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特表2024-522741アルコールフリーのナノエマルション香水
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】アルコールフリーのナノエマルション香水
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/04 20060101AFI20240614BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240614BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/34
A61K8/55
A61K8/37
A61Q13/00 100
A61K8/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577486
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2021066139
(87)【国際公開番号】W WO2021156521
(87)【国際公開日】2021-08-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302071210
【氏名又は名称】エルヴェエムアッシュ ルシェルシュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴダール ソレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】三谷 謙太
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB052
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD052
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB41
4C083CC02
4C083CC17
4C083CC31
4C083CC50
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE18
4C083EE50
4C083KK01
(57)【要約】
【要約】
本発明は、10質量%未満のエタノールなどの低級アルキルアルコール、a)少なくとも40質量%の水、b)少なくとも6質量%の香水濃縮物、c)少なくとも1種の水素添加レシチン、及びd)少なくとも0.90g/cmである20℃における密度を有する少なくとも1種の高比重油を含有する水中油型乳化香水化粧料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールのような低級アルキルアルコール10%未満、a)少なくとも40%の水、b)少なくとも6%の香水濃縮物、c)少なくとも1種の水素添加レシチン、及びd)少なくとも0.90g/cmの20℃における密度を有する少なくとも1種の高比重油を含む水中油型乳化香水化粧料であって、パーセンテージは、水中油型乳化香水化粧料の質量に対する質量%であることを特徴とする、水中油型乳化香水化粧料。
【請求項2】
少なくとも50%の水、好ましくは少なくとも55%の水、より好ましくは少なくとも60%の水を含む、請求項1に記載の水中油型乳化香水化粧料。
【請求項3】
請求項1に記載の水中油型乳化香水化粧料において、香水濃縮物の量は、6%~40%、好ましくは8%~30%、より好ましくは10%~30%であることを特徴とする水中油型乳化香水化粧料。
【請求項4】
水素添加レシチン量は、0.1%~5.0%、好ましくは0.2%~3.0%、さらに好ましくは0.3%~1.0%である請求項1に記載の水中油型乳化香水化粧料。
【請求項5】
少なくとも1種の高比重油は、20℃における密度が0.95g/cm~1.10g/cmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中油型乳化香水化粧料。
【請求項6】
少なくとも1種の高比重油は、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド油である、請求項1に記載の水中油型乳化香水化粧料。
【請求項7】
請求項1に記載の水中油型乳化香水化粧料において、少なくとも1種の高重力の油の量は、0.1%~5.0%、好ましくは0.2%~3.0%、さらに好ましくは0.5%~2.0%であることを特徴とする水中油型乳化香水化粧料。
【請求項8】
低級アルキルアルコール含量は、5.0%未満、好ましくは2.0%未満である、請求項1に記載の水中油型乳化香水化粧料。
【請求項9】
エタノールを含まない請求項1記載の水中油型乳化香水化粧料。
【請求項10】
炭素原子数2~6、水酸基数2~4の少なくとも1種のポリオールを10.0%~20.0%含有する請求項1記載の水中油型乳化香水化粧料。
