(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】心臓弁修復補綴物、送達デバイス、および方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577430
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 US2022033315
(87)【国際公開番号】W WO2022266022
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398062149
【氏名又は名称】セダーズ-シナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェームズ・シーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・イー・オング
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC05
4C097SB02
(57)【要約】
分離可能な心室部材と心房部材とを含む心臓弁補綴物が提供される。心室部材は、接続特徴部を有する第1のハブを有する。少なくとも3つの腕部の各々が、第1の端において第1のハブに連結され、第1の端と反対の第2の端を有する。腕部は、心室部材が埋め込まれるときに心臓の弁尖の場所に向かう予荷重が掛けられる。心房部材は、フレーム配列に連結される第2のハブを有し、心房部材と心室部材とを一体に固定するために、第1のハブの接続特徴部に連結するように構成される接続特徴部を有する。フレーム配列は、心房部材が埋め込まれるときに心臓の弁尖の場所に向かう予荷重が掛けられる。係合した構成において心室部材の腕部を受け入れるために、窪みがフレーム配列の周辺に形成される。弁組織が腕部と窪みとの間で捕らえられ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の心室へと前進させられるように構成される心室部材であって、前記心室部材は、スロットを備える第1のハブであって、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線に隣接して配置されるように構成される第1のハブと、前記第1のハブに接続される第1の端と、前記第1の端と反対の第2の端とを各々が有する腕部の配列であって、各々の腕部の前記第2の端は自由状態において前記第1のハブに向けて偏向させられ、隣接する腕部の前記第2の端同士は互いに接続されず、前記第2の端のうちの1つまたは複数は前記第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され、前記第2の端のうちの1つまたは複数は前記第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成される、腕部の配列とを備える心室部材と、
前記第1の心臓弁尖と前記第2の心臓弁尖との接合の線に隣接して心房へと前進させられるように構成される心房部材であって、前記心房部材はタングとペタルの配列とを備える第2のハブを備え、前記タングは、前記心房部材と前記心室部材とが組み立てられるとき、前記第2のハブを前記第1のハブと係合させるために前記第1のハブの前記スロットへと係止するように構成され、前記ペタルの配列の各々のペタルは、前記第2のハブに接続される基端と、前記基端と反対の外側端とを有し、各々のペタルの前記外側端は前記第2のハブから離れるように偏向させられ、共用の内側支柱と別々の外側支柱とによって境界付けられる隣接するペタル同士は、前記共用の内側支柱と前記別々の外側支柱との接合部において窪みを形成する、心房部材と
を備え、
前記心房部材は、前記心室部材とは別体であり、前記第1のハブと前記第2のハブとが係合させられる前、前記心室部材に対して移動可能であり、
係合した構成において、前記心室部材の前記腕部は前記心房部材の前記窪みへ押し込まれる、心臓弁補綴物。
【請求項2】
前記心室部材および前記心房部材は形状記憶合金から作られる、請求項1に記載の心臓弁補綴物。
【請求項3】
前記心室部材および前記心房部材はニチノールを備える、請求項1に記載の心臓弁補綴物。
【請求項4】
各々の腕部の前記第2の端は先端を有し、前記先端は縮小部分と拡大部分とを有し、前記拡大部分は前記縮小部分の遠位にある、請求項1に記載の心臓弁補綴物。
【請求項5】
前記腕部の前記第2の端によって描かれる円に対して測定される心室締め付け直径が、前記ペタルの前記外側端によって描かれる円に対して測定される心房締め付け直径より小さい、請求項1に記載の心臓弁補綴物。
【請求項6】
前記腕部の前記第2の端によって描かれる円に対して測定される心室締め付け直径が約20mmである、請求項1に記載の心臓弁補綴物。
【請求項7】
前記ペタルの前記外側端によって描かれる円に対して測定される心房締め付け直径が約25mmである、請求項1に記載の心臓弁補綴物。
【請求項8】
心臓の心室へと前進させられるように構成される心室部材であって、前記心室部材は、スロットを有する第1のハブと、少なくとも3つの腕部とを備え、前記第1のハブは、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線に隣接して配置されるように構成され、各々の腕部は、前記第1のハブに接続される第1の端と、前記第1の端と反対の第2の端とを有し、隣接する腕部の前記第2の端同士は互いに接続されず、前記第2の端のうちの1つまたは複数は前記第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され、前記第2の端のうちの1つまたは複数は前記第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成される、心室部材と、
前記第1の心臓弁尖と前記第2の心臓弁尖との接合の線に隣接して心房へと前進させられるように構成される心房部材であって、前記心房部材はタングとフレーム配列とを有する第2のハブを備え、前記タングは、前記心房部材と前記心室部材とが組み立てられるとき、前記第2のハブを前記第1のハブと係合させるために前記第1のハブの前記スロットへと係止するように構成され、前記フレーム配列は、前記第2のハブに接続される基礎部分と、前記基礎部分と反対の外側部分とを有する複数のフレームを備え、各々のフレームは、2つの共用の支柱と2つの専用の支柱部分とを備え、前記2つの共用の支柱は、第1の端において前記第2のハブに接続され、前記基礎部分を形成し、前記2つの専用の支柱部分は、前記共用の支柱の各々の第2の端に取り付けられる、心房部材と
を備え、
各々のフレームはおおよそ四角形の領域を包囲し、隣接するフレーム同士は共用の支柱によって接続され、隣接するフレーム同士はそれらの間に窪みを形成し、
前記心房部材は、前記心室部材とは別体であり、前記第1のハブと前記第2のハブとが係合させられる前、前記心室部材に対して移動可能であり、
係合した構成において、前記心室部材の前記腕部は前記心房部材の前記窪みへ押し込まれる、心臓弁補綴物。
【請求項9】
前記四角形の領域はほぼ凧の形状である、請求項8に記載の心臓弁補綴物。
【請求項10】
凧の形状である前記領域は第1の二等辺三角形の領域と第2の二等辺三角形の領域とを有し、前記第1の二等辺三角形の領域は前記第2のハブに近接し、前記第1の二等辺三角形の領域は、前記第2の二等辺三角形の第2の高さより大きい第1の高さを有する、請求項9に記載の心臓弁補綴物。
【請求項11】
前記第1の高さは約5~9mmである、請求項10に記載の心臓弁補綴物。
【請求項12】
前記第2の高さは約2~6mmである、請求項10に記載の心臓弁補綴物。
【請求項13】
前記第1の高さは、前記第1の二等辺三角形の領域の第1の基礎幅の約2倍である、請求項10に記載の心臓弁補綴物。
【請求項14】
前記第2の高さは、前記第2の二等辺三角形の領域の第2の基礎幅の約1倍である、請求項10に記載の心臓弁補綴物。
【請求項15】
各々の腕部の前記第2の端は、前記心室部材と前記心房部材とが係合解除されるとき、前記第1のハブに向けて曲がる、請求項8に記載の心臓弁補綴物。
【請求項16】
前記フレームのうちの少なくとも1つの前記外側部分は、前記心室部材と前記心房部材とが係合解除されるとき、前記第2のハブから離れるように曲がる、請求項8に記載の心臓弁補綴物。
【請求項17】
前記腕部のうちの少なくとも1つの前記第2の端は、前記心室部材と前記心房部材とが係合解除されている状態から係合されている状態へと移行させられるとき、前記第1のハブに向けて第1の量で曲げられている状態から、前記第1のハブに向けて第2の量で曲げられている状態へと移行する、請求項8に記載の心臓弁補綴物。
【請求項18】
前記心房部材の窪みによって加えられる力が、前記心室部材の腕部を、前記第1の量で曲げられている状態から前記第2の量で曲げられている状態へと曲げる、請求項17に記載の心臓弁補綴物。
【請求項19】
前記第2の量は前記第1の量より小さい、請求項17に記載の心臓弁補綴物。
【請求項20】
各々のフレームの前記外側部分は、前記心室部材と前記心房部材とが係合解除されている状態から係合されている状態へと移行させられるとき、前記第2のハブから離れるように第1の量で曲げられている状態から、前記第2のハブから離れるように第2の量で曲げられている状態へと移行する、請求項8に記載の心臓弁補綴物。
【請求項21】
前記心室部材の腕部によって加えられる力が、前記心房部材のフレームを、前記第1の量で曲げられている状態から前記第2の量で曲げられている状態へと曲げる、請求項20に記載の心臓弁補綴物。
【請求項22】
前記第1の量は前記第2の量より小さい、請求項20に記載の心臓弁補綴物。
【請求項23】
各々の窪みの底が各々の共用の支柱の長手方向軸と位置合わせされる、請求項8に記載の心臓弁補綴物。
【請求項24】
各々の窪みの底がフレームの中心径方向軸と位置合わせされる、請求項8に記載の心臓弁補綴物。
【請求項25】
心臓の心室へと前進させられるように構成される心室部材であって、
スロットを備える第1のハブであって、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線に隣接して配置されるように構成される第1のハブ、および、
前記第1のハブに接続される第1の端と、前記第1の端と反対の第2の端とを各々が有する少なくとも3つの腕部であって、前記第2の端のうちの1つまたは複数は前記第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され、前記第2の端のうちの1つまたは複数は前記第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成される、少なくとも3つの腕部
を備える心室部材と、
心房へと前進させられ、接合の線を横切って位置決めされるように構成される心房部材であって、
前記心房部材と前記心室部材とが組み立てられるとき、前記第1のハブの前記スロットへと係止するためのタングを備える第2のハブ、および、
前記心室部材の少なくとも1つの腕部を中心付けるための少なくとも1つの中心合わせ機構
を備える心房部材と
を備え、
前記心房部材への前記心室部材の係合の間、前記心房部材の前記中心合わせ機構は、前記第2のハブの前記タングが前記第1のハブの前記スロットと係合するとき、前記心室部材の前記腕部を所定の位置および/または配向へと案内する、心臓弁補綴物。
【請求項26】
前記少なくとも1つの中心合わせ機構は、窪みを備える、請求項25に記載の心臓弁補綴物。
【請求項27】
前記心房部材は、前記心室部材の各々の腕部に対応する中心合わせ機構を備える、請求項25に記載の心臓弁補綴物。
【請求項28】
心臓弁補綴物を送達するためのシステムであって、
送達デバイスと、補綴物とを備え、
前記送達デバイスは、
送達ハンドルであって、
筐体、および、
前記筐体に配置される複数の滑動部
を備える送達ハンドル、
第1の状態において前記滑動部の運動を防止し、第2の状態においてある範囲の運動を許容するように構成される複数の取り外し可能なロックアウト部、
シース組立体であって、
外側シース、および、
前記外側シースの中に配置される内側シースであって、前記外側シースは前記内側シースに対して移動可能である、内側シース
を備えるシース組立体、および、
前記外側シースを後退させるように構成される案内ハンドル
を備え、
前記補綴物は、
少なくとも3つの腕部を備える心室部材であって、各々の腕部はハブに連結される第1の端を有する、心室部材、および、
前記心室部材の前記ハブと連結するように構成されるハブと、前記心室部材の前記少なくとも3つの腕部うちの少なくとも1つを中心付けるための窪みを備える少なくとも1つの中心合わせ機構とを備える心房部材
を備え、
前記送達ハンドルは、前記滑動部および前記ロックアウト部の移動によって、心臓の中での前記補綴物の移動および位置決めを制御するように構成される、システム。
【請求項29】
前記外側シースの遠位端に連結されるノーズコーンをさらに備える、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記ノーズコーンは、前記補綴物を前記外側シースから出させるために、前記ノーズコーンを開けるように構成される複数のスリットを備える、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記ノーズコーンは、前記補綴物を前記外側シースから出させるために、拡張するように構成される柔軟な先端を備える、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記ノーズコーンは、前記外側シースを取り囲み、前記補綴物を前記外側シースから出させるために、後退させられるように構成される、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
前記外側シースの中に配置される膨張バルーンをさらに備え、前記膨張バルーンは、前記補綴物が前記外側シースから出るのを防止するために膨張させられるように構成され、前記補綴物を前記外側シースから出させるために収縮させられるように構成される、請求項28に記載のシステム。
【請求項34】
前記筐体と連結され、前記外側シースの内面と前記内側シースの外面との間に配置される空間に流体を供給するように構成される流体の供給源をさらに備える、請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記筐体と連結され、前記外側シースの内面と前記内側シースの外面との間に配置される複数の空間に流体を供給するように構成される流体の供給源をさらに備える、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記外側シースの内面と前記内側シースの外面との間に配置される複数の空間と連結される複数の流体供給源をさらに備え、前記複数の流体供給源のうちの前記流体供給源のうちの1つは、前記外側シースの前記内面と前記内側シースの前記外面との間の前記空間の各々1つに流体を供給する、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
