(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】カチオン性脂質及びその組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 229/16 20060101AFI20240614BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240614BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240614BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240614BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240614BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240614BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240614BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240614BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240614BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240614BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240614BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240614BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240614BHJP
A61P 39/04 20060101ALI20240614BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240614BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C07C229/16 CSP
A61K9/51
A61K47/18
A61K47/34
A61K31/7088
A61K31/713
A61K31/7105
A61K31/711
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/26
A61P43/00
A61P7/06
A61P7/00
A61P43/00 105
A61P3/06
A61P35/00
A61P3/00
A61P1/16
A61P17/00
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P21/04
A61P27/02
A61P39/04
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577160
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022033334
(87)【国際公開番号】W WO2022266032
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520068043
【氏名又は名称】ジェネレーション バイオ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スタントン, マシュー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ノルティング, バート
(72)【発明者】
【氏名】ミルステッド, アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB29
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC29
4C076CC50
4C076DD49
4C076DD63
4C076DD68
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF04
4C076FF31
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA07
4C086MA10
4C086MA41
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA11
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA33
4C086ZA51
4C086ZA55
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC21
4C086ZC33
4C086ZC37
4H006AA01
4H006AB68
4H006BT12
4H006BU32
(57)【要約】
本明細書では、式I又はIaを有するカチオン性脂質、
及びその薬学的に許容される塩が提供され、式中、R’、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6a、R
6b、X、及びnが、本明細書で定義されるとおりである。本明細書では、式I又はIaを有するカチオン性脂質及びカプシド不含非ウイルスベクター(例えば、ceDNA)を含む、脂質ナノ粒子(LNP)組成物もまた提供される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一態様では、これらのLNPは、カプシド不含非ウイルスDNAベクターを目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官等)に送達するように使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表されるカチオン性脂質、
【化31】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
3アルキルであるが、但し、R’が水素又はC
1~C
3アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されていることを条件とし、
R
1及びR
2が、各々独立して、水素又はC
1~C
3アルキルであり、
R
3が、C
3~C
10アルキレン又はC
3~C
10アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【化32】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、各々独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
8アルキレン、又はC
2~C
8アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、各々独立して、C
7~C
14アルキル又はC
7~C
14アルケニルであり、
Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、
-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、
-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である、カチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、又は-S-S-である、請求項1に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記脂質が、式IIで表されるか、
【化33】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、nが、1、2、3、及び4から選択される整数である、請求項1又は2に記載のカチオン性脂質。
【請求項4】
前記脂質が、式IIIで表されるか、
【化34】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載のカチオン性脂質。
【請求項5】
R
1及びR
2が、各々独立して、水素、C
1~C
2アルキル、又はC
2~C
3アルケニルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R’、R
1、及びR
2が、各々独立して、水素又はC
1~C
2アルキルである、請求項1~5のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記脂質が、式IVで表されるか、
【化35】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~6のいずれか一項に記載のカチオン性脂質。
【請求項8】
R
5が、存在しないか、又はC
1~C
8アルキレンである、請求項1~7のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
R
5が、存在しないか、又はC
2アルキレンである、請求項1~8のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
前記脂質が、式Vで表されるか、
【化36】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載のカチオン性脂質。
【請求項11】
R
4が、C
1~C
14非分岐アルキル、C
2~C
14非分岐アルケニル、又は
【化37】
であり、式中、R
4a及びR
4bが、各々独立して、C
1~C
12非分岐アルキル若しくはC
2~C
12非分岐アルケニルである、請求項1~10のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
R
4が、C
2~C
12非分岐アルキル又はC
2~C
12非分岐アルケニルである、請求項1~11のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
R
4が、C
5~C
12非分岐アルキルである、請求項1~12のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
R
4が、C
6非分岐アルキル、C
7非分岐アルキル、C
8非分岐アルキル、C
9非分岐アルキル、C
10非分岐アルキル、C
11非分岐アルキル、又はC
12非分岐アルキルである、請求項1~13のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
R
4が、C
9非分岐アルキルである、請求項1~14のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
R
3が、C
3~C
8アルキレン又はC
3~C
8アルケニレンである、請求項1~15のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
R
3が、C
3~C
7アルキレンである、請求項1~16のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
R
3が、C
7アルキレンである、請求項1~17のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
R
3が、C
5アルキレンである、請求項1~18のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
R
6a及びR
6bが、各々独立して、C
7~C
12アルキル又はC
7~C
12アルケニルである、請求項1~19のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
R
6a及びR
6bが、各々独立して、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル、C
12アルキル、C
8アルケニル、C
10アルケニル、C
11アルケニル、又はC
12アルケニルである、請求項1~20のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
R
6a及びR
6bが、各々独立して、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル、又はC
12アルキルである、請求項1~21のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
R
6a及びR
6bが、互いに等しい数の炭素原子を含有する、請求項1~22のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
R
6a及びR
6bが、同じである、請求項1~23のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項25】
R
6a及びR
6bが、両方ともC
7アルキル、又はC
8アルキル、又はC
9アルキル、又はC
10アルキル、又はC
11アルキル、又はC
12アルキルである、請求項1~24のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項26】
R
6a及びR
6bが、両方ともC
8アルキルである、請求項1~25のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項27】
R
6a及びR
6bが、両方ともC
9アルキルである、請求項1~25のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項28】
R
6a及びR
6bが、両方ともC
10アルキルである、請求項1~25のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項29】
R
6a及びR
6bが、両方ともC
11アルキルである、請求項1~25のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項30】
R
6a及びR
6bが、両方ともC
12アルキルである、請求項1~25のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項31】
R
6a及びR
6bが、各々、互いとは異なる数の炭素原子を含有する、請求項1~22のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項32】
R’が、存在しない、請求項1~31のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項33】
前記脂質が、以下であるか、
【化38】
【化39】
【化40】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩と、治療用核酸と、を含む、脂質ナノ粒子(LNP)。
【請求項35】
前記治療用核酸が、前記脂質内に封入されている、請求項34に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項36】
前記治療用核酸が、ミニ遺伝子、プラスミド、ミニサークル、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、リボザイム、ceDNA、ミニストリング、doggybone(商標)、プロテロメア閉端DNA、又はダンベル直鎖状DNA、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、DNAウイルスベクター、ウイルスRNAベクター、非ウイルスベクター、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項34又は35に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項37】
前記治療用核酸が、閉端DNA(ceDNA)である、請求項34~36のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項38】
ステロールを更に含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項39】
前記ステロールが、コレステロール又はベータ-シトステロールである、請求項38に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項40】
非カチオン性脂質を更に含む、請求項34~39のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項41】
前記非カチオン性脂質が、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン(16-O-モノメチルPE等)、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン(16-O-ジメチルPE等)、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、スフィンゴミエリン(SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPHyPE)、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リソレシチン、リソホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジカシド、セレブロシド、ジセチルホスフェート、リソホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項40に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項42】
前記非カチオン性脂質が、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)からなる群から選択される、請求項40又は41に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項43】
少なくとも1つのPEG化脂質を更に含む、請求項34~42のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項44】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、PEG-ジラウリルオキシプロピル、PEG-ジミリスチルオキシプロピル、PEG-ジパルミチルオキシプロピル、PEG-ジステアリルオキシプロピル、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール-PEG(DMG-PEG)、ジステアロイル-rac-グリセロール-PEG(DSG-PEG)、
PEG-ジラウリルグリセロール、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステリルグリセロール、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、PEG-ジステリルグリカミド、(1-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)(PEG-コレステロール)、3,4-ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル(PEG-DMB)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ポリ(エチレングリコール)-ヒドロキシル(DSPE-PEG-OH)からなる群から選択される、請求項43に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項45】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、DMG-PEG、DSPE-PEG、DSPE-PEG-OH、DSG-PEG、又はそれらの組み合わせである、請求項43又は44に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項46】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、DMG-PEG2000、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG2000-OH、DSG-PEG2000、又はそれらの組み合わせである、請求項43~45のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項47】
組織特異的標的化リガンドを更に含む、請求項34~46のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項48】
前記組織特異的標的化リガンドが、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)又はGalNAc誘導体である、請求項47に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項49】
前記組織特異的標的化リガンドが、前記少なくとも1つのPEG化脂質に共有結合して、PEG化脂質コンジュゲートを形成する、請求項47又は48に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項50】
前記PEG化脂質コンジュゲートが、DSPE-PEG2000に共有結合したテトラ-アンテナリーGalNAcを含む、請求項49に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項51】
前記カチオン性脂質が、約30%~約80%のモルパーセンテージで存在する、請求項34~50のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項52】
前記ステロールが、約20%~約50%のモルパーセンテージで存在する、請求項38~51のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項53】
前記非カチオン性脂質が、約2%~約20%のモルパーセンテージで存在する、請求項40~52のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項54】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、約2.1%~約10%のモルパーセンテージで存在する、請求項43~53のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項55】
前記PEG化脂質コンジュゲートが、約0.1%~約10%のモルパーセンテージで存在する、請求項49~54のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項56】
ステロール、非カチオン性脂質、PEG化脂質、及びPEG化脂質コンジュゲートを更に含む、請求項34に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項57】
パルミチン酸デキサメタゾンを更に含む、請求項34~56のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項58】
前記粒子が、約10:1~約40:1の全脂質対ceDNA比を有する、請求項34~57のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項59】
前記ナノ粒子が、約40nm~約120nmの範囲の直径を有する、請求項34~58のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項60】
前記ナノ粒子が、約100nm未満の直径を有する、請求項34~59のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項61】
前記ナノ粒子が、約60nm~約80nmの直径を有する、請求項34~60のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項62】
前記ceDNAが、閉端直鎖状二重鎖DNAである、請求項34~61のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項63】
前記ceDNAが、発現カセットを含み、前記発現カセットが、プロモーター配列及び導入遺伝子を含む、請求項62に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項64】
前記発現カセットが、ポリアデニル化配列を含む、請求項63に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項65】
前記ceDNAが、前記発現カセットの5’又は3’末端のいずれかに隣接する少なくとも1つの逆位末端反復(ITR)を含む、請求項62~64のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項66】
前記発現カセットが、2つのITRに隣接し、前記2つのITRが、1つの5’ITR及び1つの3’ITRを含む、請求項65に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項67】
前記発現カセットが、3’末端でITR(3’ITR)に連結している、請求項65に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項68】
前記発現カセットが、5’末端でITR(5’ITR)に連結している、請求項65に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項69】
前記少なくとも1つのITRが、AAV血清型に由来するITRであり、ガチョウウイルスのITRに由来し、B19ウイルスITRに由来し、パルボウイルスからの野生型ITRである、請求項65に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項70】
前記AAV血清型が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、及びAAV12から構成される群から選択される、請求項69に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項71】
前記5’ITR及び前記3’ITRのうちの少なくとも1つが、野生型AAV ITRである、請求項66~70のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項72】
前記5’ITR及び前記3’ITRのうちの少なくとも1つが、修飾型又は変異型ITRである、請求項66~71のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項73】
前記5’ITR及び前記3’ITRが、対称である、請求項66~72のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項74】
前記5’ITR及び前記3’ITRが、非対称である、請求項66~73のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項75】
前記ceDNAが、5’ITRと前記発現カセットとの間にスペーサー配列を更に含む、請求項66~74のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項76】
前記ceDNAが、3’ITRと前記発現カセットとの間にスペーサー配列を更に含む、請求項66~75のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項77】
前記スペーサー配列が、少なくとも5塩基対の長さである、請求項75又は76に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項78】
前記ceDNAが、ニック又はギャップを有する、請求項37~77のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項79】
前記ceDNAが、CELiD、DNAベースのミニサークル、MIDGE、ミニストリングDNA、発現カセットの前記5’及び3’末端にITRの2つのヘアピン構造を含むダンベル型の直鎖状二重鎖閉端DNA、又はdoggybone(商標)DNAである、請求項37~78のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項80】
請求項1~34のいずれか一項に記載のカチオン性脂質又は請求項34~79のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項81】
対象における遺伝性障害を治療する方法であって、有効量の請求項34~79のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は有効量の請求項80に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項82】
前記対象が、ヒトである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記遺伝性障害が、鎌状赤血球貧血症、メラノーマ、血友病A(凝固因子VIII(FVIII)欠損症)及び血友病B(凝固因子IX(FIX)欠損症)、嚢胞性線維症(CFTR)、家族性高コレステロール血症(LDL受容体欠損症)、肝芽細胞腫、ウィルソン病、フェニルケトン尿症(PKU)、先天性肝性ポルフィリン症、遺伝性肝代謝障害、レッシュナイハン症候群、鎌状赤血球貧血症、サラセミア、色素性乾皮症、ファンコニ貧血、網膜色素変性症、毛細血管拡張性運動失調症、ブルーム症候群、網膜芽細胞腫、ムコ多糖蓄積症(例えば、ハーラー症候群(MPS I型)、シャイエ症候群(MPS I S型)、ハーラー・シャイエ症候群(MPS I H-S型)、ハンター症候群(MPS II型)、サンフィリッポA、B、C、及びD型(MPS III A、B、C、及びD型)、モルキオA及びB型(MPS IVA及びMPS IVB)、マロトー・ラミー症候群(MPS VI型)、スライ症候群(MPS VII型)、ヒアルロニダーゼ欠損症(MPS IX型))、ニーマン・ピック病A/B、C1及びC2型、ファブリー病、シンドラー病、GM2-ガングリオシドーシスII型(サンドホフ病)、テイ・サックス病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ムコリピドーシスI、II/III及びIV型、シアリドーシスI及びII型、グリコーゲン蓄積症I及びII型(ポンペ病)、ゴーシェ病I、II及びIII型、シスチン症、バッテン病、アスパルチルグルコサミン尿症、サラ病、ダノン病(LAMP-2欠損症)、リソソーム酸性リパーゼ(LAL)欠損症、神経セロイドリポフスチン症(CLN1-8、INCL、及びLINCL)、スフィンゴリピドーシス、ガラクトシアリドーシス、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、フリードライヒ運動失調症、デュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)、ジストロフィー表皮水疱症(DEB)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ1欠損症、乳児期の全身性動脈石灰化(GACI)、レーバー先天性黒内障、シュタルガルト黄斑ジストロフィー(ABCA4)、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症、アッシャー症候群、加齢黄斑変性(AMD)、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)I型(ATP8B1欠損症)、II型(ABCB11)、III型(ABCB4)、又はIV型(TJP2)、並びにカテプシンA欠損症からなる群から選択される、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
前記遺伝性障害が、血友病Aである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記遺伝性障害が、血友病Bである、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記遺伝性障害が、フェニルケトン尿症(PKU)である、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記遺伝性障害が、ウィルソン病である、請求項83に記載の方法。
【請求項88】
前記遺伝性障害が、ゴーシェ病I、II、及びIII型である、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
前記遺伝性障害が、シュタルガルト黄斑ジストロフィーである、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
前記遺伝性障害が、LCA10である、請求項83に記載の方法。
【請求項91】
前記遺伝性障害が、アッシャー症候群である、請求項83に記載の方法。
【請求項92】
前記遺伝性障害が、滲出型AMDである、請求項83に記載の方法。
【請求項93】
前記遺伝性障害が、ジストロフィー表皮水疱症(DEB)である、請求項83に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年6月14日に出願された米国仮出願第63/210,204号に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
遺伝子療法は、異常な遺伝子発現プロファイルによって引き起こされる遺伝性障害又は後天性疾患のいずれかに罹患している患者についての臨床成績を向上することを目的とする。疾患を治療するための薬物として治療用核酸を患者の細胞に送達する様々な種類の遺伝子療法がこれまでに開発されてきた。
【0003】
患者の標的細胞への修復遺伝子の導入及び発現は、操作されたウイルス遺伝子送達ベクター、及び潜在的にプラスミド、ミニ遺伝子、オリゴヌクレオチド、ミニサークル、又は様々な閉端DNAの使用を含む、多くの方法を介して実行され得る。利用可能な多くのウイルス由来ベクター(例えば、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルス等)の中で、組換えアデノ随伴ウイルス(recombinant adeno-associated virus、rAAV)は、遺伝子療法において汎用的、かつ比較的安全なベクターとして受け入れられている。しかしながら、アデノ随伴ベクター等のウイルスベクターは、免疫原性が高く、特に再投与に関して有効性を損なう可能性のある体液性免疫及び細胞性免疫を誘発し得る。
【0004】
非ウイルス遺伝子送達は、ウイルス形質導入に関連する特定の不利な点、特にベクター粒子を形成するウイルス構造タンパク質に対する体液性及び細胞性免疫応答、並びに任意のデノボウイルス遺伝子発現に起因する不利な点を回避する。非ウイルス送達技術の利点の中には、担体としての脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)の使用がある。LNPは、ウイルス遺伝子療法に関連する顕著な毒性をもたらす体液性及び細胞性免疫応答を回避することができるLNP成分としてカチオン性脂質を設計することを可能にする独自の機会を提供する。
【0005】
カチオン性脂質は、概して、カチオン性アミン部分、典型的には1つ又は2つの脂肪族炭化水素鎖(すなわち、飽和又は不飽和であり得る水性尾部)を有する疎水性ドメイン、及びカチオン性アミン部分と疎水性ドメインとを連結するリンカー又は生分解性基から構成される。カチオン性アミン部分及びポリアニオン核酸は静電的に相互作用して、正に帯電したリポソーム又は脂質膜構造を形成する。したがって、細胞への取り込みが促進され、核酸が細胞に送達される。
【0006】
いくつかの広く使用されているカチオン性脂質は、CLinDMA、DLinDMA(DODAP)、及びDOTAPである。これらの脂質は、リボ核酸(siRNA又はmRNA)送達のために用いられてきたが、より高い用量での毒性とともに最適以下の送達効率に悩まされている。現在のカチオン性脂質の欠点を考慮して、毒性の低減とともに効力の増強を示すだけでなく、薬物動態並びに細胞取り込み及び脂質担体からの核酸放出等の細胞内動態を改善する脂質足場を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示において提供されるカチオン性脂質は、生分解性基を含有する1つの疎水性尾部と、生分解性基を含有しない疎水性尾部と、を含む。本開示に提供される例示的な脂質のいくつかは、末端部で分岐して2つの分岐脂肪族炭化水素鎖を形成する疎水性尾部と、分岐しない疎水性尾部と、を含む。本発明者らは、本開示のカチオン性脂質が満足のいく収率及び純度で合成され得ることを見出した。本発明者らはまた、本開示のカチオン性脂質が、治療用核酸を担持するための脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化された場合、核酸内の導入遺伝子インサートの持続性のある優れた、かつ安定したインビボ発現を提供し、十分に忍容性があることを見出した。更に、理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、分岐疎水性尾部における末端分岐脂肪族炭化水素鎖の長さ(すなわち、炭素原子の数)、非分岐疎水性尾部の長さと、並びに分解性基と分岐疎水性尾部との間の距離との間の微妙な相互作用が、とりわけ、LNP組成物の優れた封入効率、発現レベル、及びインビボ忍容性を達成するために重要であると考える。
【0008】
したがって、一態様では、本明細書では、式I又はIaで表されるカチオン性脂質、
【0009】
【化1】
並びにその薬学的に許容される塩が提供され、式中、R’、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6a、R
6b、X、及びnは、それぞれ、式I又はIaの各々について本明細書で定義されるとおりである。
【0010】
本明細書に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物も提供される。
【0011】
本開示の別の態様は、本明細書に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩、及び核酸を含む脂質ナノ粒子(LNP)を含む組成物に関する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、核酸は、LNPに封入されている。特定の実施形態では、核酸は、閉端DNA(closed-ended DNA、ceDNA)である。
【0012】
本開示の更なる態様は、開示されるカチオン性脂質又は本明細書に記載の組成物を使用して、対象における遺伝性障害を治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上記に簡単に要約され、以下により詳細に論じられる本開示の実施形態は、添付の図面に描かれた本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解することができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示し、したがって、本開示は他の等しく有効な実施形態を認めることができるため、範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【
図1】前臨床研究において観察されたように、参照脂質A(陽性対照)を用いて製剤化されたLNP1及びPBS(陰性対照)と比較した、各々脂質6を用いて製剤化された脂質ナノ粒子LNP2、LNP3、及びLNP4を送達ビヒクルとして用いることによって達成された、4日目のceDNA-ルシフェラーゼ発現を示す(投与量=0.25mg/kg)。
【
図2A】前臨床研究において観察されたように、参照脂質A(陽性対照)を用いて製剤化されたLNP5、MC3を用いて製剤化されたLNP6、及び参照脂質B(陽性対照)を用いて製剤化されたLNP7、及びPBS(陰性対照)と比較した、それぞれ脂質7、脂質11、及び脂質1を用いて製剤化された脂質ナノ粒子LNP8、LNP9、及びLNP10を送達ビヒクルとして用いることによって達成された、総フラックスによって測定された4日目のceDNA-ルシフェラーゼ発現を示す棒グラフである(投与量=0.5mg/kg)。
【
図2B】同じ研究におけるマウスの0日目~4日目の経時的な体重変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、非ウイルスベクター(例えば、閉端DNA)又は合成ウイルスベクター等の治療用核酸(therapeutic nucleic acid、TNA)を送達するための脂質ベースのプラットフォームを提供し、これは、細胞に取り込まれることができ、高レベルの発現を維持することができる。例えば、ウイルスベクターベースの遺伝子療法に関連する免疫原性は、既存のバックグラウンド免疫のために治療できる患者の数を制限し、かつ各患者の有効レベルまで滴定するための、又は長期にわたって効果を維持するため患者の再投与を妨げてきた。更に、他の核酸モダリティは、免疫応答のカスケードを誘発する生来のDNA又はRNAセンシングメカニズムのために免疫原性に大きく悩まされている。既存の免疫が欠けているため、本明細書に記載のTNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、必要に応じて、mRNA、siRNA、合成ウイルスベクター、又はceDNA等のTNAの追加用量を可能にし、組織成長に応じて後続の用量を必要とし得る小児集団を含む患者アクセスを更に拡大させる。更に、特に、1つ以上の三級アミノ基を含む脂質組成物、及びジスルフィド結合を含むTNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、TNA(例えば、ceDNA)のより効率的な送達、より良好な忍容性、及び改善された安全性プロファイルを提供することが本開示の発見である。本明細書中に記載するTNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、ウイルスカプシド内の空間によって課されるパッケージングの制約がないため、理論的には、TNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の唯一のサイズ制限は、宿主細胞の発現(例えば、DNA複製、又はRNA翻訳)効率に存在する。
