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特表2024-522660エラストマー材料の付加製造のための配合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】エラストマー材料の付加製造のための配合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240614BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240614BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240614BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240614BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240614BHJP
   C08F 220/02 20060101ALI20240614BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20240614BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C08L21/00
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/00
C08F220/02
C08F220/56
C08F226/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576138
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 IL2022050639
(87)【国際公開番号】W WO2022264139
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,422
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノ、レフ
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F213AA43
4F213AA45
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL25
4J002AC001
4J002AC002
4J002AC003
4J002AC004
4J002BG071
4J002BG072
4J002BG073
4J002BG134
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD076
4J002FD096
4J002FD316
4J002GH00
4J002GT00
4J100AJ02P
4J100AL04P
4J100AL05P
4J100AL08P
4J100AL54P
4J100AL63P
4J100AL66P
4J100AL66R
4J100AM15S
4J100AQ21Q
4J100BA02P
4J100BA04P
4J100BA06P
4J100BA07R
4J100BA08P
4J100BA31R
4J100BA38P
4J100CA03
4J100CA06
4J100DA47
4J100DA50
4J100DA51
(57)【要約】
硬化したときに、三次元物体の付加製造に使用可能なエラストマー材料を提供する加硫性配合物が提供される。配合物は、加硫性多官能性非エラストマー材料と組み合わせた加硫性単官能性及び多官能性エラストマー材料、及び少なくとも2つの水素結合形成基を含む加硫性材料に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化したときにエラストマー材料を提供する加硫性配合物であって、
配合物の総重量の50重量%~70重量%の総量の加硫性単官能性エラストマー材料と、
前記配合物の総重量の20重量%~40重量%の総量の加硫性多官能性エラストマー材料と
前記配合物の総重量の5重量%以下の総量の加硫性多官能性非エラストマー材料と、
前記配合物の総重量の約1重量%~約20重量%、又は約1重量%~約10重量%の総量の少なくとも2つの水素結合形成基を含む加硫性材料と、を含む、加硫性配合物。
【請求項2】
前記加硫性材料の各々がUV加硫性材料である、請求項1に記載の加硫性配合物。
【請求項3】
前記加硫性材料の各々が(メタ)アクリル材料である、請求項1又は請求項2に記載の加硫性配合物。
【請求項4】
前記水素結合形成基が、少なくとも1つの水素結合供与基及び少なくとも1つの水素結合受容基を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項5】
前記少なくとも2つの水素結合形成基が、2個以下の原子によって互いに分離されている、請求項4に記載の加硫性配合物。
【請求項6】
前記水素結合形成基の数と前記水素結合形成基を含む材料の分子量との比が0.01より高い、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項7】
少なくとも2つの水素結合形成基を含む前記加硫性材料が、(メタ)アクリルアミド、好ましくはメタクリルアミドである、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項8】
少なくとも2つの水素結合形成基を含む前記加硫性材料の濃度が、前記配合物の総重量の1重量%~10重量%、又は1重量%~5重量%、又は1重量%~3重量%、又は1.5重量%~2重量%の範囲内である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項9】
加硫性の前記エラストマー材料の少なくとも1つが水素結合を形成することができる、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項10】
前記加硫性材料の少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%が、水素結合を形成することができる加硫性材料を含む、請求項9に記載の加硫性配合物。
【請求項11】
水素結合を形成することができる前記加硫性材料が少なくとも1つのカルバメート基を含む、請求項9又は請求項10に記載の加硫性配合物。
【請求項12】
水素結合を形成することができる前記加硫性材料がウレタン(メタ)アクリレートである、請求項11に記載の加硫性材料。
【請求項13】
前記加硫性多官能性エラストマー材料の濃度が、前記配合物の総重量の10重量%~20重量%又は10重量%~15重量%の範囲内である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項14】
前記加硫性多官能性エラストマー材料が多官能性ウレタンアクリレートを含む、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項15】
前記加硫性単官能性エラストマー材料が単官能性ウレタンアクリレートを含む、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項16】
前記加硫性単官能性エラストマー材料と、少なくとも2つの水素結合形成基を含む前記加硫性材料との重量比が、20:1~60:1の範囲内、又は30:1~50:1の範囲内である、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項17】
単官能性非エラストマー加硫性材料をさらに含む、請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項18】
さらなる前記単官能性加硫性材料の濃度が、前記配合物の総重量の15重量%~25重量%の範囲内である、請求項17に記載の加硫性配合物。
【請求項19】
前記多官能性非エラストマー加硫性材料が第三級アミン基を含む、請求項1~請求項18のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項20】
前記多官能性非エラストマー加硫性材料が、2より高い官能価を特徴とする材料を含む、請求項1~請求項19のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項21】
前記多官能性非エラストマー加硫性材料の濃度が、前記配合物の総重量の0.1重量%~2重量%の範囲内又は0.1重量%~1重量%の範囲内である、請求項20に記載の加硫性配合物。
【請求項22】
界面活性剤、分散剤、充填剤、染料、顔料、阻害剤及び酸化防止剤から選択される少なくとも1つの材料をさらに含む、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項23】
硬化したときに、少なくとも4Kg/cm又は少なくとも4.5Kg/cmの引裂抵抗によって特徴づけられる、請求項1~請求項22のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項24】
硬化したときに、少なくとも2MPa又は少なくとも2.5MPaの引張強度によって特徴づけられる、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項25】
硬化したときに、少なくとも300%又は少なくとも350%の破断伸びによって特徴づけられる、請求項1~請求項24のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項26】
硬化したときに、少なくとも30又は少なくとも40のショアA硬度によって特徴づけられる、請求項1~請求項25のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項27】
硬化したときに、15℃以下の平均Tgによって特徴づけられる、請求項1~請求項26のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項28】
少なくともその一部にエラストマー材料を含む三次元物体の付加製造におけるモデリング材料配合物として使用可能である、請求項1~請求項27のいずれか一項に記載の加硫性配合物。
【請求項29】
少なくともその一部にエラストマー材料を含む三次元物体を付加製造する方法であって、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を順次形成することによって前記物体を形成することを含み、
前記層の少なくともいくつかの各々の前記形成が、請求項1~請求項28のいずれか一項で定義されるモデリング材料配合物を分配し、分配されたモデリング材料を加硫エネルギーに曝露し、それによって加硫モデリング材料を形成することを含み、
それにより、前記三次元物体を製造する、方法。
【請求項30】
前記加硫エネルギーがUV照射を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記UV照射がLEDエネルギー源からのものである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記分配が40℃以下又は35℃以下の温度で行われる、請求項29~請求項31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項29~請求項32のいずれか一項に記載の方法によって製造された三次元物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
【0002】
本出願は、2021年6月14日に出願された米国仮特許出願第63/210,422号の35 USC119(e)の下での優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、付加製造(AM)に関し、より具体的には、排他的ではないが、少なくとも一部においてエラストマーゴム様材料(複数可)で作製された物体の付加製造に使用可能な配合物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
合成ゴムは、典型的には人工エラストマーから作製される。エラストマーは粘弾性ポリマーであり、一般に他の材料と比較して低いヤング率及び高い降伏歪みを示す。エラストマーは、典型的には、ガラス転移温度を超えて存在する非晶質ポリマーであるため、かなりのセグメント運動が可能である。したがって、周囲温度では、ゴムは比較的柔らかく、約3MPaの弾性を特徴とし、変形可能である。
【0005】
エラストマーは、通常、ポリマー鎖を架橋するために加硫(硫化)を必要とする熱硬化性ポリマー(又はコポリマー)である。弾性は、加えられた応力を分散させるように自身を再構成する長鎖の能力に由来する。共有結合架橋は、応力が除去されたときにエラストマーがその元の構成に戻ることを確実にする。エラストマーは、典型的には、5%から700%まで可逆的に延びることができる。
【0006】
ゴムは、通常それらの硬度を高めることを目的とした充填剤又は補強剤をさらに含むことが多い。最も一般的な補強剤には、微粉化カーボンブラック及び/又は微粉化シリカが含まれる。
【0007】
カーボンブラック及びシリカの両方は、ゴム生産中にポリマー混合物に、典型的には約30体積%の濃度で添加されると、ゴムの弾性率を2~3倍上昇させ、また、そうでなければ弱い材料に顕著な靭性、特に耐摩耗性を付与する。カーボンブラック又はシリカ粒子をより多く添加すると、弾性率はさらに高くなるが、引張強度が低下する場合がある。
【0008】
付加製造は、一般に、三次元(3D)物体が物体のコンピュータモデルを利用して製造されるプロセスである。そのようなプロセスは、視覚化、実証、及び機械的プロトタイピングの目的のための設計関連分野などの様々な分野、並びに迅速製造(RM)のために使用される。
【0009】
任意のAMシステムの基本的な操作は、三次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスし、その結果を二次元位置データに変換し、そのデータを層ごとに三次元構造を製造する制御機器に供給することからなる。
【0010】
様々なAM技術が存在し、その中には特にステレオリソグラフィ、デジタル光処理(DLP)、及び三次元(3D)印刷、3Dインクジェット印刷がある。そのような技術は、一般に、1又は複数のビルディング材料、典型的には光重合性(光加硫性)材料の層ごとの堆積及び固化によって実施される。
【0011】
三次元印刷プロセスでは、例えば、ビルディング材料は、支持構造体上に層を堆積させるために一組のノズルを有する分配ヘッドから分配される。次いで、ビルディング材料に応じて、適切なデバイスを使用して層を加硫又は固化させることができる。
【0012】
様々な三次元印刷技術が存在し、例えば、米国特許第6,259,962号、同第6,569,373号、同第6,658,314号、同第6,850,334号、同第7,183,335号、同第7,209,797号、同第7,225,045号、同第7,300,619号、同第7,479,510号、同第7,500,846号、同第7,962,237号及び同第9,031,680号(すべて同一譲受人)に開示されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
付加製造に利用される印刷システムは、受け媒体及び1又は複数の印刷ヘッドを含んでもよい。受け媒体は、例えば、印刷ヘッドから分配された材料を運ぶための水平面を含んでもよい組立トレイとすることができる。印刷ヘッドは、例えば、印刷ヘッドの長手方向軸に沿って1又は複数の列のアレイで配置された複数の分配ノズルを有するインクジェットヘッドであってもよい。印刷ヘッドは、その長手方向軸がインデックス方向に実質的に平行になるように配置されてもよい。印刷システムは、予め定義された走査計画(例えば、ステレオリソグラフィ(STL)フォーマットに変換され、コントローラにプログラムされたCAD構成)に従って印刷ヘッドの移動を含む印刷プロセスを制御するためのマイクロプロセッサなどのコントローラをさらに含むことができる。印刷ヘッドは、複数の噴射ノズルを含むことができる。噴射ノズルは、材料を受け媒体上に分配して、3D物体の断面を表す層を作る。
【0014】
印刷ヘッドに加えて、分配されたビルディング材料を加硫させるための加硫エネルギー源があってもよい。加硫エネルギーは、典型的には放射線、例えばUV放射線である。
【0015】
さらに、印刷システムは、堆積及び少なくとも部分的な固化の後に、後続の層の堆積の前に各層の高さを平坦化及び/又は確立するための平坦化デバイスを含んでもよい。
【0016】
ビルディング材料は、モデリング材料と、支持材料とを含んでもよく、それぞれ、物体と、造形中に物体を支持する一時的な支持構造とを形成する。
【0017】
モデリング材料(1又は複数の材料を含んでもよい)は、所望の物体(複数可)を生成するために堆積され、支持材料(1又は複数の材料を含んでもよい)は、モデリング材料要素の有無にかかわらず、造形中の物体の特定の領域のための支持構造を提供し、例えば、物体が湾曲した幾何学、負の角度、空隙などの張り出した特徴又は形状を含む場合に、後続の物体層の適切な垂直配置を保証するために使用される。
【0018】
モデリング材料及び支持材料の両方は、好ましくは、それらが分配される作業温度で液体であり、その後、典型的には加硫エネルギーに曝露されると硬化(例えば、UV加硫)し、必要な層形状を形成する。印刷完了後、支持構造体は、組み立てられた3D物体の最終形状を明らかにするために除去される。
【0019】
いくつかの付加製造プロセスは、2つ以上のモデリング材料を使用して物体の付加形成を可能にする。例えば、本譲受人による米国特許出願公開第2010/0191360号は、複数の分配ヘッドを有する固体自由組立装置と、複数のビルディング材料を組立装置に供給するように構成されたビルディング材料供給装置と、組立装置及び供給装置を制御するように構成された制御ユニットとを備えるシステムを開示している。システムはいくつかの動作モードを有する。1つのモードでは、すべての分配ヘッドは、組立装置の単一のビルディング走査サイクル中に動作する。別のモードでは、1又は複数の分配ヘッドは、単一のビルディング走査サイクル又はその一部の間、動作しない。
【0020】
Polyjet(登録商標)(Stratasys Ltd.、イスラエル)などの3Dインクジェット印刷プロセスでは、ビルディング材料は、1又は複数の印刷ヘッドから選択的に噴射され、ソフトウェアファイルによって定義された所定の構成に従って連続層で組立トレイ上に堆積される。
【0021】
本譲受人による米国特許第9,227,365号は、複数の層と、コア領域を構成する層状コアと、エンベロープ領域を構成する層状シェルとから構築された、シェル状物体の固体自由組立のための方法及びシステムを開示している。
【0022】
ゴム様材料を形成するために、付加製造プロセスが使用されてきた。例えば、ゴム様材料は、本明細書に記載のPolyJet(登録商標)システムで使用される。これらの材料は、例えばインクジェットによる分配を可能にする比較的低い粘度を有し、室温よりも低いTg、例えば室温よりも-10℃低いTgを発現するように配合される。後者は、比較的低い架橋度を有する生成物を配合し、固有の柔軟な分子構造を有するモノマー及びオリゴマーを使用することによって得られる(例えば、アクリルエラストマー)。
【0023】
PolyJet(登録商標)システム(商品名「Tango」ファミリーで市販されている)で使用可能なゴム様材料の例示的なファミリーは、ショアスケールA硬度、破断伸び、引裂抵抗及び引張強度を含む様々なエラストマー特性を提供する。
【0024】
PolyJet(登録商標)システム(商品名「Agilus」ファミリーとして市販されている)で使用可能なゴム様材料の別の例示的なファミリーは、国際公開第2017/208238号に開示されており、加硫性材料に加えて、シリカナノ粒子を含み、得られる材料の改善された特性、特に改善された破断伸び、引裂抵抗及び引張強度を提供する。
【0025】
ゴム様材料は、展示会及び通信モデル;ゴム囲み及びオーバーモールド;工具又はプロトタイプのためのソフトタッチコーティング及び滑り止め表面;ノブ、グリップ、プル、ハンドル、ガスケット、シール、ホース、履物を含む多くのモデリング用途に有用である。
【0026】
さらなる背景技術は、国際公開第2009/013751号;国際公開第2016/009426号;国際公開第2016/063282号;国際公開第2016/125170号;国際公開第2017/134672号;国際公開第2017/134673号;国際公開第2017/134674号;国際公開第2017/134676号;国際公開第2017/068590号;国際公開第2017/187434号;国際公開第2018/055521号;及び国際公開第2018/055522号を含み、すべて本譲受人によるものである。
【発明の概要】
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、硬化したときにエラストマー材料を提供する加硫性配合物であって、
前記配合物の総重量の50重量%~70重量%の総量の加硫性単官能性エラストマー材料;
前記配合物の総重量の20重量%~40重量%の総量の加硫性多官能性エラストマー材料;
前記配合物の総重量の5重量%以下の総量の加硫性多官能性非エラストマー材料;及び
前記配合物の総重量の約1重量%~約20重量%、又は約1重量%~約10重量%の総量の少なくとも2つの水素結合形成基を含む加硫性材料を含む、加硫性配合物が提供される。
【0028】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性材料の各々は、UV加硫性材料である。
