(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20240614BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20240614BHJP
G01N 33/24 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
G01N3/00 D
G01N3/08
G01N33/24 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577316
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2023071366
(87)【国際公開番号】W WO2023138430
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210063522.0
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518411338
【氏名又は名称】山東科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【氏名又は名称】柳元 八大
(72)【発明者】
【氏名】田 成林
(72)【発明者】
【氏名】胡 千庭
(72)【発明者】
【氏名】孫 海濤
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB01
2G061AC06
2G061BA06
2G061CA06
2G061CB02
2G061CC01
2G061DA12
2G061EA03
2G061EA04
(57)【要約】
本発明は、深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法を開示し、具体的なステップは、石炭層のガス圧力を取得するステップと、孔の柱状形状に基づいて石炭層の厚さと頂板厚さとを取得するステップと、現場でコア抜きし、石炭岩石サンプルを加工して前処理し、室内力学試験により、頂板の弾性率、ガス含有石炭の弾性率及びガス含有石炭岩石複合体標準部材の弾性率をそれぞれ取得するステップと、応力-ひずみ曲線を用いて頂板の弾性エネルギーの寄与量をグラフ面積で導出し、頂板及びガス含有石炭の弾性率、厚さに基づいて頂板の弾性エネルギー寄与率の定量式を取得するステップとを含む。本発明は、石炭、岩石、ガスの動的災害における頂板の弾性エネルギーの役割を十分に考慮し、計算方法及び具体的な定量式を提供し、災害における頂板の弾性エネルギーの役割に対するより明確な理解を提供し、鉱山の石炭、岩石、ガスの動的災害の正確な予防及び制御に有益な参考を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス含有石炭層のガス圧力p、厚さh
C及び頂板の厚さh
Rをそれぞれ取得するステップ1と、
ガス含有石炭層及び頂板をそれぞれコア抜きして、円柱形又は矩形の標準試験体に加工し、力学試験により頂板の弾性率E
R及びガス圧力pの影響下での石炭層の弾性率E
Cを取得するステップ2と、
石炭岩石複合体標準試験体を製造して前処理するステップ3と、
製造された石炭岩石複合体標準試験体に対して、ガス圧力pで力学試験を行い、複合体標準試験体の弾性率E
Z、岩石の第1応力-ひずみ曲線及び複合体標準試験体の第2応力-ひずみ曲線をそれぞれ取得するステップ4であって、h
Rとh
C、E
RとE
C、E
ZとE
Rが関係式(I)を満たし、
【数1】
式(I)中、m>0かつn>0であり、λが補正係数であり、0<λ≦1であるステップ4と、
第1応力-ひずみ曲線、第2応力-ひずみ曲線を同一座標系にプロットして分析し、頂板の弾性エネルギー寄与率βを推定するステップ5であって、具体的な推定方法が、
複合体標準試験体の第2応力-ひずみ曲線において、複合体のピーク対応点を複合体の弾性エネルギー放出開始点とし、複合体の残留強度対応点を複合体の弾性エネルギー放出終了点とし、開始点を通って複合体の弾性率に平行な直線Iを作り、開始点を通って横軸に垂直な直線IIを作り、終了点を通って横軸に平行であるとともに第1応力-ひずみ曲線と交差する直線IIIを作り、直線I、直線II及び直線IIIで囲まれた面積を、複合体が放出する弾性エネルギーとすることにより、石炭岩石複合体が放出する弾性エネルギーを計算するステップ5.1と、
