IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テーエン・アンテルナシオナルの特許一覧

特表2024-522637中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料、同複合材料を製造する方法、並びにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料、同複合材料を製造する方法、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/02 20060101AFI20240614BHJP
   C08F 283/01 20060101ALI20240614BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C08F299/02
C08F283/01
C08J3/20 A CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023575933
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 FR2022051092
(87)【国際公開番号】W WO2022258927
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2106152
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308021394
【氏名又は名称】オラノ・ニュークリア・パッケージズ・アンド・サービシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サルマ・エル・オイヒ
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ・イサール
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ・ナレ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェル・カロン
【テーマコード(参考)】
4F070
4J127
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA46
4F070AA49
4F070AB02
4F070AB10
4F070AC11
4F070AC15
4F070AC47
4F070AC56
4F070AE08
4F070FA02
4F070FB07
4F070FB09
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD191
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG101
4J127BG10Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127DA04
4J127DA06
4J127DA42
4J127DA66
4J127EA05
4J127FA01
(57)【要約】
本発明は、100質量部の組成物であって、ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂から選択される、30質量%~45質量%の熱硬化性樹脂、少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、23質量%~58質量%の無機フィラー、並びに12質量%~32質量%のポリオレフィン又はオレフィンコポリマーを含み、質量パーセントが組成物の全質量を基準とする、組成物と、0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤と、0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤とを含む配合物から得られる、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料に関する。本発明はまた、この複合材料の製造方法並びに前記材料の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部の組成物であって、
ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂から選択され、有利にはビニルエステル樹脂である、30質量%~45質量%、有利には32質量%~45質量%、好ましくは35質量%~44質量%の熱硬化性樹脂、
少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、23質量%~58質量%、有利には30質量%~50質量%、好ましくは32質量%~44質量%の無機フィラー、並びに
12質量%~32質量%、有利には15質量%~29質量%、優先的には16質量%~28質量%のポリオレフィン又はオレフィンコポリマー
を含み、質量パーセントが組成物の全質量を基準とする、組成物と;
0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤と;
0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤と
を含む配合物から得られる、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料。
【請求項2】
ポリエステル樹脂が、マレイン酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、又はフマル酸と、プロピレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、又はビスフェノールAとから得られるポリエステル樹脂から選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
ビニルエステル樹脂が、ビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、ノボラックタイプのエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAに基づくエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、並びにそれらの2種以上の混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
組成物が、組成物の全質量に対して35質量%~45質量%、有利には40質量%~45質量%のビニルエステル樹脂を含む、請求項1又は3に記載の複合材料。
