(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】超音波乳化吸引ハンドピース
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A61F9/007 130B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577381
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 IB2022056080
(87)【国際公開番号】W WO2023275803
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522110555
【氏名又は名称】ボシュ + ロム アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】コッヘル,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー,イライジャ
(57)【要約】
眼科手術用の超音波乳化吸引ハンドピースが提供される。超音波乳化吸引ハンドピースは、筐体の遠位端に配置された空洞を有する筐体を備える。また、超音波乳化吸引ハンドピースは、空洞内に配置されたホーンをさらに備える。灌流管は、筐体に結合され、筐体の外部にある。灌流管と空洞の間にはポートが結合され、ポートは、空洞内に流入する流体をホーンの側方に導く(例えば、ホーンに直接衝突させることなく導く、など)ように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の遠位端に配置された空洞を含む筐体と、
少なくとも一部が前記空洞内に配置されたホーンと、
前記筐体に結合された灌流管と、
前記灌流管と前記空洞の間に結合されたポートと、
を備える、眼科手術用の超音波乳化吸引ハンドピースであって、
前記ポートが、前記空洞内に流入する流体を前記ホーンの側方に導いて、灌流流体が前記ホーンの周りを流れるように促し、気泡の発生を軽減するように構成されている、超音波乳化吸引ハンドピース。
【請求項2】
前記ポート及び前記灌流管が、前記ホーンから横方向にオフセットして配置されている、請求項1に記載の超音波乳化吸引ハンドピース。
【請求項3】
前記ポート及び前記灌流管が、長手方向中心軸と位置合わせされており、
前記ポートのオフセット角度が、ゼロ以外の角度である、請求項1に記載の超音波乳化吸引ハンドピース。
【請求項4】
前記ポートが前記空洞の近位端に配置され、
前記ポートの注入角度が、前記空洞の内壁に対して90度である、請求項1に記載の超音波乳化吸引ハンドピース。
【請求項5】
前記ポートの端部が面取り加工されている、請求項1に記載の超音波乳化吸引ハンドピース。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年7月1日を出願日とする米国仮特許出願第17/365353号の優先権の利益を主張するものである。この仮出願のすべての開示内容は、参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、超音波乳化吸引ハンドピース及び関連システムに関し、より詳細には、オフセット配置された灌流ポートを有する超音波乳化吸引ハンドピースに関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションは、本開示に関連する背景情報を提供するものであり、当該背景情報は必ずしも先行技術とは限らない。
【0004】
多くの眼科手術では、白内障手術などのように、眼球から摘出する必要のある組織を切除又は乳化することが行われる。公知の技法の1つが、超音波乳化吸引術である。この技法は、高周波の超音波エネルギーを、ハンドピースを介して超音波乳化吸引針に伝えて、患部組織を乳化させるものである。手術時に眼球を加圧状態に保ち、患部組織の吸引を助けるために、ハンドピースを介して眼球内に生理食塩水が導入される。術前には、ハンドピースに生理食塩水を流すという、プライミング(priming)として公知のプロセスが行われる。プライミング時には、生理食塩水がハンドピース内を流れることにより、ハンドピース内の気泡が排出される。しかし、プライミングによってハンドピース内の空気をすべて取り除くことができるとは限らず(例えば、プライミング時にハンドピースを正しい向きとしなかった場合など)、残った空気がその後の手術中に眼球内に入ると問題を引き起こしてしまう可能性があった。例えば、生理食塩水中に気泡があると、外科医の視認性に問題が生じてしまう可能性や、角膜内皮細胞に損傷を与えてしまう可能性、望ましくない眼圧変動が生じてしまう可能性があった。
【発明の概要】
【0005】
本セクションは、本開示の概要を示すものであり、本開示の全範囲又は全特徴を包括的に開示するものではない。
【0006】
