(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ラクトバチルスサケイ又はこれに由来する細胞外小胞体を有効成分として含む自己免疫疾患の治療用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240614BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240614BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240614BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240614BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240614BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240614BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/747
A61P1/02
A61P11/06
A61P17/06
A61P19/00
A61P25/00
A61P27/16
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576373
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2022009760
(87)【国際公開番号】W WO2023282622
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088901
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082279
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523015356
【氏名又は名称】リスキュア バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チン,ファ ス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA30X
4B065AC14
4B065BC01
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC56
4C087CA08
4C087CA10
4C087CA11
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA34
4C087ZA59
4C087ZA67
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZB15
(57)【要約】
本発明は、ラクトバチルスサケイ又はこれに由来する細胞外小胞体を含む組成物に関する。また、本発明は、新規なラクトバチルスサケイLBML6菌株に関する。本発明に係るラクトバチルスサケイは、血中TNFα及びIgG抑制活性を有し、tolDC細胞とTregs細胞の割合が増加する菌株であり、ヒト又は動物の自己免疫疾患の予防、改善及び/又は治療とともに、整腸などの用途のために様々に活用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、前記ラクトバチルスサケイに由来する(derived)細胞外小胞体(Extracellular vesicle);を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、薬剤学的組成物又は食品組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記自己免疫疾患は、アトピー性皮膚炎、乾癬皮膚炎、円形脱毛症、アレルギー、喘息、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽喉炎、扁桃炎、クローン病、強直性脊椎炎、ループス、乾癬性関節炎、骨関節炎、リウマチ関節炎、肩関節周囲炎、腱炎及び多発性硬化症からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物には前記ラクトバチルスサケイの細胞外小胞体(Extracellular vesicle)が含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞外小胞体の直径は、10~1,000nmであることを特徴とする、請求項1又は4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ラクトバチルスサケイは、受託番号KCCM13011Pとして寄託されたラクトバチルスサケイLBML6菌株であることを特徴とする、請求項1又は4に記載の組成物。
【請求項7】
治療上有効量のラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、前記ラクトバチルスサケイに由来する(derived)細胞外小胞体(Extracellular vesicle);を、それを必要とする対象体(subject)に投与することを含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療方法。
【請求項8】
ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物の治療用途(for use in therapy)。
【請求項9】
ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する細胞外小胞体の治療用途。
【請求項10】
下記の段階を含む自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物の製造方法:
(a)ラクトバチルスサケイ菌株を準備する段階;及び
(b)前記菌株を培養液で培養する段階。
【請求項11】
ラクトバチルスサケイ菌株由来の細胞外小胞体を準備する段階を含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物の製造方法。
【請求項12】
受託番号KCCM13011Pとして寄託されたラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物、若しくはこれから分離された細胞外小胞体を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
