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特表2024-522636負極材料、その調製方法及びその用途、並びに負極プレート及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】負極材料、その調製方法及びその用途、並びに負極プレート及び用途
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20240614BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20240614BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240614BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240614BHJP
【FI】
H01M4/587
C01B32/05
H01M4/36 C
H01M4/36 D
H01M4/36 A
H01M4/133
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575931
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 CN2021133972
(87)【国際公開番号】W WO2022257373
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110648445.0
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520380978
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清▲潔▼能源研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲広▼宏
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ 志江
(72)【発明者】
【氏名】梁 文斌
(72)【発明者】
【氏名】▲衛▼ 昶
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 全彬
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA19
4G146AB01
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC14A
4G146AC14B
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA25
4G146BB03
4G146BC04
4G146BC32A
4G146BC32B
4G146BC33A
4G146BC36A
4G146BC36B
4G146CB10
4G146CB11
4G146CB14
4G146CB19
4G146CB35
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA03
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA15
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、炭素材料の分野に関する。負極材料、その調製方法及びその用途、並びにその負極プレート及び用途を開示する。負極材料は、以下の特徴:(1)負極材料の全細孔体積が、0.02cm/g以下であり、2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積が、0.0001cm/g~0.02cm/gである、及び(2)負極材料のラマン分光法によって得られるDピークのGピークに対する高さ比が、以下の条件:0.20≦ID/IG≦1を満たす、を有する。負極材料は、高い構造的密度、及び小さな結晶粒径を有しており、その結果、負極材料を含む電池は、高い充電放電容量、高い初サイクルクーロン効率及び優れたレート能力を有するだけではなく、優れた連続高レートサイクル性能も有しており、更に、この調製方法は、プロセスが簡単で、費用が安い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴:
(1)負極材料の全細孔体積が、0.02cm/g以下であり、2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積が、0.00001cm/g~0.02cm/gである、及び
(2)負極材料のラマン分光法によって得られるDピークのGピークに対する高さ比が、以下の条件:0.20≦ID/IG≦1を満たす
を有する、負極材料。
【請求項2】
負極材料の全細孔体積が、0.0001cm/g~0.01cm/gであり、2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積が、0.00001cm/g~0.01cm/gであり、
好ましくは、負極材料の全細孔体積が、0.0002cm/g~0.007cm/gであり、2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積が、0.0001cm/g~0.007cm/gである、
請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