【0015】
特に希少疾患における療法の開発における最大のハードルの1つは、多数の個々の病態である。地球上で約3億5000万人が希少障害を抱えて生活しており、国立衛生研究所は、希少障害を、診断されたヒトが20万人未満の障害又は病態と定義している。これらの希少障害の約80パーセントは遺伝的起源であり、それらの約95パーセントはFDAによって承認された治療(rarediseases.info.nih.gov/diseases/pages/31/faqs-about-rare-diseases)を有しない。本明細書に記載されるTNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の利点の中には、TNAの特定のモダリティで治療することができる複数の疾患、特に多くの遺伝性障害又は疾患の治療の現在の状態を有意義に変更することができる希少な単一遺伝子疾患に迅速に適応することができるアプローチを提供することにある。
【0016】
I.定義
「アルキル」という用語は、飽和、直鎖(すなわち、非分岐)又は分岐鎖炭化水素の一価ラジカルを指す。アルキルが非分岐、例えばC1~C16非分岐アルキルであることが具体的に記載されていない限り、本明細書で使用される「アルキル」という用語は、分岐及び非分岐アルキル基の両方に適用される。例示的なアルキル基としては、C1~C16非分岐アルキル、C7~C12アルキル、C7~C11アルキル、C8~C10アルキル、C2~C14非分岐アルキル、C2~C12非分岐アルキル、C2~C10非分岐アルキル、C2~C7非分岐アルキル、C1~C6アルキル、C1~C4アルキル、C1~C3アルキル、C1~C2アルキル、C7非分岐アルキル、C8非分岐アルキル、C9非分岐アルキル、C10非分岐アルキル、C11非分岐アルキル、C8アルキル、C10アルキル、C12アルキル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-2-ブチル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル、ウンデカニル、ドデカニル、トリデカニル、テトラデカニル、ペンタデカニル、ヘキサデカニル、ヘプタデカニル、オクタデカニル、ノナデカニル、エイコサニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
「アルキレン」という用語は、飽和、直鎖、又は分岐鎖炭化水素の二価ラジカルを指す。アルキレンが非分岐、例えば、C3~C10非分岐アルキレン及びC1~C8アルキレンであることが具体的に記載されていない限り、本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、分岐及び非分岐アルキレン基の両方に適用される。例示的なアルキレン基としては、C3~C9アルキレン、C3~C8アルキレン、C1~C8アルキレン、C1~C6アルキレン、C1~C4アルキレン、C2~C8アルキレン、C3~C7アルキレン、C5~C7アルキレン、C7アルキレン、C5アルキレン、及び上記の例示的なアルキル基のいずれかに対応するアルキレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「アルケニル」という用語は、1つ以上(例えば、1つ又は2つ)の炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素の一価ラジカルを指し、アルケニルラジカルは、「シス」及び「トランス」配向、又は別の命名法による、「E」及び「Z」配向を有するラジカルを含む。アルケニルが非分岐、例えばC2~C16非分岐アルケニルであることが具体的に記載されていない限り、本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、分岐及び非分岐アルケニル基の両方に適用される。例示的なアルケニル基としては、C2~C16非分岐アルケニル、C7~C16アルケニル、C8~C14アルケニル、C2~C14非分岐アルケニル、C2~C12非分岐アルケニル、C2~C10非分岐アルケニル、C2~C7非分岐アルケニル、C2~C6アルケニル、C2~C4アルケニル、C2~C3アルケニル、C8アルケニル、C10アルケニル、C12アルケニル、及び2個以上の炭素原子を含有する上記の例示的なアルキル基のいずれかに対応するアルケニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「アルケニレン」という用語は、1つ以上(例えば、1つ又は2つ)の炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素の二価ラジカルを指し、アルケニルラジカルは、「シス」及び「トランス」配向、又は代替的な命名法による、「E」及び「Z」配向を有するラジカルを含む。アルケニレンが非分岐、例えば、C3~C10非分岐アルキレンであることが具体的に記載されていない限り、本明細書で使用される「アルケニレン」という用語は、分岐及び非分岐アルケニレン基の両方に適用される。例示的なアルケニレン基としては、C3~C9アルケニレン、C3~C8アルケニレン、C2~C8アルケニレン、C2~C6アルケニレン、C3~C7アルケニレン、C5~C7アルケニレン、C2~C4アルケニレン、C1~C8アルキレン、C2~C8アルキレン、C3~C7アルキレン、C5~C7アルキレン、C7アルキレン、C5アルキレン、及び2個以上の炭素原子を含有する上記の例示的なアルキル基のいずれかに対応するアルケニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明のカチオン性脂質の薬学的に許容される有機又は無機の塩を指す。例示的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシレート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモエート(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオン等の別の分子の包含を含み得る。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機又は無機部分であり得る。更に、薬学的に許容される塩は、その構造中に2つ以上の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である場合、複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容される塩は、1つ以上の荷電原子及び/又は1つ以上の対イオンを有することができる。
【0021】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「約」という用語は、量、時間的持続時間等の測定可能な値を指す場合、開示された方法を実施するのに適切であるように指定の値から±20%又は±10%、又は±5%、又は±1%、又は±0.5%、また更により好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、及び「含む(comprises)」、並びに「から構成された(comprised of)」は、「含む(include)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、又は「含有する(contain)」、「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であることを意味し、例えば、構成要素に続くものの存在を指定する包括的又は自由形式の用語であり、当該技術分野において既知であるか、又はそこに開示されている、追加の、引用されていない構成要素、特徴、エレメント、メンバー、ステップの存在を除外又は排除しない。
【0023】
「からなる」という用語は、実施形態の説明において列挙されていないいずれのエレメントも除いた、本明細書に記載される組成物、方法、プロセス、及びそれらのそれぞれの構成要素を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要なエレメントを指す。この用語は、本発明の実施形態の基本的かつ新規又は機能的な特徴に物質的に影響を及ぼさない追加のエレメントの存在を許容する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「投与」、「投与する」という用語及びそのバリアントは、組成物又は薬剤(例えば、核酸、特にceDNA)を対象に導入することを指し、1つ以上の組成物又は薬剤の同時で連続的な導入を含む。組成物又は薬剤の対象への導入は、経口、肺、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下)、直腸、リンパ管内、腫瘍内、又は局所を含む任意の好適な経路による。投与には、自己管理及び他者による投与が含まれる。投与は、任意の好適な経路によって実行され得る。好適な投与経路は、組成物又は薬剤がその意図された機能を遂行することを可能にする。例えば、好適な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物又は薬剤を対象の静脈に導入することによって投与される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一態様では、「投与」は、治療的投与を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「抗治療用核酸免疫応答」、「抗転移ベクター免疫応答」、「治療用核酸に対する免疫応答」、「転移ベクターに対する免疫応答」等の句は、その起源がウイルス性又は非ウイルス性の治療用核酸に対する任意の望ましくない免疫応答を指すことを意味する。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、望ましくない免疫応答は、ウイルス転移ベクター自体に対する抗原特異的免疫応答である。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、免疫応答は、二本鎖DNA、一本鎖RNA、又は二本鎖RNAであり得る転移ベクターに特異的である。他の実施形態では、免疫応答は、転移ベクターの配列に特異的である。他の実施形態では、免疫応答は、転移ベクターのCpG含有量に特異的である。
【0027】
本明細書で使用される場合、「担体」及び「賦形剤」という用語は、互換的に使用され、任意かつ全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド等を含むことを意味する。薬学的に活性な物質に対するそのような媒質及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補充的活性成分を組成物に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与された場合に、毒性反応、アレルギー性反応、又は同様の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ceDNA」という用語は、合成又はその他の非ウイルス遺伝子導入のためのカプシド不含閉端直鎖状二本鎖(double stranded、ds)二重鎖DNAを指すことを意味する。ceDNAの詳細な説明は、2017年3月3日に出願された国際出願第PCT/US2017/020828号に記載されており、その全体の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。細胞ベースの方法を使用して様々な逆位末端反復(inverted terminal repeat、ITR)配列及び構成を含むceDNAの産生のためのある特定の方法は、2018年9月7日に出願された国際出願第PCT/US2018/049996号及び2018年12月6日に出願された国際出願第PCT/US2018/064242号の実施例1に記載されており、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。様々なITR配列及び構成を含む合成ceDNAベクターの産生のためのある特定の方法は、例えば、2019年1月18日に出願された国際出願第PCT/US2019/14122号に記載されており、その全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、「ceDNAベクター」及び「ceDNA」という用語は互換的に使用される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、閉端直鎖状二重鎖(closed-ended linear duplex、CELiD)CELiD DNAである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、DNAベースのミニサークルである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(minimalistic immunological-defined gene expression、MIDGE)ベクターである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、ミニストリング(ministring)DNAである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、発現カセットの5’及び3’末端にITRの2つのヘアピン構造を含むダンベル型の直鎖状二重鎖閉端DNAである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、doggybone(商標)DNAである。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バクミド」という用語は、E.coliにおいてプラスミドとして伝播することができる分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含み、それによりバキュロウイルスのシャトルベクターとして作動し得る、感染性バキュロウイルスゲノムを指すことを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス」という用語は、バキュロウイルスゲノム内の分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含むバキュロウイルスを指すことを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス感染昆虫細胞」及び「ceDNA-BIIC」という用語は、互換的に使用され、ceDNA-バキュロウイルスに感染した無脊椎動物宿主細胞(昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)が挙げられるが、これに限定されない)を指すことを意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「ceDNAゲノム」という用語は、少なくとも1つの逆位末端反復領域を更に組み込む発現カセットを指すことを意味する。ceDNAゲノムは、1つ以上のスペーサー領域を更に含み得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAゲノムは、DNAの分子間二重鎖ポリヌクレオチドとして、プラスミド又はウイルスゲノムに組み込まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「DNA調節配列」、「制御エレメント」、及び「調節エレメント」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナル等の転写及び翻訳制御配列を指すことを意味し、これらは非コード配列(例えば、DNA標的化RNA)又はコード配列(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド若しくはCas9/Csn1ポリペプチド)の転写を提供及び/若しくは調節し、かつ/又はコードされたポリペプチドの翻訳を調節する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、その天然源以外の細胞中に存在する物質を指すことを意味する。本明細書で使用される「外因性」という用語は、通常見られず、核酸又はポリペプチドをそのような細胞又は生物に導入することが望まれる、人間の手が関与するプロセスによって細胞又は生物等の生物系に導入された核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)又はポリペプチドを指し得る。代替的に、「外因性」とは、それが比較的少量で見られ、細胞又は生物における核酸又はポリペプチドの量を増加させること、例えば、異所性発現又はレベルをもたらすことが望まれる、人間の手が関与するプロセスによって細胞又は生物等の生物系に導入された核酸又はポリペプチドを指し得る。これとは対照的に、本明細書で使用される場合、「内因性」という用語は、生物系又は細胞に対して天然である物質を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、RNA及びタンパク質、また必要に応じて、例えば、転写、転写処理、翻訳及びタンパク質の折りたたみ、修飾及び処理を含むがこれらに限定されない分泌タンパク質の産生に関与する細胞プロセスを指すことを意味する。本明細書で使用される場合、「発現産物」という語句は、遺伝子(例えば、導入遺伝子)から転写されたRNA、及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドを含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列からのRNA又はポリペプチドの発現を指示するベクターを指すことを意味する。発現される配列は、多くの場合、宿主細胞に対して異種であるが、必ずしもそうではない。発現ベクターは、追加のエレメントを含むことができ、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有することができるため、それを2つの生物、例えば発現の場合はヒト細胞、並びにクローニング及び増幅の場合は原核生物宿主で維持することができる。発現ベクターは、組換えベクターであってもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」及び「発現ユニット」という用語は、互換的に使用され、DNAベクター、例えば、合成AAVベクターの導入遺伝子の転写を指示するのに十分なプロモーター又は他のDNA調節配列に操作可能に連結される異種DNA配列を指すことを意味する。好適なプロモーターには、例えば、組織特異的プロモーターが含まれる。プロモーターは、AAV起源でもあり得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「隣接する」という用語は、別の核酸配列に対するある核酸配列の相対位置を指すことを意味する。一般に、配列ABCにおいて、BはA及びCに隣接している。配列A×B×Cについても同様である。したがって、隣接する配列は、隣接される配列の前又は後に続くが、隣接される配列と連続している、又はすぐ隣である必要はない。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、隣接するという用語は、直鎖状一本鎖合成AAVベクターの各末端における末端反復を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、インビトロ又はインビボでの所与のRNA又はタンパク質の発現に関連する核酸の任意のセグメントを指すために広く使用される。したがって、遺伝子には、発現されたRNA(通常はポリペプチドコード配列を含む)をコードする領域、及び、多くの場合、それらの発現に必要な調節配列が含まれる。遺伝子は、目的の供給源からのクローニング又は既知の若しくは予測された配列情報からの合成を含む、様々な供給源から得ることができ、特に所望のパラメータを有するように設計された配列を含んでもよい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「遺伝性疾患」又は「遺伝性障害」という語句は、特に出生時から存在する状態を含むゲノム中の1つ以上の異常によって部分的又は完全に、直接的又は間接的に引き起こされる疾患又は欠損症を指すことを意味する。異常は、遺伝子における変異、挿入、又は欠失であり得る。異常は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響を与える可能性がある。
【0041】
本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、それぞれ天然の核酸又はタンパク質には見られないヌクレオチド又はポリペプチド配列を指すことを意味する。異種核酸配列は、天然に存在する核酸配列(又はそのバリアント)に(例えば、遺伝子操作によって)連結されて、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列を生成し得る。異種核酸配列は、バリアントポリペプチドに(例えば、遺伝子操作によって)連結されて、融合バリアントポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を生成し得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本開示の核酸治療薬による形質転換、トランスフェクション、形質導入等を受けやすい任意の細胞型を指す。非限定的な例として、宿主細胞は、単離された初代細胞、多能性幹細胞、CD34+細胞、誘導多能性幹細胞、又は不死化細胞株(例えば、HepG2細胞)のいずれかであり得る。代替的に、宿主細胞は、組織、器官、又は生物におけるインサイチュ又はインビボの細胞であり得る。更に、宿主細胞は、例えば、哺乳動物対象(例えば、遺伝子療法を必要とするヒト患者)の標的細胞であり得る。
【0043】
本明細書に記載される場合、「誘導性プロモーター」は、誘導因子若しくは誘導剤の存在下、それによって影響される場合、又はそれによって接触される場合に、転写活性を開始又は強化することによって特徴付けられるものを指すことを意味する。本明細書で使用される場合、「誘導因子」又は「誘導剤」は、内因性であり得るか、又は誘導性プロモーターからの転写活性を誘導することにおいて活性であるような方式で投与される、通常は外因性の化合物又はタンパク質であり得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、誘導因子又は誘導剤、すなわち、化学物質、化合物、又はタンパク質は、それ自体が核酸配列の転写又は発現の結果であり得(すなわち、誘導因子は、別の構成成分又はモジュールによって発現される誘導因子タンパク質であり得る)、それ自体が制御下又は誘導性プロモーターであり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、リプレッサー等のある特定の薬剤の不在下で誘導される。誘導性プロモーターの例としては、テトラサイクリン、メタロチオニン、エクジソン、哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、及びマウス乳腺腫瘍ウイルスの長い末端反復(mouse mammary tumor virus long terminal repeat、MMTV-LTR))、並びに他のステロイド応答性プロモーター、ラパマイシン応答性プロモーター等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、細胞抽出物等の無傷膜を有する細胞の存在を必要としないアッセイ及び方法を指すことを意味し、非細胞系、例えば細胞抽出物等の細胞又は細胞系を含まない媒質にプログラム可能な合成生物的回路を導入することを指し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、多細胞動物等の生物中又は生物内で起こるアッセイ又はプロセスを指すことを意味する。本明細書に記載される態様のうちのいくつかでは、方法又は使用は、細菌等の単細胞生物が使用されるときに「インビボで」起こると言われ得る。「エクスビボ」という用語は、多細胞動物又は植物、例えば、とりわけ外植片、培養細胞(一次細胞及び細胞株を含む)、形質転換細胞株、及び抽出組織又は細胞(血液細胞を含む)の体外に無傷膜を有する生細胞を使用して実施される方法及び使用を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルを含むがこれに限定されない有機化合物の群を指すことを意味し、水中で乏しい可溶性を有するが、概して多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする。それらは、通常、少なくとも3つのクラス:(1)脂肪及び油並びにワックスを含む「単純脂質」、(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」、並びに(3)ステロイド等の「誘導脂質」に分類される。リン脂質の代表的な例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、リソホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、及びジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられるが、これらに限定されない。スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、及びβ-アシルオキシ酸等、リンを欠く他の化合物も両親媒性脂質と呼ばれる群に含まれる。追加的に、上記の両親媒性脂質は、トリグリセリド及びステロールを含む他の脂質と混合することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「封入される」という用語は、核酸(例えば、ASO、mRNA、siRNA、ceDNA、ウイルスベクター)等の活性剤又は治療剤を、完全封入、部分封入、又はその両方で提供する脂質粒子を指すことを意味する。好ましい実施形態では、核酸は脂質粒子内に完全に封入される(例えば、核酸を含有する脂質粒子を形成するため)。
【0048】
本明細書で使用される場合、「脂質粒子」又は「脂質ナノ粒子」という用語は、核酸治療薬(TNA)等の治療剤を目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官等)に送達するために使用され得る脂質製剤を指すことを意味する(「TNA脂質粒子」、「TNA脂質ナノ粒子」又は「TNA LNP」と称される)。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本発明の脂質粒子は、1つ以上の治療用核酸を含有するLNPであり、LNPは、典型的には、カチオン性脂質、ステロール、非カチオン性脂質、及び任意選択で、粒子の凝集を防止するPEG化脂質、更に任意選択で、LNPを目的の標的部位に送達するための組織特異的標的化リガンドから構成される。他の好ましい実施形態では、治療用核酸等の治療剤を粒子の脂質部分に封入し、それにより酵素分解から保護することができる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、LNPは、核酸(例えば、ceDNA)と、本明細書に記載のカチオン性脂質とともに製剤化されたLNPとを含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「イオン化可能な脂質」という用語は、脂質が生理学的pH(例えば、pH7.4)以下で正に帯電し、第2のpH、好ましくは生理学的pH以上で中性であるように、少なくとも1つのプロトン化可能又は脱プロトン化可能基を有する脂質、例えばカチオン性脂質を指すことを意味する。pHの関数としてのプロトンの付加又は除去は平衡プロセスであり、荷電又は中性脂質への言及は優勢種の性質を指し、全ての脂質が荷電又は中性の形態で存在する必要はないことは、当業者によって理解されるであろう。一般に、カチオン性脂質は、約4~約7の範囲のプロトン化可能な基のpKaを有する。したがって、本明細書で使用される「カチオン性」という用語は、本発明の脂質のイオン化(又は荷電)形態及び中性形態の両方を包含する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「中性脂質」という用語は、選択されたpHで非荷電又は中性の双性イオン形態のいずれかで存在する任意の脂質種を指すことを意味する。生理学的pHでは、そのような脂質には、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、及びジアシルグリセロールが含まれる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「アニオン性脂質」という用語は、生理学的pHで負に荷電するあらゆる脂質を指す。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(palmitoyloleyolphosphatidylglycerol、POPG)、及び中性脂質と結合した他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される場合、「非カチオン性脂質」という用語は、任意の両親媒性脂質、及び任意の他の中性脂質又はアニオン性脂質を指すことを意味する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「有機脂質溶液」という用語は、全体又は一部に脂質を有する有機溶媒を含む組成物を指すことを意味する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「リポソーム」という用語は、水性外部から分離された内部水性体積を封入する球形構成で組み立てられた脂質分子を指すことを意味する。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再位置付けすることによって作用して、薬物又は活性製剤成分を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、典型的には、リン脂質、特にホスファチジルコリン基を有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。
【0055】
本明細書で使用される場合、「局所送達」という用語は、干渉RNA(例えば、siRNA)等の活性剤の、生物内の標的部位への直接の送達を指すことを意味する。例えば、薬剤は、腫瘍等の疾患部位、又は炎症部位等の他の標的部位、又は肝臓、心臓、膵臓、腎臓等の標的器官への直接注射によって局所的に送達することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「neDNA」又は「ニックの入ったceDNA」という用語は、オープンリーディングフレーム(例えば、発現されるプロモーター及び導入遺伝子)の5’上流のステム領域又はスペーサー領域に2~100塩基対のニック又はギャップを有する閉端DNAを指すことを意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態で少なくとも2つのヌクレオチド(すなわち、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を含むポリマーを指すことを意味し、DNA、RNA、及びそれらのハイブリッドを含む。DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、DNA-DNA二重鎖、事前に凝縮されたDNA、PCR産物、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、又はこれらの群の誘導体及び組み合わせの形態であり得る。DNAは、ミニサークル、プラスミド、バクミド、ミニ遺伝子、ミニストリングDNA(直鎖状の共有結合的に閉じたDNAベクター)、閉端直鎖状二重鎖DNA(CELiD又はceDNA)、doggybone(商標)DNA、ダンベル型DNA、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)-ベクター、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターの形態であり得る。RNAは、低分子干渉RNA(small interfering RNA、siRNA)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(small hairpin RNA、shRNA)、非対称干渉RNA(asymmetrical interfering RNA、aiRNA)、マイクロRNA(microRNA、miRNA)、mRNA、rRNA、tRNA、ウイルスRNA(viral RNA、vRNA)、及びそれらの組み合わせの形態であり得る。核酸としては、既知のヌクレオチド類似体又は修飾型骨格残基若しくは連結を含有する核酸が挙げられ、これらは、合成、天然に存在する、及び天然に存在しないものであり、参照核酸と同様の結合特性を有する。そのような類似体及び/又は修飾残基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(モルホリノ)、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、ロックド核酸(LNA(商標))、及びペプチド核酸(PNA)が挙げられる。具体的に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。別途明記しない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的修飾型バリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的配列、同様に、明示的に示された配列を暗黙的に包含する。
【0058】
本明細書で使用される場合、「核酸治療薬」、「治療用核酸」及び「TNA」という語句は、交換可能に使用され、疾患又は障害を治療するための治療剤の活性成分として核酸を使用する治療の任意のモダリティを指す。本明細書で使用される場合、これらの語句は、RNAベースの治療薬及びDNAベースの治療薬を指す。RNAベースの治療薬の非限定的な例としては、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(interfering RNA、RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、及びマイクロRNA(miRNA)が挙げられる。DNAベースの治療薬の非限定的な例としては、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルスDNA(例えば、レンチウイルス若しくはAAVゲノム)又は非ウイルスDNAベクター、閉端直鎖状二重鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、doggybone(商標)DNAベクター、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)-ベクター、非ウイルスミニストリングDNAベクター(直鎖状の共有結合的に閉じたDNAベクター)、及びダンベル型DNA最小ベクター(「ダンベルDNA」)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「TNA LNP」という用語は、上記のように、TNAの少なくとも1つを含有する脂質粒子を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)又はリボース(RNA)、塩基、及びリン酸基を含む。ヌクレオチドは、リン酸基を介してともに連結している。
【0060】
本明細書で使用される場合、「操作可能に連結された」とは、そのように記載された構成要素が、それらが意図された様式で機能することを許可する関係にある並列を指すことを意味する。例えば、プロモーターがその転写又は発現に影響を与える場合、プロモーターは、コード配列に操作可能に連結されている。プロモーターは、それが調節する核酸配列の発現を駆動する、又は転写を駆動すると言うことができる。「操作可能に連結された」、「作動可能に位置付けられた」、「作動可能に連結された」、「制御下」、及び「転写制御下」という語句は、プロモーターが、核酸配列に関して正しい機能的位置及び/又は配向にあり、その配列の転写開始及び/又は発現を制御するように調節することを示す。本明細書で使用される場合、「逆位プロモーター」は、核酸配列が逆配向にあるプロモーターを指し、それによりコード鎖であったものは、今は非コード鎖であり、逆も同様である。逆位プロモーター配列を様々な実施形態で使用して、スイッチの状態を調節することができる。加えて、様々な実施形態では、プロモーターをエンハンサーと併せて使用することができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、タンパク質又はRNAをコードする異種標的遺伝子であり得る、核酸配列の転写を駆動することによって、別の核酸配列の発現を調節する任意の核酸配列を指すことを意味する。プロモーターは、構成的、誘導性、抑制性、組織特異性、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。プロモーターは、核酸配列の残りの転写の開始及び速度が制御される、核酸配列の制御領域である。プロモーターはまた、RNAポリメラーゼ及び他の転写因子等の調節タンパク質及び分子が結合し得る、遺伝子エレメントを含有し得る。プロモーター配列内では、転写開始部位、同様に、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見出されるであろう。真核生物プロモーターは、必ずしもそうではないが、多くの場合、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含有する。誘導性プロモーターを含む様々なプロモーターを使用して、本明細書に開示される合成AAVベクター中の導入遺伝子の発現を駆動することができる。プロモーター配列は、その3’末端で転写開始部位によって結合され、バックグラウンドより上で検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基又はエレメントを含むように上流(5’配向)に伸びる。
【0062】
プロモーターは、所与の遺伝子又は配列のコードセグメント及び/又はエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって取得され得る、遺伝子又は配列と天然に関連するものであり得る。このようなプロモーターは、「内因性」と呼ばれ得る。同様に、本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、エンハンサーは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置する、核酸配列と天然に関連するものであり得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、コード核酸セグメントは、「組換えプロモーター」又は「異種プロモーター」の制御下で位置付けられ、これらの両方は、その自然環境において操作可能に連結されたコードされた核酸配列と通常は関連しないプロモーターを指す。同様に、「組換え又は異種エンハンサー」は、その自然環境において所与の核酸配列と通常は関連しないエンハンサーを指す。そのようなプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、任意の他の原核、ウイルス、又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、及び「天然に存在」しない合成プロモーター又はエンハンサーを含み得、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメント、及び/又は当該技術分野において既知である遺伝子操作の方法を通じて発現を変更する変異を含み得る。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列を合成的に産生することに加えて、プロモーター配列は、本明細書に開示される合成生物的回路及びモジュールに関して、PCRを含む組換えクローニング及び/又は核酸増幅技術を使用して産生され得る(例えば、米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号を参照されたく、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。更に、ミトコンドリア、クロロプラスト等の非核性細胞小器官内の配列の転写及び/又は発現を配向する制御配列が同様に用いられ得ることが企図される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「Rep結合部位」(Rep binding site、「RBS」)及び「Rep結合エレメント」(Rep binding element、「RBE」)は、交換可能に使用され、Repタンパク質(例えば、AAV Rep78又はAAV Rep68)の結合部位を指すことを意味し、Repタンパク質による結合時に、Repタンパク質が、RBSを組み込む配列上でその部位特異的エンドヌクレアーゼ活性を実施することを可能にする。RBS配列及びその逆相補体は、一緒に単一RBSを形成する。RBS配列は、当該技術分野において周知であり、例えば、AAV2において同定されたRBS配列である5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’を含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「組換えベクター」という語句は、異種核酸配列を含むベクター、又はインビボで発現することができる「導入遺伝子」を指すことを意味する。本明細書に記載されるベクターは、本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、他の好適な組成物及び療法と組み合わせることができることを理解されたい。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ベクターは、エピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、対象における目的のヌクレオチドを高コピー数の染色体外DNAに維持し、それによって染色体組み込みの潜在的な影響を排除する手段を提供する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「レポーター」という用語は、検出可能な読み出しを提供するために使用可能なタンパク質を指すことを意味する。レポーターは、一般に、蛍光、色、又は発光等の測定可能なシグナルを産生する。レポータータンパク質コード配列は、細胞又は生物中の存在が容易に観察されるタンパク質をコードする。
