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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】二重特異性結合分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240614BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/18
A61K39/395 N
A61K38/17 100
A61P25/00
A61P25/28
A61P21/00
A61P9/10 101
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/14
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575853
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022065915
(87)【国際公開番号】W WO2022258841
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21179103.3
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519007514
【氏名又は名称】バイオアークティック アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ファルク
(72)【発明者】
【氏名】ペール-オーラ フレスクゴード
(72)【発明者】
【氏名】ケン ホーネク
(72)【発明者】
【氏名】リサ サンダーフェー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA41
4C084DA39
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA15
4C084ZA16
4C084ZA18
4C084ZA45
4C084ZA94
4C084ZB26
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
二重特異性結合分子であって、血液脳関門(BBB)を通過する該二重特異性結合分子の輸送を媒介する標的に対して親和性を有する一本鎖結合モジュールに連結された、2つの同一の抗体軽鎖を含む1つのポリペプチド鎖である1つの一本鎖成分と、2つの同一の抗体重鎖とを含んで成る、二重特異性結合分子が提供される。この二重特異性結合分子の治療、予防、予後予測および診断用途も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の3つのポリペプチド鎖:
(A)哺乳動物の脳内に存在する第一の標的に対して親和性を有するモノクローナル抗体に由来する2つの同一の抗体重鎖(HC)と、
(B)連続ポリペプチド鎖中に以下の5つの要素:
i)前記第一の標的に対して親和性を有する前記モノクローナル抗体に由来する2つの同一の抗体軽鎖(LC);
ii)血液脳関門を介した二重特異性結合分子の輸送を媒介する第二の標的に対して親和性を有する1つの単鎖結合モジュール(scBM);および
iii)2つのアミノ酸リンカーL1とL2
を含む1つの一本鎖成分と
を含んで成る二重特異性結合分子であって、
前記軽鎖(LC)と前記一本鎖結合モジュール(scBM)とが、前記リンカーL1およびL2によって分離され、それによりN末端からC末端まで以下の群:
[LC-L1-scBM-L2-LC]、
[LC-L1-LC-L2-scBM]、および
[scMB-l1-LC-L2-LC]
から成る群より選択された配列を形成している、二重特異性結合分子。
【請求項2】
前記一本鎖成分におけるN末端からC末端までの要素の配列が、
[LC-L1-scBM-L2-LC]および
[LC-L1-LC-L2-scBM]
から成る群より選択される、請求項1に記載の二重特異性結合分子。
【請求項3】
前記第一の標的が、アミロイド-βペプチドまたはその誘導体もしくはフラグメント、α-シヌクレインまたはその誘導体もしくはフラグメント、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)またはその誘導体もしくはフラグメント、骨髄細胞上に発現されるトリガー受容体2(TREM2)、β-セクレターゼ1(BACE1)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ハンチンチン、トランスサイレチン、P-セクレターゼ1、上皮成長因子、上皮成長因子受容体2、タウ、リン酸化タウまたはそのフラグメント、アポリポタンパク質E4、CD20、プリオンタンパク質、ロイシンリッチリピートキナーゼ2、パーキン(parkin)、プレセニリン2、γ-セクレターゼ、死受容体6、アミロイドβ前駆体タンパク質、p75ニューロトロフィン受容体、ニューレグリンおよびカスパーゼ6から成る群より選択される、請求項1~2のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項4】
前記第一の標的に対して親和性を有する前記モノクローナル抗体が、レカネマブ、ガンテネルマブ、アデュカヌマブ、ドナネマブ、PBD-C06およびKHK6640から成る群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項5】
前記第一の標的に対して親和性を有する前記モノクローナル抗体が、抗α-シヌクレイン抗体ABBV0805である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項6】
前記scBMがscFv、scFab、VHHおよびVNARから成る群より選択されたタイプのものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項7】
前記scBMがscFvである、請求項6に記載の二重特異性結合分子。
【請求項8】
前記第二の標的が、トランスフェリン受容体1(TfR1)、インスリン受容体(InsR)、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(Lrp8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(Lrp1)、CD98、膜貫通タンパク質50A(TMEM50A)、グルコース輸送体1(Glut1)、ベイシジン(BSG)およびヘパリン結合上皮成長因子様成長因子から成る群より選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項9】
前記アミノ酸リンカーL1およびL2の両方がフレキシブルリンカーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項10】
前記フレキシブルリンカーが、グリシン、セリン、アラニンおよび/またはスレオニン残基を含む、請求項9に記載の二重特異性結合分子。
【請求項11】
前記アミノ酸リンカーL1およびL2の少なくとも1つが、長さ10~50アミノ酸残基、例えば長さ10~30アミノ酸残基、例えば長さ15~25アミノ酸残基、または長さ10~20アミノ酸である、請求項1~10のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項12】
前記アミノ酸リンカーL1およびL2が同じ長さであるか、または前記アミノ酸リンカーL1およびL2が異なる長さである、請求項1~11のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項14】
処置における使用のための、例えば治療処置もしくは予防処置における使用のための、またはインビボ診断もしくはインビボ予後診断における使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記治療、予防、インビボ診断またはインビボ予後診断が、
・神経変性疾患、例えばアルツハイマー病およびAβタンパク質凝集に関連する他の疾患、外傷性脳損傷(TBI)、レビー小体認知症(LBD)、ダウン症候群(DS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭型認知症、タウオパチー、全身性アミロイドーシス、アテローム性動脈硬化、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、アルツハイマー病のレビー小体変性症、多系統萎縮症、精神病、統合失調症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病および家族性アミロイド神経疾患から選択された疾患;または
・脳腫瘍、多発性硬化症およびリソソーム蓄積症から選択された疾患
に関するものである、請求項14に記載の使用のための特異性結合分子または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2つの同一の抗体重鎖と1つの一本鎖成分とを含んで成る二重特異性結合分子に関し、前記一本鎖成分が、前記二重特異性結合分子が血液脳関門(BBB)を通過する輸送を媒介する標的(ターゲット)に対して親和性を有する一本鎖結合モジュールに連結されている、2つの同一の抗体軽鎖を含むポリペプチド鎖であることを特徴とする。前記抗体重鎖と抗体軽鎖は、哺乳動物の脳内に存在する標的に対して親和性を有するモノクローナル抗体に由来する。
【0002】
本開示はまた、二重特異性結合分子の治療的、予防的、予後予測的および診断的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
脳および神経疾患の治療モダルティは、血流にて運搬される大部分の物質に対して脳血管が不透過性であるために、非常に制限されている(FreskgardおよびUrich(2017)、Neuropharmacology、120:38-55;Stanimirovic他(2018)、BioDrugs、32:547-559)。血液脳関門(BBB)と総称される脳の微小血管(毛細血管)は、体の周囲に存在する血管と比較してユニークである。星状膠細胞、周皮細胞およびニューロンなどの神経細胞に対してBBBの内皮細胞(EC)が緊密に並置されており、観察される不透過性の一因となる表現型特性を生み出している。BBB中のEC間の密着結合は、傍細胞輸送を制限し、その一方で受動的飲小胞と蝸牛窓小窩の欠如が、非特異的な細胞間輸送を制限する。これらの因子は協働して、血液から脳への分子フラックスを、一般的に大きさが500ダルトン(Da)未満でかつ親油性である分子に限定する。そのため、所望の薬理特性を有する薬剤が、偶然にもBBBを通過するのを可能にするサイズと親油性特性を有するような状況でない限り、輸送媒体として血流の大質量輸送表面積(ヒト脳では600kmの毛細血管から20m超の表面積)を使用できるという有望な可能性が、ほとんど実現不可能になる。かかる制限のため、全ての小分子薬剤の98%以上、そしてタンパク質や遺伝子治療薬の新興クラスのほぼ100%が、BBBを通過しないと推定されている。
【0004】
国際公開WO91/03259は、BBBを通過する神経学的薬剤を輸送するための原理を提唱しており、それはトランスフェリン受容体と反応性である抗体に該薬剤をコンジュゲーション(連結)することを含む。この開示によれば、トランスフェリン受容体へのコンジュゲート(連結体)の結合が、BBBを通過する該コンジュゲートの能動輸送をもたらしている。それ以後の研究は、この基本的概念を更に発展させ、例えば、トランスフェリン受容体に代わるものとして、BBB輸送に有用であり得る別の受容体を提案している。
【0005】
国際公開WO2012/075037は、BBB受容体に特異的であり、且つ輸送を媒介する1つのFab部分と、脳内の治療標的(ターゲット)に特異的な1つのFab部分とを有する、二重特異性抗体を開示している。WO2012/075037の図3Aは、この教示の代表的な実施形態を示している。
【0006】
国際公開WO2014/033074は、脳内の治療標的に向けられた標準的な一特異性でかつ二価の抗体と、BBB受容体に特異的である結合ドメインとを含む、二重特異性結合分子を開示している。前記結合ドメインは、抗体の2つの重鎖のうちの1つのC末端に結合される。WO2014/033074の図1Bは、この教示の代表的な実施形態を示している。さらに、BBB受容体への一価結合が、二価結合よりも効率的なBBB輸をもたらすことが開示されている。Roche社からのルーマニア特許RO7126209に記載の生物医薬品候補は、国際公開WO2014/033074に記載の設計を使用していると思われる。ルーマニア特許RO7126209は、clinicaltrials.gоv.(NIHとFDA共同の臨床試験登録システム)上に登録された治験識別番号NCT04023994およびNCT04639050を有する臨床試験に入っている。
【0007】
国際公開WO2018/011353は、脳内の治療標的に対して向けられた標準的な一特異性でかつ二価の抗体に、複数のBBB受容体結合性要素を具備させたが、それにもかかわらず、BBB受容体への所望の一価結合が可能であるようにそれらの要素が配置されている、別の代替構築物を開示している。WO2018/011353の図1Aは、この教示の代表的な実施形態を示している。
【0008】
トランスフェリン受容体および他の受容体によって媒介される能動輸送を介してBBBを通過する能力を有する抗体および抗体由来のバイオ医薬品を提供するための様々な実験フォーマットの存在にもかかわらず、これらのいずれも1つ以上の欠点を有しており、脳および中枢神経系の疾患を検出して治療するための、高機能性の治療的、予防的、診断的および予後予測的ツールのさらなる開発のために、BBBを横断することができる新規バイオ医薬品のニーズが依然として残っている。
【発明の概要】
【0009】
発明の説明
本発明の目的は、抗体ベースの治療薬を脳に到達できるようにする設計フォーマットを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、脳内の標的に対しておよびBBB輸送メディエータ(媒介物質)に対して親和性を有する二重特異性結合分子のための、フォーマットを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、発現および組立てが容易であり、同時にBBB輸送メディエータに対して一価結合を提供する、対称性フォーマットを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、BBB輸送メディエータとの二価の相互作用につながり得る任意の生成物の形成を防止する、対称性フォーマットを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、2つの異なる連続ポリペプチド鎖のみから、使用準備が整っている対称性二重特異性結合分子を作製することである。