負極材料のラマン分光法によって得られるDピークのGピークに対する高さ比が、以下の条件:0.25≦ID/IG≦0.9、より好ましくは、0.3≦ID/IG≦0.8を満たす、請求項1又は2に記載の負極材料。
【請求項4】
負極材料の粉末XRDによって得られる(002)結晶面の面間隔d002が、以下の条件:0.3340nm≦d002≦0.3400nm、好ましくは0.3350nm≦d002≦0.3390nm、より好ましくは0.3364nm≦d002≦0.3370nmを満たし、
好ましくは、負極材料の粉末XRDによって得られるc-軸方向における結晶サイズLが、以下の条件:25nm≦L≦70nm、好ましくは28nm≦L≦60nm、より好ましくは30nm≦Lc≦50nmを満たし、
好ましくは、負極材料のXRDによって得られるa-軸方向における結晶サイズLが、以下の条件:40nm≦L≦150nm、好ましくは45nm≦La≦120nm、より好ましくは50nm≦L≦100nmを満たす、
請求項1から3のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項5】
負極材料の黒鉛化度が、以下の条件:
82≦黒鉛化度≦95、好ましくは84≦黒鉛化度≦91、より好ましくは、85≦黒鉛化度≦90を満たす、請求項1から4のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項6】
負極材料の比表面積が、0.1m/g~10m/g、好ましくは0.5m/g~5m/g、より好ましくは1m/g~3m/gである、請求項1から5のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項7】
石炭ベースグラファイトの第1相炭素、及びアモルファスカーボンの第2相炭素を含む、負極材料であって、
第1相炭素の表面の一部又は全体が、第2相炭素によって覆われており、
又は、第2相炭素が、第1相炭素に分散されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項8】
第1相炭素対第2相炭素の質量比が、負極材料の総質量基準で、2~99:1であり、
好ましくは、第1相炭素対第2相炭素の質量比が、負極材料の総質量基準で、4~70:1である、
請求項7に記載の負極材料。
【請求項9】
負極材料の調製方法であって、以下:
(1)石炭を粉砕して、石炭粒子を得る工程、
(2)石炭粒子を黒鉛化し、黒鉛化材料を得る工程、
(3)黒鉛化材料を改質剤と混合して、混合材料を得る工程、
(4)大気中で混合材料を事前酸化して、事前酸化試料を得る工程、及び
(5)不活性雰囲気中で、事前酸化試料を炭化し、負極材料を得る工程
を含む、方法。
【請求項10】
石炭が、以下の条件:ビトリナイト反射率が2以上;揮発性構成成分の含有率が10wt%以下;及び灰分含有率が15wt%以下を満たし、
好ましくは、石炭が、以下の条件:ビトリナイト反射率が2.3以上;揮発性構成成分の含有率が10wt%以下;及び灰分含有率が6wt%以下を満たす、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(2)において、黒鉛化条件が、2900℃以上の炭化温度、及び0.5時間~100時間の炭化時間を含み、
好ましくは、黒鉛化条件が、3000℃~3500℃の炭化温度、及び1時間~80時間の黒鉛化時間を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
改質剤が、アモルファスカーボンの前駆体であり、
好ましくは、改質剤が、アスファルト及び/又は樹脂から選択され、
より好ましくは、改質剤がアスファルトである場合、改質剤は、以下の条件:改質剤の軟化点が、50℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃~360℃であり、400℃における改質剤の粘度が、1000Pa・s以下、好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは20Pa・s以下であることを満たし、
好ましくは、使用される黒鉛化材料の量対使用される改質剤の量の投入量が、1~99.9:1、好ましくは4~99:1である、
請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(3)において、事前酸化条件が、50℃~600℃、好ましくは100℃~550℃、より好ましくは200℃~500℃の事前酸化温度を含み、
好ましくは、事前酸化時間が、1時間~100時間、好ましくは3時間~80時間である、
請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(5)において、炭化条件が、800℃~1,500℃、好ましくは900℃~1,400℃、より好ましくは1,000℃~1,300℃の炭化温度を含み、
好ましくは、炭化時間が、0.1時間~100時間、好ましくは0.5時間~80時間、より好ましくは1時間~50時間である、
請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一項に記載の調製方法によって調製される負極材料。
【請求項16】
請求項1から8及び15のいずれか一項に記載の負極材料を含む、負極プレート。
【請求項17】
負極プレートの圧縮密度が、1.4g/cm~1.6g/cmである場合、負極プレートのOIが、15以下、好ましくは0.1~15、より好ましくは1~10である、請求項16に記載の負極プレート。
【請求項18】