【請求項5】
組成物が、組成物の全質量に対して
20質量%~55質量%、有利には25質量%~45質量%、好ましくは27質量%~38質量%の1つ又は複数の水素化化合物、及び
3質量%~28質量%、有利には5質量%~15質量%、好ましくは6質量%~9質量%の1つ又は複数のホウ素化合物
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
水素化化合物が、水酸化物、例えばMg(OH)2、Al(OH)、及びAlO(OH)から選択され、好ましくはAl(OH)又はAlO(OH)である、及び/又は
ホウ素化合物が、HBO、Ca1410、ホウ酸亜鉛、BC、BN、及びBから選択される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
ホウ素化合物が水素を含み、有利には4ZnO.6B,7HO又は4ZnO.B,HOなどのホウ酸亜鉛水和物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
オレフィンコポリマーがエチレン及び酢酸ビニルのコポリマーであり、ポリオレフィンがポリエチレン及びポリプロピレンから選択され、ポリオレフィンが好ましくはポリエチレンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
ポリオレフィン又はオレフィンコポリマーが粒子の形態であり、これらの粒子が有利には10μm~150μm、好ましくは30μm~120μmの範囲のd50の平均サイズを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
以下の連続する工程(1)~(3):
(1)質量パーセントが組成物の全質量を基準としており、以下の化合物
ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂から選択され、有利にはビニルエステル樹脂である、30質量%~45質量%の熱硬化性樹脂、
少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、23質量%~58質量%の無機フィラー、並びに
12質量%~32質量%のポリオレフィン又はオレフィンコポリマー
を混合することにより得られる組成物を調製する工程と;
(2)工程(1)で調製された100質量部の組成物、
0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤、及び
0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤
を混合することにより得られる配合物を調製する工程と;
(3)工程(2)で調製された配合物を成型する工程と
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を製造する方法。
【請求項11】
工程(3)の成型が18℃~25℃の間に含まれる温度で行われる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵を意図したパッケージの部材を製造するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料の使用。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を含む、放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵のためのパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に効果的な熱機械特性を有する、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料に関する。
【0002】
本発明は、特に原子力産業における、より詳細には、放射性物質、特に核燃料の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵を意図したパッケージの部材としての、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するためのそのような複合材料の製造方法並びに使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
原子力産業において使用される、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料、特に放射性物質のパッケージを意図したものは、これらのパッケージの輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵の安全性を確保するのに必要とされる複雑な仕様を満たすために一定数の特性を有していなければならない。
【0004】
一方では中性子に対する効果的な遮蔽を確実にするため、また他方ではパッケージ内及び/又は一連のパッケージ内の未臨界を維持して、特に放射性物質が核分裂性である場合にパッケージ内に形成される中性子が核連鎖反応を引き起こすのを防ぐために、これらの複合材料は非常に効果的に中性子を減速させ捕捉することが可能でなければならない。のちに中性子を捕捉できるように、これらの複合材料が中性子を減速させることが可能であるためには、それらは高度に水素化されているべきであり、中性子の実際の捕捉を確実にする化合物、例えばホウ素を含む化合物を含むべきである。
【0005】
これらの複合材料はまた、意図しているパッケージを可能な限り軽量化するために密度が低くなければならず、自消性でなければならない、すなわちそれらは消火されたら直ちに燃焼を停止しなければならない。この最後の特徴は、輸送の予想外の条件に関する火災試験の枠組み内であらゆる関心を引くものであり、パッケージが従わなければならない現行の法令にしたがって適用可能である。
【0006】
これらの複合材料を得ることを可能にする配合物は、さらに、鋳型中に直接流し込む、又は輸送、倉庫保管、及び/若しくは貯蔵のためのパッケージを形成する構造中へ流し込むことができなければならず、中性子漏洩のリスクを回避するために、硬化後に空隙及び/又はクラックタイプの欠陥のない複合材料を得ることを可能にしなければならない。
【0007】
これらの複合材料は、輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵の通常の条件下で比較的高温におけるエージングに対する、良好な挙動、又は耐性も有していなければならない。実際に、パッケージ中の放射性物質の存在は複合材料内で、典型的には少なくとも130℃、又はおよそ160℃~170℃もの高温を生じさせることがある。
