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特表2024-522732MRNAキャッピング効率の定量的モニタリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】MRNAキャッピング効率の定量的モニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240614BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577441
(86)(22)【出願日】2023-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2023064530
(87)【国際公開番号】W WO2023201161
(87)【国際公開日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】63/331,407
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501192059
【氏名又は名称】サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】ロス ロバート エル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ミン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA11
4B063QQ53
4B063QQ62
4B063QR13
4B063QR14
4B063QR42
4B063QS17
4B063QS28
(57)【要約】
mRNAキャッピング効率を定量する方法は、緩衝溶液中で、試料、酵素混合物及び同位体標準物質溶液を一緒にして、インキュベート混合物を生成する工程であって、酵素混合物が、非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含み、同位体標準物質が、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、工程と、混合物をインキュベートする工程と、液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して混合物を分析し、キャッピング効率及び2-O-メチルトランスフェラーゼ効率のうちの少なくとも1つを求める工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレアーゼP1及びサツマイモ酸性ホスファターゼを含む、酵素混合物と、
同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am、Gm、Cm又はUm)を含む、標準物質混合物と、
を含む、mRNAキャッピング効率を定量するためのキット。
【請求項2】
緩衝溶液を更に含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記緩衝溶液が、ZnCl2を含む、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記緩衝溶液が、約0.01mmol~約90mmolのZnCl2濃度を有する、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記緩衝溶液が、約100mmol未満の濃度の二価陽イオンを有する、請求項3に記載のキット。
【請求項6】
前記緩衝溶液が、約2~約7のpHを有する、請求項2に記載のキット。
【請求項7】
前記緩衝溶液が、約4~約6のpHを有する、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
更に、前記酵素混合物が、RNアーゼT1を更に含む、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
前記酵素混合物が凍結乾燥粉末である、請求項1に記載のキット。
【請求項10】
前記標準物質混合物が、凍結乾燥粉末である、請求項1に記載のキット。
【請求項11】
前記同位体標識m7G及び2’-O-メチル化ヌクレオシドが、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am(D)、Gm(D)、Cm(D)又はUm(D))を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項12】
前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、N15標識されているか、又はC13標識されている、請求項1に記載のキット。
【請求項13】
前記標準物質混合物中の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、約2:1~約1:2のモル比で存在する、請求項1に記載のキット。
【請求項14】
前記標準物質混合物が、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含む、酵素混合物と、
同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am、Gm、Cm又はUm)を含む、標準物質混合物と、
緩衝溶液と、
を含む、mRNAキャッピング効率を定量するためのキット。
【請求項16】
前記非特異的一本鎖ヌクレアーゼがヌクレアーゼP1を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記酸性ホスファターゼが、アデノシン一リン酸によって阻害されない、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記酸性ホスファターゼが、サツマイモ酸性ホスファターゼを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記酵素混合物が、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、グアノシンのRNA3’を切断する、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、リボヌクレアーゼT1を含む、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
前記酵素混合物が、凍結乾燥粉末である、請求項15に記載のキット。
【請求項23】
前記標準物質混合物が、凍結乾燥粉末である、請求項15に記載のキット。
【請求項24】
前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am(D)、Gm(D)、Cm(D)又はUm(D))を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項25】
前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、N15標識されているか、又はC13標識されている、請求項15に記載のキット。
【請求項26】
前記標準物質混合物中の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、約2:1~約1:2のモル比で存在する、請求項15に記載のキット。
【請求項27】
前記標準物質混合物が、等モル量の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記緩衝溶液が、約0.001mM~約90mMの濃度範囲のZnCl2を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項29】
前記緩衝溶液が、約0.05mM~約0.2mMの濃度範囲のZnCl2を含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記緩衝溶液が、約100mM未満の二価陽イオンを含む、請求項28に記載のキット。
【請求項31】
前記緩衝溶液が、約2~約7のpHを有する、請求項15に記載のキット。
【請求項32】
前記緩衝溶液が、約4~約6のpHを有する、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
緩衝溶液中で試料、酵素混合物及び同位体標準物質溶液を一緒にして、インキュベート混合物を生成する工程であって、前記酵素混合物が、非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含み、前記同位体標準物質が、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am、Gm、Cm又はUm)を含む、工程と、
前記混合物をインキュベートする工程と、
液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して、前記混合物を分析し、キャッピング効率及び2’-O-メチルトランスフェラーゼ効率の少なくとも1つを求める工程と、
を含む、mRNAキャッピング効率を定量するための方法。
【請求項34】