複合体のピーク対応点を通って横軸に平行であるとともに岩石の第1応力-ひずみ曲線と交差する直線を作り、交点を頂板の弾性エネルギー放出開始点とし、複合体の残留強度対応点を通って横軸に平行であるとともに岩石の第1応力-ひずみ曲線と交差する直線を作り、交点を頂板の弾性エネルギー放出終了点とし、頂板の弾性エネルギー放出開始点を通って頂板の弾性率に平行な直線IVを作り、頂板の弾性エネルギー放出開始点を通って横軸に垂直な直線Vを作り、直線III、直線IV及び直線Vで囲まれた面積を、頂板が放出する弾性エネルギーとすることにより、頂板が放出する弾性エネルギーを計算するステップ5.2と、
頂板が放出する弾性エネルギーと複合体が放出する弾性エネルギーとの比を、頂板の弾性エネルギー寄与率βとすることにより、頂板の弾性エネルギー寄与率を推定するステップ5.3とを含むステップ5と、
ステップ5の推定方法に基づいて式(I)を組み合わせて、頂板の弾性エネルギー寄与率βの定量式を取得するステップ6であって、
【数2】
式(II)が、推定により取得された、深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の式であるステップ6と、を含む、
ことを特徴とする深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法。
【請求項2】
力学試験によりガス圧力pの影響下での石炭層の弾性率E
Cを取得するステップ2において、具体的な試験方法としては、製造された標準石炭試験体の底面中心に穿孔し、孔を深さ3~5mm、直径1~2mmに設定し、逆T字形のガス注入キットを石炭試験体の底部に形成された孔内に嵌入し、孔を密封するとともに、石炭試験体の底部とガス注入キットとの接触面を密封し、その後、耐高圧密封チャンバー内に入れ、真空引きし、圧力がpのガスを充填して吸着平衡に達し、剛性試験機を用いて、石炭試験体が破壊されるまで設定された負荷速度で負荷をかけ、石炭試験体の応力及びひずみを同期記録し、応力をひずみで割って石炭層の弾性率を得る、
ことを特徴とする請求項1に記載の深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法。
【請求項3】
石炭岩石複合体標準試験体を製造して前処理するステップ3は、具体的に、石炭岩石の高さ比で純石炭試験体及び純岩石試験体を加工し、試験体の表面を研磨し、各石炭体試験体の底面中心に穿孔し、孔を深さ3~5mm、直径1~2mmに設定し、逆T字形のガス注入キットを石炭試験体の底部に形成された孔内に嵌入し、孔を密封するとともに、石炭試験体の底部とガス注入キットとの接触面を密封し、各岩石試験体の底面に超薄透明ポリエチレンフィルムを貼り付けるとともに、各岩石試験体の側面の中央部に3組のひずみゲージを等間隔で貼り付け、超薄透明ポリエチレンフィルムが貼り付けられた岩石の底面と石炭試験体の上端面とを強力接着剤で一体に接着し、製造された石炭岩石複合体標準試験体の側面及び上端面に705#シリカゲルを均一に塗布し、乾燥させて使用に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法。
【請求項4】
製造された石炭岩石複合体標準試験体に対して、ガス圧力pで力学試験を行うステップ4において、具体的な試験方法としては、前記ステップ3で処理された試験体を耐高圧密封キャビティ内に入れ、真空引きし、圧力がpのガスを充填して吸着平衡に達し、剛性試験機を用いて、試験体が破壊されるまで設定された負荷速度で負荷をかけ、複合体標準試験体全体の応力及びひずみ、並びに複合体標準試験体内の岩石のひずみを同期記録する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭鉱の安全の技術分野に属し、深層石炭、岩石、ガス複合動的災害の理論的計算方法に関し、特に深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国は、世界最大の石炭生産国及び消費国であり、石炭は、中国のエネルギー構造において重要な役割を果たす。対応する一連の予防・制御措置が講じられてきたにもかかわらず、石炭、岩石、ガスの鉱山動的災害は、依然として発生する場合があり、最終的な分析は、石炭、岩石、ガスの災害メカニズムに対する理解が十分に明確ではないということである。
【0003】