【請求項11】
グリセリン、ペンチレングリコール及びブチレングリコールの混合物である3種のポリオールの混合物を含む、請求項1に記載の水中油型乳化香水化粧料。
【請求項12】
成分(a)~(d)の混合物を高圧ホモジナイザーで100MPa以上の圧力で乳化する工程を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の水中油型乳化香水化粧料の調製方法。
【請求項13】
塗布手段と包装手段とを備えたボトルであって、前記包装手段に、請求項1~11のいずれか1項に記載の水中油型乳化香水化粧料が収容されていることを特徴とするボトル。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれかに記載の水中油型乳化香水化粧料を、人のケラチン物質又は衣服に塗布する工程を含む、化粧品香水化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーデトワレ、オーデコロン、香水エキス、香水スピリット又は香水水となり得る新規な香水化粧品組成物に関する。この香水組成物は、濃縮香水の嗅覚的な忠実性と、塗布後時間が経過しても香水のノートが残っていること、ベタベタした感触がないこと、微粒子の形態で噴霧できることなどの優れた特性を有する。
【背景技術】
【0002】
アルコールフリーの香水(Alcohol free perfumes)は、アルコールが肌によくないかもしれない、アルコールを含む他の化粧品では肌荒れを起こすかもしれないと考え、香水製品を使いたいと考えている特定の消費者の関心を集めている。
【0003】
このように、アルコールフリーのフレグランス製品に対する消費者のニーズは満たされていない。
【0004】
その上、エタノールなどのアルコールは、香料を溶解する能力が高いため、香水の処方において重要な役割を果たしている。アルコールを含まない適切な香水化粧品を調製するために、先行技術において多くのアプローチが検討されてきた。例えば、エタノールを使用する代替アプローチとして、非イオン性界面活性剤が香水を溶解する方法として提案されている(WO2017/059513及びCN103637942)。しかしながら、濃縮香水を溶解するためには、多量の非イオン界面活性剤が必要である。そのような多量は、誘導されたチキソトロピー流動性(thixotropic fluidity)のために噴霧性を損なう。また、香水の嗅覚の質にも影響を与え、きついグリーンノートやアシッドノート(a harsh green and acid note)を与える。さらに、多量の界面活性剤は安定性の問題を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
界面活性剤は、非アルコール系香水製品において、特に12質量%など多量の香料を含む香水製品において、香料を溶解又は乳化するために重要な成分である。従来の乳化プロセスで調製される濃縮香水製品の場合、多量の香料を多量の界面活性剤で溶解する必要があり、通常10質量%以上、最大25質量%である。
【0006】
一般的な水中油型乳化香水化粧品、特に濃縮香水を多量に含むものは、乳化安定性と香りの持続性が損なわれている。また、皮膚や衣服にスプレーできない液状の化粧品を製造する傾向がある。
【0007】
したがって、香水化粧品の安定性と嗅覚特性を維持しながら、高い噴霧性を提供する非アルコール香水処方を提案する必要がある。
【0008】
(発明の概要)
本発明の目的は、優れた安定性と噴霧性を示しながら、アルコールの含有量が非常に少ない、あるいは全く含まない水中油型乳化香水化粧品を提供することである。
【0009】
本発明は、アルコールを使用しない穏やかな香水処方を提供する。これは、多量の香料を含むナノエマルションの形態であり、経時的な乳化安定性と経時的な嗅覚安定性を確保しつつ、高い噴霧性を有する。この配合物は、有利には多量の界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤を含まない。
【0010】
本発明の目的は、アルコールを使用せず、界面活性剤を多量に使用せずに、十分に高い割合の香料を溶解させた香水調合剤を開発することである。このような配合は、軽い官能的な仕上がり、嗅覚特性、長期安定性といったアルコールベースの香水の品質や特性を維持しながら、高い噴霧性を可能にする。
【0011】
本発明の意味において、「安定性」は、以下の保存条件の少なくとも1つにおいて観察され得る:50℃及び25℃での1ヶ月間の保存、-18℃での1週間の保存;及び温度変化サイクルを伴う保存(例えば、40℃での12時間及び-10℃での12時間のサイクルを1ヶ月間繰り返す)。本発明の一実施形態によれば、安定性は、25℃で1ヶ月間保存した後、及び/又は50℃で1ヶ月間保存した後に観察することができる。安定性は、肉眼で評価することができ、クリーミング(creaming)がないこと、及び/又は油相と水相との間で相分離がないこと、及び/又はナノエマルション中の油粒子の合体(coalescence)がないこととみなすことができる。