【0029】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性材料の各々は、(メタ)アクリル材料である。
【0030】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水素結合形成基は、少なくとも1つの水素結合供与基及び少なくとも1つの水素結合受容基を含む。
【0031】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも2つの水素結合形成基は、2個以下の原子によって互いに分離されている。
【0032】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水素結合形成基の数とそれを含有する材料の分子量との比は、0.01より高い。
【0033】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも2つの水素結合形成基を含む加硫性材料は、(メタ)アクリルアミド、好ましくはメタクリルアミドである。
【0034】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも2つの水素結合形成基を含む加硫性材料の濃度は、配合物の総重量の1重量%~10重量%、又は1重量%~5重量%、又は1重量%~3重量%、又は1.5重量%~2重量%の範囲内である。
【0035】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性エラストマー材料の少なくとも1つは、水素結合を形成することができる。
【0036】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性材料の少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%は、水素結合を形成することができる加硫性材料(例えば、1又は複数の加硫性材料)を含む。
【0037】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水素結合を形成することができる加硫性材料は、少なくとも1つのカルバメート基を含む。
【0038】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水素結合を形成することができる加硫性材料はウレタン(メタ)アクリレートである。
【0039】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性多官能性エラストマー材料の濃度は、配合物の総重量の10重量%~20重量%又は10重量%~15重量%の範囲内である。
【0040】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性多官能性エラストマー材料は、多官能性ウレタンアクリレートを含む。
【0041】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性単官能性エラストマー材料は、単官能性ウレタンアクリレートを含む。
【0042】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性単官能性エラストマー材料と、少なくとも2つの水素結合形成基を含む加硫性材料との重量比は、20:1~60:1の範囲内、又は30:1~50:1の範囲内である。
【0043】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、単官能性の非エラストマー加硫性材料をさらに含む。
【0044】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、さらなる単官能性非エラストマー加硫性材料の濃度は、配合物の総重量の15重量%~25重量%の範囲内である。
【0045】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性非エラストマー加硫性材料は、第三級アミン基を含む。
【0046】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性非エラストマー加硫性材料は、2よりも大きい本明細書中で定義されるような官能価を特徴とする材料を含む。
【0047】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性非エラストマー加硫性材料の濃度は、配合物の総重量の0.1重量%~2重量%、又は0.1重量%~1重量%の範囲内である。
【0048】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、界面活性剤、分散剤、可塑剤、充填剤、染料、顔料、阻害剤及び酸化防止剤から選択される少なくとも1つの材料をさらに含む。
【0049】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、硬化したときに、少なくとも4Kg/cm又は少なくとも4.5Kg/cmの引裂抵抗によって特徴づけられる。
【0050】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、硬化したときに、少なくとも2MPa又は少なくとも2.5MPaの引張強度によって特徴づけられる。
【0051】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、硬化したときに、少なくとも300%又は少なくとも350%の破断伸びによって特徴づけられる。
【0052】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、硬化したときに、少なくとも30又は少なくとも40のショアA硬度によって特徴づけられる。
【0053】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、硬化したときに、15℃以下の平均Tgによって特徴づけられる。
【0054】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、少なくとも一部にエラストマー材料を含む三次元物体の付加製造におけるモデリング材料配合物として使用可能である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、少なくとも一部にエラストマー材料を含む三次元物体を付加製造する方法であって、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を順次形成することによって物体を形成することを含み、
層の少なくともいくつかの各々の形成が、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書中に記載される加硫性エラストマー配合物であるモデリング材料配合物を分配し、分配されたモデリング材料を加硫条件(例えば加硫エネルギー)に曝露し、それによって加硫モデリング材料を形成することを含み、
それにより、三次元物体を製造する、方法が提供される。
【0056】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫条件は加硫エネルギーを含む。
【0057】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫条件(例えば、加硫エネルギー)はUV照射を含む。
【0058】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、UV照射はLEDエネルギー源からのものである。
【0059】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、分配は、40℃以下又は35℃以下の温度で行われる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の付加製造方法によって製造された三次元物体が提供される。
【0061】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が制御する。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0062】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実施は、選択されたタスクを手動で、自動的に、又はそれらの組み合わせで実行又は完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装及び機器によれば、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを使用してハードウェア、ソフトウェア若しくはファームウェア、又はそれらの組み合わせによって実装することができる。
【0063】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装することができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの例示的な実施形態による1又は複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実施される。任意に、データプロセッサは、命令及び/若しくはデータを記憶するための揮発性メモリ、並びに/又は命令及び/若しくはデータを記憶するための不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブルメディアを含む。任意に、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ及び/又はキーボード又はマウスなどのユーザ入力デバイスもまた、任意に提供される。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例として本明細書に記載されている。ここで詳細に図面を特に参照すると、示されている詳細は例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な説明のためのものであることが強調される。この点に関して、図面を用いてなされた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1A図1Aは、本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
図1B図1Bは、本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
図1C図1Cは、本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
図1D図1Dは、本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
図2A図2Aは、本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図2B図2Bは、本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図2C図2Cは、本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図3A図3Aは、本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
図3B図3Bは、本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
図4図4は、インターレースされたモデリング材料を含む領域の概略図である。
図5A図5Aは、本発明のいくつかの実施形態による構造の代表的かつ非限定的な例の概略図である。
図5B図5Bは、本発明のいくつかの実施形態による構造の代表的かつ非限定的な例の概略図である。
図5C図5Cは、本発明のいくつかの実施形態による構造の代表的かつ非限定的な例の概略図である。
図5D図5Dは、本発明のいくつかの実施形態による構造の代表的かつ非限定的な例の概略図である。
図6図6は、メタクリルアミドによって達成される、水素結合を介した例示的な架橋の概略図である。
図7A図7Aは、シリカ粒子を含む市販のエラストマーモデリング材料配合物で作製された物体(左の物体)と比較した、本実施形態のいくつかによる例示的なエラストマーモデリング材料配合物で作製された物体(右の物体)の幾何学的変形を示す写真である。
図7B図7Bは、シリカ粒子を含む市販のエラストマーモデリング材料配合物で作製された物体(左の物体)と比較した、本実施形態のいくつかによる例示的なエラストマーモデリング材料配合物で作製された物体(右の物体)のカーリングを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、付加製造(AM)に関し、より具体的には、排他的ではないが、少なくとも一部においてゴム様材料(複数可)で作製された物体の付加製造に使用可能な配合物及び方法に関する。
【0067】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、及び/又は図面及び/又は実施例に示される構成要素及び/又は方法の構造及び配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0068】
エラストマー材料(エラストマー、ゴム様材料)の従来の生産において、出発材料は、典型的には、低Tgの熱可塑性ポリマーであり、所望の最終特性を達成するために配合及び加硫又は硫化される。対照的に、3D(インクジェット)印刷などの付加製造プロセスでは、加硫ポリマーは、適切なモノマー及び/又は低分子量(例えば、1,000グラム/モル未満又は500グラム/モル未満)架橋剤及びオリゴマーから一段階で生産される。したがって、そのようなプロセスで得られたゴム様材料の分子量、架橋密度及び機械的特性を制御することは困難である。したがって、例えば、PolyJet(登録商標)ゴム様材料は、例えば従来のエラストマーと比較した場合、低い引裂抵抗(TR)値及び/又は変形後の遅い戻り速度を特徴とすることが多い。高い伸びを示すPolyJet(登録商標)ゴム様材料は、低い弾性率、低い引裂抵抗及び/又は低いTg及びタック性を特徴とすることが多い。
【0069】
本発明者らは、付加製造(例えば、本明細書に記載のAMプロセス要件を満たす特徴特性)での使用に適しており、硬化したときにゴム様材料を提供する新規な配合物を設計し、首尾よく実施した。新規な配合物は、水素結合形成に関与することもできるエラストマー加硫性材料と共に、複数の水素結合を形成することができる加硫性材料を含む。以下の実施例セクションで実証されるように、本発明者らは、そのような配合物を使用して、改善された伸び、弾性率及び引裂抵抗を同時に特徴とするゴム様材料を得ることができることを示した。
【0070】
ここで図面を参照すると、図1A図1D図2A図2C図3A図3B図4及び図5A図5Dは、本発明のいくつかの実施形態による例示的なシステム及び構造の概略図を示す。図6は、例示的な加硫性材料、メタクリルアミドが配合物に含まれる場合の水素結合によってもたらされる物理的架橋の概略図を示す。図7A図7Bは、市販のシリカ粒子含有配合物を使用して形成された物体と比較して、本発明のいくつかの実施形態による例示的な配合物を使用して形成された改善された物体を示す写真である。以下の実施例セクションの表1は、本実施形態による例示的な配合物の3Dインクジェット印刷で得られたゴム様材料の改善された機械的特性をさらに示す。
【0071】
本明細書全体を通して、「ゴム」、「ゴム質材料」、「エラストマー材料」及び「エラストマー」という語句は、エラストマーの特性を特徴とする材料を説明するために交換可能に使用される。「ゴム質様材料」又は「ゴム様材料」という語句は、熱可塑性ポリマーの硫化を伴う従来のプロセスではなく、付加製造(例えば、3Dインクジェット印刷)によって調製された、ゴムの特性を特徴とする材料を説明するために使用される。これらの用語は、本明細書に記載の配合物の硬化又は固化時に得られる材料を説明するために使用される。
【0072】
「ゴム質様材料」という用語は、本明細書では互換的に「エラストマー材料」とも呼ばれる。
【0073】
エラストマー又はゴムは、典型的には低いTg(例えば、室温未満、好ましくは10℃未満、0℃未満、さらには-10℃未満)を特徴とする柔軟な材料である。
【0074】
以下に、本明細書及び当技術分野で使用されるゴム質材料を特徴づける特性のいくつかを記載する。
【0075】
ショアA硬度は、ショア硬度又は単に硬度とも呼ばれ、タイプAデュロメータスケールによって定義される永久インデンテーションに対する材料の耐性を表す。ショア硬度は、通常、ASTM D2240に従って決定される。
【0076】
弾性率は、弾性係数又はヤング率、又は引張係数、又は「E」とも呼ばれ、力が加えられたときの弾性変形に対する材料の抵抗を表し、言い換えれば、反対の力が軸に沿って加えられたときにその軸に沿って変形する物体の傾向を表す。弾性率は、典型的には、引張試験(例えば、ASTM D 624による)によって測定され、弾性変形領域における応力-歪み曲線の線形勾配によって決定され、応力は、力が加えられる面積で除算された変形を引き起こす力であり、歪みは、長さパラメータの元の値に対する変形によって引き起こされるいくつかの長さパラメータの変化の比である。応力は材料に対する引張力に比例し、歪みはその長さに比例する。
【0077】
引張強度は、引張に対する材料の耐性、すなわち、伸長する傾向がある荷重に耐える材料の能力を表し、破断前のエラストマー複合材の延伸中に加えられる最大応力(MPa)として定義される。引張強度は、典型的には、引張試験(例えば、ASTM D 624による)によって測定され、本明細書及び当技術分野に記載されるように、応力-歪み曲線の最高点として決定される。
【0078】
伸びは、以下のように元の長さのパーセントとして表される、材料の均一な断面の伸長である。
【0079】
最終長さ-元の長さ
伸び%=-----------×100
元の長さ
【0080】
伸びは、典型的には、ASTM D412に従って決定される。
【0081】
Z引張伸びは、Z方向に印刷したときに本明細書に記載のように測定される伸びである。
【0082】
引裂抵抗(TR)は、本明細書においてもまた当該技術分野において「引裂強度」とも呼ばれ、材料を引き裂くのに必要な最大力を表し、N/mm又はKg/cmで表され、それによって力はサンプルの長軸に実質的に平行に作用する。引裂抵抗は、ASTM D 412法によって測定することができる。ASTM D 624を使用して、引裂の形成(引裂開始)に対する抵抗及び引裂の拡張(引裂伝播)に対する抵抗を測定することができる。典型的には、サンプルは2つのホルダ間に保持され、変形が生じるまで均一な引き力が加えられる。次いで、引裂抵抗は、加えられた力を材料の厚さで割ることによって計算される。引裂抵抗が低い材料は、耐摩耗性が低い傾向がある。
【0083】
一定の伸びの下での引裂抵抗は、一定の伸び(破断伸び未満)に供したときに試験片が引裂するのに必要な時間を表す。この値は、例えば、国際公開第2017/208238号に記載されているような「Oリング」試験で決定される。
【0084】
本発明の実施形態は、ゴム質様材料で作られた三次元(3D)物体又はその部分(一部)の付加製造に使用可能な配合物、それを利用する付加製造プロセス、及びこれらのプロセスによって組み立てられた物体に関する。
【0085】
本明細書全体を通して、「物体」という用語は、付加製造の最終製品を表す。この用語は、支持材料がビルディング材料の部分として使用されている場合、支持材料の除去後に、本明細書に記載の方法によって得られる製品を指す。したがって、「物体」は、本質的に(少なくとも95重量パーセント)、硬化した(例えば、加硫した)モデリング材料からなる。
【0086】
本明細書全体を通して使用される「物体」という用語は、物体全体又はその部分を指す。
【0087】
本実施形態に係る物体は、その少なくとも部分又は一部がゴム質様材料で作製されたものであり、本明細書において「ゴム質様材料で作製された物体」ともいう。物体は、そのいくつかの部分又は一部がゴム質様材料で作製されていてもよく、又は全体がゴム質様材料で作製されていてもよい。ゴム質様材料は、異なる部分又は一部において同じであっても異なっていてもよく、ゴム質様材料で作製された各部分、一部又は物体全体について、ゴム質様材料は、部分、一部又は物体内で同じであっても異なっていてもよい。異なるゴム質様材料が使用される場合、それらは、以下でさらに説明されるように、それらの化学組成及び/又は機械的特性が異なり得る。
【0088】
本明細書全体を通して、語句「ビルディング材料配合物」、「未加硫ビルディング材料」、「未加硫ビルディング材料配合物」、「ビルディング材料」及び他の変形は、したがって、本明細書に記載されるように、層を順次形成するために分配される材料を集合的に説明する。この語句は、物体を形成するように分配された未加硫材料、すなわち、1又は複数の未加硫モデリング材料配合物、及び支持体を形成するように分配された未加硫材料、すなわち、未加硫の支持材料配合物を包含する。
【0089】
本明細書全体を通して、「加硫モデリング材料」又は「硬化モデリング材料」という語句は、本明細書で定義されるように、分配されたビルディング材料を加硫に曝露したとき、及び任意に、支持材料が分配された場合に本明細書に記載されるように加硫した支持材料の除去時にも、物体を形成するビルディング材料の部分を表す。加硫モデリング材料は、本明細書に記載の方法で使用されるモデリング材料配合物に応じて、単一の加硫材料又は2つ以上の加硫材料の混合物であり得る。
【0090】
「加硫モデリング材料」又は「加硫モデリング材料配合物」という語句は、ビルディング材料がモデリング材料配合物のみから構成される(支持材料配合物で構成されない)加硫ビルディング材料と見なすことができる。すなわち、この語句は、最終物体を提供するために使用されるビルディング材料の一部を指す。