【0014】
開示される様々な態様によって、これらの目的のうちの1つ以上、および本開示全体を読み取ることから当業者に明らかである他の目的が満たされる。
【0015】
したがって、第一の態様では、本開示は、以下の3つのポリペプチド鎖:
(A)哺乳動物の脳内に存在する第一の標的に対して親和性を有するモノクローナル抗体に由来する2つの同一の抗体重鎖(HC)と、
(B)連続ポリペプチド鎖中に以下の5つの要素:
i)前記第一の標的に対して親和性を有する前記モノクローナル抗体に由来する2つの同一の抗体軽鎖(LC);
ii)血液脳関門を通過する二重特異性結合分子の輸送を媒介する第二の標的に対して親和性を有する1つの一本鎖結合モジュール(scBM);および
iii)2つのアミノ酸リンカーL1およびL2
を含む1つの一本鎖成分と
を含んで成る二重特異性結合分子であって、
前記軽鎖(LC)と前記一本鎖結合モジュール(scBM)とが、前記リンカーL1およびL2によって分離され、それによりN末端からC末端まで以下:
[LC-L1-scBM-L2-LC]、
[LC-L1-LC-L2-scBM]および
[scMB-L1-LC-L2-LC]
から成る群より選択された配列を形成している、二重特異性結合分子を提供する。
【0016】
上記に定義されるような二重特異性結合分子は、該二重特異性結合分子が第一の標的に対して親和性を有するモノクローナル抗体を実質的に再現する標準的な抗体構造を取るように、前記一本鎖成分中の各軽鎖LC要素と各重鎖HCとの会合を通して形成されるだろう。ここで前記リンカーL1およびL2を介してその二重特異性結合分子に一本鎖結合モジュールscBMがカップリングされており、前記重鎖(HC)および軽鎖(LC)は前記モノクローナル抗体に由来する(二重特異性結合分子の2つの異なる実施形態の概略については図1および2を参照されたい)。
【発明の効果】
【0017】
理論に束縛されることを望むものではないが、非限定的な例として、本開示の二重特異性結合分子は、BBBを通過して治療抗体を輸送するための既存のフォーマットを上回る下記の利点を提供する。
【0018】
国際公開WO2012/075037およびWO2014/033074に開示された構築物は、両方とも非対称性の構築物であり、例えばノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)技術を使用して組み立てる(assemble)必要がある、異なる重鎖要素の発現を必要とする。これは、生産の非効率化、鎖の不均衡問題の可能性、および望ましくない副生成物の随伴生成につながる場合がある(例えば、ホモ二量体であるノブ-ノブ副生成物やホール-ホール副生成物の生成;Kuglstatter他(2017)、Protein.Eng.Des.Sel.30:649-656を参照されたい)。任意の抗体ヘテロ二量化技術のためには、ホモ二量体副生成物の不純物が低含有量であるかあるいは存在しないことさえ望まれる。これは、望ましくないホモ二量体が所望の生成物と同様の生物物理学的性質を有する場合に当てはまり、生産規模での精製工程を使用して分離することを困難にしてしまう。望ましくないホモ二量体が、BBB輸送メディエータに対する親和性のような生物活性を保持している場合にも、その状況が同様に当てはまる。これは、ホモ二量体副生成物が、望ましくない生物活性、例えばBBB輸送メディエータの二量体化または多量体化につながる活性を誘発し、ひいては分子の機能を低下させることになる可能性を有する場合に特に重要である。一方、本開示の二重特異性結合分子は1種類だけの重鎖から成り、この意味では対称性の構築物である。
【0019】
国際公開WO2018/011353に開示された構築物は、重鎖の非対称性に関連する欠点を持たないが、その代わりに、2つの別個のBBB結合成分を含むために、BBB輸送メディエータへの必要な一価結合を提供することができない場合もあり得る。WO2018/011353において発明者らは、二価構築物が特定の状況ではそれでも一価結合を付与することを開示しているが、WO2018/011353における原理の一般的適用性に関する不確実さは残る。本開示の二重特異性結合分子は、この不確実さが除去され、BBB輸送のメディエータに対する真の一価結合が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一本鎖成分の全体的アーキテクチャ
本開示によれば、一本鎖成分は、一本の連続ポリペプチド鎖中に5つの要素を含む。5つの要素のうちの1つは、BBBを通過する輸送を媒介する標的との親和性を有する一本鎖結合モジュール(scBM)である。5つの要素のうちの2つは、2本の同一の重鎖(HC)と結合して二重特異性結合分子の抗体部分を形成する2本の同一の抗体軽鎖(LC)である。当業者によって理解されるように、scBMおよびLC要素は、その各々が重鎖(HC)と会合すること(軽鎖要素の場合)か、またはBBB標的に対して結合親和性を有する二重特異性結合分子を提供する(scBMの場合)ことのいずれかの目的を果たすことができるように、一本鎖成分中で互いに分離されていなければならない。この目的上、これらの3つの要素は、一本鎖成分中の残りの2つの要素、すなわち2つのアミノ酸リンカーL1およびL2によって分離される。この点に関し、前記リンカーが3つの結合要素を分離する限り、一本鎖成分内で各要素の任意の順序が可能であることが企図される。言い換えれば、二重特異性結合分子の一本鎖成分中の3つの可能な配列は、N末端からC末端まで以下の配列である:
[LC-L1-scBM-L2-LC]、
[LC-L1-LC-L2-scBM]、および
[scBM-L1-LC-L2-LC]。
【0021】
一実施形態では、前記要素の配列は、[LC-L1-scBM-L2-LC]および[LC-L1-LC-L2-scBM]から選択される。特定の実施形態では、前記要素の配列は[LC-L1-scBM-L2-LC]である。別の特定の実施形態では、前記要素の配列は[LC-L1-LC-L2-scBM]である。
【0022】
抗体重鎖および軽鎖
本開示の二重特異性結合分子では、抗体重鎖要素と抗体軽鎖要素、すなわちHCおよびLCは、それぞれ、哺乳動物の脳内に存在する第一の標的に対して親和性を有するモノクローナル抗体に由来する。この特定の文脈で使用される場合、「に由来する」とは、HCおよびLCの各々のアミノ酸配列が、そのHCとLCが由来する「親」モノクローナル抗体の配列と比較して、本質的に変化しないことを意味する。すなわち、本開示の二重特異性結合分子は、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をそれぞれHCおよびLCとして組み込んでいる。
【0023】
本開示の二重特異性結合分子では、2つの抗体重鎖(HC)要素と、一本鎖成分中の2つの軽鎖(LC)要素とが結合して古典的な抗体構造を形成し、scBMがL1およびL2リンカーを介してそれに取り付けられている。したがって、二重特異性結合分子は、HCおよびLCの各ペアからの2つのVH-VLペアを含み、それらが由来する(親の)モノクローナル抗体と同じかまたは本質的に同じ方法で、相補性決定領域(CDR)を介して第一の標的に結合する能力を有する。
【0024】
その結合したHC要素とLC要素を介して、本開示の二重特異性結合分子は哺乳動物の脳内に存在する第一の標的に対する親和性を有する。この標的は、典型的には、そのような疾患の治療または予防の文脈において、標的と結合、ブロッキング、活性化または他の方法で相互作用するというような様式で疾患と関連づけられる。しかしながら、本開示にかかる二重特異性結合分子の特定の利点は、主に、脳内の狙った目的地に到達するための標的結合活性の能力の向上からもたらされるのであり、それがいずれかの特定の第一の標的に結合するという事実からではない。したがって、第一の標的の特別な性質は限定されず、その標的と相互作用するために重要でありうる脳内の任意の標的であることができる。
【0025】
それにもかかわらず、例示として、前記第一の標的は、特定の実施形態では、アミロイドβペプチドまたはその誘導体もしくはそのフラグメント、α-シヌクレインまたはその誘導体もしくはフラグメント、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)またはその誘導体もしくはフラグメント、骨髄細胞上に発現されるトリガー受容体2(TREM2)、β-セクレターゼ1(BACE1)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ハンチンチン、トランスサイレチン、P-セクレターゼ1、上皮成長因子、上皮成長因子受容体2、タウ、リン酸化タウまたはそのフラグメント、アポリポタンパク質E4、CD20、プリオンタンパク質、ロイシンリッチリピートキナーゼ2、パーキン(parkin)、プレセニリン2、γセクレターゼ、死受容体6、アミロイドβ前駆体タンパク質、p75ニューロトロフィン受容体、ニューレグリンおよびカスパーゼ6から成る群より選択され得る。
【0026】
より具体的な実施形態では、第一の標的は、アミロイドβペプチドまたはその誘導体もしくはフラグメント、α-シヌクレインまたはその誘導体もしくはフラグメント、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)またはその誘導体もしくはフラグメント、トリガー受容体、骨髄細胞2(TREM2)、タウ、リン酸化タウまたはそのフラグメントおよびアポリポタンパク質E4から成る群より選択される。
【0027】
特に特定の実施形態では、第一の標的は、アミロイドβペプチドまたはその誘導体もしくはフラグメント、α-シヌクレインまたはその誘導体もしくはフラグメント、並びにTAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)またはその誘導体もしくはフラグメントから成る群より選択される。
【0028】
哺乳動物の脳内に存在する上記に列挙した標的のいずれか1つ以上に結合する任意のモノクローナル抗体は、本開示の二重特異性結合分子内のHC要素およびLC要素の供給源として有用であると考えられる。生物医薬研究分野の当業者は、このような標的に対して親和性を有する多数のモノクローナル抗体を熟知している。
【0029】
一実施形態では、HC要素とLC要素が由来する(親の)モノクローナル抗体は、IgGクラスの抗体である。より具体的な実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2およびIgG4から選択されるサブクラスのものであり、例えばIgG1およびIgG4から選択される。使用される所望のサブクラスは、例えば、モノクローナル抗体の必要な機能に依存する。より具体的な実施形態では、抗体は、サブクラスIgG1のものである。IgG1抗体は、例えば効果的な抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)または補体依存性細胞傷害(CDC)が所望される場合に特に好ましい。
【0030】
一実施形態では、HC要素とLC要素が由来する(親の)モノクローナル抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびエフェクター機能を低下させるため、血漿中半減期を延長するため、またはヒトにおけるその抗原性を低下させるために突然変異されている抗体から成る群より選択される。
【0031】
HC要素とLC要素が由来する特定のモノクローナル抗体の非限定的な例は、レカネマブ、ゲンテネルマブ、アデュカヌマブ、ドナネマブ、PBD-C06およびKHK6640から成る群より選択されるような、アミロイドβの様々な形態に対して向けられた既知抗体である。HC要素とLC要素が由来するモノクローナル抗体の別の例は、α―シヌクレインに対して向けられた抗体、例えばABBV0805である。
【0032】
以下の実施例において、本開示の二重特異性結合分子の概念を試験したところ、意図した方法で機能することが見出された。具体的には、実施例10、14および15は、インビボでのマウス研究において本明細書に定義されるような種々の二重特異性結合分子を示している。マウスにおける適切な概念検証(プルーフ・オブ・コンセプト)構築物として機能するためには、実施例で試験した二重特異性結合分子が、上述したヒトでの使用を目的に企図されているヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体のいずれか由来のものではなく、アミロイドβプロトフィブリルに対する親和性を有するマウスモノクローナル抗体(mAb158)由来の抗体重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを有する。このマウス抗体mAb158は、ヒト化モノクローナル抗体レカネマブ(別名BAN2401;国際公開WO2007/108756を参照)のマウス前駆体である。
【0033】
一本鎖結合モジュール
一実施形態では、一本鎖成分の一本鎖結合モジュール(scBM)要素は、抗体由来のものである。scBMは、例えば、既知の一本鎖フォーマット、例えばscFv、scFab、VHHおよびVNARから成る群より選択することができる。一実施形態では、scBMは、scFvおよびscFabから成る群より選択される。より具体的な実施形態では、scBMはscFvである。別の特定の実施形態では、scBMはscFabである。
【0034】
別の実施形態では、一本鎖成分のscBM要素は、抗体由来ではない。この実施形態では、scBMは、例えば、既知の非抗体スキャフォールド、例えば、モノボディ〔アドネクチン(Adnectin)(登録商標)分子〕、プロテインZ変異体〔アフィボディ(Affibоdy(登録商標)分子〕、リポカリン〔アンチカリン(Anticalin)(登録商標)タンパク質〕、二環式ペプチド、アンカイリンリピートタンパク質〔DARPin(登録商標)分子〕、フィノマーおよびクニッツ(Kunitz)ドメインから成る群より選択される。
【0035】
本開示の二重特異性結合分子の一本鎖成分中に提供される一本鎖結合モジュール(scBM)は、第二の標的、すなわち被験体に投与したときにBBBを通過する二重特異性結合分子の輸送を媒介する第二の標的に対して親和性を有する。この第二の標的は、例えば、BBBの内皮細胞の表面上に見出される受容体または他のリガンドであり得る。当業者は、BBB輸送、いわゆる「ブレイン・シャトル(brain shuttling;脳内への物質の行き来)」の目的で試験されている多数の異なる標的を理解しており、かかる標的に対するその親和性に基づいて適切な一本鎖結合モジュールを選択することができる。