【0012】
「噴霧可能性」とは、加圧装置によって香水化粧品を微細な液滴の形態で噴霧できることを意味する。これらの装置は当業者によく知られており、非エアゾールポンプ又は「噴霧器」、推進剤を含むエアゾール容器、及び推進剤として圧縮空気を使用するエアゾールポンプが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、アルコールを含まない先行技術の香水配合物の上記関連する問題及び欠点を解決し、10質量%未満のエタノールなどの低級アルキルアルコール、少なくとも1種の水素添加レシチン及び1種の高比重油からなる水中油型乳化香水化粧料を提供する。この香水化粧料は、好ましくはナノエマルションである。
【0014】
本発明の水中油型乳化香料化粧料は、先行技術で必要とされる多量のエタノールや界面活性剤を使用することなく、優れた安定性を示しながら多量の香料を配合することができる。また、噴霧性に優れ、界面活性剤の使用量を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、10質量%未満のエタノールなどの低級アルキルアルコール、a)少なくとも40%の水、b)少なくとも6%の香水濃縮物、c)少なくとも1種の水素添加レシチン、及びd)少なくとも0.90g/cm、より好ましくは少なくとも0.95g/cm、好ましくは0.95g/cm~1.10g/cmの20℃における密度を有する少なくとも1種の高比重油を含む水中油型乳化香水化粧品に関する。
【0016】
本発明の文脈では、「...から」という表現は、範囲の上限値と下限値を含むことを意図しており、「...と...の間」という表現は、範囲の限界を除外することを意図している。少なくとも...x%」という表現では、含有量はx%に等しいか、又はx%より高い。
【0017】
本明細書において、パーセンテージは、特に定義しない限り、香水化粧品の質量に対する質量で表される。
【0018】
本発明の「水中油型乳化香水化粧料」は、本明細書において、「香水化粧料」、「化粧品」、「香水組成物」、「香水組成物」又は「組成物」として交換可能に表現することができる。
【0019】
エマルション
本発明の化粧品は水中油型エマルションであり、好ましくは油相と水相からなり、前記油相は水相中に分散している。
【0020】
本発明の化粧品のエマルション粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm~500nmである。
【0021】
本発明の意味でのエマルション粒子は、水中に分散された油滴であり得る。このような平均粒径範囲は、有利に安定な香水化粧品を提供する。
【0022】
エマルション粒子の平均粒径は、好ましくは10nm~300nmである。本発明によれば、「平均粒子径」はD50粒子径を意味し、「平均流体力学的直径」とも命名することができる。
【0023】
エマルション粒子の平均粒子径は、キュムラント分析に従って、粒子径測定装置(DelsaMax(登録商標) CORE:ベックマン・コールター社製)を用いて測定することができる。
【0024】
本発明の化粧料を調製するには、高圧乳化装置を用いて、(a)~(d)成分と、他の添加剤が存在する場合には、他の添加剤とを高圧で複数回混合する方法で調製することができる。この高圧乳化工程は、乳化粒子の平均粒径を上記範囲とするための1つの手段である。
【0025】
本発明の化粧料は、好ましくは水中油型ナノエマルションである。本発明による「水中油型ナノエマルション」とは、平均粒子径が500nm以下、好ましくは10nm~500nm、さらに好ましくは10nm~300nmである油球を含む水中油型エマルションを意味する。
【0026】
油球の小粒径化は、一般に機械的エネルギー、特に高圧ホモジナイザーの使用によって得られる。
【0027】
ナノエマルションは、その構造によってマイクロエマルションと区別される。実際、マイクロエマルションは熱力学的に安定な分散液であり、例えば両親媒性脂質のミセルが油で膨潤したものである。さらに、マイクロエマルションは、生成に大きな機械的エネルギーを必要とせず、成分を接触させるだけで自然に形成される。
【0028】
エタノール含有量
本発明の化粧料は、少なくとも1種の低級アルキルアルコールを10質量%未満含有する。低級アルキルアルコールは、2~6個の炭素原子からなる脂肪族モノアルコールであり得る。このような低級アルキルアルコールは、エタノールであり得る。
【0029】
低級アルキルアルコール含量、特にエタノール含量は10.0%未満、好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満である。
【0030】
組成物は、好ましくは低級アルキルアルコールを含まない。特定の実施形態において、化粧品はエタノールを含まないか、又は1.0%未満、好ましくは0.1%未満のエタノールを含むことができる。
