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特表2024-522745バイオプロセスにおいて培地から細胞を分離する装置配置及び方法
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  • 特表-バイオプロセスにおいて培地から細胞を分離する装置配置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】バイオプロセスにおいて培地から細胞を分離する装置配置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/06 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
C12M3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577524
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022066215
(87)【国際公開番号】W WO2022263465
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21179865.7
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508053186
【氏名又は名称】ザルトリウス ステディム バイオテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sartorius Stedim Biotech GmbH
【住所又は居所原語表記】August-Spindler-Str.11, D-37079 Goettingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ディール,ベルンハルト
(57)【要約】
培地から細胞を分離するための装置配置は、培地のための貯蔵タンクと、膜を有するろ過モジュールと、貯蔵タンクとろ過モジュールの未ろ過液入口部とを接続する流入ラインと、ろ過モジュールの保持側出口部と貯蔵タンクとを接続する戻りラインと、ろ過モジュールの透過側出口部に接続されるろ液ラインと、再循環回路を維持する第1ポンプと、ろ過モジュールの透過側接続部及び/又は透過側出口部に通じる逆洗ラインと、ろ過モジュールにすすぎ液を送る第2ポンプとを備える。培地から細胞を分離する方法は、培地において細胞を培養する工程と、膜を有するろ過モジュールにおいて、培地をろ過する工程であって、培地が再循環回路を通過する工程と、すすぎ液によって、ろ過中に膜をすすぐ工程であって、すすぎ液が再循環回路に導入される工程とを含む。特に、再循環する未ろ過液を希釈するとともに、ろ過モジュールの膜を洗浄するための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオプロセス、特に、バイオ医薬品プロセスにおいて、培地から細胞を分離するための装置配置であって、
前記培地のための貯蔵タンク(12)、特に、バイオリアクタと、
浸水に適する少なくとも1つの膜を有するろ過モジュール(16)、特に、中空糸モジュールと、
前記培地を前記ろ過モジュール(16)に供給するために、前記貯蔵タンク(12)と前記ろ過モジュール(16)の未ろ過液入口部(18)とを接続する流入ライン(24)と、
保持液を前記貯蔵タンク(12)に戻すために、前記ろ過モジュール(16)の保持側出口部(20)と前記貯蔵タンク(12)とを接続する戻りライン(26)と、
ろ液を排出するために、前記ろ過モジュール(16)の透過側出口部(22)に接続されるろ液ライン(28)と、
再循環回路を維持する第1ポンプ(30)と、
前記ろ過モジュール(16)にすすぎ液を供給するために、前記ろ過モジュール(16)の透過側接続部(33)及び/又は前記透過側出口部(22)に通じる逆洗ライン(32)と、
前記ろ過モジュール(16)に前記すすぎ液を送る第2ポンプ(34)と、
を備える、装置配置(10)。
【請求項2】
前記すすぎ液は、緩衝液、水、及び基質のいずれか1つである、請求項1に記載の装置配置(10)。
【請求項3】
前記戻りライン(26)には、前記貯蔵タンク(12)へ戻る前記保持液の流れを選択的に阻止するための第1バルブ(38)が設けられている、請求項1又は2に記載の装置配置(10)。
【請求項4】
前記ろ液ライン(28)には、前記ろ液の排出を選択的に阻止する第2バルブ(40)が設けられている、請求項1~3のいずれか1つに記載の装置配置(10)。
【請求項5】
前記逆洗ライン(32)には、前記ろ過モジュール(16)へのすすぎ液の供給を選択的に阻止する第3バルブ(42)が設けられている、請求項1~4のいずれか1つに記載の装置配置(10)。
【請求項6】
前記第1ポンプ(30)は、前記流入ライン(24)に組み込まれている、請求項1~5のいずれか1つに記載の装置配置(10)。
【請求項7】
基質を前記貯蔵タンク(12)に供給するための基質供給ライン(44)を備える、請求項1~6のいずれか1つに記載の装置配置(10)。
