(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】網膜毛細血管瘤を検出し分類するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240614BHJP
G06V 10/764 20220101ALI20240614BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20240614BHJP
A61B 3/14 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G06T7/00 612
G06V10/764
G06T7/60 300Z
A61B3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576436
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 CA2022050926
(87)【国際公開番号】W WO2022256935
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523465126
【氏名又は名称】エマギックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マン,コリン
(72)【発明者】
【氏名】カミンツキー,リン
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,アロン
(72)【発明者】
【氏名】ククリン,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】アッバスネジャド,アミレザ
【テーマコード(参考)】
4C316
5L096
【Fターム(参考)】
4C316AA10
4C316AB07
4C316AB16
4C316FB23
4C316FB27
4C316FZ01
4C316FZ03
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA01
5L096EA16
5L096EA33
5L096EA43
5L096FA13
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA34
5L096FA35
5L096FA52
5L096FA59
5L096FA64
5L096GA08
5L096GA10
5L096GA32
5L096GA51
5L096GA55
5L096HA11
5L096MA07
(57)【要約】
網膜毛細血管瘤を検出し分類するシステム及び方法。方法は、時系列の蛍光眼底造影入力画像を受信することと、入力画像における超蛍光要素の二値化マップを生成することと、モルフォロジーメトリックの組合せと突き合わせた各々のグレーディングにより、二値マップにおけるどの超蛍光要素が毛細血管瘤であるかを特定することと、検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類することであって、分類することは、二値マップで検出された毛細血管瘤の周囲の外環マスクを識別すること、蛍光強度特定を使用して外環リングマスクにおける実質を識別すること、識別された実質の蛍光強度の経時変化率を特定すること、及び変化率が正の場合には漏出として、変化率が負又はゼロの場合には非漏出として、検出された毛細血管瘤を分類することを含む、分類することと、検出された毛細血管瘤の分類を出力することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算デバイスで実行される、網膜毛細血管瘤を検出し分類する方法であって、
時系列の蛍光眼底造影入力画像を受信することと、
前記入力画像における超蛍光要素の二値化マップを生成することと、
前記二値化マップにおける超蛍光要素のピクセル連続性に基づき、形態学的グレーディングメトリックの組合せと突き合わせたグレーディングにより前記二値化マップにおける毛細血管瘤を検出することと、
前記検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類することと、
前記検出された毛細血管瘤の前記分類を出力することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類することは、
前記検出された毛細血管瘤の周囲の外環マスクを識別することと、
前記外環マスクを適用し、蛍光強度を特定することにより実質を識別することと、
蛍光強度の変化率を特定することと、
前記蛍光強度の前記変化率に基づいて、前記検出された毛細血管瘤を漏出性又は非漏出性として分類することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出された毛細血管瘤を漏出性又は非漏出性として分類することは、前記変化率が正の場合、前記検出された毛細血管瘤を漏出性として分類し、前記変化率が負又はゼロの場合、前記検出された毛細血管瘤を非漏出性として分類することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、剛体レジストレーション及び非剛体レジストレーションを前記入力画像に対して実行することを更に含み、前記剛体レジストレーション及び非剛体レジストレーションを前記入力画像に対して実行することは、
各入力画像に対して、固定画像への前記入力画像の剛体レジストレーションを実行することと、
各入力画像に対して、前記固定画像への前記画像の非剛体レジストレーションを実行することと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
剛体レジストレーションは、特徴の検出及び抽出を実行して、前記入力画像と前記固定画像との間で特徴を一致させ、一致しない特徴を除去することと、前記一致した特徴の幾何学的変換を特定することとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
非剛体レジストレーションは、2次元ガウスぼかし関数を使用して前記入力画像及び前記固定画像の両方をフィルタリングすることと、元の入力画像両方から結果をそれぞれ減算することとを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非剛体レジストレーションは、前記入力画像を前記固定画像と整列させる変位場を特定することと、前記変位場の適用後、ピクセル場所の加算変位を使用して見当合わせされた画像の構造類似性(SSIM)指数測度を特定することと、前記特定されたSSIM指数を前記入力画像で特定されたSSIM指数と比較することとを更に含み、前記SSIM指数が前記入力画像よりも高い場合、前記見当合わせされた画像が使用され、その他の場合、前記入力画像が使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固定画像は、前記入力画像の最大平均強度画像として参照画像を含み又は前記固定画像は見当合わせされた隣接画像を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記二値化マップを生成することは、等しい値を有する連続ピクセルの集まりをラベリングすることと、連続ピクセルの前記集まりの各々の局所特性を特定することと、前記局所特性の閾値に基づいて非血管マスクを生成することと、前記非血管マスクを前記二値化マップから減算することとを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記二値化マップ内の血管をセグメント化し除去することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
血管をセグメント化し除去することは、適応ヒストグラム等化、メジアンフィルタ、及び2次元ガウスフィルタぼかし関数の組合せを使用して、前記参照画像について前記入力画像を前処理することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
血管をセグメント化し除去することは、入力画像が第1の2次元ガウスフィルタで除算され、第2の2次元ガウスフィルタの平方根で除算されたものとして決定されるフィルタリング済み画像を生成し、前記第1の2次元ガウスフィルタは、入力として、前記入力画像及び20のガウス分布の標準偏差をとり、前記第2の2次元ガウスフィルタは、入力として、前記入力画像の二乗及び4のガウス分布の標準偏差をとる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記二値化マップ内の血管をセグメント化し除去することは、周長、面積、最大強度、及び円形度の1つ又は複数を含む局所特性を特定することを含み、前記非血管マスクを生成することは、前記局所特性の閾値に基づく、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記形態学的グレーディングメトリックは、周長、面積、偏心度、中実度、短軸長、及び長軸長の1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記外環マスクは、検出された各毛細血管瘤の第1の拡張マスクを決定し、前記第1の拡張マスクよりも大きな半径を有する、検出された各毛細血管瘤の第2の拡張マスクを決定し、前記第1の拡張マスクを前記第2の拡張マスクから減算することにより生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
