(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】特定の投与レジメンによる患者に対する薬物の効果を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240614BHJP
G16B 40/00 20190101ALI20240614BHJP
【FI】
G16H20/10
G16B40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576435
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2022065507
(87)【国際公開番号】W WO2022258669
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523465078
【氏名又は名称】リクソフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョナタン・ショヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ・アイラル
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・カリファ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、患者に対する薬物の効果を決定するための方法に関する。既知のドーズの前記薬物の投与を受ける患者母集団内での薬物曝露量の変動を記述する母集団薬理学的モデルが取得される(S1)。患者母集団内での前記変動の原因に関する少なくとも1つのパラメータについて、個々の患者特性および/または少なくとも1人の患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を条件とする分布から、前記パラメータの複数の値がサンプリングされる。母集団薬理学的モデルを使用することによって、サンプリングされたシミュレートされた値の集合について、所与の投与レジメンによる対応する薬物曝露量が計算される(S4)。少なくとも計算された薬物曝露量に基づいて、少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、所与の患者に対する薬物の効果が決定される(S10)。本開示はさらに、対応するコンピュータプログラムおよび処理回路に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する薬物の効果を決定するための方法であって、前記方法は、
母集団薬理学的モデルを取得するステップ(S1)であって、前記モデルは、既知のドーズの前記薬物の投与を受ける患者母集団内での薬物曝露量の変動を記述する、ステップと、
前記患者母集団内での前記変動の原因に関する少なくとも1つのパラメータについて、個々の患者の特性および/または少なくとも1人の患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を条件とする分布から、前記パラメータの複数の値をサンプリングするステップ(S2)と、
値の集合を作るステップ(S3)であって、値の1つの集合は、前記パラメータの各々の1つのサンプリングされた値を含む、ステップと、
前記母集団薬理学的モデルを使用することによって、値の各集合について、所与の投与レジメンによる対応する薬物曝露量を計算するステップ(S4)と、
少なくとも前記計算された薬物曝露量に基づいて、少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する前記薬物の前記効果を決定するステップ(S10)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記患者は以前の投与レジメンを受けており、前記方法は、前記以前の投与レジメンによる前記患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を取得するステップ(S9)をさらに含み、
前記患者に対する前記薬物の前記効果を決定するステップ(S10)は、前記測定値にさらに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬物の前記効果を決定するステップは、前記計算された薬物曝露量を少なくとも1つの曝露しきい値と比較するステップ(S5)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、各々の計算された薬物曝露量を前記薬物の前記効果の大きさの対応するレベルに結び付けるステップ(S6)をさらに含み、
前記患者に対する所与の投与レジメンによる前記薬物の前記効果を決定するステップは、前記結びつけられた大きさのレベルに基づく、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物の前記効果を決定するステップは、前記計算された薬物曝露量に基づいて前記効果を表すスコアを決定するステップ(S7)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者母集団は、一般母集団の選択された部分である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬物曝露量は、瞬間曝露値に関連する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記薬物曝露量は、所定の時間間隔にわたる平均曝露量または累計曝露量に関連する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記患者母集団内での前記変動の原因に関連する少なくとも1つのパラメータについて、前記患者母集団内での前記パラメータの値の明示的な条件付き分布からの直接サンプリングを使用するステップをさらに含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記患者母集団内での前記変動の原因に関連する少なくとも1つのパラメータについて、前記薬理学的モデルに適用されるマルコフ連鎖モンテカルロ法を使用するステップをさらに含み、
前記パラメータの複数のシミュレートされた値をサンプリングするステップは、前記マルコフ連鎖モンテカルロ法を使用して構築されたマルコフ連鎖に基づく、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の投与レジメンについて、
前記母集団薬理学的モデルを使用することによって、値の集合ごとに、前記追加の投与レジメンによる対応する追加の薬物曝露量を計算するステップと、
前記計算された追加の薬物曝露量に基づいて、前記患者に対する前記追加の投与レジメンによる前記薬物の前記対応する影響を決定するステップと
をさらに含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも前記所与の投与レジメンについて、前記患者に対する前記薬物のパーソナライズされた投与レジメンを決定することを考慮して、前記対応する決定された効果を提供するステップ(S11)をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
処理ユニットにアクセス可能であり、前記処理ユニットによって実行されると、前記処理ユニットに請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を行わせる1つまたは複数の記憶された命令のシーケンスを含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
メモリ(2)に動作可能に接続された処理ユニット(1)を備える処理回路であって、前記処理回路は、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を行うように構成される、処理回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオインフォマティクスの分野に属する。これは一般に、薬物動態または薬力学に関する。
【0002】
特に、少なくとも1つの特定の投与レジメンを用いた、少なくとも1人の患者に対する薬物に関する情報を決定するための方法と、対応するコンピュータプログラムと、対応する処理回路とが開示される。
【背景技術】
【0003】