リチウムイオン電池における、請求項1から8及び15のいずれか一項に記載の負極材料の用途、又は、請求項16若しくは17に記載の負極プレートの用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2021年6月10日出願の中国特許出願第202110648445.0号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、炭素材料の分野に関し、負極材料、その調製方法及び用途、並びに負極プレート及び用途に特に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池の負極は、主に、アモルファスカーボン、天然グラファイト及び人工グラファイトを含む、炭素材料である。グラファイトは、規則正しい層化構造、及び優れた導電性を有しており、372mAh/gという理論比容量を有し、効率が高く、現在の負極材料のメインストリームである。現在、人工グラファイトを開発するための原料は、3種のタイプ:等方性コークス、瀝青炭及びニードルコークスを主に含む。等方性コークスをベースとする人工グラファイトは、結晶化度が低く、等方性が高く、容量は低く、出力は高い。ニードルコークスをベースとする人工グラファイトは、容量は高いが、レート能力には比較的乏しく、瀝青炭は、一般に、上記の2つの間になる。
【0004】
CN104681786Aは、石炭ベースの負極材料を開示している。石炭ベースの負極材料は、石炭ベースの材料の黒鉛化した内側層、中間層及び表面に分布した外側層からなる。この材料の調製方法には、石炭ベースの材料を粉砕する工程、結合剤を添加する工程、結合剤、又は結合剤と改質剤との混合物(mixer)を添加する工程、次に、圧縮及び高温黒鉛化を行い、最終生成物を取得する工程を含む。
【0005】
CN111232970Aは、グラファイト負極材料、リチウムイオン電池、調製方法及び用途を開示している。調製方法は、以下:メソカーボンマイクロスフィアグリーンペレット、粉砕無煙炭及び触媒からなる混合物に高温黒鉛化処理を行う工程を含み、この場合、メソカーボンマイクロスフィアグリーンペレット対粉砕無煙炭の質量比は、1:9~8:1であり、粉砕無煙炭の粒径D50は、10μm~20μmの範囲である。
【0006】
CN111628146Aは、微結晶性グラファイトにアスファルトを充填することによって、リチウムイオン電池の負極材料を調製するプロセスを開示しており、このプロセスは、原料として、微結晶性グラファイトを使用し、改変微結晶性グラファイトを得るための混錬に中~低温石炭タールを加え、改変された微結晶性グラファイトを反応器に移し、液体状態の中温度アスファルトを加え、混合し、350℃~500℃に加熱し、真空にして、1時間~3時間、置き、不活性ガスを導入して加圧し、2~5時間、置き、除圧して、アスファルト充填された微結晶性グラファイトを得、次に、フレーク状にし、粉末化、炭化、ふるいがけ、及びアスファルト充填微結晶性グラファイトへの減磁処理を行い、目的生成物を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN104681786A
【特許文献2】CN111232970A
【特許文献3】CN111628146A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術によって提供される負極材料は、構造及びプロセスが複雑であり、費用は高い。調製された負極材料は、一層高い電池容量及び初期クーロン効率を実現することができるが、この電池の連続高レートサイクル性能は、不十分であり、これは、実際の市場の需要を満たすことができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
先行技術における、複雑な構造、連続高レートサイクル性能の不良、複雑な調製法、及び負極材料の費用の高さという問題を克服するため、本発明は、負極材料、その調製方法及び用途を提供する。負極材料の構造は、高度にコンパクトであり、材料の結晶粒径が小さく、その結果、負極材料は、高い充電放電容量、高い初期クーロン効率及び優れたレート能力を有するだけではなく、優れた連続高レートサイクル性能も有しており、この調製方法は、プロセスが簡単で、安価である。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、以下の特徴:
(1)負極材料の全細孔体積が、0.02cm/g以下であり、2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積が、0.00001cm/g~0.02cm/gである、及び
(2)負極材料のラマン分光法によって得られるDピークのGピークに対する高さ比が、以下の条件:0.20≦ID/IG≦1を満たす
を有する、負極材料を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様は、負極材料の調製方法であって、以下:
(1)石炭を粉砕して、石炭粒子を得る工程、
(2)石炭粒子を黒鉛化し、黒鉛化材料を得る工程、
(3)黒鉛化材料を改質剤と混合して、混合材料を得る工程、
(4)大気中で混合材料を事前酸化して、事前酸化試料を得る工程、及び
(5)不活性雰囲気中で、事前酸化試料を炭化し、負極材料を得る工程
を含む、方法を提供する。
【0012】
本発明の第3の態様は、上記の方法によって調製された負極材料を提供する。
【0013】
本発明の第4の態様は、リチウムイオン電池における、上記の石炭ベースの負極材料の用途を更に提供する。
【0014】
上記の技術的解決策に準拠すると、本発明によって得られる負極材料、及びその調製方法、及び用途は、以下の有益な効果:
(1)本発明によって提供される負極材料は、コンパクトな構造及び小さな結晶粒径を有しており、本負極材料を含む電池は、優れた連続高レートサイクル性能を有する。