【請求項8】
前記基質供給ライン(44)は、前記貯蔵タンク(12)に直接通じ、
前記基質供給ラインには、前記基質を前記貯蔵タンク(12)に送る第3ポンプ(46)が設けられている、
請求項7に記載の装置配置(10)。
【請求項9】
前記基質供給ライン(44)と前記逆洗ライン(32)とは、前記第2ポンプ(34)よりも上流で共通供給ライン(54)に通じ、
前記共通供給ライン(54)は、前記ろ過モジュール(16)の透過側接続部(33)及び/又は透過側出口部(22)に通じている、
請求項7に記載の装置配置(10)。
【請求項10】
前記基質供給ライン(44)には、前記基質の供給を選択的に阻止する第4バルブ(50)が設けられている、請求項7~9のいずれか1つに記載の装置配置(10)。
【請求項11】
前記逆洗ライン(32)又は共通供給ライン(54)には、細菌ろ過器(52)が組み込まれている、請求項1~10のいずれか1つに記載の装置配置(10)。
【請求項12】
粘度と、導電率と、流量、特に再循環流量及び/又はろ液流量と、圧力、特に膜貫通圧とのうち1つ以上のパラメータを直接的又は間接的に決定及び監視するセンサ及び制御ユニットを備え、
前記制御ユニットは、前記パラメータの1つ以上の予め決められた限界値に達したか否かに応じて、逆洗を開始し制御するように構成されている、
請求項1~11のいずれか1つに記載の装置配置(10)。
【請求項13】
培地から細胞を分離する方法、特に、請求項1~12のいずれか1つに記載の装置配置(10)を用いる方法であって、
バイオリアクタ内の培地(14)において細胞を培養する培養工程と、
少なくとも1つの膜を有するろ過モジュール(16)、特に、中空糸モジュールにおいて、前記培地(14)をろ過するろ過工程であって、前記培地(14)が再循環回路を通過する工程と、
特に、緩衝液、水、又は基質であるすすぎ液によって、ろ過中に前記膜をすすぐすすぎ工程であって、前記すすぎ液がすすぎによって再循環回路に導入される工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
前記すすぎ液は、別々のライン(32,54)を介して、前記ろ過モジュール(16)の1つ以上の透過側接続部(33,22)に送られる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくともろ過中に、粘度と、導電率と、流量、特に再循環流量及び/又はろ液流量と、圧力、特に膜貫通圧とのうち1つ以上のパラメータを決定及び監視することを含み、
前記パラメータの1つ以上の予め決められた限界値に達したか否かに応じて、逆洗が開始及び制御される、
請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記逆洗の工程は、続けて複数回行われる、請求項13~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記すすぎ工程は、ろ過中に周期的に繰り返される、請求項13~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
繰り返される前記すすぎ工程は、異なるすすぎ液を用いて行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記培養工程と前記ろ過工程とは、交互に行われる、請求項13~18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記培養工程と前記ろ過工程とは、少なくとも部分的に同時に行われる、請求項13~18のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオプロセス、特にバイオ医薬品プロセスにおいて、培地から細胞を分離する装置配置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品産業においては、培養プロセスの効率化及び強化への明確な傾向が見られる。改善され続ける技術と最適化されたプロセスは、発酵量をより減少させるとともに、細胞及びタンパク質の濃度を上昇させる。細胞及びタンパク質は、その後、清澄化及び実際に目的とされる物質の分離のための工程において処理される必要がある。
【0003】
前述の理由から、細胞分離において、培養直後の最初の清澄化工程の重要性が増している。有効成分の濃度の高さは、細胞の多さと、ウェットバイオマスの大きさとを伴うためである。そのため、遠心分離、深層ろ過、場合によりクロスフローろ過(タンジェンシャルフローろ過(TFF: tangential flow filtration))等の従来の細胞分離方法は、増大し続ける課題に直面し、しばしば技術的な限界に達している。
【0004】
さらに、バイオ医薬品産業では、新薬開発のあらゆる中間段階においてコストと時間のかかるステンレス鋼システムの確認プロセスを最適化又加速させる目的で、単回使用プロセスの解決策への関心が着実に見られている。単回使用技術は、バイオ医薬品の製造プロセス全体に亘って、受け入れられつつある。そのため、これらの課題に対応する新規で革新的な技術及び手法が継続的に探索されている。単回使用のバイオリアクタは、プロセスチェーンの始めの段階である発酵プロセスにおいても普及しつつあり、今日では既に広く使用されている。