【0008】
原子力産業において使用される、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料は従来、熱硬化性樹脂及び無機フィラーを含む重合性配合物から得られる。
【0009】
特に、この説明の残り部分で参照される文献(特許文献1)、米国特許第7160486号は、比較的高い操作温度における耐熱劣化性を有する、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を記載しており、操作温度は、パッケージに入っている170℃に達することがある放射性物質の温度の影響下で輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵の間にパッケージがさらされる温度、したがってパッケージが含有する複合材料がさらされる温度に相当すると定められる。
【0010】
特許文献1に記載される複合材料は、ビニルエステル樹脂と中性子を減速させ吸収することが可能な無機フィラーとを含む組成物を導入する配合物から得られ、この無機フィラーは少なくとも1つの無機ホウ素化合物及び少なくとも1つの水素化無機化合物を含む。特に、ビニルエステル樹脂及び無機フィラーの質量パーセントは組成物の全質量に対してそれぞれ25質量%~40質量%の間及び60%質量~75質量%の間に含まれてもよい。
【0011】
この説明の残り部分で参照される文献(特許文献2)、米国特許第7399431号も、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を記載している。
【0012】
特許文献2に記載される複合材料は、ビニルエステル樹脂と、中性子を減速させ吸収することが可能な無機フィラーと、少なくとも1つのポリアミドとを含む組成物を導入する配合物から得られる。この組成物は特に、組成物の全質量に対して30質量%~45質量%のビニルエステル樹脂及び10質量%~30質量%のポリアミドを含んでもよい。
【0013】
実験データは、この特許文献2に記載される複合材料が、160℃及び170℃の操作温度で特許文献1に記載される複合材料と比較してわずかに改善された耐熱劣化性を有し、より密度が低いことを示す。
【0014】
この説明の残り部分で参照される文献(特許文献3)、特開昭57-147095号も、150℃の温度での耐熱性並びに耐火性により特徴づけられる、中性子遮蔽のための複合材料を記載している。
【0015】
特許文献3に記載される複合材料は、ハロゲン化不飽和ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系合成樹脂粉末、ホウ酸亜鉛粉末、並びに必要に応じて、水酸化アルミニウム及び/又は酸化アンチモン粉末を含む組成物を導入する配合物から得られる。この組成物は特に、組成物の全質量に対して30質量%~80質量%のハロゲン化不飽和ポリエステル樹脂、5質量%~30質量%のポリオレフィン系合成樹脂、及び8質量%~70質量%のそのような無機フィラーを含んでもよい。
【0016】
これらの特許文献1~特許文献3に記載される複合材料が、放射性物質の貯蔵、倉庫保管、及び/又は輸送のためのパッケージを意図した部材の製造において満足できるものであり150℃、160℃、さらには170℃の操作温度に適していると判明するのであれば、より高い操作温度、特におよそ180℃の操作温度に耐えることを可能にし、パッケージの倉庫保管及び/又は貯蔵の期間が空気下で40年に及ぶことがあるため長期間維持され得る複合材料を提案することが必要となる。
【0017】
特に、熱劣化性試験は、特許文献1に記載される複合材料が180℃の温度で劣化することを示した。複合材料内のクラックの形成が特に見られ、そのようなクラックは一方ではこれらのクラックを通ることができる空気の酸素の影響下で酸化により複合材料を弱める可能性があり、他方では中性子漏洩のリスクを生じさせる可能性がある。「クラック」という用語は、肉眼で視認できる任意の2次元又は3次元の不連続部分を規定するものとして理解されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7160486号
【特許文献2】米国特許第7399431号
【特許文献3】特開昭57-147095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって本発明の目的は、180℃の温度における複合材料内のそのようなクラックの形成を克服すること、そのため、上記のすべての要件を満たし、160℃又は170℃を超える温度の放射性物質の積み荷の倉庫保管、貯蔵、及び/又は輸送を可能にするために180℃の操作温度における耐経年劣化性を伴う特に高い性能の熱機械特性をさらに有する、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を提案することである。
【0020】
本発明の別の目的は、そのような複合材料を製造する方法を提案することであり、この方法は、熱硬化性樹脂に基づく複合材料の製造に現在使用される産業設備の装置及び工具において、特に特許文献1~3に記載される複合材料の製造において実施されるものにおいて、容易に実施することができる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
これらの及び他の目的は、第1に、特定の配合物から得られる、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料により実現される。
【0022】
本発明によれば、この配合物は、
-100質量部の組成物であって、
-ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂から選択される、30質量%~45質量%の熱硬化性樹脂、
-少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、23質量%~58質量%の無機フィラー、並びに
-12質量%~32質量%のポリオレフィン又はオレフィンコポリマー
を含み、質量パーセントが組成物の全質量を基準とする、組成物と;
-0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤と;
-0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤と
を含む。
【0023】