治療薬物モニタリング(TDM)は、例えば、血液、組織、または臓器の中の投薬レベルの測定を専門とする臨床化学および臨床薬理学の一分野である。その主な焦点は、狭い治療範囲を有する薬物、すなわち、過少投与または過剰投与されやすい薬物である。TDMは、臨床体験または臨床試験が一般母集団または特殊母集団において転帰を改善したことを示した薬物のドーズを個別に調整することによって、患者のケアを改善することを目的とする。それは、先験的な遺伝薬理学的情報、人口統計学的情報および臨床情報、ならびに/または薬物の濃度の後験的測定(薬物動態モニタリング)もしくは効果の生物学的代用マーカーまたはエンドポイントマーカー(薬力学モニタリング)に基づくことができる。
【0004】
薬物濃度データの解釈に影響を与える多くの変数、すなわち、薬物の投与時間、投与経路、投与量、サンプリングの時間、取り扱い条件および保管条件、分析方法の精度および正確さ、薬物動態モデルおよび仮定の妥当性、併用薬、ならびに、最後に記載するが重要なこととして、患者の臨床状態(すなわち、疾患、腎臓/肝臓の状態、薬物療法に対する生物学的耐性など)がある。
【0005】
多くの異なる専門家(医師、臨床薬剤師、看護師、臨床検査技師など)が、薬物濃度モニタリングの様々な要素に関与しており、これは、真に学際的なプロセスである。構成要素のいずれか1つでも適切に実行できないことは、治療を最適化するために薬物濃度を使用することの有用性に重大な影響を与える可能性があるので、プロセス全体に対する組織化された手法が重要である。
【0006】
ドーズの個別化を行うために、同じドーズの薬物の投与を受けている複数の患者は薬物曝露量において変動性を示し得るものの、特定の患者に対する薬物の効果を合理的かつ正確に決定または予測する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。本明細書で開示する概念のさらなる特徴および利点は、以下の説明に記載される。
【0008】
本開示は、状況を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本開示は、少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する薬物の効果を決定するための方法について説明し、方法は、
母集団薬理学的モデルを取得するステップであって、前記モデルは、既知のドーズの前記薬物の投与を受ける患者母集団内での薬物曝露量の変動を記述する、ステップと、
患者母集団内での前記変動の原因に関する少なくとも1つのパラメータについて、個々の患者の特性および/または少なくとも1人の患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を条件とする分布から、前記パラメータの複数の値をサンプリングするステップと、
値の集合を作るステップであって、値の1つの集合は、前記パラメータの各々の1つのサンプリングされた値を含む、ステップと、
母集団薬理学的モデルを使用することによって、値の各集合について、所与の投与レジメンによる対応する薬物曝露量を計算するステップと、
少なくとも計算された薬物曝露量に基づいて、少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する薬物の効果を決定するステップと
を含む。
【0010】
本発明の文脈において、
「少なくとも1人の患者」は、母集団薬理学的モデルによってカバーされる患者母集団全体の部分集合を示し、この部分集合は、以下、検討中の患者の母集団を作るものとも呼ばれ、
「パラメータ」は、見かけの分布容積または消失速度定数などの薬物動態学的または薬理学的データであり、これらは、患者母集団内での薬物曝露量の変動に集合的に関連し、
「個々の患者の特性」は、個人の体重または年齢などの記述的入力データであり、これらの値は、相関または計算を通じて上記のパラメータの対応する値を決定することを可能にする。
【0011】
値の各集合は、対応する患者または個人のもっともらしい表現を表す。所与の個人ごとに、対応する複数の値の集合が作られる。それらの値の集合は、個人のパラメータの不確実性を統計的に表す。値の集合がどのように作られるかにより、すべての個人の値の集合は、集合的に、既知のドーズの薬物の投与を受けたときの薬物曝露量の変動性の点から、母集団薬理学的モデルによって定義される患者母集団を統計的に表す。実際のところ、すべての個人の値の集合はまた、集合的に、既知のドーズの薬物の投与を受けたときの薬物の1つまたは複数の効果における変動性の点から、患者母集団を統計的に表す。
【0012】
したがって、値の各集合について、一連の試験された所与の投与レジメンによる対応する薬物曝露量を計算することによって、計算の結果は、これらの試験された所与の投与レジメンの各々が、それぞれ、各患者に実際に適用された場合に引き起こされるであろう個々の薬物曝露量の指標の集合である。集合的に、個々の薬物曝露量は、これらの試験された所与の投与レジメンの各々が検討中の患者の母集団に実際に適用された場合に引き起こされるであろう薬物曝露量の指標である。
【0013】
このような指標の集合は、特定の投与レジメンによる患者に対する薬物の効果を決定するための重要な入力である。
【0014】
例えば、個々の薬物曝露量は、治療効果または望ましくない効果の発生または大きさのレベルに変換され得る。所与の投与レジメンを考慮すると、例えば、
患者母集団内での望ましくない効果の発生の頻度、または
同様の患者プロファイルを有する患者母集団のサブグループ内の治療効果の大きさの平均レベル、または
特定の患者に対する治療効果の、場合によっては不確実性窓に関連する大きさの期待されるレベル、または
特定の患者に対する望ましくない効果のリスクの予測レベル
を決定することが可能である。
【0015】
結果として、計算された薬物曝露量は、所与の投与レジメンの中から、患者にとって最良のリスク対効果比を提供する特定の投与レジメンを選択するために、試験された所与の投与レジメンの比較を可能にする。
【0016】
代わりに、異なる試験された所与の投与レジメンについて計算された薬物曝露量を補間し、結果として、試験された所与の投与レジメンのいずれよりも患者にとってさらによいリスク対効果比を提供する補間された特定の投与レジメンを決定することも可能である。
【0017】
上記の方法は、様々な用途を見出す可能性があり、例えば、特定の投与レジメンによる患者に対する薬物の決定された効果は、患者に対する初期投与レジメンを決定しようとする医師、または患者が現在受けている投与レジメンを変更しようとしている医師にとって貴重な情報である。
【0018】
任意選択で、患者は以前の投与レジメンを受けており、方法は、以前の投与レジメンによる患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を取得するステップをさらに含み、患者に対する薬物の効果を決定するステップは、前記測定値にさらに基づく。
【0019】
一般に、患者が既知のドーズの薬物の投与をすでに受けている場合、この投与レジメンにおいて患者が薬物にどれくらい耐性があるかを決定する様々な方法が存在する。そのような決定は、例えば、血液検査などの様々な測定値、医師によって実行される臨床的もしくは生理学的観察、患者からのフィードバック、またはそのような可能な入力の組合せに基づき得る。次いで、計算された薬物曝露量と組み合わせて、以前の投与レジメンを適応させ、ドーズの個別化を実行することが可能である。例えば、以前の投与レジメンは、計算された薬物曝露量に従って、中強度から高強度の望ましくない効果の低いリスクに関連付けられ得る。例えば、前記望ましくない効果が、高強度で患者に対して実際に存在する場合、計算された薬物曝露量は、より安全な投与レジメンを決定するために使用され得る。
【0020】
同じ原理は、以前の投与レジメンで患者において所望の治療効果が得られないか、または不十分にしか得られない場合に、患者にとってより有益な投与レジメンを決定するために適用される。
【0021】
任意選択で、薬物の効果を決定するステップは、計算された薬物曝露量を少なくとも1つの曝露しきい値と比較するステップを含む。
【0022】
例えば、計算された薬物曝露量は、各々、治療窓(therapeutic window)を形成する下限境界および上限境界と比較され得る。
【0023】
そのような比較は、試験された所与の投与レジメンごとに、結果として生じる薬物曝露量が治療窓内に入るシミュレートされた個々の薬物曝露量の対応する割合を決定することを可能にする。そのような比較は、試験された所与の投与レジメンごとに、患者に対する結果として生じる薬物曝露量が治療窓に一致する確率の対応する指標を決定するためにさらに使用され得る。