【0005】
通常、発酵に続く細胞分離の工程は、単回使用の生産プラントにおいて、2回以上の深層ろ過工程によって行われる。しかしながら、当該ろ過の技術は、フィルタ表面の急速な詰まりに対抗することがほぼ不可能であるので、細胞集団の濃度に関して従来の限界がある。同時に、環境又は作業者との製品の接触を防ぐためにユーザが使用を望む、シールによって密閉された単回使用の深層ろ過システムは、今のところ存在しない。このことは、既に技術的な限界に曝されている深層ろ過技術が、実用性の欠如に加え、前述の強化への傾向によって、経済的な限界に更に追い込まれていることを意味する。
【0006】
クロスフローろ過は、飲料産業などの同様の問題がある他の産業分野において、従来の方法と比較して、効率的且つ経済的に細胞を分離するのに適した方法であると証明されている。多くの場合、クロスフローろ過では、従来の2回以上の清澄化工程を、単一の工程、すなわち、遠心分離及びしばしばそれに続く多段深層ろ過に置き換えることができる。限外ろ過膜又は精密ろ過膜を有する中空糸モジュールは、クロスフローろ過による細胞分離に特に適している。
【0007】
精密ろ過膜を用いたクロスフローろ過は、確立された分離プロセスとして、広く使用され、よく知られている。しかしながら、本明細書において着目される適用分野においては、所謂ウェットバイオマスの形態で培養液に含まれる細胞画分と、達成すべきタンパク質収率とによって、特有の課題が生じる。元の発酵液から清澄化されたタンパク質ろ液(透過液)の分離量が増加するにつれて、バイオリアクタ内に存在するウェットバイオマスの濃度が上昇し続け、ろ過の過程における粘度が上昇につながるためである。このプロセスは、技術的な一般条件のために、無期限に継続することができない。よって、収率が最大化されるように、技術的な一般条件を策定又は最適化することが重要である。
【0008】
当該一般条件は、分離プロセスの経済的効率に強く影響し得る様々な要素の相互作用を表す。当該要素は、本質的に、ろ過ユニット(ここでは、特に中空糸モジュール)の幾何学的設計、ポンプシステムなどのシステム条件、及び動的に変化する液体条件(例えば、粘度、温度)を含む。濃度が上昇し、粘度が高くなるにつれて、中空糸モジュールの管状流路を自由に通過して流れることは、もはや不可能となるか、又は限られた範囲のみで可能となる。そのため、ろ過性能が急激に低下し、膜表面上を最適に流れることは更に困難になり得る。このことは、固有の流量とポンプに投入されるエネルギーの観点から、もはやろ過を経済的に設計することが不可能なほどに進行し得る。または、ろ過性能が完全に崩壊し、プロセスを中断せざるを得なくなる。
【0009】
このような増大点(escalation point)を回避するために、例えば、緩衝液又は基質(栄養液)を用いて希釈を制御することは、液体をシステムに適した程度の粘度に維持するのに役立つ。しかしながら、これには、目的のタンパク質を含む溶液がその量を増し続けるという欠点がある。このことは、始めの清澄化工程の後の更なる精製工程においても欠点となる。
【0010】
本明細書で最も注目される適用において、各細胞分離技術の成否は、技術的な実現可能性だけでなく、主に、付加価値要素として、達成されるタンパク質収率によっても特徴づけられる。このことは、バイオ医薬品における目的のタンパク質の精製プロセスにおいて、後の工程に悪影響を及ぼすことなく、最大のタンパク質収率を達成可能な最適な技術を、適切なプロセスと組み合わせて見つけなければならないことを意味する。
【0011】
前述の最適な動作点は、従来の形式のクロスフローろ過、すなわち、タンパク質溶液の分離及び同時に行われるバイオマスの濃縮によって、細胞分離を行うことで、まず達成することができる。細胞のない透明な溶液の分離物が臨界的な粘度値又はろ液流量の下限に達すると、希釈液をシステムに供給することによって、希釈が行われる。既知のクロスフローろ過のプロセスにおいて、通常、希釈液は、供給タンク又は再循環タンクに直接供給されるか、又はクロスフローろ過の循環ラインに供給される。
【0012】
膜を通過するろ液流量を維持又は最適化するために、膜を通過した直後のろ液によって逆洗を行うクロスフローろ過のプロセスが既に示されている。対応するシステムは、例えば、米国特許第6544424号明細書及び国際公開第2018/022661号に記載されている。「交互タンジェンシャルフロー(ATF: Alternating Tangential Flow)ろ過」とも呼ばれる技術において、蓄積した表面被膜(ファウリング)は、流れ方向、つまり、膜流入側面上の平均流入圧力と膜流出面上の流出圧力との圧力比を逆転させることによって緩められ、又は除去され、理想的には、保持液(retentate)の流れと共に運ばれ、運び去られる。理想的には、これによって、ろ液の流量(流れ)を完全に又は少なくとも部分的に増加させて初期の流量値流値に戻すか、又は少なくとも、長時間に亘って高いレベルに維持することができる。