最小最大正規化を前記外環内のピクセルに対して実行することと、所定の閾値よりも大きい蛍光強度を有するピクセルとして、連結血管ピクセル候補を決定することとを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記実質を識別することは、平均強度ベクトルを使用して実質傾きを特定することを含み、前記蛍光強度の変化率を特定することは、前記実質平均強度ベクトルの終点を特定することと、最大蛍光強度と規定期間最大後蛍光強度との間の前記実質の蛍光強度特定を含む、より小さな実質ベクトルを特定することと、前記蛍光強度が規定の強度値よりも下がるときとして、前記より小さな実質平均強度ベクトルからの開始点を決定することと、前記蛍光強度の変化率として前記ベクトルの傾きを決定することとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
脈絡膜初期蛍光と動静脈ステージとの間で生じる期間の強調率として灌流を決定することを更に含み、脈絡膜初期蛍光を識別することは、染料が存在する入力画像を識別することを含み、動静脈ステージを識別することは、最大蛍光を有する入力画像を識別することと、各ピクセルで線形回帰を適用して強調することと、正の傾きを含むピクセルとして非虚血ピクセルを特定し、ゼロ又は負の傾きを含むピクセルとして虚血ピクセルを特定することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記入力画像又は前記参照画像の一方に重ねられた円形グリッドを使用して、前記検出された毛細血管瘤の少なくとも1つの局所数量を特定することを更に含み、前記円形グリッドのサイズは、前記入力画像又は前記参照画像における視神経円板の幅に比例し、前記局所数量は、漏出情報及び非漏出情報、血液網膜関門漏出、灌流、虚血、初期増強傾き、及び潜在増強傾きの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
網膜毛細血管瘤を検出し分類するシステムであって、前記システムは処理ユニット及びメモリストレージを備え、前記処理ユニットは前記メモリストレージと通信し、
前処理モジュールを実行して、時系列の蛍光眼底造影入力画像を受信し、前記入力画像における超蛍光要素の二値化マップを生成し、
検出モジュールを実行して、前記二値化マップにおける超蛍光要素のピクセル連続性に基づき、形態学的グレーディングメトリックの組合せと突き合わせたグレーディングにより前記二値化マップにおける毛細血管瘤を検出し、
分類モジュールを実行して、前記検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類し、
出力モジュールを実行して、前記検出された毛細血管瘤の前記分類を出力するように構成される、システム。
【請求項21】
前記検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類することは、
前記検出された毛細血管瘤の周囲の外環マスクを識別することと、
前記外環マスクを適用し、蛍光強度を特定することにより実質を識別することと、
蛍光強度の変化率を特定することと、
前記蛍光強度の前記変化率に基づいて、前記検出された毛細血管瘤を漏出性又は非漏出性として分類することと、
を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記検出された毛細血管瘤を漏出性又は非漏出性として分類することは、前記変化率が正の場合、前記検出された毛細血管瘤を漏出性として分類し、前記変化率が負又はゼロの場合、前記検出された毛細血管瘤を非漏出性として分類することを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記前処理モジュールは、剛体レジストレーション及び非剛体レジストレーションを前記入力画像に対して更に実行し、前記剛体レジストレーション及び非剛体レジストレーションを前記入力画像に対して実行することは、
各入力画像に対して、固定画像への前記入力画像の剛体レジストレーションを実行することと、
各入力画像に対して、前記固定画像への前記画像の非剛体レジストレーションを実行することと、
を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
剛体レジストレーションは、特徴の検出及び抽出を実行して、前記入力画像と前記固定画像との間で特徴を一致させ、一致しない特徴を除去することと、前記一致した特徴の幾何学的変換を特定することとを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
非剛体レジストレーションは、2次元ガウスぼかし関数を使用して前記入力画像及び前記固定画像の両方をフィルタリングすることと、元の入力画像両方から結果をそれぞれ減算することとを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
非剛体レジストレーションは、前記入力画像を前記固定画像と整列させる変位場を特定することと、前記変位場の適用後、ピクセル場所の加算変位を使用して見当合わせされた画像の構造類似性(SSIM)指数測度を特定することと、前記特定されたSSIM指数を前記入力画像で特定されたSSIM指数と比較することとを更に含み、前記SSIM指数が前記入力画像よりも高い場合、前記見当合わせされた画像が使用され、その他の場合、前記入力画像が使用される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記固定画像は、前記入力画像の最大平均強度画像として参照画像を含み又は前記固定画像は見当合わせされた隣接画像を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項28】
前記二値化マップを生成することは、等しい値を有する連続ピクセルの集まりをラベリングすることと、連続ピクセルの前記集まりの各々の局所特性を特定することと、前記局所特性の閾値に基づいて非血管マスクを生成することと、前記非血管マスクを前記二値化マップから減算することとを更に含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記検出モジュールは更に、前記二値化マップ内の血管をセグメント化し除去する、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
血管をセグメント化し除去することは、適応ヒストグラム等化、メジアンフィルタ、及び2次元ガウスフィルタぼかし関数の組合せを使用して、前記参照画像について前記入力画像を前処理することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
血管をセグメント化し除去することは、入力画像が第1の2次元ガウスフィルタで除算され、第2の2次元ガウスフィルタの平方根で除算されたものとして特定されるフィルタリング済み画像を生成し、前記第1の2次元ガウスフィルタは、入力として、前記入力画像及び20のガウス分布の標準偏差をとり、前記第2の2次元ガウスフィルタは、入力として、前記入力画像の二乗及び4のガウス分布の標準偏差をとる、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記二値化マップ内の血管をセグメント化し除去することは、周長、面積、最大強度、及び円形度の1つ又は複数を含む局所特性を特定することを含み、前記非血管マスクを生成することは、前記局所特性の閾値に基づく、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
前記形態学的グレーディングメトリックは、周長、面積、偏心度、中実度、短軸長、及び長軸長の1つ又は複数を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項34】
前記外環マスクは、検出された各毛細血管瘤の第1の拡張マスクを決定し、前記第1の拡張マスクよりも大きな半径を有する、検出された各毛細血管瘤の第2の拡張マスクを決定し、前記第1の拡張マスクを前記第2の拡張マスクから減算することにより生成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項35】
前記分類モジュールは更に、最小最大正規化を前記外環内のピクセルに対して実行し、所定の閾値よりも大きい蛍光強度を有するピクセルとして、連結血管ピクセル候補を決定する、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記実質を識別することは、平均強度ベクトルを使用して実質傾きを特定することを含み、前記蛍光強度の変化率を特定することは、前記実質平均強度ベクトルの終点を特定することと、最大蛍光強度と規定期間最大後蛍光強度との間の前記実質の蛍光強度特定を含む、より小さな実質ベクトルを特定することと、前記蛍光強度が規定の強度値よりも下がるときとして、前記より小さな実質平均強度ベクトルからの開始点を決定することと、前記蛍光強度の変化率として前記ベクトルの傾きを決定することとを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項37】
前記検出モジュールは更に、脈絡膜初期蛍光と動静脈ステージとの間で生じる期間の強調率として灌流を決定し、脈絡膜初期蛍光を識別することは、染料が存在する入力画像を識別することを含み、動静脈ステージを識別することは、最大蛍光を有する入力画像を識別することと、各ピクセルで線形回帰を適用して強調することと、正の傾きを含むピクセルとして非虚血ピクセルを特定し、ゼロ又は負の傾きを含むピクセルとして虚血ピクセルを特定することとを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項38】
前記分類モジュールは、前記入力画像又は前記参照画像の一方に重ねられた円形グリッドを使用して、前記検出された毛細血管瘤の少なくとも1つの局所数量を特定し、前記円形グリッドのサイズは、前記入力画像又は前記参照画像における視神経円板の幅に比例し、前記局所数量は、漏出情報及び非漏出情報、血液網膜関門漏出、灌流、虚血、初期増強傾き、及び潜在増強傾きの1つ又は複数を含む、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