【0024】
任意選択で、方法は、各々の計算された薬物曝露量を薬物の前記効果の大きさの対応するレベルに結び付けるステップをさらに含み、前記患者に対する所与の投与レジメンによる薬物の効果を決定するステップは、結びつけられた大きさのレベルに基づく。
【0025】
例えば、試験された所与の投与レジメンを考慮すると、計算された薬物曝露量に結びつけられた大きさのレベルは、患者について、前記試験された所与の投与レジメンによる薬物の前記効果の大きさの期待されるレベルを予測するために使用され得る。この大きさの期待されるレベルは、不確実性窓にさらに関係付けられ得る。
【0026】
任意選択で、薬物の効果を決定するステップは、計算された薬物曝露量に基づいて前記効果を表すスコアを決定するステップを含む。
【0027】
部分的スコアは、例えば、所与の投与レジメンによる患者母集団内での薬物の所与のプラス効果またはマイナス効果の多い差の平均レベルまたは発生の頻度を示し得る。その所与の投与レジメンについての全体的スコアは、そのような部分的スコアの集合体であり得る。
【0028】
任意選択で、患者母集団は、一般母集団の選択された部分である。
【0029】
これは、既知のドーズの前記薬物の投与を受けている一般的な患者母集団の選択された部分内での薬物曝露量の変動に特に焦点を合わせるために、一般的な患者母集団モデルをフィルタリングすることに対応する。
【0030】
結果として生じるサンプリングされた値の集合は、具体的には、一般母集団の選択された部分内の仮想の患者を表す。
【0031】
可能な選択基準は、例えば、性別、年齢、体重、血液型、既知の健康上の問題、健康状態、アレルギー、進行中の治療、薬理ゲノミクスなどを含み得る。
【0032】
したがって、最初に、実際の患者が属する一般的な患者母集団の一部を指定し、次いで、すべてが一般母集団の指定された部分に属する仮想の患者を表す値の集合を作り、次いで、薬物の異なる投与レジメンについてこれらの仮想の患者の薬物曝露量を計算し、最後に、計算された薬物曝露量に基づいて実際の患者の薬物の効果を決定することが可能である。
【0033】
この問題において同じ最終結果を得るために、一般的な患者母集団の選択された部分に焦点を合わせることは、一般的な患者母集団全体を考慮するよりも少ない計算リソースを必要とする。
【0034】
任意選択で、薬物曝露量は、瞬間曝露値に関連する。
【0035】
例えば、既知のドーズの薬物の投与を受けた後、患者は、薬物を代謝し、結果として、一定期間後に最大瞬間曝露値まで、代謝物の濃度の上昇を生じる。次いで、代謝物は、徐々に身体によって排出される。患者がさらなるドーズの薬物の投与を受けない限り、この排出は、結果として、最小瞬間曝露値まで、代謝物の濃度の低下を生じる。患者によって一度に受け取られる薬物の量、および患者への薬物の2回の連続する投与間の時間間隔は、最小および最大の瞬間曝露値を制御することを可能にする投与レジメンの2つの重要なパラメータである。
【0036】
任意選択で、薬物曝露量は、所定の時間間隔にわたる平均曝露量または累計曝露量に関連する。
【0037】
例えば、いくつかの望ましくない効果の発生は、しきい値を超える、特定の時間間隔にわたる平均曝露量、または累計曝露量もしくは総曝露量に関連する場合がある。
【0038】
任意選択で、方法は、患者母集団内での前記変動の原因に関連する少なくとも1つのパラメータについて、薬理学的モデルに適用されるマルコフ連鎖モンテカルロ法(一例は、メトロポリスヘイスティング法)を使用するステップをさらに含み、前記パラメータの複数の値をサンプリングするステップは、前記マルコフ連鎖モンテカルロ法を使用して構築されたマルコフ連鎖に基づく。
【0039】
MCMC法は、直接サンプリングが困難な確率分布からサンプリングするためのアルゴリズムのクラスである。適度な計算リソースによるMCMC法に基づく計算の出力は、薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を用いて、既知のドーズの薬物の投与を受ける所与の個人について、薬物曝露量の変動の原因に関連するパラメータの不確実性を表す数百の値を生成することを可能にする。このサンプリング手法は、事前に、個々のデータとともに母集団分布p(ψ)を取得し、事後に、患者母集団内での前記パラメータの値の条件付き分布pを取得し、そのような条件付き分布を(ψ|y)と記す、個々のベイズ推定を実行することと等価である。
【0040】
したがって、任意選択で、方法は、患者母集団内での前記変動の原因に関連する少なくとも1つのパラメータについて、患者母集団内での前記パラメータの値の明示的な条件付き分布からの直接サンプリングを使用するステップを含む。
【0041】
任意選択で、方法は、少なくとも1つの追加の投与レジメンについて、
母集団薬理学的モデルを使用することによって、値の集合ごとに、前記追加の投与レジメンによる対応する追加の薬物曝露量を計算するステップと、
計算された追加の薬物曝露量に基づいて、患者に対する前記追加の投与レジメンによる薬物の対応する影響を決定するステップと
をさらに含む。
【0042】
これは、様々な可能な投与レジメンによる患者に対する薬物の期待される効果を比較することを可能にする。比較の結果は、患者に適した投与レジメンを決定するための補助情報として使用され得る。
【0043】
任意選択で、方法は、少なくとも所与の投与レジメンについて、患者に対する薬物のパーソナライズされた投与レジメンを決定することを考慮して、対応する決定された効果を提供するステップをさらに含む。
【0044】
例えば、決定された効果は、例えば、所与の投与レジメンに関連付けられ、データベース内に記憶され得る。決定された効果はまた、場合によっては、他の試験された所与の投与レジメンについて決定された他の効果とともに表示され得る。
【0045】
本開示の他の態様は、処理ユニットにアクセス可能であり、処理ユニットによって実行されると、処理ユニットに上記の方法を行わせる1つまたは複数の記憶された命令のシーケンスを含むコンピュータプログラムである。
【0046】
本開示の他の態様は、メモリに動作可能に接続された処理ユニットを備える処理回路であり、処理回路は、上記の方法を行うように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の例示的な実施形態によるコンピュータプログラムの一般的なアルゴリズムのフローチャートである。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による処理回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
このセクションを通じて、コンピュータプログラムの一般的なアルゴリズムのフローチャートを示す
図1が参照される。プロセッサによって実行されると、そのようなコンピュータプログラムは、プロセッサに本発明の実施形態による方法を行わせる。
【0049】
様々なモジュールについて以下で説明するが、これらのモジュールは、プロセッサが、特にモジュールの機能に関連するプログラムの命令またはプログラムの命令のセットを実行するように構成された、ソフトウェアおよび/またはハードウェアの機能モジュールとみなされるべきである。
【0050】
図2は、メモリ(2)に動作可能に接続されたプロセッサ(1)を備える例示的な処理回路であって、処理回路が上記の方法を行うように構成された、処理回路を示す。処理回路は、適用可能な場合は常に、入力を受信することおよび/または出力を送信することを可能にするように構成された通信インターフェース(3)をさらに備え得る。例えば、このセクションにおいて、入力データを受信することを可能にする通信インターフェースの一例であるキーボードまたはタッチスクリーンなどのヒューマンマシンインターフェースが参照される。例えば、画像またはテキストの形態における出力データを送信することを可能にする通信インターフェースの一例である視覚ディスプレイも参照される。外部ドライブまたはクラウドは、入力/出力通信インターフェースの一例であり、これらは、
母集団薬理学的モデルまたはそのようなモデルの方程式において入力されるべきパラメータの値などの入力データを記憶し得、または
患者に対する投与レジメンによる決定された薬物の効果などの出力データを記憶し得る。
【0051】
モデル検索モジュールによって、母集団薬理学的モデルが取得される(S1)。
