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特表2024-522739メルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】メルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/011 20120101AFI20240614BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
D04H3/011
D01F6/62 303J
D01F6/62 302A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577480
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2022006232
(87)【国際公開番号】W WO2022265221
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076725
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リム ソン ス
(72)【発明者】
【氏名】ミン キョン ウォン
【テーマコード(参考)】
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD13
4L035FF05
4L047AA21
4L047AA29
4L047AB07
4L047CA01
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB03
4L047CC08
4L047EA05
(57)【要約】
本発明は、メルトブローン不織布、これを含む多層構造のスパンボンド不織布およびその製造方法に関し、再生ポリエステルフレークを用いて環境に優しいだけでなく、剛性、吸音性および圧縮弾性率に優れていて、自動車用吸音材に用いられる材料であり、自動車のホイールガード、トランクトリム等の剛性、吸音性および圧縮弾性率が要求される自動車内蔵材等に活用可能なメルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフレーク(polyester flake)を粉砕し、ポリエステルフレーク粉末を製造する第1段階と;
ポリエステルフレーク粉末を加熱し、結晶化させる第2段階と;
結晶化させたポリエステルフレーク粉末を溶融させて溶融物を製造する第3段階と;
溶融物を紡糸してメルトブローン繊維を製造し、製造した繊維を積層させてメルトブローン不織布を製造する第4段階と;を含み、
前記溶融物は、0.3~3.0mol%のイソフタル酸(IPA)を含むことを特徴とするメルトブローン不織布の製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステルフレークは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フレーク、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)フレーク、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フレークおよびポリプロピレン(PP)フレークの中から選ばれた1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
【請求項3】
前記第1段階で製造したフレーク粉末は、平均粒子サイズが1~10mmであることを特徴とする請求項1に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
【請求項4】
前記第2段階の加熱は、100~180℃の温度で行うことを特徴とする請求項1に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
【請求項5】
前記第3段階で製造された溶融物は、0.40~0.60dl/gの固有粘度(IV)を有することを特徴とする請求項1に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
【請求項6】
前記第4段階で製造したメルトブローン繊維は、0.5~20μmの平均直径を有することを特徴とする請求項1に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
【請求項7】
前記第4段階で製造したメルトブローン不織布は、100~900gsmの坪量を有することを特徴とする請求項1に記載のメルトブローン不織布の製造方法。
【請求項8】
0.3~3.0mol%のイソフタル酸(IPA)を含み、100~900gsmの坪量を有することを特徴とするメルトブローン不織布。
【請求項9】
前記メルトブローン不織布は、ポリエステルフレーク(polyester flake)の溶融物を紡糸して製造されたことを特徴とする請求項8に記載のメルトブローン不織布。
【請求項10】
前記メルトブローン不織布は、平均直径が0.5~20μmのメルトブローン繊維で構成されることを特徴とする請求項8に記載のメルトブローン不織布。
【請求項11】
前記メルトブローン不織布は、KS M 6518規定によって測定するとき、1.3~1.5MPaの剛性を有することを特徴とする請求項8に記載のメルトブローン不織布。
【請求項12】
スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1つ以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造スパンボンド不織布であって、
前記メルトブローン不織布層は、請求項8に記載のメルトブローン不織布を含むことを特徴とする多層構造スパンボンド不織布。
【請求項13】
前記多層構造スパンボンド不織布は、自動車吸音材用であることを特徴とする請求項12に記載の多層構造スパンボンド不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法に関し、再生ポリエステルフレークを用いて環境に優しいだけでなく、剛性、吸音性および圧縮弾性率に優れていて、自動車用吸音材に用いられる材料であり、自動車のホイールガード、トランクトリム等の剛性、吸音性および圧縮弾性率が要求される自動車内蔵材等に活用可能なメルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の遮音および吸音を目的として様々な形態の不織布剤形が自動車に適用されているが、多くの場合、吸音および遮音、防水、防塵、成形加工性等の目的でカーペットやヘッドライニング等にエチレンビニルアセテート(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のフィルムがコートされた形態の部品が適用されている。このような部品は、自動車の廃車後に発生する廃材や製造過程で発生する不良品、製品成形後に発生するスクラップの場合、ほとんどリサイクルできず、セメント焼成や熱併合発電所等のような場所で熱源として処理されているのが現状である。
【0003】
特に、静粛な自動車運行のために、走行中に輪から発生する騒音を低減するために、ホイールガード素材を従来のオレフィン系高分子射出成形製品から繊維を活用した不織布複合形態の製品に転換している。しかしながら、オレフィン系高分子成形製品と比較して、部品コストが増加する問題に起因して普遍化に限界性を有している。また、一般的な自動車ホイールガード用不織布の綿重量は、一般的に平方メートル当たり800~1600gであるが、このような不織布の使用は、従来の射出タイプと比較して、重量が高く、製造工程が複雑で、部品の製造コストが上昇し、高級車種に制限的に適用されている。
【0004】
その他にも、様々な方法を用いて自動車用廃棄カーペットおよびカーペットスクラップをリサイクルする技術が報告されている。
【0005】
従来、韓国公開特許2013-0005593号には、廃棄シートを微細粉砕し、これを通じて得た粉砕物にポリエステル繊維、低融点ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維および麻を混合し、カットする工程を通じて製造される吸・遮音材について開示されているが、ウレタンフォームをポリエステル繊維と混合して製造するとき、形状が互いに異なる物質を低融点ポリエステルバインダーで結合するので、剛性が不十分であるという問題がある。また、工程中にニードルパンチング工程があるが、ウレタンフォームと繊維の絡み合いよりも繊維同士の絡み合いがなされて、リサイクル吸音材の全体的な剛性が不十分で、自動車用への適用時に、剛性が要求されない吸音部品に適用するなど用途が制限されるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、再生ポリエステルフレークを用いて環境に優しいだけでなく、剛性、吸音性および圧縮弾性率に優れていて、自動車用吸音材に用いられる材料であり、自動車のホイールガード、トランクトリム等の剛性、吸音性および圧縮弾性率が要求される自動車内蔵材等に活用可能なメルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述のような課題を解決するために、本発明のメルトブローン不織布の製造方法は、ポリエステルフレーク(polyester flake)を粉砕し、ポリエステルフレーク粉末を製造する第1段階と、ポリエステルフレーク粉末を加熱して結晶化させる第2段階と、結晶化させたポリエステルフレーク粉末を溶融させて溶融物を製造する第3段階と、溶融物を紡糸してメルトブローン繊維を製造し、製造した繊維を積層させてメルトブローン不織布を製造する第4段階と、を含んでもよい。
【0008】
本発明の好ましい一実施形態において、第3段階で製造した溶融物は、0.3~3.0mol%のイソフタル酸(IPA)を含んでもよい。
【0009】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリエステルフレークは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フレーク、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)フレーク、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フレークおよびポリプロピレン(PP)フレークの中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0010】