【0091】
本明細書全体を通して、本明細書で互換的に「モデリング配合物」、「モデル配合物」、「モデル材料配合物」又は単に「配合物」とも呼ばれる「モデリング材料配合物」という語句は、本明細書に記載されるように物体を形成するように分配されるビルディング材料の部分又は全部を表す。モデリング材料配合物は、(特に明記しない限り)未加硫のモデリング配合物であり、加硫エネルギーにさらされると、物体又はその部分を形成する。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態では、モデリング材料配合物は、三次元インクジェット印刷で使用するために配合され、それ自体で、すなわち、任意の他の物質と混合又は組み合わせる必要なく、三次元物体を形成することができる。
【0093】
未加硫のビルディング材料は、1又は複数のモデリング配合物を含むことができ、加硫時に物体の異なる部分が異なる加硫モデリング配合物又はそれらの異なる組み合わせで作られ、したがって異なる加硫モデリング材料又は加硫モデリング材料の異なる混合物で作られるように分配することができる。
【0094】
ビルディング材料を形成する配合物(モデリング材料配合物及び支持材料配合物)は、加硫エネルギーに曝露されると硬化(加硫)材料を形成する1又は複数の加硫性材料を含む。
【0095】
ビルディング材料を形成する配合物(モデリング材料配合物及び支持材料配合物)は、本明細書中で加硫性配合物(例えば、加硫性モデリング材料配合物又は加硫性支持材料配合物)とも称される。
【0096】
本明細書全体を通して、「加硫性材料」は、本明細書に記載の加硫条件(例えば、加硫エネルギー)に曝露されると、固化又は硬化して加硫材料を形成する化合物(典型的にはモノマー又はオリゴマー化合物、さらに任意にポリマー材料)である。加硫性材料は、典型的には、適切なエネルギー源に曝露されると重合及び/又は架橋を受ける重合性材料である。
【0097】
本実施形態による加硫性材料は、加硫エネルギーに曝露されることなく、むしろ別の加硫条件(例えば、化学試薬への曝露時、又は単に環境への曝露時)に曝露されることなく、硬化又は固化(加硫)する材料も包含する。
【0098】
本明細書で使用される「加硫性」及び「固化可能」という用語は交換可能である。
【0099】
重合は、例えば、フリーラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合であってもよく、それぞれ、本明細書に記載されるように、例えば、放射線、熱などの加硫エネルギーに曝露されると誘導され得る。
【0100】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性材料は、本明細書に記載されるように、放射線への曝露時に重合及び/又は架橋を受ける光重合性材料であり、いくつかの実施形態では、加硫性材料は、本明細書に記載されるように、UV放射線への曝露時に重合及び/又は架橋を受けるUV加硫性材料である。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の加硫性材料は、光誘導性フリーラジカル重合を介して重合する光重合性材料である。あるいは、加硫性材料は、光誘導性カチオン重合を介して重合する光重合性材料である。
【0102】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性材料は、モノマー、オリゴマー又は短鎖ポリマーであり得、それぞれ本明細書に記載されるように重合性及び/又は架橋性である。
【0103】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性材料が加硫エネルギー(例えば、放射線)に曝されると、鎖伸長及び架橋のいずれか1つ又は組み合わせによって硬化(加硫)する。
【0104】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性材料は、重合反応が起こる加硫エネルギーに曝露されたときに、重合反応の際にポリマー材料を形成することができるモノマー又はモノマーの混合物である。このような加硫性材料は、本明細書ではモノマー加硫性材料とも呼ばれる。
【0105】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性材料は、重合反応が起こる加硫エネルギーに曝露されたときに、重合反応の際にポリマー材料を形成することができるオリゴマー又はオリゴマーの混合物である。このような加硫性材料は、本明細書ではオリゴマー加硫性材料とも呼ばれる。
【0106】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性材料は、モノマーであろうとオリゴマーであろうと、単官能性加硫性材料又は多官能性加硫性材料であり得る。
【0107】
ここで、単官能性加硫性材料は、加硫エネルギー(例えば、放射線)に曝露されたときに重合を受けることができる1つの官能基を含む。
【0108】
多官能性加硫性材料は、加硫エネルギーに曝露されたときに重合を受けることができる2つ以上、例えば2、3、4又はそれ以上の官能基を含む。多官能性加硫性材料は、例えば、重合を受けることができる2、3又は4個の基をそれぞれ含む二官能性、三官能性又は四官能性の加硫性材料であり得る(本明細書では、2、3、又は4などの官能価を特徴とするとも呼ばれる)。多官能性加硫性材料中の2つ以上の官能基は、典型的には、本明細書で定義される連結部分によって互いに連結される。連結部分がオリゴマー又はポリマー部分である場合、多官能基はオリゴマー又はポリマー多官能性加硫性材料である。多官能性加硫性材料は、加硫エネルギーに供されると重合を受け、及び/又は架橋剤として作用することができる。
【0109】
本実施形態の方法は、本明細書に記載されるように、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を形成することによって、層ごとに三次元物体を製造する。
【0110】
最終的な三次元物体は、モデリング材料、又はモデリング材料の組み合わせ、又はモデリング材料と支持材料の組み合わせ、又はそれらの改変(例えば、加硫後)で作られる。これらの操作はすべて、固体自由組立の当業者に周知である。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載のエラストマー(ゴム質様)材料で作られた三次元物体の付加製造方法が提供される。
【0112】
本方法は、一般に、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を順次形成することによって達成又は実施され、その結果、少なくともいくつかの前記層の各々又は前記層の各々の形成は、1又は複数のモデリング材料配合物を含むビルディング材料(未加硫)を分配することと、分配されたモデリング材料を加硫エネルギーに曝露し、それにより、以下でさらに詳細に説明するように加硫モデリング材料を形成することとを含む。
【0113】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、物体は、2つ以上の異なるモデリング材料配合物を含むビルディング材料(未加硫)を分配することによって製造され、各モデリング材料配合物は、インクジェット印刷装置の異なるノズルアレイからのものである。モデリング材料配合物は、任意に、好ましくは、印刷ヘッドの同じパス中に層状に堆積される。層内のモデリング材料配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の所望の特性に従って選択され、以下にさらに詳細に記載される。
【0114】
本明細書及び当技術分野で使用される「デジタル材料」という語句は、特定の材料の印刷されたゾーンが数ボクセルのレベル又はボクセルブロックのレベルにあるように、顕微鏡スケール又はボクセルレベルでの2つ以上の材料の組み合わせを説明する。そのようなデジタル材料は、材料の種類の選択並びに/又は2つ以上の材料の比及び相対空間分布によって影響を受ける新しい特性を示し得る。
【0115】
例示的なデジタル材料では、加硫時に得られる各ボクセル又はボクセルブロックのモデリング材料は、加硫時に得られる隣接するボクセル又はボクセルブロックのモデリング材料とは無関係であり、その結果、各ボクセル又はボクセルブロックは異なるモデル材料をもたらすことができ、部分全体の新しい特性は、ボクセルレベルで、いくつかの異なるモデル材料の空間的組み合わせの結果である。
【0116】
本明細書全体を通して、「ボクセルレベルで」という表現が異なる材料及び/又は特性の文脈で使用される場合は常に、ボクセルブロック間の差、並びにボクセル又は数ボクセルの群間の差を含むことを意味する。好ましい実施形態では、部分全体の特性は、いくつかの異なるモデル材料のボクセルブロックレベルでの空間的組み合わせの結果である。
【0117】
加硫性エラストマー配合物:
【0118】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、硬化したときに(例えば、本明細書で定義される加硫エネルギーなどの加硫条件に曝露されると)、本明細書中で定義されるようなエラストマー材料を提供する、本明細書中で定義されるような加硫性配合物が提供される。このような配合物は、本明細書では加硫性エラストマー配合物とも呼ばれる。本発明のいくつかの実施形態によれば、加硫性エラストマー配合物は、本明細書中で定義されるようなエラストマー材料(ゴム様材料)をその少なくとも一部に含む三次元物体の付加製造のためのモデリング材料配合物として使用可能である。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態によれば、加硫性エラストマー配合物は、硬化したときに、以下の特徴の1又は複数を特性とすることを特徴とする。
【0120】
少なくとも4Kg/cm又は少なくとも4.5Kg/cm、例えば4Kg/cm~8Kg/cm、又は4Kg/cm~7.5Kg/cm、又は4.5Kg/cm~8Kg/cm、又は4.5Kg/cm~7.5Kg/cm(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の引裂抵抗;
少なくとも2MPa、又は少なくとも2.5MPa、例えば2MPa~6MPa、又は2MPa~5MPa、又は2MPa~3MPa、又は2MPa~4MPa、又は3MPa~5MPa(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の引張強度;
少なくとも300%、又は少なくとも350%、例えば300%~500%、又は300%~450%、又は300%~400%、又は350%~500%、又は350%~450%、又は350%~400%(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の破断伸び;
少なくとも30、又は少なくとも40、例えば30~50、又は30~40、又は35~50、又は40~50、又は35~45(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)のショアA硬度;
本明細書に記載されるように、15℃以下、又は10℃以下、又は5℃以下、若しくは0℃以下のTg(例えば、平均Tg)、又は、実施されるAMシステムの温度の少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、若しくは少なくとも20℃低いTg。
【0121】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性エラストマー配合物は、上記特徴の1つ、2つ、3つ、4つ又はすべてを特徴とする。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態によれば、加硫性エラストマー配合物は次のように特徴づけられる。
硬化したときに、
少なくとも4Kg/cm又は少なくとも4.5Kg/cm、例えば4Kg/cm~8Kg/cm、又は4Kg/cm~7.5Kg/cm、又は4.5Kg/cm~8Kg/cm、又は4.5Kg/cm~7.5Kg/cm(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の引裂抵抗;及び
少なくとも300%、又は少なくとも350%、又はさらには少なくとも400%、例えば300%~500%、又は300%~450%、又は300%~400%、又は350%~500%、又は350%~450%、又は350%~400%(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の破断伸び。
【0123】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、本発明の実施形態のエラストマー加硫性配合物は、下記の実施例のセクションにおいて記載されるような良好な印刷性及び安定性によって、また、付加製造において使用されるとき、最小限の変形、カーリング及び/又は体積収縮を特徴とする物体を提供することによってさらに特徴づけられる。
【0124】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、加硫条件(電磁加硫エネルギー)としての照射への曝露時、いくつかの実施形態では、UV-vis範囲での照射への曝露時、及びこれらの実施形態のいくつかでは、LED源からのUV照射への曝露時に、硬化したときに上記特性の1又は複数を特徴とする。
【0125】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、40℃以下又は35℃以下の温度での加硫条件(電磁加硫エネルギー)としての照射への曝露時、硬化したときに上記特性の1又は複数を特徴とする。これらの実施形態のいくつかにおいて、照射は、LED源からのUV照射である。
【0126】
本明細書で説明するように、加硫条件として照射のためのLED源を使用するAMシステムでは、環境温度は典型的に低く、すなわち約30℃~40℃、又は30℃~35℃である。このような比較的低い温度は、硬化プロセス中に環境と分配層の表面との間に高い温度差をもたらし、これは、特に照射への曝露中に高度の共有結合架橋が行われる場合に、形成された物体の変形をもたらし得る。
【0127】
本明細書中に記載されるように、本明細書中に記載されるような配合物は、共有結合性架橋の程度を低下させ、共有結合性架橋結合の少なくともいくつかを水素結合による架橋によって置き換えることによってこの問題を回避し、それにより、硬化中の蓄積された応力を低下させ、その結果、得られた硬化したエラストマー材料の機械的特性を損なうことなく、さらには改善することなく、変形、カール及び/又は収縮を低下させる。したがって、本明細書に記載の配合物は、本明細書に記載のように環境温度が比較的低い場合(例えば、LED光源が照射に使用される場合)にも首尾よく実施することができる。本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、加硫性エラストマー配合物は、本明細書中に記載されるような1又は複数のエラストマー加硫性材料と、硬化したときに、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書中に記載されるような水素結合を介した架橋をもたらす加硫性材料とを含む。硬化したときに水素結合を介して架橋する加硫性材料は、本明細書では水素結合形成加硫性材料又は成分Eとも呼ばれる。本明細書に記載の実施形態のいずれかのいくつかでは、そのような加硫性材料は、本明細書に記載の少なくとも2つの水素結合形成基を含む。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、加硫性エラストマー材料(複数可)は、1又は複数の加硫性単官能性エラストマー材料(複数可)(本明細書では成分Bとも呼ばれる)、1又は複数の加硫性多官能性エラストマー材料(複数可)(本明細書では成分Cとも呼ばれる)又はそれらの組み合わせを含む。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、加硫性エラストマー材料(複数可)は、1又は複数の加硫性単官能性エラストマー材料(複数可)(本明細書では成分Bとも呼ばれる)及び1又は複数の加硫性多官能性エラストマー材料(複数可)(本明細書では成分Cとも呼ばれる)を含む。
【0130】
水素結合形成加硫性材料(成分E):
【0131】
本明細書で使用され、当技術分野で知られているように、「水素結合」は、強い電気陰性原子に結合した水素原子が他の電気陰性原子の近傍に孤立電子対と共に存在するときに生じる一種の双極子-双極子引力を形成する非共有結合である。
【0132】
水素結合中の水素原子は、2つの比較的電気陰性の原子間で部分的に共有される。
【0133】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水素結合を介して架橋をもたらす加硫性材料は、少なくとも1つの水素結合形成基を含む。
【0134】
「水素結合形成基」という語句は、本明細書で使用される場合、水素結合供与体及び/又は水素結合受容体であることによって水素結合を形成することができる部分又は基又は原子を表す。特定の基は、水素結合供与体及び水素結合受容体の両方を含むことができ、したがって架橋をもたらすか又は確立することができる。
【0135】
本明細書で水素結合形成供与基とも呼ばれる水素結合供与体は、水素がより緊密に結合している原子と水素原子自体の両方を含む基であるが、本明細書で水素結合形成受容基とも呼ばれる水素結合受容体は、別の基の水素原子に結合することができる電気陰性原子である。水素原子が共有結合している比較的電気陰性の原子は、電子密度を水素原子から引き離して、部分正電荷(δ)を発生させる。したがって、部分負電荷(δ)を有する原子と静電相互作用を介して相互作用することができる。
【0136】
供与体及び受容体の両方として水素結合相互作用に典型的に関与する原子には、酸素、窒素及びフッ素が含まれる。これらの原子は、典型的には、例えば、カルボニル、カルボキシレート、アミド、ヒドロキシル、アミン、イミン、カルバメート、アルキルフルオリド、Fなどの化学基又は部分の一部を形成する。しかしながら、他の電気陰性原子及びそれを含有する化学基又は部分は、水素結合に関与し得る。
【0137】
例示的な水素結合形成基には、アミド、カルボキシレート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、エーテル、アミン、カルバメート、ヒドラジン、窒素含有ヘテロ脂環式(例えば、ピペリジン、オキサリジン)、ニトリル及び酸素含有ヘテロ脂環式(例えば、テトラヒドロフラン、モルホリン)、並びに1又は複数の窒素及び/又は酸素原子を含む任意の他の化学的部分が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、好ましい材料は、例えば、水素供与基及び/又は水素受容基のうちの2つを含む1又は複数の水素結合形成基を特徴とすることによって、少なくとも2つの水素結合を形成することができるようなものである。
【0139】
いくつかの実施形態では、水素結合形成加硫性材料は、アミド基及びカルバメート基から選択される1又は複数の水素結合形成基を含み、それぞれが水素供与基(-NH-)及び水素受容基又は原子(=O)を特徴とする。
【0140】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、好ましい材料は、アミン基(例えば、アミド又はカルバメートの一部を形成するアミン)である少なくとも1つの水素結合形成供与基を特徴とするようなものである。
【0141】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、好ましい材料は、少なくとも1つの水素結合形成供与基及び少なくとも1つの水素結合形成受容基を特徴とするようなものである。好ましくは、供与基(複数可)及び受容基(複数可)の各々は、2個以下の原子、又は1個以下の原子によって互いに分離されている。例示的なそのような水素結合形成基は、非置換であるか、又は水素結合形成基を含まない基で置換されたアミドである。
【0142】
いくつかの実施形態では、水素結合形成加硫性材料は、水素結合形成基の数とその分子量との比が0.02よりも高く、例えば、0.025、0.030、0.035など、例えば、0.02~0.05、又は0.03~0.05、又は0.04~0.05、0.03~0.04である。
【0143】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、水素結合形成加硫性材料は、1又は複数のアミド基を含み、いくつかの実施形態では、それは、(メタ)アクリルアミド(アクリルアミド及びメタクリルアミドを包含する)、好ましくはメタクリルアミドである。メタクリルアミドは、反応性が低い(アクリルアミドと比較して重合速度が低い)ために好ましい。
【0144】
(メタ)アクリルアミドは、好ましくは非置換である。置換される場合、置換基は、好ましくは水素結合を形成することができない、すなわち、本明細書で定義される水素結合形成基を含まない。
【0145】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水素結合を介して架橋をもたらす加硫性材料(成分E)の濃度は、配合物の総重量の1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~10重量%、又は1重量%~5重量%、又は1重量%~3重量%、又は1重量%~2重量%、又は1.5重量%~2重量%の範囲内である(これらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む)。