【0052】
薬理学的モデルは、薬物に関連付けられ、既知の量の薬物の吸収に続く、薬物濃度、および/または薬物代謝物濃度、および/または直接もしくは間接的に誘導される効果の時間に対する変動を記述する。そのような吸収は、例えば、経口または注射によって行われ得る。そのようなモデルは、解析的方程式または常微分方程式によって記述されることが可能である。そのようなパラメトリックモデルの使用は、薬物の完全な薬物動態学および/または薬力学を記述することを可能にする。
【0053】
母集団薬理学的モデルは、個人間の変動性を考慮することを目的とするための、一般的な薬理学的モデルの変形形態である。母集団薬理学的モデルを記述するパラメータは、固定されず、患者母集団を記述するための統計的法則に従う。これは、既知のドーズの薬物の投与を受けたことに応じて典型的な母集団を決定し、母集団の中で薬物の薬物動態および薬力学における変動を定量化することを可能にする。
【0054】
典型的には、取得された母集団薬理学的モデルは、必ずしも限定はしないが、考慮されている分子の提出レポートからのデータを含み得る、文献データの表現である。
【0055】
母集団薬理学的モデルに組み込まれた統計的法則に基づいて、既知のドーズの薬物の投与を受けた場合の患者母集団内での薬物曝露量の変動の主な原因に関連するパラメータとして、要因の関連する集合を分離することが可能である。
【0056】
本文書の枠組みにおいて、そのようなパラメータの関連する集合(relevant set)は、サンプリングされる少なくとも1つのパラメータ、場合によっては2つ、3つ以上のパラメータを含むと想定される。
【0057】
そのようなパラメータの性質は、当面の特定のユースケースに依存する。
【0058】
当面のユースケースは、少なくとも、取得された母集団薬理学的モデルに基づいて定義される。
【0059】
例えば、第1の特定の薬物を考慮すると、所与の投与レジメンを受けた患者の薬物曝露量における決定的要因として、年齢が特定され得る。逆に、第2の特定の薬物を考慮すると、所与の投与レジメンを受けた患者の薬物曝露量は、広い年齢範囲にわたって正常な統計的変動のみを受け得ることが、観察または計算され得る。結果として、第2の特定の薬物について、前記所与の投与レジメンを受けた患者の薬物曝露量にほとんどまたはまったく影響を及ぼさないものとして、年齢が特定され得る。
【0060】
当面のユースケースは、実際の患者に関する特定の情報に基づいて任意選択でさらに定義され得る。例えば、実施の患者は、投与レジメン(以下、「以前の投与レジメン」)に従って薬物の投与をすでに受けている場合があり、実際の患者の結果として生じる薬物曝露量および/または患者に対する1つもしくは複数の結果として生じる効果に関連する観察または測定が得られている場合がある。そのような観察または測定は、サンプリングされるパラメータの関連する集合をターゲットとするための追加入力として使用され得る。
【0061】
ハンズフリー手法において、そのようなパラメータの性質および数は、例えば、主成分分析に基づいて、当面の特定のユースケースに応じて自動的に選択され得る。
【0062】
代わりに、そのようなパラメータの性質および数は、事前選択され得るが、ユーザが、ヒューマンマシンインターフェースの使用を通じて、パラメータの異なる選択を行うこと、または選択されたパラメータの数を自由に拡張もしくは削減することを可能にする。例は、特に、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ボタン、スライダ、音声認識ソフトウェアの使用などを含む。そのようなパラメータの性質および数はまた、いかなる事前選択もなしに、ユーザによる選択に完全に委ねられ得る。
【0063】
図1において、例示的なユースケースにおいて、両方とも薬物動態学的パラメータである見かけの分布容積および消失速度定数が、パラメータの関連する集合を作り得ると想定される。一般に、パラメータの関連する集合は、薬力学的パラメータおよび/または薬物動態学的パラメータを含む、任意のタイプの薬理学的パラメータを含み得る。結果として、そのようなユースケースにおいて、取得された母集団薬理学的モデルは、方程式または方程式の集合を含み、患者の薬物曝露量を見かけの分布容積、消失速度定数、および投与レジメンの指標の関数として表現することを可能にする。
【0064】
例えば、
見かけの分布容積および消失速度定数は、各々、例えば、特定の数値または範囲によって示され得、
投与レジメンは、投与されたドーズあたりの薬物の量と組み合わされたドーズ投与の頻度によって示され得る。
【0065】
既知のドーズの薬物の投与を受けたときの患者母集団内での薬物曝露量の変動の原因に関連する少なくとも1つのパラメータについて、前記パラメータの複数のシミュレートされた値が、サンプリングモジュールによってサンプリングされる(S2)。
【0066】
図1は、例示的なユースケースにおいて、2つのパラメータ、すなわち、
見かけの分布容積に関連する第1のパラメータの数値、および
消失速度定数に関連する第2のパラメータの数値
のサンプリングを示す。
【0067】
すでに述べたように、母集団モデルは、p(ψ)と記される各パラメータの統計的法則を提供し、ここで、ψは、パラメータのベクトルである。条件付き分布は、患者特性の入力値および/または薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値が既知であると仮定した各個人の統計学的法則に対応し、p(ψ|y)と記され、ここで、yは、測定された患者特性および/または薬物曝露量に関連する測定値に関連する。
【0068】
条件付き分布は、所与の個人に関する個々のパラメータ値の不確実性を表す。確率分布を直接計算することは不可能であるが、例えば、マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)を使用して、分布からサンプルを取得することが可能である。
【0069】
MCMC法は、直接サンプリングが困難な確率分布からサンプリングするためのアルゴリズムのクラスである。それらは、定常状態において、対象の確率分布からの引き出しをもたらす確率的手順を構築することで構成される。
【0070】
MCMCクラスの中で、メトロポリスヘイスティング(MH)アルゴリズムは、定数まで計算されることが可能な確率分布をサンプリングすることができるという特性を有する。これは、一般に、そのような条件付き分布の場合であり、p(ψ|y)=(p(y|ψ)p(ψ))/(p(y))のように書き直されることが可能である。
【0071】
p(y|ψ)は、個々のパラメータ値がわかっている場合のデータの条件付き密度関数である。p(y|ψ)は、個々のパラメータ値と確率密度閉形式の式とを用いるモデルシミュレーションを使用して計算されることが可能である。
【0072】
p(ψ)は、母集団内での個々のパラメータの密度関数であり、計算されることも可能である。
【0073】
尤度p(y)は、一般に、閉形式の解を持たないが、一定である。
【0074】
簡単に言えば、MHアルゴリズムは、何度も反復される。各反復において、各個人の提案分布から新しい個人パラメータ値が引き出される。次いで、そのような新しい値は、p(ψ)とp(y|ψ)とに依存する確率で受け入れられる。最後に、移行期間の後、アルゴリズムは、受け入れられた値が条件付き分布確率p(ψ|y)に従う定常状態に達する。提案分布について、様々な異なる分布、中でも、母集団分布、一次元ガウスランダムウォーク、または多次元ガウスランダムウォークが可能である。ランダムウォークの場合、ガウス分布の分散は、最適な採択率に達するように自動的に適合される。
【0075】
結果として、既知のドーズの薬物の投与を受けたときの患者母集団内での薬物曝露量の変動の原因に関連する少なくとも1つのパラメータについて、n個のパラメータ値の集合がサンプリングによって取得され、nは、MHアルゴリズムの総反復数以下の整数である。
【0076】
任意の特定の個人の任意の特定のパラメータについて、これらのサンプリングされたパラメータ値は、ψiと記され、iは、1からnまでの正の整数である。ψiの経験的分布は、所与の個人に関するψの不確実性を表す。言い換えれば、サンプリングされたパラメータ値ψiは、個人に関する前記パラメータの値の条件付き分布の推定を示す。nの値は、ψiがψの不確実性を可能な限り代表するようにすることと、計算要件を最小化することとの間の妥協点として選択される。発明者らは、nの所定の値を数百から数千までの範囲において設定することによって、満足のいく結果を得ており、例えば、nは、500に等しくてもよい。