(2)本発明によって提供される負極材料を含有する電池は、優れた充電放電容量及び初期クーロン効率を有するだけではなく、優れた連続高レートサイクル性能も有する。具体的には、本発明の負極材料の充電放電容量は、330mAh/g以上であり、初期クーロン効率は、92%以上であり、レート能力は優れており、5Cにおける1,500回の連続高レートサイクリングの容量保持率は、80%以上である。
(3)本発明によって提供される負極材料を調製する方法において、石炭粒子に、黒鉛化、改質剤との混合、事前酸化及び炭化を順に施し、その結果、調製した負極材料の構造的コンパクトさを顕著に改善することができ、得られた負極材料は、小さな結晶粒径を有しており、リチウムイオンは、インターカレートされて、多数のチャネルにおいて、迅速な拡散を伴い脱着することができ、これによって、負極材料の連続高レートサイクル性能が顕著に改善される。
(4)本発明によって提供される負極材料を含有する負極プレートは、低いOI値を有する。具体的には、負極プレートの圧縮密度が、1.4g/cm3~1.6g/cmである場合、負極プレートのOIは、15以下となり、負極プレートは、優れた配向性及び高度な等方性を有することを示しており、その結果、本負極プレートを含む電池は、優れたレート能力及び連続高レートサイクル性能を有する。
を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において開示されている範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらは、そのような範囲又は値に近い値を含むことが理解されるべきである。数値範囲に関すると、1つ又は複数の新しい数値範囲は、様々な範囲の端点の値を、様々な範囲の端点の値と個々の点の値とを、及び個々の点の値を組み合わせることによって得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書において具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0016】
本発明の第1の態様は、以下の特徴:
(1)負極材料の全細孔体積が、0.02cm/g以下であり、2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積が、0.00001cm/g~0.02cm/gである、及び
(2)負極材料のラマン分光法によって得られるDピークのGピークに対する高さ比が、以下の条件:0.20≦ID/IG≦1を満たす
を有する、負極材料を提供する。
【0017】
本発明において、上記の条件を満たす負極材料は、ホールをほとんど有しておらず、この負極材料は、コンパクトな構造を有し、欠陥がほとんどなく、かつ小さな結晶粒径を有しており、その結果、連続高レートサイクル性能は、高い充電放電容量、初期クーロン効率及びレート能力を維持することを前提にして、顕著に改善され得る。
【0018】
本発明において、負極材料の全細孔体積、及び2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積は、窒素吸着比表面積法によって測定される。
【0019】
更に、本負極材料の全細孔体積が、0.0001cm/g~0.01cm/gであり、2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積が、0.00001cm/g~0.01cm/gである場合、負極として本負極材料を使用するリチウムイオン電池は、高い充電放電容量、初期クーロン効率及びレート能力を有し、優れた連続高レートサイクル性能を有する。
【0020】
更に、本負極材料の全細孔体積が、0.0002cm/g~0.007cm/gであり、2nm~50nmの細孔径を有するメソ細孔の体積が、0.0001cm/g~0.007cm/gである場合、負極として本負極材料を使用するリチウムイオン電池は、高い充電放電容量、初期クーロン効率及びレート能力を有し、優れた連続高レートサイクル性能を有する。
【0021】
更に、負極材料のラマン分光法によって得られるDピークのGピークに対する高さ比が、以下の条件:0.25≦ID/IG≦0.9、好ましくは0.30≦ID/IG≦0.8を満たす場合、負極として本負極材料を使用するリチウムイオン電池は、高い充電放電容量及び初期クーロン効率を有し、優れた連続高レートサイクル性能を有する。
【0022】
本発明によれば、負極材料の粉末XRDによって得られる(002)結晶面の面間隔d002は、以下の条件:0.3340nm≦d002≦0.3400nmを満たす。
【0023】
本発明によれば、負極材料の粉末XRDによって得られるc-軸方向における結晶サイズLは、以下の条件:25nm≦L≦70nmを満たす。
【0024】
本発明によれば、負極材料のXRDによって得られるa-軸方向における結晶サイズLは、以下の条件:40nm≦L≦150nmを満たす。
【0025】
本発明において、負極材料の(002)結晶面の面間隔d002、c-軸方向における結晶サイズL及びa-軸方向における結晶サイズLは、負極材料の粉末XRD試験によって得られる。
【0026】
本発明において、負極材料の(002)結晶面の面間隔d002、c-軸方向における結晶サイズL及びa-軸方向における結晶サイズLが、上記の条件を満たす場合、本負極材料は、小さな結晶粒径の特徴を有しており、リチウムイオンは、インターカレートされて、短経路を有する多数のチャネル中で脱着することができ、負極材料を含む電池のレート能力が顕著に改善され得る。
【0027】