前記混合物のインキュベートが、約30℃~70℃の温度で行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記混合物のインキュベートが、約35℃~45℃の温度で行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記非特異的一本鎖ヌクレアーゼが、ヌクレアーゼP1を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記酸性ホスファターゼが、アデノシン一リン酸によって阻害されない、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記酸性ホスファターゼが、サツマイモ酸性ホスファターゼを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記酵素混合物が、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、グアノシンのRNA3’を切断する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、リボヌクレアーゼT1を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記混合物のインキュベートが、約30℃~50℃の温度で行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
凍結乾燥酵素混合物を前記試料緩衝溶液で溶解して、前記酵素混合物を得る工程を更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
凍結乾燥標準物質混合物を前記試料緩衝溶液で溶解して、前記標準物質混合物を得る工程を更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am(D)、Gm(D)、Cm(D)又はUm(D))を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、N15標識されているか、又はC13標識されている、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
前記標準物質混合物中の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、約2:1~約1:2のモル比で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記標準物質混合物が、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
インキュベート混合物が、約1.0nmol~20nmolとなる量の同位体標識m7Gを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項50】
インキュベート混合物が、約1.0nmol~約20nmolとなる量の同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記緩衝溶液が、約0.001mM~約90mMの濃度範囲のZnCl2を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項52】
前記緩衝溶液が、約0.05mM~約0.2mMの濃度範囲のZnCl2を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記インキュベート混合物が、100mM未満の二価陽イオンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項54】
前記緩衝溶液が、約2~約7のpHを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項55】
前記緩衝溶液が、約4~約6のpHを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して前記混合物を分析する工程が、クロマトグラフィーカラムを使用して前記混合物を分離する工程と、質量分析計を使用してm/z及び強度データを得る工程と、m7G及び同位体標識m7Gのピーク、2’-O-メチル化ヌクレオシド及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドのピーク、又はそれらの両方を特定して積分する工程と、m7G:同位体標識m7Gピーク比、2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドピーク比、又はそれらの両方を計算する工程と、前記m7G:同位体標識m7Gピーク比に基づいた前記キャッピング効率、前記2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドピーク比に基づいた2-O-メチルトランスフェラーゼ効率、又はそれらの両方を求める工程を更に含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、mRNAキャッピング効率を定量的にモニタリングする方法を含めた、質量分析法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
真核生物系では、非ミトコンドリアメッセンジャーRNA(mRNA)は、逆方向7-メチルグアノシン(m7G)(図1A)によって5’末端においてキャッピングされており、これは、キャップ(0)(図2A)と呼ばれる5’から5’への三リン酸連結基m7G(5’)ppp(5’)Nによって転写物に連結されている。一旦、転写物に付加されると、鎖中の第1のヌクレオチド(N)は、次いで、2’ヒドロキシル位置においてメチル化され、キャップ(1)構造であるm7G(5’)ppp(5’)Nmを与える(図2B)。例えば、図1Bは、2’-O-メチルアデノシンを示している。あるいは、Nmは、2’-O-メチルグアノシン(Gm)、2’-O-メチルシトシンCm又は2’-O-メチルウリジン(Um)であり得る。キャッピング及びポリアデニル化は、転写産物が、細胞内の生得的なエキソヌクレアーゼによる分解から抵抗する一助となる。5’から3’へのエキソヌクレアーゼを遮断することに加えて、5’キャップは、核から細胞質への輸送を促進し、リボソームドッキング複合体の決定因子として作用することによって翻訳開始プロセスを助ける。
【0003】
スプライシング事象と呼ばれる転写物の更なる変化もまた、キャップ構造に依存する。遺伝子内領域又はイントロンと呼ばれる転写物の部分が除去され、切断された区域が再結合され、発現されるコード化領域(エキソン)が残る。このコード化領域は、5’及び3’の両側が、タンパク質に翻訳されないが翻訳に影響を及ぼすRNAのストレッチである非翻訳領域によって挟まれている。次いで、成熟mRNA転写物は、5つの区域、5’キャップ、5’UTR、コード化領域、3’UTR及び最後にポリアデニル化尾部からなる(図3を参照されたい)。
【0004】
最近の出来事、特にCOVIDパンデミックにより、mRNAは、様々なmRNAベースのCOVIDワクチンなどの有用な治療法として広く採用されてきた。インビトロ転写による非天然転写物の産生は、所望の治療機能を達成するために、精製後に修飾キャップ構造体の付加を必要とすることがある。修飾された5’キャップは、抗リバースキャップアナログ(ARCA)(米国特許第7,074,596号)、TriLink BiotechnologyのCleanCapアナログ、又はワクシニアキャッピング酵素とそれに続くメチルトランスフェラーゼ反応によるものを含むことができる。転写物の産生は、反応結果及び収率を求めるために分析試験を必要とするが、転写物のサイズに起因して、質量分析法などによる直接測定は技術的に難題である。したがって、キャッピング効率及びメチル化効率を測定するための改善された技術が望まれる。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、mRNAキャッピング効率を定量するためのキットは、ヌクレアーゼP1及びサツマイモ酸性ホスファターゼを含む酵素混合物、並びに同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む標準物質混合物(standard mixture)を含むことができる。様々な実施形態では、2’-O-メチル化ヌクレオシドは、Am、Gm、Um又はCmとすることができる。
【0006】
第1の態様の様々な実施形態では、本キットは、緩衝溶液を更に含むことができる。特定の実施形態では、緩衝溶液は、約0.01mmol~約90mmolのZnCl2濃度などの、ZnCl2を含むことができる。特定の実施形態では、緩衝溶液は、100mmol未満の濃度の二価陽イオンを有する。特定の実施形態では、緩衝溶液は、約4~約6などの、約2~約7のpHを有することができる。
【0007】
第1の態様の様々な実施形態では、酵素混合物は、RNアーゼT1を更に含むことができる。
【0008】
第1の態様の様々な実施形態では、酵素混合物は、凍結乾燥粉末とすることができる。
【0009】
第1の態様の様々な実施形態では、標準物質混合物は、凍結乾燥粉末とすることができる。
【0010】
第1の態様の様々な実施形態では、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む。
【0011】
第1の態様の様々な実施形態では、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、N15標識されているか、又はC13標識されている。