以下は、一般的には医療造影のデータ処理に関し、より詳細には、網膜毛細血管瘤を検出し分類するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
糖尿病は世界中で4億2千万人が罹患している。糖尿病性網膜症は糖尿病の最も頻繁な微小血管合併症であり、患者の30%超が部分失明のリスクを有し、約10%が重度の視覚障害のリスクを有する。世界中で糖尿病性網膜症は失明及び予防可能な視覚障害の主要原因である。糖尿病性網膜症は網膜血管の機能障害に起因し、疾患の3つの顕著な特徴には、(i)網膜毛細血管から突出する小さな円形突出物である毛細血管瘤の出現、(ii)血液網膜関門(BRB)の漏出、及び(iii)網膜虚血がある。疾患は幾つかのステージにわたって発症及び進行し、毛細血管瘤は血管病変の初発兆候を表し、多くの場合、疾患が視覚に影響を及ぼす前に出現する。疾患が進行するにつれて、血管系は漏出するようになり、血液成分を網膜細胞外空間に流入させる。血管漏出は最終的に浮腫及び失明を発症させる恐れがある。重要なことに、BRB漏出及び漏出性毛細血管瘤は、失明の制限を目的として処置の主な標的である。虚血の出現(毛細血管閉塞の結果として)は、網膜神経網への不可逆的ダメージ及び治癒不可能な機能損失を伴う疾患の進行ステージを表す傾向がある。疾患の最も重篤なステージは、網膜血管新生の出現及び非増殖性から増殖性糖尿病性網膜症への移行を特徴とする。
【0003】
糖尿病性網膜症の臨床診断は一般に、蛍光眼底造影(FA)を含む。FAは、(i)スキャンの初期フェーズで超蛍光ドットとして出現する毛細血管瘤、(ii)後期フェーズでフルオレセイン溢出として出現する毛細血管瘤漏出、(iii)スキャンの潜伏期でフルオレセイン蓄積を有する非血管組織として出現するBRB漏出、及び(iiii)スキャンの早期フェーズでフルオレセインが到達しない組織として出現する網膜非灌流の識別を可能にする。糖尿病性網膜症の評価に有用であることができる別の造影モダリティは、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)である。OCTは、血管解剖学的構造及び血流の捕捉並びに浮腫及び虚血の識別に使用することができる。この手法は一般に比較的小さなスキャンエリアを有する。更に、この手法は典型的には、軽症の血管漏出又は軽症の浮腫を識別しない。毛細血管瘤はFA、OCT、又はカラー眼底検査を使用して取得された画像で検出することができるが、FAは一般に、毛細血管瘤可視化において他の2つの手法よりも高性能であることが知られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
一態様において、計算デバイスで実行される、網膜毛細血管瘤を検出し分類する方法が提供され、本方法は、時系列の蛍光眼底造影入力画像を受信することと、入力画像における超蛍光要素の二値化マップを生成することと、二値化マップにおける超蛍光要素のピクセル連続性に基づき、形態学的グレーディングメトリックの組合せと突き合わせたグレーディングにより二値化マップにおける毛細血管瘤を検出することと、検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類することと、検出された毛細血管瘤の分類を出力することとを含む。
【0005】
本方法の特定の一事例において、検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類することは、検出された毛細血管瘤の周囲の外環マスクを識別することと、外環マスクを適用し、蛍光強度を特定することにより実質を識別することと、蛍光強度の変化率を特定することと、蛍光強度の変化率に基づいて、検出された毛細血管瘤を漏出性又は非漏出性として分類することとを含む。
【0006】
本方法の別の事例において、検出された毛細血管瘤を漏出性又は非漏出性として分類することは、変化率が正の場合、検出された毛細血管瘤を漏出性として分類し、変化率が負又はゼロの場合、検出された毛細血管瘤を非漏出性として分類することを含む。
【0007】
本方法の更に別の事例において、本方法は、剛体レジストレーション及び非剛体レジストレーションを入力画像に対して実行することを更に含み、剛体レジストレーション及び非剛体レジストレーションを入力画像に対して実行することは、各入力画像に対して、固定画像への入力画像の剛体レジストレーションを実行することと、各入力画像に対して、固定画像への画像の非剛体レジストレーションを実行することとを含む。
【0008】
本方法の更に別の事例において、剛体レジストレーションは、特徴の検出及び抽出を実行して、入力画像と固定画像との間で特徴を一致させ、一致しない特徴を除去することと、一致した特徴の幾何学的変換を特定することとを含む。
【0009】
本方法の更に別の事例において、非剛体レジストレーションは、2次元ガウスぼかし関数を使用して入力画像及び固定画像の両方をフィルタリングすることと、元の入力画像両方から結果をそれぞれ減算することとを含む。
【0010】
本方法の更に別の事例において、非剛体レジストレーションは、入力画像を固定画像と整列させる変位場を特定することと、変位場の適用後、ピクセル場所の加算変位を使用して見当合わせされた画像の構造類似性(SSIM)指数測度を特定することと、特定されたSSIM指数を入力画像で特定されたSSIM指数と比較することとを更に含み、SSIM指数が入力画像よりも高い場合、見当合わせされた画像が使用され、その他の場合、入力画像が使用される。
【0011】
本方法の更に別の事例において、固定画像は、入力画像の最大平均強度画像として参照画像を含み又は固定画像は見当合わせされた隣接画像を含む。
【0012】
本方法の更に別の事例において、二値化マップを生成することは、等しい値を有する連続ピクセルの集まりをラベリングすることと、連続ピクセルの集まりの各々の局所特性を特定することと、局所特性の閾値に基づいて非血管マスクを生成することと、非血管マスクを二値化マップから減算することとを更に含む。
【0013】
本方法の更に別の事例において、本方法は、二値化マップ内の血管をセグメント化し除去することを更に含む。
【0014】
本方法の更に別の事例において、血管をセグメント化し除去することは、適応ヒストグラム等化、メジアンフィルタ、及び2次元ガウスフィルタぼかし関数の組合せを使用して、参照画像について入力画像を前処理することを含む。
【0015】
本方法の更に別の事例において、血管をセグメント化し除去することは、入力画像が第1の2次元ガウスフィルタで除算され、第2の2次元ガウスフィルタの平方根で除算されたものとして決定されるフィルタリング済み画像を生成し、第1の2次元ガウスフィルタは、入力として、入力画像及び20のガウス分布の標準偏差をとり、第2の2次元ガウスフィルタは、入力として、入力画像の二乗及び4のガウス分布の標準偏差をとる。
【0016】
本方法の更に別の事例において、二値化マップ内の血管をセグメント化し除去することは、周長、面積、最大強度、及び円形度の1つ又は複数を含む局所特性を特定することを含み、非血管マスクを生成することは、局所特性の閾値に基づく。
【0017】
本方法の更に別の事例において、形態学的グレーディングメトリックは、周長、面積、偏心度、中実度、短軸長、及び長軸長の1つ又は複数を含む。
【0018】
本方法の更に別の事例において、外環マスクは、検出された各毛細血管瘤の第1の拡張マスクを決定し、第1の拡張マスクよりも大きな半径を有する、検出された各毛細血管瘤の第2の拡張マスクを決定し、第1の拡張マスクを第2の拡張マスクから減算することにより生成される。
【0019】
本方法の更に別の事例において、本方法は、最小最大正規化を外環内のピクセルに対して実行することと、所定の閾値よりも大きい蛍光強度を有するピクセルとして、連結血管ピクセル候補を決定することとを更に含む。
【0020】
本方法の更に別の事例において、実質を識別することは、平均強度ベクトルを使用して実質傾きを特定することを含み、蛍光強度の変化率を特定することは、実質平均強度ベクトルの終点を特定することと、最大蛍光強度と規定期間最大後蛍光強度との間の実質の蛍光強度特定を含む、より小さな実質ベクトルを特定することと、蛍光強度が規定の強度値よりも下がるときとして、より小さな実質平均強度ベクトルからの開始点を決定することと、蛍光強度の変化率としてベクトルの傾きを決定することとを含む。
【0021】
本方法の更に別の事例において、本方法は、脈絡膜初期蛍光と動静脈ステージとの間で生じる期間の強調率として灌流を決定することを更に含み、脈絡膜初期蛍光を識別することは、染料が存在する入力画像を識別することを含み、動静脈ステージを識別することは、最大蛍光を有する入力画像を識別することと、各ピクセルで線形回帰を適用して強調することと、正の傾きを含むピクセルとして非虚血ピクセルを特定し、ゼロ又は負の傾きを含むピクセルとして虚血ピクセルを特定することとを含む。
【0022】
本方法の更に別の事例において、本方法は、入力画像又は参照画像の一方に重ねられた円形グリッドを使用して、検出された毛細血管瘤の少なくとも1つの局所数量を特定することを更に含み、円形グリッドのサイズは、入力画像又は参照画像における視神経円板の幅に比例し、局所数量は、漏出情報及び非漏出情報、血液網膜関門漏出、灌流、虚血、初期増強傾き、及び潜在増強(latent-enhancement)傾きの1つ又は複数を含む。
【0023】
別の態様において、網膜毛細血管瘤を検出し分類するシステムが提供され、本システムは処理ユニット及びメモリストレージを備え、処理ユニットはメモリストレージと通信し、前処理モジュールを実行して、時系列の蛍光眼底造影入力画像を受信し、入力画像における超蛍光要素の二値化マップを生成し、検出モジュールを実行して、二値化マップにおける超蛍光要素のピクセル連続性に基づき、形態学的グレーディングメトリックの組合せと突き合わせたグレーディングにより二値化マップにおける毛細血管瘤を検出し、分類モジュールを実行して、検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類し、出力モジュールを実行して、検出された毛細血管瘤の分類を出力するように構成される。