本発明の好ましい一実施形態において、第1段階で製造したフレーク粉末は、平均粒子サイズが1~10mmであってもよい。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態において、第2段階の加熱は、100~180℃の温度で行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態において、第3段階で製造された溶融物は、0.40~0.60dl/gの固有粘度(IV)を有していてもよい。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態において、第4段階で製造したメルトブローン繊維は、0.5~20μmの平均直径を有していてもよい。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態において、第4段階で製造したメルトブローン不織布は、100~900gsmの坪量を有していてもよい。
【0015】
なお、本発明のメルトブローン不織布は、0.3~3.0mol%のイソフタル酸(IPA)を含み、100~900gsmの坪量を有していてもよい。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明のメルトブローン不織布は、ポリエステルフレーク(polyester flake)の溶融物を紡糸して製造されたものであってもよい。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明のメルトブローン不織布は、平均直径が0.5~20μmのメルトブローン繊維で構成されてもよい。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明のメルトブローン不織布は、KS M 6518規定によって測定するとき、1.3~1.5MPaの剛性を有していてもよい。
【0019】
また、本発明の多層構造スパンボンド不織布は、スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1つ以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造スパンボンド不織布であって、メルトブローン不織布層は、前述した本発明のメルトブローン不織布を含んでもよい。
この際、多層構造スパンボンド不織布は、自動車吸音材用であってもよい。
【0020】
以下、本発明において使用した用語について説明する。
本発明において、使用される「繊維」という用語は、「ヤーン(Yarn)」または「糸」を意味し、通常の様々な種類の糸および繊維を意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のメルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法は、再生ポリエステルフレークを用いて環境に優しいだけでなく、剛性、吸音性および圧縮弾性率に優れていて、自動車用吸音材に用いられる材料であり、自動車のホイールガード、トランクトリム等の剛性、吸音性および圧縮弾性率が要求される自動車内蔵材等に活用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態に対して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分を省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素に対しては、同じ参照符号を付加する。
【0023】
本発明のメルトブローン不織布の製造方法は、第1段階~第4段階を含む。
【0024】
まず、本発明のメルトブローン不織布の製造方法の第1段階は、ポリエステルフレーク(polyester flake)を粉砕してポリエステルフレーク粉末を製造することができる。
この際、ポリエステルフレークは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フレーク、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)フレーク、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フレークおよびポリプロピレン(PP)フレークの中から選ばれた1種以上を含んでもよいし、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フレークを含んでもよい。
【0025】
また、本発明のポリエステルフレークは、廃棄カーペットおよび廃棄フェルトスクラップから分離して製造されたものであってもよい。
【0026】
また、粉砕によって製造したポリエステルフレーク粉末は、平均粒子サイズが1~10mm、好ましくは、2~7mm、より好ましくは、3~6mmであってもよい。もし、平均粒子サイズが1mm未満である場合、製造工程を進める際に粉塵の発生が多くなり、粉塵による汚染や作業者の健康上の問題を起こすことがあり、溶融工程中にEXT’内Dead Spaceにポリエステルフレーク粉末の微細粒子が入ることになり、これによって、炭化物を発生させてPET溶融物内に異物が発生する問題があり得、10mmを超える場合、比較的大きい粉末の粒子サイズによってEXT’稼働時にハンチングが発生する問題があり得る。
【0027】
次に、本発明のメルトブローン不織布の製造方法の第2段階は、第1段階で製造したポリエステルフレーク粉末を加熱して結晶化させることができる。この際、加熱は、100~180℃の温度、好ましくは、120~160℃の温度、より好ましくは、130~150℃の温度で行うことができる。もし、加熱温度が100℃未満である場合、フレーク粉末内の水分の除去が均一でないため、粉末内水分率のばらつきが発生し、水分率が高い場合、溶融過程で加水分解が発生し、紡糸工程中にポリマードリップ(Polymer Drip)による移動度低下の問題が発生しうる問題があり得、180℃を超える場合、結晶化段階でフレークが互いに凝集して結晶化および乾燥が不均一であり、程度がひどい場合、結晶化設備内過負荷によって設備故障が発生する問題があり得る。