【0036】
一実施形態では、第二の標的は、トランスフェリン受容体1(TfR1)、インスリン受容体(InsR)、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(Lrp8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(Lrp1)、CD98、膜貫通タンパク質50A(TMEM50A)、グルコース輸送体1(Glutl)、ベイシジン(BSG)、およびヘパリン結合上皮成長因子様成長因子から成る群より選択される。
【0037】
より具体的な実施形態では、前記第二の標的は、トランスフェリン受容体1(TfR1)、インスリン受容体(InsR)、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)および低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(Lrp8)から成る群より選択される。
【0038】
さらにより具体的な実施形態では、前記第二の標的はトランスフェリン受容体1(TfR1)である。
【0039】
以下の実施例で報告される概念検証(プルーフ・オブ・コンセプト)試験では、試験される二重特異性結合分子は、マウストランスフェリン受容体1(mTfR1)に対して親和性を有するscFvドメインをscBMとして使用する。scFvドメインは、モノクローナルマウス抗mTfR1抗体8D3(Kissel他(1998)、Histochem.Cell.Biol.110:63-72)のVHドメインとVLドメインとから構築される。
【0040】
リンカーL1およびL2
リンカーL1およびL2の設計に関して、当業者は、二重特異性結合分子の一本鎖成分などの融合タンパク質の構築が、融合しようとする機能的成分の間にリンカーの使用をしばしば伴うこと、そして様々な性質を有する様々な種類のリンカー、例えばフレキシブルアミノ酸リンカー、剛性アミノ酸リンカー、切断可能アミノ酸リンカーのようなリンカーが存在しうることを理解している。上述のように、本開示にかかる二重特異性結合分子内の一本鎖成分は、2つのリンカーL1およびL2を含む。一実施形態では、L1およびL2の一方または両方が、フレキシブルアミノ酸リンカー、剛性アミノ酸リンカーおよび切断可能アミノ酸リンカーから適切に選択される。一実施形態では、L1およびL2の少なくとも一方が、フレキシブルアミノ酸リンカーである。別の実施形態では、L1およびL2の両方がフレキシブルアミノ酸リンカーである。当業者により周知のとおり、フレキシブルリンカーは、結合されるドメインまたは要素が、ある程度の動きまたは相互作用を必要とする場合に頻繁に使用され、本開示の二重特異性結合分子のいくつかの実施形態において特に有用であり得る。フレキシブルリンカーは、通常、非極性(例えばGまたはA)または極性(例えばSまたはT)の小型アミノ酸から構成される。いくつかのフレキシブルリンカーは、主にGおよびS残基の伸長鎖、例えば(GGGGS)から成る。コピー数「p」を調整することによって、機能性成分間の適切な分離を果たすために、または必要な成分間相互作用を維持するために、リンカーを最適化することが可能になる。GおよびSリンカーとは別に、他のフレキシブルリンカー、例えば柔軟性を維持するためにTおよびAなどの追加のアミノ酸残基、および/または可溶性を高めるために極性アミノ酸残基、を含有するGおよびSリンカーといった他のフレキシブルリンカーが当技術分野で知られている。
【0041】
本開示の二重特異性結合分子の一実施形態では、リンカーL1およびL2の少なくとも一方が、グリシン(G)、セリン(S)、アラニン(A)および/またはスレオニン(T)残基を含むフレキシブルリンカーである。別の実施形態では、リンカーL1およびL2の両方が、かかるフレキシブルリンカーである。
【0042】
本開示の二重特異性結合分子の一実施形態では、リンカーL1およびL2の少なくとも一方が、(Gおよび(Sから選択される一般式を有し、ここで、独立して、n=1~7、m=0~7、n+m≦8およびp=1~10である。一実施形態では、n=1~5である。一実施形態では、m=0~5である。一実施形態では、p=3~10である。より特定の実施形態では、n=4、m=1およびp=1~4である。一実施形態では、リンカーL1およびL2の少なくとも一方が、(GS)(配列番号1)、(GS)(配列番号2)、(GS)(配列番号3)および(GS)10(配列番号4)から成る群より選択される。特定の一実施形態では、L1およびL2の少なくとも一方が(GS)である。別の実施形態では、L1およびL2の少なくとも一方が(GS)である。
【0043】
本開示の二重特異性結合分子の一実施形態では、リンカーL1およびL2のうちの少なくとも一方が、G、S、TおよびA残基を含むフレキシブルリンカーである。1つのそのような実施形態では、L1およびL2のうちの少なくとも一方が、配列番号5のアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、L1およびL2の少なくとも一方が、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0044】
本開示の二重特異性結合分子の一実施形態では、L1とL2は同一である。別の実施形態では、L1とL2は異なる。
【0045】
一実施形態では、L1およびL2は同じ長さを有し、すなわち同数のアミノ酸残基を有する。別の実施形態では、L1およびL2は異なる長さを有する。そのような実施形態では、L1はL2より長くてよく、逆もまた同様である。
【0046】
一実施形態では、L1および/またはL2は、10~50アミノ酸残基の長さ、例えば10~30アミノ酸残基の長さ、例えば15~25アミノ酸残基の長さ、または10~20アミノ酸残基の長さのものである。
【0047】
標的に対する親和性
本明細書で使用する場合、「Xに対する特異的結合」、「Xに対する選択的結合」、「Xに対する親和性」〔ここでXは標的(例えば抗原またはエピトープ)である〕という用語は、抗体またはその抗原結合フラグメントのような結合分子の特性を指し、それは例えばELISAにより、表面プラズモン共鳴(SPR)により、結合平衡除外法(Kinetic Exclusion Assay;KinExA(登録商標))によりまたはバイオレイヤー干渉法(BLI)により、試験することができる。当業者は、これらの方法および他の方法を心得ている。
【0048】
例えば、標的、抗原またはエピトープXに対する結合親和性は、試験すべき結合分子を、XがコーティングされたまたはエピトープXを含む分子がコーティングされたELISAプレート上で捕捉し、次いでビオチン化検出抗体を添加し、続いてストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を添加するという実験において試験することができる。あるいは、前記検出抗体をHRPと直接結合してもよい。テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加し、ELISAマルチウェルプレートリーダーを用いて450nmでの吸光度を測定する。次いで、当業者は、かかる実験によって得られた結果を解釈して、少なくとも結合分子のXに対する結合親和性の定性的尺度を確立することができる。定量測定が望まれる場合、例えば、相互作用についてのEC50値(50%最大有効濃度)を決定するために、ELISAを使用してもよい。Xの希釈系列に対する結合分子の応答は、上記のELISAを使って測定することができる。次いで、当業者は、例えばGraphPad Prism v.9および非線形回帰を使用して、かかる実験によって得られた結果を解釈し、その結果からEC50値を算出することができる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「EC50」という用語は、特定の露光時間後にベースラインと最大値の間の半分のレスポンスを誘導する結合分子の50%最大有効濃度を指す。
【0050】
さらに、阻害ELISAを使用して、「IC50」(50%最大阻害濃度)を決定することにより、相互作用の定量的尺度を得ることができる。阻害ELISAでは、流体試料中の標的Xの濃度は、期待されるシグナル出力において干渉を検出することによって測定される。理論上、既知の標的またはエピトープ担持物質が、マルチウェルプレートをコーティングするために使用される。並行して、標的に対して期待親和性を有する結合分子を添加し、変化させた濃度で標的を含有する溶液と共にインキュベートする。標準的なブロッキングおよび洗浄工程に続いて、前記結合分子と前記標的との混合物を含む試料をウェルに添加する。次いで、前記結合分子に対して親和性を有する標識された検出抗体を、関連の基質(例えばTMB)を用いた検出のために適用する。原則として、流体試料中に高濃度の標的が存在する場合、シグナル出力の有意な低下が観察される。対照的に、流体試料中に極少量の標的が存在する場合、期待されるシグナル出力の減少は非常に小さくなるだろう。当業者は、シグナル出力もまた、前記標的に対する結合分子の親和性に依存することを心得ている。
【0051】
本明細書で使用される場合、「IC50」という用語は、特定の露光時間の後にベースラインと最大阻害との間のレスポンスを誘発する結合分子の50%最大阻害濃度を指す。本明細書では、より低いIC50値は、高いIC50値と比較して、プレート上にコーティングされた既知標的に対する検出抗体の結合を阻害するために、より低い濃度の標的が必要であることを示す。したがって、より低いIC50値は、典型的には、より高い親和性に該当する。
【0052】
結合分子の結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験することも可能である。例えば、親和性は、標的またはエピトープXを装置のセンサーチップ上に固定し、そして試験すべき結合分子を含む試料を、該チップに通過させるという実験において試験することができる。あるいは、試験すべき結合分子を装置のセンサーチップ上に固定化し、Xを含む試料をチップに通過させてもよい。次いで、当業者は、かかる実験によって得られた結果を解釈して、少なくとも結合分子のXに対する結合親和性の定性的尺度を確立することができる。例えば相互作用についてのK値を決定するために、定量的尺度が所望される場合、SPRを使用してもよい。結合力価は、例えば、BiacoreTM(商標)(Cytiva社)またはProteOnTM(商標)XPR36(Bio-Rad社)機器において限定することができる。標的またはエピトープは、機器のセンサーチップ上に好適に固定され、その親和性を決定しようとする結合分子の試料が、連続希釈によって調製され、機器に注入される。次いで、その結果から、典型的には、機器の製造業者によって提供される、BiacoreTM(商標)Insight解析ソフトウェア2.0または他の適切なソフトウェアの1:1ラングミュア結合モデルを使用して、前記結果からK値を算出することができる。
【0053】
結合親和性はまた、バイオレイヤー干渉法(BLI)、すなわちインタラクトーム分野の生体分子の相互作用を測定するためのラベルフリー技術により、測定することもできる。それは、2つの表面:バイオセンサーチップ上に固定されたタンパク質の層;および内部標準層、から反射された白色光の干渉パターンを分析する光学的分析技術である。バイオセンサーチップ表面上に固定されたリガンド(標的またはエピトープX)と溶液中の分析対象(アナライト)(例えば、Xに対して推定親和性を有する結合分子など)との間の結合が、バイオセンサーチップにおいて光学的厚さの増加をもたらし、その結果、波長シフトΔλを引き起こす。波長シフトΔλは、生物学的層の厚さの変化の直接的尺度である。相互作用はリアルタイムで測定され、真度と精度をもって結合特異性、会合および解離の速度、または濃度をモニターする能力を提供する。
【0054】
当業者は、標的またはエピトープXに対する結合分子の親和性を、定性的もしくは定量的のいずれかで、またはその両方で、測定するための上記および他の方法を熟知している。
【0055】
医薬組成物
第二の態様では、本開示は、本明細書に記載の二重特異性結合分子と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0056】
ヒト治療用途のための抗体およびそれらの誘導体などのポリペプチドを製剤化するための技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、Wang他(2007)、J.Pharm.Sci、96:1-26頁中に概説されており、その内容は、全体として本明細書に組み込まれる。
【0057】
組成物を製剤化するために使用することができる薬学的に許容される賦形剤は、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩類または電解質などの緩衝物質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛油脂を包含する。
【0058】
特定の実施形態では、医薬組成物は、筋肉内、静脈内、皮内、腹腔内注射、皮下、硬膜外、鼻腔内、経口、直腸、局所、吸入、頬側(例えば舌下)、および経皮投与を含むがこれらに限定されない、任意の適切な投与経路を介した被験体への投与のために製剤化される。好ましい実施形態では、組成物は、静脈内投与または皮下投与のために製剤化される。
【0059】
予防、治療、診断、予後予測および検出の方法
本開示に係る二重特異性結合分子は、治療、予防、診断および/または予後予測薬として有用であり得る。
【0060】
したがって、本開示のさらなる態様では、医薬として使用するための、第一態様に係る二重特異性結合分子、または第二態様に係る医薬組成物が提供される。
【0061】
本開示のさらに別の態様では、診断薬として使用するための、第一態様に係る二重特異性結合分子、または第二態様に係る医薬組成物が提供される。
【0062】
本開示のさらに別の態様では、予後予測薬として使用するための、第一態様に係る二重特異性結合分子、または第二態様に係る医薬組成物が提供される。
【0063】
また、疾患の予防、治療もしくは診断方法または疾患の予後の評価方法であって、本明細書に開示される二重特異性結合分子を、それを必要とする被験体、典型的にはヒト被験体に投与することを含む方法も提供される。
【0064】
また、列挙された疾患のいずれか1つの予防、治療、診断および/または予後予測に使用する組成物(例えば医薬)の製造のための、本開示の二重特異性結合分子の使用も提供される。
【0065】