本発明による、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料は、より詳細には放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵のためのパッケージを意図しておりいかなる欠陥もない、特にそれらの構造内にクラックがない部材を製造することを可能にする。このクラックの非存在は、これらの部材の実際の製造の終了時だけでなくこれらの部材に180℃の温度で行われる熱劣化性試験が行われた後でも認められる。したがって、酸化による複合材料の劣化のリスク、及び/又はそのような複合材料からの潜在的可能性のある中性子漏洩のリスクは完全に排除される。さらに、予想外かつ驚くことに、これらの熱劣化性試験後、部材は時間と共にわずかしか変化しない特に限られた表面酸化層によって特徴づけられる。
【0024】
本発明による、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための材料は、経済的観点から特に興味深いという利点も有し、前記材料を製造するのに使用される化合物は抑えられたコストで入手可能である。
【0025】
中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料は、0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤及び0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤が加えられる、100質量部の特定の組成物を含む配合物から得られる。
【0026】
この特定の組成物は、
-ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂から選択される、30質量%~45質量%の熱硬化性樹脂、
-少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、23質量%~58質量%の無機フィラー、並びに
-12質量%~32質量%のポリオレフィン又はオレフィンコポリマー
を含む。
【0027】
ちょうど述べたばかりであり本出願において使用される「...~...」という表現は、その範囲の値だけでなく、この範囲の限界値も定義するものとして理解されなければならないと定められる。
【0028】
熱硬化性樹脂はポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂から選択される。
【0029】
熱硬化性樹脂がポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂の混合物により形成することができるならば、熱硬化性樹脂はポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂のいずれかにより有利に形成される。
【0030】
好ましくは、熱硬化性樹脂はビニルエステル樹脂である。ビニルエステル樹脂の選択は、必要に応じて、そのような樹脂を含む配合物から得られる中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料の、高温における耐熱劣化性をさらに改善することを可能にする。
【0031】
ポリエステル樹脂は従来は、少なくとも1つのジカルボン酸又はその誘導体の少なくとも1つ、例えばカルボン酸無水物又はジエステルなどと、2つのヒドロキシル基を含む(グリコール又はジオール)又は2つを超えるヒドロキシル基を含む(ポリオール)有機化合物との重縮合から得られる。
【0032】
有利な変形形態において、ポリエステル樹脂は不飽和であり、ジカルボン酸とグリコールとの重縮合から得られ、これらの化合物の少なくとも1つは、ビニル、アクリル系、又はアリル系化合物とその後反応することが可能なエチレン系結合を含む。
【0033】
特に、
-飽和ジカルボン酸若しくは無水物、例えばアジピン酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、テレフタル酸、及び無水オルソフタル酸など、又は
-不飽和ジカルボン酸、若しくは無水物、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メタコン酸(metaconic acid)、イタコン酸、及び無水マレイン酸などと、
- グリコール、例えばプロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)、プロパン-1,3-ジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びビスフェノールAなど、又は
- オキシエチレン化エチレングリコールタイプのオキシエチル化若しくはオキシプロピル化グリコールと
から得られるポリエステル樹脂を使用することが可能である。
【0034】
好ましい変形形態において、特許文献3に記載される複合材料が得られる配合物において使用されるポリエステル樹脂とは異なり、ポリエステル樹脂はハロゲン化されていない。非ハロゲン化ポリエステル樹脂の使用は、オペレーターの健康及び環境にとってのリスクを制限することを可能にする。
【0035】
より好ましい変形形態において、ポリエステル樹脂は、一方のマレイン酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、又はフマル酸と、他方のちょうど述べたばかりのグリコールの1つ、すなわちプロピレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、又はビスフェノールAとから得られるポリエステル樹脂から選択される。
【0036】
より好ましくは、ポリエステル樹脂は、
-マレイン酸及びプロピレングリコール、
-イソフタル酸及びネオペンチルグリコール、
-オルソフタル酸及びネオペンチルグリコール、
-フマル酸及びビスフェノールA、並びに
-フマル酸及びプロパン-1,3-ジオール
から得られるポリエステル樹脂から選択される。
【0037】
ビニルエステル樹脂は、1つ又は複数のエポキシ樹脂と不飽和カルボン酸とのエステル化から得ることができる。エポキシ樹脂は、ビスフェノールAタイプ又はノボラックタイプの高分子パターンを有していてもよい。不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸から選択することができ、メタクリル酸は水素がより豊富であるので有利である。
【0038】
有利な変形形態によれば、ビニルエステル樹脂は、ビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、ノボラックタイプのエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、ビスフェノールAに基づくハロゲン化エポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、並びにそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。