【0028】
次に、本発明のメルトブローン不織布の製造方法の第3段階は、第2段階で結晶化させたポリエステルフレーク粉末を溶融させて溶融物を製造することができる。
この際、溶融物には0.3~3.0mol%、好ましくは、0.5~2.5mol%のイソフタル酸(IPA)を含んでもよいし、もし、イソフタル酸(IPA)を0.3mol%未満で含む場合、粘度の上昇および融点の上昇により不織布内繊維の繊度が増加し、固化速度が比較的速いため、不織布の強度が減少する問題があり得、3.0mol%を超える場合、粘度および溶融点が低くなることにより、不織布ウェブの繊度が不均一になり、この際、不均一性が上がる場合、低周波領域の吸音性能に部分的に差異が発生する問題があり得る。また、溶融温度は、結晶化させたポリエステルフレーク粉末を溶融させることができる温度を有することができ、好ましくは、240~320℃の温度であってもよい。
【0029】
なお、第3段階で製造された溶融物は、0.40~0.60dl/g、好ましくは、0.45~0.55dl/gの固有粘度(IV)を有していてもよい。もし、溶融物の固有粘度が0.40dl/g未満である場合、低粘度による繊度不均一およびポリマードリップ(Polymer Drip)による移動度不良の問題があり得、0.60dl/gを超える場合、高粘度によってメルトブローンノズル内でポリマーの流れ性が不均一で、繊度のばらつきが発生し得るだけでなく、高粘度によってメルトブローンノズルのホールが一部閉塞されるノズルホール詰まりが発生する問題があり得る。
【0030】
最後に、本発明のメルトブローン不織布の製造方法の第4段階は、第3段階で製造した溶融物を紡糸してメルトブローン繊維を製造し、製造した繊維を積層させてメルトブローン不織布を製造することができる。
【0031】
前記紡糸は、メルトブローン(meltblown)用紡糸口金で行うことができ、260~280℃の紡糸温度で紡糸させることができる。また、紡糸直後、250~290℃、好ましくは、260~280℃の高圧熱風によって固化させてメルトブローン繊維を製造することができる。
【0032】
製造したメルトブローン繊維は、0.5~20μmの平均直径、好ましくは、1.0~10μmの平均直径を有していてもよい。もし、平均直径が0.5μm未満である場合、細繊度によって固化速度が速いため、不織布の形成が難しく、一部不織布が形成されても、不織布の強度が不十分である問題があり得、20μmを超える場合、高周波領域の吸音性能が不十分になる問題があり得る。
【0033】
また、製造したメルトブローン不織布は、100~900gsmの坪量、好ましくは、500~900gsmの坪量、より好ましくは、600~800gsmの坪量を有していてもよい。もし、メルトブローン不織布の坪量が100gsm未満である場合、重量不足で低周波領域の吸音性能が不十分になる問題があり得、900gsmを超える場合、不織布の体積増加でアセンブリー(Assembly)に問題があるだけでなく、不織布が高重量になると、自動車の燃費が減少する問題があり得る。
【0034】
なお、本発明のメルトブローン不織布は、前述した本発明のメルトブローン不織布の製造方法を通じて製造されたものであってもよい。
【0035】
具体的には、本発明のメルトブローン不織布は、ポリエステルフレーク(polyester flake)の溶融物を紡糸して製造されたメルトブローン不織布であってもよい。この際、メルトブローン不織布は、0.3~3.0mol%、好ましくは、0.5~2.5mol%のイソフタル酸(IPA)を含んでもよいし、100~900gsmの坪量、好ましくは、500~900gsmの坪量、より好ましくは、600~800gsmの坪量を有していてもよい。
【0036】
より具体的な一例として、本発明のメルトブローン不織布の坪量が100~700gsm、好ましくは、550~650gsmであるとき、イソフタル酸(IPA)を0.3~0.9mol%、好ましくは、0.3~0.7mol%含んでもよいし、本発明のメルトブローン不織布の坪量が700~900gsm、好ましくは、750~850gsmであるとき、イソフタル酸(IPA)を1.5~3.0mol%、好ましくは、2.3~2.7mol%含んでもよい。
【0037】
なお、本発明のメルトブローン不織布は、平均直径が0.5~20μm、好ましくは、1.0~10μm、より好ましくは、1.0~5μmのメルトブローン繊維で構成されてもよい。より具体的な一例として、本発明のメルトブローン不織布の坪量が100~700gsm、好ましくは、550~650gsmであるとき、本発明のメルトブローン不織布は、平均直径が0.5~10μm、好ましくは、0.5~5μm、より好ましくは、0.7~2μmのメルトブローン繊維で構成されてもよく、本発明のメルトブローン不織布の坪量が700~900gsm、好ましくは、750~850gsmであるとき、本発明のメルトブローン不織布は、平均直径が5~20μm、好ましくは、8~15μm、より好ましくは、8~12μmのメルトブローン繊維で構成されてもよい。
【0038】
また、本発明のメルトブローン不織布は、KS M 6518規定によって測定するとき、1.3~1.5MPa、好ましくは、1.33~1.45MPaの剛性を有していてもよい。
【0039】
また、本発明の多層構造スパンボンド不織布は、前述した本発明のメルトブローン不織布を1つ以上の層に含んでもよい。
【0040】
