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特表2024-522641生物の任意の身体位置と任意の形状の物体との間の任意に予め設定可能な衝突の評価
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】生物の任意の身体位置と任意の形状の物体との間の任意に予め設定可能な衝突の評価
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575971
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022065903
(87)【国際公開番号】W WO2022258836
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021205876.0
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ベーレンス ローランド
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707KS34
3C707KT11
3C707LU01
3C707LV19
3C707LW12
3C707MS05
3C707MS27
(57)【要約】
本発明は、生物の身体位置と物体との衝突の評価であって、a)物体の3Dモデルを計算ユニットに提供する方法ステップと、b)身体位置のシェル-メッシュグリッド・モデルを計算ユニットに提供する方法ステップであり、メッシュグリッドの各フィールドに関して応力-変形特性曲線が予め設定されている方法ステップと、c)3Dモデルとシェル-メッシュグリッド・モデルとを位置合わせする方法ステップと、d)3Dモデルとシェル-メッシュグリッド・モデルとを互いに段階的に変位させる方法ステップであり、変位の各ステップに関して、圧痕ピクセルを有する圧痕画像が生成され、圧痕ピクセルのピクセル値が、メッシュグリッドのフィールド内での3Dモデルの圧痕深さを表す方法ステップと、e)応力-変形特性曲線およびピクセル値に従って、圧痕ピクセルに関する応力値を決定するステップと、f)応力値とメッシュグリッドのフィールドの面積との積を合計することによって、身体位置に作用する力を計算する方法ステップとを含む、評価に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の所定の身体位置(2)と所定の物体(1)との所定の衝突を評価するため、特に人間の所定の身体位置とロボット・デバイスの所定の部分との衝突を評価するための方法であって、
a)前記所定の物体(1)の3Dモデルを計算ユニットに提供する方法ステップと、
b)前記所定の身体位置(2)のシェル-メッシュグリッド・モデルを計算ユニットに提供する方法ステップであり、前記シェル-メッシュグリッド・モデルのメッシュグリッドの各フィールドFijが正方形であり、前記メッシュグリッドの各フィールドFijに関して応力-変形特性曲線(s)が予め設定されている方法ステップと、
c)前記計算ユニットを使用して、前記提供された3Dモデルと前記提供されたシェル-メッシュグリッド・モデルとを仮想空間内で位置合わせする方法ステップであり、2つのモデルの相対的な配置が、互いに前記所定の衝突時の物体と身体位置との相対的な配置に対応する方法ステップと、
d)前記計算ユニットによって、前記仮想空間内で、前記所定の衝突によって特定される衝突方向(K)に従って、3Dモデルとシェル-メッシュグリッド・モデルとを互いに段階的に変位させる方法ステップであり、段階的な変位の各ステップkに関して、圧痕ピクセルPijを有する圧痕画像(AB)が生成され、前記圧痕ピクセルPijのそれぞれのピクセル値Pwが、前記シェル-メッシュグリッド・モデルの前記メッシュグリッドの、それぞれの前記圧痕ピクセルPijに割り当てられたフィールドFij内での前記3Dモデルの圧痕深さを表す方法ステップと、
e)対応するフィールドFijに割り当てられた応力-変形特性曲線(s)およびそれぞれの前記ピクセル値Pwに従って、前記圧痕画像または少なくとも1つの圧痕画像(AB、AB’、AB’’)について、前記圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの応力値を決定する方法ステップと、
f)少なくとも1つの前記圧痕画像(AB、AB’、AB’’)に対応する前記変位のステップkについて、前記圧痕ピクセルPijに関して決定された応力値と、前記メッシュグリッドの前記割り当てられたフィールドFijの面積Aijとの積を合計することによって、前記所定の身体位置(2)に作用する力Fを計算する方法ステップと
を含む方法。
【請求項2】
方法ステップe)で、複数の圧痕画像(AB、AB’、AB’’)、特にすべての圧痕画像(AB、AB’、AB’’)に関して、前記圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの応力値を決定し、方法ステップf)で、それぞれの前記圧痕画像(AB、AB’、AB’’)に対応する複数のステップk、特にすべてのステップkに関して、前記所定の身体位置(2)に作用する力Fを計算する方法ステップと、
前記所定の物体(1)と前記所定の身体位置(2)との前記所定の衝突に関する力-変形特性曲線(f)を生成する方法ステップと、特に、
前記生成された力-変形特性曲線(f)に基づいて、好ましくは、前記衝突の根底にある前記物体(1)の動きに関する許容最大エネルギーまたは許容最大力の規定によって、前記衝突を評価する方法ステップと
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法ステップe)で前記圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの前記応力値を決定する前に、前記圧痕画像(AB)または前記生成された圧痕画像(AB)のフィルタリングが行われ、前記フィルタリングが、特に少なくとも1つの画像ベースのフィルタおよび/または機械学習方法に基づくフィルタを使用して行われ、前記決定する方法ステップe)および前記計算する方法ステップf)が、前記フィルタリング後の圧痕画像(AB’、AB’’)に基づいて行われる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1のステップでの前記フィルタリングで、個々のピクセルが別個のフィルタリングプロセスでフィルタリングされ、最初に、