【0066】
本明細書で使用される場合、「センス」及び「アンチセンス」という用語は、ポリヌクレオチド上の構造エレメントの配向を指すことを意味する。エレメントのセンスバージョン及びアンチセンスバージョンは、互いの逆相補体である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、2つのヌクレオチド配列間の関連性を指すことを意味する。本開示の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド配列間の配列同一性の程度は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000、上記)、好ましくはバージョン3.0.0以降において実装されるように、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970、上記)を使用して決定される。使用される任意選択のパラメータは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ拡張ペナルティ0.5、及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」とラベル付けされたNeedleの出力(-nobriefオプションを使用して取得される)は、同一性パーセントとして使用され、次のように計算される:(同一のデオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ-アラインメントにおけるギャップの総数)。アラインメントの長さは、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも25ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも100ヌクレオチドである。
【0068】
本明細書で使用される場合、「スペーサー領域」という用語は、ベクター又はゲノム内の機能的エレメントを分離する介在配列を指すことを意味する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、AAVスペーサー領域は、最適機能性のための所望の処理で2つの機能的エレメントを保持する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサー領域は、ベクター又はゲノムの遺伝的安定性を提供するか、又は増大させる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサー領域は、クローニング部位及び塩基対の設計番号のギャップに便利な位置を提供することによって、ゲノムの容易な遺伝子操作を促進する。例えば、ある特定の態様では、いくつかの制限エンドヌクレアーゼ部位を含むオリゴヌクレオチド「ポリリンカー」若しくは「ポリクローニング部位」、又は既知のタンパク質(例えば、転写因子)結合部位を有しないように設計された非オープンリーディングフレーム配列をベクター又はゲノム中に位置付けて、シス作用性因子を分離することができ、例えば、6mer、12mer、18mer、24mer、48mer、86mer、176mer等を挿入する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本発明による治療用核酸での予防的治療を含む治療が提供される、ヒト又は動物を指すことを意味する。通常、動物は、限定されないが、霊長類、げっ歯類、飼育動物、又は狩猟動物等の脊椎動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えば、アカゲザルが挙げられるが、これらに限定されない。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、及びハムスターが挙げられる。飼育動物及び狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えば、飼いネコ、イヌ種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、トリ種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、並びに魚、例えば、マス、ナマズ、及びサケが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される態様のある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類又はヒトである。対象は、男性又は女性であり得る。追加的に、対象は、幼児又は子供であり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、新生児又は胎児対象であり得、例えば、対象は、子宮内に存在する。好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、又はウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、疾患及び障害の動物モデルを代表する対象として有利に使用され得る。加えて、本明細書に記載される方法及び組成物は、飼育動物及び/又はペットに使用され得る。ヒト対象は、任意の年齢、性別、人種、又は民族群、例えば、コーカサス人(白人)、アジア人、アフリカ人、黒人、アフリカ系アメリカ人、アフリカ系ヨーロッパ人、ラテンアメリカ系、中東系等であり得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、臨床設定において患者又は他の対象であり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、治療を既に受けている。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、胚、胎児、新生児、幼児、子供、青年、又は成人である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、ヒト胎児、ヒト新生児、ヒト幼児、ヒト子供、ヒト青年、又はヒト成人である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、動物胚、又は非ヒト胚若しくは非ヒト霊長類胚である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、ヒト胚である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「必要とする対象」という語句は、語句の文脈及び使用法が別段の指示をしない限り、(i)記載された発明に従ってTNA脂質粒子(若しくはTNA脂質粒子を含む医薬組成物)を投与される予定であり、(ii)記載された本発明に従ってTNA脂質粒子(若しくはTNA脂質粒子を含む医薬組成物)を受けているか、又は(iii)記載された発明に従ってTNA脂質粒子(若しくはTNA脂質粒子を含む薬学的組成物)を受けた、対象を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「抑制する」、「減少する」、「妨害する」、「阻害する」及び/又は「低減する」という用語(並びに同様の用語)は、一般に、天然、予想若しくは平均に対して、又は対照条件に対して、直接的又は間接的に、濃度、レベル、機能、活性、又は挙動を低減する行為を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「合成AAVベクター」及び「AAVベクターの合成産生」という用語は、完全に無細胞環境でのAAVベクター及びその合成産生方法を指すことを意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「全身送達」という用語は、生物内での干渉RNA(例えば、siRNA)等の活性剤の広範な生体内分布をもたらす脂質粒子の送達を指すことを意味する。投与技術によっては、特定の薬剤の全身送達にいたることもあれば、そうでないものもある。全身送達とは、有用な量、好ましくは治療量の薬剤が身体のほとんどの部分にさらされることを意味する。広範な生体内分布を得るには、一般に、薬剤が、投与部位より遠位の疾患部位に到達する前に(初回通過器官(肝臓、肺等)によって、又は急速な非特異的細胞結合によって)急速に分解又は排出されないような血液寿命が必要である。脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の全身送達は、例えば静脈内、皮下、及び腹腔内を含む、当技術分野で既知の任意の手段によることができる。好ましい実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の全身送達は、静脈内送達による。
【0074】
本明細書で使用される場合、「末端分解部位」及び「TRS」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、Repが、細胞DNAポリメラーゼ、例えばDNA polデルタ又はDNA polイプシロンを介してDNA伸長の基質として役立つ3’-OHを生成する5’チミジンとのチロシン-ホスホジエステル結合を形成する領域を指すことを意味される。代替的に、Rep-チミジン複合体は、配位ライゲーション反応に関与し得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、活性剤(例えば、本明細書に記載されるTNA脂質粒子)の「治療量」、「治療有効量」、「効果的な量」、「有効量」又は「薬学的有効量」という用語は交換可能に使用され、治療の意図された利益又は効果、例えば、治療用核酸の非存在下で検出される発現レベルと比較した標的配列の発現の阻害を提供するのに十分な量を指す。標的遺伝子又は標的配列の発現を測定するための好適なアッセイは、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、同様に当業者に既知の表現型アッセイ等の、当業者に既知の技法を使用するタンパク質又はRNAレベルの検査を含む。投与量レベルは、傷害の種類、年齢、体重、性別、患者の病状、病状の重症度、投与経路、及び用いられる特定の活性剤を含む、多様な因子に基づく。したがって、投与計画は、大きく異なる可能性があるが、標準的な方法を使用して医師によって常套的に決定され得る。追加的に、「治療量」、「治療有効量」及び「薬学的有効量」という用語は、記載された本発明の組成物の予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)量を含む。記載された発明の予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)用途において、医薬組成物又は薬剤は、疾患、障害又は状態の生化学的、組織学的及び/又は行動症状、その合併症、並びに疾患、障害又は状態の発症中に現れる中間の病理学的表現型を含む、疾患、障害又は状態に罹患しやすい患者、又はそうでなければそのリスクがある患者に、リスクを排除若しくは低減するか、重症度を減少させるか、又は疾患、障害若しくは状態の発症を遅らせるのに十分な量で投与される。一態様では、「治療量」、「有効量」、「治療有効量」、及び「薬学的有効量」は、記載の本発明の組成物の予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)量を含まない。いくつかの医学的判断によれば、最大用量、すなわち最高の安全用量を使用することが一般に好ましい。「用量」及び「投与量」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一態様では、「治療量」、「治療有効量」及び「薬学的有効量」は、非予防的(non-prophylactic)又は非予防的(non-preventative)用途を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、治療の結果を指し、その結果は、望ましくかつ有益であると判断される。治療効果としては、直接的又は間接的に、疾患症状の阻止、低減、又は排除を挙げることができる。治療効果としてはまた、直接的又は間接的に、疾患症状の進行の阻止、低減、又は排除を挙げることができる。
【0077】
本明細書に記載される任意の治療剤について、治療有効量は、予備的なインビトロ研究及び/又は動物モデルから最初に決定することができる。治療有効用量はまた、ヒトのデータから決定することができる。適用される用量は、投与された化合物の相対的な生物学的利用能及び効力に基づいて調整することができる。上記の方法及び他の周知の方法に基づいて最大の効力を達成するように用量を調整することは、当業者の能力の範囲内である。参照により本明細書に組み込まれる、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,McGraw-Hill(New York)(2001)の第1章に見出され得る治療有効性を決定するための一般原則を以下に要約する。
【0078】
薬物動態学的原理は、許容できない副作用を最小限に抑えながら、望ましい程度の治療効果を得るために投与計画を変更するための基礎を提供する。薬物の血漿濃度を測定でき、治療濃度域に関連している状況では、投与量の変更に関する追加のガイダンスを入手することができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、及び/又は「治療」という用語は、状態の進行を抑制する、阻害する、遅らせる、若しくは逆転させる、状態の臨床症状を改善する、又は臨床症状の出現を防ぐ、有益な若しくは望ましい臨床結果を得ることを含む。治療することは、以下:(a)障害の重症度を低減すること、(b)治療される障害に特徴的な症状の発症を制限すること、(c)治療される障害に特徴的な症状の悪化を制限すること、(d)以前に障害を有していた患者において障害の再発を制限すること、及び(e)以前に障害に対して無症候性であった患者において症状の再発を制限すること、のうちの1つ以上を達成することを更に指す。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一態様では、「治療する」、「治療すること」、及び/又は「治療」という用語は、状態の進行を抑制する、阻害する、遅らせる、若しくは逆行させること、又は状態の臨床症状を改善することを含む。
【0080】
薬理学的及び/又は生理学的効果等の有益な又は所望の臨床結果は、疾患、障害又は状態の素因を有する可能性があるが、疾患の症状をまだ経験していないか、若しくは呈していない対象において疾患、障害又は状態が発生するのを防ぐこと(予防的治療)、疾患、障害又は状態の症状の緩和、疾患、障害又は状態の程度の減少、疾患、障害又は状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患、障害又は状態の蔓延を防ぐこと、疾患、障害又は状態の進行を遅らせる又は遅くすること、疾患、障害又は状態の改善又は軽減、及びそれらの組み合わせ、同様に治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを含むが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、別のDNAセグメント、すなわち、「インサート」、「導入遺伝子」、又は「発現カセット」が、細胞において結合されたセグメント(「発現カセット」)の発現又は複製をもたらすために、結合され得るプラスミド、バクミド、ファージ、ウイルス、ビリオン、又はコスミド等のレプリコンを指すことを意味する。ベクターは、宿主細胞への送達のために、又は異なる宿主細胞間の移動のために設計された核酸構築物であり得る。本明細書で使用される場合、ベクターは、最終的な形態でウイルス起源、又は非ウイルス起源であり得る。しかしながら、本開示の目的のために、「ベクター」は、一般に、合成AAVベクター又はニックの入ったceDNAベクターを指す。したがって、「ベクター」という用語は、適切な制御エレメントと関連する場合に複製することができ、遺伝子配列を細胞に移すことができる任意の遺伝的エレメントを包含する。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ベクターは、組換えベクター又は発現ベクターであり得る。
【0082】
本明細書に開示される本発明の代替エレメント又は実施形態の群化は、限定として解釈されるべきではない。各群のメンバーは、個別に、又は群の他のメンバー又は本明細書で見られる他のエレメントとの任意の組み合わせで参照及び主張することができる。群の1つ以上のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由から、群に含まれるか、又は群から削除することができる。そのような任意の包含又は削除が発生した場合、本明細書では、明細書が修正された群を含むとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲で使用されている全てのマーカッシュ群の記述を満たす。
【0083】
態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載される開示は、人間のクローン化プロセス、人間の生殖細胞系列の遺伝的同一性を修正するプロセス、産業若しくは商業目的でのヒト胚の使用、又は人間若しくは動物にいかなる実質的な医学的利益ももたらすことなく苦しみを引き起こす可能性が高い動物、及びそのようなプロセスから生じる動物の遺伝的同一性を修正するためのプロセスに関係しない。
【0084】
本明細書では、本発明の様々な態様の説明内で他の用語が定義されている。
【0085】
II.脂質
第1の実施形態では、式Iで表されるカチオン性脂質、
【0086】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
3アルキルであるが、但し、R’が水素又はC
1~C
3アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されていることを条件とし、
R
1及びR
2が、各々独立して、水素又はC
1~C
3アルキルであり、
R
3が、C
3~C
10アルキレン又はC
3~C
10アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【0087】
【化3】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、各々独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
6アルキレン、又はC
2~C
6アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、各々独立して、C
7~C
14アルキル又はC
7~C
14アルケニルであり、
Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、
-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、
-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である、カチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩が、提供される。
【0088】
第2の実施形態では、第1の実施形態に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、Xは、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、又は-S-S-であり、他の全ての残りの変数が、式I又は第1の実施形態について記載されているとおりである。
【0089】
第3の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式IIで表されるか、
【0090】
【化4】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、nが、1、2、3、及び4から選択される整数であり、他の全ての残りの変数が、式I又は第1又は第2の実施形態に記載されているとおりである。代替的な第3の実施形態では、nが、1、2、及び3から選択される整数であり、他の全ての残りの変数が、式I又は第1又は第2の実施形態に記載されているとおりである。
【0091】
第4の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式IIIで表されるか、
【0092】
【化5】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、又は第1~第3の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0093】
第5の実施形態では、第1の実施形態に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R1及びR2が、各々独立して、水素、若しくはC1~C2アルキル、若しくはC2~C3アルケニルであるか、又はR’、R1、及びR2が、各々独立して、水素、C1~C2アルキルであり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、又は第1~第4の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0094】
第6の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式IVで表されるか、
【0095】
【化6】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、式III又は第1~第5の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0096】
第7の実施形態では、式I、式II、式III、式IV、若しくは第1~第6の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R5が、存在しないか、若しくは1~C8アルキレンであるか、又はR5が、存在しないか、C1~C6アルキレン、若しくはC2~C6アルケニレンであるか、又はR5が、存在しないか、C1~C4アルキレン、若しくはC2~C4アルケニレンであるか、又はR5が存在しないか、又はR5が、C6アルキレン、C5アルキレン、C4アルキレン、C3アルキレン、C2アルキレン、C1アルキレン、C6アルケニレン、C5アルケニレン、C4アルケニレン、C3アルケニレン、若しくはC2アルケニレンであり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、式III、式IV、又は第1~第6の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0097】
第8の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式Vで表されるか、
【0098】
【化7】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、式III、式IV又は第1~第7の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0099】
第9の実施形態では、式I、式II、式III、式IV、式V、若しくは第1~第8の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R4が、C1~C14非分岐アルキル、C2~C14非分岐アルケニル、若しくは
【0100】
【化8】
であり、式中、R
4a及びR
4bが、各々独立して、C
1~C
12非分岐アルキルあるいはC
2~C
12非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
2~C
12非分岐アルキル若しくはC
2~C
12非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
5~C
12非分岐アルキル若しくはC
5~C
12非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
16非分岐アルキル、C
15非分岐アルキル、C
14非分岐アルキル、C
13非分岐アルキル、C
12非分岐アルキル、C
11非分岐アルキル、C
10非分岐アルキル、C
9非分岐アルキル、C
8非分岐アルキル、C
7非分岐アルキル、C
6非分岐アルキル、C
5非分岐アルキル、C
4非分岐アルキル、C
3非分岐アルキル、C
2非分岐アルキル、C
1非分岐アルキル、C
16非分岐アルケニル、C
15非分岐アルケニル、C
14非分岐アルケニル、C
13非分岐アルケニル、C
12非分岐アルケニル、C
11非分岐アルケニル、C
10非分岐アルケニル、C
9非分岐アルケニル、C
8非分岐アルケニル、C
7非分岐アルケニル、C
6非分岐アルケニル、C
5非分岐アルケニル、C
4非分岐アルケニル、C
3非分岐アルケニル、若しくはC
2アルケニルであるか、又はR
4が、
【0101】
【化9】
であり、R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
2~C
10非分岐アルキル若しくはC
2~C
10非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、
【0102】
【化10】
であり、式中、R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
16非分岐アルキル、C
15非分岐アルキル、C
14非分岐アルキル、C
13非分岐アルキル、C
12非分岐アルキル、C
11非分岐アルキル、C
10非分岐アルキル、C
9非分岐アルキル、C
8非分岐アルキル、C
7非分岐アルキル、C
6非分岐アルキル、C
5非分岐アルキル、C
4非分岐アルキル、C
3非分岐アルキル、C
2アルキル、C
1アルキル、C
16非分岐アルケニル、C
15非分岐アルケニル、C
14非分岐アルケニル、C
13非分岐アルケニル、C
12非分岐アルケニル、C
11非分岐アルケニル、C
10非分岐アルケニル、C
9非分岐アルケニル、C
8非分岐アルケニル、C
7非分岐アルケニル、C
6非分岐アルケニル、C
5非分岐アルケニル、C
4非分岐アルケニル、C
3非分岐アルケニル、若しくはC
2アルケニルであり、全ての他の残りの変数が、式I、式II、式III、式IV、式V又は実施形態1~8のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0103】
第10の実施形態では、式I、式II、式III、式IV、式V、若しくは第1~第9の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R3が、C3~C8アルキレンあるいはC3~C8アルケニレン、C3~C7アルキレンあるいはC3~C7アルケニレン、若しくはC3~C5アルキレンあるいはC3~C5アルケニレンであるか、又はR3が、C8アルキレン、あるいはC7アルキレン、あるいはC6アルキレン、あるいはC5アルキレン、あるいはC4アルキレン、あるいはC3アルキレン、あるいはC1アルキレン、若しくはC8アルケニレン、あるいはC7アルケニレン、あるいはC6アルケニレン、あるいはC5アルケニレン、あるいはC4アルケニレン、あるいはC3アルケニレンであり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、式III、式IV、式V、又は第1~第9の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0104】
第11の実施形態では、式I、式II、式III、式IV、式V、若しくは第1~第10の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R6a及びR6bが、各々独立して、C7~C12アルキル若しくはC7~C12アルケニルであるか、又はR6a及びR6bが、各々独立して、C8~C10アルキル若しくはC8~C10アルケニルであるか、又はR6a及びR6bが、各々独立して、C12アルキル、C11アルキル、C10アルキル、C9アルキル、C8アルキル、C7アルキル、C12アルケニル、C11アルケニル、C10アルケニル、C9アルケニル、C8アルケニル、若しくはC7アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、式III、式IV、式V、又は第1~第10の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0105】
第12の実施形態では、式I、式II、式III、式IV、式V、若しくは第1~第11の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R6a及びR6bが、互いに等しい数の炭素原子を含有するか、又はR6a及びR6bが同じであるか、又はR6a及びR6bが、両方ともC12アルキル、C11アルキル、C10アルキル、C9アルキル、C8アルキル、C7アルキル、C12アルケニル、C11アルケニル、C10アルケニル、C9アルケニル、C8アルケニル、若しくはC7アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、式III、式IV、式V、又は第1~第11の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0106】
第13の実施形態では、式I、式II、式III、式IV、式V、若しくは第1~第12の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R6a及びR6bが、第1~第12の実施形態のいずれか1つで定義されるように、各々、互いとは異なる数の炭素原子を含有するか、又は炭素原子の数R6a及びR6bは、1個若しくは2個の炭素原子だけ異なるか、又は、炭素原子の数R6a及びR6bは、1個の炭素原子だけ異なるか、又はR6aがC7アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC7アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC12アルキルであり、R6aがC12アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC7アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC7アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC12アルキルであり、R6aがC12アルキルであり、R6aがC10アルキル等であり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、式III、式IV、式V又は第1~第12の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0107】
第14の実施形態では、式I、式II、式III、式IV、式V、若しくは第1~第13の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R’は、存在せず、他の全ての残りの変数が、式I又は第1~第13の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。いくつかの態様では、式I、式II、式III、式IV、式V又は第1~第14の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質において、R’が水素又はC1~C6アルキルであり、R’、R1、及びR2が全て結合している窒素原子は、窒素原子が正に帯電しているという点でプロトン化されている。
【0108】
いくつかの態様では、式I、式II、式III、式IV、式V、又は第1~第14の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質において、R’、R1、及びR2が各々、C1~C6アルキルであり、R’、R1、及びR2が、それらに結合している窒素原子と一緒に、四級アンモニウムカチオン又は四級アミンを形成する。
【0109】
第15の実施形態では、式Iaで表されるカチオン性脂質、
【0110】
【化11】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、又はC
1~C
3アルキルであり、
R
1及びR
2が、各々独立して、水素又はC
1~C
3アルキルであり、
R
3が、C
3~C
10アルキレン又はC
3~C
10アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
6アルキレン、又はC
2~C
6アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、各々独立して、C
7~C
14アルキル又はC
7~C
14アルケニルであり、
Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、
-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、
-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である、カチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩が、提供される。
【0111】
第16の実施形態では、第15の実施形態に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、Xは、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、又は-S-S-であり、他の全ての残りの変数が、式Ia又は第15の実施形態について記載されているとおりである。
【0112】
第17の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式IIaで表されるか、
【0113】
【化12】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、nが、1、2、3、及び4から選択される整数であり、他の全ての残りの変数が、式Ia又は第1~第16の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。代替的な第3の実施形態では、nが、1、2、及び3から選択される整数であり、他の全ての残りの変数が、式Ia、又は第15若しくは第16の実施形態について記載されているとおりである。
【0114】
第18の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式IIIaで表されるか、
【0115】
【化13】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、又は第15、第16、若しくは第17の実施形態について記載されているとおりである。
【0116】
第19の実施形態では、第1の実施形態に記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R1及びR2が、各々独立して、水素、若しくはC1~C2アルキル、若しくはC2~C3アルケニルであるか、又はR’、R1、及びR2が、各々独立して、水素、C1~C2アルキルであり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、又は第1~第18の実施形態について記載されているとおりである。
【0117】
第20の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式IVaで表されるか、
【0118】
【化14】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、式IIIa、又は第15、第16、第17、第18、若しくは第19の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0119】
第21の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、若しくは第1~第20の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R5が、存在しないか、若しくは1~C8アルキレンであるか、又はR5が、存在しないか、C1~C6アルキレン、若しくはC2~C6アルケニレンであるか、又はR5が、存在しないか、C1~C4アルキレン、若しくはC2~C4アルケニレンであるか、又はR5が存在しないか、又はR5が、C6アルキレン、C5アルキレン、C4アルキレン、C3アルキレン、C2アルキレン、C1アルキレン、C6アルケニレン、C5アルケニレン、C4アルケニレン、C3アルケニレン、若しくはC2アルケニレンであり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、又は第15、第16、第17、第18、第19、若しくは第20の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0120】
第22の実施形態では、本開示のカチオン性脂質が、式Vaで表されるか、
【0121】
【化15】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、若しくは第21の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0122】
第23の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第22の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R4が、C1~C14非分岐アルキル若しくはC2~C14非分岐アルケニルであるか、又はR4が、C2~C12非分岐アルキル若しくはC2~C12非分岐アルケニルであるか、又はR4が、C5~C12非分岐アルキル若しくはC5~C12非分岐アルケニルであるか、又はR4が、C16非分岐アルキル、C15非分岐アルキル、C14非分岐アルキル、C13非分岐アルキル、C12非分岐アルキル、C11非分岐アルキル、C10非分岐アルキル、C9非分岐アルキル、C8非分岐アルキル、C7非分岐アルキル、C6非分岐アルキル、C5非分岐アルキル、C4非分岐アルキル、C3非分岐アルキル、C2非分岐アルキル、C1非分岐アルキル、C16非分岐アルケニル、C15非分岐アルケニル、C14非分岐アルケニル、C13非分岐アルケニル、C12非分岐アルケニル、C11非分岐アルケニル、C10非分岐アルケニル、C9非分岐アルケニル、C8非分岐アルケニル、C7非分岐アルケニル、C6非分岐アルケニル、C5非分岐アルケニル、C4非分岐アルケニル、C3非分岐アルケニル、若しくはC2アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、若しくは第22の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0123】