【0039】
ビニルエステル樹脂はまた、イソフタル酸ポリエステルとウレタンとの反応から得られる非エポキシ化ビニルエステル樹脂であってもよい。
【0040】
本発明に関連して使用される組成物の調製に適したビニルエステル樹脂は、特に特許文献1及び2に記載されるビニルエステル樹脂であってもよく、より詳細には特許文献2の(I)~(IV)で言及される半構造式に相当するビニルエステル樹脂であってもよい。
【0041】
好ましい変形形態において、ビニルエステル樹脂はノボラックタイプのエポキシ樹脂を含む。
【0042】
そのようなビニルエステル樹脂は、特にDerakane Momentum(商標)470-300及びDerakane(商標)470HT-400の名称でIneos社より販売されている。
【0043】
前述のように、組成物はその全質量に対して30質量%~45質量%の熱硬化性樹脂を含む。
【0044】
有利な変形形態によれば、硬化を視野に入れて配合物の流動性を最適化するために、組成物中の熱硬化性樹脂の質量パーセントは、この組成物の全質量に対して32質量%~45質量%、好ましくは35質量%~44質量%である。
【0045】
特に、熱硬化性樹脂がビニルエステル樹脂である場合、最適な流動性は組成物の全質量に対して40質量%~45質量%の範囲の組成物中のビニルエステル樹脂の質量パーセントにより得られる。
【0046】
本発明に関連して使用される組成物は、組成物の全質量に対して23質量%~58質量%の特定の無機フィラーも含む。
【0047】
この特定の無機フィラーは、少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む。
【0048】
中性子を減速させることが役割である、水素化無機化合物は、水酸化物から、特に水酸化マグネシウムMg(OH)及びアルミナ水和物Al(OH)又はAlO(OH)から選択することができる。
【0049】
アルミナ水和物Al(OH)及びAlO(OH)がより詳細には好ましく、なぜならこれらの水素化化合物はさらに、特に効果的な自消性を本発明による複合材料に与えるためである。
【0050】
水素化無機化合物により一旦減速された中性子を吸収することが役割である、無機ホウ素化合物は、特に、ホウ酸HBO3、コレマナイトCa1410、ホウ酸亜鉛、例えば2ZnO.3B,3.5HO、4ZnO.B,HO、2ZnO.3B、及び3ZnO.2Bなど、炭化ホウ素BC、窒化ホウ素BN、並びに酸化ホウ素Bから選択されてもよい。
【0051】
本発明の変形形態において、無機ホウ素化合物は、本発明による複合材料の自消性を改善する効果を有する水素も含む。そのような水素化ホウ素化合物は、ホウ酸亜鉛水和物、例えば2ZnO.3B,3.5HO或いは4ZnO.B,HOなどから有利に選択できる。
【0052】
既に述べたように、組成物はその全質量に対して23質量%~58質量%の無機フィラーを含む。
【0053】
有利な変形形態によれば、組成物中の無機フィラーの質量パーセントは、この組成物の全質量に対して30質量%~50質量%である。
【0054】
好ましい変形形態によれば、組成物中の無機フィラーの質量パーセントは、この組成物の全質量に対して32質量%~44質量%である。
【0055】
一方の水素化無機化合物の質量パーセント、及び他方のホウ素の質量パーセントは、遮蔽及び/又は未臨界特性の中で、検討される複合材料において求められる特性にしたがって有利に適合させることができる。
【0056】
本発明の変形形態において、組成物はこの組成物の全質量に対して
-20質量%~55質量%、有利には25質量%~45質量%、好ましくは27質量%~38質量%の1つ又は複数の水素化化合物、及び
-3質量%~28質量%、有利には5質量%~15質量%、好ましくは6質量%~9質量%の1つ又は複数のホウ素化合物
を含む。
【0057】
特定の実施形態において、少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む無機フィラーは、分割された形態、例えば顆粒、結晶粒、ビーズ、粉末、フレークなどの形態であり、これらはこれ以降粒子という総称で表される。
【0058】
特定の変形形態において、この無機フィラーは最大寸法が最大で5mmに相当する粒子の形態であり、これらの粒子のサイズはレーザー回折により測定される。
【0059】
無機フィラー粒子のこの最大寸法は、特に1μm~1mmの間に含まれてもよく、有利には5μm~500μmの間に含まれてもよく、好ましくは、10μm~200μmの間に含まれてもよい。
【0060】
本発明に関連して導入される組成物は、組成物の全質量に対して12質量%~32質量%の、ポリオレフィン及びオレフィンコポリマーから選択される熱可塑性ポリマーをさらに含む。
【0061】
ポリオレフィンは有利にはポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)から選択され、好ましくはポリエチレン(PE)である。
【0062】
オレフィンコポリマーは、少なくとも2種の別個のモノマーの共重合から得られるポリマーであり、これらのモノマーの1つオレフィンモノマーである。
【0063】
オレフィンコポリマーは、有利にはエチレン及び酢酸ビニル(EVA)のコポリマーである。
【0064】
下記の実施例で分かるように、組成物を形成する化合物の各々について選択される質量パーセントは、硬化後に、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための材料に必要とされるすべての要件(中性子の減速、中性子の捕捉、自消性、低密度など)を満たしさらに180℃の操作温度における有効な耐熱劣化性を有する複合材料の製造につながる、配合物を調製することを可能にする。
【0065】
特に、組成物の全質量に対して12質量%未満のポリオレフィン又はオレフィンコポリマーの質量パーセントは、180℃で行われる熱劣化性試験後に肉眼で視認できるクラックを有する複合材料の製造につながることに注意すべきである。同様に、組成物の全質量に対して32質量%を超えるポリオレフィン又はオレフィンコポリマーの質量パーセントは、自消性の基準をもはや満たさない複合材料の製造につながる。
【0066】
有利な変形形態によれば、組成物中のポリオレフィン又はオレフィンコポリマーの質量パーセントは、この組成物の全質量に対して15質量%~29質量%、好ましくは16質量%~28質量%である。
【0067】
本発明の変形形態において、ポリオレフィン又はオレフィンコポリマーは粒子の形態、すなわち無機フィラーについて前述されるような分割された形態である。