【0146】
いくつかの実施形態によれば、非置換であるか、又は水素結合を形成することができない(すなわち、水素結合形成基を含有しない)置換基によって置換されている、(メタ)アクリルアミドである材料は、配合物の総重量の1%~5%、又は1%~3%、又は1%~2%、又は1.5%~2%の量である。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、水素結合を形成することができる(すなわち、水素結合形成基を含有する)置換基で置換された(メタ)アクリルアミドである材料は、配合物の総重量の5%~20%又は10%~20%の量である。
【0148】
エラストマー加硫性材料(成分B及びC):
【0149】
本明細書に記載の方法で使用可能なモデリング材料配合物の1又は複数は、エラストマー加硫性材料を含む。
【0150】
語句「エラストマー加硫性材料」は、加硫エネルギーに曝露されると、本明細書に記載される及び/又は当技術分野で公知のエラストマー(ゴム、又はゴム様材料)の特性を特徴とする加硫材料を提供する、本明細書に定義される加硫性材料を記載する。
【0151】
エラストマー加硫性材料は、典型的には、重合及び/又は架橋材料に弾性を付与する部分に連結された、適切な加硫エネルギーに曝露されると重合を受ける1又は複数の重合性(加硫性)基を含む。そのような部分は、典型的には、アルキル、アルキレン鎖、炭化水素、アルキレングリコール基又は鎖(例えば、本明細書で定義されるオリゴ又はポリ(アルキレングリコール)、本明細書で定義されるウレタン、オリゴウレタン又はポリウレタン部分などを含み(前述のものの任意の組み合わせを含む)、本明細書では「エラストマー部分」とも呼ばれる。
【0152】
エラストマー加硫性材料は、典型的には、硬化したときに、5℃未満、又は0℃未満、又は-5℃未満、例えば-50℃~10℃、又は-50℃~0℃、又は-50℃~-5℃のTgを提供するようなものである(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態によるエラストマー単官能性加硫性材料は、式Iによって表されるビニル含有化合物であることができ:
【化1】

式中、R及びRの少なくとも1つは、本明細書に記載されるように、エラストマー部分であり、及び/又は含む。
【0154】
式I中の(=CH)基は重合性基を表し、いくつかの実施形態によれば、エラストマー加硫性材料がUV加硫性材料であるような、UV加硫性基である。
【0155】
例えば、Rは、本明細書で定義されるエラストマー部分であるか、又はそれを含み、Rは、加硫材料のエラストマー特性を妨げない限り、例えば、水素、C(1-4)アルキル、C(1-4)アルコキシ、又は任意の他の置換基である。
【0156】
いくつかの実施形態では、Rは、カルボキシレートであり、化合物は、単官能性アクリレートモノマーである。これらの実施形態のいくつかでは、Rはメチルであり、化合物は単官能性メタクリレートモノマーである。RがカルボキシレートでありRが水素又はメチルである加硫性材料は、本明細書では集合的に「(メタ)アクリレート」と呼ばれる。
【0157】
これらの実施形態のいずれかのいくつかでは、カルボキシレート基-C(=O)-ORaは、本明細書に記載のエラストマー部分であるRaを含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、Rはアミドであり、化合物は単官能性アクリルアミドモノマーである。これらの実施形態のいくつかでは、Rはメチルであり、化合物は単官能性メタクリルアミドモノマーである。RがアミドでありRが水素又はメチルである加硫性材料は、本明細書では集合的に「(メタ)アクリルアミド」と呼ばれる。
【0159】
(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドは、本明細書では集合的に(メタ)アクリル材料と呼ばれる。
【0160】
いくつかの実施形態では、Rは環状アミドであり、いくつかの実施形態では、それはラクタムなどの環状アミドであり、化合物はビニルラクタムである。いくつかの実施形態では、Rは、ラクトンなどの環状カルボキシレートであり、化合物は、ビニルラクトンである。
【0161】
及びRの一方又は両方がポリマー又はオリゴマー部分を含む場合、式Iの単官能性加硫性化合物は、例示的なポリマー又はオリゴマーの単官能性加硫性材料である。そうでなければ、それは例示的なモノマー単官能性加硫性材料である。
【0162】
多官能性エラストマー材料において、2つ以上の重合性基は、本明細書中に記載されるように、エラストマー部分を介して互いに連結される。
【0163】
いくつかの実施形態では、多官能性エラストマー材料は、本明細書に記載されるような式Iによって表すことができ、式中、Rは、本明細書に記載されるような重合性基によって終結するエラストマー材料を含む。
【0164】
例えば、二官能性エラストマー加硫性材料は、式I*によって表すことができ:
【化2】

式中、Eは、本明細書に記載のエラストマー連結部分であり、R’は、Rについて本明細書で定義される通りである。
【0165】
別の例では、三官能性エラストマー加硫性材料は、式IIによって表すことができ:
【化3】

式中、Eは、本明細書に記載のエラストマー連結部分であり、R’及びR”は、それぞれ独立して、Rについて本明細書で定義される通りである。
【0166】
いくつかの実施形態では、多官能性(例えば、二官能性、三官能性又はそれよりも高い)エラストマー加硫性材料は、集合的に式IIIによって表すことができ:
【化4】

式中、
及びR’は本明細書で定義される通りであり;
Bは、(Xの性質に依存して)本明細書中で定義されるような二官能性又は三官能性の分岐単位であり;
及びXは、それぞれ独立して、存在しないか、本明細書に記載のエラストマー部分であるか、又はアルキル、炭化水素、アルキレン鎖、シクロアルキル、アリール、アルキレングリコール、ウレタン部分、及びそれらの任意の組み合わせから選択され;及び
は、存在しないか、又はアルキル、炭化水素、アルキレン鎖、シクロアルキル、アリール、アルキレングリコール、ウレタン部分、及びエラストマー部分から選択され、各々がメタ(アクリレート)部分(O-C(=O)CR”=CH)で任意に置換されており(例えば、末端化)、及びそれらの任意の組み合わせであり、あるいは、Xは以下であり:
【化5】

式中、
曲線はアタッチメントポイントを表し;
B’は、分岐単位であり、Bと同じであるか、又はBとは異なり;
X’及びX’は、それぞれ独立して、X及びXについて本明細書で定義される通りであり;及び
R”及びR”’は、R及びR’について本明細書で定義される通りである。
【0167】
ただし、X、X及びXの少なくとも1つは、本明細書に記載のエラストマー部分であるか、又はそれを含むものとする。
【0168】
本明細書で使用される「分岐単位」という用語は、マルチラジカル、好ましくは脂肪族又は脂環式基を表す。「マルチラジカル」とは、連結部分が2つ以上の原子及び/又は基又は部分間を連結するように2つ以上の結合点を有することを意味する。
【0169】
すなわち、分岐単位は、物質の単一の位置、基又は原子に結合すると、この単一の位置、基又は原子に連結された2つ以上の官能基を生成し、したがって単一の官能価を2つ以上の官能価に「分岐する」化学的部分である。
【0170】
いくつかの実施形態では、分岐単位は、2個、3個又はそれを超える官能基を有する化学部分に由来する。いくつかの実施形態では、分岐単位は、本明細書に記載の分岐アルキル又は分岐連結部分である。
【0171】
4つ以上の重合性基を特徴とする多官能性エラストマー加硫性材料も企図され、式IIIに示されるものと同様であるが、例えば、より高い分岐を有する分岐単位Bを含むか、若しくは本明細書で定義される2つの(メタ)アクリレート部分を特徴とするX部分を含む構造、又は、式IIに示されるものと同様であるが、例えばエラストマー部分に結合した別の(メタ)アクリレート部分を含む構造を特徴とすることができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、エラストマー部分、例えば式IのRa又は式I*、II及びIIIのEとして示される部分は、直鎖又は分岐であることができて好ましくは3個以上又は4個以上の炭素原子であるアルキル;好ましくは3個以上又は4個以上の炭素原子の長さのアルキレン鎖;本明細書で定義されるアルキレングリコール、本明細書で定義されるオリゴ(アルキレングリコール)又はポリ(アルキレングリコール)(好ましくは4個以上の原子長である)、本明細書で定義されるウレタン、オリゴウレタン又はポリウレタン(好ましくは4個以上の炭素原子長である)、及びこれらの任意の組み合わせであるか、又はそれらを含む。
【0173】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、エラストマー加硫性材料は、本明細書中に記載されるような(メタ)アクリル加硫性材料であり、いくつかの実施形態では、それは、アクリレート又はメタクリレートである。
【0174】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、エラストマー加硫性材料は、単官能性エラストマー加硫性材料であるか、又はそれを含み、いくつかの実施形態では、単官能性エラストマー加硫性材料は、式Iによって表され、式中、Rは-C(=O)-ORaであり、Raは、ウレタン、オリゴウレタン若しくはポリウレタンであるか、又はそれを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、エラストマー加硫性材料は、多官能性エラストマー加硫性材料であるか、又はそれを含み、いくつかの実施形態では、多官能性エラストマー加硫性材料は、式I*によって表され、式中、Eは、ウレタン、オリゴウレタン若しくはポリウレタンであるか、又はそれを含む。
【0176】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、エラストマー加硫性材料は、例えば、式I、I*、II又はIIIのエラストマーのアクリレート又はメタクリレート(アクリル又はメタクリルエラストマーとも称される)であり、いくつかの実施形態では、アクリレート又はメタクリレートは、硬化したときにポリマー材料が0℃未満又は-10℃未満のTgを特徴とするように選択される。
【0177】
例示的なエラストマーアクリレート及びメタクリレート加硫性材料としては、2-プロペン酸、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルエステル(例示的なウレタンアクリレート)、並びにSR335(ラウリルアクリレート)及びSR395(イソデシルアクリレート)(Sartomer製)の商品名で市販されている化合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、SR350D(三官能性トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、SR256(2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、SR252(ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート)、SR561(アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート)(Sartomer製)の商品名で市販されている化合物が挙げられる。
【0178】
例えば、式I、I*、II又はIIIに示されるような1又は複数のアクリレート又はメタクリレート基の代わりに1又は複数のアクリルアミド基を特徴とする他のアクリル材料も企図されることに留意されたい。
【0179】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性エラストマー材料の少なくとも1つは、水素結合を形成することができ、すなわち、本明細書中で定義及び記載されるような、1又は複数の、好ましくは複数の、水素結合形成基を特徴とする。例示的な実施形態によれば、水素結合を形成することができる加硫性エラストマー材料は、少なくとも1個、例えば1個~20個のカルバメート基を含む。例示的なそのような材料は、ウレタン、オリゴウレタン又はポリウレタン、例えばウレタン(メタ)アクリレートを含む材料である。
【0180】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、エラストマー加硫性材料の少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%が、本明細書中に記載されるような水素結合を形成することができる加硫性材料を含む。
【0181】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性多官能性エラストマー材料は、(成分Cとして)多官能性ウレタンアクリレートを含む。
【0182】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性単官能性エラストマー材料は、(成分Bとして)単官能性ウレタンアクリレートを含む。
【0183】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、エラストマー加硫性材料は、1又は複数の単官能性エラストマー加硫性材料(例えば式Iで表されるような、例えば単官能性エラストマーアクリレート)及び1又は複数の多官能性(例えば、二官能性)エラストマー加硫性材料(例えば、式I*、II又はIIIで表されるような、例えば二官能性エラストマーアクリレート)を、本明細書中に記載されるようなそれぞれの実施形態のいずれかにおいて含む。
【0184】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、エラストマー加硫性材料は、1又は複数の単官能性ウレタン(メタ)アクリレート及び1又は複数の多官能性(例えば、二官能性)ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0185】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、1又は複数の単官能性ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族単官能性ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0186】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、1又は複数の多官能性ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族多官能性ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0187】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、1又は複数の多官能性ウレタン(メタ)アクリレートは、二官能性ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0188】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、1又は複数の多官能性ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族二官能性ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0189】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、エラストマー加硫性材料(複数可)の総量は、エラストマー加硫性材料を含むモデリング材料配合物(複数可)の総重量の少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%であり、最大70重量%、又はさらには80重量%であり得る。
【0190】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、エラストマー加硫性材料(複数可)の総量は、エラストマー加硫性材料を含むモデリング材料配合物(複数可)の総重量の30重量%~80重量%、又は40重量%~80重量%、又は50重量%~80重量%、又は60重量%~80重量%、又は70重量%~80重量%の範囲内(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)である。
【0191】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性多官能性エラストマー材料の濃度は、配合物の総重量の20重量%以下又は15%重量%以下である。
【0192】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性多官能性エラストマー材料の濃度は、配合物の総重量の10重量%~20重量%、又は10重量%~15重量%の範囲内(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)である。
【0193】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性単官能性エラストマー材料の濃度は、配合物の総重量の40重量%~70重量%、又は50重量%~70重量%、又は55重量%~65重量%、又は60重量%~70重量%の範囲内(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)である。
【0194】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性単官能性エラストマー材料と加硫性多官能性エラストマー材料との重量比は、1:1~1:10、又は1:2~1:10、又は1:3~1:7、又は1:4~1:7、又は1:4~1:6の範囲内(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)である。
【0195】
追加の加硫性材料
【0196】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、エラストマー加硫性材料(成分B及びC)及び水素結合架橋をもたらす加硫性材料(成分E)に加えて、1又は複数の追加の加硫性材料をさらに含む。
【0197】
追加の加硫性材料は、1又は複数の単官能性加硫性材料(本明細書では成分Aとも呼ばれる)及び/又は1又は複数の多官能性加硫性材料(本明細書では成分Dとも呼ばれる)であり得る。
【0198】
追加の加硫性材料は、単官能性加硫性材料、多官能性加硫性材料、又はそれらの混合物であってもよく、各材料は、モノマー、オリゴマー若しくはポリマー、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0199】
好ましくは、必須ではないが、1又は複数の又は各々の追加の加硫性材料は、例えば、照射(例えば、UV-vis照射)への曝露時に加硫性エラストマー材料が重合可能であるのと同じ加硫エネルギーに曝露されたときに重合可能である。
【0200】
いくつかの実施形態では、追加の加硫性材料は、硬化したときに、重合した材料がエラストマー材料のTgより高いTg、例えば0℃より高い、又は5℃より高い、又は10℃より高いTgを特徴とするようなものである。いくつかの実施形態では、それは、50℃より高い、例えば50℃~150℃(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)のTgを特徴とする。
【0201】
本明細書全体を通して「Tg」は、E”曲線の極大の位置として定義されるガラス転移温度を指し、E”は温度の関数としての材料の損失弾性率である。
【0202】
大まかに言えば、Tg温度を含む温度範囲で昇温すると、材料、特に高分子材料の状態は、ガラス状態からゴム質状態に徐々に変化する。
【0203】
ここで、「Tg範囲」は、上で定義したTg温度において、E”値がその値の少なくとも半分である(例えば、その値までであり得る)温度範囲である。
【0204】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ポリマー材料の状態は、上記で定義したTg範囲内でガラス状態からゴム質に徐々に変化すると仮定される。本明細書では、「Tg」という用語は、本明細書で定義されるTg範囲内の任意の温度を指す。
【0205】
いくつかの実施形態では、追加の加硫性材料は、例えば、硬化したときに、エラストマー材料を表すものとは異なるTg及び/又は弾性率を特徴とする非エラストマー加硫性材料である。
【0206】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性配合物は、エラストマー加硫性材料及び水素結合架橋をもたらす加硫性材料に加えて、1又は複数の追加の単官能性(非エラストマー)加硫性材料をさらに含む。
【0207】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、追加の(非エラストマー)単官能性加硫性材料の総濃度は、配合物の総重量の15重量%~35重量%、又は15重量%~40重量%、又は15重量%~25重量%、又は20重量%~25重量%の範囲内である。
【0208】
いくつかの実施形態では、追加の加硫性材料は、単官能性アクリレート又はメタクリレート((メタ)アクリレート)を含む。非限定的な例としては、イソボルニルアクリレート(IBOA)、イソボルニルメタクリレート、アクリロイルモルホリン(ACMO)、Sartomer Company(USA)によって商品名SR-339で市販されているフェノキシエチルアクリレート、CN 131Bの名称で市販されているものなどのウレタンアクリレートオリゴマー、及びAM方法論で使用可能な任意の他のアクリレート及びメタクリレートが挙げられる。いくつかの実施形態では、加硫性非エラストマー単官能性材料(成分A)は、疎水性加硫性材料である。いくつかの実施形態では、加硫性非エラストマー単官能性材料(成分A)は、上記のTgを特徴とする疎水性加硫性材料である。