【0012】
第1の態様の様々な実施形態では、標準物質混合物中の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、約2:1~約1:2のモル比で存在し得る。特定の実施形態では、標準物質混合物は、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含むことができる。
【0013】
第2の態様では、mRNAキャッピング効率を定量するためのキットは、非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含む酵素混合物、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む標準物質混合物(standard mixture)、並びに緩衝溶液を含むことができる。
【0014】
第2の態様の様々な実施形態では、非特異的一本鎖ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼP1を含むことができる。
【0015】
第2の態様の様々な実施形態では、酸性ホスファターゼは、アデノシン一リン酸によって阻害され得ない。
【0016】
第2の態様の様々な実施形態では、酸性ホスファターゼは、サツマイモ酸性ホスファターゼを含むことができる。
【0017】
第2の態様の様々な実施形態では、酵素混合物は、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを含むことができる。
【0018】
第2の態様の様々な実施形態では、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼは、グアノシンのRNA3’を切断することができる。
【0019】
第2の態様の様々な実施形態では、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼは、リボヌクレアーゼT1を含むことができる。
【0020】
第2の態様の様々な実施形態では、酵素混合物は、凍結乾燥粉末とすることができる。
【0021】
第2の態様の様々な実施形態では、標準物質混合物は、凍結乾燥粉末とすることができる。
【0022】
第1の態様の様々な実施形態では、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む。
【0023】
第1の態様の様々な実施形態では、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、N15標識されているか、又はC13標識されている。
【0024】
第2の態様の様々な実施形態では、標準物質混合物中の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、約2:1~約1:2のモル比で存在し得る。特定の実施形態では、標準物質混合物は、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含むことができる。
【0025】
第2の態様の様々な実施形態では、緩衝溶液は、約0.05mM~約0.2mMなどの約0.001mM~約90mMの濃度範囲のZnCl2を含むことができる。特定の実施形態では、緩衝溶液は、100mM未満の二価陽イオンを含むことができる。
【0026】
第2の態様の様々な実施形態では、緩衝溶液は、約4~約6などの、約2~約7のpHを有する。
【0027】
第3の態様では、mRNAキャッピング効率を定量する方法は、緩衝溶液中で、試料、酵素混合物及び同位体標準物質溶液(isotopic standard solution)を一緒にして、インキュベート混合物を生成する工程であって、酵素混合物が、非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含み、同位体標準物質が、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、工程と、混合物をインキュベートする工程と、液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して混合物を分析し、キャッピング効率及び2’-O-メチルトランスフェラーゼ効率のうちの少なくとも1つを求める工程と、を含むことができる。
【0028】
第3の態様の様々な実施形態では、混合物をインキュベートする工程は、約35℃~45℃などの約30℃~70℃の温度で行うことができる。
【0029】
第3の態様の様々な実施形態では、非特異的一本鎖ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼP1を含むことができる。
【0030】
第3の態様の様々な実施形態では、酸性ホスファターゼは、アデノシン一リン酸によって阻害され得ない。
【0031】
第3の態様の様々な実施形態では、酸性ホスファターゼは、サツマイモ酸性ホスファターゼを含むことができる。
【0032】
第3の態様の様々な実施形態では、酵素混合物は、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを更に含むことができる。特定の実施形態では、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼは、グアノシンのRNA3’を切断することができる。特定の実施形態では、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼは、リボヌクレアーゼT1を含むことができる。更なる実施形態では、混合物をインキュベートする工程は、約30℃~50℃の温度で行うことができる。
【0033】
第3の態様の様々な実施形態では、インキュベート混合物は、約0.5~約2.0単位などの約0.5単位~約10.0単位の部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを含むことができる。
【0034】
第3の態様の様々な実施形態では、本方法は、凍結乾燥した酵素混合物を試料緩衝溶液で溶解(solubilize)して、酵素混合物を得る工程を更に含むことができる。
【0035】
第3の態様の様々な実施形態では、本方法は、凍結乾燥した標準物質混合物を試料緩衝溶液で溶解(solubilize)して、標準物質混合物を得る工程を更に含むことができる。
【0036】
第3の態様の様々な実施形態では、インキュベート混合物は、約0.5単位~約2.0単位などの約0.5単位~約10.0単位の酸性ホスファターゼを含むことができる。
【0037】
第3の態様の様々な実施形態では、インキュベート混合物は、約5単位~約20単位などの約1単位~100単位の非特異的一本鎖ヌクレアーゼを含むことができる。
【0038】
第3の態様の様々な実施形態では、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む。
【0039】
第3の態様の様々な実施形態では、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、N15標識されているか、又はC13標識されている。
【0040】
第3の態様の様々な実施形態では、標準物質混合物中の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドなどの、約2:1~約1:2のモル比で存在する。
【0041】
第3の態様の様々な実施形態では、インキュベート混合物は、約1.0nmol~20nmolとなる量の同位体標識m7Gを含むことができる。特定の実施形態では、インキュベート混合物は、約1.0nmol~約20nmolとなる量の同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含むことができる。
【0042】
第3の態様の様々な実施形態では、緩衝溶液は、約0.001mM~約90mMの濃度範囲のZnCl2を含むことができる。特定の実施形態では、緩衝溶液は、約0.05mM~約0.2mMの濃度範囲のZnCl2を含むことができる。
【0043】
第3の態様の様々な実施形態では、インキュベート混合物は、100mM未満の二価陽イオンを含むことができる。
【0044】
第3の態様の様々な実施形態では、緩衝溶液は、約4~約6などの、約2~約7のpHを有することができる。
【0045】
第3の態様の様々な実施形態では、液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して混合物を分析する工程は、クロマトグラフィーカラムを使用して混合物を分離する工程と、質量分析計を使用してm/z及び強度データを得る工程と、m7G及び同位体標識m7Gのピーク、2’-O-メチル化ヌクレオシド及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドのピーク、又はそれらの両方を特定して積分する工程と、m7G:同位体標識m7Gピーク比、2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドピーク比、又はそれらの両方を計算する工程と、m7G:同位体標識m7Gピーク比に基づいたキャッピング効率、2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドピーク比に基づいた2’-O-メチルトランスフェラーゼ効率、又はそれらの両方を求める工程と、を更に含む。