したがって、一実施形態では、二重特異性結合分子、またはそれを含む医薬組成物は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病およびAβタンパク質凝集に関連する他の疾患、外傷性脳損傷(TBI)、レビー小体型認知症(LBD)、ダウン症候群(DS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭型認知症、タウオパチー、全身性アミロイドーシス、アテローム性動脈硬化症、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病に伴う認知症(PDD)、アルツハイマー病のレビー小体変性症、多系統萎縮症、精神病、統合失調症、クロイフェルツ・ヤコブ病、ハンチントン病、および家族性アミロイド神経疾患から選択された疾患の治療、予防、診断および/または予後予測において有用である。
【0066】
より具体的な実施形態では、前記疾患は、アルツハイマー病およびAβタンパク質凝集、レビー小体型認知症(LBD)、ダウン症候群(DS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭型認知症、タウオパチー、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病に伴う認知症(PDD)並びにアルツハイマー病のレビー小体変性症に関連する他の疾患から選択される。
【0067】
より具体的な実施形態では、前記疾患は、アルツハイマー病およびAβタンパク質凝集、レビー小体型認知症(LBD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)並びにパーキンソン病(PD)、特にアルツハイマー病に関連する他の疾患から選択される。
【0068】
代替的な実施形態では、二重特異性結合分子、またはそれを含む医薬組成物は、他の疾患、例えば、脳腫瘍、多発性硬化症およびリソソーム蓄積症から選択された疾患の治療、予防、診断および/または予後予測において有用である。
【0069】
別の態様では、上記に列挙したような疾患の治療、予防、診断および/または予後予測の方法であって、二重特異性結合分子またはそれを含む医薬組成物の治療有効量などの一定量を、前記哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。
【0070】
参照による組み込み
本出願において様々な刊行物が引用されるが、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、本開示の二重特異性結合分子の1つの代替的実施形態の概略図であり、図中、一本鎖成分の各要素は、配列[LC-L1-scBM-L2-LC]において存する。各重鎖HCは、VH、CH1、CH2およびCH3免疫グロブリンドメインから成る。一本鎖成分は、第一の軽鎖LC(ここで前記LCはVLおよびCL免疫グロブリンドメインから成る);第一のリンカーL1;scFvの形の一本鎖結合モジュール(scBM);第二のリンカーL2;および第二のLC(第一のLCと同一である)から成る。
図2図2は、本開示の二重特異性結合分子の別の代替的実施形態の概略図であり、図中、一本鎖成分の各要素は、配列[LC-L1-LC-L2-scBM]において存する。各重鎖HCは、VH、CH1、CH2およびCH3免疫グロブリンドメインから成る。一本鎖成分は、第一の軽鎖LC(ここで前記LCはVLおよびCL免疫グロブリンドメインから成る);第一のリンカーL1;第二のLC(第一のLCと同一である);第二のリンカーL2;およびscFvの形の一本鎖結合モジュール(scBM)から成る。
図3図3は、表示された発現分子を精製した後のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図4図4は、実施例5に記載の間接ELISAによって分析した、表示された分子のmTfR1への結合を示す図である。
図5A図5は、実施例6に記載のOctet(登録商標)バイオレイヤー干渉法を使って測定された、表示された分子のmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.1;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.2;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.3;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.4;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.5;F)mAb158-scLc-Ig.6;G)8D3Fab;およびH)mAb158 IgG。
図5B図5は、実施例6に記載のOctet(登録商標)バイオレイヤー干渉法を使って測定された、表示された分子のmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.1;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.2;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.3;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.4;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.5;F)mAb158-scLc-Ig.6;G)8D3Fab;およびH)mAb158 IgG。
図5C図5は、実施例6に記載のOctet(登録商標)バイオレイヤー干渉法を使って測定された、表示された分子のmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.1;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.2;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.3;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.4;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.5;F)mAb158-scLc-Ig.6;G)8D3Fab;およびH)mAb158 IgG。
図5D図5は、実施例6に記載のOctet(登録商標)バイオレイヤー干渉法を使って測定された、表示された分子のmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.1;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.2;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.3;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.4;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.5;F)mAb158-scLc-Ig.6;G)8D3Fab;およびH)mAb158 IgG。
図5E図5は、実施例6に記載のOctet(登録商標)バイオレイヤー干渉法を使って測定された、表示された分子のmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.1;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.2;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.3;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.4;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.5;F)mAb158-scLc-Ig.6;G)8D3Fab;およびH)mAb158 IgG。
図5F図5は、実施例6に記載のOctet(登録商標)バイオレイヤー干渉法を使って測定された、表示された分子のmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.1;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.2;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.3;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.4;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.5;F)mAb158-scLc-Ig.6;G)8D3Fab;およびH)mAb158 IgG。
図5G図5は、実施例6に記載のOctet(登録商標)バイオレイヤー干渉法を使って測定された、表示された分子のmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.1;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.2;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.3;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.4;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.5;F)mAb158-scLc-Ig.6;G)8D3Fab;およびH)mAb158 IgG。
図5H図5は、実施例6に記載のOctet(登録商標)バイオレイヤー干渉法を使って測定された、表示された分子のmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.1;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.2;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.3;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.4;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.5;F)mAb158-scLc-Ig.6;G)8D3Fab;およびH)mAb158 IgG。
図6図6は、実施例7に記載のフローサイトメトリーを用いて分析した、cEND細胞に対する表示された分子の結合を示す箱ひげ図である。MFI(平均蛍光強度)は、細胞に結合した被験分子の量を表す。
図7図7は、実施例7に記載されているように、蛍光標識抗体を用いて捕捉された細胞集団中の陽性細胞(cEND)の百分率として提示される、細胞による二重特異性結合分子の内在化を示す箱ひげ図である。
図8図8は、実施例8に記載の間接ELISAによって分析した、表示された分子のAβ1-42への結合を示す図である。
図9図9は、実施例9に記載のウェスタンブロットによって分析した、インビトロでの血漿中安定性を示す。
図10図10は、10ナノモル/kgのmAb158 IgG、mAb158-scLc-8D3-Ig.1、またはmAb158-scLc-8D3-Ig.3の、C57BL/6J雌マウスにおける静脈内(iv)投与後24時間目の濃度を示す一連の箱ひげ図である。(A)血漿中、(B)左脳半球のTBS-Triton抽出物、どちらもMSDを使って分析した結果、および(C)それぞれの構築物についての脳対血漿中濃度比を示す。円は個々のデータ点を表し、バーは平均±SDを表す。Tukeyの事後解析(ポストホック)検定を伴う一元配置ANOVAを実施した。****P<0.0001。
図11図11は、mAb158対照IgG(左パネル)、mAb158-scLC-8D3-Ig.1(中央パネル)およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3(右パネル)を使用した、C57BL/6J野生型(WT)雌マウスにおける10ナノモル/kgの静脈内(iv)投与後24h目の、大脳皮質の免疫組織化学的(IHC)解析からの一連の共焦点画像である。mAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3は、脳の毛細血管(矢印)、実質および周囲の脳細胞(矢頭)において検出された。スケールバー:50μm。
図12A図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図12B図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図12C図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図12D図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図12E図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図12F図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図12G図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図12H図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図12I図12は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.8;C)mAb158-scLc-8D3-Ig.9;D)mAb158-scLc-8D3-Ig.10;E)mAb158-scLc-8D3-Ig.11;F)mAb158-scLc-Ig.12;G)mAb158-scLc-Ig.14;;H)mAb158-scLc-Ig.15;およびI)mAb158。
図13A図13は、実施例8に記載の間接ELISAにより分析した、Aβ1-42に対する表示された分子の結合を示す一連の図である。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7、mAb158-scLc-8D3-Ig.8、mAb158-scLc-8D3-Ig.9、mAb158-scLc-8D3-Ig.11、mAb158-scLc8D3-Ig.12およびmAb158-scLc-Ig.15;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.10、mAb158-scLc-Ig.12、mAb158-scLc-Ig.14およびmAb158。