フィルタリング対象の各ピクセルに関して、方法ステップd)からの関連する圧痕画像(AB)のコピー(AB-33、AB-34、AB-43、AB-44)が生成され、他のすべてのピクセルPijのピクセル値Pwがゼロに設定され、次いで、
前記圧痕画像のそれぞれのコピーにおいて、対応するフィルタ、特にぼかしフィルタがそれぞれのピクセルに適用され、最後に、
前記フィルタが適用された前記圧痕画像の前記コピー(AB-33’、AB-34’、AB-43’、AB-44’)から、フィルタリング後の圧痕画像が作成され、これは、前記フィルタリング後の圧痕画像(AB’)の各ピクセルPijの値Pwとして、最大値Pwが選択されることによって行われ、最大値Pwは、前記フィルタが適用された前記ピクセルPijの前記圧痕画像のすべてのコピー内で、同じフィールドFijに割り当てられたすべてのピクセルPijに関して生じ、前記フィルタリング時、第2のステップで、前記フィルタリング後の圧痕画像(AB’)内の各ピクセルPijの前記値Pwが、方法ステップd)からの前記圧痕画像(AB)内の対応する前記ピクセルPijの値Pwと比較され、前記フィルタリング後の圧痕画像(AB’’)内のそれぞれの前記ピクセルの前記値Pwは、2つの値が所定の許容値を超えて互いに異なる場合にはゼロに設定され、前記2つの値が前記許容値だけ、または前記所定の許容値未満だけ互いに異なる場合には値Pwのままにされる
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
方法ステップd)からの前記圧痕画像(AB)でエッジ検出が実行され、追加の因子行列画像が、エッジ位置で1よりも大きいピクセル値を有し、非エッジ位置で1のピクセル値を有するように適合され、前記圧痕ピクセルPijに関する前記決定された応力値が、前記追加の因子行列画像のそれぞれ割り当てられた前記ピクセル値Vijと乗算されることによって、ピクセル値Vijを有する追加の因子行列画像が生成される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ピクセル値Wijを有するさらなる因子行列画像が生成され、前記圧痕ピクセルPijに関する前記決定された応力値が、前記さらなる因子行列画像のそれぞれ割り当てられた前記ピクセル値Wijと乗算され、ここで、それぞれ前記ピクセル値Wijに割り当てられた前記圧痕ピクセルPijの前記値Pwと所定の衝突速度とに基づいてそれぞれの歪速度が決定され、それぞれの前記歪速度に基づいて、それぞれの前記圧痕ピクセルPijに割り当てられた前記フィールドFijに関して予め設定された歪速度特性曲線(d)を用いてピクセル値Wijが決定されることによって、前記さらなる因子行列画像が特に生成される
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれのフィールドFijの中点を通って法線ベクトルに平行に直線が設定され、前記直線が前記物体(1)の表面に当たるか否かが決定され、当たる場合には、前記直線と前記物体(1)の前記表面との交点と、それぞれの前記フィールドFijの前記中点との間の距離が、前記生物への前記物体(1)の圧し込みに対応する場合には圧痕深さとして確定されることによって、それぞれの圧痕深さが計算される
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
位置合わせ後、前記2つのモデルの少なくとも1つの接触点(B)で、前記2つのモデル間の距離がゼロであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記メッシュグリッドの各フィールドFijの辺が同じ長さである、または前記同じ長さの自然数倍であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ロボット・デバイスを制御するための方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を用いて衝突が評価され、前記方法の評価結果に応じてロボット・デバイスが制御される、方法。
【請求項11】
a)仮想空間内で、所定の物体(1)の提供された3Dモデルと、所定の身体位置(2)の提供されたシェル-メッシュグリッド・モデルとを位置合わせし、2つのモデルの相対的な配置が、互いに所定の衝突時の前記物体(1)と前記身体位置(2)との相対的な配置に対応し、前記シェル-メッシュグリッド・モデルのメッシュグリッドの各フィールドFijが正方形であり、前記メッシュグリッドの各フィールドFijに関して応力-変形特性曲線が予め設定されており、
d)前記仮想空間内で、前記所定の衝突によって特定される衝突方向(K)に従って、3Dモデルとシェル-メッシュグリッド・モデルとを互いに段階的に変位させ、段階的な変位の各ステップkに関して、圧痕ピクセルPijを有する圧痕画像(AB)が生成され、前記圧痕ピクセルPijのそれぞれのピクセル値Pwが、前記シェル-メッシュグリッド・モデルの前記メッシュグリッドの、それぞれの前記圧痕ピクセルPijに割り当てられたフィールドFij内での前記3Dモデルの圧痕深さを表し、
e)対応するフィールドFijに割り当てられた応力-変形特性曲線(s)およびそれぞれの前記ピクセル値Pwに従って、前記圧痕画像または少なくとも1つの圧痕画像(AB、AB’、AB’’)について、前記圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの応力値を決定し、
f)少なくとも1つの前記圧痕画像(AB、AB’、AB’’)に対応するステップkについて、前記圧痕ピクセルPijに関して決定された応力値と、前記メッシュグリッドの前記割り当てられたフィールドFijの面積Aijとの積を合計することによって、前記所定の身体位置(2)に作用する力Fを計算する
ように構成されている衝突評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物の任意の所定の身体位置と任意の所定の物体との間の任意の所定の衝突を、特に怪我リスクに関して評価するための方法に関する。特に、生物は人間でよく、および/または物体はロボット・デバイス、例えば協働ロボットでよい。本発明はまた、生物、例えば人間との衝突の際にロボット・デバイスが怪我をもたらし得るのを防止する制限速度を予め設定するための、対応する衝突評価装置に関する。この方法または装置は、安全なロボット速度を繰り返し特定するための方法または装置として表し、そのように理解することもできる。