更に、負極材料の粉末XRDによって得られる(002)結晶面の面間隔d002は、以下の条件:0.3350nm≦d002≦0.3390nm、好ましくは、0.3364nm≦d002≦0.3370nmを満たす。
【0028】
本発明によれば、負極材料の粉末XRDによって得られるc-軸方向における結晶サイズLは、以下の条件:28nm≦L≦60nm、好ましくは、30nm≦L≦50nmを満たす。
【0029】
本発明によれば、負極材料のXRDによって得られるa-軸方向における結晶サイズLは、以下の条件:45nm≦L≦120nm、好ましくは、50nm≦L≦100nmを満たす。
【0030】
本発明によれば、負極材料の黒鉛化度(G)は、以下の条件:82≦黒鉛化度≦95、好ましくは84≦黒鉛化度≦91、より好ましくは85≦黒鉛化度≦90を満たす。
【0031】
本発明において、負極材料の黒鉛化度Gは、以下の式:G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)に準拠して計算され、d002は、Braggの式によって計算される。
【0032】
本発明によれば、負極材料の比表面積(BET)は、0.1m/g~10m/g、好ましくは0.5m/g~5m/g、より好ましくは1m/g~3m/gである。
【0033】
本発明において、負極材料の比表面積は、窒素吸着比表面積法によって測定される。
【0034】
本発明によれば、負極材料は、石炭ベースグラファイトの第1相炭素、及びアモルファスカーボンの第2相炭素を含み;
第1相炭素の表面の一部又は全体が、第2相炭素によって覆われており、
又は、第2相炭素は、第1相炭素に分散されている。
【0035】
本発明によれば、第1相炭素対第2相炭素の質量比は、負極材料の総質量基準で、2~99:1である。
【0036】
本発明において、負極材料における第1相炭素及び第2相炭素の含有率は、供給された原料の量及び残留炭素率により計算される。
【0037】
更に好ましくは、第1相炭素対第2相炭素の質量比は、負極材料の総質量基準で、4~70:1である。
【0038】
本発明の第2の態様は、負極材料の調製方法であって、以下:
(1)石炭を粉砕して、石炭粒子を得る工程、
(2)石炭粒子を黒鉛化し、黒鉛化材料を得る工程、
(3)黒鉛化材料を改質剤と混合して、混合材料を得る工程、
(4)大気中で混合材料を事前酸化して、事前酸化試料を得る工程、及び
(5)不活性雰囲気中で、事前酸化試料を炭化し、負極材料を得る工程
を含む、方法を提供する。
【0039】
本発明によれば、負極材料を調製するプロセスにおいて、改質剤は、石炭の黒鉛化によって得られる黒鉛化材料と混合され、次に、事前酸化及び炭化が順に施され、その結果、負極材料の細孔体積を顕著に低下させることができ、負極材料のコンパクトさを改善することができ、その結果、本負極材料を含むリチウムイオン電池の連続高レートサイクル性能を顕著に改善することができる。
【0040】
更に、石炭は、本発明において原料として使用され、負極材料が上記の方法によって調製される場合、負極材料の調製費用を削減することができるだけではなく、石炭の高付加価値利用、及びクリーンかつ効率的な変換も実現することができる。
【0041】
本発明によれば、石炭は、以下の条件:ビトリナイト反射率が2以上;揮発性構成成分が10wt%以下;及び灰分含有率が15wt%以下を満たす。
【0042】
本発明において、上記の条件を満たす石炭が、負極材料を調製するための原料として選択される場合、中度の結晶化度、小さな結晶粒径及びコンパクトな構造を有する負極材料を得ることができ、こうして、この負極材料を含むリチウムイオン電池は、高い充電放電容量、高い初期クーロン効率及び優れた連続高レートサイクル性能を有する。
【0043】
本発明において、石炭のビトリナイト反射率は、国家規格GB/T6948における方法によって測定され、石炭の揮発性構成成分の含有率及び灰分含有率は、国家規格GB/T30732における方法によってどちらも測定される。
【0044】
本発明によれば、石炭は、以下の条件:ビトリナイト反射率が2.3以上;揮発性構成成分が10wt%以下;及び灰分含有率が6wt%以下を満たす。
【0045】
本発明において、ジェットミル、機械式ミル、レイモンドミル等の、当分野における慣用的な装置を使用して、石炭を粉砕することができる。
【0046】
本発明において、工程(1)では、石炭粒子の粒径D50は、1μm~100μm、好ましくは2μm~50μmである。
【0047】
本発明において、石炭粒子の粒径D50は、レーザー粒径分析器によって測定される。
【0048】
本発明によれば、工程(2)において、黒鉛化条件は、2900℃以上の炭化温度、及び0.5時間~100時間の炭化時間を含む。
【0049】
本発明によれば、黒鉛化条件は、3000℃~3500℃の炭化温度、及び1時間~80時間の黒鉛化時間を含む。
【0050】
本発明によれば、改質剤は、アモルファスカーボンの前駆体である。
【0051】
更に、改質剤は、アスファルト及び/又は樹脂から選択される。
【0052】
本発明において、アスファルトは、石炭アスファルト、石油アスファルト、メソフェーズアスファルト及び酸化アスファルトの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0053】
本発明において、改質剤がアスファルトである場合、改質剤は、以下の条件を満たす:改質剤の軟化点は、50℃以上であり、400℃における改質剤の粘度は、1000Pa・s以下である。
【0054】