心臓において処置を実施する方法であって、
送達カテーテルを前記心臓へと前進させるステップと、
心室部材を前記心臓の心室へと前記送達カテーテルに通すステップであって、前記心室部材は少なくとも3つの腕部を備え、各々の腕部は、ハブに連結される第1の端を有する、ステップと、
心房部材を前記心臓の心房へと前記送達カテーテルに通すステップであって、前記心房部材は、前記心室部材の前記少なくとも3つの腕部のうちの少なくとも1つを中心付けるための窪みを備える少なくとも1つの中心合わせ機構を備える、ステップと、
組織が前記心室部材と前記心房部材との間で圧縮されるように前記心室部材と前記心房部材とを位置合わせするステップと、
前記心室部材の前記ハブを前記心房部材のハブに挿入するステップと、
前記心室部材を前記心房部材に固定するステップと
を含む方法。
【請求項38】
前記送達カテーテルは、
筐体に配置される複数の滑動部と、
第1の状態において前記滑動部の運動を防止し、第2の状態においてある範囲の運動を許容するように構成される複数の取り外し可能なロックアウト部と
を備える送達ハンドルに連結され、
前記滑動部および前記ロックアウト部は、前記心室部材および前記心房部材を前記送達カテーテルに通すように構成される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組織は三尖弁である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記送達カテーテルに連結される送達ハンドルに連結される流体の供給源を介して、前記送達カテーテルの中に配置される空間に流体を供給するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記送達カテーテルの中に配置される複数の空間に流体を供給するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記送達カテーテルの遠位端に連結されるノーズコーンにおける複数のスリットを開放するステップをさらに含み、前記スリットを開放することで、前記心室部材および前記心房部材は前記送達カテーテルの前記遠位端を通過することができる、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
心臓において処置を実施する方法であって、
送達カテーテルを、心臓に隣接して、または心臓の中に位置決めするステップと、
心室部材を前記心臓の右心室へと前記送達カテーテルに通すステップであって、前記心室部材は少なくとも3つの腕部を備え、各々の腕部は、ハブに連結される第1の端を有する、ステップと、
前記心室部材を三尖弁の弁尖の第1の側に接して位置決めするステップと、
心房部材を前記心臓の右心房へと前記送達カテーテルに通すステップであって、前記心房部材は、前記心室部材の前記少なくとも3つの腕部のうちの少なくとも1つを中心付けるための窪みを備える少なくとも1つの中心合わせ機構を備える、ステップと、
前記心房部材を前記三尖弁の前記弁尖の第2の側に接して位置決めするステップと、
前記三尖弁の弁尖が前記心室部材と前記心房部材との間で圧縮されるように前記心室部材と前記心房部材とを位置合わせするステップと、
前記心室部材の前記ハブを前記心房部材のハブに挿入するステップと、
前記心室部材を前記心房部材に固定するステップと
を含む方法。
【請求項44】
前記送達カテーテルは、
筐体に配置される複数の滑動部と、
第1の状態において前記滑動部の運動を防止し、第2の状態においてある範囲の運動を許容するように構成される複数の取り外し可能なロックアウト部と
を備える送達ハンドルに連結され、
前記滑動部および前記ロックアウト部は、前記心室部材および前記心房部材を前記送達カテーテルに通すように構成される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記送達カテーテルに連結される送達ハンドルに連結される流体の供給源を介して、前記送達カテーテルの中に配置される空間に流体を供給するステップをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記流体の供給源は、前記送達カテーテルの中に配置される複数の空間に流体を供給するように構成される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記送達カテーテルの遠位端に連結されるノーズコーンにおける複数のスリットを開放するステップをさらに含み、前記スリットを開放することで、前記心室部材および前記心房部材は前記送達カテーテルの前記遠位端を通過することができる、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記送達カテーテルは大腿静脈を通じて前進させられる、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記送達カテーテルは頸静脈を通じて前進させられる、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先出願の参照による組み込み
本出願と一緒に提出された出願データシートにおいて外国または国内の優先権の主張が特定されているありとあらゆる出願は、37 CFR 1.57の下で本明細書に参照によって組み込まれる。例えば、本出願は、2021年6月15日に出願された米国仮特許出願第63/210898号の優先権を主張し、この特許出願は、その全体が本明細書で参照により組み込まれる。
【0002】
本出願は、好ましくは外科手術なしで、弁逆流を治療するように構成される心臓弁補綴物を対象とする。
【背景技術】
【0003】
心臓弁逆流は、弁がこのような流れを防止すべきであったときに血液が弁を通じて逆行して流れてしまう、様々な原因から生じる状態である。逆流は、僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁、および三尖弁を含む、心臓のいくつかの弁において起こる可能性がある。
【0004】
三尖弁は右下心腔(右心室)を右上心腔(右心房)から分離する。三尖弁逆流は、この弁が十分に密に閉じない疾患である。この問題は、右下心腔(心室)が収縮するとき、血液を右上心腔(心房)へと逆行して流してしまう。三尖弁逆流は、右心室が収縮するごとに三尖弁を通る血液逆行の漏れである。三尖弁逆流は、下側の心腔(心室と呼ばれる)の拡大から、または、右心室から肺への血流を抑制する任意の他の状態から、通常は生じる。ときには、肺気腫または肺動脈弁狭窄などの長期にわたる疾患が、肺から「上流」にある三尖弁に影響を与える問題を引き起こす可能性がある。相殺するために、右心室は、より強く汲み出すことができるように拡大し、これが三尖弁の開口を引き伸ばし、だらりと垂れさせてしまうことがある。
【0005】
弁修復は、三尖弁の疾病のための最も一般的な外科治療である。この処置は、単独で、または、他の心臓の問題のための治療との組み合わせで、行うことができる。人工弁輪を使用する三尖弁修復は、三尖弁逆流のための一般的な外科的アプローチであり、原発性三尖弁疾患のために、または、他の弁手術(僧帽弁、大動脈弁)との組み合わせの場合のために、実施することができる。従来の三尖弁修復は、胸骨を貫く6~8インチの切開を通じて実施される心臓切開処置である。
【0006】
三尖弁修復のための経カテーテルシステムが探求されているが、このようなシステムは、最適未満の決定的な結果を提供し、使用するのが複雑であり、耐久性に欠け、患者が抗凝固剤処置されない場合、弁での血栓形成の非常に高い危険性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの理由のため、三尖弁修復の低侵襲方法に対する要求が存在する。本開示は、血管内で送達させることができる弁固定デバイスを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、心室部材と心房部材とを備える心臓弁補綴物が提供される。心室部材は心臓の心室へと前進させられるように構成される。心室部材は、1つまたは複数のスロットと腕部の配列とを備えるハブ(第1のハブと称されることもある)を有する。第1のハブは、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線に隣接して配置されるように構成され得る。第1のハブは、接合の線の心室側に、接合の線の中に、および/または接合の線の心房側へ、位置決めされ得る。腕部の配列の各々の腕部は、第1のハブに接続される第1の端と、第1の端と反対の第2の端とを有し得る。1つまたは複数の腕部(例えば、各々の腕部)の第2の端は、自由状態において第1のハブに向けて偏向させられ得る。隣接する腕部の第2の端同士は互いに接続されない。例えば、隣接する腕部の第2の端同士は、いくつかの実施形態では周方向において互いに接続されない。腕部同士は、いくつかの実施形態では、第1の端と第2の端との間のその長さに沿って、互いに接続されない。腕部の第2の端のうちの1つまたは複数は、第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。腕部の第2の端のうちの1つまたは複数は、第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。心房部材は、接合の線に隣接して、心房へと前進させられるように構成される。心房部材は、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線を横切って(例えば、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との間の隙間に広がって)位置決めすることができる。心房部材は、心室部材の腕部から第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線を横切って(例えば、接合の線の反対側に)位置決めすることができる。心房部材は、例えば複数のタングといった、1つまたは複数のタングとペタルの配列とを有する第2のハブを有する。タングは、心房部材と心室部材とが組み立てられるとき、第2のハブを第1のハブと係合させるために第1のハブのスロットへと係止するように構成され得る。ペタルの配列の各々のペタルといった1つまたは複数のペタルは、第2のハブに接続される基端と、基端と反対の外側端とを有する。各々のペタルといった1つまたは複数のペタルの外側端は第2のハブから離れるように偏向させられる。各々の隣接するペタルといった1つまたは複数の隣接するペタルは、共用の内側支柱と別々の外側支柱とによって境界付けられ、共用の内側支柱と別々の外側支柱との接合部において窪みを形成する。心房部材は、心室部材とは別体であり、第1のハブと第2のハブとが係合させられる前、心室部材に対して移動可能である。係合した構成において、心室部材の腕部は心房部材の窪みへ押し込まれる。
【0009】
心臓弁補綴物の心室部材が提供され得る。心室部材または締め付け部材は、中心部材の周りに配置される複数の腕部を有し得る。腕部は2つまたは3つの心臓弁尖に集合的に広がることができる。複数の腕部の各々の腕部は、中心部材に向けて偏向させられる自由端を有し得る。隣接する腕部の第2の端同士は互いに接続されない。例えば、隣接する腕部の第2の端同士は、いくつかの実施形態では周方向において互いに接続されない。腕部同士は、いくつかの実施形態では、第1の端と第2の端との間のその長さに沿って、互いに接続されない。腕部の第2の端のうちの1つまたは複数は、第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。腕部の第2の端のうちの1つまたは複数は、第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。
【0010】
心室部材または心室締め付け部の中心部材はハブを備え得る。ハブは、心房締め付け部といった他の弁尖捕獲部材との係合のためのスロットまたはタングを有し得る。
【0011】
心臓弁補綴物の心房部材または心房締め付け部が提供され得る。心房部材は、合致する心室部材または締め付け部から、第1の心臓弁尖および第2の心臓弁尖を、例えば反対側へなど、横切って位置決めすることができる。心房部材は中心部材とペタルの配列とを有し得る。ペタルの配列の各々のペタルといった1つまたは複数のペタルは、中心部材に接続され、中心部材と反対に外側端を有する。各々のペタルといった1つまたは複数のペタルの外側端は中心部材から離れるように偏向させられる。ペタルは、対称的であり、心房部材の中心部材の中心の周りに対称的に配置されるフレーム部材の配列を備え得る。対称的でない(非対称の)フレーム、または、対称的でない(非対称の)様態で配置される対称的なフレームが、いくつかの実施形態で提供され得る。
【0012】
各々の隣接するペタルといった1つまたは複数の隣接するペタルが、中心部材に隣接する径方向支柱によって境界付けられ得る。径方向支柱は、共用の内側支柱であり得る、または共用の内側支柱を備え得る。ペタル同士は別々の外側支柱によって境界付けられ得る。共用の内側支柱と別々の外側支柱との接合部に窪みがある。
【0013】
心臓弁補綴物に一緒に設けられる場合、心房部材は、心室部材とは別体であり得、心室部材埋め込みの前に心室部材に対して移動可能であり得る。心室部材の中心部材および心房部材の中心部材は、心室部材と心房部材との一緒になる移動に続いて係合させられ得る。係合した構成において、心室部材の腕部は、弁尖が心室部材と心房部材との間で圧縮されるように、例えば、心房部材の隣接するペタルの間に形成される窪みへなど、心房部材に押し当てられ得る。係合した構成において、心房部材は、弁尖が心房部材と腕部との間で圧縮されるように、1つまたは複数の腕部を偏向させることができる。係合した構成において、心房部材のペタルおよび心室部材の腕部は両方とも、弁尖がペタルと腕部との間で圧縮されるように偏向することができる。
【0014】
心室部材が心房部材と係合させられるとき、心室部材の一部分が、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線を横切って(例えば、弁尖同士の間の隙間に広がって)位置決めすることができる。心房部材は、心室部材と係合するためにスロットまたはタングを備え得る。心房部材がタングを備える場合、タングは、心房部材と心室部材とが組み立てられるとき、心室部材の中心部材に配置されたスロットへと係止するように構成され得る。心房部材がスロットを備える場合、スロットは、心房部材と心室部材とが組み立てられるとき、心室部材の中心部材から突出したタングへと係止するように構成され得る。
