFエネルギーは、1つまたはそれを上回るエネルギー送達アルゴリズム152によって提供される。いくつかの実施形態では、アルゴリズム152は、各エネルギーパケットが一連の高電圧パルスを備える、一連のエネルギーパケットを備える波形を有する、信号を処方する。そのような実施形態では、アルゴリズム152は、いくつか例を挙げると、パケットの数、パケット内のパルスの数、パルスシーケンスの基本周波数から成る、印加されるエネルギーのエネルギー振幅(例えば、電圧)および持続時間等の信号のパラメータを規定する。付加的パラメータは、後節においてより詳細に説明されるであろう、二相性パルスにおける極性の間の切替時間または位相間遅延、二相性サイクルの間の不感時間またはサイクル遅延、パケットの間の休止時間またはパケット間遅延、またはパケットの群またはバンドルの間の遅延を含んでもよい。パケット間に、固定された休止周期が、存在してもよい、またはパケットは、心臓サイクルに対してゲートされてもよく、したがって、患者の心拍数に伴って可変である。意図的な様々な休止周期アルゴリズムが、存在してもよい、またはいかなる休止周期もまた、パケットの間に適用されない場合がある。センサ情報、および自動遮断仕様、および/または同等物に基づくフィードバックループが、含まれてもよい。
【0085】
図14は、エネルギー送達アルゴリズム152によって処方される、信号の波形400の実施形態を図示する。ここでは、2つのパケット、すなわち、第1のパケット402および第2のパケット404が、示され、パケット402、404は、休止周期406によって分離される。本実施形態では、各パケット402、404は、(第1の正パルスピーク408と、第1の負パルスピーク410とを備える)第1の二相性サイクルと、(第2の正パルスピーク408’と、第2の負パルスピーク410’とを備える)第2の二相性サイクルとから成る。第1および第2の二相性パルスは、各パルスの間の不感時間412(すなわち、中断)によって分離される。本実施形態では、二相性パルスは、設定電圧416が正および負ピークに関して同一であるように、対称的である。ここでは、二相性の対称的な波はまた、正電圧波の大きさおよび時間が、負電圧波の大きさおよび時間にほぼ等しくなるように、方形波である。双極構成を使用するとき、負電圧波に面する細胞の部分は、これらの領域において細胞脱分極を受け、通常負に荷電される細胞膜領域は、短時間で正に変わる。逆に、正電圧波に面する壁W細胞の部分は、過分極を受け、細胞膜領域の電位は、極端に負になる。二相性パルスの各正または負相において、壁W細胞の部分が、反対の効果を被るであろうことを理解されたい。例えば、負電圧に面する細胞膜の部分は、脱分極を被るであろう一方、本部分に対して180°の部分は、過分極を被るであろう。いくつかの実施形態では、過分極された部分は、分散または帰還電極140に面する。
【0086】
所望の治療深さは、いくつか例を挙げると、標的血管の壁Wの厚さおよび所望の治療のタイプに依存する。血管は、約2mm(大動脈)、1~4mm(動脈)、0.5~5mm(静脈)、1.5mm(大静脈)、6μm~30μm(小動脈)、2μm~10μm(末端小動脈)、0.5μm~8μm(毛細血管)、1μm~20μm(小静脈)等の様々な壁厚を有する。同様に、血管内の特定の層は、血管のタイプに応じて、深さにおいて変動するであろう。加えて、アテローム性動脈硬化に起因する血管内の石灰化の層もまた、壁厚を増加させ、非石灰化血管において所望されるであろうものよりも深い貫通深さが、所望され得る。したがって、標的治療深さは、変動するであろう。いくつかの実施形態では、壁Wの中への治療深さは、0.5μm~5mm、特に、0.5μm~30μm、より具体的には、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.2mm、1.4mm、1.6mm、1.8mm、2mm、2.2mm、2.4mm、2.6mm、2.8mm、3mm、3.2mm、3.4mm、3.6mm、3.8mm、4.0mm、4.5mmを含む、0.05mm~5mmの範囲内である。いくつかの実施形態では、カルシウム沈着物に起因して、石灰化プラークを通した壁Wの中への治療深さは、2~10mmの範囲内である。
【0087】
送達されるエネルギーは、いくつか例を挙げると、所望の治療深さおよび所望の治療のタイプに依存するであろう。例えば、細胞途絶または細胞死を目標とする治療は、概して、動脈硬化症におけるカルシウム沈着物の途絶を目標とする治療よりも弱いであろう。以下のパラメータは、様々な治療状況において使用されてもよい。