【0024】
本システムの特定の事例において、検出された毛細血管瘤の各々を漏出性又は非漏出性として分類することは、検出された毛細血管瘤の周囲の外環マスクを識別することと、外環マスクを適用し、蛍光強度を特定することにより実質を識別することと、蛍光強度の変化率を特定することと、蛍光強度の変化率に基づいて、検出された毛細血管瘤を漏出性又は非漏出性として分類することとを含む。
【0025】
本システムの別の事例において、検出された毛細血管瘤を漏出性又は非漏出性として分類することは、変化率が正の場合、検出された毛細血管瘤を漏出性として分類し、変化率が負又はゼロの場合、検出された毛細血管瘤を非漏出性として分類することを含む。
【0026】
本システムの更に別の事例において、前処理モジュールは、剛体レジストレーション及び非剛体レジストレーションを入力画像に対して更に実行し、剛体レジストレーション及び非剛体レジストレーションを入力画像に対して実行することは、各入力画像に対して、固定画像への入力画像の剛体レジストレーションを実行することと、各入力画像に対して、固定画像への画像の非剛体レジストレーションを実行することとを含む。
【0027】
本システムの更に別の事例において、剛体レジストレーションは、特徴の検出及び抽出を実行して、入力画像と固定画像との間で特徴を一致させ、一致しない特徴を除去することと、一致した特徴の幾何学的変換を特定することとを含む。
【0028】
本システムの更に別の事例において、非剛体レジストレーションは、2次元ガウスぼかし関数を使用して入力画像及び固定画像の両方をフィルタリングすることと、元の入力画像両方から結果をそれぞれ減算することとを含む。
【0029】
本システムの更に別の事例において、非剛体レジストレーションは、入力画像を固定画像と整列させる変位場を特定することと、変位場の適用後、ピクセル場所の加算変位を使用して見当合わせされた画像の構造類似性(SSIM)指数測度を特定することと、特定されたSSIM指数を入力画像で特定されたSSIM指数と比較することとを更に含み、SSIM指数が入力画像よりも高い場合、見当合わせされた画像が使用され、その他の場合、入力画像が使用される。
【0030】
本システムの更に別の事例において、固定画像は、入力画像の最大平均強度画像として参照画像を含み又は固定画像は見当合わせされた隣接画像を含む。
【0031】
本システムの更に別の事例において、二値化マップを生成することは、等しい値を有する連続ピクセルの集まりをラベリングすることと、連続ピクセルの集まりの各々の局所特性を特定することと、局所特性の閾値に基づいて非血管マスクを生成することと、非血管マスクを二値化マップから減算することとを更に含む。
【0032】
本システムの更に別の事例において、検出モジュールは更に、二値化マップ内の血管をセグメント化し除去する。
【0033】
本システムの更に別の事例において、血管をセグメント化し除去することは、適応ヒストグラム等化、メジアンフィルタ、及び2次元ガウスフィルタぼかし関数の組合せを使用して、参照画像について入力画像を前処理することを含む。
【0034】
本システムの更に別の事例において、血管をセグメント化し除去することは、入力画像が第1の2次元ガウスフィルタで除算され、第2の2次元ガウスフィルタの平方根で除算されたものとして特定されるフィルタリング済み画像を生成し、第1の2次元ガウスフィルタは、入力として、入力画像及び20のガウス分布の標準偏差をとり、第2の2次元ガウスフィルタは、入力として、入力画像の二乗及び4のガウス分布の標準偏差をとる。
【0035】
本システムの更に別の事例において、二値化マップ内の血管をセグメント化し除去することは、周長、面積、最大強度、及び円形度の1つ又は複数を含む局所特性を特定することを含み、非毛細血管瘤マスクを生成することは、局所特性の閾値に基づく。
【0036】
本システムの更に別の事例において、形態学的グレーディングメトリックは、周長、面積、偏心度、中実度、短軸長、及び長軸長の1つ又は複数を含む。
【0037】
本システムの更に別の事例において、外環マスクは、検出された各毛細血管瘤の第1の拡張マスクを決定し、第1の拡張マスクよりも大きな半径を有する、検出された各毛細血管瘤の第2の拡張マスクを決定し、第1の拡張マスクを第2の拡張マスクから減算することにより生成される。
【0038】
本システムの更に別の事例において、分類モジュールは更に、最小最大正規化を外環内のピクセルに対して実行し、所定の閾値よりも大きい蛍光強度を有するピクセルとして、連結血管ピクセル候補を決定する。
【0039】
本システムの更に別の事例において、実質を識別することは、平均強度ベクトルを使用して実質傾きを特定することを含み、蛍光強度の変化率を特定することは、実質平均強度ベクトルの終点を特定することと、最大蛍光強度と規定期間最大後蛍光強度との間の実質の蛍光強度特定を含む、より小さな実質ベクトルを特定することと、蛍光強度が規定の強度値よりも下がるときとして、より小さな実質平均強度ベクトルからの開始点を決定することと、蛍光強度の変化率としてベクトルの傾きを決定することとを含む。
【0040】
本システムの更に別の事例において、検出モジュールは更に、脈絡膜初期蛍光と動静脈ステージとの間で生じる期間の強調率として灌流を決定し、脈絡膜初期蛍光を識別することは、染料が存在する入力画像を識別することを含み、動静脈ステージを識別することは、最大蛍光を有する入力画像を識別することと、各ピクセルで線形回帰を適用して強調することと、正の傾きを含むピクセルとして非虚血ピクセルを特定し、ゼロ又は負の傾きを含むピクセルとして虚血ピクセルを特定することとを含む。
【0041】
本システムの更に別の事例において、分類モジュールは、入力画像又は参照画像の一方に重ねられた円形グリッドを使用して、検出された毛細血管瘤の少なくとも1つの局所数量を特定し、円形グリッドのサイズは、入力画像又は参照画像における視神経円板の幅に比例し、局所数量は、漏出情報及び非漏出情報、血液網膜関門漏出、灌流、虚血、初期増強傾き、及び潜在増強傾きの1つ又は複数を含む。
【0042】
これら及び他の態様が本明細書で企図され記載される。上記概要が、以下の詳細な説明の理解において熟練した読み手を助けるためにシステム及び方法の代表的な態様を記載していることが理解されよう。
【0043】
図面の簡単な説明
本発明の特徴は、添付図面が参照される以下の詳細な説明においてより明確になろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】一実施形態による、網膜毛細血管瘤を検出し分類するシステムの模式図である。
【
図2】一実施形態による網膜毛細血管瘤を検出し分類する方法のフローチャートである。
【
図3】
図2の方法による前処理時系列の一例を示す。
【
図4】
図2の方法による、毛細血管瘤の検出及び検出された毛細血管瘤のマップの出力の一例を示す。
【
図5】
図2の方法による、適用されたマスクを使用して非血管性実質の識別の一例を示す。
【
図6】
図2の方法による、生成された線形フィットと共に毛細血管瘤平均強度プロファイルの一例を示す。
【
図7】
図2の方法による、生成された線形フィットと共に、連続血管の平均強度プロファイルの一例を示す。
【
図8】
図2の方法による、生成された線形フィットと共に、実質平均強度プロファイルの一例を示す。
【
図9】
図2の方法による、漏出性及び非漏出性の両方の毛細血管瘤におけるマスクの強度プロファイルの一例を示す。
【
図10】
図2の方法による、分類された毛細血管瘤の視覚化における出力の一例を示す。
【
図11】
図2の方法による、毛細血管瘤を検出する手法の一例のフローチャートを示す。
【
図12A】
図11のフローチャートを促進するために毛細血管瘤を分類し運動学的特徴を特定する一例の手法のフローチャートを示す。
【
図12B】
図11のフローチャートを促進するために毛細血管瘤を分類し運動学的特徴を特定する一例の手法のフローチャートを示す。
【
図12C】
図11のフローチャートを促進するために毛細血管瘤を分類し運動学的特徴を特定する一例の手法のフローチャートを示す。
【
図13】
図2の方法による毛細血管瘤の外環内のピクセルの一例を示す。
【
図14】連続血管のピクセルとして識別されたトレース領域内のピクセルを示すヒストグラムを示し、一方、外環の残りの部分におけるピクセルは実質ピクセルとして識別され、連続血管のピクセルのメジアンが強度閾値として採用される。
【
図15】実験例による毛細血管瘤、血液網膜関門漏出、及び虚血の代表的なマップの例を示す。
【
図16A】実験例による対照、非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)、及び増殖性糖尿病性網膜症(PDR)被験者での網膜血管瘤を示すチャートを示す。
【
図16B】実験例による漏出性の割合を示すチャートを示す。
【
図16C】実験例による対照、NPDR、及びPDRにおける血液網膜関門(BRB)漏出を示すチャートを示す。
【
図16D】実験例による対照、NPDR、及びPDRにおける虚血を示すチャートを示す。
【
図17A】実験例による、BRB漏出及び/又は虚血あり又はなしの象限における毛細血管瘤数を示すチャートを示す。
【
図17B】実験例による、BRB漏出及び/又は虚血あり又はなしの象限における漏出性の毛細血管瘤の割合を示すチャートを示す。
【
図18】BRB漏出及び虚血がある毛細血管瘤の共局在を示すチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
実施形態について図を参照してこれより説明する。説明を簡潔且つ明確にするために、適切と考えられる場合、参照番号は複数の図の間で繰り返されて、対応する要素又は類似要素を示し得る。くわえて、本明細書に記載の実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、本明細書に記載の実施形態がこれらの具体的な詳細なしでも実施可能なことが当業者には理解されよう。他の場合、本明細書に記載の実施形態を曖昧にしないように、周知の方法、手順、及び構成要素については詳述しなかった。また、説明は、本明細書に記載の実施形態の範囲の限定として見なされるべきではない。