ここで、本明細書において開示される原理、及びその利点のより完全な理解のために、添付の図面と併せて考慮される以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】7-メチルグアノシン及び2’-O-メチルアデノシンの化学構造を例示する略図である。
図1B】7-メチルグアノシン及び2’-O-メチルアデノシンの化学構造を例示する略図である。
図2A】キャップ(0)及びキャップ(1)の化学構造を例示する略図である。
図2B】キャップ(0)及びキャップ(1)の化学構造を例示する略図である。
図3】mRNAの構造を例示する略図である。
図4A】様々な実施形態による、重水素化7-メチルグアノシン及び重水素化2’-O-メチルアデノシンの化学構造を例示する略図である。
図4B】様々な実施形態による、重水素化7-メチルグアノシン及び重水素化2’-O-メチルアデノシンの化学構造を例示する略図である。
図5】様々な実施形態による、キャッピング効率及び2’-O-メチルトランスフェラーゼ効率を求める方法のフロー図である。
図6】様々な実施形態による、例示的なクロマトグラフィーシステムのブロック図である。
図7】様々な実施形態による、例示的な質量分析法システムのブロック図である。
【0047】
図は必ずしも縮尺とおりに描かれておらず、図内の物体が互いに対する関係において必ずしも縮尺とおりに描かれていないことを理解されたい。図は、本明細書において開示された装置、システム、及び方法の様々な実施形態に対する明確さ及び理解をもたらすことを意図した図示である。可能なかぎり、同じ参照番号が、同じ又は同様の部品を指すように全図面を通じて使用される。更に、図面が、本発明の教示の範囲を決して限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0048】
イオン移動度増強の定性的及び定量的方法の実施形態は、本明細書に記載されている。
【0049】
本明細書において使用される節の見出しは、構成目的のためのものであって、記載される主題を多少なりとも限定するものと解釈されるべきでない。
【0050】
様々な実施形態のこの詳細な説明では、説明の目的のために、多くの特定の詳細が、開示された実施形態の全体的な理解を提供するために記載される。しかし、これらの様々な実施形態はこれらの特定の詳細の有無にかかわらず実行されてもよいことを当業者は理解するだろう。他の例では、構造及び装置はブロック図の形態で示されている。更に、方法が提示及び実行される具体的な順序は例示的なものであり、順序は変更されても依然として本明細書において開示される様々な実施形態の趣旨及び範囲内にとどまり得ることが企図されていることを、当業者であれば容易に理解することができる。
【0051】
それらに限定されるものではないが、特許、特許出願、記事、書籍、論文、及びインターネットウェブページを含んでいる、本出願で引用されたすべての文献及び同様の資料が、任意の目的でそれらの全体が参照によって明示的に組み込まれる。別段記載されないかぎり、本明細書において使用されるすべての技術及び科学用語は、本明細書において記載される様々な実施形態が属する当技術分野における当業者によって共通に理解されるものであるという意味を有する。
【0052】
本教示において議論されている温度、濃度、時間、圧力、流量、断面積などの前に暗黙の「約」が存在し、こうして、極めて小さい僅かな逸脱が本教示の範囲内にあることが理解されよう。本出願では、単数形の使用は、別段具体的に記載されないかぎり、複数形を含む。同様に、「備える/含む(comprise)」、「備える/含む(comprises)」、「備えている/含んでいる(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有している(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含んでいる(including)」の使用は限定することを意図していない。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものにすぎず、本教示を限定するものではないことを理解されたい。
【0053】
本明細書で使用する場合、「1つ(a)」又は「1つ(an)」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」のことを指す場合もある。また、「又は」の使用は包括的なものであり、その結果「A又はB」の成句は、「A」が該当するとき、「B」が該当するとき、又は「A」及び「B」の両方が該当するときに該当する。更に、文脈によって別段必要とされないかぎり、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含むものとする。
【0054】
「システム」は、各構成要素が全体内の少なくとも1つの他の構成要素と相互作用するか、又はそれと関連する全体を備えている、実際であれ抽象であれ、構成要素のセットを示す。
【0055】
転写物の産生は、反応結果及び収率を求めるための分析試験を必要とし得る。しかし、転写物のサイズのために、質量分析法などによる直接測定は、技術的に難題である。一層管理可能なサイズ範囲に転写物を消化させる酵素を使用する、2種の公開されている分析方法が開発された。最初のCapMapと命名されるものは、消化酵素であるヌクレアーゼP1を使用して、無傷の転写物をその個々の5’リン酸化ヌクレオチドに還元するものであり、キャップジヌクレオチドも生成することが報告されている。次に、消化混合物には、ARCAジヌクレオチドがスパイクされ、多孔質グラファイト系炭素充填クロマトグラフィーカラム上で分離され、質量分析法によって分析される。2つの難題が、この方法で観察されており、1つ目は、消化酵素の制御であり、2つ目は、クロマトグラフィープラットフォームである。著者らが唯一の消化系として使用する酵素ヌクレアーゼP1が、5’一リン酸の産生をもたらすことは周知である。すべてのキャップ構造体は、5’から5’に向けて結合しており、ヌクレアーゼP1に曝露されると、m7Gヌクレオチド、及び鎖中の最初のヌクレオチド、通常、2’-O-メチルアデノシンが切断されるが、他の2’-O-メチル化(mythelated)ヌクレオシドが可能である。第2に、多孔質グラファイト系炭素充填クロマトグラフィーカラムは、注入するにつれて分解することが知られており、再度コンディショニングする必要がある。要約すると、CAPMAP手法は、部分消化又は不良なクロマトグラフィーピークの積分のどちらかによって、不正確な測定値をもたらすおそれがある。
【0056】
第2の方法は、消化酵素であるRNアーゼHを使用する。RNアーゼHは、RNA:DNA二本鎖ハイブリッドにおいて、Watson-Crick RNA:DNA塩基対でRNA鎖を切断する。Beverly(Beverly,M.;Dell,A.;Parmar,P.;Houghton,L.Label-Free Analysis of MRNA Capping Efficiency Using RNase H Probes and LC-MS.Anal.Bioanal.Chem.2016,408(18),5021-5030)によって公開されたこの方法は、転写物の5’末端に相補的な、約25nt長のビオチン化分子プローブの設計を含む。プローブをmRNAの5’末端にアニーリングし、次いで、磁気ビーズに複合体形成させて、次に、RNアーゼH消化に供される。切断された産物を磁石によって分離して洗浄し、ビーズ及びプローブから熱メタノール水で溶出し、乾燥させ、次に、LC-MSによって分析する。結果は、キャッピングが起こったことを示すであろう。しかし、本方法の著者は、その回収率が、60%未満であったことを認めている。更に、Beverlyの論文中に参照されている市販の酵素であるRNアーゼH1に関する公開データは、一本鎖RNA:DNA塩基対において切断しないが、代わりに、キメラ塩基対より下流の鎖において、複数の切断産物を産生する。消化物を複製する場合、RNA:DNA塩基対から1~2つのヌクレオチド分、下流の鎖の3’切断末端を有する複数の異なるオリゴヌクレオチドを検出することが可能である。更に、mRNAの5’末端の異なるヌクレオチド領域間の配列相同性のために、標的外RNアーゼH切断産物もまた、高い存在量で検出され得る。
【0057】
キャッピング効率及びメチル化効率を決定する方法
5’キャッピング効率及び2’-O-メチルトランスフェラーゼ効率の両方の直接測定に関する方法が、本明細書に記載されている。一定分量のmRNAに、既知量の、2’-O-メチルアデノシン(Am)、2’-O-メチルグアノシン(Gm)、2’-O-メチルシトシンCm又は2’-O-メチルウリジン(Um)などの同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドをスパイクすることができる。図4Aは、メチル基m7G(D)において3個の重水素原子により標識された同位体標識m7Gを示す。同様に、図4Bは、メチル基Am(D)において、3個の重水素原子により標識されている同位体標識Amを示している。次に、単一酵素消化を行い、mRNAをその個々のヌクレオシドに還元することができる。次に、スパイクした消化物は、単一アンモニウムベースの緩衝系を使用してクロマトグラフィーにより分離して、質量分析法によって分析することができる。正確な定量は、重い対軽いm7G/2’O-メチル化ヌクレオシドのピーク面積の比較によって行うことができる。