【0068】
有利な変形形態において、ポリオレフィン又はオレフィンコポリマー粒子の少なくとも50%の数が、10μm~150μm、好ましくは30μm~120μmの範囲の、d50と表される平均サイズを有し、この平均粒径はレーザー回折により測定される。
【0069】
ちょうど述べたばかりの組成物は、1つ又は複数の添加剤、例えば、鎖制限剤、連鎖移動剤、配合物の重合の速度を調整するための薬剤、難燃剤、抗酸化剤、染料、及び/又は顔料などもさらに含んでもよい。
【0070】
本発明による複合材料を得ることを可能にする配合物は、100質量部のちょうど述べたばかりの組成物に対して
-0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤、及び
-0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤
を含む。
【0071】
重合開始剤は、その機能が配合物の重合の開始を確実にすることであり、有機過酸化物から選択でき、一方で重合促進剤は、その機能がこの重合を加速することであり、コバルト塩から選択できる。
【0072】
いくつかの重合開始剤及び/又はいくつかの重合促進剤の導入は完全に可能である。しかし、重合開始剤が1種であれ数種類であれ、及び/又は重合促進剤が1種であれ数種類であれ、重合開始剤及び重合促進剤について上記で規定される質量部の範囲が適用されることが定められる。
【0073】
特に、2種の重合促進剤の導入は下記の特定の実施形態の詳細な説明において例証されることになる。
【0074】
本発明は、第2に、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を上記のような配合物から製造する方法に関する。
【0075】
本発明によれば、この方法は、以下の連続する工程(1)~(3):
(1)質量パーセントが組成物の全質量を基準としており、以下の化合物
-ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂から選択され、有利にはビニルエステル樹脂である、30質量%~45質量%の熱硬化性樹脂、
-少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、23質量%~58質量%の無機フィラー、並びに
-12質量%~32質量%のポリオレフィン又はオレフィンコポリマー
を混合することにより得られる組成物を調製する工程と;
(2)-工程(1)で調製された100質量部の組成物、
-0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤、及び
-0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤
を混合することにより得られる配合物を調製する工程と;
(3)工程(2)で調製された配合物を成型する工程と
を含む。
【0076】
したがって本発明による製造方法は、その実施が特に簡便、迅速、及び経済的である方法である。本発明による方法は、意図しているパッケージに特に適合させた形状(デザイン)を有する複合材料を得ることを可能にする。この方法は、さらに、現在は特許文献1~3に記載されるものなどの複合材料を製造する方法に特化している設備において容易に実施できる。
【0077】
組成物に関連して上記に記載される構成、特に、熱硬化性樹脂、無機フィラー(水素化及びホウ素化合物)、ポリオレフィン又はオレフィンコポリマー、重合開始剤、重合促進剤、及び任意の添加剤に関連する構成は当然、複合材料を製造するこの方法に適用可能である。
【0078】
上記の組成物を調製することを可能にする、本発明による製造方法の工程(1)は、組成物中に含まれるすべての化合物、すなわちビニルエステル又はポリエステル樹脂、少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む無機フィラー、ポリオレフィン又はオレフィンコポリマー、並びに任意選択の添加剤を混合することにより行われる。
【0079】
上記の配合物を調製することを可能にする、本発明による製造方法の工程(2)は、工程(1)の最後に得られる組成物、重合開始剤、及び重合促進剤を混合することにより行われる。
【0080】
重合開始剤及び重合促進剤は、同時に或いは順次に組成物へ導入できる。後者のケースでは、重合開始剤は最後に導入される。
【0081】
本発明による製造方法の工程(1)及び(2)で作られる混合物は、手動で或いはミキサーにより製造できる。
【0082】
本発明による中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を得ることを可能にする、製造方法の工程(3)は、工程(2)の最後に得られる配合物を成型することにより行われる。
【0083】
第1の変形形態において、この配合物は型に注ぎ入れることができる。
【0084】
本発明の第2の変形形態において、この配合物は放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵を意図したパッケージへ直接注ぎ入れることができる。そのようなパッケージは、例えば、工程(2)の最後に得られる配合物が注ぎ入れられる外周ハウジングを含んでもよい。
【0085】
工程(2)の最後に得られるような配合物を成型する工程(3)は、有利には周囲温度で行われ、すなわち18℃~25℃の間に含まれる温度で行うことができる。
【0086】
配合物の重合が行われる、この成型工程(3)の最後に、本発明による中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料が得られる。
【0087】
この重合反応のメカニズムはラジカルである。
【0088】
本発明は、第3に、上記で規定されるような中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料の使用に関し、この複合材料の有利な構成は単独で又は組み合わせで利用することができる。
【0089】
本発明による複合材料は特に、放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵を意図したパッケージの製造に使用することができる。
【0090】
本発明は、第4に、放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵のためのパッケージに関する。
【0091】
本発明によれば、放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵のためのこのパッケージは、上記で規定されるような中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を含み、この複合材料の有利な構成は単独で又は組み合わせで利用することができる。