【0015】
他の実施形態において、心室部材と心房部材とを備える心臓弁補綴物が提供される。心房部材は、心室部材とは別体であり、例えば組み立ての前に、心室部材に対して移動可能である。心房部材および心室部材は、いくつかの実施形態では、心臓における組み立てのために構成される。例えば、心室部材の第1のハブの接続特徴部および心房部材の第2のハブの接続特徴部は、心臓の内側で係合させられ得る。心室部材は心臓の心室へと前進させられるように構成され得る。心室部材は、スロットを有する第1のハブと少なくとも3つの腕部とを有し得る。第1のハブは、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線に隣接して配置されるように構成され得る。各々の腕部は、第1のハブに接続される第1の端と、第1の端と反対の第2の端とを有することができ、隣接する腕部の第2の端同士は互いに接続されない。第2の端のうちの1つまたは複数は第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され、第2の端のうちの1つまたは複数は第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成される。心房部材は、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線を横切って、心房へと少なくとも部分的に前進させられるように構成され得る。心房部材は、タングを有する第2のハブを有する。心房部材はフレーム配列を有する。第2のハブのタングは、心房部材と心室部材とが組み立てられるとき、第2のハブを第1のハブと係合させるために第1のハブのスロットへと係止するように構成される。フレーム配列を複数のフレームを備える。フレームは、第2のハブに接続される基礎部分と、基礎部分と反対の外側部分とを有する。フレーム配列の各々のフレームは、2つの共用の支柱と2つの専用の支柱部分とを有する。2つの共用の支柱は、第1の端において第2のハブに接続され、基礎部分を形成する。2つの専用の支柱部分は、共用の支柱の各々の第2の端に取り付けられる。例えば各々のフレームといった1つまたは複数のフレームは、おおよそ四角形の領域を包囲する。隣接するフレーム同士は共用の支柱によって接続される。隣接するフレーム同士はそれらの間に窪みを形成する。係合した構成において、心室部材の腕部は心房部材の窪みへ押し込まれる。
【0016】
他の実施形態において、心臓弁補綴物が心室部材と心房部材とを備える。心房部材は、心室部材とは別体であり得、例えば係合の前に、心室部材に対して移動可能であり得る。心房部材への心室部材の係合の間、心房部材の中心合わせ機構が、心室部材および心房部材の一方(例えば、心房部材のハブ)の接続特徴部(例えば、タング)が心室部材および心房部材の他方の接続特徴部(例えば、心室部材の第1のハブのスロット)と係合するとき、心室部材の腕部を所定の位置および/または配向へと案内する。心室部材は心臓の心室へと前進させられるように構成される。心室部材は第1のハブと少なくとも3つの腕部とを備え得る。第1のハブはスロットを有する。第1のハブは、第1の心臓弁尖と第2の心臓弁尖との接合の線に隣接して配置されるように構成される。少なくとも3つの腕部の各々の腕部は、第1のハブに接続される第1の端と、第1の端と反対の第2の端とを有する。腕部の第2の端のうちの1つまたは複数は第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され、第2の端のうちの1つまたは複数は第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成される。心房部材は、心房へと前進させられ、接合の線を横切って位置決めされるように構成される。心房部材は第2のハブと少なくとも1つの中心合わせ機構とを備える。心房部材と心室部材とが組み立てられるとき、第2のハブは、接触特徴部(例えば、第1のハブのスロット)へと係止するための接続特徴部(例えば、タング)を有する。少なくとも1つの中心合わせ機構は、心室部材の少なくとも1つの腕部を中心付けるように構成される。心房部材への心室部材の係合の間、心房部材の中心合わせ機構は、第2のハブの接続特徴部(例えば、タング)が第1のハブの接続特徴部(例えば、スロット)と係合するとき、心室部材の腕部を所定の位置および/または配向へと案内する。
【0017】
前述のことの変形において、第2の端に隣接する腕部のうちの1つまたは複数の広がりが、第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。第2の端に隣接する腕部のうちの1つまたは複数の広がりは、第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。第2の端から延びる腕部のうちの1つまたは複数の広がりが、第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。第2の端から延びる腕部のうちの1つまたは複数の広がりは、第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。腕部のうちの1つまたは複数の広がりの全体が、第1の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。腕部のうちの1つまたは複数の広がりの全体が、第2の心臓弁尖との直接的な接触へと配置されるように構成され得る。
【0018】
前述のことのさらなる実施形態が、心室部材の第1のハブおよび心房部材の第2のハブに他の接続特徴部を提供することができる。例えば、心室部材の第1のハブには、複数のタングといった1つまたは複数のタングが提供されてもよく、心房部材の第2のハブは、複数のスロットといった1つまたは複数のスロットを有してもよい。第1のハブのタングは、心房部材と心室部材とが組み立てられるとき、第1のハブを第2のハブと係合させるために第2のハブのスロットへと係止するように構成され得る。他の実施形態では、心室部材の第1のハブは、複数のタングといった1つまたは複数のタングと、複数のスロットといった1つまたは複数のスロットとで構成され得る。心房部材の第2のハブは、複数のタングといった1つまたは複数のタングと、複数のスロットといった1つまたは複数のスロットとで構成され得る。スロットおよびタングは第1のハブの周辺の周りで交互になることができる。スロットおよびタングは第2のハブの周辺の周りで交互になることができる。この状況におけるハブの周りでの交互は、第1の連結特徴部を設けることに続いて、第1の連結特徴部から周方向で離間されるといった、離間された異なる種類の第2の接続特徴部を設けることを含み得る。
【0019】
他の実施形態において、心臓弁補綴物を送達するためのシステムが提供される。システムは送達デバイスと補綴物とを含み得る。送達デバイスは、送達ハンドルと、複数の取り外し可能ロックアウト部と、シース組立体と、案内ハンドルとを備え得る。送達ハンドルは、筐体と、筐体に配置される複数の滑動部とを備え得る。複数の取り外し可能ロックアウト部は、第1の状態において滑動部の運動を防止し、第2の状態においてある範囲の運動を許容するように構成され得る。シース組立体は、外側シースと、外側シースの中に配置される内側シースとを備えることができ、外側シースは内側シースに対して移動可能である。案内ハンドルは外側シースを後退させるように構成され得る。補綴物は心室部材と心房部材とを備え得る。心室部材は少なくとも3つの腕部を備えることができ、各々の腕部はハブに連結される第1の端を有する。心房部材は、心室部材のハブと連結するように構成されるハブと、心室部材の少なくとも3つの腕部うちの少なくとも1つを中心付けるための窪みを備える少なくとも1つの中心合わせ機構とを備え得る。送達ハンドルは、滑動部およびロックアウト部の移動によって、心臓の中での補綴物の移動および位置決めを制御するように構成され得る。
【0020】
前述のことの変形において、システムは以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。システムは、外側シースの遠位端に連結されるノーズコーンを備え得る。ノーズコーンは、補綴物を外側シースから出させるために、ノーズコーンを開けるように構成される複数のスリットを備え得る。ノーズコーンは、補綴物を外側シースから出させるために、拡張するように構成される柔軟な先端を備え得る。ノーズコーンは、外側シースを取り囲むことができ、補綴物を外側シースから出させるために、後退させられるように構成され得る。システムは、外側シースの中に配置される膨張バルーンを備えることができ、膨張バルーンは、補綴物が外側シースから出るのを防止するために膨張させられるように構成され、補綴物を外側シースから出させるために収縮させられるように構成される。システムは、筐体と連結され、外側シースの内面と内側シースの外面との間に配置される空間に流体を供給するように構成される流体の供給源を備え得る。システムは、筐体と連結され、外側シースの内面と内側シースの外面との間に配置される複数の空間に流体を供給するように構成される流体の供給源を備え得る。システムは、外側シースの内面と内側シースの外面との間に配置される複数の空間と連結される複数の流体供給源を備えることができ、複数の流体供給源のうちの流体供給源のうちの1つは、外側シースの内面と内側シースの外面との間の空間の各々1つに流体を供給する。
【0021】
他の実施形態では、心臓において処置を実施するための方法が提供される。方法は、送達カテーテルを心臓へと前進させるステップと、心室部材を心臓の心室へと送達カテーテルに通すステップであって、心室部材は少なくとも3つの腕部を備え、各々の腕部は、ハブに連結される第1の端を有する、ステップと、心房部材を心臓の心房へと送達カテーテルに通すステップであって、心房部材は、心室部材の少なくとも3つの腕部のうちの少なくとも1つを中心付けるための窪みを備える少なくとも1つの中心合わせ機構を備える、ステップと、組織が心室部材と心房部材との間で圧縮されるように心室部材と心房部材とを位置合わせするステップと、心室部材のハブを心房部材のハブに挿入するステップと、心室部材を心房部材に固定するステップとを含み得る。
【0022】
前述のことの変形において、システムは以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。送達カテーテルは送達ハンドルに連結させることができ、送達ハンドルは、筐体に配置される複数の滑動部と、第1の状態において滑動部の運動を防止し、第2の状態においてある範囲の運動を許容するように構成される複数の取り外し可能ロックアウト部とを備える。滑動部およびロックアウト部は、心室部材および心房部材を送達カテーテルに通すように構成され得る。組織は三尖弁であり得る。方法は、送達カテーテルに連結される送達ハンドルに連結される流体の供給源を介して、送達カテーテルの中に配置される空間に流体を供給するステップを含み得る。方法は、送達カテーテルの中に配置される複数の空間に流体を供給するステップを含み得る。方法は、送達カテーテルの遠位端に連結されるノーズコーンにおける複数のスリットを開放するステップを含むことができ、スリットを開放することで、心室部材および心房部材は送達カテーテルの遠位端を通過することができる。
【0023】
他の実施形態では、心臓において処置を実施するための方法が提供される。方法は、心室部材を心臓の右心室へと送達カテーテルに通すステップであって、心室部材は少なくとも3つの腕部を備え、各々の腕部は、ハブに連結される第1の端を有する、ステップと、心室部材を三尖弁の弁尖の第1の側に接して位置決めするステップと、心房部材を心臓の右心房へと送達カテーテルに通すステップであって、心房部材は、心室部材の少なくとも3つの腕部のうちの少なくとも1つを中心付けるための窪みを備える少なくとも1つの中心合わせ機構を備える、ステップと、心房部材を三尖弁の弁尖の第2の側に接して位置決めするステップと、三尖弁の弁尖が心室部材と心房部材との間で圧縮されるように心室部材と心房部材とを位置合わせするステップと、心室部材のハブを心房部材のハブに挿入するステップと、心室部材を心房部材に固定するステップとを含み得る。
【0024】
前述のことの変形において、システムは以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。送達カテーテルは送達ハンドルに連結させることができ、送達ハンドルは、筐体に配置される複数の滑動部と、第1の状態において滑動部の運動を防止し、第2の状態においてある範囲の運動を許容するように構成される複数の取り外し可能ロックアウト部とを備える。滑動部およびロックアウト部は、心室部材および心房部材を送達カテーテルに通すように構成され得る。方法は、送達カテーテルに連結される送達ハンドルに連結される流体の供給源を介して、送達カテーテルの中に配置される空間に流体を供給するステップを含み得る。流体の供給源は、送達カテーテルの中に配置される複数の空間に流体を供給するように構成され得る。方法は、送達カテーテルの遠位端に連結されるノーズコーンにおける複数のスリットを開放するステップを含むことができ、スリットを開放することで、心室部材および心房部材は送達カテーテルの遠位端を通過することができる。送達カテーテルは大腿静脈を通じて前進させることができる。送達カテーテルは頸静脈を通じて前進させることができる。
【0025】
本出願の主題のより完全な理解、および本出願の主題の様々な利点は、添付の図面が参照される以下の詳細な記載を参照することで理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】カテーテルに基づく送達システムと連結された心臓弁修復デバイスの斜視図である。
【
図1A】正常な拡張期における心臓の断面図である。
【
図1B】正常な収縮期における心臓の断面図である。
【
図1C】弁尖の縁に沿って接合が不十分であるか接合がないため、修復の必要性がある心臓の三尖弁の収縮期における上面図である。
【
図1D】弁の罹患状態を改善するために、弁尖を横切ってのデバイスの配置についての場所の非限定的な選択を示す、
図1Cの三尖弁の上面図である。
【
図2】折り畳み状態における
図1の心臓弁補綴物の心室部材の斜視図である。
【
図3】
図2に示された心室部材の拡張した状態における斜視図である。
【
図3A】拡張した状態における
図2の心室部材の1つの腕部およびハブの屈曲角形成を示す概略図である。
【
図4】折り畳み状態における
図1の心臓弁補綴物の心房部材の斜視図である。
【
図5】