自己免疫疾患は、身体の免疫機能が自身を攻撃することによって起きる疾病で、長い期間にわたって形成され、症状が慢性的に持続し、概して臓器の永久損傷を招くことが一般的な例であり、完治可能な方法が殆どないのが現実である。今まで自己免疫疾患への知識は多く発展してきているが、依然として、正確な生成機序、自己抗原の正体、調節遺伝因子などは不明である。自己免疫疾患は臓器特異(organ-specific)疾患と全身性(systemic)疾患とに大別される。
【0003】
臓器特異自己免疫疾患は、臓器特異抗原に対する免疫反応が起きることによって発生し、身体のほぼ全ての臓器に発生し得る。全身性自己免疫疾患は、ある特定細胞に対する免疫反応が起きるものではなく全身にわたって発現する抗原に対する免疫反応によって発生する。このような全身性自己免疫疾患も、特異な臓器に選択的に疾病を引き起こすことがある。
【0004】
自己免疫性疾患の例には、アレルギー反応によって身体臓器に損傷及び異常を招いて臨床症状が発生すると知られた喘息、アトピー皮膚炎、乾癬皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹などが含まれる。また、自身のタンパク質(免疫グロブリン、コラーゲン、DNAなどの自己抗原)に対して過敏な反応(自己抗体反応を含む。)を示すことによって発病すると知られたリウマチ関節炎及びループス(Vaughan JH.Med Times1969;97:187-204)などが含まれる。これらのループス及びリウマチ関節炎などは、人の身体に存在する自己タンパク質に対する過敏反応によって自身の身体に存在する抗原(自己抗原)と反応する抗原特異-IgG抗体によって特定臓器に損傷及び炎症を誘発すると知られており、そのため、自己免疫疾患として分類されている。
【0005】
現在、自己免疫疾患を誘発する直接的な原因は明確にされておらず、その治療のために、ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、免疫抑制剤などの様々な治療剤が用いられている。しかし、このような治療剤は根本的な治療効果を奏しておらず、様々な副作用によって使用が制限されている。また、いくつかの化学療法的薬剤は、既に発生した自己免疫疾患に対する効能不足のような欠点がある。
【0006】
したがって、治療副作用が少ない上にも、炎症性症状と疼痛緩和に効果を示し、服用が簡便である自己免疫疾患治療剤の開発が望まれている現状である。
【0007】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に関する理解を増進させるためのものであるだけで、この技術の分野における通常の知識を有する者にとって周知の従来技術に該当することを認めるものと理解されてはならない。
【0008】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者らは、リウマチ関節炎を含む種々の自己免疫疾患に適用可能な乳酸菌菌株を見出すために努力した。その結果、ラクトバチルスサケイ又はその培養物が、様々な自己免疫疾患の原因となる前炎症性因子を抑制したり又は免疫抑制細胞の割合を増加させることによって自己免疫疾患の予防又は治療効果を有することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、該ラクトバチルスサケイに由来する(derived)細胞外小胞体(Extracellular vesicle);を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、治療上有効量のラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、該ラクトバチルスサケイに由来する(derived)細胞外小胞体(Extracellular vesicle);を、それを必要とする対象体(subject)に投与することを含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物の治療用途(for use in therapy)を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する細胞外小胞体の治療用途を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物の製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、受託番号KCCM13011Pとして寄託されたラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面からより明確になる。
【0016】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一態様によれば、本発明は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、該ラクトバチルスサケイに由来する(derived)細胞外小胞体(Extracellular vesicle);を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0017】
本発明において利用可能なラクトバチルスサケイ菌株は、限定されないが、好ましくは、韓国微生物保存センターに受託番号KCCM13011Pとして寄託されたラクトバチルスサケイLBML6菌株又は受託番号KCCM12654Pとして寄託されたラクトバチルスサケイWIKIM31菌株及び生物資源センターに受託番号KCTC13818BPとして寄託されたラクトバチルスサケイWIKIM0109菌株を含み、最も好ましくはラクトバチルスサケイLBML6菌株である。
【0018】
本発明の他の態様によれば、本発明は、受託番号KCCM13011Pとして寄託されたラクトバチルスサケイLBML6菌株を提供する。
【0019】
本発明に係る組成物に含まれるラクトバチルスサケイは、生菌体又は死菌体として存在でき、また、乾燥又は凍結乾燥した形態で存在することもできる。様々な組成物中に含めるのに適した乳酸菌の形態及び製剤化方法は、当業者に周知である。例えば、ラクトバチルスサケイは、公知の液体培地又は固体培地で培養させて得た培養物であるか、前記菌株と追加の成分を共に培養して得た発酵物であるか、前記菌株を有機溶媒で抽出した抽出物、前記菌株の細胞膜を溶解、破砕又は均質化処理した溶解物(又は、破砕物)などの形態で製剤化できるが、これに限定されるものではない。