【0031】
本発明の意味において、「エタノールを含まない」又は「アルコールを含まない」は、好ましくは、低級アルキルアルコールを添加する工程及び低級アルキルアルコールを他の成分と混合する工程を含まない調製のための工程によって調製される化粧品も指定することができる。本発明の化粧品を調製するために使用される成分の一部に、低級アルキルアルコールの痕跡、特にエタノールの痕跡が存在する可能性を排除することはできない。このような場合でも、本発明の化粧品は「アルコールフリー水中油型乳化香水化粧品」と命名することができる。
【0032】
本発明の化粧料は、アルコールフリーの水中油型乳化香水化粧料、特に低級アルキルアルコールフリーの水中油型乳化香水化粧料又はエタノールフリーの水中油型乳化香水化粧料とすることができる。
【0033】

本発明による組成物は、a)少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%の水、好ましくは少なくとも55%の水、より好ましくは少なくとも60%の水を含む。
【0034】
組成物中の含水率は、50%、55%、60%又は65%に等しい最小値よりも高くてもよい。組成物中の含水率は、70%、75%又は80%に等しい最大値よりも低くてもよい。含水率は、例えば55%から80%、好ましくは60%から70%の範囲である。
【0035】
水は、植物由来の水蒸気蒸留水、蒸留水、精製水、温泉水、深層水、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。植物由来の水蒸気蒸留水としては、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水を挙げることができる。
【0036】
本発明の水中油型乳化香水化粧料の水相は、水のみからなる場合もあれば、水と水溶性成分からなる場合もある。
【0037】
香水濃縮物
組成物は、b)香水濃縮物を含有する。香水濃縮物は、例えば、INCI名として「Perfume」又は「Fragrance」を有する化合物から選択することができる。香水濃縮物は、室温で少なくとも部分的に揮発性であり、臭いを検出することができる化合物又は化合物の混合物である。エッセンシャルオイルからなる濃縮香水は、一般に、その嗅覚的潜在能力、すなわち、互いに異なる揮発性を有する複数の臭気性有機化合物の存在により、皮膚に塗布した後、日に日に変化する知覚を完全に表現するために希釈される。濃縮香水の精製には、香水組成物にトップノート、ミドルノート、ボトムノートを与えるために、いくつかの香水原料を関連付けるステップが含まれる。
【0038】
濃縮香水は、天然又は合成の有機香水原料から調製することができる。
【0039】
天然由来の香料原料の例としては、花、茎、葉、果実、果皮、根、木、ハーブ、草、樹脂、バルサムなどの抽出物が挙げられる。これらの植物性香料は、ベルガモット、ローズ、ラベンダー、サンダルウッド、カルダモン、セージ、カモミール、クローブ、レモンバーム、ミント、シナモンリーフ、ジュニパー、ベチバー、オリバナム、ガルバナム、ラブダナムなどのエッセンシャルオイルであってもよい。
【0040】
合成由来の香料の例としては、ヘジオン、エチレンブラシレート及びハバノライド、酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、イソ酪酸フェノキシエチル、酢酸p-tert-ブチルシクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シトロネリル、ギ酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、エチルメチルフェニルグリシネートプロピオン酸アルキルシクロヘキシル、プロピオン酸スチラリル、サリチル酸ベンジル、ベンジルエチルエーテル、炭素原子数8~18の直鎖アルカノール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、α-イソメチリオノン、メチルセドリルケトンなどのイオノン類、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール、テルピネオール、テルペンである。これらの化合物は多くの場合、2種類以上のにおい物質(odorants)の混合物として存在する。
【0041】
濃縮香水は少なくとも6%、少なくとも7%又は少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%を占める。
【0042】
香水濃縮物の量は、6%から40%、好ましくは8%から30%、より好ましくは10%から30%の範囲である。一実施形態では、香水濃縮物は10%から15%を表す。
【0043】
水素添加レシチン
本発明の香水化粧品は、c)少なくとも1種の水素添加(水添、水素化、hydrogenated)レシチンを含む。
【0044】