【0013】
しかしながら、前記方法には、ろ液を用いた逆洗が有効なろ過性能及びシステム全体の効率に悪影響を及ぼすという欠点がある。これは、逆洗後に、戻されたばかりのろ液を再び膜の流入側からろ液側に導く必要があるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記背景に対抗して、本発明の目的は、タンパク質の精製プロセスにおける後の工程に悪影響を及ぼすことなく、バイオ医薬品における目的のタンパク質の可能な限り高い収率を達成可能な、細胞分離のための技術を提供することにある。特に、精密ろ過膜を用いたこのような技術によって、技術的及び経済的に最適な動作点、特に、生成物の収率、生成物の品質、及び溶液の希釈度に関する動作点を設定することができる。当該精密ろ過膜は、特に中空糸の形式であるが、板枠(plate-frame)モジュール、管状モジュール、スパイラル巻き(spiral-wound)モジュールなどの他の形式もある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的は、請求項1の特徴を備える装置配置及び請求項13の特徴を含む方法によって達成される。本発明に係る装置配置及び本発明に係る方法の有利且つ実用的な構成は、関連する従属項に記載されている。
【0016】
バイオプロセス、特に、バイオ医薬品プロセスにおいて、培地から細胞を分離するための、本発明に係る装置配置は、
培地のための貯蔵タンク、特に、バイオリアクタと、
浸水に適する少なくとも1つの膜を有するろ過モジュール、特に、中空糸モジュールと、
培地をろ過モジュールに供給するために、貯蔵タンクとろ過モジュールの未ろ過液入口部とを接続する流入ラインと、
保持液を貯蔵タンクに戻すために、ろ過モジュールの保持側出口部と貯蔵タンクとを接続する戻りラインと、
ろ液を排出するために、ろ過モジュールの透過側出口部に接続されるろ液ラインと、
再循環回路を維持する第1ポンプと、
ろ過モジュールにすすぎ液を供給するために、ろ過モジュールの(異なる)透過側接続部及び/又は透過側出口部に通じる逆洗ラインと、
ろ過モジュールにすすぎ液を送る第2ポンプと、
を備える。
【0017】
本発明に係る装置配置によれば、細胞分離の工程は、発酵プロセスの種類とは独立して、最適に設計されることができ、動的な一般条件下で、すなわち、変化する一般条件下で、タンパク質収率とプロセスにかかるコストとの両方を最適化する。特に、本発明に係る構成によれば、ろ過中に必要とされる又は望まれる培地の希釈と、膜表面の洗浄とを有利に組み合わせることができる。別々の逆洗ラインと第2ポンプとによって、一方では、ろ過の過程で形成される被覆層又は他の残留物(ファウリング)を緩めるか又は膜から外すことのできるすすぎ液を、一方では、ろ過中に再循環回路に追加で導入することができ、他方では、循環する培地の希釈に寄与させることができる。そのため、すすぎ液は、いくつかの機能、すなわち、後述される(i)フィルタの詰まりに対抗し、ろ過性能を可能な限り維持するための膜の洗浄と、(ii)培地をシステムに適する程度の粘度に維持するための培地の希釈と、及び/又は(iii)発酵中の細胞栄養の最適な制御との機能を同時に果たすことができる。
【0018】
培地に適する緩衝液は、すすぎ液として特に適する。従来のシステムにおいて、このような緩衝液の導入は、ろ過中に培地を希釈する目的で行われる程度であった。本発明によれば、緩衝液は、同時にろ過モジュールの膜の洗浄にも使用される。ろ過進行中の膜洗浄は、従来のシステムでは提供されていないか、又は初めに述べたATFシステムのように、流れを逆向きにして、外れた被覆層の成分をろ過モジュールの外部へ未ろ過液の流れと共に貯蔵タンク(バイオリアクタ)に洗い流すことによって実施される。
【0019】
または、緩衝液の代わりに、緩衝液よりも安い純水(WFI)又は他の適切な液体をすすぎ液として使用することもできる。
【0020】
本発明の特定の態様によれば、逆洗は、基質、すなわちバイオリアクタ内で細胞を培養するための栄養液によって行われる。基質による逆洗は、流加(fed-batch)プロセス又は連続プロセス(灌流プロセス)に特に適している。このようなプロセスでは、細胞増殖のための条件を改善し、ろ過されたタンパク質溶液を除去し続けることによって引き起こされる量の減少を補うために、基質をバイオリアクタに供給する必要がある。そのため、基質は、膜を洗浄するためのすすぎ液及び細胞培養のための栄養液として同時に使用され得る。
【0021】
本発明に係る装置配置において、戻りラインには、貯蔵タンクへ戻る保持液の流れを選択的に阻止するための第1バルブが設けられることが好ましい。当該第1バルブは、ろ過中に絞り弁(throttle)又は圧力制御バルブとして使用され、駆動力としての膜貫通圧(TMP: transmembrane pressure)を制御及び調節する。さらに、ろ液ラインに設けられ、ろ液の排出を選択的に阻止する第2バルブは、逆洗工程中のろ過モジュールからの流出を妨げるために使用することができる。
【0022】