図13B図13は、実施例8に記載の間接ELISAにより分析した、Aβ1-42に対する表示された分子の結合を示す一連の図である。A)mAb158-scLc-8D3-Ig.7、mAb158-scLc-8D3-Ig.8、mAb158-scLc-8D3-Ig.9、mAb158-scLc-8D3-Ig.11、mAb158-scLc8D3-Ig.12およびmAb158-scLc-Ig.15;B)mAb158-scLc-8D3-Ig.10、mAb158-scLc-Ig.12、mAb158-scLc-Ig.14およびmAb158。
図14図14は、実施例12に記載の表面プラズモン共鳴を用いて測定した、表示された分子によるmTfR1への結合を示す。
図15A図15は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した、表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAbB-scLc-8D3-Ig.2;B)mAbB-scLc-8D3-Ig.3;C)mAbB。
図15B図15は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した、表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAbB-scLc-8D3-Ig.2;B)mAbB-scLc-8D3-Ig.3;C)mAbB。
図15C図15は、実施例6に記載のOctetバイオレイヤー干渉法を使って測定した、表示された分子によるmTfR1結合を示す。A)mAbB-scLc-8D3-Ig.2;B)mAbB-scLc-8D3-Ig.3;C)mAbB。
図16図16は、実施例13に記載の表面プラズモン共鳴を用いて測定した、mAbB-scLc-8D3-Ig.1によるmTfR1結合を示す。
図17A図17は、実施例13に記載の表面プラズモン共鳴を用いて測定した、表示された分子によるAβ結合を示す。A)mAbB-scLc-8D3-Ig.1;B)mAbB-scLc-8D3-Ig.2;C)mAbB-scLc-8D3-Ig.3;D)mAbB。
図17B図17は、実施例13に記載の表面プラズモン共鳴を用いて測定した、表示された分子によるAβ結合を示す。A)mAbB-scLc-8D3-Ig.1;B)mAbB-scLc-8D3-Ig.2;C)mAbB-scLc-8D3-Ig.3;D)mAbB。
図17C図17は、実施例13に記載の表面プラズモン共鳴を用いて測定した、表示された分子によるAβ結合を示す。A)mAbB-scLc-8D3-Ig.1;B)mAbB-scLc-8D3-Ig.2;C)mAbB-scLc-8D3-Ig.3;D)mAbB。
図17D図17は、実施例13に記載の表面プラズモン共鳴を用いて測定した、表示された分子によるAβ結合を示す。A)mAbB-scLc-8D3-Ig.1;B)mAbB-scLc-8D3-Ig.2;C)mAbB-scLc-8D3-Ig.3;D)mAbB。
図18図18は、5xFADマウスと野生型(WT)同腹子における、血漿中(左)および左脳半球のTBS-Triton抽出物中(中央)での(両者とも実施例14に記載の通りMSDを用いて分析した)mAbBおよびmAbB-scLc-8D3-Ig.1の40ナノモル/kgの静脈内(iv)投与後24時間目の血漿中および脳内の結合分子濃度の箱ひげ図、並びに、各々の構築物と導入遺伝子(transgene)についての脳対血漿中濃度比(右)の箱ひげ図を示す。円は個々のデータ点を表し、バーは平均±SDを表す。
図19図19は、実施例15に記載の5xFADマウス脳の矢状面における抗hIgG1二次抗体によって検出されたiv投与抗体の脳内分布の広視野蛍光顕微鏡画像を示す。下部パネルは、Aβ斑(プラーク)について共染色された(6E10+4G8の組み合わせにより検出)大脳皮質(CTX)、海馬(HC)、および視床(TH)からの高倍率画像を示す。
図20図20は、実施例15に記載の通り測定した、視野あたりのmAbBおよびmAbB-scLc-8D3-Ig.1で装飾された(decоrated)アミロイドβ斑(プラーク)の数と、視床における共局在化(hIgGで標識された6E10/4G8斑の%)の画像解析の結果を示す。
図21図21は、実施例16に記載の表面プラズモン共鳴を用いて測定した、mAb158-scLc-15G11-1-Ig.1によるhTfR1結合を示す。
図22図22は、実施例16に記載の間接ELISAによって分析した、Aβ1-42への表示された分子の結合を示す図である。
【実施例
【0072】
様々な例示的態様および実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに均等物で置換してもよいことは、当業者に理解されるであろう。加えて、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または分子を本発明の教示に適合させるために多数の修正を行うこともできる。したがって、本発明は、任意の特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。
【0073】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示されるであろう。これらは、例示の目的でのみ提供され、本発明をいかなる方法でも限定することは意図されていない。当業者は、本質的に同じ結果をもたらすように変更または修正することができる、様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。使用する数字(例えば量、温度など)に関する正確さを保証するように努力してきたが、いくらかの実験誤差や偏差が存在しうる。別段の指示がない限り、本発明の実施は、当業界の技術の範囲内において、従来のタンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の方法を使用する。かかる技術は、既存の文献に充分に説明されている。加えて、本明細書の特定のリンカー設計に適用されるタンパク質工学の方法は、本明細書に記載され本発明者らにより検討された他の構築物に、本開示の範囲内に含まれるように適用できることも、当業者には明白であろう。
【0074】
実施例1
プラスミドの作製およびタンパク質発現
タンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(ExpiCHOTM(商標))またはヒト胚腎細胞(Expi293FTM(商標))(Thermo Fisher Scientific社)の一過性トランスフェクションによって発現せしめた。
【0075】
タンパク質の発現のために、pcDNA3.4プラスミド(Thermo Fisher Scientific社)を使用し、以下の機能性要素を含むように設計した:
・サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーター要素、
・マウスκ軽鎖シグナル配列(SS)、
・発現させようとする遺伝子、および
・二重停止コドン、例えばTGA、TAAを用いた完全停止。
【0076】
実施例2
本開示の例示的な二重特異性結合分子の全体的な設計およびアミノ酸配列
本実施例に記載の全ての結合分子は、同一の抗体重鎖(HC)を用いて設計した。より具体的には、重鎖は、Aβプロトフィブリル結合抗体mAb158からのマウスVHドメインと、それにカップリングされたIgG2サブクラスのマウスCH1ドメイン、続いてヒトIgG1のCH2-CH3部分を含み、全てpcDNA3.4プラスミド上にコードされている。換言すれば、重鎖は、マウスVH-CH1部分(Fab)とヒトCH2-CH3部分(Fc)とを含むキメラ構成物である。完全重鎖アミノ酸配列は、配列番号7に与えられ、それは本明細書中では「mAb158重鎖」と称される。
【0077】
異なる構築物間の変動は、各々の一本鎖成分を通して達成され、連続ポリペプチド鎖の各要素間をつないで一本鎖成分を構築するために異なるリンカー長さを使用した。
【0078】
各々の試験した一本鎖成分では、2つの同一の抗体軽鎖LCは、Aβプロトフィブリル結合抗体mAb158の軽鎖に由来し、そして各LCは配列番号8のアミノ酸配列を有するκクラスのVL-CL部分から成った。
【0079】
同じく試験した各々の一本鎖成分では、一本鎖結合モジュールscBMがトランスフェリン受容体結合抗体8D3(Kissel他(1998)、Histochem.Cell.Biol.110:63-72)由来でありかつ配列番号9のアミノ酸配列を有する、一本鎖可変フラグメント(scFv)であった。8D3由来でありかつ構成物中に用いられるこのscFvは、しばしば簡略化のため「8D3」と記述される。
【0080】
様々な試験構築物は、表1に与えられ、図1に描写されるフォーマット(mAb158-scLc-8D3-Ig.1、mAb158-scLc-8D3-Ig.2およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3)、図2に描写されるフォーマット(mAb158-scLc-8D3-Ig.4およびmAb158-scLc-8D3-Ig.5)またはいずれのscBM要素も持たない陰性対照(mAb158-scLc-Ig.6)としてのいずれかに従って設計された。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例3
設計した構築物の産生および精製
本開示の二重特異性結合分子および対照は、製造業者の指示に従って、チャイニーズハムスター卵巣細胞の一過性トランスフェクションによって発現せしめた(ExpiCHO(商標)発現系;Thermo Fisher Scientific社)。重鎖プラスミドおよび軽鎖プラスミドの等モル比をトランスフェクション中に細胞に添加した。発現構築物を含む細胞培養上清を、3200×gで10分間遠心分離することにより、トランスフェクション後8~10日目に収穫した。上清を精製まで凍結保存した。
【0083】
精製時に、発現構築物を含む凍結上清を解凍し、濾過した。濾過した上清を、MabSelectSuRe(登録商標)カラム(Cytiva社)に適用し、続いてそれをDPBS pH7.4で洗浄した。発現した結合分子を、0.7%HAc(pH2.5)の適用によって溶出させ、続いて、試料を直ちにpH7.5に中和した。精製した試料をさらにDPBS pH7.4中でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC;HiLoad 26/600 Superdex(登録商標)200;Cytiva社)にかけて仕上げた。SEC精製された単量体構築物を、遠心濃縮器AmiconUltra(登録商標)(30 MWCO(分子量カットオフ)、Millipore社)を使用して10μMに濃縮し、更なる分析用に-80℃で保存した。各々の精製された発現構築物は、SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex(登録商標)200、Increase3.2/300;Cytiva社)、エンドトキシン測定およびUVタンパク質測定を使用して特徴づけた。精製構築物の代表的なSDS-PAGE分析の例を図3に示す。
【0084】
実施例4
抗原の産生および精製
組換えマウストランスフェリン受容体1(mTfR1)を、製造業者の教示に従って、ヒト胚腎臓細胞の一過性トランスフェクションによって産生した(Expi293F(商標)発現系;Thermo Fisher Scientific社)。発現プラスミドは、精製のためにHis-tagに融合されたmTfR1の細胞外ドメイン(アミノ酸89~763;配列番号16)を含んでいた。
【0085】
mTfR1タンパク質を前記濾過済の細胞培養上清から精製した。上清をHis Trap Excelカラム(Cytiva社)に適用し、20mM Tris、200mM NaClおよび5mMイミダゾールで洗浄した。タンパク質を20mM Tris、200mM NaClおよび500mMイミダゾールで溶出させ、続いて、HiPrep(登録商標)26/10脱塩カラム(Cytiva社)を使用してDPBS(pH7.4)への緩衝液交換を行った。タンパク質を、Amicon Ultra(登録商標)遠心濃縮器(30MWCO;Millipore社)を用いて濃縮した。精製後直ちに-80℃でタンパク質を保存して、凝集を防いだ。タンパク質の分析による特性評価は、UVタンパク質測定およびSDS-PAGEによって行われ、精製が成功したことが結論付けられた。
【0086】
実施例5
マウストランスフェリン受容体への結合のELISA分析
特定の発現構成物のmTfR1への結合は、間接ELISA法によって評価した(図4)。要するに、96ウェルプレートの半領域(Corning製、#3690)を、実施例4に記載の通り産生した1μg/mLの組換えmTfR1により、PBS中で4℃にて一晩コーティングした。コーティングしたプレートを、Pierceタンパク不含ブロッキング溶液(Thermo Fisher Scientific社、#37572)を使用して振盪しながら室温で1時間ブロックし、続いて0.1%TWEEN(登録商標)20を含むPBS中で4回洗浄した。インキュベーション緩衝液(PBS中1%BSA、0.1%TWEEN(登録商標)20)中の発現構築物の段階希釈液(1:3)を、室温で1時間インキュベートした。4回の洗浄工程に続いて、抗マウスIgG F(ab′)-HRP抗体(Jackson Immuno Research社、#115-035-006)を、インキュベーション緩衝液中1:1250希釈度において添加することにより(1h、室温)、結合した被験構築物を検出した。4回の洗浄工程に続いて、K-Blue(登録商標)水性TMB基質(Neogen社、#331177)を室温で15分間ウェルに添加した後、0.5M HSOの1:1希釈を用いて反応を停止させた。450nmの光学濃度を記録し(Spark(登録商標)、Tecan社)、解析前にバックグラウンドシグナル(背景値)を差し引いた。図4は、間接ELISAによって測定された、mAb158-scLc-8D3-Ig.1、mAb158-scLc-8D3-Ig.2およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3に対するmTfR1結合を示す。全てのmAb158-scLc-8D3変異体についてのmTfR1に対する親和性は、一価8D3 Fab対照(配列番号17の軽鎖および配列番号18の重鎖を有する)に匹敵する。
【0087】
実施例6
マウストランスフェリン受容体への結合のバイオレイヤー干渉分析