【0020】
一具体例において、前記組成物は、生菌又は死菌として存在するラクトバチルスサケイ菌株を含む組成物であってよい。
【0021】
他の具体例において、前記組成物は、ラクトバチルスサケイ菌株の培養物、破砕物、抽出物又は発酵物を含む組成物であってよい。
【0022】
他の具体例において、前記組成物は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する(derived)細胞外小胞体(Extracellular vesicle)を含む組成物であってよい。
【0023】
細胞外小胞体(extracellular vesicles,EVs)は、細胞間の物質(タンパク質、脂質、遺伝物質)交換を可能にし、生理的/病理的に信号を伝達する媒介体として働く。細胞外小胞体は、大きく、エクソソーム(exosomes)とマイクロベシクル(microvesicles)とに分類される。エクソソームは、生物の起源によってそのサイズが様々であり、多重小胞エンドソーム(multi-vesicular endosomes)が成熟する過程でエンドソーム膜が内側に入って生成された内腔小嚢(intraluminal vesicles)であるが、多重小胞エンドソームが細胞表面と結合する時に分泌される。マイクロベシクルは、サイズが10~1000nmであり、原形質膜(plasma membrane)が外側に突き出て分離され、細胞外に分泌される小嚢である。各細胞は、生理的状態によって細胞外小胞体を異なるように生成し、特定の脂質/タンパク質/核酸組成を有する細胞外小胞体を分泌する(イ・ゼウク(2019)。細胞外小胞体の細胞生物学に対する考察。BRIC View 2019-R03)。
【0024】
本明細書において、用語「細胞外小胞体」は、前記エクソソーム(exosomes)及びマイクロベシクル(microvesicles)を含む意味で使われる。
【0025】
前記エクソソーム又は細胞外小胞体は、約1~1,000nmの範囲で様々な直径を有し、好ましくは10~1,000nm、より好ましくは10~800nm、最も好ましくは20~600nmの直径を有する。
【0026】
本発明の組成物が含むエクソソーム又は細胞外小胞体は、ラクトバチルスサケイ培養液(例えば、培養上澄液)内に多量で含まれている。
【0027】
前記エクソソーム又は細胞外小胞体は、ラクトバチルスサケイ培養物(例えば、培養上澄液)内に多量で含まれており、それを分離して精製されたエクソソーム又は細胞外小胞体をそれ自体で治療剤として用いたり、又は、前記エクソソーム又は細胞外小胞体を多量で含む培養物、破砕物、抽出物又は発酵物を治療剤として用いることができる。
【0028】
本明細書において、用語「分離(isolation)」とは、生物学的試料(例えば、ラクトバチルスサケイ培養物)内で目的とする物質(例えば、エクソソーム)を選択的に収得する過程(positive isolation)の他、目的とする物質以外の不純物を選択的に除去する過程(negative isolation)も含む。したがって、用語「分離」は、「収得(obtain)」、「抽出(extract)」、「精製(purify)」と同じ意味で使われてよい。本明細書においてエクソソーム又は細胞外小胞体を分離する過程は、当業界で通常用いられるいかなる方法も利用可能であり、例えば、前記商用化されたエクソソーム分離キット(例えば、EXO-BB、ExoQuick(登録商標)-ULTRA、ExoQuick(登録商標)-TC、Capturem(商標) Exosome Isolation Kit、Total Exosome Isolation Kit、ExoTrap(商標) Exosome Isolation Spin Column Kit、Exo2DTMなど)を用いたり、溶液中成分間の比重差による分離(例えば、遠心分離法)、サイズによる分離(例えば、限外濾過又は真空フィルター)、特定基質に対する親和度に基づく分離(例えば、親和性クロマトグラフィー)を含むが、、これに限定されず、非均質試料内で目的物質の固有の物性に基づく分離方法として当業界に通常用いられるいかなる方法も利用可能である。
【0029】
本発明の好ましい具現例によれば、前記自己免疫疾患は、アトピー性皮膚炎、乾癬皮膚炎、円形脱毛症、アレルギー、喘息、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽喉炎、扁桃炎、クローン病、炎症性大膓炎、強直性脊椎炎、ループス、乾癬性関節炎、骨関節炎、リウマチ関節炎、肩関節周囲炎、腱炎及び多発性硬化症からなる群から選ばれるものである。
【0030】
本発明のラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、前記ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する細胞外小胞体は、様々な自己免疫疾患の原因となる前炎症性因子(例えば、TNFα及び自己抗体(Autoantibody)コラーゲン抗原特異的IgGなど)を抑制したり、免疫抑制細胞(例えば、tolDC及びTregsなど)の割合を増加させたりし、自己免疫疾患の予防又は治療に効果的に利用可能である。
【0031】
本発明の好ましい具現例によれば、前記組成物は、薬剤学的組成物である。
【0032】
本発明の他の態様によれば、本発明は、治療上有効量のラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、前記ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する細胞外小胞体;を、それを必要とする対象体に投与することを含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0033】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物の治療用途(for use in therapy)を提供する。
【0034】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する細胞外小胞体の治療用途(for use in therapy)を提供する。
【0035】
本発明の好ましい具現例によれば、前記治療用途は、自己免疫疾患の予防、改善又は治療用途である。
【0036】