逆洗ラインに設けられる第3バルブは、ろ過モジュールへのすすぎ液の供給を制御することができる。
【0023】
既知のATFシステムにおける膜ポンプの配置とは対照的に、再循環回路を維持するために使用される第1ポンプは、ここでは、流入ラインに組み込まれ、すなわち、ろ過モジュールよりも上流に配置されることが好ましい。
【0024】
本発明に係る装置配置がバッチプロセスではなく、流加プロセス又は連続プロセス(灌流プロセス)向けに設計される場合、基質を貯蔵タンクに供給するための基質供給ラインを設けることが必要である。当該貯蔵タンクは、細胞が培養されるバイオリアクタとしても機能する。
【0025】
第1変形例によれば、当該基質供給ラインは、別のラインとして、貯蔵タンクに直接通じ得る。この場合、培地を貯蔵タンクに送るための第3ポンプが設けられる。
【0026】
代替的な第2変形例によれば、基質供給ラインと逆洗ラインとは、第2ポンプよりも上流で共通供給ラインに通じている。共通供給ラインは、さもなくば使用されないろ過モジュールの透過側接続部、及び/又はろ過モジュールの透過側出口部に通じている。この設計の変更によって、特に共通供給ラインに組み込み可能な第2ポンプを、基質の供給と緩衝液と供給との両方に使用することができる。そのため、当該変形例においては、基質を送るための専用のポンプを省略することができる。これにより、装置配置の設計が簡素化され、装置配置をよりコスト効率よく構成することができる。
【0027】
逆洗ラインの第3バルブと、基質供給ラインの追加された第4バルブとによって、必要に応じてすすぎ液の供給と基質の供給とを切り替えたり、両ラインを閉鎖したりすることができる。
【0028】
本発明に係る装置配置の特定の実施形態によれば、逆洗ライン又は共通供給ラインには、細菌ろ過器(sterile filter)が配置される。これにより、すすぎ液又は基質の供給過程で、不純物が外部から再循環回路に導入されるのを抑えることができる。このことは、比較的長期間、例えば数週間に亘る灌流プロセスでは特に重要である。この場合、汚染は、特に深刻な影響を及ぼす。しかしながら、汚染は常に避けられるべきものであるので、基質供給ラインへの細菌ろ過器の設置は、バッチプロセス又は流加プロセスにおいても合理的である。
【0029】
本発明に係る装置配置の潜在的可能性を十分に活用するためには、粘度と、導電率と、流量(特に、再循環流量及び/又はろ液流量)と、圧力、特に膜貫通圧(TMP)とのうち1つ以上のパラメータを直接的又は間接的に決定及び監視するセンサ及び制御ユニットを設けることが有利である。この場合、制御ユニットは、パラメータの1つ以上の予め決められた限界値に達したか否かに応じて、逆洗を開始し制御するように構成される。このようにして、プロセスの全体を、最適な方法で連続的に調整及び制御することができる。制御ユニットが、例えば、装置配置の個々のポンプ及びバルブを制御できる場合、プロセスの半自動制御又は完全自動制御は、特に有利である。特に、パラメータを使用して、同時の希釈を伴うすすぎ工程の最適な回数を決定することができる。すすぎ工程の時間、圧力、及びすすぎ液の量も、工程の望まれる性能値(ろ過性能、希釈の程度など)を達成又は維持するように、最適に設定され得る。
【0030】
また、本発明は、培地から細胞を分離する方法、特に、本発明に係る装置配置を用いる方法を提供する。
本発明に係る方法は、
バイオリアクタ内の培地において細胞を培養する培養工程と、
少なくとも1つの膜を有するろ過モジュール、特に、中空糸モジュールにおいて、培地をろ過するろ過工程であって、培地が再循環回路を通過する工程と、
特に、緩衝液、水、又は基質であるすすぎ液によって、ろ過中に膜をすすぐすすぎ工程であって、すすぎ液がすすぎによって再循環回路に導入される工程と、
を含む。
【0031】
前述の説明によれば、「ろ過中のすすぎ」とは、すすぎ工程が上位のろ過工程に組み込まれていることを意味する。必要に応じて、再循環回路を完全に遮断することも、すすぎ工程のために限定的に維持することもできる。すすぎ工程中には、透過の排出は確実に閉鎖されるべきであるが、再循環ポンプ(第1ポンプ)は、場合によっては低出力で、動作し続けることも、停止することさえもできる。少なくとも、循環ポンプが逆洗中に停止していない場合、すすぎ工程中には、貯蔵タンクへの保持液の戻りは、開放されるべきである。実際のろ過中には、保持液の戻りに配置されたバルブは、膜貫通圧を調整する機能を有し、部分的又は一時的に閉鎖され得る。
【0032】
すすぎ液がろ過モジュールに独立して供給され得るように、すすぎ液は、別々のラインを介して、ろ過モジュールの1つ以上の透過側接続部に送られることが好ましい。当該透過側接続部は、貯蔵タンクからろ過される培地が送られる、ろ過モジュールの未ろ過液入口部とは別個である。
【0033】
同時のすすぎ工程と希釈工程とを含む、プロセスの最適な調整及び制御のために、少なくともろ過中に、粘度と、導電率と、流量(特に、再循環流量及び/又はろ液流量)と、圧力、特に膜貫通圧とのうち1つ以上のパラメータを決定及び監視することが望ましい。前述のように、パラメータの1つ以上の予め決められた限界値に達したか否かに応じて、逆洗が開始及び制御される。