【0058】
他の実施形態では、同位体標識標準物質は、同位体標識5’リン酸-m7G及び同位体標識5’-リン酸-2’-O-メチル化ヌクレオチドを含むことができる。このシナリオでは、ホスファターゼは、同位体標識標準物質から5’リン酸を切断し、同位体標識メチル化ヌクレオシドにすることができる。
【0059】
質量分析法は、生体分子の直接測定に対してロバストかつ信頼性の高い応用であることが証明されている。液体基質又は固体基質から気相に生体分子をイオンとして遷移させることによって、このイオンの質量を検出して測定することができる。イオンを生成する方法の1つは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)である。ESIによって生成した分子の定量は、標準曲線を使用して行うことができ、この場合、既知量の合成標準物質が必要であり、得られた結果をプロットし、傾きの式を使用して、試料中の標的の濃度を見出すことができる。標準曲線の生成により提起される難題は、主に、合成標準物質を見つけ出すこと/生成すること、及び標的試料のマトリックスに適合させることである。マトリックスの適合は、試料中の極性分子のすべてが表面電荷を奪い合うというESIの性質のため、重要である。このような電荷の奪い合いのために、試料中の測定される応答性が標準曲線の応答性を変化させて、測定誤差を引き起こすおそれがある。分子の一層正確な測定は、試料に同位体標識標準物質をスパイクすることによって行われる。この方法では、標的分子の合成標準物質が生成され、この場合、1個以上の原子が、その安定な同位体である、炭素の場合、C13、窒素の場合、N15、及び水素の場合、重水素(D)と置き換えられている。既知量の安定な同位体標識標準物質(SILS)を試料にスパイクし、この試料を処理して取得する。SILSは、標的分子に構造的に同一であるので、検討下にある分子と同一の溶出プロファイルを有し、差異は、質量のシフトだけである。スパイクしたSILSは、標的分子と同じイオン化荷電競争を受け、マトリックスを適合させるようとする場合に生じるおそれがある、いかなる測定誤差も回避することになろう。重いピークと軽いピークの面積比を採用することによって、標的分子の量が定量される。RNAヌクレオシド分析の場合、この手法に対する主要な妨げは、SILSの利用可能性であった。本明細書に記載されている手法は、内部標準として、細胞培養、RNA精製及び試料の希釈を行うことなく、精製後の重標識ヌクレオシド分子しか使用しておらず、標的分子の正確な測定をもたらす。
【0060】
図5は、5’キャッピング効率及び/又は2’-O-メチルトランスフェラーゼ効率を測定する方法500を例示する。502において、mRNA試料には、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドなどの、同位体標識標準物質をスパイクすることができる。様々な実施形態では、同位体標識m7G及び2’-O-メチル化ヌクレオシドは、m7G(D)及びAm(D)などの重水素化標識されることができるか、又はN15若しくはC13により標識され得る。様々な実施形態では、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドは、等モル量などの、約2:1~約1:2のモル比で存在し得る。標準物質の濃度は、インキュベート混合物中の同位体標識m7Gの量が、約1.0nmol~20nmolとなり得、インキュベート混合物中の同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドの量が、約1.0nmol~約20nmolとなり得るような濃度とすることができる。
【0061】
504では、酵素混合物を試料に添加することができる。酵素混合物は、ヌクレアーゼP1などの非特異的一本鎖ヌクレアーゼ、及びサツマイモ酸性ホスファターゼなどの酸性ホスファターゼを含むことができる。酸性ホスファターゼの重要な特徴とは、ヌクレアーゼP1によるmRNAの一リン酸への消化は、いくつかの酸性ホスファターゼを阻害することができるアデノシン一リン酸の産生をもたらすので、酸性ホスファターゼは、アデノシン一リン酸によって阻害されないことであり得る。場合により、酵素混合物は、グアノシンのRNA3’を切断するエンドヌクレアーゼなどの、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを含むことができる。グアノシンのRNA3’を切断する部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼの例は、RNアーゼT1、RNアーゼN1、RNアーゼSa、Barnase及び他の類似のエンドヌクレアーゼを含む。
【0062】
様々な実施形態では、酵素混合物は、約5単位~約20単位などの、約1単位~約100単位の非特異的一本鎖ヌクレアーゼが、mRNA試料に添加されるような、十分な非特異的一本鎖ヌクレアーゼを含むことができる。様々な実施形態では、酵素混合物は、約0.5単位~約2.0単位などの約0.5単位~約10.0単位の酸性ホスファターゼをmRNA試料に添加するような、十分な酸性ホスファターゼを含むことができる。様々な実施形態では、酵素混合物は、約0.5単位~約2.0単位などの、約0.5単位~約10.0単位の部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、mRNA試料に添加されるような、十分な部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼ(存在する場合)を含むことができる。酵素を増量すると、完了するまでの時間を短縮することができ、当業者は、所望のインキュベート期間、好適な量の酵素を特定することができることが知られている。
【0063】
様々な実施形態では、mRNA試料、同位体標識標準物質及び/又は酵素混合物は、乾燥状態にあることができ、緩衝溶液を添加することによって再構成することができる。例えば、mRNA試料は、沈殿させることができ、酵素消化の妨げとなり得る、mRNAの合成から塩及び溶媒を除去するなど、上清を除去することができる。更なる例では、同位体標識標準物質及び酵素混合物は、保存可能期間を延ばすためなど、凍結乾燥粉末として供給されることができる。代替として、標準物質又は酵素混合物は、必要に応じて解凍される凍結溶液とすることができる。様々な実施形態では、沈殿したmRNAは、指定量の緩衝溶液を用いて再構成することができ、酵素混合物及び同位体標識標準物質は、特定量で添加され得る。代替的に、特定量の酵素混合物及び同位体標識標準物質を沈殿したmRNAに加えることができ、mRNAは、混合などにより再構成することができる。
【0064】
様々な実施形態では、緩衝溶液は、約0.05mM~約0.2mMの濃度範囲などの約0.001mM~約90mMの濃度範囲のZnCl2を含むことができる。更に、インキュベート混合物は、100mM未満の二価陽イオンを含む。様々な実施形態では、緩衝溶液は、約4~約6のpHなどの、約2~約7のpHを有することができる。
【0065】
506では、mRNAの酵素消化を行うことができる。様々な実施形態では、mRNA、同位体標識標準物質及び酵素混合物を含むインキュベート混合物は、約30℃~約50℃、更には約35℃~約45℃などの約30℃~約70℃の温度でインキュベートすることができる。酵素消化は、mRNAを構成成分であるヌクレオチドに消化するヌクレアーゼに対して、及びヌクレオチドからリン酸を除去することによる、ヌクレオチドをヌクレオシドに変換する酸性ホスファターゼに対して、十分な時間、行われ得る。様々な実施形態では、酵素消化は、少なくとも約45分間など、少なくとも約1時間など、少なくとも約4時間など、少なくとも約一晩(約12~16時間)などの、少なくとも約30分間、行うことができる。一般に、酵素消化は、約1日間未満となり得る。
【0066】
508において、消化試料は、クロマトグラフィーにより分離することができ、510においてクロマトグラフィーにより分離した試料は、質量分析法によって分析することができる。これは、質量分析計を使用するm/z及び強度データの取得、m7G及び同位体標識m7Gのピーク、及び/又は2’-O-メチル化ヌクレオシド及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドのピーク同定並びに積分を含むことができる。更に、512では、キャッピング効率は、m7G:同位体標識m7Gのピーク比から求めることができ、2-O-メチルトランスフェラーゼ効率は、2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドのピーク比に基づいて求めることができる。
【0067】
酵素消化キット
様々な実施形態では、mRNAキャッピング効率を定量するキットは、酵素混合物及び同位体標識標準物質混合物を含むことができる。酵素混合物及び同位体標識標準物質混合物は、緩衝溶液の添加により再構成することができる、凍結乾燥粉末とすることができる。他の実施形態では、酵素混合物及び同位体標識標準物質混合物は、凍結溶液などの溶液とすることができる。酵素混合物及び同位体標識標準物質混合物は、多数の反応に使用することができるバルク溶液よりもむしろ1回又は数回の反応にとって、単回使用向けの管などの少量で十分となり得るので有利となり得る。
【0068】