第24の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第23の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R3が、C3~C8アルキレンあるいはC3~C8アルケニレン、C3~C7アルキレンあるいはC3~C7アルケニレン、若しくはC3~C5アルキレンあるいはC3~C5アルケニレンであるか、又はR3が、C8アルキレン、あるいはC7アルキレン、あるいはC6アルキレン、あるいはC5アルキレン、あるいはC4アルキレン、あるいはC3アルキレン、あるいはC1アルキレン、若しくはC8アルケニレン、あるいはC7アルケニレン、あるいはC6アルケニレン、あるいはC5アルケニレン、あるいはC4アルケニレン、あるいはC3アルケニレンであり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、若しくは第23の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0124】
第25の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第24の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R6a及びR6bが、各々独立して、C7~C12アルキル若しくはC7~C12アルケニルであるか、又はR6a及びR6bが、各々独立して、C8~C10アルキル若しくはC8~C10アルケニルであるか、又はR6a及びR6bが、各々独立して、C12アルキル、C11アルキル、C10アルキル、C9アルキル、C8アルキル、C7アルキル、C12アルケニル、C11アルケニル、C10アルケニル、C9アルケニル、C8アルケニル、若しくはC7アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、若しくは第24の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0125】
第26の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第25の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R6a及びR6bが、互いに等しい数の炭素原子を含有するか、又はR6a及びR6bが同じであるか、又はR6a及びR6bが、両方ともC12アルキル、C11アルキル、C10アルキル、C9アルキル、C8アルキル、C7アルキル、C12アルケニル、C11アルケニル、C10アルケニル、C9アルケニル、C8アルケニル、若しくはC7アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、若しくは第25の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0126】
第27の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第26の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R6a及びR6bが、第1~第26の実施形態のいずれか1つで定義されるように、各々、互いとは異なる数の炭素原子を含有するか、又は炭素原子の数R6a及びR6bは、1個若しくは2個の炭素原子だけ異なるか、又は、炭素原子の数R6a及びR6bは、1個の炭素原子だけ異なるか、又はR6aがC7アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC7アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC12アルキルであり、R6aがC12アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC7アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC7アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC8アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC11アルキルであり、R6aがC9アルキルであり、R6aがC10アルキルであり、R6aがC12アルキルであり、R6aがC12アルキルであり、R6aがC10アルキル等であり、他の全ての残りの変数が、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、若しくは第26の実施形態のいずれか1つに記載のとおりである。
【0127】
第28の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第27の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R’は、存在せず、他の全ての残りの変数が、式Ia、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、若しくは第27の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0128】
第29の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第28の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R’は、存在せず、R’、R1、及びR2が全て結合している窒素原子は、脂質が生理学的条件、例えば、約7.4以下のpH、例えば、約7.4のpHで存在する場合にプロトン化され、他の全ての残りの変数が、式Ia、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、若しくは第28の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0129】
第30の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第29の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R’は、存在せず、R’、R1、及びR2が全て結合している窒素原子は、脂質が水溶液中に存在する場合にプロトン化され、他の全ての残りの変数が、式Ia、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28、若しくは第29の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0130】
第31の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第30の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R’は、存在せず、R’、R1、及びR2が全て結合している窒素原子は、脂質が約7.4以下のpHで存在する場合にプロトン化され、他の全ての残りの変数が、式Ia、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28、第29、若しくは第30の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0131】
第32の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第31の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R’は、存在せず、R’、R1、及びR2が全て結合している窒素原子は、脂質が水溶液中に約7.4以下のpH(例えば、約7.4のpH)で存在する場合にプロトン化され、他の全ての残りの変数が、式Ia、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28、第29、第30、若しくは第31の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0132】
第33の実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、若しくは第1~第32の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R’、R1、及びR2は、それらに結合している窒素原子と一緒に、四級アンモニウムカチオン又は四級アミンを形成し、他の全ての残りの変数が、式Ia、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28、第29、第30、第31、若しくは第32の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0133】
いくつかの実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28、第29、第30、第31、第32、若しくは第33の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質において、R’は、水素又はC1~C6アルキルであり、R’、R1、及びR2が全て結合している窒素原子は、窒素原子が正に帯電している場合にプロトン化される。
【0134】
いくつかの実施形態では、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Va、又は第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28、第29、第30、第31、第32、若しくは第33の実施形態のいずれか1つに記載のカチオン性脂質において、R’、R1、及びR2は各々、C1~C6アルキルであり、R’、R1、及びR2は、それらに結合している窒素原子と一緒に、四級アンモニウムカチオン又は四級アミンを形成する。
【0135】
一実施形態では、本開示のカチオン性脂質、又は式I若しくはIaのカチオン性脂質は、
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
更に、式I、式II、式III、式IV、式V、式Ia、式IIa、式IIIa、式IVa、式Vaの脂質、若しくはその薬学的に許容される塩(例えば、四級アンモニウム塩)、又は本明細書に開示される例示的な脂質のうちのいずれかは、例えば、アセトニトリル(CH3CN)及びクロロホルム(CHCl3)中のクロロメタン(CH3Cl)で処理することによって、四級アミン又は四級アンモニウムカチオンを含む対応する脂質に変換されてもよく、すなわち、R’、R1及びR2は、各C1~C6アルキル(全て本開示において企図される)である。このような脂質中の四級アンモニウムカチオンは、それらの溶液のpHとは無関係に永久的に帯電している。
【0140】
いくつかの実施形態では、脂質1、脂質2、脂質3、脂質4、脂質5、脂質6、脂質7、脂質8、脂質9、脂質10、又は脂質11のいずれかの窒素原子は、脂質が生理学的条件、例えば、約7.4以下のpH、例えば、約7.4のpHで存在する場合にプロトン化される。
【0141】
いくつかの実施形態では、脂質1、脂質2、脂質3、脂質4、脂質5、脂質6、脂質7、脂質8、脂質9、脂質10、又は脂質11のいずれかの窒素原子は、脂質が水溶液中に存在する場合にプロトン化される。
【0142】
いくつかの実施形態では、脂質1、脂質2、脂質3、脂質4、脂質5、脂質6、脂質7、脂質8、脂質9、脂質10、又は脂質11のいずれかの窒素原子は、脂質が約7.4以下のpH(例えば、約7.4のpH)で存在する場合にプロトン化される。
【0143】
いくつかの実施形態では、脂質1、脂質2、脂質3、脂質4、脂質5、脂質6、脂質7、脂質8、脂質9、脂質10、又は脂質11のいずれかの窒素原子は、脂質が水溶液中に約7.4以下のpH(例えば、約7.4のpH)で存在する場合にプロトン化される。
【0144】
III.脂質ナノ粒子(LNP)
核酸の送達ビヒクルとしてのLNP
本明細書に記載のカチオン性脂質と、カプシド不含非ウイルスベクター又は治療用核酸(TNA)(例えば、ceDNA)とを含む脂質ナノ粒子(LNP)、又はその薬学的組成物は、目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官等)にカプシド不含非ウイルスDNAベクターを送達するために使用され得る。したがって、本開示の別の態様は、本明細書に記載される1つ以上のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩と、治療用核酸(TNA)とを含む脂質ナノ粒子(LNP)に関する。
【0145】
カチオン性脂質は、典型的に、核酸カーゴ、例えばceDNAを低pHで凝縮させるため、及び膜会合及び膜融合性を駆動するために用いられる。一般に、カチオン性脂質は、四級アミンを含む脂質を形成するために、正に帯電した、又は例えばpH6.5以下の酸性条件下でプロトン化される少なくとも1つのアミノ基を含む脂質である。
【0146】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、本明細書に提供されるカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩は、約30%~約80%、例えば、約35%~約80%、約40%~約80%、約45%~約80%、約50%~約80%、約55%~約80%、約60%~約80%、約65%~約80%、約70%~約80%、約75%~約80%、30%~約75%、約35%~約75%、約40%~約75%、約45%~約75%、約50%~約75%、約55%~約75%、約60%~約75%、約65%~約75%、約70%~約75%、30%~約70%、約35%~約70%、約40%~約70%、約45%~約70%、約50%~約70%、約55%~約70%、約60%~約70%、約65%~約70%、約30%~約65%、約35%~約65%、約40%~約65%、約45%~約65%、約50%~約65%、約55%~約65%、約60%~約65%、約30%~約60%、約35%~約60%、約40%~約60%、約45%~約60%、約50%~約60%、約55%~約60%、約30%~約55%、約35%~約55%、約40%~約55%、約45%~約55%、約50%~約55%、約30%~約50%、約35%~約50%、約40%~約50%、約45%~約50%、約30%~約45%、約35%~約45%、約40%~約45%、約30%~約40%、又は約35%~約40%のモルパーセンテージで提供される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、本明細書に提供されるカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩は、40%~約60%、又は約45%~約60%、又は約45%~約55%、又は約45%~約50%、又は約50%~約55%、又は約40%~約50%、例えば、これらに限定されないが、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、又は約60%のモルパーセンテージで存在する。
【0147】
ステロール
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載のよりカチオン性の脂質、又はその薬学的に許容される塩、及びTNAに加えて、本明細書に記載のLNPは、脂質粒子の膜完全性及び安定性を提供するために、少なくとも1つのステロールを更に含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子に使用することができる例示的なステロールは、コレステロール又はその誘導体である。コレステロール誘導体の非限定的な例としては、5α-コレスタノール、5β-コプロスタノール、コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテル、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル、及び6-ケトコレスタノール等の極性類似体、5α-コレスタン、コレステノン、5α-コレスタノン、5β-コレスタノン、及びコレステリルデカノエート等の非極性類似体、並びにそれらの混合物が挙げられる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、コレステロール誘導体は、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル等の極性類似体である。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、コレステロール誘導体は、コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)である。
【0148】
例示的なコレステロール誘導体は、国際公開第2009/127060号及び米国特許出願公開第US2010/0130588号に記載されており、これらの両方の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0149】
更なる例示的なステロールとしては、ベータシトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、ロペオール(lopeol)、シクロアルテノール、及びそれらの誘導体が挙げられる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子に使用することができる例示的なステロールは、ベータシトステロールである。
【0150】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子中で、ステロールは、約20%~約50%、例えば、約25%~約50%、約30%~約50%、約35%~約50%、約40%~約50%、約45%~約50%、約20%~約45%、約25%~約45%、約30%~約45%、約35%~約45%、約40%~約45%、約20%~約40%、約25%~約40%、約30%~約40%、約35%~約40%、約20%~約35%、約25%~約35%、約30%~約35%、約20%~約30%、又は約25%~約35%のモルパーセンテージで存在する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、ステロールは、約35%~約45%、又は約40%~約45%、又は約35%~約40%、例えば、これらに限定されないが、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、又は約45%のモルパーセンテージで存在する。
【0151】
非カチオン性脂質
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子(LNP)は、少なくとも1つの非カチオン性脂質を更に含む。非カチオン性脂質は、構造脂質としても知られており、膜の完全性及び脂質粒子の安定性を提供するために、膜融合性を増加させ、形成中のLNPの安定性も増加させる働きをし得る。非イオン化可能な脂質としては、両親媒性脂質、中性脂質、及びアニオン性脂質が挙げられる。したがって、非カチオン性脂質は、中性の非電荷、双性イオン性、又はアニオン性脂質であり得る。
【0152】
例示的な非カチオン性脂質としては、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン(16-O-モノメチルPE等)、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン(16-O-ジメチルPE等)、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、スフィンゴミエリン(SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPHyPE)、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リソレシチン、リソホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(egg sphingomyelin、ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジカシド、セレブロシド、ジセチルホスフェート、リソホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。他のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質もまた使用され得ることを理解されたい。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、C10~C24炭素鎖を有する脂肪酸に由来するアシル基、例えば、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、又はオレオイルである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、非カチオン性脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から選択されるいずれか1つ以上である。
【0153】
脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中での使用に好適な非カチオン性脂質の他の例としては、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、パルミチン酸アセチル、リシノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリル系ポリマー、トリエタノールアミン-硫酸ラウリル、アルキル-アリールサルフェートポリエチルオキシル化脂肪酸アミド、ジオクタデシルジメチル臭化アンモニウム、セラミド、スフィンゴミエリン等の非亜リン脂質が挙げられる。
【0154】
追加の例示的な非カチオン性脂質は、国際公開第2017/099823号及び米国特許出願公開第US2018/0028664号に記載されており、これらの両方の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0155】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、非カチオン性脂質は、約2%~約20%、例えば、約3%~約20%、約5%~約20%、約7%~約20%、約8%~約20%、約10%~約20%、約12%~約20%、約13%~約20%、約15%~約20%、約17%~約20%、約18%~約20%、約2%~約18%、約3%~約18%、約5%~約18%、約7%~約18%、約8%~約18%、約10%~約18%、約12%~約18%、約13%~約18%、約15%~約18%、約17%~約18%、約2%~約17%、約3%~約17%、約5%~約17%、約7%~約17%、約8%~約17%、約10%~約17%、約12%~約17%、約13%~約17%、約15%~約17%、約2%~約15%、約3%~約15%、約5%~約15%、約7%~約15%、約8%~約15%、約10%~約15%、約12%~約15%、約13%~約15%、約2%~約13%、約3%~約13%、約5%~約13%、約7%~約13%、約8%~約13%、約10%~約13%、約12%~約13%、約2%~約12%、約3%~約12%、約5%~約12%、約7%~約12%、約8%~約12%、約10%~約12%、約2%~約10%、約3%~約10%、約5%~約10%、約7%~約10%、約8%~約10%、約2%~約8%、約3%~約8%、約5%~約8%、約7%~約8%、約2%~約7%、約3%~約7%、約5%~約7%、約2%~約5%、約3%~約5%、又は約2%~約3%のモルパーセンテージで存在する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、非カチオン性脂質は、約5%~約15%、約7%~約15%、約8%~約15%、約10%~約15%、約12%~約15%、約13%~約15%、5%~約13%、約7%~約13%、約8%~約13%、約10%~約13%、約12%~約13%、約5%~約12%、約7%~約12%、約8%~約12%、約10%~約12%、約5%~約10%、約7%~約10%、約8%~約10%、約5%~約8%、約7%~約8%、又は約5%~約7%、例えば、これらに限定されないが、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約11%、約12%、約13%、約14%、又は約15%のモルパーセンテージで存在する。
【0156】
PEG化脂質
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子(LNP)は、少なくとも1つの(例えば、1つ、2つ、又は3つの)PEG化脂質を更に含む。PEG化脂質は、1つ以上のポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)ポリマー鎖に共有結合又は非共有結合している、本明細書で定義される脂質であり、したがって、コンジュゲート脂質のクラスである。一般に、PEG化脂質は、粒子の凝集を阻害し、かつ/又は立体安定化を提供するために、LNPに組み込まれる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質は、1つ以上のPEGポリマー鎖に共有結合している。
【0157】
PEG化脂質における使用に好適なPEG分子としては、約500~約10,000、又は約1,000~約7,500、又は約1,000~約5,000、又は約2,000~約5,000、又は約2,000~約4,000、又は約2,000~約3,500、又は約2,000~約3,000の分子量を有するものが挙げられるが、これらに限定されず、例えば、PEG2000、PEG2500、PEG3000、PEG3350、PEG3500、及びPEG4000が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
1つ以上のPEG鎖が連結される脂質は、ステロール、非カチオン性脂質、又はリン脂質であり得る。例示的なPEG化脂質としては、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)(1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)等)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、PEG化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEGS-DAG)(4-0-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-0-(w-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)等)、PEGジアルコキシプロピルカルバム、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。追加の例示的なPEG化脂質は、例えば、米国特許第5,885,613号及び同第6,287,591号、並びに米国特許出願公開第US2003/0077829号、同第US2003/0077829号、同第US2005/0175682号、同第US2008/0020058号、同第US2011/0117125号、同第US2010/0130588号、同第US2016/0376224号、及び同第US2017/0119904号に記載されており、これらの各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0159】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子(LNP)中の少なくとも1つのPEG化脂質は、PEG-ジラウリルオキシプロピル;PEG-ジミリスチルオキシプロピル、PEG-ジパルミチルオキシプロピル、PEG-ジステアリルオキシプロピル、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール-PEG(DMG-PEG)、ジステアロイル-rac-グリセロール-PEG(DSG-PEG)、PEG-ジラウリルグリセロール、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステリルグリセロール、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、PEG-ジステリルグリカミド、(1-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)(PEG-コレステロール);3,4-ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル(PEG-DMB)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ポリ(エチレングリコール)-ヒドロキシル(DSPE-PEG-OH)からなる群から選択される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、DMG-PEG、DSPE-PEG、DSPE-PEG-OH、DSG-PEG、又はそれらの組み合わせである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、DMG-PEG2000、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG2000-OH、DSG-PEG2000、又はそれらの組み合わせである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子(LNP)は、DMG-PEG2000及びDSPE-PEG2000を含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子(LNP)は、DMG-PEG2000及びDSG-PEG2000を含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子(LNP)は、DSPE-PEG2000及びDSPE-PEG2000-OHを含む。
【0160】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、少なくとも1つのPEG化脂質は、合計で、約1%~10%、例えば、約1.5%~約10%、約2%~約10%、約2.5%~約10%、約3%~約10%、約3.5%~約10%、約4%~約10%、約4.5%~約10%、約5%~約10%、約5.5%~約10%、約6%~約10%、約6.5%~約10%、約7%~約10%、約7.5%~約10%、約8%~約10%、約8.5%~約10%、約9%~約10%、約9.5%~約10%、約1%~約5%、約1.5%~約5%、約2%~約5%、約2.5%~約5%、約3%~約5%、約3.5%~約5%、約4%~約5%、約4.5%~約5%、約1%~約4%、約1.5%~約4%、約2%~約4%、約2.5%~約4%、約3%~約4%、約3.5%~約4%、約1%~約3.5%、約1.5%~約3.5%、約2%~約3.5%、約2.5%~約3.5%、約3%~約3.5%、約1%~約3%、約1.5%~約3%、約2%~約3%、約2.5%~約3%、約1%~約2.5%、約1.5%~約2.5%、約2%~約2.5%、約1%~約2%、約1.5%~約2%、又は約1%~約1.5%のモルパーセンテージで存在する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、少なくとも1つのPEG化脂質は、合計で、約1%~約2%、約1.5%~約2%、又は約1%~約1.5%、例えば、これらに限定されないが、約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、又は約2%のモルパーセンテージで存在する。
【0161】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、少なくとも1つのPEG化脂質は、合計で、約2.1%~約10%、例えば、約2.5%~約10%、約3%~約10%、約3.5%~約10%、約4%~約10%、約4.5%~約10%、約5%~約10%、約5.5%~約10%、約6%~約10%、約6.5%~約10%、約7%~約10%、約7.5%~約10%、約8%~約10%、約8.5%~約10%、約9%~約10%、約9.5%~約10%、約2.1%~約7%、約2.5%~約7%、約3%~約7%、約3.5%~約7%、約4%~約7%、約4.5%~約7%、約5%~約7%、約5.5%~約7%、約6%~約7%、約6.5%~約7%、約2.1%~約5%、約2.5%~約5%、約3%~約5%、約3.5%~約5%、約4%~約5%、約4.5%~約5%、約2.1%~約4%、約2.5%~約4%、約3%~約4%、約3.5%~約4%、約2.1%~約3.5%、約2.5%~約3.5%、約3%~約3.5%、約2.1%~約3%、約2.5%~約3%、又は約2.1%~約2.5%のモルパーセンテージで存在する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、少なくとも1つのPEG化脂質は、合計で、約2.1%~約5%、約2.5%~約5%、約3%~約5%、約3.5%~約5%、約4%~約5%、約4.5%~約5%、約2.1%~約4%、約2.5%~約4%、約3%~約4%、約3.5%~約4%、約2.1%~約3.5%、約2.5%~約3.5%、約3%~約3.5%、約2.1%~約3%、約2.5%~約3%、又は約2.1%~約2.5%、例えば、これらに限定されないが、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、又は約5%のモルパーセンテージで存在する。
【0162】
組織特異的標的化リガンド及びPEG化脂質コンジュゲート
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載の脂質ナノ粒子(LNP)は、目的の標的部位へのLNPの送達を補助、増強、及び/又は増加させる目的で、少なくとも1つの組織特異的標的化リガンドを更に含む。リガンドは、ペプチド、タンパク質、抗体、グリカン、糖、核酸、脂質、又は前述のいずれかを含むコンジュゲート等の任意の生体分子であり得、これは、ある特定の細胞及び組織に独特であるレセプター又は表面抗原を認識する。
【0163】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、少なくとも1つの組織特異的標的化リガンドは、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)又はGalNAc誘導体である。「GalNAc誘導体」という用語は、修飾GalNAc、官能化GalNAc、及びGalNAcコンジュゲートを包含し、ここで、1つ以上のGalNAc分子(天然又は修飾)が、1つ以上の官能基又は1つ以上のクラスの例示的な生体分子、例えば、これらに限定されないが、ペプチド、タンパク質、抗体、グリカン、糖、核酸、脂質等)に共有結合している。1つ以上のGalNAc分子が結合され得る生体分子自体は、典型的には、安定性の増加及び/又は凝集の阻害を助ける。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、GalNAc等の組織特異的標的リガンドと、リガンドがコンジュゲートされる生体分子とのモル比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、及び1:10である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、GalNAc等の組織特異的標的リガンドと、リガンドがコンジュゲートされる生体分子とのモル比は、1:1(例えば、モノ-アンテナリーGalNAc)、2:1(ビ-アンテナリーGalNAc)、3:1(トリ-アンテナリーGalNAc)、及び4:1(テトラアンテナリーGalNAc)である。コンジュゲート化GalNAc、例えばトリ-アンテナリーGalNAc(GalNAc3)又はテトラ-アンテナリーGalNAc(GalNAc4)は、当技術分野で公知のように合成することができ(国際公開第2017/084987号及び国際公開第2013/166121号を参照されたい)、当該技術分野において周知のように脂質又はPEGに化学的にコンジュゲートすることができる(Resen et al.,J.Biol.Chem.(2001)「Determination of the Upper Size Limit for Uptake and Processing of Ligands by the Asialoglycoprotein Receptor on Hepatocytes in Vitro and in Vivo」276:375577-37584を参照されたい)。
【0164】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、組織特異的標的化リガンドは、本明細書で定義及び記載されるPEG化脂質に共有結合して、PEG化脂質コンジュゲートを形成する。例示的なPEG化脂質は上に記載されており、PEG-ジラウリルオキシプロピル、PEG-ジミリスチルオキシプロピル、PEG-ジパルミチルオキシプロピル、PEG-ジステアリルオキシプロピル、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(DMG-PEG)、PEG-ジラウリルグリセロール、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステリルグリセロール、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、PEG-ジステリルグリカミド、(1-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)(PEG-コレステロール)、3,4-ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル(PEG-DMB)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N[メトキシ(ポリエチレングリコール)(DSPE-PEG)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ポリ(エチレングリコール)-ヒドロキシル(DSPE-PEG-OH)を含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子(LNP)は、DMG-PEG2000及びDSPE-PEG2000を含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、組織特異的標的化リガンドは、GalNAc又はGalNAc誘導体に共有結合されている。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、モノ-、ビ-、トリ-、又はテトラ-アンテナリーGalNAc-DSPE-PEGである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、モノ-、ビ-、トリ-、又はテトラ-アンテナリーGalNAc-DSG-PEGである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、モノ-、ビ-、トリ-、又はテトラ-アンテナリーGalNAc-DSPE-PEG2000である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、モノ-、ビ-、トリ-、又はテトラ-アンテナリーGalNAc-DSG-PEG2000である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、トリ-アンテナリーGalNAc-DSPE-PEG2000である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、トリ-アンテナリーGalNAc-DSG-PEG2000である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、テトラ-アンテナリーGalNAc-DSPE-PEG2000である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、テトラ-アンテナリーGalNAc-DSG-PEG2000である。
【0165】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、PEG化脂質コンジュゲートは、約0.1%~約10%、例えば、約0.2%~約10%、約0.3%~約10%、約0.4%~約10%、約0.5%~約10%、約0.6%~約10%、約0.7%~約10%、約0.8%~約10%、約0.9%~約10%、約1%~約10%、約1.5%~約10%、約2%~約10%、約2.5%~約10%、約3%~約10%、約3.5%~約10%、約4%~約10%、約4.5%~約10%、約5%~約10%、約5.5%~約10%、約6%~約10%、約6.5%~約10%、約7%~約10%、約7.5%~約10%、約8%~約10%、約8.5%~約10%、約9%~約10%、約9.5%~約10%、約0.1%~約5%、約0.2%~約5%、約0.3%~約5%、約0.4%~約5%、約0.5%~約5%、約0.6%~約5%、約0.7%~約5%、約0.8%~約5%、約0.9%~約10%、約1%~約5%、約1.5%~約5%、約2%~約5%、約2.5%~約5%、約3%~約5%、約3.5%~約5%、約4%~約5%、約4.5%~約5%、約0.1%~約3%、約0.2%~約3%、約0.3%~約3%、約0.4%~約3%、約0.5%~約3%、約0.6%~約3%、約0.7%~約3%、約0.8%~約3%、約0.9%~約3%、約1%~約3%、約1.5%~約3%、約2%~約3%、約2.5%~約3%、約0.1%~約2%、約0.2%~約2%、約0.3%~約2%、約0.4%~約2%、約0.5%~約2%、約0.6%~約2%、約0.7%~約2%、約0.8%~約2%、約0.9%~約2%、約1%~約2%、約1.5%~約2%、約0.1%~約1.5%、0.2%~約1.5%、約0.3%~約1.5%、約0.4%~約1.5%、約0.5%~約1.5%、約0.6%~約1.5%、約0.7%~約1.5%、約0.8%~約1.5%、約0.9%~約1.5%、約1%~約1.5%、約0.1%~約1%、0.2%~約1%、約0.3%~約1%、約0.4%~約1%、約0.5%~約1%、約0.6%~約1%、約0.7%~約1%、約0.8%~約1%、又は約0.9%~約1%のモルパーセンテージで存在する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質ナノ粒子において、PEG化脂質コンジュゲートは、約0.1%~約1.5%、約0.2%~約1.5%、約0.3%~約1.5%、約0.4%~約1.5%、約0.5%~約1.5%、約0.6%~約1.5%、約0.7%~約1.5%、約0.8%~約1.5%、約0.9%~約1.5%、約1%~約1.5%、約0.1%~約1%、約0.2%~約1%、約0.3%~約1%、約0.4%~約1%、約0.5%~約1%、約0.6%~約1%、約0.7%~約1%、約0.8%~約1%、又は約0.9%~約1%、例えば、これらに限定されないが、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、又は約1.5%のモルパーセンテージで存在する。