ここで使われる「対象体(subject)」とは、治療、観察又は実験の対象である哺乳動物のことを指し、好ましくは、自己免疫疾患の予防、改善及び/又は治療を必要とするヒト又は動物であってよい。
【0037】
本発明に係る薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与できる。
【0038】
非経口で投与する場合に、例えば、静脈内注入、経皮投与、皮下注入、筋肉内注入、硝子体内注入(intravitreal injection)、点眼投与(eye drop administration)、脳室内注入(intracerebroventricular injection)、髄腔内注入(intrathecal injection)、羊膜内注入(intraamniotic injection)、動脈内注入(intraarterial injection)、関節腔内注入(intraarticular injection)、心臓内注入(intracardiac injection)、陰茎海綿体内注入(intracavernous injection)、脳内注入(intracerebral injection)、大槽注入(intracisternal injection)、冠動脈内注入(intracoronary injection)、頭蓋内注入(intracranial injection)、硬膜内注入(intradural injection)、硬膜外注入(epidural injection)、海馬内注入(intrahippocampal injection)、鼻腔内注入(intranasal injection)、骨腔内注入(intraosseous injection)、腹腔内注入(intraperitoneal injection)、胸腔内注入(intrapleural injection)、脊髄内注入(intraspinal injection)、胸腔内注入(intrathoracic injection)、胸腺内注入(intrathymic injection)、子宮内注入(intrauterine injection)、膣内注入(intravaginal injection)、心室内注入(intraventricular injection)、膀胱内注入(intravesical injection)、結膜下注入(subconjunctival injection)、腫瘍内注入(intratumoral injection)、局所注入、及び腹腔注入(intraperitoneal injection)などで投与できる。
【0039】
本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体を含んでよい。本明細書において、用語「薬剤学的に許容可能な担体」とは、生物体を相当に刺激せず、投与成分の生物学的活性及び特性を阻害しない担体又は希釈剤を意味する。本明細書における薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分のうち1成分又は1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液及び静菌剤などの他の通常の添加剤を添加し、組織又は臓器に注入するのに適合した注射剤の形態で剤形化できる。また、等張性滅菌溶液、又は場合によって滅菌水や生理食塩水を添加して注射可能な溶液になり得る乾燥製剤(特に、凍結乾燥製剤)として剤形化してもよい。また、標的器官に特異的に作用可能に標的器官特異的抗体又はその他リガンドを前記担体と結合させて使用することができる。当該技術分野に知られた適切な製剤は、文献(Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton PA)に開示のものを使用することができる。
【0040】
また、好ましくは、本発明の組成物は、充填剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤などをさらに含んでよい。また、本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続又は遅延された放出を提供できるように当業界に公知の方法を用いて剤形化することができる。
【0041】
本明細書において、「投与」とは、ある適切な方法で対象体に本発明の組成物を導入することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、経口又は非経口の様々な経路で投与されてよい。
【0042】
例えば、本発明の組成物は、臨床投与時に、筋肉静脈、又は腹腔への注射によって投与されてよい。
【0043】
注射のために、好ましくは、Hank溶液、Ringer溶液、又は生理食塩水バッファのような薬理学的に合うバッファで剤形してよい。粘膜透過投与のために、通過するバリアーに適合する非浸透性剤が剤形に使用される。かかる非浸透性剤は、当業界に一般に公知されている。
【0044】
非経口投与のための製剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤は、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてよい。
【0045】
本明細書において、「有効量」は、目的とする治療されるべき特定疾患の発病又は進行を遅延させたり又は全的に中止させるのに必要な量を意味し、本発明の薬剤学的組成物に含まれるラクトバチルスサケイの有効量は、自己免疫疾患の予防、改善又は治療効果を達成するために要求される量を意味する。したがって、前記有効量は、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含まれている他の成分の種類及び含有量、及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路、治療期間、同時に使用される薬物をはじめとする様々な因子によって調節されてよい。適切な総1日使用量は、正しい医学的判断範囲内で処置医によって決定され得ることは、当業者にとって明らかである。
【0046】
本発明の目的上、特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって他の製剤が使用されるか否かをはじめとする具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と併せて又は同時に使用される薬物をはじめとする様々な因子と、医薬分野によく知られた類似因子によって個別に適用することが好ましい。