本開示の例示的な実施形態は、概して、眼科手術用の超音波乳化吸引ハンドピースに関する。例示的な一実施形態では、超音波乳化吸引ハンドピースは、概して、筐体の遠位端に配置された空洞を有する筐体を備える。筐体は長手方向中心軸を有している。また、超音波乳化吸引ハンドピースは、空洞内に配置されたホーンをさらに備え、ホーンは、長手方向中心軸と同軸とされる。灌流管は筐体に結合される。灌流管を、筐体の外部に設けることもできる。灌流管と空洞の間にはポートが結合され、ポートは、空洞内に流入する流体を長手方向中心軸に対してホーンの側方に導く(例えば、ホーンに直接衝突させることなく導く、など)ように構成されている。いくつかの実施形態では、流体をホーンの側方に導くため、灌流管及びポートは、長手方向中心軸に対して横方向にオフセットして配置されている。いくつかの実施形態では、ポートによって流体をホーンから離間した、ホーンの側方に導かれるように、ポートに角度が付けられている。
【0007】
適用可能なさらに他の分野については、本明細書に示す説明から明らかとなるであろう。なお、本概要の説明及び具体例は、説明のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0008】
本明細書に記載の図面は、すべての可能な実施形態を説明するのではなく、選択された実施形態を説明することのみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】既存の超音波乳化吸引ハンドピースにおける流体の想定流線を含む流れ図
【
図1B】超音波乳化吸引ハンドピースの例示的な実施形態における流体の想定流線を含む流れ図
【
図2】超音波乳化吸引ハンドピースの例示的な実施形態を示す上面図
【
図3A】
図2に示す超音波乳化吸引ハンドピースの遠位端を示す正面図
【
図3B】超音波乳化吸引ハンドピースの灌流ポート(例えば、灌流ポートがハンドピースの長手方向中心軸から横方向にオフセットして配置されていることなど)を説明するための、
図2に示す超音波乳化吸引ハンドピースの3-3線断面図
【
図4】
図2に示す超音波乳化吸引ハンドピースの4-4線斜視断面図
【
図5】
図2に示す超音波乳化吸引ハンドピースの4-4線部分断面図
【
図6】超音波乳化吸引ハンドピースの他の例示的な実施形態を示す上面図
【
図7A】
図6に示す超音波乳化吸引ハンドピースの遠位端を示す正面図
【
図7B】超音波乳化吸引ハンドピースの灌流ポート(例えば、灌流ポートがハンドピースの中心鉛直軸からオフセット角度を付けて配置されていることなど)を説明するための、
図6に示す超音波乳化吸引ハンドピースの7-7線断面図
【
図8】
図6に示す超音波乳化吸引ハンドピースの8-8線斜視断面図
【
図9】
図6に示す超音波乳化吸引ハンドピースの8-8線部分断面図
【
図10】超音波乳化吸引ハンドピースの他の例示的な実施形態を示す上面図
【
図11A】
図10に示す超音波乳化吸引ハンドピースの遠位端を示す正面図
【
図11B】超音波乳化吸引ハンドピースの灌流ポート(例えば、灌流ポートがハンドピースの中心軸から横方向にオフセットして配置されていることなど)を説明するための、
図10に示す超音波乳化吸引ハンドピースの11-11線断面図
【
図12】
図10に示す超音波乳化吸引ハンドピースの12-12線部分斜視断面図
【
図13】
図10に示す超音波乳化吸引ハンドピースの12-12線部分断面図
【
図14】超音波乳化吸引ハンドピースの他の例示的な実施形態を示す上面図
【
図15A】
図14に示す超音波乳化吸引ハンドピースの遠位端を示す正面図
【
図15B】超音波乳化吸引ハンドピースの灌流ポート(例えば、灌流ポートがハンドピースの中心軸から横方向にオフセットして配置されていることなど)を説明するための、
図14に示す超音波乳化吸引ハンドピースの15-15線断面図
【
図16】
図14に示す超音波乳化吸引ハンドピースの16-16線部分斜視断面図
【
図17】
図14に示す超音波乳化吸引ハンドピースの16-16線部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面内のいくつかの図において、対応する部品を対応する参照番号で示している。
【0011】
本開示の例示的な実施形態は、概して、眼科手術用の超音波乳化吸引ハンドピースに関する。現在の超音波乳化吸引ハンドピースでは、ハンドピース内への平衡塩類溶液(balanced salt solution:BSS)への導入は、ハンドピース内の超音波ホーンにBSSが直接衝突するような方向に配置されたポートを介して行われる。このような直接衝突が起こると、
図1Aに示すように、ハンドピース内のBSSの流れの中に渦(vortex、eddy)が発生するが、これにより、プライミング時にハンドピースから空気を効率的に取り除くことができなくなるとともに、ハンドピース内に気泡をさらに発生させてしまう可能性もある。本開示の超音波乳化吸引ハンドピースは、