【0166】
脂質ナノ粒子(LNP)の他の成分
コンジュゲート化脂質等のLNPの更なる成分もまた、本開示において企図される。例示的な複合脂質としては、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲート等)、カチオン性-ポリマー脂質(cationic-polymer lipid、CPL)コンジュゲート、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
更に、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載される脂質ナノ粒子(LNP)は、例えば、LNP内への共封入によって、又は治療用核酸若しくは上記のLNPの成分のいずれか1つへのコンジュゲーションによって、免疫調節化合物を更に含む。デキサメタゾン又は修飾されたデキサメタゾン等の免疫調節化合物は、免疫応答を最小限に抑えるのに役立ち得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載の脂質ナノ粒子(LNP)は、デキサメタゾンパルミチン酸エステルを更に含む。
【0168】
本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、カチオン性脂質に加えて、脂質ナノ粒子は、ceDNA等の核酸カーゴを凝縮及び/又は封入するための薬剤を含む。このような薬剤は、本明細書では、凝縮剤又は封入剤とも称される。制限なしに、核酸を凝縮及び/又は封入するための当該技術分野で既知の任意の化合物は、それが非融合性である限り使用することができる。言い換えれば、薬剤は、ceDNA等の核酸カーゴを凝縮及び/又は封入することができるが、融合活性をほとんど又はまったく有しない。理論に拘束されることを望まないが、凝縮剤は、ceDNA等の核酸を凝縮/封入しない場合、いくらかの融合活性を有する可能性があるが、当該凝縮剤で形成された脂質ナノ粒子を封入する核酸は、非融合性であり得る。
【0169】
全脂質対核酸比
一般に、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、最終粒子が、約10:1~60:1、例えば、約15:1~約60:1、約20:1~約60:1、約25:1~約60:1、約30:1~約60:1、約35:1~約60:1、約40:1~約60:1、約45:1~約60:1、約50:1~約60:1、約55:1~約60:1、約10:1~約55:1、約15:1~約55:1、約20:1~約55:1、約25:1~約55:1、約30:1~約55:1、約35:1~約55:1、約40:1~約55:1、約45:1~約55:1、約50:1~約55:1、約10:1~約50:1、約15:1~約50:1、約20:1~約50:1、約25:1~約50:1、約30:1~約50:1、約35:1~約50:1、約40:1~約50:1、約45:1~約50:1、約10:1~約45:1、約15:1~約45:1、約20:1~約45:1、約25:1~約45:1、約30:1~約45:1、約35:1~約45:1、約40:1~約45:1、約10:1~約40:1、約15:1~約40:1、約20:1~約40:1、約25:1~約40:1、約30:1~約40:1、約35:1~約40:1、約10:1~約35:1、約15:1~約35:1、約20:1~約35:1、約25:1~約35:1、約30:1~約35:1、約10:1~約30:1、約15:1~約30:1、約20:1~約30:1、約25:1~約30:1、約10:1~約25:1、約15:1~約25:1、約20:1~約25:1、約10:1~約20:1、約15:1~約20:1、又は約10:1~約15:1の全脂質対治療用核酸(質量若しくは重量)比を有するように調製される。
【0170】
脂質及び核酸の量を調整して、所望のN/P比(すなわち、正に帯電可能なポリマーアミン(N=窒素)基の負に帯電した核酸ホスフェート(P)基に対する比)、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上のN/P比を提供することができる。一般に、脂質粒子製剤の全体脂質含有量は、約5mg/ml~約30mg/mLの範囲であり得る。
【0171】
脂質ナノ粒子(LNP)のサイズ
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、LNPは、約40nm~約120nm、例えば、約45nm~約120nm、約50nm~約120nm、約55nm~約120nm、約60nm~約120nm、約65nm~約120nm、約70nm~約120nm、約75nm~約120nm、約80nm~約120nm、約85nm~約120nm、約90nm~約120nm、約95nm~約120nm、約100nm~約120nm、約105nm~約120nm、約110nm~約120nm、約115nm~約120nm、約40nm~約110nm、約45nm~約110nm、約50nm~約110nm、約55nm~約110nm、約60nm~約110nm、約65nm~約110nm、約70nm~約110nm、約75nm~約110nm、約80nm~約110nm、約85nm~約110nm、約90nm~約110nm、約95nm~約110nm、約100nm~約110nm、約105nm~約110nm、約40nm~約100nm、約45nm~約100nm、約50nm~約100nm、約55nm~約100nm、約60nm~約100nm、約65nm~約100nm、約70nm~約100nm、約75nm~約100nm、約80nm~約100nm、約85nm~約100nm、約90nm~約100nm、又は約95nm~約100nmの範囲の直径を有する。
【0172】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、LNPは、約100nm未満、例えば、約40nm~約90nm、約45nm~約90nm、約50nm~約90nm、約55nm~約90nm、約60nm~約90nm、約65nm~約90nm、約70nm~約90nm、約75nm~約90nm、約80nm~約90nm、約85nm~約90nm、約40nm~約85nm、約45nm~約85nm、約50nm~約85nm、約55nm~約85nm、約60nm~約85nm、約65nm~約85nm、約70nm~約85nm、約75nm~約85nm、約80nm~約85nm、約40nm~約80nm、約45nm~約80nm、約50nm~約80nm、約55nm~約80nm、約60nm~約80nm、約65nm~約80nm、約70nm~約80nm、約75nm~約80nm、約40nm~約75nm、約45nm~約75nm、約50nm~約75nm、約55nm~約75nm、約60nm~約75nm、約65nm~約75nm、約70nm~約75nm、約40nm~約70nm、約45nm~約70nm、約50nm~約70nm、約55nm~約70nm、約60nm~約70nm、又は約65nm~約70nmの直径を有する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、LNPは、約60nm~約85nm、約65nm~約85nm、約70nm~約85nm、約75nm~約85nm、約80nm~約85nm、約60nm~約80nm、約65nm~約80nm、約70nm~約80nm、約75nm~約80nm、約60nm~約75nm、約65nm~約75nm、約70nm~約75nm、約60nm~約70nm、又は約65nm~約70nm、例えば、これらに限定されないが、約60mm、約61mm、約62mm、約63mm、約64mm、約65mm、約66mm、約67mm、約68mm、約69mm、約70mm、約71mm、約72mm、約73mm、約74mm、約75mm、約76mm、約77mm、約78mm、約79mm、約80mm、約81mm、約82mm、約83mm、約84mm、又は約85mmの直径を有する。
【0173】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)サイズは、例えば、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern,UK)システムを使用して準弾性光散乱によって決定することができる。
【0174】
カチオン性脂質、ステロール、非カチオン性脂質、PEG化脂質、及び任意選択で組織特異的標的化リガンドを含むLNP
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、本明細書に提供される脂質ナノ粒子は、本明細書に記載される少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つのステロール、少なくとも1つの非カチオン性脂質、及び少なくとも1つのPEG化脂質を含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子は、本明細書に記載される少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つのステロール、少なくとも1つの非カチオン性脂質、及び少なくとも1つのPEG化脂質から本質的になる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子は、本明細書に記載される少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つのステロール、少なくとも1つの非カチオン性脂質、及び少なくとも1つのPEG化脂質からなる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、カチオン性脂質:ステロール:非カチオン性脂質:PEG化脂質のモル比は、約48(±5):10(±3):41(±5):2(±2)、例えば、約47.5:10.0:40.7:1.8、又は約47.5:10.0:40.7:3.0である。
【0175】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、本明細書に提供される脂質ナノ粒子は、本明細書に記載される少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つのステロール、少なくとも1つの非カチオン性脂質、少なくとも1つのPEG化脂質、及び組織特異的標的化リガンドを含む。本明細書における態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、組織特異的標的化リガンドは、GalNacである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子は、本明細書に記載される少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つのステロール、少なくとも1つの非カチオン性脂質、少なくとも1つのPEG化脂質、及び組織特異的標的化リガンドから本質的になる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に提供される脂質ナノ粒子は、本明細書に記載される少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つのステロール、少なくとも1つの非カチオン性脂質、少なくとも1つのPEG化脂質、及び組織特異的標的化リガンドからなる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、組織特異的標的化リガンドは、PEG化脂質にコンジュゲートして、PEG化脂質コンジュゲートを形成する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、モノ-、ビ-、トリ-、又はテトラ-アンテナリーGalNAc-DSPE-PEG2000である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、PEG化脂質コンジュゲートは、テトラ-アンテナリーGalNAc-DSPE-PEG2000である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、カチオン性脂質:ステロール:非カチオン性脂質:PEG化脂質:PEG化脂質コンジュゲートのモル比は、約48(±5):10(±3):41(±5):2(±2)、1.5(±1)、例えば、47.5:10.0:40.2:1.8:0.5又は47.5:10.0:39.5;2.5:0.5である。
【0176】
IV. 治療用核酸(TNA)
本開示は、治療用核酸(TNA)を送達するための脂質ベースのプラットフォームを提供する。RNAベースの治療薬の非限定的な例は、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)を含む。DNAベースの治療薬の非限定的な例は、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルス性DNA(例えば、レンチウイルス又はAAVゲノム)若しくは非ウイルス性合成DNAベクター、閉端直鎖状の二重鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、doggybone(商標)DNAベクター、最小限度に免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)ベクター、非ウイルス性ミニストリングDNAベクター(直鎖状の共有結合性閉鎖DNAベクター)、又はダンベル形DNAミニマルベクター(「ダンベルDNA」)を含む。したがって、本開示の態様は、一般に、TNAを含むイオン化可能な脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を提供する。
【0177】
RNA干渉(RNAi)と呼ばれるプロセスを通じて特定のタンパク質の細胞内レベルを下方調節することができるsiRNA又はmiRNAもまた、本発明によって核酸治療薬であると企図される。siRNA又はmiRNAが宿主細胞の細胞質に導入された後、これらの二本鎖RNA構築物はRISCと呼ばれるタンパク質に結合することができる。siRNA又はmiRNAのセンス鎖はRISC複合体によって除去される。RISC複合体は、相補的mRNAと結合すると、mRNAを切断し、切断された鎖を放出する。RNAiは、対応するタンパク質の下方調節をもたらすmRNAの特異的破壊を誘導することによるものである。
【0178】
タンパク質へのmRNA翻訳を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及びリボザイムは、核酸治療薬となり得る。アンチセンス構築物の場合、これらの一本鎖デオキシ核酸は、標的タンパク質mRNAの配列に相補的な配列を有し、ワトソン-クリック塩基対合によってmRNAに結合することができる。この結合は、標的mRNAの翻訳を防ぎ、かつ/又はmRNA転写物のRNaseH分解を誘起する。その結果、アンチセンスオリゴヌクレオチドは作用の特異性(すなわち、特定の疾患関連タンパク質の下方調節)を高めた。
【0179】
本明細書に提供される方法及び組成物のいずれにおいても、治療用核酸(TNA)は治療用RNAであり得る。当該治療用RNAは、mRNA翻訳の阻害剤、RNA干渉(RNAi)の薬剤、触媒的に活性なRNA分子(リボザイム)、転移RNA(transfer RNA、tRNA)、又はmRNA転写物(ASO)、タンパク質若しくは他の分子リガンドに結合するRNA(アプタマー)であり得る。本明細書に提供される方法のいずれにおいても、RNAiの薬剤は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、マイクロRNA、短鎖干渉RNA、低分子ヘアピンRNA、又は三重らせん形成オリゴヌクレオチドであり得る。
【0180】
本明細書に提供される方法組成物のいずれにおいても、治療用核酸(TNA)は、閉端二本鎖DNA(例えば、ceDNA、CELiD、直鎖状の共有結合的に閉じたDNA(「ミニストリング」)、doggybone(商標)、プロテロメア閉端DNA、ダンベル直鎖状DNA、プラスミド、ミニサークル等)等の治療用DNAである。本開示のいくつかの実施形態は、導入遺伝子(例えば、治療用核酸)を発現することができる閉端直鎖状二重鎖(ceDNA)を含む方法及び組成物に基づく。本明細書に記載されるようなceDNAベクターは、ウイルスカプシド内の限定空間によって課されるパッケージング制約を有しない。ceDNAベクターは、原核細胞的に産生されたプラスミドDNAベクターに対する可変の真核細胞的に産生された代替物を表す。
【0181】
ceDNAベクターは、好ましくは、非連続的な構造ではなく直鎖状で連続的な構造を有する。直鎖状で連続的な構造は、細胞エンドヌクレアーゼによる攻撃に対してより安定であると同時に、組換えられて変異誘発を引き起こす可能性が低いと考えられる。したがって、直鎖状で連続的な構造のceDNAベクターは、好ましい実施形態である。連続的な直鎖状の一本鎖分子内二重鎖ceDNAベクターは、AAVカプシドタンパク質をコードする配列なしに、終端に共有結合している可能性がある。これらのceDNAベクターは、細菌起源の環状二重鎖核酸分子であるプラスミド(本明細書に記載されるceDNAプラスミドを含む)とは構造的に異なる。プラスミドの相補鎖は、変性に続いて分離されて2つの核酸分子を産生することができるが、反対に、ceDNAベクターは、相補鎖を有するが、単一DNA分子であり、したがって変性された場合でも単一分子のままである。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、プラスミドとは異なり、原核細胞タイプのDNA塩基メチル化なしに産生され得る。したがって、ceDNAベクター及びceDNA-プラスミドは、構造(特に、直鎖状対環状)並びにこれらの異なる対象物を産生及び精製するために使用される方法の両方に関して、またceDNA-プラスミドの場合は原核細胞タイプ及びceDNAベクターの場合は真核細胞タイプのものである、それらのDNAメチル化に関して異なる。
【0182】
共有結合性閉端を有する非ウイルス性カプシド不含ceDNA分子(ceDNA)が本明細書で提供される。これらの非ウイルスカプシド不含ceDNA分子は、2つの異なる逆位末端反復(ITR)配列の間に位置付けられた異種遺伝子(例えば、導入遺伝子、特に治療用導入遺伝子)を含有する発現構築物(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルス又は統合型細胞株)からの許容宿主細胞中で産生され得、ITRは、互いに関して異なる。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ITRのうちの1つは、野生型ITR配列と比較して、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されており(例えば、AAV ITR)、ITRのうちの少なくとも1つは、機能的末端分解部位(terminal resolution site、TRS)及びRep結合部位を含む。ceDNAベクターは、好ましくは、発現カセット等の分子の少なくとも一部分にわたって二重鎖、例えば、自己相補的である(例えば、ceDNAは、二本鎖環状分子ではない)。ceDNAベクターは、共有結合性閉端を有し、したがって、例えば、37℃で1時間超エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIII)に対して耐性である。
【0183】
本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一態様では、ceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ関連ウイルス(adeno-associated virus、AAV)逆位末端反復(ITR)、目的のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含む。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに対して非対称であり、すなわち、それらは、互いに異なる三次元空間構成を有する。例示的な実施形態として、第1のITRは、野生型ITRであり得、第2のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得るか、又はその逆であり、第1のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得、第2のITRは、野生型ITRであり得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、第1のITR及び第2のITRは、両方とも修飾されているが、異なる配列であるか、又は異なる修飾を有するか、又は同一の修飾型ITRではなく、異なる三次元空間構成を有する。言い換えると、非対称ITRを有するceDNAベクターは、WT-ITRに対する1つのITRにおける任意の変化が他のITRに反映されないITRを有するか、又は代替的に、非対称ITRが修飾された非対称ITR対を有する場合、互いに対して異なる配列及び異なる三次元形状を有し得る。
【0184】
本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、目的のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含み、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに対して対称又は実質的に対称であり、すなわち、ceDNAベクターは、対称の三次元空間構成を有するITR配列を含み得、それによりそれらの構造は、幾何学的空間で同じ形状であるか、又は三次元空間で同じA、C-C’、B-B’ループを有する。そのような実施形態では、対称のITR対、又は実質的に対称のITR対は、野生型ITRではない修飾型ITR(例えば、mod-ITR)であり得る。mod-ITR対は、野生型ITRからの1つ以上の修飾を有し、互いに逆相補(逆位)である同じ配列を有し得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、修飾型ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、修飾型ITR対は、異なる配列を有し得るが、対応する又は同じ対称な三次元形状を有し得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対称のITR、又は実質的に対称のITRは、本明細書に記載されるように野生型(WT-ITR)であり得る。すなわち、両方のITRが野生型配列を有するが、必ずしも同じAAV血清型のWT-ITRである必要はない。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、一方のWT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他方のWT-ITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。そのような実施形態では、WT-ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、それらは、対称的な三次元空間構成を維持しながら、1つ以上の保存的ヌクレオチド修飾を有することができる。
【0185】
本明細書に提供される野生型又は変異型又は他の方法で修飾型ITR配列は、ceDNAベクターの産生のために発現構築物(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルス)に含まれるDNA配列を表す。したがって、ceDNA-プラスミド又は他の発現構築物から産生されたceDNAベクター中に実際に含有されるITR配列は、産生プロセス中に起こる天然に存在する変化(例えば、複製エラー)の結果として、本明細書に提供されるITR配列に対して同一であっても同一でなくてもよい。
【0186】
本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、治療用核酸配列である導入遺伝子を有する発現カセットを含む本明細書に記載されるceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を可能にするか又は制御する1つ以上の調節配列に作動可能に連結され得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリヌクレオチドは、第1のITR配列及び第2のITR配列を含み、目的のヌクレオチド配列は、第1及び第2のITR配列によって隣接され、第1及び第2のITR配列は、互いに対して非対称であるか、又は互いに対して対称である。
【0187】
本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、発現カセットは、2つのITR間に位置し、導入遺伝子に操作可能に連結されたプロモーター、転写後調節エレメント、並びにポリアデニル化及び終結シグナルのうちの1つ以上をこの順に含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、プロモーターは、調節可能-誘導性又は抑制性である。プロモーターは、導入遺伝子の転写を促進する任意の配列であり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター又はそのバリアントである。転写後調節エレメントは、導入遺伝子の発現を調整する配列であり、非限定的な例として、治療用核酸配列である導入遺伝子の発現を強化する三次構造を作成する任意の配列である。
【0188】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、転写後調節エレメントは、WPREを含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリアデニル化及び終結シグナルは、BGHpolyAを含む。当該技術分野において既知の任意のシス調節エレメント、又はその組み合わせ、例えば、SV40後期ポリAシグナル上流エンハンサー配列(upstream enhancer sequence、USE)又は他の転写後処理エレメント(単純ヘルペスウイルス又はB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus、HBV)のチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない)が追加として使用され得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、5’~3’方向の発現カセット長は、AAVビリオン中でカプシド化されることが知られている最大長を超える。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、長さは、4.6kb超、又は5kb超、又は6kb超、又は7kb超である。様々な発現カセットが、本明細書に例示される。
【0189】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、発現カセットは、4000ヌクレオチド超、例えば、約5000ヌクレオチド、約10,000ヌクレオチド、若しくは約20,000ヌクレオチド、若しくは約30,000ヌクレオチド、若しくは約40,000ヌクレオチド、若しくは約50,000ヌクレオチド、又は約4000~10,000ヌクレオチド、若しくは10,000~50,000ヌクレオチドの任意の範囲、又は50,000ヌクレオチド超を含み得る。
【0190】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、発現カセットはまた、内部リボソームエントリー部位(internal ribosome entry site、IRES)及び/又は2Aエレメントを含み得る。シス調節エレメントとしては、プロモーター、リボスイッチ、インスレーター、mir調節エレメント、転写後調節エレメント、組織及び細胞型特異的プロモーター、並びにエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ITRは、導入遺伝子のプロモーターとして作用し得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を調節するための追加の構成成分、例えば、導入遺伝子の発現を制御及び調節するための調節スイッチを含み、所望であれば、ceDNAベクターを含む細胞の制御された細胞死を可能にするキルスイッチである調節スイッチを含み得る。
【0191】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターは、カプシド不含であり、第1のITR、発現可能な導入遺伝子カセット及び第2のITRをこの順にコードするプラスミドから取得され得、第1及び/又は第2のITR配列のうちの少なくとも1つは、対応する野生型AAV2 ITR配列に関して変異する。
【0192】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に開示されるceDNAベクターは、治療目的(例えば、医療、診断、若しくは獣医学的使用)又は免疫原性ポリペプチドに使用される。
【0193】
発現カセットは、治療用核酸配列である任意の導入遺伝子を含むことができる。ある特定の実施形態では、ceDNAベクターは、1つ以上のポリペプチド、ペプチド、リボザイム、ペプチド核酸、siRNA、RNAis、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、抗体、抗原結合断片、又はそれらの任意の組み合わせを含む、対象における任意の目的の遺伝子を含む。
【0194】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載されるceDNAベクターの発現カセット、発現構築物、又はドナー配列で提供される配列は、宿主細胞についてコドン最適化することができる。本明細書で使用される場合、「最適化されたコドン」又は「コドン最適化」という用語は、目的の脊椎動物、例えばマウス又はヒトの細胞中の発現強化のために、少なくとも1つ、2つ以上、又は相当数の未変性配列(例えば、原核細胞配列)のコドンを、その脊椎動物の遺伝子中でより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンと置き換えることによって、核酸配列を修飾するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸のある特定のコドンに対して特定の偏向を呈する。
【0195】
典型的に、コドン最適化は、元の翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列を変更しない。最適化されたコドンは、例えば、AptagenのGene Forge(登録商標)コドン最適化及びカスタム遺伝子合成プラットフォーム(Aptagen,Inc.,2190 Fox Mill Rd.Suite 300,Herndon,Va.20171)又は別の公開データベースを使用して決定することができる。
【0196】
多くの生物は、特定のコドンを使用して、成長するペプチド鎖における特定のアミノ酸の挿入をコードする偏向を示す。生物間のコドン使用頻度の違いであるコドン優先又はコドン偏向は、遺伝暗号の縮退によってもたらされ、多くの生物の間で十分に文書化されている。コドン偏向は、メッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA)の翻訳効率と相関関係があることが多く、とりわけ、翻訳されるコドンの特性及び特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の可用性に依存すると考えられている。細胞内の選択されたtRNAの優勢は、一般にペプチド合成で最も頻繁に使用されるコドンの反映である。したがって、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために遺伝子を調整することができる。
【0197】
多種多様な動物、植物、及び微生物種で利用可能な多数の遺伝子配列を考えると、コドン使用頻度の相対頻度を計算することが可能である(Nakamura,Y.,et al.「Codon usage tabulated from the international DNA sequence databases:status for the year 2000」Nucl.Acids Res.28:292(2000))。
【0198】
逆位末端反復(ITR)
本明細書に記載されるように、ceDNAベクターは、共有結合性末端(直鎖状で連続的な非カプシド構造)を有する相補的DNAの連続鎖から形成されたカプシド不含直鎖状二重鎖DNA分子であり、異なるか、又は互いに対して非対称である5’逆位末端反復(ITR)配列及び3’ITR配列を含む。ITRのうち少なくとも1つは、機能的末端分解部位及び複製タンパク質結合部位(replication protein binding site、RPS)(複製タンパク質結合部位(replicative protein binding site)と呼ばれることもある)、例えば、Rep結合部位を含む。一般に、ceDNAベクターは、少なくとも1つの修飾型AAV逆位末端反復配列(ITR)、すなわち、他のITRに対する欠失、挿入、及び/又は置換、並びに発現可能な導入遺伝子を含有する。
【0199】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ITRのうちの少なくとも1つは、AAV ITR、例えば、野生型AAV ITRである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ITRのうちの少なくとも1つは、他のITRに対する修飾型ITRであり、すなわち、ceDNAは、互いに対して非対称であるITRを含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ITRのうちの少なくとも1つは、非機能的ITRである。
【0200】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターは、(1)シス調節エレメント、プロモーター及び少なくとも1つの導入遺伝子を含む発現カセット、又は、(2)少なくとも1つの導入遺伝子に操作可能に連結されたプロモーター、及び(3)当該発現カセットに隣接する2つの自己相補的配列、例えば、ITRを含み、ceDNAベクターはカプシドタンパク質と会合していない。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、AAVゲノム中で見出される2つの自己相補的配列を含み、少なくとも1つは、操作的Rep結合エレメント(Rep-binding element、RBE)及びAAVの末端分解部位(TRS)又はRBEの機能的バリアント、及び導入遺伝子に作動可能に連結された1つ以上のシス調節エレメントを含む。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を調節するための追加の構成成分、例えば、導入遺伝子の発現を制御及び調節するための調節スイッチを含み、ceDNAベクターを含む細胞の制御された細胞死を可能にするキルスイッチである調節スイッチを含み得る。
【0201】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれか一実施形態では、2つの自己相補的配列は、任意の既知のパルボウイルス、例えばAAV(例えば、AAV1~AAV12)等のディペンドウイルスからのITR配列であり得る。ヘアピン二次構造形成を可能にする可変パリンドローム配列に加えて、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’等のRep結合部位(RBS)及び末端分解部位(TRS)を保持する修飾型AAV2 ITR配列を含むが、これらに限定されない任意のAAV血清型を使用することができる。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一部の実施形態では、ITRは合成であってもよい。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、合成ITRは、2つ以上のAAV血清型からのITR配列に基づいている。別の実施形態では、合成ITRは、AAVベース配列を含まない。更に別の実施形態では、合成ITRは、上記のITR構造を保存するが、わずかなAAV源配列を有するか、又は全く有しない。いくつかの態様では、合成ITRは、野生型Rep若しくは特定血清型のRepと優先的に相互作用し得るか、又は場合によっては、野生型Repによって認識されず、変異型Repによってのみ認識される。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ITRは、ヘアピン二次構造形成を可能にする可変パリンドローム配列に加えて、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’等の機能性Rep結合部位(RBS)及び末端分解部位(TRS)を保持する合成ITR配列である。いくつかの例では、修飾型ITR配列は、RBS、TRSの配列、並びに野生型AAV2 ITRの対応する配列からの1つのITRヘアピン二次構造の末端ループ部分を形成するRep結合エレメントの構造及び位置を保持する。ceDNAベクターで使用するための例示的なITR配列は、表2~9、10A及び10B、配列番号2、52、101~449及び545~547に開示され、部分的なITR配列は、2018年9月7日に出願された国際出願第PCT/US2018/049996号の
図26A~
図26Bに示される。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、2018年9月7日に出願された国際出願第PCT/US2018/049996号の表2、3、4、5、6、7、8、9、10A、及び10Bのうちのいずれか1つ以上に示されるITR配列又はITR部分配列における修飾のいずれかに対応するITRにおける修飾を伴うITRを含み得る。
【0202】
本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターは、シス調節エレメントの特定の組み合わせを更に含む発現構築物から産生され得る。シス調節エレメントとしては、プロモーター、リボスイッチ、インスレーター、mir調節エレメント、転写後調節エレメント、組織及び細胞型特異的プロモーター、並びにエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ITRは、導入遺伝子のプロモーターとして作用し得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を調節するための追加成分、例えば、2018年9月7日に出願された国際出願第PCT/US2018/049996号に記載される調節スイッチを含み、導入遺伝子、又はceDNAベクターを含む細胞を殺傷し得るキルスイッチの発現を調節する。
【0203】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、発現カセットはまた、導入遺伝子の発現を増加させるために、転写後エレメントを含み得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(Woodchuck Hepatitis Virus posttranscriptional regulatory element、WPRE)を使用して、導入遺伝子の発現を増加させる。他の転写後処理エレメント、例えば、単純ヘルペスウイルス又はB型肝炎ウイルス(HBV)のチミジンキナーゼ遺伝子からの転写後エレメントを使用することができる。分泌配列は、導入遺伝子、例えば、VH-02及びVK-A26配列に連結され得る。発現カセットは、例えば、ウシBGHpA若しくはウイルスSV40pAから単離された天然配列、又は合成配列等の、当該技術分野において既知のポリアデニル化配列又はその変形を含み得る。いくつかの発現カセットはまた、SV40後期ポリAシグナル上流エンハンサー(USE)配列を含み得る。USEは、SV40pA又は異種ポリAシグナルと組み合わせて使用され得る。
【0204】
2018年9月7日に出願され、国際出願第PCT/US2018/050042号の
図1A~