【0088】
A.電圧
使用および考慮される電圧は、方形波形の頂点であってもよく、正弦または鋸歯波形におけるピークであってもよく、正弦または鋸歯波形のRMS電圧または他の好適な側面であってもよい。いくつかの実施形態では、エネルギーは、単極方式において送達され、各高電圧パルスまたは設定電圧416は、約100V~10,000Vである。細胞死に関して、電圧は、典型的には、500~3,000V、特に、2,000~2,500Vの範囲内であってもよい。カルシウム沈着物の途絶に関して、電圧は、典型的には、1,000~6,000V、特に、2,000~4,000Vの範囲内であってもよい。組織に送達される電圧は、カテーテル102の固有のインピーダンスに起因するカテーテル102の長さに沿った電気的損失を考慮するか、または長さに沿った損失を考慮しないかのいずれかで、ジェネレータ104上の設定点に基づいてもよく、すなわち、送達される電圧は、ジェネレータにおいて、またはカテーテルの先端において測定されることができる。
【0089】
設定電圧416が、エネルギーが単極または双極方式において送達されるかどうかに応じて、変動し得ることを理解されたい。双極送達では、より低い電圧が、より小さいより指向性の電場に起因して、使用されてもよい。療法における使用のために選択される双極電圧は、電極の分離距離に依存する一方、1つまたはそれを上回る離れた分散パッド電極を使用する単極電極構成は、身体上に設置されるカテーテル電極および分散電極の厳密な設置をあまり考慮せずに送達されてもよい。単極電極実施形態では、より大きい電圧が、典型的には、約10cm~100cmの有効分離距離の分散電極に到達するために、身体を通した送達されるエネルギーの分散挙動に起因して使用される。逆に、双極電極構成では、1mm~1cmを含む、約0.5mm~10cmの電極の比較的に近接した活性領域は、分離距離から組織に送達される電気エネルギー濃度および有効用量に対するより大きい影響をもたらす。例えば、標的化される電圧対距離比が、適切な組織深さ(1.3mm)において所望の臨床効果を誘起するために、3,000V/cmである場合、分離距離が、1mmから1.2mmに変更される場合、これは、300から約360Vへの治療電圧の必要な増加、すなわち、20%の変化をもたらすであろう。
【0090】
B.周波数
1秒の時間あたりの二相性サイクルの数が、信号が連続的であるときの周波数であることを理解されたい。いくつかの実施形態では、二相性パルスは、所望されない筋肉刺激、特に、心筋刺激を低減させるために利用される。他の実施形態では、パルス波形は、単相性であり、いかなる明確な固有の周波数も、存在しない。代わりに、基本周波数が、周波数を導出するために単相性パルス長を2倍にすることによって考慮されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、信号は、10kHz~800kHzの範囲内の周波数を有する。細胞死に関して、周波数は、典型的には、100~800kHz、より具体的には、400~600kHzの範囲内であってもよい。カルシウム沈着物の途絶に関して、周波数は、典型的には、10μ秒~100μ秒(単相性)または10~500kHz(二相性)、より具体的には、50~250kHzの範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、信号は、約100~600kHzの範囲内の周波数を有し、これは、典型的には、粘膜下細胞または平滑筋細胞等の若干深くに位置付けられる特定の細胞を治療する、またはそれに影響を及ぼすように、管腔壁を貫通する。いくつかの状況では、およびいくつかの電圧において、100~250kHzにおける、またはそれを下回る周波数が、所望されない筋肉刺激を引き起こし得ることを理解されたい。しかしながら、そのような筋収縮は、他の技法によって軽減されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、信号は、500kHz、550kHz、600kHz、650kHz、700kHz、750kHz、800kHz等の400~800kHzまたは500~800kHzの範囲内の周波数を有する。特に、いくつかの実施形態では、信号は、600kHzの周波数を有する。加えて、心臓同期が、敏感なリズム周期の間に所望されない心筋刺激を低減させる、または回避するために利用されてもよい。さらにより高い周波数が、信号アーチファクトを最小限にする成分と併用され得ることを理解されたい。