酵素混合物は、非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含むことができる。非特異的一本鎖ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼP1を含むことができる。酸性ホスファターゼは、サツマイモ酸性ホスファターゼなどのアデノシン一リン酸によって阻害されない、酸性ホスファターゼとすることができる。酵素混合物は、グアノシンのRNA3’を切断する部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼなどの、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを含むことができる。様々な実施形態では、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼは、RNアーゼT1、RNアーゼN1、RNアーゼSa、Barnase及び他の類似のエンドヌクレアーゼを含むことができる。
【0069】
同位体標識標準物質混合物は、同位体標識m7G及び2’-O-メチル化ヌクレオシドを含むことができる。一般に、同位体標識標準物質混合物は、標準物質の化合物に組み込まれている重い安定な同位体を含むことができる。重い安定な同位体の使用は、質量分光法における内部標準としてそれらの使用を可能にする、化合物の化学的性質を改変することなく、m/z電荷比をシフトすることができる。様々な実施形態では、同位体標識標準物質混合物は、同位体標識m7G及び2’-O-メチル化ヌクレオシドを含むことができる。同位体標識m7G及び2’-O-メチル化ヌクレオシドは、重水素標識され得る、N15標識され得る、C13標識され得る、O17標識され得る、O18標識され得る、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。同位体標識標準物質混合物は、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドなどの、約2:1~約1:2のモル比で、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含むことができる。
【0070】
他の実施形態では、同位体標識標準物質混合物は、同位体標識5’リン酸-m7G及び同位体標識5’-リン酸-2’-O-メチル化ヌクレオチドを含むことができる。このシナリオでは、ホスファターゼは、同位体標識標準物質から5’リン酸を切断し、同位体標識メチル化ヌクレオシドにすることができる。
【0071】
本キットはまた、緩衝溶液も含むことができる。緩衝溶液は、約0.01mmol~約90mmolの濃度などのZnCl2を含むことができる。緩衝溶液は、100mmol未満の濃度の二価陽イオンを有することができる。緩衝溶液は、約4~約6などの、約2~約7のpHを有する。
【0072】
クロマトグラフィープラットフォーム
図6は、本発明の一態様による、液体クロマトグラフィーシステム600を図示する。液体クロマトグラフィーシステム600は、システム600により溶媒をポンプ移送するための分析用ポンプ602を備える。システム600は、分析される試料を含む試料レザーバー604を備える。システム600は、分離カラム606及び検出器608を更に備える。システム600はまた、制御装置610を備える。
【0073】
液体クロマトグラフィーシステム600は、試料レザーバー604から試料を回収するようなされている。次に、試料をシステムに導入することができる。
【0074】
液体クロマトグラフィーシステム1000は、分離カラム606に試料を導入するように更になされている。
【0075】
システム600はまた、分析フローによって、分離カラム606に試料を注入するようになされている。これは、分析用ポンプ602によって、試料を案内することによって行うことができる。分離カラム606は、分離カラム606内の保持時間に基づいた成分種に試料を分離することができる。分離カラム606による試料の分離後に、分離された構成成分は、検出器608によって検出することができる。一部の実施形態では、検出器608は、吸収検出器、屈折率検出器、蛍光検出器などの光学検出器とすることができる。他の実施形態では、検出器608は、導電性検出器又は電気化学検出器とすることができる。更に他の実施形態では、検出器608は、質量分析計とすることができる。
【0076】
様々な実施形態では、分離カラム606は、固定相媒体が充填されたチューブから一般になる。固定相媒体は、化合物がカラムを移動するのにかかる時間(保持時間)に影響し得る。この影響は、試料の個々の構成成分が、それらの個々の保持時間に基づいて分離され得るよう、異なる化合物に対して異なり得る。多孔質物質、イオン性物質、極性物質、非極性物質などを含めた、多数の固定相媒体が存在する。多孔質物質は、分子のサイズ、及び分子が多孔質物質内に進入する能力に基づいて、保持時間に影響を及ぼし得る。イオン性物質は、イオン性物質と化合物との間の電荷の引力又は反発に基づいて保持時間に影響を及ぼし得る。極性物質及び非極性物質は、化合物の疎水性又は親水性に基づいた保持時間に影響を及ぼすことができる。
【0077】
様々な実施形態では、ヌクレオチド及びヌクレオシドは、逆相分離を使用して分離することができ、疎水性の非極性固定相物質が、有機溶媒への極性の割合に応じて、様々な疎水性を有する移動相と共に使用される。例えば、C18カラムは、酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウム緩衝系と共に使用されて、ヌクレオシドを分離することができる。特定の実施形態では、約5のpHにおける、5mMの酢酸アンモニウムの水性移動相を使用することができ、アセトニトリル(最大で約40%)又はメタノール(最大で約50%)の濃度を向上させたグラジエントを使用して、ヌクレオシドを分離することができる。好適なカラム及び緩衝系は、当業者に明白であり、本開示の範囲内にある。
【0078】
他の実施形態では、ヌクレオチド及びヌクレオシドは、親水性固定相物質がアセトニトリルなどの疎水性移動相と共に使用される、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)を使用して分離することができる。好適なカラム及び緩衝系は、当業者に明白であり、本開示の範囲内にある。
【0079】
質量分析法プラットフォーム
質量分析法プラットフォーム700の様々な実施形態は、図7のブロック図に示されている構成要素を含むことができる。様々な実施形態では、質量分析法プラットフォーム700は、システム600の検出器608として動作することができる。様々な実施形態では、図7の要素は、質量分析法プラットフォーム700に組み込むことができる。様々な実施形態によれば、質量分析計700は、イオン源702、質量分析器704、イオン検出器706及び制御装置708を含むことができる。
【0080】
様々な実施形態では、イオン源702は、試料から複数のイオンを発生させる。イオン源は、以下に限定されないが、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)源、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源、大気圧化学イオン化(APCI)源、大気圧光イオン化源(APPI)、誘導結合型プラズマ(ICP)源、電子イオン化源、化学イオン化源、光イオン化源、グロー放電イオン化源、熱スプレーイオン化源などを含むことができる。
【0081】
様々な実施形態では、質量分析器704は、イオンの質量対電荷比に基づいて、イオンを分離することができる。例えば、質量分析器704は、四重極質量フィルター分析器、四重極イオントラップ分析器、飛行時間型(TOF)分析器、静電トラップ(例えば、オービトラップ)質量分析器、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)質量分析器などを含むことができる。様々な実施形態では、質量分析器704はまた、衝突誘起解離(CID)、電子移動解離(ETD)、電子捕捉解離(ECD)、光誘起解離(PID)、表面誘起解離(SID)などを使用して、イオンをフラグメント化し、更に、質量対電荷比に基づいて、フラグメント化されたイオンを分離するように構成され得る。
【0082】
様々な実施形態では、イオン検出器706は、イオンを検出することができる。例えば、イオン検出器706は、電子増倍器、ファラデーカップなどを含むことができる。質量分析装置を出たイオンは、イオン検出器によって検出することができる。様々な実施形態では、イオン検出器は、定量的となり得、こうして、イオンの正確な量を求めることができる。
【0083】
様々な実施形態では、制御装置708は、イオン源702、質量分析器704及びイオン検出器706と通信することができる。例えば、制御装置708は、イオン源を構成し、又はイオン源を有効/無効にすることができる。更に、制御装置708は、検出する特定の質量範囲を選択するよう、質量分析器704を構成することができる。更に、制御装置708が、利得を調節するなどによって、イオン検出器706の感度を調節することができる。更に、制御装置708は、検出されるイオンの極性に基づいて、イオン検出器706の極性を調節することができる。例えば、イオン検出器706は、陽イオンを検出するよう構成され得るか、又は陰イオンを検出するよう構成され得る。