【0047】
本明細書において、「治療」とは、有益な又は好ましい臨床的結果を得るための接近を意味する。本発明の目的のために、有益な又は好ましい臨床的結果は、非制限的に、症状の緩和、疾病範囲の減少、疾病状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾病進行の遅延又は速度の減少、疾病状態の改善又は一時的緩和及び軽減(部分的に又は全体的に)、検出可能である又は検出されないことを含む。また、「治療」とは、治療を受けていない時に予想される生存率と比較して生存率を伸ばすことを意味することもできる。「治療」とは、治療学的治療及び予防的又は予防措置方法のいずれをも指す。これらの治療は、予防される障害の他、既に発生した障害において要求される治療も含む。疾病を「緩和」することは、治療をしていない場合と比較して、疾病状態の範囲及び/又は好ましくない臨床的徴候が減少したり及び/又は進行の時間的推移(time course)が遅延されたり伸びることを意味する。
【0048】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、食品組成物である。
【0049】
本発明の食品組成物が含むラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する細胞外小胞体は、上述した全ての内容をそのまま適用してよい。
【0050】
本発明の組成物が食品組成物として活用される場合に、前記食品組成物は、健康機能食品又は調味料、飲料、バーなどの形態を含んでよい。また、前記菌株を有効成分として含む食品組成物は、発酵乳などの飲料を含んでよい。そこで、本発明は、ラクトバチルスサケイ又はその培養物からなる食品発酵用乳酸菌スターターを提供する。
【0051】
本発明の食品組成物は、前記有効成分の他にも、食品学的に適切であり、生理学的に許容される補助剤を使用して製造されてよく、前記補助剤は、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤又は香味剤などを使用することができる。
【0052】
前記食品組成物は、投与のために、上記の有効成分に加えて、食品学的に許容可能な担体を1種以上含んで食品学的組成物として好適に製剤化できる。
【0053】
例えば、錠剤又はカプセル剤の形態としての製剤化のために、有効成分はエタノール、グリセロール、水などのような経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合してよい。また、所望又は必要時には、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び発色剤も混合物に含まれてよい。適切な結合剤は、次に限定されないが、澱粉、ゼラチン、グルコース又はベータ-ラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカント又はオレイン酸ナトリウムのような天然及び合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、次に限定されないが、澱粉、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。液状溶液として製剤化される組成物において許容可能な薬剤学的担体は、滅菌及び生体に適するものとして、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加できる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤をさらに添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤として製剤化できる。
【0054】
本発明に係る食品組成物は、各種食品に添加できる。本発明の組成物を添加できる食品には、例えば、飲料類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0055】
本発明の食品組成物は、食品製造時に一般に添加される成分を含んでよく、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及び、ポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として、天然香味剤[タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど])及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤と飲料類として製造される場合には、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、及び各種植物抽出液などをさらに含めてよい。
【0056】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、前記ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する細胞外小胞体;を有効成分として含む飼料添加剤又は飼料を提供する。
【0057】
飼料添加剤として用いられる場合に、前記組成物は、20~90%の高濃縮液であるか、粉末又は顆粒形態で製造されてよい。前記飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸や、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩、ポリリン酸塩(重合リン酸塩)などのリン酸塩や、ポリフェノール、カテキン、アルファ-トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤のうちいずれか一つ又は一つ以上をさらに含んでよい。飼料として利用される場合に、前記組成物は、通常の飼料形態で製剤化されてよく、通常の飼料成分を共に含んでよい。
【0058】
前記飼料添加剤及び飼料は、穀物、例えば、粉砕又は破砕された小麦、オーツ麦、麦、トウモロコシ及びコメ;植物性タンパク質飼料、例えば、油菜、豆、及びヒマワリを主成分とする飼料;動物性タンパク質飼料、例えば、血紛、肉紛、骨粉及び魚紛;糖分及び乳製品、例えば、各種粉乳及び乳漿粉末からなる乾燥成分などをさらに含んでよく、その他にも、栄養補充剤、消化及び吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含んでよい。