【0046】
本説明全体を通して使用される種々の用語は、文脈により別段のことが示される場合を除き、以下のように読まれ理解され得る:全体を通して使用される「又は」は、まるで「及び/又は」と書かれるかのように包括的であり;全体を通して使用される単数形の冠詞及び代名詞は複数形を含み、またこの逆も同様であり;同様に、性の区別のある代名詞は、一方の性による使用、実施、実行等に本明細書に記載のあらゆるものを限定するものとして理解されるべきではないように、それらの相手方の代名詞を含み;「例示的な」は、「説明のため」又は「例証する」ものとして理解されるべきであり、必ずしも他の実施形態よりも「好ましい」ものとして理解されるべきではない。用語の更なる定義が本明細書に記載され得;これらは本説明を読めば理解されるように、それらの用語の先行例及び後続例に適用することができる。
【0047】
命令を実行する、本明細書で例示される任意のモジュール、ユニット、構成要素、サーバ、コンピュータ、端末、エンジン、又はデバイスは、記憶媒体、コンピュータ記憶媒体、又はデータ記憶装置(リムーバブル及び/又は非リムーバブル)、例えば、磁気ディスク、光ディスク、若しくはテープ等のコンピュータ可読媒体を含み得るか、又は他の方法でアクセスし得る。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータ等の情報を記憶する任意の方法又は技術で実施される揮発性及び不揮発性、リムーバブル及び非リムーバブルの媒体を含み得る。コンピュータ記憶媒体の例には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、若しくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、若しくは他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装、若しくは他の磁気記憶装置、又は所望の情報の記憶に使用することができ、アプリケーション、モジュール、若しくは両方によりアクセスすることができる任意の他の媒体がある。任意のそのようなコンピュータ記憶媒体は、デバイスの一部であってよく又はデバイスがアクセス可能若しくはデバイスに接続可能であってよい。更に、文脈により別段のことが明らかに示される場合を除き、本明細書に記載の任意のプロセッサ又はコントローラは、単一のプロセッサとして又は複数のプロセッサとして実施し得る。複数のプロセッサは配列化又は分散され得、本明細書で参照される任意の処理機能は、単一のプロセッサが例示され得る場合であっても、1つのプロセッサにより又は複数のプロセッサにより実行され得る。本明細書に記載の任意の方法、アプリケーション、又はモジュールは、そのようなコンピュータ可読媒体に記憶又は他の方法で保持され、1つ又は複数のプロセッサにより実行され得るコンピュータ可読/実行可能命令を使用して実施し得る。
【0048】
以下は、一般的には医療造影のデータ処理に関し、より詳細には、網膜毛細血管瘤を検出し分類するシステム及び方法に関する。
【0049】
眼科医は一般に、毛細血管瘤が小さな超蛍光ドットとして現れる蛍光眼底造影(FA)画像の手動検査に頼る。画像の手動検査は、眼科医にとって時間がかかる作業であり得る。更に、毛細血管瘤が漏出性であるか又は非漏出性であるかの格付けは、眼科医がFAスキャンの初期フェーズ及び後期フェーズからの画像を同時に評価する必要があるため、更に多くの時間及び労力が必要であり得る。有利なことに、本実施形態は、他の手法の大きな問題を軽減する、FA画像から毛細血管瘤を自動的に検出する技術的手法を提供する。
【0050】
本実施形態は、眼科医及び他のユーザに、初期段階の糖尿病性網膜症のより多くの情報を得た上での診断を可能にする手法を提供する。例えば、漏出性又は非漏出性としての毛細血管瘤(網膜病変の一種)の分類を提供する。この分類は、どの毛細血管瘤を処置の標的とすべきかについての眼科医の意思決定を更に強化する。本開示の実施形態は、毛細血管瘤を自動的に検出する方法を提供し、したがって、特に初期段階で、臨床的に検出される血液網膜関門(BRB)漏出、虚血、及び/又は浮腫の出現前に、疾患の重症度についてのバイオマーカのテストに使用することができる。例えば、視力障害が進む前に疾患を正確に検出する能力は、視力保存処置を用いた予防的介入を可能にする。
【0051】
特定の手法において、時系列解析をFA画像のセットに対して実行して、BRB漏出、灌流、及び血流のマップを生成することができる。幾つかの場合、処理パイプラインは、前処理、二値化、血管除去、特徴抽出、毛細血管瘤又は非毛細血管瘤への各超蛍光要素の分類、及び漏出性毛細血管瘤又は非漏出性毛細血管瘤への検出された各毛細血管瘤の分類を含むことができる。前処理は背景照明の除去を含むことができる。フィルタリングされた画像の二値化は、強度閾値を使用して実行することができる。血管除去は、血管をセグメント化して除去することにより実行することができる。特徴抽出は、形状解析(例えば、円形度、中実度、アスペクト比、偏心度、直径/半径等)を使用して実行することができる。分類は、閾値又は分類器(例えば、人工ニューラルネットワーク(ANN)、サポートベクトルマシン(SVM)、又は畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等)のいずれかを使用して実行することができる。
【0052】
他の手法は一般に、単に毛細血管瘤交代率(患者の来院間で出現及び消失する毛細血管瘤の数)を特定することにより又は眼を「健康」(毛細血管瘤なし)若しくは「非健康」(毛細血管瘤数が1以上)のいずれかとして分類することにより毛細血管瘤を検出することができる。しかしながら、そのような手法はあまり正確ではなく、どの毛細血管瘤を処置の標的とすべきかについて眼科医の意思決定に使用可能な情報をあまり多くは提供しない。幾つかの手法は、形状メトリック又は幾何学的性質を利用して、二値化画像内の要素を毛細血管瘤又は非毛細血管瘤として分類することができるが、一般に、毛細血管瘤を検出し、検出された毛細血管瘤の数を出力するためだけに使用される。更なる手法は、カラー眼底において毛細血管瘤のセグメント化に外環を利用することができ、毛細血管瘤の周囲の外環が使用されて、毛細血管瘤候補とその周囲とのコントラスト差を評価する。そのような手法では、差が十分に大きい場合、候補は毛細血管瘤と見なされる。しかしながら、そのような手法下では、外環を純粋にセグメント化に使用することは、毛細血管瘤を特定するための大まかな推定しか提供せず、あまり正確ではない。
【0053】
図1は、一実施形態による、網膜毛細血管瘤を検出し分類するシステム200の模式図を示す。理解されるように、システム200は、単一の物理的なコンピュータとして示されているが、代替的には、協働して作用して記載の機能を提供する2つ以上のコンピュータであってもよい。示されるように、システム200は、中央演算処理装置(「CPU」)260、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)264、入力/出力(「I/O」)インタフェース268、ネットワークインタフェース276、データベース288と通信する不揮発性ストレージ280、及びCPU260がその他の構成要素と通信できるようにするローカルバス284を含む幾つかの物理的構成要素及び論理的構成要素を有する。CPU260は、網膜毛細血管瘤を検出し分類するアプリケーションを実行する。網膜毛細血管瘤を検出し分類するアプリケーションの機能について以下詳述する。RAM264は、比較的反応が早い揮発性ストレージをCPU260に提供する。I/Oインタフェース268は、ユーザが入力デバイス及び/又は出力デバイスを介してシステム200とインタラクトできるようにする。ネットワークインタフェース276は、他のシステムとの有線通信又は無線通信を可能にする。不揮発性ストレージ280は、アプリケーションを実施するためのコンピュータ可読命令及び任意のサービス、オペレーティングシステム、又はアプリケーションにより使用されるデータを記憶する。システム200の動作中、コンピュータ可読命令は、不揮発性ストレージ280から検索され、RAM264に配置されて、実行を促進し得る。他の実施形態において、任意のオペレーティングシステム、プログラム、又は命令はハードウェア、専用マイクロプロセッサ、又は論理アレイ等で実行することができる。造影デバイス150、例えば蛍光眼底造影デバイスがシステム200にリンクされて、入力画像を提供し得る。他の場合、入力画像は、データベース288、ネットワークインタフェース276、又は入力/出力(「I/O」)インタフェース268を介して検索することができる。
【0054】
一実施形態において、CPU260は、幾つかの概念的モジュール、例えば、前処理モジュール268、検出モジュール270、分類モジュール272、及び出力モジュール274を実行することを介してアプリケーションを実行するように構成することができる。更なる場合、種々のモジュールの機能は他のモジュールにより組み合わせる又は実行することができる。
【0055】
図2を参照して、一実施形態による網膜毛細血管瘤を検出し分類する方法300を示す。ブロック302において、前処理モジュール268が入力画像を受信する。入力画像は患者の眼底のFAスキャンからなる。
【0056】
ブロック304において、前処理モジュール268は、幾つかの場合、問題のある特徴、例えば、露出過度、逆の眼、閉塞、一貫しないズーム、過度の回転、ぼやけ、瞬き等について入力画像を評価する。問題のある画像は除去され、スキャン内の照明アーチファクトは、可能な場合に補正される;例えば、利得又は全体照明補正。
【0057】
ブロック306において、前処理モジュール268は、評価された入力画像に剛体レジストレーションと非剛体レジストレーションの組合せを実行して、一時的なピクセル毎の解析に向けて画像を整列させる。
【0058】