【0092】
C.電圧-周波数平衡
送達される波形の周波数は、適正な治療効果を保つために、治療電圧に対して同調して変動してもよい。そのような相乗的変化は、より弱い効果を誘起する、電圧の減少と組み合わせられる、より強い効果を誘起する、周波数の減少を含むであろう。例えば、ある場合には、治療は、800kHzの波形周波数を伴う単極方式において3,000Vを使用して送達されてもよい一方、他の場合では、治療は、400kHzの波形周波数を伴う2,000Vを使用して送達されてもよい。
【0093】
対向する方向において使用されるとき、治療パラメータは、これを過剰に効果的にする方法において操作され得、これは、筋収縮の可能性または望ましくない組織へのリスクのある効果を増加させ得る。例えば、800kHzにおける2,000Vの使用等、周波数が、増加され、電圧が、減少される場合、治療は、十分な臨床的療法利益を有していない場合がある。反対に、電圧が、3,000Vに増加され、周波数が、400kHzに減少された場合、付帯的な敏感な組織に対する望ましくない治療効果範囲が、存在し得る。ある場合には、これらの所望されない組織の過剰治療は、患者に関する罹患または安全性の懸念をもたらし得る。他の場合では、非標的化または望ましくない組織の過剰治療は、それらが過剰に治療される場合、良性臨床転帰を有し、患者応答または罹患率に影響を及ぼさない場合がある。
【0094】
D.パケット
言及されるように、アルゴリズム152は、各エネルギーパケットが一連の高電圧パルスを備える、一連のエネルギーパケットを備える波形を有する、信号を処方する。サイクルカウント420は、各二相性パケット内のパルスの数の半分である。
図11を参照すると、第1のパケット402は、2のサイクルカウント420(すなわち、4つの二相性パルス)を有する。いくつかの実施形態では、サイクルカウント420は、パケットあたり1~100(その間の全ての値および部分範囲を含む)に設定される。いくつかの実施形態では、サイクルカウント420は、最大5パルス、最大10パルス、最大25パルス、最大40パルス、最大60パルス、最大80パルス、最大100パルス、最大1,000パルス、または最大2,000パルス(その間の全ての値および部分範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、サイクルカウントは、エネルギーの所望の合計オン時間を達成するように調節される。細胞死に関して、治療のための合計オン時間は、25~250μ秒、より具体的には、50~150μ秒であってもよい。カルシウム沈着物の途絶に関して、治療のための合計オン時間は、50~500μ秒、より具体的には、75~150μ秒であってもよい。
【0095】
パケット持続時間は、他の因子の中でもとりわけ、サイクルカウントによって決定される。典型的には、サイクルカウントが高いほど、パケット持続時間は、長くなり、送達されるエネルギーの量は、大きくなる。いくつかの実施形態では、パケット持続時間は、いくつか例を挙げると、50μ秒、60μ秒、70μ秒、80μ秒、90μ秒、100μ秒、125μ秒、150μ秒、175μ秒、200μ秒、250μ秒、100~250μ秒、150~250μ秒、200~250μ秒、500~1,000μ秒等の約50~1,000マイクロ秒の範囲内である。他の実施形態では、パケット持続時間は、150μ秒、200μ秒、250μ秒、500μ秒、または1,000μ秒等の約100~1,000マイクロ秒の範囲内である。
【0096】
治療の間に送達されるパケットの数またはパケットカウントは、変動してもよい。いくつかの実施形態では、電極活性化あたりのパケットの数は、1~30、より具体的には、1~10の範囲内である。送達されるパケットの数は、1つの活性化された電極から後続の活性化された電極まで、繰り返される、または変更されてもよい。これは、単極および双極電極配列に関して実施されてもよい。
【0097】
例示的パラメータ組み合わせは、以下を含む。
【化1】
【0098】
E.パケット間遅延
いくつかの実施形態では、休止周期406またはパケット間遅延と称される、パケットの間の時間は、約0.1秒~約5秒(その間の全ての値および部分範囲を含む)に設定される。他の実施形態では、休止周期406は、約0.001秒~約10秒(その間の全ての値および部分範囲を含む)に及ぶ。いくつかの実施形態では、休止周期406は、約1秒である。他の実施形態では、休止周期は、30秒、1分、または5分に到達してもよい。特に、いくつかの実施形態では、信号は、各パケットが、心拍に対して指定された周期内に同期的に送達されるように、心臓リズムと同期され、したがって、休止周期は、心拍と一致する。心臓同期が利用される、他の実施形態では、休止周期406は、後節において説明されるであろうように、パケットの間の休止周期が、心臓同期によって影響を受け得るため、変動してもよい。