本発明において、工程(2)において得られる黒鉛化材料は、特定の軟化点及び粘度を有する改質剤を使用することによって改変され、改質剤は、石炭の黒鉛化によって得られる黒鉛化材料の細孔チャネルに進入することができ、その結果、調製した負極材料における細孔体積が顕著に低下し、その一方、石炭の黒鉛化によって得られた黒鉛化材料は、表面が改変されており、その結果、比表面積が顕著に低下し、生成物の構造的コンパクトさが改善され、その結果、負極材料を含むリチウムイオン電池は、一層高い初期クーロン効率及び一層優れた連続高レートサイクル性能を有する。
【0055】
更に、改質剤の軟化点は、150℃以上、好ましくは200℃~360℃である。400℃における改質剤の粘度は、100Pa・s以下;好ましくは20Pa・s以下である。
【0056】
本発明によれば、黒鉛化材料対改質剤の投入比は、1~99.9:1である。
【0057】
本発明において、使用される黒鉛化材料及び改質剤の量が、上記の範囲を満たす場合、調製された負極材料は最適比を有することができ、その結果、得られた負極材料は、優れた包括的性能を有する。具体的には、使用される改質剤の量が多すぎる場合、得られる第2相炭素は、過剰の改質剤が存在するために凝集し、こうして、充電放電容量及び初期クーロン効率が低下する。しかし、使用される改質剤の量が少なすぎる場合、黒鉛化材料表面の改質剤の表面改変は不十分であり、これによって、最終的には、負極材料の初期クーロン効率及び連続高レートサイクル性能が低下する。
【0058】
更に、使用される黒鉛化材料の量対使用される改質剤の量の比は、4~99:1、好ましくは6~99:1、より好ましくは8~99:1である。
【0059】
本発明によれば、工程(3)において、事前酸化条件は、50℃~600℃の事前酸化温度、及び1時間~100時間の事前酸化時間を含む。
【0060】
本発明において、混合した材料は、上記の条件下で事前酸化され、その結果、第2相炭素の構造的コンパクトさを顕著に改善することができ、コンパクトな構造を有する第2相炭素は、第1相炭素の細孔によりよく充填され得、第1相炭素の表面が修飾されて、最終的に、調製された負極材料の構造的コンパクトさが顕著に改善され、その結果、本負極材料を含む電池の連続高レートサイクル性能は、高い充電放電容量、初期クーロン効率及びレート能力を維持することを前提に顕著に改善され得る。
【0061】
更に好ましくは、事前酸化温度は、100℃~550℃、より好ましくは200℃~500℃である。事前酸化時間は、3時間~80時間である。
【0062】
本発明によれば、炭化条件は、800℃~1,500℃の炭化温度を含み、炭化時間は、0.1時間~100時間である。
【0063】
本発明において、事前酸化試料は、上記の条件下で炭化され、その結果、事前酸化試料中の揮発物を除去することができる一方、炭素は、活性構成成分を完全に保持する条件下で再配列し、生成物のコンパクトさが改善され、その結果、調製された負極材料の包括的な性能が一層優れる。
【0064】
更に好ましくは、炭化温度は、900℃~1400℃であり、より好ましくは1000℃~1300℃である。炭化時間は、0.5時間~80時間、より好ましくは、1時間~50時間である。
【0065】
本発明の第3の態様は、上記の調製方法によって調製される負極材料を提供する。
【0066】
本発明の第4の態様は、上記の負極材料を含む、負極プレートを提供する。
【0067】
本発明において、負極プレートは、導電剤及び結合剤を更に含む。使用される負極材料、導電剤及び結合剤の量は、当分野において使用されている、それらの慣用的な量を指すことができる。具体的には、使用される負極材料対使用される導電剤対使用される結合剤の量の比は、80~98:1~10:1~10である。
【0068】
導電剤及び結合剤のタイプに関すると、当分野において慣用的な導電剤及び結合剤が使用されてもよい。
【0069】
本発明において、負極プレートは、当分野における従来の方法に準拠して調製することができる。具体的には、負極材料、導電性カーボンブラックSuper P、結合剤であるポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)及び増粘剤CMCを割合に従い均等に混合し、脱イオン水を加え、スラリーミキサによって一様な負極スラリーを調製し、固体含有率を40wt%~50wt%に制御する。コーターを用いて、銅製ホイルに負極スラリーを均等にコーティングして乾燥し、小片に裁断すると、負極プレートが得られる。
【0070】
本発明によれば、負極プレートの圧縮密度は、1.4g/cm3~1.6g/cmであり、負極プレートのOIは、15以下である。
【0071】
本発明において、負極プレートのOI値とは、(004)結晶面のピーク強度I004の、(110)結晶面のピーク強度I110に対する比を指し、これは、負極プレートのXRDによって得られる。
【0072】
本発明において、負極プレートは、低いOI値を有しており、負極プレートが、優れた配向性及び高度な等方性を有していることを示しており、これによって、負極プレートを含む電池は、優れた電気化学性能を有することが可能となる。
【0073】
更に、負極材料のOI値が、0.1~15、好ましくは1~10である場合、負極プレートを含むリチウムイオン電池は、高い充電放電容量及び初期クーロン効率を有し、優れた連続高レートサイクル性能を有する。
【0074】
本発明の第4の態様は、リチウムイオン電池における、上記の負極材料の用途又は負極プレートの用途を更に提供する。
【0075】
本発明において、上記の負極材料又は負極プレートを含むリチウムイオン電池は、優れた電気化学性能を有する。具体的には、上記の負極材料を含むリチウムイオン電池は、330mAh/g以上の充電放電容量、92%以上の初期クーロン効率、及び80%以上の5Cにおける1,500回の連続高レートサイクリングの容量保持率を有する。