【0084】
本教示を様々な実施形態と併せて記載するが、本教示をかかる実施形態に限定することを意図していない。むしろ、本教示は、当業者が理解するように、様々な代替物、変形物、及び等価物を包含する。
【0085】
更に、様々な実施形態の記載において、本明細書は、方法及び/又はプロセスを特定の順序の工程として提示している場合がある。しかし、本方法又はプロセスが本明細書に記載された工程の特定の順序に依拠しないかぎりにおいて、本方法又はプロセスは、記載された工程の特定の順序に限定されるべきではない。当業者であれば理解するように、工程の他の順序が可能であり得る。したがって、本明細書に記載された工程の特定の順序を、請求項における限定として解釈すべきではない。加えて、本方法及び/又はプロセスを対象とする特許請求の範囲は、書かれた順序でのそれらの工程の実行に限定されるべきではなく、順序は変更されてもよく、依然として様々な実施形態の趣旨及び範囲内にとどまり得ることを当業者であれば容易に理解することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝溶液中で、キャッピングされたmRNA試料、酵素混合物及び同位体標準物質溶液を一緒にして、インキュベート混合物を生成する工程であって、前記酵素混合物が、非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含み、前記同位体標準物質が、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am、Gm、Cm又はUm)を含む、工程と、
前記混合物をインキュベートする工程と、
液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して、前記混合物を分析し、キャッピング効率及び2’-O-メチルトランスフェラーゼ効率の少なくとも1つを求める工程と、
を含む、mRNAキャッピング効率を定量するための方法。
【請求項2】
前記混合物のインキュベートが、約30℃~70℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物のインキュベートが、約35℃~45℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記非特異的一本鎖ヌクレアーゼが、ヌクレアーゼP1を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性ホスファターゼが、アデノシン一リン酸によって阻害されない、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性ホスファターゼが、サツマイモ酸性ホスファターゼを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素混合物が、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、グアノシンのRNA3’を切断する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、リボヌクレアーゼT1を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物のインキュベートが、約30℃~50℃の温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
凍結乾燥酵素混合物を前記試料緩衝溶液で溶解して、前記酵素混合物を得る工程を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
凍結乾燥標準物質混合物を前記試料緩衝溶液で溶解して、前記標準物質混合物を得る工程を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am(D)、Gm(D)、Cm(D)又はUm(D))を含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、N15標識されているか、又はC13標識されている、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記標準物質混合物中の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、約2:1~約1:2のモル比で存在する、請求項に記載の方法。
【請求項16】
前記標準物質混合物が、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
インキュベート混合物が、約1.0nmol~20nmolとなる量の同位体標識m7Gを含む、請求項に記載の方法。
【請求項18】
インキュベート混合物が、約1.0nmol~約20nmolとなる量の同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記緩衝溶液が、約0.001mM~約90mMの濃度範囲のZnCl2を含む、請求項に記載の方法。
【請求項20】
前記緩衝溶液が、約0.05mM~約0.2mMの濃度範囲のZnCl2を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記インキュベート混合物が、100mM未満の二価陽イオンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記緩衝溶液が、約2~約7のpHを有する、請求項に記載の方法。
【請求項23】
前記緩衝溶液が、約4~約6のpHを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して前記混合物を分析する工程が、クロマトグラフィーカラムを使用して前記混合物を分離する工程と、質量分析計を使用してm/z及び強度データを得る工程と、m7G及び同位体標識m7Gのピーク、2’-O-メチル化ヌクレオシド及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドのピーク、又はそれらの両方を特定して積分する工程と、m7G:同位体標識m7Gピーク比、2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドピーク比、又はそれらの両方を計算する工程と、前記m7G:同位体標識m7Gピーク比に基づいた前記キャッピング効率、前記2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドピーク比に基づいた2-O-メチルトランスフェラーゼ効率、又はそれらの両方を求める工程を更に含む、請求項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
更に、様々な実施形態の記載において、本明細書は、方法及び/又はプロセスを特定の順序の工程として提示している場合がある。しかし、本方法又はプロセスが本明細書に記載された工程の特定の順序に依拠しないかぎりにおいて、本方法又はプロセスは、記載された工程の特定の順序に限定されるべきではない。当業者であれば理解するように、工程の他の順序が可能であり得る。したがって、本明細書に記載された工程の特定の順序を、請求項における限定として解釈すべきではない。加えて、本方法及び/又はプロセスを対象とする特許請求の範囲は、書かれた順序でのそれらの工程の実行に限定されるべきではなく、順序は変更されてもよく、依然として様々な実施形態の趣旨及び範囲内にとどまり得ることを当業者であれば容易に理解することができる。

本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕ヌクレアーゼP1及びサツマイモ酸性ホスファターゼを含む、酵素混合物と、
同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am、Gm、Cm又はUm)を含む、標準物質混合物と、
を含む、mRNAキャッピング効率を定量するためのキット。
〔2〕緩衝溶液を更に含む、前記〔1〕に記載のキット。
〔3〕前記緩衝溶液が、ZnCl 2 を含む、前記〔2〕に記載のキット。
〔4〕前記緩衝溶液が、約0.01mmol~約90mmolのZnCl 2 濃度を有する、前記〔3〕に記載のキット。
〔5〕前記緩衝溶液が、約100mmol未満の濃度の二価陽イオンを有する、前記〔3〕に記載のキット。
〔6〕前記緩衝溶液が、約2~約7のpHを有する、前記〔2〕に記載のキット。
〔7〕前記緩衝溶液が、約4~約6のpHを有する、前記〔6〕に記載のキット。
〔8〕更に、前記酵素混合物が、RNアーゼT1を更に含む、前記〔1〕に記載のキット。
〔9〕前記酵素混合物が凍結乾燥粉末である、前記〔1〕に記載のキット。
〔10〕前記標準物質混合物が、凍結乾燥粉末である、前記〔1〕に記載のキット。
〔11〕前記同位体標識m7G及び2’-O-メチル化ヌクレオシドが、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am(D)、Gm(D)、Cm(D)又はUm(D))を含む、前記〔1〕に記載のキット。
〔12〕前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、N 15 標識されているか、又はC 13 標識されている、前記〔1〕に記載のキット。