発現構成物のmTfR1への結合は、バイオレイヤー干渉法(Octet RED384、ForteBiо社)によって評価した。高精度ストレプトアビジンセンサに、連続した二段階で以下をロードした:最初に20μg/mLのビオチン化ヒトホロ型トランスフェリン(Sigma社)を用いて180秒間、次に、実施例4に記載の通り作製された20μg/mLの組換えmTfR1を用いて180秒間適用した。その後、ロードセンサへの試料の会合を120秒間測定し、続いて解離を300秒間測定した。結合は、mAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.2については17.5μg/mLに希釈した試料、そしてmAb158-scLc-8D3-Ig.3については18μg/mLに希釈した試料、そして8D3Fabについては4.9μg/mLに希釈した試料(それぞれの結合分子100nMに相当する)を用いて分析した。緩衝液試料からのレスポンスを差し引いた。全ての試料を1×カイネティクス緩衝液(ForteBio社)中に希釈した。ベースラインおよび解離工程についても同じ緩衝液を使用した。得られた結合曲線を図5に示す。この図は、mAb158-scLc-8D3-Ig.1、mAb158-scLc-8D3-Ig.2、mAb158-scLc-8D3-lg.3、mAb158-scLc-8D3-Ig.4およびmAb158-scLc-8D3-Ig.5が全て、ホロ型トランスフェリンとmTfR1との複合体に結合することを示す。TfR1結合モジュールを欠いているmAb158-scLc-Ig.6は、ホロ型トランスフェリンとmTfR1との複合体に結合しない。対照として、8D3 Fabおよび抗体mAb158 IgGを実験に含めた。
【0088】
実施例7
細胞への結合および細胞による取込み
TfR1によって媒介される結合および取込みは、不死化マウス脳毛細血管内皮細胞(cEND)(ABM社、#T0290)において測定された。
【0089】
ペレットをPBS中に再懸濁させ、1ウェル当たり200,000個の細胞をU字型底の96ウェルCorningプレートに播種し、フローサイトメトリー染色を行った。次いで、細胞をPBSで洗浄し、100nMのmAb158-8D3構成物であるmAb158-scLc-8D3-Ig.1、mAb158-scLc-8D3-Ig.2およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3、対照8D3 IgG(配列番号17の軽鎖、配列番号19の重鎖)またはマウスIgG対照のうちの1つと共に、4℃にて45分間インキュベートした。一次インキュベーション後、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、そしてmAb158-8D3構築物を、蛍光標識二次抗マウスIgG-PE抗体(BD Biosciences社、550589)を使って捕捉した。インキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄し、200μLのPBS中に再懸濁した。BD FACSLyric(商標)フローサイトメーターシステム(BD Biosciences社)において細胞を取得し、FCS Express(商標)ソフトウェア(DeNovo Software)を用いて試料を分析した。測定された平均蛍光強度は図6に表示され、これは、二重特異性結合分子構築物が、細胞表面上に発現されたmTfR1に結合することを示している。
【0090】
構築物の内在化/取り込みの測定のために、cEND細胞をT75細胞培養フラスコ中で2~3日間、>80%コンフルエンス(集密度)にまで培養した。TrypIE試薬を用いて細胞を採取し、1500rpmで5分間遠心分離することによって新鮮な細胞培地で洗浄した。細胞をDPBS(Gibco社)中に再懸濁し、96ウェルU字底プレート中300,000個の細胞/ウェルの密度に播種した。細胞を、100nMのmAb158-scLc-8D3-Ig.1、mAb158-scLc-8D3-Ig.2、mAb158-scLc-8D3-Ig.3、または陽性対照(二価8D3 IgG)で37℃、5%COにて1時間処理したか、または未処理のままであった。次いで、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、BD Cytofix/Cytoperm(商標)試薬(BD Biosciences社)を使用して、内在化構築物にアクセスするために透過処理した。細胞を1%BD Perm/Wash(商標)緩衝液中の抗マウスIgG-PEで室温にて45分間染色した。染色後、細胞を1%BD Perm/Wash(商標)緩衝液で2回洗浄した。最後に、細胞をPBS中に再懸濁し、BD FACSLyric(商標)フローサイトメトリーを用いて取得した。FCS Express(商標)ソフトウェアを使用して、試料をPE陽性集団について解析した。mTfR1媒介取込みの指標である、陽性細胞の百分率が、図7に表示される。
【0091】
まとめると、これらの結果は、二重特異性結合分子mAb158-scLc-8D3-Ig.1、mAb158-scLc-8D3-Ig.2およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3が、cEND細胞上のmTfR1に結合し、かつ二価の8D3 IgGよりも高比率で内在化されることを実証した。
【0092】
実施例8
アミロイドβ(Aβ1-42)への結合のELISA測定
mAb158IgGおよびmAb158-scLc-8D3構築物のAβ1-42への結合を、間接ELISAによって評価した。96ウェルプレート(Corning社、#3690)の半領域を、0.5μg/mLの組換えAβ1-42(配列番号20)でコーティングし、そして実施例5においてmTfR1について説明したとおりに解析を行った。その結果を図8に示す。全ての被験構築物によるAβ1-42への結合が、未修飾のmAb158IgG対照による結合と同等であったことを実証しており、Aβ1-42への結合が、一本鎖結合モジュール(scBM)を含む一本鎖成分を有する二重特異性フォーマットにおいて維持されることを実証した。
【0093】
実施例9
プラズマ中の発現構築物の安定性
二重特異性結合分子mAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3の血漿中安定性は、イムノブロット(ウェスタンブロット)によって測定した。二重特異性結合分子をC57BL/6マウス血漿またはPBS中で37℃にて0時間、1時間、24時間および168時間インキュベートした(血漿中またはPBS中に1:10希釈された、1.5μg結合分子)。試料を凍結―解凍を2回繰り返し、SDS-PAGEおよびウェスタンブロットに供した。手短に言えば、0.38μg(2.5μL)の血漿/PBS試料を、RIPA緩衝液およびLDS試料緩衝液(Thermo Fisher Scientific社、NP0007)で希釈し、NuPAGETM(商標)4~12%ビス-トリスゲル(Thermo Fisher Scientific社、AP0329)に装填した。SDS-PAGEおよびニトロセルロース膜(BioRad社、#1704158)への移行に続いて、ヤギ抗ヒトIgG-IRDye(登録商標)800CW二次抗体(LI-COR Biosciences社、#926-32232)によって検出した。結果を図9に示す。二重特異性結合分子は、血漿とPBSとの間のわずかな移動度シフトを伴って、期待分子量約175kDaで検出された。ウェスタンブロット分析は、mAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3が少なくとも7日間の期間に渡って、マウス血漿中インビトロで安定であることを示した。
【0094】
実施例10
mAb158-scLc-8D3構築物のインビボでの脳内取込み
インビボでのmTfR1媒介脳内取込みを評価するために、二重特異性結合分子mAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3、並びにmAb158 IgG(キメラlgG1、ヒトFc)を、10ナノモル/kgの等モル量(それぞれ1.82mg/kg、1.78mg/kgおよび1.50mg/kgに相当)で、C57BL/6J雌マウス(構築物あたりn=3~5匹のマウス)に静脈内(iv)注射した。血漿および脳内曝露は、投与後24時間目に評価した。イソフルランを用いて動物を麻酔し、末梢血試料を軌道叢からBD Microtainer(登録商標)のK2EDTA採血管に採取した。試料を反転させ、2400×gで4℃にて10分間遠心分離した。血漿を抽出し、エッペンドルフ管に移し、-80℃で凍結した。血液サンプリング後、直ちに動物の腹部を切開し、カニューレ(21ゲージ)を心臓の左心室に挿入した。右心房に小さな切開を作り、最小50mLの冷PBSでの経心臓的灌流を行った。還流後、脳を抽出し、嗅球を除去した。大脳を左半球と右半球に分離し、左半球から小脳を取り外した後、左半球の重さを秤量し、ドライアイス上で凍結し、注入した構築物の更なる調製とMeso Scale Discovery(MSD)ベースのアッセイを用いた更なる調製と濃度分析を行うまで-80℃で保存した。無傷の小脳が付随する右半球は、4%ホルムアルデヒド中に置き、4℃で24時間保存し、その後、それらを冷PBS中ですすぎ、冷30%ショ糖/PBS溶液に移し、更なる免疫組織化学(IHC)処理のために4℃で保存した。
【0095】
脳内濃度測定のために、凍結大脳左半球を氷上で解凍し、自動ビーズ均質化法によってTBS中でホモジナイズした。ホモジネートに0.5%の最終濃度にTriton(登録商標)を加えた後、16000×gで遠心分離し、その後上清を収集した。
【0096】
mAb158-scLc-8D3-Ig.1、mAb158-scLc-8D3-Ig.3およびmAb158 IgGの脳内および血漿濃度を、MSDプラットフォームを使用して決定した。標準96ウェルMSDプレート(MSD社、#L15XA-3)を、1×PBS-TWEEN(登録商標)(Fisher Scientific社、#09-9400-100)中に希釈した0.5μg/mLヤギ抗ヒトIgGFcのγフラグメント特異的抗体(Jackson Immunо Research Europe Ltd、#109-005-098)を使って、50μL/ウェルの容量でコーティングした。4℃で一晩インキュベートした後、プレートを1×PBS-TWEEN(登録商標)(Fisher Scientific社、#09-9410-100)で4回洗浄し、BlockerA(MSD社、#R93BA-4)でブロックした。1:4希釈段階において83pMから0.02pMまでの範囲に渡って試料および対応する標準物質をBlockerA中に希釈し、そして50μL/ウェルの容量で二重複製にて添加した。室温で900rpmにて2時間インキュベートした後、ウェルを4回洗浄した。BlockerA中0.5μg/mLに希釈されたスルホ-TAG結合抗マウス抗体(MSD社、R32AC-1)50μLを、各ウェルに加え、プレートを室温でさらに1時間、900rpmで攪拌しながらインキュベートした。4回洗浄後、150μLの2×MSD読み取り緩衝液(MSD社、R92TC)を各ウェルに添加し、プレートをMSDのSECTOR(登録商標)撮像装置で読み取った。試料中の分析対象(アナライト)の濃度を、MSDワークベンチソフトウェアを用いて、4PL(4パラメータ・ロジスティック)曲線適合アルゴリズムおよび標準曲線に対する1/Y2曲線重みを使って評価した。Tukeyの事後解析(pоst hоc)検定を伴う一元配置ANOVAを使ってGraphPad Prism(バージョン9.0.0)において統計解析を実施した。
【0097】
その結果を図10に示す。図10Aに示すように、2つのmAb158-scLc-8D3-Igフォーマットの血漿濃度は、投与後24時間目におけるmAb158 IgGの血漿濃度よりも十分低かった。mAb158-scLc-8D3-Igフォーマットは、mTfR1関連のクリアランスの寄与のために、通常の(野生型の)IgGに比較して血漿からより迅速にクリアランスされると思われることから、血漿データ間の差異が予測される。より低い血漿濃度にもかかわらず、投与後24時間で、mAb158 IgGと比較して有意に高い脳内濃度(図10B、p<0.0001)がmAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3の両方について観察された。24時間後のmAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3の脳対血漿中濃度比はまた、mAb158 IgGとの比較において、血漿に対比した脳内暴露が有意に増強されたことも示した(図10C、mAb158-scLc-8D3-Ig.1:p<0.0001;mAb158-scLc-8D3-Ig.3:p<0.0001)。まとめると、このデータは、被験二重特異性結合分子の高い脳内濃度をもたらし、mTfR1媒介性BBB輸送(の達成)を支持している。
【0098】
mAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3のBBBトランスサイトーシスおよび脳内取り込みは、定性IHC分析によってさらに支持された。簡潔には、厚さ20μmの冠状脳切片を、クライオスタット(Microm HM 500 OM)を使用したPBS灌流後の大脳半球から取得した。各切断面は、Superfrost(登録商標)plusスライド(Menzel-Glaser、#J1800AMNZ)上に収集され、IHC前に風乾した。脳切片をPBS(pH7.4)で15分間洗浄し、ブロッキング緩衝液(PBS中5%BSA、0.25%Triton(登録商標)-X)中で室温にて2時間インキュベートした。静脈内(iv)投与した構築物を可視化するために、脳切片を、Alexa Fluor(登録商標)488(Invitrogen社、#A11013)に結合された二次ヤギ抗ヒトIgG(重鎖および軽鎖特異的)と共に、室温で90分間インキュベートし、続いてPBS中で3×15分間洗浄した。脳毛細血管を可視化するために、ウサギ抗コラーゲンIV抗体(Bio-Rad社、#2150-1470)を適用し、Alexa Fluor(登録商標)568(Invitrogen社、#A-11011)に結合された二次アフィニティー精製済ヤギ抗ウサギIgG(重鎖および軽鎖特異的)により検出した(データは示していない)。スライドを画像診断分析のためにFluoromount(登録商標)-G(Invitrogen社、#00-4958-02)とともに装填した。大脳皮質からの共焦点画像を、HC PL APO 40×/1.25GLYC(グリセリン液浸)mоtCORR(補正環付)CS2対象レンズ(ライカ社、#11506423)を装備したライカ社のStellaris(登録商標)5共焦点撮像システムを使ってキャプチャーした。2048×2048ピクセルの分解能で単一共焦点平面像を、1AU(AiryUnit;エアリー単位)のピンホール設定で600Hzにて取得した。
【0099】