【背景技術】
【0002】
ロボットなどの物体が人間などの生物に衝突するとき、生物の該当する身体位置で、皮膚およびその下の組織に変形が生じる。ここで、変形または圧し込み深さには、ぶつかった物体に組織が抵抗する反力が関連する。反力または変形が特定の閾値を超えた場合、重大な怪我が生じる可能性がある。追加の保護手段なしで人間の周りを動く産業用ロボット・デバイス、いわゆる協働ロボット(「Cobot」とも呼ばれる)については、ISO10218およびISO/TS15066で、ロボットとの衝突時の怪我の発生を防止する生体力学的な制限値が予め規定されている。
【0003】
人間、動物、または植物の組織の超弾性および粘性挙動により、反力と変形経路との間の生体力学的関係は非常に非線形的である。組織の生体力学的な反応または応答挙動(「生物力学的応答」)を表す力-変形特性曲線のプロファイルは指数関数に近く、特定の閾値を超えるとほぼ線形の傾きになる。これは、図1に例示的なプロファイルで示されている。所定の衝突に関連する力-変形特性曲線の具体的なプロファイルは、関係する身体位置、ぶつかった物体の形状、およびその衝突速度に大きく依存する。
【0004】
ロボットの怪我リスクの評価のために、重要な力-変形特性曲線が主要な役割を果たす。関連する身体位置とロボットの接触位置とに関する特性曲線が分かると、その特性曲線およびロボット・モデルに基づいて衝突のプロファイルを決定することができ、ロボットの物理的パラメータおよびロボットの速度に基づいて、割り当てられた最大変形での最大接触力を計算することができる。それに対応して、計算された接触力が、観察中のロボットに適用される生体力学的制限値を超える場合、(シミュレートされた)衝突によって大きな怪我リスクが生じることを示すことができる。代替として、それぞれ観察される時点で物体(ここではロボット・デバイス)が超えてはいけない安全な速度を繰り返し計算することもでき、生物との衝突によるその時点での制限値の超過、したがって生物の怪我を回避する。
【0005】
協働ロボット工学において、ロボットの多様な動きにより、人間にとって高い危険性があり得る多くの接触状況が生じ得るので、モデルベースのリスク評価は特に興味深いものである。多くの異なる接触状況が起こり得るため、現在まで、協働ロボットの安全性試験に使用できる測定法は1つしかない。しかし、この測定法は、コストが高く技術的な制限があるので、産業、および介護などの他の分野でこれらのロボットを広く使用することはできない。
【0006】
所定の衝突の評価は、従来技術では有限要素法(FEM)を用いて行うことができ、関連の力-変形特性曲線が数値計算によって特定される。しかし、対応する軟組織変形モデル(tissue deformation model)および接触モデル(contact model)と共にFEMを使用する場合の計算量は一般に非常に高いため、この方法は、ロボット・デバイスの制御に統合するのには適していない。なぜなら、現実のシナリオで衝突を評価する場合には、必要な特性曲線を短時間のうちに、いずれにせよ1分未満で計算し、それに基づいてロボットの速度または他の安全関連パラメータを調整して衝突時の怪我を防止する必要があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、課題は、生物の身体位置と任意の物体との任意の予め設定可能な衝突を迅速かつ正確に評価し、評価結果に基づいて、ロボット速度などのロボットでの調整を好ましくは直接行うことであり、これは、例えば操作者の怪我リスクを、好ましくは許容できる程度まで低減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立特許請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属特許請求項、本明細書、および図面から得られる。
【0009】
一態様は、生物の(任意の)所定の身体位置と(任意の)所定の物体との(任意の)所定の衝突を、特に怪我リスクに関して(自動および/またはリアルタイムでのロボット・デバイスの制御に適した形で)評価するための方法に関する。生物は、人間および/または動物および/または植物でよい。物体は、好ましくは、観察中の身体位置に比べて硬い物体、すなわち衝突時に変形しない物体である。例えば、物体は、ロボット・デバイス、すなわちロボットの(任意の)所定の部分でよい。衝突は、衝撃および/または締付けを含むことがある。ここで、この方法は、一連の方法ステップを含む。
【0010】
1つの方法ステップは、観察中の身体位置にぶつかる所定の物体の幾何学的な体積モデルを提供することである。このモデルは、3Dモデルで一般的なファイル形式にすることができ、計算ユニットに提供される。さらなる方法ステップは、所定の身体位置の幾何学的なシェル-メッシュグリッド・モデルを計算ユニットに提供することである。観察中の身体位置の幾何学的なシェル-メッシュグリッド・モデルは、身体部分モデルと呼ぶこともできる。ここで、シェル-メッシュグリッド・モデルのシェルまたはエンベロープは、FEMの場合と同様に3次元メッシュグリッド構造に近く、シェル-メッシュグリッド・モデルの関連するメッシュグリッドの各フィールドFijは正方形である。これに対応して、インデックスi、jによって、メッシュグリッドの各フィールドは、3次元空間の2次元部分多様体として一意に決定される、または決定可能である。好ましくは、すべての正方形フィールドは辺の長さが同じであり、行列で知られているのと同様に、インデックスはメッシュグリッドの列および行を指定することができる。
【0011】
ここで、メッシュグリッドの各フィールドFijに関して、応力-変形特性曲線が予め設定されている。応力-変形特性曲線は、修正された形で、例えばそれぞれの力-変形特性曲線の形で、面積を適合させた応力-変形特性曲線として予め設定することもできる。これにより、決定された応力値の後述する乗算が好ましく、それにより、圧痕ピクセルPijに関して、それぞれ割り当てられた力-変形特性曲線およびそれぞれのピクセル値Pwに従って、それぞれの力値が決定される。乗算には交換法則が適用されるので、応力-変形特性曲線の使用およびそれぞれの面積との後の乗算は、それぞれの力-変形特性曲線の形での、面積を適合させた応力-変形特性曲線の使用と等価である。したがって、以下で述べる検出の方法ステップにおける「応力値」という用語には、応力値と、作用する力の計算の方法ステップからの面積との積に対応する「力値」も含まれる。記載される方法ステップは、(特許請求の範囲に)予め設定された順序で行うことができるが、必ずしもそうする必要はない。