【0209】
本明細書に記載の「疎水性」加硫性材料は、水及びオクタノールについて測定した場合に、1より高い、好ましくはそれよりも高い、LogPを特徴とする材料を指す。
【0210】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、本配合物は、本明細書中で成分Dとも称される追加の多官能性(非エラストマー性)加硫性材料を含む。
【0211】
これらの実施形態のいくつかによれば、多官能性(非エラストマー)加硫性材料の総濃度は、配合物の総重量の10重量%未満、又は8重量%未満、又は5重量%未満、又は2重量%未満であり、いくつかの実施形態では、配合物の総重量の0.1重量%~1重量%の範囲内である。
【0212】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性(非エラストマー)加硫性材料は、本明細書中で成分D1とも称される1又は複数の二官能性(非エラストマー)加硫性材料、及び/又は、より高い官能価の1又は複数の多官能性(非エラストマー)加硫性材料、例えば、本明細書中で成分D2とも称される三官能性又は四官能性材料の1つを含む。
【0213】
これらの実施形態のいくつかによれば、二官能性(非エラストマー)加硫性材料(成分D1)の総濃度は、配合物の総重量の5重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下であり、より低く、さらにはゼロであり得、いくつかの実施形態では、配合物の総重量の0重量%~5重量%、又は0重量%~3重量%、又は0重量%~2重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本配合物は、二官能性非エラストマー加硫性材料を欠いている。
【0214】
これらの実施形態のいくつかによれば、より高い多官能性(非エラストマー)加硫性材料(成分D2)の総濃度は、配合物の総重量の0.1~2、又は0.1~1(重量基準)の範囲内であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0215】
これらの実施形態のいくつかによれば、多官能性(非エラストマー)加硫性材料成分D2は、アミン改変(メタ)アクリレート、例えば、商品名CN550でSartomerによって市販されているようなアミン改変ポリエーテル(メタ)アクリレートである。好ましくは、アミンは第三級アミンである。本発明者らは、このような化合物を微量に含むことにより、AM中の配合物の性能が実質的に改善されることを発見した。
【0216】
例示的な配合物:
【0217】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性配合物中のエラストマー加硫性材料の各々は、UV加硫性材料であり、いくつかの実施形態において、エラストマー(メタ)アクリレート、例えば、エラストマーアクリレートである。
【0218】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、配合物における追加の非エラストマー加硫性材料の各々は、UV加硫性アクリレート又はメタクリレートである。
【0219】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性エラストマー配合物は、本明細書中に記載されるような1又は複数の単官能性エラストマーアクリレート(成分B)、本明細書中に記載されるような1又は複数の多官能性エラストマーアクリレート(成分C)、メタクリルアミド(例示的な成分E)、本明細書中に記載されるような1又は複数の単官能性アクリレート又はメタクリレート(成分A)及び本明細書中に記載されるような1又は複数の多官能性アクリレート又はメタクリレート(成分D、好ましくは成分D2)を含む。
【0220】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、本明細書中に記載されるような1又は複数の単官能性エラストマーアクリレート(成分B)と成分Eとの重量比は、20:1~60:1又は30:1~50:1の範囲内であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0221】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性エラストマー配合物は、
配合物の総重量の約50重量%~約70重量%又は55重量%~65重量%の範囲内の総濃度での、本明細書に記載の1又は複数の単官能性エラストマーアクリレート(成分B)、好ましくは単官能性ウレタンアクリレート;
配合物の総重量の約10重量%~約15重量%の範囲内の総濃度での、本明細書に記載の1又は複数の多官能性エラストマーアクリレート(成分C)、好ましくは多官能性(例えば、二官能性及び/又は三官能性)ウレタンアクリレート;
配合物の総重量の1重量%~2重量%、又は1.5重量%~2重量%の範囲内の濃度のメタクリルアミド(例示的な成分Eとして);
配合物の総重量の約15重量%~約25重量%の範囲内の濃度での、本明細書中に記載されるような1又は複数の非エラストマー単官能性アクリレート又はメタクリレート(成分A);及び
配合物の総重量の約0.1重量%~1重量%の範囲内の総濃度での、本明細書中に記載されるような1又は複数の非エラストマー多官能性アクリレート又はメタクリレート(成分D)、好ましくは、1又は複数の高官能性(例えば、三官能性)アクリレート又はメタクリレート(成分D2)、例えば、アミン改変三官能性アクリレート又はメタクリレートを含む。
【0222】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、加硫性エラストマー配合物はシリカ粒子を欠いているか、又は配合物の総重量の3%以下、又は2%以下、又は1%以下の量のシリカパートシル(partciles)を含む。
【0223】
非加硫性成分:
【0224】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫性エラストマー配合物は、加硫性材料の重合を開始するための開始剤をさらに含む。
【0225】
すべての加硫性材料(エラストマー及び追加)が光重合性である場合、これらの実施形態では光開始剤が使用可能である。
【0226】
適切な光開始剤の非限定的な例としては、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン及びキサントンなどのベンゾフェノン(芳香族ケトン);2,4,6-トリメチルベンゾリジフェニルフォスフィンオキシド(TMPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルフォスフィンオキシド(TEPO)、及びビスアシルフォスフィンオキシド(BAPO)などのアシルフォスフィンオキシド系光開始剤;ベンゾイン及びベンゾインアルキルエーテル、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。光開始剤の例は、α-アミノケトン、ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)、及びIrgacure(登録商標)の商品名で市販されているものである。
【0227】
光開始剤は、単独で、又は共開始剤と組み合わせて使用することができる。ベンゾフェノンは、フリーラジカルを生成するためにアミンなどの第2の分子を必要とする光開始剤の一例である。放射線を吸収した後、ベンゾフェノンは水素引き抜きによって三元アミンと反応し、アクリレートの重合を開始するアルファ-アミノラジカルを生成する。共開始剤のクラスの非限定的な例は、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンである。
【0228】
いくつかの実施形態によれば、光開始剤は、例えば、Irgacure(登録商標)ファミリーのものである。
【0229】
光開始剤を含有する配合物中の光開始剤の濃度は、配合物の総重量の約0.1重量%~約5重量%、又は約1重量%~約3重量%(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の範囲内であり得る。
【0230】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、モデリング材料配合物の1又は複数は、1又は複数の追加の非加硫性材料、例えば、着色剤(染料及び/又は顔料)、分散剤、界面活性剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤及び抑制剤の1又は複数をさらに含む。
【0231】
加硫条件に曝露する前に重合及び/又は加硫を防止又は減速するための阻害剤が配合物に含まれる。ラジカル阻害剤などの一般的に使用される阻害剤が企図される。
【0232】
本明細書中に記載される例示的なモデリング材料配合物のいずれにおいても、阻害剤の濃度は、配合物又はそれを含む配合物系の総重量の0%~約2%重量又は0%~約1%の範囲内であり、例えば、0重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%又は約1重量%(それらの間の任意の中間値を含む)である。
【0233】
一般的に使用される界面活性剤、分散剤、着色剤、酸化防止剤及び安定剤が企図される。各成分の例示的な濃度は、存在する場合、それを含有する配合物の総重量の約0.01重量パーセント~約1重量パーセント、又は約0.01重量パーセント~約0.5重量パーセント、又は約0.01重量パーセント~約0.1重量パーセントの範囲内である。
【0234】
一般的に使用される可塑剤が企図され、好ましくは、例えばアルキレングリコールのアルキルエーテル(例えば、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの材料)などの低速蒸発(参照材料としての酢酸n-ブチルと比較して、低い蒸発速度、例えば1未満又は0.5未満を特徴とする)可塑剤である。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、そのような可塑剤は、他の機械的特性に悪影響を及ぼすことなく、硬化材料のショア硬度に有利に影響を及ぼす(すなわち低下する)と仮定され、実証されている(データは示さず)。いくつかの実施形態では、可塑剤が添加されると、硬化した材料のショア硬度値は、可塑剤を含まない同じ配合物と比較して、10%、又は20%、又は25%、又はさらにそれ以上低下する。
【0235】
本明細書に記載の可塑剤は、存在する場合、それを含有する配合物の総重量の約0.01重量%~約5重量%、又は約0.01重量%~約2重量%、又は約0.01重量%~約1重量%、又は約0.1重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約2重量%、又は約0.1重量%~約1重量%、又は約0.5重量%~約5重量%、又は約0.5重量%~約3重量%、又は約0.5重量%~約2重量%、又は0.5重量%~約1.5重量%の範囲内の量である。
【0236】
本明細書中に記載される例示的なモデリング材料配合物のいずれにおいても、界面活性剤の濃度は、配合物又はそれを含む配合物系の総重量0%~約1%重量の範囲内であり、例えば、0重量%、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%又は約1重量%(それらの間の任意の中間値を含む)である。
【0237】
本明細書中に記載される例示的なモデリング材料配合物のいずれにおいても、分散剤の濃度は、配合物又はそれを含む配合物系の総重量0%~約2%重量の範囲内であり、例えば、0重量%、0.1重量%、0.5重量%、0.7重量%、1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.35重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.7重量%、1.8重量%又は約2重量%(それらの間の任意の中間値を含む)である。
【0238】
方法:
【0239】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載の三次元物体の付加製造方法が提供される。本実施形態の方法は、本明細書で定義されるエラストマー材料をその少なくとも一部に有する物体を製造するために使用可能である。
【0240】
本方法は、一般に、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を順次形成することによって達成され、その結果、少なくともいくつかの前記層の各々又は前記層の各々の形成は、1又は複数のモデリング材料配合物を含むビルディング材料(未加硫)を分配することと、分配されたモデリング材料を加硫条件、好ましくは加硫エネルギー(例えば照射)に曝露し、それにより、以下でさらに詳細に説明するように加硫モデリング材料を形成することとを含む。
【0241】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、物体は、例えばいかに記載されるように、2つ以上の異なるモデリング材料配合物を含むビルディング材料(未加硫)を分配することによって製造される。これらの実施形態のいくつかにおいて、各モデリング材料配合物は、本明細書中に記載されるように、インクジェット印刷装置の同じ又は異なる分配ヘッドに属するノズルの異なるアレイから分配される。
【0242】
いくつかの実施形態では、異なるモデリング材料配合物を分配する2つ以上のそのようなノズルのアレイは、両方ともAM装置の同じ印刷ヘッド(すなわち、マルチチャネル印刷ヘッド)に配置される。いくつかの実施形態において、異なるモデリング材料配合物を分配するノズルのアレイは、別々の印刷ヘッドに配置され、例えば、第1のモデリング材料配合物を分配するノズルの第1のアレイは、第1の印刷ヘッドに配置され、第2のモデリング材料配合物を分配するノズルの第2のアレイは、第2の印刷ヘッドに配置される。
【0243】
いくつかの実施形態では、モデリング材料配合物を分配するノズルのアレイと、支持材料配合物を分配するノズルのアレイとは、両方とも同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、モデリング材料配合物を分配するノズルのアレイと、支持材料配合物を分配するノズルのアレイとは、別々の印刷ヘッドに配置される。
【0244】
モデリング材料配合物は、任意に、好ましくは、印刷ヘッドの同じパス中に層状に堆積される。層内のモデリング材料配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の所望の特性に従って選択され、以下にさらに詳細に記載される。そのような動作モードは、本明細書で説明されるように、本明細書では「マルチ材料」とも呼ばれる。
【0245】
本発明の実施形態のいずれかのいくつかでは、層が本明細書中に記載されるように分配されると、本明細書中に記載されるような加硫条件(例えば、加硫エネルギー)への曝露が行われる。いくつかの実施形態では、加硫性材料は、光加硫性材料、好ましくはUV加硫性材料であり、加硫条件は、放射線源がUV放射線を放出するようなものである。
【0246】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、UV照射は、本明細書中に記載されるようなLED源からのものである。
【0247】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫条件は電磁照射を含み、前記電磁照射はLED源からのものである。
【0248】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、加硫条件はUV照射を含む。
【0249】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、UV照射の線量は、例えば、本明細書中に記載されるように、層あたり0.1J/cmより高い。
【0250】
ビルディング材料が支持材料配合物(複数可)も含むいくつかの実施形態では、本方法は、硬化した支持材料(例えば、それによって、隣接する硬化モデリング材料を露出させる)を除去することに進む。これは、当業者によって認識されるように、機械的及び/又は化学的手段によって行うことができる。支持材料の一部は、任意に、本明細書に記載されるように、除去時に、例えば、硬化した混合層内に残っていてもよい。
【0251】
いくつかの実施形態では、硬化した支持材料を除去すると、支持材料とモデリング材料配合物との硬化した混合物を含む硬化混合層が現れる。物体の表面におけるそのような硬化混合物は、本明細書では「つや消し」とも呼ばれる比較的非反射の外観を任意に有する。一方、そのような硬化した混合物を欠く表面(例えば、支持材料配合物がその上に適用されなかったもの)は、比較して「光沢」と説明される。
【0252】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、本方法は、加硫モデリング材料を、ビルディング材料に含まれている場合、支持材料の除去の前又は後のどちらか(好ましくは後)に後処理条件に曝露することをさらに含む。
【0253】
本発明のこの態様の実施形態のいずれかのいくつかでは、分配された層の少なくともいくつかについて、分配は、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせでの本明細書に記載の加硫性エラストマー配合物である。
【0254】
本明細書中に記載の実施形態のいずれかのいくつかでは、分配温度、すなわち、分配が行われるシステムの環境の温度は、40℃未満又は35℃未満である。
【0255】
システム:
【0256】
本発明のいくつかの実施形態による物体112のAMに適したシステム110の代表的で非限定的な例を図1Aに示す。システム110は、複数の印刷ヘッドを備える分配ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは、好ましくは、以下に記載の図2A~Cに示すように、典型的にはオリフィスプレート121に取り付けられたノズル122の1又は複数のアレイを備え、これを通って液体ビルディング材料配合物124が分配される。
【0257】
好ましくは、必須ではないが、装置114は三次元印刷装置であり、この場合、印刷ヘッドは印刷ヘッドであり、ビルディング材料配合物はインクジェット技術を介して分配される。一部の用途では、付加製造装置が三次元印刷技術を使用する必要がない場合があるため、これは必ずしもそうである必要はない。本発明の様々な例示的な実施形態に従って企図される付加製造装置の代表的な例には、溶融堆積モデリング装置及び溶融材料配合物堆積装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0258】
各印刷ヘッドは、任意に、好ましくは、温度制御ユニット(例えば、温度センサ及び/又は加熱デバイス)及び材料配合物レベルセンサを任意に含み得る1又は複数のビルディング材料配合物リザーバを介して供給される。ビルディング材料配合物を分配するために、例えば圧電インクジェット印刷技術におけるように、印刷ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴を選択的に堆積させるために印刷ヘッドに電圧信号が印加される。別の例は、サーマルインクジェット印刷ヘッドを含む。これらのタイプのヘッドには、電圧信号によるヒータ要素の作動時に、ビルディング材料配合物を加熱してその中に気泡を形成するために、ビルディング材料配合物と熱接触するヒータ要素がある。気泡は、ビルディング材料配合物中に圧力を発生させ、ビルディング材料配合物の液滴をノズルから放出させる。圧電及びサーマル印刷ヘッドは、固体自由組立の当業者に知られている。任意のタイプのインクジェット印刷ヘッドについて、ヘッドの分配速度は、ノズルの数、ノズルのタイプ、及び印加電圧信号速度(周波数)に依存する。
【0259】
任意に、分配ノズル又はノズルアレイの全体の数は、分配ノズルの半分が、支持材料配合物を分配するために指定され、分配ノズルの半分が、モデリング材料配合物を分配するために指定されるように選択され、すなわち、モデリング材料配合物を噴射するノズルの数は、支持材料配合物を噴射するノズルの数と同じである。図1Aの代表例では、4つの印刷ヘッド16a、16b、16c、16dが示されている。各ヘッド16a、16b、16c及び16dは、ノズルアレイを有している。この実施例において、ヘッド16a及びヘッド16bは、モデリング材料配合物用に指定することができ、ヘッド16c及びヘッド16dは、支持材料配合物用に指定することができる。したがって、ヘッド16aは、あるモデリング材料配合物を分配することができ、ヘッド16bは、別のモデリング材料配合物を分配することができ、ヘッド16c及びヘッド16dの両方は、支持材料配合物を分配することができる。別の実施形態において、ヘッド16c及びヘッド16dは、例えば、支持材料配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドにおいて組み合わされてもよい。さらなる代替の実施形態では、任意の1又は複数の印刷ヘッドは、2つ以上の材料配合物を堆積させるための2つ以上のノズルアレイ、例えば、2つの異なるモデリング材料配合物又はモデリング材料配合物及び支持材料配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有してもよく、各配合物は、異なるアレイ又は数のノズルを介している。