【0077】
再グループ化モジュールによって、サンプリングされたパラメータ値の集合が作られる(S3)。
【0078】
サンプリングされたパラメータ値の集合は、複数のシミュレートされた値がサンプリングモジュールによってサンプリングされた(S2)パラメータごとに1つのパラメータ値を含む。
【0079】
単一のパラメータの複数のシミュレートされた値がサンプリングモジュールによってサンプリングされた(S2)特定の場合において、再グループ化モジュールによって作られた(S3)サンプリングされたパラメータ値の集合は、シングルトンである。
【0080】
図1は、例示的なユースケースにおいて、値の複数の集合を示し、各集合は、
見かけの分布容積に関連する、Vdと記される第1のパラメータの1つの数値、および
消失速度定数に関連する、Kと記される第2のパラメータの1つの数値で作られる。
【0081】
値の集合を作る薬物動態学的および/または薬力学的な個々のパラメータは、個々の患者特性の入力値に基づいて生成、サンプリング、または計算され得る。
【0082】
一例において、個々の患者特性は、
年齢に関連する個々のパラメータの1つの数値(年単位)、ならびに、
性別に関連する個々のパラメータの1つのバイナリ値(M/Fとして示される)、および
体重に関連する個々のパラメータの1つの数値(kg単位)
を含み得る。
【0083】
値の各集合は、「シミュレートされた患者」を表す。
図1の例において、「シミュレートされた患者」は、それらの見かけの分布容積および消失速度定数によって特徴付けられる仮想の患者である。
【0084】
例示的な実装形態において、複数のパラメータの値をサンプリングすること(S2)は、最初に全体として行われ得、サンプリングされたパラメータ値の集合は、全体としてその後にのみ作られ得る(S3)。
【0085】
他の例示的な実装形態において、複数のパラメータの値をサンプリングすること(S2)およびサンプリングされたパラメータ値の集合を作ること(S3)は、サンプリングモジュールの機能と再グループ化モジュールの機能の両方を有するモジュールによって、統合的に行われ得る。
【0086】
具体的には、2つのパラメータの値をサンプリングし、サンプリングされたパラメータ値の集合を作るためのアルゴリズムの中間反復は、
アルゴリズムの以前の反復を通じて取得されたパラメータ値の複数の集合を取得することと、
パラメータ値の新しい集合をパラメータのベクトルとしてサンプリングし、サンプリングされた所与の値をパラメータごとに再グループ化することと、
両方のパラメータのサンプリングされた所与の値と、他方のパラメータの値を知っているこれらのパラメータのうちの一方の値の既知の条件付き分布とに基づいて、新しい集合が、以前の反復を通じて取得されたパラメータ値の複数の集合に関して統計的仮説を満たすかどうかをチェックすることと、
チェックの結果に基づいて、パラメータ値の複数の集合を新しい集合で更新するか、新しい集合を拒否することと
から構成され得る。
【0087】
例えば、前述のチェックは、カイ二乗検定、t検定、または当業者によって知られている任意の他のタイプのテストなどの、しきい値に関する比較であり得る。
【0088】
パラメータ値の各々の作られた集合は、記憶され、母集団薬理学的モデルに基づいて異なる投与レジメンに従って薬物曝露量を計算するための基礎として使用され得る。
【0089】
具体的には、時間の関数として患者に投与されるべき薬物の量によって特徴付けられる少なくとも1つの投与レジメンが試験され得る。薬物の量は、例えば、薬物の重量、既知の量の薬物を含む丸薬などの単位数、既知の濃度の薬物を有する溶液の体積などとして表現され得る。投与レジメンは、例えば、「1日あたり400mgの薬物の丸薬を3錠」、または「一週間の間隔で50mg/mLの濃度において5mLの注射」として表され得る。
【0090】
代わりに、複数の投与レジメンが試験され得る。これらの投与レジメンは、例えば、データベースから自動的に検索され得、またはヒューマンマシンインターフェースを使用して手動で入力または選択され得る。
【0091】
試験された投与レジメンは、1ドーズあたりの薬物の量および/または投与の頻度に関する運用上の制約を考慮して事前定義され得る。可能な量は、薬物の利用可能な形態に関連する場合があり、薬物が経口形態でのみ利用可能な場合、丸薬の数に対応する場合がある。可能な頻度は、文献データに基づく場合もあり、または固定される場合もある。
【0092】
薬物曝露量計算機モジュールは、母集団薬理学的モデルを使用して、試験されるべき各投与レジメンによる各「シミュレートされた患者」の薬物曝露量を計算する(S4)ように構成され得る。
【0093】
単一の投与レジメンによる単一の「シミュレートされた患者」の薬物曝露量を計算するために、薬物曝露量計算機モジュールは、母集団薬理学的モデルを作るパラメトリックモデルのパラメータとして、前記「シミュレートされた患者」を表すサンプリングされたパラメータ値の作られた集合からの特定のパラメータ値を入力する。
【0094】
次いで、薬物曝露量計算機モジュールは、試験される投与レジメンによって定義される薬物の各ドーズの投与に続いて、前記入力された値を有するパラメトリックモデルの方程式に基づいて、「シミュレートされた患者」の薬物曝露量の任意の態様を計算し得る。
【0095】
薬物曝露量計算機は、例えば、薬物濃度、および/または薬物代謝物濃度、および/または各々のドーズの薬物の投与によって直接もしくは間接的に誘導される任意の効果の時間に対する変動を計算し得る。
【0096】
そのような変動は、例えば、二次元座標系における曲線として表され得、「シミュレートされた患者」の薬物曝露量に関する広範な定性的情報を提供する。
【0097】
患者の薬物曝露量の様々な定量的態様も、そのような曲線またはその数式から導出され得る。例えば、
そのような曲線が到達する最大値は、患者の最大瞬間薬物曝露量を示し、
逆に、そのような曲線が到達する最小値は、患者の最小瞬間薬物曝露量を示し、
ドーズ投与の発生とそのような曲線のその後の局所的最大値との間の時間量は、患者の薬物曝露量の動態の多くの指標のうちの1つであり、他のそのような指標は、ドーズ投与発生から下限しきい値に到達するまでの時間量であり、
定期的投与レジメンの2回の連続するドーズ投与発生を隔てる時間間隔にわたるそのような曲線の平均値は、経時的な患者の平均薬物曝露量を示し、
2回の連続するドーズ投与発生を隔てる時間間隔にわたるそのような曲線の時間積分は、これらの2回のドーズ投与発生間の患者の総薬物曝露量を示す。
【0098】
曲線はまた、各々の時間分割の間の患者の平均薬物曝露量を計算するために、2回の連続するドーズ投与発生を分離する時間間隔の分数において時間分割され得る。例えば、これらの平均薬物曝露量から、すべての時間分割にわたる時間分割の最大平均値に対応する最大平均薬物曝露量を決定することが可能である。
【0099】
以下、「患者の薬物曝露量」という表現は、薬物曝露量の上記の態様のうちのいずれかの1つまたは複数を示すデータまたはデータセットを指す。
【0100】
図1は、個々の薬物動態学的パラメータとして、見かけの分布容積Vd1と消失速度定数K1とを示すものとして定義される「シミュレートされた患者」を表す{Vd1,K1}と記された値の集合について、DrugExp11と記された第1の薬物曝露量が、DoseReg1と記された第1の投与レジメンについて計算され得、DrugExp21と記された第2の薬物曝露量が、DoseReg2と記された第2の投与レジメンについて計算され得ることを示す。
【0101】
より一般的には、サンプリングされた値のn個の集合は、試験されるべきn人の「シミュレートされた患者」およびm個の投与レジメンについて、各々n個の計算された薬物曝露量のm個の集合を計算することを可能にする。
【0102】
各々のそのような集合は、患者母集団を統計的に表す仮想の患者のグループに、試験されるべき対応する投与レジメンに従って薬物を投与することによって誘発される実際の薬物曝露量を統計的に表す。
【0103】
所与の投与レジメンについて計算された薬物曝露量は、比較器モジュールによって1つまたは複数のしきい値と比較される(S5)。
【0104】
例えば、最大瞬間薬物曝露量は、望ましくない効果に関連する最大しきい値と比較され得る。これは、
所与の投与レジメンの結果として生じる瞬間薬物曝露量が、望ましくない効果を完全に回避することを可能にする最大しきい値未満に留まるか、
または逆に、ある時点において過剰な値に達するか