図1Bに示すように、BSSをホーンに直接衝突させることなく、BSSをハンドピース内に導入する(例えば、ホーンの側方に導入する、ハンドピースの内壁の略接線方向に導入する、など)ことができるように、ポートの位置及び向きを変更している点に独自性がある。これにより、筐体内に効率的で乱れの少ないBSS流体の流れが形成される。この流体の流れにより、プライミング時により効率的に空気が筐体から除去されるとともに、気泡の発生が最小限に抑えられるため、筐体内に混入した空気が手術時に眼球内に入ってしまう可能性を低減する。
【0012】
次に、添付の図面を参照して、例示的な実施形態についてより詳細に説明する。なお、本明細書に含まれる説明及び具体例は、説明のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0013】
図2~
図5は、本開示の1つ以上の態様を含む超音波乳化吸引ハンドピース100(広義には、ハンドピース)の例示的な実施形態を示している。図示の実施形態では、ハンドピース100は、概して、筐体102と、筐体102内に配置されたホーン104とを備えている。ホーン104(例えば、超音波トランスデューサホーン)は、複数のトランスデューサ106(例えば、圧電振動スタック)に結合されており、トランスデューサ106は、手術中に患部組織を乳化するため、ホーン(及び、ホーンに取り付けられた針(図示しない))を超音波振動させるように構成されている。図示の通り、ホーン104は、ハンドピース100の遠位端109からハンドピース100の近位端111を通って延びるハンドピース100の長手方向中心軸108と位置合わせされ(例えば、同軸とされ)ている。ただし、長手方向以外の振動を発生させることを意図した設計などでは、ハンドピース100とホーン104が軸対称とされない場合もあることに留意されたい。
【0014】
ホーン104は、筐体102の空洞110内に配置されている。空洞110は、筐体102の遠位端109に配置されている。空洞110は、その一部が、筐体102の内壁112により画成されている。図示の実施形態では、空洞110の近位端における空洞110の直径の方が、空洞110の遠位端における空洞110の直径よりも大きい。図示の通り、内壁112は、空洞110の近位端におけるより大きな直径から空洞110の遠位端におけるより小さな直径まで滑らかに移行するように(例えば、直径が段状に減少する部分がないように)設けることができる。ただし、他の実施形態では、内壁112は、直径が段状に減少する部分を含む形状などの他の形状を有することもできる。さらに、ハンドピース100の筐体102に収められるトランスデューサ106などの電子部品を保護するために、ハンドピース100は、ホーン104の周囲(例えば、ホーン104の基部)に配置されたシール114(例えば、Oリング)をさらに備えており、これにより、(例えば、プライミング時、手術時などに)空洞110内に存在し得る流体からトランスデューサ106などの電子部品を流体密封する。
【0015】
また、ハンドピース100は灌流管116をさらに備えている。灌流管116は、図示のように筐体102の外部に配置することができるほか、筐体102の内部に設けることもできる。図示していないが、灌流管116は、灌流流体(例えば、生理食塩水、BSSなど)の供給源(例えば、バッグ、ボトルなど)に結合されている。灌流流体は、空洞110の近位端側に配置されているポート118を介して、灌流管116から空洞110内に導かれる。図示のように、ポート118の位置(例えば、空洞110の近位端)において、空洞110の内壁112は長手方向中心軸108と平行とされる。図示の実施形態では、ポート118は、空洞110内まで延在しない(例えば、ポート118の端部は、筐体102の内壁112と位置合わせされる)。他の実施形態では、ポート118の少なくとも一部が、空洞110内まで延在することもできる(例えば、ポート118が面取り加工された端部を有しており、この端部の一部が、灌流流体を空洞110内に導くために空洞内まで延在する、など)(例えば、
図15B参照)。
図5に示すように、灌流流体が注入角度α(すなわち、灌流流体が空洞110内に流入する際の、長手方向中心軸108に対する角度)で空洞110内に導かれるように、ポート118は、長手方向中心軸108に対して角度が付けられている。例えば、図示の実施形態では、ポート118の注入角度αは約45度である。ただし、他の実施形態では、空洞110内への及び/又は空洞110を通る灌流流体の流れを最適化するために、注入角度αをより大きい角度又は小さい角度(例えば、30度、90度など)とすることもできる。設計によっては、灌流管116の遠位端、筐体102を貫通して空洞110内に至るように形成された通路、又はこれらの組み合わせを、ポート118と見なすこともできる。この設計の意図は、灌流流体を内壁112の接線方向に流して、乱れのない旋回流を形成することにある。