図1Cは、非限定の例示的なceDNAベクター、又はceDNAプラスミドの対応する配列の概略図を示し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ceDNAベクターは、カプシド不含であり、第1のITR、発現可能な導入遺伝子カセット、及び第2のITRをこの順にコードするプラスミドから取得され得、第1及び/又は第2のITR配列のうちの少なくとも1つは、対応する野生型AAV2 ITR配列に関して変異する。発現可能な導入遺伝子カセットは、好ましくは、エンハンサー/プロモーター、ORFレポーター(導入遺伝子)、転写後調節エレメント(例えば、WPRE)、並びにポリアデニル化及び終結シグナル(例えば、BGHポリA)のうちの1つ以上をこの順序で含む。
【0205】
プロモーター
上記のものを含む好適なプロモーターは、ウイルスに由来し得るため、ウイルスプロモーターと称され得るか、又はそれらは、原核生物又は真核生物を含む任意の生物に由来し得る。好適なプロモーターを使用して、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)によって発現を駆動することができる。例示的なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルスの長い末端反復配列(long terminal repeat、LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(adenovirus major late promoter、Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター領域(CMVTE)、ラウス肉腫ウイルス(rous sarcoma virus、RSV)プロモーター、ヒトU6小核プロモーター(U6、例えば、(Miyagishi et al.,Nature Biotechnology 20,497-500(2002))、増強されたU6プロモーター(例えば、Xia et al.,Nucleic Acids Res.2003 Sep.1;31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)、CAGプロモーター、ヒトアルファ1-アンチトリプシン(human alpha l-antitrypsin、HAAT)プロモーター(例えば、その他同種のもの)が挙げられる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、これらのプロモーターは、それらの下流イントロン含有端で変更されて、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位を含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ヌクレアーゼ切断部位を含有するDNAは、プロモーターDNAに対して外来である。
【0206】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、プロモーターは、1つ以上の特定の転写調節配列を含むことにより、発現を更に増強する、並びに/又はその空間的発現及び/若しくは時間的発現を変更することができる。プロモーターはまた、転写の開始部位から数千塩基対も離れて位置し得る遠位エンハンサー又はリプレッサーエレメントを含み得る。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、及び動物を含む供給源に由来し得る。プロモーターは、発現が起こる細胞、組織若しくは器官に関して、又は発現が起こる発達段階に関して、又は生理学的ストレス、病原体、金属イオン、若しくは誘導剤等の外部刺激に応答して、構成的又は示差的に遺伝子成分の発現を調節し得る。プロモーターの代表的な例としては、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレータープロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、SV40初期プロモーター又はSV40後期プロモーター及びCMV IEプロモーター、並びに以下に列挙されるプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーター及び/又はエンハンサーは、目的の任意の遺伝子、例えば、治療用タンパク質)の発現に使用できる。例えば、ベクターは、治療用タンパク質をコードする核酸配列に操作可能に連結されるプロモーターを含み得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、治療用タンパク質コード配列に操作可能に連結されたプロモーターは、シミアンウイルス40(simian virus 40、SV40)由来のプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(mouse mammary tumor virus、MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)プロモーター、例えば、ウシ免疫不全ウイルス(bovine immunodeficiency virus、BIV)の長い末端反復(LTR)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルス(avian leukosis virus、ALV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター、エプスタインバーウイルス(Epstein Barr virus、EBV)プロモーター、又はラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターであり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、プロモーターはまた、ヒトユビキチンC(human ubiquitin C、hUbC)、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、又はヒトメタロチオネイン等のヒト遺伝子からのプロモーターであってもよい。プロモーターはまた、天然又は合成の、組織特異的プロモーター、例えば、肝臓特異的プロモーター、例えば、ヒトアルファ1-抗トリプシン(HAAT)又はトランスサイレチン(transthyretin、TTR)であり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、肝臓への送達は、肝細胞の表面上に存在する低密度リポタンパク質(low-density lipoprotein、LDL)受容体を介して、肝細胞へのceDNAベクターを含む組成物の内因性ApoE特異的標的を使用して達成され得る。
【0207】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、使用されるプロモーターは、治療用タンパク質をコードする遺伝子のネイティブプロモーターである。治療用タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子のプロモーター及び他の調節配列は既知であり、特徴付けられている。使用されるプロモーター領域は、当技術分野において既知のエンハンサー(例えば、Serpinエンハンサー)等の1つ以上の追加の調節配列(例えば、天然)を更に含んでもよい。
【0208】
本発明に従って使用するための好適なプロモーターの非限定例としては、例えば、CAGプロモーター、HAATプロモーター、ヒトEF1-αプロモーター、又はEF1-αプロモーター及びラットEF1-αプロモーターの断片が挙げられる。
【0209】
ポリアデニル化配列
ポリアデニル化配列をコードする配列は、ceDNAベクターから発現されたmRNAを安定化するため、及び核輸送及び翻訳を助けるために、ceDNAベクター中に含まれ得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターは、ポリアデニル化配列を含まない。他の実施形態では、ベクターは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50以上のアデニンジヌクレオチドを含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ポリアデニル化配列は、約43ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約40~55ヌクレオチド、約45~50ヌクレオチド、約35~50ヌクレオチド、又はその間の任意の範囲を含む。
【0210】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAは、2つの異なる逆位末端反復配列(ITR)(例えば、AAV ITR)の間に作動可能に位置付けられた異種核酸をコードするベクターポリヌクレオチドから取得可能であり、ITRのうちの少なくとも1つは、末端分解部位及び複製タンパク質結合部位(RPS)、例えば、Rep結合部位(例えば、wt AAV ITR)を含み、ITRのうちの1つは、他のITR、例えば機能的ITRに関する欠失、挿入、及び/又は置換を含む。
【0211】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、宿主細胞はウイルスカプシドタンパク質を発現せず、ポリヌクレオチドベクターテンプレートは任意のウイルスカプシドコード配列を欠いている。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリヌクレオチドベクターテンプレートは、AAVカプシド遺伝子を欠いているが、他のウイルスのカプシド遺伝子も欠いている)。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、核酸分子はまた、AAV Repタンパク質コード配列を欠いている。したがって、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本発明の核酸分子は、機能的なAAVキャップ及びAAV rep遺伝子の両方を欠いている。
【0212】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターは、修飾型ITRを有さない。
【0213】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターは、本明細書に開示される(又は、2018年9月7日に出願された国際出願第PCT/US2018/049996号において)調節スイッチを含む。
【0214】
V.ceDNAベクターの産生
本明細書で定義される非対称ITR対又は対称ITR対を含む本明細書に記載のceDNAベクターの産生のための方法は、2018年9月7日に出願された国際出願第PCT/US2018/049996号のセクションIVに記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるように、ceDNAベクターは、例えば、プロセスであって、a)ポリヌクレオチド発現構築物テンプレート(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルス)を内包する宿主細胞(例えば、昆虫細胞)の集団をインキュベートするステップであって、Repタンパク質の存在下では、宿主細胞内のceDNAベクターの産生を誘導するために効果的な条件下、かつそのために十分な時間にわたってウイルスカプシドコード配列を欠いており、宿主細胞が、ウイルスカプシドコード配列を含まない、インキュベートするステップと、b)ceDNAベクターを宿主細胞から採取し、単離するステップと、を含む、プロセスによって取得され得る。Repタンパク質の存在は、修飾型ITRを有するベクターポリヌクレオチドの複製を誘導して、宿主細胞中でceDNAベクターを産生する。
【0215】
但し、ウイルス粒子(例えば、AAVビリオン)は発現されない。したがって、AAV又は他のウイルスベースベクターにおいて天然に課されるもの等のサイズ制限はない。
【0216】
宿主細胞から単離されたceDNAベクターの存在は、宿主細胞から単離されたDNAをceDNAベクター上に単一認識部位を有する制限酵素で消化すること、並びに消化されたDNA材料を非変性ゲル上で分析して、直鎖状かつ非連続的なDNAと比較して特徴的な直鎖状かつ連続的なDNAのバンドの存在を確認することによって確認され得る。
【0217】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本発明は、例えば、Lee,L.et al.(2013)Plos One 8(8):e69879に記載されているように、非ウイルス性DNAベクターの産生において、DNAベクターポリヌクレオチド発現テンプレート(ceDNAテンプレート)をそれら自体のゲノムに安定して組み込んでいる宿主細胞株の使用を提供する。好ましくは、Repは、約3のMOIで宿主細胞に付加される。宿主細胞株が哺乳動物細胞株、例えば、HEK293細胞である場合、細胞株は、安定して組み込まれたポリヌクレオチドベクターテンプレートを有し得、ヘルペスウイルス等の第2のベクターを使用して、Repタンパク質を細胞に導入することができ、Rep及びヘルパーウイルスの存在下でのceDNAの切除及び増幅を可能にする。
【0218】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載されるceDNAベクターを作製するために使用される宿主細胞は、昆虫細胞であり、バキュロウイルスは、Repタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、ceDNAの非ウイルスDNAベクターポリヌクレオチド発現構築物テンプレートとを両方送達するために使用される。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、宿主細胞は、Repタンパク質を発現するように操作されている。
【0219】
次いで、ceDNAベクターは、宿主細胞から採取され、単離される。本明細書に記載されるceDNAベクターを細胞から採取及び収集するための時間は、ceDNAベクターの高収率産生を達成するために選択され、最適化され得る。例えば、採取時間は、細胞生存率、細胞形態論、細胞増殖等を考慮して選択され得る。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、十分な条件下で細胞は増殖し、ceDNAベクターを産生するためのバキュロウイルス感染から十分な時間が経過した後、但し細胞のほとんどがバキュロウイルスの毒性のために死滅し始める前に採取される。DNAベクターは、Qiagen Endo-Freeプラスミドキット等のプラスミド精製キットを使用して単離され得る。プラスミド単離のために開発された他の方法もまた、DNAベクターに対して適合され得る。一般に、任意の核酸精製方法が採用され得る。
【0220】
DNAベクターは、DNAの精製のための当業者に既知の任意の手段によって精製され得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターはDNA分子として精製される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクターは、エクソソーム又は微小粒子として精製される。ceDNAベクターの存在は、細胞から単離されたベクターDNAをDNAベクター上に単一認識部位を有する制限酵素で消化すること、並びにゲル電気泳動を使用し、消化されたDNA材料及び未消化のDNA材料の両方を分析して、直鎖状かつ非連続的なDNAと比較して特徴的な直鎖状かつ連続的なDNAのバンドの存在を確認することによって確認され得る。
【0221】
VI. 脂質粒子の調製
脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、TNA(例えば、ceDNA)及び脂質の混合時に自発的に形成することができる。所望の粒子サイズ分布に応じて、得られたナノ粒子混合物は、例えば、Lipex Extruder(Northern Lipids,Inc)等のサーモバレル押出機を使用して、膜(例えば、100nmカットオフ)を通して押し出すことができる。場合によっては、押し出しステップは省略することができる。エタノール除去及び同時緩衝液交換は、例えば、透析又はタンジェンシャルフロー濾過によって達成され得る。
【0222】
一般に、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、当該技術分野において既知の任意の方法によって形成することができる。例えば、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、例えば、米国特許出願公開第US2013/0037977号、同第US2010/0015218号、同第US2013/0156845号、同第US2013/0164400号、同第US2012/0225129号、及び同第US2010/0130588号に記載されている方法によって調製することができ、これらの各々の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、連続混合法、直接希釈プロセス、又はインライン希釈プロセスを使用して調製することができる。直接希釈及びインライン希釈プロセスを使用して脂質ナノ粒子を調製するための装置のプロセス及び装置は、米国特許出願公開第2007/0042031号に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。段階希釈プロセスを使用して脂質ナノ粒子を調製するためのプロセス及び装置は、米国特許出願公開第US2004/0142025号に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0223】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、衝突ジェットプロセスによって調製することができる。一般に、粒子は、アルコール(例えば、エタノール)に溶解した脂質を、緩衝液、例えば、クエン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、酢酸ナトリウム及び塩化マグネシウム緩衝液、リンゴ酸緩衝液、リンゴ酸及び塩化ナトリウム緩衝液、又はクエン酸ナトリウム及び塩化ナトリウム緩衝液に溶解したceDNAと混合することによって形成される。ceDNAに対する脂質の混合比は、約45~55%の脂質及び約65~45%のceDNAであり得る。
【0224】
脂質溶液は、アルコール、例えばエタノール中に、5~30mg/mL、よりおそらく5~15mg/mL、最もおそらく9~12mg/mLの全脂質濃度で、開示されたカチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えば、DSPC、DOPE、及びDOPC等のリン脂質)、1つ以上のPEG化脂質、及びステロール(例えば、コレステロール)を含有することができる。脂質溶液において、脂質のモル比は、カチオン性脂質について約25~98%、例えば、約35~65%の範囲であり得、非イオン性脂質について約0~15%、例えば約0~12%の範囲であり得、PEG化脂質については約0~15%、例えば約1~6%の範囲であり得、ステロールンについては約0~75%、例えば約30~50%の範囲であり得る。
【0225】
ceDNA溶液は、3.5~5の範囲のpHを有する、緩衝溶液中に0.3~1.0mg/mL、好ましくは、0.3~0.9mg/mLの濃度範囲でceDNAを含むことができる。
【0226】
LNPを形成するために、1つの例示的であるが非限定的な実施形態では、2つの液体は、約15~40℃、好ましくは約30~40℃の範囲の温度に加熱され、次いで、例えば、衝突ジェットミキサーにおいて混合され、即座にLNPを形成する。混合流量は、10~600mL/分の範囲であり得る。チューブIDは、0.25~1.0mmの範囲を有し、10~600mL/分の全流量であり得る。流量とチューブIDとの組み合わせは、LNPの粒子サイズを30nm~200nmに制御する効果を有し得る。次いで、溶液を、より高いpHで、1:1~1:3の体積:体積、好ましくは約1:2の体積:体積の範囲の混合比で緩衝溶液と混合することができる。必要に応じて、この緩衝溶液は、15~40℃又は30~40℃の範囲の温度になり得る。次いで、混合されたLNPは、アニオン交換濾過ステップを受けることができる。アニオン交換の前に、混合されたLNPを一定期間、例えば、30分~2時間インキュベートすることができる。インキュベーション中の温度は、15~40℃又は30~40℃の範囲の温度になり得る。インキュベーション後、アニオン交換分離ステップを含む0.8μmフィルター等のフィルターで溶液を濾過する。このプロセスでは、1mmのID~5mmのIDの範囲のチューブID及び10~2000mL/分の流量を使用できる。
【0227】
形成後、LNPを濃縮し、限外濾過プロセスを介して限界濾過することができ、このプロセスでは、アルコールが除去され、緩衝液が最終的な緩衝溶液、例えば、約pH7、例えば約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、又は約pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)と交換される。
【0228】
限外濾過プロセスでは、膜の公称分子量カットオフ範囲が30~500kDのタンジェンシャルフロー濾過フォーマット(tangential flow filtration format、TFF)を使用できる。膜フォーマットは中空糸又はフラットシートカセットである。適切な分子量カットオフのTFFプロセスでは、保持液にLNPを保持することができ、濾液又は透過液はアルコール、クエン酸緩衝液及び最終緩衝液の廃棄物を含有する。TFFプロセスは、初期濃度が1~3mg/mLのceDNA濃度になる複数ステップのプロセスである。濃縮後、LNP溶液を最終緩衝液に対して10~20容量で限界濾過し、アルコールを除去して緩衝液交換を実施する。次いで、材料を更に1~3倍に濃縮することができる。濃縮されたLNP溶液は滅菌濾過できる。
【0229】
VII. 薬学的組成物及び製剤
本明細書では、TNA脂質粒子と、薬学的に許容される担体又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物もまた提供される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本発明は更に、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいずれかの実施形態に記載のカチオン性脂質、又は本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいずれかの実施形態に記載の脂質ナノ粒子、及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物に関する。
【0230】
一般に、本発明の脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、意図した治療効果を提供するように選択された平均直径を有する。
【0231】
脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の意図した使用に応じて、構成成分の割合は変化し得、特定の製剤の送達効率は、例えば、エンドソーム放出パラメータ(endosomal release parameter、ERP)アッセイを使用して測定され得る。
【0232】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAは、粒子の脂質部分と複合され得るか、又は脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の脂質位置に封入され得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAは、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の脂質位置に完全に封入され得、それによって例えば水溶液中のヌクレアーゼによる分解からそれを保護する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中のceDNAは、37℃で少なくとも約20、30、45、又は60分間のヌクレアーゼへの脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の曝露後に実質的に分解されない。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中のceDNAは、37℃で少なくとも約30、約45、若しくは約60分、又は少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約12、約14、約16、約18、約20、約22、約24、約26、約28、約30、約32、約34、若しくは約36時間の血清中の粒子のインキュベーション後に実質的に分解されない。
【0233】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、対象、例えばヒト等の哺乳動物に対して実質的に非毒性である。
【0234】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本開示の治療用核酸を含む医薬組成物は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に製剤化され得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、治療用核酸を含む脂質粒子は、開示されたカチオン性脂質から形成することができる。いくつかの他の実施形態では、治療用核酸を含む脂質粒子は、非カチオン性脂質から形成され得る。好ましい実施形態では、本発明の脂質粒子は、核酸を含有する脂質粒子であり、これは、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルス性DNA(例えば、レンチウイルス若しくはAAVゲノム)又は非ウイルス性合成DNAベクター、閉端直鎖状二重鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、doggybone(商標)DNAベクター、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)ベクター、非ウイルス性ミニストリングDNAベクター(直鎖状共有結合性閉鎖DNAベクター)、又はダンベル型DNA最小ベクター(「ダンベルDNA」)からなる群から選択される治療用核酸を含む開示されたカチオン性脂質から形成される。
【0235】
別の好ましい実施形態では、本発明の脂質粒子は核酸含有脂質粒子であり、これは非カチオン性脂質、及び任意選択で粒子の凝集を防止するPEG化脂質又はコンジュゲートされた脂質の他の形態から形成される。
【0236】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子製剤は水溶液である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)製剤は、凍結乾燥粉末である。
【0237】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ以上の薬学的賦形剤を更に含む脂質粒子製剤を提供する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)製剤は、スクロース、トリス、トレハロース、及び/又はグリシンを更に含む。
【0238】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に開示される脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、対象の細胞、組織、又は器官へのインビボ送達のために対象に投与するのに好適な医薬組成物に組み込まれ得る。典型的に、医薬組成物は、本明細書に開示されるTNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本開示のTNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、治療的投与(例えば、非経口投与)の所望の経路に適した医薬組成物に組み込むことができる。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射等の細胞内注射もまた、企図される。治療目的のための医薬組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高ceDNAベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌の注射可能な溶液は、適切な緩衝液中の必要量のceDNAベクター化合物を、必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つ又は組み合わせと組み込み、濾過滅菌によって調製され得る。
【0239】
本明細書に開示される脂質粒子は、局所、全身、羊膜内、くも膜下腔内、頭蓋内、動脈内、静脈内、リンパ内、腹腔内、皮下、気管、組織内(例えば、筋肉内、心臓内、肝内、腎臓内、脳内)、くも膜下腔内、膀胱内、結膜(例えば、眼窩外、眼窩内、眼窩後、網膜内、網膜下、脈絡膜、脈絡膜下、間質内、房内、及び硝子体内)、蝸牛内、並びに粘膜(例えば、経口、直腸、経鼻)投与に好適な薬学的組成物に組み込むことができる。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射等の細胞内注射もまた、企図される。
【0240】
TNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を含む薬学的に活性な組成物は、核酸中の導入遺伝子をレシピエントの細胞に送達するように製剤化され得、その中の導入遺伝子の治療的発現をもたらす。この組成物はまた、薬学的に許容される担体を含み得る。
【0241】
治療目的のための医薬組成物は、典型的に、無菌であり、製造及び貯蔵の条件下で安定している。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高ceDNAベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌の注射可能な溶液は、適切な緩衝液中の必要量のceDNAベクター化合物を、必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つ又は組み合わせと組み込み、濾過滅菌によって調製され得る。
【0242】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、少なくとも1つの脂質二層を有する固体コア粒子である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、非二層構造、すなわち非ラメラ(すなわち、非二層)形態を有する。無制限に、非二層形態としては、例えば、三次元チューブ、棒、立方対称性等が挙げられ得る。脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の非ラメラ形態(すなわち、非二層構造)は、当業者に既知であり、当業者によって使用される分析技法を使用して決定され得る。そのような技法としては、低温透過型電子顕微鏡(Cryo-Transmission Electron Microscopy、「Cryo-TEM」)、示差走査熱量計(Differential Scanning calorimetry、「DSC」)、X線回折等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、脂質粒子の形態(ラメラ対非ラメラ)は、例えば、米国特許出願公開第2010/0130588号に記載されているCryo-TEM分析を使用して容易に評価され、特徴付けられ得、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0243】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、非ラメラ形態を有する脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、高電子密度である。
【0244】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本開示は、単一ラメラ構造又は多ラメラ構造のいずれかである脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を提供する。いくつかの態様では、本開示は、多胞体粒子及び/又は発泡ベース粒子を含む脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)製剤を提供する。脂質構成成分の組成物及び濃度を制御することによって、コンジュゲートされた脂質が脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)外で交換する速度、順に脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を制御することができる。加えて、例えば、pH、温度、又はイオン強度を含む他の変数を使用して、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)が膜融合性になる速度を変化及び/又は制御することができる。脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)が膜融合性になる速度を制御するために使用され得る他の方法は、本開示に基づいて当業者に明らかとなるであろう。コンジュゲートされた脂質の組成物及び濃度を制御することによって、脂質粒径を制御することができることも明らかとなるであろう。
【0245】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、製剤化されたカチオン性脂質のpKaは、核酸の送達のためのLNPの有効性と相関させることができる(Jayaraman et al.,Angewandte Chemie,International Edition (2012),51(34),8529-8533、Semple et al.,Nature Biotechnology 28,172-176(2010)を参照されたい(これらはいずれも、参照によりその全体が組み込まれる))。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、pKaの好ましい範囲は、約5~約8である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、pKaの好ましい範囲は、約6~約7である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、好ましいpKaは、約6.5である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、カチオン性脂質のpKaは、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)の蛍光に基づくアッセイを使用し、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中で決定され得る。
【0246】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中のceDNAの封入は、核酸と会合したときに蛍光を強化した色素を使用する、膜不透過性蛍光色素排除アッセイ、例えばOligreen(登録商標)アッセイ又はPicoGreen(登録商標)アッセイを実施することによって決定され得る。一般に、封入は、脂質粒子製剤に色素を添加し、得られた蛍光を測定し、それを少量の非イオン性界面活性剤の添加時に観察される蛍光と比較することによって決定される。脂質二層の界面活性剤媒介性崩壊は、封入されたceDNAを放出し、それが膜不透過性色素と相互作用することを可能にする。ceDNAの封入は、E=(Io-I)/Ioとして計算することができ、I及びIoは、界面活性剤の添加前及び添加後の蛍光強度を指す。
【0247】
単位投与量
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、薬学的組成物は、単位剤形で提供することができる。単位剤形は、典型的に、薬学的組成物の1つ以上の投与経路に適合されるであろう。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、単位剤形は、吸入による投与に適合されている。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、単位剤形は、吸入器による投与に適合されている。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、単位剤形は、噴霧器による投与に適合されている。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、単位剤形は、エアロゾル化器による投与に適合されている。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、単位剤形は、経口投与のため、頬側投与のため、又は舌下投与のために適合されている。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、単位剤形は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与に適合されている。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、単位剤形は、髄腔内又は脳室内投与に適合されている。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、局所投与用に製剤化されている。単一剤形を産生するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量となるであろう。
【0248】
VIII.治療方法
本明細書に記載の脂質ナノ粒子及び方法(例えば、本明細書に記載のTNA脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用して、宿主細胞に核酸配列(例えば、治療用核酸配列)を導入することができる。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用する宿主細胞への核酸配列の導入を、治療された患者からの適切なバイオマーカーでモニタリングして、遺伝子発現を評価することができる。
【0249】
本明細書に提供されるLNP組成物を使用して、様々な目的のために導入遺伝子(核酸配列)を送達することができる。本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクター(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))は、例えば、エクスサイチュ、インビトロ及びインビボの適用、方法論、診断手順、及び/又は遺伝子療法計画を含む、様々な方法で使用することができる。
【0250】
本明細書では、治療有効量のTNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を、任意選択で薬学的に許容される担体とともに、治療を必要とする対象の標的細胞(例えば、肝細胞、筋細胞、腎細胞、神経細胞、又は他の罹患した細胞型)に導入することを含む、対象における疾患又は障害を治療する方法が提供される。実装されるTNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))は、疾患を治療するために有用な目的のヌクレオチド配列を含む。特に、TNAは、対象に導入されたときに、外因性DNA配列によってコードされる所望のポリペプチド、タンパク質、又はオリゴヌクレオチドの転写を指示することができる制御エレメントに操作可能に連結された所望の外因性DNA配列を含み得る。TNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))は、本明細書に記載され、当該技術分野において既知の任意の好適な経路を介して投与することができる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、標的細胞は、ヒト対象内にある。
【0251】
本明細書では、診断有効量若しくは治療有効量のTNA LNP(本明細書に記載の例えばceDNAベクターリピド粒子(例えば、リピドナノ粒子))を、それを必要とする対象に提供する方法であって、それを必要とする対象の組織又は臓器に、ある量のTNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を提供することと、TNA LNPからの導入遺伝子の発現を可能にするのに有効な時間の間、診断有効量若しくは治療有効量の、TNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクターリピド粒子(例えば、脂質ナノ粒子))によって発現されるタンパク質、ペプチド、核酸を対象に提供することと、を含む、方法が提供される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、対象はヒトである。
【0252】
本明細書では、対象における疾患、障害、機能不全、傷害、異常状態、又は外傷のうちの少なくとも1つ以上の症状を診断、予防、治療、又は改善するための方法が提供される。一般に、この方法は、TNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を、それを必要とする対象に、対象の疾患、障害、機能不全、傷害、異常状態、又は外傷の1つ以上の症状を診断、予防、治療、又は改善するのに十分な量及び時間にわたって投与するステップを少なくとも含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、対象はヒトである。