を判定することを可能にする。
【0105】
例えば、最小瞬間薬物曝露量は、治療効果がないことに関連する最小しきい値と比較され得る。これは、
所与の投与レジメンの結果として生じる瞬間薬物曝露量が、治療効果を継続的に提供することを可能にする最小しきい値よりも上に留まるか、
または逆に、ある時点において不十分な値に達するか
を判定することを可能にする。
【0106】
上記の両方の比較は、瞬間薬物曝露量が時間の経過とともに所定の治療窓内に留まるかどうかをチェックするために行われ得る。前記治療窓を定義する特定の境界は、例えば、考慮される分子の提出報告に基づいて、および/または薬物曝露量の観点から前記特定の境界内にあることの(プラス効果および毒性の観点からの)患者の利益を実証する文献からの臨床試験に基づいて事前決定され得る。
【0107】
同じ原理は、最大および最小の平均薬物曝露量を対応するしきい値と比較する場合にも当てはまる。これは、所定の時間ステップについて、患者の平均薬物曝露量が前記時間ステップにわたって所定の窓内に留まるかどうかを判定することを可能にする。
【0108】
図1は、一方では、様々な「シミュレートされた患者」および様々な投与レジメンについて計算された薬物曝露量のマトリックスと、他方では、最大しきい値との比較の結果を示す。結果は、バイナリ(Y/N)の比較結果の形式において示されている。
【0109】
計算された薬物曝露量はまた、各々、関連付けモジュールによって、前記薬物曝露量によって期待される治療効果の大きさおよび/または望ましくない効果の大きさに結び付けられ(S6)または関連付けられ得る。関連付けモジュールは、薬物曝露量と起こり得る結果として生じる効果の大きさとの間の関係を示す文献データに基づいてこのタスクを実行し得る。
【0110】
図1は、様々な「シミュレートされた患者」および様々な投与レジメンについて計算された薬物曝露量のマトリックス[DrugExp11,DrugExp12,...DrugExp21,DrugExp22,...]と、関連する薬物効果のマトリックス[DrugEff11,DrugEff12,...DrugEff21,DrugEff22,...]として記される、結果として生じる効果の対応する大きさとの関連付けの結果を示す。
【0111】
比較器モジュールによる、所与の投与レジメンについて計算された薬物曝露量と1つまたは複数のしきい値との比較と同様に、所与の投与レジメンについて、関連する薬物効果の大きさを1つまたは複数のしきい値と比較することも可能である。
【0112】
これは、例えば、所与の投与レジメンが、「シミュレートされた患者」について、特定の時間フレーム中、十分な大きさの治療効果を誘発するか、または不十分な大きさの治療効果を誘発するかを判定することを可能にする。これは、例えば、所与の投与レジメンが、「シミュレートされた患者」について、特定の時間フレーム中、許容可能な量の望ましくない効果を誘発するか、または許容不可能な量の望ましくない効果を誘発するかを判定することも可能にする。
【0113】
所与の投与レジメンについて、計算された薬物曝露量全般、または比較器モジュールによって行われた比較のより具体的な結果、または関連付けモジュールによって前記計算された薬物曝露量に結びつけられた効果の大きさは、スコアリングモジュールにおいて、前記所与の投与レジメンに関連するスコアを決定する(S7)ために使用され得る。
【0114】
スコアは、前記投与レジメンの評価である。スコアは、患者母集団全体について、薬物曝露量、または1つもしくは複数の結果として生じる薬物効果に関する1つまたは複数の基準を統計的に満たすという点において、異なる投与レジメンを直接比較するために使用され得る。
【0115】
そのような基準の一例は、試験される投与レジメンが、2回の連続する薬物投与の発生間の時間間隔の有意部分にわたって、治療窓に一致する薬物曝露量をうまく誘発するかどうかである。
【0116】
したがって、この基準に従って、「シミュレートされた患者」のうち、計算された薬物曝露量が治療窓に一致する患者の割合を示すスコアを決定することが可能である。
【0117】
図1において提供する例は、そのような基準に基づく。「50」のスコアは、値の集合の半分が治療窓内の計算された薬物曝露量につながることに対応し、「100」のスコアは、値の集合のすべてが治療窓内の計算された薬物曝露量につながる完全スコアに対応する。
【0118】
そのような基準の他の例は、患者母集団内で、休薬されるべき投与レジメンが有意な大きさで望ましくない効果を誘発するリスクである。したがって、そのような基準に従って、「シミュレートされた患者」のうち、計算された薬物曝露量が所与のしきい値を超える望ましくない効果の大きさに結び付けられる「シミュレートされた患者」の割合を示すスコアを決定することが可能である。
【0119】
基準の様々な他の例は、特定のユースケースに応じて、特に所望の治療効果および起こり得る望ましくない効果の正確な性質に応じて、単独でまたは組み合わせて適用され得る。
【0120】
上記のことから、計算された薬物曝露量は、統計的な観点から、患者母集団について、治療窓などの目標範囲内の薬物曝露量を誘発することを目的として、試験された投与レジメンのコンプライアンスの程度の様々なタイプの指標を決定するために使用され得る。
【0121】
これらのタイプの指標は、特に、
計算された薬物曝露量としきい値との間の比較の結果(S5)、
計算された薬物曝露量に結びつけられた効果の大きさ(S6)、および
各々の試験された投与レジメンについて決定されたスコア(S7)
を含む。
【0122】
そのような指標は、患者母集団全体に対して、ある試験された投与レジメンを他の投与レジメンよりも一般的に推奨することを決定するために使用され得る。
【0123】
他の行動方針は、投与レジメンを個別化するための基礎として、計算された薬物曝露量、または前記計算された薬物曝露量から導出される任意のタイプの指標を考慮することである。投与レジメンを個別化することは、特定の実際の患者に対して、特定のパーソナライズされた投与レジメンを決定することを意味する。
【0124】
そうするために、試験された投与レジメンによる計算された薬物曝露量は、例えば、試験された投与レジメンによる特定の患者に対する期待される効果を決定する観点から処理され得る。
【0125】
これは、入力モジュールにおいて、前記特定の患者に関連するデータを取得することを必要とする。
【0126】
例えば、入力モジュールにおいて、例えば、ヒューマンマシンインターフェースまたはマシン間通信インターフェースを通じて、適切な投与レジメンが決定されるべき特定の患者に関連する値の集合が取得され得る(S8)。
【0127】
値の集合は、少なくとも、1つまたは複数の投与レジメンのうちの1つによる患者に対する薬物の期待される効果を決定するための関連性の範囲において、患者プロファイルを示す。
【0128】
そのような値の集合は、単一の値(シングルトン)または複数の値を含み得る。
【0129】
例えば、特定の患者に関連する値の集合は、シミュレートされた値がサンプリングモジュールによってサンプリングされた(S2)のと同じパラメータ、または前記パラメータの部分集合に関連し得る。
【0130】
図1は、特定の患者に関連する値の集合の一例として、体重75kgの48歳女性の集合{48,F,75}を示す。この特定の例において、特定の患者に関連する値の集合は、シミュレートされた値がサンプリングモジュールによってサンプリングされた(S2)のと同じパラメータに関連するだけでなく、教育的な目的のために、シミュレートされたサンプリングされた値を再グループ化することによって作られた(S3)値の集合と同じフォーマットにおいて表される。しかしながら、これは、必須ではない。実際、代わりに、同じ特定の患者に関連する値のより情報の少ない集合は、{成人、女性}であり得る。さらに他の例において、同じ特定の患者に関連する値の集合は、{身長=5'11フィート、BMI=23、年齢=48、血液型=O}であり得る。
【0131】
取得された値の集合の元のフォーマットと参照フォーマットとの間に不一致がある場合、もちろん、参照フォーマットに従って特定の患者に関連する値の調和された集合を得るために、データ変換が実行され得る。
【0132】
特定の患者に関連する取得された値の集合は、焦点を合わされるべき患者母集団の選択を決定するために使用され得、前記選択は、薬物曝露量の変動性の観点から母集団薬理学的モデルによって記述され、前記選択は、実際の患者を含む。
【0133】