【0059】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与してもよく、食用担体中で他の飼料添加剤と組み合わせて投与してもよい。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとして、又はこれらを動物飼料に直接混合したり又は飼料とは別の経口剤形として容易に動物に投与できる。前記飼料添加剤を動物飼料とは別に投与する場合に、当該技術分野によく知られているように、食品学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、即時放出又は徐放性剤形として製造できる。このような食用担体は、固体又は液体、例えば、トウモロコシ澱粉、ラクトース、スクロース、豆フレーク、落花生油、オリーブ油、胡麻油及びプロピレングリコールであってよい。固体担体が使われる場合に、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤又は含糖錠剤又は微分酸性形態のトップドレッシングであってよい。液体担体が使われる場合に、飼料添加剤は、ゼラチン軟質カプセル剤、シロップ剤、懸濁液、エマルジョン剤、又は溶液剤の剤形であってよい。
【0060】
また、前記飼料添加剤及び飼料は、補助剤、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤、溶液促進剤などを含有できる。前記飼料添加剤は、浸注、噴霧又は混合して動物の飼料に添加して使用されてよい。
【0061】
本発明の飼料又は飼料添加剤は、哺乳類、家禽類及び魚類を含む多数の動物食餌に適用できる。
【0062】
前記哺乳類として、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、実験用齧歯動物、及び実験用齧歯動物の他にも、ペット(例えば、イヌ、ネコ)などに使用可能であり、前記家禽類として、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、キジ、及びウズラなどにも使用可能であり、前記魚類として、マスなどに使用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明の飼料又は飼料添加剤は、動物食餌に適用され、動物の成長、免疫強化などのために使用可能である。
【0064】
本発明に係る組成物に含まれるラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)菌株の量は、1回を基準に約106~1012cfu/mlであってよく、例えば、107~1011cfu/ml、108~1010cfu/mlであってよい。菌株を投与する場合には、生菌状態で投与することが好ましく、摂取前に死滅させたり又は減殺(attenuation)状態で投与できる。また、培養上澄液などを用いて製造する場合には、熱処理過程による滅菌化過程をさらに行うことができる。最小の効能を有するのに必要な菌株量及び一日摂取程度は、摂取者の身体又は健康状態によって異なってよいが、一般に、約106~1012cfu/mlであってよく、例えば、107~1011cfu/ml、108~1010cfu/mlであってよい。
【0065】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含む自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物の製造方法を提供する:
(a)ラクトバチルスサケイ菌株を準備する段階;及び
(b)前記菌株を培養液で培養する段階。
【0066】
本発明の好ましい具現例によれば、前記製造方法は、前記培養液からラクトバチルスサケイ菌株に由来する細胞外小胞体を分離する段階をさらに含む。
【0067】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、ラクトバチルスサケイ菌株由来の細胞外小胞体を準備する段階を含む、自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物の製造方法を提供する。
【0068】
〔発明の効果〕
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである:
(i)本発明はラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物;又は、前記ラクトバチルスサケイ、その培養物、破砕物、抽出物又は発酵物に由来する細胞外小胞体;を有効成分として含む自己免疫疾患の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0069】
(ii)本発明の組成物が含むラクトバチルスサケイ又は細胞外小胞体は、様々な自己免疫疾患の原因となる前炎症性因子(例えば、TNFα及び自己抗体コラーゲン抗原特異的IgGなど)を抑制したり、又は免疫抑制細胞(例えば、tolDC及びTregsなど)の割合を増加させたりし、自己免疫疾患の予防又は治療に効果的に利用可能である。
【0070】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕コラーゲン誘導関節炎マウスモデルにラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株を経口投与して17週間における関節炎指数(arthritic score)と発病率を示すグラフである。
【0071】
〔
図2〕実験動物の血液を採取して血液内炎症性サイトカイン(proinflammatory cytokine)であるTNFαの濃度を測定した結果である。
【0072】
〔
図3〕実験動物の血液を採取して血液内自己抗体コラーゲン抗原特異的IgGの濃度を測定した結果である。
【0073】
〔
図4〕腸内リンパ節で免疫を抑制する寛容原性樹状細胞(Tolerogenic dendritic cells,tolDC)の割合を測定した結果である。
【0074】
〔
図5〕腸内リンパ節で免疫を抑制する制御性T細胞(Regulatory T Cells,Tregs)の割合を測定した結果である。
【0075】
〔
図6〕ラクトバチルスサケイLBML6菌株から分離されたEVのサイズを示す。
【0076】
〔
図7〕ラクトバチルスサケイLBML6菌株から分離されたEVの濃度を示す。
【0077】