【0034】
すすぎ工程は、上位のろ過工程中に、続けて数回行われることも、及び/又は周期的に繰り返されることもできる。すすぎ工程間の時間間隔は、特にセンサによって連続して決定されるパラメータに応じて、変化し得る。
【0035】
すすぎ液は、すすぎ工程中に変更することもできる。予め決められた計画又は前述のパラメータに基づいて決定される要件に従って、緩衝液、純水、及び基質の間、又はこれらのうち少なくとも2つの液体の間を切り替えることができる。原理上、他のすすぎ液を含めることもできる。
【0036】
本発明に係る方法をバッチプロセスにおいて用いる場合、培養工程とろ過工程とは、交互に行われる。
【0037】
対照的に、流加プロセス又は灌流プロセスの場合、培養工程とろ過工程とは、少なくとも部分的に同時に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の説明及び添付図面から明らかになるであろう。
【0039】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る装置配置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態に係る装置配置の概略構成図である。
図3図3は、本発明の第3実施形態に係る装置配置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図1図3に基づいて、バイオ医薬品発酵プロセスに関して、細胞を培地から分離する装置配置10の異なる3つの構成を例示として説明する。対応する部品には、同じ参照符号が使用される。図2及び図3に示す構成に関しては、図1に示す構成との重要な違いのみを説明する。
【0041】
図1に示す構成において、装置配置10は、培地14のための貯蔵タンク12と、ろ過モジュール16とを備える。当該ろ過モジュールによって、目的のタンパク質を得るために、培地14から細胞を分離することができる。貯蔵タンク12は、細胞を培養するための発酵プロセスが行われるバイオリアクタである。
【0042】
本構成において、ろ過モジュール16は、浸水(overflowed)に適する少なくとも1つの膜を有する中空糸モジュールである。すなわち、ろ過モジュール16は、クロスフローろ過用に設計されている。したがって、ろ過モジュール16は、少なくとも3つの接続部、すなわち、貯蔵タンク12からの未ろ過液のための未ろ過液入口部18と、保持側出口部20と、及び透過側出口部22とを有する。多くの中空糸モジュールにおいては、透過側接続部33が設けられる。透過側接続部33は、従来のろ過の用途では使用されないこともあり、プラグによって閉鎖されている。本発明に関連する透過側接続部33の特別な使用については、詳細に後述する。
【0043】
流入ライン24は、貯蔵タンク12をろ過モジュール16の未ろ過液入口部18に接続する。戻りライン26は、ろ過モジュール16の保持側出口部20を貯蔵タンク12に接続する。ろ液ライン28は、ろ過モジュール16の透過側出口部22に接続されている。
【0044】
流入ライン24には、未ろ過液の再循環回路を維持するための第1ポンプ30が組み込まれている。当該再循環回路において、培地14は、貯蔵タンク12から流入ライン24を通過し、ろ過モジュール16の未ろ過液入口部18に送られる。ろ過モジュール16において、培地14は、目的のタンパク質が透過可能であり且つ細胞が透過不可能な膜の上を流れる。細胞から解放された溶液(透過液又はろ液)は、透過側出口部22を介して排出される。一方、保持液は、出口部20及び戻りライン26を介して貯蔵タンク12に戻される。第1ポンプ30は、原理的には、前記目的のために戻りライン26に統合することもでき。この場合、正の膜貫通圧は発生しない。
【0045】
さらに、ろ過モジュール16の透過側接続部33には、逆洗(backflush)ライン32が通じている。逆洗ライン32には、第2ポンプ34が組み込まれている。第2ポンプ34によって、容器36からろ過モジュール16の透過側接続部33に、すすぎ液を送ることができる。容器36には、特に、注射用水(WFI: water for injection)又は緩衝液が充填されるが、他の適切なすすぎ液を使用することもできる。
【0046】
戻りライン26には、第1バルブ38が組み込まれている。第1バルブ38によって、貯蔵タンク12へ戻る保持液の流れを阻止するか、又は減少させることができる。ろ液ライン28には、第2バルブ40が組み込まれている。第2バルブ40は、ろ液(無細胞培地)の排出を阻止するか、又は減少させるために使用することができる。逆洗ライン32に組み込まれた第3バルブ42は、ろ過モジュール16の透過側接続部33へのすすぎ液の供給を選択的に阻止する機能又は減少させる機能を有する。
【0047】