【0260】
しかし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、モデリング材料配合物印刷用ヘッド(モデリングヘッド)の数と、支持材料配合物印刷ヘッド(支持ヘッド)の数とは、異なっていてもよいことを理解されたい。一般に、モデリング材料配合物を分配するノズルのアレイの数、支持材料配合物を分配するノズルのアレイの数、及びそれぞれのアレイにおけるノズルの数は、支持材料配合物の最大分配速度とモデリング材料配合物の最大分配速度との間の所定の比aを提供するように選択される。所定の比aの値は、好ましくは、形成された各層において、モデリング材料配合物の高さが支持材料配合物の高さに等しくなるように選択される。aの典型的な値は、約0.6~約1.5である。
【0261】
本明細書全体を通して使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0262】
例えば、a=1の場合、支持材料配合物の全体的な分配速度は、一般に、すべてのノズルのアレイが動作するときのモデリング材料配合物の全体的な分配速度と同じである。
【0263】
装置114は、例えば、各々がp個のノズルのm個のアレイを有するM個のモデリングヘッドと、各々がq個のノズルのs個のアレイを有するS個の支持ヘッドとを、M×m×p=S×s×qとなるように備えることができる。M×m個のモデリングアレイ及びS×s個の支持アレイの各々は、アレイのグループから組み立て及び分解することができる別個の物理的ユニットとして製造することができる。この実施形態では、そのような各アレイは、任意に、好ましくは、それ自体の温度制御ユニット及び材料配合物レベルセンサを備え、その動作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0264】
装置114は、堆積された材料配合物を硬化させることができる光、熱などを放出するように構成された任意のデバイスを含むことができる固化デバイス324をさらに含むことができる。例えば、固化デバイス324は、使用されるモデリング材料配合物に応じて、例えば紫外線ランプ若しくは可視ランプ若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であり得る、1又は複数の放射線源を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、固化デバイス324は、モデリング材料配合物を加硫又は固化させるのに役立つ。
【0265】
固化デバイス324に加えて、装置114は、任意に、好ましくは、溶媒蒸発のための追加の放射線源328を含む。放射線源328は、任意に、好ましくは赤外線を発生させる。本発明の様々な例示的な実施形態では、固化デバイス324は、紫外線を発生する放射線源を備え、放射線源328は赤外線を発生させる。
【0266】
本発明のいくつかの実施形態では、装置114は、1又は複数のファンなどの冷却システム134を備える。
【0267】
印刷ヘッド(複数可)及び放射線源は、好ましくは、作業面として機能するトレイ360上を往復移動するように好ましくは動作するフレーム又はブロック128内に取り付けられる。本発明のいくつかの実施形態では、放射線源は、印刷ヘッドの後に続いて、印刷ヘッドによって分配されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に加硫又は固化させるように、ブロック内に取り付けられる。トレイ360は水平に配置されている。一般的な慣例によれば、X-Y平面がトレイ360に平行になるように、X-Y-Z直交座標系が選択される。トレイ360は、好ましくは、垂直に(Z方向に沿って)、典型的には下方に移動するように構成される。本発明の様々な例示的な実施形態では、装置114は、例えばローラ326などの1又は複数の平坦化デバイス132をさらに備える。平坦化デバイス326は、上に連続層を形成する前に、新たに形成された層の厚さを真っ直ぐにし、平坦化し、及び/又は確立するのに役立つ。平坦化デバイス326は、好ましくは、平坦化中に生成された過剰な材料配合物を収集するための廃棄物収集デバイス136を備える。廃棄物収集デバイス136は、材料配合物を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに送達する任意の機構を含んでもよい。
【0268】
使用中、ユニット16の印刷ヘッドは、本明細書ではX方向と呼ばれる走査方向に移動し、トレイ360上を通過する過程で所定の構成でビルディング材料配合物を選択的に分配する。ビルディング材料配合物は、典型的には、1又は複数のタイプの支持材料配合物及び1又は複数のタイプのモデリング材料配合物を含む。ユニット16の印刷ヘッドの通過に続いて、放射線源126によるモデリング材料配合物(複数可)の加硫が続く。堆積したばかりの層の開始点に戻るヘッドの逆方向の通過において、所定の構成に従って、ビルディング材料配合物の追加の分配を実行することができる。印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の通過において、このように形成された層は、好ましくは印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動の経路をたどる平坦化デバイス326によって直線化されてもよい。印刷ヘッドがX方向に沿ってそれらの開始点に戻ると、それらは、本明細書ではY方向と呼ばれるインデックス付け方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復移動によって同じ層を構築し続けることができる。あるいは、印刷ヘッドは、順方向の移動と逆方向の移動との間で、又は2回以上の順方向-逆方向の移動の後にY方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために印刷ヘッドによって実行される一連の走査は、本明細書では単一の走査サイクルと呼ばれる。
【0269】
層が完成すると、トレイ360は、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、所定のZレベルまでZ方向に下げられる。この手順を繰り返し、層状に三次元物体112を形成する。
【0270】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の印刷ヘッドの順方向通過と逆方向通過との間でZ方向に変位されてもよい。このようなZ変位は、平坦化デバイスが表面に一方向に接触し、他方向に接触することを防止するために行われる。
【0271】
システム110は、ビルディング材料配合物容器又はカートリッジを含み、複数のビルディング材料配合物を組立装置114に供給するビルディング材料配合物供給システム330を任意に好ましくは含む。
【0272】
制御ユニット152は、組立装置114を制御し、任意に、好ましくは供給システム330も制御する。制御ユニット152は、典型的には、制御操作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット152は、好ましくは、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形態でコンピュータ可読媒体上に表されるCAD構成などのコンピュータ物体データに基づく組立命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信する。典型的には、制御ユニット152は、各印刷ヘッド又は各ノズルアレイに印加される電圧及びそれぞれの印刷ヘッド又はそれぞれのノズルアレイにおけるビルディング材料配合物の温度を制御する。
【0273】
製造データが制御ユニット152にロードされると、ユーザの介入なしに動作することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット152は、例えばデータプロセッサ154を使用して、又はユニット152と通信するユーザインターフェース116を使用して、オペレータから追加のインプットを受信する。ユーザインターフェース116は、限定されないが、キーボード、タッチスクリーンなどの当技術分野で知られている任意の種類のものとすることができる。例えば、制御ユニット152は、追加のインプットとして、限定されないが色、特性歪み及び/又は転移温度、粘度、電気的特性、磁気特性などの1又は複数のビルディング材料配合物の種類及び/又は属性を受信することができる。他の属性及び属性群も考えられる。
【0274】
本発明のいくつかの実施形態による物体のAMに適したシステム10の別の代表的で非限定的な例を図1B図1Dに示す。図1B図1Dは、システム10の上面図(図1B)、側面図(図1C)、及び等角図(図1D)を示す。
【0275】
本実施形態では、システム10は、トレイ12及び複数のインクジェット印刷ヘッド16を備え、各インクジェット印刷ヘッドは、それぞれ1又は複数の複数の分離されたノズルを有するノズルの1又は複数のアレイを有する。三次元印刷に使用される材料は、ビルディング材料供給システム42によってヘッド16に供給される。トレイ12は、ディスクの形状を有することができ、又は環状であってもよい。垂直軸を中心に回転させることができる限り、非円形形状も考えられる。
【0276】
トレイ12及びヘッド16は、任意に好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的な回転運動を可能にするように取り付けられる。これは、(i)ヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するようにトレイ12を構成すること、(ii)トレイ12に対して垂直軸14を中心に回転するようにヘッド16を構成すること、又は(iii)トレイ12及びヘッド16の両方が垂直軸14を中心に異なる回転速度(例えば、反対方向の回転)で回転するように構成することによって達成され得る。システム10のいくつかの実施形態は、構成(i)に特に重点を置いて以下に説明されており、トレイは、ヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するように構成された回転トレイであるが、本出願は、システム10の構成(ii)及び(iii)も企図していることを理解されたい。本明細書に記載のシステム10の実施形態のいずれかは、構成(ii)及び(iii)のいずれかに適用可能であるように調整することができ、本明細書に記載の詳細を提供される当業者であれば、そのような調整を行う方法を知っているであろう。
【0277】
以下の説明では、トレイ12に平行で軸14から外側を向く方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに垂直な方向を本明細書では方位角方向φと呼び、トレイ12に垂直な方向を本明細書では垂直方向zと呼ぶ。
【0278】
システム10における半径方向rは、システム110におけるインデックス方向yを規定し、方位角方向φは、システム110における走査方向xを規定する。したがって、半径方向は、本明細書ではインデックス方向と互換的に呼ばれ、方位角方向は、本明細書では走査方向と互換的に呼ばれる。
【0279】
本明細書で使用される「半径位置」という用語は、軸14から特定の距離にあるトレイ12上又は上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、その半径が軸14からの特定の距離であり、その中心が軸14に存在する円である点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0280】
本明細書で使用される「方位角位置」という用語は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上又は上方の位置を指す。したがって、半径位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線である点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0281】
本明細書で使用される「垂直位置」という用語は、特定の点で垂直軸14と交差する平面上の位置を指す。
【0282】
トレイ12は、三次元印刷のビルディングプラットフォームとして機能する。1つ又は複数の物体が印刷される作業領域は、必ずしもそうである必要はないが、典型的には、トレイ12の総面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は26で示されている。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成を通して同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば、振動的に)回転方向を逆転させる。トレイ12は、任意に、好ましくは取り外し可能である。トレイ12を取り外すことは、システム10のメンテナンスのため、又は必要に応じて、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するためであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、システム10には、1又は複数の異なる交換トレイ(例えば、交換トレイのキット)が設けられ、異なる種類(例えば、異なる重み)の物体に対して2つ以上のトレイが指定され、異なる動作モード(例えば、異なる回転速度)などがある。トレイ12の交換は、必要に応じて手動又は自動で行うことができる。自動交換が使用される場合、システム10は、ヘッド16の下方のその位置からトレイ12を取り外し、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換デバイス36を備える。図1Bの代表的な図では、トレイ交換デバイス36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を有するドライブ38として示されているが、他のタイプのトレイ交換デバイスも考えられる。
【0283】
印刷ヘッド16の例示的な実施形態を図2A図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110及びシステム10を含むがこれらに限定されない、上述のAMシステムのいずれかに使用することができる。
【0284】
図2A図2Bは、1つ(図2A)及び2つ(図2B)のノズルアレイ22を有する印刷ヘッド16を示す。アレイ内のノズルは、好ましくは直線に沿って直線的に整列される。特定の印刷ヘッドが2つ以上の線形ノズルアレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、任意に、好ましくは互いに平行であり得る。印刷ヘッドがノズルの2つ以上のアレイを有する場合(例えば、図2B)、ヘッドのすべてのアレイに同じビルディング材料配合物を供給することができ、又は同じヘッドの少なくとも2つのアレイに異なるビルディング材料配合物を供給することができる。
【0285】
システム110と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、任意に、好ましくは、それらの走査方向に沿った位置が互いにオフセットされた状態でインデックス方向に沿って配向される。
【0286】
システム10と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、任意に、好ましくは、それらの方位角位置が互いにオフセットされた状態で半径方向(半径方向に平行)に配向される。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは、互いに平行ではなく、むしろ互いにある角度であり、その角度は、それぞれのヘッド間の方位角オフセットにほぼ等しい。例えば、1つのヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φに配置することができ、別のヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φに配置することができる。この例では、2つのヘッド間の方位角オフセットはφ-φであり、2つのヘッドの線形ノズルアレイ間の角度もφ-φである。
【0287】
いくつかの実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを印刷ヘッドのブロックに組み立てることができ、この場合、ブロックの印刷ヘッドは、典型的には互いに平行である。いくつかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックが図2Cに示されている。
【0288】
いくつかの実施形態では、システム10は、トレイ12が安定化構造30とヘッド16との間にあるように、ヘッド16の下方に配置された安定化構造30を備える。安定化構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が動作している間に発生し得るトレイ12の振動を防止又は低減するのに役立ち得る。印刷ヘッド16が軸14を中心に回転する構成では、安定化構造30はまた、好ましくは、安定化構造30が常にヘッド16の真下にある(ヘッド16とトレイ12との間にトレイ12を有する)ように回転する。
【0289】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、任意に、好ましく、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変化させるように、垂直軸14に平行な垂直方向zに沿って移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離を変化させる構成では、安定化構造30もトレイ12と共に垂直方向に移動することが好ましい。垂直距離が垂直方向に沿ってヘッド16によって変化させる構成では、トレイ12の垂直位置を固定したままで、安定化構造30も固定された垂直位置に維持される。
【0290】
垂直運動は、垂直ドライブ28によって確立することができる。層が完成すると、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を所定の垂直ステップだけ増加させることができる(例えば、トレイ12はヘッド16に対して下降される)。この手順を繰り返し、層状に三次元物体を形成する。
【0291】
インクジェット印刷ヘッド16の操作、及び任意に好ましくはシステム10の1又は複数の他の構成要素の操作、例えばトレイ12の運動は、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路と、回路によって読み取り可能な不揮発性メモリ媒体とを有することができ、メモリ媒体は、回路によって読み取られると、以下でさらに詳細に説明するように回路に制御動作を実行させるプログラム命令を記憶する。
【0292】
コントローラ20はまた、例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットの形態で、コンピュータ物体データに基づいて組立命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することができる。物体データフォーマットは、通常、デカルト座標系に従って構造化される。これらの場合、コンピュータ24は、好ましくは、コンピュータ物体データ内の各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、任意に、好ましくは、変換された座標系に関して組立命令を送信する。あるいは、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提供される元の座標系に関して組立命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0293】
座標の変換は、回転トレイ上の三次元印刷を可能にする。印刷ヘッドを有する固定トレイを有する非回転システムでは、典型的には、直線に沿って固定トレイの上方を往復移動する。そのようなシステムでは、ヘッドの分配速度が均一であれば、印刷解像度はトレイ上の任意の点で同じである。システム10では、非回転システムとは異なり、ヘッドポイントのすべてのノズルが同時にトレイ12上で同じ距離をカバーするわけではない。座標の変換は、任意に、好ましくは、異なる半径位置で等量の過剰な材料配合を確実にするように実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表的な例を図3A~Bに示し、物体の3つのスライス(各スライスは、物体の異なる層の組立命令に対応する)を示しており、図3Aは、デカルト座標系におけるスライスを示し、図3Bは、座標手順の変換をそれぞれのスライスに適用した後の同じスライスを示す。
【0294】
典型的には、コントローラ20は、組立命令に基づいて、及び以下に説明するように記憶されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0295】
一般に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、三次元物体をトレイ12上に印刷するなどのために、層状のビルディング材料配合物の液滴を分配するように印刷ヘッド16を制御する。
【0296】