具体的には、本発明の多層構造スパンボンド不織布は、スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1つ以上のメルトブローン不織布層を有する不織布であって、メルトブローン不織布層は、本発明のメルトブローン不織布を含んでもよい。
【0041】
本発明の多層構造スパンボンド不織布の基本的な不織布の構成は、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布形態の多層で構成されてもよく、ここで、外部層を形成するスパンボンド不織布層は、1層以上で構成することができ、内部のメルトブローン不織布層も、1層以上で構成することができ、構成する層数が限定されるものではない。このような本発明の多層構造スパンボンド不織布を「SMS系不織布」と称することができる。
【0042】
なお、本発明のメルトブローン不織布は、吸音材用に使用することができ、好ましくは、自動車吸音材用に使用することができる。
【0043】
また、本発明の多層構造スパンボンド不織布は、吸音材用に使用することができ、好ましくは、自動車吸音材用に使用することができる。
【0044】
以上では本発明について具現例を中心に説明したが、これは、ただ例示であり、本発明の具現例を限定するものではなく、本発明の実施例の属する分野における通常の知識を有する者なら、本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で以上に例示されていない様々な変形と応用が可能であることが分かる。例えば、本発明の具現例に具体的に示された各構成要素は変形して実施できるものである。また、このような変形と応用に関係した相違点は、添付の請求範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解すべきである。
【0045】
実施例1:メルトブローン不織布の製造
(1)原料の1つとしてイソフタル酸を用いて製造されたPETフレーク(flake)を粉砕して、平均粒子サイズが4mmのPETフレーク粉末を製造した。
(2)製造したPETフレーク粉末を結晶化装置に投入し、撹拌下に140℃の温度で加熱して、PETフレーク粉末を結晶化させた。
(3)結晶化させたPETフレーク粉末を280℃の温度で加熱して溶融させて、イソフタル酸(IPA)が0.5mol%含まれたPET溶融物を製造し、製造したPET溶融物をスクリーンフィルターに通過させて異物を除去して、固有粘度(IV)が0.50dl/gのPET溶融物を製造した。
(4)PET溶融物をメルトブローン(meltblown)用紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、270℃の高圧熱風によって固化させて、平均直径が1μmのメルトブローン繊維を製造し、製造した繊維を積層させて、600gsmの坪量を有する自己結合型(self-bonding)の不織布であるメルトブローン不織布を製造した。
【0046】
実施例2:メルトブローン不織布の製造
実施例1と同じ方法でメルトブローン不織布を製造した。ただし、実施例1とは異なって、(2)段階でPETフレーク粉末を結晶化させるとき、90℃の温度で加熱して、最終的にメルトブローン不織布を製造した。
【0047】
実施例3:メルトブローン不織布の製造
実施例1と同じ方法でメルトブローン不織布を製造した。ただし、実施例1とは異なって、(2)段階でPETフレーク粉末を結晶化させるとき、190℃の温度で加熱して、最終的にメルトブローン不織布を製造した。
【0048】
実施例4:メルトブローン不織布の製造
実施例1と同じ方法でメルトブローン不織布を製造した。ただし、実施例1とは異なって、(4)段階でメルトブローン繊維を製造するとき、平均直径が0.2μmのメルトブローン繊維を製造し、最終的にメルトブローン不織布を製造した。
【0049】
実施例5:メルトブローン不織布の製造
実施例1と同じ方法でメルトブローン不織布を製造した。ただし、実施例1とは異なって、(4)段階でメルトブローン繊維を製造するとき、平均直径が10μmのメルトブローン繊維を製造し、最終的にメルトブローン不織布を製造した。
【0050】
実施例6:メルトブローン不織布の製造
(1)原料の1つとしてイソフタル酸を用いて製造されたPETフレーク(flake)を粉砕して、平均粒子サイズが4mmのPETフレーク粉末を製造した。
(2)製造したPETフレーク粉末を結晶化装置に投入し、撹拌下に140℃の温度で加熱して、PETフレーク粉末を結晶化させた。
(3)結晶化させたPETフレーク粉末を280℃の温度で加熱して溶融させて、イソフタル酸(IPA)が2.5mol%含まれたPET溶融物を製造し、製造したPET溶融物をスクリーンフィルターに通過させて異物を除去して、固有粘度(IV)が0.50dl/gのPET溶融物を製造した。
(4)PET溶融物をメルトブローン(meltblown)用紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、270℃の高圧熱風によって固化させて、平均直径が10μmのメルトブローン繊維を製造し、製造した繊維を積層させて、800gsmの坪量を有する自己結合型(self-bonding)の不織布であるメルトブローン不織布を製造した。
【0051】
実施例7:メルトブローン不織布の製造
実施例6と同じ方法でメルトブローン不織布を製造した。ただし、実施例6とは異なって、(2)段階でPETフレーク粉末を結晶化させるとき、90℃の温度で加熱して、最終的にメルトブローン不織布を製造した。
【0052】
実施例8:メルトブローン不織布の製造