水素添加レシチン量は、好ましくは0.1%~5.0%、より好ましくは0.2%~3.0%、さらに好ましくは0.3%~1.0%の範囲である。
【0045】
水素添加レシチンは、ホスファチジルコリン基と2つの脂肪酸からなるリン脂質である。水素添加レシチンの一例は、16~18個の炭素原子を有する2つの飽和脂肪酸部分からなる。
【0046】
香水化粧料は、少なくとも1種のステロール、好ましくは少なくとも1種の植物ステロール、好ましくは少なくとも1種の大豆ステロールをさらに含んでもよい。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、香水化粧料は、少なくとも1種の水素添加レシチンと少なくとも1種のフィトステロールとの混合物を含む。この香水化粧品は、市販されており、日本ファインケミカルズ社からPHYTOCOMPO(登録商標)の商標で販売されている水素添加レシチンとフィトステロールの混合物を用いて調製することができる。
【0048】
高比重オイル
本発明の香水化粧品は、d)少なくとも0.90g/cm、好ましくは少なくとも0.95g/cm、すなわち0.95g/cmから1.10g/cmの20℃における密度を有する少なくとも1種の高比重油(high gravity oil)を含む。20℃における密度は、例えば1.00g/cmから1.05g/cmとすることができる。高比重オイルは、好ましくは20℃で液体である。高比重油の密度は、当業者に公知の任意の方法で測定することができる。
【0049】
高比重油は、架橋トリグリセリド、例えば、3から6個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸で架橋されたカプリル酸とカプリン酸から得られるトリグリセリドから選択することができる。このようなジカルボン酸の例は、コハク酸である。
【0050】
高比重油は、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド油であり得、INCI名「CAPRYLIC/CAPRIC/SUCCINIC TRIGLYCERIDE」を有し得、又はIOI Oleoからの商標であるMYGLYOL(登録商標)829のような市場で購入される油であり得る。MYGLYOL(登録商標) 829は、コハク酸で架橋されたカプリル酸/カプリン酸グリセリド単位から得られる。
【0051】
高比重油は、INCI名「ビス-エトキシジグリコールシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート」を有する油であることもでき、日本ファインケミカル社製のNeosolueTM-Aqulioとして購入することができる。比重は1.08g/cmである。
【0052】
少なくとも1つの高比重油の量は、好ましくは0.1%~5.0%、より好ましくは0.2%~3.0%、さらに好ましくは0.5%~2.0%の範囲である。
【0053】
アルキレングリコールのブロックコポリマー
本発明の化粧料は、例えば、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールのトリブロック ブロックコポリマー(重縮合物)のような、エチレングリコールとプロピレングリコールの重縮合物としても知られている、エチレングリコールとプロピレングリコールの少なくとも1つのブロックコポリマーをさらに含んでもよい。このようなコポリマーは、INCI名「POLOXAMER」を有することができる。
【0054】
これらのトリブロック重縮合物は、例えば以下のような化学構造を有する:
【0055】
H-(O-CH2-CH2)a-(O-CH (CH3)-CH2)b-(O-CH2-CH2)a-OH
【0056】
式中、「a」は2~150の範囲であり、「b」は1~100の範囲であり;好ましくは、「a」は10~130の範囲であり、「b」は20~80の範囲である。
【0057】
エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー(重縮合物)は、好ましくは1.000~20.000、より好ましくは1.500~19.000、特に好ましくは2.000~18.000、さらに好ましくは4.000~17.000の範囲の質量平均分子量を有する。
【0058】
本発明に従って使用できるエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマー(重縮合物)として、「Synperonic」の名称で販売されているポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールトリブロック重縮合物、例えば「Synperonic(登録商標) PE/F32」(INCI名:シンペロニック(登録商標) PE/F32」(INCI名:ポロキサマー108)、「シンペロニック(登録商標) PE/F108」(INCI名:ポロキサマー338)、「シンペロニック(登録商標) PE/L44」(INCI名:ポロキサマー124)、「シンペロニック(登録商標) PE/F127」(INCI名:INCI名:ポロキサマー407)、「Synperonic(登録商標) PE/F88」(INCI名:ポロキサマー238)又は「Synperonic(登録商標) PE/L64」(INCI名:ポロキサマー184、Croda社製)、あるいはBASF社から販売されている「Lutrol(登録商標)68」(INCI名:ポロキサマー188)もある。