【0099】
F.バッチ
心臓リズムに関する治療の安全性を確実にするために、治療は、同期的に送達されてもよく、それによって、PEFは、心臓リズムの安全なS-T間隔において送達される。治療は、心拍あたり複数のパケット(より速く、より多い潜在的な熱効果)を用いて、またはパケットの間の複数の心拍(より緩慢であるが、潜在的な熱効果を低減させる)を用いて送達されてもよい。同様に、二相性波形が、最小の心不整脈リスクを伴う非同期送達を可能にすることによって、治療送達の時間(血液または局所領域空間におけるアジュバント材料の生物学的利用能に関する考慮を含む)を熱負荷(治療の安全性プロファイルに影響を及ぼし得る高温において保持される温度および時間)と適切に平衡させるケーデンスにおいてパケットを送達することが、可能性として考えられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、信号は、各パケットが、心拍に対して指定された周期内に同期的に送達されるように、心臓リズムと同期され、したがって、休止周期は、心拍と一致する。心拍に対して各指定された周期内に送達されるパケットが、バッチまたはバンドルと見なされ得ることを理解されたい。したがって、各バッチは、治療終期の終了時、所望の合計数のパケットが送達されているように、所望の数のパケットを有する。各バッチは、同数のパケットを有してもよいが、しかしながら、いくつかの実施形態では、バッチは、様々な数のパケットを有する。
【0101】
いくつかの実施形態では、1つのみのパケットが、心拍の間に送達される。そのような事例では、休止周期は、バッチの間の周期と同一と見なされてもよい。しかしながら、1つを上回るパケットが、バッチの間に送達されるとき、休止時間は、典型的には、バッチの間の周期と異なる。そのような事例では、休止時間は、典型的には、バッチの間の周期よりもはるかに小さい。いくつかの実施形態では、各バッチは、いくつか例を挙げると、1~10パケット、1~5パケット、1~4パケット、1~3パケット、2~3パケット、2パケット、3パケット、4パケット、5パケット、5~10パケットを含む。いくつかの実施形態では、各バッチは、いくつか例を挙げると、0.5ミリ秒~1秒、1ミリ秒~1秒、10ミリ秒~1秒、10ミリ秒~100ミリ秒の周期を有する。いくつかの実施形態では、バッチの間の周期は、患者の心拍数に応じて、可変である。いくつかの事例では、バッチの間の周期は、0.25~5秒である。
【0102】
組織エリアの治療は、所望の数のバッチが組織エリアに送達されるまで続く。いくつかの実施形態では、2~50バッチが、治療毎に送達され、治療は、特定の組織エリアの治療と見なされる。他の実施形態では、治療は、5~40バッチ、5~30バッチ、5~20バッチ、5~10バッチ、5バッチ、6バッチ、7バッチ、8バッチ、9バッチ、10バッチ、10~15バッチ等を含む。
【0103】
G.位相遅延およびサイクル間遅延
切替時間または位相遅延は、
図15に図示されるように、二相性パルスの正および負のピークの間に送達される、エネルギーのない遅延または周期である。
図15は、その間に切替時間403を有する、二相性パルス(正のピーク408と、負のピーク410とを備える)の種々の実施例を図示する(しかしながら、切替時間403がゼロであるとき、これは、現れない)。いくつかの実施形態では、切替時間は、約0~約1マイクロ秒(その間の全ての値および部分範囲を含む)に及ぶ。他の実施形態では、切替時間は、1~20マイクロ秒(その間の全ての値および部分範囲を含む)に及ぶ。他の実施形態では、切替時間は、約2~約8マイクロ秒(その間の全ての値および部分範囲を含む)に及ぶ。
【0104】
遅延はまた、二相性パルスの各サイクルの間に差し挟まれてもよく、サイクル間遅延または「不感時間」と称される。不感時間は、二相性パルスの間であるが、パケット内で生じる。これは、パケットの間に生じる休止周期と対照的である。他の実施形態では、不感時間412は、約0~0.5マイクロ秒、0~10マイクロ秒、2~5マイクロ秒、0~20マイクロ秒、約0~約100マイクロ秒、または約0~約100ミリ秒(その間の全ての値および部分範囲を含む)の範囲内である。いくつかの実施形態では、不感時間412は、0.2~0.3マイクロ秒の範囲内である。不感時間はまた、パケット内の別個の単相性パルスの間の周期を定義するために使用されてもよい。