〔
図8〕ラクトバチルスサケイLBML6菌株又はこれから分離されたEV処理時に皮膚細胞の分裂マーカーであるK10の発現を確認した結果である。
【0078】
〔
図9〕ラクトバチルスサケイLBML6菌株又はこれから分離されたEV処理時に皮膚細胞の分裂マーカーであるインボルクリン(Involucrin)の発現を確認した結果である。
【0079】
〔
図10〕ラクトバチルスサケイLBML6菌株又はこれから分離されたEV処理時にCD4 T細胞の活性が抑制されるか否かを確認した結果である。
【0080】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例に限定されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0081】
実施例
材料及び方法
1.ラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株の準備
2021年06月15日付に韓国微生物保存センターにKCCM13011Pの寄託番号として寄託されたラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株は、MRS液体培地30mlに0.1%接種して30℃で18時間培養した。培養後に、3500rpmで10分間遠心分離し、菌体はPBS溶液で3回洗浄した後、残っている培地成分を除去して得た。
【0082】
2.実験動物の準備
本試験は、DBA-1Jマウスにウシコラーゲン(Bovine collagen)を用いて自己免疫疾患の一つであるリウマチ関節炎モデル(Rheumatoid arthritis model)を作った後、試験物質の効果を評価するために行った。
【0083】
3.試験物質の投与
実施例の投与試験物質の調製は、適量の試験物質を称量した後、賦形剤に希釈して調製した。試験群の構成及び投与量設定は、次表1の通りである。
【0084】
【0085】
試験物質はそれぞれ、200μL/匹で5回/週、7週間経口投与したし、対照群は、生理食塩水のみを投与した。経口投与は、動物を頸背部皮膚固定法で固定し、経口投与用ゾンデを用いて胃内に直接投与した。
【0086】
試験群は、正常(Normal)(Control;PBS)、CIA(関節炎誘発+PBS)、CIA+菌株(関節炎誘発+本発明菌株)を処理して試験群構成及び投与量を設定した。
【0087】
4.EVの分離
ラクトバチルスサケイを(LBML6)MRS液体培地30mlに0.1%接種し、30℃で18時間培養した。培養後に、3500rpm、4℃で10分間1次遠心分離後に、10,000xg、4℃で20分間2次遠心分離して培養上澄液を回収し、最終0.22μmフィルターでろ過して菌体の除去された培養上澄液を回収した。培養上澄液と16% PEG6000が溶けている1M NaCl溶液を同量で混ぜて4℃で15時間反応させた後、10,000xg、4℃で20分間遠心分離してEVペレットを得た。得られたEVペレットは、5% PEG6000が溶けている0.5M NaCl溶液で再懸濁(resuspension)して洗浄後に、11,000rpm、4℃で20分間遠心分離を行ったし、ペレットをPBSに再懸濁して最終的にラクトバチルスサケイ(LBML6)由来EVを分離した。分離されたEVは、ZetaView(Particle Metrix GmbH)を用いてサイズ(
図6)と濃度(
図7)を測定した。
【0088】
5.骨髄から未成熟樹状細胞分化
マウスの大腿骨(femur)と脛骨(tibia)の骨髄細胞(bone marrow cells)(オリエントバイオ、Balb/c、雌6週)から単核球(monocytes)をフィコール勾配(Ficoll gradient)方法(Hlozkova,K.,Starkova,J.Assessment of the Metabolic Profile of Primary Leukemia Cells.J.Vis.Exp.(141),e58426,doi:10.3791/58426(2018))によって遠心分離して分離した。前記分離された単核球は、2×106/wellの濃度で6ウェルプレートに準備し、胎児ウシ血清(Fetal Bovine Serum,FBS)が含まれた培地(RPMI)にGM-CSF20ng/ml、IL-410ng/mlを共に処理した。その後、6日間培養し、3日経過時に、新鮮な培地とサイトカインに入れ換え、分化した未成熟樹状細胞を得た。
【0089】
6.成熟樹状細胞の分化
上記得られた未成熟樹状細胞(Immature DC)を成熟樹状細胞(mature DC)に分化させるために、陽性対照群LPSを2時間処理して成熟樹状細胞への分化及び活性を誘導し、その後、2次刺激源であるラクトバチルスサケイ(LBML6)、そしてラクトバチルスサケイ(LBML6)由来EVをそれぞれ、MOI 1、10で24時間共同培養した。
【0090】
7.T細胞共同培養
マウス脾臓から分離されたCFSE(Invitrogen)染色のCD3+ T細胞は、ラクトバチルスサケイ(LBML6)と24時間培養された樹状細胞と1:1の割合で3日間共同培養した。tolDCによってT細胞の活性が抑制されたかを評価するために、T細胞の分裂程度測定(CFSE)、分泌されたサイトカイン生成量(IFNr,IL-17)は、CBA assay kit(BD Th1/2/17CBA kit)を用いて確認した。また、共同培養からの培養液は、乾癬のin vitroモデルに適用するために貯蔵後に使用した。
【0091】
8.ヒト皮膚細胞(human keratinocytes)の乾癬モデル準備
4×105Hacat細胞(CLS)は、6ウェルに分注された。細胞が付着した時にCaCl2(Sigma)は4時間処理されたし、細胞の炎症を誘発するためにimiquimod(IMQ,Calbiochem)がさらに処理された。24時間後に5実験で行われた培養液は各ウェルに処理されたし、24時間後に細胞は回収し、遺伝子発現の測定のためにRNAに分離(isolation)した。
【0092】
9.遺伝子発現測定(qPCR)
各細胞での遺伝子発現測定のために、細胞のRNAはcDNA合成キット(Thermo)の逆転写酵素(reverse thranscriptase)とdNTPによってcDNAに合成された。遺伝子の各プライマ(primer)(Macrogen)で増幅された。
【0093】
実験結果
実施例1.コラーゲン誘導関節炎マウスモデルにおける関節炎発生率及び指数測定