例えば、母集団薬理学的モデルに基づいて、年齢が薬物曝露量に影響を与える主な要因の1つであると思われる場合、同様の年齢グループに対応する患者母集団の一部に焦点を合わせることが適切である場合がある。
【0134】
これは、例えば、
モデル検索モジュールにおいて、母集団薬理学的モデルの予備処理として、年齢に関連する任意のパラメータのパラメータ値の許容範囲を制限することによって、または
サンプリングモジュールにおいて、パラメータ値のサンプリングを許容年齢範囲内の出力値のみに制限することによって、または
特定の患者の年齢付近の許容年齢範囲内に入る年齢に関連する値を含む集合のみを保持するために、サンプリングされたパラメータ値の集合をフィルタリングすることによって行われ得る。
【0135】
例示的なシナリオにおいて、医師は、特定の患者の患者プロファイルからのデータにアクセスし得、特定の患者について、初期処方の一部として、薬物の初期投与レジメンを決定しようとし得る。
【0136】
そのようなシナリオにおいて、モデル受信モジュール、サンプリングモジュール、または再グループ化モジュールに、患者プロファイルからのデータへのアクセスを許可することによって、薬物曝露量に関する変動の原因の点で特定の患者と同様のプロファイルを有する患者母集団の一部を表すサンプリングされたパラメータ値の一連の集合を取得することが可能である。
【0137】
以前の投与レジメンによる患者の初期薬物曝露量に関連する測定値または観察は、例えば、医学的分析によって、入力モジュールにおいて直接取得され得る(S9)。例は、以前の投与レジメンによる患者に対する薬物の血中濃度または効果の大きさを含む。
【0138】
例えば、特定の患者は、以前の投与レジメンに従って薬物の投与をすでに受けている場合があり、前記投与レジメンを適応させる可能性を調査することが考えられ得る。
【0139】
測定または観察は、正確さという利点を有するが、患者の初期薬物曝露量を取得するための必要条件ではない。
【0140】
代わりの可能性は、特定の患者に関連する値の集合に基づいて、さらに以前の投与レジメンに関連する値の集合に基づいて、母集団薬理学的モデルの入力パラメータを定義することである。例えば、以前の投与レジメンは、2回の薬物投与発生間の時間間隔である期間と、特定の患者が投与発生ごとに受け取る薬物の量とによって定義され得る。入力パラメータが定義されると、以前の投与レジメンに従って、患者の関連する初期薬物曝露量を計算または予測し、次いで、計算または予測された初期薬物曝露量を入力モジュールに提供することが可能になる。
【0141】
1つまたは複数の投与レジメンについて、特定の患者に対する薬物の1つまたは複数の効果の1つまたは複数の態様が、効果決定モジュールにおいて、計算された薬物曝露量に少なくとも部分的に基づいて決定され得る(S10)。
【0142】
投与レジメンに対する前記効果を決定することは、具体的には、
前記投与レジメンによる特定の患者に対する望ましくない効果のリスクおよび/もしくは起こり得る大きさを決定すること、ならびに/または
前記投与レジメンによる治療効果を提供する確率を決定すること、ならびに/または
前記投与レジメンによる前記治療効果の少なくとも目標の大きさに達する確率を決定すること、
考慮された投与レジメンに従ったドーズの薬物の前記患者への投与の後、特定の患者に対する前記効果の期待される持続時間を決定すること、ならびに/または
前記投与レジメンによって特定の患者が遭遇すると期待される効果の任意の他の態様を決定すること
を指し得る。
【0143】
以下、医師が特定の患者について、初期処方の一部として、薬物の初期投与レジメンを決定しようとする例示的なシナリオが続けられる。
【0144】
そのようなシナリオにおいて、サンプリングされたパラメータ値の一連の集合が取得され、これらの値の集合は、薬物曝露量に関する変動性の原因の観点から特定の患者と同様のプロファイルを有する患者母集団の一部を表す。
【0145】
本質的に「シミュレートされた患者」を表すこれらの値の集合の各々について、薬物曝露量計算機モジュールは、任意の数の可能な投与レジメンについて、「シミュレートされた患者」の対応する薬物曝露量を計算する(S4)。結果として、計算された薬物曝露量は、1つまたは複数の試験された投与レジメンの各々について、薬物曝露量に関する変動性の原因の観点から特定の患者と同様のプロファイルを有する患者母集団の一部間の薬物曝露量における分布を示す。
【0146】
投与レジメンについて計算された薬物曝露量に基づいて、前記投与レジメンにより特定の患者に対する治療窓を満たす確率を決定することが可能である。
【0147】
例えば、前記投与レジメンについて計算された薬物曝露量は、各々、比較器モジュールによって、治療窓の境界として識別された下限しきい値および上限しきい値と比較され得る(S5)。両方の比較の結果は、例えば、比較器モジュールに、計算された薬物曝露量ごとに、治療窓との一致を示す第1の値、またはそのような一致がないことを示す第2の値のいずれかを出力させ得る。比較器モジュールの出力は、前記投与レジメンに関連するスコアを決定する(S7)ために、スコアリングモジュールによって下流で使用され得る。例えば、前記投与レジメンについて、比較器モジュールが、各々の計算された薬物曝露量としきい値との比較の結果として、「第1の値」の96~100%を出力した場合、前記投与レジメンは、スコア「A」に関連付けられ得る。「第1の値」の91~95%が得られた場合、投与レジメンは、スコア「B」に関連付けられ得る、などである。
【0148】
結果として、効果決定モジュールは、特定の患者に対する薬物の効果の一例として、
上記のスコアの形式における情報であって、スコア「A」が前記投与レジメンにより特定の患者の治療窓を満たす確率が高いことを示す情報、一方、スコア「B」が前記投与レジメンにより特定の患者の治療窓を満たす確率がより低いことを示す情報などを決定し得る(S10)。
【0149】
投与レジメンについて計算された薬物曝露量に基づいて、前記投与レジメンにより所定のレベルを超える大きさの望ましくない効果が特定の患者に生じるリスクを決定することも可能である。例えば、各々の計算された薬物曝露量は、文献データに基づいて、望ましくない効果の関連する大きさに結び付けられ得る(S6)。結果として、効果決定モジュールは、特定の患者に対する薬物の効果の他の例として、前記所定のレベルを超える関連する大きさの割合の形態における情報を決定し得る(S10)。
【0150】
他の例示的なシナリオにおいて、医師は、特定の患者に最初に処方された薬物の以前の投与レジメンを変更しようとする場合がある。理由は、望ましくない効果のリスクおよび/または大きさを減少させること、治療効果の発生確率および/または大きさを増加させること、前記効果のうちの1つの持続時間を加速または減速させることなどを含み得る。
【0151】
以前の投与レジメンは、参照投与レジメンとみなされ得る。
【0152】
したがって、患者母集団を表す値の集合を作り(S3)、以前の参照投与レジメンを用いて、値の集合ごとに薬物曝露量を計算する(S4)ことが可能である。さらに、新しい試験された投与レジメンを用いて、値の集合ごとに薬物曝露量を計算する(S4)ことが可能である。
【0153】
薬物曝露量を計算することによって、求められる目的のための薬物曝露量の1つまたは複数の関連する態様を(発生確率および/または大きさおよび/または持続時間などの観点で)決定することが理解される。
【0154】
各々の計算された薬物曝露量は、対応する薬物効果にさらに結び付けられ得る。
【0155】
例えば、
治療窓を下回る薬物曝露量は、治療効果の欠如に関連する場合があり、
あるドーズの薬物の投与後、治療窓の下限を超えるまでの持続時間は、治療効果を提供するまで持続時間に関連する場合がある。
【0156】
対応する「シミュレートされた患者」を表す値の各集合について、
参照投与レジメンを用いて計算された薬物曝露量に結びつけられた薬物効果と、
新たに試験された投与レジメンを用いて計算された薬物曝露量に結びつけられた薬物効果と
の間の薬物効果の絶対的または相対的な変動を決定することが可能である。
【0157】
薬物効果のそのような絶対的または相対的な変動は、特定の患者に対する薬物の効果のさらに他の例として、患者母集団のうちの以前の投与レジメンと試験された投与レジメンとの間の薬物効果の平均の絶対的もしくは相対的な変動、またはそのような絶対的もしくは相対的な変動の標準偏差を決定する(S10)ために、効果決定モジュールによって処理され得る。
【0158】