〔13〕前記標準物質混合物中の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、約2:1~約1:2のモル比で存在する、前記〔1〕に記載のキット。
〔14〕前記標準物質混合物が、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、前記〔13〕に記載のキット。
〔15〕非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含む、酵素混合物と、
同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am、Gm、Cm又はUm)を含む、標準物質混合物と、
緩衝溶液と、
を含む、mRNAキャッピング効率を定量するためのキット。
〔16〕前記非特異的一本鎖ヌクレアーゼがヌクレアーゼP1を含む、前記〔15〕に記載のキット。
〔17〕前記酸性ホスファターゼが、アデノシン一リン酸によって阻害されない、前記〔15〕に記載のキット。
〔18〕前記酸性ホスファターゼが、サツマイモ酸性ホスファターゼを含む、前記〔15〕に記載のキット。
〔19〕前記酵素混合物が、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを含む、前記〔15〕に記載のキット。
〔20〕前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、グアノシンのRNA3’を切断する、前記〔19〕に記載のキット。
〔21〕前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、リボヌクレアーゼT1を含む、前記〔19〕に記載のキット。
〔22〕前記酵素混合物が、凍結乾燥粉末である、前記〔15〕に記載のキット。
〔23〕前記標準物質混合物が、凍結乾燥粉末である、前記〔15〕に記載のキット。
〔24〕前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am(D)、Gm(D)、Cm(D)又はUm(D))を含む、前記〔15〕に記載のキット。
〔25〕前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、N 15 標識されているか、又はC 13 標識されている、前記〔15〕に記載のキット。
〔26〕前記標準物質混合物中の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、約2:1~約1:2のモル比で存在する、前記〔15〕に記載のキット。
〔27〕前記標準物質混合物が、等モル量の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、前記〔26〕に記載のキット。
〔28〕前記緩衝溶液が、約0.001mM~約90mMの濃度範囲のZnCl 2 を含む、前記〔15〕に記載のキット。
〔29〕前記緩衝溶液が、約0.05mM~約0.2mMの濃度範囲のZnCl 2 を含む、前記〔28〕に記載のキット。
〔30〕前記緩衝溶液が、約100mM未満の二価陽イオンを含む、前記〔28〕に記載のキット。
〔31〕前記緩衝溶液が、約2~約7のpHを有する、前記〔15〕に記載のキット。
〔32〕前記緩衝溶液が、約4~約6のpHを有する、前記〔31〕に記載のキット。
〔33〕緩衝溶液中で試料、酵素混合物及び同位体標準物質溶液を一緒にして、インキュベート混合物を生成する工程であって、前記酵素混合物が、非特異的一本鎖ヌクレアーゼ及び酸性ホスファターゼを含み、前記同位体標準物質が、同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am、Gm、Cm又はUm)を含む、工程と、
前記混合物をインキュベートする工程と、
液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して、前記混合物を分析し、キャッピング効率及び2’-O-メチルトランスフェラーゼ効率の少なくとも1つを求める工程と、
を含む、mRNAキャッピング効率を定量するための方法。
〔34〕前記混合物のインキュベートが、約30℃~70℃の温度で行われる、前記〔33〕に記載の方法。
〔35〕前記混合物のインキュベートが、約35℃~45℃の温度で行われる、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕前記非特異的一本鎖ヌクレアーゼが、ヌクレアーゼP1を含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔37〕前記酸性ホスファターゼが、アデノシン一リン酸によって阻害されない、前記〔33〕に記載の方法。
〔38〕前記酸性ホスファターゼが、サツマイモ酸性ホスファターゼを含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔39〕前記酵素混合物が、部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼを更に含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔40〕前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、グアノシンのRNA3’を切断する、前記〔39〕に記載の方法。
〔41〕前記部位特異的一本鎖RNAエンドヌクレアーゼが、リボヌクレアーゼT1を含む、前記〔39〕に記載の方法。
〔42〕前記混合物のインキュベートが、約30℃~50℃の温度で行われる、前記〔41〕に記載の方法。
〔43〕凍結乾燥酵素混合物を前記試料緩衝溶液で溶解して、前記酵素混合物を得る工程を更に含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔44〕凍結乾燥標準物質混合物を前記試料緩衝溶液で溶解して、前記標準物質混合物を得る工程を更に含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔45〕前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、重水素標識m7G(D)及び重水素標識2’-O-メチル化ヌクレオシド(Am(D)、Gm(D)、Cm(D)又はUm(D))を含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔46〕前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、N 15 標識されているか、又はC 13 標識されている、前記〔33〕に記載の方法。
〔47〕前記標準物質混合物中の前記同位体標識m7G及び前記同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドが、約2:1~約1:2のモル比で存在する、前記〔33〕に記載の方法。
〔48〕前記標準物質混合物が、等モル量の同位体標識m7G及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、前記〔47〕に記載の方法。
〔49〕インキュベート混合物が、約1.0nmol~20nmolとなる量の同位体標識m7Gを含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔50〕インキュベート混合物が、約1.0nmol~約20nmolとなる量の同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドを含む、前記〔49〕に記載の方法。
〔51〕前記緩衝溶液が、約0.001mM~約90mMの濃度範囲のZnCl 2 を含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔52〕前記緩衝溶液が、約0.05mM~約0.2mMの濃度範囲のZnCl 2 を含む、前記〔51〕に記載の方法。
〔53〕前記インキュベート混合物が、100mM未満の二価陽イオンを含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔54〕前記緩衝溶液が、約2~約7のpHを有する、前記〔33〕に記載の方法。
〔55〕前記緩衝溶液が、約4~約6のpHを有する、前記〔54〕に記載の方法。
〔56〕液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して前記混合物を分析する工程が、クロマトグラフィーカラムを使用して前記混合物を分離する工程と、質量分析計を使用してm/z及び強度データを得る工程と、m7G及び同位体標識m7Gのピーク、2’-O-メチル化ヌクレオシド及び同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドのピーク、又はそれらの両方を特定して積分する工程と、m7G:同位体標識m7Gピーク比、2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドピーク比、又はそれらの両方を計算する工程と、前記m7G:同位体標識m7Gピーク比に基づいた前記キャッピング効率、前記2’-O-メチル化ヌクレオシド:同位体標識2’-O-メチル化ヌクレオシドピーク比に基づいた2-O-メチルトランスフェラーゼ効率、又はそれらの両方を求める工程を更に含む、前記〔33〕に記載の方法。
【国際調査報告】