【0105】
いくつかのPEF波形は、強い圧力波および潜在的な電気アーク事象を誘発する。そのような波形の実施例は、約10μ秒を上回る単一パルスPEF波形またはスタックサイクルPEF波形(50%を上回るデューティサイクルを伴うバックツーバックサイクル)持続時間(電流依存性)を含む。これは、良好に接続された高伝導率の溶液の中へも生じ得る。これは、典型的には、電流密度が、特異点における集中または小さい電極に起因して高すぎるときに生じる。両方の効果は、患者に関する重大な有害事象を誘発し得、したがって、治療は、概して、これらの現象を誘発するものを下回る強度まで滴定されなければならない。しかしながら、いくつかの事例では、特定のレベルの圧力波および外部アーク効果が、許容される、またはさらには有益であり得ることを理解されたい。例えば、アテローム性動脈硬化の治療においてカルシウム沈着物を途絶させるとき、外部放電は、カルシウム沈着物を機械的に粉砕し得る、組織破砕に類似する圧力波を送達し得る。したがって、いくつかの実施形態では、位相遅延またはサイクル間遅延は、短い、最小である、またはゼロであってもよい。いくつかの実施形態では、これは、より低い周波数(最大100μ秒または1ミリ秒または10ミリ秒の長さの単相性波形まで、100kHzを下回る)を支援するであろう。いくつかの実施形態では、非対称波形から単相性波形までが、圧力波発生のために使用されてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、パケットを、非常に短い持続時間の、有意義に小さいデューティサイクルを伴うより小さい小成分に分割することによって、方略的にタイミングを合わせたエネルギー送達を含む、安全なPEF波形が、提供される。これは、パルス間遅延14、サイクル間遅延16、位相間遅延18、パケット間遅延22、バンドル間遅延26等の具体的に設置され、タイミングを合わせた遅延の導入によって達成される。遅延の組み合わせが、所望の転帰を取得するために、治療内で利用され得ることを理解されたい。特に、これらの遅延は、特定の所望の転帰を取得するために、具体的に操作されてもよい。例えば、これらの遅延のうちの1つ、いくつか、または全てが、いくつか例を挙げると、ガス形成、放電、空洞形成、筋収縮、および温度上昇等の任意の関連付けられるリスクを軽減するように、PEF療法の種々の側面を制御するように操作されてもよい。いくつかの実施形態では、遅延は、それにわたって(高)電圧PEFエネルギーが送達される周期を分散させ、治療送達転帰の顕著な変化および最適化をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に説明される遅延の範囲は、0秒~100ミリ秒である。
【0107】
いくつかの実施形態では、遅延周期は、エネルギー送達のペースを分散させ、それらがそれらの蓄積から効果を誘発することに先立って、ある効果の分解および減衰を可能にするように操作される。電荷蓄積および減衰が、他の効果と異なるタイムスケールにある、生物学的細胞および組織操作のためにPEFを印加するとき、いくつか例を挙げると、ガス形成、放電、空洞形成、筋収縮、および温度上昇等の様々な二次的治療効果を引き起こすことなく、複数のサイクルまたは一連のパルスを用いて細胞に対する治療効果を蓄積することが、可能性として考えられる。他の事例では、これらの二次的な蓄積された治療効果は、療法転帰を開始または増強するために望ましくあり得、したがって、遅延は、これらの効果を促すように選択され、これは、再び、PEFに対する細胞および組織応答を誘発する主目的を改変しない様式において行われる。二次的効果のこれらの実施例は、網羅的リストではなく、操作されることが所望される他の二次的効果もまた、適切な遅延を選択することによって制御されてもよい。例示的遅延および二次的効果との関係が、2021年4月8日に出願され、「PULSED ELECTRIC FIELD WAVEFORM MANIPULATION AND USE」と題された、国際特許出願第PCT/US2021/026221号(あらゆる目的のために、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0108】