現在、鉱山の動的災害(石炭とガスの噴出、山はね)に対する研究は、通常、石炭自体及びガスの役割に焦点を当て、関連研究では、石炭層の応力とガス状況のみに基づいて分析が行われ、頂板の弾性エネルギーが直接無視される一方で、大まかな推定値のみが示されているが、実際には、特に深部採掘条件下での頂板の弾性エネルギーに関する具体的な定量研究はほとんどない。深部採掘は、高い地殻応力、高温、高ガス含有量などの問題に直面し、石炭とガスの噴出リスクが高まり、石炭と岩石に対する衝撃破砕性が増大し、さらに、一部の高ガス含有量鉱山、石炭とガスの噴出を伴う鉱山では、石炭と岩石の複合的な動的災害が発生する確率が大幅に増加することにつながり、このような災害は、石炭とガスの噴出のいくつかの特徴を示すだけでなく、山はねのいくつかの特徴を示し、2種類の動的災害は、共存し、互いに影響し、互いに複合する。また、深部の石炭と岩石の複合動的災害は、「高応力(地殻応力)+動的外乱(採掘圧力解放)」の二重の影響を受ける複雑な力学過程であり、災害の発生過程において、複数の要因が絡み合って、災害の潜伏、発生を引き起こし、災害の発展過程において、要因が互いに誘発したり、強化したりして、「共振」効果を生む可能性があるため、複合動的災害の発生メカニズムはより複雑になる。したがって、災害の発生過程における頂板の弾性エネルギーの具体的な役割を明確にすることが重要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の不足に対して、本発明は、深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法を提供し、本方法に基づいて、頂板のエネルギー寄与率を取得することができ、計算方法が簡便であり、操作しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法は、以下のステップ1~6を含むことを特徴とする。
【0006】
ステップ1において、ガス含有石炭層のガス圧力p、厚さhC及び頂板の厚さhRをそれぞれ取得する。
【0007】
ステップ2において、ガス含有石炭層及び頂板をそれぞれコア抜きして、円柱形又は矩形の標準試験体に加工し、力学試験により頂板の弾性率ER及びガス圧力pの影響下での石炭層の弾性率ECを取得し、力学試験方法としては、製造された標準石炭試験体の底面中心に穿孔し、孔を深さ3~5mm、直径1~2mmに設定し、逆T字形のガス注入キットを石炭試験体の底部に形成された孔内に嵌入し、孔を密封し、同時に石炭試験体の底部とガス注入キットとの接触面を密封し、その後、耐高圧密封チャンバー内に入れ、真空引きし、圧力がpのガスを充填して吸着平衡に達し、剛性試験機を用いて、石炭試験体が破壊されるまで設定された負荷速度で負荷をかけ、石炭試験体の応力とひずみを同期記録し、応力をひずみで割って石炭層の弾性率を得る。
【0008】
ステップ3において、石炭岩石複合体標準試験体を製造して前処理し、具体的な操作は、石炭岩石の高さ比で純石炭試験体及び純岩石試験体を加工し、試験体の表面を研磨し、各石炭体試験体の底面中心に穿孔し、孔を深さ3~5mm、直径1~2mmに設定し、逆T字形のガス注入キットを石炭試験体の底部に形成された孔内に嵌入し、孔を密封するとともに、石炭試験体の底部とガス注入キットとの接触面を密封し、各岩石試験体の底面に超薄透明ポリエチレンフィルムを貼り付けるとともに、各岩石試験体の側面の中央部に3組のひずみゲージを等間隔で貼り付け、超薄透明ポリエチレンフィルムが貼り付けられた岩石の底面と石炭試験体の上端面とを強力接着剤で一体に接着し、製造された石炭岩石複合体標準試験体の側面及び上端面に705#シリカゲルを均一に塗布し、乾燥させて使用に備える。
【0009】
ステップ4において、製造された石炭岩石複合体標準試験体に対して、ガス圧力pで力学試験を行い、具体的な試験方法としては、ステップ3で製造された試験体を耐高圧密封キャビティ内に入れ、真空引きし、圧力がpのガスを充填して吸着平衡に達し、剛性試験機を用いて、試験体が破壊されるまで設定された負荷速度で負荷をかけ、複合体標準試験体全体の応力及びひずみ、並びに複合体標準試験体内の岩石のひずみを同期記録し、複合体標準試験体の弾性率E
Z、岩石の第1応力-ひずみ曲線及び複合体標準試験体の第2応力-ひずみ曲線をそれぞれ取得し、h
Rとh
C、E
RとE
C、E
ZとE
Rが関係式(I)を満たし、
【数1】
式(I)中、m>0かつn>0であり、λが補正係数であり、0<λ≦1である。
【0010】