【0012】
フィールドまたはメッシュ要素Fijの正方形の基本形状により、3Dまたは体積モデルが1つの軸の周りでのみ湾曲することができる。したがって、本願で提案される方法では、非正方形のメッシュ構造は機能しない。ここで、メッシュ要素の辺の長さは、モデルの精度に大きな影響を与え、すなわち、辺の長さが短いほど、所定の衝突をより正確に定量化して評価することができる。例えば、辺の長さを2mm未満、1mm未満、または0.5mm未満にすることができる。ここで、個々の正方形メッシュ要素Fijに関する応力-変形特性曲線をデータベースに保存することができる。応力-変形特性曲線は、正方形メッシュ要素またはフィールドFijで表される身体位置での有限面の歪挙動を反映する。これは、例えば、被験者試行またはFEM分析によって決定することができる。
【0013】
計算ユニットを使用して、仮想空間内で、提供された3Dモデルと提供されたシェル-メッシュグリッド・モデルとの位置合わせが行われる。ここで、2つのモデルの相対的な配置は、現実の空間での所定の衝突時の物体と身体位置との相対的な配置に対応する。有利には、位置合わせは、2つのモデル間の距離が、位置合わせ後に、2つのモデルの少なくとも1つの接触点(すなわち2つのモデルの1つまたは複数の接触点)、すなわち物体と身体位置とが衝突時に最初に接触する点でゼロになるように行われる。
【0014】
この方法ステップの後、計算ユニットによって、仮想空間内で、所定の衝突によって特定される衝突方向に従って、3Dモデルとシェル-メッシュグリッド・モデルとの互いに対する段階的な変位が行われる。好ましくは、これは、予想される最大変形経路まで行われる。例えば、衝突する物体は、身体位置の3次元シェルモデルに幾何学的に沈み込むように、離散的なステップ、特にできる限り小さいステップで変位される。それに対応して変位を繰り返し行うことができるが、ただ1つの変位ステップで行うこともできる。ここで、各変位ステップの後、段階的な変位の各(反復)ステップkに関して、それぞれの圧痕ピクセルPijを有する圧痕画像が生成される。ここで、圧痕ピクセルPijのそれぞれのピクセル値wは、それぞれの圧痕ピクセルPijに割り当てられたシェル-メッシュグリッド・モデルのメッシュグリッドのフィールドFijにおける3Dモデルの圧痕深さを表す。以下で述べるように、圧痕画像がフィルタリング、重み付け、または他の処理をされる場合、最初にまたは元々生成されていた圧痕画像は「元の圧痕画像」とも呼ばれ、さらに処理された圧痕画像は「フィルタリング後の圧痕画像」と呼ばれる。身体位置の表面、すなわちシェルと同様に、圧痕画像は2次元画像である。それにより、各変位ステップに対して(正確に)1つの2次元の圧痕画像が存在し、そのピクセルが、インデックスi、jによって、ぶつかった物体が身体モデルを変形させる位置を示し、割り当てられたピクセル値Pwによって、これらの位置で身体モデルがどれほど強く変形されるかも示す。仮想空間内での物体の段階的な変位は、予め設定された最大変位距離に達するまで繰り返す(反復する)ことができる。ここで、圧痕深さ、したがってピクセル値Pwは様々な形で決定することができ、以下で例示的実施形態をさらに説明する。
【0015】
さらなる方法ステップは、対応するフィールドFijに割り当てられた応力-変形特性曲線およびそれぞれのピクセル値Pwに従って、上記または少なくとも1つの圧痕画像、好ましくは複数の圧痕画像について、圧痕ピクセルPij、理想的には非ゼロのエントリを有する圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの応力値を決定することである。実際には、同一のインデックスi、jを有するフィールドFijと圧痕ピクセルPijとを互いに割り当てることができる。これにより、この方法によれば実質的に考察が2次元に低減されるので、計算ステップが大幅に簡素化されて可能になる。
【0016】
最後に、圧痕画像に対応する少なくとも1つのステップkについて、好ましくはステップkに対応する圧痕画像の多くまたはすべてについて、圧痕ピクセルに関して決定された応力値と、メッシュグリッドの割り当てられたフィールドFijの面積Aijとの積を合計することによって、所定の身体位置に作用する力Fの計算が行われる。これは、式F=Σi,jσ(Pij)×Aijによって表すことができる。ここで、σ(Pij)は、ピクセルPij、したがってフィールドFijでのそれぞれの応力-変形特性曲線により、ピクセル値Pwによって予め設定される応力を表す。次いで最後に、前述の方法ステップの1つの結果に基づいて、特にステップkにおいてここで計算された作用力、および/または計算された作用力から導出される力-変形特性曲線、および/または同様の結果、例えば力もしくは力-変形特性曲線から導出されるエネルギー、特に物体もしくはロボットに関する最大許容運動エネルギーに基づいて、衝突の評価を行うことができる。
【0017】
その後、力-変形特性曲線とロボットの物理モデルとを用いて観察中の衝突を計算することができる。次いで、計算された接触力が衝突に適用される制限値に相当するまで、初速を変更して計算が繰り返される。反復法としては、好ましくは二分法が使用される。反復によって計算された初速は、ロボットが超えてはならない制限速度に対応する。制限速度は、それらの計算に従って、ロボットの移動速度を調整するため(図表1)、またはロボット・デバイスのモデルベースの安全性評価用の監視デバイスもしくは衝突評価装置をパラメータ化するため(図表2)に選択的に使用することができ、衝突評価装置は、制限速度を超えるとすぐにロボットのスイッチをオフにする。
【表1】
【表2】
【0018】