【0253】
本明細書では、疾患又は疾患状態の1つ以上の症状を治療するためのツールとしてTNA LNPを使用するための方法が提供される。欠陥遺伝子が知られているいくつかの遺伝性疾患が存在し、典型的に、通常は一般に劣性的に遺伝される酵素の欠乏状態と、調節又は構造タンパク質に関与し得るが、典型的に常に優性的に遺伝されるとは限らない不均衡状態との2つのクラスに分類される。欠乏状態の疾患の場合、TNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用し、導入遺伝子を送達して、置換療法のために正常な遺伝子を罹患した組織に運び入れるとともに、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、アンチセンス変異を使用して、疾患の動物モデルを創り出すことができる。不均衡疾患状態の場合、TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子)を使用して、モデルシステムにおいて疾患状態を創り出すことができ、次いでこれを使用して、その疾患状態に反作用するように試みることができる。したがって、本明細書に開示されるTNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))及び方法は、遺伝子疾患の治療を可能にする。本明細書で使用される場合、疾患状態は、疾患を引き起こす、又はそれをより重篤にする欠乏又は不均衡を部分的又は全体的に修繕することによって治療される。
【0254】
一般に、上記の説明に従ってTNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用して任意の導入遺伝子を送達して、遺伝子発現に関する任意の障害に関連する症状を治療、予防、又は改善することができる。例示的な疾患状態としては、嚢胞性線維症(及び他の肺の疾患)、血友病A、血友病B、サラセミア、貧血症及び他の血液障害、AIDS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん及び他の神経障害、がん、糖尿病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型、ベッカー型)、ハーラー病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、代謝障害、網膜変性疾患(及び他の眼の疾患)、ミトコンドリオパチー(例えば、レーバー遺伝性視神経症(Leber's hereditary optic neuropathy、LHON)、リー症候群、及び亜急性硬化性脳炎)、ミオパチー(例えば、顔面肩甲上腕型ミオパチー(FSHD)及び心筋症)、固形臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓、心臓)の疾患等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなceDNAベクターは、代謝障害(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症)を有する個人の治療において有利に使用され得る。
【0255】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本明細書に記載されるTNA LNPを使用して、遺伝子又は遺伝子産物中の変異によって引き起こされる疾患又は障害を治療、改善、及び/又は予防することができる。TNA LNP(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))で治療することができる例示的な疾患又は障害としては、代謝性疾患又は障害(例えば、ファブリー病、ゴーシェ病、フェニルケトン尿症(phenylketonuria、PKU)、糖原病);尿素サイクル疾患又は障害(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ(ornithine transcarbamylase、OTC)欠損症);リソソーム蓄積症又は障害(例えば、異染性白質ジストロフィー(metachromatic leukodystrophy、MLD)、II型ムコ多糖症(MPSII;ハンター症候群));肝臓の疾患又は障害(例えば、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(progressive familial intrahepatic cholestasis、PFIC);血液疾患又は障害(例えば、血友病A及びB、サラセミア、並びに貧血);がん及び腫瘍、並びに遺伝性疾患又は障害(例えば、嚢胞性線維症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0256】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子)を用いて、導入遺伝子(例えば、ホルモン又は増殖因子をコードする導入遺伝子)の発現レベルを調節することが望ましい状況において、異種ヌクレオチド配列を送達することができる。
【0257】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用して、疾患又は障害をもたらす遺伝子産物の異常なレベル及び/又は機能(例えば、タンパク質中の不在又は欠損)を訂正することができる。TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))は、機能的タンパク質を産生し、かつ/又はタンパク質のレベルを修復して、タンパク質中の不在若しくは欠損によって引き起こされる特定の疾患若しくは障害から生じる症状を緩和若しくは低減するか、又は利益を付与することができる。例えば、OTC欠損症の治療は、機能的OTC酵素を産生することによって達成することができ、血友病A及びBの治療は、第VIII因子、第IX因子、及び第X因子のレベルを改変することによって達成することができ、PKUの治療は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ酵素のレベルを改変することによって達成することができ、ファブリー病又はゴーシェ病の治療は、機能的なアルファガラクトシダーゼ又はベータグルコセレブロシダーゼをそれぞれ産生することによって達成することができ、MFD又はMPSIIの治療は、それぞれ、機能的アリールスルファターゼA又はイズロン酸-2-スルファターゼを産生することによって達成することができ、嚢胞性線維症の治療は、機能的嚢胞性線維症膜貫通調節因子を産生することによって達成することができ、糖原病の治療は、機能的なG6Pase機能を回復させることによって達成することができ、PFICの治療は、機能的なATP8B1、ABCB11、ABCB4、又はTJP2遺伝子を産生することによって達成することができる。
【0258】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用して、インビトロ又はインビボで細胞にRNAベースの治療薬を提供することができる。RNAベースの治療薬の例としては、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用して、インビトロ又はインビボで細胞にアンチセンス核酸を提供することができる。例えば、導入遺伝子が、RNAi分子である場合、標的細胞中のアンチセンス核酸又はRNAiの発現は、細胞による特定のタンパク質の発現を減少させる。したがって、RNAi分子又はアンチセンス核酸である導入遺伝子を投与して、それを必要とする対象における特定のタンパク質の発現を減少させることができる。アンチセンス核酸をインビトロで細胞に投与して、細胞生理学を調節する、例えば、細胞又は組織培養系を最適化することもできる。
【0259】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用して、インビトロ又はインビボで細胞にDNAベースの治療薬を提供することができる。DNAベースの治療剤の例としては、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルスDNA(例えば、レンチウイルス又はAAVゲノム)又は非ウイルス合成DNAベクター、閉端直鎖状二本鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、doggybone(商標)DNAベクター、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)-ベクター、非ウイルスミニストリングDNAベクター(直鎖状の共有結合的に閉じたDNAベクター)、又はダンベル型DNA最小ベクター(「ダンベルDNA」)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNAベクター(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用して、インビトロ又はインビボで細胞にミニサークルを提供することができる。例えば、導入遺伝子が、ミニサークルDNAである場合、標的細胞中のミニサークルDNAの発現は、細胞による特定のタンパク質の発現を減少させる。したがって、ミニサークルDNAである導入遺伝子を投与して、それを必要とする対象における特定のタンパク質の発現を減少させることができる。ミニサークルDNAをインビトロで細胞に投与して、細胞生理学を調節する、例えば、細胞又は組織培養系を最適化することもできる。
【0260】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、発現カセットを含むTNAベクターによってコードされる例示的な導入遺伝子としては、X、リソソーム酵素(例えば、テイ・サックス病に関連するヘキソサミニダーゼA、又はハンター症候群/MPS IIに関連するイズロネートスルファターゼ)、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、スーパーオキシドジスムターゼ、グロビン、レプチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、並びにサイトカイン(例えば、インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン12、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシン等)、ペプチド増殖因子及びホルモン(例えば、ソマトトロピン、インスリン、インスリン様増殖因子1及び2、血小板由来増殖因子(platelet derived growth factor、PDGF)、上皮増殖因子(epidermal growth factor、EGF)、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)、神経増殖因子(nerve growth factor、NGF)、神経栄養因子-3及び4、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor、BDNF)、グリア由来増殖因子(glial derived growth factor、GDNF)、形質転換増殖因子-a及び-b等)、受容体(例えば、腫瘍壊死因子受容体)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例示的な実施形態では、導入遺伝子は、1つ以上の所望の標的に特異的なモノクローナル抗体をコードする。いくつかの例示的な実施形態では、2つ以上の導入遺伝子が、ceDNAベクターによってコードされる。いくつかの例示的な実施形態では、導入遺伝子は、目的の2つの異なるポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、導入遺伝子は、本明細書で定義されるように、全長抗体又は抗体断片を含む、抗体をコードする。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に定義されるように、抗原結合ドメイン又は免疫グロブリン可変ドメイン配列である。他の例示的な導入遺伝子配列は、自殺遺伝子産物(チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、チトクロームP450、オキシシチジンキナーゼ、及び腫瘍壊死因子)、がん療法において使用される薬物に対する耐性を付与するタンパク質、及び腫瘍抑制因子遺伝子産物をコードする。
【0261】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、対象(例えば、ヒト)における遺伝性障害を治療する方法を提供し、この方法は、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかに記載される、有効量の脂質ナノ粒子又はその薬学的組成物を対象に投与することを含む。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害は、鎌状赤血球貧血症、メラノーマ、血友病A(凝固因子VIII(FVIII)欠損症)及び血友病B(凝固因子IX(FIX)欠損症)、嚢胞性線維症(CFTR)、家族性高コレステロール血症(LDL受容体欠損症)、肝芽細胞腫、ウィルソン病、フェニルケトン尿症(PKU)、先天性肝性ポルフィリン症、遺伝性肝代謝障害、レッシュナイハン症候群、鎌状赤血球貧血症、サラセミア、色素性乾皮症、ファンコニ貧血、網膜色素変性症、毛細血管拡張性運動失調症、ブルーム症候群、網膜芽細胞腫、ムコ多糖蓄積症(例えば、ハーラー症候群(MPS I型)、シャイエ症候群(MPS I S型)、ハーラー・シャイエ症候群(MPS I H-S型)、ハンター症候群(MPS II型)、サンフィリッポA、B、C、及びD型(MPS III A、B、C、及びD型)、モルキオA及びB型(MPS IVA及びMPS IVB)、マロトー・ラミー症候群(MPS VI型)、スライ症候群(MPS VII型)、ヒアルロニダーゼ欠損症(MPS IX型))、ニーマン・ピック病A/B、C1及びC2型、ファブリー病、シンドラー病、GM2-ガングリオシドーシスII型(サンドホフ病)、テイ・サックス病、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ムコリピドーシスI、II/III及びIV型、シアリドーシスI及びII型、グリコーゲン蓄積症I及びII型(ポンペ病)、ゴーシェ病I、II及びIII型、シスチン症、バッテン病、アスパルチルグルコサミン尿症、サラ病、ダノン病(LAMP-2欠損症)、リソソーム酸性リパーゼ(Lysosomal Acid Lipase、LAL)欠損症、神経セロイドリポフスチン症(CLN1-8、INCL、及びLINCL)、スフィンゴリピドーシス、ガラクトシアリドーシス、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、フリードライヒ運動失調症、デュシェンヌ筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy、DMD)、ベッカー筋ジストロフィー(Becker muscular dystrophy、BMD)、ジストロフィー表皮水疱症(dystrophic epidermolysis bullosa、DEB)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ1欠損症、乳児期の全身性動脈石灰化(generalized arterial calcification of infancy、GACI)、レーバー先天性黒内障、シュタルガルト黄斑ジストロフィー(ABCA4)、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症、アッシャー症候群、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration、AMD)、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)I型(ATP8B1欠損症)、II型(ABCB11)、III型(ABCB4)、又はIV型(TJP2)、並びにカテプシンA欠損症からなる群から選択される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害は血友病Aである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害は血友病Bであり、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害はフェニルケトン尿症(PKU)である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害はウィルソン病である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害は、ゴーシェ病I型、II型及びIII型である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害はシュタルガルト黄斑ジストロフィーである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害はLCA10である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害はアッシャー症候群である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、遺伝性障害は滲出型AMDである。
【0262】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本開示は、対象(例えば、ヒト)における遺伝性障害を治療するための医薬品の製造のための、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかに記載の脂質ナノ粒子又はその医薬組成物の使用に関する。例示的な遺伝性障害は、上記のとおりである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、医薬品によって治療される遺伝性障害は、シュタルガルト黄斑ジストロフィーである。本明細書における態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、医薬品によって治療される遺伝性障害は、LCA10である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、医薬品によって治療される遺伝性障害は、アッシャー症候群である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、医薬品によって治療される遺伝性障害は、滲出型AMDである。
【0263】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、本開示は、対象(例えば、ヒト)における遺伝性障害の治療で使用するための、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかに記載の脂質ナノ粒子又はその医薬組成物に関する。例示的な遺伝性障害は、上記のとおりである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、上記使用によって治療される遺伝性障害は、シュタルガルト黄斑ジストロフィーである。本明細書における態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、上記使用によって治療される遺伝性障害は、LCA10である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、上記の使用によって治療される遺伝性障害は、アッシャー症候群である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、上記の使用によって治療される遺伝性障害は、滲出型AMDである。
【0264】
投与
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、本明細書に記載のceDNAベクター脂質粒子)は、インビボでの細胞の形質導入のために生物に投与することができる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子)は、エクスビボでの細胞の形質導入のために生物に投与することができる。
【0265】
一般に、投与は、分子を血液又は組織細胞と最終的に接触させるために通常使用される経路のうちのいずれかによるものである。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者によって利用可能かつ周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路が使用され得るが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりもより即時的であり、より効果的な反応を提供し得る。TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子)の例示的な投与形態としては、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾルを介した)、頬側(例えば、舌下)、膣、髄腔内、眼内、経皮、内皮内、子宮内(又は卵内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内(骨格、横隔膜、及び/又は心筋への投与を含む)、胸膜内、脳内、及び動脈内)、局所(例えば、気道表面を含む皮膚及び粘膜表面への、並びに経皮投与)、リンパ内等、並びに直接組織又は器官注射(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜、筋肉、若しくは脳への)が挙げられる。
【0266】
TNA LNP様ceDNAベクター(例えば、ceDNA LNP)の投与は、脳、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、及び眼からなる群から選択される部位を含むが、これらに限定されない、対象の任意の部位に対して行われ得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNA LNPの投与はまた、腫瘍に対するものであり得る(例えば、腫瘍若しくはリンパ節内又はその付近の)。任意の所与の症例における最も好適な経路は、治療、改善、及び/又は予防される病態の性質及び重症度、並びに使用されている特定のceDNA LNPの性質に依存するであろう。追加的に、ceDNAは、単一のベクター、又は複数のceDNAベクター(例えば、ceDNAカクテル)中に2つ以上の導入遺伝子を投与することを可能にする。
【0267】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNA LNPの骨格筋への投与としては、肢(例えば、上腕、下腕、上肢、及び/又は下肢)、腰、首、頭(例えば、舌)、咽頭、腹部、骨盤/会陰、及び/又は指の骨格筋への投与が挙げられるが、これらに限定されない。ceDNAベクター(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内、四肢灌流(任意選択で、脚及び/若しくは腕の単離された四肢灌流、例えば、Arruda et al.,(2005)Blood 105:3458-3464を参照)並びに/又は直接筋肉内注入によって骨格筋に送達され得る。特定の実施形態では、ceDNA LNPは、対象(例えば、DMD等の筋ジストロフィーを有する対象)に、四肢灌流、任意選択で単離された四肢灌流(例えば、静脈内又は動脈内投与による)によって投与される。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ceDNA LNPは、「流体力学的」技術を用いることなく投与することができる。
【0268】
TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)の心筋への投与としては、左心房、右心房、左心室、右心室、及び/又は中隔への投与が挙げられる。TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、静脈内投与、大動脈内投与等の動脈内投与、直接心臓注射(例えば、左心房、右心房、左心室、右心室への)、及び/又は冠動脈灌流によって心筋に送達され得る。横隔膜筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹腔内投与を含む任意の好適な方法によって行われ得る。平滑筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹腔内投与を含む任意の好適な方法によって行われ得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、投与は、平滑筋内、その付近、及び/又はその上に存在する内皮細胞に対して行われ得る。
【0269】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、骨格筋、横隔膜筋及び/又は心筋に投与される(例えば、筋ジストロフィー又は心臓病(例えば、PAD又はうっ血性心不全)を治療、改善、及び/又は予防するために。
【0270】
TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、CNS(例えば、脳又は眼)に投与することができる。TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、脊髄、脳幹(延髄、脳橋)、中脳(視床下部、視床、視床上部、脳下垂体、黒質、松果体)、小脳、終脳(線条体、後頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び前頭葉、皮質、基底核、海馬、及び偏桃体(portaamygdala)を含む大脳)、辺縁系、新皮質、線条体、大脳、並びに下丘中に導入されてもよい。TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)はまた、網膜、角膜、及び/又は視神経等の眼の異なる領域に投与され得る。TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、(例えば、腰椎穿刺によって)脳脊髄液に送達され得る。TNA LNP(例えば、ceDNAベクター脂質粒子)は、更に、血液脳関門が撹乱された状況(例えば、脳腫瘍又は脳梗塞)において、CNSに血管内投与され得る。
【0271】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、当該技術分野において既知の任意の経路によってCNSの所望の領域に投与され得、髄腔内、眼内、脳内、脳室内、静脈内(例えば、マンニトール等の糖の存在下)、鼻腔内、耳内、眼内(例えば、硝子体内、網膜下、前房)、及び眼周囲(例えば、テノン下領域)送達、並びに運動ニューロンへの逆行性送達を伴う筋肉内送達を含むが、これらに限定されない。
【0272】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、CNS中の所望の領域又は区画への直接注射(例えば、定位的注入)によって、液体製剤中で投与される。他の実施形態によれば、TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、所望の領域への局所適用によって、又はエアロゾル製剤の鼻腔内投与によって提供され得る。眼への投与は、液滴の局所適用によって行われてもよい。更なる代替例として、ceDNAベクターは、固体の徐放性製剤として投与され得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,201,898号を参照されたい)。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)を、逆行性輸送に使用して、運動ニューロンが関与する疾患及び障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy、SMA)等)を治療、改善、及び/又は予防することができる。例えば、TNA LNP(例えば、ceDNA LNP)は、筋組織に送達され、そこからニューロン中に移動し得る。
【0273】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、適切なレベルの発現が達成されるまで、治療用製品の反復投与を行うことができる。したがって、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、治療用核酸を複数回投与及び再投与することができる。例えば、治療用核酸は、0日目に投与することができる。0日目の初回治療に続いて、治療用核酸を用いた初回治療の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、又は約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、又は約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、約10年、約11年、約12年、約13年、約14年、約15年、約16年、約17年、約18年、約19年、約20年、約21年、約22年、約23年、約24年、約25年、約26年、約27年、約28年、約29年、約30年、約31年、約32年、約33年、約34年、約35年、約36年、約37年、約38年、約39年、約40年、約41年、約42年、約43年、約44年、約45年、約46年、約47年、約48年、約49年又は約50年後に、2回目の投薬(再投与)を実施することができる。
【0274】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、1つ以上の追加の化合物も含めることができる。それらの化合物は、別々に投与され得るか、又は追加の化合物は、本発明の脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中に含まれ得る。言い換えれば、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、TNAに加えて他の化合物、又は少なくとも第1のものとは異なる第2のTNAを含有し得る。無制限に、他の追加の化合物は、小さい又は大きい有機又は無機分子、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類、多糖類、ペプチド、タンパク質、ペプチド類似体及びそれらの誘導体、ペプチド模倣体、核酸、核酸類似体及び誘導体、生体物質から作製される抽出物、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0275】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、1つ以上の追加の化合物は、治療剤であり得る。治療剤は、治療目的に好適な任意のクラスから選択され得る。したがって、治療剤は、治療目的に好適な任意のクラスから選択され得る。治療剤は、所望の治療目的及び生物作用に従って選択され得る。例えば、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、LNP内のTNAが、がんを治療するために有用である場合、追加の化合物は、抗がん剤(例えば、化学療法剤、標的がん療法(小分子、抗体、又は抗体-薬物コンジュゲートを含むが、これらに限定されない)であり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNAを含有するLNPが、感染症を治療するために有用である場合、追加の化合物は、抗微生物剤(例えば、抗生物質又は抗ウイルス化合物)であり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、TNAを含有するLNPが、免疫疾患又は障害を治療するために有用である場合、追加の化合物は、免疫応答を調節する化合物(例えば、免疫抑制剤、免疫刺激性化合物、又は1つ以上の特定の免疫経路を調節する化合物)であり得る。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、異なるタンパク質又は異なる化合物(治療薬等)をコードするTNA等の、異なる化合物を含有する異なる脂質粒子の異なるカクテルを、本発明の組成物及び方法で使用することができる。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、追加の化合物は、免疫調節剤である。例えば、追加の化合物は、免疫抑制剤である。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、追加の化合物は、免疫刺激性化合物である。
【実施例】
【0276】
以下の実施例は、限定ではない例証によって提供される。本開示で企図される脂質は、以下に記載される一般的な合成方法を使用して設計及び合成することができることが当業者によって理解されるであろう。
【0277】
実施例1:一般的な合成
式Iの脂質を設計し、以下のスキーム1に示される同様の合成方法を使用して合成した。スキーム1で示される化合物中の全ての変数、すなわち、R1、R2、R3、R4、R5、R6a、R6b、X、及びnは、式Iで定義されるとおりである。Rxは、定義されるとおりR4であるが、脂肪族鎖において1個少ない炭素原子を有する。
【0278】
【0279】
本開示のモノエステル脂質、すなわち、式I(式中Xが、-C(=O))-である)を設計し、以下のスキーム2に示される同様の合成方法を使用して合成した。スキーム1で示される化合物中の全ての変数、すなわち、R1、R2、R3、R4、R5、R6a、R6b、X、及びnは、式Iで定義されるとおりである。Rxは、定義されるとおりR4であるが、脂肪族鎖において1個少ない炭素原子を有する。
【0280】
【0281】
スキーム1及びスキーム2
スキーム1及びスキーム2を参照すると、ステップ1において、ジクロロメタン(dichloromethane、DCM)中の酸2の撹拌溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(dimethylaminopyridine、DMAP)、続いて1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide、EDCI)を添加した。得られた混合物を、窒素(N2)雰囲気下、室温で15分間撹拌した。次いで、化合物1を滴下し、混合物を一晩撹拌した。翌日、反応物をDCMで希釈し、水及びブラインで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム(Na2SO4)上で乾燥させ、蒸発乾固した。粗生成物を、溶離液としてDCM中の0~10%メタノールを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製した。所望の化合物を含有する画分をプールし、蒸発させて、化合物3(0.78g、54%)を得た。
【0282】
ステップ2において、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)中の3の溶液に、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)を添加した。反応混合物を50℃で一晩加熱した。翌日、反応物を0℃に冷却し、水を滴下してクエンチした。続いて、反応物を、セライトを通して濾過して、粗生成物4を得た。生成物を更に精製することなく次のステップで使用した。
【0283】
ステップ3において、化合物5又は5’(国際公開第2017/049245号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている手順に従って合成された)をジメチルホルムアミド/メタノール混合物DMF:MeOH(1:1)に溶解し、4を添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。生成物を酢酸エチル(ethyl acetate、EtOAc)で抽出し、有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(NaHCO3(水溶液))及びブラインで洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を真空下で蒸発させ、溶離液としてDCM中の0~10%メタノールを使用するカラムクロマトグラフィによって精製して、式Iのカチオン性脂質を得た。
【0284】
化合物5又は5’は、以下のスキーム3に示される手順に従って代替的に合成され得る。Ryは、定義されるとおりR5であるが、脂肪族鎖において1個少ない炭素原子を有する。
【0285】
【0286】
スキーム3を参照して、9-ヘプタデカノン6テトラヒドロフラン(無水)の氷冷溶液に、ニートの無水リン酸溶液7を滴下した。反応物を30分間撹拌し、続いてNaHを少しずつ添加した。反応混合物を還流し、0℃に冷却し、水でクエンチし、エーテルで抽出した。有機層を水、ブラインで数回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィによって精製し、7.1g(収率93%)の純粋物8を提供した。
【0287】
化合物8をEtOAc/MeOH混合物に溶解し、湿った10%Pd/C触媒を使用してH2での還元に供した。きれいに変換して化合物9を提供した。
【0288】
化合物9(THFを冷却し、LiAlH4を滴下した。反応混合物を一晩撹拌したままにし、室温に加温し、次いでTHF/H2O混合物(体積で1:1)を使用してクエンチした。反応混合物をEtOAcで抽出し、セライトを通して濾過した。有機相を水、ブラインで2回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。カラムクロマトグラフィ(CH2Cl2-EtOAc)によって精製して、化合物10を提供した。
【0289】
化合物10及びアルカノン酸11をDCM中に溶解し、次いでDMAP及びEDCIをこの溶液に室温で添加した。一晩撹拌した後、反応物を水でクエンチし、DCMで希釈し、NaHCO3(飽和水溶液)及びブラインで洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮した。カラムクロマトグラフィ精製(ヘキサン-EtOAc)によって、3.8gの化合物5又は5’を提供した。
【0290】
実施例2:脂質6の合成
脂質6を合成するための手順は、スキーム4を参照して以下に記載され、また以下に提供される。
【0291】
【0292】
ステップ1:N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ノナンアミド(3a)の合成
60mLのDCM中のノナン酸(2a)(1.0g、6.3mmol)の撹拌溶液に、DMAP(0.91g、7.5mmol)、続いてEDCI(1.44g、7.5mmol)を添加した。得られた混合物を、N2雰囲気下、室温で15分間撹拌した。次いで、N1,N1-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(1a)(0.66g、7.5mmol)を滴下し、混合物を一晩撹拌した。翌日、反応物をDCMで希釈し、H2O及びブラインで洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、蒸発乾固した。粗生成物を、溶離液としてDCM中の0~10%メタノールを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製した。所望の化合物を含有する画分をプールし、蒸発させて、3a(0.78g、54%)を得た。
【0293】
ステップ2:N1,N1-ジメチル-N2-ノニルエタン-1,2-ジアミン(4a)の合成
THF中3a(0.78g、3.4mmol)の溶液に、LiAlH4を添加した。反応混合物を50℃で一晩加熱した。翌日、反応物を0℃に冷却し、水を滴下してクエンチした。続いて、反応物を、セライトを通して濾過して、粗生成物4a(0.6g、82%)を得た。生成物を更に精製することなく次のステップで使用した。
【0294】
ステップ3:ヘプタデカン-9-イル8-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(ノニル)アミノ)オクタノエート又は脂質6の合成
化合物5a(国際公開第2017/049245号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている手順に従って合成された)(0.6g、1.3mmol)を、20mLのDMF:MeOH(1:1)に溶解し、4a(0.35g、1.5mmol)を添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。生成物をEtOAc(200mL)で抽出し、有機層を飽和NaHCO3(水溶液)及びブラインで洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を真空下で蒸発させ、溶離液としてDCM中の0~10%メタノールを使用するカラムクロマトグラフィによって精製して、脂質6(0.062g、10%)を得た。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.85(quint,J=6.2Hz,1H),2.57-2.48(m,2H),2.43-2.32(m,6H),2.31-2.25(m,J=7.5Hz,2H),2.23(s,6H),1.66-1.34(m,8H),1.24(s,47H),0.86(t,J=6.6Hz,9H).