【0016】
図示の実施形態では、灌流管116及びポート118は、軸108からオフセットして配置されている(例えば、ハンドピース100の中央に配置されない)。特定的には、灌流管116及びポート118は、軸108から横方向にずれている(例えば、ホーン104から横方向にオフセットして配置されている)。オフセット配置されるポート118の横方向及び長手方向の位置は、最適で円滑な流体の流れが得られるように、空洞110の設計との関連において選択することができる。この方法によれば、灌流流体がハンドピース100を通って(例えば、空洞110内まで)流れる際に、灌流流体のホーン104への直接衝突が発生しない。むしろ、ポート118は、空洞110内に流入する灌流流体をホーン104の側方に(例えば、ホーン104の横に)導く。これにより、灌流流体が空洞110を流れる際の灌流流体の流れは、ホーン104の周りを概ね旋回する流れ(例えば、渦状の流れ)となる(
図1Bに示す流れと同様の流れとなる)。他の実施形態では、灌流管116及びポート118をハンドピース100の中央に(例えば、横方向にオフセットさせずに)配置した上で、例えば、ホーン104からポート118が離間するようにポート118に角度を付ける(例えば、オフセット角度で角度を付ける)ことによって、空洞内に流入する灌流流体を、ホーン104の側方に導く(
図7A及び
図7B参照)こともできる。
【0017】
図6~
図9は、本開示の1つ以上の態様を含む他の超音波乳化吸引ハンドピース200の例示的な実施形態を示している。本実施形態のハンドピース200は、
図2~
図5に図示されている上述のハンドピース100と実質的に同様である。例えば、ハンドピース200は、筐体202と、筐体202の空洞210内に、ハンドピース200の長手方向中心軸208と同軸に配置されるホーン204(例えば、超音波トランスデューサホーン)とを備えている。空洞210は、筐体202の遠位端に配置され、その一部が、筐体202の内壁212により画成されている。また、ハンドピース200は、灌流流体(例えば、生理食塩水、BSSなど)の供給源に結合される灌流管216と、灌流管216と空洞210の間に結合されるポート218とをさらに備えている。
【0018】
この実施形態では、灌流管216とポート218が共に、ハンドピース200の長手方向中心軸208と軸心合わせされ(例えば、同軸とされ)ている。そのため、灌流管216及びポート218を長手方向中心軸208から横方向にオフセットして配置するのではなく、灌流管216及びポート218を軸208と同軸とした上でポート218をオフセット角度β(
図7Bに示す)で角度を付ける(例えば、横方向に角度を付ける)ことにより、空洞210内に流入する灌流流体を、ホーン204の側方(且つ筐体202の内壁212の概ね接線方向)に導いている。ポート218に角度を付けることにより、ポートをオフセットして配置すること(例えば、オフセット配置されたポート118)によって形成される流れと同様の灌流流体の流れを、空洞210内に形成することができる。例えば、灌流流体が空洞210を流れる際の灌流流体の流れは、ホーン204の周りを概ね旋回する流れ(例えば、渦状の流れ)となり(
図1Bに示す流れと同様の流れとなり)、これにより、空洞210内に混入した空気を、ハンドピース200のプライミング時により確実に空洞210から取り除くことができる。特に、角度を付けたポート218により得られる流れは、ホーン204に直接衝突しないため、乱れの少ない流れとなり、気泡の発生が抑えられる。さらに、灌流管216及びポート218を中央に配置すること(例えば、軸208と軸心合わせすること、横方向にオフセットしないこと、など)により、ハンドピース200を使用者にとって人間工学的により握りやすくすることもできる。いくつかの実施形態では、ポートは、(例えば、ポート218と同様に)オフセット角度βで角度を付けた上で、(例えば、ポート118と同様に)ホーンから横方向にオフセットして配置することもできる。かかる実施形態では、灌流管も、(例えば、灌流管116と同様に)ホーン及び長手方向中心軸から横方向にオフセットして配置することができる。
【0019】
図7Bに示すように、灌流流体がオフセット角度β(すなわち、灌流流体が空洞内に流入する際の、ハンドピース200の鉛直軸220に対する角度)で空洞210内に導かれるように、ポート218は、鉛直軸220に対して角度が付けられている。最適なオフセット角度は、空洞の形状によって異なる。また、オフセットの向きは空洞のいずれの側とすることもでき、図示の例に限定されないことに留意されたい。鉛直軸220は、長手方向中心軸208(
図9参照)に対して垂直であり、本実施形態では灌流管216が横方向にオフセットした配置とされないため、灌流管216及びホーン204を、鉛直軸220が概ね通過する。図示の実施形態では、オフセット角度βにより、空洞210に流入する灌流流体をホーン204の側方に(例えば、ホーン204に直接衝突することなく)流すことができ、これにより、ハンドピース200の向きに関係なく、プライミング時により多くの空気を取り除くことを支援する。