図4に示された心房部材の拡張した状態における斜視図である。
【
図5A】拡張した状態における
図5の心房部材の1つのフレームおよびハブの屈曲角形成を示す概略図である。
【
図6A】第1の送達状態における送達システムの図である。
【
図6B】第2の送達状態における
図6Aの送達システムの図である。
【
図6C】第3の送達状態における
図6Aの送達システムの図である。
【
図6D】第4の送達状態における
図6Aの送達システムの図である。
【
図6E】第5の送達状態における
図6Aの送達システムの図である。
【
図6F】第6の送達状態における
図6Aの送達システムの図である。
【
図6G】流体供給源を備える送達ハンドルを含む
図6Aの送達システムの実施形態の図である。
【
図7A】心房の室内から示されている、心臓において固定された心臓弁補綴物の図である。
【
図7B】心臓に埋め込まれた
図7Aの心臓弁補綴物の心室の室内からの図である。
【
図7C】心臓弁補綴物の心房部材側から示された、心臓弁組織に固定された心臓弁補綴物を示す
図7Aと同様の図である。
【
図7D】心臓弁補綴物の心室部材側から示された、心臓弁組織に固定された心臓弁補綴物を示す
図7Bと同様の図である。
【
図8A】心臓弁補綴物を通る血液の流れを制御するために、再封止可能な弁によって提供される栓の機能が心室部材のハブに設けられている心臓弁補綴物の他の実施形態の図である。
【
図8B】心臓弁補綴物を通る血液の流れを制御するために、再封止可能な弁によって提供される栓の機能が心室部材のハブに設けられている心臓弁補綴物の他の実施形態の図である。
【
図9A】心臓弁補綴物を通る血液の流れを制御するために、折り畳み可能部材によって提供される栓の機能が心室部材のハブに設けられている心臓弁補綴物の他の実施形態の図である。
【
図9B】心臓弁補綴物を通る血液の流れを制御するために、折り畳み可能部材によって提供される栓の機能が心室部材のハブに設けられている心臓弁補綴物の他の実施形態の図である。
【
図10A】
図6Aの送達システムの遠位先端またはその近くに設けられる様々なノーズコーンの実施形態の図である。
【
図10B】
図6Aの送達システムの遠位先端またはその近くに設けられる様々なノーズコーンの実施形態の図である。
【
図10C】
図6Aの送達システムの遠位先端またはその近くに設けられる様々なノーズコーンの実施形態の図である。
【
図10D】
図6Aの送達システムの遠位先端またはその近くに設けられる様々なノーズコーンの実施形態の図である。
【
図10E】
図6Aの送達システムの遠位先端またはその近くに設けられる様々なノーズコーンの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
弁逆流を患う患者を治療するのに有用である弁修復デバイスおよび方法の様々な実施形態のより詳細な記載が以下において述べられている。
【0028】
本出願は、心臓弁修復補綴物と、送達デバイスと、心臓弁修復補綴物を送達および埋め込みするための方法とを対象とする。
図1は、心臓弁補綴物100および送達システム400の一実施形態を示している。心臓弁補綴物100と、本明細書で開示されている他の実施形態とは、他の先行のデバイスおよび方法におけるものより信頼できる弁尖の捕獲を提供する。構成要素および組立体は、安全性を高めるために、より少ない、最小限の、または非侵襲的なデバイスの材料および構成を有する。後でさらに述べられているように、本明細書で開示されているデバイスおよび方法は、重度の三尖弁の弁逆流のための向上した治療を提供する。心臓弁補綴物100は、カバー223を伴う心房部材212と、送達および組み立てにおいて腱を回避するように、および、非侵襲的な相互作用を弁尖組織に提供するように構成された心室部材112とを備える。後でさらに詳細に述べられているこれらの構成要素および組立体は、三尖弁の生体構造の理解を取り入れた、三尖弁の弁逆流を治療することへの生理学的な手法によって特徴付けられる。
【0029】
I. 心臓弁逆流およびその血管内治療
先に述べられているように、弁尖の不十分な接合が主な問題である。
図1A~
図1Cは、この問題と、この問題を修正するための技術とを示している。
図1Aは、正常な拡張期における心臓10の概略的な描写である。心臓10は4つの室から成り、三尖弁12が右心房14と右心室16との間に位置付けられている。
図1Bは、正常な収縮期における心臓10を示しており、三尖弁12の弁尖LF1、LF2、LF3がそれらの出会う場所で互いに接触しているところを示している。この弁尖の接触は、接合の線と呼ばれることもある弁尖の長さに沿って右心房14を右心室16から封止する。
【0030】
図1Cは、不具合のある三尖弁12を概略的に示している。この図は、右心房からの図といった、上方から三尖弁を示している。
図1Cは、収縮期の間、弁尖の縁同士の間に大きい隙間Gがあり、これらの弁尖に沿って接合の完全な欠如を伴う。
図1Dは、本明細書に記載されている心臓弁補綴物が収縮期における弁の機能をどのように改善するかを示している。この図において、心臓弁補綴物100は、三尖弁の弁尖の中に配置されており、弁尖を捕獲している。明確には、心臓弁補綴物100は、各々の弁尖が心臓弁補綴物100の心房部材212のフレーム部材またはペタルによって係合させられるように適用される。また、弁の各々の弁尖は心室部材112の腕部によって係合させられる。腕部の第2の端136と心房部材212のフレーム222またはペタル236とが、弁12を通る逆流を低減または排除するために、心臓弁尖LF1、LF2、LF3を把持する。
図1Dは、心臓弁補綴物100の簡略化されたものを表しており、3個のフレーム222と3本の腕部124とを示している。心臓弁補綴物100は、2個のフレーム222および2本の腕部124を備え得るか、または、例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、もしくは13個以上のフレーム222、および4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、11本、12本、もしくは13本以上の腕部124、またはこれらの数のフレームと腕部との任意の組み合わせを含め、任意の数の腕部といった、4個以上のフレーム222および4本以上の腕部124を備え得る。いくつかの実施形態では、例えば12個のフレーム222および6本の腕部124といった、腕部124より多くのフレーム222がある、または、心臓弁補綴物100を形成するために、これらの構成要素の各々の前述の数からのフレームおよび腕部の他の組み合わせがある。いくつかの実施形態では、例えば12個の腕部124および6本のフレーム222といった、フレーム222より多くの腕部124がある、または、心臓弁補綴物100を形成するために、これらの構成要素の各々の前述の数からのフレームおよび腕部の他の組み合わせがある。心臓弁補綴物100は、接合の線に沿っての弁の覆われていない一部分が閉じない場合であっても、弁12の実質的な一部分を通る流れを妨害するカバー223を有する。その結果、逆の流れ(逆流)の量が、収縮期において減少または防止されることになる。弁尖は、拡張期において、血液を右心房から右心室へと流すのに十分な分離をなおもすることができる。
【0031】
本開示は、少なくとも漏れの中心領域の閉鎖を示している、または、弁12の覆われていない一部分を収縮期において閉じさせる。結果的に修復された弁は、心臓10を通る健常な血流を提供することがはるかにより可能となる。
【0032】
II. 心臓弁修復システム
三尖弁12を心臓弁補綴物100の実施形態で治療する一例を示しているが、心臓弁逆流を患う患者を治療するための心臓弁補綴物100および治療システム50の様々な実施形態の追加の詳細がここで述べられる。
図1は、送達システム400と連結された心臓弁補綴物100を備える治療システム50を示している。心臓弁補綴物100は、先に記載されているように、三尖弁の弁逆流を治療するのに特によく適している。
【0033】
心臓弁補綴物100は心室部材112と心房部材212とを備える。心室部材112は、送達システム400によって、右心室といった心臓の心室へと前進させられるように構成されている。心房部材212は、送達システム400によって、右心房といった心臓の心房へと前進させられるように構成されている。送達システム400のさらなる考察は後で述べられている。
【0034】
心臓弁補綴物100が
図2~
図5でさらに示されている。
図2は、心室部材112の折り畳まれた構成を示している。心室部材112は、本明細書では第1のハブ116と称されることもあるハブ116を備える。心室部材112は、第1のハブ116を通じて形成された1つまたは複数のスロット120を備える。スロット120は、心臓弁補綴物100の心室部材112の接続特徴部の一例である。心室部材112は腕部124の配列を備える。心室部材112は、少なくとも2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、11本、または12本の腕部124を備え得る。心室部材112は、2本以下、3本以下、4本以下、5本以下、6本以下、7本以下、8本以下、9本以下、10本以下、11本以下、または12本以下の腕部124を備え得る。心室部材112は、2本だけ、3本だけ、4本だけ、5本だけ、6本だけ、7本だけ、8本だけ、9本だけ、10本だけ、11本だけ、または12本だけの腕部124を備え得る。腕部124は、第1のハブ116に接続された第1の端132を有する。腕部124は、第1の端132と反対の第2の端136を有する。
図2は、一実施形態において、腕部124の配列が、他の腕部より長いいくつかの腕部124を備え得ることを示している。より短い腕部124は第1の端132’と第2の端136’とを有し得る。第2の端136’は、より長い腕部124の第2の端136より第1のハブ116の近くに位置付けられ得る。腕部124の配列の各々の腕部124は、第1の端132と第2の端136との間に配置される細長い本体130を備え得る。
【0035】
図3および
図3Aは、心室部材112の各々の腕部といった1つまたは複数の腕部の第1の端132が自由状態140において第1のハブ116に向けて偏向させられ得ることを示している。例えば、第1のハブ116は管腔軸LA1に沿って配置され得る。管腔軸LA1は、第1のハブ116の中の管空の中心における軸であり得る。
図3Aは、簡潔性のために第1のハブ116と単一の腕部124とを示している。腕部124は、先に述べられているような第1の端132および第2の端136を有し、細長い本体130に沿って延びる。第1の端132は、第1のハブ116に連結または取り付けされている細長い本体130の端であり得る。第1の端132は、第1のハブ116の遠位端に連結または取り付けされ得る。細長い本体130は、第1の端132に隣接する、または第1の端132から延びる第1の湾曲区域130aと、第1の区域130aに隣接する、または第1の区域130aから延びる第2の区域130bとを備え得る。第2の区域130bは真っ直ぐな区域であり得る。第2の区域130bは湾曲させられてもよい。一実施形態では、第2の区域130bは第1の区域と同じ方向に湾曲させられる。湾曲させられる場合、第2の区域130bは第1の区域130aよりはるかに大きい曲率半径を有し得る。曲率半径は、約0.25mm、約0.5mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、もしくは約2.5mmであり得る、または、これらの寸法のうちのいずれかを端点として含む範囲内であり得る。曲率半径の大きさは、できるだけ小さいが、製造または実施の間に歪みを最小限にするだけの大きさとの間での調和の取れるところであり得る。腕部軸AA1が細長い本体130に沿って定められ得る。一実施形態では、腕部軸AA1は、第2の区域130bの長手方向軸と並べられたまたは平行とされた直線であり得る。一実施形態では、腕部軸AA1は、細長い本体130の第2の区域130bに対する接線であり得る。偏向の角度αが管腔軸LA1と腕部軸AA1との間に定められ得る。偏向の角度αは、約5度、約10度、約15度、約20度、約25度、約30度、約35度、約40度、もしくは約45度であり得る、または、これらの角度のうちのいずれかの間で定められる範囲内であり得る。
【0036】
偏向の角度αは、第1のハブ116に向かう細長い本体130の第2の端136の突出が、細長い本体130の他の部分の突出より第1のハブ116の近位端に近くなるようにされる。第1のハブ116に向かう細長い本体130の第2の端136の突出は、第1の区域130aに隣接する第2の区域130bの端より第1のハブ116の近位端に近くに配置され得る。第1のハブ116に向かう細長い本体130の第2の端136の突出は、第1の区域130aより第1のハブ116の近位端に近くに配置され得る。第1のハブ116に向かう細長い本体130の第2の端136の突出は、第1の端132より第1のハブ116の近位端に近くに配置され得る。
【0037】
図3および
図3Aは、スロット120が第1のハブ116の側面における長方形などの細長い開口であり得ることを示している。スロット120は管腔軸LA1の方向に沿って細長くなり得る。スロット120は、管腔軸LA1と並べられた軸方向の縁と、第1のハブ116の湾曲に追従する周方向の縁とを有し得る。後でさらに述べられているように、スロット120は、心臓弁補綴物100が患者の心臓の中で組み立てられるとき、心房部材212の接続特徴部と係合することができる。
【0038】
心室部材112は任意の適切な様態で形成され得る。一実施形態では、心室部材112は管状の本体から形成される。腕部124の各々の細長い本体130は、細長い本体130と1つまたは複数の隣接する細長い本体130との間の材料を切断または除去することで形成できる。
図2は、心室部材112が、拡張していない状態または圧縮された状態にあるときに管状の構成を有し得ることを示している。細長い本体130の外方を向く表面は、第1のハブ116の外面の突出と並べられ得る。細長い本体130の外方を向く表面は、第1のハブ116の外面の突出の径方向内側に配置されてもよい。これらの構成は、後でさらに述べられているように、腕部124を送達の間に拡張していない状態または圧縮された状態で保つために、送達システム400の円筒形のカテーテル本体の使用を容易にし、その後、心室における拡張に向けて、心室部材112を円筒形のカテーテル本体から外へと伸ばす。
【0039】
一実施形態では、心室部材112は、形状記憶材料を使用して形成され得る、または、形状記憶材料を含み得る。このような材料は、腕部124を、
図2の構成から
図3の構成へと自己拡張させることができる。1つのこのような材料は、ニチノールとして知られるニッケル-チタン合金である。非常に弾性的(例えば、超弾性)となるように構成される形状記憶材料は、腕部124の径方向外側の位置から抑制(例えば、送達システム400の外側カテーテル本体)を除去することで、