本願で提案される方法は、FEMと同様に、生体力学的な力-変形特性曲線または衝突の同様の定量化を計算することができる。FEMとは対照的に、本願で提案される方法は、例えばさらなる処理ステップのために力-変形特性曲線を計算するため、または生じる力もしくはエネルギーに関する個々の制限値のみを計算するために、衝突の定量化評価のための計算時間を大幅に短縮することができる。これについては以下でさらに説明する。その効率性により、人間と協働ロボットとの共同作業時の衝突および圧し潰しによるリスクをモデルベースで、すなわち定量的に評価するのに特に適している。
【0019】
したがって、本願で提案される方法は、例えばロボット制御用の衝突評価装置が、任意の形状の物体がぶつかったときに発生するような身体位置の軟組織の変形を短時間で計算できるようにする。有限要素法のよく知られている手法とは対照的に、本願で提案される方法は、正方形の平面要素からなるできるだけ定型のメッシュグリッドによって実現される幾何学的シェルモデルを使用する。身体部分に関して正方形のメッシュ要素を使用し、したがって1次元の湾曲に制限することによって、わずかな計算量でモデル表面を2次元画像に変換することができる。シェルモデルが3次元物体によって変形されるとき、変形された位置は、2次元の圧痕画像内のピクセルとして表現され、各ピクセル値は、シェルモデル上の関連の位置での変形値に対応し、これはまた、初期状態に対する関連のメッシュ要素の変位を示す。各メッシュ要素は特定の、好ましくは個別の応力-変形特性曲線に連係されているので、離散的な変形ステップに従って分解して、ピクセルによって示される変形値から接触力を計算することができる。この接触力は、すでに衝突の評価に使用することができる。ロボットの位置と組み合わせて、計算された力は、下流での計算のために求められる力-変形特性曲線内の点に対応する。したがって、この方法を繰り返し使用することによって、仮想空間内での物体の段階的な変位に対応するロボットの各位置ステップに関して特性曲線全体を計算することができ、次いで物理的ロボット・モデルを用いた衝突のさらなる評価のために使用することができる。
【0020】
この方法は、g)方法ステップf)(所定の身体位置に作用する力Fを計算する)から計算された力を、方法ステップd)(3Dモデルとシェル-メッシュグリッド・モデルを互いに段階的に変位させる)で使用された離散的な変位経路にマッピングすることによって力-変形特性曲線を作成するステップと、h)物体、特にロボット・デバイスの初速の変化時に、この衝突に適用される制限値に対応する衝突力に対する物体の初速までの二分法によって、力-変形特性曲線および物体、特にロボット・デバイスの物理的モデルによって衝突を評価するステップと、i)ロボット速度を調整または監視するために、計算された初速を、ロボット制御に伝送し、好ましくは、伝送された初速に対応してロボット速度の調整および/または監視を行うステップと、を含むことができる。
【0021】
それに対応して、有利な実施形態では、多数の圧痕画像、特にすべての圧痕画像について、圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの応力値を決定し、所定の身体位置に作用する力Fを、それぞれの圧痕画像に対応する複数のステップkに関して、特にすべてのステップkに関して計算し、所定の物体と所定の身体位置との所定の衝突に関して、決定された力に基づいて力-変形特性曲線を生成することが企図される。次いで、好ましくは、生成された力-変形特性曲線に基づいて、好ましくは衝突の根底にある物体の動きに関して、許容すなわち所定の最大エネルギーおよび/または許容最大変形および/または許容最大力の規定によって、衝突の評価を行うこともできる。評価は、物体またはロボットが超えてはならない速度、特にロボット速度に関する制限値を評価結果として提供することができる。それに対応して、方法の一部として、評価結果、および速度に関する制限値に基づいて、ロボット・デバイスの制御または監視を行うことができる。許容最大エネルギーを超えてはならない、物体から身体位置に伝達されるエネルギーは、ゼロから、対応する変形(距離)値までの力-変形特性曲線の積分によって与えられる。許容最大変形量の規定と共に衝突が評価される場合には、力-変形特性曲線の生成および使用は必要ない。
【0022】
さらなる有利な実施形態では、圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの応力値の決定前に、1つまたは複数の生成された(元の)圧痕画像のフィルタリングが行われることが企図される。このフィルタリングは、特に、画像処理から公知の画像ベースのフィルタおよび/または機械学習方法に基づくフィルタリングを少なくとも使用して行うことができる。それに対応して、次いで、フィルタリング後の圧痕画像、すなわち1つまたは複数のフィルタリング後の圧痕画像のピクセル値Pwに基づいて、それぞれの応力値の決定、および作用する力の計算が行われる。
【0023】
フィルタリングには、物体との直接接触によって実際に変形されたフィールドに隣接するメッシュ要素またはフィールドの変形を考慮することができるという利点がある。ぼかしフィルタなどの比較的単純なフィルタでさえ、直接接触によって変形される身体表面上のフィールドの周囲を良好に表現または模倣することが分かっている。したがって、フィルタによって、観察中の衝突で物体が身体部分に作用した場合に現実に起こるような、より現実的な変形画像を作成することができる。シェル-メッシュグリッド・モデルの幾何学的形状と、フィルタ、特に画像ベースのフィルタのパラメータの適切な選択とにより、ここで、フィルタリング後の圧痕画像の自然な変形パターンをよく模倣することが可能である。ここで、選択されたフィルタに関する対応するパラメータは経験的に決定することができる。
【0024】
すなわち、フィルタリングの目的は、事前に得られた圧痕画像を平滑化し、平滑化された後でシェルモデルに返される圧痕画像が、典型的には人間において観察中の接触領域で生じるような皮膚の現実的で滑らかな変形の画像を再現することである。したがって、フィルタリング後の圧痕画像内の各ピクセル値は、関連するメッシュ要素Fijの現実的な変位に対応し、そのため、シェルモデルに戻すと、皮膚変形の現実的な3次元画像が得られる。
【0025】