システム10は、任意に、好ましくは、使用されるモデリング材料配合物に応じて、例えば紫外線ランプ若しくは可視ランプ若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であり得る、1又は複数の放射線源18を含む。放射線源は、発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗ランプなどを含むがこれらに限定されない任意の種類の放射線発光デバイスを含むことができる。放射線源18は、モデリング材料配合物を加硫又は固化するのに役立つ。本発明の様々な例示的な実施形態では、放射線源18の動作は、放射線源18を作動及び停止させることができ、任意に放射線源18によって生成される放射線の量も制御することができるコントローラ20によって制御される。
【0297】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、ローラ又はブレードとして製造することができる1又は複数の平坦化デバイス32をさらに備える。平坦化デバイス32は、上に連続層を形成する前に、新たに形成された層を真っ直ぐにするのに役立つ。いくつかの実施形態では、平坦化デバイス32は、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、その表面がトレイの表面に平行になるように配置された円錐ローラの形状を有する。この実施形態は、システム10の側面図(図1C)に示されている。
【0298】
円錐ローラは、円錐又は円錐台の形状を有することができる。
【0299】
円錐ローラの開口角度は、好ましくは、その軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸14との間の距離との間に一定の比が存在するように選択される。ローラが回転する間、ローラの表面上の任意の点pは、点pの真下の点におけるトレイの線速度に比例する(例えば、同じ)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に平坦にすることを可能にする。いくつかの実施形態では、ローラは、高さh、軸14からのその最も近い距離における半径R、及び軸14からのその最も遠い距離における半径Rを有する円錐台形状を有し、パラメータh、R及びRは、関係R/R=(R-h)/hを満たし、Rは、軸14からのローラの最も遠い距離である(例えば、Rはトレイ12の半径とすることができる)。
【0300】
32の動作は、任意に、好ましくは、平坦化デバイス32を作動及び停止させることのできるコントローラ20によって制御され、任意に、垂直方向(軸14に平行)及び/又は半径方向(トレイ12に平行であり、軸14に向かって又はそれから離れるように配置される)に沿ってその位置を制御することもできる。
【0301】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復移動するように構成されている。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅よりも短い場合に有用である。半径方向に沿ったヘッド16の運動は、任意に、好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0302】
物体:
【0303】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化したエラストマー材料をその少なくとも一部に特徴とする三次元物体が提供される。
【0304】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したエラストマー材料は、以下の特徴のうちの1又は複数を特徴とする。
【0305】
少なくとも4Kg/cm又は少なくとも4.5Kg/cm、例えば4Kg/cm~8Kg/cm、又は4Kg/cm~7.5Kg/cm、又は4.5Kg/cm~8Kg/cm、又は4.5Kg/cm~7.5Kg/cm(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の引裂抵抗;
少なくとも2MPa、又は少なくとも2.5MPa、例えば2MPa~6MPa、又は2MPa~5MPa、又は2MPa~3MPa、又は2MPa~4MPa、又は3MPa~5MPa(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の引張強度;
少なくとも300%、又は少なくとも350%、例えば300%~500%、又は300%~450%、又は300%~400%、又は350%~500%、又は350%~450%、又は350%~400%(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の破断伸び;及び
少なくとも30、又は少なくとも40、例えば30~50、又は30~40、又は35~50、又は40~50、又は35~45(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)のショアA硬度。
【0306】
いくつかの実施形態では、物体は安定している(少なくとも2日間、好ましくはそれよりも長く、例えば少なくとも1週間、1ヶ月間又は1年間、その形状、寸法及び機械的特性を維持する)。
【0307】
本出願から成熟する特許の存続期間中に、多くの関連する加硫性材料が開発されることが予想され、加硫性材料及び/又は加硫性エラストマー材料という用語の範囲は、そのようなすべての新しい技術を先験的に含むことが意図されている。
【0308】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%又は±5%を指す。
【0309】
用語「含有する(comprises)」、「含有する(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」及びそれらの活用形は、「含むが限定されない(including but not limited to)」を意味する。
【0310】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、かつ限定される(including and limited to)」を意味する。
【0311】
「本質的に、~からなる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、工程及び/又は部分を含み得るが、追加の成分、工程及び/又は部分が特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0312】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0313】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0314】
本明細書において数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲(ranging/ranges between)」及び第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲(ranging/ranges from...to)」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1の指示数及び第2の指示数並びにそれらの間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0315】
本明細書では、「方法」及び「プロセス」という用語は互換的に使用され、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術及び手順、例えば限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に公知であるか、又は当業者によって公知の様式、手段、技術及び手順から容易に開発される様式、手段、技術及び手順を指す。
【0316】
本明細書全体を通して、語句「重量パーセント」又は「重量%」又は「% wt.」が配合物(例えば、モデリング配合物)の実施形態の文脈において示されるときはいつでも、それぞれの未加硫配合物の総重量の重量パーセントを意味する。
【0317】
本明細書全体を通して、アクリル材料は、1又は複数のアクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基及び/又はメタクリルアミド基を特徴とする材料を集合的に説明するために使用される。
【0318】
同様に、アクリル基は、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基及び/又はメタクリルアミド基、好ましくはアクリレート基又はメタクリレート基(本明細書では(メタ)アクリレート基とも呼ばれる)である加硫性基を集合的に説明するために使用される。
【0319】
本明細書全体を通して、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル及びメタクリル材料を包含する。
【0320】
本明細書全体を通して、「連結部分」又は「連結基」という語句は、化合物中の2つ以上の部分又は基を連結する基を表す。連結部分は、典型的には、二官能性化合物又は三官能性化合物に由来し、その2個又は3個の原子をそれぞれ介して2個又は3個の他の部分に連結された二ラジカル部分又は三ラジカル部分と見なすことができる。
【0321】
例示的な連結部分としては、連結基として定義される場合、本明細書で定義される1又は複数のヘテロ原子、及び/又は以下に列挙される化学基のいずれかによって任意に中断されている炭化水素部分又は鎖が挙げられる。
【0322】
化学基が本明細書で「末端基」と呼ばれる場合、それは、その1つの原子を介して別の基に結合している置換基として解釈されるべきである。
【0323】
本明細書全体を通して、「炭化水素」という用語は、主に炭素原子及び水素原子で構成される化学基を集合的に表す。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール及び/又はシクロアルキルから構成され得、それぞれが置換又は非置換であり得、1又は複数のヘテロ原子によって中断され得る。炭素原子の数は、2~30の範囲内とすることができ、好ましくはより低く、例えば1~10、又は1~6、又は1~4である。炭化水素は、連結基又は末端基であり得る。
【0324】
ビスフェノールAは、2つのアリール基及び1つのアルキル基から構成される炭化水素の例である。ジメチレンシクロヘキサンは、2つのアルキル基及び1つのシクロアルキル基から構成される炭化水素の例である。
【0325】
本明細書で使用される場合、「アミン」という用語は、-NR’R”基と-NR’-基の両方を表し、R’及びR”はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであり、これらの用語は以下に定義される。
【0326】
したがって、アミン基は、R’及びR”の両方が水素である第一級アミン、R’が水素であり、R”がアルキル、シクロアルキル若しくはアリールである第二級アミン、又はR’及びR”のそれぞれが独立してアルキル、シクロアルキル若しくはアリールである第三級アミンであり得る。
【0327】
あるいは、R’及びR”は、それぞれ独立して、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。
【0328】
「アミン」という用語は、アミンが本明細書で以下に定義される末端基である場合は、-NR’R”基を説明するために本明細書で使用され、アミンが連結基であるか、又は連結部分であるか、又はその一部である場合は、-NR’-基を説明するために本明細書で使用される。
【0329】
「アルキル」という用語は、直鎖基及び分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキル基は、1~30個、又は1~20個の炭素原子を有する。数値範囲;例えば、「1~20」が本明細書に記載されている場合はいつでも、基(この場合はアルキル基)が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個以下の炭素原子を含んでもよいことを意味する。アルキル基は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換アルキルは、1又は複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。
【0330】
アルキル基は、この語句が本明細書中上記で定義されるように単一の隣接原子に結合している末端基、又はこの語句が本明細書中上記で定義されるようにその鎖中の少なくとも2つの炭素を介して2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。アルキルが連結基である場合、それは本明細書では「アルキレン」又は「アルキレン鎖」とも呼ばれる。
【0331】
本明細書で使用されるアルケン及びアルキンは、それぞれ、1又は複数の二重結合又は三重結合を含む、本明細書で定義されるアルキルである。
【0332】
「シクロアルキル」という用語は、1又は複数の環が完全に共役したπ電子系を有さない、全炭素単環式環又は縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を表す。例としては、限定されないが、シクロヘキサン、アダマンチン、ノルボルニル、イソボルニルなどが挙げられる。シクロアルキル基は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換シクロアルキルは、1又は複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。シクロアルキル基は、この語句が本明細書中上記で定義されるように単一の隣接原子に結合している末端基、又はこの語句が本明細書中上記で定義されるようにその2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0333】
「ヘテロ脂環式」という用語は、窒素、酸素及び硫黄などの1又は複数の原子を環内に有する単環式又は縮合環基を表す。環はまた、1又は複数の二重結合を有してもよい。しかしながら、環は完全に共役したπ電子系を有さない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ、オキサリジンなどである。
【0334】
ヘテロ脂環式は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換ヘテロ脂環式は、1又は複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。ヘテロ脂環式基は、この語句が本明細書中上記で定義されるように単一の隣接原子に結合している末端基、又はこの語句が本明細書中上記で定義されるようにその2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0335】
「アリール」という用語は、完全に共役したπ電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を表す。アリール基は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換アリールは、1又は複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。アリール基は、この用語が本明細書中上記で定義されるように単一の隣接原子に結合している末端基、又はこの用語が本明細書中上記で定義されるようにその2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0336】
「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素及び硫黄などの1又は複数の原子を環内に有し、さらに完全に共役したπ電子系を有する単環式又は縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を表す。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン及びプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換ヘテロアリールは、1又は複数の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。ヘテロアリール基は、この語句が本明細書中上記で定義されるように単一の隣接原子に結合している末端基、又はこの語句が本明細書中上記で定義されるようにその2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。代表的な例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0337】
「ハロゲン化物」及び「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。
【0338】
「ハロアルキル」という用語は、1又は複数のハロゲン化物でさらに置換された、上で定義したアルキル基を表す。
【0339】
「スルフェート」という用語は、この用語が本明細書中上記で定義されるような-O-S(=O)-OR末端基、又はこれらの語句が本明細書中上記で定義されるような-O-S(=O)-O-連結基を表し、R’は上で定義される通りである。
【0340】
「チオスルフェート」という用語は、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基又は-O-S(=S)(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0341】
「スルファイト」という用語は-O-S(=O)-O-R’末端基又は-O-S(=O)-O-基連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0342】
「チオスルファイト」という用語は、--O-S(=S)-O-R’末端基又は-O-S(=S)-O-基連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0343】
「スルフィナート」という用語は-S(=O)-OR’末端基又は-S(=O)-O-基連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0344】
「スルホキシド」又は「スルフィニル」という用語は-S(=O)R’末端基又は-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0345】
「ホスホネート」という用語は-S(=O)-R’末端基又は-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0346】
「S-スルホンアミド」という用語は、-S(=O)-NR’R”末端基又は-S(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0347】
「N-スルホンアミド」という用語は、R’S(=O)-NR”-末端基又は-S(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0348】
「ジスルフィド」という用語は、-S-SR’末端基又は-S-S-連結基を指し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0349】
「ホスホネート」という用語は、-P(=O)(OR’)(OR”)末端基又は-P(=O)(OR’)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0350】
「チオホスホネート」という用語は、-P(=S)(OR’)(OR”)末端基又は-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0351】
「ホスフィニル」という用語は、-PR’R”末端基又は-PR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中上記で定義される通りである。
【0352】
「ホスフィンオキシド」という用語は、-P(=O)(R’)(R”)末端基又は-P(=O)(R’)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0353】
「ホスフィンスルフィド」という用語は、-P(S)(R’)(R”)末端基又は-P(=S)(R’)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0354】
「ホスファイト」という用語は、-O-PR’(=O)(OR”)末端基又は-O-PH(=O)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0355】
本明細書で使用される「カルボニル」又は「カーボネート」という用語は、-C(=O)-R’末端基又は-C(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0356】
本明細書で使用される「チオカルボニル」という用語は、-C(=S)-R’末端基又は-C(=S)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0357】
本明細書で使用される「オキソ」という用語は、(=O)基を表し、酸素原子は、示された位置で原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結されている。
【0358】
本明細書で使用される「チオオキソ」という用語は、(=S)基を表し、硫黄原子は、示された位置で原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結されている。
【0359】