ステップ5において、第1応力-ひずみ曲線、第2応力-ひずみ曲線を同一座標系にプロットして分析し、頂板の弾性エネルギー寄与率βを推定し、具体的な推定方法は、
複合体標準試験体の第2応力-ひずみ曲線において、複合体のピーク対応点を複合体の弾性エネルギー放出開始点とし、複合体の残留強度対応点を複合体の弾性エネルギー放出終了点とし、開始点を通って複合体の弾性率に平行な直線Iを作り、開始点を通って横軸に垂直な直線IIを作り、終了点を通って横軸に平行であるとともに第1応力-ひずみ曲線と交差する直線IIIを作り、直線I、直線II及び直線IIIで囲まれた面積を、複合体が放出する弾性エネルギーとすることにより、石炭岩石複合体が放出する弾性エネルギーを計算するステップ5.1と、
複合体のピーク対応点を通って横軸に平行であるとともに岩石の第1応力-ひずみ曲線と交差する直線を作り、交点を頂板の弾性エネルギー放出開始点とし、複合体の残留強度対応点を通って横軸に平行であるとともに岩石の第1応力-ひずみ曲線と交差する直線を作り、交点を頂板の弾性エネルギー放出終了点とし、頂板の弾性エネルギー放出開始点を通って頂板の弾性率に平行な直線IVを作り、頂板の弾性エネルギー放出開始点を通って横軸に垂直な直線Vを作り、直線III、直線IV及び直線Vで囲まれた面積を、頂板が放出する弾性エネルギーとすることにより、頂板が放出する弾性エネルギーを計算するステップ5.2と、
頂板が放出する弾性エネルギーと複合体が放出する弾性エネルギーとの比を、頂板の弾性エネルギー寄与率βとすることにより、頂板の弾性エネルギー寄与率を推定するステップ5.3とを含む。
【0011】
ステップ6において、頂板の弾性エネルギー寄与率βの定量について、ステップ5の推定方法に基づいて式(I)を組み合わせて、頂板の弾性エネルギー寄与率βの式を取得し、
【数2】
式(II)は、推定により取得された、深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の式である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0013】
1)本発明は、現場の実際の状況に応じて、深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率を提供し、石炭、岩石、ガスの動的災害のエネルギー面での有益な補充であるとともに、理論面でも動的災害の災害発生メカニズムをさらに解明するためにデータサポートを提供する。
【0014】
2)本発明は、頂板岩石、ガス含有石炭及び石炭岩石複合体の関連力学指標を計算することにより、頂板のエネルギー寄与率を取得することができ、計算方法が簡単であり、操作しやすい。
【0015】
3)本発明は、頂板の弾性エネルギーによる石炭、岩石、ガスの動的災害に対する影響を十分に考慮し、重要な理論的意義と工学的実際価値を有し、深部採掘による山はね-石炭とガスの噴出などの鉱井複合動的災害の予測及び予防に対して積極的意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の石炭岩石複合体モデルの概略図である。
【
図3】本発明の頂板の弾性エネルギー寄与率の推定モデルの全体概略図である。
【
図4】本発明の頂板の弾性エネルギーと石炭岩石複合体の弾性エネルギーの計算概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の特徴及び利点を十分に反映するために、以下、図面及び具体的な実施例を組み合わせて詳細に説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の推定方法は、以下のステップS
1~S
6を含むことを特徴とする。
【0019】
ステップS1において、ガス含有石炭層のガス圧力p、厚さhC及び頂板の厚さhRをそれぞれ取得する。
【0020】
ステップS2において、ガス含有石炭層及び頂板をそれぞれコア抜きして、円柱形又は矩形の標準試験体に加工し、力学試験により頂板の弾性率ER及びガス圧力pの影響下での石炭層の弾性率ECを取得し、力学試験の具体的な方法としては、製造された標準石炭試験体の底面中心に穿孔し、孔を深さ3~5mm、直径1~2mmに設定し、逆T字形のガス注入キットを石炭試験体の底部に形成された孔内に嵌入し、孔を密封するとともに、石炭試験体の底部とガス注入キットとの接触面を密封し、その後、耐高圧密封チャンバー内に入れ、真空引きし、圧力がpのガスを充填して吸着平衡に達し、剛性試験機を用いて、石炭試験体が破壊されるまで設定された負荷速度で負荷をかけ、石炭試験体の応力及びひずみを同期記録する。