1つまたは複数の投与レジメンによる特定の患者に対する薬物の決定された効果は、次いで、インターフェースモジュールを介して提供され得(S11)、例えば、表示され、印刷され、または特定の患者の医療記録とともにさらなるアクセスおよび診察を可能にするためにリモートデバイスに送信され得る。
【0159】
この段階において、いくつかの投与レジメンが試験されている場合、例えば、すべての試験された投与レジメンのリストを、特定の患者に対する薬物の対応する決定された効果とともに提供することが可能である。
【0160】
1つまたは複数の投与レジメンに重点が置かれ得る。
【0161】
例えば、投与レジメンは、しきい値よりも高いなど、患者の望ましくない効果のリスクが高すぎる場合、警告として機能するように強調表示され得る。
【0162】
例えば、投与レジメンについて決定された特定の患者に対する薬物の効果は、スコアによって示され得、試験された投与レジメンのリストは、最良のスコアから最悪のスコアまで自動的に順序付けられ得る。
【符号の説明】
【0163】
1 プロセッサ
2 メモリ
3 通信インターフェース
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する薬物の効果を決定するための方法であって、前記方法は、
母集団薬理学的モデルを取得するステッ
プであって、前記モデルは、既知のドーズの前記薬物の投与を受ける患者母集団内での薬物曝露量の変動を記述する、ステップと、
前記患者母集団内での前記変動の原因に関する少なくとも1つのパラメータについて、個々の患者の特性および/または少なくとも1人の患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を条件とする分布から、前記パラメータの複数の値をサンプリングするステッ
プと、
値の集合を作るステッ
プであって、値の1つの集合は、前記パラメータの各々の1つのサンプリングされた値を含む、ステップと、
前記母集団薬理学的モデルを使用することによって、値の各集合について、所与の投与レジメンによる対応する薬物曝露量を計算するステッ
プと、
少なくとも前記計算された薬物曝露量に基づいて、少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する前記薬物の前記効果を決定するステッ
プと
を含む、方法。
【請求項2】
前記患者は以前の投与レジメンを受けており、前記方法は、前記以前の投与レジメンによる前記患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を取得するステッ
プをさらに含み、
前記患者に対する前記薬物の前記効果を決定するステッ
プは、前記測定値にさらに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬物の前記効果を決定するステップは、前記計算された薬物曝露量を少なくとも1つの曝露しきい値と比較するステッ
プを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、各々の計算された薬物曝露量を前記薬物の前記効果の大きさの対応するレベルに結び付けるステッ
プをさらに含み、
前記患者に対する所与の投与レジメンによる前記薬物の前記効果を決定するステップは、前記結びつけられた大きさのレベルに基づく、
請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物の前記効果を決定するステップは、前記計算された薬物曝露量に基づいて前記効果を表すスコアを決定するステッ
プを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者母集団は、一般母集団の選択された部分である、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記薬物曝露量は、瞬間曝露値に関連する、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記薬物曝露量は、所定の時間間隔にわたる平均曝露量または累計曝露量に関連する、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記患者母集団内での前記変動の原因に関連する少なくとも1つのパラメータについて、前記患者母集団内での前記パラメータの値の明示的な条件付き分布からの直接サンプリングを使用するステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記患者母集団内での前記変動の原因に関連する少なくとも1つのパラメータについて、前記薬理学的モデルに適用されるマルコフ連鎖モンテカルロ法を使用するステップをさらに含み、
前記パラメータの複数のシミュレートされた値をサンプリングするステップは、前記マルコフ連鎖モンテカルロ法を使用して構築されたマルコフ連鎖に基づく、
請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の投与レジメンについて、
前記母集団薬理学的モデルを使用することによって、値の集合ごとに、前記追加の投与レジメンによる対応する追加の薬物曝露量を計算するステップと、
前記計算された追加の薬物曝露量に基づいて、前記患者に対する前記追加の投与レジメンによる前記薬物の前記対応する影響を決定するステップと
をさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも前記所与の投与レジメンについて、前記患者に対する前記薬物のパーソナライズされた投与レジメンを決定することを考慮して、前記対応する決定された効果を提供するステッ
プをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
処理ユニットにアクセス可能であり、前記処理ユニットによって実行されると、前記処理ユニットに
少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する薬物の効果を決定するための方法であって、前記方法は、
母集団薬理学的モデルを取得するステップであって、前記モデルは、既知のドーズの前記薬物の投与を受ける患者母集団内での薬物曝露量の変動を記述する、ステップと、
前記患者母集団内での前記変動の原因に関する少なくとも1つのパラメータについて、個々の患者の特性および/または少なくとも1人の患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を条件とする分布から、前記パラメータの複数の値をサンプリングするステップと、
値の集合を作るステップであって、値の1つの集合は、前記パラメータの各々の1つのサンプリングされた値を含む、ステップと、
前記母集団薬理学的モデルを使用することによって、値の各集合について、所与の投与レジメンによる対応する薬物曝露量を計算するステップと、
少なくとも前記計算された薬物曝露量に基づいて、少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する前記薬物の前記効果を決定するステップと
を含む、方法を行わせる1つまたは複数の記憶された命令のシーケンスを含むコンピュータプログラム
の命令を記憶した非一時的コンピュータ記憶媒体。
【請求項14】
メモ
リに動作可能に接続された処理ユニッ
トを備える処理回路であって、前記処理回路は、
少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する薬物の効果を決定するための方法であって、前記方法は、
母集団薬理学的モデルを取得するステップであって、前記モデルは、既知のドーズの前記薬物の投与を受ける患者母集団内での薬物曝露量の変動を記述する、ステップと、
前記患者母集団内での前記変動の原因に関する少なくとも1つのパラメータについて、個々の患者の特性および/または少なくとも1人の患者の薬物曝露量に関連する少なくとも1つの測定値を条件とする分布から、前記パラメータの複数の値をサンプリングするステップと、
値の集合を作るステップであって、値の1つの集合は、前記パラメータの各々の1つのサンプリングされた値を含む、ステップと、
前記母集団薬理学的モデルを使用することによって、値の各集合について、所与の投与レジメンによる対応する薬物曝露量を計算するステップと、
少なくとも前記計算された薬物曝露量に基づいて、少なくとも1つの特定の投与レジメンによる、少なくとも1人の患者に対する前記薬物の前記効果を決定するステップと
を含む、方法を行うように構成される、処理回路。
【国際調査報告】