最小のIHCシグナルは、mAb158 IgGを注入した動物からの脳切片において検出された(図11、左パネル)。対照的に、mAb158-scLc-8D3-Ig.1およびmAb158-scLc-8D3-Ig.3を投与した動物においては、高められた実質シグナルと免疫染色された脳細胞とともに、脳毛細血管において明確なIHCシグナルが観察された(図11、中央および右パネル)。この結果は、mTfR1媒介係合およびBBBを通過するトランスサイトーシスを示している。まとめると、MSDとIHC解析は、mAb158-scLc-8D3-Ig.1およびIg.3二重特異性結合分子が、対照のmAb158 IgGに対比して強化された脳内曝露を付与することを実証する。
【0100】
実施例11
追加のmAb158-scLc-8D3構築物の設計および特徴付け
本実施例に記載の全ての結合分子は、実施例2と同じ抗体IgG1重鎖(HC)、すなわち配列番号7を用いて作製した。
【0101】
異なるリンカー長を使用して連続ポリペプチド鎖の要素を連結することにより一本鎖成分を創製し、それぞれの一本鎖成分を通して異なる構成物間に変動を構築した。本実施例に記載の全ての結合分子は、実施例2と同じLC、すなわち配列番号8を使用して設計された。
【0102】
本実施例に提供する異なる構築物は、実施例2に記載のものと同じ一本鎖結合モジュールscBM、すなわち配列番号9(mAb158-scLc-8D3-Ig.7、mAb158-scLc-8D3-Ig.8、mAb158-scLc-8D3-Ig.9、mAb158-scLc-8D3-Ig.10、mAb158-scLc-8D3-Ig.11、およびmAb158-scLc-8D3-Ig.12中に存在する)、または同じく8D3に由来するが重鎖と軽鎖の順序が逆である一本鎖結合モジュールscBM、配列番号21(mAb158-scLc-8D3-Ig.13、mAb158-scLc-8D3-Ig.14およびmAb158-scLc-8D3-Ig.15中に存在する)のいずれかを含んでいた。
【0103】
異なる被験構築物は表2に提示されるが、mAb158-scLc-8D3-Ig.13、mAb158-scLc-8D3-Ig.14およびmAb158-scLc-8D3-Ig.15は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の順序が逆転しているscBMを有していたこと以外、図1に描写されるフォーマットに従って設計された。
【0104】
【表2】
【0105】
二重特異性結合分子は、実施例3に記載されている通りに発現させ精製した。
【0106】
発現構築物のmTfR1への結合は、実施例6に記載のものと同様に評価したが、ただし装填工程の間の濃度が10μg/mLであり、装填工程の持続時間が200秒および300秒であり、分析対象(アナライト)の濃度が50nMであった。得られた結合曲線は、図12に示される。全ての被験構築物はmTfR1に結合した(図12A~12H)。scBMを持たない抗体mAb158は、陰性対照として実験に含められた(図12I)。
【0107】
特定の発現構築物のAβ1-42への結合は、実施例8に記載したのと同様に間接ELISAによって評価した。その結果は図13に示され、全ての被験構築物によるAβ1-42への結合が、8D3 scBMを欠く未修飾mAb158対照による結合と同等であることを実証した。実験は、Aβ1-42への結合が、標準抗体構造のFabアームによって二重特異性フォーマットで維持されることを実証した。
【0108】
実施例12
選択した構築物についてのTfR1への一価結合の検証
マウスTfR1に対するmAb158-scLc-8D3-Ig.8の一価結合相互作用を、表面プラズモン共鳴法(Biacore8K、Cytiva社)を用いて測定した。Cm5センサーチップ(Cytiva社、#BR100399)に、製造業者の教示に従って、アミンカップリングキットタイプ2(Cytiva社、#BR100633)を使って3μg/mLのmTfR1を固定した。50nMの分析対象(アナライト)で始まるHBS-EP(Cytiva社、#BR100669)中の一連の2倍希釈液を、前記固定化リガンド上に二重複製にて注入し、70μL/mLの流速で160秒の接触時間に続いて1000秒の解離時間を用いるシングルサイクル・カイネティクス法を使って、相互作用を測定した。
【0109】
得られたセンサーグラムは図14に示され、これはmAb158-scLc-8D3-Ig.8、すなわち本開示に係る結合分子が、mTfR1に一価で結合することを確証する。対照として、一価8D3Fabを、標準の二価8D3 hIgGと比較した。図は明らかに、一価8D3 Fabに比較した8D3 hIgGの二価結合プロファイルを示している。
【0110】
実施例13
本開示に係るさらなる二重特異性結合分子の設計および特徴付け
本実施例に記載の結合分子は、先行実施例で使用したmAb158由来の異なるAβ結合抗体から出発して設計した。
【0111】
本実験の二重特異性結合分子の重鎖(HC)は、本明細書でmAbBと称されるAβ結合抗体由来のマウスVHドメインを含み、そのVHドメインはヒトCH1-CH3部分(mAbB-scLc-8D3-Ig.1およびmAbB-scLc-8D3-Ig.2)に、またはマウスCH1とヒトCH2-CH3(mAbB-scLc-8D3-Ig.3)に連結されている。換言すると、重鎖は、マウスVH部分とヒトCH1-CH3部分とを含むか、またはマウスVH-CH1部分とヒトCH2-CH3部分とを含む、キメラ構築物であった。
【0112】
各被験一本鎖成分中、2つの同一の抗体軽鎖LCは、Aβ結合抗体mAbBの軽鎖のマウスVLドメインと、それに連結されたκクラスのヒトCL部分(mAbB-scLc-8D3-Ig.1およびmAbB-scLc-8D3-Ig.2)またはそれに連結されたマウスCL部分(mAbB-scLc-8D3-Ig.3)とから誘導された。
【0113】
本実施例で提示される全ての異なる構築物は、実施例2のものと同じ一本鎖結合モジュールscBM、すなわち配列番号9を含んだ。
【0114】
様々な被験構築物が表3に与えられ、それは図1に示されたフォーマットに従って設計された。
【0115】
【表3】
【0116】
二重特異性結合分子mAbB-scLc-8D3-Ig.1、mAbB-scLc-8D3-Ig.2およびmAbB-scLc-8D3-Ig.3を、実施例3に記載のとおりに発現させ精製した。
【0117】
発現構築物のmTfR1への結合は、本質的にバイオレイヤー干渉法(Octet)については実施例6に記載のように、そして表面プラズモン共鳴(Biacore)については実施例12に記載のように評価した。
【0118】
mTfR1への結合のOctet測定からの代表的な結果は、二重特異性結合分子mAbB-scLc-8D3-Ig.2およびmAbB-scLc-8D3-Ig.3について、並びに陰性対照mAbB、すなわちいずれのTfR1結合モジュールも含まない標準抗体フォーマットとしてのmAbBについて、図15に示されている。
【0119】
mTfR1への結合のBiacore SCK測定からの代表的な結果は、二重特異性結合分子mAbB-scLc-8D3-Ig.1について図16に示されている。
【0120】
発現構築物のAβへの結合は、標準手順に従ってBiacore 8K装置(Cytiva社)を使用して評価した。CM5チップ上に固定化された結合分子を用いるシングルサイクル・カイネティクス法(SCK)を使用して、標的への結合を測定した。測定のために、5μg/mLの分析対象(アナライト)結合分子をチップ上に固定した 次いで、250nMで始まる5段階の2倍希釈を使用して、Aβ標的をチップ上に注入した。サイクル間の表面の再生は、30μLの10mMグリシン-HCl(pH1.7)を注入することによって実施した。結合データを1:1相互作用モデルにフィッティングした。1×HBS-EP(Cytiva社、カタログ番号BR100669)を用いて結合分子および標的抗原を希釈した。実験は25℃にて実施した。
【0121】
Aβに結合するBiacore SCK測定からの代表的な結果が図17に示されている。それらのAβ標的へのmAbB-scLc-8D3-Ig.1、mAbB-scLc-8D3-Ig.2およびmAbB-scLc-8D3-Ig.3の結合をBiacoreによって評価したところ、標準IgGフォーマットでのmAbBの結合と同等であることが分かった。
【0122】
実施例14
本開示の二重特異性結合分子によるインビボでの標的結合
標的係合をインビボでさらに評価するために、実施例13に記載のように産生したmAbBおよびmAbB-scLc-8D3-Ig.1を、B6SJL-Tg 5xFADマウス(Northwestern University)において検討した。5xFADマウスモデルは、ヒトAPPおよびPSEN1導入遺伝子〔APP中にスウェーデン型(K670N/M671L)、フロリダ型(I716V)およびロンドン型(V717I)突然変異、およびPSEN1のM146LとL286V突然変異を含む、合計5つのAD関連突然変異を有する〕を発現しているマウスを用いるアルツハイマー病(AD)モデルである。7~8箇月齢の5xFADマウスおよび野生型(WT)同腹子に、等モル量の40ナノモル/kgのmAbBおよびmAbB-scLc-8D3-Ig.1(それぞれ5.8mg/kgおよび7.0mg/kgに相当)を静脈内(iv)注射した。それぞれの結合分子への血漿および脳曝露を5xFADマウスとWTマウスの両方において、並びに脳実質Aβ斑(プラーク)への結合を5xFADマウスにおいて、それぞれ投与後24時間目に評価した。末梢血試料を心臓穿刺によって全動物からMiniCollect(登録商標)K2EDTAチューブ中に採取した。試料を反転させ、2400×gで4℃にて10分間遠心分離した。血漿を抽出し、LoBind(商標)エッペンドルフ管に移し、-80℃で凍結した。血液サンプリングの直後に、0.9%生理食塩水と4%パラホルムアルデヒド(PFA;pH7.4)または0.9%生理食塩水のみを用いて、それぞれ脳免疫組織化学(IHC)または抗体暴露分析のために、動物を灌流させた。灌流後、大脳を抽出し、嗅球を除去した。大脳を左半球と右半球に分離し、そして生理食塩水のみを灌流させた動物の場合には左半球から小脳を除去し、その後、左半球の重さを秤量し、ドライアイス上で即座に凍結させ、-80℃で保存した後、Meso Scale Discovery(MSD)プラットフォームを用いて更なる濃度測定を行った。大脳右半球と、生理食塩水とPFAの両方を灌流させた動物の場合には無傷の小脳が付随する左半球を、新たに調製した4%PFA(pH7.4)中に室温で2時間浸漬することにより後固定し、その後、それらを冷PBS中ですすぎ、15%ショ糖/PBSに移し、チューブの底に沈むまで4℃にて保存した。各半球体をクリオモルド(プラスチック製包埋皿)に移し、OCT培地中で包埋し、ドライアイスで冷却したイソペンタン中で凍結し、-80℃で貯蔵した。
【0123】
脳内濃度測定のために、凍結した左半球を氷上で解凍し、自動ビーズ均質化法によってTBS中でホモジナイズした。ホモジネートに0.5%の最終Triton濃度になるまでビーズを加えた後、16000×gで遠心分離し、その後で上清を回収した。
【0124】
mAbBおよびmAbB-scLc-8D3-Ig.1の脳および血漿中濃度は、MSDプラットフォームを使用して決定した。1×PBS(Fisher Scientific社、#09-9400-100)中に希釈したヤギ抗ヒトIgG(0.5μg/mL、Fcγ特異的抗体、Jackson Immunо Research Europe Ltd、#109-005-098)がコーティングされた、標準96ウェルMSDプレート(MSD社、#L15XA-3)においてサンドイッチ設定を使用した。プレートをBlockerA(MSD社、#R93BA-4)中で1時間ブロックした後、試料および標準物質と共に2時間インキュベートした。マウス抗ヒトIgG1(0.5μg/mL、Mabtech社、#3850-1-1000)の1時間インキュベーション工程に続いて、SULFO-TAG結合抗マウス抗体(0.5μg/mL、MSD社、#R32AC-1)の1時間インキュベーション工程を含めた。MSD読み取り緩衝液(MSD社、#R92TC)をウェルに添加した後、MSD社のSECTOR(登録商標)撮像装置においてプレートを読み取った。各インキュベーション工程の間に、1×PBS-Tween(登録商標)(Fisher Scientific社、#09-9410-100)中での4回の洗浄を実施した。コーティング抗体を除いたすべての結合分子は、BlоckerA中に希釈した。
【0125】
結果を図18に示す。8D3 scBMを有するmAbである、mAbB-scLc-8D3-Ig.1の二重特異性結合分子は、従来の抗体フォーマットでのmAbBと比較して、より低い血漿曝露を示すが、脳曝露はより高い。さらに、mAbB-scLc-8D3-Ig.1は、より高い、脳対血漿比(B:P比)を提供する。
【0126】
実施例15
本開示の二重特異性結合分子によるインビボ結合の免疫組織化学分析
本開示の結合分子mAbB-scLc-8D3-Ig.1による、血液脳関門を通過するトランスサイトーシスおよびAβ標的への結合を、トランスジェニックマウスモデル5xFAD中でのIHCによりさらに評価した。
【0127】
要約すれば、クライオスタット(低温保持装置)(Leica社CM1950またはCryoStar社NX70)を使って、5xFADマウスから厚さ10μmの脳の矢状面切片を取得した。切片の収集は、正中線から横方向に約0.50mmレベルで開始し、そして半球全体に及んだ。切片は-20℃で保存した。
【0128】
非特異的結合を、0.1%Triton(登録商標)-100/PBS中のMOMブロッキング試薬(MKB-2213、Vector Laboratories社)で60分間ブロックし、次いでPBS中ですすいだ。アミロイド斑(プラーク)を一次抗体6E10(Biozym Scientific社、B803001、1:1000)および4G8(Biozym Scientific社、B800701、1:500)を用いて、MOM希釈液中で4℃にて一晩標識した。ヒトIgG鎖を含む静脈内投与した構築物を、抗ヒトIgG(H+L)AlexaFluorTM(商標)647(Jackson Immuno Reseach社、709-605-149)によって検出し、2つの一次mIgG抗体を、ロバ抗マウスIgG(H+L)二次抗体DyLightTM(商標)550標識(Thermo Scientific社、SA5-10167)によって可視化した。細胞核をDAPIで標識した。スライドをMowiolTM(商標)(マウント剤)中に設置し、Zeiss社AxiocamTM(商標)506mоnоおよび日立製3CCD HV-F202SCLカメラおよびZeissTM(商標)ZEN3.3ソフトウェアを装備している、高開口率レンズを有するZeiss自動顕微鏡AxioScan Z1スキャナで、切片を撮像した。