図3の構成を実現させることができる。腕部124が抑制されなくなると、腕部は、
図2の圧縮された状態から
図3の拡張した状態へと移動することができる。形状記憶材料は、周囲温度によって作動されるように構成させることもできる。腕部124など、心室部材112を形成するために使用される材料は、
図2の圧縮された状態が室温において提供され、
図3の拡張した状態が、腕部124の温度を、患者の体温といったより高い温度へと上昇させることで提供されるように構成され得る。
【0040】
図2は、腕部124が非侵襲的な構成を有し得ることを示している。一実施形態において、非侵襲的な構成が、腕部124のうちの1つまたは少なくともいくつか(例えば、全部)の第2の端136を非侵襲的な先端を伴って構成することで提供される。非侵襲的な先端は拡大部分136aと縮小部分136bとを有し得る。拡大部分136aは、同じ大きさまたは幅(例えば、腕部124の長手方向軸に対して横断する寸法)とでき、縮小部分136bに対して拡大され得る。拡大部分136aは、縮小部分136bの腕部124の長手方向軸に対して横断する寸法より大きくできる。拡大部分136aは、弁尖への外傷を減らすために、弁尖の心室側において弁尖への接触荷重を広げることができる。縮小部分136bと隣接する腕部124の異なる長さとは、腕部の向上したまとまりを可能とする。具体的には、縮小部分136bは、
図2に見られるように、拡大部分136aの拡大した幅を受け入れるように構成され得る。結果として、腕部124のうちのいくつかの拡大部分136aが腕部124の縮小部分136bの中に入れ子にされない場合よりも多くの数の腕部124が所与の直径の心室部材112に含めることができる。
【0041】
心室部材112は、腕部124の第2の端136が円C1などの弓形の輪郭またはそれに隣接して位置することができるように構成され得る。円C1は、約10mm、約15mm、約20mm、約25mm、約30mm、もしくは約35mmの直径を有し得る、または、約15mm~約25mmなど、これらの寸法のいずれかを端点として含む範囲での直径を有し得る。腕部124の第2の端136同士を繋ぐ円C1といった弓形の輪郭は、心房部材212のペタル236の外側端同士を繋ぐ円C2(
図5参照)といった弓形の輪郭より小さい。円C1および円C2についての相対的な大きさは、
図6Dおよび
図6Fにおいて見ることができ、後でさらに述べられている。
【0042】
図3の図示されている実施形態において、隣接する腕部124の第2の端136同士は互いに接続されていない。第2の端136のうちの1つまたは複数は、第1の心臓弁尖LF1との直接的な接触へと配置されるように構成される。第2の端136のうちの1つまたは複数は、第2の心臓弁尖LF2との直接的な接触へと配置されるように構成される。任意選択で、第2の端136のうちの1つまたは複数は、第3の心臓弁尖LF3との直接的な接触へと配置されるように構成される。いくつかの実施形態では、隣接する腕部124の細長い本体130全体が、隣接する腕部と接続されないままである。心臓の弁尖LF1、LF2、LF3は、腱索または腱によって心臓組織に接続されている。腱は、心室に広がる細長い繊維索である。腕部124の接続なしの性質によって、隣接する腱同士の間で絡まることなく腕部を拡張させることができる。より明確には、腕部124は、管腔軸LA1と並べられた方向に延びることから、予荷重の掛けられた構成に対応する方向へと移行することができる。これは、90度を越える角度を通じて振れることを含み得る。腕部124の細身の接続なしの構成は、絡み合うことなく隣接する腱同士の間で腕部を移動させることができる。
【0043】
図4および
図5は、心房部材212の追加の詳細を示している。心房部材212は、心房へと前進させられるように、および、第1の心臓弁尖LF1、第2の心臓弁尖LF2、および/または第3の心臓弁尖LF3の接合の線LOCを横切って延びるように、構成される。心房部材212は、心臓弁補綴物100を組み立てるために第1のハブ116を心房部材212の第2のハブ216に接続または係合する前、心室部材112とは別体であり、心室部材112に対して移動可能である。第1のハブ116と第2のハブ216との係合は、心室部材112の腕部124を心房部材212の窪みへと押し付ける。窪みは心房部材212の外側周辺に配置され得る。
【0044】
心房部材212は、カバー223によって、全体で包囲され得るなど、少なくとも部分的に包囲され得る複数のフレーム222を備えるフレーム配列220を備える。カバー223は、ePTFEまたはダクロンなどの材料から形成された膜を備え得る。カバー223を(心房部材212における)弁の心房側に位置決めすることで、カバー223は腱と干渉しなくなる。カバー223およびフレーム配列220は、心房部材212の周囲の周りにより一貫した荷重を作り出す閉じた区画のフレーム構造を提供する。カバー223は、カバーおよびフレーム222が覆って延びる弁の一部分を封止するために使用され得る。ある場合には、カバー223は心房部材212にわたる内皮化を促進する。カバー223は、フレーム222の先端同士の間にいくらかの荷重を加えさせることができる。カバー223は、フレーム222同士の間の窪みを部分的に覆うことができ(後で述べられている)、心室部材112の腕部124の先端を、展開においていくつかの場所でそれら先端同士の間に弁組織が挟まれた状態で、受け入れることができる。
【0045】
フレーム222はペタル236として構成され得る。ペタル236は、周辺の周りに構造の繰り返しのパターンを含み得る。ペタル236は縁から縁へと位置決めされ得る。ペタル236は共通の縁または支柱を共用することができる。ペタル236は、各々のペタルの二分する半径に対して対称であり得る。いくつかの実施形態では、ペタル236は、第2のハブ216に隣接するペタル236の内側部分の中心からペタル236の先端へと延びる半径に対して対称である。ペタル236の先端は、各々のペタルの径方向で最も外側の部分であり得る。カバー223が設けられる場合、カバー223は、いくつかのペタルまたは各々のペタルを包囲するペタルの構造を横切って延びることができる。カバー223は、
図1に示されているように、円形などの弓形の外側周辺を有し得る。カバー223は、心房部材212の周辺においてペタル236の先端同士の間で広がることができる。
【0046】
図4および
図5は、フレーム222の各々が基礎部分224と外側部分226とを有し得ることを示している。各々のフレーム222の基礎部分224は、1つまたは複数の共用の支柱228を備え得る。共用の支柱228は、隣接するフレーム222の一部分を境界付ける相対する周方向の縁を有し得る。単一のフレーム222が、2つの隣接する共用の支柱228によって境界付けられ得る。単一のフレーム222が、専用の支柱部分229によって境界付けられ得る。単一のフレーム222が、第1の共用の支柱228と、第1の共用の支柱228の外側端からフレーム222の先端へと延びる第1の専用の支柱部分229とを備え得る。単一のフレーム222は、第2の専用の支柱部分229によってさらに境界付けられ得る。第2の専用の支柱部分229は、フレーム222の先端から第2の共用の支柱228の外側端へと延び得る。第2の共用の支柱228は、フレーム222の先端へと延びる半径の反対において、第1の共用の支柱228に隣接して配置される。第1および第2の共用の支柱228は、内側の端において、第2のハブ216に、または、第2のハブ216に連結される他のフレーム部材に連結させることができる。
【0047】
各々のフレーム222が、一実施形態では、おおよそ四角形の領域238を包囲する。先に述べられているように、隣接するフレーム同士は共用の支柱228によって接続される。隣接するフレーム222同士はそれらの間に窪み240を形成する。窪み240は、心房部材212における腕部124の受け入れまたは入れ子のための領域を提供する。心房部材212は、心室部材112とは別体であり、第1のハブ116と第2のハブ216とが係合させられる前、心室部材112に対して移動可能である。窪み240は、一実施形態では、共用の支柱228の長手方向軸に中心付けられ得る。係合した構成において、心室部材112の腕部124は心房部材212の窪み240へ押し込まれる。この関係は、
図6D、
図6F、および
図7B~
図7Dに示されている。
【0048】
図5は、四角形の領域238が凧の形を有し得ることを示している。例えば、いくつかの実施形態では、共用の支柱228は、専用の支柱部分229の長さより大きい長さを有し得る。いくつかの実施形態では、共用の支柱228は、第1の角度でフレーム222の中心径方向軸から離れるように延び、専用の支柱部分229は、第1の角度より大きい第2の角度で中心径方向軸から離れるように延びる。凧の形状である領域は、第1の二等辺三角形の領域と第2の二等辺三角形の領域とによって定められ得る。第1の二等辺三角形の領域は、共用の支柱228の外側端同士の間で延びる軸と、個々のフレーム222の2つの共用の支柱228とによって定めることができる。第2の二等辺三角形の領域は、共用の支柱228の外側端同士の間で延びる軸と、個々のフレーム222の専用の支柱部分229とによって定めることができる。第1の二等辺三角形は、第2の二等辺三角形と第2のハブ216との間に配置され得る。第1の二等辺三角形の領域は、第2の二等辺三角形の第2の高さより大きい第1の高さを有し得る。第1の高さは約5mm~約9mmの範囲であり得る。第2の高さは約2mm~約6mmの範囲であり得る。第1の二等辺三角形の領域の高さは、第2の二等辺三角形の領域の高さより、約20パーセント、約30パーセント、約40パーセント、約50パーセント、約60パーセント、約70パーセント、約80パーセント、約90パーセント、約100パーセント、約150パーセント、もしくは約200パーセント大きくなり得る、または、列記されたこれらパーセントのうちの任意の2つを端点として含む範囲にあり得る。第1の二等辺三角形の領域の高さは第2の二等辺三角形の領域の高さ以下であってもよい。第1の二等辺三角形の領域の高さの大きさは、第1の二等辺三角形の領域の底辺の長さの大きさの約2倍であり得る。第2の二等辺三角形の領域の高さの大きさは、第2の二等辺三角形の領域の底辺の長さとおおよそ同じであり得る。
【0049】
図5Aは、心房部材212の予荷重の掛けられた状態を示す概略図である。予荷重の掛けられた状態において、フレーム222は、心房部材212が心臓に位置決めまたは埋め込まれたとき、弁尖の場所に向けて配向される。心房部材212は、フレーム222が第2のハブ216の遠位端から外方および遠位に延びることを提供することができる。一実施形態において、遠位方向における延在の大きさは偏向の角度βによって定めることができる。偏向の角度βは、約85度、約80度、約75度、約70度、約65度、約60度、約55度、約50度、もしくは約45度であり得る、または、これらの角度のうちのいずれかの間で定められる範囲内であり得る。偏向の角度βの大きさは腕部124の偏向の角度αの大きさと同じであり得る。偏向の角度βの大きさは腕部124の偏向の角度αより大きくてもよい。偏向の角度βの大きさは腕部124の偏向の角度αより小さくてもよい。
【0050】
図3Aは、心室部材112が心房部材212から係合解除されるとき、腕部124が第1のハブ116に向けて曲げられている、または傾斜させられているところを示している。
図3Aは、心室部材112が心臓に位置決めまたは埋め込まれたとき、腕部124が弁尖の場所に向けて配向されている予荷重の掛けられた状態を示している。
図5Aは、心房部材212が心室部材112から係合解除されるとき、フレーム222またはペタル236が第2のハブ216から(例えば、弁尖の場所に向けて)離れるように曲げられている、または傾斜させられているところを示している。腕部124および基礎部分224はそれぞれ弾性的であり、例えば、腕部124および基礎部分224が
図3Aおよび
図5Aの無負荷状態から離れる方へ偏向させられるときに荷重を加えるように、ニッケル-チタン合金(例えば、ニチノール)または同様の非常に弾性的な材料から形成される。腕部124は、より大きい角度αへと偏向させられる場合、埋め込まれるときに、近位へ向けての荷重を弁の弁尖に加えることになる。フレーム222は、より大きい角度βへと偏向させられる場合、遠位へ向けての荷重を加えることになる。後でさらに述べられているように、心室部材112の第1のハブ116を心房部材212の第2のハブ216へと組み立てる過程は、腕部124をより大きい角度αへと偏向させ、フレーム222を大きい角度βへと偏向させることになる。したがって、この実施形態では、腕部124およびフレーム222は、それらの間で圧縮される第1の心臓弁尖LF1、第2の心臓弁尖LF2、および任意選択での第3の心臓弁尖LF3のうちの1つまたは複数に、圧縮荷重を加えることになる。他の実施形態では、心臓弁補綴物100を組み立てるときに伴われる荷重の下で、腕部124およびフレーム222のうちの1つはより大きく偏向可能である、または、腕部124およびフレーム222のうちの1つは偏向不可能である。したがって、弁尖LF1、LF2、LF3の一方の側に加えられる荷重が、弁尖LF1、LF2、LF3の他方の側に加えられる荷重と異なる可能性がある。
【0051】
図5Bおよび
図5Cはフレーム222A、222Bの追加の構成を示している。フレーム222Aは、フレームの中心径方向軸(破線)において中心付けられる窪み240Aを有する。フレーム222と同様に、フレーム222Aは、径方向外方へ延びる専用の支柱部分229によって形成される。窪み240Aは、共用の支柱228から離れるように配置される専用の支柱部分229の一部分の起伏した形によって形成され得る。窪み240Aは、フレーム222Aの隣接する専用の支柱部分229の間に位置付けられ得る。フレーム222Bは、フレーム222Bの中心径方向軸(破線)において中心付けられる窪み240Bを有する。フレーム222と同様に、フレーム222Bは、共用の支柱228の外側端から延びる専用の支柱部分229で形成されている。フレーム222Bの専用の支柱部分229は、フレーム222Bの中心径方向軸に沿って窪み240Bを形成するために、共用の支柱228の外側端から径方向内方へ延びる。窪み240Bは、フレーム222Bの真っ直ぐな内方に延びる専用の支柱部分229によって形成され得る。
【0052】
図5は、心房部材212のフレーム222が、円C2といった弓形の周辺に配置される先端を有し得ることを示している。円C2は、心室部材112の腕部124の端同士の間で延びる円C1より大きくなるように構成され得る。窪み240、窪み240A、または窪み240Bの場所は、円C1の半径より小さい径方向位置に配置され得る。したがって、腕部124の先端は、円C1の周辺と円C2の周辺との間の環状の帯域に配置され得る。円C2は、約15mm、約20mm、約25mm、約30mm、約35mm、もしくは約40mmの直径を有し得る、または、これらの寸法のいずれかを端点として含む範囲での直径を有し得る。