全体として、所与の療法に関するガス形成、放電、空洞形成、筋収縮、および温度上昇等の各二次的治療効果への感受性および敏感さは、変動するであろう。下記の表1は、種々の標的化組織の種類に対するこれらの効果を軽減するために使用され得る、遅延の潜在的な最も適用可能な範囲を要約する。とりわけ、本表は、二次的効果を軽減するための用途に焦点を当てているが、これらの効果が促されることが所望され得る、他の場合も、存在し、したがって、異なる範囲の遅延が、所与の療法標的に関して適用可能であり得る。
【0109】
【0110】
上記の詳述される説明は、詳述される説明の一部を形成する、付随の図面の参照を含む。図面は、例証として、本発明が実践され得る、具体的実施形態を示す。これらの実施形態はまた、本明細書では「実施例」と称される。そのような実施例は、示される、または説明されるものに加えて、要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らはまた、示される、または説明されるそれらの要素のみが提供される、実施例を想定する。また、本発明者らはまた、本明細書に示される、または説明される、特定の実施例(またはそれらの1つまたはそれを上回る側面)に関するか、または他の実施例(またはそれらの1つまたはそれを上回る側面)に関するかのいずれかの、示される、または説明されるそれらの要素(またはそれらの1つまたはそれを上回る側面)の任意の組み合わせまたは並び替えを使用する実施例を想定する。
【0111】
参照することによってそのように組み込まれる、本書と任意の文書との間に矛盾する使用法が生じた場合には、本書での使用法が、優先される。
【0112】
本書では、用語「a」または「an」が、特許文書において一般的であるように、「少なくとも1つ(at least one)」または「1つまたはそれを上回る(one or more)」の任意の他の事例または使用法から独立して、「1つまたは1つを上回る(one or more than one)」を含むように使用される。本書では、用語「または(or)」は、別様に示されない限り、「AまたはB」が、「BではなくA」と、「AではなくB」と、「AおよびB」とを含むように、「非排他的または」を指すように使用される。本書では、用語「~を含む(including)」および「その中で(in which)」は、個別の用語「~を備える(comprising)」および「その中で(wherein)」の平易な英語の均等物として使用される。また、以下の請求項では、用語「~を含む(including)」および「~を備える(comprising)」は、非制約的であり、すなわち、請求項内でそのような用語の後に列挙されるものに加えて、要素を含む、システム、デバイス、物品、組成物、製剤、またはプロセスも、依然として、その請求項の範囲内に該当すると見なされる。また、以下の請求項では、用語「第1」、「第2」、および「第3」等は、単に、標識として使用され、それらの目的に数値要件を課すことを意図していない。
【0113】
上記の説明は、制限的ではなく、例証的であることを意図している。例えば、上記に説明される実施例(またはそれらの1つまたはそれを上回る側面)は、相互と組み合わせて使用され得る。他の実施形態も、上記の説明の精査に応じて、当業者等によって使用されることができる。要約は、37C.F.R.§1.72(b)に準拠し、読者が、本技術開示の性質を迅速に確認することを可能にするために提供される。これが、請求項の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないであろうという理解を伴って思量されたい。また、上記の詳細な説明では、種々の特徴が、本開示を簡潔にするために、ともに群化されている場合がある。これは、請求されていない開示される特徴がいかなる請求項にも不可欠であることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示される実施形態の全ての特徴よりも少ないものにあり得る。したがって、以下の請求項は、本明細書において、実施例または実施形態として詳細な説明の中に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として独立し、そのような実施形態が、種々の組み合わせまたは並び替えにおいて相互と組み合わせられ得ることが想定される。本発明の範囲は、そのような請求項が享有する均等物の全範囲とともに、添付される請求項を参照して決定されるべきである。
【国際調査報告】