例えば、フィルタリングは2つのステップで行うことができる。この実施形態では、第1のステップで、個々のピクセルが別個のフィルタリングプロセスでフィルタリングされ、その後、第2のステップで、別個のフィルタリングプロセスの結果が結合されて、フィルタリング後の圧痕画像が生成される。ここで、この場合にはまず、フィルタリング対象の各ピクセルに関して、すなわち変位ステップk内で非ゼロのピクセル値Pwを有する各ピクセルに関して、関連の圧痕画像のコピーが生成され、圧痕画像のコピーにおいて、他のすべてのピクセルPijのピクセル値Pwがゼロに設定される。次いで、圧痕画像のそれぞれのコピーにおいて、対応するフィルタ、例えばぼかしフィルタが、非ゼロのピクセル値Pwを有するそれぞれの残りの1つのピクセルに適用される。ここで、非ゼロのピクセル値Pwを有するピクセルの形でそれぞれ選択された接触点によって、隣接する身体面への影響の模倣が行われる。最後に、フィルタが適用された圧痕画像のコピー、すなわちフィルタリング後のコピーから、フィルタリング後の圧痕画像が生成される。このために、フィルタリング後の圧痕画像の各ピクセルPijの値Pwとして最大値Pwが選択され、この最大値Pwが、フィルタが適用された圧痕画像のすべてのコピーにおいて同じフィールドFijに割り当てられたすべてのピクセルPijに関して生じる。フィルタリングの第2のステップで、フィルタリング後の圧痕画像内の各ピクセルPijの値Pwが、元々の圧痕画像内の対応するピクセルの値Pwと比較され、フィルタリング後の圧痕画像内のそれぞれのピクセルの値Pwは、2つの値が所定の許容値を超えて互いに異なる場合にはゼロに設定され、2つの値が許容値だけ、または所定の許容値未満だけ互いに異なる、すなわち同じまたは実質的に同じである場合には値Pwのままにされる。次いで、このフィルタリング後の圧痕画像は、後続のステップで、元の圧痕画像の代わりに使用される。
【0026】
したがって、ここでは、フィルタ・レベル1で、圧痕画像内の個々のピクセル値が別個のフィルタリングプロセスで平滑化される。コピーまたはフィルタリング工程は、値>0を有する圧痕画像内のすべてのピクセルに対して実行されるので、値>0のピクセルがn個ある場合、コピーまたはフィルタリングされる圧痕画像もn個あり、これらは、フィルタリングされた個々のピクセルのフィルタ結果を含む。その後、n個のフィルタリング後の圧痕画像、すなわち中間画像すべてから、最も高いピクセル値を有する位置i、jでのピクセルが、フィルタリング後の圧痕画像に引き継がれる。次に、フィルタリング後の圧痕画像でのピクセルPijの値が元の圧痕画像でのピクセルPijの値に対応する場合、ぶつかった物体がこの位置で人間の身体位置に実際に触れていると想定することができる。接触がない位置では、フィルタリング後の圧痕画像での関連のピクセルが条件を満たさないため、結果画像内のピクセルは値0を得る。
【0027】
したがって、上記のフィルタリングには、衝突の定量化がより正確に行われ、特に発生する力の過大評価が防止されるという利点がある。これにより、例えば、それに対応して制御されたロボット・デバイスはより高い作業速度で動作することができ、それでも安全である。
【0028】
さらなる有利な実施形態では、ピクセル値Vijを有する追加の因子行列画像が生成されることが企図され、ここで、元の圧痕画像に対してエッジ検出が実行され、追加の因子行列画像は、エッジ位置でピクセル値>1を有し、非エッジ位置でピクセル値=1を有するように適合される。これは、例えば、エッジ検出の結果画像内で各ピクセル値に値1を加えることによって行うことができる。圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの応力値の決定時、または数学的に等価に、所定の身体位置に作用する力Fの計算時、すなわち衝突の評価が行われる前に、圧痕ピクセルに関する決定された応力値が、追加の因子行列画像のそれぞれ割り当てられたピクセル値Vijと乗算される。それに対応して、ステップkに関して計算される力は、式F=Σi,jVij×σ(Pij)×Aijによって与えられる。
【0029】
典型的にはエッジにおいてより高い機械的応力が身体部分に作用するので、これには、硬いエッジを有する物体の局所化効果が考慮されるという利点がある。これにより、残りの方法ステップで決定されるエッジ領域での機械的応力を後で高めることができ、より現実的な評価を生成することができる。
【0030】
別の有利な実施形態では、ピクセル値Wijを有するさらなる因子行列画像が生成され、圧痕ピクセルPijに関する決定された応力値が、さらなる因子行列画像のそれぞれ割り当てられたピクセル値Wijと乗算され、その後、衝突の評価が行われることが企図される。それぞれピクセル値Wijに割り当てられた圧痕ピクセルPijの値Pwと衝突に関して予め設定された衝突速度とに基づいて、圧痕ピクセルPij、したがって割り当てられたフィールドFijに関するそれぞれの歪速度が決定され、それぞれの歪速度に基づいて、それぞれの圧痕ピクセルPijに割り当てられたフィールドFijに関して予め設定された歪速度特性曲線を用いてピクセル値Wijが決定されることによって、さらなる因子行列画像が特に生成される。歪速度特性曲線の値、したがってピクセル値Wijは、ここでは、≧1である。ここで、さらなる因子行列画像は、追加の因子行列画像と同様に、1つ、複数、またはすべてのステップkに関してそれぞれ個別に予め設定される。フィールドFijの歪速度特性曲線は、同一でよく、または各フィールドFijもしくはフィールドFijのグループに関して個別に予め設定されてもよい。したがって、それに対応して、ステップkに関して計算される力は、式F=Σi,jWij×σ(Pij)×Aijによって与えられ、またはさらなる因子行列画像が追加の因子行列画像と組み合わされて適用される場合には、式F=Σi,jWij×Vij×Aijによって与えられる。
【0031】
これには、生体組織の感度の歪速度依存性、すなわちぶつかった物体の圧し込み速度への怪我リスクの依存性がシミュレートされるという利点があり、したがって、衝突のより正確な評価は、衝突速度に依存するさらなる因子行列を使用して行われる。
【0032】
さらに有利な実施形態では、それぞれのフィールドFijの中点を通って法線ベクトルに平行に直線が設定され、直線が物体の表面に当たるか否かが決定され、当たる場合には、直線と物体の表面との交点と、それぞれのフィールドFijの中点との間の距離が、生物への物体の圧し込みに対応する場合には圧痕深さとして確定される(例えば適切な定義では、この距離は0未満である)ことによって、それぞれの圧痕深さ、すなわち圧痕画像のフィールドFijに割り当てられるピクセルPijのピクセル値Pwが計算されることが企図される。1つのそのような適切な定義は、例えば、身体部分に対して外側を向くように法線ベクトルを選択することである。しかし、方向の定義が逆の場合には、例えば、正の距離が、生物への物体の圧し込みに対応する。圧痕深さのこの定義は、計算量、および達成可能な結果の精度の点で有利であることが分かっている。