【0059】
エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体の量は、0.05%から1%、好ましくは0.1%から0.5%、さらに好ましくは0.1%から0.3%とすることができる。
【0060】
ポリオール
本発明の化粧料は、少なくとも1つのポリオールを含んでもよい。1つのポリオールは、2~6個の炭素原子及び2~4個のヒドロキシル基を有することができる。このようなポリオールの例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン及びジグリセリンが挙げられる。 これらの中でも、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン、及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0061】
化粧品には、1つのポリオール、2つのポリオール、又は2つ以上のポリオールを使用することができる。特定の実施形態では、グリセリン、ペンチレングリコール及びブチレングリコールの混合物である3つのポリオールの混合物が使用される。
【0062】
ポリオールの含有量は、5.0%~25.0%、好ましくは10.0%~20.0%、さらに好ましくは15.0%~20.0%とすることができる。
【0063】
本発明の化粧料は、2~6個の炭素原子及び2~4個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種のポリオールを10.0%~20.0%含むことができる。
【0064】
有利には、本発明の組成物は、水、濃縮香料、水素添加レシチン、高比重油、及びポリオール(複数可)から本質的になる。本質的に構成される」とは、水、濃縮香料及びポリオールの割合の合計が95%以上、さらには98%以上であることを意味する。
【0065】
添加剤
上記の成分に加えて、組成物は、染料、グリコール以外の防腐剤、緩衝剤、電解質、UVフィルター、及び抗酸化剤から選択される少なくとも1つの化粧品として許容される添加剤を含むことができる。
【0066】
これらの添加剤は、香水組成物の匂いを変えないように、好ましくは嗅覚的に中性であるべきであり、色の変化を引き起こすべきではなく、安定性の問題を引き起こすべきではない。
【0067】
染料は例えば以下の通り:カラメル、イエロー5、アシッドブルー9/ブルー1、グリーン5、グリーン3/ファストグリーンFCF3、オレンジ4、レッド4/フードレッド1、イエロー6、アシッドレッド33/フードレッド12、レッド40、コチニールカルミン(Cl15850、Cl75470)、エクストバイオレット2、レッド6-7、フェロシアン化鉄、ウルトラマリン、アシッドイエロー3/イエロー10、アシッドブルー3、イエロー10。脂溶性染料の例は、スーダンレッド、D&Cレッド17、D&Cグリーン6、ベータカロチン、大豆油、スーダンブラウン、D&Cイエロー11、D&Cバイオレット2、D&Cオレンジ5、キノリンイエロー、アナトー(Annatto)である。染料は一般的に0.01%から1.0%、好ましくは0.05%から0.5%を占める。
【0068】
本発明の水中油型乳化香水化粧料の水相は、水のみからなるものであってもよいし、水と水溶性成分とからなるものであってもよい。これらの水溶性成分の一部は、上述したような添加剤であってもよい。
【0069】
本発明の香水化粧料は、陰イオン界面活性剤を含まないことが好ましい。
【0070】
一実施形態において、香水化粧料組成物は、好ましくは、レシチン及びアルキレングリコールコポリマー以外の追加の界面活性剤を含まない。
【0071】
乳化プロセス
本発明はまた、上記のような水中油型乳化物を調製するためのプロセスについても記載する。
【0072】
本発明の水中油型乳化香料化粧料は、(a)~(d)の混合成分を高圧ホモジナイザーで100MPa以上の圧力で乳化する工程により得ることができる。
【0073】
乳化は100MPa以上の圧力で行うことが好ましく、圧力は好ましくは150MPa以上、より好ましくは175MPa以上であり、好ましくは225MPa以下である。乳化は、流体をポンプで加圧し、流路に設けられた微細なスリットから噴出させることにより乳化を行う高圧ホモジナイザー(例えば、スギノマシン(株)製スターバースト(登録商標))を用いて行うことができる。
【0074】