関節炎指数(Arthritis score)測定:試験物質投与直前、及び投与後から試験期間中に1週3回、下記表2に提示の基準によって関節炎程度をスコアリング(scoring)した。四肢の点数を合算して最高点数を16点とした。状態による点数表は次の通りである。
【0094】
【0095】
コラーゲン誘導関節炎マウスモデルにラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株を経口投与した17週間に関節炎指数(arthritic score)及び発病率を
図1に示した。
【0096】
その結果、コラーゲン誘導関節炎誘発対照群において最も高い発病率と関節炎指数が見られたし、ラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株処理群において発病率と関節炎指数が有意のレベルに減少していることを確認した。
【0097】
実施例2.血中TNFα及びコラーゲン抗原特異的IgG濃度測定
実験動物の血液を採取して血液内炎症性サイトカインTNFαと自己抗体コラーゲン抗原特異的IgGの濃度を測定した。
図2は、TNFαの濃度を測定した結果であり、
図3は、IgG及びコラーゲン抗原特異的IgGの濃度を測定した結果である。
【0098】
図2及び
図3に見られるように、正常群に比べて関節炎誘発時に血液内TNFα及びIgGの生成が促進されることが確認でき、実験動物にラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株を投与した時にTNFα及びIgGの濃度が減少することが確認できた。
【0099】
実施例3.腸内リンパ節免疫抑制細胞測定
腸内リンパ節で免疫を抑制する寛容原性樹状細胞(Tolerogenic dendritic cells,tolDC)と制御性T細胞(Regulatory T Cells,Tregs)の割合を確認した。
図4は、tolDC細胞の割合を測定した結果であり、
図5は、Tregs細胞の割合を測定した結果である。
【0100】
図4及び
図5に見られるように、正常群と関節炎誘発対照群に比べて、ラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株を投与した時に、腸内リンパ節で免疫を抑制するtolDC細胞とTregs細胞の割合が増加することを確認した。
【0101】
実施例4.LBML6の乾癬緩和効能
HacaT細胞にCaCl
2とIMQを処理すれば、細胞の分裂と炎症を誘導して角質層を誘導することができる。皮膚細胞の分裂マーカーであるK10(
図8)、インボルクリン(Involucrin)(
図9)の発現を確認したとき、LBML6(MOI 1)とLBML6 EVによって誘導された培養液において遺伝子発現が有意に減少することを確認し、よって、皮膚細胞の分裂を抑制していることを確認した。
【0102】
実施例5.CD4 T細胞活性抑制効能
CD4 T細胞の分裂増加は、T細胞が活性化されて様々な炎症反応に関与すると知られている。ラクトバチルスサケイ由来EVによって誘導されたtolDCがCD4 T細胞の活性を直接抑制できるか否かを調べるために、ラクトバチルスサケイ(LBML6)及びラクトバチルスサケイ由来EVによって誘導されたtolDCを、CFSEが染色されたCD4 T細胞と1:1の割合で3日間共同培養した。3日後共同培養された細胞を回収してCFSEの減少程度を測定した。
【0103】
LPSを処理した樹状細胞と共同培養したT細胞は略90%程度の分裂を示した。しかし、ラクトバチルスサケイ由来EVを処理した樹状細胞と共同培養したT細胞は、約60%程度分裂が抑制されたことを確認した。これは、ラクトバチルスサケイ由来EVによって誘導されたtolDCがCD4 T細胞の活性を直接抑制し、免疫反応を減少させ得ることを意味する。
【0104】
以上の結果を踏まえると、ラクトバチルスサケイ(LBML6)及びラクトバチルスサケイ(LBML6)由来EVは、DCの活性減少によってCD4 T細胞の活性を抑制し、免疫反応を減少させることが確認できる。したがって、リウマチ関節炎を含む様々な自己免疫疾患を調節することができる。
【0105】
以上、本発明の実施例について説明したが、該当技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を様々に修正及び変更させることができ、これらもまた本発明の権利範囲内に含まれるといえよう。
【0106】
[受託番号]
寄託機関名:韓国微生物保存センター(海外)
受託番号:KCCM13011P
受託日:20210615
寄託機関名:韓国微生物保存センター(海外)
受託番号:KCCM12654P
受託日:20200114
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13818BP
受託日:20190307
【0107】
【0108】
【0109】
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1】コラーゲン誘導関節炎マウスモデルにラクトバチルスサケイLBML6(Lactobacillus sakei LBML6)菌株を経口投与して17週間における関節炎指数(arthritic score)と発病率を示すグラフである。
【
図2】実験動物の血液を採取して血液内炎症性サイトカイン(proinflammatory cytokine)であるTNFαの濃度を測定した結果である。
【
図3】実験動物の血液を採取して血液内自己抗体コラーゲン抗原特異的IgGの濃度を測定した結果である。
【
図4】腸内リンパ節で免疫を抑制する寛容原性樹状細胞(Tolerogenic dendritic cells,tolDC)の割合を測定した結果である。
【
図5】腸内リンパ節で免疫を抑制する制御性T細胞(Regulatory T Cells,Tregs)の割合を測定した結果である。
【
図6】ラクトバチルスサケイLBML6菌株から分離されたEVのサイズを示す。
【
図7】ラクトバチルスサケイLBML6菌株から分離されたEVの濃度を示す。
【
図8】ラクトバチルスサケイLBML6菌株又はこれから分離されたEV処理時に皮膚細胞の分裂マーカーであるK10の発現を確認した結果である。
【
図9】ラクトバチルスサケイLBML6菌株又はこれから分離されたEV処理時に皮膚細胞の分裂マーカーであるインボルクリン(Involucrin)の発現を確認した結果である。
【
図10】ラクトバチルスサケイLBML6菌株又はこれから分離されたEV処理時にCD4 T細胞の活性が抑制されるか否かを確認した結果である。
【国際調査報告】