「オキシム」という用語は、=N-OH末端基又は=N-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義されている。
【0360】
「ヒドロキシル」という用語は-OH基を表す。
【0361】
「アルコキシ」という用語は、本明細書中で定義される-O-アルキル基及び-O-シクロアルキル基の両方を表す。アルコキシドという用語は-R’O基を表し、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0362】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で定義される-O-アリール基及び-O-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0363】
「チオヒドロキシ」又は「チオール」という用語は-SH基を表す。「チオレート」という用語は-S基を表す。
【0364】
「チオアルコキシ」という用語は、本明細書中で定義される-S-アルキル基及び-S-シクロアルキル基の両方を表す。
【0365】
「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書で定義される-S-アリール基及び-S-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0366】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書では「アルコール」とも呼ばれ、ヒドロキシ基で置換された本明細書で定義されるアルキルを表す。
【0367】
「シアノ」という用語は、-C≡N基を表す。
【0368】
「イソシアネート」という用語は、-N=C=O基を表す。
【0369】
「イソチオシアネート」という用語は、-N=C=S基を表す。
【0370】
「ニトロ」という用語は-NO基を表す。
【0371】
「ハロゲン化アシル」という用語は、-(C=O)R””基を表し、式中、R””は、本明細書中上記で定義されるようなハロゲン化物である。
【0372】
「アゾ」又は「ジアゾ」という用語は、-N=NR’末端基又は-N=N-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0373】
「ペルオキソ」という用語は、-O-OR’末端基又は-O-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0374】
本明細書で使用される「カルボキシレート」という用語は、C-カルボキシレート及びO-カルボキシレートを包含する。
【0375】
「C-カルボキシレート」という用語は、-C(=O)-OR’末端基又は-C(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0376】
「O-カルボキシレート」という用語は、-OC(=O)-R’末端基又は-OC(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0377】
カルボキシレートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-カルボキシレートにおいて、R’と炭素原子とが一緒に連結して環を形成し、この基はラクトンとも呼ばれる。あるいは、O-カルボキシレートにおいてR’とOとが一緒に連結して環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能することができる。
【0378】
本明細書で使用される「チオカルボキシレート」という用語は、C-チオカルボキシレート及びO-チオカルボキシレートを包含する。
【0379】
「C-チオカルボキシレート」という用語は、-C(=S)-OR’末端基又は-C(=S)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0380】
「チオO-カルボキシレート」という用語は、-OC(=S)-R’末端基又は-OC(=S)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’は本明細書中で定義される通りである。
【0381】
チオカルボキシレートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-チオカルボキシレートにおいて、R’と炭素原子とが一緒に連結して環を形成し、この基はチオラクトンとも呼ばれる。あるいは、O-チオカルボキシレートにおいてR’とOとが一緒に連結して環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能することができる。
【0382】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを包含する。
【0383】
「N-カルバメート」という用語は、R”OC(=O)-NR’-末端基又は-OC(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0384】
「O-カルバメート」という用語は、-OC(=O)-NR’R”末端基又は-OC(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0385】
カルバメートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、R’及び炭素原子は、O-カルバメートにおいて一緒に連結して環を形成する。あるいは、N-カルバメートにおいてR’とOとが一緒に連結して環を形成する。環状カルバメートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能することができる。
【0386】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを包含する。
【0387】
本明細書で使用される「チオカルバメート」という用語は、N-チオカルバメート及びO-チオカルバメートを包含する。
【0388】
「O-チオカルバメート」という用語は、-OC(=S)-NR’R”末端基又は-OC(=S)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0389】
「N-チオカルバメート」という用語は、R”OC(=S)NR’-末端基又は-OC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0390】
チオカルバメートは、カルバメートについて本明細書に記載されるように、直鎖状又は環状であり得る。
【0391】
本明細書で使用される「ジチオカルバメート」という用語は、S-ジチオカルバメート及びN-ジチオカルバメートを包含する。
【0392】
「S-ジチオカルバメート」という用語は、-SC(=S)-NR’R”末端基又は-SC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0393】
「N-ジチオカルバメート」という用語は、R”SC(=S)NR’-末端基又は-SC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0394】
本明細書で「ウレイド」とも呼ばれる「尿素」という用語は、-NR’C(=O)-NR”R”’末端基又は-NR’C(=O)-NR”-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、式中、R’及びR”は本明細書中で定義される通りであり、R”’はR’及びR”について本明細書中で定義される通りである。
【0395】
本明細書で「チオウレイド」とも呼ばれる「チオ尿素」という用語は、-NR’-C(=S)-NR”R”’末端基又は-NR’-C(=S)-NR”-連結基を表し、R’、R”及びR”’は本明細書中で定義される通りである。
【0396】
本明細書で使用される「アミド」という用語は、C-アミド及びN-アミドを包含する。
【0397】
「C-アミド」という用語は、-C(=O)-NR’R”末端基又は-C(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0398】
「N-アミド」という用語は、R’C(=O)-NR”-末端基又はR’C(=O)-N-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0399】
アミドは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-アミドにおいて、R’と炭素原子とが一緒に連結して環を形成し、この基はラクタムとも呼ばれる。環状アミドは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能することができる。
【0400】
「グアニル」という用語は、R’R”NC(=N)-末端基又は-R’NC(=N)-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0401】
「グアニジン」という用語は、-R’NC(=N)-NR”R”’末端基又は-R’NC(=N)-NR”-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記に定義され、R’、R”及びR”’は本明細書中で定義される通りである。
【0402】
「ヒドラジン」という用語は、-NR’-NR”R”’末端基又は-NR’-NR”-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’、R”及びR”’は本明細書中で定義される通りである。
【0403】
本明細書で使用される場合、「ヒドラジド」という用語は、-C(=O)-NR’-NR”R”’末端基又は-C(=O)-NR’-NR”-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’、R”及びR”’は本明細書中で定義される通りである。
【0404】
本明細書で使用される場合、「チオヒドラジド」という用語は、-C(=S)-NR’-NR”R”’末端基又は-C(=S)-NR’-NR”-連結基を表し、これらの語句は本明細書中上記で定義され、R’、R”及びR”’は本明細書中で定義される通りである。
【0405】
「シアヌレート」という用語は、
【化6】

末端基又は
【化7】

連結基を表し、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0406】
「イソシアヌレート」という用語は、
【化8】

末端基又は
【化9】

連結基を表し、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0407】
「チオシアヌレート」という用語は、
【化10】

末端基又は
【化11】

連結基を表し、R’及びR”は本明細書中で定義される通りである。
【0408】
本明細書で使用される場合、「アルキレングリコール」という用語は、-O-[(CR’R”)-O]-R”’末端基又は-O-[(CR’R”)-O]-連結基を表し、R’、R”及びR”’は本明細書中で定義される通りであり、zは1~10の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2又は3であり、yは1以上の整数である。好ましくは、R’及びR”は両方とも水素である。zが2でありyが1である場合、この基はエチレングリコールである。zが3でありyが1である場合、この基はプロピレングリコールである。yが2~4である場合、アルキレングリコールは、本明細書ではオリゴ(アルキレングリコール)と呼ばれる。
【0409】
本明細書では、「エトキシル化」材料は、本明細書で定義されるように、1又は複数のアルキレングリコール基、又は好ましくは1又は複数のアルキレングリコール鎖を含むアクリル化合物又はメタクリル化合物を表す。エトキシ化(メタ)アクリレート材料は、単官能性、又は好ましくは多官能性、すなわち、二官能性、三官能性、四官能性などであり得る。
【0410】
多官能性材料では、典型的には、(メタ)アクリレート基のそれぞれは、アルキレングリコール基又は鎖に連結され、アルキレングリコール基又は鎖は、例えば、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール(例えば、ビスフェノールA)などの分岐単位を介して互いに連結される。
【0411】
いくつかの実施形態では、エトキシル化材料は、少なくとも1個又は少なくとも2個のエトキシル化基、すなわち、少なくとも1個又は少なくとも2個のアルキレングリコール部分又はアルキレングリコール基を含む。アルキレングリコール基の一部又は全部は、互いに連結してアルキレングリコール鎖を形成することができる。例えば、30個のエトキシル化基を含むエトキシル化材料は、互いに連結された30個のアルキレングリコール基の鎖、それぞれ、例えば互いに連結された15個のアルキレングリコール部分の2本の鎖、分岐部分を介して互いに連結された2本の鎖、又は、それぞれ、例えば互いに連結された10個のアルキレングリコール基の3本の鎖を含むことができ、3本の鎖は分岐部分を介して互いに連結されている。より短い鎖及びより長い鎖も考えられる。
【0412】
エトキシル化材料は、任意の長さの1つ、2つ又はそれを超えるアルキレングリコール鎖を含むことができる。
【0413】
本明細書で使用される「分岐単位」という用語は、マルチラジカル、好ましくは脂肪族又は脂環式基を表す。「マルチラジカル」とは、単位が2つ以上の原子及び/又は基又は部分間を連結するように2つ以上の結合点を有することを意味する。
【0414】
いくつかの実施形態では、分岐単位は、2個、3個又はそれを超える官能基を有する化学部分に由来する。いくつかの実施形態では、分岐単位は、本明細書で定義される分岐アルキル又はシクロアルキル(脂環式)又はアリール(例えば、フェニル)である。
【0415】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の適切な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態で適切であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0416】
上記で描写され、以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【実施例
【0417】
ここで、上記の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0418】
実験方法
【0419】
ショアA硬度は、ASTM D2240に従って決定した。
【0420】
ASTM D412に準拠して、強度-歪み曲線から弾性率(弾性係数)を求めた。
【0421】
引張強度は、ASTM D412に従って決定され、MPa単位で表される。
【0422】
破断伸びは、ASTM D412に従って決定され、%として表される。
【0423】
引裂抵抗(TR)は、ASTM D624に従って決定され、Kg/cm単位で表される。
【0424】
印刷性は、粘度、反応性、噴射性などに関して、3D-インクジェットシステム(例えば、図1B図1BDに記載されているもの;及び/又は加硫エネルギーのLED源を備えたシステム)との配合物の適合性を検査することによって決定した。
【0425】
粘着性/タック性は、システム構成要素(例えば、受けトレイ、ローラなど)への付着を目視検査することによって決定した。
【0426】
安定性は、印刷後1日、2日、3日又はそれを超えて上記の機械的特性の1又は複数を測定することによって決定した。機械的特性の20%未満又は10%未満の変化は良好な安定性を示し、より高い変化は安定性がないことを示す。
【0427】
カーリング及び変形を目視で確認した(例えば、図7A図7Bを参照されたい)。
【0428】
特に指示しない限り、すべての成分を室温で混合することによって配合物を調製した。光開始剤などの粉末成分を85度で30分間溶解させた。
【0429】
結果
【0430】
本発明者らは、3Dインクジェット印刷などの付加製造に使用可能なエラストマー配合物にシリカ粒子、好ましくは加硫性基によって官能化されたシリカ粒子を導入することにより、得られた硬化ゴム様材料の特性が改善されることを以前に発見した。そのような配合物は、例えば国際公開第2017/208238号に記載されており、「Agilus」ファミリーの商品名で市販されている。
【0431】
このような配合物は、比較的高い引裂抵抗と共に高い伸びを特徴とする硬化材料を実際に提供するが、本発明者らは、配合物中に存在する多官能性加硫性材料と組み合わせた官能化シリカ粒子から生じる高度な共有結合架橋が、特定の印刷条件下で、得られた三次元物体の変形、高いカーリング及び/又は体積収縮をもたらし得ることを発見した。本発明者らはさらに、そのような配合物が、図1B図1Dに記載されているものなどのシステムで使用される場合、劣った特性を有する材料を提供することを発見した(LEDを加硫エネルギー源として利用し、他のシステムと比較して低い印刷温度を特徴とする)。
【0432】
硬化したときにゴム様材料を提供する配合物の探索において、本発明者らは、「物理的架橋」に関与することができる、すなわち水素結合形成を介して架橋を形成することができる加硫性材料を使用することに想到したが、共有結合架橋とは対照的に、そのような「物理的」架橋は、変形、カーリング及び/又は体積収縮を最小限に抑え、さらにはゼロにしながら、改善された伸び及び改善された引裂抵抗をもたらすことを考慮した。
【0433】
本発明者らは、限定されるものではないがメタクリルアミドなどの複数の水素結合を形成することができる加硫性材料を、本明細書でさらに詳細に記載されるように水素結合形成に関与することができるエラストマー材料と組み合わせて使用することにより、硬化したときに、改善された性能を示すゴム様材料を提供し、図1B図1Dに記載のLED照射源を備えるシステムでの使用にも適した配合物が得られることを発見した。
【0434】
以下の表1Aは、例示的な参照エラストマー配合物の成分を示す。参照1は、Agilusファミリーの配合物を指し、本明細書ではAgilusシリカ又はAgilus Siとも呼ばれ、例えば国際公開第2017/208238号に記載されている通りであり、参照2は、Tangoファミリーの配合物を指す。表1Bは、改善された配合物の探索において試験された様々な配合物の成分を示す。
【0435】
成分Aは、本明細書に記載の1又は複数の加硫性(非エラストマー)単官能性材料である;
【0436】
成分Bは、本明細書に記載の1又は複数のエラストマー単官能性材料である;
【0437】
成分Cは、本明細書に記載の1又は複数の加硫性エラストマー多官能性材料、好ましくは二官能性材料である。
【0438】
成分Dは、1又は複数の加硫性(非エラストマー)二官能性材料であり、D1はそのような二官能性材料を指し、D2は三官能性以上の材料を指す。
【0439】
成分Eは、本明細書に記載の水素結合を形成することができる1又は複数の加硫性材料である。
【0440】
成分Fは、本明細書に記載の官能化シリカ粒子を含むシリカ粒子を表す。
【0441】

【表1】
【0442】
【表2】
【0443】
表2は、参照配合物の加硫エネルギー源として水銀ランプを備えた図1Aに示されるような3D-インクジェット印刷システムを使用し、例示的な試験したエラストマー配合物の加硫エネルギー源としてLEDを備えた図1B図1Dに示されるようなJ55インクジェット印刷システム(Stratasys,Ltd.、イスラエル)を使用して印刷された物体の機械的特性を示す。
【0444】

【表3】
【0445】
*試験した例示的配合物と同じシステムに参照1配合物を印刷すると、印刷性及び粘着性は悪い(不合格)。
【0446】
*参照1配合物で作製された物体は、実質的なカーリング及び変形を特徴とするが、これらは、本実施形態による例示的配合物では無視できる。
【0447】
図7A図7Bは、参照エラストマー配合物で作製された物体(左の物体)について観察された変形及びカーリング、並びに本実施形態による例示的エラストマー配合物で作製された物体(右の物体)におけるその欠如を示す例示的な写真を示す。
【0448】
表2及び得られた他のデータから分かるように、本実施形態による配合物は、参照配合物と比較して改善された伸び及び引裂抵抗を特徴とする。成分Eを欠く配合物は不適合であった。5%より高い濃度の成分Dを含む配合物は劣っており、成分D2を欠く配合物についても同じことが観察された。
【0449】
これらのデータは、得られた物体の機械的特性及び3Dインクジェットシステムとの適合性の両方に関して、以下の成分を含む配合物で最良の性能が得られることを示している。
A-15-20%
B-55-65%
C-10-15%
D1-0-5%
D2-1-2%
E-1.5-2%
F-<1%
【0450】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、修正及び変形が当業者には明らかであることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の主旨及び広い範囲に含まれるすべてのそのような代替、修正及び変形を包含することが意図されている。
【0451】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書中に組み込まれることが言及されるときに具体的かつ個別に言及されたかのように、その全体が参照により本明細書中に組み込まれることが本出願人(ら)の意図である。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権書類(複数可)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
【国際調査報告】