【0020】
ポート218は、ハンドピース200の鉛直軸220に対して(例えば、オフセット角度βだけ)角度を付けることに加えて、(例えば、ポート118と同様に)ハンドピース200の長手方向中心軸208に対して注入角度αで角度を付けることもできる。
図9に示すように、灌流流体が注入角度αで空洞210内に導かれるように、ポート218は、長手方向中心軸208に対して角度が付けられている。例えば、図示の実施形態では、ポート218の注入角度αは約45度である。ただし、他の実施形態では、空洞210内への及び/又は空洞210を通る灌流流体の流れを最適化するために、注入角度αをより大きい角度又は小さい角度(例えば、30度、90度など)とすることもできる。
【0021】
図10~
図13は、本開示の1つ以上の態様を含む他の超音波乳化吸引ハンドピース300の例示的な実施形態を示している。本実施形態のハンドピース300は、
図2~
図5に図示されている上述のハンドピース100と実質的に同様である。例えば、ハンドピース300は、筐体302と、筐体302の空洞310内に、ハンドピース300の長手方向中心軸308と同軸に配置されるホーン304(例えば、超音波トランスデューサホーン)とを備えている。空洞310は、筐体302の遠位端に配置され、その一部が、筐体302の内壁312により画成されている。また、ハンドピース300は、灌流流体(例えば、生理食塩水、BSSなど)の供給源に結合される灌流管316と、灌流管316と空洞310の間に結合されるポート318とをさらに備えている。ハンドピース100と同様に、ハンドピース300の灌流管316及びポート318も、灌流流体をホーン304から離間した位置に導く(例えば、ホーン304の側方に導く、ホーン304に直接衝突させないように導く、など)ために、長手方向中心軸308から横方向にオフセットして配置されている。
【0022】
この実施形態では、ポート318は、長手方向中心軸308に対して90度の注入角度αが付いている(例えば、空洞310の内壁312に対して直角の角度とされる)。ポート118及びポート218と同様に、ポート318も、空洞310の近位端に配置される。ポート318を90度の注入角度αで角度を付けることにより、空洞310内の灌流流体の流れが、概ね、空洞310の近位端から空洞310の遠位端に向かって(例えば、空洞310の近位端に向かって後戻りすることなく)流れるように促すことができる。これにより、灌流流体がポート318から空洞310の近位端に向かって流れる場合(例えば、注入角度αが90度未満の場合)に発生する可能性のあった乱流が抑えられ、空洞310からの空気抜きを支援することができる。
【0023】
図14~
図17は、本開示の1つ以上の態様を含む他の超音波乳化吸引ハンドピース400の例示的な実施形態を示している。本実施形態のハンドピース400は、
図10~
図13.に図示されている上述のハンドピース300と実質的に同様である。例えば、ハンドピース400は、筐体402と、筐体402の空洞410内に、ハンドピース400の長手方向中心軸408と同軸に配置されるホーン404(例えば、超音波トランスデューサホーン)とを備えている。空洞410は、筐体402の遠位端に配置され、その一部が、筐体402の内壁412により画成されている。また、ハンドピース400は、灌流流体(例えば、生理食塩水、BSSなど)の供給源に結合される灌流管416と、灌流管416と空洞410の間に結合されるポート418とをさらに備えている。ハンドピース100及びハンドピース300と同様に、ハンドピース400の灌流管416及びポート418も、灌流流体をホーン404から離間した位置に導く(例えば、ホーン404の側方に導く、ホーン404に直接衝突させることなく導く、など)ために、長手方向中心軸408から横方向にオフセットして配置されている。なお、ハンドピース300と同様に、ポート418も、90度の注入角度αが付いているが、他の実施形態では、注入角度は異なる角度(例えば、90度未満、45度など)とすることもでき。
【0024】
この実施形態では、ポート418の一部が、空洞410内まで延びており、ポート418の端部422には角度が付けられ(例えば、面取り加工され)ている。(例えば、ポート118、218、318などのように)ポートの端部422を四角とするのではなく、ポート418の端部422は、端部422におけるホーン404に近い部分の方が端部422におけるホーン404から離れた部分よりも長くなるように、角度が付けられている。このようにポート418の端部422に角度を付ける(例えば、面取り加工する)ことにより、ポート418を介して空洞410に流入する灌流流体が、ホーン404に衝突することなく流入するようさらに確実に促すことができる。特に、ポート418の端部422に長い部分を設けることにより、灌流流体をホーン404から離間した位置且つ空洞410の内壁412の方向に導いて、空洞410の内壁に概ね沿って(例えば、内壁の接線方向に)灌流流体が流れるようにすることができる。