実施例6と同じ方法でメルトブローン不織布を製造した。ただし、実施例6とは異なって、(2)段階でPETフレーク粉末を結晶化させるとき、190℃の温度で加熱して、最終的にメルトブローン不織布を製造した。
【0053】
実施例9:メルトブローン不織布の製造
実施例6と同じ方法でメルトブローン不織布を製造した。ただし、実施例6とは異なって、(4)段階でメルトブローン繊維を製造するとき、平均直径が1μmのメルトブローン繊維を製造し、最終的にメルトブローン不織布を製造した。
【0054】
実施例10:メルトブローン不織布の製造
実施例6と同じ方法でメルトブローン不織布を製造した。ただし、実施例6とは異なって、(4)段階でメルトブローン繊維を製造するとき、平均直径が25μmのメルトブローン繊維を製造し、最終的にメルトブローン不織布を製造した。
【0055】
実験例1:メルトブローン不織布の物性の測定
実施例1~10で製造されたメルトブローン不織布それぞれに対して、下記に記載された実験を実施し、これを通じて測定された結果を下記表1および表2に示した。
(1)剛性
KS M 6518規定による分析法を実施して、実施例1~10で製造されたメルトブローン不織布の剛性をそれぞれ測定した。
(2)吸音性
ISO 354(Acoustics-Measurement of sound absorption in a reverberation room)によりALPHA CABIN装備を利用して、実施例1~2で製造されたメルトブローン不織布それぞれの1000hz、2000hz、3150hzおよび5000hzにおける吸音係数をそれぞれ測定した(ただし、吸音性実験は、枠フレームなしで840mmx840mm平板試験片で進め、5個以上の試験片を測定して、その算術平均値を表記した)。
(3)圧縮弾性率
実施例1~10で製造されたメルトブローン不織布それぞれを100mmx100mmにカットして試験片を製造し、これを100x100x0.8mmの鋼板の間に配置し、上鋼板の中央部に500gの分銅を置いた。この状態で下記の条件で静置し、分銅を除去して、状態調節(状態調節の条件:23±2℃、50±5%RHで1時間静置した後)後、圧縮弾性率を測定した(ただし、厚さの測定方法は、100x100mmの試験片を試験片保持台に載置し、120x120mmの150g加圧板を試験片の上に載置し、圧縮して、10秒後に1平方センチメートルの円板状加圧器で0.1kPa以下の圧力で厚さを測定した。また、厚さの測定地点は、加圧板の各辺の中央地点とし、4個の地点の算術平均値を厚さとした。測定機は、ISO 5084に準ずる装備を使用した)。
【0056】
<条件>
[1]耐熱:120±2℃x1時間→23±2℃と50±5%RHで1時間放置後に厚さを測定
[2]耐湿:40±2℃、95%RHx22時間→23±2℃と50±5%RHで1時間放置後に厚さを測定
[3]圧縮弾性率(%)=H1/H0x100(H0:加圧前の試験片の厚さ、H1:加圧老化後の試験片の厚さ)
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
前記表1から明らかなように、実施例1で製造したメルトブローン不織布と比較して、実施例2で製造したメルトブローン不織布は、剛性が低下することが確認できた。
また、前記表1から明らかなように、実施例1で製造したメルトブローン不織布と比較して、実施例3で製造したメルトブローン不織布は、剛性が低下することが確認できた。
また、前記表1から明らかなように、実施例1で製造したメルトブローン不織布と比較して、実施例4で製造したメルトブローン不織布は、剛性と低周波吸音率が低下することが確認できた。
また、前記表1から明らかなように、実施例1で製造したメルトブローン不織布と比較して、実施例5で製造したメルトブローン不織布は、高周波吸音率が低下することが確認できた。
【0060】
前記表2から明らかなように、実施例6で製造したメルトブローン不織布と比較して、実施例7で製造したメルトブローン不織布は、剛性が低下することが確認できた。
また、前記表2から明らかなように、実施例6で製造したメルトブローン不織布と比較して、実施例8で製造したメルトブローン不織布は、剛性が低下することが確認できた。
また、前記表2から明らかなように、実施例6で製造したメルトブローン不織布と比較して、実施例9で製造したメルトブローン不織布は、剛性が低下することが確認できた。
また、前記表2から明らかなように、実施例6で製造したメルトブローン不織布と比較して、実施例10で製造したメルトブローン不織布は、高周波吸音率が低下することが確認できた。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施形態に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加等によって他の実施形態を容易に提案できるが、これも、本発明の思想範囲内に入ると言える。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、メルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法に関し、再生ポリエステルフレークを用いて環境に優しいだけでなく、剛性、吸音性および圧縮弾性率に優れていて、自動車用吸音材に用いられる材料であり、自動車のホイールガード、トランクトリム等の剛性、吸音性および圧縮弾性率が要求される自動車内蔵材等に活用可能なメルトブローン不織布、これを含む多層構造スパンボンド不織布およびその製造方法に関する。
【国際調査報告】