【0021】
ステップS3において、石炭岩石複合体標準試験体を製造して前処理し、具体的な操作は、石炭岩石の高さ比で純石炭試験体及び純岩石試験体を加工し、試験体の表面を研磨し、各石炭体試験体の底面中心に穿孔し、孔を深さ3~5mm、直径1~2mmに設定し、逆T字形のガス注入キットを石炭試験体の底部に形成された孔内に嵌入し、孔を密封するとともに、石炭試験体の底部とガス注入キットとの接触面を密封し、各岩石試験体の底面に超薄透明ポリエチレンフィルムを貼り付けるとともに、各岩石試験体の側面の中央部に3組のひずみゲージを等間隔で貼り付け、超薄透明ポリエチレンフィルムが貼り付けられた岩石の底面と石炭試験体の上端面とを強力接着剤で一体に接着し、製造された石炭岩石複合体標準試験体の側面及び上端面に705#シリカゲルを均一に塗布し、乾燥させて使用に備える。
【0022】
ステップS
4において、製造された石炭岩石複合体標準試験体に対して、ガス圧力pで力学試験を行い、具体的な試験方法としては、ステップ3で製造された試験体を耐高圧密封キャビティ内に入れ、真空引きし、圧力がpのガスを充填して吸着平衡に達し、剛性試験機を用いて、試験体が破壊されるまで設定された負荷速度で負荷をかけ、複合体標準試験体全体の応力及びひずみ、並びに複合体標準試験体内の岩石のひずみを同期記録する。力学試験により、複合体標準試験体の弾性率E
Z、岩石の第1応力-ひずみ曲線1及び複合体標準試験体の第2応力-ひずみ曲線2をそれぞれ取得し、h
Rとh
C、E
RとE
C、E
ZとE
Rが関係式(I)を満たし、
【数3】
式(I)中、m>0かつn>0であり、λが補正係数であり、0<λ≦1である。
【0023】
ステップS
5において、第1応力-ひずみ曲線1、第2応力-ひずみ曲線2を同一座標系にプロットして分析し、頂板の弾性エネルギー寄与率βを推定し、具体的な推定方法は、
図4に示すように、複合体標準試験体の第2応力-ひずみ曲線2において、複合体のピーク対応点を複合体の弾性エネルギー放出開始点とし、複合体の残留強度対応点を複合体の弾性エネルギー放出終了点とし、開始点を通って複合体の弾性率に平行な直線I3を作り、開始点を通って横軸に垂直な直線II4を作り、終了点を通って横軸に平行であるとともに第1応力-ひずみ曲線1と交差する直線III5を作り、直線I3、直線II4及び直線III5で囲まれた面積を、複合体が放出する弾性エネルギーとすることにより、石炭岩石複合体が放出する弾性エネルギーを計算するステップ5.1と、
複合体のピーク対応点を通って横軸に平行であるとともに岩石の第1応力-ひずみ曲線1と交差する直線を作り、交点を頂板の弾性エネルギー放出開始点とし、複合体の残留強度対応点を通って横軸に平行であるとともに岩石の第1応力-ひずみ曲線1と交差する直線を作り、交点を頂板の弾性エネルギー放出終了点とし、頂板の弾性エネルギー放出開始点を通って頂板の弾性率に平行な直線IV6を作り、頂板の弾性エネルギー放出開始点を通って横軸に垂直な直線V7を作り、直線III5、直線IV6及び直線V7で囲まれた面積を、頂板が放出する弾性エネルギーとすることにより、頂板が放出する弾性エネルギーを計算するステップ5.2と、
頂板が放出する弾性エネルギーと複合体が放出する弾性エネルギーとの比を、頂板の弾性エネルギー寄与率βとすることにより、頂板の弾性エネルギー寄与率を推定するステップ5.3とを含む。
【0024】
具体的な導出過程は、ガス圧力pの影響下での複合体標準試験体が破壊されて不安定になる場合に石炭部分の破壊のみが発生し、岩石部分が相対的に完全に保持され、かつ表面に顕著なクラックがなく、エネルギー散逸角度から分析すると、岩石散逸エネルギーがピーク前に単に自己散逸し、残りが全て蓄積された弾性ひずみエネルギーであり、即ち、岩石が複合体のピーク前に弾性エネルギー蓄積段階にあるという条件1と、第1応力-ひずみ曲線1及び第2応力-ひずみ曲線2に基づいて分析すると、ピークでの石炭、岩石に蓄積されたエネルギーが限界に達し、ピークとピーク後のある点が試験体の定常破壊から非定常破壊への転換点であり、この点の後、岩石の弾性エネルギーが石炭に作用し始め、石炭の破壊を加速し、弾性エネルギーが実際に役割を果たすという条件2とを同時に満たすと仮定すると、ピーク後のエネルギー作用点p、qをそれぞれピークm、n(点pと点mとが重なり、点qと点nとが重なる)まで移動させ、