【0076】
本発明は、実施形態を参照しながら、本明細書のこれ以降に詳細に記載する。
【0077】
(1)XRD分析
負極材料の面間隔d002、L、L、及び負極プレートのOI値をすべて試験し、Bruker AXS GmbH社のD8 Advance型X線回折計によって分析した。較正は、ケイ素内部標準法によって行い、d002値は、Braggの式によって計算し、L及びLは、Scherrerの式によって計算した。
【0078】
(2)黒鉛化度G
負極材料の黒鉛化度Gは、以下の式に準拠して計算した:
G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)(式中、d002は、Braggの式によって計算した)。
【0079】
(3)BET及びホール体積
負極材料のBET及びホール体積は、MICROMERITICS社の3flex N2吸着-脱着機器によって測定した。試験方法は、国家規格に準拠して行い、試料の事前処理は、350℃の温度で6時間、行った。
【0080】
(4)粒径
石炭のD50は、Malvern Instruments Ltd.社のMalvern Mastersizer2000レーザー粒径計によって得た。
【0081】
(5)石炭のビトリナイト反射率は、国家規格GB/T6948における方法によって測定し、石炭の揮発性構成成分の含有率及び灰分含有率は、国家規格GB/T30732における方法によってどちらも測定した。
【0082】
(6)改質剤の軟化点:アスファルトの軟化点は、Mettler滴定を使用することによって試験した。
【0083】
(7)改質剤の粘度:400℃の試験温度及び10/sのせん断速度において、ドイツHake社のMARS40ロータリーレオメータによって試験した。
【0084】
(8)電池性能
a. 電池の充電放電容量及び初期クーロン効率は、Wuhan Land Electronics Co.,Ltd社の電池試験システムのCT2001A電池試験器により、0.1C(1C=350mAh/g)の電流及び0V~3Vの電圧において、充電-放電試験を施した。
b. 5Cにおける連続高レートサイクル性能には、以下の試験条件下、Neware電池試験器により充電-放電試験を施した:室温において、定電流5Cから4.2Vに充電して定電圧にし、カットオフ電流は0.05Cとし、5Cの定電流で2.5Vまで放電した。
【実施例1】
【0085】
(1)石炭(ビトリナイト反射率2.445;揮発物含有率7.7wt%;及び灰分含有率2.6wt%)を機械式ミルによって粉砕し、10μmのD50を有する石炭粒子を得た。
(2)石炭粒子を3,000℃で25時間、黒鉛化し、黒鉛化材料を得た。
(3)上記の黒鉛化材料の93部を、7部の石油アスファルト(軟化点240℃及び400℃における粘度8.553Pa・s)と混合し、混合材料を得、黒鉛化材料対改質剤である石油アスファルトの質量比は、13.3:1とした。
(4)混合した材料を、大気中、300℃で20時間、事前酸化し、事前酸化試料を得た。及び
(5)事前酸化試料を、不活性ガス中、1,200℃で5時間、炭化し、ふるいにかけて、負極材料A1を得た。
【実施例2】
【0086】
(1)石炭(ビトリナイト反射率2.445;揮発物含有率7.7wt%;及び灰分含有率2.6wt%)を機械式ミルによって粉砕し、10μmのD50を有する石炭粒子を得た。
(2)石炭粒子を3000℃で25時間、黒鉛化し、黒鉛化材料を得た。
(3)上記の黒鉛化材料の85部を、15部の石油アスファルト(軟化点240℃及び400℃における粘度8.553Pa・s)と混合し、混合材料を得、黒鉛化材料対改質剤である石油アスファルトの質量比は、5.7:1とした。
(4)混合した材料を、大気中、300℃で20時間、事前酸化し、事前酸化試料を得た。及び
(5)事前酸化試料を、不活性ガス中、1,200℃で5時間、炭化し、ふるいにかけて、負極材料A2を得た。
【実施例3】
【0087】
負極材料A3は、使用した黒鉛化材料の量が97部であること、使用した改質剤の量が3部であること、及び上記2つの質量比が、32.3:1であることを除き、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料A3を調製した。
【実施例4】
【0088】
負極材料A4は、使用した黒鉛化材料の量が70部であること、使用した改質剤の量が30部であること、及び上記2つの質量比が2.3:1であることを除き、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料A4を調製した。
【実施例5】
【0089】
負極材料A5は、軟化点240℃、及び400℃における粘度8.553Pa・sを有する石油アスファルトの代わりに、軟化点260℃、及び400℃において粘度0.557Pa・sを有するメソフェーズアスファルトを使用した以外、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料A5を調製した。
【実施例6】
【0090】
負極材料A6は、軟化点240℃、及び400℃における粘度8.553Pa・sを有する石油アスファルトの代わりに、軟化点280℃、及び400℃において粘度10.580Pa・sを有する酸化アスファルトを使用した以外、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料A6を調製した。
【実施例7】
【0091】