【0033】
さらなる有利な実施形態では、メッシュグリッドの各フィールドFijの辺が同じ長さである、または同じ長さの自然数倍であることが企図される。すなわち、各フィールドのサイズは、単位サイズの自然数倍であるが、必ずしも同じである必要はない。
【0034】
一態様はまた、好ましくは力-変形特性曲線を用いて衝突が計算されるロボット・デバイスを制御するための方法に関する。力-変形特性曲線は、記載した実施形態の1つによる方法を用いて事前に決定された。次いで、計算からの結果が、ロボット・デバイスの制御または監視のために使用され、すなわち、方法の評価結果に応じてロボット・デバイスが制御される。
【0035】
さらなる態様は、仮想空間内で、所定の物体の提供された3Dモデルと、所定の身体位置の提供されたシェル-メッシュグリッド・モデルとを位置合わせし、2つのモデルの相対的な配置が、互いに所定の衝突時の物体と身体位置との相対的な配置に対応し、シェル-メッシュグリッド・モデルのメッシュグリッドの各フィールドFijが正方形であり、メッシュグリッドの各フィールドFijに関して応力-変形特性曲線が予め設定されている、衝突評価装置に関する。この衝突評価装置はさらに、仮想空間内で、所定の衝突によって特定される衝突方向に従って、3Dモデルとシェル-メッシュグリッド・モデルとを互いに段階的に変位させるように構成されており、段階的な変位の各ステップkに関して、圧痕ピクセルPijを有する圧痕画像が生成され、圧痕ピクセルPijのそれぞれのピクセル値Pwが、シェル-メッシュグリッド・モデルのメッシュグリッドの、それぞれの圧痕ピクセルPijに割り当てられたフィールドFij内での3Dモデルの圧痕深さを表す。好ましくは、ここで、各圧痕ピクセルPijに正確に1つのフィールドFijが割り当てられ、逆も成り立つ。段階的な変位は、観察中の衝突点における物体、例えばロボット・デバイスの動きに対応する。動きは初期条件として存在し、したがって衝突方向および/または衝突速度を特定する。特に接触力の増加の作用により、物体の動きが変化する可能性がある。記載した方法または記載した装置によって計算された(接触)力による動きの変化は、方法または装置において反復的に考慮することができるが、必ずしもそうする必要はない。
【0036】
さらに、衝突評価装置はまた、対応するフィールドFijに割り当てられた応力-変形特性曲線およびそれぞれのピクセル値Pwに従って、上記または少なくとも1つの圧痕画像、特に複数の圧痕画像について、圧痕ピクセルPijに関するそれぞれの応力値を決定するように構成され、さらに、圧痕画像に対応する少なくとも1つのステップkについて、圧痕ピクセルPijに関して決定された応力値と、メッシュグリッドの割り当てられたフィールドFijの面積Aijとの積を合計することによって、所定の身体位置に作用する少なくとも1つの力Fを計算するように構成される。
【0037】
別の態様はまた、そのような衝突評価装置を備えたロボット・デバイス、および/または、そのような衝突評価装置を備え、評価結果に応じて、特に所定の身体位置に作用する計算された力に応じて、および/または許容最大エネルギーに応じて、および/または許容最大変形に応じて、および/または許容最大力に応じてロボット・デバイスを制御するように構成された、ロボット・デバイス用の制御装置に関する。
【0038】
ここで、衝突評価装置の利点および有利な実施形態は、記載した方法の利点および有利な実施形態に対応し、逆も成り立つ。
【0039】
本明細書において導入部分でも上述した特徴および特徴の組合せ、ならびに図面の説明で後述するおよび/または図面にのみ示されている特徴および特徴の組合せは、それぞれ提示されている組合せだけでなく、他の組合せでも、本発明の範囲から逸脱せずに使用可能である。したがって、図面に明確には示されておらず説明されていないが、説明される実施形態からの別々の特徴の組合せによって生み出されて作成可能な実施形態も、本発明に含まれて開示されているものとみなされるべきである。記載されている元の独立請求項の特徴をすべては備えていない実施形態および特徴の組合せも開示されているものとみなすべきである。さらに、特許請求の範囲の言及に記載された特徴の組合せを超えるまたはそこから逸脱する、特に上記の実施形態による、実施形態および特徴の組合せも開示されたものとみなされるべきである。
【0040】
以下の図に基づいて、ここに示す特定の実施形態に限定はせずに、本発明による主題をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】例示的な力-変形特性曲線を示す図である。
図2】衝突に対応して仮想空間内で位置合わせされた、物体の3Dモデルと所定の身体位置のシェル-メッシュグリッド・モデルとの衝突に関する例示的な状況を示す図である。
図3】圧痕画像のフィルタリングの例示的なステップを示す図である。
図4】圧痕画像のフィルタリングの例示的なステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面において、同一および機能的に同一の要素には同一の参照符号が付されている。
【0043】
図1は、ここでは直径25mmの円柱体の作用下での前腕筋に関して決定された、力-変形特性曲線fの例示的なプロファイルを示す。ここでは、組織の変形D(単位はミリメートル)に対して、加えられた力F(単位はニュートン)がプロットされている。典型的には、力-変形特性曲線Fは、制限値(ここでは約13mmの変形)まで指数関数的であり、その後は線形である。
【0044】
図2は、物体の3Dモデルと所定の身体位置のシェル-メッシュグリッド・モデルとの例示的な配置を示す。ここでは、物体1は、所定の身体位置2上の接触点Bに頂点を有するピラミッド形の3Dモデルによって表されており、身体位置2は、(平面状の)シェル-メッシュグリッド・モデルで表されている。図示される例では、身体位置2は手のひらである。シェル-メッシュグリッド・モデルは、そのメッシュグリッド内に多数のフィールドFijを有し、フィールドFijは正方形であり、ここでは同じ大きさである。衝突時、物体1は、衝突方向Kで身体位置2に向けて動く。