【0129】
視床における斑(プラーク)の数および共局在化の自動IHC分析(N=5マウス/処置)は、富士フィルム社ImageJ〔v1.53c;Schindelin他(2012)、Nat.Meth.9(7):676-682〕において共局在化閾値&粒子解析(Colocalization Threshold & Analyze Particle)プラグインを使用して実施した。統計的分析は、Tukeyの事後解析(pоst hoc)検定を用いて一元配置ANOVAを使用して実施した。
【0130】
結果は、図19および20に示される。8D3 scBMを有するmAbBである、mAbB-scLc-8D3-Ig.1の二重特異性結合分子は、従来の抗体フォーマットにおけるmAbBと比較して、はるかに強い標的係合を示す。矢印は、mAbB-scLc-8D3-Ig.1およびmAbBが、それぞれhIgG染色に基づいて脳内の標的に到達した(6E10/4G8染色に基づく)ことを示す。hIgG染色は、mAbBに見られるものに比較して、mAbB-scLc-8D3-Ig.1についてはるかに広範囲でかつ強力であった。
【0131】
実施例16
本開示の更なる二重特異性結合分子の設計および特徴付け
本実施例に記載する結合分子は、以前に研究した結合分子と同様に設計されたが、異なる一本鎖結合モジュールscBMを使用して設計された。
【0132】
この実験の二重特異性結合分子の重鎖(HC)は、ヒトCH1-CH3部分に連結された、mAb158由来のマウスVHドメインを含んだ。完全な重鎖アミノ酸配列は、配列番号33に与えられる。
【0133】
2つの同一の抗体軽鎖LCは、κクラスのヒトCL部分に連結された、mAb158の軽鎖のVLドメインから誘導された。各LCのアミノ酸配列は、配列番号34により示される。
【0134】
本実施例で使用する一本鎖結合モジュールscBMは、トランスフェリン受容体結合抗体15G11-1(Yu他(2014)Sci.Transl.Med.6(261):261ra154)に由来し、かつ配列番号35のアミノ酸配列を有する、一本鎖可変フラグメント(scFv)であった。
【0135】
被験構築物は、図1に描写されるフォーマットに従って設計され、そのリンカー配列を含めて表4に提示される。
【0136】
【表4】
【0137】
二重特異性結合分子mAb158-scLc-15G11-1-Ig.1は、実施例3に記載のとおりに発現させ精製した。
【0138】
nTfR1への結合は、hTfR1を固定化に使用し、3MのMgClを再生に用いたこと以外は、実施例12に記載した通りに評価した。結果は図21に示され、この結果は、発現変異体のhTfR1に対する親和性が、15G11-1 Fab対照のものと同等であることを実証した。
【0139】
発現構成物のAβ1-42への結合は、実施例8に記載の間接ELISAによって評価した。その結果は図22に示され、mAb158-scLc-15G11-1-Ig.1によるAβ1-42への結合が、未修飾のmAb158対照による結合と同等であることを実証した。
【0140】
実施形態の項目別リスト
[1]二重特異性結合分子であって、以下の3本のポリペプチド鎖:
(A)哺乳動物の脳内に存在する第一の標的に対して親和性を有するモノクローナル抗体に由来する2本の同一の抗体重鎖(HC)と、
(B)連続ポリペプチド鎖中に以下の5つの要素:
i)前記第一の標的に対して親和性を有する前記モノクローナル抗体に由来する2つの同一の抗体軽鎖(LC);
ii)血液脳関門を通過する二重特異性結合分子の輸送を媒介する第二の標的に対して親和性を有する1つの一本鎖結合モジュール(scBM);および
iii)2つのアミノ酸リンカーL1およびL2
を含む1本の一本鎖成分と
を含んで成り、
ここで前記軽鎖(LC)と前記一本鎖結合モジュール(scBM)とが、前記リンカーL1およびL2によって分離されており、それによってN末端からC末端まで以下:
[LC-L1-scBM-L2-LC]、
[LC-L1-LC-L2-scBM]、および
[scBM-L1-LC-L2-LC]
から成る群より選択される配列を形成している、前記二重特異性結合分子。
[2]前記一本鎖成分中のN末端からC末端までの前記要素の配列が、
[LC-L1-scBM-L2-LC]および
[LC-L1-LC-L2-scBM]
から成る群より選択される、項目1に記載の二重特異性結合分子。
[3]前記一本鎖成分中のN末端からC末端までの前記要素の配列が、[LC-L1-scBM-L2-LC]である、項目2に記載の二重特異性結合分子。
[4]前記一本鎖成分中のN末端からC末端までの前記要素の配列が、[LC-L1-LC-L2-scBM]である、項目2に記載の二重特異性結合分子。
[5]前記第一の標的が、アミロイドβペプチドまたはその誘導体もしくはそのフラグメント、α-シヌクレインまたはその誘導体もしくはフラグメント、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)またはその誘導体もしくはフラグメント、骨髄細胞上に発現されるトリガー受容体2(TREM2)、β-セクレターゼ1(BACE1)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ハンチンチン、トランスサイレチン、P-セクレターゼ1、上皮成長因子、上皮成長因子受容体2、タウ、リン酸化タウまたはそのフラグメント、アポリポタンパク質E4、CD20、プリオンタンパク質、ロイシンリッチリピートキナーゼ2、パーキン(parkin)、プレセニリン2、γセクレターゼ、死受容体6、 アミロイドβ前駆体タンパク質、p75ニューロトロフィン受容体、ニューレグリンおよびカスパーゼ6から成る群より選択される、前記先行項目のいずれかに記載の二重特異性結合分子。
[6]前記第一の標的が、アミロイドβペプチドまたはその誘導体もしくはフラグメント、α-シヌクレインまたはその誘導体もしくはフラグメント、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)またはその誘導体もしくはフラグメント、骨髄細胞上に発現されるトリガー受容体2(TREM2)、タウ、リン酸化タウまたはそのフラグメント、およびアポリポタンパク質E4から成る群より選択される、項目5に記載の二重特異性結合分子。
[7]前記第一の標的が、アミロイドβペプチドまたはその誘導体もしくはフラグメント、α-シヌクレインまたはその誘導体もしくはフラグメント、およびTAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)またはその誘導体もしくはフラグメントから成る群より選択される、項目6に記載の二重特異性結合分子。
[8]前記第一の標的に対して親和性を有する前記モノクローナル抗体が、レカネマブ、ガンテネルマブ、アデュカヌマブ、ドナネマブ、PBD-C06およびKHK6640から成る群から選択される抗Aβ抗体である、前記先行項目のいずれかに記載の二重特異性結合分子。
[9]前記第一の標的に対して親和性を有する前記モノクローナル抗体が、抗α-シヌクレイン抗体ABBV0805である、項目1~7のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
[10]前記scBMが、scFv、scFab、VHHおよびVNARから成る群より選択されるタイプのものである、前記先行項目のいずれかに記載の二重特異性結合分子。
[11]前記scBMが、scFvおよびscFabから成る群より選択される、項目10に記載の二重特異性結合分子。
[12]前記scBMがscFvである、項目11に記載の二重特異性結合分子。
[13]前記scBMがscFabである、項目11に記載の二重特異性結合分子。
[14]前記第二の標的が、トランスフェリン受容体1(TfR1)、インスリン受容体(InsR)、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(Lrp8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(Lrp1)、CD98、膜貫通タンパク質50A(TMEM50A)、グルコース輸送体1(Glutl)、ベイシジン(BSG)およびヘパリン結合上皮成長因子様成長因子から成る群より選択される、前記先行項目のいずれかに記載の二重特異性結合分子。
[15]前記第二の標的が、トランスフェリン受容体1(TfR1)、インスリン受容体(InsR)、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)および低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(Lrp8)から成る群より選択される、項目14に記載の二重特異性結合分子。
[16]前記第二の標的がトランスフェリン受容体1である、項目15に記載の二重特異性結合分子。
[17]前記アミノ酸リンカーL1およびL2の少なくとも一方がフレキシブルリンカーである、前記先行項目のいずれかに記載の二重特異性結合分子。
[18]前記アミノ酸リンカーL1およびL2の両方がフレキシブルリンカーである、項目17に記載の二重特異性結合分子。
[19]前記フレキシブルリンカーが、グリシン、セリン、アラニンおよび/またはスレオニン残基を含む、項目17~18のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
[20]前記リンカーが、(Gおよび(Sから選択された一般式を有し、ここで、独立にn=1~7、m=0~7、n+m≦8およびp=1~10である、項目19に記載の二重特異性結合分子。
[21]前記アミノ酸リンカーL1およびL2の少なくとも一方が、10~50アミノ酸残基、例えば10~30アミノ酸残基の長さ、15~25アミノ酸残基、または10~20アミノ酸の長さのものである、前記先行項目のいずれかに記載の二重特異性結合分子。
[22]前記アミノ酸リンカーL1およびL2の両方が、10~50アミノ酸残基、例えば10~30アミノ酸残基の長さ、15~25アミノ酸残基、または10~20アミノ酸の長さのものである、項目21に記載の二重特異性結合分子。
[23]前記アミノ酸リンカーL1およびL2が同じ長さである、前記先行項目のいずれかに記載の二重特異性結合分子。
[24]前記アミノ酸リンカーL1およびL2が異なる長さである、項目1~22のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子。
[25]前記アミノ酸リンカーL1が、前記アミノ酸リンカーL2よりも長い、項目24に記載の二重特異性結合分子。
[26]前記アミノ酸リンカーL2が、前記アミノ酸リンカーL1よりも長い、項目24に記載の二重特異性結合分子。
[27]先行項目のいずれかに記載の二重特異性結合分子と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物。
[28]治療処置または予防処置における使用などの、処置において用いるための項目1~26のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子または項目27に記載の組成物。
[29]インビボ診断またはインビボ予後予測において用いるための、項目1~26のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子または項目27に記載の組成物。
[30]前記治療、予防、インビボ診断またはインビボ予後予測が、神経変性疾患に関するものであり、例えばアルツハイマー病およびAβタンパク質凝集に関連する他の疾患、外傷性脳損傷(TBI)、レビー小体認知症(LBD)、ダウン症候群(DS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭型認知症、タウオパチー、全身性アミロイドーシス、アテローム性動脈硬化、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)、アルツハイマー病のレビー小体変異体、多系統萎縮症、精神病、統合失調症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、家族性アミロイド神経疾患から選択される疾患に関するものである、項目28~29のいずれか一項に記載の使用のための二重特異性結合分子または組成物。
[31]前記治療、予防、インビボ診断またはインビボ予後予測が、アルツハイマー病およびAβタンパク質凝集に関連する他の疾患、レビー小体型認知症(LBD)、ダウン症候群(DS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭型認知症、タウオパチー、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症(PDD)およびアルツハイマー病のレビー小体変性症から選択される疾患に関するものである、項目30に記載の使用のための二重特異性結合分子または組成物。
[32]前記治療、予防、インビボ診断またはインビボ予後予測が、アルツハイマー病およびAβタンパク質凝集に関連する他の疾患、レビー小体型認知症(LBD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびパーキンソン病(PD)から選択される疾患に関するものである、項目31に記載の使用のための二重特異性結合分子または組成物。
[33]前記治療、予防、インビボ診断またはインビボ予後予測が、アルツハイマー病に関するものである、項目32に記載の使用のための二重特異性結合分子または組成物。
[34]前記治療、予防、インビボ診断またはインビボ予後予測が、脳腫瘍、多発性硬化症およびリソソーム蓄積症から選択された疾患に関するものである、項目28~29のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子または組成物。
[35]疾患を有しているかまたは発症するリスクのある哺乳動物の治療または予防処置方法であって、項目1~26のいずれか一項に記載の二重特異性結合分子または項目27に記載の組成物の治療有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法。
[36]前記疾患が、神経変性疾患、例えば、項目30~33のいずれか一項に定義されるような神経変性疾患である、項目35に記載の方法。
[37]前記疾患が項目34において定義されるような疾患である、項目35に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H
図12I
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
2024522627000001.app
【国際調査報告】