装置配置10の全ての部品、特に、ろ過モジュール16、ライン24,26,28,32、バルブ38,40,42、及びポンプ30,34の少なくとも培地又はすすぎ液と接触する部分は、単回使用部品として設計されることが好ましい。このことは、前記の部品が、主に、滅菌又はオートクレーブ滅菌に適したプラスチックで構成されることを意味する。部品は、使用前に予め組み立てられて滅菌され、滅菌された適切なコネクタによって無菌的にバイオリアクタに接続されることができる。全ての単回使用部品は、1回使用された後に完全に廃棄される。
【0048】
図1に示す構成は、いわゆるバッチプロセスに特に適している。バッチプロセスにおいては、貯蔵タンク12としても機能するバイオリアクタの初期の充填、及び培養の開始よりも後に、基質の更なる追加は行われない。
【0049】
バイオリアクタには、基質が目標量まで充填され、細胞が播種される(播種)。最適な細胞濃度又はタンパク質濃度(力価)に達すると、細胞の分離工程又は目的のタンパク質の回収工程が行われる。タンパク質の収率は可能な限り高くあるべきであり、細胞(バイオマス)はタンパク質を含む溶液から完全に分離されるべきである。
【0050】
遠心分離及び/又は深層ろ過などの従来の技術では、一般的に、85%又はそれよりも低いタンパク質の収率しか達成することができない。同時に、プロセスに関連する条件のために、希釈を避けることができない。当該希釈は、プロセスの条件及び意図された収率に応じて、最大で30%になり得る。従来のプロセスにおいて、収率と希釈との両パラメータは、限られた範囲にしか変化しない。バイオテクノロジーの発酵プロセスの強化、並びに力価及び収率の向上への明確な上昇傾向があるため、従来の分離プロセスにおいて使用される材料の量は法外に増加しており、経済的観点から魅力のないものになってきている。
【0051】
前述の装置配置10の構成及び後述のろ過中の手順は、この点で最適化の新たな可能性を開くものであり、必要なスペース及び技術的労力は、力価及び細胞濃度にそれほど強く依存しない。
【0052】
本明細書において提案される方法によれば、ろ過は、前述の再循環回路において行われる。再循環回路において、培地14は、ろ過モジュール16を繰り返し通過する。ろ過又は濃縮は、所望の動作点、及び予め決められ得る動作点(特に、粘度、流量(再循環流量及び/又はろ液流量)、膜貫通圧、希釈率に関する動作点)から、周期的な逆洗によって中断される。この目的のために、第2ポンプ34は、容器36からろ過モジュール16の透過側接続部33にすすぎ液を送るために使用される。以下に詳細に説明するように、すすぎ液が膜を通過して保持側に流れることによって、膜はより確実に洗浄される。
【0053】
発酵プロセスに関連して使用される緩衝液は、すすぎ液として特に適する。このような緩衝液は、中立的(neutrally)に振る舞い、再循環回路における体積を増加させるのみであって、透過液が除去されることによる培地の粘度の上昇を考慮すると、特に望ましい。これにより、「培地の希釈」と「ろ過モジュール16内の膜の洗浄」という工程(一部の工程)を、ろ過中の単一の工程に組み合わせる(「2in1」)ことができる。
【0054】
または、純水(WFI)を用いたすすぎ、又は緩衝液と水との切り替えも可能である。
【0055】
第1ポンプ30は、逆洗中に、実現されるべき差圧条件に応じて、動作を継続することも、調整されることも、又は停止することさえもできる。逆洗プロセス中には、ろ液ライン28にある第2バルブ40は通常閉鎖され、戻りライン26にある第1バルブ38は開放される。このようにして、膜の表面上に差圧が発生する。当該差圧は、ろ液の流れに逆らい、膜上の被覆層を完全に又は部分的に分離させる。これにより、フィルタの詰まり(ファウリング)が効果的に抑制され、以前は低下していたろ過性能が少なくとも一時的に向上する。
【0056】
逆洗後には、ろ過が継続される。逆洗プロセスは、収率、希釈率、及び/又は工程の時間の各限界値に達するまで、望まれるだけ繰り返されたり、望まれるプロセスの時間だけ実行されたりすることができる。
【0057】
既知のクロスフローろ過システムから、単回使用のセンサとして装置配置10に組み込み可能な適切なセンサを使用することによって、ろ過性能を恒久的に測定することができる。制御ユニットを使用して、逆洗の理想的なパラメータ(特に、時点、継続時間、量、圧力、速度)を決定し、それに応じて当該パラメータを調整することができる。または、プロセスにおいて当該パラメータを変更及び最適化することによって、プロセスの持続時間の全体に亘って、ろ過性能を可能な限り最良の方法で維持することができる。
【0058】
図2に示す装置配置10の構成においては、貯蔵タンク12に通じた基質供給ライン44も設けられている。基質供給ライン44には、第3ポンプ46が組み込まれている。これにより、基質、例えば、培地タンク48からの基質を、バイオリアクタに送ることができる。基質の供給は、基質供給ライン44に組み込まれた第4バルブ50によって、選択的に阻止されるか、又は減少させることができる。逆洗ライン32には、細菌ろ過器(sterile filter)52を任意に組み込むことができる。このような細菌ろ過器を設けることは、基質供給ライン44において、当該ライン側からバイオリアクタにおける無菌状態をより確実に維持するためにも合理的である。
【0059】