【0045】
各フィールドFijに、ここでは応力-変形特性曲線sが割り当てられ、応力-変形特性曲線sは、所定の変形Dにそれぞれの応力sを割り当てる。さらに、図示される例では、各フィールドに関して歪速度特性曲線dも割り当てられ、歪速度特性曲線dは、所定の歪速度D/vに値Wを割り当てる。ここで、Dは変形を表し、vは、変形Dが生じる速度を表す。歪速度は、例えば、ε’=d/dt L(t)/Lのように別の形で予め設定することもでき、ここで、Lは材料の初期長さであり、L(t)は時点tでの長さである。当然、特性曲線は、所定の歪速度に対応して一貫して予め設定しなければならない。歪速度特性曲線により、因子行列画像として、生体組織の感度の歪速度依存性をシミュレートすることができる。
【0046】
図3は、生成された圧痕印刷画像の例示的なフィルタリングの第1のステップを示す。ここでは6×6ピクセルPijを有する圧痕画像ABは、ここで、例として4つのピクセルPijで、非ゼロの値Pwを有する。図示される例では、4つのピクセルP33「O」、P34「▽」、P43「□」、およびP44「△」である。ここで、4つのピクセルはそれぞれ、それぞれのピクセル値Pwを表す個別の陰影を有し、より暗い陰影はより大きいピクセル値Pwに対応し、したがってより大きい変形に対応する。
【0047】
フィルタリングの第1のステップでは、個々の各ピクセルPij(ここではピクセルP33、P34、P43、およびP44)が別個のフィルタリングプロセスでフィルタリングされる。このために、フィルタリング対象の各ピクセルP33、P34、P43、およびP44に関して、関連の圧痕画像ABの対応するコピーAB-33、AB-34、AB-43、AB-44が生成され、他のすべてのピクセルPijのピクセル値はゼロに設定される。次いで、それぞれのコピーAB-33、AB-34、AB-43、AB-44において、対応するフィルタ、ここではぼかしフィルタが、非ゼロの値Pwを有する残りのピクセルPijに適用される。次いで、フィルタリング後のコピーAB-33’、AB-34’、AB-43’、AB-44’から、フィルタリング後の圧痕画像AB’が生成される。これは、フィルタリング後の圧痕画像AB’の各ピクセルPijの値Pwとして最大値Pwが選択されることによって行われ、この値Pwは、同じフィールドFijに割り当てられたすべてのピクセルPij(すなわちここでは同一のインデックスi、jを有するすべてのピクセルPij)に関して、同一のインデックスi、jを有するピクセルPijに関するすべてのフィルタリング後のコピーAB-33’、AB-34’、AB-43’、AB-44’内で生じる。したがって、同じフィールドFijに割り当てられたピクセルPijに関して、異なるフィルタリングされたコピーにわたってピクセル値Pwの全域的最大値が特定され、対応するピクセルPijに関してこの全域的最大値のみがさらに考慮される。これらの最大値は、コピーAB-33’、AB-34’、AB-43’、AB-44’内でそれぞれ「○」、「▽」、「□」、または「△」によって表されている。
【0048】
したがって、図示される例では、フィルタリング後の圧痕画像AB’は、ピクセルP22、P23に関してはコピーAB-33’からのピクセル値Pwを含み、ピクセルP24、P25、P34、P35に関してはコピーAB-34’からのピクセル値Pwを含み、ピクセルP32、P33、P42、P43、P52、P53に関してはコピーAB-43’からのピクセル値Pwを含み、ピクセルP44、P45、P54、P55に関してはコピーAB-44’からのピクセル値Pwを含む。
【0049】
次に、図4に、例示的なフィルタリングの第2のステップが示されている。ここで、フィルタリング後の圧痕画像AB’内の各ピクセルPijのピクセル値Pwは、最終的なフィルタリング後の圧痕画像AB’’を得るために、元の圧痕画像AB内の対応するピクセルPijの値Pwと比較される。それに対応して、第1のステップからのフィルタリング後の圧痕画像AB’を中間圧痕画像と呼ぶことができ、第2のステップからのフィルタリング後の圧痕画像AB’’を結果圧痕画像と呼ぶことができる。
【0050】
結果圧痕画像AB’’に関して、フィルタリング後の圧痕画像AB’内のそれぞれのピクセルの値Pwは、元の圧痕画像ABでのそれぞれのピクセルの値PWから所定の許容値を超えて互いに異なる場合にはゼロに設定され、2つの値が許容値だけ、または所定の許容値未満だけ互いに異なる場合には、値Pwのままにされる。圧痕画像ABと圧痕画像AB’とのピクセル値Pwが許容値だけ、または所定の許容値未満だけ互いに異なる(すなわち実質的に同じである)ピクセルは、図4では菱形「◇」で表されている。実際、これらのピクセルPij(ここではピクセルP34、P43、P44)または割り当てられたフィールドFijのみにおいて、変形は、身体部分に対する物体の直接の圧力に起因しているはずであり、したがって、これらの位置は、特に怪我リスクに関して衝突を評価するのに重要である。
【0051】
図示される例では、ピクセルP43、P43、P44は、ピクセル値0.5、1、0.75を有し、すなわち0.5mm、1mm、0.75mmの変形に相当する。ピクセルPijは、ここでは面積Aij=1cmを有するフィールドFijに割り当てられているので、保存されている応力-変形特性曲線sによって接触力Fを計算することができる。図示される例では、力F=[s(0.5mm)+s(0.75mm)+s(1mm)]N/cm×1cm=[26+71+160]N/cm×1cmは、257Nとなる。
【0052】
図5には、図2にも示されている衝突に関する例示的な圧痕画像AB、AB’、AB’’が示されており、身体位置2に沈み込まされた物体1の斜視図および断面図も示されている。圧痕画像AB、AB’、AB’’では、ここでも、より暗い陰影がより大きい変形に対応する。元の圧痕画像ABから始めて、ここでは、図3に示されるフィルタリングの第1のステップと同様の第1のステップ(1)で、中間圧痕画像AB’が生成される。第2のステップ(2)で、それに応じて結果圧痕画像AB’’が生成される。ピラミッド形の物体が手のひらと衝突したときに、物体の縁部で発生する変形が、衝突、特に生じ得る怪我リスクの評価に関して重要であることが、結果圧痕画像から直接、特に定量可能な形で明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】