整列するために、まず、参照画像がFAスキャン内の最大平均強度画像として識別される。大半の場合、レジストレーションは参照画像の場所から始まって外側に向かって動作する。レジストレーションプロセスは2つの別個のストリームに分けることができる:(1)初期フェーズ画像のレジストレーション及び(2)後期フェーズ画像のレジストレーション。
【0059】
見当合わせする各画像で、2つの剛体レジストレーション試行を行うことができる。これは、(1)参照画像への選択された画像の剛体レジストレーション及び(2)既に見当合わせされた隣接画像への選択された画像のレジストレーションを含む。後期フェーズ画像のレジストレーションに特有であるが、隣接画像は、先に見当合わせされた全ての後期フェーズ画像の平均から計算される。
【0060】
各剛体レジストレーション事例内で、見当合わせされる画像は「移動画像」と呼ぶことができ、参照画像又は見当合わせされた隣接画像は「固定画像」と呼ぶことができる。移動画像及び固定画像を所与として、例えば、0.01の正規化コントラスト強調限度を使用した適応ヒストグラム等化を適用して、局所コントラスト及びエッジを強調することができる。例えば、ORB、AKAZE、又は同様の局所特徴検出器及び記述子を使用して特徴の検出及び抽出を実行することができる。一意の特徴を移動画像と固定画像との間で一致させることができ、外れた特徴は除去することができる(例えば、M推定器サンプルコンセンサス(MSAC)アルゴリズムを使用して)。残りの特徴から幾何学的変換を推定し、移動画像のピクセルの補間を介して適用することができる。
【0061】
両レジストレーション試行で構造類似性(SSIM)指数測度を特定し、互いと比較することができる。任意の所与のレジストレーション試行のSSIM指数は2つの入力画像を使用して計算される:(1)見当合わせされた画像及び(2)それと見当合わせされている画像。レジストレーション試行が幾何学的変換を生成することができなかった(例えば、一致点が4個未満)場合、その事例にゼロのSSIM指数が記録される。変換の回転及び規模が許容可能な範囲(例えば、-13.6995°≦回転≦13.6995°、0.9680≦規模≦1.0331)内の場合、SSIM指数がより大きな結果は最良の剛体レジストレーションとして提供される。初期フェーズでは、回転又は規模のいずれかが許容範囲外の場合、見当合わせされない画像が使用される。逆に、後期フェーズでは、画像は拒絶され、シーケンス中の次の画像が処理される。
【0062】
次いで、最良の剛体レジストレーション画像が、非剛体レジストレーション法(例えば、デーモンアルゴリズム)を介して処理されて、局所歪みを補正することができる。非剛体レジストレーションでは、隣接画像を「固定画像」として使用することができる。移動画像及び固定画像は両方とも、2次元ガウス(μ=0、σ=20、並びに対角線エントリに沿ったσ2及び非対角線エントリに沿った0で構成される共分散行列)ぼかし関数を使用してフィルタリングされ、元画像から減算することができる。このプロセスは、不均一背景照明を除去し、解剖学的特徴を残す;例えば、血管、小病変、レーザ瘢痕、及び視神経円板。デーモンアルゴリズムを利用して、移動画像を固定画像に整列させる変位場を推定することができる。変位場は、そのピクセル場所の適応変位を介して移動画像に適用することができる。レジストレーションの結果のSSIM指数が計算され、見当合わせされない画像のSSIM指数と比較される。SSIM指数が、見当合わせされない画像よりも高い場合、見当合わせされた画像が使用される。その他の場合、非剛体レジストレーションが適用されない画像(即ち最良の剛体レジストレーション画像)が使用される。
【0063】
前処理モジュール268は次いで、全画像が見当合わせされる(初期フェーズではn-1、後期フェーズレジストレーションではn+1)まで、シーケンス内の各連続画像を前処理することができる。
【0064】
前処理モジュール268により実行される前処理の一例を
図3に示す。
【0065】
一連のFA画像から毛細血管瘤をセグメント化するために、それらのモルフォロジーを特徴付けるべきである。FA画像において、毛細血管瘤は、スキャンの初期フェーズにおける超蛍光ドットとして見える。これらの超蛍光ドットは毛細血管瘤構造を示す:毛細血管が関わる小さな嚢状突出物。FAスキャンから超蛍光ドットを抽出するために、検出モジュール270は、ブロック308において、参照画像を識別する。参照画像は、一連のFA画像における最大平均強度画像として選択される。この参照画像は、背景組織と網膜の構造特徴との間に優れたコントラストを提供する。幾つかの場合、参照画像を更に強調するために、検出モジュール270は、FAスキャンにおける前の画像及び後の画像と最小画像との平均をとり、平均参照画像を作成することもできる。
【0066】
ブロック310において、検出モジュール270は、例えば、2次元ガウス(μ=0、σ=20、並びに対角線エントリに沿ったσ2及び非対角線エントリに沿った0で構成される共分散行列)ぼかし関数を使用して平均参照画像をフィルタリングし、結果を元の平均参照画像から減算する。このフィルタリング及び減算は、網膜におけるより小さな超蛍光特徴を背景組織から分けることができる。ブロック312において、検出モジュール270は、強度閾値、例えば25の強度閾値(強度閾値は0~255の範囲である)を使用して、フィルタリングされた画像中の超蛍光特徴に対して二値化を実行する。ブロック314において、検出モジュール270は二値化マップ内の血管をセグメント化し除去する。
【0067】
血管セグメント化は、検出モジュール270により、参照画像前後の画像のセットに対して実行される;例えば、参照画像前後の-5秒~+25秒。各画像は、例えば、0.01の正規化コントラスト強調限度を用いる適応ヒストグラム等化、ノイズを低減する2次元メジアンフィルタ、及びコントラストを更に強調するピクセルの下位1%及び上位1%の飽和の組合せを介してフィルタリングすることができる。検出モジュール270は、例えば、2次元ガウスフィルタ(μ=0、σ=20、並びに対角線エントリに沿ったσ
2及び非対角線エントリに沿った0で構成される共分散行列)ぼかし関数を介して画像をフィルタリングし、結果を元画像から減算する。更に、第2のガウスフィルタ(μ=0、σ=4、並びに対角線エントリに沿ったσ
2及び非対角線エントリに沿った0で構成される共分散行列)を介して各画像の二乗を処理することができ、平方根を計算することができる。第1のガウス演算の結果を次いで、第2の結果で除算することができる。このプロセスを以下の数式により示す。
【数1】
式中、
・g(x,σ)は、入力x(画像)及びσ(ガウス分布の標準偏差)を有する2次元ガウスフィルタであり、
・I
1は入力画像であり、
・I
filteredは演算の結果である。
【0068】
各画像は、例えば、大津の閾値を利用して二値化される。大津の閾値は、明ピクセルと暗ピクセルとの間の級内分散を最小化することにより決定される。二値化マップにおける孤立ピクセルは除去され、2次元メジアンフィルタ(3×3カーネル)が適用される。個々のブロブをラベリングすることができ、ブロブは、等しい値からなる8点連結ピクセルの集まりを含む。個々のブロブは、8点ピクセル連結性に基づいて数値でラベリングされ(即ち、値1を有するピクセルは、隣接ピクセルが値1を含む場合、隣接ピクセルに連結されると見なされる)、以下の局所特性が各ブロブで特定され:
・周長(Pblob_px)、
・面積(Ablob_px)
・最大強度(MaxIntblob)
式中、最大強度は、ラベリングされたブロブにより包含される元の処理されていない画像内の最大強度値である。
【0069】
各ブロブで、ブロブの円形度が以下の式を使用して計算される:
【数2】
【0070】
所定の値(例えば、17)未満の円形度値又は所定の値(例えば、10)未満の最大強度を有するあらゆるブロブが、非血管マスクの作成に使用される。このマスクは、血管であるには丸すぎる又は暗すぎるブロブを含む;血管は、FAスキャン内で明るく薄い物体として現れると予期される。非血管マスク内の穴(例えば、値0のピクセル)は、モルフォロジー的に充填される(4ピクセル連結性)。非血管マスクは次いで、元の二値化マップから減算される。結果は、モルフォロジーブリッジング(例えば、ピクセルが2つ以上の非ゼロ近隣ピクセルを有する場合、0値ピクセルを設定するプロセス)を介して複数回(例えば、5回)処理することができる。処理された全てのマップは次いで一緒に合算されて、血管マップを構築することができる。
【0071】
二値化は有利なことに、検出モジュール270が網膜内の非毛細血管瘤(非超蛍光ブロブ)と毛細血管瘤候補(超蛍光ブロブ)とを区別できるようにする。更に、検出モジュール270が毛細血管瘤候補の境界を分離し、形状メトリックを計算(本明細書に記載のように)できるようにする。
【0072】
セグメント化及び除去の出力は、平均参照画像における超蛍光要素の二値化マップである。ブロック316において、各毛細血管瘤候補は検出モジュール270により個々にラベリングされ、以下の局所特性の1つ又は複数が特定される:
・周長(PCandidate_px)、
・面積(ACandidate_px)、
・偏心度(ECandidate)、
・中実度(SCandidate)、
・短軸長(MinorLCandidate_px)、
・長軸長(MajorLCandidate_px)。
【0073】
毛細血管瘤候補は、ピクセル連結性においてラベリングすることができる。近隣(8点連続性)非ゼロピクセルを有する非ゼロピクセルは、同じブロブの一部として見なすことができる。連結された非ゼロピクセルのセットは、個々のブロブを識別するために、別個のマップにおいて数値でラベリングすることができる(例えば、値23を有するピクセルは毛細血管瘤候補#23に属する)。このプロセスは、ラベリングされたマップが生成されるまで、各ピクセルに対して実行される。
【0074】