【0025】
本開示の超音波乳化用ハンドピースは、ハンドピース内を灌流流体(例えば、生理食塩水、BSSなど)が流れることにより発生する気泡を抑えること、且つプライミング時に(例えば、プライミング時にハンドピースの向きが適切な向きに保たれない場合(例えば、鉛直な向き(立てた状態)以外の向きとされた)であっても、ハンドピースからより多くの空気を取り除くことができるようにして、ハンドピースのプライミングを効率的に行うことを可能する。本開示の超音波乳化吸引ハンドピースは、灌流ポートを横方向にオフセットして配置すること又は灌流ポートに横方向の角度を付けることによって、空洞に流入する灌流流体の流れを偏心(オフセット)させ、灌流流体が空洞に流入する際にホーンとぶつかる(例えば、衝突する)ことがないようにしている。これにより、空洞内の流れが乱れの少ない流れとなり、超音波乳化吸引ハンドピースのプライミングを効率的且つより良く行うことを可能にする。
【0026】
例示的な実施形態は、本開示を完全なものとし、本開示の範囲が当業者に十分に伝わるように提供されるものである。本開示の実施形態を十分に理解できるよう、特定の構成要素、デバイス、及び方法の例などの具体的な詳細を数多く示している。しかしながら、具体的な詳細については必ずしも採用する必要がないこと、例示的な実施形態を多くの異なる形態で実施することができること、及び具体的な詳細と例示的な実施形態のいずれについても本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではないことは、当業者には明らかであろう。また、いくつかの例示的な実施形態において、周知のプロセス、周知のデバイス構造、及び周知の技術については詳細に説明していない。
【0027】
本明細書において開示している特定の寸法、特定の材料、及び/又は特定の形状は、全く例示的なものに過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書において、所与のパラメータに関して特定の値及び特定の値範囲を開示している場合、これにより、本明細書に開示の1つ以上の例において有用である場合のある他の値及び値範囲を排除するものではない。さらに、本明細書において、特定のパラメータに対して特定の値を記載している場合、かかる特定の値の任意の2つの値により、当該パラメータに適切な値範囲の両端点を規定することができることが想定されている(すなわち、所与のパラメータに対して第1の値及び第2の値を開示している場合、第1の値と第2の値との間の任意の値も当該所与のパラメータの値として採用できることを開示していると解釈することができる)。例えば、本明細書において、パラメータXがAの値をとることが例示され、且つZの値をとることも例示されている場合、パラメータXは、約A~約Zの値範囲をとることができることが想定されている。同様に、或るパラメータに対して2つ以上の値範囲(これらの範囲が、入れ子になっているか、重なりがあるか、まったく重なりがないかを問わない)を開示している場合、本開示には、開示された範囲の端点を使用して請求可能なすべての値範囲の組み合わせを包含することが想定されている。例えば、本明細書において、パラメータXが1~10、又は2~9、又は3~8の範囲の値をとることが例示されている場合、パラメータXは、1~9、1~8、1~3、1~2、2~10、2~8、2~3、3~10、及び3~9を含む他の値範囲もとることができることが想定されている。
【0028】
本明細書で用いる用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定を意図するものではない。本明細書において、「a」、「an」、及び「the(その、前記)」で示す単数形は、文脈上明らかに複数形を含まないことが明らかである場合を除き、その複数形も包含することを意図することができる。「備える」「含む」及び「有する」(comprises、comprising、including、having)という用語は、包括的な用語であるため、記載した特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成部品の存在を特定するが、しかも他の1つ以上の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成部品、及び/又はそれらの群の存在又は追加は排除しない用語である。本明細書に記載の方法ステップ、プロセス、及び操作は、説明又は図示した特定の順序で実施することを必ず要請しているものと解釈すべきではない。ただし、説明又は図示した特定の順序が、実施順序として具体的に特定されている場合はその限りではない。また、追加的ステップ又は代替的なステップを採用できることも理解されたい。