【0053】
心房部材212は接続特徴部も有し得る。一実施形態において、タング(または複数のタング)252は、心房部材212と心室部材112とが組み立てられるとき、第2のハブ216を第1のハブ116と係合させるために第1のハブ116のスロット120へと係止するように構成される。タング252は、スロット120など、心室部材112の接続特徴部と係合するように構成され得る。一実施形態では、第1のハブ116は第2のハブ216に受け入れられる。タング252は、内方に偏っており、タング252がスロット120と位置合わせされるときにスロット120へと内方へ偏向することになる。他の実施形態では、第2のハブ216が第1のハブ116に受け入れられる。タング252は、外方に偏っており、タング252がスロット120と位置合わせされるときにスロット120へと外方へ偏向することになる。
【0054】
心臓弁補綴物100は、心室部材112と心房部材212との互いとの係合において、心室部材112の接続特徴部と心房部材212の接続特徴部とを互いに位置合わせさせるために、好ましくは中心合わせ機構を有する。一例において、腕部124が窪み240へと移動させられるとき、専用の支柱部分229の傾斜する辺の表面が、腕部124を窪み240の径方向で最も内側の部分へと案内する。この位置は、スロット120とのタング252の位置合わせに対応する。例えば、一実施形態において、送達システム400は、心房部材212が回転において不動で保持され、フレーム222またはペタル236が腕部124に荷重を加え、それによって、第1のハブ116を第2のハブ216に対して(例えば、第2のハブ216の中で、または、第2のハブ216にわたって)回転させて、スロット120をタング252との回転における位置合わせへと回転させるように、第1のハブ116にモーメントを加えることができるように構成される。送達システム400の他の実施形態では、心室部材112は、回転において不動で維持され、腕部124は力をフレーム222またはペタル236に加え、それによって、タング252がスロット120との回転における位置合わせへと移動するように、第1のハブ116に対して(例えば、第1のハブ116の中で、または、第1のハブ116にわたって)第2のハブ216を回転させるために、モーメントを第2のハブ216に加える。したがって、腕部124は中心合わせ機構として作用することができ、窪み240も中心合わせ機構として作用することができる、または、腕部124および窪み240は、心臓弁補綴物100の中心合わせ機構として作用することもできる。
【0055】
心室部材112と同様に、心房部材212は、
図4において見られるように、円筒形の構成へと圧縮させることができる。円筒形の構成は、後で述べられているように、心房部材212を送達システム400のカテーテル本体に配置させることができる。先に述べられているように、心房部材212は、
図5の構成へと自己拡張することができるように、ニチノールなどのニッケル-チタン材料といった弾性材料から形成され得る。
【0056】
図8A~
図9Bは、心臓弁補綴物のための栓または他の流れ制御を組み込むことができる心臓弁補綴物の追加の実施形態を示している。補綴物は、それら図によって示されている心室部材112Aまたは心室部材112Bを備え得る。心室部材112Aおよび心室部材112Bは、以下において異なると記載されていることを除いて、心室部材112と同様であり得る。
【0057】
心室部材112Aは、第1のハブ116の中に配置された偏向可能流れ制御部材150を備え得る。偏向可能流れ制御部材150は、第1のハブ116の管腔に広がるように構成された偏向可能フラップ154を伴う一方向弁として構成され得る。偏向可能フラップ154は、後でさらに述べられているような送達システム400の一部であり得る内側シャフト404を受け入れるために、
図8Aに示されているように偏向させることができる。偏向可能フラップ154の偏向は、送達の間に内側シャフト404を心室部材112Aに通して配置させることができる。内側シャフト404は、心室部材112Aを組み込む心臓弁補綴物100の送達および組み立ての最中または終了において、取り外すことができる。
図8Bは、内側シャフト404が第1のハブ116の管腔から取り外された後、偏向可能フラップ154が管腔を横切って延び、互いに接して封止しているところを示している。心室部材112Aの遠位側における(つまり、右心室における)圧力は、心室部材112Aの近位側における圧力を超えることになり、その条件が存在するとき、偏向可能フラップ154は閉じたままとなる。偏向可能流れ制御部材150は、内側シャフト404を再導入するために、または、心臓弁補綴物100を通じて他の処置を実施するために、弁が心臓弁補綴物100を通じてのアクセスを許容するという点において、有利である。
【0058】
図9A~
図9Bは、心室部材112Bをより詳細に示している。圧縮可能流れ制御部材162が第1のハブ116の管腔の中に設けられている。圧縮可能流れ制御部材162は、圧縮可能発泡材料、織物ダクロン材料、または他の同様の材料であり得る。圧縮可能流れ制御部材162には、内側シャフト404を通過させることができる小さい開口が設けられ得る。心室部材112Bの送達の後、内側シャフト404は、心室部材112Bの第1のハブ116の管腔から取り外すことができる。心室における圧力は、小さい開口を潰して閉じさせることになり、第1のハブ116の管腔に栓をする。圧縮可能流れ制御部材162は、内側シャフト404が取り外された後、心室部材112Bの両側における圧力に拘わらず、第1のハブ116を通る(および心臓弁補綴物100を通る)管腔の完全な閉鎖が提供される点において、有利である。圧縮可能流れ制御部材162は、例えば、内側シャフト404が通されて配置されないときに完全に閉じないなど、初めから開口を有してもよい。小さい大きさの開口は、時間と共に組織で塞がられることになり得る。いくつかの場合で、心室部材112には、潰れることのできる流れ制御部材が設けられなくてもよいが、時間に伴う組織成長によってなおも閉じることができる。
【0059】
III. 送達システムおよび方法
図1および
図6A~
図6Fは、例えば右心房と心室との間の三尖弁において、患者の心臓の中で心臓弁補綴物100を送達および組み立てするための送達システム400の様々な実施形態を示している。送達システム400は、
図1および
図6A~
図6Eにおいて見られるように、案内ワイヤGWにわたって送達されるように構成される。いくつかの技術では、案内ワイヤGWは、補綴物100の素早く正確な前進および展開のためのレールを提供するために、心室へと前進させることができ、心室において静止(例えば、停止)して保持させることができる。他の技術では、案内カテーテル(図示せず)が、補綴物100の素早く正確な前進および展開のためのレールを提供するために、心室へと前進させることができ、心室において静止して保持させることができる。案内カテーテルは、単独で、または、展開を容易にするために案内ワイヤとの組み合わせで、使用され得る。送達システム400は遠位部分402Aと近位部分402Bとを備える。外側シース406は遠位先端410まで延び得る。近位部分402Bは案内ハンドル412と送達ハンドル414とを備え得る。案内ハンドル412は外側シース406の近位端と連結され得る。送達ハンドル414は、案内ハンドル412を通り、外側シース406を通り、心臓弁補綴物100の構成要素へと延びることができる。
【0060】
図6Aは、心臓弁補綴物100を送達するために送達システム400を使用する方法の態様を示している。案内ハンドル412は、外側シース406を、静脈血管系を通じて案内ワイヤにわたって心臓へと前進させるように操縦され得る。外側シース406は右心房へと前進させることができる。外側シース406の引き続きの前進は、遠位先端410を、患者の三尖弁の接合の線LOCを越えて右心室へと移動させることができる。これは、
図6Aに示されている位置である。送達ハンドル414は、例えば案内ハンドル412および外側シース406の移動の間になど、心臓弁補綴物100の構成要素の移動および相対位置を制御する。送達ハンドル414は、埋込物を露出させるために案内ハンドル412が引っ張り戻される間、不動のまま保持され得る。様々な実施形態において、心臓弁補綴物100は三尖弁の周辺領域のうちの1つに配置される。
【0061】
図1Dは、心臓弁補綴物100が第1の心臓弁尖LF1と第2の心臓弁尖LF2との間に埋め込まれ得ることを示している。
図1Dにおける心臓弁補綴物100の配置は、心臓弁補綴物100が第1の心臓弁尖LF1と、病気に罹っていない第3の心臓弁尖LF3との間の隙間Gにわたって配置されないようにされ得る。
図1Dにおける心臓弁補綴物100の配置は、心臓弁補綴物100が第2の心臓弁尖LF2と、病気に罹っていない第3の心臓弁尖LF3との間の隙間Gにわたって配置されないようにされ得る。他の技術では、心臓弁補綴物100は第1の心臓弁尖LF1と第3の心臓弁尖LF3との間に配置させることができる。他の技術では、心臓弁補綴物100は第2の心臓弁尖LF2と第3の心臓弁尖LF3との間に配置させることができる。心臓弁補綴物100の適切な位置は、心エコー図を使用するなどして、処置の前または最中に決定することができる。心臓弁補綴物100の適切な位置は、3つの弁尖のうちの2つの間の三尖弁の一部分の周辺領域の中で、遠位先端410と、外側シース406の遠位長さとを操縦することで達成することができる。
【0062】
図6Bは、外側シース406と心室部材112との間の相対移動が心室部材を右心室で露出させることができることを示している。外側シース406は、矢印A1によって指示されているように案内ハンドル412を引き込むことで、近位へ移動させることができる。送達ハンドル414は、ある技術では、矢印A1によって指示されているように案内ハンドル412が移動させられる間、不動のまま保持され得る。外側シース406が近位へ移動するとき、遠位先端410は、心室部材112の近位に配置されるまで、近位へ引き込まれる。遠位先端410は、送達システム400は心室部材112の位置を維持する間、右心房へと引き込むことができ、例えば、心室部材は、遠位先端410が近位へ移動させられる間、同じ位置で維持させることができる。他の技術では、案内ハンドル412は不動のままで保持でき、送達ハンドル414は、心室部材112を外側シース406の遠位先端410の外へと遠位に移動させることができる。
【0063】
先に述べられているように、心室部材112は、
図6Bにおいて見られる位置または構成へと自己拡張するように構成され得る腕部124を備え得る。腕部124は、それらの第2の端136同士が互いに接続されないように配置され得る。したがって、腕部124は、心臓が鼓動するときに弁尖LF1、LF2、LF3を動かすために、右心室を横断する腱の網の間で拡張することができる細身の部材である。心室部材112のこの構成は、心室部材112と腱との間の絡み付きの危険性を軽減または排除する。送達システム400の一形態において、送達ハンドル414の回転位置は、心室部材が拡張させられるときに回転しないように、外側シース406が心室部材112に対して移動させられるときに維持され得る。
【0064】
図6Cは、送達システム400を使用する方法のさらなる態様を示している。外側シース406は、内側シース408に対して移動させることができ、例えば、遠位先端410が心房部材212の近位になるまで、矢印A2によって指示されているように近位へ移動させることができる。心房部材212は、露出されるとき、心房の中で拡張することができるように、内側シース408の遠位に配置され得る。矢印A2に沿っての近位への移動は、矢印A2によって指示されているように、案内ハンドル412の対応する移動によってもたらされ得る。
図6Cは、心室部材112と心房部材212とが互いに係合させられる前に心臓の中で拡張させることができることを示している。心室部材112は、例えば、
図3Aとの関連で述べられているような心室部材の第1のハブ116に向けて腕部124が偏向または配向されている状態などで、予荷重が掛けられ得る。フレーム配列220は、例えば、
図5Aとの関連で述べられているような第2のハブ216から離れるようにフレーム222またはペタル236が偏向または配向されている状態などで、予荷重が掛けられ得る。腕部124およびフレーム配列220の偏向または配向の角度は、心室部材112と心房部材212とが互いに係合させられているときより、
図6Cの状態においてより大きくなることができる。
【0065】
図6Dは、2つまたは3つといった1つまたは複数の弁尖を把持するための技術を示している。送達ハンドル414は、第1の滑動部436および第2の滑動部440から第1のロックアウト部432を取り外すことで変更することができる。第1のロックアウト部432は、送達ハンドル414から取り外される前、第1の滑動部436および第2の滑動部440の移動を妨げるように構成される。
図6Cは、第1のロックアウト部432が、送達ハンドル414における空間を埋めることができることを示しており、第1のロックアウト部432がその空間に位置決めされ得ない場合、第1の滑動部436および第2の滑動部440は移動することができる。第1のロックアウト部432が取り外されると、第1の滑動部436および第2の滑動部440は、矢印A3によって指示されているように、一緒に移動させることができる。この移動は、心房部材212を、心室部材112との係合へと、心室部材112に向けて移動させる矢印A3による対応する移動をもたらすことができる。第1の滑動部436および第2の滑動部440の移動に続いて、心室部材112および心房部材212は係合させることができ、それらの間で弁尖材料を捕らえることができる。腕部124の先端(例えば、第2の端136)のうちの少なくとも1つが、フレーム配列220の窪み240に受け入れられ得る。心室部材112および心房部材212は、送達システム400を使用する方法のこの部分において、送達システム400になおも接続され得る。
図6Dは、矢印A3による移動の間に、第2のロックアウト部444が第1の滑動部436と第2の滑動部440との相対位置を維持することができることを示している。
図6Dは、第3のロックアウト部452が第3の滑動部456と第4の滑動部460との相対位置を維持するために提供され得ることも示しており、この動作は後でさらに述べられる。
【0066】