図4に示す図面が得られ、即ち、岩石に蓄積された弾性エネルギーが複合体のピークで石炭に作用し始め、即ち、頂板の弾性エネルギー放出速度が初期に石炭の内部クラックの拡張速度より大きく、下部の石炭がピークから頂板により拘束されず、頂板の弾性エネルギーが放出されて直ちに石炭に作用し、石炭の破壊を加速する。
【0025】
図3に示す頂板の弾性エネルギー寄与率の推定モデルを構築し、複合体標準試験体のピーク応力は、σ
mであり、ピークひずみは、ε
8であり、複合体標準試験体の残留強度及び残留ひずみは、それぞれσ
r、ε
rであり、複合体標準試験体がピークに達するときに対応する岩石部分のひずみは、ε
5であり、ピーク後の複合体標準試験体内の岩石部分の残留ひずみは、ε
3であり、ピーク後の強度σ
pは、岩石の弾性エネルギーが実際に石炭体に作用する開始点であり、このとき、複合体標準試験体及び岩石の対応するひずみは、それぞれε
9、ε
4であり、点mを通って岩石の弾性率に平行な直線を作り(除荷線maは、点pを通り、残留応力σ
rとの交点がaであり、点aに対応するひずみがε
3であり、座標軸との交点ε
0が岩石の負荷過程における自己散逸ひずみを表す)、点nを通って複合体標準試験体の弾性率に平行な直線を作り(除荷線ndは、残留応力との交点がdであり、点dに対応するひずみがε
6であり、座標軸との交点ε
1が複合体標準試験体の負荷過程における自己散逸ひずみを表す)、点qを通って複合体標準試験体の弾性率に平行な直線を作り(除荷線qeは、残留応力との交点がeであり、点eに対応するひずみがε
7であり、座標軸との交点ε
2が複合体標準試験体が不安定になる前の総散逸ひずみを表す)、それぞれp、m、n、qを通って座標軸に垂直な直線を作り、残留応力との交点がb、c、f、gであり、点hが複合体標準試験体の残留応力-残留ひずみ点に対応し、前述の分析から分かるように、複合体標準試験体内の岩石に蓄積された弾性エネルギーが全て石炭に作用する場合、最も危険な状況であり、即ち、△pabと△macとが重なり、頂点がmに位置し、即ち、s
1とs
3とが重なり、s
1=s
3=s
Rを仮定し、同様に、△qegと△ndfとが重なり、頂点がnに位置し、即ち、s
2とs
4とが重なり、同様に、s
2=s
4=s
Cを仮定し、明らかに、このときに算出された頂板の弾性エネルギーの値は、蓄積された総量でも、石炭に実際に作用してその破壊を加速する量でも最大値であり、この値を用いて頂板の弾性エネルギー寄与率を推定することができる。
【0026】
ステップS
6において、ステップS
5の推定方法に基づいて式(I)を組み合わせて、頂板の弾性エネルギー寄与率βの定量式を取得し、複合体が破壊される場合、エネルギーは、一部が石炭自体に蓄積された放出可能な弾性ひずみエネルギーに由来し、一部が岩石に蓄積された放出可能な弾性ひずみエネルギーのうち破壊作用を果たす部分に由来し、明らかに、当該部分が多いほど、石炭に対する破壊促進作用が顕著になり、石炭に対する破壊が激しくなる。したがって、頂板の弾性エネルギー寄与率βを用いて岩石の弾性エネルギーの作用を特徴付け、βが下式を満たすように定義され、
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
式(3)中、S
Rは、標準純岩石試験体に蓄積された弾性エネルギーであり、式(4)、式(5)を式(3)に代入して、
【数8】
を得て、同様に、
【数9】
を得て、式(6)、式(7)を式(2)に代入して、
【数10】
を得て、式(I)を式(8)に代入して、
【数11】
を得る。
【0027】
式(II)は、この推定方法を用いて取得された、深部のガス含有石炭が不安定で災害が発生するときの頂板の弾性エネルギー寄与率の式である。
【0028】
以上、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明の保護範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の技術手段に基づいて、当業者が創造的な労力を必要とせずに行った様々な修正又は変形が依然として本発明の保護範囲内にあることを理解することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 第1応力-ひずみ曲線
2 第2応力-ひずみ曲線
3 直線I
4 直線II
5 直線III
6 直線IV
7 直線V
【国際調査報告】