ブロック318において、毛細血管瘤であるか否かのいずれかとして毛細血管瘤候補を分類するために、検出モジュール270は形状メトリックの組合せを特定する。特定の場合、形状メトリックは特定の構造特徴を含むことができる:(1)円形形状(一方、血管断片は概して楕円形である)、(2)中実/詰まっている、(3)125μm未満の直径、(4)統一されたアスペクト比(一方、血管は概して統一されたアスペクト比ではない)、及び(5)低偏心度。幾つかの場合、ノイズ又は潜在的に非毛細血管瘤ブロブを毛細血管瘤として分類することを避けるために、候補の半径の評価において半径を使用することができる(例えば、約10μm)。これらの場合、毛細血管瘤候補の形態学的グレーディングメトリックは、
・円形度(CCandidate)、
・偏心度(ECandidate)、
・中実度(SCandidate)、
・半径(RCandidate_μm)、
・統一されたアスペクト比(ARCandidate)
である。
【0075】
局所特性を使用して、検出モジュール270は、先に列記した等の形状メトリックを特定する。各形状メトリックを特定するための閾値及び方法論の例についてここで詳述する。なお、「_px」という用語はピクセル数単位で測定される値を表し、「_μm」という用語はマイクロメートル単位で測定される値を表す。
【0076】
円形度(C
Candidate)
円形度は、物体の周長をその物体の面積に関連付ける測度である。この比率は所与の形状がいかに円形であるかを示す。本形状メトリックでは、円形度は
【数3】
を使用して計算することができる。したがって、完全に円形の物体は円形度1を有することになり、一方、非円形の物体は1よりも大きな円形度を有することになる。FAスキャンにおいて毛細血管瘤は小さいため、これは平滑な外形ではなくピクセル化された物体になり、適した閾値が使用されるべきである;例えば閾値1.3。これは画像デジタル化の結果としての誤差を補償することになる。
【0077】
偏心度(ECandidate)
偏心度は、長軸の長さに対する楕円の焦点間の距離に関連する測度である。円は偏心度0を有し、一方、線分は偏心度1を有することになる。偏心度は、血管断片(vessel fragments)及び円形ではない他のブロブ(例えば、血管断片(blood vessel fragments))を除去するための形状メトリックとして使用される。適した偏心度閾値が使用されるべきである;例えば、閾値0.9未満。
【0078】
中実度(SCandidate)
中実度は、ブロブの凸閉包内のピクセルに対するそのブロブ内のピクセルの割合に関連する測度である。構造に間隙及び穴を有する物体は、0に近づく中実度を有することになり、一方、詰まった物体は中実度1を有することになる。毛細血管瘤は、血管から突出する突出物であるため、一般に間隙又は穴を有さない。適した中実度閾値が使用されるべきである;例えば、閾値0.9。
【0079】
半径(R
Candidate_μm)
幾つかの場合、各候補の測定半径を特定するために、検出モジュール270は、参照画像内の視神経円板の面積を査定中の候補に関連付けることができる。候補の半径を計算するために、検出モジュール270は視神経円板の既知の平均幅測定値及び平均高さ測定値を使用して比率を導出することができる;例えば、それぞれ1670μm及び1900μm。検出モジュール270は次いで、楕円の面積を円の面積に等化させることにより、同等の視神経円板の半径を特定する。この特定から、検出モジュール270は、同等の平均視神経円板半径、例えば、891μmを導出することができる。同等の平均視神経円板半径を使用して、検出モジュール270は、
【数4】
を使用して毛細血管瘤の半径を特定することができ、式中、R
OpticDisc_pxは、ピクセル単位で測定された参照画像の視神経円板半径である。毛細血管瘤は適した範囲内の実測半径を有することになる;例えば、10μm~62.5μm。この適した範囲は、非毛細血管瘤候補の除去に使用される。
【0080】
アスペクト比(AR
Candidate)
各候補の長軸長及び短軸長を使用して、検出モジュール270は、
【数5】
を使用してアスペクト比を特定することができる。
【0081】
毛細血管瘤は丸いため、1.0に近づくアスペクト比を有することになる。それに従って適した閾値が使用されるべきである;例えば、閾値2.0。
【0082】
まとめると、上記例における各ブロブの形状メトリック格付け基準は以下であり、これらの基準を満たさないあらゆるブロブは拒絶され、毛細血管瘤と見なされない:
・CCandidate<1.3、
・ECandidate<0.9、
・SCandidate>0.9、
・10μm<RCandidate_μm<62.5μm、
・ARCandidate≦2.0。
【0083】
検出モジュール270により実行される検出の一例を
図4に示す。
図11は、本実施形態による、毛細血管瘤を検出する手法の一例のフローチャートを示す。
【0084】
毛細血管瘤が漏出性であるか又は非漏出性であるかを評価するために、ブロック320において、分類モジュール272は、検出された毛細血管瘤の周囲の実質を評価するための外環マスクを生成する。一実施形態において、外環マスクは、まず、特定の検出された毛細血管瘤に小さな拡張マスクを適用させることにより生成することができる;例えば、検出された各毛細血管瘤は2ピクセル境界肥厚化を受ける。次いで、検出された毛細血管瘤の大きな拡張マスクが生成される;例えば、検出された各毛細血管瘤は5ピクセル境界肥厚化を受ける。最後に、小さなマスクが大きなマスクから減算される;例えば、検出された各毛細血管瘤の周囲に2ピクセルギャップがある状態で3ピクセル幅の環を作成する。
【0085】
ブロック322において、各毛細血管瘤で、分類モジュール272は各外環を背景減算された参照画像に重ねて、どのピクセルが毛細血管瘤の連結血管に対応するかを識別する。外環内のピクセルは次いで、最小最大正規化され、適した閾値(例えば、0.6842)よりも大きな値を有するピクセルは、連結血管ピクセル候補と見なされる。本発明者らは、外側マスクにおいて比較的高強度を有するピクセルが、周囲の実質よりも高濃度のフルオレセイン色素を含む傾向があるため、検出された毛細血管瘤の連結血管に対応することになると判断した。
【0086】
一例において、
図13及び
図14に示されるように、閾値は、背景減算済み画像を利用し、幾つかの毛細血管瘤の外環内のピクセルをユーザにより手動で識別させることにより手動で決定することができる。トレースされた領域(同様に外環に共通する)内のピクセルは連結血管ピクセルとして識別することができ、一方、外環の残りの部分は実質ピクセルとして識別することができる。その結果生成された強度は次いでヒストグラムにプロットすることができ、連結血管ピクセルのメジアンが強度閾値として採用される。
【0087】
幾つかの場合、分類モジュール272は、血管ピクセル候補として識別されたピクセルをメジアンフィルタ(3×3カーネル)に通して、ノイズを抑制する。ブロック324において、分類モジュール272は、例えば、一方は0°、他方は90°で3ピクセル長を測定する2つの平坦線構造要素を使用して拡張を実行する。その結果、3つの個々のマスクが存在する:毛細血管瘤マスク、連結血管マスク、及び実質マスク。3つのマスクの一例を
図5に示す。
【0088】
拡張は、検出された毛細血管瘤の外形の拡大を可能にする。具体的には、平坦線構造要素を使用して、毛細血管瘤の二値マップを調べ、構造要素の長さにわたり原点にある同じ値を記録する。幾つかの場合、値0のピクセルは拡張されない。これにより、長さ及び構造要素の方向にわたり土台をなす形状が拡張される。
【0089】
血管マスクの場合、拡張を使用して、メジアンフィルタ(5×5カーネル)の適用後、マスクの元の形状を復元することができる;幾つかの場合、メジアンフィルタは、孤立ピクセルを除去しようとして血管マスクのエッジを損なうことになる。
【0090】
3つのマスクを用いて、ブロック326において、分類モジュール272は見当合わせされたFAスキャンを使用して、FAシーケンス中の各画像で、マスキングされた各領域の平均画像強度を含む3つのベクトルを作成する。ベクトルを使用して、ブロック328において、分類モジュール272は、検出された各毛細血管瘤の1つ又は複数の運動学的特徴を特定する;例えば、運動学的特徴は、
・毛細血管瘤血流量-毛細血管瘤マスクを使用する、
・連結血管血流量-連結血管マスクを使用する、及び
・実質傾き-実質マスクを使用する
を含むことができる。
【0091】
毛細血管瘤血流量
毛細血管瘤を表す平均強度ベクトルを利用して、分類モジュール272は開始点及び終了点を識別して、毛細血管瘤の血流量を特定する。まず、分類モジュール272は、毛細血管瘤の平均強度曲線の極大を識別する;即ち、強度曲線の最大が終了点として選択される。開始点を識別するために、分類モジュール272は前処理を強度曲線に適用する。まず、強度曲線は最小最大正規化を使用し、強度ベクトルを10乗し、次いで最小最大正規化を再び使用してフィルタリングされる。次いで開始点が、フィルタリング済みの強度ベクトルにおける、定義された強度値(例えば、0.05)を越える前の点として識別される。例えば、所与の時点で、強度値が0.04であり、前の時点が強度値0.12を有する場合、前者の時点がシーケンスの開始として識別されることになる。識別された開始点及び終了点を用いて、毛細血管瘤血流量が、最小二乗法を使用して特定される。
図6は、毛細血管瘤の平均強度プロファイル及びその結果として生成された線形フィッティングの一例である。
【0092】
連結血管血流量
分類モジュール272は、毛細血管瘤血流量と同じように連結血管血流量を特定するが、連結血管マスクの平均強度ベクトルを使用する。開始点及び終了点が同じ方法論を使用して識別され、連結血管血流量が、最小二乗法を使用して特定される。
図7は、連結血管の平均強度プロファイル及びその結果生成された線形フィッティングの一例である。
【0093】
実質傾き
分類モジュール272は、毛細血管瘤血流量及び連結血管血流量と同様であるが、少し異なる様式で、実質漏出率を表す実質傾きを特定する。有利なことに、傾きの特定により、毛細血管瘤、それらの連結血管における血流運動学及び実質への毛細血管瘤の漏出率(毛細血管瘤が漏出している場合)を定量化する能力が可能になる。