先に述べられているように、タング252は、心室部材112のスロット120などの窓に係合するように構成され得る。タング252は、自由状態において内方へ偏向させられ得る。第1のハブ116を第2のハブ216と係合させる前(例えば、第1のハブ116を第2のハブ216へと前進させる前)、タング252は、タング252同士の間の最小距離が第1のハブ116の外径より小さくなるように、内方へ偏向させることができる。タング252は、矢印A3による移動が起こるとき、タング252が第1のハブ116の近位縁へと前進させられ得るように、スロット120と回転において位置合わせさせることができる。近位縁がタング252の内側と係合するとき、タングは第1のハブ116によって外方へ偏向させることができる。第1のハブ116と第2のハブ216との互いへの引き続きの相対移動が、タング252がスロット120にわたって配置されるまで、例えば矢印A3に従って、提供され得る。スロット120にわたって配置されるとき、タング252は、径方向外方に変更した位置でもはや保持されず、スロット120へと内方へ偏向して心室部材112を心房部材212に固定的に接続することができる。
【0067】
先の述べられているように、窪み240は、腕部124を受け入れることができ(少なくともいくつかの場合では、弁組織がそれらの間にある)、心室部材112および心房部材212の一緒の引き続きの移動が起こるとき、窪み240は、部材同士の互いへの少なくともいくらかの回転移動を提供することができる。この回転移動は、これらの接続特徴部の係合を複雑にし得る、スロット120へのタング252の位置ずれを低減または排除することができる。
【0068】
図6Eは、送達システム400を使用する方法のさらなる態様を示している。第2のロックアウト部444が取り外され、第2の滑動部440に対する第1の滑動部436の相対移動を可能とする。第1の滑動部436は、矢印A4によって指示されているように、第2の滑動部440に向けて移動させることができる。このような移動は、送達システム400の外側把持部407を拡張させるために、内側シース408の遠位部分を引き込むことに対応する。外側把持部407の拡張の前に、外側把持部407は、タング252の周りに配置された第2のハブ216の窓250となど、第2のハブ216と係合させられる。内側シース408を外側把持部407から後退させることで、外側把持部407を、窓250との係合から外れて自己拡張させることができる。
【0069】
図6Fは、送達システム400からの心臓弁補綴物100の係合解除の図である。係合解除は、第3のロックアウト部452を送達ハンドル414から取り外すことで達成できる。第3のロックアウト部452は、第4の滑動部460への第3の滑動部456の相対移動を防止することができる。第3のロックアウト部452が取り外されるとき、第4の滑動部460は、矢印A5によって指示されているように近位へ移動させることができ、内側シャフト404を内側把持部409の近位の位置へと後退させることができる。このような移動の前に、内側シャフト404は、内側把持部409をスロット120において維持して、心室部材112を送達システム400における所定位置で保持するために、内側把持部409の間の空間に配置される。矢印A5に沿っての移動は、内側シャフト404を内側把持部409の間の位置から移動させる。このような移動は、内側把持部409を、
図6Fに示されている構成へと自己折り畳みさせる。この構成は、第1のハブ116の内径より小さい内側把持部409の最大寸法、または、いくつかの実施形態では、スロット120から出るように移動させられる内側把持部409の最大寸法を提供する。このような構成では、内側把持部409は、内側シャフト404が引き込まれるとき、スロット120から完全に出るように偏向しない。このような構成では、内側シャフト404が引き込まれるとき、内側把持部409は、心臓弁補綴物100が送達システム400から外れるように移動するときに内側把持部409が心臓弁補綴物100によって偏向されるのに十分に偏向可能であり得る。例えば、心臓弁補綴物100は、送達システム400を心臓から引き込むための案内ハンドル412の近位への移動において弁尖が心臓弁補綴物100を保持するように、弁尖LF1、LF2、LF3のうちの2つ以上としっかりと係合させることができる。
【0070】
図6Gは送達ハンドル414Aの追加の実施形態を示している。
図6Gを参照して記載されている特徴は任意選択である。送達システム400は、具体的には送達ハンドル414Aは、システム400のカテーテル本体を洗い流すための洗い流し供給源として作用するように構成される1つまたは複数の管または流体供給源441(例えば、管441a、管441b、管441c、管441d)を備え得る。管441a~441dは、送達システム400を、生理食塩水または任意の他の生体適合性流体などの流体で洗い流し可能とさせることができる。流体は、管441a~441dおよび送達デバイスを通じて、最終的に血液へと流れて排出され得る。管441a~441dは、加圧されるとき、送達システム400から空気を除去するのを支援することができ、これは、空気が血流に入るのを防止することができる。また、管441a~441dは、加圧されるとき、血液が送達デバイス400の領域に入るのを防止/除去することができる。管441a~441dは、加圧されるとき、システム400の異なるカテーテル本体を移動させるために、滑動部436、440、456、460を移動させるときの摩擦を防止/低減することができる。
【0071】
管441a~441dは、各々の管441a~441dが接続される滑動部に対応し得る送達システム400の中の異なる環状空間と、それぞれ流体連通することができる。例えば、管441aは第1の滑動部436に接続され得る。管441bは第2の滑動部440に接続され得る。管441cは第3の滑動部456に接続され得る。管441dは第4の滑動部460に接続され得る。
【0072】
第1の管441aは、第1の滑動部436から送達システム400の遠位先端410に向けて、または遠位先端410へと延びる第1の環状空間に流体接続され得る。第2の管441bは、第2の滑動部440から送達システム400の遠位先端410に向けて、または遠位先端410へと延びる第2の環状空間に流体接続され得る。第3の管441cは、第3の滑動部456から送達システム400の遠位先端410に向けて、または遠位先端410へと延びる第3の環状空間に流体接続され得る。第4の管441dは、第4の滑動部460から送達システム400の遠位先端410に向けて、または遠位先端410へと延びる第4の環状空間に流体接続され得る。環状空間同士は互いから分離され得る。環状空間同士は互いの中に埋め込まれ得る。例えば、第4の環状空間は第3の環状空間を包囲し得る。第3の環状空間は第2の環状空間を包囲し得る。第2の環状空間は第1の環状空間を包囲し得る。他の実施形態では、第4の環状空間は第3の環状空間を通じて延び得る。第4および第3の環状空間は第2の環状空間を通じて延び得る。第4、第3、および第2の環状空間は第1の環状空間を通じて延び得る。環状空間のうちの1つまたは複数は、外側シース406の内面と内側シース408の外面との間に配置され得る。環状空間のうちの1つまたは複数は、内側シャフト404の外面と内側シース408の内面との間に配置され得る。
【0073】
注射器442が流体を管441a~441dに押し通すために使用され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の注射器442が使用され得る。例えば、1つの注射器または別々の注射器が各々の管441a~441dのために使用され得る。流体は、一度に1つまたは複数の環状空間に選択的に挿入され得る。流体は、2つ以上または全部の環状空間へと同時に挿入されてもよい。流体は注射器442を出ることができ、多岐管443を通じて進むことができる。多岐管443は、流体を適切な管441a~441dおよび対応する環状空間へと方向付けることができる。そのため、流体は、送達システムの環状空間を通り、最終的に遠位端から出るように進むことになる。先に記載されているように、これは、空気を送達システムから流し出すことができ、システムからの血液を防止または除去することができ、および/または、滑動部436、440、456、460を移動させるときに摩擦を低減または排除することができる。存在する場合、多岐管443には、持ち上げられた生理食塩水バッグからの生理食塩水の点滴といった、流体の連続的な供給が供給され得る。
【0074】
ある実施形態では、各々の管441a~441dは、流量調整器、多岐管443、および/またはIV流体供給源に接続され得る。IV流体供給源は、重力によって送り込まれるIV流バッグ、加圧されたバッグ、および/または流体ポンプであり得る。流量調整器、多岐管、およびIV流体供給源は、各々の管441a~441dが洗い流すための固定された流量を受け入れるように構成され得る。これは、すべての管441a~441dが一緒に接続されて洗い流すときに有益であり得、流れを最小の抵抗を伴う管441a~441dに優先的に方向付け、より制限された管441a~441dを迂回させることができる。
【0075】
他の実施形態では、単一の注入供給管が、管441a~441dのうちの1つを、システム400の隣接する層の間の介在空間と流体連通させることなどで提供され得る。この手法は、簡潔性の恩恵を受けるが、システム400の特定の介在空間における抵抗に抗するために、より高い注入圧力を必要とする可能性がある。
【0076】
図8A~
図9Bは、第1のハブ116の管腔を塞ぐように構成される心室部材112Aおよび心室部材112Bとの関連で先に述べられている。塞ぐのは、
図6Fに示されている技術の間に達成され得る。具体的には、第4の滑動部460が矢印A5に従って引き込まれるとき、内側シャフト404は心室部材112Bの第1のハブ116の管腔の中から引き込まれる。これは、心室部材112Aの偏向可能フラップ154といった偏向可能流れ制御部材150を第1のハブ116の管腔へと延び出させることができる。第4の滑動部460が矢印A5に従って引き込まれるとき、内側シャフト404は心室部材112Bの第1のハブ116の管腔の中から引き込まれる。これは、心室部材112Bの第1のハブ116の圧縮可能流れ制御部材162を第1のハブ116の管腔へと延び出させることができる。心室部材112Aにおける流れの制御は、偏向可能フラップ154同士が互いに接触する正にそのときである。心室部材112Aは、第1のハブ116の管腔を再び横断させることができる。心室部材112Aは、ある技術において第1のハブ116の管腔を再び横断させることができる。心室部材112Bにおける流れの制御は、圧縮可能流れ制御部材162が部材162の小孔に埋め込まれることになり得る血液を吸収するにつれて、時間と共に増加することができる。
【0077】
図7Aは、一実験における心臓弁補綴物100の心臓組織との係合を示している。心臓弁補綴物100は弁の心房側から描写されている。第2のハブ216は第1のハブ116の周りに配置されて見られ、それらの両方が接合の線の心房側にある。
【0078】
図7Bは、心臓組織と係合された同じ心臓弁補綴物100を示している。
図7Bは、腱索CTが前景にある、補綴物100が適用された弁の心室側からの図である。第2の端136は窪み240と係合されて示されている。弁尖組織が腕部124とフレーム配列220との間で捕らえられている。いくつかの適用では、心臓弁補綴物100の1つまたは複数の領域が、2時の位置において見られるように、いずれの弁尖とも係合されないなど、接合の線LOCに配置され得る。弁尖組織が腕部124と窪み240との間に捕らえられない心臓弁補綴物100の一部分、または、フレーム配列220の他の一部分について、心房部材212は、逆の流れが低減、最小限、または防止できるように、先に述べられているようにカバー223によって覆うことができる。
【0079】
図7Cは、いくつかの適用において、心臓弁補綴物100の周辺の約120度の角度で広がる一部分が提供され得ることを示しており、その一部分では、直接的な係合が腕部124とフレーム配列220の窪み240との間で提供されている。いくつかの実施形態では、腕部124は窪み240の中心に位置合わせすることができる。いくつかの実施形態では、腕部124は窪み240の中心から外れる可能性がある。これは、組織もしくは他の障害との相互作用、または、組織もしくは他の障害による干渉のためであり得る。カバー223は、広がる一部分にわたって逆の流れを阻止することができる。他の適用では、約10度、約20度、約30度、約40度、約50度、約60度、約70度、約80度、約90度、約100度、約110度、約130度、約140度、約150度、約160度、約170度、もしくは約180度の広がり、または、端点としてこれらの数字の任意の組み合わせを含む角度の範囲にわたる広がりがある。いくつかの適用では、心臓弁補綴物100の周辺の2つ以上の一部分が、心室部材112と心房部材212との間に直接的な係合を、それらの間で心臓弁補綴物100の一部分が弁組織と係合する状態で提供することができる。
【0080】
図10A~
図10Eは、送達システム400の遠位先端410に連結または配置される例示のノーズコーンを示している。ノーズコーンは、送達システム400を血管系の中で案内ワイヤGWにわたって追跡させることができる。ノーズコーンは、外側シース406の遠位端において心臓弁補綴物100に予荷重を掛けることができる。ノーズコーンは、送達システム400のための非侵襲的な先端を提供することができ、そのため、先端410が弁尖の接合の線を横断するとき、送達システム400は血管系または弁尖に引っ掛かったり損傷を与えたりすることがない。ノーズコーンは、送達システム400が前進させる間、心臓弁補綴物100を遮断または保護する場所に設けることができ、心臓弁補綴物100が外側シース406の遠位先端410を通過することができるように、心臓弁補綴物100の通り道から外れる、または、少なくとも心臓弁補綴物100をより遮断しない第2の位置または第2の構成へと移行することができる。
【0081】
図10A~
図10Bは、ノーズコーン500の例の実施形態を示している。
図10Aはノーズコーン500を示している。ノーズコーン500は外側シース406の遠位先端410に連結させることができる。ノーズコーン500は、遠位先端410の遠位の一部分または遠位領域であり得る。ノーズコーン500は、外側シース406と概して平行に延びる第1の部分501を有し得る。ノーズコーン500は、概して円錐状の形または他の遠位へと先細りの形を形成するために、シース406の中心軸に向けて、外側シース406に対してある角度で延びる第2の部分502を有し得る。第2の部分502は、
図10B’に示されているように、開状態へと移行するように構成され得る。
【0082】