負極材料A7は、コンポジット改質剤を使用して、軟化点240℃、及び400℃における粘度8.553Pa・sを有する石油アスファルトを置き換えた以外、実施例1の方法に準拠して調製し、コンポジット改質剤は、4:3の質量比の、メソフェーズアスファルト(軟化点260℃及び400℃における粘度0.557mPa・s)及び酸化アスファルト(軟化点280℃及び400℃における粘度10.580mPa・s)の混合物であった。負極材料A7を調製した。
【実施例8】
【0092】
負極材料A8は、事前酸化を180℃の温度で4時間、行った以外、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料A8を調製した。
【実施例9】
【0093】
負極材料A9は、事前酸化を400℃の温度で10時間、行った以外、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料A9を調製した。
【実施例10】
【0094】
負極材料A10は、スクロースを本実施形態における石油アスファルトの代わりに使用した以外、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料A10を調製した。
【0095】
比較実施例1
負極材料は、工程(3)、工程(4)及び工程(5)を行わなかったこと以外、実施例1の方法に準拠して調製し、負極材料D1を調製した。負極材料D1は均一であり、第2相炭素を含有しなかった。
【0096】
比較実施例2
負極材料は、工程(4)の事前酸化工程を行わなかった以外、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料D2を調製した。
【0097】
比較実施例3
負極材料は、石炭アスファルト及び石油アスファルトを直接、混合して混合物を得て、この混合物を、実施例1の黒鉛化工程に準拠して黒鉛化し、負極材料D3を調製した以外、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料D3では、石油アスファルトを完全に黒鉛化し、負極材料D3は、第2相のアモルファスカーボンを含有しなかった。
【0098】
比較実施例4
負極材料は、石油アスファルトが工程(3)に含まれなかったこと以外、実施例1の方法に準拠して調製した。負極材料D4を調製した。負極材料D4は均一であり、第2相炭素を含有しなかった。
【0099】
本実施例及び比較例において調製した負極材料の物性評価を行い、結果を以下の表1に見ることができる。
【0100】
【表1】
【0101】
V1とは、負極材料の全細孔体積を指す。V2とは、負極材料のメソ細孔の体積を指す。M1とは、負極材料中の第1相炭素の質を指す。M2とは、負極材料中の第2相炭素の質を指す。OI値は、圧縮密度が1.55g/cmの時のOI値を指す。
【0102】
試験実施例
(1)ハーフセル性能試験:
本実施例及び比較例において調製した負極材料を、導電性カーボンブラックSuper P及び結合剤であるポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)と、92:3:5の質量比で均一に混合し、次に、溶媒N-メチルピロリドン(NMP)を加え、一様な負極スラリーに撹拌し、スクレーパーを用いてこれを銅製ホイルに均等にコーティングして乾燥すると負極プレートが得られ、小片に裁断して、次に、MBraun2000グローブボックス(Ar雰囲気、HO及びO濃度は、0.1×10-6体積%未満である)に移送し、次に、参照電極として金属リチウムプレートを使用することによって、ボタン電池を組み立てた。このボタン電池の充電放電容量及び初期クーロン効率を試験し、試験結果を表2に示す。
【0103】
(2)全セル性能試験:
本実施例及び比較例において調製した負極材料を導電性カーボンブラックSuper P、結合剤ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)及び増粘剤CMCと、94:2:3:1の質量比で均一に混合し、脱イオン(dionized)水を加え、スラリーミキサによって一様な負極スラリーを得て、固体含有率を40wt%~50wt%に制御した。コーターを用いて、銅製ホイルに負極スラリーを均一にコーティングして乾燥し、小片に裁断して負極プレートを得た。この負極プレートを三成分正極材料NCM523と組み合わせて、電解質及びセパレータを追加して、パウチ電池を組み立てた。5Cにおいて、このパウチ電池の連続高レートサイクル寿命を試験した。このサイクルプロセスは、以下の通りとした:5Cの一定電流から4.2Vまで充電して定電圧にし、カットオフ電流は0.05Cとし、5Cの定電流において2.5Vまで放電し、このプロセスを連続して繰り返した。1,500回のサイクル後、放電容量/初期放電容量の容量保持率を、5Cにおいて1,500回の連続高レートサイクリングの容量保持率として計算した。試験結果を表2に見ることができる。
【0104】
【表2】
【0105】
表1及び表2から分かる通り、本発明の実施例によって調製した負極材料は、コンパクトな構造、及び小さな結晶粒径という特徴を有する一方、この負極材料を含む電池の連続高レートサイクル性能を、一層高い充電放電容量、初期クーロン効率及びレート能力を維持するという前提の下で、顕著に改善することができる。
【0106】
上記は、本発明の単に好ましい実施形態であるが、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の技術的概念の範囲内において、本発明の技術的解決策に多数の単純な改変を行い、任意の他の好適な方法で、様々な技術的特徴の組合せを含むことができる。これらの簡単な修正及び組合せは、本発明によって開示されている内容としてやはり見なされ、本発明の保護範囲に属するものとする。
【国際調査報告】