本発明のプロセスは、水、及び存在する場合には水溶性添加剤を含む水相を、20℃から60℃の間の温度で調製するステップと、濃縮香水及び水素添加レシチンを含む油相を、20℃から60℃の間の温度で調製するステップと、水相と油相を20℃以上60℃以下の温度で、10,000rpm以上の回転数で攪拌しながら混合するステップと、混合物を10,000rpm以上の回転数でさらに攪拌しながら25℃まで冷却するステップと、混合物を高圧ホモジナイザーで100MPa以上の圧力で乳化するステップとを含んでもよい。
【0075】
本発明による香水化粧料は、あるプロセスに従って製造することができる。
【0076】
プロセスの第2段階において、水と、存在する場合には他の水溶性添加剤とを温度Tで加熱し、混合し、水相を得るために、全体が均一になるように攪拌機を用いて攪拌する(例えば、2500rpmの速度で)。温度Tは、好ましくは30℃より高く、なお好ましくは40℃より高い。
【0077】
第2段階において、香水濃縮物、高比重油、及び水素添加レシチン、及び存在する場合には他の油溶性添加剤を、好ましくはTに等しい温度で加熱し、第一段階と同じ条件下で、全体が均一になるように混合及び撹拌し、油相を調製する。
【0078】
第3工程において、第1工程で得られた水相と第2工程で得られた油相をホモジナイザーで撹拌し、混合物を温度Tから室温まで冷却する。
【0079】
第4工程において、第3工程で得られた冷却混合物を高圧乳化装置を用いて高圧(好ましくは175MPa以上)で乳化し、水中油型乳化化粧料を得る。
【0080】
包装
香水組成物は、場合によっては塗布手段を備えた容器に包装することができる。塗布手段は、スプレー手段又はボールであってもよい。
【0081】
本発明はまた、塗布手段と包装手段とを備えたボトルに関し、前記包装手段は、上記のような水中油型乳化香水化粧料を収容する。
【0082】
塗布手段は、エアゾールであってもよいし、ハンドポンプであってもよいし、ボールであってもよい。組成物は、加圧装置によって微細な液滴の形態で塗布されてもよい。これらの装置は当業者に周知であり、非エアゾールポンプ又は「アトマイザー(atomisers)」、推進剤からなるエアゾール容器、及び推進剤として圧縮空気を使用するエアゾールポンプを含む。
【0083】
本発明の香水組成物は、オーデトワレ、オーデコロン、香水エキス、香水スピリット、香水ヴェール、水香水又はオーデパルファムであってもよい。
【0084】
「香水化粧品」又は「香水」とは、皮膚、毛髪又は衣服に噴霧又は塗布した後、個人を香らせることを目的とする液状の製品をいう。このような製品は、塗布後にすすがれない。したがって、香水組成物は、香水組成物と区別される。化粧品組成物は、香りがなくても香らせることができる。
【0085】
化粧方法
本発明のさらなる目的は、上記のような水中油型乳化香水化粧料を、人のケラチン物質又は衣服に適用する工程を含む、化粧品調香方法を提供することである。
【0086】
この方法は、個人の皮膚又は毛髪に香りを付ける方法であってよく、この方法は、個人の皮膚又は毛髪に、上記の組成物を適用することからなる。この組成物は、衣服に適用することもできるが、皮膚、好ましくは顔以外の身体の一部に直接適用することが好ましい。本発明の香水化粧料は、好ましくはスプレー手段によって適用される。
【実施例
【0087】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることを意図するものではないことを理解されたい。
【0088】
実施例
本発明による香水化粧料及び比較香水化粧料を調製した。各材料の含有量(質量%)を表1に示す。比較例1は、高重力の油を含まないこと以外は実施例1と同じである。
【0089】
【表1】
【0090】
<香水化粧品の調製方法>
以下の方法で水中油型乳化化粧料を調製した。まず、成分を加熱し、スターラーを用いて2500rpmで混合攪拌することにより水相を調製した。次に、水相と同じ条件で乳化剤相を調製した。油相は室温で調製し、均質化した。水相を加える前に、乳化剤相と油相を混合した。両相がよく混合された後、水相を加え、全相を混合した。室温まで冷却した後、高圧ホモジナイザー(スターバースト(登録商標):スギノマシン(株)製)を用いて140~200MPaの圧力で混合し、水中油型乳化香水化粧料を得た。
【0091】
<安定性の評価>
上記で調製した実施例1の化粧料を2つの透明容器に入れ、蓋をして密封した。一方の容器は25℃で1ヶ月間、他方の容器は50℃で1ヶ月間保存した。
【0092】
同じプロトコールを比較例1で繰り返した。
【0093】
容器の保管後、油相と水相の分離の有無を観察した。50℃及び25℃のいずれにおいても油相と水相の分離が認められなかったものを「○」、50℃及び25℃のいずれにおいても油相と水相の分離が認められたものを「×」とした。
【0094】
この比較例のナノエマルションは安定ではなかった。
【0095】
<平均粒子径の測定>
化粧料の平均粒子径は、粒子径測定装置(DelsaMax(登録商標) CORE:ベックマン・コールター社製)を用いて、動的光散乱法に従って測定した。平均粒子径は100nm~300nmであった。
【国際調査報告】