図2に示す構成は、いわゆる流加(fed-batch)プロセス又は連続プロセス(灌流プロセス)に特に適している。当該プロセスでは、発酵プロセスの過程において、一段階で、周期的に、又は連続的に新たな基質をバイオリアクタに加え、細胞の生存状況及びタンパク質の収率を制御して良い影響を与える。流加プロセスにおいて、細胞は、培養プロセスの終わりにおける単一の工程で、目的のタンパク質から分離される。一方、灌流プロセスにおいて、当該工程は、培養プロセス自体の間に、ある程度半連続的な様式又は連続的な様式で行われる。流加プロセスの終わり又は灌流の過程においては、細胞を分離するために、遠心分離及び/又は深層ろ過の従来技術、又は本明細書において注目されるクロスフローろ過が用いられる。培養の過程では、一部の量が得られ、最後には、収率を高めるための最終的な濃縮(up-concentration)が続く。
【0060】
図2に示す装置配置10の構成及び後述の細胞分離の進め方は、流加プロセス及び灌流プロセスに関連する最適化の新たな可能性を開くものであり、必要なスペース及び技術的労力は、力価及び細胞濃度にそれほど強く依存しない。
【0061】
流加プロセス又は灌流プロセス中の培地14の添加、及び進行しているプロセスの最適化と関連する緩衝液及び/又は純水による希釈は、膜洗浄のための逆洗と組み合わせることもできる。前述のように、ろ過は、所望の動作点(特に、粘度、流量希釈率に関する動作点)から、周期的な逆洗によって中断され、適切な緩衝液及び/又は純水による膜表面の洗浄が行われる。しかしながら、緩衝液及び/又は純水の供給、すなわち、膜の逆洗が、逆洗ライン32及び第2ポンプ34を介してろ過モジュール16の透過側接続部33へ行われる間に、基質は、別の基質供給ライン44及び第3ポンプ46を介して、バイオリアクタに直接供給される。
【0062】
図3は、流加プロセス又は灌流プロセスにも適する装置配置10の代替的な構成を示す図である。当該構成は、大部分で図2に示す構成と対応するが、以下に概説するように、基質の供給様式において異なる。
【0063】
当該構成において、基質供給ライン44は、バイオリアクタに直接通じていない。基質供給ライン44と逆洗ライン32との両方が、共通供給ライン54に通じている。共通供給ライン54は、ろ過モジュール16の透過側接続部33に通じている。共通供給ライン54には、第2ポンプ34と、任意の細菌ろ過器52とが組み込まれている。
【0064】
当該構成によれば、基質の供給とすすぎ液の供給とを、同一のポンプ、すなわち、第2ポンプ34によって実現することができる。構成の本変形例において、基質は、バイオリアクタに直接供給されるのではなく、ろ過モジュール16の透過側接続部33を介して、膜及び戻りライン26を通過し、バイオリアクタに間接的に供給される。第3バルブ42及び第4バルブ50を適宜切り替えることによって、プロセスの(部分的な)工程に応じて、培地タンク48からの基質又は容器36からのすすぎ液を選択的の供給することができるとともに、逆洗及び当該逆洗に関連する膜洗浄と供給とを同時に行うことができる。
【0065】
原理上、前述の全ての構成において、すすぎ液を、透過側接続部33を介して(のみ)ろ過モジュール16に送るのではなく、代替的又は追加的に、実際にはろ液の排出が意図された透過側出口部22を介して送ることもできる。そのためには、バルブを有し、透過側出口部22においてすすぎ液の供給とろ液の排出とを分離できる適切な接続部品を設ける必要がある。原理上、ろ過モジュール16の任意の透過側接続部(単独又は他との組合せ)は、逆洗に使用することができる。このような解決策は、図に個々に明示はされていないが、前述の実施形態と同様の基本的な思想に従う。
【0066】
前述の全ての構成において、細胞分離は、必要な部品が利用可能であるために、完全に閉鎖された一方向の工程として実行可能である。ポンプ30,34,46(少なくとも、培地又はすすぎ液と接触する部分)、ライン24,26,28,32,44,54、バルブ38,40,42,50、及びセンサは、滅菌可能な単回使用材料で作製される。
【0067】
前述のように、全ての異なるプロセスにおいて、ろ過性能を恒久的に測定し、制御ユニットを使用して、逆洗の理想的なパラメータ(特に、時点、継続時間、量、圧力、速度)を決定し、それに応じて当該パラメータを設定することができる。または、プロセスにおいて当該パラメータを変更及び最適化し、収率及び効率を最適化することができる。圧力(特に、膜貫通圧)、流量、粘度、及び導電率、並びにプロセスの過程におけるこれらの変化を測定又は決定する既知の単回使用センサは、既に使用されている。
【符号の説明】
【0068】
10 装置配置
12 貯蔵タンク
14 培地
16 ろ過モジュール
18 未ろ過液入口部
20 保持側出口部
22 透過側出口部
24 流入ライン
26 戻りライン
28 ろ液ライン
30 第1ポンプ
32 逆洗ライン
33 透過側接続部
34 第2ポンプ
36 容器
38 第1バルブ
40 第2バルブ
42 第3バルブ
44 基質供給ライン
46 第3ポンプ
48 培地タンク
50 第4バルブ
52 細菌ろ過器
54 共通供給ライン
図1
図2
図3
【国際調査報告】