実施例3:脂質1の合成
脂質1を合成するための手順は、スキーム5を参照して以下に記載され、また以下に提供される。
【0295】
【0296】
スキーム5のステップ1及び2は、実施例2に記載のとおりである。
【0297】
ヘニコサン-11-イル8-ブロモオクタノエート(5b)の合成
250mLのジクロロメタン(DCM)中のヘニコサン-11-オール(10.0g、32.0mmol)及び8-ブロモオクタン酸(7.1g、44.8mmol)(両方とも市販されている)の撹拌溶液に、EDCI(6.1g、32.1mmol)、続いてDMAP(392mg、3.21mmol)を添加した。得られた混合物をN2雰囲気下、室温で一晩撹拌し続けた。翌日、反応物をDCMで希釈し、NaHCO3(250mL)水溶液及びブラインで洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、蒸発乾固した。粗生成物を、溶離液としてヘキサン中の0~10%EtOAcを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製した。所望の化合物を含有する画分をプールし、蒸発させて、5b(6.3g、38%)を得た。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.84-4.88(m,1H),3.39(t,J=6.0Hz,2H),2.28(t,J=6.0Hz,2H),1.80-1.89(m,2H),1.25-1.62(m,43H),0.86(t,J=6.0Hz,6H).
ステップ3:ヘニコサン-11-イル8-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(ノニル)アミノ)オクタノエート又は脂質1の合成
化合物5b(4.34g、8.41mmol)を5.0mLのDMF:MeOH(1:1)に溶解し、4a(2.0g、9.35mmol)を添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、溶離液としてDCM中の0~10%メタノールを使用するカラムクロマトグラフィによって残留物を精製して、脂質1(330mg、11%)を得た。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.84-4.93 m,1H),3.51-3.55(m,4H),2.98-3.03(m,4H),2.83(s,6H),2.26(t,J=6.0Hz,2H),1.48-1.77(m,8H),1.23-1.44(m,57H),0.86(t,J=6.0Hz,9H).
実施例4:脂質3の合成
脂質3を合成するための手順は、スキーム6を参照して以下に記載され、また以下に提供される。
【0298】
【0299】
スキーム6のステップ1及び2は、実施例3に記載のとおりである。
【0300】
ペンタコサン-13-イル8-ブロモオクタノエート(5c)の合成
ヘニコサン-11-イル8-ブロモオクタノエート(5b)の合成について上記と同様の手順を使用して、出発材料ヘニコサン-11-オールを市販のペンタコサン-13-オールで置換することによって化合物5cを合成した。
【0301】
ステップ3:ペンタコサン-13-イル8-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(ノニル)アミノ)オクタノエート又は脂質3の合成
脂質1の合成について上記と同様の手順を使用して、出発材料5bを化合物5cで置換することによって脂質3を調製した。
【0302】
実施例5:脂質7の合成
脂質7を合成するための手順は、スキーム7を参照して以下に記載され、また以下に提供される。
【0303】
【0304】
ステップ1:N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ヘプタンアミド(3b)の合成
20mLのDCM中のエナント酸(2b)(7.0g、80mmol)の撹拌溶液に、EDCI(20g、104mmol)を添加した。得られた混合物を、N2雰囲気下、室温で15分間撹拌した。次いで、10mLのDCMに溶解した1a(7.1g、80mmol)を添加し、続いてDMAP(0.3g、2.5mmol)を添加し、一晩撹拌し続けた。翌日、反応物をDCMで希釈し、H2O及びブラインで洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、蒸発乾固した。粗生成物を、溶離液としてDCM中の0~10%メタノールを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製した。所望の化合物を含有する画分をプールし、蒸発させて、化合物3b(9.5g、59%)を得た。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 6.0(broad s,1H),3.3(dd,2H),2.4(dd,J=6,2H),2.2(s,6H),2.16(dd,J=6,2H),1.9-1.5(m,4H),1.3-1.2(m,7H),087(t,3H)。
【0305】
ステップ2:N1-ヘプチル-N2,N2-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(4b)の合成
THF(80mL)中の3b(3g、15mmol)の溶液に、0℃でTHF中のLiAlH4 2 M(15mL、30mmol)を添加した。反応混合物を一晩還流加熱した。翌日、反応物を0℃に冷却し、水(3mL)を滴下してクエンチした。続いて、反応物を、セライトを通して濾過して、粗生成物4bを得た。粗生成物を、溶離液としてDCM中の0~10%メタノール/NH3(0.1%)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製した。所望の化合物を含有する画分をプールし、蒸発させて、4b(1.3g、46%)を得た。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 2.67(dd,J=6,2H),2.59(dd,J=7,2H),2.40(dd,J=6,2H),2.20(s,6H),1.50-1.40(m,3H),1.30-1.15(m,9H),0.87(t,3H).MS実測値187.2[M+H]+、計算値186.3([C11H26N2]について)。
【0306】
ステップ3:ヘプタデカン-9-イル8-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(へプチル)アミノ)オクタノエート又は脂質7の合成
化合物5a(6g、13mmol)を20mLのDMF:MeOH(1:1)に溶解し、4b(2.65g、14mmol)を添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、溶離液としてDCM中の0~10%メタノールを使用するカラムクロマトグラフィによって精製して、脂質7(0.5g、6%)を得た。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 4.85(quint,J=6.2Hz,1H),3.10-2.90(m,2H),2.88-2.80(m,6H),2.43(s,6H),2.27(dd,2H),1.67-1.34(m,8H),1.30-1.2(m,45H),0.86(t,9H).MS実測値567.5[M+H]+、計算値566.6([C36H74N2O2]について)。
【0307】
実施例6:脂質10の合成
脂質10を合成するための手順は、スキーム8を参照して以下に記載され、また以下に提供される。
【0308】
【0309】
ステップ1:N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)ウンデカンアミド(3c)の合成
250mLのDCM中のウンデカン酸(2c)(5.27g、28.3mmol)の撹拌溶液に、DMAP(4.49g、36.8mmol)、続いてEDCI(6.3g、36.0mmol)を添加した。得られた混合物を、N2雰囲気下、室温で15分間撹拌した。次いで、1a(3.03g、34.4mmol)を滴下し、一晩撹拌し続けた。翌日、反応物をDCMで希釈し、H2O及びブラインで洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、蒸発乾固した。粗生成物を、溶離液としてDCM中の0~10%メタノールを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製した。所望の化合物を含有する画分をプールし、蒸発させて、3(6.94g、収率95%)を得た。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ ppm:3.25-3.35(m,2H),2.38-2.44(m,2H),2.22(s,6H),2.12-2.22(m,2H),1.55-1.62(m,2H),1.18-1.32(br s,14H),0.80-0.90(m,3H)。
【0310】
ステップ2:N1,N1-ジメチル-N2-ウンデシルエタン-1,2-ジアミン(4c)の合成
90mLのTHF中の3c(5.97g、23.3mmol)の氷冷溶液に、THF中の23.3mLの2 N LiAlH4(46.6mmol)を添加した。反応混合物を80℃で一晩撹拌した。反応物を0℃に冷却し、水を滴下してクエンチした。続いて、反応物を、セライトを通して濾過し、濾液を濃縮し、クロマトグラフィ(DMC-MeOH-NH3)によって精製して、4.2gの化合物4c(4.2g、収率75%)を得た。1H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ:2.66(t,J=6.3Hz,2H),2.58(t,J=7.14Hz,2H),2.40(t,J=6.3Hz,2H),2.21(s,6H),1.42-1.54(m,2H),1.41-1.54(m,16H),1.24(0.86(t,J=6.3Hz,3H)。
【0311】
ステップ3:脂質10のヘニコサン-11-イル8-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(ノニル)アミノ)オクタノエートの合成
化合物5a(0.91g、2.0mmol)を50mLのEtOHに溶解し、4c(1.6g、7.0mmol)を添加した。反応物を65~75℃で一晩撹拌した。反応混合物を濃縮し、溶離液としてDCM-MeOH-NH3を使用するカラムクロマトグラフィによって精製して、脂質10(142mg、12%)を得た。1H NMR(300MHz,dmso-d6)δ:4.70-4.82(m,1H),2.90-3.0(m,2H),2.78-2.88(m,2H),2.52-2.62(m,10H),2.20-2.30(m,2H),1.55-1.35(m,10H),1.15-1.35(m,46H),0.75-0.90(9H).MS実測値623.6[M+H]+、計算値622.6(精密質量)([C40H82N2O2]について)。
【0312】
実施例7:脂質11の合成
脂質11を合成するための手順は、スキーム9を参照して以下に記載され、また以下に提供される。
【0313】
【0314】
スキーム9のステップ1及び2は、実施例3に記載のとおりである。
【0315】
ステップ3:3-オクチルウンデシル6-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(ノニル)アミノ)ヘキサノエート又はLipid11の合成
化合物5d(1.36g、2.95mmol-以下に記載の合成)を13mLのEtOHに溶解し、4a(1.21g、5.89mmol)を添加した。反応物を65~75℃で一晩撹拌した。反応混合物を濃縮し、溶離液としてDCM-MeOH-NH3を使用するカラムクロマトグラフィによって2回精製して、脂質11(142mg、12%)を得た。1H NMR(300MHz,dmso-d6)δ:4.02(t,J=6.6Hz,2H),2.90-3.00(m,2H),2.75-2.85(m,2H),2.61(s,6H),2.50-2.60(m,4H),2.27(t,J=7.4Hz,2H),1.15-1.60(m,53H),0.80-0.90(m,9H).MS実測値595.2[M+H]+、計算値594.61(精密質量)([C38H78N2O2]について)。
【0316】
エチル3-オクチルウンデク-2-エノエート(8a)の合成
200mLのTHF(無水)中の9-ヘプタデカノン(6a、5.98g、23.5mmol)の氷冷溶液に、ニートのエチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテート(7a)(40.0g、178mmol)を滴下した。反応物を30分間撹拌し、続いてNaH(6.25g、157mmol、油中60%)を少しずつ添加した。反応混合物を18時間還流し、0℃に冷却し、水300mLでクエンチし、エーテルで抽出した。有機層を水、ブラインで数回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィによって精製し、7.1g(収率93%)の純粋物8aを提供した。1H NMR(300MHz,d-クロロホルム)δ ppm:5.60(s,1H),4.14(q,J=7.1Hz,2H),2.60-2.54(m,2H),2.12-2.08(m,2H),1.50-1.20(m,27H),0.95-0.82(m,6H)。
【0317】
エチル3-オクチルウンデカノエート(9a)の合成
化合物9a(7.05g、21.7mmol)を220mLのEtOAc及び100mLのMeOHに溶解し、1.2gの湿った10%Pd/C触媒を使用してH2(1気圧)での還元に供した。きれいな変換によって、7.0g(収率99%)の化合物7を提供した。1H NMR(300MHz,d-クロロホルム)δ(ppm),J(Hz):4.12(q,J=7.1Hz,2H),2.20(d,J=6.9,2H),1.90-1.80(m,1H),1.35-1.20(m,33H),1.90-1.81(m,6H)。
【0318】
3-オクチルウンデカン-1-オール(10a)の合成
化合物9a(7.0g、21.4mmo)を16mLのTHFに溶解し、0℃に冷却し、LiAlH4(16mL、THF中2M、32.2mmol)を滴下した。反応混合物を一晩撹拌したままにし、室温に加温し、次いで30mLのTHF/H2O混合物(体積で1:1)の添加によって0℃でクエンチした。反応混合物をEtOAcで抽出し、セライトを通して濾過した。有機相を水、ブラインで2回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。カラムクロマトグラフィ(CH2Cl2-EtOAc)によって精製して、6.0gの化合物10aを収率97%で提供した。1H NMR(300MHz,d-クロロホルム)δ ppm:3.66(t,J=6.9Hz,2H),1.51(m,2H),1.41(br s,1H),1.10-1.29(m,29H),1.81-1.90(m,6H).
【0319】
3-オクチルウンデシル6-ブロモヘキサノエート(5d)の合成
化合物10a(3.5g、12.3mmol)及び11a(2.9g、14.9mmol-市販)を25mLのジクロロメタンに溶解し、次いでDMAP(190mg、1.55mmol)及びEDCI(2.95g、15.4mmol)を室温でこの溶液に添加した。一晩撹拌した後、反応物を水でクエンチし、ジクロロメタンで希釈し、NaHCO3(飽和水溶液)及びブラインで洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濃縮した。カラムクロマトグラフィ精製(ヘキサン-EtOAc)によって、3.8gの化合物5dを収率67%で提供した。1H NMR(300MHz,d-クロロホルム)δ ppm:4.08(t,J=7.14Hz,2H),3.40(t,J=6.6Hz,2H),2.30(t,J=7.14Hz,2H),1.92-1.80(m,2H),1.70-1.20(m,36H),1.92-1.80(m,6H)
【0320】
実施例8:四級アミン又は四級アンモニウムカチオンを含むカチオン性脂質の合成
上記の脂質1~11及び式Iの脂質の各々は、アセトニトリル(CH3CN)及びクロロホルム(CHCl3)中のクロロメタン(CH3Cl)で処理することによって、四級アミン又は四級アンモニウムカチオンを含むその対応する脂質に変換することができる。
【0321】
実施例9:脂質ナノ粒子の調製
脂質ナノ粒子(LNP)を、約10:1~30:1の全脂質対ceDNAの重量比で調製した。手短に言えば、本開示のカチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC))、膜融合性をもたらすための構成成分(ステロール等、例えば、コレステロール)、及び複合脂質分子(PEG化脂質コンジュゲート等)、例えば、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(2000(「PEG-DMG」)の平均PEG分子量を有する)を、例えば、47.5:10.0:40.7:1.8、47.5:10.0:39.5:3.0、又は47.5:10.0:40.2:2.3のモル比でアルコール(例えば、エタノール)に可溶化した。ceDNAを緩衝溶液で所望の濃度に希釈した。例えば、ceDNAを、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化マグネシウム、クエン酸、リンゴ酸、又はリンゴ酸及び塩化ナトリウムを含む緩衝溶液中の0.1mg/ml~0.25mg/mlの濃度に希釈した。一例では、ceDNAを10~50mMクエン酸緩衝液(pH4)で0.2mg/mLに希釈した。アルコール脂質溶液をceDNA水溶液と、例えばシリンジポンプ又は衝突ジェットミキサーを使用して、約1:5~1:3(体積/体積)の比で、10ml/分を超える全流量で混合した。一例では、アルコール脂質溶液をceDNA水溶液と約1:3(体積/体積)の比で12ml/分の流量で混合した。アルコールを除去し、緩衝液を透析によってPBSに置き換えた。代替的に、緩衝液を、遠心分離管を使用してPBSと置き換えた。アルコール除去及び同時緩衝液交換は、例えば、透析又はタンジェンシャルフロー濾過によって達成された。得られた脂質ナノ粒子を、0.2μm孔無菌フィルターで濾過する。
【0322】
ある研究では、参照脂質A、DSPC、コレステロール、及びDMG-PEG2000(モル比47.5:10.0:40.7:1.8)を含む脂質溶液を対照として使用して、例示的なceDNAを含む脂質ナノ粒子を調製した。いくつかの研究では、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)のような組織特異的標的リガンドが、参照脂質A、参照脂質B、MC3、又は本開示のカチオン性脂質を含む製剤に含まれていた。MC3は、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエートであり、DLin-MC3-DMAとも呼ばれ、以下の構造を有する。
【0323】
【0324】
トリ-アンテナリーGalNAc(GalNAc3)又はテトラ-アンテナリーGalNAc(GalNAc4)等のGalNAcリガンドは、当該技術分野で既知のように合成することができ(国際公開第2017/084987号及び国際公開第2013/166121号を参照されたい)及び当該技術分野において周知のように脂質又はPEGに化学的にコンジュゲートすることができる(Resen et al.,J.Biol.Chem.(2001)「Determination of the Upper Size Limit for Uptake and Processing of Ligands by the Asialoglycoprotein Receptor on Hepatocytes in Vitro and in Vivo」276:375577-37584を参照されたい)。緩衝溶液中のceDNAの水溶液を調製した。脂質溶液及びceDNA溶液を、1:3(v/v)の脂質対ceDNAの比、12mL/分の全流量で、NanoAssembler上でインハウス手順を使用して混合した。
【0325】
【0326】
【表1B】
No.=番号、IV=静脈内、ROA=投与経路、LNP=脂質ナノ粒子、IVIS=インビボ撮像セッション、BW=体重
【0327】
【表2A】
DSPC=ジステアロイルホスファチジルコリン、Chol=コレステロール、DMG-PEG2000=1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG
2000-DMG)、GalNAc=N-アセチルガラクトサミン、GalNAc4=テトラアンテナリーGalNAc
【0328】
【表2B】
DSPC=ジステアロイルホスファチジルコリン、Chol=コレステロール、DMG-PEG2000=1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG
2000-DMG)、GalNAc=N-アセチルガラクトサミン、GalNAc4=テトラアンテナリーGalNAc
【0329】
参照脂質A、参照脂質B、及びMC3を含むLNPを陽性対照として使用した。
【0330】
実施例10:脂質ナノ粒子の前臨床インビボ研究
マウスにおけるLNPを配合したceDNA-ルシフェラーゼのインビボ発現及び忍容性を評価するために、前臨床研究を実行した。これらのLNPは、陽性対照として参照脂質A、参照脂質B、若しくはMC3、又は本開示のカチオン性脂質のいずれかを含んでいた。これらの前臨床試験に含まれる試験デザイン及び手順は、以下のとおりである。
【0331】
材料及び方法
種(数、性別、年齢):CD-1マウス雄、研究1では到着時に約4週齢、研究2では約6~8週齢。
【0332】
ケージサイドでの観察:ケージサイドでの観察を毎日行った。
【0333】
臨床観察:研究1及び研究2の両方において、0、1、2、3、4、及び7日目(安楽死前)に臨床観察を行った。例外毎に追加の観察を行った。全ての動物の体重を、適用可能な場合、上記と同じ日に記録した。必要に応じて、追加の体重を記録した。
【0334】
用量投与:試験品(LNP:ceDNA-Luc)を、外側尾静脈への静脈内投与によって、全ての群に0日目に5mL/kgの体積で投与した。用量レベルは、研究1では0.25mg/kg、研究2では0.5mg/kgであった。
【0335】
インライフ撮像:4日目に、全ての動物に2.5mL/kgの腹腔内(intraperitoneal、IP)注射を介して150mg/kg(60mg/mL)のルシフェリンを投与した。各ルシフェリン投与後≦15分。以下に説明するインビボ撮像プロトコルに従って全ての動物にIVIS撮像セッションを行った。
【0336】
インビボ撮像プロトコル
●ルシフェリンストック粉末を表示上-20℃で保存した。
●製剤化されたルシフェリンを1mLのアリコート、2~8℃で保存して、光から保護した。
●製剤化されたルシフェリンは、2~8℃で最大3週間安定であり、光から保護され、室温(room temperature、RT)で約12時間安定であった。
●ルシフェリンをPBSに十分な容量で60mg/mLの目標濃度に溶解し、必要に応じて5MのNaOH(約0.5μl/mgルシフェリン)及びHCl(約0.5μl/mgルシフェリン)でpH=7.4に調整した。
●少なくとも約50%の超過分を含め、プロトコルに従って適切な量を調製した。
【0337】
注射及び撮像
●動物の被毛を剃った(必要に応じて)。
●プロトコルに従って、腹腔内を介して60mg/mLのPBS中の150mg/kgのルシフェリンを注射した。
●撮像は、投与直後又は投与後最大15分行った。
●撮像セッション中に動物を麻酔するために、イソフルラン気化器を1~3%(通常は2.5%)に設定した。
●撮像セッションのためのイソフルラン麻酔:
○動物をイソフルランチャンバーに入れ、イソフルランが有効になるまで約2~3分待った。
○IVIS機器の側面の麻酔レベルが「オン」の位置にあることを確認した。
○動物をIVIS機器に入れた。
【0338】
最高感度の設定で所望の取得プロトコルを行った。
【0339】
結果及び考察
研究1
研究1を、LNP-ceDNA-ルシフェラーゼ組成物を0.25mg/kgの用量でマウスに投与した場合の、本開示の例示的な脂質、すなわち、脂質6のLNPとして製剤化される能力、並びにインビボ発現及び忍容性を評価する目的で実施した。
【0340】
原則として、0.15以下の多分散指数(polydispersity index、PDI)は、形成されたLNPのサイズの均一性が良好であることを示し、90%の封入効率(encapsulation efficiency、EE)は、満足のいく封入率であることを示す。各々脂質6を用いて製剤化されたが、様々なDMG-PEG2000量及び適宜調整されたコレステロール量を用いて製剤化されたLNP2、LNP3、及びLNP4は、0.1未満である優れたPDI値及び95%を超えるEE値を示した。
【0341】
図1に示すように、LNP2、LNP3、及びLNP4(すなわち、カチオン性脂質として脂質6及び核酸カーゴとしてceDNA-ルシフェラーゼを含むLNP)は、参照脂質A及びceDNA-ルシフェラーゼを用いて製剤化されたLNP1の発現と同等である良好なインビボルシフェラーゼ発現レベルを4日目に示した。
【0342】
研究2
研究2は、LNP-ceDNA-ルシフェラーゼ組成物を0.5mg/kgの用量でマウスに投与した場合の、本開示のいくつかの例示的な脂質、すなわち、脂質1、脂質7、及び脂質11のLNP(すなわち、それぞれLNP10、及びLNP8、及びLNP9)として製剤化される能力、並びにインビボ発現及び忍容性を評価する目的で実施した。本発明のこれらのLNP組成物の発現及び忍容性もまた、参照脂質A、参照脂質B、及びMC3(全て式(I)脂質とは異なる頭部基を有する)を用いて製剤化されたLNP組成物と比較した。全てのLNP組成物は、満足な封入効率及び多分散指数で製剤化された。
【0343】
図2Aに示すように、LNP8、LNP9、及びLNP10(すなわち、それぞれ脂質7、脂質11、及び脂質1を含むLNP)は、4日目に良好なインビボルシフェラーゼ発現レベルを示した。注目すべきことに、それぞれ脂質7及び脂質11を用いて製剤化されたLNP8及びLNP9のルシフェラーゼ発現レベルは、MC3を用いて製剤化されたLNP6のルシフェラーゼ発現レベルよりも高かった。更に、
図2Bは、研究1において適用された用量レベルの2倍である0.5mg/kgであっても、本開示のカチオン性脂質を用いて各々製剤化されたLNP8、LNP9、及びLNP10は全て、処置後4日目までに完全体重回復を達成したことを示し、それによって、これらのLNP組成物がマウスにおいて十分に忍容されたことを示す。
【0344】
参考文献及び均等物
本出願全体を通して引用される;参考文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む全ての特許及び他の刊行物は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用され得る、そのような刊行物に記載される方法論を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供されている。この点に関するいかなるものも、発明者が先行発明のおかげで、又はいかなる他の理由のためにもそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述又はこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関するいかなる承認も構成するものではない。
【0345】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示の特定の実施形態及び実施例が、例示の目的で本明細書で説明されているが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、方法のステップ又は機能は、所与の順序で提示されるが、代替的な実施形態は、異なる順序で機能を実施してもよく、又は機能は実質的に同時に実施されてもよい。本明細書で提供される開示の教示は、必要に応じて他の手順又は方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本開示の態様は、必要に応じて、上記の参照文献及び出願の組成物、機能、及び概念を用いて本開示の更なる実施形態を提供するように修正することができる。更に、生物学的機能の同等性の考慮により、種類又は量の生物学的又は化学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造にいくつかの変更を加えることができる。詳細な説明に照らして、これらの変更及び他の変更を本開示に加えることができる。そのような修正は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0346】
前述の実施形態のうちのいずれかの特定のエレメントは、他の実施形態のエレメントと組み合わせるか、又は置き換えることができる。更に、本開示のある特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態の文脈で説明されたが、他の実施形態もそのような利点を示し得、全ての実施形態が本開示の範囲内にあるために必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0347】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によって更に説明されており、決してこれらを更に限定するものと解釈されるべきではない。本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬等にいかなる様式でも限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図されない。
【配列表】
【国際調査報告】