ノーズコーン500は分割する先端を有し得る。例えば、ノーズコーン500は、ノーズコーン500を中心軸から離れるように開けさせる1つまたは複数の継ぎ目または割れ目504を有し得る。ノーズコーン500は、複数の継ぎ目または割れ目504を有することができる。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、またはより多くの継ぎ目または割れ目504がある。割れ目504の数は区分505の数を決定することができ、ノーズコーン500は、開状態にあるときへと分割することができる。いくつかの実施形態では、割れ目504は、ノーズコーン500の第1および第2の部分501、502の両方に沿って延びることができる。いくつかの実施形態では、割れ目504は、ノーズコーン500の第2の部分502だけに沿って延びることができる。
【0083】
ノーズコーン500の割れ目504は、分離保持のデバイスまたは構造で一緒に固定され得る。例えば、分離保持のデバイスまたは構造は、一連のミシン目、弱い接着剤が提供された領域、割れ目504に沿っての引っ掻き傷を伴う領域、または任意の他の適切な方法を含み得る。分離保持のデバイスまたは構造は、ノーズコーン500を、一体で、または一体として前進させ、心臓弁補綴物100がノーズコーン500を通じて前進させられると、または前進させられるとき、分離、分割、または開放させることができる。いくつかの実施形態では、心臓弁補綴物100の前進はノーズコーン500を割れ目504において分離させることができる。
【0084】
図10Bおよび
図10B’は、閉状態、閉位置、または閉構成から開状態、開位置、または開構成へと移行するノーズコーン500を示している。閉状態において、送達システム400は送達場所へと前進させられる。ノーズコーン500は、心臓弁補綴物100が送達システム400から出るのを防止するために閉じられる。開状態では、送達システム400は送達場所にあり、ノーズコーンは、心臓弁補綴物100の送達を可能とするために開状態へと移行する。
【0085】
ノーズコーン500は連動部508を有し得る。連動部508は、送達システム400の前進の間、ノーズコーン500を閉状態で保持するように構成され得る。送達システム400の遠位先端410を連動部508へと押し込むことで、ノーズコーン500は閉位置で保持させることができる。ノーズコーン500は、遠位先端410を引き込むことで連動部508を解除し、心臓弁補綴物100をノーズコーン500に押し通すことによって、開放させることができる。ノーズコーン500は、矢印2によって指示されているように、中心軸から離れるように開くことができる。
【0086】
図10Cおよび
図10C’は、ノーズコーン512の他の例の実施形態を示している。
図10Cは、閉状態または閉構成におけるノーズコーン512を示しており、
図10C’は、開状態または開構成におけるノーズコーン512を示している。ノーズコーン512は外側シース406の遠位先端410に連結させることができる。ノーズコーン512は柔軟性材料を備え得る。柔軟性材料は、心臓弁補綴物100がノーズコーン512を通過するときに解放または拡張するように構成され得る。心臓弁補綴物100が送達された後、ノーズコーン512はその元の閉じた形へと戻ることができる。
図10C’はノーズコーン512の弾性的な拡張を示しているが、心臓弁補綴物100が展開させられた後にノーズコーンがもはや必要でないことを考えれば、いくらかの変形は許容可能である。
【0087】
図10Dおよび
図10D’は、ノーズコーン516の他の例の実施形態を示している。
図10Dは、閉状態または閉構成におけるノーズコーン516を示しており、
図10D’は、開状態または開構成におけるノーズコーン516を示している。ノーズコーン516は、外側シース406の周りに配置された追加の外側シースとして構成され得る。ノーズコーン516は先端部分と外側シース部分とを有し得る。先端部分および外側シース部分は外側シース406を包囲することができる。ノーズコーン516は、外側シース406の遠位先端410を露出させるために、外側シース406にわたって滑動することができる。ノーズコーン516は、矢印によって指示されているように、ノーズコーン516を外側シース406にわたって引っ張って引き伸ばすことで、引き込みまたは引っ張り戻すことができる。一技術において、外側シース406はノーズコーン516の外へ前進させることができる。他の技術において、ノーズコーン516と外側シース406との同時の運動が、シース406の先端をノーズコーン516の外へ移動させるために提供され得る。心臓弁補綴物100は外側シース406の露出された遠位先端410を通じて送達させることができる。
【0088】
図10Eは、ノーズコーン520の例の実施形態を示している。ノーズコーン520は、外側シース406の遠位先端410の外面の内部に配置される、またはその外面に部分的に連結される膨張バルーンの先端であり得る。膨張バルーンの先端のノーズコーン520は、心臓弁補綴物100が外側シース406から出るのを防止するために、遠位先端410の内側に位置付けられた管腔によって膨張させることができる。膨張された先端は、補綴物100の退出を妨げるために、遠位先端410の内側の通路を遮ることができる。膨張可能な先端は、心臓弁補綴物100の送達までノーズコーンとして機能することができる半球形、先細り、または円錐形の輪郭を有し得る。いくつかの実施形態では、心臓弁補綴物100は案内ワイヤGWに沿って前進させることができ、膨張バルーンの先端は、案内ワイヤを取り囲むことができ、心臓弁補綴物100が送達システム400から出るのを防止するために膨張させることができる。次に、膨張バルーンの先端のノーズコーン520は、心臓弁補綴物100が外側シース406から出ることができるように、収縮され、心臓弁補綴物100を越えて後に引き戻され得る。または、補綴物100は、膨張バルーンの先端のノーズコーン520が収縮されるとき、ノーズコーン520を越えて前進させることができる。
【0089】
本明細書に開示されている補綴物、送達システム、ノーズコーン、および方法の利点で共通していることは、処置が抗凝固治療なしで補綴物を展開するために使用できるという事実である。
【0090】
用語
本明細書で使用されているように、「近位」および「遠位」という相対的な用語は、埋込物の視点から定められ得る。したがって、近位は、右心房に配置される埋込物の一部分の方向に言及しており、遠位は、右心室に配置される埋込物の一部分に言及している。
【0091】
「~が可能である」、「~できる」、「~であり得る」、「~であってもよい」、「例えば」などの条件の言葉は、他に明確に述べられていない場合、または、使用されているような文脈の中で他に理解されない場合、特定の特徴、要素、および/またはステップを、特定の実施形態は含むが他の実施形態は含まないことを伝えるように、概して意図されている。したがって、このような条件の言葉は、概して、特徴、要素、および/またはステップが1つまたは複数の実施形態について何らかの形で必要とされることを意味するように意図されていない。
【0092】
「~を備える」、「~を含む」、「~を有する」などの用語は、同意語であり、オープンエンドの様式で包括的に使用され、追加の要素、特徴、行為、動作などを排除しない。また、「または」という用語は、例えば要素の列記をつなぐために使用されるとき、列記における要素の1つ、いくつか、またはすべてを意味するように、その包括的な意味で使用される(および、その排他的な意味で使用されない)。また、本出願および添付の特許請求の範囲において使用されているような「1つ(a、an)」および「その(the)」という冠詞は、他に明示されていない場合、「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」を意味するように解釈されるものである。
【0093】
本明細書で開示されている範囲は、それらの任意およびすべての重なり、部分範囲、および組み合わせも網羅する。「最大で」、「少なくとも」、「~より大きい」、「~より小さい」、「~の間」などの言葉は、提唱されている数字を含む。「約」または「おおよそ」などの用語によって先行される数字は、提唱されている数を含み、状況に基づいて解釈されるべきである(例えば、例えば±5%、±10%、±15%など、状況において合理的に可能な限り正確に解釈されるべきである)。例えば、「約1」は「1」を含む。「実質的に」、「概して」などによって先行される文言は、提唱された文言を含み、状況に基づいて解釈されるべきである(例えば、状況において合理的に可能な限り正確に解釈されるべきである)。例えば、「実質的に球形の」は「球形の」を含む。他に述べられていない場合、すべての測定は、温度および圧力を含め、標準的な条件においてである。
【0094】
本明細書で使用されているように、項目の列記のうちの「少なくとも1つ」に言及する文言は、単一の部材を含む、それらの項目の任意の組み合わせに言及する。例として、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」は、Aと、Bと、Cと、AおよびBと、AおよびCと、BおよびCと、A、B、およびCとを網羅するように意図されている。「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という文言などの接続語は、他に明示的に述べられていない場合、品目、用語などがX、Y、またはZのうちの少なくとも1つであり得ることを伝えるために概して使用されているとして、文脈で別の形で理解されるものである。したがって、このような接続語は、特定の実施形態がXのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、およびZのうちの少なくとも1つが各々存在することを必要とすることを意味するようには概して意図されていない。
【0095】
特定の実施形態および例が本明細書において記載されているが、多くの変形および改良が、本開示において図示および記載されている心臓弁補綴物および送達システムに対して行えることは強調されるべきであり、それら心臓弁補綴物および送達システムの要素は、なおもさらなる実施形態または許容可能な例を形成するために、異なるように組み合わせおよび/または改良がされるとして理解されるものである。すべてのこのような改良および変形は、本開示の範囲内において本明細書に含まれるように意図されている。幅広い様々な設計および手法が可能である。本明細書に開示されている特徴、構造、またはステップは、必須または不可欠ではない。
【0096】
いくつかの実施形態は添付の図面との関連で記載されている。しかしながら、図が一定の縮尺で描かれていないことは理解されるべきである。距離、角度などは単に例示的であり、図示されているデバイスの実際の寸法および配置との正確な関係を必ずしも持っていない。構成要素は、追加、除去、および/または再配置させることができる。さらに、様々な実施形態と関連している任意の具体的な特徴、態様、方法、性質、特性、品質、属性、要素などの本明細書での開示は、本明細書で述べられているすべての他の実施形態で使用することができる。また、本明細書に記載されている任意の方法が、提唱されたステップを実施するのに適する任意の装置を使用して実施できることは、認識されるものである。
【0097】
本開示の目的のために、特定の態様、利点、および新規の特徴が本明細書において記載されている。必ずしも必要でないすべてのこのような利点が任意の特定の実施形態に応じて達成され得ることは、理解されるものである。したがって、例えば、本開示が、本明細書において教示または提案され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書において教示されているような1つの利点または利点の群を達成する手法で具現化または実行され得ることを、当業者は認識するものである。
【0098】
さらに、例示の実施形態が本明細書において記載されているが、本発明の範囲が、明確に開示されている実施形態を越えて、本開示に基づいて当業者によって理解されるような本発明の実施形態(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)、適合および/または変更、ならびに使用の特定の特徴および態様の等価の要素、改良、省略、組み合わせ、または部分組み合わせを有する任意およびすべての実施形態へと広がることは、当業者によって理解されるものである。特許請求の範囲における限定は、特許請求の範囲に用いられた言語に基づいて、本明細書で説明された例、または、本出願の審査の間に説明された例に限定されずに、幅広く解釈されるものであり、それらの例は非排他的として解釈されるものである。さらに、開示されている過程および方法の行動は、行動を再順序付けする、追加の行動を挿入する、および/または行動を削除することによることを含め、任意の手法で変更されてもよい。そのため、本明細書および例が、例示として見なされるだけであり、真の範囲および精神が特許請求の範囲およびそれらの等価の完全な範囲によって指示されることが、意図されている。
【0099】
本明細書で開示されているあらゆる方法は、提唱されている順番で実施される必要はない。本明細書で開示されている方法は、実施者によって取られる特定の行動を含むが、明示的または含蓄的のいずれかで、それらの行動の任意の第三者の命令を含んでもよい。例えば、「送達カテーテルを右内頸静脈へと挿入する」などの行動は、「右内頸静脈への送達カテーテルの挿入を命令する」ことを含む。
【符号の説明】
【0100】
10 心臓
12 三尖弁
14 右心房
16 右心室
50 治療システム
100 心臓弁補綴物
112、112A、112B 心室部材
116 第1のハブ
120 スロット
124 腕部
130 細長い本体
130a 第1の湾曲区域
130b 第2の区域
132、132’ 第1の端
136、136’ 第2の端
136a 拡大部分
136b 縮小部分
140 自由状態
150 偏向可能流れ制御部材
154 偏向可能フラップ
212 心房部材
222、222A、222B フレーム
223 カバー
224 基礎部分
226 外側部分
228 共用の支柱
229 専用の支柱部分
236 ペタル
238 四角形の領域
240、240A、240B 窪み
250 窓
252 タング
400 送達システム
402A 遠位部分
402B 近位部分
404 内側シャフト
406 外側シース
407 外側把持部
408 内側シース
409 内側把持部
410 遠位先端
412 案内ハンドル
414、414A 送達ハンドル
432 第1のロックアウト部
436 第1の滑動部
440 第2の滑動部
441 管、流体供給源
441a 第1の管
441b 第2の管
441c 第3の管
441d 第4の管
442 注射器
443 多岐管
444 第2のロックアウト部
452 第3のロックアウト部
456 第3の滑動部
460 第4の滑動部
500 ノーズコーン
501 第1の部分
502 第2の部分
504 継ぎ目、割れ目
505 区分
508 連動部
512、516、520 ノーズコーン
【国際調査報告】