【0029】
或る要素や層について、他の要素や層「の上にある(on)」、「と係合している(engaged to)」、「と接続している(connected to)」、又は「と結合している(coupled to)」と記載している場合、当該要素や層は、直接、当該他の要素や層の上にある、係合、接続、又は結合している状態とすることができるほか、介在する要素や層を挟むこともできる。これに対して、他の要素や層「の上に直接ある(directly on)」、「と直接係合している(directly engaged to)」、「と直接接続している(directly connected to)」、又は「と直接結合している(directly coupled to)」と記載している場合には、介在する要素や層は挟まないと考えられる。要素間の関係を記述するために使われる他の用語についても、同様に解釈すべきである(例えば、「~の間(between)」と「直接的に~の間(directly between)」、「隣接(adjacent)」と「(すぐ隣接)directly adjacent」など)。本明細書で使用される場合、「及び/又は(and/or)」という用語、及び「少なくとも1つ(at least one of)」という語句は、この用語を伴って列挙された項目のうちの1つ又は複数のあらゆる組み合わせを包含する。
【0030】
本明細書では、「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」などの用語を使用して、様々な要素、構成要素、領域、層及び/又は部分を記述する場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層及び/又は部分は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、或る要素、構成要素、領域、層、又は部分を、別の領域、層、又は部分と区別するためにのみ使用されていると考えることができる。本明細書における、「第1の」、「第2の」などの数値用語は、文脈で明確に示されている場合を除き、順序や順番を意味するものではない。したがって、例示的な実施形態の教示から逸脱しない限り、第1の要素、第1の構成要素、第1の領域、第1の層、又は第1の部分に対して、第2の要素、第2の構成要素、第2の領域、第2の層、又は第2の部分という用語を用いることもできる。
【0031】
さらに、本明細書では、「内側(inner)」、「外側(outer)」、「~の下側(beneath)」「~の下方に(below)」、「~の下側に(lower)」、「~の上方に(above)」、「~の上側に(upper)」などの空間的に相対的な用語を、或る要素又は特徴と他の要素又は特徴との間にある図示の関係の説明を簡単に行うために用いる場合がある。これらの空間的に相対的な用語が、図示の向きだけでなく、使用中又は動作中のデバイスの様々な向きを包含することを意図している場合がある。例えば、図示のデバイスにおいて、或る要素又は特徴が他の要素又は特徴の「下(below,beneath)」にあるように示されている場合、そのデバイスを裏返すと当該或る要素又は特徴は当該他の要素又は特徴の「上(above)」に向けられることになる。したがって、例えば、「下(below)」という用語は、上の向きと下の向きの両方を包含し得る。また図示のデバイスが他の向きに向けられる(90度等の向きに回転される)場合もあるが、その場合も、本明細書に用いられる空間的に相対的な記載をその向きに応じて解釈することができる。
【0032】
以上、複数の実施形態について説明したが、この説明は、例示と説明のために行ったものである。また、上述の説明は、本開示を網羅的に説明することや本開示を限定することを意図したものではない。一般に、特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、当該特定の実施形態に限定されるものではなく、該当する場合には、特に図示又は説明されていなくても、交換可能であり、選択された実施形態で使用することができる。また、実施形態の要素又は特徴を、様々に変形することもできる。このような変形は本開示から逸脱しているとみなすべきものではなく、かかる変形のすべてを本開示の範囲に含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0033】
100、200、300、400 超音波乳化吸引ハンドピース
102、202、302、402 筐体
104、204、304、404 ホーン
106 トランスデューサ
108、208、308、408 長手方向中心軸
109 筐体の遠位端
110、210、310、410 空洞
111 筐体の近位端
112、212、312、412 内壁
114 シール
116、216、316、416 灌流管
118、218、318、418 ポート
220 鉛直軸
【国際調査報告】