【0094】
漏出を測定するために、分類モジュール272はFAスキャンの後期フェーズを調べる。まず、分類モジュール272は、実質マスクの平均強度ベクトル内の最後のエントリとして終了点を決定する。分類モジュール272は、実質の後期フェーズ強度のセクションを含むより小さなベクトルを生成する;このより小さなベクトルは、毛細血管瘤の強度ベクトルの最大と最大後の定義された期間(例えば、最大後30秒)との間の実質の強度を含む。幾つかの場合、平均強度ベクトルは、最小最大正規化を使用し、強度ベクトルを10乗し、最小最大正規化を再び使用してフィルタリングされる。次いで開始点が、フィルタリング済みの強度ベクトルにおける、定義された強度値(例えば、強度値0.05)を下回る前に生じた点として識別される。例えば、ある時点で、強度値が0.12であり、前の時点が強度値0.04の場合、後者の時点が開始として識別されることになる。識別された開始点及び終了点を用いて、実質傾きが、分類モジュール272により最小二乗法を使用して特定される。
図8は、実質傾きの平均強度プロファイル及びその結果として生成された線形フィッティングの一例である。幾つかの場合、傾き特定を利用する他の分類を使用することができる(例えば、特定の時系列及び/又は眼底造影のフェーズにわたる変化率の異なる測定)。
【0095】
ブロック330において、分類モジュール272は、各毛細血管瘤が漏出性であるか否かを分類する。所与の検出された毛細血管瘤に生成された実質傾きが正の場合(即ち、色素蓄積あり)、毛細血管瘤は漏出性と分類される。逆に、実質傾きがゼロ又は負のいずれかの場合(即ち、色素蓄積なし)、毛細血管瘤は非漏出性として分類される。
図9は、漏出性毛細血管瘤及び非漏出性毛細血管瘤の両方での3つのマスクの各々の強度プロファイルの一例を示す。
【0096】
ブロック332において、出力モジュール274は、検出された各毛細血管瘤の分類を、幾つかの場合、検出された毛細血管瘤自体、運動学的特徴、及び/又は形状メトリックと共にデータベース288、ネットワークインタフェース276、及び/又はI/Oインタフェース268に出力する。幾つかの場合、分類は、各毛細血管瘤タイプの数を示す可視化の横に漏出性及び非漏出性毛細血管瘤が2つの異なる色で表される網膜画像上にオーバーレイとして出力することができる。
図10は、可視化における分類された毛細血管瘤の出力の一例を示す。
図12は、本実施形態による、毛細血管瘤を分類する手法の一例のフローチャートを示す。
【0097】
更なる場合、分類モジュール272は、毛細血管瘤の特定と共に又はそれに代えて、灌流を特定することができる。灌流は、FAスキャンの脈絡膜初期蛍光ステージと動静脈ステージとの間の強調率として特定される。この期間は、色素の存在下での最初のフレーム(例えば、注入後約10秒)と最大蛍光を有する画像(例えば、注入後約23秒)との間で識別される。線形回帰をあらゆるピクセルの強調時間曲線に適用することができ、正の傾きを含むピクセルは「非虚血」として定義することができ、一方、ゼロ又は負の傾きを含むものは「虚血」と見なすことができる。
【0098】
本発明者らは、本実施形態の利点を検証するために実験例を行った。実験例は、蛍光眼底造影画像の2つのデータセットの遡及的解析を含んだ。スキャンの第1のセットは、糖尿病性網膜症を有する13人の患者(2人の中等度の非増殖性、8人の重度の非増殖性、及び3人の増殖性)の前の研究及び7人の健康なボランティアからのものであった。このセットからのスキャンは50°視野を使用してTopcon 50EXカメラを用いて取得された。スキャンの第2のセットは、糖尿病性網膜症を有する15人の患者(4人の非増殖性及び11人の増殖性)のものである。このデータセットからのスキャンは、200°視野を使用してOptos 200Txカメラを用いて取得した。
【0099】
局所BRB漏出、虚血、及び毛細血管瘤の間の潜在的な関連を研究するために、実験例は6mm円形格子で病変のこれらのマーカーを調べた。各象限の面積は7.07mm2であり、全ての狭視野スキャンで約350,000個のピクセル(50,095ピクセル/mm2)及び超広視野スキャンで約40,000個のピクセル(5,550ピクセル/mm2)をカバーした。格子は中心窩を中心とし、円形格子の幅のサイズは、視神経円板が比例参照として機能する(約1.67mm幅であると仮定されるため)ように、視神経円板の幅に比例する。
【0100】
格子は、
図15に示されるように、各被験者に生成された毛細血管瘤、BRB漏出、及び虚血のマップに適用された。各象限で、毛細血管瘤の数、BRB漏出を有するピクセルの割合(潜在強調傾き>0)、及び虚血を有するピクセルの割合(初期強調傾き≦0)を特定した。BRB漏出又は虚血を有するボクセルの「非病的」割合の閾値を決定するために、まず、これらのパラメータを対照スキャンにおいて特定した。あらゆる対照被験者で、各象限におけるBRB漏出を有するピクセルの割合を特定した。次に、全ての対照被験者の最大値(BRB漏出のある象限の6.64%)を測定し、「病的」BRB漏出閾値として使用した。同様に、1象限当たりの虚血ピクセルの割合を対照群で特定した。この場合、最大値はゼロであり(虚血を有する象限の0%)、象限におけるいかなる虚血ピクセルの検出も「病的」であることを示す。
【0101】
図15は、各スキャンで、本実施形態が毛細血管瘤、BRB漏出、及び虚血のマップを生成することができることを示す。3つの群(健康な対照、非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)、及び増殖性糖尿病性網膜症(PDR))を表す毛細血管瘤のマップは、本実施形態がNPDR患者及びPDR患者では毛細血管瘤(ブロブ)を検出するが、対照では検出しないことを示す。BRB漏出及び虚血の対応するマップは、NPDR患者及びPDR患者における明白な病変。
【0102】
実験例において、PDRを有する14人の患者、NPDRを有する14人の患者、及び7人の健康な対照のFAスキャンを解析した。群は同様の性別分布及び年齢分布を有した。本実施形態を使用して全てのスキャンを解析し、検出された毛細血管瘤のマップを各スキャンで生成した。毛細血管瘤を識別するために、6mm円形格子の中心を中心窩に置き、斑紋を4象限に分けた(
図15に示されるように)。健康な対照からの合計28象限、NPDRを有する患者からの合計56象限、及びPDRを有する患者からの合計56象限において毛細血管瘤の数を定量化した。毛細血管瘤は2つの対照象限(7%)、49のNPDR象限(87.5%)、及び53のPDR象限(94.6%)で見つかった。全ての差は統計学的に有意であった(p<0.05)。
【0103】
図16A~
図16Dは、毛細血管瘤、BRB漏出、及び虚血の定量化からの結果を示す。
図16Aは、PDR群が1象限当たり18.70±1.77個の毛細血管瘤を有し、NPDR群は1象限当たり13.32±1.85個の毛細血管瘤を有し、対照が0.18±0.15個を有したことを示す。全ての差は統計学的に有意であった(p<0.05)。
図16Bは、1診断当たりの各象限内の漏出性毛細血管瘤の割合を示す。平均で、PDR群での毛細血管瘤の約50%が漏出性であることがわかり、NPDR群では約47%が漏出性であった(差は統計学的に有意ではなかった;p=0.682)。対照では漏出性毛細血管瘤は見つからなかった。
図16Cは、BRB漏出がNPDR象限内の組織の44%に影響を及ぼし、PDR象限内の組織の38%に影響した(これらの群間で有意差は見られなかった;p=0.472)ことを示す。BRB漏出は、対照象限の3.6%未満に影響し、NPDR群及びPDR群よりも有意に低かった(p<0.001)。
図16Dは、PDRを有する患者が、1象限当たり虚血の割合が最も高く、次にNPDRが続き、そして対照が続くことを示す。
【0104】
実験例は、毛細血管瘤と漏出又は虚血との間の潜在的な関連も調べた。
図17A及び
図17Bは、BRB漏出又は虚血等の網膜病変の他の特徴が不在の状態で検出された毛細血管瘤の存在を示す。毛細血管瘤カウントにおける差は、(1)BRB漏出ありの象限となしの象限との間(p=0.871、
図17A);(2)虚血ありの象限となしの象限との間(p=0.317、
図17A);及び(3)BRB漏出も虚血もない象限といずれか/両方の病変特徴がある象限との間(p=0.682、
図17A)で示されなかった。特に、全ての毛細血管瘤の15%は、BRB漏出又は虚血のない象限で見つかった(
図18)。これらの結果は、毛細血管瘤の存在がBRB漏出又は虚血から独立していることを示す。BRB漏出を有する象限内の毛細血管瘤は、BRB漏出なしの象限内の毛細血管瘤(2.4%、p<0.001;
図17B)と比べて漏出性である可能性がはるかに高く(60.8%)、全ての漏出性毛細血管瘤の99%はBRB漏出がある象限で見つかった(
図18)。虚血ありの象限における毛細血管瘤対虚血なしの象限における毛細血管瘤は、漏出性である可能性が等しかった(それぞれ55%及び41.7%;p=0.110;
図17B)。漏出性毛細血管瘤の0.2%のみが、BRB漏出又は虚血のない象限で見つかった(
図18)。
【0105】
有利なことに、ここに記載の実施形態は、毛細血管瘤の血流特性に関する追加情報を捕捉できるようにする。研究により、毛細血管瘤血流特性と糖尿病性網膜症の進行との間のリンクが示されている。別の利点として、本実施形態は、毛細血管瘤が漏出性であるか非漏出性であるかを評価することが可能であり、毛細血管瘤の的を絞った処置において眼科医を助けることができる。一例として、漏出性毛細血管瘤は、糖尿病性網膜症の患者での網膜肥厚の一因となり、漏出性毛細血管瘤はBRB漏出の存在と相関する。
【0106】
本発明について特定の具体的な実施形態を参照して説明したが、本明細書に添付される特許請求の範囲に要約される本発明の主旨及び範囲から逸脱せずに、種々の変更が当業者に明らかになろう。上記引用された全ての引用文献の開示全体は、参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】