【0092】
本発明による複合材料の製造、特許文献1及び2に記載されるものによる組成物から得られる複合材料並びに特許文献3に記載されるタイプの組成物から得られる2種の複合材料を含めた参照材料の製造、並びにそれらのそれぞれの熱機械特性の評価の実施例に関する下記の説明から、本発明の他の利点及び構成がより明確となる。
【0093】
当然、本発明のこれらの特定の実施形態は単に本発明の対象物の例証として示され、決してこの対象物の制限をなすものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1A】180℃で行われる耐熱劣化性を評価するのに実施される熱サイクルの最後に得られる、複合材料M2のプレートの写真画像の図である。
図1B】180℃で行われる耐熱劣化性を評価するのに実施される熱サイクルの最後に得られる、複合材料M3のプレートの写真画像の図である。
図1C】180℃で行われる耐熱劣化性を評価するのに実施される熱サイクルの最後に得られる、複合材料M4’のプレートの写真画像の図である。
図2A】180℃で行われる耐熱劣化性を評価するのに実施される熱サイクルの最後に得られる、複合材料M1のプレートの断面の、走査電子顕微鏡(SEM)により撮影された画像の図である。
図2B】180℃で行われる耐熱劣化性を評価するのに実施される熱サイクルの最後に得られる、複合材料M4のプレートの断面の、走査電子顕微鏡(SEM)により撮影された画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
-A- 複合材料M1~M8及びM4’の入手
本発明による複合材料M4、M4’、及びM5~M7が得られる配合物F1~F8及びF4’、並びに参照複合材料M1~M3及びM8は、下記の組成物C1~C8及びC4’から調製された。
【0096】
導入される化合物
組成物C1~C8及びC4’の調製に使用される化合物は下記の通りである:
-熱硬化性樹脂として:
-Derakane(商標)Momentum 470-300(470-300と表される)の名称でIneos社より販売されるノボラックタイプのエポキシ樹脂を含むビニルエステル樹脂、及び
-Derakane(商標)470HT-400(470HT-400と表される)の名称でIneos社より販売されるノボラックタイプのエポキシ樹脂を含むビニルエステル樹脂;
-ポリオレフィンとして:HDPEと表され、粒子がレーザー回折により測定される60μmの粒度特性d50を有する粉末の形態である、Gur(登録商標)4050-3-PE-UHMWの名称でCelanese社より販売される高密度 ポリエチレン;並びに
-無機フィラーとして:
-水素化化合物として:Apyral(登録商標)20Xの名称でNabaltec社より販売され、粒子がレーザー回折により測定される8μmの平均サイズを有する粉末の形態である、ATHと表されるアルミナ水和物Al(OH)、並びに
-ホウ素化合物として:Borax社よりFirebrake(登録商標)ZBの名称で販売され、粒子がレーザー回折により測定される9μmの平均サイズを有する粉末の形態である、ホウ酸亜鉛2ZnO.3B,3.5HO。
【0097】
組成物C1~C8及びC4’の調製
組成物C1~C8及びC4’は、下記のTable 1(表1)に示される質量パーセントにおいて上記のビニルエステル樹脂、ポリオレフィン、水素化化合物、及びホウ素化合物を混合することにより調製された。
【0098】
組成物C1は、特許文献1の実施例2の組成物並びに特許文献2で例示される「参照材料」と呼ばれる複合材料につながる組成物と同一であることが定められる。
【0099】
組成物C2及びC3は特許文献3に記載されるタイプの組成物であるが、しかしここで導入される熱硬化性樹脂はビニルエステル樹脂であり、特許文献3に記載されるようなハロゲン化不飽和ポリエステル樹脂ではないことが定められる。
【0100】
配合物F1~F8及びF4’の調製
配合物F1~F8及びF4’は、組成物C1~C8及びC4’の各々において、対象の組成物100質量部あたり:
-Nouryon社よりTrigonox K-90の名称で販売されるクメンヒドロペルオキシドにより形成される、0.676質量部の重合開始剤,
-Nouryon社より促進剤NL-49PNの名称で販売されるコバルト(II)2-エチルヘキサノエートにより形成される、0.768質量部の重合促進剤、及び
-Akzo Nobel社よりPromotor Dの名称で販売されるN,N-ジエチルアセトアセトアミドにより形成される、0.192質量部の重合共促進剤
を含む触媒系を導入及び混合することにより調製された。
【0101】
複合材料M1~M8及びM4’の入手
得られる配合物F1~F8及びF4’の各々を真空下で脱ガスし、次いで周囲温度(21℃)で型へ注いだ。
【0102】
これらの配合物F1~F8及びF4’はすべて良好な流動性を有するにもかかわらず、これらの配合物の粘度はポリエチレン(PEHD)及びアルミナ水和物(ATH)の質量パーセントと共に増加することが観察された。
【0103】
配合物F1~F8及びF4’の各々を周囲温度(21℃)において10分~40分の間に含まれる持続時間で硬化させた後、複合材料M1~M8及びM4’がそれぞれ得られた。
【0104】
-B- 複合材料の特性の評価
180℃での耐熱劣化性
これらの複合材料M1~M8及びM4’の各々の一辺12cm及び厚さ10mmの正方形のプレートの形態の試料をオーブン中に置き、以下の連続する工程(a)~(d)
(a)周囲温度(25℃)から80℃の第1のプラトー温度までの、10℃/hの速度における第1の温度上昇、
(b)80℃のこの第1のプラトー温度で8時間の温度維持、
(c)80℃のこの第1のプラトー温度から180℃の第2のプラトー温度までの、10℃/hの速度における第2の温度上昇、及び
(d)180℃のこの第2のプラトー温度で24時間の温度維持
を含む熱サイクルにそれらをさらすことにより、180℃の操作温度における複合材料M1~M8及びM4’の耐熱劣化性を評価した:
【0105】
工程(d)の後、プレートをオーブンから取り出し、室温まで冷却した。
【0106】
図1A~1Cの写真により示されるように、一方の複合材料プレートM2(図1A)、及び他方のM3(図1B)は、クラックが全くない複合材料プレートM4’(図1C)とは異なり、肉眼で視認できる多くのクラックを有する。
【0107】
図2BのSEM写真を参照すると、複合材料プレートM4に存在するクラックは部分的に埋められていることが観察される。これらの充填物は、配合物F4に存在し熱サイクルの間に溶融してクラックに橋架けを形成するポリエチレンにより形成される。これらの橋架けは、これらのクラックにおける空気の酸素の経路を制限しこれらの同じクラックの伝搬を防ぐという利点を有し、特許文献1の実施例2の複合材料、及び特許文献2に記載される「参照材料」と呼ばれる複合材料に従う複合材料M1の内部で、より大きいクラックを示す、特に図2Bのクラックよりも幅が広く、さらに埋められておらず、したがって伝搬しやすいクラックを示す、図2AのSEM写真において認めることができるものとは対照的である。
【0108】
自消性
複合材料M1~M8及びM4’について自消性試験を行って予想外の火災状態におけるそれらの挙動を評価した。
【0109】
これらの試験は複合材料M1~M8及びM4’の試料を800℃の火の中に30分間置くことにより行われた。この30分の最後に消火し、複合材料M1~M8及びM4’の各々が直ちに燃焼を停止したか又は燃焼を停止しなかったかを観察した。
【0110】
下記のTable 1(表1)に記録されるこれらの試験の結果は、消火の時点から計測して32秒後に初めて燃焼を停止した複合材料M8とは異なり、消火すると複合材料M1~M7及びM4’が燃焼を停止したことを示す。
【0111】
【表1】
【0112】
したがって、組成物中で32質量%を超え、組成物C8の場合と同様に特に35質量%に相当する、ポリエチレンの質量パーセントから、複合材料M8は中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料の仕様の基準の少なくとも1つ、この場合は自消性の基準をもはや満たさないことが認められる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部の組成物であって
0質量%~45質量%、有利には32質量%~45質量%、好ましくは35質量%~44質量%のビニルエステル樹脂
少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、23質量%~58質量%、有利には30質量%~50質量%、好ましくは32質量%~44質量%の無機フィラー、並びに
12質量%~32質量%、有利には15質量%~29質量%、優先的には16質量%~28質量%のポリオレフィン又はオレフィンコポリマー
を含み、質量パーセントが組成物の全質量を基準とする、組成物と;
0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤と;
0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤と
を含む配合物から得られる、中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料。
【請求項2】
ビニルエステル樹脂が、ビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、ノボラックタイプのエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAに基づくエポキシアクリレート及びエポキシメタクリレート樹脂、並びにそれらの2種以上の混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
組成物が、組成物の全質量に対して35質量%~45質量%、有利には40質量%~45質量%のビニルエステル樹脂を含む、請求項1又はに記載の複合材料。
【請求項4】
組成物が、組成物の全質量に対して
20質量%~55質量%、有利には25質量%~45質量%、好ましくは27質量%~38質量%の1つ又は複数の水素化化合物、及び
3質量%~28質量%、有利には5質量%~15質量%、好ましくは6質量%~9質量%の1つ又は複数のホウ素化合物
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
水素化化合物が、水酸化物、例えばMg(OH)2、Al(OH)、及びAlO(OH)から選択され、好ましくはAl(OH)又はAlO(OH)である、及び/又は
ホウ素化合物が、HBO、Ca1410、ホウ酸亜鉛、BC、BN、及びBから選択される、
請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
ホウ素化合物が水素を含み、有利には4ZnO.6B,7HO又は4ZnO.B,HOなどのホウ酸亜鉛水和物から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
オレフィンコポリマーがエチレン及び酢酸ビニルのコポリマーであり、ポリオレフィンがポリエチレン及びポリプロピレンから選択され、ポリオレフィンが好ましくはポリエチレンである、請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
ポリオレフィン又はオレフィンコポリマーが粒子の形態であり、これらの粒子が有利には10μm~150μm、好ましくは30μm~120μmの範囲のd50の平均サイズを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
以下の連続する工程(1)~(3):
(1)質量パーセントが組成物の全質量を基準としており、以下の化合
0質量%~45質量%のビニルエステル樹脂
少なくとも1つの水素化化合物及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、23質量%~58質量%の無機フィラー、並びに
12質量%~32質量%のポリオレフィン又はオレフィンコポリマー
を混合することにより得られる組成物を調製する工程と;
(2)工程(1)で調製された100質量部の組成物、
0.3質量部~1.4質量部の重合開始剤、及び
0.3質量部~1.4質量部の重合促進剤
を混合することにより得られる配合物を調製する工程と;
(3)工程(2)で調製された配合物を成型する工程と
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を製造する方法。
【請求項10】
工程(3)の成型が18℃~25℃の間に含まれる温度で行われる、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵を意図したパッケージの部材を製造するための、請求項1からのいずれか一項に記載の中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料の使用。
【請求項12】
請求項1からのいずれか一項に記載の中性子遮蔽のため及び未臨界を維持するための複合材料を含む、放射性物質の輸送、倉庫保管、及び/又は貯蔵のためのパッケージ。
【国際調査報告】